サイト内検索|page:2

検索結果 合計:75件 表示位置:21 - 40

21.

薬剤耐性菌の菌血症による死亡、国内で年8千例超

 これまで、わが国における薬剤耐性による死亡者数は明らかになっていなかった。今回、国立国際医療研究センター病院の都築 慎也氏らは、薬剤耐性菌の中でも頻度が高いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とフルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)について、日本におけるそれらの菌血症による死亡数を検討した。その結果、MRSA菌血症の死亡は減少している一方で、FQREC菌血症による死亡が増加していること、2017年には合わせて8,000例以上が死亡していたことがわかった。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2019年12月1日号に掲載。 本研究では、厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)のデータから、2011~17年における日本全国の菌血症症例数を算出し、過去の研究に基づいた死亡率と合わせて菌血症による死亡数を推定した。 主な結果は以下のとおり。・黄色ブドウ球菌による菌血症での死亡は、2011年は1万7,412例、2017年は1万7,157例と推定された。このうち、MRSA菌血症による死亡は、2011年は5,924例(34.0%)、2017年は4,224例(24.6%)と減少した。・大腸菌による菌血症での死亡は、2011年は9,044例、2017年は1万4,016例と増加した。このうち、FQREC菌血症は、2011年は2,045例(22.6%)、2017年は3,915例(27.9%)と増加した。

22.

蜂窩織炎、丹毒、最適な抗菌薬治療は?

 蜂窩織炎や丹毒は、よくみる細菌感染症であり、抗菌薬治療が至適治療とされている。しかし、その治療法についてのコンセンサスは得られておらず、入手可能な試験データではどの薬剤が優れているのかを実証することができない。最適な投与ルート、治療期間のデータも限定的である。英国・ブリストル大学のRichard Brindle氏らは、システマティックレビューとメタ解析により、非外傷性の蜂窩織炎に対する抗菌薬治療の安全性と有効性を評価した。しかし、低質なエビデンス結果しか得られず、著者は「標準的なアウトカム(重症度スコア、用量、治療期間)を設定した試験を行う必要がある」と提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年6月12日号掲載の報告。 研究グループは、システマティックレビューとメタ解析による分析を行うため、2016年6月28日時点で次のデータベースを検索した-Cochrane Central Register of Controlled Trials(2016、issue 5)、Medline(1946年~)、Embase(1974年~)、Latin American and Caribbean Health Sciences Information System(LILACS、1982年~)。さらに、5つの試験データベースとその試験内リファレンスのほか、2016年6月28日~2018年12月31日の期間におけるPubMedとGoogle Scholarも検索した。適格試験は、異なる抗菌薬、投与ルート、治療期間などを比較している無作為化試験とした。 データの抽出と解析は、Cochrane Collaborationの標準的な方法論的手法を用い、2値アウトカムのリスク比とその95%信頼区間(CI)を算出。エビデンスの質を評価するGRADEアプローチに合わせて、主要評価項目の結果要約テーブルを作成した。 主要アウトカムは、治療終了時に治癒、改善・回復が認められた、または症状が消失もしくは軽減した患者の割合(試験で報告されていたもの)。副次アウトカムは、あらゆる有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・43試験、5,999例(生後1ヵ月~96歳)の適格患者のデータが包含された。・蜂窩織炎が原発例であったのは15試験(35%)、そのほかの試験では蜂窩織炎患者の割合は中央値29.7%(四分位範囲:22.9~50.3%)であった。・全体として、どれか1剤がほかの製剤よりも優れていることを支持するエビデンスは見つからなかった。・MRSA活性のある抗菌薬に優位性があるとの所見は認められなかった。・経口剤より静脈内投与を支持、また5日超の投与期間を支持するエビデンスは、いずれもなかった。

23.

ABATE Infection trial:非ICUにおけるクロルヘキシジン清拭は耐性菌発生を抑制できるか?(解説:小金丸博氏)-1043

 医療関連感染(Health-care-associated infections)は頻度が高く、重大な合併症を引き起こすことがあるため、世界中で予防策が検討されている。予防策の1つが患者の皮膚や鼻腔に定着した病原体の除菌であり、医療関連感染の発生や伝播を減らすことが期待されている。これまでに発表された、いくつかのクラスター無作為化比較試験において、ICU入室患者に対するクロルヘキシジン清拭やMRSAの鼻腔除菌が血流感染症やMRSA感染症を抑制することを示してきたが、非ICU入院患者に対する効果ははっきりしていなかった。 今回発表された研究(ABATE Infection trial)は、非ICU入院患者に対するICU同様の感染対策(全例に対するクロルヘキシジン清拭とMRSA保菌者に対するムピロシン鼻腔内塗布の併用)の感染予防効果を検討したクラスター無作為化比較試験である。米国の53病院(ICUを除いた194病棟)を対象とし、介入群と通常ケア群(非消毒薬による清拭、石鹸を用いたシャワー浴)との間でMRSAやバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の培養検出率や、全病原体による血流感染症発生率などを比較検討した。その結果、ベースライン期と比べた介入期のMRSA培養陽性またはVRE培養陽性のハザード比は、クロルヘキシジン清拭+ムピロシン鼻腔除菌群0.79(95%信頼区間:0.73~0.87)、通常ケア群0.87(同:0.79~0.95)であり、有意差は認めなかった(p=0.17)。全病原体による血流感染症の発生率にも有意差はなかった。有害事象の発生率は、クロルヘキシジン清拭群で1%未満と低率だった。 本研究では、非ICU入院患者に対するクロルヘキシジン清拭とMRSA保菌者に対するムピロシン鼻腔内塗布の併用は、通常ケア群と比較して、MRSAやVREの発生率や全病原体による血流感染症発生率を有意に低下させなかった。本研究の結果は、大きなサンプルサイズの無作為化試験の中で、かつ高いプロトコル遵守率の中で得られた結果であり、非重症患者全例に対する介入はそれほど有用ではない可能性が高い。その一方で事後のサブグループ解析では、中心静脈カテーテルなどのデバイスが留置されていた患者において、介入群で全病原体による菌血症が32%、MRSAまたはVRE発生率が37%減少していた。デバイスが留置されている患者に対しては有用な介入である可能性があるが、あくまで事後解析の結果であり、追加の確認試験が必要であろう。 クロルヘキシジンは日常的によく用いられる消毒薬であり、忍容性は良好だが、局所の皮膚毒性やアナフィラキシーと関連する。クロルヘキシジンに繰り返し曝露されると細菌の感受性低下を誘導するため、クロルヘキシジンの使用は患者の利益が明確な状況に限定されるべきと考える。

24.

