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駆出率保持心不全、心房間シャント作成デバイスの安全性を確認/Lancet

 駆出率が保たれた心不全(HFPEF)に対する心房間シャント作成デバイス(IASD)の留置術は安全に施行可能であり、運動時の左室圧を低下させることが、ドイツ・ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンのGerd Hasenfuss氏らが行ったREDUCE LAP-HF試験で示された。HFPEFは心不全の一般的な形態と認識されているが、症状や予後を改善する治療法は確立されていない。病態生理は複雑であるが、とくに運動時の左室圧の上昇を特徴とし、これは重要な治療標的と考えられている。Lancet誌2016年3月26日号掲載の報告より。68例で安全性を評価する単群第I相試験 REDUCE LAP-HF試験は、HFPEF患者において、経カテーテルIASD留置術で左房圧を機械的に低下させるアプローチの効果と安全性を検証する非盲検単群第I相試験(Corvia Medical社の助成による)。 対象は、年齢40歳以上、薬物療法でHFPEFの症状が軽減せず(NYHA心機能分類:II~IV)、左室駆出率が>40%で、安静時肺毛細血管楔入圧(PCWP)の上昇(>15mmHg)または運動時PCWPの上昇(>25mmHg)がみられる患者であった。 主要評価項目は、6ヵ月時のIASDのデバイス性能および安全性の複合エンドポイントとし、臨床効果の評価も行った。 デバイス性能は、デバイス留置の成功率、6ヵ月時の安静時および運動時PCWPがベースラインに比べ低下した患者の割合、左右のデバイス間の血流の持続とした。安全性は、周術期および6ヵ月時の心臓および脳血管の主な有害事象(死亡、脳卒中、心筋梗塞、肺血栓塞栓症を除く全身性の塞栓イベント、6ヵ月以内の手術的デバイス除去の必要性)であった。 2014年2月8日~15年6月10日までに、9ヵ国21施設に68例が登録され、IASDの留置は64例で成功した。NYHA心機能分類、QOL、6分間歩行も改善 64例の平均年齢は69(8 SD)歳、女性が42例で、NYHA心機能分類はIIが18例、IIIが46例であり、平均BMIは33(6 SD)、推定糸球体濾過量(eGFR)は62(21 SD)mL/分/1.73m2、安静時PCWPは17(5 SD)mmHgであった。糖尿病が21例、高血圧が52例、心房細動が23例、冠動脈疾患が23例に認められた。 手技に関連する有害事象や、心臓および脳血管の主な有害事象、デバイス関連合併症への心臓手術による介入の必要性は、6ヵ月のフォローアップ期間中には発生しなかった。したがって、デバイス留置は安全に施行でき、十分に耐用可能と考えられた。 6ヵ月時に、52%(31/60例)の患者で安静時PCWPが低下し、58%(34/59例)の患者では運動時PCWPが低下した。安静時と運動時の双方のPCWPが低下した患者は39%(23/59例)だった。 NYHA心機能分類の中央値はベースラインのIIIから6ヵ月時にはIIへ(p<0.0001)、ミネソタ心不全(MLWHF)スコア(点が高いほどQOLが不良)の平均値は49点から36点へ(p<0.0001)、平均6分間歩行距離は313mから345mへ(p=0.0023)とそれぞれ有意に改善した。 平均臥位運動時間は、ベースラインの7.3(3.1 SD)分から6ヵ月時には8.2(3.4 SD)分へと有意に延長した(p=0.0275)。運動時PCWPは、20ワット負荷(32 vs. 29mmHg、p=0.0124)および最大運動負荷(34 vs. 32mmHg、p=0.0255)のいずれにおいても、ベースラインに比べ6ヵ月時で有意に低かった。 安静時PCWPは、ベースラインおよび6ヵ月時とも17mmHgであり、差はみられなかった。 著者は、「IASDはHFPEFの新たな治療戦略となる可能性があるが、その有効性は既存の治療法と比較する無作為化試験を行って確証する必要がある」としている。

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糖尿病網膜症と夜間頻尿が相関

 日本人の2型糖尿病患者を対象とした研究で、細小血管合併症のうち糖尿病網膜症が、夜間頻尿と独立して関連していたことを、愛媛大学の古川 慎哉氏らが報告した。愛媛県内の関連病院による多施設共同研究(道後Study)において、2型糖尿病患者の細小血管合併症と夜間頻尿の関連を検討した結果、明らかになった。Urology誌オンライン版2016年3月16日号に掲載。 本研究では、日本人の2型糖尿病患者731例に自記式質問票を用いて情報を収集。オッズ比は、性別、年齢、BMI、糖尿病罹病期間、現在の喫煙状況、現在の飲酒状況、高血圧、脳卒中、虚血性心疾患、HbA1cで調整した。なお、診断は以下に従い判断した。・夜間頻尿:「夜寝てから朝起きるまでに、排尿するために通常何回起きますか?」という質問に1回以上と回答した場合・糖尿病神経障害:「神経症状」「アキレス腱反射消失」「振動覚異常」のうち2項目以上を満たした場合・糖尿病腎症:「推算糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m2未満」あるいは「尿アルブミン/Cr比34mg/mmolCr以上」、もしくはどちらも該当した場合・糖尿病網膜症:眼科専門医により診断 主な結果は以下のとおり。・夜間頻尿の有病率は80.4%であった。・糖尿病網膜症と夜間頻尿との独立した正の相関が示された(調整オッズ比2.39、95%CI:1.08~6.11)。・糖尿病腎症と糖尿病神経障害は夜間頻尿と関連がみられなかった。

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腎機能に基づくレベチラセタム投与量の調整:京都大学

 第2世代抗てんかん薬であるレベチラセタムは、部分発作の管理に使用される。投与量の約70%はそのまま尿中に排泄されるため、用量調節は個々の腎機能に基づくことが推奨されている。京都大学の伊藤 聡子氏らは、レベチラセタム治療のために、日常的にモニタリングされた血中濃度データを用いてレベチラセタムの母集団薬物動態モデルを開発した。Therapeutic drug monitoring誌オンライン版2016年2月24日号の報告。 対象患者は、2012年4月~13年3月に、京都大学病院で日常的に定常状態のレベチラセタム血中濃度が測定された患者。レベチラセタムの薬物動態における患者特性の影響は、非線形混合効果モデリング(NONMEM)プログラムを用い、評価した。 主な結果は以下のとおり。・225例から得られた、合計583件の定常状態の血中濃度を解析に使用した。・患者の年齢中央値は、38歳(1~89歳)であり、推定糸球体濾過率(eGFR)は、98mL(15~189mL)/分/1.73 mであった。・レベチラセタムの血中濃度-時間データは、1次吸収のone-compartmentモデルにより十分に説明された。・経口クリアランスは個々の体重やeGFRと非比例的に関連していた。・投与量の増加は、経口クリアランスを有意に増加させた。・モデル適合における改善は、任意の抗てんかん薬の共変量を含むことで観察されなかった。・体重70kg、正常腎機能の成人におけるpopulation mean法のクリアランスは、4.8L/h(500mg bid)、5.9 L/h(1,500mg bid)であった。 結果を踏まえ、著者らは「体重やeGFRと非比例的に関連する経口クリアランスは、腎機能の変化した小児から高齢者において、ルーチンに治療薬物モニタリングデータを予測することができる。腎機能に基づく投与量の調整は、同質の範囲でトラフとピークの濃度をコントロールすることが可能である」とまとめている。■関連記事日本人難治性てんかん、レベチラセタムは有用かてんかん重積状態に対するアプローチは医学の進歩はてんかん発症を予防できるようになったのか抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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肺がん患者に分子標的治療を説明する工夫

 2016年3月16日都内にて、「薬剤耐性獲得後の治療を決定する遺伝子検査の重要性~医師は患者にどのように説明するか~」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。肺がん治療は、分子標的薬や免疫療法の出現で大きく進歩している。患者さんにも科学的に高度な内容を理解いただき、納得のうえで治療を受けてもらうための工夫が求められている。演者である岡本 勇氏 (九州大学病院呼吸器科 診療准教授)は、分子標的薬による治療例を中心に、患者説明における工夫の一端を紹介するとともに、次世代の薬への期待を述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。遠隔転移例には予後告知まで 肺がん死亡数は年間7万人以上と、実に1時間に6~8人が命を落とす計算だ。これは、診断時点で3分の2もの症例に遠隔転移があることに起因する。それにもかかわらず、告知について国内でのコンセンサスはとれていない。同じ病院であっても、診療科や先生により異なるのが実情だ。「病名告知」「病期告知」までされていても、「予後告知」が行われていないケースもある。 もちろん、「その患者さんが何年生きられるか」はわからないが、臨床データから「同じ病気の方はこのくらい生きられる」ことは伝えられる。とくに遠隔転移がある患者さんには、告知をもとに適切な治療法を決定いただくことが重要だ。 ただし、抗がん剤治療患者における平均生存期間は1年~1年半と短く、生活の質を維持したうえで生存期間を伸ばすことが、長く求められてきた。EGFR遺伝子変異のある患者さんへの説明 分子標的治療薬の登場は生存期間を延長させた。たとえばEGFR遺伝子変異例へのEGFR-TKI投与による平均生存期間は2年~2年半である。1年以上寿命が伸びることは患者さんにとって大きな進歩といえる。 EGFR遺伝子変異のある患者さんに、治療法を紹介する手順を紹介する。 まず、患者自身のがん細胞にEGFR遺伝子変異が起こっていることを伝える。そして、ご家族に、EGFRの変異は遺伝するものではない、ということを話す。家族と共に説明を聞くケースが多いためである。また、EGFR-TKIの効果は「治療を受けた患者さんの10人中6~8人で、がんが小さくなります。効果の出ている期間はさまざまですが半年くらいで効果が無くなる方もおられますし、1年2年と続けられる方もおられます」といった形で伝えると同時に、EGFR-TKI全般にみられる間質性肺炎の副作用にも触れたうえで、最終的に患者自身に服用の有無を決断してもらう。 多くの場合、EGFR-TKIによる治療は奏効する。しかし、1年間真面目に服用したとしても、効かなくなることは多い。ところが近々、第3世代EGFR-TKIが登場し、状況は変わろうとしている。第3世代EGFR-TKIへの期待 EGFR-TKIの耐性例の約半数ではT790M耐性変異がみられることがわかっている。このT790M変異に効果を示すのが、現在開発中の第3世代EGFR-TKIである。 第3世代EGFR-TKIの使用にあたっては、耐性遺伝子の確定診断が必須であり、その手段には再生検が用いられる。再生検は患者さんの一時的な肉体的負担を伴うものの、T790M変異有無を確認することで、第3世代EGFR-TKIという新たな治療選択肢を提供できるメリットは大きく、その選択が可能な時代となったことは喜ばしい。 患者さんの腫瘍が大きくなった時に「今後の最良の治療方法を検討するために、もう一度、腫瘍細胞を採取して遺伝子検査をやってみましょう」と、提案できる日も近づいている。

