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肺がん再生検、実施状況や成功率は?―会員医師によるアンケート結果 第4回【肺がんインタビュー】

第3世代EGFR-TKIオシメルチニブが登場し、再生検によりT790M変異の有無を確認することが重要となっています。2017年7月には血漿検査が保険適用されましたが、組織検査が実施困難な場合に限られ、患者1人あたり算定は1回という条件が設けられるなど、依然として多くの症例で適時組織検査を実施しながら、治療方針を決定していくことが求められています。手技そのものを含め、採取部位や生検方法の選択など、「難しい」といわれることも多い再生検について、ケアネット会員の医師を対象に、自施設での実施状況や成功率についてうかがいました。結果概要がん診療連携拠点病院以外の施設では、再生検成功率20%未満が最も多い再生検できない理由は「再生検困難な部位」「PS不良」「患者拒否」がん診療連携拠点病院以外では「設備や技術的な問題」も理由に再生検のタイミングは「次の治療が必要になったとき」が60%強生検部位:再生検では転移巣が増加生検手技:再生検で減る気管支鏡、増える経皮的生検調査概要実施日時2017年6月1日、6月16日形式webアンケート対象ケアネット・ドットコム会員医師のうち呼吸器内科、呼吸器外科、腫瘍科回答数各回100名

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肝がん1次治療、レンバチニブ対ソラフェニブREFLECT試験の日本人データ/日本臨床腫瘍学会

 レンバチニブ(商品名:レンビマ)は、VEGFR1~3、FGFR1~4、PDGFRα、RET、KITを標的とした経口マルチキナーゼ阻害薬であり、進行肝細胞がん(HCC)において、従来の標準治療薬であるソラフェニブ(商品名:ネクサバール)に対する非劣性が国際無作為化オープンラベル第III相非劣性試験REFLECT試験で示されている。第15回日本臨床腫瘍学会では、同試験の日本人集団の解析結果が、国立がん研究センター東病院池田 公史氏より発表された。 REFLECT試験は、全身化学療法治療歴のない切除不能な肝細胞がん患者954例を対象とし、レンバチニブ群とソラフェニブ群に1:1に無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)非劣性の検証、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、客観的奏効率(ORR)、安全性であった。全集団のOSはレンバチニブ群で13.6ヵ月、ソラフェニブ群では12.3ヵ月。HRは0.92、95%CIは0.79~1.06であり、主要評価項目の非劣性マージン1.08を達成し、PFS、TTP、ORRの有意な改善を示した。 日本人集団のOSは、レンバチニブ群17.6ヵ月(12.2~23.0)、ソラフェニブ群17.8ヵ月(11.9~19.5)であった。HRは0.90、95%CIは0.62~1.29であり、全集団に比べ若干長い傾向であった。日本人集団のORRはレンバチニブ群29.6%(19.7~39.6)、ソラフェニブ群6.9%(1.6~12.2)と、レンバチニブ群で有意であった(p=0.00006)。 レンバチニブ群の有害事象発現率は、下痢、疲労感を除き全集団に比べ、日本人集団で多くみられた。■参考REFLECT試験(Clinical Trials.gov)

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メトホルミン、腸内細菌叢や免疫系への影響は?

 最近の研究で、メトホルミンが腸内細菌叢や免疫系にも影響を及ぼすことが明らかになっている。このことは、2型糖尿病に対してだけではなく、がんやその他の疾病に対するメトホルミンの新たな適応の可能性を示すものである。カナダ・McGill大学のMichael Pollak氏は、これらの分野におけるいくつかの研究結果について概観し、「基礎研究で得られている結果を基に、細菌叢の全体像や薬物動態に注意を払いつつ、臨床的関連性を明らかにしていくことが重要だろう」とまとめている。Diabetologia誌オンライン版2017年8月2日号に掲載。メトホルミンと腸内細菌叢 メトホルミンへの曝露が、ヒトの腸内細菌叢および腸内代謝物における有意な変化(例:細菌叢の組成の変化、酪酸産生の増加)を引き起こすというエビデンスがある。ただし、その詳しいメカニズムは未定義のままだ。メトホルミンによって腸内細菌叢が変化する程度は構成する細菌の種類ならびに宿主因子の影響を大きく受けると考えられ、問題はより複雑である。しかし、遅延製剤(Met DR)による血糖降下作用を確認した臨床試験結果などから、メトホルミンの治療効果の少なくとも一部が胃腸系への影響に起因することは確認されている。メトホルミンと免疫系 多数の基礎研究でメトホルミンと免疫系との関連が明らかになっている。メトホルミンがAMPKを活性化し、メモリーT細胞に作用することが示されているほか、抗腫瘍効果の増強や、結核や多発性硬化症などにおける抗炎症作用も示唆されている。一方で、膵がんの治療におけるメトホルミンの有効性を評価した臨床試験では、その利点は実証されなかった。ベースライン時の免疫系の状態に応じて、免疫機能に対するメトホルミンの影響は複雑に変化する可能性があり、基礎研究で得られた結果がメトホルミンの臨床的な有効性につながるか否かを判断するには、さらなる研究が必要である。■「メトホルミン」関連記事eGFRが30未満は禁忌-メトホルミンの適正使用に関する Recommendation

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IgA腎症への経口ステロイドで感染症リスク増/JAMA

 IgA腎症で蛋白尿1g/日以上の患者において、経口メチルプレドニゾロンの服用は重篤有害事象のリスクを、とくに感染症のリスクを増大することが、国際多施設共同無作為化試験「TESTING」の結果、示された。筆頭著者の中国・北京大学第一病院のJicheng Lv氏らは、「結果は潜在的な腎ベネフィットと合致しているが、試験が早期終了となったため、治療ベネフィットについて最終的な結論を示すことはできない」としている。ガイドラインでは、IgA腎症および持続性蛋白尿を認める患者に対しコルチコステロイドの使用を推奨しているが、その影響は明らかになっていなかった。JAMA誌2017年8月1日号掲載の報告。有効性、安全性についてプラセボ対照無作為化試験 TESTING(Therapeutic Evaluation of Steroids in IgA Nephropathy Global)試験は、オーストラリア・シドニー大学の研究部門(The George Institute for Global Health)がコーディネートしたマネジメント委員会監督の下で、中国、オーストラリア、インド、カナダ、マレーシアの最高100施設で実行するようデザインされた。研究者主導、二重盲検プラセボ対照で、血圧コントロールやレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬投与など適切な支持療法を受けるIgA患者における、経口メチルプレドニゾロン服用の腎アウトカムへの重大リスクを検討した。 適格患者(蛋白尿1g/日以上、eGFR値20~120mL/分/1.73m2、RAS阻害薬で血圧をコントロール)を、経口メチルプレドニゾロン(0.6~0.8mg/kg/日;最大用量48mg/日)または適合プラセボを受ける群に1対1の割合で無作為に割り付け、2ヵ月間投与。その後4~6ヵ月をかけて漸減し離脱に至った。 主要アウトカムは、末期腎不全、腎不全による死亡、またはeGFR値40%低下の複合とした。また、事前に規定した安全性アウトカムは、重症感染症、糖尿病の新規発症、消化管出血、骨折/骨壊死、心血管イベントの発生であった。ステロイド投与群で重症感染症が過剰に発生、試験は中止に 試験は、必要サンプルサイズ750例、主要アウトカム発生335例、平均追跡期間は5年と推算され開始されたが、262例が無作為化を受け、追跡期間中央値2.1年時点で、重篤有害事象の発生が過剰に認められたため中止となった。 262例(メチルプレドニゾロン群136例、プラセボ群126例)は、平均年齢38.6歳(SD 11.1)、女性96例(37%)、eGFR値59.4mL/分/1.73m2、蛋白尿2.40g/日であった。 報告された重篤有害事象は24例で、メチルプレドニゾロン群で20例(14.7%)が報告された。プラセボ群は4例(3.2%)で(p=0.001、リスク差:11.5%[95%信頼区間[CI]:4.8~18.2])、メチルプレドニゾロン群の有意な増大は、重症感染症の過剰な発生(11例[8.1%、2例は死亡]vs.0例)によるものであった(リスク差:8.1%[95%CI:3.5~13.9]、p<0.001)。 主要複合腎アウトカムの発生は、メチルプレドニゾロン群では8例(5.9%)であったのに対し、プラセボ群では20例(15.9%)報告された(ハザード比:0.37[95%CI:0.17~0.85]、リスク差:10.0%[95%CI:2.5~17.9]、p=0.02)。

