内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:130

地中海食による認知症予防に疑問符

 野菜、果物、魚、全粒穀物、オリーブ油などが豊富な地中海食が、身体的な健康の増進に役立つことは広く知られている。近年ではそれにとどまらず、認知症の予防にも良いと言われるようになった。しかし、後者の認知症予防効果について、疑問を投げかける研究結果が発表された。ルンド大学(スウェーデン)のIsabelle Glans氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に10月12日掲載された。同国の3万人近い一般成人を20年間追跡した観察研究で、有意な関連が見られなかったという。  この結果について、米アルツハイマー協会のHeather Snyder氏は、「食事や栄養と認知症リスクとの関連についての決定的なエビデンスとはいえない。他の研究結果と併せて慎重に考察することが極めて重要」と指摘している。また、「観察研究では何らかの関係性を見つけ出すことは可能だが、その因果関係の証明にはならない。因果関係の立証には介入研究が必要だ。幸いにも現在、食事・栄養介入の影響を評価可能な研究が進行中だ」と述べている。

治療抵抗性高血圧、二重エンドセリン受容体拮抗薬が有効/Lancet

 エンドセリン経路の遮断による降圧作用が示唆されているが、現時点では治療標的とはなっていない。オーストラリア・西オーストラリア大学のMarkus P. Schlaich氏らは「PRECISION試験」において、二重エンドセリン受容体拮抗薬aprocitentanは治療抵抗性高血圧患者で良好な忍容性を示し、4週の時点での収縮期血圧(SBP)がプラセボに比べ有意に低下し、その効果は40週目まで持続したと報告した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年11月7日号に掲載された。  PRECISION試験は、欧州、北米、アジア、オーストラリアの22ヵ国193施設が参加した無作為化第III相試験であり、2018年6月~2022年4月の期間に参加者の登録が行われた(Idorsia PharmaceuticalsとJanssen Biotechの助成を受けた)。  対象は、利尿薬を含むクラスの異なる3種の降圧薬から成る標準化された基礎治療を受けたが、診察室での座位SBPが140mmHg以上の患者であった。  試験は連続する3部から成り、パート1は4週間の二重盲検無作為化プラセボ対照の期間で、患者は標準化基礎治療に加えaprocitentan 12.5mg、同25mg、プラセボの1日1回経口投与を受ける群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。パート2は32週間の単盲検(患者)の期間で、すべての患者がaprocitentan 25mgの投与を受けた。パート3は12週間の二重盲検無作為化プラセボ対照の投与中止期で、再度無作為化が行われ、患者はaprocitentan 25mg群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。  主要エンドポイントは、パート1のベースラインから4週目までの診察室座位SBP、主な副次エンドポイントはパート3のベースライン(36週目)から4週目(40週目)までの診察室座位SBPの変化であった。そのほか副次エンドポイントには、24時間時間自由行動下SBPの変化などが含まれた。

マスク要請解除で学校のコロナ感染増、職員で顕著/NEJM

 米国マサチューセッツ州のグレーターボストン地域の学区で、州全体のマスク着用方策の撤回から15週の期間に、マスク着用要請を解除した学区の小中学校はこれに応じずに着用要請を続けた学区の学校と比較して、生徒と学校職員における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患者が1,000人当たり44.9人多かったことが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のTori L. Cowger氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年11月9日号で報告された。  2022年2月28日、マサチューセッツ州は、公立学校におけるユニバーサルマスキング方策を州全体で撤回し、その後の数週間に多くの学区で生徒や職員へのマスク着用要請が解除された。グレーターボストン地域では、ボストン地区と近隣のチェルシー地区の2つの学区だけが、2022年6月までマスク着用要請を続けた。  研究グループは、この変更された方策の実施の時間差に関して差分の差分分析を行い、グレーターボストン地域で2021~22年の学年度中にマスク着用要請を解除した地区と、この要請を継続した地区で、生徒と職員におけるCOVID-19の罹患率を比較した。  グレーターボストン地域の72学区(生徒29万4,084人、学校職員4万6,530人)が解析の対象となった。方策撤回後1週目は、要請解除が46学区、継続は26学区で、2週目にはそれぞれ63学区および9学区に、その後は70学区および2学区となった。

運動により新型コロナワクチンの効果が高まる?