非ICUでのdecolonisationは、耐性菌発生リスクに有効か?/Lancet

 ICU入室以外の入院患者について、全患者を対象としたクロルヘキシジンによる清拭・シャワー浴とハイリスク患者を対象にしたムピロシンでの除菌による介入(decolonisation)は、ルーチンに行う消毒薬を使わない清拭/シャワー浴の介入と比べて、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の発生リスクを有意に減少しなかったことが報告された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のSusan S. Huang氏らが、53病院194の病棟(ICUを除く)を対象に行ったクラスター無作為化比較試験「ABATE(active bathing to eliminate) Infection trial」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年3月5日号で発表した。ベースライン期と介入期のハザード比を群間比較 ICU入室患者に対するユニバーサル皮膚・鼻腔decolonisationは、多剤耐性菌や血流感染症の発生を減少することが示されている。一方で、非クリティカルケアユニットでのユニバーサルdecolonisationの病原菌および感染症への影響は不明であった。 ABATE感染試験は、ICU入室患者に対する手法と同様に介入効果が非クリティカルケアユニットでも認められるか評価することを目的とし、米国内53病院(ICUを除いた194病棟)の入院患者を対象にクラスター法を用いて検討。ユニバーサルクロルヘキシジンおよび標的鼻腔ムピロシンによるdecolonisation介入(クロルヘキシジン群)と、ルーチン清拭による介入(通常ケア群)のMRSAやVREへの感染予防効果を比較した。 試験は、2013年3月~2014年2月の12ヵ月間をベースライン期とし、同年4~5月の2ヵ月間の導入期を経て、同年6月~2016年2月の21ヵ月間を介入期とし検討した。 クロルヘキシジン群には、介入期に全対象入院患者に対し、毎日クロルヘキシジンによる清拭と、シャワー時にはクロルヘキシジンを含む石鹸を使用し、MRSAキャリアに対してはムピロシン除菌を行った。通常ケア群には、介入期にも非消毒薬性のディスポーザブルクロスでの清拭を行い、シャワー時には通常の石鹸を使用した。 主要アウトカムは、病棟起因のMRSAまたはVREの臨床培養の発生で、補正前に、ITT解析で介入期のベースライン期に対するハザード比(HR)を算出し、クロルヘキシジン群と通常ケア群を比較した。介入期HR、クロルヘキシジン群0.79、通常ケア群0.87 ベースライン期の被験者数は18万9,081例、介入期は33万9,902例で、そのうち通常ケア群は15万6,889例、クロルヘキシジン群は18万3,013例だった。 病棟起因のMRSAまたはVREの臨床培養発生に関する、介入期のベースライン期に対するHRは、クロルヘキシジン群0.79(95%信頼区間[CU]:0.73~0.87)、通常ケア群0.87(同:0.79~0.95)だった。両群のHRに有意差はみられなかった(p=0.17)。 有害事象の発生は、クロルヘキシジン群で25件(1%未満)に認められた。ムピロシン除菌に関する報告はなかった。

25.

MRSA保菌者に対する退院後の除菌療法(解説:小金丸博氏)-1015

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、皮膚軟部組織感染症や医療処置に関連した感染症の原因として頻度が高い微生物である。MRSA保菌者では除菌することによって、手術部位感染症、繰り返す皮膚感染症、集中治療室における感染症のリスクを減らすことが過去の研究で示されている。MRSAを保菌している入院患者は退院後の感染リスクが高いことが知られており、今回、これらの患者に対する衛生教育や除菌療法の有用性を検討した研究が発表された。 本研究は、MRSA保菌者に対して退院後に除菌療法を行うことで、MRSA感染症を減らすことができるかどうかを検討した多施設共同ランダム化比較試験である。30日以内の入院をしていた18歳以上のMRSA保菌者を対象とし、①衛生教育を行う群と、②衛生教育に加え除菌療法を行う群に割り付けて、退院後1年以内のMRSA感染のリスクや入院リスクを評価した。除菌療法は、4%クロルヘキシジンを用いた入浴あるいはシャワー、0.12%クロルヘキシジンを用いた口腔洗浄、2%ムピロシンの鼻腔内塗布を施行した(5日間を月2回、6ヵ月間)。その結果、per-protocol集団におけるMRSA感染症の発生率は衛生教育群で9.2%に対し、衛生教育+除菌群で6.3%だった。MRSA感染リスクは衛生教育+除菌群で約30%低下し(ハザード比 0.70、95%信頼区間:0.52~0.96、p=0.03)、1例の感染を予防するための治療必要数(NNT)は30だった。除菌のレジメンをしっかり遂行できた群では、感染率はより低率だった。 本研究で、MRSA保菌者に対する退院後の除菌療法は、MRSA感染リスクを30%程度低下させることが示された。同時に、再入院のリスクやあらゆる原因による感染症のリスクも低下させており、有用な介入である可能性が高い。軽微な副反応しか認めなかった点も、介入を後押しする根拠の1つとなる。 しかしながら、除菌療法の煩雑さを考えるとMRSA保菌者全員に対して実施するのは現実的ではないと思われる。MRSA感染リスクの高いグループ、再入院リスクの高いグループが同定され、それらのグループに対して除菌療法を実施することができれば、さらに高い治療効果を見込めると考える。本治療の成功の鍵となるのが除菌レジメンの高い遵守率であり、患者自身、あるいは介護者の高い意識や努力が求められる治療法である。

26.

新規のアミノグリコシド系抗菌薬plazomicinの複雑性尿路感染症に対する効果(解説:吉田敦氏)-1013

 腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の薬剤耐性は、現在、われわれが日常最も遭遇する薬剤耐性と言ってよいであろう。たとえば本邦で分離される大腸菌の約4割はフルオロキノロン耐性、約2割はESBL産生菌である。実際に複雑性尿路感染症の治療を開始する際に、主原因である腸内細菌科細菌の抗菌薬耐性をまったく危惧しない場合は、ほぼないと言えるのではないだろうか。そして結果としてβラクタム系およびフルオロキノロン系が使用できないと判明した際、残る貴重な選択肢の1つはアミノグリコシド系であるが、腎障害等の副作用が使用を慎重にさせている点は否めない。 今回の検討では、腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症例をアミノグリコシド系であるplazomicin群(1日1回静脈内投与)とメロペネム群にランダムに割り付け、少なくとも4日間以上続けた後、およそ8割の例で経口抗菌薬に変更し、合計7~10日の治療期間としている。なお投与開始から5日目、および15~19日目の臨床的、微生物学的改善がプライマリーエンドポイントとして設定された。そして結果としてplazomicinはおおよそメロペネムに劣らなかったが、特に15~19日目における臨床的、微生物学的改善率がplazomicin群において高かった。 本検討において最も関心が持たれる点はおそらく、(1)薬剤耐性菌の内訳と、それらへの効果、(2)plazomicinの副作用の有無と程度、(3)経口抗菌薬による影響、そして(4)再発に対する効果ではないだろうか。今回の検討例ではレボフロキサシン耐性は約4割、ESBL産生は約3割、カルバペネム系耐性(CRE)は約4%であるから、本邦の現在よりやや耐性株が多い。そしてESBL産生菌、アミノグリコシド(AMK、GM、TOBのいずれか)耐性株ともにplazomicin群がメロペネム群よりも微生物学的改善率が高かった。検討例はクレアチニンクリアランスが30mL/min以上の者であるが、うち30~60mL/minが35%、60~90mL/minが38%、90mL/min以上が26%を占める。このような集団でのCr 0.5mg/dL以上の上昇例がplazomicin群で7%、メロペネム群で4%認められた。一方、経口抗菌薬の第1選択はレボフロキサシンであるが、実際にはレボフロキサシン耐性株分離例の60%でレボフロキサシンが選択されていた。また治療後の無症候性細菌尿と、それに関連する再発がplazomicin群で低かった。 ほかにも結果解釈上の注意点がある。まず微生物学的改善の基準は、尿路の基礎状態にかかわらず、治療前に尿中菌数が105CFU/mL以上であったものが、治療後104CFU/mL未満になることと定義している点である。尿中菌数とその低下は基礎状態にも左右されるし、実際の低下度合いについては示されていない。さらに微生物学的改善の評価における重要な点として、当初から検討薬に耐性である例は除外されていることである(plazomicin感性は4μg/mL以下としている)。また治療前に感性であったものが、治療後に耐性になった例はplazomicin群の方がやや多かった。 以上のような注意点はあるものの、多剤耐性菌が関わりやすい複雑性尿路感染症の治療手段として有用な選択肢が増えた点は首肯できると言えよう。なおplazomicinはアミノグリコシド修飾酵素によって不活化されにくい点が従来のアミノグリコシドに勝る利点であるが、リボゾームRNAのメチル化酵素を産生するNDM型カルバペネマーゼ産生菌には耐性であり1)、ブドウ糖非発酵菌のPseudomonas、Acinetobacterについては従来のアミノグリコシドを凌駕するものではないと言われている2)。反面、尿路感染症では関与は少ないが、MRSAに対する効果が報告されている3)。本邦への導入検討に際しては、本邦の分離株を対象とした感受性分布ならびに耐性機構に関するサーベイランスが行われるのが望ましいと考える。そのような検討が進むことに期待したい。

27.

