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閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、日本人での有効性・安全性明らかに(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

 閉塞性肥大型心筋症におけるfirst-in-classの選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamtenは、2022年に米国において、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の症候性閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の運動耐容能および症状改善の適応で承認されている。今回、北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 2において、日本人の症候性肥大型心筋症(HCM)患者を対象にmavacamtenの有効性、安全性などを調査した第III相非盲検単群試験HORIZON-HCM(NCT05414175)の結果を報告した。 本研究は、日本人の症候性HOCM患者を対象にmavacamtenを30週間投与したときの有効性、安全性および忍容性、ならびにmavacamtenの長期的影響を評価すること目的に実施された。適格患者は、NYHA心機能分類II/III、左室駆出率(LVEF)≧60%、安静時または誘発時の左室流出路(LVOT)最大圧較差50mmHg以上を有する18歳以上の成人であった。主な除外基準は、スクリーニング前6ヵ月以内の侵襲的中隔縮小治療(外科的筋切除術または経皮的alcohol septal ablation[ASA])の既往あるいは予定を有する、閉塞性HCMに似た心肥大を引き起こす既知の浸潤性または蓄積性障害を有するなど。患者介入方法はmavacamtenを 2.5mgで治療を開始し、ドプラ心エコー法に基づいて、6週目(1mg、2.5mg)、8週目(1mg、2.5mg、5mg)、14週目(1mg、2.5mg、5mg、10mg)、20週目(1mg、2.5mg、5mg、10mg、15mg)と、各タイミングでいずれかの用量を1日1回経口投与した。主要評価項目はベースラインから30週目までの運動負荷後のLVOT最大圧較差の変化量。副次評価項目は、ベースラインから30週目までカンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の変化量など。 主な結果は以下のとおり。・全38例のうち、30週の投与が可能であった36例を解析した。・1次分析は、全参加者の第30週目の来院完了または第30週より前に治療を終了したときに行われた。・参加者の内訳として、平均年齢±SDは64.8±10.95歳、女性25例(65.8%)であった。NYHA機能分類はクラスIIが33例(86.8%)でクラスIIIが5例(13.2%)、KCCQ-CSSの平均±SDは79.1±20.8ポイント、NT-proBNP±SDは1,029.0±525.0ng/L(四分位範囲[IQR]:1,657.0)であった。・30週時点でのmavacamten投与量は5mg、10mgが最も多く(各10例[26.3%])、次いで2.5mg(6例[15.8%])であった。・主要評価項目であるベースラインから30週目までの運動負荷後のLVOT最大圧較差の変化量は-60.7mmHg(95%信頼区間[CI]:-71.5~-49.9)だった。・KCCQ-CSSの変化量は6週目まで急速な改善をもたらし、その後も12週目まで変化がみられた。実際にベースライン時点のNYHA機能分類はクラスIIは33例、クラスIIIは5例だったのに対し、30週時点ではクラスIIは14例、クラスIは22例に改善していた。・30週時点での治療下での有害事象(TEAE)は24例(63.2%[軽度:14例、中等度:10例])で、本薬剤が関連した患者は1例(2.6%)、重篤なTEAEや死亡はなかった。 以上の結果から、北岡氏は「日本人の症候性HOCMにおいてもmavacamtenの有効性が証明され、LVOT最大圧較差、NYHA心機能分類、KCCQ-CSSのほか、NT-proBNPやcTnT、心リモデリングなどの改善を認めた。そして、忍容性も高いことが示されるなど、これまで世界各国で行われた臨床試験と同様の結果が得られた」と締めくくった。※本文中に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2024年3月12日10時)

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電子タバコは禁煙継続に有効?/NEJM

 標準的な禁煙カウンセリングに電子ニコチン送達システム(電子タバコ[e-cigarettes]とも呼ばれる)の無料提供を追加すると、禁煙カウンセリングのみより6ヵ月間の禁煙継続率が高まったことが、スイス・ベルン大学のReto Auer氏らが、スイス国内5施設で実施した非盲検比較試験「Efficacy, Safety and Toxicology of Electronic Nicotine Delivery Systems as an Aid for Smoking Cessation:ESTxENDS試験」の結果で示された。電子ニコチン送達システムは、禁煙を補助するため禁煙者に使用されることがあるが、このシステムの有効性と安全性に関するエビデンスが必要とされていた。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。禁煙に対する電子タバコの有効性と安全性を、禁煙カウンセリングのみと比較 研究グループは2018年7月~2021年6月に、一般紙やソーシャルメディア、ならびに医療施設や公共交通機関での広告により、1日5本以上の喫煙を12ヵ月以上継続し、登録後3ヵ月以内に禁煙を希望する18歳以上の成人を募集し、適格者を介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群では、標準的な禁煙カウンセリングに加え電子タバコおよび電子タバコ用リキッド(e-liquid)の無料提供、ならびにオプション(有料)でニコチン代替療法を実施した。対照群では、標準的な禁煙カウンセリングを行い、ニコチン代替療法を含むあらゆる目的に使用できるクーポン券を配布した。 主要アウトカムは生化学的に確認された6ヵ月間の禁煙継続、副次アウトカムは自己報告による6ヵ月時点での禁煙(タバコ、電子タバコ、ニコチン代替療法を含む)、呼吸器症状、重篤な有害事象とした。生化学的に確認された6ヵ月間の禁煙継続率は介入群28.9% vs.対照群16.3% 2,027例がスクリーニングを受け、計1,246例が無作為化された(介入群622例、対照群624例)。 生化学的に確認された6ヵ月間の禁煙継続率は、介入群で28.9%、対照群で16.3%に認められた。両群の絶対差は12.6%(95%信頼区間[CI]:8.0~17.2)、粗相対リスクは1.77(95%CI:1.43~2.20)であった。 6ヵ月後の受診前7日間にタバコを使用しなかったと報告した参加者の割合は、介入群59.6%、対照群38.5%であった。一方、ニコチン(タバコ、ニコチン入り電子タバコ、ニコチン代替療法)の使用を一切やめた参加者の割合は、介入群20.1%、対照群で33.7%であった。 重篤な有害事象は介入群で25例(4.0%)、対照群で31例(5.0%)が、有害事象はそれぞれ272例(43.7%)および229例(36.7%)に発現した。

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喫煙で男性型脱毛症リスク1.8倍、重症化も

 喫煙は、多くの場合、ニコチンを含むタバコを娯楽として摂取することを指し、男性型脱毛症(AGA)の発症および悪化の危険因子であると考えられている。その関連の程度を調べたメタアナリシスの結果が発表された。カナダ・Mediprobe ResearchのAditya K. Gupta氏らによる本研究の結果はJournal of cosmetic dermatology誌オンライン版2024 年1月4日号に掲載された。 研究者らは2023年8月4日、PubMedで「hair loss(脱毛)、alopecia(脱毛症)、bald(頭髪のない)、androgenetic alopecia(男性型脱毛症)」「tobacco(タバコ)、nicotine(ニコチン)、tobacco smoking(喫煙)」の用語で当てはまる研究を検索、その結果2003~21年に発表された8件の研究が同定された。全研究が観察研究で、症例対照または横断研究であり、対象は男性の現在喫煙者と過去に喫煙経験がある人だった。得られたデータから、男性AGAの発症と重症化(軽度:ステージI-IIIから重度:ステージIV-VII)における喫煙状態(喫煙vs.非喫煙)と喫煙強度(喫煙減少vs.喫煙増加)の影響についてメタ解析を行い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙経験のある男性は喫煙経験のない男性に比べ、AGAを発症する率が有意に高かった(OR:1.82、95%CI:1.55~2.14)。・1日10本以上喫煙する男性は、1日10本未満の喫煙する男性に比べ、AGA発症する率が有意に高かった(OR:1.96、95%CI:1.17~3.29)。・AGA男性では、喫煙経験のある男性は喫煙経験のない男性に比べ、疾患進行のオッズが有意に高かった(OR:1.27、95%CI:1.01~1.60)。喫煙強度と疾患進行の間には有意な関連は認められなかった。 著者らは、「男性型脱毛症の患者には、喫煙が及ぼす悪影響について教育する必要があるだろう」としている。

