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APOC3遺伝子の突然変異、冠動脈疾患リスクの低下と関連/NEJM

 血漿トリグリセライド(TG)値の低下に、アポリポ蛋白C3(APOC3)をコードする遺伝子(APOC3遺伝子)の機能欠失型変異が関与しており、この突然変異のキャリアでは冠動脈疾患のリスクが低いことが明らかにされた。米国・マサチューセッツ総合病院のSekar Kathiresan氏らThe TG and HDL Working Group of the Exome Sequencing Project(米国立心臓・肺・血液研究所による)が報告した。これまでにTG値は遺伝性のもので、冠動脈疾患リスクと関連していることは判明していた。NEJM誌オンライン版2014年6月18日号掲載の報告より。3,734人、1万8,666個の遺伝子を解析 研究グループは、Exome Sequencing Projectの参加者でヨーロッパ系またはアフリカ系の3,734人、1万8,666個の遺伝子領域の蛋白コードを解析し、表現型に多大な影響を有するまれな突然変異の存在の特定と、その突然変異が血漿TG値に関与しているかを調べた。 また同関連が、冠動脈疾患リスクと関連しているかについて、11万970人を対象とした評価も行った。変異キャリアはノンキャリアと比べて冠動脈疾患リスクは40%低下APOC3 結果、APOC3遺伝子エンコードにおけるまれな突然変異の集積が、血中TG値の低下と関連していることが判明した。突然変異は4つが特定された。3つは機能欠失型変異で、1つはナンセンス変異(R19X)であり、残る2つはスプライス部位突然変異(IVS2+1G→AとIVS3+1G→T)であった。なおもう1つの突然変異は、ミスセンス変異(A43T)であった。 また、約150人に1人の割合で4つのうちの1つの突然変異を有するヘテロ接合キャリアが存在することが明らかになった。 キャリアのTG値は、ノンキャリアの人と比べて39%低く(p<1×10-20)、同様にAPOC3値は46%低かった(p=8×10-10)。 すべてのAPOC3変異キャリア(498人)は、ノンキャリア(11万472人)と比べて、冠動脈疾患リスクは40%低かった(オッズ比:0.60、95%信頼区間:0.47~0.75、p=4×10-6)。

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統合失調症患者の過度なカフェイン摂取、どう対処すべき

 先行研究において、統合失調症患者は一般集団よりもカフェイン摂取率が高いことが示されている。しかし質的研究は行われていなかったことから、オーストラリア・Neami NationalのLisa Thompson氏らは、統合失調症患者におけるカフェイン摂取の影響に関する検討を行った。その結果、個々のカフェイン摂取に対する信条や行動が明らかとなり、個々人へのアプローチが大切であることを報告した。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年4月16日号の掲載報告。統合失調症患者はカフェイン摂取をとても意味のある行動だと認識 研究グループは、統合失調症患者の暮らしにおいてどのようにカフェインを摂取し、また摂取にどのような意味付けをしているのかを、カフェイン摂取の習慣と関連している態度や信条をナラティブに分析して調べる質的研究を行った。検討は、Alcohol, Smoking and Substance Involvement Screening Tool(ASSIST)評価で、カフェイン使用の評価が「中程度」または「高度」のリスクカテゴリーに分類された個人を対象に行われた。20例に対して詳細な面接を行い、記録の写しを分析して、顕著な考え方を特定した。 統合失調症患者におけるカフェイン摂取の影響を検討した主な結果は以下のとおり。・以前の文献でも示されていたように、被験者である統合失調症患者のカフェイン摂取のきっかけは、主としてカフェインの刺激作用にあることが示された。被験者はまた、カフェイン摂取の重大な動機としては「依存」を認識していた。・カフェイン摂取に関連する被験者の行動は、過去の摂取経験によって強化されていることがうかがえた。・被験者が過去の摂取で覚醒やリラクゼーションといったプラスの効果を経験していると、摂取量は同程度また増加していた。・対照的に、マイナス効果を見込んでいる被験者は、カフェイン摂取のパターンを変える頻度が高かった。たとえば、カフェイン含有飲料を代用することでマイナスの副作用の経験を最小化したり、なくそうとしていた。・全体的に被験者は、カフェイン摂取をとても意味のある行動だと認識していた。すなわち、カフェイン摂取は、彼らにとって日々の生活の一部であり、社会との関わりを促進する機会であると認識していた。 以上から、著者は「個々の健康に関する信条と実際の有害リスクとの矛盾が、健康関連の行動に関連しており、精神疾患を診断された人への適切で効果的な健康プロモーション戦略の実施が、重大かつ継続した課題としてあることが提示された」と述べている。そのうえで、「精神疾患患者にかみあったサービスが価値あるものであり、個々の統合失調症患者におけるカフェイン関連健康リテラシー戦略の実行を検討し、過度なカフェイン摂取のリスクや、カフェインと抗精神病薬との相互作用に関して消費者教育を行うことが大切なことである」とまとめている。関連医療ニュース 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs.リスペリドン

 現在、抗精神病薬の社会的認知に及ぼす影響に関する研究は少なく、また社会的認知機能に対するアリピプラゾールの影響に関してもよくわかっていない。オランダ・ユトレヒト大学のArija Maat氏らは、アリピプラゾールおよびリスペリドンが統合失調症患者の社会認知、神経認知に及ぼす影響を検討した。European neuropsychopharmacology誌2014年4月号の報告。 DSM-IV-TRで統合失調症と診断された80例(年齢:16~50歳)を対象に、8週間の無作為化、非盲検、多施設共同研究を行った。対象患者のベースラインおよび8週時点で複数のコンピュータ・テストを行い、反応時間を含む社会認知および神経認知を測定した。社会的機能は、Social Functioning scale と Quality of Life scaleにより評価した。本研究は、2005年6月~2011年3月に実施された。 主な結果は以下のとおり。・社会認知および神経認知テストのスコアは両群ともに改善した。また、反応時間も同様であった。・社会的認知テストのスコアは両群間でほとんど違いがみられなかった。・アリピプラゾール群は「symbol substitution」の項目でより良い(より正確な)結果であった(p=0.003)。・アリピプラゾール群はリスペリドン群と比較し、「emotional working memory」、「working memory」の反応時間が優れていた(各々、p=0.006、p=0.023)。・これらのテストでの改善は社会的機能と相関していた。・アリピプラゾール、リスペリドンはどちらも社会認知テストのスコアを改善させた。とくに、アリピプラゾール群はリスペリドン群と比較し、処理速度に好影響をもたらし、これが社会的機能の改善と関連していると考えられる。・アリピプラゾールの認知に及ぼす長期的な影響について、さらなる検討が必要である。関連医療ニュース 統合失調症へのアリピプラゾール+リハビリ、認知機能に相乗効果:奈良県立医大 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学 統合失調症患者は処理速度が著しく低下、日本人でも明らかに:大阪大学