感染性心内膜炎の静注抗菌薬による治療を部分的に経口抗菌薬に変更できるか(解説:吉田敦氏)-1007

オリジナルニュースPartial Oral versus Intravenous Antibiotic Treatment of Endocarditis 感染性心内膜炎の静注抗菌薬による治療は長期にわたる。中には臨床的に安定したため、抗菌薬の静注が入院の主な理由になってしまう例もある。安定した時期に退院とし、外来で静注抗菌薬の投与を続けることも考えられるが、この場合、患者本人の負担は大きく、医療機関側の準備にも配慮しなければならない。このような背景から、今回デンマークにおいて左心系の感染性心内膜炎を対象とし、静注抗菌薬による治療を10日以上行って安定した例において、そのまま静注抗菌薬を継続・完遂するコントロール群と(治療期間中央値19日)、経口抗菌薬にスイッチして完遂する群(同17日)について、死亡率、(あらかじめ想定されていない)心臓手術率、塞栓発生率、菌血症の再発率が比較された(プライマリーアウトカム指標)。 結果として、プライマリーアウトカム指標の発生率に差はなかった(コントロール群:12.1%、経口スイッチ群:9%)。このため著者らは、左心系の心内膜炎例でも安定していれば、静注抗菌薬の継続に比べ経口スイッチは劣らないと結論付けている。ただし、ここで検討された患者の内訳・原因微生物・除外基準・治療レジメンについてよく確認したうえで、結果は解釈すべきと考える。 まず原因微生物については、Streptococcus、E. faecalis、S. aureus、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の4種のみであり、半数近くをStreptococcusが占め、S. aureusは2割程度であった。それもMSSAのみでMRSAは含まれていない。さらにHACEKや培養陰性IEも含まれていない。自己弁・人工弁両方の心内膜炎が含まれるが、人工弁は25%程度であり、ペースメーカー感染が明らかであった例は3~4%、大きな疣贅(径>9mm)を有していた者は4~6%であった。心内膜炎に対する手術適応あるいはペースメーカー抜去の判断は主治医チームに委ねられており、詳細や施設間差の有無は不明である。さらには2群の割り付けの際、経食道心臓超音波を施行して膿瘍や手術を要するほどの弁異常がないことを確認し、加えて吸収不良がないといった複数の選択基準・除外基準をクリアすることが要求される。治療レジメンについては、代謝経路の異なる2薬剤を併用するが、この中には本邦で市販されていないdicloxacillinとfusidic acidの内服や、高価であるリネゾリドの内服も含まれている。 一方で、経口抗菌薬の血中濃度の測定も行っており、内服薬の吸収とバイオアベイラビリティに配慮している点は評価できる。今回の報告は、画一的な結論は付けがたいと考えられる。つまり、ある範囲の集団で、条件を満たし、臨床的に安定し、かつ腸管吸収にも問題がない例において、特定の組み合わせの経口抗菌薬が適応になるのではないかということである。この意味においては、ある集団に特化した(たとえば「Streptococcusによる自己弁の感染性心内膜炎」に対する「アモキシシリン+リファンピシン」のような)検討が今後さらに必要になるであろうし、半面、別な集団に対しては内服スイッチが適応でないという提示も行われるべきであろう。さらには、そのような層別化を行うにあたって、個別の症例の評価そのものが、よりいっそう精密さを求められるといえる。今回の検討は、あくまで嚆矢としての位置付けではないだろうか。

28.

MRSA保菌者、衛生教育+除菌指導で退院後感染リスク3割減/NEJM

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の保菌患者に対し、病院や介護施設を退院・退所する際、衛生教育に加えてクロルヘキシジンによる口腔洗浄や入浴などの除菌指導を行うことで、退院後1年のMRSA感染リスクが約3割減少したことが示された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のSusan S. Huang氏らが、2,000例超を対象に行った多施設共同無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2019年2月14日号で発表した。MRSA保菌入院患者は、退院後の感染リスクが高いことが知られている。MRSA保菌者の退院時に「衛生教育vs.衛生教育+除菌指導」 研究グループは、病院や介護施設に入院・入所し、MRSA保菌が確認された被験者を無作為に2群に分け、退院・退所時に、一方には衛生管理に関する教育を、もう一方には衛生教育と除菌指導を行い、1年間追跡した。除菌指導のレジメンは、クロルヘキシジンによる口腔洗浄と入浴またはシャワー浴、ムピロシンの鼻腔内塗布(5日間を月2回、6ヵ月)だった。 主要アウトカムは、米国疾病予防管理センター(CDC)基準によるMRSA感染とした。副次アウトカムは、臨床的判断に基づくMRSA感染、あらゆる原因による感染、感染による入院とした。 解析は、per-protocol集団(無作為化され、包含基準を満たし退院後も生存した全被験者)と、as-treated集団(指導を受けたレジメン順守の程度により階層化した被験者)を対象にそれぞれ実施した。MRSA保菌者のすべての感染リスクや入院リスク、いずれも約2割減少 MRSA保菌が確認された被験者は、2011年1月10日~2014年1月2日に南カリフォルニアにある17病院と7介護施設から集められ、2,140例が無作為化と追跡を受けた。 per-protocol集団(2,121例)において、MRSA感染の発生率は、衛生教育群9.2%(98/1,063例)に対し、衛生教育+除菌群は6.3%(67/1,058例)で同感染者の入院率は84.8%だった。 あらゆる原因による感染の発生率は、衛生教育群23.7%に対し、衛生教育+除菌群は19.6%で同感染者の入院率は85.8%だった。 MRSA感染リスクは、衛生教育+除菌群が衛生教育群よりも有意に低下した(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.52~0.96、p=0.03)。1例の感染を予防するための治療必要数[NNT]は30(95%CI:18~230)だった。 また、同感染リスクが低いことが、MRSA感染による入院リスクの低下にもつながっていた(HR:0.71、95%CI:0.51~0.99)。 臨床的判断に基づくあらゆる原因による感染リスクも、衛生教育+除菌群が衛生教育群に比べて有意に低く(HR:0.83、95%CI:0.70~0.99)、感染に伴う入院リスクも有意に低下した(HR:0.76、95%CI:0.62~0.93)。ただし著者は、「これら副次アウトカムの治療効果は、事前に多重比較に関する補正を規定していなかったため、慎重な解釈を要する」としている。 as-treated集団の解析では、除菌レジメンを順守した衛生教育+除菌群の被験者のMRSA感染リスクは、衛生教育群に比べ44%低く(HR:0.56、95%CI:0.36~0.86)、あらゆる原因による感染リスクは40%低かった(同:0.60、0.46~0.78)。

29.

