サイト内検索|page:39

検索結果 合計:895件 表示位置:761 - 780

761.

AZD9291、本邦でEGFR-TKI耐性NSCLCの優先審査に指定

 アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ガブリエル・ベルチ、以下、アストラゼネカ)は、EGFR T790M 変異陽性の非小細胞肺がん治療薬AZD9291が、2015年10月29日に厚生労働省より優先審査品目に指定されたと発表。 AZD9291は、「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(以下、EGFR-TKI)の使用中または使用後に病勢進行した、EGFR T790M変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を予定の適応として、2015 年8月に国内承認申請を行っている。米国および欧州でも承認申請中であり、米国食品医薬品局(FDA)からはBreakthrough Therapyに、欧州医薬品評価委員会(CHMP)からは迅速審査の指定を受けている。 AZD9291は、アストラゼネカが開発した1日1回投与の新規経口分子標的治療薬。既存のEGFR-TKIとは異なる新規の作用機序を有しており、EGFR活性化変異型EGFRに加え、EGFR-TKI治療耐性に関連するT790M遺伝子変異陽性EGFRを不可逆的に阻害する一方で、野生型EGFR に対しての阻害作用が弱くなるよう設計されている。 EGFR 遺伝子変異陽性のNSCLCは、既存のEGFR-TKIが有効な治療手段とされている。しかし、多くは治療開始1年~1年半ほどでEGFR-TKIに対する耐性が生じ、病勢が進行してしまう。これまでの研究から、EGFR-TKI耐性の約60%において、EGFR T790M耐性変異が生じていることが明らかになっている。アストラゼネカ株式会社のプレスリリースはこちら。

762.

目まぐるしく進歩する、肺がん治療

 2015年10月30日都内にて、「肺癌分子標的治療の変遷と最新治療」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である中西 洋一氏(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門内科学講座呼吸器内科学分野 教授)は、肺がん治療の変遷を中心に講演。免疫チェックポイント阻害薬の登場により、免疫療法が薬物療法の表舞台に立とうとしている現状に触れ、「将来的には判定方法や副作用への対応など、学会、国の方針自体を整備していく必要がある」と述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。「分子標的治療」そして、「免疫療法」へ 肺がんによる死亡は、2012年時点で年間7万1,518人と急増している。その背景にある要因の1つとして、若年女性の喫煙率上昇が挙げられていたことからも明らかであるように、これまで肺がんといえば、タバコに代表される多段階発がん説が基本であった。 しかし、近年たった1つの遺伝子異常が原因で起こる「driver gene mutation」が判明した。これを機にALKやEGFRといった遺伝子の異常を調べて、薬剤を選択する時代が到来。driver oncogene変異陽性患者の予後やQOLが改善したのは記憶に新しい。 さらに、がん免疫を蘇らせるPD-1阻害薬やPD-L1阻害薬といった「免疫チェックポイント阻害薬」の登場で、「免疫療法」が新しいアプローチとして脚光を浴びつつある。「免疫療法」が薬物療法の表舞台に 従来の抗がん剤治療は、がん細胞をターゲットにして攻撃力を高めてきた。これに対し、「免疫チェックポイント阻害薬」のアプローチは異なる。その作用は免疫力の向上だ。 通常、がん組織において免疫細胞は、がん細胞が伝達する「私は味方だ」という偽のシグナルにより攻撃命令を止めていた。つまり、「がんにより免疫が眠らされた」状態にあった。免疫チェックポイント阻害薬であるPD-1阻害薬やPD-L1阻害薬は、このシグナルを解除し、がん細胞を「敵」と正しく判断させて、がん細胞を攻撃する。つまり免疫力の賦活化が作用のポイントとなる。 免疫チェックポイント阻害薬は、複数の試験で有効中止に至るなど、大きな治療効果が期待されている。免疫療法が薬物療法の表舞台に立とうとしているのだ。今後の治療は? 学会、国の方針策定が必要 講演後のディスカッションでは、この免疫療法に関する質問が多数寄せられた。免疫チェックポイント阻害薬は全例調査の対象であり、がん拠点病院など、未知の副作用が起こった場合に他診療科と連携可能な病院が主な拠点となりそうだ。中西氏は「現時点で皮膚科を中心に投与されているが、今後の適応拡大に備え、副作用を積極的に拾うことや、院内に専門チームを設置するといった他診療科にわたる活動が必要だ」と述べた。実際に九州大学では、専門チームの導入にむけた活動が進んでいるようだ。 また、「PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬との有効性、安全性の差は?」との質問には、中西氏、および2剤の開発を手掛けるアストラゼネカ株式会社 専務の益尾氏の両名が回答した。 益尾氏は「2剤とも検討段階にあり、優劣は現時点では判断しづらい。PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬同士の併用やPD-L1阻害薬+他抗がん剤での併用など、さまざまな検討を行っている」とコメントした。中西氏は、「理屈で言うとPD-1抑制のほうが、がん細胞側のPD-L1抑制よりは危ないようにも思うが、各薬剤の用量設定、反応の強さで異なるため一概には判断できない」と述べた。また、PD-1やPD-L1の発現基準や判定方法がメーカー間でも異なっているため、フラットな状況下で比較できないのが現状課題、としたうえで「共通の判定基準を学会、国としても整えていかなければいけない」とコメントした。編集後記 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場など、肺がん治療は目まぐるしい発展と進歩を遂げている。しかし、新しい治療に合わせて社会インフラを整備することも必要とされそうだ。 本講演を行った中西氏が委員長を務める「肺がん医療向上委員会 」では、チーム医療の推進や肺がん患者の知識向上を目指した活動を継続している。われわれも患者さんに早期にベストな医療がもたらされるよう、メディアとして活動を応援していきたい。肺がん医療向上委員会はこちら

763.