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統合失調症の認知機能改善に、神経ステロイド追加

 統合失調症治療に関して、認知機能障害をターゲットとしたさまざまな研究が行われている。イスラエル・Tirat Carmel Mental Health CenterのAnatoly Kreinin氏らは、最近発症した統合失調症(SZ)および統合失調感情障害(SA)における認知機能障害に対し、抗精神病薬に神経ステロイドであるプレグネノロン(PREG)を追加した場合の有用性を検討した。その結果、PREGの追加により視覚認知、注意集中欠如、実行機能などの改善が認められたことを報告した。Clinical Schizophrenia & Related Psychoses誌オンライン版2014年2月4日号の掲載報告。 研究グループは、DSM-IV分類でSZまたはSAと診断された外来および入院患者60例を対象に、2施設共同8週間二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。被験者には、抗精神病薬に加えてPREG 50mg/日またはプラセボを投与し、ベースライン時、治療4週時、8週時にコンピュータ上でケンブリッジ神経心理学テスト(CANTAB)を測定した。経過中の群間および群内比較はANOVAおよび対応のあるt検定またはz検定により行った。 主な結果は以下のとおり。・PREG追加群はプラセボ群に比べ、Matching to Sample Visual Search taskにより評価した視覚的注意欠陥を有意に軽減した(p=0.002)。エフェクトサイズは中等度であった(d=0.42)。・さらに、PREG追加群ではベースラインから試験終了時までの間に、視覚認知(p=0.008)、注意集中欠如(Rapid Visual Information Processing、p=0.038)、実行機能(Stockings of Cambridge、p=0.049/ Spatial Working Memory、p<0.001)において有意な改善が観察された。プラセボ群では観察されなかった(全項目p>0.05)。・このようなPREGによる有益な影響は、抗精神病薬の種類、性別、年齢、教育、罹病期間にかかわらず認められた。・以上を踏まえて著者は、「最近発症のSZ/SA例において、プレグネノロンの追加は注意欠陥を有意に改善した。より大きな統計学的有意差を検出し、確信を持って臨床に一般化させるには長期大規模研究が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症へのアリピプラゾール+リハビリ、認知機能に相乗効果:奈良県立医大 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学 認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるのか

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Postneoadjuvant treatment with zoledronate in patients with tumor residuals after anthracyclines-taxane-based chemotherapy for primary breast cancer - The phase III NATAN study (GBG 36/ABCSG XX) -- von Minckwitz G, et al.

術前化学療法後の腫瘍残存例に対するゾレドロン酸の効果 ほか1題ドイツからの報告である。術前化学療法後、腫瘍が残存した症例に対して、ゾレドロン酸使用群と観察群を無作為化割付し、プライマリーエンドポイントとして無再発生存率をみた。ゾレドロン酸(4mg静注)は最初の6回は4週間毎、次の8回は3ヵ月毎、その後の5回は6ヵ月毎に投与した。サンプルサイズは、無再発率が観察群58.0%、ゾレドロン酸群67.2%、α=0.05、β=0.20、脱落5%と仮定して、654例の患者数と316のイベントが必要とされた。最終的に693例がリクルートされ、ゾレドロン酸群343例、観察群350例であった。それぞれ65例、60例が5年未満の観察であり、まだ試験継続中である。エストロゲン受容体陽性(10%以上)は約79%、HER2陽性は約17%であった。結果として無再発生存率、全生存率ともにまったく有意差はなかった。ただし、閉経後では、ゾレドロン酸群で乳癌による死亡率は改善していた(HR=0.83、SE:0.06)。閉経後の定義の記載がなかったので、おそらく術前化学療法と手術後の割付時での評価だと考えられるが、どのように基準を設けていたかは不明である。最終結果はまだであるが、今後大きな変化はなさそうにみえる。次はビスフォスフォネート治療に関するメタ分析の報告であり、こちらがより重要である。Effect of bisphosphonate treatment on recurrence and cause-specific mortality in women with early breast cancer: A meta-analysis of individual patient data from randomized trials -- Coleman R , et al.2012年ASCOでもビスフォスフォネートの術後補助療法に関するメタ分析の結果が2演題報告されていたが、今回はEarly Breast Cancer Clinical Trials Collaborative Group(EBCTCG)'s Bisphosphonate Working Groupから一般演題で採用されていた。現在まで15年にわたり、ビスフォスフォネートの術後補助療法の臨床試験データが蓄積されてきた。これらの臨床試験から、ビスフォスフォネートは局所よりも遠隔転移を主に抑制し、骨転移に対して最大の効果が期待できそうである、女性ホルモン値の低い状況でのみ有効である、閉経前では非骨転移に対しては逆効果である可能性がある、といった仮説が予想される。そこで静注および経口ビスフォスフォネートとプラセボの無作為化比較試験からのデータを収集し、メタ分析を行った。プライマリーアウトカムは再発までの期間と遠隔再発までの期間、そして乳癌関連死である。あらかじめ計画されたサブグループ解析として、再発部位、初発遠隔再発部位(骨とそれ以外)、閉経状態、ビスフォスフォネートの種類、組織学的異型度、ビスフォスフォネートのスケジュール、年齢、エストロゲン受容体、リンパ節転移、ビスフォスフォネートの投与期間、化学療法の有無、各期間毎の再発率が検討された。全36試験(22,982例)のうち、22試験(17,791例、77%)でデータを収集できた。全再発率では有意差はなかったが(p=0.08)、遠隔転移ではビスフォスフォネート使用群で再発リスクが低かった(p=0.03)。遠隔転移のうち骨転移での再発率は有意差がみられたが(p=0.0009)、非骨転移では差がなかった(p=0.71)。局所再発、対側乳癌発生率も差はなかった。閉経後に限ってみると、遠隔転移による再発率(p=0.0003)と骨転移(p

