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1.

風邪予防にビタミンDは効果なし?~メタ解析

 ビタミンD補充による急性呼吸器感染症(ARI)予防効果については、2021年に37件のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析で有意な予防効果(オッズ比[OR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.86~0.99)が示されているが、それ以降に1件の大規模試験(1万5,804人)を含む6件の適格なRCTが完了している。そこで、英国・Queen Mary University of LondonのDavid A. Jolliffe氏らがRCTデータを更新し検討した結果、ビタミンD補充によるARI予防効果の点推定値は以前とほぼ同様であったが、統計学的に有意な予防効果がないことが示された。The Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2025年2月21日号に掲載。 本研究では、ランダム効果モデルを用いて、ARI予防のためのビタミンDに関するRCTのデータを更新し、系統的レビューとメタ解析を行った。さらに、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD濃度、投与レジメン、年齢によってビタミンDの効果が異なるかどうかを調べるため、サブグループ解析を行った。2人の研究者が、2020年5月1日(前回のメタ解析の検索終了日)以降、2024年4月30日までに発表された研究を、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、ClinicalTrials.govを用いて検索した。なお、言語は制限しなかった。著者から、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD濃度と年齢で層別化した集計データを入手した。 主な結果は以下のとおり。・新たに同定した6件のRCT(1万9,337人)のうち、3件の新規RCTにおける1万6,085人(83.2%)のデータを入手し、前回のメタ解析で同定された43件のRCTにおける4万8,488人のデータと合わせた。・ビタミンDとプラセボとの比較で、介入がARIリスクに統計学的に有意な影響を及ぼさなかった(OR:0.94、95%CI:0.88~1.00、p=0.057、40試験、6万1,589人、I2=26.4%)。・事前に指定されたサブグループ解析において、年齢、ベースラインにおけるビタミンDの状態、投与頻度、投与量による効果修飾のエビデンスは認められなかった。・ビタミンDは、重篤な有害事象を1つ以上経験した参加者の割合に影響を及ぼさなかった(OR:0.96、95%CI:0.90~1.04、38試験、I2=0.0%)。・Funnel plotは左側非対称性を示した(p=0.0020、Eggerの検定)。

2.

切除不能肝細胞がん1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブvs.レンバチニブまたはソラフェニブ、アジア人解析結果(CheckMate 9DW)/ESMO Asia2024

 切除不能肝細胞がん(HCC)に対する1次治療として、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法は、レンバチニブまたはソラフェニブ単剤療法と比較して全生存期間(OS)を有意に改善したことが、国際共同無作為化非盲検第III相CheckMate-9DW試験の結果示されている。今回、同試験のアジア人サブグループ解析結果を、香港・Queen Mary HospitalのThomas Yau氏が欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)で報告した。 全体集団において、追跡期間中央値35.2ヵ月におけるOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群23.7ヵ月vs.対照群20.6ヵ月で、ニボルマブ+イピリムマブ群における統計学的に有意な改善が認められた(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.65~0.96、p=0.018)。・対象:全身治療歴のない切除不能HCC患者(RECIST v1.1に基づく測定可能病変1つ以上、Child-Pughスコア5または6、ECOG PS 0または1、Vp4の高度な門脈侵襲なし) ・試験群(ニボルマブ+イピリムマブ群):ニボルマブ(1mg/kg)+イピリムマブ(3mg/kg)3週間隔で4サイクル→ニボルマブ(480mg)4週間隔 133例・対照群(治験責任医師による選択):レンバチニブ(8mg)1日1回またはソラフェニブ(400mg)1日2回 147例・評価項目:[主要評価項目]OS[副次評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)[その他の重要な探索的評価項目]RECIST v1.1に基づくBICRによる無増悪生存期間(PFS)、安全性・層別化因子:病因(HBV vs.HCV vs.非感染)、肉眼的血管浸潤(MVI)/肝外転移(EHS)の有無、α-フェトプロテイン(AFP、<400ng/mL vs.≧400ng/mL) 主な結果は以下のとおり。・対照群では94%がレンバチニブによる治療を受けていた。・ベースライン時点の患者背景は、年齢中央値がニボルマブ+イピリムマブ群64(範囲:37~85)歳vs.対照群66(32~89)歳、男性が79% vs.84%を占め、日本人は19% vs.21%含まれていた。HBVに起因する肝がんが62% vs.59%、HCVに起因する肝がんが18% vs.21%、AFP≧400ng/mLが38% vs.36%、局所治療歴ありが57% vs.60%であった。・追跡期間中央値35.7ヵ月におけるOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群34.0ヵ月vs.対照群22.5ヵ月で、全体集団と同様にニボルマブ+イピリムマブ群における臨床的に意味のある改善が認められた(HR:0.75、95%CI:0.54~1.03)。・OSベネフィットはすべてのサブグループでおおむね一貫していた。・ORRはニボルマブ+イピリムマブ群37%(完全奏効[CR]:10%、部分奏効[PR]:27%) vs.対照群14%(CR:<1%、PR:13%)であった。・病因別のORRは、HBVに起因する肝がんでニボルマブ+イピリムマブ群28% vs.対照群16%、HCVに起因する肝がんで63% vs.16%、非感染者で38% vs.3%であった。・PFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群9.8ヵ月vs.対照群9.0ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.52~0.99)で、18ヵ月PFS率は44% vs.20%、24ヵ月PFS率は40% vs.11%であった。・何らかの後治療を受けていたのはニボルマブ+イピリムマブ群56%(74例) vs.対照群63%(93例)で、全身療法として多かったのはニボルマブ+イピリムマブ群ではレンバチニブ(36例)、対照群ではアテゾリズマブ+ベバシズマブ(41例)であった。・治療期間中央値はニボルマブ+イピリムマブ群4.6ヵ月vs.対照群7.3ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ+イピリムマブ群43% vs.対照群45%で発現し、ニボルマブ+イピリムマブ群ではALT上昇(6%)、AST上昇(5%)、リパーゼ増加(5%)、対照群では高血圧(16%)、蛋白尿(10%)が多く認められた。・TRAEによる死亡はニボルマブ+イピリムマブ群で2例(自己免疫性肝炎、肝不全が1例ずつ)、対照群で1例(肝腎症候群)確認された。・何らかの免疫介在性有害事象がニボルマブ+イピリムマブ群の55%で発現し、甲状腺機能低下症(20%)、皮疹(17%)、肝炎(16%)が多く認められた。治療中止に至った免疫介在性有害事象は10%であった。 Yau氏はこれらの結果について、アジアにおける切除不能肝細胞がん患者に対するファーストラインの新たな標準治療として、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が有望であることを裏付けるものとコメントしている。

3.