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第197回 セマグルチドと自殺念慮は関連せず

セマグルチドと自殺念慮は関連せずGLP-1受容体作動薬の自殺リスクが取り沙汰されていますが、併せて180万例強の電子カルテ解析で幸いにもノボ ノルディスク ファーマのセマグルチド使用患者の自殺念慮はほかの糖尿病薬や抗肥満薬使用患者に比べて多くなく、むしろ少なめでした。今月5日にNature Medicine誌に掲載された解析結果です1)。2つの集団が解析され、その1つは2021年6月~2022年12月にセマグルチドかほかの抗肥満薬が処方された米国の肥満か太り過ぎの約24万例(24万618例)の医療記録の解析です2)。被験者の大半の23万2,771例は先立って自殺念慮を被ったことがなく、残り7,847例は過去に自殺念慮を生じたことがありました。自殺念慮の経験がなかった患者にセマグルチド処方後6ヵ月間に認められた自殺念慮の発生率、すなわち初発率は0.11%、自殺念慮の経験があった患者のセマグルチド処方後6ヵ月間のその再発率は7%ほどでした。一方、ほかの抗肥満薬処方患者の自殺念慮の初発率と再発率はどちらもより高く、それぞれ0.43%と14%でした。2017年12月~2021年5月にセマグルチドかほかの糖尿病薬が投与された2型糖尿病患者160万例弱(158万9,855例)の医療記録を使ったもう1つの解析も同様の結果となりました。セマグルチド投与群の自殺念慮の初発率と再発率はそれぞれ0.13%と10%、ほかの糖尿病薬投与群の自殺念慮の初発率と再発率はより高くそれぞれ0.36%と18%でした。2型糖尿病へのセマグルチド使用は2017年に米国で承認されているので、より長期の経過の比較が可能です。そこで最大3年間の経過を比較したところ、差は縮まってはいたもののセマグルチド投与群の自殺念慮初発率はやはりより低く保たれていました。セマグルチドと自殺念慮が生じ易くなることの関連をそれらの結果は支持していません。一方、セマグルチドが自殺念慮を生じ難くすると決めつけることはできなさそうですが、もしそうであるなら体重減少が心理的によい影響をもたらすことによるのかもしれませんし、まだ知られていないメカニズムによるのかもしれません3)。先週11日に米国FDAはセマグルチドなどのGLP-1作動薬と自殺念慮や自殺行為の関連の調査の途中経過を発表しました。幸い、Nature Medicine誌の報告と一致し、GLP-1作動薬と自殺念慮や自殺行為の因果関係は示されていないとひとまず判断されています4)。ただし若干のリスクの恐れ(small risk may exist)の払拭には至っておらず、FDAの検討は続いています。今後の課題としてより長期のセマグルチド使用と自殺念慮の関連を調べる必要があるとNature Medicine誌報告の著者は言っています2)。また、自殺念慮から一線を越えた自殺企図(suicide attempt)との関連の検討も必要です。参考1)Wang W, et al. Nature Medicine. 2024 January 5. [Epub ahead of print] 2)Semaglutide associated with lower risk of suicidal ideations compared to other treatments prescribed for obesity or type 2 diabetes / NIH3)No link between popular weight loss drugs and suicidal thoughts, health records suggest / Science4)Update on FDA’s ongoing evaluation of reports of suicidal thoughts or actions in patients taking a certain type of medicines approved for type 2 diabetes and obesity / FDA

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現行のHbA1c糖尿病判定値は閉経前女性にとって高すぎる可能性

 性差が考慮されていない現在のHbA1cの糖尿病判定値は、閉経前女性には高すぎる可能性を示すデータが報告された。仮に性特異的なカットオフ値を適用したとすると、50歳未満の女性糖尿病患者が17%増加する可能性があるという。英国の臨床検査関連企業であるBenchmarking Partnership社のDavid Holland氏らの研究によるもので、第59回欧州糖尿病学会(EASD2023、10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表されるとともに、「Diabetes Therapy」に9月30日掲載された。 耐糖能の評価や糖尿病の診断には経口ブドウ糖負荷試験が行われるが、血糖コントロールの指標であるHbA1cも糖尿病の判定ツールとして利用されている。そのHbA1cは溶血や失血、鉄欠乏性貧血からの回復期などの赤血球寿命が短縮する状態において、低値となりやすい。閉経前女性は同年代の男性よりHbA1cが低いことが報告されているが、これには月経による鉄欠乏の反復のためにHbA1cが低値となっている女性が一定数存在していることの影響も考えられる。一方、女性糖尿病患者の診断時年齢は平均すると男性よりも高齢である反面、死亡率は男性よりも高い。この事実に、糖尿病の診断の遅れが関与している可能性がある。 これらの点を検討するためHolland氏らはまず、英ノースミッドランド大学病院で2012~2019年にHbA1c検査を1回のみ受け、その値が50mmol/mol(約6.8%)以下だった14万6,907人のデータを解析。このうち50歳未満のHbA1cを性別で比較すると、女性は男性よりも平均1.6mmol/mol有意に低値であり(P<0.0001)、HbA1cの中央値である36mmol/molに該当する年齢は、男性では34~36歳であるのに対して女性は46~47歳だった。これにより、50歳未満の女性の糖尿病診断年齢が、男性より最大10年遅くなる可能性のあることが分かった。なお、50歳以上の集団でも女性の方が平均HbA1cは低値だったが、男性との差は0.9mmol/molだった(P<0.0001)。 次に、同大学病院とは別の英国内6件の医療機関、計93万8,678人のデータを用いた解析を実施したところ、上記と同様の結果が再現された。現行の糖尿病判定のためのHbA1c基準値は国際的に48mmol/mol(6.5%)とされているが、これを仮に46mmol/molに下げた場合、16~50歳の女性の0.26%が新たに糖尿病と判定される可能性が示唆された。 続いて、イングランドとウェールズで実施された一般住民対象糖尿病実態調査のデータを援用した解析を施行。HbA1cの判定値を性特異的なものとし、女性に対しては46mmol/molという値を適用したとすると、50歳未満の糖尿病女性患者数は現在よりも17%増加すると試算された。また、16~50歳の糖尿病患者における死亡リスクの差(女性が男性より26.7%高値との報告がある)の最大64%は、診断遅延の影響により発生している可能性が考えられた。 著者らは、「われわれの研究結果は、50歳未満の女性にとって現行のHbA1cによる糖尿病の判定値が、約2mmol/mol高すぎる可能性があることを示唆している。判定値を再検討し、性特異的なカットオフ値を設定すべきかもしれない。それによって女性の糖尿病を早期に見いだし介入することができ、将来的には女性患者の予後改善につながるのではないか」と述べている。