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ステージ4乳がんの原発巣切除について

Surgical removal of primary tumor and axillary lymph nodes in women with metastatic breast cancer at first presentation: A randomized controlled trial -- Badwe R, et al. India転移性乳がんにおける原発巣切除の影響インドで行われた臨床試験である。従来より緩和のための外科治療としては潰瘍と出血のコントロールが挙げられる。動物実験では原発巣の切除は有害かもしれないというデータがある(Fisher B, et al. Cancer Res. 1989; 49: 1996-2001.)。一方で、最近の後ろ向きレビューでは、局所領域の治療が有効かもしれないことが示されている。本試験の目的は転移性乳癌において原発巣の切除が与える生存率への影響を評価することである。サンプルサイズはベースラインの中央生存期間が18ヵ月、生存期間の改善が6ヵ月とし、α=0.05、1-β=80%と仮定したとき、N=350が必要であると考えられた。転移性乳癌に対しアンスラサイクリン+/-タキサンを行ってCRまたはPRのとき無作為化割付を行い、局所領域治療を行う群と行わない群に割り付けた。無作為化は転移部位、転移個数、ホルモン受容体の有無で層別化した。350例のうち、手術群は173例で乳房部分切除術または乳房切除術を行い、卵巣切除を40例に行った。さらに放射線治療と内分泌療法を84例に行った。無手術群は177例で内分泌療法は96例に行い、卵巣切除は34例に行った。全生存率(中央観察期間の記載がないが5年は観察しているものと思われる)は、手術群(19.2%)、無手術群(20.5%)であり、有意差はなかった(p=0.79)。閉経状況、転移部位、ホルモン受容体の有無、HER2発現の有無でサブグループ解析を行ったが、いずれも差はみられなかった。遠隔転移の初回進行までの期間は手術群で有意に短かった(p=0.01)。以上から、局所領域治療は生存率への寄与はなく、転移性乳癌においてルーチンに行うことは控えるべきであり、局所コントロールと転移部の進行とのバランスの中で得失を考えながら行うべきと結んでいる。Early follow up of a randomized trial evaluating resection of the primary breast tumor in women presenting with de novo stage 4 breast cancer; Turkish Study (Protocol MF07-01) -- Soran A, et al.新規ステージ4乳がんにおける局所療法の評価(早期観察)トルコの臨床試験である。新規のステージ4乳癌における外科治療に関する試験のメタ分析では、外科治療を行ったほうが生存率は良好であったが、外科治療を行わなかったほうで予後不良因子が多い傾向がみられている(Harris E, et al. Ann Surg Oncol 2013; 20: 2828-2834)。すなわち選択バイアスがあるということである。本試験(MF07-01)の試験デザインとしては、新規のステージ4乳癌を全身治療群と初回局所治療(乳房+/-腋窩)+全身治療群に分け、プライマリーエンドポイントとして全生存期間、セカンダリーエンドポイントとして局所の無増悪生存期間、QOL、局所治療に伴う合併症を評価した。過去の後ろ向き研究から、3年生存率の違いが18%であることが想定され、脱落率は10%、α=0.05、β=0.9と仮定して、サンプルサイズは271例が必要であると考えられた。312例がリクルートされ、293例が適格であり、278例(局所治療群140例、全身治療のみ138例)が評価可能であった。局所治療は患者と医師の好み/癌の広がりによって乳房部分切除か乳房切除が選択され、腋窩リンパ節転移が臨床的/生検/センチネルリンパ節生検のいずれかで確認されたときには腋窩郭清が行われた。断端陰性であることが必要であり、乳房部分切除後は全乳房照射が行われ、乳房切除後は癌の進行度や施設の方針で照射が追加された。化学療法は、局所治療群ではその後に、全身治療群は割付後すぐに開始された。ホルモン受容体陽性のすべての患者は内分泌療法を受けた。C-erb-B2陽性(IHC3+ or FISH+)ではトラスツズマブが投与された。転移巣の局所治療(手術-放射線)は研究者の判断によって決められた。ビスフォスフォネートは治療する臨床医の判断によって使用された。全生存率は中央観察期間(局所治療群46ヵ月、全身治療群42ヵ月)において両群で有意差はなかった(HR=0.76、95%CI: 0.490~1.16、p=0.20)。ホルモン受容体別、HER2発現別、さらにトリプルネガティブに限ってみても差はなかった。年齢別、転移臓器1つのみ、骨転移のみに限っても差はなかったが、骨転移1ヵ所のみに限ると局所治療群のほうが有意に生存期間が長かった(p=0.02)。逆に多発肝転移/多発肺転移では局所治療群のほうが生存期間が短かい可能性がある。結論として、早期経過観察では全生存率に有意差はなく、さらに長期間の観察が必要である。サブグループの検討から、局所療法群は骨転移において生存期間が長い傾向かもしれない。とくに1つの骨転移でその傾向がより強い。55歳以下で生存期間を改善する可能性がある。進行の早いフェノタイプではベネフィットを得にくいようにみえる。多発肝転移/多発肺転移ではむしろ予後を有意に悪化させる可能性がある、ことが示唆された。TBCRC 013: A prospective analysis of the role of surgery in stage IV breast cancer -- King TA, et al.ステージ4乳がんにおける原発巣切除の役割(TBCRC 013)前向きの無作為化比較試験の結果が明らかになるまでの間、私たちはステージ4乳癌におけるマネージメントの前向きデータを集めることが求められた。TBCRC 013は、新規ステージ4乳癌の原発巣切除の役割を評価する多施設前向きレジストリー研究である。新規ステージ4乳癌をコホートA、原発巣術後3ヵ月以内に同定された転移性乳癌をコホートBとした。初回全身治療で効果があった場合には、外科治療について患者と話し合い決定され、無増悪生存期間、局所の緩和治療の必要性、生存期間が評価された。2009年7月から2012年4月までに14の施設から127例の患者がエントリーされた(コホートA:112例、コホートB:15例)。年齢中央値52歳、原発巣の腫瘍径中央値3.2cmであった。観察期間中央値は28ヵ月であった。多変量解析にて全生存期間は外科治療(p=0.01)、エストロゲン受容体陽性(p=0.01)、HER2陽性(p=0.01)で有意に予後良好であった。しかし、全身治療に反応した症例に限ると外科治療はもはや有意差はなかった。この結果は、初回またはセカンドライン以降の全身治療に反応せず、緩和的に外科治療を行った場合に予後改善効果がみられる、という解釈になると思われたのだが、その記載はなかった。いずれにしても症例数が少なく、外科治療の有効性を考えるには至らない研究であると考えられる。転移性乳癌における外科治療の役割については、以前にASCO 2012の報告で一度述べたが、それらはいずれも後ろ向きの研究結果である。今回のRCTの結果をみても、やはりやみくもに局所治療すべきはない。しかし、局所における癌の進行は患者のQOLを低下させるため、外科医と腫瘍内科がよく協議して、手術や放射線治療との組み合わせについて、そのタイミングを逸することなく、適応を考えていくべきであろう。本邦でも岡山大学の枝園忠彦先生が研究代表者として臨床試験(JCOG1017、PRIM-BC)が行われているので、それが完遂され、さらに有意義な結果が加わることを期待したい。

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認知症患者のニーズを引き出すアプリ:神奈川県立保健福祉大学

 認知症患者は進行に伴い、意思疎通が難しくなる。このような問題を解決するため、神奈川県立保健福祉大学の友利 幸之介氏らは、作業療法に当たっての作業選択意思決定支援ソフト「ADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice;エードック)」の活用基準を確定するため検討を行った。検討の結果、ADOCは中等度認知症患者における大切な作業を把握するのに役立つ可能性があることが示された。Disability and Rehabilitation : Assistive Technology誌オンライン版2013年12月24日号の掲載報告。 ADOCは、友利氏らが開発したiPadアプリケーションで、画面上でカードゲームをするように、日常生活上の作業が描かれた95枚のイラストを使って、患者自身が思う大切な作業とそうでない作業に振り分けてもらうことで意思を示してもらうというものである。 検討は、日本国内5つの医療施設から116例の患者を登録して行われた。作業療法士が認知症患者に、ADOCを用いてインタビューを行い、患者が思う大切な作業を確定した。主要介護者により、最も大切な作業を確定してもらい、Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いてカットオフ値を算出した。 主な結果は以下のとおり。・受信者動作特性曲線(ROC)分析の結果、ADOCを用いて大切な作業を選択可能なカットオフ値は、MMSEスコア8であることが示された。・感度は91.0%、特異度は74.1%であり、曲線下面積(AUC)値は0.89であった。・ADOCは、中等度認知症患者の大切な作業を引き出すのに役立つ可能がある。・また、ADOCのリハビリテーション的意義として次のような点を列挙した。■認知症が進行するにつれて、活動に関するニーズや要求を表明することは困難になっていく可能性がある。■iPadアプリ「ADOC」は、体系的な目標設定プロセスを通じて意思決定の共有促進に有用であり、MMSEスコア8以上の人において最も大切な作業を選択することが可能である。■ADOCは、中等度認知症患者の最も大切な作業を引き出すのに役立つ可能がある。関連医療ニュース 新たなアルツハイマー病薬へ、天然アルカロイドに脚光 認知症患者へタブレットPC導入、その影響は? てんかん治療で新たな展開、患者評価にクラウド活用