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グラルギンU100使用中の1型糖尿病患者は低血糖を回避するためにデグルデクにSWITCHすべきか?(解説:住谷 哲 氏)-711

 DCCTおよびその後の延長試験であるEDICにおいて、厳格な血糖管理が1型糖尿病患者の細小血管障害および長期的には動脈硬化性心血管病(ASCVD)さらには総死亡を減少させることが明らかにされた1)。つまり1型糖尿病患者においては可能な限り正常血糖を目指す厳格なコントロールが望ましいといえる。しかし厳格な血糖管理は低血糖とのtrade-offであり、現実には可能な限り低血糖(とくに第三者の介助を必要とする重症低血糖 severe hypoglycemia)を生ずることなく血糖をコントロールすることが目標となる。将来的にclosed-loop insulin delivery systemまたは膵β細胞の再生が現実となればこの問題は解決するであろうが、当面は基礎インスリン(basal insulin)と食事インスリン(bolus insulin)からなるbasal-bolus therapy(BBT)を用いて、インスリン量を患者に応じて調節していくことになる。 本試験はより半減期の長い基礎インスリンであるデグルデクが、最も普及している基礎インスリンであるグラルギンU100に比べて低血糖が少ないかを検証したものである。理論上はグラルギンU100と比較して半減期が長く、より平坦な血糖降下作用を示すデグルデクのほうがより低血糖が少ないと考えられる。試験デザインは二重盲検無作為化クロスオーバー非劣性試験であり、クロスオーバー試験の弱点であるcarryoverの影響を最小にするように工夫された。主要評価項目は重症低血糖とBG<56mg/dLを伴う症候性低血糖の複合評価項目とされた。さらに2次評価項目は夜間低血糖(午前0時から6時までに生じた主要評価項目)である。 その結果、グラルギンU100に対するデグルデクの主要評価項目のrate ratio(RR)は0.89(95%CI:0.85~0.94、優位性検定p<0.001)であり、デグルデク群で有意に少なかった。同様に重症低血糖、夜間低血糖はそれぞれ0.65(0.48~0.89、優位性検定p=0.007)、0.64(0.56~0.73、優位性検定p<0.001)であり、両者ともにデグルデク群で有意に少なかった。 RCTの結果を実臨床に適用するときに常に問題となるのが一般化可能性 generalizabilityの問題である。おそらく本試験も例外ではないと思われる。対象患者は(1)1年以内に重症低血糖の既往がある、(2)腎機能異常がある(eGFR:30~59mL/min/1.73m2)、(3)低血糖無自覚症がある、(4)罹病期間が15年以上、(5)12週間以内に低血糖発作がある、以上のいずれかに該当する、低血糖を生じやすい患者が選ばれている。さらにTreat to targetを用いて、空腹時血糖が71~90mg/dL、毎食前血糖が71~108mg/dLになるようインスリンの増量が必要とされた。この血糖管理目標はきわめて厳格であり、あえて低血糖が容易に生じやすい状況下で試験が行われたともいえる。試験終了時のFPGがデグルデク、グラルギンU100両群ともに>130mg/dLであったことからも、低血糖に阻まれてインスリンが目標血糖値を達成するまで増量できなかった可能性が示唆される。したがって、本試験で得られたのと同じ結果が、上述した(1)~(5)に該当しない患者に対して、より緩やかな目標血糖値に基づいてインスリン投与を実施した場合に、得られるかは明らかではない。しかし本試験は、デグルデクがグラルギンU100に比べて、より少ない低血糖で同様の血糖管理を達成可能であることを明らかにした。グラルギンU100使用中で低血糖の壁に阻まれて目標血糖値を達成できない患者に対しては、グラルギンU100からデグルデクへのSWITCHを考慮するのも選択肢の1つであると思われる。

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肺がん治療ターゲット・セラピー、未来への系譜/アストラゼネカ 第2回【肺がんインタビュー】