未治療尿路上皮がん、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブがOS・PFS改善(EV-302/KEYNOTE-A39)/NEJM

 局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の1次治療において、エンホルツマブ ベドチン(nectin-4に対する抗体薬物複合体)とペムブロリズマブ(PD-1阻害薬)の併用は化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に延長し、臨床的に意義のある有益性を示し、安全性プロファイルは既報と一致することが、英国・Queen Mary University of LondonのThomas Powles氏らが実施した「EV-302試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年3月7日号に掲載された。25ヵ国の無作為化第III相試験 EV-302試験は、未治療の局所進行または転移性尿路上皮がんにおけるエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、日本を含む25ヵ国185施設で参加者を募集した(Astellas Pharma USなどの助成を受けた)。 前治療歴のない成人患者を、3週を1サイクルとして、エンホルツマブ ベドチン(1.25mg/kg体重、1および8日目に静脈内投与)+ペムブロリズマブ(200mg、1日目に静脈内投与)を投与する群、または3週を1サイクルとして、ゲムシタビン+シスプラチン(シスプラチンが不適応の場合はゲムシタビン+カルボプラチン)を投与する群に、無作為に割り付けた。 主要評価項目はPFSとOSであり、独立中央判定委員会が盲検下に評価した。 886例(年齢中央値69歳[範囲:22~91]、男性76.7%)を登録し、442例をエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群、444例を化学療法群に割り付けた。生存の追跡期間中央値は17.2ヵ月だった。シスプラチン不適応例、適応例の双方で高い有益性 PFS中央値は、化学療法群が6.3ヵ月であったのに対し、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群は12.5ヵ月と有意に優れた(病勢進行と死亡のハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.38~0.54、p<0.001)。 また、OS中央値は、化学療法群の16.1ヵ月と比較して、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群は31.5ヵ月であり有意に良好だった(死亡のHR:0.47、95%CI:0.38~0.58、p<0.001)。 シスプラチン不適応例および適応例のいずれとの比較においても、PFS中央値およびOS中央値は、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群で優れた。 全奏効率もエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群で良好で(67.7% vs.44.4%、p<0.001)、また完全奏効率も同群で高かった(29.1% vs.12.5%)。一方、疼痛進行までの期間(患者報告アウトカム)には差を認めなかった(14.2ヵ月 vs.10.0ヵ月、p=0.48)。投与サイクル数は多いが、Grade3以上の有害事象は少ない 投与サイクル数中央値は、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群が12回(範囲:1~46)、化学療法群は6回(1~6)であったが、この間に発現したGrade3以上の治療関連有害事象は前者のほうが少なかった(55.9% vs.69.5%)。エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群で頻度の高かったGrade3以上の治療関連有害事象は、斑状丘疹状皮疹(7.7%)、高血糖(5.0%)、好中球数減少(4.8%)だった。 著者は、「エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群の有益性は、肝転移の有無、シスプラチンの適格性、PD-L1の発現状態などの事前に規定されたサブグループのすべてで認めた」とまとめるとともに、「疼痛進行までの期間の延長などの所見が、患者に及ぼす影響を明らかにするためには、より詳細な患者報告アウトカムの解析が求められる」としている。

4.

既治療の転移TN乳がんへのペムブロリズマブ、健康関連QOLへの影響(KEYNOTE-119)

 既治療の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対してペムブロリズマブを化学療法と比較したKEYNOTE-119試験では、主要評価項目である全生存期間がペムブロリズマブは化学療法と同等であったが、ペムブロリズマブの治療効果はPD-L1発現レベルが高いほど大きかったことが報告されている。今回、本試験における健康関連QOLを解析した結果、臨床アウトカムと一致しており、PD-L1陽性スコア(CPS)10以上の患者の結果に左右されるようであると英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏らが報告した。European Journal of Cancer誌2023年12月号に掲載。 本試験は、対象患者をペムブロリズマブ群(3週ごと200mgを静脈内投与、最大35サイクル)と医師選択治療群に1対1で無作為に割り付けた。事前に規定された探索的評価項目は、健康関連QOL(EORTC QLQ-C30、QLQ-BR23)のベースラインからの変化と有用性(EQ-5D-3L)であった。悪化するまでの期間(time to deterioration:TTD)は、治療開始から最初に10点以上悪化するまでの期間とした。 主な結果は以下のとおり。・健康関連QOLはPD-L1 CPSが10以上の187例を解析した。・ベースラインから6週時点(主要解析時)までの変化は、QLQ-C30 GHS/QoL(最小二乗平均スコアの群間差:4.21、95%信頼区間:-1.38~9.80)、QLQ-C30の機能尺度(身体、役割、認知、社会)、QLQ-C30の症状尺度/項目(疲労、悪心/嘔吐、呼吸困難、食欲不振)、QLQ-BR23の症状尺度/項目(全身療法による副作用、脱毛による動揺)において、化学療法よりペムブロリズマブで良好だった。・TTD中央値は、QLQ-C30のQHS/QoL(4.3ヵ月vs.1.7ヵ月)、QLQ-C30の悪心/嘔吐(7.7ヵ月vs.4.8ヵ月)、QLQ-BR23の全身療法による副作用(6.1ヵ月vs.3.4ヵ月)において、化学療法よりペムブロリズマブのほうが長かった。・その他の健康関連QOLの評価項目は、治療による差がほとんど認められなかった。

5.

進行/転移TN乳がん1次治療でのDato-DXd+デュルバルマブ、11.7ヵ月時点で奏効率79%(BEGONIA)/ESMO2023

 進行/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療として、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)と抗PD-L1抗体デュルバルマブの併用を検討するBEGONIA試験のArm7では、追跡期間中央値7.2ヵ月で74%の奏効率(ORR)が得られている。今回、追跡期間中央値11.7ヵ月の解析でORRが79%であったことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。 BEGONIA試験は、進行/転移TNBCの1次治療として、デュルバルマブと他の薬剤との併用による新たな治療を検討するために、2つのPartで構成された第Ib/II相試験である。・対象:StageIVに対する治療歴のない切除不能な進行/転移TN乳がん・方法:Dato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mg(3週ごと、静脈内投与)を病勢進行もしくは許容できない毒性発現まで投与・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性[副次評価項目]ORR、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間 主な結果は以下のとおり。・2023年2月2日のデータカットオフ時点で、Dato-DXd+デュルバルマブの治療を受けた62例中29例(47%)が治療継続中で、追跡期間中央値は11.7ヵ月(範囲:2~20ヵ月)であった。ベースライン時の年齢中央値は53歳、60%に内臓転移があり、PD-L1低値が87%であった。・ORRは79%(95%信頼区間[CI]:66.8~88.3)で、完全奏効6例、部分奏効43例だった。抗腫瘍効果はPD-L1レベルにかかわらず認められた。・DOR中央値は15.5ヵ月(95%CI:9.92~NC)、PFS中央値は13.8ヵ月(同:11.0~NC)であった。・最も多くみられた有害事象(AE)は消化管系で概してGradeは低かった。・Dato-DXd減量の原因となるAEは口内炎(65%)が最も多かった。・治療関連間質性肺疾患/肺炎が3例(5%)に発現した(Grade2が2例、Grade1が1例)。・下痢(13%)、好中球減少症(5%)の発現率は低かった。 Schmid氏は「進行/転移TNBCの1次治療におけるDato-DXdとデュルバルマブの併用は、追跡期間中央値11.7ヵ月時点で、PD-L1発現にかかわらず引き続き強固で持続的な奏効を示した。新たな安全性シグナルはみられず、管理可能な安全性プロファイルを示した」と結論した。現在、PD-L1高値集団を対象としたArm8(Dato-DXd+デュルバルマブ)の登録を行っている。

6.