 運動をよくする人ほど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン(以下、新型コロナワクチン)の効果が高くなる可能性のあることが、南アフリカで実施された研究で示された。ワクチン接種を済ませた人のうち、週当たりの運動レベルが高かった人ではあまり運動していなかった人に比べて、COVID-19で入院するリスクがほぼ3分の1であったという。ウィットウォーターズランド大学(南アフリカ)臨床医学部のJon Patricios氏らによるこの研究の詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に10月24日掲載された。

日本人アルツハイマー病に対する抗認知症薬の継続性

 アルツハイマー病(AD)の症状に対する治療には、ドネペジルが用いられることが多いが、早期の治療中断も少なくない。ドネペジル治療開始後の抗認知症薬使用の継続率を明らかにすることは、今後の治療戦略の開発および改善に役立つ可能性があるものの、これらに関する日本からのエビデンスはほとんどなかった。九州大学の福田 治久氏らは、日本人AD患者におけるドネペジル開始後の抗認知症薬の継続率を明らかにするため、保険請求データベースを用いて検討を行った。

コロナで日本の未成年者の自殺率とその理由が変化

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に、日本の若年者(10~19歳)の自殺率はパンデミック前と比較して増加し、家族問題や人間関係の問題に起因する自殺が増加していたことを、東京大学医学部附属病院の後藤 隆之介氏らが明らかにした。パンデミックにより学校閉鎖などの前例のない感染防止対策が講じられ、若年者に多くのメンタルヘルスの課題をもたらしたが、これまでパンデミック中の若年者の自殺の傾向やその理由を調査した研究はほとんどなかった。The Lancet regional health. Western Pacific誌2022年8月10日掲載の報告。

夜食べると太る原因が明らかに

 夜の遅い時間帯に食事を食べると太りやすくなる原因の一端が、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院およびハーバード大学医学大学院のFrank Scheer氏らの研究により明らかになった。食事の時間帯が遅いと、食欲関連ホルモンや深部体温、脂肪貯蓄などに変化が起こることが関係しているという。詳細は「Cell Metabolism」に10月4日掲載された。  深夜に食事をすると肥満になりやすいことはよく知られているが、これまでその理由はよく分かっていなかった。Scheer氏は今回の研究結果を基に、「食事の時間帯を遅くし、それ以外の生活パターンが全て同じままだと、消費エネルギー量が減り、食欲が増進し、体重増加につながる脂肪組織の変化が現れる」と、そのメカニズムを解説。そして、肥満リスクを高めないための対策については、「早い時間帯に食事を取ることだ」と話している。

肥満はCOVID-19に伴う血栓症リスクに影響なし?―国内共同CLOT-COVID研究

 肥満は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化のリスク因子ではあるものの、COVID-19に伴う血栓症リスクへの影響は統計的に有意でないとするデータが報告された。三重大学医学部付属病院循環器内科の荻原義人氏らの研究であり、詳細は「Journal of Cardiology」に8月28日掲載された。  肥満は入院患者に発生する血栓症のリスク因子であることが以前から知られている。またCOVID-19が血液の凝固異常を引き起こし血栓症のリスクを上げることも、既に明らかになっている。ただし、肥満がCOVID-19に伴う血栓症のリスク因子であるか否かは明らかにされていない。荻原氏らはこの点について、COVID-19患者の血栓症や抗凝固療法に関する国内16施設の共同研究「CLOT-COVID研究」のデータを後方視的に解析し検討した。

ヒドロクロロチアジド、アモキシシリンなどに「使用上の注意」改訂指示

 厚生労働省は11月16日付で、ヒドロクロロチアジド含有製剤、アモキシシリン水和物含有製剤などに対し、使用上の注意の改訂指示を発出した。  今回の改訂指示は、ヒドロクロロチアジド含有製剤4剤の「重大な副作用」の項に「急性呼吸窮迫症候群」を、アモキシシリン水和物含有製剤6剤の「重要な基本的注意」の項のショックに関する問診の注意喚起にアナフィラキシー・アレルギー反応に伴う急性冠症候群などを、ロキサデュスタットの「重要な基本的注意」の項に定期的に甲状腺機能検査を促す注意を、イマチニブメシル酸塩の「重大な副作用」の項「血栓性微小血管症」に関する注意喚起を、それぞれ追記する内容となっている。詳細は以下。

非専門医が使える「糖尿病治療のエッセンス」2022年版/日本糖尿病対策推進会議

 わが国の糖尿病患者数は、糖尿病が強く疑われる予備群を含め約2,000万人いるとされているが、糖尿病の未治療者や治療中断者が少なくない。  そこで、糖尿病診療のさらなる普及を目指し、日本糖尿病学会をはじめとする日本糖尿病対策推進会議は、糖尿病治療のポイントをとりまとめて作成した『糖尿病治療のエッセンス(2022年版)』を制作し、日本医師会のホ-ムページより公開した。今回の改訂で5回目となる。