常染色体優性多発性嚢胞腎〔ADPKD : autosomal dominant polycystic kidney disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義PKD1またはPKD2遺伝子の変異により、両側の腎臓に多数の嚢胞が発生・増大する疾患。■ 診断基準ADPKD診断基準(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎ガイドライン(第2版)」)1)家族内発生が確認されている場合(1)超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの(2)CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの2)家族内発生が確認されていない場合(1)15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合(2)16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合※除外すべき疾患多発性単純性腎嚢胞(multiple simple renal cyst)腎尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis)多嚢胞腎(multicystic kidney 〔多嚢胞性異形成腎 multicystic dysplastic kidney〕)多房性腎嚢胞(multilocular cysts of the kidney)髄質嚢胞性疾患(medullary cystic disease of the kidney〔若年性ネフロン癆 juvenile nephronophthisis〕)多嚢胞化萎縮腎(後天性嚢胞性腎疾患)(acquired cystic disease of the kidney)常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease)【Ravineの診断基準】(表)(家族歴がある場合の画像診断基準)画像を拡大する■ 疫学一般人口中に占める多発性嚢胞腎患者数(有病率)は、病院受診者数を基に調査した結果では一般人口3,000~7,000人に1人である。病院患者数に占める多発性嚢胞腎患者数は3,500~5,000人に1人、病院での剖検結果では被剖検患者約400人に1人である。メイヨー病院があるオルムステッド郡(米国)で1年間に新たに診断された患者数(発症率)は、一般人口1,000~1,250人あたり1人である。調査方法、調査年代、調査場所などにより、結果に差異が認められる。今後、治療薬が利用可能になると受療する患者数が増加し、有病率も増える可能性がある。■ 病因(図を参照)画像を拡大するPKD1またはPKD2遺伝子の変異による。PKD1は16p13.3、PKD2は4q21-23に位置する。PKD1とPKD2の遺伝子産物 polycystin 1(PC 1)とPC2はtransient receptor potential channel for polycystin(TRPP)subfamilyで、Caチャネルである。PC1とPC2は腎臓、肝臓、膵臓、乳腺の管上皮細胞、平滑筋と血管内皮細胞、脳の星状細胞に存在する。PCは腎臓上皮細胞、血管内皮細胞、胆管細胞などの繊毛に存在する。尿細管腔の内側に存在する繊毛は、尿細管液の流れに反応して屈曲する。屈曲によるshear stressはPCや繊毛機能に関係する蛋白を活性化し、細胞外と小胞体からCaイオンを細胞質内へ流入させ、細胞質内Ca濃度を高める。繊毛機能に関係する蛋白をコードする遺伝子異常が嚢胞性腎疾患をもたらすことが明らかとなり、繊毛疾患(ciliopathy)として概括されている。PKD細胞ではPC機能異常により、尿細管上皮細胞のCa濃度は低値である。細胞内Ca濃度が低下すると、cyclicAMP(cAMP)分解酵素(PDE)活性が低下し、またcAMPを産生するadenyl cyclase(AC)活性が高まり、細胞内cAMP濃度が高まる。その結果、cAMP依存性protein kinase A(PKA)機能が高まり、種々のシグナル経路(EGF/EGFR、Wnt、Raf/MEK/ERK、JAK/STAT、mTORなど)が活性化され細胞増殖が起きる。繊毛は細胞極性(尿細管構造形成)に関与しており、細胞極性機能を失った細胞増殖が起きる結果、嚢胞が形成される。また、PKAはcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)を刺激し、嚢胞内へのCl分泌を高める。腎尿細管(集合管)に存在するバソプレシン(AVP)V2受容体は、AVPの作用を受け、ACおよびcAMP、PKAを介して水透過性を高める。この過程でcAMPは嚢胞を増大させる。ソマトスタチンはACを抑制するので、治療薬として期待される。■ 症状多くの患者は30~40代までは無症状で経過する。1)腎機能低下腎機能の低下と総腎容積は相関し、総腎容積が3,000mLを超えると腎不全になる確率が高い。しかし、3,000mLを超えない場合でも腎不全になる場合もある。腎不全による症状(疲労、貧血、食欲低下、皮膚搔痒など)は、他疾患による腎不全症状と同じである。透析導入平均年齢は55歳位であったが、最近では60歳近くになっている。患者全体では70歳で約50%が終末期腎不全になる。2)高血圧血管内皮機能の異常により高血圧を来すと考えられ、腎機能が低下する以前から発症する。60~80%の患者が高血圧に罹患している。高血圧になっている患者では腎臓腫大と腎機能低下の進行が速い。3)圧迫症状腎臓や肝臓の嚢胞(60~80%の患者に嚢胞肝が併存)が腫大するにつれて、腹部膨満感、少し食べるとお腹が張る、前屈が困難になる、背腰部痛、腹部痛などの圧迫症状が出現する。腎嚢胞は平均年5~6%の割合で増大するので、加齢とともに症状は進行する。4)脳血管障害脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の発症頻度が高い。脳出血の原因として高血圧がある。脳動脈瘤の発生頻度(約8%)は一般より高い。5)血尿・尿路感染症血管の構築異常により血管が裂け、嚢胞内に出血し、疼痛を引き起こす。出血巣と尿路が交通すると血尿になる。また、変形した尿路のために尿路感染症を起こしやすい。嚢胞感染が起きると抗菌薬が嚢胞内に移行しにくいので難治性になることがある。6)その他尿路結石、鼠径ヘルニア、大腸憩室、心臓弁膜機能異常などの頻度が高い。■ 分類遺伝子の変異部位に応じて、PKD1とPKD2に分かれる。約85%はPKD1である。PKD1の方が症状は強く、腎不全になる平均年齢も若い。■ 予後生命予後に関するデータはない。腎機能に関しては症状の項参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断基準に準ずる。家族歴と画像検査(超音波、CT、MRIなど)で比較的正確に診断できるが、中には診断に迷う症例もあり、遺伝子診断が有用な場合もある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)トルバプタン(商品名: サムスカ)による治療AVP V2受容体拮抗薬トルバプタンは、ナトリウム利尿をあまり伴わない水利尿作用があり、低ナトリウム血症、体液貯留の治療薬として開発され、わが国では、2010年に心不全による体液貯留、2013年に肝硬変による体液貯留への治療薬として承認を受けている。2003年にモザバプタン(トルバプタンの前段階の薬)が、多発性嚢胞腎モデル動物に有効であると発表され、2007年から多発性嚢胞腎患者1,445名を対象として、トルバプタンの有効性と安全性を検討する国際共同治験が行われた。腎臓容積増大速度を約50%、腎機能低下速度を約30%緩和する結果が2012年秋に発表され、わが国において2014年3月に多発性嚢胞腎治療薬として承認され、臨床使用が始まっている。わが国での投薬適応基準は、総腎容積≧750mL、総腎容積増大速度≧年5%、eGFR≧15 mL/min/1.73m2などである。服用開始時には入院が必要で、その後月1回の血液検査で肝機能(5%程度に肝機能障害が発生する)、血清Na値(飲水不足で高Na血症になる)、尿酸値(上昇する)などのモニターが必要である。また、トルバプタンの処方医はWeb講習を受講し、登録する必要がある。2)高血圧の治療ARBが第1選択薬として推奨される。標準的降圧目標(120/70~130/80)とより低い降圧目標(95/60~110/75)との2群を5年間追跡したところ、より低い降圧群での総腎容積増大速度が低かったことが報告されているので、可能なら収縮期血圧を110未満にコントロールすることが望ましい。3)Na摂取制限Na摂取と腎嚢胞増大速度は相関するので、Na摂取は制限したほうがよい。4)飲水動物実験では飲水によって嚢胞の増大抑制効果が認められているが、人で飲水を奨励した結果では、逆に嚢胞増大速度とeGFR低下速度が増大したことが報告されている。水道水では、消毒用塩素の副産物ジクロロ酢酸に嚢胞増大作用があることが報告されている。多発性嚢胞腎患者では、腎機能が低下するにしたがい血清浸透圧とAVPが高くなることが報告されている。人における飲水効果には疑問があるが、脱水によるAVP上昇は避けるべきである。5)カフェインや抗うつ薬カフェインはPDEを抑制しcAMP濃度を上昇させ、嚢胞増大を促進する可能性がある。SSRI、三環系抗うつ薬などはAVPの放出を促進するため、多発性嚢胞腎では嚢胞増大を促進することが考えられる。6)開発中の薬剤(1)トルバプタン〔AVP V2受容体阻害薬〕は、大規模な臨床試験で腎嚢胞増大と腎機能悪化を抑制する効果が示され1)、わが国では2014年3月、カナダ、ヨーロッパでは2015年3月に認可が下りている。(2)ソマトスタチンアナログは小規模な臨床試験で肝臓と腎臓の嚢胞増大に有効と報告されているが、当局への申請を目的とする大規模な臨床試験は行われていない。(3)mTOR阻害薬であるシロリムスとエベロリムスの臨床試験が行われたが、副作用が強く臨床効果が認められなかった。7)腎動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)腎動脈を塞栓し、腎臓を縮小させることで症状の緩和をもたらす。すでに透析が導入され、尿量が1日500mL以下の患者が対象となる。8)腹腔鏡下腎嚢胞開創術、腎摘除術抗菌薬抵抗性または反復感染の原因になっている嚢胞が特定される場合、あるいは数個の嚢胞が特別に大きくなり圧迫症状が強い場合、腹腔鏡下に特定の嚢胞を開窓する手術が適応となる。出血が強い場合や、反復する嚢胞感染がある場合、患者に腎機能の予後をよく説明したうえで同意を前提として腎摘除術(腹腔鏡下腎摘除術も行われる)が選択肢となる。4 今後の展望1)最近の研究では、総腎容積増大速度が5%/年以下でも、腎不全に進行することが示されている。トルバプタン適応基準となった総腎容積増大速度≧5%/年の基準では、これら腎不全に進行する患者を除外することになる。2)トルバプタンの作用として利尿作用があるが、利尿作用を少なくする薬剤が望まれる。3)多発性嚢胞腎の進展機序は、cAMP-PKAを介する経路のみではないので、cAMP-PKA非依存性経路を抑制する薬剤開発が望まれる。4)肝臓嚢胞に有効なソマトスタチンアナログの臨床開発が望まれる。5 主たる診療科腎臓内科、泌尿器科、脳動脈瘤があれば脳外科(多発性嚢胞腎に関心の高い医師の存在)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報多発性嚢胞腎啓発ウエブサイト(杏林大学多発性嚢胞腎研究講座)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発性嚢胞腎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)常染色体多発性嚢胞腎(順天堂大学医学部泌尿器科)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ADPKD.JP (~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~/大塚製薬株式会社)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報PKDの会(患者と患者家族の会)1)Torres VE,et al.N Engl J Med.2012;367:2407-2418.2)東原英二 編著.多発性嚢胞腎~進化する治療最前線~.医薬ジャーナル;2015.3)Irazabal MV, et al. J Am Soc Nephrol.2015;26:160-172.公開履歴初回2013年04月18日更新2015年10月27日

764.

FDA、pembrolizumabを非小細胞肺がんに承認

 米国食品医薬品局(FDA)は2015年10月2日、抗PD-1抗体pembrolizumab(Keyrtruda, Merck&Co.)を進行非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として迅速承認した。PDL-L1のコンパニオン診断キットPD-L1 IHC 22C3 pharmDx(Daco North America Inc.)とともに用いることとなっている。 pembrolizumabの有効性は、550例の進行NSCLC患者による多施設、オープンラベル試験Keynote001のサブグループ解析として61例の患者で評価された。対象はプラチナベースの化学療法治療によって、またALKやEGFRなどの遺伝子変異がある場合は適切な分子標的薬によって治療されたにもかかわらず進行したNSCLCで、PD-L1発現陽性の患者。被験者はpembrolizumab10mg/kgを2週または3週ごとに投与された。その結果、患者の41%に腫瘍縮小がみられ、効果は2.1~9.1ヵ月持続した。 安全性は、Keynote001に登録された550例で評価された。頻度の高い有害事象は疲労感、食欲減退、息切れ、呼吸困難、咳であった。免疫関連有害事象の発症は肺、結腸、内分泌腺にみられ、まれなものとして皮疹、血管炎などがあった。また、発育中の胎児、新生児の影響から、妊娠中および授乳中の患者への投与は避けることとなっている。 pembrolizumabは当該適応のブレークスルー治療薬に指定され、優先審査の対象となっていた。FDAのプレスリリースはこちら

765.