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「二次災害としての感染症」「東アジアで急増するエイズ」に関する講演会のご案内

 2014年1月12日(日)、順天堂大学大学院医学研究科 研究基盤センターの坪内 暁子氏らが、科学教育の一環として「二次災害としての感染症」「日本ほか、東アジアで急増するエイズ」について講演する。本講演は、高校生などの若年層を対象にしているが、教員、その他の方々の聴講も歓迎している。【講演会の概要】■場所:法政大学市ヶ谷キャンパス外濠校舎 薩埵ホール(6、7階)■日時:2014年1月12日(日)10:00~12:20(開場9:30) ポスター(PDF)●二次災害としての感染症 -知る!「体験」・「体感」する!「考え」る!- 坪内 暁子氏(順天堂大学大学院医学研究科 研究基盤センター 助教) 内藤 俊夫氏(順天堂大学大学院医学研究科 総合診療科学 先任准教授)14:00~17:20(開場 13:30) ポスター(PDF)●日本ほか、東アジアで急増するエイズ-HIV/AIDSの世界の流行状況と問題点- 坪内 暁子氏●HIV Prevention Strategies among Blood Donors in the Kingdom of Swaziland Hosea Sukati氏(スワジランド王国 衛生部国家輸血センター センター長)●Human Immunodeficiency Virus -Related Opportunistic Parasitic Infections in Taiwan- Chia-Kwung Fan氏(台湾 台北医学大学医学系 教授)●日本におけるHIV/AIDSの現状-誰もが知っておくべきこと- 内藤 俊夫氏■問い合わせ先 坪内 暁子 e-mail:akiko@juntendo.ac.jp TEL:03-3813-3111 内線3294

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Vol. 2 No. 1 これからの血管内治療(EVT)、そして薬物療法