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スタチンは心臓手術後の急性腎障害を予防するか/JAMA

 スタチン未治療、既治療を問わず、心臓手術を受ける患者への周術期の高用量アトルバスタチン(商品名:リピトールほか)投与は、術後の急性腎障害(AKI)リスクを低減しないことが判明した。米国・ヴァンダービルト大学のFrederic T. Billings IV氏らが、二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、明らかにした。全体では有意差はないものの、投与群でリスクの増大が認められ、スタチン未治療患者では開始により有意なリスク増大が示された。スタチンについては、AKI発症機序に影響を及ぼす可能性が示されており、最近のいくつかの観察研究の解析報告で、スタチン既治療患者で心臓手術後のAKIリスク低減が報告されていた。ただし、それらの解析は検証が十分なものではなかった。JAMA誌2016年3月1日号掲載の報告より。スタチン未治療、既治療患者を対象に二重盲検プラセボ対照無作為化試験 試験は、ヴァンダービルト医療センターで、2009年11月~14年10月に成人の心臓手術患者を対象に行われた。 研究グループは、スタチン未治療患者(199例)について、アトルバスタチンを手術前日80mg/手術当日朝(開始3時間以上前)40mg/術後入院期間中AM10時に40mgを投与する群(102例)、または適合プラセボ群(97例)に無作為に割り付けた。また、試験登録時にスタチン治療を受けていた患者(416例)については、手術日まで同処方投与を続け、アトルバスタチンを手術当日朝(開始3時間以上前)80mg/術後はAM10時に40mgを投与する群(206例)、または適合プラセボ群(210例)に無作為に割り付けた。既治療群は手術翌日に既処方のスタチン投与を再開した。 主要エンドポイントは、AKIの発症で、手術後48時間以内の血清クレアチニン値0.3mg/dL上昇(Acute Kidney Injury Network基準)で定義した。プラセボ群と有意差なし、未治療患者では周術期開始でリスクが増大 本試験は、スタチン未治療でアトルバスタチンを投与されたCKD(eGFR<60mL/分/1.73m2)患者でAKI発症の増大が認められ、データ・安全モニタリング委員会が早期中止を勧告した。試験を完了し解析に組み込まれた患者は615例(中央値67歳、女性30.6%、糖尿病患者32.8%)であった。 全被験者(615例)で、AKI発症は、アトルバスタチン群64/308例(20.8%)、プラセボ群60/307例(19.5%)であった(相対リスク[RR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.78~1.46、p=0.75)。 スタチン未治療患者(199例)では、AKI発症は、アトルバスタチン群22/102例(21.6%)、プラセボ群13/97例(13.4%)でみられた(RR:1.61、95%CI:0.86~3.01、p=0.15)。血清クレアチニン値の上昇は、アトルバスタチン群中央値0.11mg/dL(第10~90パーセンタイル値:-0.11~0.56mg/dL)、プラセボ群中央値0.05mg/dL(同:-0.12~0.33mg/dL)であった(中央値差:0.08mg/dL、95%CI:0.01~0.15mg/dL、p=0.007)。 スタチン既治療患者(416例)では、AKI発症は、アトルバスタチン群42/206例(20.4%)、プラセボ群47/210例(22.4%)であった(RR:0.91、95%CI:0.63~1.32、p=0.63)。術後の血清クレアチニン値の上昇は、両群間で有意差はなかった。 以上を踏まえて著者は、「結果は、心臓手術後のAKI予防目的のスタチン開始治療を支持しないものであった」と結論している。

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腎移植後のbelatacept投与、7年時点のアウトカム/NEJM

 腎移植後の維持免疫抑制療法において、belataceptは従来の治療レジメンに比べ、長期的なアウトカムを改善するとの研究成果を、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のFlavio Vincenti氏らが、NEJM誌2016年1月28日号で報告した。免疫抑制療法は腎移植患者の短期的なアウトカムを改善することが知られているが、長期的な移植腎生着への効果を示すデータはほとんどない。belataceptは、ヒトIgG1のFc部分とCTLA-4の細胞外ドメインの融合蛋白で、共刺激の遮断を介してT細胞の活性化を選択的に阻害する(選択的共刺激遮断薬)。本薬は、従来のカルシニューリン阻害薬による有害作用を回避しつつ、高い免疫抑制効果をもたらすことで、腎移植患者の長期アウトカムを改善することを目的に開発されたという。移植後7年時の3群のアウトカムを比較 本研究(BENEFIT試験)は、腎移植患者の維持免疫抑制療法として、belataceptをベースとするレジメンと、シクロスポリンベースのレジメンを比較する無作為化第III相試験である(Bristol-Myers Squibb社の助成による)。 これまでの解析では、患者の生存率と移植腎生着率が同程度で、腎機能はbelataceptで有意に改善することが確認されており、研究グループは今回、本試験の最終結果を報告した。 被験者は、belataceptの治療強度の高いレジメン、治療強度の低いレジメン、シクロスポリンベースレジメンの3群のいずれかに無作為に割り付けられた。無作為化の対象となり、実際に移植を受けた全患者の有効性と安全性を、7年(84ヵ月目)の時点で解析した。 2006年1月13日~2007年6月14日に666例が移植を受け、660例が免疫抑制療法の対象となった(高強度群:219例、低強度群:226例、シクロスポリン群:215例)。このうち84ヵ月のフォローアップを完遂したのは、高強度群が153例、低強度群が163例、シクロスポリン群は131例だった。死亡/移植腎喪失リスクが改善、重篤な有害事象は増加せず 7年時の死亡または移植腎喪失のリスクは、シクロスポリン群に比べ、高強度群(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.35~0.95、p=0.02)および低強度群(HR:0.57、95%CI:0.35~0.94、p=0.02)の双方で43%有意に低下した。 死亡率は、シクロスポリン群に比し高強度群が38%(HR:0.62、95%CI:0.33~1.14、p=0.11)、低強度群は45%(HR:0.55、95%CI:0.30~1.04、p=0.06)低下し、いずれも改善の傾向がみられた。 移植腎喪失率はそれぞれ44%(HR:0.56、95%CI:0.25~1.21、p=0.12)、41%(HR:0.59、95%CI:0.28~1.25、p=0.15)低下し、やはり有意差はないものの改善の傾向が認められた。 平均推算糸球体濾過量(eGFR)は、2つのbelatacept群は7年間で増加した(高強度群=12ヵ月:67.0、36ヵ月:68.9、60ヵ月:70.2、84ヵ月:70.4mL/分/1.73m2、低強度群=66.0、68.9、70.3、72.1mL/分/1.73m2)が、シクロスポリン群は低下した(52.5、48.6、46.8、44.9mL/分/1.73m2)。belatacept群全体の腎機能の治療効果は、シクロスポリン群に比べ有意に良好だった(p<0.001)。 84ヵ月時の重篤な有害事象の累積発生率は、高強度群が70.8%、低強度群が68.6%、シクロスポリン群は76.0%であり、3群でほぼ同等であった。重篤な感染症の頻度が最も高く、高強度群の10.6%、低強度群の10.7%、シクロスポリン群の13.3%に認められた。 著者は、「これまでに報告された他剤のアウトカムの検討は移植後5年までであり、7年時の生存ベネフィットが確認されたことの意義は大きいと考えられる」としている。

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進行NSCLC治療、全例への遺伝子検査は有用か/Lancet