AZ、2015年欧州がん学会においてオンコロジー研究の進展を発表

 アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、同社のグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンとともに、オーストリア、ウィーンで開催された2015年欧州がん学会(ECC)(2015年9月25~29日)において、AZD9291、durvalumab、olaparibのデータを含む19本の口頭およびポスター発表により、過去に発表された結果の確認・補完的解析ならびに新たなデータが提供されたと発表した。既治療NSCLC患者におけるAZD9291 既治療NSCLC患者を対象としたAURA第II相試験(AURA延長試験・AURA2試験)の解析データ(抄録 # 3113)により、過去の学会で報告されたAZD9291の結果が確認された。400超例の既治療EGFR T790M患者の統合データにより客観的奏効率 (ORR)は66%(95%信頼区間(CI): 61~71%)と示された。ORRは、人種、活性化変異タイプおよび脳転移の有無を問わずAZD9291治療を受けたすべてのサブグループにおいて概ね一貫していた。初期のPFS中央値は9.7ヵ月(95% CI: 8.3ヵ月~算出不能 [NC])、奏効期間(DoR)の中央値は算出不能であった(95% CI: 8.3ヵ月~NC)。 安全性プロファイルも過去のデータと合致していた。主な有害事象(AE)は下痢が42%(グレード3以上: 1%)および発疹が41%(グレード3以上: 1%)であった。高血糖、間質性肺疾患(ILD)およびQT延長の報告は過去に発表されたデータと合致していた。ILDおよび肺炎が3%(グレード3以上: 2%)、高血糖が1%(グレード3以上: 0%)、QT延長が4%(グレード3以上: 1%)であった。患者の4%が薬剤関連AEによりAZD9291を中止した(治験担当医による評価)。 AURA第II相試験の解析(抄録 # 3083)により、脳転移の有無を問わず、EGFR T790M変異陽性NSCLC患者におけるAZD9291の一貫した活性が示された。臨床症例によりAZD9291は脳における抗腫瘍活性を持つ可能性があることが示されている。BLOOM(NCT02228369)試験によりAZD9291が脳における抗腫瘍活性を有する可能性をさらに検討している。がん免疫治療プログラムの進展 メディミューンは、免疫治療が奏効する可能性が最も高い患者を同定するバイオマーカー研究の進展を明示。本研究は、腫瘍におけるPD-L1およびINF-γの発現増加と抗PD-L1抗体であるdurvalumabの効果に関連性があることを示している(抄録 # 15LBA)。この新研究はNSCLCに対するdurvalumab臨床開発プログラムの一環であり、本年のWCLCおよび他学会において検討されたPACIFIC(NCT02125461)、ATLANTIC(NCT02087423)、ARCTIC(NCT02352948)、MYSTIC (NCT02453282)およびNEPTUNE(NCT02542293)試験が含まれる。アストラゼネカ株式会社のプレスリリースはこちら

766.

EMPA-REG OUTCOME試験:試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)-421

 心血管イベントを主要アウトカムとするEMPA-REG OUTCOMEの試験結果が、2015年9月17日の欧州糖尿病学会(EASD2015、スウェーデン・ストックホルム)で発表され、New England Journal of Medicine誌のオンライン版に同時掲載された。日本国内で使用できる6種類のSGLT2阻害薬の中で、最も遅れて市場に登場したエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)の驚くべきデータであり、大きな話題を呼んでいる。 EMPA-REG OUTCOME試験 心血管イベントの既往がある成人の2型糖尿病患者で、BMI 45以下、eGFR 30mL/分/1.73m2以上の患者を対象として、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが心血管イベントに及ぼす影響を検討した試験である。北米、中南米、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパ、アフリカ、アジアの世界各地からの患者を登録し、プラセボ群、エンパグリフロジン10mg群、25mg群の3群にランダムに割り付けて実施された。主要アウトカム(primary outcome)として3つの複合心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の初発までの期間)、重要2次アウトカム(key secondary outcome)には、主要アウトカムに不安定狭心症による入院までの期間を加えた4つの複合心血管イベントを総合したのものを設定して実施された。3年間の観察期間で心血管死、全死亡が有意に減少 2010年から2013年までに7,028例が登録され、7,020例(平均63.1歳、男性72%、白人72%、アジア人22%、レニン・アンジオテンシン系阻害薬使用者81%、利尿薬使用者43%、スタチン使用者77%)が解析の対象となっている(プラセボ群2,333例、エンパグリフロジン群4,687例であり、10mg投与患者と25mg投与患者のデータが合算されている)。 中央値3.1年の観察期間における主要アウトカムはプラセボ群282例(12.1%)、エンパグリフロジン群490例(10.5%)であり、エンパグリフロジン群で有意な減少が確認された[ハザード比(HR)0.86、95%信頼区間:0.74~0.99、p=0.04]。また、重要2次アウトカムについては、プラセボ群333例(14.3%)、エンパグリフロジン群599例(12.8%)と有意差はないもの(HR:0.89、95%信頼区間:0.78~1.01、p=0.08)減少傾向にあることが確認された。わずか3年間の観察期間において、糖尿病治療薬の使用によって心血管死、全死亡が減少したことは驚くべきことであり、にわかには信じがたい(“too good to be true”)試験結果といえる。死亡率は減少しても個別のアウトカムとして、心筋梗塞は減少しない 個別のアウトカムについては、心血管死(HR:0.62、95%信頼区間:0.49~0.77、 p<0.001)、全死亡(HR:0.68、95%信頼区間:0.57~0.82、p<0.001)、心不全による入院(HR:0.65、95%信頼区間:0.50~0.85、p=0.002)について有意差が認められている。しかし、脳卒中については、非致死性脳卒中のみならず、致死性の脳卒中を含めた場合でも、ハザード比は1.24(95%信頼区間:0.92~1.67、 p=0.16)、1.18(95%信頼区間:0.89~1.56、 p=0.26)であり、統計学的には有意ではないものの増加する可能性を否定しえない。さらには、症候性の心筋梗塞(非致死性、致死性)、無症候性の心筋梗塞についてもHRはそれぞれ、0.87(95%信頼区間:0.70~1.09、p=0.22)、1.28(95%信頼区間:0.70~2.33、p=0.42)であり、心筋梗塞の減少が死亡率の減少に結び付くわけではない。サブグループ解析では高齢者、アジア人で有用性が高い傾向 主要アウトカムについてのサブグループ解析では、高齢者(65歳以上、p=0.01)、アジア人(p=0.09)、HbA1c 8.5%未満(p=0.01)、BMI 30未満(p=0.06)の群での有益性が高いと考えられた。併用薬剤に関しては、利尿薬の有無で主要アウトカムに差はなく(p=0.72)、ACE-IやARBの併用に関しても差はなかった(p=0.49)。eGFRについても60mL/分/1.73m2未満、60~90 mL/分/1.73m2未満、90mL/分/1.73m2以上の3群間で差異は認めなかった(p=0.20)。 EMPA-REG OUTCOMEの結果はなぜもたらされたのか… 心血管イベントの既往がある2型糖尿病に、3年間SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンを投与すると、死亡率が32%減少する(NNT:38/3年間)。心血管死も心不全による入院も有意に減少する。しかし、症候性の心筋梗塞は減少せず、無症候性の心筋梗塞や脳卒中は増加するかもしれない…。 EMPA-REG OUTCOMEの試験期間中、薬剤投与群ではHbA1cで約0.4~0.6%の低下が認められた。しかし、死亡の減少がわずかな血糖コントロールの改善とは考えられず、むしろ、SGLT2阻害薬による「体液量の減少」による「心不全の管理」が奏効した症例が一定の割合であったためなのではないかと思われる。 SGLT2阻害薬は近位尿細管に存在するSGLT2を選択的に阻害することで、尿糖の排泄量を増加させ、血糖値を降下させる薬剤である。浸透圧利尿により短期的にはレニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAS)系が活性化される。しかし、SGLT2はグルコースとNaを1:1で再吸収するため、SGLT2の阻害はNaの再吸収を低下させ、遠位尿細管に到達するNaClを増加させる。レニンはmacula densaに達するClが減少することでその分泌が刺激されるため、Clの増加はレニンの分泌を刺激しない可能性が想定される。腎臓におけるレニン活性には、浸透圧利尿による脱水とmacula densaにおけるCl濃度の双方が影響するため、SGLT2阻害薬がRAS系に及ぼす影響は短期投与と長期投与では異なり、個体差もあるのかもしれない。さらにSGLT2阻害薬は tubuloglomerular feedback(TGF)を回復させ、糸球体過剰濾過を改善させるとの報告もある。 Na代謝を介して循環血液量と血管抵抗性を調節することで血圧を規定しているRAS系、さらには、腎臓へ対しての複雑なSGLT2阻害薬の作用を明らかにすることが、EMPA-REG OUTCOME試験の結果を理解するための重要なポイントになるのかもしれない。【お知らせ】本コメントの公開当初、コメントの一部に「有意ではないが脳卒中と無症候性心筋梗塞は増加傾向」との表現がありました。「増加傾向」という表現を、“増加”と誤解された読者もおられましたので、より正確性を期すために、その部分について表現の変更をJ-CLEARからコメンテーターにお願いいたしました。(10月19日)臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)理事長 桑島 巌関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験:リンゴのもたらした福音(解説:住谷 哲 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)

767.

新世代MRA、糖尿病性腎症のアルブミン尿を有意に抑制/JAMA

 ACE阻害薬またはARBを服用中の糖尿病性腎症患者に対する、新世代の非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)finerenoneは、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を用量依存的に抑制することが示された。米国・シカゴ大学医学部のGeorge L. Bakris氏らが、23ヵ国148施設共同で、患者821例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、報告した。これまで慢性腎臓病患者において、RA系阻害薬へのステロイド系MRA追加は、アルブミン尿を抑制するが、有害事象リスクが高く活用されていなかった。JAMA誌2015年9月1日号掲載の報告。90日後のUACRを比較 研究グループは、23ヵ国(148ヵ所)の医療機関を通じ、高値(UACRが30~300mg/g未満)または非常に高値(同300mg/g以上、本検討では被験者の75%以上)のアルブミン尿を呈し、RA系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)を服用する糖尿病患者821例を対象に、finerenone併用の安全性と有効性を検討した。 研究グループは被験者を無作為に8群に分け、finerenoneを1日1回、1.25mg/日、2.5mg/日、5mg/日、7.5mg/日、10mg/日、15mg/日、20mg/日、プラセボをそれぞれ90日間投与した。 主要評価項目は、90日後 vs.ベースラインのUACR比とした。90日UACRは7.5mg群で0.79倍、20mg群で0.62倍に 被験者は、2013年6月~2014年2月の間に集められ、試験は2014年8月に完了した。1,501例がスクリーニングを受け、823例が無作為化を受け、821例が試験薬を服用した(1.25mg/日群96例、2.5mg/日群92例、5mg/日群100例、7.5mg/日群97例、10mg/日群98例、15mg/日群125例、20mg/日群119例、プラセボ94例)。被験者の平均年齢は64.2歳で、78%が男性だった。 結果、finerenoneは、用量依存的にUACRを抑制した。 主要評価項目である、プラセボ補正後のベースラインに対する90日UACR比は、7.5mg群が0.79(90%信頼区間:0.68~0.91、p=0.004)、10mg群が0.76(同:0.65~0.88、p=0.001)、15mg群が0.67(同:0.58~0.77、p<0.001)、20mg群が0.62(同:0.54~0.72、p<0.001)だった。 副次アウトカムの高カリウム血症による服用中止率は、7.5mg群2.1%、15mg群3.2%、20mg群1.7%で認められ、プラセボ群と10mg群では認められなかった。 推算糸球体濾過量(eGFR)の30%以上減少の発生や、有害事象・重度有害事象発生頻度は、プラセボ群とfinerenone群で同等だった。 結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、その他の有用薬と比較をすべきであろう」とまとめている。

768.