早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS改善、5年後も持続(KEYNOTE-522)/ESMO2023

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)が有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことがすでに報告されている。今回、第6回中間解析(追跡期間中央値63.1ヵ月)でのEFSを解析した結果、pCRの結果にかかわらず、術前化学療法単独と比べて臨床的に意味のあるEFS改善が持続していたことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。・対象:未治療の転移のないTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群、784例)・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群、390例)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、OS、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・今回の解析(データカットオフ:2023年3月23日)において、EFSイベントがペムブロリズマブ群で18.5%、プラセボ群で27.7%に認められた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.49~0.81)。5年EFS率はペムブロリズマブ群81.3%、プラセボ群72.3%だった。・ペムブロリズマブによるEFSベネフィットは、PD-L1発現やリンパ節転移の有無など、事前に規定したサブグループで一貫していた。・事前に規定された非ランダム化探索的解析におけるpCRの結果別の5年EFS率は、pCR例でペムブロリズマブ群92.2% vs.プラセボ群88.2%、非pCR例でペムブロリズマブ群62.6% vs.プラセボ群52.3%であった。・5年遠隔無増悪/遠隔無再発生存率は、ペムブロリズマブ群84.4%、プラセボ群76.8%であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.84)。 Schmid氏は「これらの結果は、ペムブロリズマブとプラチナを含む術前補助療法後、pCRの結果によらずペムブロリズマブによる術後補助療法を行うレジメンを、高リスク早期TNBC患者に対する標準治療としてさらに支持する」と述べた。

7.

サル痘感染拡大、4~6月に感染した528例の特徴/NEJM

 2022年4月以降、欧米を中心にサル痘感染が広がっている。7月23日にはWHOが緊急事態を宣言し、日本でも7月25日に感染者が確認された。今回、英国・Queen Mary University of LondonのJohn P. Thornhill氏らの国際共同研究グループ(SHARE-net Clinical Group)が、2022年4月27日~6月24日に16ヵ国43施設でPCR検査によりサル痘と確認・診断された528例について、症状、臨床経過、転帰を調査した結果を報告した。NEJM誌オンライン版2022年7月22日号に掲載。<感染者の背景>98%がゲイもしくはバイセクシュアルの男性で、75%が白人、41%がヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性、年齢中央値は38歳だった。検査を受けた377例中109例(29%)で性感染症を併存していた。精液を分析した32例中29例にサル痘ウイルスDNAが検出された。<感染経路>95%が性行為による感染と考えられた。<症状>95%に発疹/皮膚病変がみられ、その部位は肛門性器が73%、顔が25%、体幹/手足が55%だった。皮膚病変以外の所見として、発熱(62%)、リンパ節腫脹(56%)、倦怠感(41%)、筋肉痛(31%)、頭痛(27%)、咽頭炎(21%)などがみられた。<潜伏期間>曝露歴が明らかな23例において、潜伏期間中央値は7日(範囲:3〜20日)であった。<入院目的>疼痛管理(主に肛門の激痛)21例、軟部組織感染18例、咽頭炎(経口摂取制限)5例、眼病変2例、急性腎障害2例、心筋炎2例、感染制御目的13例であった。<転帰>死亡例は報告されていない。

8.

進行/転移TN乳がんの1次治療、PD-L1発現によらずDato-DXd+デュルバルマブが奏効(BEGONIA)/ESMO BREAST 2022

 進行/転移トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、トポイソメラーゼI阻害薬を含むTROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)が、PD-L1発現の有無によらず高い奏効率を示し、安全性プロファイルも管理可能であったことがBEGONIA試験で示された。英国・Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。 BEGONIA試験は、2つのPartで構成された非盲検プラットフォーム試験で、進行/転移TNBCの1次治療として、抗PD-L1抗体のデュルバルマブと他の薬剤との併用を評価している。Part1について、すでにパクリタキセル+デュルバルマブ群での客観的奏効率(ORR)が58.3%、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+デュルバルマブ群でのORRが66.7%であったことを報告している。今回はDato-DXd+デュルバルマブ群における結果を報告した。・対象:StageIVに対する治療歴のない切除不能な進行/転移TN乳がん・方法:Dato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mg(3週ごと、静脈内投与)を病勢進行もしくは許容できない毒性発現まで投与・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性[副次評価項目]ORR(RECIST v1.1)、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・29例がDato-DXd+デュルバルマブを投与され(24例が投与継続中)で、27例がベースライン後に2回評価を受けた。追跡期間中央値は3.9ヵ月(範囲:2~6ヵ月)。・ORRは74%(20/27例、95%CI:54~89)で、完全奏効は2例(7%)、部分奏効は18例(67%)だった。奏効はPD-L1発現の有無によらず認められた。・奏効までの期間の中央値は1.4ヵ月(95%CI:1.35~1.58)で、奏効例すべてがデータカットオフ時(2021年11月15日)も奏効を維持し、奏効期間中央値未到達である。・用量制限毒性は認められていない。・Dato-DXdの減量が4例(14%、すべて口内炎による)、Dato-DXdの投与延期が1例(3%)、デュルバルマブの投与延期が4例(14%)にみられた。・頻度が高い有害事象は、口内炎(69%)、脱毛症(66%)、悪心(66%)であった。下痢は4例(14%、すべてGrade1)と少なく、間質性肺疾患/肺炎や好中球減少は報告されなかった。 現在、本試験のPart2の Dato-DXd +デュルバルマブ群への登録が進行中であり、奏効期間、PFS、OSの評価のためのフォローアップを継続している。

9.

尿路上皮がんに対する抗FGFR阻害薬とPD-1抗体の併用は有用な可能性(NORSE)/ESMO2021

 転移を有する尿路上皮がん(mUC)に対するerdafitinibとcetrelimabの併用は、erdafitinib単独よりも有用であることが、英国・Queen Mary University St. Bartholomew's HospitalのThomas Powles氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 erdafitinibは線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の遺伝子異常を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬で、2019年に米国で転移のある尿路上皮がんに対して迅速承認されている。一方、cetrelimabは抗PD-1抗体である(両剤ともに本邦未発売)。今回の発表はこの2剤併用の有用性を検討する第II相比較試験の中間解析結果。・対象:シスプラチン投与に不適合なFGFR遺伝子の変異あるいは融合を有する未治療のmUC(PD-L1発現状況は問わず)・試験群1:erdafitinib(E群)・試験群2:erdafitinib+cetrelimab(EC群) ・評価項目[主要評価項目]奏効率(ORR)、安全性[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間、 主な結果は以下のとおり。・試験には53例が登録され、今回の解析(2021年7月データカットオフ)では、48例が安全性評価対象に、37例が有効性評価対象となった。・登録症例のPD-L1陽性はE群8%EC群7%であり、FGFRの変異はE群88%EC群67%、融合はE群12%EC群26%であった。・ORRはE群が33%(CR6%/PR28%)で、EC群が68%(CR21%/PR47%)であった。・DCRはE群が100%、EC群が90%であり、TTRはE群が2.3ヵ月、EC群が1.8ヵ月であった。奏効期間中央値は、E群では未到達、EC群では6.9ヵ月であった。・両群とも有効性と、FGFRの状態、PD-L1発現の状態の間に相関性はなかった。・Grade3/4の有害事象発生割合は、E群38%、EC群50%であった。主なものは、E群では貧血12.5%、全般的な体調不良12.5%、EC群では口内炎12.5%、肝酵素上昇12.5%、全身倦怠感8.3%であった・EC群でのGrade3/4の免疫関連有害事象は17%であった。・有害事象による治療中止の割合はE群で8%、EC群では、2剤とも中止8%、どちらか1剤を中止29%であった。 最後にPowles氏は「今回の発表は、mUC治療でerdafitinibにcetrelimabを併用する有用性を示した初のデータである。しかし、PD-L1発現との相関性や安全性については更なる検討が必要である」と述べた。