 進行性非小細胞肺がん(NSCLC)治療に関して、患者の分子プロファイリングを日常診療として全国的に実施することは可能であり、その作業は遺伝子変異や融合遺伝子など遺伝子異常の頻度、所要日数および治療効果からみても有用であることが確認された。フランス・マルセイユ公立病院機構(APHM)のFabrice Barlesi氏らが、French Collaborative Thoracic Intergroup(IFCT)による1年間のプログラムの成果を踏まえて報告した。NSCLCの治療においては、既知のドライバー遺伝子について日常的に患者の分子プロファイルを調べることが推奨されているが、その国家的な実現性や有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2016年1月14日号掲載の報告。仏国内の全NSCLC患者で遺伝子検査を実施し、遺伝子異常の頻度や予後等を調査 研究グループは、2012年4月~13年4月の間、フランス各地の分子遺伝学センター28施設(フランス全土をカバー)において、進行性NSCLC患者全症例を対象に、EGFR、HER2(ERBB2)、KRAS、BRAF、PIK3CAの遺伝子変異およびALK融合遺伝子の検査を行った。遺伝子検査は進行性NSCLCに義務づけられ、検査の処方は治療している医師の責任で行われた。患者は、各地の集学的腫瘍検討会による調査の後、国内外のガイドラインに従ってルーチン治療を受けた。 主要評価項目は、前述の6つの遺伝子異常の頻度、副次評価項目は検査結果報告までの所要時間、および患者の臨床転帰(奏効率[ORR]、無増悪生存期間[PFS]、全生存期間[OS])とした。遺伝子異常は、約半数の患者で認められ、治療効果改善と関連 NSCLC患者1万7,664例(平均年齢64.5歳[範囲18~98]、男性65%、喫煙歴あり81%、腺がん76%)において、1万8,679件の遺伝子検査が行われた。検体採取から検査開始までの期間中央値は8日(四分位範囲[IQR]:4~16)、検査開始から結果報告書提出までの期間中央値は11日(IQR:7~16)であった。 遺伝子異常は、約50%で確認された。EGFR遺伝子変異は解析し得た1万7,706件中1,947件(11%)、HER2遺伝子変異は1万1,723件中98件(1%)、BRAF遺伝子変異は1万3,906件中262件(2%)、KRAS遺伝子変異は1万7,001件中4,894件(29%)、PIK3CA遺伝子変異は1万678件中252件(2%)、ALK融合遺伝子は8,134件中388件(5%)に認められた。遺伝子異常の存在が1次治療の決定に際して考慮されたのは、データを入手し得た8,147例中4,176例(51%)であった。 検査実施日からの追跡期間中央値24.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:24.8~25.0)の時点で、遺伝子異常なしと比較して遺伝子異常ありでは、1次治療および2次治療いずれにおいてもORRが有意に改善した。1次治療は、あり37%(95%CI:34.7~38.2) vs.なし33%(29.5~35.6)(p=0.03)、2次治療は、あり17%(15.0~18.8) vs.なし9%(6.7~11.9)(p<0.0001)であった。 1次治療後のPFSならびにOSも同様の結果であった。PFSは、あり10.0ヵ月(9.2~10.7) vs.なし7.1ヵ月(6.1~7.9)(p<0.0001)、OSは、あり16.5ヵ月(15.0~18.3) vs.なし11.8ヵ月(10.1~13.5)(p<0.0001)であった。 Cox多変量解析の結果、ALK融合遺伝子(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.5~0.9)、EGFR遺伝子変異(HR:0.53、95%CI:0.4~0.6)、HER2遺伝子変異(HR:0.60、95%CI:0.4~1.0)が、予後良好因子であることが認められた。

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耐性克服に再生検を!~肺がん治療~

 2016年1月21日都内にて、「肺がん治療におけるアンメットメディカルニーズ」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である中川 和彦氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科 教授)は、第3世代EGFR-TKIの登場に伴う再生検の重要性に触れ、「耐性変異を調べることが、最終的に患者さんの利益につながる」と述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。適切なバイオマーカーによる患者選択を 肺がん治療は劇的な進歩を遂げているが、依然アンメットニーズは高い。だからこそ、「希望の光」となるのが臨床試験だ。肺がん治療に影響を与えた代表的試験として、ゲフィチニブのIPASS試験1)がある。EGFR遺伝子変異の有無による効果の違いを実証した本試験は、適切なバイオマーカーで患者選択を行う有用性をわれわれに教えた。 しかし、ゲフィチニブ等のEGFR-TKIが著効した症例も1年~1年半以内に再発が認められる。この「耐性獲得」は深刻なアンメットニーズである。T790M変異の確認に不可欠な再生検 EGFR-TKI耐性患者の約6割がT790M変異を有する2)。今後、T790M変異を標的とした、第3世代EGFR-TKIが市場に登場すれば、同時にEGFR-TKI耐性獲得時の再生検も重要性が増すことになる。T790M変異を確認するには再生検は不可欠だ。 しかし、気管支内視鏡検査をはじめとした検体採取は患者負担が大きい、また脳転移や骨転移での再発例では困難、との指摘もある。そこで現在、血液検体からT790Mを測定する検査の開発が進められている。血液検体、その後に組織診断という流れを作るべく、臨床試験が進行中であり、今後に期待したい。2度目の遺伝子検査が、患者さんのメリットに EGFRに限らず、肺がんのドライバー遺伝子は多岐にわたる。ALK、ROS1、RET、BRAF等があり、それぞれを標的とした新薬が開発段階にある。もはや問題となる遺伝子を探索し、適切な薬を選択する時代である。当然、薬剤費や手間の問題が浮上するが、たとえば、近畿大学ではDNAとRNAを一度に抽出し、遺伝子変異を探索している。 今後、第3世代EGFR-TKIを始めとする各種新薬の登場に伴い、再生検の重要性は増すだろう。再生検で耐性変異を調べることは、最終的に患者さんの利益につながると期待している。

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悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)〔malignant soft tissue tumor / soft tissue sarcoma〕