糖尿病性腎症の治療薬としての非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬に期待(解説:浦 信行 氏)-413

 JAMA誌に、非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬であるfinerenoneの尿アルブミン低減効果が報告された。 現時点では、糖尿病性腎症に対しては、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が第1選択薬であるが、ACE阻害薬やARB使用でも尿アルブミン低減が十分でない例が多く、より一層の腎保護効果、尿アルブミン低減効果を期待できる薬物療法が求められていた。ステロイド系MR拮抗薬であるスピロノラクトンやエプレレノンは、降圧効果だけでなく、ACE阻害薬やARBへの併用で一層の尿アルブミン低減効果を示したが、高K血症の誘発や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を引き起こすことが報告され、エプレレノンは糖尿病性腎症や中等度以上の腎機能障害では禁忌となっている。 ステロイド骨格を持たないMR拮抗薬finerenoneはバイエル薬品で開発されたが、すでにACE阻害薬かARBが使用されている糖尿病性腎症例へのfinerenoneの併用効果が、二重盲検試験で評価された。その結果は、有意な尿アルブミン低減効果が確認され、高K血症は2~3%程度にとどまり、eGFRの有意な変動はなかったというものである。 動物実験ではすでに、同等のNa利尿作用を示す量のエプレレノンに比較して、尿蛋白低減効果が有意に大で、臓器保護効果にも優れていたことが報告されていた。 本研究は多施設共同研究で、糖尿病性腎症においてACE阻害薬やARBとの併用効果をみた初めての試験である。尿アルブミンは最大で38%の減少効果の上乗せがあり、ACE阻害薬やARBは72.7%の例で最少使用量を超える量が使用されている。高K血症は、過去のステロイド系MR拮抗薬では8%や17%などと報告され、多いものでは52%という高い数字が示されている。高K血症が低率であった一因には、eGFRの低下がなかったことが挙げられる。ただし、ほぼ95%に高血圧が合併し、併用前の血圧値は138/77mmHg前後であったが、20mgの最大使用量でも収縮期血圧の低下作用が5mmHg程度にとどまっていた。尿アルブミン低減効果は降圧効果とは関連しないとも結論され、機序としては、ステロイド系MR拮抗薬のような脳内移行による中枢での降圧作用がないことが1つであるとしている。 この研究では、60%以上の例がeGFRで60mL/min/1.73m2以上のCKD1~2であり、もっと広い範囲で一層のデータの集積が必要ではあるが、わが国で新規透析導入の原因疾患の第1位である糖尿病性腎症の薬物療法において、大きな光明をもたらすことを期待する。

769.

NSCLCにおけるAZD9291の新たなエビデンス―世界肺がん学会

 アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、9月8日、2015年世界肺がん学会議において、上皮成長因子受容体変異陽性(EGFRm)進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療ならびに過去に治療歴を有する患者を対象とした、AZD9291の最新データを発表した。本データは、AURA第I相1次治療群と2本のAURA第II相試験によって得られたもの。  1次治療薬としてAZD9291を1日1回投与された60例の患者のうち、72% (95%CI : 58%~82%)は12ヵ月の時点においても増悪が認められなかった。全奏効率(ORR)は75%(95%CI:62%~85%)であった。また、現時点での最長奏効期間(DoR)は18ヵ月だが、さらに延長していることが示された。 さらに、治療歴を有するEGFRm T790M変異陽性患者を対象とした2つのAURA第II相試験(AURA延長試験とAURA2試験)のデータも発表された。これらの試験データは途中経過であるものの、過去に報告されたAZD9291の有効性および忍容性と一致するプロファイルが示されている。AURA延長試験(201例)においてORRは61%(95% CI: 54%~68%)、DoR中央値およびPFS中央値は算出不能(NC)。210例を対象としたAURA2試験においても一致した結果が得られ、ORRは71%(95% CI: 64%~77%)、DoR中央値は7.8ヵ月(95% CI: 7.1カ月~NC)、PFS中央値は8.6ヵ月(95% CI: 8.3カ月~9.7カ月) であった。  これら試験におけるAZD9291の安全性プロファイルは、既に報告されたプロファイルと合致していた。AURA1次治療を受けたすべての用量群における、主な有害事象 (AE) は発疹 (全グレード:77%、グレード3以上:2%) および下痢(全グレード:73%、グレード3以上:3%)であった。これらのAEは2つのAURA第II相試験においても同様に報告された (AURA延長試験:発疹[全グレード:40%、グレード3以上:1%]、下痢[全グレード:45%、グレード3以上:1%] AURA2試験:発疹[全グレード:42%、グレード3以上:1%]、下痢[全グレード:39%、グレード3以上:1%]) 。 AZD9291は、選択性の高い不可逆的阻害剤で、野生型EGFRには作用せず、EGFR活性化変異 と耐性遺伝子変異であるT790Mの双方を阻害する。アストラゼネカのプレスリリースはこちら。

770.

ベムラフェニブ、悪性黒色腫以外のBRAF V600変異陽性がんにも有効/NEJM

 ベムラフェニブ(商品名:ゼルボラフ)はBRAF V600キナーゼの選択的阻害薬で、BRAF V600変異陽性の転移性悪性黒色腫の標準治療である。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDavid M. Hyman氏らは、今回、本薬はBRAF V600変異陽性の他のがん腫にも有効であることを確認しことを報告した。近年、BRAF V600変異は悪性黒色腫以外のさまざまながん腫で発現していることがわかっているが、半数以上は変異陽性率が5%未満であるため疾患特異的な試験を行うのは困難だという。本研究では、「basket試験」と呼ばれる新たな試験デザインが用いられている。このアプローチでは、同じバイオマーカーの発現がみられる組織型の異なる多彩ながん腫において、抗腫瘍活性のシグナル伝達の検出と薬剤感受性の評価が同時に可能で、生物統計学的デザインの柔軟性が高いため希少がんでの抗腫瘍活性の同定に有用であり、新たな治療法を迅速に評価できるとされる。NEJM誌2015年8月20日号掲載の報告より。大腸がん、NSCLC、脳腫瘍などへの効果を第II相basket試験で評価 研究グループは、悪性黒色腫以外のBRAF V600変異陽性がんに対するベムラフェニブの有用性を評価する第II相試験を行った(F. Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、ECOG PSが0~2のBRAF V600変異陽性がん患者とし、悪性黒色腫のほか、全般に変異陽性率が高く疾患特異的な試験が可能と考えられる甲状腺乳頭がんや有毛細胞白血病は除外した。 被験者は、ベムラフェニブ960mgを1日2回経口投与された。大腸がんのうち、ベムラフェニブ単剤では効果が不十分と予測される患者には、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬セツキシマブを併用投与した。 主要評価項目は8週時の奏効率とし、副次評価項目には無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などが含まれた。 2012年4月11日~2014年6月10日までに、欧米の23施設に122例が登録された。内訳は、症例数が多い順に、大腸がんが37例(単剤:10例、併用:27例)、非小細胞肺がん(NSCLC)が20例、エルドハイム・チェスター病(ECD)/ランゲルハンス細胞性組織球症(LCH)が18例、原発性脳腫瘍が13例、胆管がんが8例、甲状腺未分化がんが7例、多発性骨髄腫が5例などであった。NSCLC、ECD/LCHで40%以上の奏効率、希少ながん腫にも奏効 NSCLCの評価可能19例のうち8例で部分奏効(PR)、8例で安定(SD)が得られ、8週時の奏効率は42%(95%信頼区間[CI]:20~67)であった。また、PFS中央値は7.3ヵ月(95%CI:3.5~10.8)、1年PFSは23%であった。OS中央値には未到達であったが、初期データに基づく1年OSは66%だった。 ECD/LCHの評価可能14例では、完全奏効(CR)が1例で達成され、PRが5例、SDが8例で、奏効率は43%であった。12例に病変の退縮が認められ、いずれの症例でも疾患関連症状が改善した。治療期間中央値は5.9ヵ月(範囲:0.6~18.6)で、治療中に病勢が進行した症例はなかった。また、PFS中央値には未到達で、初期データによる1年PFSは91%(95%CI:51~99)、1年OSは100%だった。 大腸がんのベムラフェニブ単剤の10例では奏効例はなく、PFS中央値は4.5ヵ月(95%CI:1.0~5.5)、OS中央値は9.3ヵ月(95%CI:5.6~未到達)であった。ベムラフェニブ+セツキシマブ併用の評価可能26例ではPRが1例で得られ、SDが18例であり、奏効率は4%(95%CI:<1~20)だった。PFS中央値は3.7ヵ月(95%CI:1.8~5.1)、OS中央値は7.1ヵ月(4.4~未到達)であった。 甲状腺未分化がんの7例中、CRが1例、PRが1例で得られた。また、未分化型の多形黄色星状細胞腫の4例中3例でPRが得られたほか、胆管がん、唾液腺導管がん、軟部組織肉腫、卵巣がんで1例ずつ奏効例が認められた。甲状腺未分化がん、胆管がん、卵巣がんの各1例は奏効期間が1年以上持続した。さらに、膠芽腫、未分化型上衣腫、膵がんなどで奏効基準を満たさない腫瘍の退縮がみられたが、解析の時点で多発性骨髄腫には奏効例は確認されなかった。 ベムラフェニブ単剤の安全性は、悪性黒色腫の既報のデータと類似していたが、症例数が少ないため比較はできない。最も高頻度に発現した有害事象は、皮疹(68%)、疲労(56%)、関節痛(40%)だった。 著者は、「BRAF V600変異は、すべてではないがいくつかのがん腫で治療標的となるがん遺伝子であることが示された」とし、「組織型にかかわらず、バイオマーカーに基づいて患者を選択するbasket試験は実行可能であり、がんの分子標的治療の開発ツールとして役立つ可能性があるが、多くの場合、同定された有望な抗腫瘍活性を確証するためにさらなる試験を要すると考えられる」と指摘している。