第2回 肺がん治療ターゲット・セラピー、未来への系譜/アストラゼネカ肺がん治療に大きな変化をもたらしたEGFR-TKIゲフィチニブ。さらに、2016年には第1・第2世代の耐性をも克服した第3世代EGFR-TKIオシメルチニブを発売したアストラゼネカ。ターゲット・セラピーを通し、肺がん治療の発展に貢献し続ける同社だが、その道のりは平坦ではなかった。同社オンコロジー事業本部マーケティング統括部長 森田慎一郎氏に、肺がん治療と共に進んできた道のりと今後の展開を聞いた。ケアネットの調査で、すべてのがん種を通し、ドクターが最もインパクトが大きいと評価した薬剤はゲフィチニブでした。ゲフィチニブは、発売前から非常に高い期待を背負っていましたが、その後の有害事象の発現で事態が大きく変わったかと思います。その当時の状況はいかがでしたかアストラゼネカ株式会社 オンコロジー事業本部マーケティング統括部長 森田 慎一郎氏メディア報道の影響が大きいのですが、ゲフィチニブは発売前から夢の新薬として扱われました。実際に、助からない患者さんがゲフィチニブにより短期間で劇的に改善するといった、従来の抗がん剤では経験したことのない効果を治験ドクターが体験しており、それも前評判を高めた要因だと思います。しかし、発売後に間質性肺炎の有害事象が発現し、一気にネガティブな報道に変わってしまいました。報道の影響は非常に大きく、患者さんがゲフィチニブによる治療を拒否するという事態が起きました。せっかくゲフィチニブが使える可能性があっても使えないという、歯がゆい思いを、臨床現場のドクターもわれわれも経験しました。有害事象発現の後に3,000例以上を対象とした特別調査と、間質性肺炎のリスク特定のためのケースコントロール試験も実施しました。このような状況の中でも、ドクターは臨床でゲフィチニブが一定の患者さんには確実に効果があるという実感を得ていました。この薬剤は絶対に必要な薬だ、とドクターが確信されていたこともあり、全面的な協力をいただき、短期間でデータを収集できました。逆風の中にはありましたが、ドクターからは訪問するたびに、良い話を聞かせてもらえるので、弊社としても勇気づけられ、逆風に倒れることなく、活動していたことを覚えています。そのような経過を経て、EGFR-TKIの位置付けが、明らかになっていくわけですね前述のとおり、どのような患者さんに効果があり、どういう患者さんに副作用が起こるのか、早い段階で日本のドクターは掴んでおられました。そこで、奏効が期待できる臨床的背景(腺がん、非喫煙者[あるいは過去少量喫煙者]、アジア人)の患者さんを対象に、IPASS試験を実施しました。予想どおり、この患者集団では著明な効果を証明しました。その後、EGFR遺伝子変異におけるEGFR-TKIの有効性が明らかになり、以前からのドクターの勘どころが、ターゲット・セラピーとして科学的に証明されました。ゲフィチニブはグローバルな薬剤ですが、日本のドクターの熱意が育ててくれた薬剤であるといえます。画像を拡大する画像を拡大する臨床背景で選択した患者で有意なPFS延長を示し、EGFR変異によるサブグループ解析では、さらなる著明な効果を示したIPASS試験EGFR-TKIの位置付けが確立していきますが、今度は耐性の問題が浮上します。そこで、耐性を克服した第3世代EGFR-TKIオシメルチニブを臨床現場に登場させますが、その経緯について教えていただけますかEGFR-TKI耐性メカニズムにT790M遺伝子が関与することは、かなり以前から明らかになっていました。臨床現場からも耐性を克服する薬剤の開発について強い要望をいただいており、多くの製品が、耐性克服に挑戦しましたが、T790Mを抑制するまで薬剤濃度を上げると、野生型EGFRチロシンキナーゼも阻害してしまい、有害事象が強くなってしまいます。画像を拡大するT790M変異症例でオシメルチニブが著明かつ有意なPFS延長を示したAURA3試験そのような中、オシメルチニブは最新テクノロジーを活用し、野生型EGFR チロシンキナーゼへの活性を抑え、T790Mを強力に阻害するようデザインされました。従来の薬剤と根本的に異なる方法で開発されたのです。実際にAURA試験などの臨床試験で、T790M変異症例に対する著明な効果を証明しています。オシメルチニブはまた、T790Mのみならず、Exon19、21といったEGFR遺伝子変異にも良好な効果を示します。現在、T790M変異から拡大し、EGFR変異の非小細胞肺がんに対する1次治療の第III相試験FLAURA試験も進行中です。その後、オシメルチニブが承認されるわけですが、承認から薬価収載までの間、同剤の無償提供をされました。その状況について教えていただけますかT790M変異の患者さんは、治療選択肢がきわめて限られています。オシメルチニブを1日も早くに使うべき患者さんが大勢おられ、臨床現場からの強い要望がありました。そういった要望にお応えするために、薬価収載前の薬剤提供を検討しました。実際に困っている患者さんに使えるよう、さまざまな方法を検討した結果、厚生労働省の定める「保険外併用療養費制度」のもと、本剤の無償提供に踏み切りました。ただし、有害事象などの問題もありますので、提供先は、治験実施施設のうち、承認された適応、用法・用量に従ってのみ使用する、弊社が実施する市販直後調査・全例調査や適正使用推進等の各種安全対策に協力いただける、といった条件に合意いただけた施設に限定しました。オシメルチニブの使用には再生検によるT790Mの確認が必要となります。とはいえ、再生検をしてもらうというのは容易ではないと思いますが画像を拡大する第3世代EGFR-TKIオシメルチニブオシメルチニブが登場するまでは、T790Mへの治療手段がなかったため、再生検という概念はなかったわけです。いわゆるゼロからのスタートですが、EGFR-TKI耐性となった患者さんに一人でも多く、治療機会を見つけていただくため、講演会などを開催し、再生検の重要性と共に、再生検の実際について広める活動を行っています。呼吸器科の先生方は気管支鏡の専門家ですが、再生検は新たなチャレンジです。そこで、スペシャリストを招いて、組織へのアプローチ、採取のテクニックなどを紹介いただきました。また、気管支鏡メーカーとタイアップして、機械を現場に持ち込んだハンズオンセミナーを開催し、実際の手技を体験いただいています。さらに、肺外、肝臓、骨、脳といった、呼吸器科がアクセスできない部位の対策として、消化器内科、整形外科、脳外科、放射線科といった他科連携のノウハウも講演会でオピニオンリーダーから共有していただきました。このような再生検の普及活動をしていますが、オシメルチニブ上市時、40%程度だった再生検実施施設が、現在では90%を超えています。海外では50%程度ですので、日本がいかに高いかわかります。この数字は、日本の先生方が、患者さんのために非常に熱心に再生検に取り組んでいることを表しているものです。われわれも何らかの形で、ここに貢献できたのではないかと思っています。組織再生検不能な患者さんのためにリキッドバイオプシーの手段があります。リキッドバイオプシーについても、保険点数が付くまで検査結果の倫理提供をなさっていましたね再生検実施率は海外とは比較にならないほど高くなりました。とはいえ、組織生検できる症例は60%で、残りの40%は患者さんの病状や腫瘍の形状など何らかの理由で生検できないというのが現状です。治療できるかもしれない患者さんが、目の前にいるのに何もできない、というジレンマが臨床現場にもわれわれにもありました。しかし、検査の保険適用には時間がかかります。その間にT790M変異検査ができないまま、状態が悪くなっていく患者さんが大勢いらっしゃいます。そのような患者さんの緊急治療を支援する観点から、保険適用前に何かできることはないか、社内で検討し、関係各省との調整を行いました。そして、オシメルチニブのコンパニオン診断薬コバスEGFR変異検出キットv2.0(ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いたT790M血漿検査結果の倫理提供の実施に至りました。T790M検査の結果を弊社が購入、無償提供することになるのですが、再生検不能な患者さんにアクセスしてもらう環境を作りたい、という強い思いから実現できたのだと思います。今後はどのような製品で肺がん治療に貢献する予定ですか? パイプラインについて教えていただけますかこれまでEGFR-TKIを通して肺がん医療に貢献してきました。しかし、EGFR変異は非小細胞肺がん患者さんの35%程度です。残りの65%の患者さんにも貢献したいと考えています。免疫チェックポイント阻害薬は、その目標を実現する1つの候補です。われわれは、抗PD-L1抗体durvalumabを有しており、この製品を肺がん領域でも開発しています。durvalumabでは、他の免疫チェックポイント阻害薬とは異なるアプローチをしています。代表的なものの1つとして、非小細胞肺がんStageIII患者さんの化学放射線治療後の維持療法として効果を検討した、PACIFIC試験があります。Unmet Medicalニーズの高い患者集団ですが、すでにポジティブな結果が出ており、今秋の国際学会で詳細を発表する予定です。durvalumabについては、StageIVの1次治療という、より多くの患者さんを対象とした臨床試験MYSTIC試験も進行しています。この試験では、durvalumabと弊社の抗CTLA-4抗体であるtremelimumabを併用しています。PD-L1が50%未満の症例では、PD-1阻害薬の効果はどうしても低下してしまいますが、たとえば、この患者集団に対して免疫チェックポイント薬の併用がベネフィットをもたらすことができるか、といった免疫チェックポイント阻害薬の新たな可能性を検証します。この研究も今後の国際学会で発表の予定です。そのほか、私どもには多くの作用機序の異なる肺がん治療薬のパイプラインがあり、自社品の中で併用試験を組むことも容易です。今後も、さまざまな薬剤の組み合わせにもチャレンジし、肺がん治療の研究を進めていければと思っています。

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オシメルチニブ、肺がんFLAURA試験の主要評価項目を達成

 AstraZeneca社は2017年7月27日、第III相FLAURA試験で、未治療の転移性EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)において、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が、エルロチニブまたはゲフィチニブと比較して、統計的に有意で臨床的に有意な無増悪生存期間(PFS)を示したと発表。 FLAURA試験は上記患者を対象に、オシメルチニブと、標準治療のEGFR-TKIであるエルロチニブまたはゲフィチニブの効果と安全性を比較した二重盲検無作為化試験。30ヵ国から556例の患者が登録されている。主要評価項目はPFS、副次評価項目は全生存率、客観的奏効率、奏効期間、病勢コントロール率、安全性、健康関連QOLであった。 FLAURA試験の具体的な結果は今後の学会で発表される予定。■参考 AstraZeneca(グローバル)プレスリリース FLAURA試験(Clinical Trials.gov)