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英語で「そこからどうするか決めましょう」は?【1分★医療英語】第108回

第108回 英語で「そこからどうするか決めましょう」は?《例文1》Let’s have a meeting next week and we will take it from there.(来週ミーティングをして、そこからどうするか決めましょう)《例文2》Let’s cut down drinking and take it from there. One thing at a time, all right?(まずは飲酒量を減らして、そこからどうするか決めましょう。一度に1つずつやりましょう、いいですね?)《解説》現段階では十分に見通しが立たず、まだ具体的に物事を決められないときに使えるのが“We’ll take it from there.”という表現です。直訳すると「そこからそれを取りましょう」という意味ですが、現時点では判断材料が少ないため、「まず第一歩として何かを行って、そこからどうするか決めましょう」という文脈で使われます。医療現場では、まず侵襲性の低い検査や治療を行い、そこから得られた情報を基に追加の検査や治療を行うかどうか判断する場面が多いため、患者との会話や上司・同僚との会話で頻用される表現です。また、不安が強く、一度に多くのことを求める患者には“one thing at a time.”(一度に1つずつやりましょう)という表現も有効で、併せて覚えておくとよいと思います。講師紹介

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認知機能維持にゴルフやウォーキングが有望か

 歳を重ねる中で思考力を保つためにするべきことは何なのか。その答えは、ゴルフ、2本のポールを持って行うノルディックウォーキングや通常のウォーキングであることが、新たな研究で明らかになった。東フィンランド大学(フィンランド)のJulia Kettinen氏らによるこの研究結果は、「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に10月12日掲載された。 一過性の有酸素運動により、運動の強度や実施時間、種類に関係なく認知機能が向上する可能性が過去の研究で示唆されている。この研究では、5日間にわたるランダム化クロスオーバー試験により、認知的要求度の高い3種類の高齢者に適した有酸素運動(18ホールのゴルフ、6kmのノルディックウォーキング、6kmのウォーキング)が認知機能に及ぼす即時的な効果が検討された。対象者であるゴルフを趣味とする健康な高齢者25人(平均年齢69±4歳、男性16人)には、3種類の運動の全てを、各運動の間に1日のウォッシュアウト期間を挟みながら、実際の生活環境の中で自分のペースで行ってもらった。運動の際には、フィットネスモニターにより距離、時間、ペース、エネルギー消費量、歩数を測定し、ECG(心電図)センサーにより心拍数も測定した。 認知機能については、高齢者の視空間認知機能の評価に広く用いられているトレイル・メイキング・テスト(Trail Making Test;TMT)のパートA(TMT-A、注意力や処理速度を評価する)とパートB(TMT-B、作業の切り替え能力や、作業記憶と認知的柔軟性を要する実行機能および高次の認知機能を評価する)により評価を行い、それぞれのテストを完了するのに要した時間を計測した。また、対象者から運動の前後で血液を採取し、運動による効果を反映する物質と見なされているエクサカイン(運動応答性生理活性物質)として、BDNF(脳由来神経栄養因子)とCTSB(カテプシンB)の測定を行った。 その結果、3種類の有酸素運動の全てで、運動前と比べて運動後にはTMT-Aを完了するのに要した時間が有意に短縮することが明らかになった(ゴルフ:−4.43±1.5秒、ノルディックウォーキング:−4.63±1.6秒、ウォーキング:−6.75±2.26秒)。ノルディックウォーキングとウォーキングでは、TMT-Bを完了するのに要した時間についても有意に短縮していた(同順で、−9.62±7.2秒、−7.55±3.2秒)。TMT-AおよびTMT-B完了に要した時間の合計は、全ての運動で、運動前と比べて運動後に有意な短縮が認められた(ゴルフ:−9.23±4.7秒、ノルディックウォーキング:−14.26±7.4秒、ウォーキング:−14.28±8.20秒)。ただし、TMT-B完了に要した時間からTMT-A完了に要した時間を差し引いた値に有意な短縮が認められたのはノルディックウォーキングのみだった(−4.97±7.26秒)。一方で、BDNFとCTSBの値に運動の即時的な影響は認められなかった。 Kettinen氏は、「これらの結果は、ゴルフ、ノルディックウォーキング、通常のウォーキングなどの有酸素運動が、高齢者の認知機能の維持と向上に有効であることを強調するものだ」と述べている。なお、本研究には、英エディンバラ大学とチューリッヒ工科大学(スイス)の研究者も参加している。

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第190回 コロナ経口薬投与患者の5人に1人がリバウンド

コロナ経口薬投与患者の5人に1人がリバウンドファイザーのコロナウイルス感染症(COVID-19)の経口薬ニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のメインプロテアーゼ(Mpro)を阻害してSARS-CoV-2の複製を食い止めます。軽~中等度のCOVID-19患者の入院や死亡が同剤で減ることが無作為化試験や観察試験で確認されており、今年5月に米国FDAは重症化リスクが高い軽~中等度COVID-19成人患者の治療に同剤を使うことを本承認しました1)。ニルマトレルビル・リトナビルは2年ほど前の2021年12月に本承認に先立って取り急ぎ認可されており、今では広く使われるようになっています。その普及に伴い、当初に比べてニルマトレルビル・リトナビルは感染再発(リバウンド)をより生じやすいことを示唆する報告が増えています。しかしこれまでの試験での検査や症状の把握は回数が少なくて期間も短く、それにウイルス培養のデータもなく、ニルマトレルビル・リトナビル使用に伴うリバウンドの正確な推定には至っていません2)。そこでMass General Brighamのチームはより正確な結果を得るべく、昨年2022年3月から今年2023年5月の外来のCOVID-19患者127例を繰り返し検査してリバウンド状況を詳しく調べました。それら127例のうち72例にニルマトレルビル・リトナビルが5日間投与されました。残り55例は非投与です。リバウンドはSARS-CoV-2がひとまず検出されなくなった後に培養でSARS-CoV-2が再び検出されること、またはSARS-CoV-2が基準(4.0 log10 copies/mL)未満にいったん減った後に増えた状態をしばらく維持することとみなされました。そのリバウンドがニルマトレルビル・リトナビル投与患者72例のうち15例(20.8%)に認められました3)。それら15例のうち13例は何らかの症状を伴い、7例はより明確に発症し(点数が大きいほど負担が大きいことを意味する下限0で上限30の症状検査値が3点以上上昇)、2例はまったくの無症状でした。ニルマトレルビル・リトナビル非投与55例でのリバウンドは少なくわずか1例(1.8%)のみでした。リバウンドはもっぱら高齢患者や免疫抑制患者に生じました。それは合点がいくことですが、奇妙なことにワクチン接種回数が多い人がリバウンドをより被っていました。つまりワクチンのリバウンド予防効果は認められませんでした。また、興味深いことにニルマトレルビル・リトナビル投与を遅くに始めた患者に比べてより早くに開始した患者にリバウンドがより多く認められました。著者が自覚しているとおり試験は被験者数が少ないという欠点があります。また、ニルマトレルビル・リトナビルが投与されなかった患者は悪化のリスクが低く、そもそもがリバウンドを生じ難かったのかもしれないという試験の設計上不可避な偏りが生じていたかもしれません2)。ニルマトレルビル・リトナビルはリバウンドをどうやら生じやすくするかもしれませんが、先行きが心配な患者の命を救い、入院や死亡を防ぐ効果的な薬であることに変わりはないと著者は言っています4)。著者がそう言うように同剤は軽~中等度COVID-19の治療手段として不可欠なだけにリバウンドを封じる手段を見つけることは大きな意義があります。そのためにはニルマトレルビル・リトナビルとリバウンドを関連付ける仕組みの解明が必要です。さしあたりかなり確からしい説明として、5日間の投与期間が実は不十分でリバウンドを招いているのではないかとの指摘があります2)。より長期間の投与の検討は始まっており、たとえばフランスの研究所ANRS Emerging Infectious Diseasesは免疫抑制患者へのニルマトレルビル・リトナビル10日間投与と5日間投与の比較試験を実施しています5)。また、リバウンド患者へのニルマトレルビル・リトナビル再投与の試験も進行中です6)。日本で承認済みの塩野義製薬の経口薬エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)は今のところリバウンドが少なくて済んでいるようです。欧州の学会で最近発表された試験解析によると、半減期が長い同剤治療患者のPCR検査で認められたウイルスRNAリバウンド率は7.8%、プラセボ群では4.7%でした7)。参考1)Pfizer’s PAXLOVID Receives FDA Approval for Adult Patients at High Risk of Progression to Severe COVID-19 / BUSINESS WIRE2)Cohen MS, et al. Ann Intern Med. 2023 Nov 14. [Epub ahead of print]3)Edelstein GE, et al. Ann Intern Med. 2023 Nov 14. [Epub ahead of print] 4)One in five patients experience rebound COVID after taking Paxlovid, new study finds5)OPTICOV試験(ClinicalTrials.gov)6)NCT05567952(ClinicalTrials.gov)7)ECCMID 2023: Shionogi to Present Data Showing COVID-19 Symptom Recurrence is Not Associated with Ensitrelvir Treatment / BUSINESS WIRE