771.

特発性肺線維症(IPF)初の分子標的薬ニンテダニブ発売

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃、以下、日本ベーリンガーインゲルハイム)は8 月31 日、チロシンキナーゼ阻害剤/抗線維化剤ニンテダニブエタンスルホン酸塩(商品名:オフェブ カプセル100mg、同カプセル150 mg、以下オフェブ)を、特発性肺線維症の効能・効果で発売したと発表。 オフェブは特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis: IPF)における7 年ぶりの新薬であるとともに初の分子標的薬。肺線維症の発症機序への関与が示唆されている増殖因子受容体、特に血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)および血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を標的にする。 オフェブは第III相国際共同臨床試験(INPULSIS-1 試験、INPULSIS-2試験)において、一貫して主要評価項目である努力肺活量(FVC)の年間減少率をプラセボに比べて統計学的に有意に抑制することを示した。また、中央判定された急性増悪の発現リスクを抑制したことが示されている。 本年7 月、オフェブはその治療価値が評価され、米国胸部学会(ATS)、欧州呼吸器学会議(ERS)、日本呼吸器学会(JRS)、南米胸部学会(ALAT)の4 学会が合同で策定し、2011 年の公表以来4 年ぶりに改定された最新の国際治療ガイドライン「特発性肺線維症の治療」において、IPF の推奨治療薬の一つとして新たに追加された。 特発性肺線維症(IPF)は慢性かつ進行性の経過をたどり、最終的には死に至る肺線維化疾患だが、現時点で利用できる治療選択肢は限られている。IPF 患者の有病率は、世界で100,000 人あたり14~43 人と推定される。日本ベーリンガーインゲルハイムのプレスリリースはこちら(PDFがダウンロードされます)

772.

Vol. 3 No. 4 高尿酸血症のコントロールと治療薬

土橋 卓也 氏製鉄記念八幡病院はじめに高尿酸血症は、痛風関節炎や痛風腎など尿酸塩沈着症としての病態とは別に高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム(MetS)、慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣病と密接に関連することが明らかとなってきた。さらに最近の知見より、高尿酸血症が高血圧や糖尿病発症のリスクとなること、尿酸低下療法によって心血管イベントが抑制されることが報告されるようになった。本稿では、心血管疾患リスクとしての尿酸管理の意義と尿酸降下薬を用いた治療方針について概説する。1. 生活習慣病としての高尿酸血症の実態日本人における高尿酸血症の頻度に関して、尿酸値>7mg/dLで定義される高尿酸血症の頻度は、成人男性で21.5%、女性では50歳未満で1.3%、50歳以降で3.7%と報告されている1)。また、高尿酸血症は高血圧者に高頻度に合併することが知られている。われわれが調査した降圧薬服用者667名(平均年齢66.4歳)における高尿酸血症(尿酸値>7mg/dLまたは尿酸低下薬服用者)の頻度は男性で40.6%、女性で8.6%と男性で高頻度に認められ、特に使用降圧薬が3剤以上の者では37.3%と高頻度であった2)。この要因として、3剤以上の降圧薬を必要とする者は肥満やMetS、CKDなど高尿酸血症を合併する病態が多いこと、尿酸値を上昇させる利尿薬の使用頻度が高いことが挙げられる。すなわち、高尿酸血症は他の危険因子とともに心血管疾患リスクが重積した病態を形成することが多いことから、心血管疾患予防のためのtotal risk managementの一環として管理すべき疾患といえる。2. 高尿酸血症の治療(1) 治療方針日本痛風・核酸代謝学会による高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインが提唱する高尿酸血症の治療方針では、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合、肥満の是正、飲酒制限、プリン体制限などの食事療法、運動など生活習慣修正を指導することが記載されている。痛風関節炎や痛風結節を認めず、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、MetS、CKDなどを合併する例においては、尿酸値が8mg/dL以上に上昇した場合、尿酸低下療法を考慮する。(2) 病型分類に基づく薬剤選択高尿酸血症は、その機序から産生過剰型と排泄低下型に病型分類される(本誌p.36図を参照)に示すように、病型分類を行うためには、尿酸産生量(尿中尿酸排泄量)と尿酸クリアランスを評価する必要がある3)。われわれが、高尿酸血症合併高血圧患者を対象として、24時間家庭蓄尿を用いて病型分類を行ったところ、MetS合併例を含め、約9割が排泄低下型であった4)。日常診療において24時間蓄尿や外来60分法による評価を行うのは困難である。われわれは、日常診療で使用可能な病型分類の指標として随時尿中尿酸/クレアチニン比(UA/Cr)を用いており、随時尿中UA/Crが0.5未満を示す場合、排泄低下型と判断してよいと考えている5)。(3) 尿酸降下薬の選択尿酸生成抑制薬のアロプリノールは尿酸産生過剰型に適した薬剤であり、尿路結石の既往など尿酸排泄促進薬が使用できない症例においても使用される。ただ、腎機能の低下に応じて使用量を減じる必要があり、クレアチニンクリアランス(Ccr)50mL/分以下では100mg/日、30mL/分以下では50mg/日とすべきである。最近発売されたフェブキソスタットやトピロキソスタットは、腎機能低下例においても用量調節が必要なく、使用しやすい薬剤といえる。前述のように高血圧合併高尿酸血症患者の病型はほとんど排泄低下型であることから、ベンズブロマロンなどURAT1阻害薬がより有用であることが多い。実際、アロプリノールを投与中の高血圧患者で随時尿中UA/Crが0.5未満を示し、排泄低下が疑われた15症例において薬剤を排泄促進薬のベンズブロマロンに切り替えたわれわれの検討では、随時尿中UA/Crは0.31から0.51へと有意に上昇し、血清尿酸値も7.3mg/dLから4.7mg/dLへと有意に低下した6)。ベンズブロマロン服用者(平均用量39mg/日)はアロプリノール服用者(平均用量106mg/日)に比し、血清尿酸値が低く(5.6±1.1 vs. 6.6±0.8mg/dL、p<0.01)ガイドラインが提唱する管理目標値≦6mg/dLの達成頻度も61.7%とアロプリノール服用者(18.2%)より高かった2)(本誌p.38図を参照)。これらの結果は、高血圧合併高尿酸血症の治療において尿酸排泄促進薬であるベンズブロマロンがより有用であることを示唆している。ただベンズブロマロンは尿酸排泄量が増加し、尿路結石のリスクが高くなるため、尿のアルカリ化が必要であること、腎機能低下例では作用が減弱するため、アロプリノールを使用するか、両者の少量併用を検討する必要があることに留意する。(4) 尿酸コントロールの目標高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、尿酸降下薬による治療の目標値として血清尿酸値6.0mg/dL以下に維持することが望ましいとしている(本誌p.35図を参照)。確かに痛風患者の再発予防の観点からは6.0mg/dL以下にすることの根拠が示されているが7)、心血管疾患リスクとしての管理目標は明確でない。本態性高血圧患者を対象とした治療介入試験であるLIFE試験において、血清尿酸値は全体の平均5.6±1.3mg/dLからアテノロール群で0.8±1.2mg/dL、ロサルタン群で0.3±1.2mg/dL上昇しているが、6.0mg/dL前後であっても血清尿酸値上昇により心血管病発症リスクが増加することが示されており8)、高血圧患者における積極的な尿酸管理の重要性が示唆される。心臓手術を受けた高尿酸血症患者(血清尿酸値≧8mg/dL)141例を対象として、フェブキソスタット群とアロプリノール群に無作為に割り付け、血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標として治療を行ったNU-FLASH試験における投与6か月後の血清尿酸値6.0mg/dL以下達成率は、フェブキソスタット群で95.8%と、アロプリノール群の69.6%に比し有意に高率であった9)。さらに、フェブキソスタット群では、投与1か月後からeGFRの有意な増加を認めている。このことは、血清尿酸値6.0mg/dL以下を目指した治療が腎機能保持の観点からも有用であることを示唆している。一方、尿酸は強力な抗酸化作用を有していることから、低値であることも心血管疾患リスクとなる報告が散見されており10)、“the lower, the better”とはいえない可能性がある。現時点では血清尿酸値4~6mg/dLが最もリスクの低い値と推測される。女性は血清尿酸値が男性に比し低値であるが、心血管疾患リスクとしての関与は男性より強いことが報告されていることから11, 12)、女性においてはより厳格なコントロールが望ましい可能性がある。おわりに高尿酸血症の心血管疾患リスクとしての意義を認識し、他のリスク因子とともに管理することが重要である。今後、心血管疾患リスクとしての高尿酸血症の治療開始基準および管理目標について検討する臨床試験が望まれる。文献1)冨田眞佐子ほか. 高尿酸血症は増加しているか?性差を中心に. 痛風と核酸代謝 2006; 30: 1-5.2)榊美奈子ほか. 降圧薬服用者における尿酸管理の現状. Gout and Nucleic Acid Metabolism 2013; 37:103-109.3)日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版, メディカルレビュー社,東京, 2010.4)宮田恵里ほか. 高血圧患者における高尿酸血症の実態と尿酸動態についての検討. 血圧 2008; 15: 890-891.5)大田祐子ほか. 高尿酸血症合併高血圧患者における高尿酸血症の慣習的病型分類の有用性について. 痛風と核酸代謝 2012; 36: 9-13.6)大田祐子ほか. 高尿酸血症合併高血圧患者におけるアロプリノールからベンズブロマロンへの変更の有用性. 血圧2008; 15: 910-912.7)Shoji A et al. A retrospective study of the relationship between serum urate level and recurrent attacks of gouty arthritis; Evidence for reduction of recurrent gouty arthritis with antihyperuricemic therapy. Arthritis Rheum 2004;51: 321-325.8)Hoieggen A et al. LIFE Study Group: The impact of serum uric acid on cardiovascular outcomes in the LIFE study. Kidney Int 2004; 65: 1041-1049.9)Sezai A et al. Comparison of febuxostat and allopurinol for hyperuricemia in cardiac surgery patients (NU-FLASH Trial). Circ J 2013; 77: 2043-2049.10)Verdecchia P et al. Relation between serum uric acid and risk of cardiovascular disease in essential hypertension ; PIUMA study. Hypertension 2000; 36: 1072-1078.11)Iseki K et al. Significance of hyperuricemia as a risk factor for developing ESRD in a screened cohort. Am J Kidney Dis 2004; 44: 642-650.12)Holme I et al. Uric acid and risk of myocardial infarction, stroke and congestive heart failure in 417,734 men and women in the Apolipoprotein MOrtality RISk study (AMORIS). J Intern Med 2009; 266: 558-570.