中村 正人 氏東邦大学医療センター大橋病院循環器内科はじめに冠動脈インターベンションの歴史はデバイスの開発と経験の蓄積の反映であるが、末梢血管の血管内治療(endovascular treatment: EVT)も同じ道を歩んでいる。対象となる血管が異なるため、冠動脈とは解剖学的、生理学的な血管特性は異なるが、問題点を解決するための戦略の模索は極めて類似している。本稿では、末梢血管に対するインターベンションの現況を総括しながら、今後登場してくるnew deviceや末梢閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法について展望する。EVTの現況EVTの成績は治療部位によって大きく異なり、大動脈―腸骨動脈領域、大腿動脈領域、膝下血管病変の3区域に分割される。個々の領域における治療方針の指標としてはTASCIIが汎用されている。1.大動脈―大腿動脈 この領域の長期成績は良好である。TASCⅡにおけるC、Dは外科治療が優先される病変形態であるが、外科治療との比較検討試験で2次開存率は外科手術と同様の成績が得られることが示されている1)。解剖学的外科的バイパス術は侵襲性が高いこともあり、経験のある施設では腹部大動脈瘤の合併例、総大腿動脈まで連続する閉塞病変などを除き、複雑病変であってもEVTが優先されている(図1、2)。従って、完全閉塞性病変をいかに合併症なく初期成功を得るかが治療の鍵であり、いったん初期成績が得られると長期成績はある程度担保される。図1 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢画像を拡大するDistal bypass術により救肢を得た透析例が数年後、膝部の難治性潰瘍で来院。腸骨動脈から大腿動脈に及ぶ完全閉塞を認めた(a)。ガイドワイヤーは静脈bypass graftにクロスし(b)、腸骨動脈はステント留置、総大腿動脈はバルーンによる拡張術を行った。Distal bypass graftの開存(黒矢印)と大腿深動脈の血流(白矢印)が確認された(c)図2 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢(つづき)画像を拡大する2.大腿動脈領域 下肢の閉塞性動脈硬化症の中で最も治療対象となる頻度が高い領域である。このため、関心も高く、各種デバイスが考案されている。大腿動脈は運動によって複雑な影響を受けるため、EVTの成績は不良であると考えられてきた。しかし、ナイチノールステントが登場し、EVTの成績は大きく改善し適応は拡大した。EVTの成績を左右する最も強い因子は病変長であり、バルーンによる拡張術とステントの治療の比較検討試験の成績を鑑み、病変長によって治療戦略は大別することができる。(1)5cm未満の病変に対する治療ではバルーンによる拡張術とステント治療では開存性に差はなく、バルーンによる拡張を基本とし、不成功例にベイルアウトでステントを留置する。(2)病変長が5cm以上になると病変長が長いほどバルーンの成績は不良となるが、ステントを用いた拡張術では病変長によらず一定の成績が得られる。このためステントの治療を優先させる。(3)ステントによる治療も15cm以上になると成績が不良となりEVTの成績は外科的バイパス術に比し満足できるものではない2)。開存性に影響する他の因子には糖尿病、女性、透析例、distal run off、重症虚血肢、血管径などが挙げられる。また、ステント留置後の再狭窄パターンが2次開存率に影響することが報告されている3)。3.膝下動脈 この領域は、長期開存性が得難いため跛行肢は適応とはならない。現状、重症虚血肢のみが適応となる。本邦では、糖尿病、透析例が経年的に増加してきており、高齢化と相まって重症虚血肢の頻度は増加している。重症虚血肢の血管病変は複数の領域にわたり、完全閉塞病変、長区域の病変が複数併存する。本邦におけるOLIVE Registryでも浅大腿動脈(SFA)単独病変による重症虚血肢症は17%にとどまり、膝下レベルの血管病変が関与していた(本誌p.24図3を参照)4)。この領域はバルーンによる拡張術が基本であり、本邦では他のデバイスは承認されていない。治療戦略で考慮すべきポイントを示す。(1)in flowの血流改善を優先させる。(2)潰瘍部位支配血管すなわちangiosomeの概念に合わせて血流改善を図る。(3)末梢の血流改善を創傷部への血流像(blush score)、または皮膚灌流圧などで評価する。従来、straight lineの確保がEVTのエンドポイントであったが、さらに末梢below the ankleの治療が必要な症例が散見されるようになっている(図4)。創傷治癒とEVT後の血管開存性には解離があることが報告されているが5)、治癒を得るためには複数回の治療を要するのが現状である。この観点からもnew deviceが有用と期待されている。治癒後はフットケアなど再発予防管理が主体となる。図4 足背動脈の血行再建を行った後に切断を行った、重症虚血肢の高齢男性画像を拡大する画像を拡大する新たな展開薬剤溶出性ステントやdrug coated balloon(DCB)の展開に注目が集まっており、すでに承認されたものや承認に向け進行中のデバイスが目白押しである。いずれのデバイスも現在の問題点を解決または改善するためのものであり、治療戦略、適応を大きく変える可能性を秘めている。1.stent 従来のステントの問題点をクリアするため、柔軟性に富みステント断裂リスクが低いステントが開発されている。代表はLIFE STENTである。ステントはヘリカル構造であり、RESILIENT試験の3年後の成績を見ると、再血行再建回避率は75.5%と従来のステントに比し良好であった6)。リムス系の薬剤を用いた薬剤溶出性ステントの成績は通常のベアステントと差異を認めなかったが、パクリタキセル溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に良好であることが示されている7)。Zilver PTXの比較検討試験における病変長は平均7cm程度に限られていたが、実臨床のレジストリーでも再血行再建回避率は84.3%と比較検討試験と遜色ない成績が示されている8)。Zilver PTXは昨年に承認を得、市販後調査が進行中である。内腔がヘパリンコートされているePTFEによるカバードステントVIABAHNは柔軟性が向上し、蛇行領域をステントで横断が可能である。このため、関節区域や長区域の病変に有効と期待されている9)。これらのステントの成績により、大腿動脈領域治療の適応は大きく変化すると予想される。膝下の血管に対しては、薬剤溶出性ステントの有効性が報告されている10)。開存性の改善により、創傷治癒期間の短縮、再治療の必要性の減少が期待される。2.debulking device 各種デバイスが考案されている。本邦で使用できるものはないが、石灰化、ステント再狭窄、血栓性病変に対する治療成績を改善し、non stenting zoneにおける治療手段になり得るものと考えられている。3.drug coated balloon(DCB) パクリタキセルをコーティングしたバルーンであり、数種類が海外では販売されている。ステント再狭窄のみでなく、新規病変に対しバルーン拡張後に、またステント留置の前拡張に用いられる可能性がある。膝下の血管病変は血管径が小さく長区域の病変でステント治療に不向きである上に開存性が低いためDCBに大きな期待が寄せられている。このデバイスも開存性を向上させるデバイスである。成績次第ではEVTの主流になり得ると推測されている。4.re-entry device このデバイスは治療戦略を変える可能性を秘めている。現在、完全閉塞病変に対してはbi-directional approachが多用されているが、順行性アプローチのみで手技が完結できる可能性が高くなる。薬物療法の今後の展開薬物療法は心血管イベント防止のための全身管理と跛行に対する薬物療法に分類されるが、全身管理における治療が不十分であると指摘されている。また、至適な服薬治療が重要ポイントとなっている。1.治療が不十分である 本疾患の生命予後は不良であり、5年の死亡率は15~30%に及ぶと報告され、その75%は心血管死である。このことは全身管理の重要性を示唆している。しかし、2008年と2011年に、有効性が期待できるスタチン、抗血小板薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の投薬が、虚血性心疾患の症例に比し末梢動脈閉塞性症の症例では有意に低率であると米国から相次いで報告された11, 12)。この報告によると、虚血性心疾患を合併しているとわかっている末梢閉塞性動脈硬化症ではスタチンの無投薬率が42.5%であったのに対し、虚血の合併が不明の末梢閉塞性動脈硬化症では81.7%が無投薬であった12)。本邦においても同様の傾向と推察される。本疾患の無症候例も症候を有する症例と同様に生命予後が不良であるため、喫煙を含めた全身管理の重要性についての啓発が必要である。2.いかに管理すべきか? PADを対照に薬物療法による予後改善を検討した研究は少なくサブ解析が主体であるが、スタチンは26%、アスピリンは13%、クロピドグレルは28%、ACE阻害薬は33%リスクを軽減すると報告されている13)。さらに、これら有効性の高い薬剤を併用するとリスクがさらに低減されることも示されている12)。冠動脈プラークの退縮試験の成績は末梢閉塞性動脈硬化症を合併すると退縮率が不良であるが、厳格にLDLを70mg/dL以下に管理すると退縮が得られると報告されており14)、PADでは厳格な脂質管理が望ましい。 抗血小板薬に関しては、最近のメタ解析の結果によると、アスピリンは偽薬に比しPAD症例で有効性が認められなかった15)。一方、CAPRIE試験のサブ解析では、PAD症例に対しクロピドグレルはアスピリンに比しリスク軽減効果が高いことが示されている16)。今後、新たなチエノピリジン系薬剤も登場してくるが、これら新たな抗血小板薬のPADにおける有効性は明らかでなく、今後の検討課題である。また、本邦で実施されたJELIS試験のサブ解析では、PADにおけるn-3系脂肪酸の有効性が示されている17)。 このように、サブ解析では多くの薬剤が心血管事故防止における有効性が示唆されているが、単独試験で有効性が実証されたものはない。さらには、本邦における有効性の検証が必要になってこよう。3.再狭窄防止の薬物療法 シロスタゾールが大腿動脈領域における従来のステント留置例の治療成績を改善する。New deviceにおける有用性などが今後検証されていくことであろう。おわりにNew deviceでEVTの適応は大きく変わり、EVTの役割は今後ますます大きくなっていくものと推測される。一方、リスク因子に関しては、目標値のみでなくリスクの質的な管理が求められることになっていくであろう。文献1)Kashyap VS et al. The management of severe aortoiliac occlusive disease Endovascular therapy rivals open reconstruction. J Vasc Surg 2008; 48: 1451-1457.2)Soga Y et al. Utility of new classification based on clinical and lesional factors after self-expandable nitinol stenting in the superficial femoral artery. J Vasc Surg 2011; 54: 1058-1066.3)Tosaka A et al. Classification and clinical impact of restenosis after femoropopliteal stenting. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 16-23.4)Iida O et al. Endovascular Treatment for Infrainguinal Vessels in Patients with Critical Limb Ischemia: OLIVE Registry, a Prospective, Multicenter Study in Japan with 12-month Followup. Circulation Cardiovasc Interv 2013, in press.5)Romiti M et al. Mata-analysis of infrapopliteal angioplasty for chronic critical limb ischemia. J Vasc Surg 2008; 47: 975-981.6)Laird JR et al. Nitinol stent implantation vs balloon angioplasty for lesions in the superficial femoral and proximal popliteal arteries of patients with claudication: Three-year follow-up from RESILIENT randomized trial. J Endvasc Ther 2012; 19: 1-9.7)Dake MD et al. Paclitaxel-eluting stents show superiority to balloon angioplasty and bare metal stents in femoropopliteal disease. Twelve-month Zilver PTX Randomized study results. Circ Cardiovasc Interv 2011; 4: 495-504.8)Dake MD et al. Nitinol stents with polymer-free paclitaxel coating for lesions in the superficial femoral and popliteal arteries above the knee; Twelve month safety and effectiveness results from the Zilver PTX single-arm clinical study. J Endvasc Therapy 2011; 18: 613-623.9)Bosiers M et al. Randomized comparison of evelolimus-eluting versus bare-metal stents in patients with critical limb ischemia and infrapopliteal arterial occlusive disease. J Vasc Surg 2012; 55: 390-398.10)Saxon RR et al. Randomized, multicenter study comparing expanded polytetrafluoroethylene covered endoprosthesis placement with percutaneous transluminal angioplasty in the treatment of superficial femoral artery occlusive disease. J Vasc Interv Radiol 2008; 19: 823-832.11)Welten GMJM et al. Long-term prognosis of patients with peripheral artery disease. A comparison in patients with coronary artert disease. JACC 2008; 51: 1588-1596.12)Pande RL et al. Secondary prevention and mortality in peripheral artery disease: national health and nutrition exsamination study, 1999 to 2004. Circulation 2011; 124: 17-23.13)Sigvant B et al. Asymptomatic peripheral arterial disease; is pharmacological prevention of cardiovascular risk cost-effective? European J of cardiovasc prevent & rehabilitation 2011; 18: 254-261.14)Hussein AA et al. Peripheral arterial disease and progression atherosclerosis. J Am Coll Cardiol 2011; 57: 1220-1225.15)Berger JS et al. Aspirin for the prevention of cardiovascular events in patients with peripheral artery disease. A mata-analysis of randomized trials. JAMA 2009; 301: 1909-1919.16)CAPRIE Steering Committee. A randomized, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischemic events(CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.17)Ishikawa Y et al. Preventive effects of eicosapentaenoic acid on coronary artery disease in patients with peripheral artery disease-subanalysis of the JELIS trial-. Circ J 2010; 74: 1451-1457.