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バイオマーカーが大きな意義を持つ、今後の大腸がん治療

 2017年6月、Lilly Oncology大腸がんメディアセミナーにて、静岡県立静岡がんセンターの山崎健太郎氏が、大腸がんの遺伝子関連検査と治療最前線について、解説した。増える大腸がんバイオマーカーの重要性 1990年代後半から、多くの新規薬剤が臨床導入され、大腸がんの治療は大きく変化した。さらに、分子標的薬の登場が拍車をかけ、世界の大腸がん予後は今では30ヵ月を超える。とはいえ、分子標的治療薬もすべての大腸がん患者に奏効するわけではない。バイオマーカーの探索が重要になっている。大腸がんのバイオマーカーとしては、RAS変異検査が最も普及しており、抗EGFR抗体の効果予測因子として切除不能例に日米欧で推奨されている。それ以外に最近注目されているのが、BRAF V600遺伝子変異とMSI(マイクロサテライト不安定性)である。BRAF V600E変異、MSIと大腸がん BRAF V600E変異は、大腸がんの8%程度に認められ、効果予測因子・予後因子である。同変異を有する患者は化学療法の効果が乏しい。また、予後不良で、同変異を有していると、増悪リスクは34%、死亡リスクは91%増加し、全生存率(OS)は約1年という報告がある。しかし、近年ではBRAF変異例へのFOLFOXIRI+ベバシズマブの4剤併用療法で、増悪リスク、死亡リスク共に4割以上減少するという研究も出てくるなど、治療法の開発も進んでいる。 MSIは、DNA複製時の塩基の不対合であるミスマッチを修復する、MMR(mismatch repair)機能の欠損をみる指標である。マイクロサテライト不安定性が高度(MSI-H)になると、遺伝子の異常が蓄積し、がん化が促進される。MSI-Hは、遺伝性大腸がんであるリンチ症候群の9割に認められるが、大腸がん全体でも一定の割合で存在する。欧米では、12~16%、本邦では6~7%の大腸がんがMSI-Hだといわれている。MSI-Hは遺伝性大腸がんの指標だけではなく、広く大腸がんの予後規定因子でもある。MSI-Hを有する切除可能なStageII大腸がんでは、予後良好である(術後アジュバントを行うと逆に予後が悪化するという報告がある)。一方、切除不能例では、非常に予後が悪いことが明らかになっている。このように、BRAFやMSIといった検査情報を得るだけでも、治療方針は大きく変わる可能性がある。患者への提言にも変化を及ぼす。大腸がんバイオマーカーの臨床応用の実情 大腸がんバイオマーカーの臨床応用は、どういう状況なのだろうか。BRAF検査は、効果予後予測因子・予後因子として、欧米では全大腸がん患者で推奨されている。MSIについても、欧米では大腸がんと診断された患者全員にリンチ症候群のスクリーニング目的として推奨されている。一方、本邦では大腸がんに対するBRAF検査は保険適応になっておらず、MSIについても、遺伝性大腸がんであるリンチ症候群が疑われた場合のみ適応となっている。ドラッグ・ラグも解消され、海外と同様の治療が実施できるようになったものの、バイオマーカーの臨床導入は遅れているのが、本邦の状況である。大腸がんに診療おける遺伝子検査のガイダンスの発刊 このような状況のなか、日本臨床腫瘍学会は「大腸がんに診療おける遺伝子検査のガイダンス(第3版)」を発刊した。このガイダンスではBRAF検査、MMR機能欠損に対するMSI検査について、どのように実施し、治療に反映するのか、基本的要件を明らかにした。具体的には、切除不能・再発大腸がん1次治療前のBRAF検査、切除後のStageII結腸がんへのMSI検査、切除不能・再発大腸がん1次治療前のMSI検査などが盛り込まれている。 大腸がんの治療は、今後、バイオマーカー等で細分化されていくであろう。今回発刊されたガイダンスが、現状とのギャップを埋める一助になれば、と山崎氏は述べる。

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多くのがん種で開発中、ペムブロリズマブの最新トピックス

 2017年7月4日、MSD株式会社はメディアラウンドテーブルを開催し、同社グローバル研究開発本部オンコロジーサイエンスユニット統括部長の嶋本 隆司氏が、ASCO2017の発表データを中心にキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の最新トピックスを解説するとともに、併用療法を含めた今後の開発戦略について語った。 本邦において、ペムブロリズマブは2016年に「根治切除不能な悪性黒色腫」および「PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対する適応を取得。2015年に「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」に対して「先駆け審査指定品目」の指定を受けているほか、現在は「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」および「局所進行性または転移性の尿路上皮がん(優先審査対象)」が承認申請中、13がん種以上で後期臨床開発プログラムが進んでいる。米国でNSCLCは適応拡大、尿路上皮がんとMSI-H/dMMR固形がんで承認取得 ASCO2017では、ペムブロリズマブについて16のがん種に対する50以上のデータが発表された。肺がん領域は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2016)の続報が中心となった。初回治療でEGFRまたはALK変異がなく、かつPD-L1発現不問の進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、化学療法との併用を評価したKEYNOTE-021試験(コホートG)では、統計学的な有意差は得られなかったものの、長期フォローアップで全生存期間(OS)の延長傾向が示された。米国ではすでにPD-L1発現を問わず、化学療法との併用でNSCLCの1次治療に適応が拡大され、現在、日本も参加して第III相試験(KEYNOTE-189試験)を実施中という。 米国で2017年5月に相次いで承認された、尿路上皮がん(1次治療、2次治療)、高度マイクロサテライト不安定(MSI-H)またはミスマッチ修復欠損(dMMR)を示す進行固形がんに対する試験結果も発表された。がん種によらない、バイオマーカーに対する初の薬剤承認として注目されたMSI-H/dMMR固形がん患者に対する単剤療法を評価した試験としては、1レジメン以上の治療歴のある大腸がん以外の進行固形がん患者対象のKEYNOTE-158試験、2レジメン以上の治療歴のある進行大腸がん患者対象のKEYNOTE-164試験の結果が発表され、それぞれ全奏効率(ORR)が38%(29/77例)、28%(17/61例)、病勢コントロール率が58%(45/77例)、51%(31/61例)という結果が得られている。進行胃がん、トリプルネガティブ乳がんでも有望な結果 2ライン以上の治療歴のある進行胃がん患者(259例)を対象に単剤療法を評価したKEYNOTE-059試験(コホート1)では、42.4%の患者で何らかの腫瘍縮小効果がみられ、ORRは11.6%であった。この結果を基に、米国では優先審査の対象に指定され承認審査が進んでいる。嶋本氏は「ORRだけをみると目を見張るような結果ではないが、治療の選択肢がすでに非常に限られた対象であること、多くの患者で腫瘍縮小効果がみられたことが評価され、優先審査につながったと考えている」と話した。 また、トリプルネガティブ乳がん患者を対象に、術前化学療法との併用を評価したKEYNOTE-173試験では、病理学的完全奏効率(pCR)がコホートA(ペムブロリズマブ+パクリタキセル→ペムブロリズマブ+ドキソルビシン/シクロホスファミド[AC])で50~60%、コホートB(ペムブロリズマブ+パクリタキセル+カルボプラチン→ペムブロリズマブ+AC)で80%という結果が得られた。「従来の術前化学療法のpCRは20~30%であることから、ペムブロリズマブの乳がんに対する効果を示す有望な予備データといえる」と嶋本氏。同じく術前化学療法との併用を評価したI-SPY2試験では、トリプルネガティブ乳がん患者において、ペムブロリズマブ群(ペムブロリズマブ+パクリタキセル→AC)の推定pCRがコントロール群(パクリタキセル→AC)の3倍となるという結果が得られている。この結果を受け、現在、日本も参加して第III相試験が進行中という。IDO阻害薬との併用、単剤よりも高い奏効率 IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)阻害薬epacadostatとの併用を評価したECHO-202試験の結果も発表されている。本試験は複数のがん種に対して行われているが、そのうちNSCLC、転移性または再発性の扁平上皮頭頸部がん(SCCHN)、進行性尿路上皮膀胱がん(UC)、進行性腎細胞がん(RCC)の結果が紹介された。NSCLCでORRが35%(14/40例)、SCCHNで34%(13/38例)、UCで35%(14/40例)、RCCで33%(10/30例)と、いずれもペムブロリズマブ単剤よりも高い奏効率が得られている。日本人を含む第III相試験が進行中または準備を進めている段階で、早期の承認取得を目指すという。安全性については、本試験の安全性解析対象集団である進行がん患者294例を対象としたプール解析の結果、Grade 3以上の有害事象は患者の18%に認められ、最も高頻度のものはリパーゼ上昇(無症候性)4%、次いで発疹3%であった。この結果について嶋本氏は、「単剤と比較して大きく毒性が増すものではないとみられる」と話した。 IDO阻害薬のほか、化学療法や分子標的治療薬、新規ワクチンなどとの併用療法について、現在300以上の臨床試験が進行中だという。嶋本氏は、「がん種ごと、さらには肺がんのように多様性のあるがん種では患者背景ごとにアプローチしていくことも視野に入れて、ペムブロリズマブを核に、それぞれ適切な併用薬を検証していく」と結んだ。■関連記事ペムブロリズマブ、尿路上皮がんの優先審査対象に指定:MSDNSCLC1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法の追跡結果/ASCO2017尿路上皮がんにペムブロリズマブを承認:FDAペムブロリズマブ、臓器横断的ながんの適応取得:FDA進行胃がん、ペムブロリズマブの治療効果は?KEYNOTE-059/ASCO2017早期乳がんにおける免疫療法の役割の可能性