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新型コロナに対するRNA遺伝子ワクチンは人類の救世主になりうるか?【基礎編】(解説:山口佳寿博氏)-1334

 2020年12月18日現在、新型コロナPCR確定感染者は世界全体で7,285万人、死者数は164万人(粗死亡率:2.3%)に達する。不顕性感染者を含む総感染者数はPCR陽性者数の約10倍と考えられるので(Bajema KL, et al. JAMA Intern Med. 2020 Nov 24. [Epub ahead of print])、現時点での世界総感染者数は約7.3憶人(世界総人口の約10%)と推察される。このままでは新型コロナによって人類は危機的状況に陥る可能性があり、それを阻止するためにはワクチンによる感染予防/制御が絶対的に必要である。現在、18種類のワクチンに関し第III相試験が進行中、あるいは終了している。しかしながら、12月10日、オーストラリアのQueensland大学で開発中の遺伝子ワクチンの臨床治験が中止されたことが報道された。以上の18種類のワクチンのうち、3種類の遺伝子ワクチンに関する第III相試験の中間結果が報告された(米国/ドイツ・Pfizer/BioNTech社のBNT162b2、米国・Moderna社のmRNA-1273、英国・AstraZeneca社のChAdOx1)。これらの3種類の遺伝子ワクチンは来年度上半期には本邦にも導入される予定であり、それらの基礎的/臨床的特徴を把握しておくことは、2021年の新型コロナ感染症に対する本邦での抜本的対策を構築するうえで最重要課題である。本論評(基礎編)では、遺伝子ワクチンを含めたワクチン全体の本質を理解するうえで必要な基礎的事項を整理する。次の論評(臨床編)では、来年度、本邦に導入されるであろう3種類の遺伝子ワクチンに関する臨床的意義について考察する。 新型コロナウイルスに対するワクチンは、主として下記の3種類に分類される(Abbasi J. JAMA 2020;324:1125-1127.)。1)蛋白ワクチン 全ウイルスを不活化したワクチン(Whole inactivated vaccine)、感染と関連する領域のみを精製したワクチン(Subunit or split vaccine)、遺伝子組み換え技術を駆使してウイルス侵入規定領域であるS蛋白を人工的に作成しワクチンとして用いるものが含まれる。新型コロナに対する不活化ワクチンは、中国を中心に開発が進められている(Sinovac社のCoronaVac、Sinopharm社のBBIBP-CorV)。遺伝子組み換え人工蛋白ワクチンとしては、米国・Novavax社のNVX-CoV2373に関する第I/II相試験が終了し(Keech C, et al. N Engl J Med. 2020;383:2320-2332.)、第III相試験が開始されつつある。NVX-CoV2373も本邦への導入が検討されている。NVX-CoV2373はS蛋白全長に対する遺伝子情報をナノ粒子に封入してBaculovirusに導入、そのBaculovirusを昆虫内で増殖、遺伝子組み換えS蛋白を作成し、免疫原性を増加(ブースター効果)させるアジュバント(Matrix M1)と共に接種するものである。NVX-CoV2373と同様の方法で、インフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)を遺伝子組み換え技術を用いて作成した蛋白ワクチン(フランス・Sanofi社のFluBlok)は、米国などで接種され臨床的評価が高い。蛋白ワクチンの主たる作用は液性免疫の賦活であり、下記に述べる遺伝子ワクチンに比べ細胞性免疫の賦活は弱いと考えられている(Keech C, et al. N Engl J Med. 2020;383:2320-2332.)。 Sanofi社とGSK社は共同でS蛋白を標的とした遺伝子組み換え人工蛋白ワクチンの開発を行ってきたが、開発中の蛋白ワクチンのS蛋白に対する特異的IgG抗体産生が高齢者では有効域に達しなかったことにより、本ワクチンの開発を中止することを12月11日に発表した。今後は、新たなワクチンの開発を進めるとしている。2)DNA遺伝子ワクチン ウイルス侵入規定領域であるS蛋白に関する遺伝子情報をDNAに組み込み宿主に導入、S蛋白を作り出したうえで、それに対する液性免疫(抗体産生)、T細胞由来の細胞性免疫を誘導するものである。このために使用されるのがアデノウイルス(Ad)をベクター(輸送媒体)とする方法である。Adは2本鎖DNAによって形成されるウイルスであり、このDNAにS蛋白を規定する遺伝子情報(塩基配列)を組み込み宿主細胞に導入する。Adとして用いられるのは、ヒトに感染病変を起こさないヒトAd5型、ヒトAd26型、チンパンジー型Adである。ヒトAdをベクターとするワクチンは、米国・Johnson & Johnson社のAd26.COV2.S、中国・CanSino社のAd5-nCoV、ロシア・Gamaleya研究所のSputnik Vなどである。チンパンジー型Adをベクターとするワクチンが、英国・AstraZeneca社のChAdOx1(Voysey M, et al. Lancet. 2020 Dec 8. [Epub ahead of print])である。 Adをベクターとして用いるときの重要な問題点は、生体はAdを異物として認識し、それに対する特異抗体を産生することである。この抗体産生はAdの種類によらず発現する。その結果、ブースター効果を意図して投与される2回目のワクチン接種時には、遺伝子情報を封入したAdが1回目のワクチン投与時に形成された特異抗体の攻撃を受け、その一部は破壊される。その結果、Adをベクターとするワクチンでは、2回目のワクチン接種時、遺伝子情報封入Adの一部しか宿主に導入されず、ブースター効果が不十分で液性/細胞性免疫賦活化が阻害される(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.)。その意味で、Adをベクターとする遺伝子ワクチンは、2回目のワクチン接種の意義が薄く、単回接種を基本とするワクチンと考えるべきである。この原則にのっとって第II相試験が施行されたのが、CanSino社のヒトAd5型をベクターとしたAd5-nCoVワクチンである。Ad5-nCoVの単回接種1ヵ月後には有意な液性/細胞性免疫が惹起されることが示された(Zhu FC, et al. Lancet. 2020;396:479-488.)。一方、ヒトAd5型とAd26型をベクターとしたSputnik V(Logunov DY, et al. Lancet. 2020;396:887-897.)ならびにチンパンジーAdをベクターとしたChAdOx1(Folegatti PM, et al. Lancet. 2020;396:467-478.)においては、1回目ワクチン接種後21日目あるいは28日目に、2回目のワクチンが接種される。両ワクチンとも2回目接種後にブースター効果を認め、S蛋白に対する特異的IgG抗体はさらに上昇するが、回復期血漿中のIgG抗体価を凌駕するものではなかった。この結果は、Adをベクターとするワクチンでは2回目の接種でブースター効果は発現するものの、その程度は弱いことを意味する。RamasamyらはS蛋白に対するIgG抗体産生は、Adに対するIgG抗体価に逆比例することを証明した(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.)。 DNAワクチンのもう1つの欠点は、DNAに組み込まれた遺伝子情報は、まず細胞核内に取り込まれ、その情報がmRNAに転写される必要があることである。その後、細胞質に移行したmRNAを介する翻訳過程を経てS蛋白が産生される。すなわち、DNAワクチンでは転写と翻訳という2段階の過程を経る必要があるため、標的蛋白(S蛋白)の産生効率が悪い。3)RNA遺伝子ワクチン S蛋白の遺伝子情報(塩基配列)をmRNAとして生体に導入し、宿主細胞内でS蛋白の合成とそれに対する液性/細胞性免疫の発現を促す。この方法だとDNAワクチンと異なり、複雑な蛋白合成経路を経ずにS蛋白が宿主細胞質で産生されるので、DNAワクチンに比べ液性/細胞性免疫発現効率が良い(外から導入したmRNAの95%が宿主細胞に取り込まれる)。しかしながら、mRNAは陰性荷電を有する大きな分子であるため、裸のままでは宿主細胞に導入することができない。この問題を解決するため、mRNAをオイル様の性状を有する脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)に封入して宿主細胞に導入する方法が提唱された。Pfizer/BioNTech社のBNT162b2(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 10. [Epub ahead of print])、Moderna社のmRNA-1273(Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)がこれに該当する。LNPは抗原性を有さず、生体に導入した場合、不要な免疫反応を惹起しない。さらに、LNPは免疫形成に関してアジュバント効果を発揮し、液性/細胞性免疫を上昇させると考えらえている。すなわち、LNP封入RNAワクチンでは、2回目のワクチン接種は確実なブースター効果を発揮するので、BNT162b2、mRNA-1273は2回接種を原則とするワクチンと考えてよい。これら2つのLNP封入mRNAワクチンを用いた場合には、Adをベクターとして用いるChAdOx1ワクチンなどとは異なり、2回目のワクチン接種後のS蛋白特異的IgG抗体価は回復期血漿中のそれを明確に凌駕していた(Walsh EE, et al. N Engl J Med. 2020;383:2439-2450. , Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)。 遺伝子ワクチンの臨床的効果を考えるうえで重要な事項は、(1)ワクチン由来の液性/細胞性免疫が自然感染の場合に比べ質的/量的に同等のものであるか否か、(2)ワクチン接種による液性/細胞性免疫の持続時間がどの程度であるか、これらを把握することである。1)自然感染とワクチンによる模擬感染における液性/細胞性免疫の差異 自然感染初期にウイルスが宿主内に存在するBリンパ球細胞から分化した形質細胞を刺激し、IgGを中心とするウイルス特異的抗体を産生する(液性免疫)。この機序を担当する形質細胞の寿命は短く、感染発症後2~3週で死滅する(短命形質細胞)。しかしながら、ウイルスはCD4+-helper T細胞の一種であるTh2細胞を刺激し、Th2細胞はB細胞から形質細胞への分化を持続的に誘導する。このようにして形成されたB細胞は抗原情報を細胞内に保持し骨髄で長期に生存する(記憶B細胞)。また、このB細胞から誘導された形質細胞も生存期間が長く、IgG抗体の持続的産生を維持する(長寿形質細胞)。さらに、ウイルスはCD4+-T細胞の一種であるTh1細胞を賦活、IL-2存在下で胸腺のナイーブT細胞をCD8+-T細胞(細胞傷害性T細胞)に分化させる。CD8+-T細胞はウイルスに感染した細胞を殺傷/処理する(細胞性免疫)。新型コロナ感染症ではすべてのTh系細胞が幅広く賦活化されるが、Th1細胞の賦活が優位であると報告されている(Dan JM, et al. bioRxiv. 2020 Dec 18.)。感染初期に賦活化されたT細胞は1~2週間でその90%が死滅する。しかしながら、残り10%のT細胞は抗原情報を保持したまま記憶T細胞としてリンパ組織内で長期に生存する。記憶B細胞、記憶T細胞はウイルスの二次感染時に効率よく液性免疫、細胞性免疫を発現する(二次感染の予防)。 RNAワクチンによるウイルス模擬感染における液性免疫(特異的IgG抗体産生)の発現は、自然感染の場合に較べ有意に高いことが確認されている。しかしながら、T細胞系反応の全貌については、現時点で確実な報告はない。暫定的解析では、RNAワクチン接種によってTh1細胞反応は賦活されるが、Th2細胞反応はむしろ抑制されると報告された(Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)。RNAワクチン接種によってTh2細胞反応が低く維持されたことは、Th2経路の活性化と関連する抗体依存性感染増強(ADE:Antibody-dependent enhancement of infection)が発生し難いことを意味し、RNAワクチンの安全性を担保する重要な知見である。長期にわたる感染予防のためには、液性免疫に加えTh1系を中心とした細胞性免疫の持続的賦活化も重要な因子であり、今後、ワクチン接種後の細胞性免疫の動態・推移について詳細な検討が望まれる。2)自然感染とワクチンによる模擬感染における液性/細胞性免疫の持続時間 新型コロナの初回感染後に液性/細胞性免疫がどの程度の期間持続するかについての確実な報告はない。新型コロナパンデミック発生初期に出版された論文では、不顕性感染者の40%、有症状感染者の13%で、感染より2ヵ月後(回復期)にはIgG抗体価が無効域まで低下すると報告された(Long QX, et al. Nat Med. 2020;26:1200-1204.)。しかしながら、最近の論文では、S蛋白特異的IgG抗体産生、記憶B細胞、記憶T細胞(CD4+-T細胞、CD8+-T細胞)の賦活化は、感染後少なくとも8ヵ月は維持されることが報告された(Dan JM, et al. bioRxiv. 2020 Dec 18.)。Danらの結果を外挿すると、自然感染によって誘導された種々の免疫機序は、最低でも1年間は持続すると考えてよさそうである。 RNAワクチン接種後(ブースター効果を得るための2回目のワクチン接種後)における液性/細胞性免疫の持続時間に関しては、ワクチン接種後の観察期間が短く確実な結論を導き出せない。しかしながら、S蛋白の受容体結合領域(RBD)に対する特異的IgG抗体産生は、2回目のワクチン接種後少なくとも3ヵ月は持続することが確認された(Widge AT, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 3. [Epub ahead of print])。一方、ワクチン接種後の記憶B細胞、T細胞に由来する細胞性免疫の持続期間についての報告はない。ワクチン接種による模擬感染の液性/細胞性免疫持続時間が自然感染のそれと同等あるいはそれ以上であるならば、ワクチンによる二次感染予防効果は、ほぼ1年は持続することになり(すなわち、ワクチン接種は年1回で十分)、人類にとって大きな福音である。