773.

糖尿病性腎症に合併する高K血症、patiromerが有効/JAMA

 糖尿病性腎症で高カリウム血症の合併がありRAAS阻害薬を服用している患者に対し、patiromerを4.2~16.8g、1日2回投与することで、血中カリウム値は有意に低下し、52週にわたり維持されたことが報告された。米国・シカゴ大学のGeorge L. Bakris氏らが、306例の患者を対象に行った、patiromerの用量範囲探索、無作為化非盲検第II相試験「AMETHYST-DN」の結果、報告した。JAMA誌2015年7月14日号で発表した。軽度/中程度群ごとに3通りの投与量について、4週間後の変化を比較 試験は2011年6月~2013年6月にかけて、ヨーロッパ48ヵ所の医療機関を通じて、2型糖尿病患者306例を対象に行われた。被験者のeGFRは15~60mL/分/1.73m2で、血中カリウム値は5.0mEq/L超であり、治験開始前からRAAS阻害薬を服用していた。 ベースライン時の血中カリウム値に応じて、被験者を軽度または中程度高カリウム血症に分類。patiromerの投与量について各群の被験者を無作為に3群に分け、軽度群では4.2g、8.4g、12.6gを、中程度群では8.4g、12.6g、16.8gを、いずれも1日2回投与した。 主要有効性エンドポイントは、ベースラインから4週時(または初回patiromer滴定)の平均血中カリウム値の変化だった。また副次有効性エンドポイントは、52週間の平均血中カリウム値の変化などとした。主要安全性エンドポイントは、52週間の有害事象であった。いずれの投与量でも血中カリウム値が有意に低下 結果、主要エンドポイントの平均血中カリウム値(最小二乗平均減少幅)は、軽度群の4.2g群が0.35(95%信頼区間[CI]:0.22~0.48)mEq/L、8.4g群が0.51(0.38~0.64)mEq/L、12.6g群が0.55(0.42~0.68)mEq/Lだった。 中程度群では、8.4g群が0.87(0.60~1.14)mEq/L、12.6g群が0.97(0.70~1.23)mEq/L、16.8g群が0.92(0.67~1.17)mEq/Lだった(ベースライン時からの変化に関するp<0.001)。 4~52週にかけて、毎月の血中カリウム値の有意な低下は維持された。 治療に関連する最も多く認められた有害事象は、低マグネシウム血症(7.2%)、消化管関連では便秘(6.3%)だった。低カリウム血症(<3.5mEq/L)は5.6%だった。

774.

高齢者は血圧低下が腎機能低下のリスクに

 ベルギー・ルーヴァンカトリック大学のBert Vaes氏らは、高齢者における静的および動的な血圧と腎機能の変化の関係について検討した。その結果、チャールソン併存疾患指数(mCCI)およびベースライン時の腎機能・血圧を調整すると、すべての年齢層において、血圧の経年的低下が腎機能低下における強力な危険因子であることが示された。BMJ open誌2015年6月30日号に掲載。 著者らは、60歳以上の患者を3つの年齢層で分け、10年間(2002~2012年)の後ろ向きコホート研究を実施した。この研究は、定期的に患者データを提出している55医院の一般開業医97名によるプライマリケア登録ネットワークにより実施された。 すべての患者(8,636例)において、2002年中に少なくとも1回血圧を測定し、その後少なくとも4回の血清クレアチニン測定を行った。ベースライン時にmCCIを登録し、2002年以降、収縮期血圧(SBP)・拡張期血圧(DBP)・脈圧の変化を算出した。腎機能の変化とベースライン時血圧および血圧変化との関係については、線形およびロジスティック回帰分析を用いて検討した。主要アウトカムである推算糸球体濾過量(eGFR、MDRD:Modification of Diet in Renal Disease equation)の傾きは最小二乗法により算出した。また、急速な腎機能低下は3mL/分/1.73m2/年以上と定義した。 主な結果は以下のとおり。・1,130例(13.1%)で急速な腎機能低下が認められた。・60~79歳の参加者では、ベースライン時のSBPと脈圧の高さが腎機能低下と関連した。・80歳以上の参加者では、ベースライン時の血圧と腎機能低下に相関関係はみられなかった。・SBPおよび脈圧の年間1mmHg以上の減少は、ベースライン時の血圧とmCCIに関係なく、すべての年齢層で急速な腎機能低下の強力な危険因子であった。・60~79歳の参加者では、DBPの低下も強力な独立予測因子であった。

775.

特発性肺線維症治療薬ニンテダニブが承認

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃)は2015年7月3日、チロシンキナーゼ阻害剤/抗線維化剤ニンテダニブエタンスルホン酸塩(商品名:オフェブ カプセル100mg、同カプセル150mg)が特発性肺線維症の効能・効果で製造販売承認を取得したと発表した。  ニンテダニブは特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis:IPF)の治療を目的としてベーリンガーインゲルハイムが開発したIPFに対する初の分子標的薬。肺線維症の発症機序への関与が示唆されている増殖因子受容体、特に血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)および血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を標的とする。 ニンテダニブは第III相国際共同臨床試験(INPULSIS-1試験、INPULSIS-2試験)において、一貫して主要評価項目である努力肺活量(FVC)の年間 減少率をプラセボに比べて統計学的に有意に抑制することを示した。 特発性肺線維症(IPF)は慢性かつ進行性の経過をたどり、最終的には死に至る肺線維化疾患だが、現時点で利用できる治療選択肢は限られている。IPFは肺組織の進行性の瘢痕化と経時的な呼吸機能の低下を特徴とし、時間経過と共に肺の機能が失われ、主要臓器に十分な酸素が供給できなくなる。有病率は、世界で100,000人あたり14~43人と推定される。オフェブの概要商品名:オフェブカプセル100mg、オフェブカプセル150mg効能・効果:特発性肺線維症用法・用量:通常、成人にはニンテダニブとして1回150mgを1日2回、朝・夕食後に経口投与する。なお、患者の状態によりニンテダニブとして1回100mgの1日2回投与へ減量する。日本ベーリンガーインゲルハイム プレスリリースhttp://www.boehringer-ingelheim.jp/news/news_releases/press_releases/2015/150703.html

776.