細菌性皮膚感染症に新規抗菌薬、MRSAにも有効/NEJM

 新規抗菌薬omadacyclineの急性細菌性皮膚・軟部組織感染症への効果は、リネゾリドに対し非劣性で、安全性プロファイルはほぼ同等であることが、米国・eStudySiteのWilliam O’Riordan氏らが行ったOASIS-1試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月7日号に掲載された。急性細菌性皮膚・軟部組織感染症は合併症の発症率が高く、高額な医療費を要する。omadacyclineは、抗菌薬耐性株を含め、この種の感染症を高い頻度で引き起こす病原菌に活性を有する。本薬は、1日1回の経口または静脈内投与が可能なアミノメチルサイクリン系抗菌薬で、テトラサイクリン系薬剤由来の抗菌薬だが、テトラサイクリン耐性の機序である薬剤排出およびリボソーム保護を回避するという。早期臨床効果を無作為化非劣性試験で評価 本研究は、米国、ペルー、南アフリカ共和国および欧州諸国の55施設が参加し、2015~16年に実施された二重盲検ダブルダミー無作為化非劣性第III相試験(Paratek Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の皮膚感染症患者であり、創感染(辺縁部からの最短距離が5cm以上)、蜂巣炎/丹毒、大膿瘍(辺縁部からの最短距離が5cm以上、試験集団の最大30%に制限)が含まれた。 被験者は、omadacycline群(100mgを12時間ごとに2回静脈内投与し、以降は24時間ごとに投与)またはリネゾリド群(600mgを12時間ごとに静脈内投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。3日間静脈内投与を行った後、それぞれomadacycline経口投与(300mgを24時間ごと)およびリネゾリド経口投与(600mgを12時間ごと)への移行を可とした。総投与期間は7~14日であった。 主要エンドポイントは、48~72時間の時点での早期臨床効果(救済抗菌薬治療を受けず、病変が20%以上縮小し、生存していることと定義)であった。副次エンドポイントは、最終投与から7~14日後の投与終了後評価時の担当医評価による臨床効果(徴候または症状がそれ以上の抗菌薬治療が不要な程度にまで消失または改善し、生存していることと定義)とされた。非劣性マージンは、10ポイントであった。MSSA、MRSAでの臨床効果はほぼ同等 645例が登録され、omadacycline群に323例(年齢中央値:48歳[範囲:19~88]、女性:37.2%)、リネゾリド群には322例(46歳[18~90]、33.9%)が割り付けられた。修正intention-to-treat(ITT)集団として、それぞれ316例、311例が解析に含まれた。 早期臨床効果の達成率は、omadacycline群が84.8%、リネゾリド群は85.5%と、omadacyclineのリネゾリドに対する非劣性が示された(差:-0.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-6.3~4.9)。また、投与終了後評価で担当医が臨床効果ありと評価した患者の割合は、修正ITT集団ではそれぞれ86.1%、83.6%(差:2.5ポイント、-3.2~8.2)、臨床per-protocol集団では96.3%、93.5%(2.8ポイント、-1.0~6.9)であり、いずれにおいてもomadacyclineの非劣性が確認された。 また、病原菌別の投与終了後評価では、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA、omadacycline群84% vs.リネゾリド群82%)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、83% vs.86%)に対する臨床効果は、両群でほぼ同等であった。 有害事象は、omadacycline群が48.3%、リネゾリド群は45.7%と報告された。治療関連有害事象はそれぞれ18.0%、18.3%に、重篤な有害事象は3.7%、2.5%に認められた。 消化器系有害事象の頻度が最も高く(それぞれ18.0%、15.8%)、なかでも吐き気(12.4%、9.9%)および嘔吐(5.3%、5.0%)の頻度が高かった。omadacycline群の1例(オピエート過量摂取)およびリネゾリド群の2例(心停止、心不全)が死亡した。 著者は、「早期臨床効果を達成した患者のうちomadacycline群の93.7%およびリネゾリド群の90.2%が、投与終了後評価で臨床効果ありと評価された。これは他試験の結果と一致しており、経口薬治療への移行と早期退院の潜在的な臨床ツールとして、リアルワールド設定で早期臨床効果を検討する好機の到来を示唆するものであった」としている。

30.

多剤耐性グラム陰性桿菌、ICUでのベストな感染予防は?/JAMA

 多剤耐性グラム陰性桿菌(MDRGNB)感染の発生率が中等度~高度のICUにおいて、人工呼吸器装着患者に対する、クロルヘキシジン(CHX)による口腔洗浄や、選択的中咽頭除菌、選択的消化管除菌の実施は、いずれも標準的ケア(CHXによる毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラム)と比べて、MDRGNBによるICU血流感染の発生率を低下させないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のBastiaan H. Wittekamp氏らが行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2018年11月27日号で発表した。CHXによる口腔洗浄、選択的中咽頭、消化管除菌を各1日4回実施 試験は2013年12月1日~2017年5月31日に、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌による血流感染が5%以上を占める、ヨーロッパ13ヵ所のICUで行われた。被験者は、人工呼吸器の24時間超の使用が予測された患者で、追跡調査は2017年9月20日まで行った。 標準ケアは、CHX2%による毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラムの実施で、ベースラインとして6~14ヵ月実施した。その後、クロルヘキシジン1~2%による口腔洗浄、選択的中咽頭除菌(コリスチン、トブラマイシン、ナイスタチン入り口腔ペースト:SOD)、選択的消化管除菌(同口腔ペーストの使用と同種抗菌薬による胃腸混濁液:SDD)をそれぞれ1日4回、6ヵ月ずつ、無作為順序で行った。 主要評価項目は、各介入期間におけるMDRGNBによるICU血流感染の発生率で、副次評価項目は28日死亡率だった。ICU血流感染の発生率、28日死亡リスクともに低下せず 被験者総数は8,665例で、年齢中央値は64.1歳、うち男性は64.2%だった。ベースライン群、CHX群、SOD群、SDD群の被験者数は、それぞれ2,251例、2,108例、2,224例、2,082例だった。 試験期間中のMDRGNBによるICU血流感染は全体で144例(154件)に発生し、発生率はベースライン群が2.1%、CHX群が1.8%、SOD群1.5%、SDD群が1.2%。 絶対リスク減少は、ベースライン群と比較して、CHX群が0.3%(95%信頼区間[CI]:-0.6~1.1)、SOD群0.6%(-0.2~1.4)、SDD群が0.8%(0.1~1.6)だった。対ベースラインの補正後ハザード(HR)は、それぞれCHX群1.13(95%CI:0.68~1.88)、SOD群0.89(0.55~1.45)、SDD群0.70(0.43~1.14)だった。 また、補正前28日死亡リスクは、ベースライン群が31.9%、CHX群32.9%、SOD群32.4%、SDD群34.1%。28日死亡に関する対ベースラインの補正後オッズ比は、CHX群1.07(95%CI:0.86~1.32)、SOD群1.05(0.85~1.29)、SDD群1.03(0.80~1.32)だった。

31.