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進行尿路上皮がんの維持療法にアベルマブが有効(JAVELIN Bladder 100)/NEJM

 局所進行または転移のある尿路上皮がんへの1次化学療法の維持療法において、アベルマブ+支持療法(BSC)はBSCのみの場合と比較し、全生存(OS)を有意に延長することが明らかにされた。英国・Queen Mary University of LondonのThomas Powles氏らが、進行尿路上皮がん患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相試験「JAVELIN Bladder 100試験」の結果を報告した。プラチナ併用化学療法は進行尿路上皮がんに対する標準的な1次治療であるが、多くの場合、化学療法耐性のため無増悪生存(PFS)やOSは限られていた。NEJM誌2020年9月24日号掲載の報告。1次化学療法後の進行尿路上皮がん患者700例でアベルマブ+BSC vs.BSC 研究グループは、2016年5月11日~2019年6月4日の期間に、29ヵ国197施設で被験者を募り試験を行った。 対象は、1次化学療法(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチンの4~6サイクル)後に病勢進行が認められなかった、切除不能の局所進行または転移がある尿路上皮がん患者700例。維持療法としてアベルマブ10mg/kgを2週間ごと+BSCを行うアベルマブ群とBSCのみの対照群のいずれかに無作為に割り付けた。 主要評価項目はOSで、無作為化された全患者集団およびPD-L1陽性集団にてそれぞれ評価した。副次評価項目はPFSと安全性であった。アベルマブ+BSCでOS期間が有意に延長 データカットオフ2019年10月21日時点で、全患者集団においてOSは、対照群と比較してアベルマブ群で有意に延長した(OS中央値:14.3ヵ月vs.21.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.56~0.86、p=0.001)。1年OS率は、アベルマブ群71.3%、対照群58.4%であった。 PD-L1陽性患者においても、アベルマブ群でOSの有意な延長が認められ(HR:0.56、95%CI:0.40~0.79、p<0.001)、1年OS率はアベルマブ群79.1%、対照群60.4%であった。 PFS期間中央値は、全患者集団においてアベルマブ群3.7ヵ月、対照群2.0ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.52~0.75)、PD-L1陽性患者においてそれぞれ5.7ヵ月、2.1ヵ月であった(0.56、0.43~0.73)。 有害事象の発現率はアベルマブ群98.0%、対照群77.7%、Grade3以上の有害事象の発現率はそれぞれ47.4%、25.2%であった。