1 疾患概要■ 定義全身の軟部組織(リンパ・造血組織、グリア、実質臓器の支持組織を除く)より発生し、骨・軟骨を除く非上皮性間葉系組織(中胚葉由来の脂肪組織、線維組織、血管・リンパ管、筋肉、腱・滑膜組織および外胚葉由来の末梢神経組織などを含む)から由来する腫瘍の総称で、良性から低悪性~高悪性まで100種類以上の多彩な組織型からなる軟部腫瘍のうち、生物学的に悪性(局所再発や遠隔転移しうる)のものを悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)と呼ぶ。■ 疫学人口10万人あたり約3人の発生率で、全悪性腫瘍の0.7~1.0%程度とまれな悪性腫瘍である(わが国では胃がんや肺がんの1/20程度)が、経年的には増加傾向にある。また、骨・軟部肉腫が通常のがん腫に比し、若年者に多い傾向があることから、20歳未満の小児悪性腫瘍の中では約7.4%を占める。発生部位は軟部肉腫全体の約60%が四肢に発生し、そのうち約2/3が下肢(とくに大腿部に最も好発)に発生するが、その他の部位(臀部や肩甲帯、胸・腹壁などの表在性体幹部、後腹膜や縦隔などの深部体幹)にも広く発生するのが、軟部肉腫の特徴である。■ 病因近年の分子遺伝学的解析の進歩により、軟部肉腫においても種々の遺伝子異常が発見されるようになった。なかでも、特定の染色体転座によって生じる融合遺伝子異常が種々の組織型の軟部肉腫で検出され(表1)、その病因としての役割が明らかになってきた。こうした融合遺伝子異常は、すべての軟部肉腫のうち約1/4で認められる。一方、融合遺伝子異常を示さない残り3/4の軟部肉腫においても、いわゆるがん抑制遺伝子として働くP53、RB1、PTEN、APC、NF1、CDKN2などの点突然変異や部分欠失による機能低下、細胞周期・細胞増殖・転写活性・細胞内シグナル伝達などを制御する種々の遺伝子(CDK4、MDM2、KIT、WT1、PDGF/PDGFR、VEGFR、IGF1R、AKT、ALKなど)異常が認められ、その発症要因として関与していると考えられる。また、NF1遺伝子の先天異常を有する常染色体優性遺伝疾患である多発性神経線維腫症(von Recklinghausen病)では神経原肉腫(悪性末梢神経鞘腫)やその他の悪性腫瘍が発生しやすく、乳がんなどの治療後の上肢リンパ浮腫を基盤に生じるリンパ管肉腫(Stewart-Treves症候群)、放射線照射後に発生するpostradiation sarcomaなども知られている。画像を拡大する■ 症状無痛性のしこり(軟部腫瘤)として発見されることが最も多い。疼痛(自発痛や圧痛)や局所熱感、患肢のしびれなどは時にみられるが必発ではなく、良悪性の鑑別にはあまり役立たない。腫瘤の大きさは米粒大~20cmを超えるような大きなものまでさまざまであるが、明らかに増大傾向を示すような腫瘤の場合、悪性の可能性が疑われる。ただし、一部の腫瘍(とくに滑膜肉腫)ではほとんど増大せずに10年以上を経過し、ある時点から増大し始めるような腫瘍もあるので注意が必要である。縦隔や後腹膜・腹腔内の軟部肉腫では、相当な大きさになり腫瘤による圧迫症状が出現するまで発見されずに経過する進行例が多いが、時に他の疾患でCTやMRI検査が行われ、偶然に発見されるようなケースも見受けられる。■ 分類正常組織との類似性(分化度: differentiation)の程度により病理組織学的に分類される。脂肪肉腫、平滑筋肉腫、未分化多形肉腫(かつての悪性線維性組織球腫)、線維肉腫、横紋筋肉腫、神経原肉腫(悪性末梢神経鞘腫)、滑膜肉腫などが比較的多いが、そのほかにもまれな種々の組織型の腫瘍が軟部肉腫には含まれ、組織亜型も含めると50種類以上にも及ぶ。■ 予後軟部肉腫には低悪性のものから高悪性のものまで多彩な生物学的悪性度の腫瘍が含まれるが、その組織学的悪性度(分化度、細胞密度、細胞増殖能、腫瘍壊死の程度などにより規定される)により、生命予後が異なる。また、組織学的悪性度(G)、腫瘍の大きさ・深さ(T)、所属リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)により病期分類が行われ、予後とよく相関する(表2)。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)軟部腫瘤の局在・局所進展度とともに、質的診断をするための画像診断としてはMRIが最も有用であり、必須といってもよい。腫瘍内の石灰化の有無、隣接骨への局所浸潤の有無、隣接主要血管・神経との位置関係をみるにはCTのほうが有用であるが、腫瘍自体の質的診断という点ではMRIよりも劣る。したがって、まずはMRIを施行し、画像診断できるもの(皮下に局在する良性の脂肪腫、典型的な神経鞘腫や筋肉内血管腫など)の場合には、外科的腫瘍切除を含め治療方針を生検なしに決定できる。しかし、軟部腫瘍の場合には画像診断のみでは診断確定できないものも少なくなく、良悪性の鑑別を含む最終診断確定のためには、通常生検が必要となる。生検はある程度の大きさの腫瘤(最大径がおおむね3cm以上)では、局麻下での針生検(ベッドサイドで、または部位によってはCTガイド下で)を行うが、針生検のみでは診断がつかない場合には、あらためて全麻・腰麻下での切開生検術が必要となることもある。また、径3cm未満の小さな表在性の腫瘍の場合、生検を兼ねて一期的に腫瘍を切除する(切除生検)こともあるが、この場合、悪性腫瘍である可能性も考慮し、腫瘍の周辺組織を腫瘍で汚染しないよう注意する(剥離の際に腫瘍内切除とならないよう気を付ける、切除後の創内洗浄は行わない、など)とともに、後の追加広範切除を考慮し、横皮切(とくに四肢原発例)は絶対に避けるなどの配慮も必要となる。皮下に局在する小さな腫瘍の場合、良悪性の区別も考慮されることなく一般診療所や病院で安易に局麻下切除した結果、悪性であったと専門施設に紹介されることがしばしばある。しかし、その後の追加治療の煩雑さや機能予後などを考えると、診断(良悪性の鑑別も含む)に迷った場合には、安易に切除することなく、骨・軟部腫瘍専門施設にコンサルトまたは紹介したほうがよい。生検により悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の確定診断がついたら、組織型・悪性度や必要に応じて肺CT、局所CT、骨シンチグラム、FDG-PET/CTなどを行い、腫瘍の局所進展度・遠隔転移(とくに肺転移)などを検索したうえで、治療方針を決定する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の原則は、外科的腫瘍広範切除(腫瘍を周囲の正常組織を含め一塊に切除する術式)であるが、必要に応じて術前あるいは術後に放射線治療を併用し、術後局所再発の防止を図る。組織型(とくに滑膜肉腫、横紋筋肉腫、未分化神経外胚葉腫瘍、粘液型脂肪肉腫など)や悪性度によっては、また、遠隔転移を有する腫瘍の場合には、抗悪性腫瘍薬による全身化学療法を併用する。4 今後の展望これまで長い間、軟部肉腫に対する有効な抗悪性腫瘍薬としてはドキソルビシン(商品名:アドリアシンなど)とイホスファミド(同:イホマイド)の2剤しかなかったが、近年ようやくわが国でも軟部肉腫に対する新規薬剤の国際共同臨床試験への参加や治験開発が進むようになってきた。2012年9月には、軟部肉腫に対する新規分子標的治療薬であるパゾパニブ(同:ヴォトリエント)が、わが国でもオーファンドラッグとして製造・販売承認され、保険適応となった。また、トラベクテジン〔ET-743〕(同:ヨンデリス/2015年9月に承認)やエリブリン(同:ハラヴェン/わが国では軟部肉腫に対しては保険適応外)など複数の軟部肉腫に対する新規抗腫瘍薬の開発も行われている。5 主たる診療科整形外科、骨軟部腫瘍科 など軟部肉腫は希少がんであるにもかかわらず、組織型や悪性度も多彩で診断の難しい腫瘍である。前述のMRIでの画像診断のみで明らかに診断がつく腫瘍以外で良悪性不明の場合、小さな腫瘍であっても安易に一般診療所や病院で生検・切除することなく、骨・軟部腫瘍を専門とする医師のいる地域基幹病院の整形外科やがんセンター骨軟部腫瘍科にコンサルト・紹介するよう心掛けてほしい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス(各種がんのエビデンスデータベース「軟部肉腫」の情報)日本整形外科学会(骨・軟部腫瘍相談コーナーの情報)日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)(骨軟部腫瘍グループの研究に関する情報)NPO骨軟部肉腫治療研究会(JMOG)(医療従事者向けの診療・研究情報)患者会情報日本に「サルコーマセンターを設立する会」(肉腫患者および家族の会)1)上田孝文. 癌と化学療法. 2013; 40: 318-321.公開履歴初回2013年06月06日更新2016年01月26日

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カナダ開発の腎不全リスク予測ツール、国際的に有用/JAMA

 カナダで開発された腎不全リスクの予測ツールが、国際的に有用であることを、カナダ・マニトバ大学のNavdeep Tangri氏らが、30ヵ国31コホートの患者集団で検証した結果、報告した。カナダで開発されたのは、年齢、性別、eGFR、ACR濃度を因子としたもので、2集団を対象に開発・検証が行われていた。JAMA誌2016年1月12日号掲載の報告。30ヵ国ステージ3~5の患者72万1,357例のデータを含む31コホートで検証 研究グループは、同ツールについて、他国および腎臓専門医のケアを受けていないCKD集団で検証を行う必要があるとして、地理的に異なる患者集団について、メタ解析データを通じてリスク予測ツールの精度を検証した。 末期腎不全に関するデータをCKD Prognosis Consortiumの参加コホートから収集。対象は31コホート、4大陸30ヵ国から参加したステージ3~5の患者72万1,357例であった。各コホートのデータが集められたのは1982~2014年であった。 収集したデータを2012年7月~15年6月に分析。オリジナルツール(4因子を用いたもの)で各コホートのハザード比を算出し、ランダム効果メタ解析で統合し、新たにプール腎不全リスクツールを生成した。オリジナルツールとプールツールの識別能を比較し、地理的な検定因子の必要性を評価した。 主要評価項目は、腎不全(透析または腎移植治療を要する)とした。優れた識別能を示したが、非北米コホートでは一部で追加因子の必要性も判明 フォローアップ中央値4年の間に、CKD患者72万1,357例のうち、腎不全が認められたのは2万3,829例であった。 31コホートのうち16コホート(61万7,604例)は北米、15コホート(10万3,753例)はアジア、ヨーロッパ、オーストラリアのコホートであった。平均年齢は74歳、eGFRは46mL/分/1.73m2、大半が男性(うち97%が退役軍人)、女性はまれ(うち75%が沖縄の女性)であった。 オリジナルツールは、すべてのコホートにおいて優れた識別能(腎不全を呈した人と呈さなかった人を区別する能力)を示した。全体のC統計値は2年時点で0.90(95%信頼区間[CI]:0.89~0.92、p<0.001)、5年時点でも0.88(0.86~0.90、p<0.001)であった。年齢、人種、糖尿病有無別で評価したサブグループでも同程度の識別能が示された。 これらの識別能はプールツールによっても改善はされなかったが、検定(予測リスクと観察結果との差)の結果、北米コホートには適切だが、非北米コホートではリスクの過大評価が認められるものがあった。これらについては地理的な検定因子の因子で、2年時点でベースラインリスクを32.9%低下、5年時点で16.5%低下し、2年時点で15コホートのうち12コホートで、5年時点では13コホートのうち10コホートで検出能を改善できた(それぞれp=0.04、p=0.02)。 著者は、「カナダ人コホートで開発した腎不全リスクツールは、31の多様なコホートでも高い識別能を示し、十分な検出能があることが示された。ただし一部では地理的な追加因子が必要と思われた」とまとめている。