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最初の1年がピーク、抗精神病薬による体重増加と代謝異常

 抗精神薬に関連する代謝系の長期副作用に関するデータは不足している。英国・King's College LondonのRocio Perez-Iglesias氏らは、初回エピソード精神病患者を対象に、抗精神病薬投与後の体重増加および代謝異常の出現状況について検討した。その結果、最初の1年間に著しい体重増加が認められ、代謝に関しては総コレステロール、LDL-コレステロール、トリグリセリドなどの脂質異常を認めたことを報告した。結果を踏まえて著者は、「抗精神病薬投与後、最初の1年間は体重増加と代謝パラメータの変動に注意を要することが示唆された」と述べ、また「体重増加の経過を明らかにすることは、抗精神病薬に関連する代謝系有害事象の防止または軽減を目的とした研究における有用な情報となるであろう」とまとめている。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2013年10月8日号の掲載報告。 研究グループは、治療歴のない初回エピソード精神病患者を対象とした前向き長期試験は、抗精神病薬投与前の状況を把握でき、かつ交絡因子の影響が少ないという点で貴重な情報といえる、として本検討を行った。試験は、抗精神病薬投与開始後3年間における体重増加の経過および代謝異常の出現頻度を評価することを目的とした。初回エピソード精神病患者170例のコホートを、ハロペリドール群(32%)、オランザピン群(32%)、リスペリドン群(36%)に無作為化し、可変用量を投与した。初期治療は、臨床効果と忍容性を考慮し、必要に応じて変更された。 主な結果は以下のとおり。・3年時点における平均体重増加は12.1kg(SD:10.7)であった。・最初の1年間における体重増加が著しく(平均総体重増加量の85%)、その後は次第に安定した。・総コレステロール、LDL-コレステロールおよびトリグリセリド値は同様の推移を示し、最初の1年間においてのみ有意な増加がみられた。・血糖パラメータの有意な変化は認められなかった。・糖尿病の家族歴を有する2例で、2型糖尿病の発症がみられた。・短期評価において、体重増加と関連する因子は「BMI低値」「男性」「オランザピン投与」であった。・長期評価において、「機能的状態」と「臨床効果」が主要な予測因子であることが示された。関連医療ニュース 抗精神病薬性の糖尿病、その機序とは 若年発症統合失調症への第二世代抗精神病薬治療で留意すべき点 統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か

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重度ICU患者、せん妄期間と認知機能障害リスクは有意に関連/NEJM

 ICUの重症患者のうち7割以上が、入院中にせん妄を発症するリスクがあり、せん妄期間が長いほど長期の認知機能障害発症リスクが高いことが明らかになった。米国・ヴァンダービルト大学のPratik P. Pandharipande氏らが、800例超のICU重症患者を対象に行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2013年10月3日号で発表した。重症疾患から回復した人は、認知機能障害を発症することが多いものの、その特徴についてはあまり調査がされていなかったという。入院中のせん妄期間と、退院後3ヵ月、12ヵ月の認知・実行機能を評価 研究グループは、内科・外科系のICU患者で呼吸不全やショックを発症した成人821例について、入院中のせん妄と、退院後3ヵ月、12ヵ月時点での認知・実行機能について評価を行った。 同機能の評価については、神経心理検査RBANS とTrail Making Test (TMT ) Part Bを用いた。RBANS神経心理検査は、年齢補正後平均スコアを100(標準偏差:15)とし、スコアが低いほど全般的認知機能が低いと評価し、TMTは、年齢・性別・教育補正後平均スコアを50(標準偏差:10)とし、スコアが低いほど実行機能が低いと評価した。 入院中のせん妄持続期間、鎮静薬または鎮痛薬の服用と、アウトカムとの関連を分析した。退院3ヵ月後、軽度アルツハイマー病患者と同等以下の認知機能の人は26% 被験者821例のうち、ベースライン時に認知機能障害が認められたのは6%のみだった。入院中にせん妄を発症したのは74%だった。 退院後3ヵ月時点で、全般的認知機能スコアが中程度の外傷性脳損傷患者と同等以下(母平均より1.5標準偏差低いスコア)だった人の割合は、40%だった。さらに、軽度アルツハイマー病患者と同等以下(母平均より2標準偏差低いスコア)だった人の割合は、26%だった。 退院後12ヵ月時点でも、この状態は継続しており、それぞれの割合は34%、24%だった。また、こうした状態は若年、高齢患者ともに認められた。 入院中せん妄持続期間と退院後のアウトカムの関連についてみると、入院中せん妄期間が長いほど、退院後3ヵ月、12ヵ月後の全般的認知機能が有意に低く(それぞれp=0.001、p=0.04)、実行機能も有意に低かった(それぞれp=0.004、p=0.007)。 なお、鎮静薬や鎮痛薬の服用は、退院後3ヵ月、12ヵ月の認知機能障害とは関連していなかった。

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統合失調症の寛解予測因子は初発時の認知機能

 統合失調症では認知機能障害が一般的にみられる。しかし、初回エピソード患者におけるこれら障害の長期転帰の予測因子は不明であった。スウェーデン・ウプサラ大学のRobert Boden氏らは、初回エピソード統合失調症患者の5年後アウトカムの予測因子としての思考力の低下および認知機能障害について調べた。その結果、思考速度が社会性や症状寛解に関する長期転帰と関連していることを報告した。Nordic Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年9月20日号の掲載報告。 研究グループは、初回エピソード統合失調症と診断され、臨床的症状が安定した患者46例について、総合的認知機能(Synonyms, Reasoning, and Block Design:SRB)、思考速度(Trail Making Test:TMT、およびフィンガータッピング)、言語学習(Claeson-Dahl Verbal Learning Test)について評価した。また、5年後の転帰は、自立生活、職業的機能、社会性、症状寛解に関して評価した。 主な結果は以下のとおり。・思考速度の低下が、5年後の社会性の低下と関連していた。抗精神病薬使用で補正後のオッズ比(OR)は3.37(95%信頼区間[CI]:1.08~10.51)であった。・利き手ではない手のフィンガータッピングの成績が良好であることは、5年後の症状の非寛解リスク増大と関連していた(補正後OR:0.42、95%CI:0.19~0.96)。・職業的機能と自立生活は、評価したいずれのテストとも関連がみられなかった。関連医療ニュース 青年期統合失調症の早期寛解にアリピプラゾールは有用か? 初回エピソード統合失調症患者に対する薬物治療効果の予測因子は 維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か