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サンフランシスコのTCT2023で6つの発表【臨床留学通信 from NY】第53回

第53回:サンフランシスコのTCT2023で6つの発表TCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)2023での発表のため、サンフランシスコに来ております。サンフランシスコには4年前も来ているので観光はとくにせず、学会会場のみ3日弱の滞在です。コロナの影響を受けて街中の多くの店舗が閉まっていて、治安も悪そうな印象です。残念ながらホームレスの方がかなりいました。Abstractとしてグループ内で8つの口頭発表があり、私自身もプレゼンターとして筆頭著者かどうかにかかわらず6つの発表がありました。そのうち幸運にもグループ内で2つ、米国心臓病学会誌(JACC)(impact factor:24)と同時発表をすることができました。1つはintravascular imaging guided vs. functionally guided vs. angio guided PCIを比較したネットワークメタアナリシスです1)。今年3月のACC(米国心臓病学会)で、ニューヨーク大学のSripal Bangalore先生から研究にお誘いいただき、数年前から構想もあったこともあり、すぐに草稿を作成しJACCに提出。TCTとの同時発表も踏まえて、査読プロセスは比較的速く進みました。もう1つは、米国の主に65歳以上の政府保険であるMedicareのデータを使った解析です2)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川 友介先生との共同研究でした。こちらは改訂を4日間でできれば同時発表できることになり、筆頭著者の先生が頑張られて提出できたため、1週間以内にアクセプトされ、TCTと同時発表となりました。発表すること自体はある程度慣れ、論文としてほぼ同時に発表しているため内容は把握できているので、スライドを作ってしまえば、英語での質疑応答も問題ありませんでした。ただし、今回は6つの自分の発表があったため、ほかの発表を聴いて知識のアップデートをする余裕はありませんでした。NEJMに載るようなLate breaking clinical trialsセッションは、TCTMDというTCTのニュースサイトによくまとまっているので、それを見て確認することができました。学会では、ほかのセッションを聴く代わりに、私の論文をレビューしてくださるマウントサイナイ医科大学やニューヨーク大学の先生などへの挨拶を欠かさず行います。来年7月からボストンのマサチューセッツ総合病院に在籍することになるため、ボストン界隈の先生方とも以前のインタビューの中で面識がある方々に挨拶いたしました。そのような先生方に会いますと、“Email me when you come to Boston”と言っていただけました。東海岸と西海岸とでは3時間の時差があり、体調もなんとなく良くない気もしますが、西海岸だと日本から参加される先生方も多い印象です。こちらで臨床をしている先生方ともお会いすることができました。常に就職活動が付きまとう米国において、学会はネットワーク作りに有用だと改めて思いました。Column米国最大のカテーテル学会であるTCTですが、ランチョンの弁当のクオリティはかなり低め。しかしながら、今年はAbstract presenterがfacultyと見なされるためfaculty loungeが使えて、おいしい昼食にありつけました。和食弁当も学会でよく出るので、そちらのほうがヘルシーで良いとは思います。参考1)Kuno T, et al. J Am Coll Cardiol. 2023 Oct 23. [Epub ahead of print]2)Ueyama HA, et al. J Am Coll Cardiol. 2023 Oct 16. [Epub ahead of print]

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STEMI、中医薬tongxinluoの上乗せで臨床転帰改善/JAMA