【JSMO2015見どころ】消化器がん

 2015年7月16日(木)から3日間にわたり、札幌にて、第13回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち、6月25日、日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催され、今年のJSMOで取り上げられる各領域のトピックスや、期待が高まるがん免疫療法などについて、それぞれ紹介された。 消化器がんについては、小松 嘉人氏(北海道大学病院 腫瘍センター)が、大腸がんを中心にJSMOでの見どころや注目演題を紹介した。 小松氏は、本学会での大腸がんにおける注目点として4つを挙げ、それぞれの主な演題を紹介した。1)バイオマーカー・遺伝子検査など 大腸がん治療における分子標的薬には血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を標的とするベバシズマブと上皮成長因子(EGFR)を標的とするセツキシマブとパニツムマブがある。KRAS変異型大腸がんには後者(抗EGFR抗体薬)は効果を得られない可能性が高いため、ベバシズマブが投与される。一方、KRAS野生型大腸がんの1次治療においてはどちらを使用すべきか、現在、いくつかの比較試験が実施されているが、まだ答えが出ていない。 また、KRAS変異だけではなく、NRAS変異といった新規のRAS変異のある患者も抗EGFR抗体薬の効果が期待できないことがわかってきている。大腸がんのRAS野生型は約50%であり、抗EGFR抗体薬の投与前に、KRAS/NRAS遺伝子変異の有無を測定することが推奨されている。・シンポジウムゲノム解析などを用いた大腸がん分子標的治療薬の最適化日時:2015年7月18日(土)14:30~16:30会場:Room3(ロイトン札幌3F)2)新薬:TAS-102、レゴラフェニブなど わが国で大腸がんに使用できる薬剤は、ドラッグラグの問題も徐々に改善され、レゴラフェニブでは米国での承認の翌年に承認された。また、TAS-102は昨年、世界に先駆けて日本で承認された。JSMOでは、これらの新薬のほか、FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法の臨床成績について発表される。・インターナショナルセッションISS1-1 大腸がん日時:2015年7月16日(木)12:30~13:20会場:Room5(ロイトン札幌2F)・オーラルセッション大腸3 TAS-102/レゴラフェニブ日時:2015年7月18日(土)9:30~10:30会場:Room5(ロイトン札幌2F)・オーラルセッション大腸2 FOLFOXIRI+ベバシズマブ日時:2015年7月16日(木)15:00~15:40会場:Room5(ロイトン札幌2F)3)国際共同臨床試験への参画 日本も参画した、切除不能進行・再発大腸がんに対する1次治療(フッ化ピリミジン系製剤+オキサリプラチン+ベバシズマブ)後の2次治療としてのFOLFIRI±ラムシルマブの国際共同第III相試験(RAISE試験)の結果について、プレナリーセッションで発表される。・プレナリーセッションPS-1 RAISE: A Randomized, Double-Blind, Multicenter Phase III Study of Irinotecan, Folinic Acid, and 5-Fluorouracil (FOLFIRI) plus Ramucirumab (RAM) or Placebo (PBO) in Patients (pts) with Metastatic Colorectal Carcinoma (mCRC) Progressive During or Following First-Line Combination Therapy日時:2015年7月17日(金)14:05~15:20会場:Room1(ニトリ文化ホール)・インターナショナルセッションISS1-1-1 PF-05212384 + irinotecan Phase II study in metastatic colorectal cancer (mCRC): B2151005 Japanese lead-in-cohort (J-LIC)ISS1-1-4 標準治療に不応・不耐な転移性大腸癌に対するTAS-102 の国際共同第III相試験(RECOURSE 試験)における地域別サブセット解析結果日時:2015年7月16日(木)12:30~13:20会場:Room5(ロイトン札幌2F)4)New Paradigm(免疫チェックポイント阻害薬) 現在、がん治療で期待されている免疫チェックポイント阻害薬は、消化器がんにおいても検討されている。JSMOでは、胃がんに対するニボルマブの第III相試験(現在進行中)などが紹介される予定である。・インターナショナルセッションISS2-1-3 ONO-4538(ニボルマブ)第III相試験(切除不能な進行又は再発胃がんに対する多施設共同二重盲検無作為化試験)日時:2015年7月17日(金)8:30~9:30会場:Room3(ロイトン札幌3F)・インターナショナル・シンポジウムISY4-6 切除不能進行・再発胃癌における抗PD-1抗体MK-3475(Pembrolizumab)のphase Ib試験日時:2015年7月17日(金)9:30~11:30会場:Room3(ロイトン札幌3F)・インターナショナル・シンポジウムISY5-1 Biologics and immunotherapy in metastatic colorectal cancerISY5-2 New molecular targeting agents for colorectal cancer 日時:2015年7月17日(金)16:00~17:30会場:Room3(ロイトン札幌3F)【第13回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2015年7月16日(木)~18日(土)■会場:ロイトン札幌・ホテルさっぽろ芸文館・札幌市教育文化会館■会長:秋田 弘俊氏(北海道大学大学院医学研究科 腫瘍内科学分野 教授)■テーマ:難治がんへの挑戦 医学・医療・社会のコラボレーション第13回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

777.

【JSMO2015見どころ】肺がん

 2015年7月16日(木)から3日間にわたり、札幌にて、第13回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち、6月25日、日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催され、今年のJSMOで取り上げられる各領域のトピックスや、期待が高まるがん免疫療法などについて、それぞれ紹介された。 肺がんについては、大泉 聡史氏(北海道大学大学院医学研究科 呼吸器内科学分野)より、トピックスや注目演題などが紹介された。 大泉氏は、肺がん領域で取り上げられるトピックスとして4つを挙げ、それぞれの主な注目演題を紹介した。1)免疫チェックポイント阻害薬の非小細胞肺がんへの応用肺扁平上皮がんの2次治療におけるニボルマブ対ドセタキセルの第III相試験(Checkmate-017試験)で、ニボルマブの有用性が確認された。わが国でも早く承認されることが期待されている。・プレナリーセッションPS-2 A Phase III Study (CheckMate 017) of Nivolumab (NIVO; anti-programmed death-1) vs Docetaxel (DOC) in Previously Treated Advanced or Metastatic Squamous (SQ) cell Non-small Cell Lung Cancer (NSCLC)日時:2015年7月17日(金)14:05~15:20会場:Room1(ニトリ文化ホール)・オーラルセッション呼吸器7 免疫チェックポイント阻害薬による肺がん治療日時:2015年7月18日(土)8:00~9:30会場:Room2(ロイトン札幌3FロイトンホールA)2)EGFR遺伝子変異陽性肺がんのEGFR-TKI耐性時の治療戦略EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に抵抗性となる患者の5~6割がT790Mという遺伝子変異である。これを標的とする新規EGFR-TKIのAZD9291の臨床研究結果が報告されているが、JSMOでは日本人集団のみのデータが報告される予定である。・オーラルセッション呼吸器1 EGFR-TKI 耐性日時:2015年7月16日(木)12:30~13:40会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)3)わが国で開発された進行期肺扁平上皮がんの新規治療法進行再発肺扁平上皮がんの初回治療では、今までシスプラチン+ドセタキセルが標準治療であった。今回、標準治療と新たな治療法であるネダプラチン+ドセタキセルについて、西日本がん研究機構(WJOG)による第III相試験で比較したところ、ネダプラチン+ドセタキセルの有用性が認められた。・オーラルセッション呼吸器5 肺がんの新たなる治療戦略日時:2015年7月17日(金)9:30~10:30会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)4)肺がんの遺伝子学的解析の最前線・インターナショナルセッション2-2肺がん(2)肺がんの遺伝子学的解析の最前線日時:2015年7月17日(金)8:30~9:30会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)【第13回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2015年7月16日(木)~18日(土)■会場:ロイトン札幌・ホテルさっぽろ芸文館・札幌市教育文化会館■会長:秋田 弘俊氏(北海道大学大学院医学研究科 腫瘍内科学分野 教授)■テーマ:難治がんへの挑戦 医学・医療・社会のコラボレーション第13回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

778.

シタグリプチン追加で重症心血管イベント増加せず/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、通常治療にDPP-4阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)を併用しても、重症心血管イベントは増加しないことが、米国・デューク大学のJennifer B Green氏らが実施したTECOS試験で示された。多くの2型糖尿病治療薬が承認されているが、一部の薬剤で心血管系の長期的な安全性に関して疑問が生じているという。米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)は、新薬に対し、血糖降下作用だけでなく臨床的に重要な心血管系の重篤な有害事象の発生率を上昇させないことを示すよう求めている。NEJM誌オンライン版2015年6月8日号掲載の報告より。上乗せの安全性の非劣性を検証 TECOS試験は、心血管疾患を併発した2型糖尿病患者における通常治療へのシタグリプチンの上乗せの長期的な安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化非劣性試験(Merck Sharp & Dohme社の助成による)。 対象は、年齢50歳以上、1~2剤の安定用量の経口血糖降下薬(メトホルミン、ピオグリタゾン、スルホニル尿素薬)またはインスリン製剤により糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が6.5~8.0%に保たれている患者とした。併存する心血管疾患は、重症冠動脈疾患、虚血性脳血管疾患、アテローム性末梢動脈硬化疾患とした。 被験者は、通常治療にシタグリプチン(100mg/日またはeGFR値が≧30、<50mL/分/1.73m2の場合は50mg/日)またはプラセボを併用する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。血糖降下薬は、個々の患者が適切な目標血糖値を達成できるようオープンラベルでの投与が推奨された。 主要複合アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院とした。シタグリプチン群の両側検定による相対リスクのハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.3を超えない場合に非劣性と判定した。主要複合アウトカム発生率:11.4 vs. 11.6% 2008年12月~2012年7月までに、38ヵ国673施設に1万4,671例(intention-to-treat[ITT]集団)が登録され、シタグリプチン群に7,332例、プラセボ群には7,339例が割り付けられた。ベースラインの平均HbA1c値は7.2±0.5%、2型糖尿病の平均罹病期間は11.6±8.1年であり、フォローアップ期間中央値は3.0年だった。 HbA1c値は、4ヵ月時にシタグリプチン群がプラセボ群よりも0.4%低くなったが、この差はその後の試験期間を通じて徐々に小さくなった。全体のシタグリプチン群の最小二乗平均差は-0.29%(95%信頼区間[CI]:-0.32~-0.27)であった。 主要複合アウトカムのイベント発生は、シタグリプチン群が839例(11.4%、4.06/100人年)、プラセボ群は851例(11.6%、4.17/100人年)であった。非劣性のper-protocol(PP)解析では、シタグリプチン群のプラセボ群に対する非劣性が確認され(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.88~1.09、p<0.001)、優越性に関するITT解析(0.98、0.89~1.08、p=0.65)では有意な差を認めなかった。 副次複合アウトカムである心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の発生も、PP解析で非劣性であり(HR:0.99、95%CI:0.89~1.11、p<0.001)、ITT解析では優越性を認めなかった(0.99、0.89~1.10、p=0.84)。また、ITT解析では、心不全による入院(1.00、0.83~1.20、p=0.98)、心不全による入院または心血管死(1.02、0.90~1.15、p=0.74)、全死因死亡(1.01、0.90~1.14、p=0.88)も、シタグリプチン群での発生が多いことはなかった。 一方、非心血管アウトカムでは、感染症、がん、腎不全、重症低血糖の発生率は両群間に差がなかった。急性膵炎の頻度はシタグリプチンで高かった(0.3 vs. 0.2%)が、有意な差はなかった(ITT解析:p=0.07、PP解析:p=0.12)。膵がんはシタグリプチン群で少なかった(0.1 vs. 0.2%)が、有意差は認めなかった(p=0.32、p=0.85)。 また、重篤な有害事象(消化器、筋骨格・結合組織、呼吸器など)の発生率には、両群間に臨床に関連する差はみられなかった。 著者は、「シタグリプチンは、心血管疾患のリスクが高い多彩な病態の2型糖尿病患者に対し、心血管合併症を増加させずに使用可能と考えられるが、これらの結果は、より長期の治療やより複雑な併存疾患を有する患者では、ベネフィットとともにリスクの可能性も排除できないことを示唆する」と指摘している。