臨床効果と薬剤の副作用を考慮したブドウ球菌菌血症の適切な治療期間:アルゴリズム法と通常法との比較(解説:吉田敦氏)-933

 ブドウ球菌菌血症において、適切な治療期間の設定は悩ましい問題である。複雑性の菌血症であれば治療期間は長く確保しなければならないが、長くなれば薬剤の副作用が出現しやすくなる。一方、短すぎてしまうと合併症や再発といった治療不全に至ってしまう。標準的な戦略としては、菌血症を複雑性、非複雑性に分類し、それぞれ適切な期間の治療を行うことが治療効果を向上させると考えられる。本研究では、臨床的な所見に基づくアルゴリズムを用いて治療期間を設定したが、この方法が重篤な副作用を増やさず、かつ効果も劣らないかどうかを検証した。 2011~17年にかけて、米国15ヵ所、スペイン1ヵ所の16の医療機関で加療した成人のブドウ球菌菌血症例(黄色ブドウ球菌またはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌[CNS])をアルゴリズム群と、通常治療群の2群にランダムに割り付けた(オープンラベル試験)。ただしランダム化の時点で、複雑性の菌血症*であることがわかっている、あるいは予想される例、腎機能低下例、他菌との複合感染例は除外した。アルゴリズム群では、診断時の評価に基づいた抗菌薬の選択や治療期間はあらかじめ決定してある:具体的には、黄色ブドウ球菌であれば心臓超音波を行うこととし、黄色ブドウ球菌、CNSそれぞれについて非複雑性、複雑性に場合分けし、個々に定められた治療期間に従うこととした**。一方、通常治療群では、抗菌薬の選択・期間や、その他の治療内容に制限は設けず、担当医の判断とした。プライマリーアウトカムは臨床効果と重篤な副作用の2つとし、セカンダリーアウトカムは抗菌薬投与期間とした。なお臨床的な効果は、割り付け群について知らされていない3人の専門家の合議によって判定した。*複雑性の菌血症:フォローで採取された血液培養が陽性であったり、発熱が持続したり、心内膜炎や播種性病巣を来した例をいう。**たとえば黄色ブドウ球菌菌血症では、複雑性であれば28~42日間、非複雑性であれば14日間とし、複雑性のCNS菌血症であれば7~28日間の治療とした。 該当期間に血液培養が陽性になったのは2万3,666例、このうち2万3,157例が除外された(主な除外理由:[1]割り付け時に複雑性の菌血症が疑われた、[2]血液培養を1セットしか採取していなかった、[3]クレアチニンクリアランス<30mL/min、[4]研究参加・完遂が難しそうであった、[5]ショックあるいは重症で3日以内に死亡が予想された)。最終的に509例(平均年齢56.6歳、44%が女性)がランダム化され、うち480例(94.3%)が試験を完了した。アルゴリズム群では255例中209例(82%)、通常治療群では254例中207例(81.5%)で治療が奏効し、また重篤な副作用はそれぞれ32.5%、28.3%で認められた。平均の治療期間はそれぞれ4.4日、6.2日であった。結論として、アルゴリズム群の治療効果は通常治療に劣らず、重篤な副作用の出現率にも有意差はなかった。ただし信頼区間の幅は広く、解釈には限界があり、アルゴリズムの有用性を評価するにはさらなる研究が必要であった。 黄色ブドウ球菌の治療期間について、われわれも本研究のように複雑性、非複雑性と場合を分けて決定していることが多い。しかしながら個々の症例で異なる状況・事情を考慮すると、画一的な設定は難しいことを日々感じている。本検討の目的と意義は、このような疑問に答えるものとしてきわめて重要といえるが、ただし除外された症例が多数であることからみえるように、症例ごとの多様性(影響を及ぼすファクター)が非常に大きいため、条件の近い症例をそろえる困難さもまた大きい。 また本検討では、通常治療による治療期間は、全体としてはアルゴリズム群よりも長かった一方、複雑性や黄色ブドウ球菌例においてはアルゴリズム群で治療成績が良かった。つまりアルゴリズムは、治療反応が遅い・奏効しにくい複雑性や黄色ブドウ球菌例には十分な治療を行うように、一方CNSの症例に対しては期間を長すぎないようにした効果が読み取れる。アルゴリズムが指定する治療期間は概して支持されるが、今後とくに検討を要するのは、非複雑性と判断された黄色ブドウ球菌菌血症例の治療期間かもしれない。本試験でも15%が治療不全と判断され、さらに32%が最終的に複雑性となっており、著者らも播種性病変に関する注意深い評価の必要性と、非複雑性例での2週間投与に対して慎重な姿勢を表明している。

32.

ブドウ球菌性菌血症、アルゴリズム治療vs.通常ケア/JAMA

 ブドウ球菌性菌血症患者において、検査と治療をガイドするアルゴリズムを使用した臨床的成功率は、通常ケアの場合と比較して非劣性であることが、米国・デューク大学医療センターのThomas L. Holland氏らによる無作為化試験の結果、示された。しかし、重大有害事象の発現頻度に有意な差は認められなかったものの、信頼区間値が広域であることから結果についての解釈は限定的であった。ブドウ球菌性菌血症に対する抗菌薬の適切な投与期間は不明である。著者は今回の結果を踏まえて、「さらなる検討を行い、アルゴリズムの有用性を評価する必要がある」と述べている。JAMA誌2018年9月25日号掲載の報告。アルゴリズムベース治療の安全性、有効性を検証 研究グループは、ブドウ球菌性菌血症の治療期間を定義するアルゴリズムが、重大有害事象の増大なしに、通常ケアと比較して有効性について非劣性であるかを検証する無作為化試験を行った。2011年4月~2017年3月に、米国(15施設)およびスペイン(1施設)の計16の大学医療センターで、ブドウ球菌性菌血症の成人患者を登録。黄色ブドウ球菌またはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌について血液培養陽性が1つ以上認められた18歳以上の患者を適格とした。無作為化時点で、複雑性感染が既知または疑われた患者は除外した。 被験者は、アルゴリズムベース治療群(255例)または通常ケア群(254例)に無作為に割り付けられた。アルゴリズム群は事前に診断評価、抗菌薬の選択、治療期間が定められていたが、通常ケア群は患者をケアする臨床医の裁量で抗菌薬、投与期間、その他の臨床的ケアを選択できた。 フォローアップは、黄色ブドウ球菌菌血症患者については治療終了後42日間、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌菌血症患者は同28日間であった。 主要評価項目は2つで、(1)臨床的成功率(盲検化された判定委員会が確認し、非劣性マージンは15%)、(2)intention-to-treat集団において優越性を検証した重大有害事象の発現頻度。事前に規定した副次評価項目は、優越性を検証した、per-protocol患者集団(単純または非複雑性菌血症)における抗菌薬投与期間とした。臨床的成功率、アルゴリズム群82.0%、通常ケア群81.5% 509例(平均年齢56.6歳[SD 16.8]、女性226例[44.4%])のうち、480例(94.3%)が試験を完了した。 臨床的成功率は、アルゴリズム群82.0%(209/255例)、通常ケア群81.5%(207/254例)であった(両群差:0.5%[97.5%片側信頼区間[CI]:-6.2~∞])。 重大有害事象の発現頻度は、アルゴリズム群で32.5%、通常ケア群で28.3%であった(両群差:4.2%[95%CI:-3.8~12.2])。 per-protocol患者集団において、平均治療期間はアルゴリズム群4.4日、通常ケア群6.2日であった(両群差:-1.8日[95%CI:-3.1~-0.6])。

33.