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進行ALK遺伝子陽性肺がんの治療について(解説:小林 英夫 氏)-693

 元来、anaplastic lymphomaや炎症性筋線維芽細胞性腫瘍で報告されていた受容体チロシンキナーゼであるALKは、肺がんの数%程度で遺伝子変異が認められ、とりわけ腺がんで検出されやすい。そして、ALK阻害薬は従来の化学療法に比べ、ALK遺伝子を有する肺がんに大きな治療効果をもたらしている。初めて上梓されたクリゾチニブ(ザーコリ)はマルチキナーゼ阻害薬でALK阻害活性も有する薬剤だが、一方、アレクチニブ(アレセンサ)はALKを標的として創薬された二番目のALK阻害薬である。日本肺癌学会編 肺癌診療ガイドライン2016では、ALK遺伝子転座陽性でPS(performance status)2までのIV期非小細胞肺がんに対する一次治療は、アレクチニブ(グレードA)またはクリゾチニブ(グレードB)が推奨されている。 本論文(ALEX試験)はNEJMに発表されたもので、切除不能ALK陽性肺がんに対して両薬剤のいずれが有効性、認容性、中枢神経病変制御に優れるかを比較した国際共同無作為化非盲検第III相試験の途中報告である。全生存期間の解析が終了していないため、あくまで中間報告的論文であることを意識しておきたい。また、分子標的治療薬のなかでもEGFR(epidermal growth factor receptor、上皮成長因子受容体)阻害薬の効果には人種差があるが、ALK阻害薬に明確な人種差はないようで欧米からの報告を本邦でも取り入れることが可能と思われる。 結果はある程度予想されたように、PFS(無増悪生存期間)中央値はアレクチニブ群未到達、クリゾチニブ群11.1ヵ月であり、アレクチニブ群でPFSの有意な延長が認められた。また、中枢神経病変の進行は、アレクチニブ群18例(12%)、クリゾチニブ群68例(45%)で確認され、アレクチニブ群で有意に低かった。さらに薬剤関連有害事象もアレクチニブ群で少なかった。加えて、日本でも同様の比較試験(J-ALEX試験)が実施されており、その中間報告が2017年5月10日にLancetにEpub掲載された。やはりアレクチニブ投与群で明確なPFS延長が示されたため、中間解析において早期有効中止に至っている。なお、J-ALEXのアレクチニブ投与はALEXの半量である。 現時点で、進行したALK遺伝子陽性肺がん治療のファーストラインがアレクチニブであることはほぼ確実と思われる。ただし、本論文も肺癌診療ガイドラインもALK阻害薬投与対象はPS 2までであり、PS不良例については確認できていない。また、本邦で三番目のALK阻害薬セリチニブ(ジカディア)はクリゾチニブ既投与症例でも効果が期待できることが特性とされ、今後、アレクチニブとの有効性比較が待たれるところである。

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カナグリフロジンによる心血管・腎イベントの抑制と下肢切断、骨折の増加(解説:吉岡 成人 氏)-694

SGLT2阻害薬による心血管イベント抑制 SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが、心血管イベントの既往がある2型糖尿病患者において心血管死、総死亡、さらに腎イベント(顕性腎症の発症、血清クレアチニン値の倍増、腎代替療法の導入、腎疾患による死亡)を抑制するとEMPA-REG OUTCOME試験およびそのサブ解析で示されて以降、カナダ糖尿病学会、米国糖尿病学会の提唱するガイドラインでは、心血管リスクの高い患者におけるSGLT2阻害薬の使用を推奨している。 心血管イベント、腎イベントの抑制の機序に関しては、SGLT2阻害薬の利尿作用、腎における腎尿細管糸球体フィードバック機構への影響のみならず、血中ケトン体が増加することによる心筋や腎におけるエネルギー代謝の変化、ヘマトクリットの増加による腎への酸素供給の増加などの、一般の臨床医が想像しなかったようなメカニズムが提唱されている。このような背景をもとに、エンパグリフロジン以外のSGLT2阻害薬でも同様な臨床効果が期待されるのかどうか、カナグリフロジンを用いたCANVAS(Canagliflozin Cardiovascular Assessment Study)プログラムの結果に大きな興味が持たれていた。CANVASプログラムとCANVAS試験、CANVAS-R試験 CANVASプログラムはカナグリフロジンの第III相試験として2009年に開始されたCANVAS試験と、米国でのカナグリフロジン発売後に開始されたCANVAS-R試験によって構成されている。CANVAS試験のみでは心血管安全性を評価するための追跡人・年が不足するためにCANVAS-Rが追加試験として2014年に開始され、アルブミン尿の進展抑制を主要評価項目とし、心血管安全性を副次評価項目としている。 今回の心血管安全性の評価では、CANVASとCANVAS-Rを統合して解析がなされている。対象は心血管疾患リスクが高い2型糖尿病10,142例。標準的な薬物療法にカナグリフロジンないしはプラセボを追加する無作為化二重盲検試験で、追跡期間は平均3.6年であった。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合イベントの発生率であり、カナグリフロジン投与によりこれらの心血管リスクが有意に低下(カナグリフロジン群:26.9/1,000人年、プラセボ群:31.5/1,000人年、ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.75~0.97、p=0.02)しており、非劣性のみならず優越性が示された。さらに、カナグリフロジン群ではアルブミン尿の進展が27%抑制され、腎複合エンドポイント(eGFR低下、腎代替療法の開始、腎疾患による死亡)において40%の抑制が認められた。下肢切断と骨折のリスク 心血管イベントや腎リスクの低下は確認されたものの、カナグリフロジン群で下肢切断のリスクが約2倍に増加していた(カナグリフロジン群:6.30/1,000人年、プラセボ群:3.37/1,000人年、ハザード比:1.97、95%信頼区間:1.41~2.75)。足趾、中足骨レベルでの切断のみならず、足関節、膝下、膝上のレベルでの切断の総計も2.03倍増加している(カナグリフロジン群:1.82/1,000人年、プラセボ群:0.93/1,000人年、ハザード比:2.03、95%信頼区間:1.08~3.82)。さらに、骨折についても転倒骨折の頻度がCANVAS試験単独で1.56倍(カナグリフロジン群:12.98/1,000人年、プラセボ群:8.31/1,000人年、ハザード比:1.56、95%信頼区間:1.18~2.06)増加しており、全骨折の頻度もCANVAS試験単独で1.55倍、CANVASプログラムとして1.26倍に増加している。 平均年齢63.3歳、女性比率35.5%という対象において、下肢切断の頻度、骨折の頻度は日本人よりもはるかに高い。足病変の進展については体内の水分量の減少に伴う下肢末梢における血圧や血液循環の低下、骨折については、Ca利尿の増加、血中リン濃度やPTHの上昇による骨塩量の減少などが原因として推定されるが結論は得られていない。米国保健局(FDA)からは、2015年9月、2016年5月にカナグリフロジンと骨折、下肢切断に関する安全性情報がすでに報告されており、今回さらにリスクが強調される結果となった。カナグリフロジンの投与量と国内における情報提供 CANVASプログラムはカナグリフロジン100mg、300mg、プラセボ群がそれぞれ1:1:1の割合で、CANVAS-Rでは、100mgから開始され300mgまで増量が可能な群とプラセボ群が1:1の割合で構成されている。日本国内におけるカナグリフロジンの投与量は100mgであり、国内で認められている用量を超えた試験であるため、CANVASプログラムについて製薬メーカーが国内でプロモーションを行うことが規制されている。「ディオバン事件」の影響かと思われるものの、事実を歪曲した広告は厳に慎むべきではあるが、過剰とも思われる規制もいかがなものであろうか。