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レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症を鑑別する臨床病理学的特徴

 レビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン病認知症(PDD)は、臨床的および神経病理学的な特徴が重複している疾患であり、神経病理にはともに、DLBとアルツハイマー型認知症(AD)の病理学的特徴が含まれている。また、脳アミロイド血管症(CAA)はADでよくみられる所見であり、認知症との関連が知られている。英国・UCL Queen Square Institute of NeurologyのD. Hansen氏らは、DLBとPDDの臨床的および神経病理学的な違いについて調査を行った。Neuropathology and Applied Neurobiology誌オンライン版2020年7月27日号の報告。 Queen Square Brain Bank for Neurological disordersより得たPDD 50例、DLB 16例を分析した。運動および認知機能の包括的な臨床データは、医療記録より抽出した。神経病理学的評価には、CAA、DLB、ADの病理学的検査を含めた。 主な結果は以下のとおり。・CAAは、PDDよりもDLBで認められた(p=0.003)。・DLB は、PDDよりもCAAの重症度が高く(p=0.009)、頭頂葉(p=0.043)および後頭葉(p=0.008)のCAAスコアが有意に高かった。・最も高いCAAスコアは、APOEε4/4およびε2/4で観察された。・生存分布では、DLBはPDDよりも各臨床段階への進行が早く、予後が不良であった。・DLBにおけるジスキネジアの欠如は、レボドパの生涯累積用量がPDDと比較して有意に少ないことと関連していた。 著者らは「DLBとPDDは、顕著なCAA病理および各臨床段階への急速な進行により鑑別できる可能性があることが示唆された」としている。

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COVID-19軽~中等症、早期の3剤併用療法が有効/Lancet

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者に対し、早期に開始したインターフェロン(INF)-β-1b+ロピナビル・リトナビル配合剤+リバビリンの3剤併用療法は、ロピナビル・リトナビル配合剤単独療法に比べ、SARS-CoV-2ウイルス陰性化までの期間および入院期間を有意に短縮し、安全性にも問題がないことが確認された。香港・Queen Mary HospitalのIvan Fan-Ngai Hung氏らが、127例の入院患者を対象に行った第II相の多施設共同前向き非盲検無作為化試験の結果を報告した。COVID-19パンデミックを制圧するため、効果的な抗ウイルス薬治療を見いだすことに1つの重点が置かれている。今回の結果について著者は、「さらなる臨床研究で、INF-β-1bをバックボーンとする2剤併用抗ウイルス薬療法の検討も行う必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年5月8日号掲載の報告。鼻咽頭スワブによるRT-PCR検査で陰性化までの期間を比較 研究グループは2020年2月10日~3月20日に、香港の6病院を通じて、ウイルス検査でCOVID-19が確認され入院した18歳以上の患者127例を対象に試験を行った。INF-β-1b+ロピナビル・リトナビル配合剤+リバビリンの3剤併用抗ウイルス薬療法と、ロピナビル・リトナビル配合剤単独療法を比較し、その有効性と安全性を評価した。被験者の症状の程度は、軽症~中等症だった。 被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはロピナビル400mg・リトナビル100mg、リバビリン400mgをいずれも12時間ごと14日間投与し、併せてINF-β-1b 800万IUを隔日3回投与した(3剤併用群、86例)。もう一方の群には、ロピナビル400mg・リトナビル100mgを12時間ごとに14日間投与した(対照群、41例)。 主要エンドポイントは、鼻咽頭スワブによる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査の結果でSARS-CoV-2ウイルスが陰性化するまでの期間とし、ITT解析で評価した。陰性化に関する3剤併用群のハザード比は4.37 発症から治療開始までの期間中央値は、5日(IQR:3~7)だった。 鼻咽頭スワブ検査でSARS-CoV-2ウイルスが陰性化するまでの期間中央値は、対照群12日(IQR:8~15)に対し、3剤併用群は7日(同:5~11)と有意に短かった(ハザード比:4.37、95%信頼区間:1.86~10.24、p=0.0010)。 有害事象は吐き気や下痢などが認められたが、両群間で有意差はなかった。対照群の1例が、肝炎のため治療を中止した。試験期間中の死亡は報告されなかった。

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リンパ節転移陽性の早期TN乳がん、術前にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加すると病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告されている(KEYNOTE-522試験)。12月10~14日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)では、本試験のサブグループにおけるpCR率が報告され、リンパ節転移陽性例においてもpCR率が有意に改善したことが示された。英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表。 本試験は、2017年3月~2018年9月に新規に診断された21カ国の18歳以上の転移のない早期TNBC患者1,174例が対象。術前補助療法として、ペムブロリズマブ+化学療法(ペムブロリズマブ群)またはプラセボ+化学療法(プラセボ群)に2:1に無作為に割り付けた。術前補助療法後、根治的手術を実施、適応があれば放射線療法を実施した。その後、再発または許容できない毒性が発現するまで、ペンブロリズマブまたはプラセボを投与した。主要評価項目は、pCRおよび無イベント生存(EFS)。 ESMO2019では、PD-L1の発現に関係なく、ペムブロリズマブ群(64.8%)はプラセボ群(51.2%)と比べpCR率が有意に高いことが報告された。今回のサブグループ解析ではリンパ節転移陽性例においても、ペムブロリズマブ群(64.8%)がプラセボ群(44.1%)に比べ有意に高いことが示された。

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早期TN乳がんの術前化学療法にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/ESMO2019

 新規に診断された早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することにより、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に上昇したことがKEYNOTE-522試験で示された。また、術前/術後のペムブロリズマブ投与により無イベント生存率(EFS)が改善する傾向もみられた。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表した。 本試験は、早期TNBCに対してペムブロリズマブの術前化学療法との併用および術後補助療法での投与について検討した、初のプラセボ対照無作為化比較第III相試験である。・対象:新規に診断されたTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群)・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間(OS)、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・1,174例が2:1に無作為化され、ペンブロリズマブ群に784例、プラセボ群に390例が割り付けられた。・追跡期間中央値はペムブロリズマブ群15.3ヵ月、プラセボ群15.8ヵ月であった。・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群は64.8%とプラセボ群51.2%に対して有意な改善を示した(p=0.00055)。・副次評価項目のpCR(ypT0 ypN0)およびpCR(ypT0/Tis)も、ペムブロリズマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ59.9%vs.45.3%および68.6%vs.53.7%と同様であった。・PD-L1発現の有無別のペムブロリズマブ群とプラセボ群におけるpCR(ypT0/Tis ypN0)は、PD-L1陽性で68.9%vs.54.9%、PD-L1陰性で45.3%vs.30.3%であり、PD-L1発現にかかわらず、ペムブロリズマブの改善効果が認められた。・EFSの最初の中間解析でのイベント発生率は、ペムブロリズマブ群7.4%、プラセボ群11.8%で、ハザード比は0.63(95%信頼区間:0.43~0.93)であったが、事前に設定したp値の有意水準を達成しなかった。18ヵ月時のEFSはペムブロリズマブ群91.3%、プラセボ群85.3%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象の発現率は、術前療法期ではペムブロリズマブ群76.8%、プラセボ群72.2%、術後療法期では5.7%、1.9%であった。・Grade3以上の免疫介在性有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群14.1%、プラセボ群2.1%であった。