ペニシリンアレルギー、MRSAやC. difficileリスク増大と関連/BMJ

 「ペニシリンアレルギー」の記録はMRSAおよびC. difficileのリスク増大と関連しており、その背景にβラクタム系代替抗菌薬の使用増加が関与していることを、米国・マサチューセッツ総合病院のKimberly G. Blumenthal氏らが明らかにした。ペニシリンアレルギーは、薬物アレルギーでは最もよくみられ、患者の約10%を占めると報告されている。アレルギーに関する記録は処方行動に影響を及ぼすが、「ペニシリンアレルギー」と記録にあっても、必ずしもアレルギーすなわち、即時型過敏反応とは限らない。先行研究では、特定の抗菌薬の使用がMRSAおよびC. difficileのリスクを増大していることが判明しており、研究グループは、ペニシリンアレルギーとMRSAおよびC. difficile発生の関連を調べた。BMJ誌2018年6月27日号掲載の報告。ペニシリンアレルギーの記録に注目し、MRSAやC. difficile発生との関連を調査 検討は集団ベースマッチドコホート研究にて、英国の一般医が関与するHealth Improvement Networkに、1995~2015年に登録された、MRSAおよびC. difficileの既往がない成人30万1,399例を対象に行われた。対象のうち6万4,141例がペニシリンアレルギーを有しており、年齢、性別、登録時期で適合した23万7,258例が比較対照群として設定された。 主要アウトカムは、MRSAおよびC. difficileの発生リスク。副次アウトカムは、βラクタム系抗菌薬およびβラクタム系代替抗菌薬の使用であった。背景に、βラクタム系代替抗菌薬の使用増加 平均追跡期間6.0年において、MRSA発生は1,365例(ペニシリンアレルギー群442例、対照群923例)、C. difficile発生は1,688例(それぞれ442例、1,246例)。ペニシリンアレルギー患者のMRSA発生に関する補正後ハザード比(HR)は1.69(95%信頼区間[CI]:1.51~1.90)、C. difficile発生については1.26(1.12~1.40)であった。 ペニシリンアレルギー患者の各抗菌薬使用に関する補正後発生率比は、マクロライド系使用では4.15(4.12~4.17)、クリンダマイシン使用3.89(3.66~4.12)、フルオロキノロン系使用2.10(2.08~2.13)であった。βラクタム系代替抗菌薬の使用増加によって、MRSAは約55%、C. difficileは約35%、それぞれリスクが増大したことが示唆された。 著者は今回の結果を受けて、「ペニシリンアレルギーへの系統的な対処が、ペニシリンアレルギー患者におけるMRSAおよびC. difficile発生を抑制するための、重大なパブリックヘルス戦略になる」と述べている。

34.

ARREST試験:黄色ブドウ球菌菌血症に対するリファンピシン併用療法(解説:小金丸博氏)-811

 黄色ブドウ球菌菌血症は、市中でも院内でもみられるありふれた疾患である。他臓器への転移病巣形成や深部臓器感染の原因となり、死亡率は約20%と高率である。頻度や重症度が高い疾患であるにもかかわらず、いまだに最適な治療方法は定まっていない。 黄色ブドウ球菌感染症に対する併用薬の候補の1つにリファンピシンが挙げられる。リファンピシンは消化管からの吸収率が高く、細胞、組織、バイオフィルムによく浸透するため、βラクタム薬やグリコペプチド系薬と併用することで黄色ブドウ球菌感染症の予後を改善する可能性があると考えられてきた。主に感染性心内膜炎や人工物感染に対して世界中でリファンピシン併用が行われているが、高いエビデンスのある研究は存在しなかった。 本研究は、黄色ブドウ球菌菌血症に対するリファンピシン併用投与の効果を検証した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対象比較試験である。標準的な抗菌薬治療開始から96時間以内の成人(18歳以上)を対象に、リファンピシン併用投与群とプラセボ併用投与群に分けて評価した。プライマリアウトカムは細菌学的治療失敗、再発、あらゆる原因による死亡までの時間とした。その結果、試験開始から12週までに、これらいずれかのアウトカムを経験した患者割合は、リファンピシン投与群17%、プラセボ投与群18%であり、両群間で有意差は認めなかった(絶対リスク差:-1.4%、95%信頼区間:-7.0~4.3、ハザード比:0.96、p=0.81)。アウトカムを個別にみてみると、リファンピシンを併用しても死亡率は減少しなかったものの、再発率は有意に減少した。細菌学的再発を1例防止するのに必要な治療数(number needed to treat:NNT)は29だった。 本試験では、黄色ブドウ球菌菌血症に対してリファンピシンを併用しても全体的なベネフィットは変わらないことが確認された。本試験は過去の試験よりサンプルサイズが大きいことが特徴の1つである。本試験の結果から、黄色ブドウ球菌菌血症と診断した全例に対してリファンピシンを併用する根拠は乏しいといえる。 黄色ブドウ球菌は、薬剤感受性パターンからMSSAとMRSAに分類される。本試験に組み込まれた患者の原因菌のうちMRSAは全体の6%しか占めておらず、MRSA菌血症に対するリファンピシンの併用効果を評価することは困難と考える。また、人工弁あるいは人工関節を有する患者は2%と少なく、本試験の結果のみでは人工物感染に対する併用効果を評価することも難しい。 MSSA感染症に対する世界標準薬は抗黄色ブドウ球菌用ペニシリンである。英国、オーストラリアではFlucloxacillin、米国ではNafcillinやクロキサシリンが好んで利用され、本試験では82%でFlucloxacillinが選択されている。ところが、日本では純粋な抗黄色ブドウ球菌用ペニシリンは認可されておらず、MSSA感染症に対しては第一世代セフェム系抗生物質であるセファゾリンが選択されることが多いため、本試験の結果を日常臨床にそのまま当てはめることはできない。本邦でも、世界標準薬が利用できる日がくることを希望する。

35.

黄色ブドウ球菌菌血症へのリファンピシン併用、効果は?/Lancet

 黄色ブドウ球菌菌血症の成人患者において、標準抗菌薬治療にリファンピシンの補助的投与を行っても、全体的なベネフィットは変わらないことが確認された。英国・オックスフォード大学のGuy E Thwaites氏ら英国臨床感染症研究グループ(UKCIRG)による多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ARREST試験」の結果として、Lancet誌オンライン版2017年12月14日号で発表された。黄色ブドウ球菌は、世界中で重症市中感染症や院内感染の原因としてよくみられる。研究グループは、リファンピシンの補助的投与は、黄色ブドウ球菌の死滅を早め、原病巣や感染血液を速やかに除菌し伝播や転移のリスクを減じることで、細菌学的定義の治療失敗や菌血症の再燃、死亡を減らせるのではないかと仮説を立て、検証試験を行った。リファンピシン補助的投与を2週間行い、プラセボ投与と12週アウトカムを比較 試験は英国内の29病院から、黄色ブドウ球菌菌血症で積極的な抗菌薬治療を受けてから96時間以内の、18歳以上の患者を集めて行われた。 被験者は、中央で作成されたコンピュータ生成の経時的無作為化リストによって、標準抗菌薬治療とともに、2週間のリファンピシン補助的投与(体重によって600mgまたは900mg/日を経口または静注)もしくは同用量によるプラセボ投与を受ける群に1対1に割り付けられ追跡を受けた。患者、試験担当医、患者介護者は割り付けを盲検化された。 主要アウトカムは、細菌学的定義の治療失敗または菌血症再燃もしくは死亡(全死因)までの時間であった。評価期間は無作為化から12週間までで、治療について盲検化された独立レビュー委員会が判定にあたった。解析はintention-to-treat法にて行われた。治療失敗・再燃・死亡について、プラセボ投与と有意差なし 2012年12月10日~2016年10月25日に、試験適格であった758例が無作為化を受けた(リファンピシン群370例、プラセボ群388例)。 被験者は、男性が65%、年齢中央値65歳(IQR:50~76)、チャールソン併存疾患スコアは2(0~3)、ICU入室者は9%で、平均C反応性蛋白値は164(SE 3.7)mg/Lであった。 また、485例(64%)が市中感染患者で、132例(17%)が院内発症患者(入院後48時間以上で発症)であった。47例(6%)にメチシリン耐性が認められた。301例(40%)は原病巣が深部にあった(埋設した血管デバイスや心臓弁など)。標準抗菌薬の投与期間は29日間(IQR:18~45)。619例(82%)がflucloxacillinの投与を受けた。 12週時点の評価で、治療失敗・菌血症再燃・死亡を経験していた患者は、リファンピシン群62例(17%)、プラセボ群71例(18%)であった(絶対リスク差:-1.4%、95%信頼区間[CI]:-7.0~4.3、ハザード比[HR]:0.96、95%CI:0.68~1.35、p=0.81)。 無作為化から12週間に観察された有害事象について、重篤例(p=0.17)またはGrade3-4例(p=0.36)ともにエビデンスのある差は認められなかった。しかし、抗菌薬または試験薬が変更となった有害事象(リファンピシン群63例[17%]vs.プラセボ群39例[10%]、p=0.004)、薬物相互作用(リファンピシン群24例[6%]vs.プラセボ群6例[2%]、p=0.0005)について有意な差が観察された。