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NSCLC1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法の追跡結果/ASCO2017

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療における、化学療法+ペムブロリズマブ群と化学療法群を比較した第II相試験KEYNOTE-021コホートGの更新結果が、米国MD Anderson Cancer CenterのVassiliki Papadimitrakopoulou氏らによりASCO2017で発表された。 同試験では、Stage IIIB~IVで化学療法未治療の非扁平上皮NSCLC(EGFR変異またはALK転座を伴わない)123例を、カルボプラチン+ペメトレキセド(CP)群とペムブロリズマブ追加(pembro+CP)群に、無作為に割り付けて比較している。初回解析では、主要評価項目の客観的奏効率(ORR)(55%対29%、p=0.0016)、主たる副次評価項目の無増悪生存期間(PFS)(HR:0.53、p=0.0102)共に、pembro+CP群で有意に改善されている。全生存期間(OS)は、両群とも6ヵ月OSで92%と同等であった。 今回の発表は2016年12月31日時点でのもので、フォローアップ中央値は14.5ヵ月(0.8~24.0)である。ORRはpembro+CP群56.7%(43.2~69.4)、CP群30.2%(19.2~43.0)で、初回解析と同様にpembro+CP群で有意に高かった(p=0.0016)。 PFSはpembro+CP群は未達(9.7~NR)、CP群では8.9ヵ月(6.2~10.3)で、pembro+CP群で有意に長かった(HR:0.49、95%CI:0.2~0.83、p=0.0035)。OS については、CP群の75.0%がクロスオーバーしたという条件の下、12ヵ月推定値はpembro+CP群76.0%、CP群69.3%と、統計的有意ではないものの、pembro+CP群で高い傾向であった(HR:0.69、95%CI:0.36~1.31、p=0.13)。また、9ヵ月推定値のpembro+CP群84.6%、CP群82.3%と比較すると、OSの差は拡大傾向にあった。奏効期間は、pembro+CP群では中央値に達しておらず(1.4+〜18.6+)、CP群では16.2ヵ月(2.8〜20.7+)であった。■参考ASCO2017 AbstractKEYNOTE-021試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ペムブロリズマブの追加が非小細胞肺がん1次治療の結果を改善:ESMOペムブロリズマブ、化学療法併用でPD-L1発現問わず肺がん1次治療に承認:FDA

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肺がんEGFRリキッドバイオプシー保険収載

 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社(本社:東京都港区/代表取締役社長 兼 CEO:小笠原 信)は、2016年12月26日に一部変更承認(適応追加)を取得したコバスEGFR 変異検出キットv2.0のEGFR T790M血漿検査が、6月28日の中医協総会で審議され、7月1日付保険適用が承認されたと発表。 コバスEGFR変異検出キットv2.0は、ゲノムDNA中のEGFR遺伝子変異を定性的に検出するキット。非小細胞肺がん治療において、EGFR-TKI投与前の初回検査に使用するとともに、EGFR-TKI耐性患者のEGFR T790M変異の検出の際、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)のコンパニオン診断薬として使用する。当キットは、組織検体ですでに保険適用されているが、今回、EGFR遺伝子検査(血漿)として、新たに血漿検査が保険適用された。保険収載の内容・区分:E3(改良項目)・測定項目:EGFR 遺伝子検査(血漿)・測定方法:アレル特異的リアルタイムPCR法・主な測定目的:癌組織又は血漿から抽出したゲノムDNA中のEGFR遺伝子変異(T790M)の検出(オシメルチニブメシル酸塩の非小細胞肺癌患者への適応を判定するための補助に用いる)・保険点数:2,100点留意事項:1.本検査は、肺癌の再発や増悪により、EGFR遺伝子変異の2次的遺伝子変異が疑われ、再度治療法を選択する必要があり、血漿を用いてリアルタイムPCR 法で測定した場合に、患者1人につき1回に限り算定できる。ただし、本検査の実施は、医学的な理由により、肺癌の組織を検体として、区分番号「D004-2」悪性腫瘍組織検査の「1」悪性腫瘍遺伝子検査の「イ」EGFR 遺伝子検査(リアルタイムPCR法)又は「ロ」EGFR遺伝子検査(リアルタイムPCR法以外)を行うことが困難な場合に限る。本検査の実施にあたっては、関連学会が定める実施指針を遵守すること。2.本検査を実施した場合には、肺癌の組織を検体とした検査が実施困難である医学的な理由を診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。3.本検査、区分番号「D004-2」悪性腫瘍組織検査の「1」悪性腫瘍遺伝子検査、区分番号「D006-2」造血器腫瘍遺伝子検査又は区分番号「D006-6」免疫関連遺伝子再構成のうちいずれかを同一月中に併せて行った場合には、主たるもののみ算定する。承認・保険適用を受けている検体種と検査・組織:EGFR-TKI投与前の初回検査、EGFR T790M変異検査(オシメルチニブメシル酸塩)・血漿:EGFR T790M変異検査(オシメルチニブメシル酸塩)■参考ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社プレスリリース中央社会保険医療協議会 総会(第354回)

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BRAF変異肺がん、ダブラフェニブ・トラメチニブ併用が承認:FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2017年6月22日、BRAF V600E変異のある転移性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)とトラメチニブ(商品名:メキニスト)の併用を通常承認した。これは、同患者に対するFDA初の承認となる。 この承認は、BRAF V600E変異陽性転移性NSCLCの国際多施設共同試験で、3つのコホートからなるBRF113928試験の結果に基づいている。当試験では93例の患者が、ダブラフェニブ(150mg×2/日)とトラメチニブ(2mg×1/日)の併用で治療された。93例中36例は全身療法未治療で、57例はプラチナベース化学療法を1つ以上受け疾患進行が確認された患者であった。また、別途78例のBRAF変異陽性患者が、ダブラフェニブ単剤による治療を受けた。 既治療群にける併用療法の全奏効率(ORR)は、63%(95%CI:49%~76%)であり、奏効期間(DOR)は12.6ヵ月(95%CI:5.8~NE)。未治療群ではORR61%(95%CI:44%~77%)、DOR中央値は未達であるが(95%CI:6.9~NE)、奏効者の59%は6ヵ月以上の奏効を示した。また、ダブラフェニブ単剤治療患者のORRは27%(95%CI:18%~38%)で、DORは9.9ヵ月であった。 有害事象の発現率および重症度は、すでに承認を受けているメラノーマ患者での報告と同様であった。Grade3/4で頻度の高い項目は、発熱、疲労、呼吸困難、嘔吐、発疹、出血、および下痢であった。Grade3/4で頻度の高い検査値異常は、低ナトリウム血症、リンパ球減少症、貧血、高血糖、好中球減少症、白血球減少症、低リン酸血症、アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇であった。有害事象による投与中止はダブラフェニブ18%、トラメチニブ19%でみられた。 FDAはまた、次世代シークエンサー(NGS)Oncomine Dx Target Test(Thermo Fisher Scientific)も承認した。この検査により、NSCLC患者の組織標本からBRAF、ROS1、EGFR遺伝子異常の存在が検出可能となる。FDAによる初めてのNGSオンコロジーパネル検査の承認である。■参考FDAの発表BRF113928試験(Clinica Trials.gov)