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Vol. 1 No. 3 超高齢者の心房細動管理

小田倉 弘典 氏土橋内科医院1. はじめに本章で扱う「超高齢者」についての学会や行政上の明確な定義は現時点でない。老年医学の成書などを参考にすると「85歳以上または90歳以上から超高齢者と呼ぶ」ことが妥当であると思われる。2. 超高齢者の心房細動管理をする上で、まず押さえるべきこと筆者は、循環器専門医からプライマリーケア医に転身して8年になる。プライマリーケアの現場では、病院の循環器外来では決して遭うことのできないさまざまな高齢者を診ることが多い。患者の症状は全身の多岐にわたり、高齢者の場合、自覚・他覚とも症状の発現には個人差があり多様性が大きい。さらに高齢者では、複数の健康問題を併せ持ちそれらが複雑に関係しあっていることが多い。「心房細動は心臓だけを見ていてもダメ」とはよくいわれる言葉であるが、高齢者こそ、このような多様性と複雑性を踏まえた上での包括的な視点が求められる。では具体的にどのような視点を持てばよいのか?高齢者の多様性を理解する場合、「自立高齢者」「虚弱高齢者」「要介護高齢者」の3つに分けると、理解しやすい1)。自立高齢者とは、何らかの疾患を持っているが、壮年期とほぼ同様の生活を行える人たちを指す。虚弱高齢者(frail elderly)とは、要介護の状態ではないが、心身機能の低下や疾患のために日常生活の一部に介助を必要とする高齢者である。要介護高齢者とは、寝たきり・介護を要する認知症などのため、日常生活の一部に介護を必要とする高齢者を指す。自立高齢者においては、壮年者と同様に、予後とQOLの改善という視点から心房細動の適切な管理を行うべきである。しかし超高齢者の場合、虚弱高齢者または要介護高齢者がほとんどであり、むしろ生活機能やQOLの維持の視点を優先すべき例が多いであろう。しかしながら、実際には自立高齢者から虚弱高齢者への移行は緩徐に進行することが多く、その区別をつけることは困難な場合も多い。両者の錯綜する部分を明らかにし、高齢者の持つ複雑性を“見える化”する上で役に立つのが、高齢者総合的機能評価(compre-hensive geriatric assessment : CGA)2)である。CGAにはさまざまなものがあるが、当院では簡便さから日本老年医学会によるCGA7(本誌p20表1を参照)を用いてスクリーニングを行っている。このとき、高齢者に立ちはだかる代表的な問題であるgeriatric giant(老年医学の巨人)、すなわち転倒、うつ、物忘れ、尿失禁、移動困難などについて注意深く評価するようにしている。特に心房細動の場合は服薬管理が重要であり、うつや物忘れの評価は必須である。また転倒リスクの評価は抗凝固薬投与の意思決定や管理においても有用な情報となる。超高齢者においては、このように全身を包括的に評価し、構造的に把握することが、心房細動管理を成功に導く第一歩である。3. 超高齢者の心房細動の診断超高齢者は、自覚症状に乏しく心房細動に気づかないことも多い。毎月受診しているにもかかわらず、ずっと前から心房細動だったことに気づかず、脳塞栓症を発症してしまったケースを経験している医師も少なくないと思われる。最近発表された欧州心臓学会の心房細動管理ガイドライン3)では、「65歳以上の患者における時々の脈拍触診と、脈不整の場合それに続く心電図記録は、初回脳卒中に先立って心房細動を同定するので重要(推奨度Ⅰ/エビデンスレベルB)」であると強調されている。抗凝固療法も抗不整脈処方も、まず診断することから始まる。脈は3秒で測定可能である。「3秒で救える命がある」と考え、厭わずに脈を取ることを、まずお勧めしたい。4. 超高齢者の抗凝固療法抗凝固療法の意思決定は、以下の式(表)が成り立つ場合になされると考えられる。表 抗凝固療法における意思決定1)リスク/ベネフィットまずX、Yを知るにはクリニカルエビデンスを紐解く必要がある。抗凝固療法においては、塞栓予防のベネフィットが大きい場合ほど出血リスクも大きいというジレンマがあり、高齢者においては特に顕著である。また超高齢者を対象とした研究は大変少ない。デンマークの大規模コホート研究では、CHADS2スコアの各因子の中で、75歳以上が他の因子より著明に大きいことが示された(本誌p23図1を参照)4)。この研究は欧州心臓学会のガイドラインにも反映され、同学会で推奨しているCHA2DS2-VAScスコアでは75歳以上を2点と、他より重い危険因子として評価している。また75歳以上の973人(平均81歳)を対象としたBAFTA研究5)では、アスピリン群の年間塞栓率3.8%に比べ、ワルファリンが1.8%と有意に減少しており、出血率は同等で塞栓率を下回った。一方で人工弁、心筋梗塞後などの高齢者4,202人を対象とした研究6)では、80歳を超えた人のワルファリン投与による血栓塞栓症発症率は、60歳未満の2.7倍であったのに対し、出血率は2.9倍だった。スウェーデンの大規模研究7)では、抗凝固薬服用患者において出血率は年齢とともに増加したが、血栓塞栓率は変化がなかった。また80歳以上でCHADS2スコア1点以上の人を対象にしたワルファリンの出血リスクと忍容性の検討8)では、80歳未満の人に比べ、2.8倍の大出血を認め、CHADS2スコア3点以上の人でより高率であった。最近、80歳以上の非弁膜症性心房細動の人のみを対象とした前向きコホート研究9)が報告されたが、それによると平均年齢83~84歳、CHADS2スコア2.2~2.6点という高リスクな集団において、PT-INR2.0~3.0を目標としたワルファリン治療群は、非治療群に比べ塞栓症、死亡率ともに有意に減少し、大出血の出現に有意差はなかった。このように、高齢者では出血率が懸念される一方、抗凝固薬の有効性を示す報告もあり、判断に迷うところである。ひとつの判断材料として、出血を規定する因子がある。80歳以上の退院後の心房細動患者323人を29か月追跡した研究10)によると、出血を増加させる因子として、(1)抗凝固薬に対する不十分な教育(オッズ比8.8)(2)7種類以上の併用薬(オッズ比6.1)(3)INR3.0を超えた管理(オッズ比1.08)が挙げられた。ワルファリン服用下で頭蓋内出血を起こした症例と、各因子をマッチさせた対照とを比較した研究11)では、平均年齢75~78歳の心房細動例でINRを2.0~3.0にコントロールした群に比べ、3.5~3.9の値を示した群は頭蓋内出血が4.6倍であったが、2.0未満で管理した群では同等のリスクであった。さらにEPICA研究12)では、80歳以上のワルファリン患者(平均84歳、最高102歳)において、大出血率は1.87/100人年と、従来の報告よりかなり低いことが示された。この研究は、抗凝固療法専門クリニックに通院し、ワルファリンのtime to therapeutic range(TTR)が平均62%と良好な症例を対象としていることが注目される。ただし85歳以上の人は、それ以外に比べ1.3倍出血が多いことも指摘されている。HAS-BLEDスコア(本誌p24表3を参照)は、抗凝固療法下での大出血の予測スコアとして近年注目されており13)、同スコアが3点以上から出血が顕著に増加することが知られている。このようにINRを2.0~3.0に厳格に管理すること、出血リスクを適切に把握することがリスク/ベネフィットを考える上でポイントとなる。2)負担(Burden)超高齢者においては、上記のような抗凝固薬のリスクとベネフィット以外のγの要素、すなわち抗凝固薬を服薬する上で生じる各種の負担(=burden)を十分考慮する必要がある。