36.

皮下膿瘍、切開排膿に抗菌薬併用が有効/NEJM

 5cm以下の単純性皮下膿瘍について、切開排膿単独と比較し、切開排膿にクリンダマイシンまたはトリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)を併用することで、短期アウトカムは改善することが示された。米国・シカゴ大学病院のRobert S. Daum氏らが、成人および小児外来患者を対象とした、多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。ただし著者は、「この治療のベネフィットとこれら抗菌薬の既知の副作用プロファイルを、比較検討する必要がある」とまとめている。合併症のない皮下膿瘍はよくみられるが、市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の時代における適切な治療は明らかになっていない。NEJM誌2017年6月29日号掲載の報告。クリンダマイシン vs. TMP-SMX vs.プラセボ、10日間投与の治癒率を評価 研究グループは2009年5月~2015年1月に、6施設にて直径5cm以下の単一の皮下膿瘍を有する成人および小児患者(ただし、6~11ヵ月児は3cm以下、1~8歳児は4cm以下)を登録した。外科的に排膿可能な膿瘍の存在、膿瘍の大きさ、皮膚感染部位の数、非化膿性蜂窩織炎の有無で患者を層別化し、膿瘍の切開排膿後に、ブロックランダム化法によりクリンダマイシン群、TMP-SMX群およびプラセボ群に1対1対1の割合で割り付け、試験薬を10日間投与した。 主要評価項目は、治療終了後7~10日時点での臨床的治癒とした。 登録された患者は計786例で、うち成人505例(64.2%)、小児281例(35.8%)であった。また、男性は448例(57.0%)であった。黄色ブドウ球菌(S. aureus)は527例(67.0%)から、MRSAは388例(49.4%)から分離された。治癒率は、プラセボ69%に対し、抗菌薬で82~83%に改善 治療後10日時点のintention-to-treat集団における治癒率は、クリンダマイシン群83.1%(221/266例)、TMP-SMX群81.7%(215/263例)で、実薬群は類似しており(p=0.73)、いずれもプラセボ群の68.9%(177/257例)より高率であった(両群ともp<0.001)。評価可能集団(試験薬を10日間服用し、治療終了後7~10日時点の評価を完遂した患者)における結果も同様であった。なお、この有益な効果は、黄色ブドウ球菌感染者に限定された。 治癒例における追跡1ヵ月後の新規感染率は、クリンダマイシン群(6.8%:15/221例)が、TMP-SMX群(13.5%:29/215例、p=0.03)またはプラセボ群(12.4%:22/177例、p=0.06)より低かった。 有害事象の発現率は、クリンダマイシン群(21.9%:58/265例)が、TMP-SMX群(11.1%:29/261例)およびプラセボ群(12.5%:32/255例)より高かった。主な有害事象は下痢と悪心で、クロストリジウム・ディフィシル関連下痢症は確認されなかった。重篤な有害事象を8例、過敏反応(発熱、発疹、血小板減少症、肝炎)をTMP-SMX群の1例で認めたが、すべての有害事象は後遺症なく消失した。

37.

蜂窩織炎の初期治療にMRSAカバーは必要か?(解説:小金丸 博 氏)-691

 蜂窩織炎の原因微生物を特定することは一般的に困難であるが、膿瘍形成のない蜂窩織炎の原因菌で最も多いのはA群溶連菌などのβ溶血性レンサ球菌と考えられている。そのため米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、貫通性の外傷や注射薬物使用者などでない場合、レンサ球菌をターゲットに初期抗菌薬を選択することを推奨している。しかしながら、近年、市中感染型MRSAの増加が問題となっており、蜂窩織炎の初期治療でMRSAをカバーできる抗菌薬を使用すべきか議論になっていた。 本研究は、12歳以上を対象に、単純性蜂窩織炎に対するST合剤併用の有効性を検討した二重盲検ランダム化比較試験である。第一世代セフェム系抗菌薬であるセファレキシンに抗MRSA活性を有するST合剤を併用した群と、セファレキシンにプラセボを併用した群に分け、臨床的治癒率を比較した。すべての被験者で軟部組織エコーを実施し、膿瘍形成がある患者は除外された。Per-protocol集団における14~21日時点での臨床的治癒率は、セファレキシン+ST合剤投与群で83.5%、セファレキシン+プラセボ投与群で85.5%であり、両群間で有意差は認めなかった(群間差:-2.0%、95%信頼区間:-9.7~5.7、p=0.50)。 本研究では、治療開始時に38度以上の発熱を呈していた患者の割合は1%程度と低率であり、経口抗菌薬で外来加療できるレベルの軽症患者が対象となっている。全身状態がそれほど悪くなく、明らかな膿瘍形成がなさそうであれば、蜂窩織炎の初期治療における抗MRSA活性を有する抗菌薬の有用性は高くないと考える。これは、現在の本邦における実臨床の感覚とも一致するものである。 治療失敗例をみてみると、どちらの抗菌薬投与群でも経過中に膿瘍形成した例を多数認めており、抗MRSA活性を有する薬を選択したかどうかは大きな問題ではなさそうである。蜂窩織炎の治療経過が思わしくない場合は膿瘍合併を疑い、ドレナージなど適切な処置を施すことが重要である。 本研究は2009~12年にかけて米国の施設で実施されたものである。市中感染型MRSAの検出率が今後も増加するのであれば、抗菌薬の選択に影響を与えるのは間違いない。本邦の発生動向についても注視していく必要がある。

38.

伝染性膿痂疹(とびひ)

【皮膚疾患】伝染性膿痂疹(とびひ)◆病状体のあちこちに紅斑、痂皮(かさぶた)、水ぶくれなどが出て、周囲や遠くの部位に次々と拡大する皮膚疾患です。◆原因皮膚表面への細菌感染が原因で、水ぶくれをつくる黄色ブドウ球菌、かさぶたをつくる溶血性レンサ球菌とに分かれます。ほとんどが前者の方です。小児に多く発症します。湿疹や虫刺され、けがなどから始まることがあります。◆治療と予防・抗菌薬の内服と外用薬で治療します。搔きこわして広がっていくことが多いので、ステロイド外用薬を併用することもあります。・抗菌薬の効果をみるため、2~3日後にあらためて診察をします。・多くの薬剤に耐性をもつMRSAなどの菌がついていると治りにくいです。・皮膚を清潔にする、湿疹をきちんと治す、爪を短く切っておく、手をよく洗うなどして予防しましょう。監修:浅井皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.浅井 俊弥氏

39.