779.

Dr.山田のゆるい糖質制限 -医学的根拠と実践方法-

第1回 いま、糖質制限食が必要です 第2回 すでに効果と安全性は認められています第3回 日本糖尿病学会は昔から認めています 第4回 三大栄養素比率にこだわる必要はありません第5回 糖質制限は批判されるべきものではありません第6回 糖質制限はこうして実践できます 糖尿病食事療法の新たな選択肢として脚光を浴びる糖質制限。まだ一部には、腎機能への悪影響などを危惧する懐疑的な意見があるのも事実です。この番組では北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟先生が最新のエビデンスを科学的に分析し、糖質制限に対するさまざまな危惧を払拭。さらに、実際の治療に取り入れる際のポイント、成功に導くテクニックも公開します。自信を持って糖質制限を勧められる知識とノウハウを詰め込みました!第1回 いま、糖質制限食が必要です糖尿病治療の新たな選択肢として注目を集める糖質制限。アメリカではすでに食事療法の一つとして認められているのです!第1回は、 山田悟先生が提唱する「ゆるい」糖質制限の定義、そしてなぜ糖質制限が糖尿病大国アメリカで認められているのかを学会提言の変遷とともに解説します。糖質を減らした分、脂質が増えていいの?といった疑問にも脂質を摂取することが動脈硬化や心血管疾患のリスクを低下させる…そんな研究結果を数多く引用し不安を払拭していきます。第2回 すでに効果と安全性は認められています今回は3つの大きな臨床研究を例に、糖質制限の効果と安全性に迫ります。4種類の食事療法での減量効果を調べたATOZ試験。糖質制限食・脂質制限食・高脂質食それぞれの減量効果や血糖値、脂質、血圧などに与える影響を調べたDIRECT試験とそのサブ解析。そして日本人の糖尿病患者での効果を検討した北里研究所病院試験。高脂質食や糖質制限食による脂質プロファイルの改善、また腎症3期でのeGFRの変化などを見ると、腎機能への影響や動脈硬化のリスクも杞憂だったと感じるはず。第3回 日本糖尿病学会は昔から認めています日本糖尿病学会は糖質制限を否定している?それは誤解だと山田先生は言い切ります。昔も今も、否定されているのは「極端な」糖質制限のみであり、「ゆるい」糖質制限は許容されているのです。そのことを理解するには、食品交換表、また日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインについて注意深く読み解くことが必要。そこで今回は、食品交換表の変遷を解説し、糖尿病診療ガイドラインの参考文献を丁寧に検証していきます。情報を自分で精査するための知識として、観察研究と無作為比較試験の違いにも言及。実践可能な食事療法として、「ゆるい」糖質制限が存在することをぜひ番組で体感してください。第4回 三大栄養素比率にこだわる必要はありません「炭水化物は総カロリーの50~60%摂取すべき」という定説、その根拠をひも解いてみると、実は明確なエビデンスがあるとは言い切れないということが今回のレクチャーでわかります。糖質摂取量を減らすことで懸念される血管内皮機能の低下や筋肉量の減少など、様々ある言説が誤解であるということもエビデンスに基づいて解説します!第5回 糖質制限は批判されるべきものではありません糖質制限で動脈硬化になる?心血管疾患のリスクが高まる?いずれも過去の言説になりつつあります。一概に蛋白といっても、その質によって動脈へ与える影響が異なることや、欧米人と東アジア人では糖質摂取量による心血管リスクが異なることを最新のエビデンスを用いて解説します。第6回 糖質制限はこうして実践できます糖質制限レクチャー最終回は、導入方法をお教えします。糖質制限を実際に導入するときに気を付けることは?糖質制限をしてはいけない症例は?薬との併用はどう考えればいい?食事以外に変更すべきことはある?など糖質制限の導入にあたっての疑問に山田先生がお答えします。糖質制限の特徴と注意点を押さえて、日常診療に役立ててください!

780.

上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬に耐性の非小細胞肺がんに対するAZD9291の効果について(解説:小林 英夫 氏)-361

 すでにご承知の読者も多いであろうが、非小細胞肺がんの臨床において2002年から登場した上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は現在不可欠な薬剤となっている。2014年版日本肺癌学会編『EBMの手法による肺癌診療ガイドライン』1)においても、手術不能非扁平上皮がんでEGFR遺伝子変異陽性例に治療推奨グレードAと位置付けられた。 第1世代EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ)導入後には、高度な薬剤性肺障害の合併、無効症例の存在、人種差、薬剤耐性獲得などの問題点が指摘された。これらの課題は、合併肺疾患の有無や、組織型選択、性別、組織検体でのEGFR遺伝子変異といった評価プロセスを経ることにより、ある程度の改善が得られている。そして最大の未解決点は1~2年程度で生じてしまう薬剤耐性問題である。治療当初は良好な腫瘍縮小効果が得られた症例も恒久的効果は困難であり、この解決を目指して新規EGFR-TKI薬の開発が進められている。 今回、新規2薬剤の臨床試験が同時にNEJM誌に掲載されたが、本稿ではアジア人主体で日本人を含む検討がなされた第3世代EGFR-TKI(AZD9291)についての、Janne氏らの論文を概説する。 薬剤耐性獲得の約60%はEGFR T790M変異と考えられているが、AZD9291は非小細胞肺がんのEGFR-TKI活性化変異とEGFR T790M耐性変異を選択的かつ不可逆的に阻害する第3世代経口EGFR-TKIであり、前臨床モデルではこれら変異に有効である一方、野生型EGFRに対する効果は少ない。 AZD9291の安全性と有効性評価のための第I相試験は2013年3月から2014年8月まで行われた。対象は、既治療で、EGFR-TKI活性化変異が確認された、または他のEGFR-TKI治療によっても病勢が進行している、進行非小細胞肺がんである。 253例が登録され、用量漸増コホートに31例、拡大コホートには222例が割り付けられた。内訳は女性が62%、アジア人が62%、腺がんが96%で、80%に細胞傷害性化学療法歴があった。拡大コホート登録症例の62%で EGFR T790Mが検出された。用量漸増コホート31例で、28日間の1日1回20~240mg経口まででは用量制限毒性が発現しなかったため、最大耐用量は確定されなかった。 有害事象として、下痢(47%)、皮疹(40%)、悪心(22%)などが認められ、グレード3以上の有害事象は32%に、重篤な有害事象は22%にみられた。アジア人と非アジア人で重症度や頻度に差はなかった。肺臓炎様イベントは6例(2例はアジア人、4例は非アジア人)にみられ治療中止となったが、データ解析時には回復したか、回復しつつあった。7例が有害事象で死亡したが、薬剤関連の可能性は1例(肺炎)であった。 登録症例中239例で治療効果が判定でき、123例が部分奏効、1例が完全奏効、奏効率51%(95%信頼区間[CI]:45~58%)、病勢安定33%(78例)であった。また、EGFR T790M陽性例のうち評価可能であった127例は奏効率61%(95%CI:52~70%)、陰性例61例では奏効率21%(95%CI:12~34%)だった。奏効例のうち奏効期間が6ヵ月以上の患者の割合は85%で、 EGFR T790M陽性例では88%、陰性例では69%であった。全体の無増悪生存期間中央値は8.2ヵ月、T790M変異陽性例で9.6ヵ月(95%CI:8.3~未到達)、陰性例では2.8ヵ月(95%CI:2.1~4.3)であった。 本邦では第2世代薬のアファチニブが2014年に導入されたが、薬剤耐性について十分な問題解決には到達していない。Janne氏らは、第3世代のAZD9291はEGFR-TKIによる前治療下で病勢が進行してしまった EGFR T790M変異陽性の進行非小細胞肺がん患者に腫瘍縮小効果を示し、EGFR T790Mが本薬有効性の予測マーカーでもあることが示唆された、と結論している。 彼らの成績はencouragingではあるものの、観察期間が短いことや比較試験ではないことなど、さらなる検討を待たなければならない。ただ、非小細胞肺がん治療では治療前だけでなく増悪期においても、組織検体からEGFR遺伝子変異を評価することがますます重要となることは間違いない。なお、肺がんとEGFR-TKIについての手引きが日本肺癌学会より発行されている2)。

検索結果 合計:895件 表示位置:761 - 780