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サン・アントニオ2015 レポート-1

レポーター紹介はじめに2015年SABCSは12月4日から8日までの会期で開催された。外は比較的暖かく、過ごしやすい気候であった。基礎的な内容も口演で多く取り上げられ、難しい内容のものも多くあったが、私たちの臨床を変える、あるいは臨床的に意義のある発表も多く、個人的には久しぶりに充実感があった。最初の話題は何と言っても、京都大学の戸井 雅和先生が口演で発表された、日本と韓国共同で行われた第III相試験CREATE-X(JBCRG-04)の結果であろう。HER2陰性乳がんに対して術前化学療法(アントラサイクリン、タキサン、あるいはその組み合わせ)後に手術を行ってnon-pCRであった場合に、術後標準治療を行う群とカペシタビン8サイクル(2,500mg/m2/day、day1~14、repeat every 3 weeks)を上乗せする群に割り付けて、予後をみたものである。適格基準はStageI~IIIBと広く、年齢も20~74歳と幅がある。計910例を各群455例ずつに割り振り5年間経過観察した。ホルモン受容体陽性が約60%で、リンパ節転移が残存していたのは約60%であった。術前化学療法としてはA-Tを逐次投与したものが約80%を占め、5-FUは約60%の症例で使われていた。カペシタビンを8サイクル規定投与量で継続できたのは37.9%、減量し継続できたのは37.1%、中止は25%であった。カペシタビン群の有害事象として、下痢は3.0%と低く、手足症候群は全グレードで72.3%、Grade3は10.9%に認められた。5年無再発生存率はカペシタビン群74.1%、コントロール群67.7%(p=0.00524)、5年全生存率も89.2%対83.9%(p<0.01)と有意にカペシタビン群で良好であった。サブグループ解析では、どのグループでもカペシタビン群で良好な傾向であった。ホルモン受容体の有無によらなかったが、陰性でより効果が高い傾向にはあった。正式に論文化されるのを待ちたいが、術前化学療法後に腫瘍が残存しステージが高く、予後不良な乳がんに対して有効な治療であることは間違いなさそうであり、どのように実臨床に取り込んでいくか議論が必要だろう。また、毒性の程度が日本人と異なる欧米で、どの程度受け入れられるかも注目されるところである。ルミナルA乳がんは一般に予後良好で、早期であれば全身治療は内分泌療法単独で良いと一般的に考えられている。DBCG77B無作為化比較試験から、ハイリスクのルミナルA乳がんを選択し予後を比較した結果が報告された。DBCG77B試験は腫瘍径5cm以上またはリンパ節転移陽性の閉経前乳がんに対し、classic CMF(C:130mg/m2)、oral cyclophosphamide(130mg/m2、2週投与2週休薬、12サイクル)、levamisole、化学療法なしの4群に分けて予後をみたものであるが、前2群はlevamisole群や化学療法なし群と比較して25年全生存率を改善している (Ejlertsen B, et al. Cancer;116:2081-2089.)。classic CMFに関しては、2014年SABCSレポート(NSABP B-36:リンパ節転移陰性乳がんにおいて6サイクルのFECと4サイクルのACを比較する無作為化第III相試験)を参照してほしい。ルミナルAの定義は免疫染色でER陽性、PR 20%以上、Ki67 13%以上、CK5/6陰性、EGFR陰性とした。 今回の研究では、1,146例のうち633例で免疫染色結果が利用でき、165例がルミナルAに分類された。633例の特徴は1,146例全体と比べN+例の比率がやや高く、化学療法施行例がわずかに多かった。浸潤がんの10年無再発生存率は、非ルミナルAでは化学療法の効果が明らかであったのに対し、ルミナルA群ではまったく差がなかった(化学療法あり134例、なし31例)。25年全生存率も同様であった。非ルミナルAのうちHER2タイプでは浸潤がんの10年無再発生存率に全く差がなく、HER2陽性乳がんにおけるCMFの効果の弱さを裏付けるものであった。DBCG77Bはかなり古い試験であり、内分泌療法が行われていないなどいくつかの問題点はある。しかし、ルミナルAはリンパ節転移陽性であっても、化学療法のベネフィットがないということはリーズナブルな結果と考えられる。現在NCCNガイドラインによれば、オンコタイプDxもリンパ節転移陽性(1~3個)に対して適応しうることが記載されており、低リスクに対しては化学療法のベネフィットが得られないだろうと考えられるようになっている。また、乳がんサブタイプとオンコタイプDxの再発リスクの間には強い相関もあり、私自身はこの結果にとくに驚くものではない(Fan C, et al. N Engl J Med. 2006;355:560-569.)。むしろDBCG77B試験をあらためて読み、classic CMFとoral cyclophosphamideの間に差がないことのほうが驚きであった。本邦では、再発乳がんにおいてoral cyclophosphamideと5-FU系薬剤との併用の有効性が検討され、5-FU系薬剤の効果がむしろ強調されてきたが、実はoral cyclophosphamideのほうがより重要なのかもしれない。デジタルマンモグラフィが2Dであるのに対して、トモシンセシスは3Dマンモグラフィである。2D に3Dを加えることにより、2D単独と比較して浸潤がんの発見が40%増加し、疑陽性率が15%低下することが報告されており(Skaane P, et al. Radiology. 2013;267:47-56.)、他の研究も同様の結果となっている(Ciatto S, et al: Lancet Oncol. 2013;14:583-589、Friedewald SM, et al. JAMA.2014;311:2499-2507)。しかし、3Dを加えることで、被曝量の増加(約2倍)、圧迫時間の延長(ただし圧迫圧は減少)、装置のコスト、装置の耐久性、トレーニング、読影時間の延長が問題となる。そこで3Dから擬似的に合成した2D画像(合成2D)により(3Dは選択して読影)、読影時間の問題を解決するか試みた研究が英国から報告された。2,589乳房のうち280乳房のみが3D読影を必要とした。3D読影を行わないことにより、10乳房のM3と1乳房のM4を見逃したのみであり、そのうち乳がんであったのは2乳房のみであった。研究の限界としては、経験豊富な放射線科医1名の読影であり、スクリーニングの場面ではないことがある。しかし、見落としを最小限にしながら読影時間を短縮するのに、合成2Dは有用な方法と考えられる。臨床の現場では、通常のマンモグラフィ検診で要精査とされた中に疑陽性(とくにFAD)が多いことに驚く。患者はそのことにより、夜も眠れず不安を抱えて病院を受診する。超音波検診も含めて、疑陽性を極力減らすための努力が必要である。ビスホスホネート製剤は閉経後乳がんに対する遠隔再発、骨転移を減らし、乳がんによる死亡率を低下させることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)のメタ分析から示されている(参照)。今回は、デノスマブの生存率向上効果がABCSG-18試験(オーストリアとスウェーデン)によって示された。ホルモン受容体陽性閉経後乳がんにおいて術後補助療法として、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬と共に6ヵ月ごとにデノスマブを60mg投与する群とプラセボ群に分け、3,425例が無作為に割り付けられた。デノスマブの投与期間は規定されていない。おそらく5年程度は使用されているのだろう。結果として、無再発生存期間はデノスマブ群でわずかに高かった(p=0.0510)。サブグループ解析では、腫瘍径2cm以上ではより明らかであった(p=0.0419)。これは、より再発率の高いグループで効果が明瞭になるということだろう。顎骨壊死は1例もなかったが、これは特筆すべきである。本試験のプロトコルには、治療開始前や治療中の予防的な口腔ケアについては何ら記載されていない。顎骨壊死がなかった理由として、投与量が少ないためか、6ヵ月ごとの投与ではほとんど問題にならないのか、あるいはオーストリアやスウェーデンでは口腔ケアが当たり前になっているのか不明である。また、治療期間中カルシウムとビタミンDの服用を強く推奨するという記載にとどまっていて規定にはなっていないようだが、重篤な低カルシウム血症も起きていないようである。ただし、このあたりも、臨床で使用する際には一応注意はしておいたほうが良いだろう。閉経後乳がんにおいては、進行度の高いほど骨標的療法の生存率への効果が高いと考えられ、実臨床でも考慮すべき時期になったといえる。

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既治療PD-L1陽性NSCLCへのpembrolizumabの有効性を確認/Lancet

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、pembrolizumabは標準治療に比べ全生存期間(OS)を延長し、良好なベネフィット・リスク比を有することが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S Herbst氏らが行ったKEYNOTE-010試験で示された。免疫療法はNSCLCの新たな治療パラダイムであり、活性化B細胞やT細胞表面のPD-1受容体を標的とする免疫チェックポイント阻害薬が有望視されている。pembrolizumabは、PD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体であり、米国では第Ib相試験(KEYNOTE-001試験)のデータに基づき、プラチナ製剤ベースレジメンによる治療中または治療後に病勢が進行した転移性NSCLCの治療薬として迅速承認を取得している。Lancet誌オンライン版2015年12月18日号掲載の報告。2種の用量をドセタキセルと比較する第II/III相試験 KEYNOTE-010試験は、既治療のPD-L1(PD-1のリガンド)陽性NSCLCに対するpembrolizumabの有用性を評価する非盲検無作為化第II/III相試験(Merck & Co助成)。 対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤ベースの2剤併用療法やチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR変異陽性例、ALK転座陽性例)による治療後に病勢が進行し、PD-L1陽性(腫瘍細胞の1%以上にPD-L1が発現)と判定された進行NSCLCとした。 被験者は、pembrolizumab 2mg/kg、同10mg/kg、ドセタキセル75mg/m2をそれぞれ3週ごとに静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。治療期間は24ヵ月であった。 主要評価項目は、全例および腫瘍細胞の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるOSおよび無増悪生存期間(PFS)とした。有意性の閾値は、OSがp<0.00825(片側検定)、PFSはp<0.001に設定した。 2013年8月28日~2015年2月27日に、日本を含む24ヵ国202施設に1,034例が登録され、pembrolizumab 2mg/kg群に345例、同10mg/kg群に346例、ドセタキセル群には343例が割り付けられた。それぞれ344例、346例、343例がITT解析の対象となり、そのうち139例、151例、152例がPD-L1≧50%であった。PD-L1≧50%ではOS、PFSとも有意に延長、高用量群でも有害事象が少ない 年齢中央値は、pembrolizumab 2mg/kg群と同10mg/kg群が63.0歳、ドセタキセル群は62.0歳であり、男性はそれぞれ62%、62%、61%であった。東アジア人が、19%、18%、18%含まれ、元喫煙者/喫煙者は81%、82%、78%、治療ライン数が3以上の患者は8%、10%、8%だった。 2015年9月30日までに521例が死亡した。OS中央値は、2mg/kg群が10.4ヵ月、10mg/kg群が12.7ヵ月、ドセタキセル群は8.5ヵ月であり、ドセタキセル群と比較して2mg/kg群が29%(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.88、p=0.0008)、10mg/kgは39%(0.61、0.49~0.75、p<0.0001)有意に延長した。 OSのサブグループ解析では、すべてのサブグループでpembrolizumab群(2群を統合)が良好であり、その多くで有意差が認められた。65歳以上、ECOG PS 0、扁平上皮がん、EGFR変異型では有意差がないのに対し、それぞれ65歳未満、ECOG PS 1、腺がん、EGFR野生型では有意差が認められた。 PFS中央値は、それぞれ3.9ヵ月、4.0ヵ月、4.0ヵ月であり、ドセタキセル群との比較で有意な差は認めなかった(2mg/kg群:p=0.07、10mg/kg群:p=0.004)。サブグループ解析では、女性、ECOG PS 0、EGFR変異型では有意差がなかったのに対し、それぞれ男性、ECOG PS 1、EGFR野生型ではpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であったが、組織型による効果の差はなかった。 PD-L1≧50%の患者では、OS中央値が2mg/kg群で46%(14.9 vs.8.2ヵ月、HR:0.54、95%CI:0.38~0.77、p=0.0002)、10mg/kg群では50%(17.3 vs.8.2ヵ月、0.50、0.36~0.70、p<0.0001)有意に改善した。この集団では、PFS中央値も2mg/kg群で41%(5.0 vs.4.1ヵ月、0.59、0.44~0.78、p=0.0001)、10mg/kg群でも41%(5.2 vs.4.1ヵ月、0.59、0.45~0.78、p<0.0001)有意に改善した。 なお、PD-L1発現が1~49%の患者では、OSがpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であった(HR:0.76、95%CI:0.60~0.96)が、PFSには差がなかった(1.04、0.85~1.27)。 有害事象の発現率は2mg/kg群が63%(215/339例)、10mg/kg群が66%(226/343例)、ドセタキセル群は81%(251/309例)であった。pembrolizumab群で頻度の高いものとして、食欲不振、疲労、悪心、皮疹が認められた(9~14%)。 pembrolizumabでとくに注意すべき有害事象では、甲状腺機能低下症、肺臓炎、甲状腺機能亢進症の頻度が高かった(4~8%)。 Grade3~5の治療関連有害事象の発現率は、2mg/kg群が13%(43/339例)、10mg/kg群が16%(55/343例)、ドセタキセル群は35%(109/309例)であり、pembrolizumab群で頻度が低かった。 著者は、「pembrolizumabは、プラチナ製剤ベースの治療後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLCの新たな治療選択肢であり、EGFR変異やALK転座のみられる患者にも適切な治療法である。PD-L1は、本薬によるベネフィットを得る可能性が高い患者を同定するバイオマーカーとして妥当と考えられる」としている。