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進行肝細胞がんの1次治療薬となるか?レンバチニブの第III相試験/ASCO2017

 肝細胞がんは世界第2位の死亡原因であり、毎年74万5,000人が死亡している。ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)は、進行肝細胞がん(HCC)の1次治療で唯一、生存期間延長が証明された全身療法である。最近10年間で、幾多の第III相試験がソラフェニブに対する非劣性あるいは優越性評価を行ったものの、失敗に終わっている。レンバチニブ(商品名:レンビマ)は、VEGFR1~3、FGFR1~4、PDGFRα、RET、KITを標的とした経口マルチキナーゼ阻害薬であり、進行HCCの第II相試験において優れた臨床活性を示している。進行HCCの1次治療でソラフェニブとレンバチニブを比較した、国際無作為化オープンラベル第III相非劣性試験REFLECT試験の最終結果を台湾National Taiwan University HospitalのAnn-Lii Cheng氏が報告した。 この無作為化オープンラベル非劣性試験では、全身療法未治療の切除不能HCC患者をレンバチニブ(体重60kg以上は12mg/日、60kg未満は8mg/日)群またはソラフェニブ(400mg×2/日)群に無作為に割り付けた。患者は、測定可能な標的病変を有し、バルセロナクリニック肝臓がん病期分類(BCLC)BまたはC、ECOG PSは1以下であった。主要評価項目は全生存期間(OS)による非劣性の評価で、あらかじめ定義された非劣性マージンは1.08であった。非劣性が証明されたのち、副次有効性評価項目による優越性が評価された。副次有効性評価項目は、修正RECIST(mRESIST)による無増悪生存期間(PFS)、無増悪時間(TTP)および客観的反応率(ORR)であった。  結果、954例が登録された(レンバチニブ群478例、ソラフェニブ群476例)。主要評価項目であるOSは、レンバチニブ群で13.6ヵ月(12.1~14.9)、ソラフェニブ群では12.3ヵ月(10.4~13.9)であった。HRは0.92、95%CIは0.79~1.06であり、主要評価項目の非劣性マージン1.08を達成した。 mRECISTによるPFSは、レンバチニブ群で7.4ヵ月(6.9~8.8)、ソラフェニブ群で3.7ヶ月(3.6~4.6)と、レンバチニブ群で有意に延長した(HR:0.66、95%CI:0.57~0.77、p

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メトホルミン長期投与が1型糖尿病の心血管リスク削減か: REMOVAL試験

 メトホルミンが1型糖尿病患者においても血糖値を改善し、インスリン必要量を減少させる可能性が報告されているが、心血管系のベネフィットについては明らかになっていない。心血管リスクがある成人1型糖尿病患者を対象に、メトホルミンの心血管障害の軽減作用を評価したREMOVAL試験の結果、ADAのガイドラインで提案されている血糖コントロールに対する効果は持続的なものではなく、むしろLDLコレステロール削減や動脈硬化予防など、心血管系のリスク管理において役割を果たす可能性が明らかとなった。この結果は第77回米国糖尿病学会(ADA)年次集会で報告され、論文がLancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版に6月11日同時掲載された。 REMOVAL試験は、5ヵ国(オーストラリア、カナダ、デンマーク、オランダ、英国)、23の病院または診療所で、5年以上の1型糖尿病罹患歴があり、10の特定の心血管リスク因子(BMI≧27kg/m2、HbA1c値> 8.0%、強いCVDの家族歴等)のうち少なくとも3つを持つ、40歳以上の1型糖尿病患者を対象に行われた二重盲検プラセボ対照試験である。被験者は1日2回経口メトホルミン1,000mg投与群(点滴によるインスリン治療と併用)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、メトホルミンがアテローム性動脈硬化症を減少させるかどうかについて、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)の変化によって評価する3年間の追跡調査が行われた。 主要アウトカムは1年ごとの平均Far Wall CIMT値の変化で、反復測定に基づく修正intention-to-treat解析が行われた。副次アウトカムは、HbA1c値、LDLコレステロール、推定糸球体濾過量(eGFR)、体重、インスリン必要量、微量アルブミン尿(報告なし)、網膜症、および内皮機能とされた。 主な結果は以下のとおり。・3ヵ月間のリスク因子と血糖値の最適化期間を経て、428例の患者のうち、219例がメトホルミン投与群、209例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・平均CIMT値はメトホルミンによる有意な減少はなかったが(約-0.005mm/年、95%信頼区間[CI]:-0.012~0.002、p=0.1664)、最大CIMT値(3次アウトカム)は有意に減少した(-0.013mm/年、95%CI :-0.024~0.003、p=0.0093)。・メトホルミン投与群で、3年後のHbA1c値(ベースラインでのメトホルミン投与群:平均8.1%[SD 0.9]、プラセボ群:8.0%[SD 0.8])は減少していたが(-0.13%、95%CI:-0.22 ~-0.037、p=0.0060)、これは最初の3ヵ月以内の減少によるもので(-0.24%、-0.34~-0.13、p<0.0001)、その後は減少しなかった(p=0.0163 for visit-by-treatment interaction)。・メトホルミン投与群で、3年後の体重(-1.17kg、95%CI:-1.66~-0.69、p<0.0001)およびLDLコレステロール(-0.13mmol/L、95%CI:-0.24~-0.03、p=0.0117)が減少したが、eGFRは増加した(4.0mL/分/1.73m2、95%CI:2.19~5.82、p<0.0001)。またインスリン必要量の低下はみられなかった(体重1kg当たり-0.005単位、95%CI:-0.02~0.012、p=0.545)。・反応性充血指数または網膜症の有無により評価された内皮機能に影響はなかった。・治療中止はメトホルミン投与群59例(27%)、プラセボ投与群26例(12%)であり、主な原因は消化器系副作用の増加によるもので、メトホルミンによる低血糖症の増加はみられなかった(p=0.0002)。・メトホルミン投与群で5例、プラセボ群で2例が死亡したが、主任研究者により、本研究における治療との関連は判断されなかった。■参考ADA2017 Press ReleaseREMOVAL試験(Clinical Trials.gov)

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オシメルチニブ、CNS転移例にも有効性示す:AURA3試験/ASCO2017