 中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのYuejin Yang氏らは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)におけるガイドライン準拠治療への上乗せ補助療法として、中国伝統医薬(中医薬)のTongxinluo(複数の植物・昆虫の粉末・抽出物からなる)は30日時点および1年時点の両方の臨床アウトカムを有意に改善したことを、大規模無作為化二重盲検プラセボ対照試験「China Tongxinluo Study for Myocardial Protection in Patients With Acute Myocardial Infarction(CTS-AMI)試験」の結果で報告した。Tongxinluoは有効成分と正確な作用機序は不明なままだが、潜在的に心臓を保護する作用があることが示唆されている。中国では1996年に最初に狭心症と虚血性脳卒中について承認されており、心筋梗塞についてはin vitro試験、動物実験および小規模のヒト試験で有望であることが示されていた。しかし、これまで大規模無作為化試験では厳密には評価されていなかった。JAMA誌2023年10月24・31日合併号掲載の報告。対プラセボの大規模無作為化試験でMACCE発生を評価 CTS-AMI試験は2019年5月~2020年12月に、中国の124病院から発症後24時間以内のSTEMI患者を登録して行われた。最終フォローアップは、2021年12月15日。 患者は1対1の割合で無作為化され、STEMIのガイドライン準拠治療に加えて、Tongxinluoまたはプラセボの経口投与を12ヵ月間受けた(無作為化後の負荷用量2.08g、その後の維持用量1.04g、1日3回)。 主要エンドポイントは、30日主要有害心脳血管イベント(MACCE)で、心臓死、心筋梗塞の再発、緊急冠動脈血行再建術、脳卒中の複合であった。MACCEのフォローアップは3ヵ月ごとに1年時点まで行われた。 3,797例が無作為化を受け、3,777例(Tongxinluo群1,889例、プラセボ群1,888例、平均年齢61歳、男性76.9%)が主要解析に含まれた。30日時点、1年時点ともMACCEに関するTongxinluo群の相対リスク0.64 30日MACCEは、Tongxinluo群64例(3.4%)vs.プラセボ群99例(5.2%)で発生した(相対リスク[RR]:0.64[95%信頼区間[CI]:0.47~0.88]、群間リスク差[RD]:-1.8%[95%CI:-3.2~-0.6])。 30日MACCEの個々のエンドポイントの発生も、心臓死(56例[3.0%]vs.80例[4.2%]、RR:0.70[95%CI:0.50~0.99]、RD:-1.2%[95%CI:-2.5~-0.1])を含めて、プラセボ群よりもTongxinluo群で有意に低かった。 1年時点でも、MACCE(100例[5.3%]vs.157例[8.3%]、ハザード比[HR]:0.64[95%CI:0.49~0.82]、RD:-3.0%[95%CI:-4.6~-1.4])および心臓死(85例[4.5%]vs.116例[6.1%]、HR:0.73[0.55~0.97]、RD:-1.6%[-3.1~-0.2])の発生は、Tongxinluo群がプラセボ群よりも依然として低かった。 30日脳卒中、30日および1年時点の大出血、1年全死因死亡、ステント内塞栓症(<24時間、1~30日間、1~12ヵ月間)など、その他の副次エンドポイントでは有意差はみられなかった。 薬物有害反応(ADR)は、Tongxinluo群がプラセボ群よりも有意に多く(40例[2.1%]vs.21例[1.1%]、p=0.02)、主に消化管症状であった。 今回の結果を踏まえて著者は、「STEMIにおけるTongxinluoの作用機序を確認するため、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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新型コロナウイルスに伴う肺炎で入院した患者を対象に、標準治療に免疫調整薬を併用した効果(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、2020年10月から2021年12月までに新型コロナウイルス肺炎で入院した患者に対して、標準治療に加えて、アバタセプト、cenicriviroc、あるいはインフリキシマブを追加した治療群とプラセボ群を比較した試験であり、和文要約は「コロナ肺炎からの回復、アバタセプトやインフリキシマブ追加で短縮せず/JAMA」にまとめられている。 本研究は、マスタープロトコルを使用したランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験で、プライマリーエンドポイント(1次アウトカム)は新型コロナウイルス肺炎からの28日目までの回復期間(8段階の順序尺度を使用して評価)と設定されたが、標準治療にアバタセプト、cenicriviroc、あるいはインフリキシマブを追加してもプラセボ群に比較して短縮しなかった。しかし、本研究結果のうち、アバタセプトとインフリキシマブのセカンダリーエンドポイント(2次アウトカム)である28日死亡率および14日後の臨床状態は、統計的な有意差こそ認められなかったものの、プラセボに対しては良好な結果だった。 今回の試験結果は、1次アウトカムに対する効果を示せなかったが、2次アウトカムは良好そうに見える結果でもあり、単純にNegative studyと片付けてしまわずに、今回のような結果になった理由を考える必要はあるだろう。本論文のEDITORIAL(Kalil AC, et al. JAMA. 2023;330:321-322.)でも、この1次アウトカムと2次アウトカムのねじれに対する解釈を提案している。 さて、本研究結果ではアバタセプトとインフリキシマブのセカンダリーエンドポイントは良好に見えたと記載はしたものの、この結果のみでは実臨床で新型コロナウイルスに伴う肺炎患者に対する臨床プラクティスを変更するほどの影響はないと考える。 では、今後どのような研究結果が判明すれば臨床プラクティスを変更しうるかを考えてみる。まずアウトカムは、今回のセカンダリーアウトカムである28日死亡率の低下や14日後の臨床状態の改善を設定することがよいだろう。そして、本研究で有意差を示すことができなかった理由は、検出力が不足していた可能性が考えられる。本研究結果を参考に28日死亡率の低下、14日後の臨床状態の改善で有意差を示すことができる参加者人数を再計算して、臨床試験を実施し、アウトカムの改善を再現することができれば、臨床のプラクティスとして検討してもよさそうである。 ただし、2023年8月の本原稿執筆時点としては、わざわざそのような臨床試験を行うメリットは乏しいと考える。 理由を説明するうえで、新型コロナウイルス肺炎に対する免疫抑制薬・免疫調整薬の役割について振り返ってみようと思う。重症COVID-19患者では、肺障害および多臓器不全をもたらす全身性炎症反応が宿主免疫反応により発現するが、コルチコステロイドの抗炎症作用薬が有効であることがRECOVERY試験(RECOVERY Collaborative Group. N Engl J Med. 2021;384:693-704.)で示された。本邦でも中等症II以上の患者で、宿主免疫反応に対して、抗ウイルス薬のレムデシビルと共にデキサメタゾンやバリシチニブ(Kalil AC, et al. N Engl J Med. 2021;384:795-807., Wolfe CR, et al. Lancet Respir Med. 2022;10:888-899.)が用いられている。その後、ステロイド薬とトシリズマブの併用により全死亡率が低下する可能性も示唆され(RECOVERY Collaborative Group. Lancet. 2021;397:1637-1645., WHO Rapid Evidence Appraisal for COVID-19 Therapies (REACT) Working Group. JAMA. 2021;326:499-518.)、本邦の「COVID-19に対する薬物治療の考え方」や、米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)の「COVID-19治療ガイドライン」でもデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブは治療薬の候補に記載されている。 中等症II以上の新型コロナウイルス肺炎に対する治療薬としては、上記のようにエビデンスのある薬剤がすでにあり、これらの薬剤の効果を上回ることが期待される薬剤でなければ、わざわざ費用をかけて臨床試験を行うメリットは乏しいだろう。 また、新型コロナウイルスの変異株の特徴とワクチン・抗ウイルス薬の効果についても考えてみる。 宿主免疫反応による肺炎による死亡者の増加は、主にデルタ株流行下以前で問題となることが多かった。現在の本邦における新型コロナウイルスの亜系統検出割合はEG.5.1を含めたXBB系統が上昇傾向であり、免疫回避の高いオミクロン株が主流である(国立感染症研究所感染症疫学センター. 新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報: 発生動向の状況把握. 2023年第31週[2023年7月31日~2023年8月6日])。オミクロン株流行下でも、まれにデルタ株流行下のようなCOVID-19肺炎患者を診療する機会はあるが、頻度は低く、本研究の対象となったようなCOVID-19に対する宿主免疫反応が原因で中等症Ⅱ~重症となるような患者層は、適切なワクチン接種や抗ウイルス薬の投与が行われるならば、今後も臨床現場で診療する機会は以前よりは少なくなると考える。 以上より、本研究は、臨床診療を担当する立場からは本邦の新型コロナウイルス感染症治療に与える影響は乏しい試験と考えるが、臨床研究を担当する立場としては、パンデミック状況下で複数の治療候補薬がある際に、適切かつ効果的なランダム化プロセスとバイアスを最小限にする工夫をした試験であり、今後の臨床研究でも参考にすることができる研究デザインと考える。