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抗がん薬副作用マネジメントの進展

 2015年12月10日都内にて、「抗がん薬副作用マネジメントの進展」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である久保田 馨氏(日本医科大学附属病院 がん診療センター部長)は、抗がん薬の副作用対策を中心に講演。患者さんの負担を考えながら予防・対処する大切さを語った。 以下、セミナーの内容を記載する。【はじめに】 本セミナーでは「細胞障害性抗がん薬」の副作用のうち、好中球減少症とシスプラチン投与時の対処、さらに「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の副作用対策について述べる。【安易な予防的G-CSF投与は避けるべき】 「細胞障害性抗がん薬」で、注意すべき副作用に「発熱性好中球減少症」がある。この対処としては、以下の3点が推奨される。・リスクファクターの検討・単剤での有効性が確認されている薬剤の選択・発熱性好中球減少20%以上のレジメンでのG-CSF予防投与 ただし、最後の予防的G-CSF投与には注意が必要だ。過去、臨床では好中球減少が認められれば、発熱がない場合であってもG-CSF投与が行われてきた。 たとえば、発熱性好中球減少時の抗菌薬投与には、明らかな生存率改善のエビデンスがある。しかし、G-CSF投与を抗菌薬と同様に考えてはいけない。低リスク例へのG-CSF予防投与はエビデンスがなく、現状のガイドラインを鑑みても適切ではない。薬剤追加は、場合によってはがん患者のQOLを低くすることもある。それを上回るメリットがない限り、医療者は慎重になるべきである。【つらい悪心/嘔吐には適切な制吐薬を】 抗がん剤による悪心・嘔吐は患者にとって、最もつらい症状と言われており、QOL悪化につながる。実際、「がん化学療法で患者が最も嫌う副作用2005」の調査結果1)によると、コントロール不良の悪心/嘔吐(CINV)は死亡と同程度の位置付けであった。とくに、シスプラチンは催吐性リスクが高く、悪心・嘔吐の予防のために、適切な制吐薬を使用すべきである。2013 ASCO総会において発表されたTRIPLE試験では、パロノセトロンが遅発期において有意に悪心・嘔吐を抑制したことが示されている。高度催吐性化学療法時には、パロノセトロン+デキサメタゾン+アプレピタントの併用で悪心・嘔吐を予防することを推奨したい。【短時間輸液療法への期待】 患者さんは1回当たりの治療時間が長引くことを嫌がる。シスプラチン投与では輸液や利尿薬を使用し腎障害の軽減を図るわけだが、投与前後の輸液投与に4時間以上、薬剤の点滴に2時間以上かかるため、トータルで10時間以上かかってしまう。単純に尿量を確保する目的での大量補液は、外来治療が進む昨今の状況には合わず、そこまでして投与しても、Grade2以上の血清クレアチニン上昇は2割程度報告されていた2)。 そこで、マグネシウム補充がシスプラチン起因性腎障害抑制につながるとの報告3)を基に、久保田氏の所属施設を中心にマグネシウム補充を取り入れた形で短時間輸液療法を行うこととした。トータル3時間半の投与法で検討した結果、97.8%の患者でGrad2以上の腎障害の出現はなかった4)。 このように、現時点でもがん患者のQOL向上を目指す治療方法は研究され、実施されつつある。【分子標的薬、免疫CP阻害薬の副作用対策】 「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の副作用は、「細胞障害性抗がん薬」の副作用とは位置付けが異なる。 分子標的薬の副作用は、その標的を持つ正常細胞に限定して現れる。たとえば、抗EGFR抗体薬やEGFRチロシンキナーゼ阻害薬による皮膚症状などが代表的だ。この対策として、久保田氏の所属施設では、医療者用のスキンケア指導パンフレットを作成し活用している。保湿剤の一覧や塗布法、爪の切り方、入院・外来時スキンケア指導フローなどを共有することで、適切な対処につながる。 また、重大な副作用として「間質性肺炎」も注意が必要だ。投与4週以内の発症が多いので、患者さんには「発熱」「空咳」「息切れ」が出たら必ず来院するよう伝えることが大切だ。 最近登場した免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、体内の多岐にわたる場所で起こる可能性がある。下垂体機能低下などホルモン異常による倦怠感なども、見逃さないよう注意が必要である。これまでの薬と異なり、投与10ヵ月後など有害事象がかなり遅れて発現するケースも報告されている。多くが外来で投与されることから、患者や家族へ事前説明をしっかりと行うことを意識していただきたい。【まとめ】 抗がん薬治療では副作用マネジメントが重要となる。薬剤の作用機序や薬物動態を正しく理解することは、副作用の適切な対処につながる。医療者側は、ぜひ正しい知識を持って、患者さんのために積極的な副作用対策を行っていただきたい。

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ハイリスクIgA腎症への免疫抑制療法の効果は?/NEJM

 ハイリスクIgA腎症の患者に対し、積極的支持療法に加え免疫抑制療法を併用しても、臨床的完全寛解率に有意差はみられなかった。また、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下率についても有意差はみられず、一方で、併用群では有害事象の発生が多く観察された。ドイツ・アーヘン工科大学のThomas Rauen氏らが3年にわたる多施設共同の非盲検無作為化比較試験の結果、報告した。IgA腎症患者について、支持療法に免疫抑制療法を併用した場合のアウトカムについては、これまで明らかにされていなかった。NEJM誌2015年12月3日号掲載の報告。単独支持療法または免疫抑制療法併用で3年間治療 試験の対象は、1日の尿蛋白排泄量が0.75g以上の持続性蛋白尿の患者337例。当初6ヵ月は導入期間として、蛋白尿の程度に基づきレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与量などについて調整を行い、支持療法を行った。その後、被験者を無作為に2群に分け、一方には支持療法のみを(支持療法群)、もう一方には支持療法と免疫抑制療法を併用し(併用群)、いずれも3年間継続した。 主要エンドポイントは階層法で順序付けをした2つで、試験終了時の臨床的完全寛解(蛋白とクレアチニンをグラム測定した際の尿蛋白・クレアチニン比が0.2未満、eGFRのベースラインからの低下幅が5mL/分/1.73m2体表面積未満)と、eGFRの15mL/分/1.73m2体表面積以上の低下だった。臨床的完全寛解、eGFR低下率とも両群間の有意差はみられず 被験者のうち、導入期間を終了したのは309例。そのうち1日の尿蛋白排泄量が0.75g未満に減少したのは94例だった。 残る患者のうち、最終的に162例について無作為化を行い、80例を支持療法群、82例を併用群に割り付けた。 結果、試験終了後に臨床的完全寛解が認められたのは、支持療法群4/80例(5%)に対し、併用群は14/82例(17%)で、両群間の有意差は認められなかった(p=0.01)。 また、eGFRの15mL/分/1.73m2以上低下についても、達成患者は支持療法群22例(28%)、併用群21例(26%)で、両群間の有意差はみられなかった(p=0.75)。eGFRの年間低下率についても、有意差はみられなかった。 一方、有害事象は、重度感染症、糖代謝異常、当初1年間の5kg以上の体重増加が、いずれも併用群で支持療法群よりも高率に認められた。また併用群1例で敗血症による死亡が報告された。

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週1回のDPP-4阻害薬、メカニズムと安全性は?