 中枢神経系(CNS)転移は、EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の経過中、40%にみられる。CNS転移例の予後は不良で、無増悪生存期間(PFS)は3~5ヵ月といわれる。オシメルチニブは、前臨床試験でCNSへの良好な移行が示されるとともに、臨床では2つの第II相試験(AURA2試験、AURA2拡大試験)においてCNSでの活性を示している。そこで、T790M陽性の進行NSCLCにおけるオシメルチニブの無作為化第III相試験であるAURA3試験から、CNS転移における同剤の最初の包括的評価を、イタリアFondazione IRCCS Instituto Nazionale dei TumoriのMaria Garrassino氏が、米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表した。 AURA3試験では、対象患者をオシメルチニブ80mg/日またはプラチナダブレット化学療法3週間ごとに6サイクル(ペメトレキセド維持療法も許可)に、2:1で無作為に割り付けた。今回のサブグループ解析では、オシメルチニブ群は75例、化学療法群は41例であった。CNS客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)を評価するために、ベースラインでCNS転移のある患者に対し、独立第三者評価機関(BICR)による評価が行われた。解析は、ベースライン時に測定可能と測定不可能なCNS転移を有する患者のCNS全分析セット(CNS full analysis set:cFAS)と、測定可能なCNS転移のみを有する患者のCNS評価可能セット(CNS evaluable for response set:cEFR)の2グループで行われた。 結果、2016年4月15日時点で、cFAS患者は116例、cEFR患者は46例であった。cEFRにおけるCNS ORRは、オシメルチニブ群で70%(51~85)、化学療法群では31%(11~59)と、オシメルチニブ群で有意に高かった(OR:5.13、95%CI:1.44~20.64、p=0.015)。DORは、オシメルチニブ群で8.9ヵ月(4.3~NC)、化学療法群では5.7ヵ月(NC~NC)であった。cFASにおけるCNS PFSは、オシメルチニブで11.7ヵ月、化学療法群では5.6ヵ月と、オシメルチニブ群で有意に長かった(HR:0.32、95%CI:0.15~0.69、p=0.004)。また、オシメルチニブのCNSへの奏効は6.1週間でみられ、その効果は脳照射の前治療の有無にかかわらず現れた。■参考ASCO2017 AbstractAURA3試験(Clinical Trials.gov)AURA2試験(Clinical Trials.gov)AURA2拡大試験(Clinical Trials.gov)■関連記事オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長/NEJMオシメルチニブ、日本人のTKI耐性肺がんにも良好な結果:肺癌学会

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dacomitinib、EGFR変異陽性肺がん1次治療の成績発表:ARCHER1050試験/ASCO2017

 dacomitinibは、不可逆的にEGFR/HER1、HER2、HER4を阻害する第2世代EGFR-TKIであり、第II相シングルアーム試験であるARCHER1017試験で、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で良好な成績を示している。米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、dacomitinibとゲフィチニブを1次治療で比較した、現在進行中の第III相無作為化オープンラベル試験ARCHER1050試験の成績を、香港Chinese University of Hong KongのTony Mok氏が発表した。 同試験では、EGFR活性化変異(exon19 delまたはexon21 L858R +/− exon20 T790M)を有するStage IIIB/IVの再発NSCLC患者(CNS転移患者は除外)を、1:1でdacomitinib 45mg/日(D)群またはゲフィチニブ250mg/日(G)群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、独立評価委員会(IRC)による無増悪生存期間(PFS)であった。副次評価項目は、治験担当医師によるPFS、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、治療成功期間、全生存期間、安全性および患者報告アウトカムであった。 結果、452例が登録され、D群227例とG群225例で解析が行われた。IRC評価のPFSは、D群14.7ヵ月(95%CI:11.1~16.6)、G群9.2ヵ月(95%CI:9.1~11.0)と、D群で有意であった(HR=0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)。治験担当医評価のPFSは、D群16.6ヵ月(12.9~18.4)、G群11.0ヵ月(9.4~12.1)と、D群で有意であった(HR=0.62、95%CI:0.50~0.78、p<0.0001)。IRC評価のORRは、D群74.9%(95%CI:68.7~80.4)、G群71.6%(95%CI:65.2~77.4)と、両群間で同等であった(p=0.3883)。IRC評価のDORは、D群14.8ヵ月(95%CI:12.0~17.4)、G群8.3ヵ月(95%CI:7.4~9.2)と、D群で有意であった(p<0.0001)。 重篤な治療関連有害事象(AE)の発現率は、D群で9.3%、G群では4.5%。EGFR阻害に関連するAEである下痢、爪周囲炎、ざ瘡様皮疹、口内炎のGrade3の発現率は、D群では8.4、7.5、13.7、3.5%、G群では0.9、1.3、0、0.4%であり、D群で多かった。一方、Grade3のALT上昇はD群で0.9%、G群で8.5%と、G群で多かった。 Mok氏は個人的見解として、EGFR変異陽性の進行NSCLCにおいて、dacomitinibは1次治療の新たな選択肢として考慮されるべきだろうと述べた。■参考ASCO2017 AbstractARCHER1050試験(Clinical Trials.gov)

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EGFR変異陽性肺がんの再発リスクを40%減、ゲフィチニブ補助療法/ASCO2017

 非小細胞肺がん(NSCLC)と診断された患者の20~25%は手術適応である。プラチナベースの術後補助化学療法は、Stage II~IIIA非小細胞肺がん(NSCLC)の患者のスタンダードとなっている。一方、EGFR-TKIは進行EGFR変異陽性NSCLC1次治療の標準である。しかし、EGFR-TKIによる術後補助化学療法については、過去のBR19やRADIANT試験からも利点は証明されていない。 EGFR変異陽性のNSCLC患者の術後補助療法として、化学療法をEGFR-TKIで代替できないか。そこでEGFR変異陽性NSCLCの術後補助療法において、ゲフィチニブと化学療法(ビノレルビン+シスプラチン)を比較する初めての無作為化第III相試験となるADJUVANT試験が行われた。中国Guangdong General HospitalのYi-Long Wu氏が、その結果を米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)にて発表した。 同試験の対象は、完全切除後のStage II~IIIA(TNM分類第7版N1-N2)のEGFR変異陽性NSCLC患者。登録された患者は、無作為にゲフィチニブ(250mg×1/日)24ヵ月間投与群と化学療法群(ビノレルビン25mg/m2を1日目と8日目に投与+シスプラチン75mg/m2を1日目に投与)3週ごと4サイクル投与群に、1:1に割り付けられた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)。DFSの改善は40%以上とした。 結果、2011年9月19日~2014年4月24日に222例の患者が登録された(ゲフィチニブ群、化学療法群ともに111例)。治療期間の中央値は36.5ヵ月で、ゲフィチニブ群の投与期間は18ヵ月以上が最も多く67.9%、化学療法群は4サイクルが最も多く83.0%を占めた。 主要評価項目であるDFSは、ゲフィチニブ群で28.7ヵ月(24.9~32.5ヵ月)、化学療法群で18.0ヵ月(13.6~22.3ヵ月)と、ゲフィチニブ群で有意に長く(HR:0.60、95%CI:0.42~0.87、p=0.005)、その差は10.7ヵ月であった。3年DFS(3yDFS)はゲフィチニブ群の34.0%に対し、化学療法群は27.0%で、ゲフィチニブ群で有意に高かった(p=0.013)。全生存期間(OS)は未達成。 Grade3以上の有害事象の発現率は、ゲフィチニブ群で12.3%、化学療法群は48.3%と、ゲフィチニブ群で有意に少なかった(p<0.001)。健康関連QOLについては、Total FACT-L、LCSS、TOIの3種の評価ともゲフィチニブ群で有意に優れていた。 EGFR変異陽性のStage II~IIIA(N1-N2)NSCLC切除可能患者に対する、ゲフィチニブの術後補助療法は、これらの患者集団における重要な選択肢であると考えられるべきである。 DiscussantであるVU University Medical CenterのSuresh Senan氏は、「DFSの10.7ヵ月の延長は注目すべきである。今後は、どのような患者にベネフィットがもたらされるのかなど、より詳細に研究していくべきである。また、3yDFSの34%という結果は満足できるものではなく、対象症例などに注目してさらなる改善を図るべきであろう」と述べた。■参考 ADJUVANT試験(NCT01405079) BR19試験 RADIANT試験

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