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高齢がん患者、米国における診療の工夫

 マサチューセッツ総合病院緩和老年医療科の樋口 雅也氏がナビゲーターとなり、医師、薬剤師、看護師などさまざまな職種と意見交換をしながら臨床に直結する高齢者診療の知識を学べる「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」。がんと老年医学をテーマにした回では、ゲストとしてダートマス大学腫瘍内科の白井 敬祐氏が参加し、米国における高齢者のがん診療の実際について紹介した。高齢のがん患者とのコミュニケーションにおける工夫は?白井氏:免疫療法などの進化によって、以前であれば予後が厳しかったがん種や進行がんでも、治療効果が見込めるケースが増えてきました。しかし、臨床試験の結果と目の前の患者さんにその薬が効くのかはまったく別問題。患者さんの期待値が上がっていることもあり、そのあたりの説明やコミュニケーションには気を遣っています。とくに高齢の患者さんには、5年生存率の平均値や中央値といった数字をそのまま伝えるだけでなく、自分が診療しているほかの患者さんの例を出して説明するなど、治療やその後の生活を具体的にイメージしやすいように工夫しています。実際の診療で気を付けていることは?白井氏:米国では「Shared Decision Making(SDM)」という考え方が浸透しており、医師は数多くの患者を診てきた専門家として情報提供やアドバイスをしつつ、患者や家族と一緒に意思決定することを目指しています。使う言葉も「Up to you.(あなたが決めてください)」ではなく「Up to us.(一緒に決めましょう)」といった、共同意思決定を促すものを意識して選ぶようにしています。 もう1つの工夫は、「がん以外の生活に目を向ける質問」を挟むことです。外来でフォローしている患者さんに対して「痛みや吐き気はどうですか?」といった診療に必要な質問のほかに、「前回の診察から、何か良いことはありましたか?」といったポジティブな気持ちになる質問をすることで、前向きに治療に臨めるような雰囲気づくりを心掛けています。がんになっても、できるだけ希望に沿った生活を続けられるよう、サポートすることが重要だと考えています。印象に残っている患者さんや事例は?白井氏:91歳でStageIVの肺がん患者の診療に4年近く当たっているのですが、彼は日本人の私に興味を持ってくれ、メジャーリーグの大谷選手が一面に載った新聞を持ってくるなど、診察のたびにいろいろな方法や話題でコミュニケーションをとってくれます。この方から「病気ではなく、その人個人への興味を持つ」ことの大切さを学びました。ほかにも患者さんから教わることは多いです。“Death ends life, but never ends relationship.”(死によって人生が終わっても、関係性はなくならない)という言葉が好きで、毎日それを実感しながら、診療に当たっています。 8月に配信された対談の後編では、米国のがん診療における多職種連携の実際、日本でも使えるチーム医療のコツを紹介している。■詳細は以下の番組(有料・申し込み要)CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン(シーズン2)

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パーソナルケア製品、男性ではこの20年で使用が倍増

 米国成人は、シャンプーやデオドラントなどの自分の身体をケアするための製品(パーソナルケア製品)を1日に平均で12種類使用していることが、米環境ワーキンググループ(Environmental Working Group;EWG)のHomer Swei氏らが7月26日に公表した新たな調査で明らかにされた。これらの12製品には、合計で112種類の化学成分が含まれており、その一部は健康にとって有害な可能性も示されたという。 パーソナルケア製品の使用に関するこの調査は2023年2月に実施され、2,207人の米国成人(男女のカテゴリーからの選択で、女性1,128人、男性1,073人)から回答が得られた。その結果、男性では、パーソナルケア製品の毎日の使用が、前回調査時(2004年)の平均6種類の使用から今回の調査での平均11種類の使用へと倍増していたことが示された。11種類の製品の内訳は、ボディーケア製品が6種類、スキンケア製品と化粧品が1種類ずつ、ヘアケア製品が2種類で、残る1種類はベビーケア製品(お尻ふき)だった。これに対して、女性では前回の調査時が平均12種類の使用だったのが、今回の調査では平均13種類の使用であり、大きな変化は見られなかった。また、約10%の人は、化粧品、シャンプー、保湿剤、デオドラント、石鹸など25種類以上の製品を毎日使用している、いわゆる「ヘビーユーザー」であることも判明した。 ただし、これは必ずしも懸念すべき事態ではないという。Swei氏は、「毎日使用するパーソナルケア製品の数は増えてはいるが、そこに含まれている化学成分の種類は減っている。環境への負担軽減を意識して作られるクリーン・ビューティー製品の開発や、持続可能性を重視するスチュワードシップ・リテーラー・プログラムの実施、米国の州法の制定や消費者情報の普及などが重なったことで、市場全体が根本的に変化したように思う。パーソナルケア製品に使われる成分にも、健康への配慮が感じられるようになった」と話す。 Swei氏によると、パーソナルケア製品に使われている成分は、EWGが運営するEWG Skin Deepデータベースで、安全性が高い(緑のスコア)と評価されていたものがほとんどだったという。EWG Skin Deepでは10万点近いパーソナルケア製品の安全性を評価している。危険度は1〜10点で評価され、1〜2点が緑、3〜6点が黄、7〜10点が赤であり、スコアが高いほど危険度が高い。 しかし、懸念すべき事実も明らかになった。調査から、米国成人は毎日、がんに関連する成分と、生殖系や発育系に有害な可能性のある化学物質に関連する成分に、それぞれ2種類ずつ曝露していることが示された。これらの成分は、主にボディーケア製品、スキンケア製品、化粧品に含まれている、パラベン、タルク、シクロペンタシロキサン、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、トリエタノールアミンなどの化学物質である。また、平均的な成人は1日に15種類の香料成分にさらされており、そのうち7種類はアレルギー反応を引き起こす可能性があることも示された。 EWGの健康生活科学アナリストであるSydney Swanson氏は、「香料とは、最大4,000種類もの化学物質を包含する包括的な言葉だ。しかし、その具体的な内容を開示する必要はないため、消費者はこの言葉に該当する可能性がある、ありとあらゆる成分にさらされる可能性がある」と懸念を示す。 一方で、本研究には関与していない、米ノースウェル・ヘルスの皮膚科医であるRaman Madan氏は、「EWGの報告は消費者に不必要な不安を与えるかもしれない」と指摘する。同氏はその理由として、「この種の化学物質の多くは、最終的には体内に吸収されないか、吸収されたとしても微量であり、体への影響はそれほど大きくないからだ。また、パーソナルケア製品以外にも、人間は1日中、さまざまな物質にさらされている」と話す。 現在、米食品医薬品局(FDA)によってパーソナルケア製品への使用が禁止されている成分はほんの一握りだ。しかし、カリフォルニア州やミネソタ州など複数の州が、パーソナルケア製品に関する安全性を担保するための州法を成立させている。また、企業自体も自社製品に含まれている成分を開示するようになりつつあるという。Swei氏は、「透明性を求める傾向が強まっている。それは、特に香料やアレルゲンなど、より多くの成分がラベルに追加されていることからも明らかだ。今でも使用すべきではない成分が検出されて失望することはあるが、そうした機会も徐々に減少しつつある」と述べている。

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英語勉強法2【Dr. 中島の 新・徒然草】(485)