 2015年11月27日都内にて、オマリグリプチン(商品名:マリゼブ)新発売を受けて「糖尿病治療における週1回投与のDPP-4阻害薬の役割」をテーマにメディアセミナーが開催された(主催:MSD株式会社)。以下、セミナーの概要を伝える。2型糖尿病治療に大きな影響をもたらした「DPP-4阻害薬」 DPP-4阻害薬は「血糖依存的にインスリン分泌量を調節する」というこれまでにないアプローチで、日本の2型糖尿病市場で大きな存在感を放っている。事実、2009年に本邦初のDPP-4阻害薬・シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)の発売以来、DPP-4阻害薬は、現在日本の2型糖尿病市場においてシェア第1位を誇っている。しかし、依然として糖尿病治療薬の服薬順守率は決して高くはない。そのため、服薬負担が少なく、患者の多様なライフスタイルに対応できる薬剤の登場が望まれている。週1回で効果が続くメカニズム オマリグリプチンは2015年11月26日に発売となった、本邦2成分目の週1回投与・長時間作用型DPP-4阻害薬である。本薬剤が長時間作用するのは、主に以下の4つの働きが関与し、半減期が延長したためである(t1/2=82.5時間)。(1)肝代謝をほとんど受けない(2)特定の組織に蓄積せず、分布容積が大きい(3)血流にのって腎臓へ移行する薬物量が少なく、濾過量が少ない(4)尿細管で薬剤の大部分が再吸収され、再び全身循環する有効性・安全性は連日投与製剤と同程度 国内第III相臨床試験の結果より、本薬剤はシタグリプチンと同程度の有効性、忍容性・安全性を有していることが示唆された。さらに、スルホニル尿素薬、ビグアナイド薬など他の経口糖尿病治療薬との併用においても臨床効果が確認された。 なお、本剤は腎排泄型の薬剤であるため重度腎機能障害のある患者、末期腎不全患者(eGFR<30)は減量して使用する必要がある点に注意が必要である。週1回製剤のメリット 現在、海外における本剤の心血管安全性を評価する大規模臨床試験が進行中であり、さらなるエビデンスが収集されている。試験結果によっては、2型糖尿病治療薬においてDPP-4阻害薬の重要性はますます高まってくる。 演者の石井 均氏(奈良県立医科大学 糖尿病学講座 教授)は、「週1回投与のDPP-4阻害薬によって、従来の血糖降下作用に加えて、その利便性が患者のQOLにも好影響を及ぼす可能性がある。これは患者にとって非常に大きなメリットとなる」と強調し、セミナーを結んだ。プレスリリースはこちら(ケアネット 中野 敬子)関連コンテンツマリゼブ新発売情報

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EGFR-TKI耐性肺がんの再生検 その現状

 EGFR-TKI耐性非小細胞肺がん(以下、NSCLC)に有効な第3世代EGFR-TKIの登場で、耐性獲得後の遺伝子変異が治療方針に大きな影響を及ぼすこととなり、同時に耐性獲得時の再生検も重要性が増すことになる。再生検は、診断時生検に比べ手技的難易度が高いといわれるものの、その実施状況についての情報は少ない。そのような中、2015年11月26日から開催された第56回日本肺癌学会において、EGFR-TKI耐性NSCLCの再生検が大きく取り上げられた。細胞診が半数を占める先進5施設の成績 ワークショップ「再生検」(座長:大阪府立成人病センター 今村文生氏、ディスカサント:兵庫県立がんセンター 里内美弥子氏)では、5人の演者(がん研究会有明病院 小栗知世氏、倉敷中央病院 横山俊秀氏、埼玉県立がんセンター 福泉 彩氏、大阪市立総合医療センター 津谷あす香氏、鹿児島大学 隈元朋洋氏)が、再生検の現状の研究結果を発表。5つの演題を総括して、里内美弥子氏は以下のように解説した。 第3世代EGFR-TKI、AZD9291(osimertinib)は、本邦でも早期に臨床の舞台に現れると予想される。AZD9291の使用にあたっては、コンパニオン診断薬cobas EGFR Mutation Test v2でのEGFR変異の確認が必要である(FDA、第3世代TKI(AZD9291)を承認 参照)。 5つの演題をまとめると、再生検の部位は、診断時と比べ原発巣からの採取が大きく減って3割程度となり、脊髄液や胸水からの採取が増えている。再生検時の手技は、診断時に比べ気管支鏡が大幅に減り、胸水および腹水穿刺が増加し半分以上を占める。また、いずれの施設も組織検体を採る難易度が高いためか、細胞診が半数程度であった。 T790M陽性率は全体で4割程度。採取部位によって陽性率は異なり、髄液での陽性率は低かった(髄液を除くと5割程度となった)。 EGFR変異の検査法については、今後使われるであろうCobas法での実施は少なく、発表施設中1施設のみ、他の施設はPCR Invader法であった。AZD9291のコンパニオン診断薬であるCobas法では細胞診検体は指定外であり、再生検で多くなると予想される細胞診検体に対し、どう対応していくか検討が必要となるだろう。ハイボリュームセンターにおける再生検の現状 次に、九州がんセンター 瀬戸 貴司氏らによる、本邦最大規模となる再生検の実態調査結果がポスターセッションで発表された。この調査は、再生検の経験がある国内の30施設における進行NSCLCの再生検の実態を調査した多施設共同後ろ向き観察研究である(胸水を用いた再生検例は対象から除外)。主要評価項目は再生検成功率(がん細胞が採取できた症例数/再生検症例数)であった。 調査の結果、成功率は79.5%(314例/395例)であった。再生検時の検体採取部位は原発巣55.7%、転移巣30.6%であった。転移巣は診断時の9.1%と比べ大きく増加していた。再生検の採取方法は経気管支アプローチが62.0%、経皮的アプローチが29.1%で、経皮的アプローチは診断時の7.6%から大幅に増加していた。採取部位と採取方法による成功率の差はみられなかった。再生検時の合併症は5.8%であった。 里内氏はワークショップの中で、現状の再生検の実施状況はばらつきが多いが、AZD9291の登場により、再生検は避けて通ることができないものになるだろう、と述べた。

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CKDリスクを予測する新たなバイオマーカーの可能性/NEJM

 可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ受容体(suPAR)の上昇は、ベースライン時の腎機能正常者において、慢性腎臓病(CKD)の発症および推定糸球体濾過量(eGFR)の加速度的な低下と有意に関連することが、米国・エモリー大学医学部のSalim S Hayek氏らの検討で示された。血漿中のsuPARの高値は、多様な病態の患者集団において、不良な臨床転帰や巣状分節性糸球体硬化症、糖尿病性腎症と関連することが知られている。これらの知見はまだ検証中であるが、腎臓病におけるsuPARの広範な役割が示唆されている。NEJM誌2015年11月12日号(オンライン版2015年11月5日号)掲載の報告。血漿suPAR値とCKD発症の関連を前向きコホート試験で評価 研究グループは、「血漿suPAR値はCKDの新規発症と関連する」との仮説を検証するために、心血管疾患患者を対象に大規模な前向きコホート試験を実施した(Abraham J and Phyllis Katz Foundationなどの助成による)。 2003~09年に、アトランタ市の3施設で心臓カテーテルを施行され、エモリー心血管バイオバンクに登録された3,683例(平均年齢63±12歳、男性65%、suPAR中央値3,040pg/mL)の血漿suPAR値を測定した。このうち2,292例(62%)で、登録時とフォローアップ期間中の受診時に腎機能の評価を行った。 suPAR値とベースラインのeGFReGFRの経時的変化、CKDの発症との関連につき、人口統計学的変量および臨床的変量で補正後に、線形混合モデルとCox回帰を用いて解析を行った。suPAR値の四分位数(Q1~Q4)別に、eGFRの変化およびCKDの発症の比較を行った。CKDは、eGFR<60mL/分/1.73m2と定義した。 ベースラインのsuPAR値が≧3,040pg/mL(中央値)の患者は、<3,040pg/mLの患者に比べ、年齢が高く、女性が多く、喫煙歴、高血圧、糖尿病、蛋白尿、冠動脈疾患、心筋梗塞歴の頻度が高く、高感度CRPが高値で、eGFRは低値であった(いずれもp<0.001)。CKD発症率が、Q3はQ1の2倍、Q4は3倍以上に ベースラインのsuPAR値が高い患者ほど、フォローアップ期間を通じてeGFR低下の程度が大きく、suPAR値が最大四分位群(Q4)の患者のeGFRの年間の変化が-4.2mL/分/1.73m2であったのに対し、最小四分位群(Q1)では-0.9mL/分/1.73m2であった(p<0.001)。 Q4のeGFRの年間の低下は、Q1およびQ2よりも大きく(いずれも、p<0.001)、Q3もQ1およびQ2に比べ年間の低下が大きかった(いずれも、p<0.001)。Q1とQ2、Q3とQ4の間には有意な差はなかった。 suPAR値関連のeGFRの低下は、ベースラインのeGFRが<60mL/分/1.73m2の患者では有意ではなく(-0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.9~0.7)、≧60mL/分/1.73m2の患者では有意であり(-1.2%、95%CI:-1.8~-0.6)、これらの間には有意な差が認められた(交互作用検定:p<0.001)。 また、ベースラインのeGFRが低い患者ほどsuPAR値に関連するeGFRの変動が小さく、ベースライン時に正常(90~120mL/分/1.73m2)であった921例のsuPAR値関連eGFRの低下が最も大きかった(交互作用検定:p<0.001)。 一方、ベースラインのeGFRが≧60mL/分/1.73m2の1,335例におけるCKDの発症率は、suPAR値の四分位がQ1からQ4へ1段階ずつ上がるに従って有意に増加し(ハザード比[HR]:1.40、95%CI:1.26~1.55、p<0.001)、≧3,040pg/mLの患者は<3,040pg/mLに比べて約2倍高かった(HR:1.97、95%CI:1.53~2.54、p<0.001)。 また、suPAR値がQ1の患者に比べて、Q3の患者のCKD発症率は2倍(HR:2.00、95%CI:1.38~2.89、p<0.001)、Q4は3倍以上(HR:3.13、95%CI:2.11~4.65、p<0.001)に達し、Q4はQ3の約1.5倍であった(HR:1.51、95%CI:1.11~2.06、p=0.01)。 著者は、「suPAR高値は、ベースライン時の腎機能正常者においてCKDの発症およびeGFRの加速度的な低下とそれぞれ独立の関連を示した」とまとめ、「これらの結果は、suPARが、CKDのバイオマーカーとして不可欠の要件を満たすことを示唆する」と指摘している。