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ドセタキセル+ADTがmHSPCのOSを延長(STAMPEDE試験)/ESMO2019

 転移を有するホルモン療法未治療の前立腺がん(mHSPC)患者に対する、ドセタキセル(DTX)とアンドロゲン除去療法(ADT)の併用療法の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、英国・Queen Elizabeth Hospital のNick James氏より発表された。 本試験(STAMPEDE試験)は前立腺がんを対象に、10群(A~L群)のアームを持ち、1万人以上の症例が登録される国際共同臨床試験である。既にmHSPCの1次治療としてDTX+ADTのOS改善報告がある。今回は2005年10月~2013年3月に登録のあった、A群(ADT群)とC群(DTX群)との長期追跡の結果と、高腫瘍量/低腫瘍量ごとの解析である。・試験群:DTX+ADT(DTX群:362例)・対照群:ADT(ADT群:724例)・評価項目: [主要評価項目]全生存期間(OS) [副次的評価項目]治療成功期間(FFS)、無増悪生存期間(PFS)、前立腺がん特異的生存期間(PCSS)、転移無増悪生存期間(MPFS) 高腫瘍量/低腫瘍量の判定はCHAARTED試験のカテゴリー(高腫瘍量:内臓転移ありまたは骨転移4ヵ所以上でそのうち少なくとも1ヵ所以上は脊椎・骨盤以外の転移)を使用した。 主な結果は以下のとおり。・CHAARTED試験カテゴリーの低腫瘍量に該当する患者はADT群33%、DTX群34%、高腫瘍量に該当する患者はそれぞれ44%と41%だった。・追跡期間中央値6.5年における全症例を対象にしたDTX群対ADT群のOSハザード比(HR)は0.81(95%信頼区間[CI]:0.69~0.95)、p=0.009と有意にDTX群が良好であった。5年OS率はADT群37%、DTX群49%であった。・同様にDTX群対ADT群のFFSは、HR0.66(95%CI:0.57~0.76)、p<0.001と有意にDTX群が良好であった。また、5年FFS率はADT群13%、DTX群21%であった。・低腫瘍量の患者におけるOSのHRは0.76(95%CI:0.54~1.07)、p=0.107で、5年OS率はADT群57%、DTX群72%であった。また、高腫瘍量の患者におけるOSのHRは0.81(95%CI:0.64~1.02)、p=0.064で、5年OS率はADT群24%、DTX群34%であった。・全症例と低腫瘍量症例と高腫瘍量症例の間で、ドセタキセルのOSに対する効果に差異はみられなかった(p=0.827)。・その他、同様にFFS、PFS、PCSSについても、全症例と低腫瘍量症例と高腫瘍量症例の間でドセタキセルのOSに対する効果に差異はみられなかった。・薬剤投与1年未満に発現したGrade3の有害事象の発現は、ADT群21%、DTX群29%、Garde4は3%と13%、Grade5は両群ともに1%未満であった。さらに投与1年間以降に発現した有害事象は、Grade3がADT群24%、DTX群25%、Grade4は3%と2%、Grade5は1%未満と0%であった。

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急性骨髄性白血病、微小残存病変が再発の予測因子に/NEJM

 急性骨髄性白血病(AML)では、完全寛解中の分子レベルでの微小残存病変の検出が、再発率や生存率に関して、高度な独立の予後因子としての意義を持つことが、オランダ・エラスムス大学のMojca Jongen-Lavrencic氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年3月29日号に掲載された。AML患者は完全寛解に到達することが比較的多いが、再発率が依然として高い。次世代シークエンシングにより、ほぼすべての患者で分子レベルの微小残存病変の検出が可能となったが、再発の予測における臨床的な意義は確立されていないという。再発、生存の予測に臨床的な意義を付加するかを検証 研究グループは、次世代シークエンシングを用いた標的分子のモニタリングが、白血病の再発の予測に臨床的な意義を付加するかを検証する大規模なコホート研究を実施した(オランダがん協会のQueen Wilhelmina基金などの助成による)。 2001~13年の期間に新規に診断された、年齢18~65歳のAML患者を対象とした。診断時および寛解導入療法後の完全寛解時に、ターゲット次世代シークエンシングを用いて遺伝子変異の評価を行った。 エンドポイントは、4年時の再発率、無再発生存率、全生存率であった。加齢に伴うクローン性造血には、再発リスクとの関連はない 482例のAML患者が登録され、平均2.9ヵ所の遺伝子変異が検出された。1つ以上の変異が検出された430例(89.2%)の年齢中央値は51歳(範囲:18~66)で、216例が男性であった。診断時に検出された変異のうち頻度が高かったのは、NPM1(39%)、DNMT3A(33%)、FLT3(33%)などであった。 このうち51.4%で完全寛解中も変異が持続し、変異のアレル頻度にはばらつきがみられた(範囲:0.02~47%)。また、加齢に伴うクローン性造血を有する人に比較的多く発現する持続的なDTA変異(DNMT3A、TET2、ASXL1の変異)の検出は、再発率の上昇とは関連がなかった。 持続的なDTA変異を除くと、分子レベルの微小残存病変の検出は、検出されない場合に比べて、4年時の再発率が有意に高く(55.4 vs.31.9%、ハザード比[HR]:2.14、p<0.001)、無再発生存率が低く(36.6 vs.58.1%、再発または死亡のHR:1.92、p<0.001)、全生存率が低かった(41.9 vs.66.1%、死亡のHR:2.06、p<0.001)。 多変量解析では、完全寛解中のDTA以外の遺伝子変異の持続的な検出は、再発率(HR:1.89、p<0.001)、無再発生存率(再発または死亡のHR:1.64、p=0.001)、全生存率(死亡のHR:1.64、p=0.003)に関し、高度な独立の予後因子としての意義をもたらすことが確認された。 また、残存病変の検出におけるシークエンシングとフローサイトメトリーの比較では、シークエンシングは付加的な予後因子としての意義を有することが示された。 著者は、「DTA変異の持続は再発リスクの増加とは関連しなかったことから、再発を予防するためにこれらの残存細胞を除去する必要はないと考えられるが、さらに長期のフォローアップを行った場合に再発リスクが増加する可能性は排除されない」と指摘している。

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パーキンソン病におけるエキセナチド週1回投与の効果(解説:山本康正 氏)-736