四百八十五の段 英語勉強法2前回に引き続き、英語勉強法その2を述べたいと思います。今回はスピーキング、つまり「話す」技能です。まずは自分自身のニーズをはっきりさせておきましょう。どのような場面で英語を話すことを想定しているのか?それが大切です。私ならこんな感じでしょうか。外国人の診療国際学会での口演発表学会後の懇親会での初対面の外国人との会話とくに最後のものが一番難しいのではないかと思います。1つの対策としては、鉄板ネタを持っておくというのがあります。ここで皆さんは「そこまでやる?」思うかもしれません。でも、プロほど準備周到です。かつて吉本の芸人さんが述べていたのを聞いたことがあります。いきなり「面白い話して!」と一般人に無茶振りされることがあるのだとか。で、いつも原稿用紙30枚分の話を準備しているそうです。プロですらそこまでやるのですから、われわれ素人が準備するのは当然。体験談やエピソードを語る時のパターンも決まっています。前回も紹介したYouTubeの「ニック式英会話」では、こんな例が挙げられていました。出だしこないだ怖いことがあってね状況説明〜していたら出来事こういうことがありました。という形です。最初の「怖いこと」の部分は“Something scary happened.”となりますが、この部分は「恥ずかしいこと」とか「ラッキーなこと」という形でも応用できます。次の状況説明は、英語でも日本語でも過去進行形を使うのだとか。たとえば、“I was walking down the street,”(通りを歩いていたら)みたいな形になります。そして出来事は英語でも日本語でも過去形。先の例に続けてみると、“and a guy came up to me.”(男の人が話し掛けてきた)となります。こういったいろいろな場面でのスピーキングの練習は、オンライン英会話がピッタリ。私が利用しているレアジョブなら、1回25分のレッスンで講師はフィリピン人。まずはレッスンの冒頭で自分のニーズを明確に伝えます。時々ある英語での外国人診療が上手くなりたい、など。だから患者役となって練習に付き合ってほしい、と言えばいいですね。すると彼女らはここぞとばかり、自分の頭痛、母親の手術、親戚の病気など、ありとあらゆる医学的疑問をぶつけてきます。まるで無料医学コンサルタントみたいなもんで、心の中ではきっと「ラッキー!」と思っていることでしょう。で、医学的には簡単な話でも、英語となると出てきません。「片頭痛って何だったかな?」と苦しんだ挙句、日本語に引きずられてone-side headacheなどと言ったら意味が通じません。片頭痛はmigraineですね、正しく伝えましょう。痛みの性状を表現する「拍動性」というのも難しいです。パッと出てくるのはpulsatileですが、一般人に通じるのでしょうか?むしろpoundingのほうが良いかもしれません。レッスンで四苦八苦した後は、別の講師相手に同じ話題で臨むのがいいと思います。何しろ講師は3,000人以上いるので、毎日新しい人にレッスンを受けることも可能です。そうすれば「また同じ話か」と思われることは決してありません。きっと少しずつスムーズに話せるようになることでしょう。オンライン英会話も狙いを持ってやることが大切ですね。最後に1句汗かけど なかなか出ない 英単語

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オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム、9月に保険適用へ/エグザクトサイエンス

 エグザクトサイエンスは、「オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム」の保険適用について、中央社会保険医療協議会が2023年7月5日付けで了承したことを発表した。9月1日に保険収載される見込みという。 オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラムは、オンコタイプDX乳がん再発スコア検査および日本向けに開発されたソフトウエアを組み合わせたプログラム医療機器。ホルモン受容体陽性HER2陰性で、リンパ節転移なし、もしくは3個以内の早期浸潤性乳がんを対象に、遠隔再発リスクを提示し、化学療法の要否の決定を補助するものとして、2021年8月に厚生労働省から薬事承認を受けている。 オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラムの使用により、手術後にどの程度再発しやすいかの予測と併せて、術後薬物療法の検討時にホルモン療法に化学療法を追加するかどうかの意思決定の助けとなる情報を提供する。昭和大学の中村 清吾氏は「意思決定に有用な情報を提供することで、医療者と患者さんが話し合い、手術後の薬の治療をどうするかについて納得して治療方針を決める、いわゆるShared Decision Makingの一助になると期待している」と述べている。

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英語で「難しい選択でした」は?【1分★医療英語】第86回

第86回 英語で「難しい選択でした」は?Though I said yes to surgery, I’m still quite anxious.(手術を受けますとは言ったものの、まだかなり不安です)I understand your concern. It was a tough call.(お気持ちお察しします。難しい選択でしたよね)《例文1》Making a medical decision can often be a tough call.(医療上の意思決定はしばしば難しくなり得るものです)《例文2》We needed to continue a blood thinner despite the stomach bleeding. That was a tough call.(胃からの出血がありながらも、血をサラサラにする薬を続ける必要がありました。難しい選択でした)《解説》“call”といえば、真っ先に「電話をかける」を思い浮かべる方が多いかもしれません。“I’ll make a quick phone call.”と言えば、「ちょっと短い電話をしてきます」という意味になります。この“call”という単語を名詞で使った場合、電話のほかに「選択肢」という意味で用いることができます。たとえば、“It’s your call.”と言えば、「それはあなたの選択です」という意味になりますし、“good”や“bad”と合わせて、“good call”(良い選択肢)、“bad call”(悪い選択肢)といった使い方もできます。医療の現場では、しばしば難しい選択を迫られるシーンに出合います。たとえば、「治療法Aと治療法Bのどちらを選択するか」、「相反する2つの病態をどう治療していくか、そもそも治療をするのかしないのか」…。こういった場面で、「難しい選択です」と伝えたいとき、“tough”という形容詞と合わせて、“It is a tough call.”と表現することもできます。講師紹介

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第169回 4億6千万円の筋ジストロフィー遺伝子治療を米国が承認

4億6千万円の筋ジストロフィー遺伝子治療を米国が承認静注投与1回きりでその値段約4億6千万円(320万ドル)1)の筋ジストロフィー遺伝子治療を米国食品医薬品局(FDA)が承認しました2,3)。米国のバイオテクノロジー企業Sarepta Therapeutics社が開発し、4~5歳の歩けるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)小児に使うことが承認されました。商品名はELEVIDYS(delandistrogene moxeparvovec-rokl)です。DMDは筋肉が痩せ衰えていく難病で、筋肉細胞が正常でいられるようにするのを助ける蛋白質ジストロフィン(dystrophin)を失わせる遺伝子変異を原因とします。歩行や走ることが困難になる、よく転ぶようになる、疲労、学習障害/困難、心筋の支障による心臓の不調、肺機能を担う呼吸筋の衰えによる呼吸困難などの症状がジストロフィンの欠損のせいで生じます。DMDと関連する筋肉の衰えはたいてい3~6歳で見受けられるようになり、重症度や予後は一様ではありませんが、20~30歳代の若さで心臓や呼吸器の不全で命を落とすことが少なくありません。承認されたELEVIDYSはジストロフィンのいくつかの部分を寄せ集めた小振りなジストロフィン(shortened form of dystrophin)を作る遺伝子を筋肉細胞に届けてジストロフィン機能の不足を補います。ELEVIDYSが作る小振りなジストロフィンはその商品名を冠してElevidys micro-dystrophinと呼ばれます。4億円を優に超える値段であるからにELEVIDYSはDMD小児の気の持ちよう、身のこなし、移動の自由などをよほど改善することが確認済みなのかといえばそうではなく、患者を生きやすくしうるそのような臨床的有用性(clinical benefit)はまだ立証されていません。ではFDAは何をよりどころにしたかというとElevidys micro-dystrophin発現の様子です。4~5歳のDMD小児の骨格筋でのElevidys micro-dystrophin発現上昇が無作為化試験結果で裏付けられており、その年齢のDMD小児のElevidys micro-dystrophin発現上昇は臨床的有用性とどうやら結びつくとFDAは判断してELEVIDYSを取り急ぎ承認しました。承認申請に含まれる唯一の二重盲検無作為化試験の被験者全般の結果では運動機能の検査NSAA総点数の変化は残念ながらプラセボと有意差がつきませんでした。NSAAは立位、歩行、椅子や床から立ち上がること、片足立ち、段差の上り下り、仰向けから座った状態に移ること、跳躍、走ることなどの17項目を検査します。しかし4~5歳の被験者に限るとNSAA改善はプラセボをより上回っており、Elevidys micro-dystrophinの発現が多いこととNSAAの改善の関連を支持する結果が得られています4)。とはいえその結果はあらかじめ計画されていたわけではない後付(Post hoc)解析に基づくものです。よってせいぜいが仮説を生み出す試みに過ぎず解釈には注意を要するとの慎重な立場をFDAのスタッフは示しました。ところが、FDAの新薬承認審査部門を仕切るPeter Marks氏にとってその結果はもはや説得力十分(compelling)なものでした。4~5歳のDMD小児のElevidys micro-dystrophin発現上昇と予後がどうやら関連しうることがそのサブグループ解析で支持されており、総合的に見てELEVIDYSの取り急ぎの承認は妥当であると同氏は結論づけました5)。ELEVIDYSの予後改善効果を立証するための試験をFDAはSarepta社に課しており、EMBARKという名称のその試験6)はすでに進行中です。被験者組み入れはすでに目標数に達しており、結果は今年中に判明します。EMBARK試験の主要転帰は投与後1年(52週後)時点のNSAA総点数の変化です。NSAAは点数が大きいほど良好なことを意味し、最低は0点で最高は34点です。0点は17の検討項目のどれもできない最悪な状態、34点はどれも難なくこなせる最良の状態です。FDAはEMBARK試験の結果が判明したら急いで検討し、必要とあらば用途の変更や承認の取り消しなどの手段が講じられます。もしEMBARK試験が目標を達成したらELEVIDYSを年齢制限なく使えるようにするつもりだとFDAはSarepta社に先立って通知しており、来年早くにその用途拡大を実現させたいとSarepta社のかじ取り役のDoug Ingram氏は言っています7)。参考1)US FDA approves Sarepta's gene therapy for rare muscular dystrophy in some kids / Reuters2)FDA Approves First Gene Therapy for Treatment of Certain Patients with Duchenne Muscular Dystrophy / PRNewswire3)Sarepta Therapeutics Announces FDA Approval of ELEVIDYS, the First Gene Therapy to Treat Duchenne Muscular Dystrophy / BUSINESS WIRE4)FDA Briefing Document / FDA5)CENTER DIRECTOR DECISIONAL MEMO / FDA6)EMBARK試験(Clinical Trials.gov)7)Spotlight On: Elevidys eking past FDA for DMD is d?j? vu all over again for Sarepta / FirstWord