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発症年齢、HbA1c、CKDが2型糖尿病患者の生命予後を規定する(解説:住谷 哲 氏)-453

 2型糖尿病患者の生命予後を改善するためのアプローチとしては、(1)2型糖尿病発症予防、(2)多因子介入(multifactorial approach)、(3)診断直後からの介入(legacy effect)が有用と考えられてきた。スウェーデンにおけるコホート研究である本論文は、これらのアプローチが正しかったことを支持すると同時に、その限界をも明らかにした点で重要である。 スウェーデン全国糖尿病レジスター(Swedish National Diabetes Register)に登録された2型糖尿病患者約40万例と、年齢・性別・居住地をマッチさせた対照患者約200万例を約5年間追跡した。これにより、スウェーデンにおけるほとんどの2型糖尿患者が網羅された。追跡期間中の総死亡率および心血管死亡率が比較されたが、重要なのは登録時の年齢、追跡期間中のHbA1c、アルブミン尿、eGFRによる層別解析がなされている点である。 2型糖尿病患者において、総死亡率の増加は年齢に関係なくHbA1cの上昇と単調に相関しており、全体ではHbA1cが1%上昇するごとに総死亡率は12%増加した。これはUKPDS35における疫学的検討の結果(総死亡率はHbA1c 1%の上昇につき14%増加)1)と一致していた。さらに総死亡率に関して、年齢とHbA1cとの間には交互作用を認めたが(p<0.001)、性別とHbA1cとの間には交互作用を認めなかった(p=0.21)。つまり、血糖コントロールが総死亡率に及ぼす影響は、年齢により異なるが性別による差はないことになる。表(原著Table 3)を詳細にみると、若年(<55歳)2型糖尿病患者においては、血糖コントロールが良好群(HbA1c<7.0%)の総死亡率のハザード比(HR)が1.92(95%信頼区間1.75~2.11)であり、不良群(HbA1c≧9.7%)では同4.23(3.56~5.02)であった。一方、高齢(≧75歳)2型糖尿病患者においてはそれぞれ0.95(0.94~0.96)、1.55(1.47~1.63)であり、血糖コントロールが総死亡率に及ぼす影響が、若年者に比較して減弱していることが示唆された。アルブミン尿、eGFRについても同様の解析がなされたが、HbA1cと同様に、高齢者においては若年者に比較して両者が総死亡率に及ぼす影響は減弱していた。 高齢(≧75歳)2型糖尿病患者におけるHbA1cの目標値を、どこに設定すべきか現時点でコンセンサスはない。この問題に対して、本論文は1つの答えを与えてくれると思われる。HbA1c 7.9~8.7%群における総死亡率のHRは、正常アルブミン尿群では1.01(0.97~1.05)、eGFR>60mL/min群では1.00(0.97~1.04)であり、対照群と差はなかった。したがって、正常アルブミン尿かつeGFR>60mL/minの高齢(≧75歳)2型糖尿病患者におけるHbA1cの目標値を8.7%以下とするのが1つの基準となるだろう。 これに反して、若年(<55歳)2型糖尿病患者においては、血糖コントロール良好(HbA1c<7.0%)かつ正常アルブミン尿群における総死亡率のHRは1.60(1.40~1.82)、HbA1c<7.0%かつeGFR>60mL/min 群においては1.73(1.55~1.92)であり、対照群に比較して有意に高値であった。この理由は明らかではないが、若年2型糖尿病患者群におけるスタチンおよびレニン・アンジオテンシンン・アルドステロン系阻害薬の服用率が、対照群に比較してそれぞれ8倍および5倍であったことを考慮すると、冒頭に述べた多因子介入のみでは、若年2型糖尿病患者における総死亡率抑制には不十分であることが示唆される。著者らが述べているように、禁煙の徹底、身体活動量の増加、新しい心血管保護薬の開発が必要であろう。 2型糖尿病患者の総死亡率は、対照群と比較して依然として高い。本論文により2型糖尿病発症年齢、血糖コントロール、アルブミン尿およびeGFRで規定される慢性腎臓病CKDが総死亡率の増加に関連することが再確認された。したがって2型糖尿病の発症をできるだけ遅らせること、早期からの多因子介入により良好な血糖コントロールを維持するとともに、CKD発症を予防することがきわめて重要であることも再認識する必要があろう。

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FDA、第3世代TKI(AZD9291)を承認

 アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者[CEO]:パスカル・ソリオ、以下、アストラゼネカ)は、2015年11月13日、AZD9291(商品名:TAGRISSO)80mg錠が、EGFR-TKIによる治療後に病勢進行した転移 EGFR T790M変異陽性非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得したと発表。AZD9291はFDAにより、迅速審査、画期的治療薬、優先審査および迅速承認のステータスを付与されていた。 AZD9291のFDA承認は、EGF-TKIの使用中または使用後に病勢進行した411例のEGFR T790M変異陽性NSCLCにおいて、有効性を示した2つのAURA第II相試験(AURA第II相延長試験、AURA2試験)のデータに基づいている。  AZD9291の頻度の高い有害事象は、下痢(全グレード:42%、グレード3/4:1%)、発疹(全グレード:41%、グレード3/4:0.5%)、皮膚乾燥(全グレード:31%、グレード3/4:0%)、爪毒性(全グレード:25%、グレード3/4:0%)であった。警告・使用上の注意には間質性肺疾患、QT間隔延長、心筋症、および胎児毒性が含まれる。 AZD9291のコンパニオン診断薬として、cobas EGFR Mutation Test v2も承認された。アストラゼネカ株式会社プレスリリースはこちら。FDAのプレスアナウンスメントはこちら。

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遺伝子変異陽性NSCLCに分子標的薬+抗がん剤治療

 日本イーライリリー株式会社は2015年11月13日、都内でプレスセミナー「非小細胞肺がん治療の現状と今後の展望」を開催した。演者である和歌山県立医科大学 呼吸器内科・腫瘍内科 教授の山本信之氏は、その中で、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(以下、NSCLC)における分子標的治療薬と抗がん剤の併用の可能性について、以下のように解説した。 肺がんの5年生存率はStageIで80.5%。しかし、StageIVでは4.6%となり、多くは遠隔転移により生存が増悪する。StageIV非小細胞肺がんの生存期間は、化学療法の進化により30年で1.5倍に延長した。そして、分子標的治療薬の登場により、その後の10年間でさらに3倍に延長。最近の第2世代EGFR-TKIの試験結果では、日本人の代表的なEGFR変異であるex19del患者の全生存期間中央値は46ヵ月を超える。このようにドライバー遺伝子の変異に適合する分子標的治療薬を使うことで、治療成績は著しく向上している。肺癌診療ガイドラインでも非扁平上皮NSCLCの初回治療にあたっては、EGFR、ALKの遺伝子変異が陽性であれば、EGFR-TKI、ALK阻害薬などの分子標的治療薬を優先して投与することとなっている。 だが、治療成績は向上したものの、現在でも進行がんではほとんど治癒に至らず、分子標的治療薬だけでは、完全に進行を抑えることはできないことがわかる。そのようななか、EGFR遺伝子変異例であっても、分子標的治療薬に加え抗がん剤を十分投与することにより、生存期間が延長する可能性が示唆されている。本年(2015年)の世界肺癌学会(WCLC)において、抗がん剤の中でも非扁平上皮NSCLCへの有効性が確立しているペメトレキセドを用いた、無作為化比較第II相試験が発表された。EGFR変異陽性NSCLC患者において、ゲフィチニブ・ペメトレキセド併用群とゲフィチニブ単独群を比較したものである。結果、併用群が単独群に比べ、無増悪生存期間中央値を有意に延長させた(HR=0.68、p=0.029)。第II相試験の結果であり、今後も検討が必要だが、抗がん剤の併用の有効性を示唆したものといえる。本邦でも、未治療のEGFR変異陽性NSCLCにおいて、ペメトレキセド・カルボプラチン・ゲフィチニブ併用群とペメトレキセド・カルボプラチン併用群を比較する第III相比較試験(NEJ009)が開始される。 非扁平上皮NSCLCでは、第2第・3世代EGFR-TKIの活用とともに、遺伝子変異陽性例における抗がん剤と分子標的治療薬の組み合わせが検討されていくであろう。

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