蜂窩織炎、ST合剤追加は必要か/JAMA

 単純性蜂窩織炎の抗菌薬治療では、セファレキシンにスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合薬(ST合剤)を併用しても、臨床的治癒率は改善しないことが、米国・オリーブ・ビューUCLA医療センターのGregory J. Moran氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年5月23日号に掲載された。米国では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の出現に伴い、皮膚感染症による救急診療部への受診が増加しているという。排膿がみられない蜂窩織炎は、β溶血性レンサ球菌が主な病原菌と推定されるが、in vitroでMRSA活性を有する抗菌薬レジメンが、MRSA活性のない治療に比べ転帰の改善をもたらすかは不明とされる。ST合剤の上乗せ効果をプラセボ対照試験で評価 研究グループは、セファレキシン+ST合剤による治療が、セファレキシン単剤に比べ単純性蜂窩織炎の臨床的治癒率を改善するかを検討する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した(米国国立アレルギー感染病研究所[NIAID]の助成による)。 対象は、年齢12歳以上で、単純性蜂窩織炎(膿瘍、排膿、創傷を伴わない紅斑[erythema]がみられ、感染性の病因が確認されている)と診断された患者であった。登録時に軟部組織の超音波検査が行われ、膿瘍を有する患者は除外された。 被験者は、セファレキシン(500mg、1日4回)+ST合剤(1,600/320mg、1日2回)またはセファレキシン+プラセボを投与する群にランダムに割り付けられ、7日間の治療が行われた。 主要評価項目は、per-protocol(PP)集団における臨床的治癒率とした。臨床的治癒は、フォローアップの受診時に以下の臨床的治療不成功の判定基準を満たさない場合と定義した。(1)第3~4日:発熱(感染症に起因すると考えられる)または紅斑の増大(>25%)、腫脹、圧痛の増悪、(2)第8~10日:発熱または紅斑、腫脹、圧痛の軽減がみられない、(3)第14~21日:発熱または紅斑、腫脹、圧痛が最低限度を超える。95%信頼区間(CI)の下限値が10%を超える場合に、併用群に優越性ありと判定することとした。 2009年4月~2012年6月に、米国の5つの救急診療部に500例が登録され、496例(99%)が修正intention-to-treat(mITT)解析、411例(82.2%)がPP解析の対象となった。PP解析で有意差なし、mITT解析では良好な傾向 PP集団(併用群:218例、プラセボ群:193例)の年齢中央値は40歳(範囲:15~78)、男性が58.4%で、糖尿病が10.9%、MRSA感染の既往が3.9%、登録の前の週の発熱の既往が19.7%にみられた。紅斑の長さと幅の中央値は13.0cm、10.0cmだった。 PP解析では、併用群の臨床的治癒率は83.5%(182/218例)であり、プラセボ群の85.5%(165/193例)と比較して有意な差を認めなかった(群間差:-2.0%、95%CI:-9.7~5.7、p=0.50)。 mITT解析による臨床的治癒率は、併用群が76.2%(189/248例)、プラセボ群は69.0%(171/248例)と、やはり両群間に有意差はみられなかったが、95%CIの範囲内に臨床的に重要な最小限の差(10%)が含まれた(群間差:7.3%、95%CI:-1.0~15.5、p=0.07)。 有害事象および副次評価項目(1泊入院、皮膚感染症の再発、家族との接触による同様の感染症の発症など)にも有意な差はなかった。 著者は、「mITT解析の知見には、併用群の臨床的治癒率が良好な傾向を示す、臨床的に重要な差を含む不正確性がみられたため、さらなる研究を要する可能性がある」と指摘している。

40.

クランベリーカプセルは尿路感染症予防に有効か/JAMA

 介護施設に入所している高齢女性において、1年間にわたりクランベリーカプセルを投与したが、プラセボと比較して細菌尿+膿尿の件数に有意差は認められなかった。米国・エール大学医学大学院のManisha Juthani-Mehta氏らが、クランベリーカプセル内服の細菌尿+膿尿に対する有効性を評価する目的で行った無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、報告した。細菌尿+膿尿は介護施設の高齢女性に多く、クランベリーカプセルはこうした尿路感染症(UTI)に対する非抗菌的な予防法として知られているが、その根拠には議論の余地があった。JAMA誌2016年11月8日号掲載の報告。185例に1年間投与、細菌尿+膿尿の頻度をプラセボと比較 研究グループは、2012年8月24日~2015年10月26日に、コネチカット州ニューヘイブンの50マイル(80km)圏内にある介護施設21施設において、長期入所中の65歳以上の女性185例(ベースライン時での細菌尿+膿尿の有無は問わない)を、治療群とプラセボ群に無作為割り付けし比較した。 治療群(92例)は、1カプセル当たり活性成分プロアントシアニジン36mgを含むクランベリーカプセル2個(合計72mg、クランベリージュース20オンスに相当)を、プラセボ群(93例)はプラセボ2個を1日1回内服した。 主要評価項目は、細菌尿(1~2種類の微生物が尿培養で105コロニー形成単位[CFU]/mL以上)+膿尿(尿中白血球陽性)とし、2ヵ月ごとに1年間評価した。副次評価項目は、症候性UTI、全死因死亡数、総入院数、多剤耐性菌(MRSA、VRE、多剤耐性グラム陰性桿菌)の分離数、UTI疑いに対する抗菌薬使用、すべての抗菌薬使用とした。 無作為化された185例(平均年齢86.4歳[SD 8.2]、白人90.3%、ベースラインで細菌尿+膿尿あり31.4%)のうち、147例が試験を完遂し、服薬アドヒアランスは80.1%であった。細菌尿+膿尿の頻度は両群で有意差を認めず 未調整前の解析において、計6回の尿検査で得られた全検体における細菌尿+膿尿の割合は、治療群25.5%(95%信頼区間[CI]:18.6~33.9)、プラセボ群29.5%(同:22.2~37.9)であった。一般化推定方式モデルによる補正後の解析では、両群間に有意差は認められなかった(それぞれ29.1% vs.29.0%、オッズ比[OR]:1.01、95%CI:0.61~1.66、p=0.98)。 症候性UTI発症数(治療群10件 vs.プラセボ群12件)、死亡率(それぞれ17例 vs.16例、100人年当たり20.4例 vs.19.1例、死亡率比[RR]:1.07、95%CI:0.54~2.12)、入院数(33件 vs.50件、100人年当たり39.7件 vs.59.6件、RR:0.67、95%CI:0.32~1.40)、多剤耐性グラム陰性桿菌関連細菌尿(9件 vs.24件、100人年当たり10.8件 vs.28.6件、RR:0.38、95%CI:0.10~1.46)、UTI疑いに対する抗菌薬使用(抗菌薬使用日数692 vs.909日、8.3 vs.10.8日/人年、RR:0.77、95%CI:0.44~1.33)、およびすべての抗菌薬使用(抗菌薬使用日数1,415 vs.1,883日、17.0 vs.22.4日/人年、RR:0.76、95%CI:0.46~1.25)で、有意差は確認されなかった。 著者は研究の限界として、試験登録時の細菌尿+膿尿の有無を制限していなかったことなどを挙げている。

検索結果 合計:75件 表示位置:21 - 40