【目的】 2型糖尿病に使用されているglucagon-like peptide-1(GLP-1)の受容体作動薬であるエキセナチドには、げっ歯類において神経毒により作成されたパーキンソン病モデルで神経保護作用・神経修復作用があることが示されている。著者らは以前に、少数例のオープンラベル試験でエキセナチドがパーキンソン病患者の運動・認知機能障害を改善した結果を得ており、今回パーキンソン病患者に対するエキセナチドの効果を、single-centre, randomized, double-blind, placebo-controlled trialによって確認する試験を行った。【方法】 25~75歳のQueen Square Brain Bank criteriaで評価された特発性パーキンソン病患者で、ドーパミン治療がなされているがwearing offを有し、治療下においてYahl分類が2.5以下の患者を対象とした。通常のドーパミン系治療に加えて、エキセナチド2mgとプラセボの週1回皮下注射を48週間行い、12週間のwash out期間の後、評価を行った。患者は12週ごとに受診し、抗パーキンソン病薬服用後8時間以上あけたoff-medication stateにおいて、運動・非運動症状や認知機能、心理テスト等の総合的評価がなされた。最初と60週目にドーパミンの働きを見る検査であるDaTscan(ダットスキャン)を行った。1次エンドポイントは、60週目にMovement Disorders Society Unified Parkinson's Disease Rating Scale(MDS-UPDRS)のmotor subscale part3を用いて評価したスコアの差である。【結果】 62例がエントリーされ、32例がエキセナチド、30例がプラセボに割り付けられた。最終60週目において、MDS-UPDRS-part3はプラセボ群で2.1点悪化し、エキセナチド群で1.0点改善した。調整後の差は-3.5点で、エキセナチド群で有意に改善した(p=0.031)。ちなみに48週目の時点では、-4.3点の差でエキセナチド群が勝っていた(p=0.0026)。認知機能、非運動症状、QOL、気分、ジスキネジア等に差はなかった。DaTscan imagingでは、1回目に比べて2回目は両群とも低下傾向にあったが、エキセナチド群で低下はより軽度であった。【考察】 48週目のみならず12週間のwash out期間の後もエキセナチドの効果が持続していたことは注目すべきであり、これはエキセナチド持続の長い症候改善作用を有するためなのか、あるいは、疾患の病態生理に影響を与えた結果なのかは今後の検討が待たれる。【解説】 パーキンソン病は年月とともに進行性で、進行期には、不随意運動、幻覚、起立性低血圧や頑固な便秘など自律神経障害も出現して難渋することが多い。ドーパミン受容体作動薬やモノアミン酸化酵素阻害薬に神経保護作用が期待されているが、さらに新規の神経保護作用を有する薬剤が待たれている。エキセナチドは2型糖尿病に使用されているGLP-1の受容体作動薬であるが、今回の試験では従来の抗パーキンソン病薬に追加することで、運動症状の改善のみならず12週間のwash out期間の後も効果が持続していた。このことは、単に持続作用が長いことを示しているのかもしれないが、疾患の病態生理に作用し神経保護作用を有する可能性があり期待される。

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GLP-1製剤、パーキンソン病の運動機能を改善/Lancet

 GLP-1受容体作動薬エキセナチドを中等度のパーキンソン病患者に投与すると、運動機能が改善する可能性があることが判明した。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDilan Athauda氏らが、62例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月3日号で発表した。エキセナチド2mgを48週間投与、60週後の運動機能変化を比較 Athauda氏らは2014年6月18日~2015年3月13日にかけて、25~75歳の中等度パーキンソン病の患者62例を無作為に2群に分け、通常服用している薬に加え、一方にはエキセナチド2mgを(32例)、もう一方にはプラセボを(30例)、それぞれ週1回48週にわたり皮下投与した。その後、試験薬を中止し12週間のウォッシュアウト後(60週時点)に最終評価を行った。 被験者は、Queen Square Brain Bank基準で特発性パーキンソン病の診断を受け、ドーパミン療法によるウェアリング・オフ現象を伴い、治療下の症状はホーン・ヤール重症度分類で2.5以下だった。患者および研究者は、治療割り付けについてマスキングされていた。 主要アウトカムは、実質的に非薬物治療下と定義される時点(60週)で評価したベースライン(0週)からの、国際運動障害学会が作成したパーキンソン病統一スケール「MDS-UPDRS」の運動機能サブスケール・パート3の変化値に関する両群間の補正後差だった。エキセナチド群で運動機能サブスケールは1.0ポイント改善 有効性解析には、無作為化後の追跡評価を完遂したエキセナチド群31例、プラセボ群29例が含まれた。 0~60週時のMDS-UPDRS・パート3スコアの変化値は、エキセナチド群が-1.0点(95%信頼区間[CI]:-2.6~0.7)と改善を示したのに対し、プラセボ群は2.1点(同:-0.6~4.8)と悪化が示された。両群の補正後平均差は-3.5点(同:-6.7~-0.3、p=0.0318)で有意差が認められた。 有害事象は、注射部位反応と消化器症状の発現が両群で最も頻度が高かった。重篤な有害事象は、エキセナチド群で6件、プラセボ群では2件報告されたが、いずれも試験による介入とは関連がないと判断された。 なお結果について著者は、「エキセナチドの陽性効果は、投与期間を過ぎてからも示されたが、エキセナチドがパーキンソン病の病態生理に影響を及ぼすのか、それとも単に持続的な症候性の作用が引き起こされただけなのかは不明である」と述べ、長期の検討を行い、エキセナチドの日常的な症状への効果を調べる必要があるとしている。

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地中海食、加齢黄斑変性の進行予防に効果あり

 地中海食のアドヒアランスと加齢黄斑変性(AMD)の有病率は関連しているかについて、英国・Queen's University BelfastのRuth E. Hogg氏らが、南北欧州の地域住民をベースにした横断疫学研究を行った。その結果、地中海食のアドヒアランスが後期AMDを予防する効果があることが示唆された。ただし、先行研究で報告されていたAMDと遺伝的感受性との関連を支持する結果は示されなかった。著者は、「地中海食の導入を促す介入を開発するとともに、こうした行動変化を達成し維持できる方法を調べなければならない」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2016年11月5日号掲載の報告。 研究グループは、欧州(ノルウェー、エストニア、英国、フランス、イタリア、ギリシャ、スペイン)の研究センター7施設において、無作為に抽出した65歳以上の高齢者5,060例を対象に検討した。眼科検査とデジタル網膜カラー写真撮影を行うとともに、過去12ヵ月間の食事摂取量について半定量的な食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて調査した。 検査画像は単一施設において、International Classification System for age-related maculopathyに従ってグレード付けし、Rotterdam staging systemを用いて5段階(AMD:0~4)に分類した。AMDステージ4は、新生血管AMD(nvAMD)および地図状萎縮(GA)を含む。ドルーゼン(drusen)については、直径125μm以上をlarge drusenとした。地中海食のアドヒアランスは、FFQに基づき地中海食スコア(MDS)で評価し、MDSスコアとAMDの関連について多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象5,060例中、食事に関して完全なデータが得られたのは4,753例であった(平均73.2±5.6歳、女性55%)。・MDSの増加は、未補正および交絡因子補正解析においてnvAMDのオッズ比低下と関連しており、MDSアドヒアランスが最高群(MDSスコア>6)は最低群(MDSスコア≦4)と比較して、nvAMDのリスクが有意に低下した(オッズ比:0.53、95%信頼区間:0.27~1.04、傾向p=0.01)。・MDSとの関連は、Y204Hリスクアレルで違いは認められなかった(p=0.89)。・早期AMD(グレード1~3)は、MDSとの関連はなかった(傾向p=0.9)。・MDSとlarge drusenとの間には弱い関連傾向(p=0.1)がみられ、MDS最高群は最低群と比較してオッズ比が20%低下した(p=0.05)。

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