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僧帽弁形成術、小切開vs.胸骨正中切開/JAMA

 僧帽弁形成術において、術後12週時の身体機能の回復に関して、小開胸術の胸骨切開術に対する優越性は示されなかった。弁修復率および安全性については両手術で同等であることが確認された。英国・South Tees Hospitals NHS Foundation TrustのEnoch F. Akowuah氏らが、実用的多施設共同無作為化優越性試験の結果を報告した。変性による僧帽弁逆流を有する患者における、胸腔鏡下小開胸vs.胸骨正中切開の僧帽弁形成術の安全性と有効性は不明であった。JAMA誌2023年6月13日号掲載の報告。小開胸術と胸骨切開術に無作為化、術後12週時のSF-36身体機能スコアを比較 研究グループは、英国の3次医療機関10施設において、変性による僧帽弁逆流を有し僧帽弁形成術を受ける成人患者を、小開胸術群または胸骨切開術群に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。手術は専門医が行い、評価は割り付けを盲検化された独立した研究者が行った。 主要アウトカムは、術後12週時の身体機能およびそれに伴う日常活動への復帰で、SF-36身体機能スコアのTスコアのベースラインからの変化量として測定した。副次評価項目は、1年後までのSF-36身体機能スコア、6週時および12週時の手首装着型加速度計による身体活動および睡眠、12週後および1年後の経胸壁心エコーによる残存僧帽弁逆流、1年後までのEQ-5D-5Lで評価したQOLとした。また、安全性評価項目は、術後12週までの術後合併症、ならびに術後1年までの死亡、僧帽弁再手術および心不全による入院の複合とした。SF-36身体機能スコアの変化量に群間差なし 2016年11月~2021年1月に1,167例がスクリーニングを受け、330例が無作為化され(平均年齢67歳、女性100例[30%])、小開胸術群に166例、胸骨切開術群に164例が割り付けられた。このうち309例が手術を受け、294例で主要アウトカムに関するデータを得られた。 術後12週時のSF-36身体機能スコアのTスコアの変化量平均値は、小開胸術群7.62(95%信頼区間[CI]:5.49~9.78)、胸骨切開術群7.20(同:5.04~9.35)で、平均群間差は0.68(同:-1.89~3.26)であり、胸骨切開術に対する小開胸術の優越性は認められなかった。 残存僧帽弁逆流がない、または軽度の患者割合は、術後12週時で小開胸術群95%、胸骨切開術群96%と両群で類似しており、1年後では両群とも92%で群間差は認められなかった。 安全性については、術後1年時の複合アウトカムの発生は、小開胸術群5.4%(166例中9例)、胸骨切開術群6.1%(163例中10例)であった。 著者は、「今回の結果は、共同意思決定(shared decision-making)および治療ガイドラインへ、エビデンスのある情報を提供するものである」とまとめている。

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英語で「患者を椅子に座らせる」は?【1分★医療英語】第83回

第83回 英語で「患者を椅子に座らせる」は?Would you be able to get the patient up on the chair ?(患者さんを[ベッドから]椅子に座らせることはできますか?)Definitely.(もちろんです)《例文1》医師Let’s get the patient up and walking today.(今日は患者さんに立って歩いてもらいましょう)看護師Understood.(わかりました)《例文2》医師No worries. We will get you ready for the surgery.(手術に臨めるように手配します)患者Thank you so much.(ありがとうございます)《解説》この表現は、日々の診療の中で患者さんの状態について話すときに非常によく使われます。“get”の後に目的語である“the patient”(この患者さん)、その後に状態を表す形容詞や動名詞を続けることで、「この患者さんを~の状態にする」という意味になります。《例文》のように、治療の過程で状態変化を伴うときによく使われます。日常会話でも“get”の後にさまざまな名詞と形容詞を付けることでいろんな使い方ができます。たとえば、“get you dressed”だと「服を着てきなさい」という意味になります。非常に使いやすいのでぜひマスターしてください。講師紹介

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英語で「服用禁忌」は?【1分★医療英語】第82回

第82回 英語で「服用禁忌」は?Hi Dr. Smith, the patient has a history of angioedema and ACE are contraindicated.(スミス先生、患者さんは血管浮腫の病歴があるのでACE剤は服用禁忌です)Oh okay, let’s change the med then.(そうか、では、処方を変えましょう)《例文1》A bleeding disorder is a contraindication for taking aspirin.(出血性疾患はアスピリンの服用禁忌です)《例文2》Are steroids contraindicated in cancer?(ステロイドはがん患者に服用禁忌でしょうか?)《解説》薬剤を処方するときにお馴染みの「適応」という表現。英語では“indication”で表現します。これに「反対、逆」の接頭語である“contra”を付けた“contraindication”が「禁忌」という意味になります。形容詞的に“contraindicated”として使う場合もあります。米国の場合、添付文書に記載されている警告は3段階あります。注意warnings and precautions禁忌contraindications最大級の警告boxed warning(black box warning)“black box warning”とは文字どおり「黒枠で囲まれた警告」であり、添付文書の一番初めに強調して記載されている、特筆すべき警告です。ちなみに、添付文書は“package insert”といいます。これも文字どおりで、「パッケージに挿入(insert)されたもの」だからですね。医薬品情報収集はスピードが命。私も多岐にわたる医薬品情報については、スマホからでもすぐに見つけられるよう、普段から準備をしています。講師紹介

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