(1)ワルファリンに対する感受性 高齢者ほどワルファリンの抗凝固作用に対する感受性が高いことはよく知られている。ワルファリン導入期における大出血を比べた研究8)では、80歳以上の例では、80歳未満に比べはるかに高い大出血率を認めている(本誌p25図2を参照)。また、高齢者ではワルファリン投与量の変更に伴うINRの変動が大きく、若年者に比べワルファリンの至適用量は少ないことが多い。前述のスウェーデンにおける大規模研究7)では、50歳代のワルファリン至適用量は5.6mg/日であったのに対し、80歳代は3.4mg/日、90歳代は3mg/日であった。(2)併用薬剤 ワルファリンは、各種併用薬剤の影響を大きく受けることが知られているが、その傾向は高齢者において特に顕著である。抗菌薬14)、抗血小板薬15)をワルファリンと併用した高齢者での出血リスク増加の報告もある。(3)転倒リスク 高齢者の転倒リスクは高く、転倒に伴う急性硬膜下血腫などへの懸念から、抗凝固薬投与を控える医師も多いかもしれない。しかし抗凝固療法中の高齢者における転倒と出血リスクの関係について述べた総説16)によると、転倒例と非転倒例で比較しても出血イベントに差がなかったとするコホート研究17)などの結果から、高齢者における転倒リスクはワルファリン開始の禁忌とはならないとしている。また最近の観察研究18)でも、転倒の高リスクを有する人は、低リスク例と比較して特に大出血が多くないことが報告された。エビデンスレベルはいずれも高くはないが、懸念されるほどのリスクはない可能性が示唆される。(4)服薬アドヒアランス ときに、INRが毎回のように目標域を逸脱する例を経験する。INRの変動を規定する因子として遺伝的要因、併用薬剤、食物などが挙げられるが、最も大きく影響するのは服薬アドヒアランスである。高齢者でINR変動の大きい人を診たら、まず服薬管理状況を詳しく問診すべきである。ワルファリン管理に影響する未知の因子を検討した報告19)では、認知機能低下、うつ気分、不適切な健康リテラシーが、ワルファリンによる出血リスクを増加させた。 はじめに述べたように、超高齢者では特にアドヒアランスを維持するにあたって、認知機能低下およびうつの有無と程度をしっかり把握する必要がある。その結果からアドヒアランスの低下が懸念される場合には、家族や他の医療スタッフなどと連携を密に取り、飲み忘れや過剰服薬をできる限り避けるような体制づくりをすべきである。また、認知機能低下のない場合の飲み忘れに関しては、抗凝固薬に対する重要性の認識が低いことが考えられる。服薬開始時に、抗凝固薬の必要性と不適切な服薬の危険性について、患者、家族、医療者間で共通認識をしっかり作っておくことが第一である。3)新規抗凝固薬新規抗凝固薬は、超高齢者に対する経験の蓄積がほとんどないため大規模試験のデータに頼らなければならない。RE-LY試験20)では平均年齢は63~64歳であり、75歳を超えるとダビガトランの塞栓症リスクはワルファリンと同等にもかかわらず、大出血リスクはむしろ増加傾向を認めた21)。一方、リバーロキサバンに関するROCKET-AF試験22)は、CHADS2スコア2点以上であるため、年齢の中央値は73歳であり、1/4が78歳以上であった。ただし超高齢者対象のサブ解析は明らかにされていない。4)まとめと推奨これまで見たように、80歳以上を対象にしたエビデンスは散見されるが85歳以上に関する情報は非常に少なく、一定のエビデンス、コンセンサスはない。筆者は開業後8年間、原則として虚弱高齢者にも抗凝固療法を施行し、85歳以上の方にも13例に新規導入と維持療法を行ってきたが、大出血は1例も経験していない。こうした経験や前述の知見を総合し、超高齢者における抗凝固療法に関しての私見をまとめておく。■自立高齢者では、壮年者と同じように抗凝固療法を適応する■虚弱高齢者でもなるべく抗凝固療法を考えるが、以下の点を考慮する現時点ではワルファリンを用いるINRの変動状況、服薬アドヒアランスを適切に把握し、INRの厳格な管理を心がける併用薬剤は可能な限り少なくする導入初期に、家族を交えた患者教育を行い、服薬の意義を十分理解してもらう導入初期は、通院を頻回にし、きめ細かいINR管理を行う転倒リスクも患者さんごとに、適切に把握するHAS-BLEDスコア3点以上の例は特に出血に注意し、場合により抗凝固療法は控える5. 超高齢者のリズムコントロールとレートコントロール超高齢者においては、発作性心房細動の症状が強く、直流除細動やカテーテルアブレーションを考慮する場合はほとんどない。また発作予防のための長期抗不整脈薬投与は、永続性心房細動が多い、薬物の催不整脈作用に対する感受性が強い、などの理由で勧められていない23)。したがって超高齢者においては、心拍数調節治療、いわゆるレートコントロールを第一に考えてよいと思われる。レートコントロールの目標については、近年RACEII試験24,25)において目標心拍数を110/分未満にした緩徐コントロール群と、80/分未満にした厳格コントロール群とで予後やQOLに差がないことが示され注目されている。同試験の対象は80歳以下であるが、薬剤の併用や高用量投与を避ける点から考えると、超高齢者にも適応して問題ないと思われる。レートコントロールに用いる薬剤としてはβ遮断薬、非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬のどちらも有効である。β遮断薬は、半減期が長い、COPD患者には慎重投与が必要である、などの理由から、超高齢者には半減期の短いベラパミルが使用されることが多い。使用に際しては、潜在化していた洞不全症候群、心不全が症候性になる可能性があるため、投与初期のホルター心電図等による心拍数確認や心不全徴候に十分注意する。6. 超高齢者の心房細動有病率米国の一般人口における有病率については、4つの疫学調査をまとめた報告26)によると、80歳以上では約10%とされており、85歳以上の人では男9.1%、女11.1%と報告されている27)。日本においては、日本循環器学会の2003年の健康診断症例による研究28)によると、80歳以上の有病率は男4.4%、女2.2%であった。また、2012年に報告された最新の久山町研究29)では、2007年時80歳以上の有病率は6.1%であった。今後高齢化に伴い、超高齢者の有病率は増加するものと思われる。7. おわりにこれまで見てきたように、超高齢者の心房細動管理に関してはエビデンスが非常に少なく、特に抗凝固療法においてはリスク、ベネフィットともに大きいというジレンマがある。一方、そうしたリスク、ベネフィット以外にさまざまな「負担」を加味し、包括的に状態を評価し意思決定につなげていく必要に迫られる。このような状況では、その意思決定に特有の「不確実性」がつきまとうことは避けられないことである。その際、「正しい意思決定」をすることよりももっと大切なことは、患者さん、家族、医療者間で、問題点、目標、それぞれの役割を明確にし、それを共有し合うこと。いわゆる信頼関係に基づいた共通基盤を構築すること1)であると考える。そしてそれこそが超高齢者医療の最終目標であると考える。文献1)井上真智子. 高齢者ケアにおける家庭医の役割. 新・総合診療医学(家庭医療学編) . 藤沼康樹編, カイ書林, 東京, 2012.2)鳥羽研二ら. 高齢者総合的機能評価簡易版CGA7の開発. 日本老年医学会雑誌2010; 41: 124.3)Camm J et al. 2012 focused update of the ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation.An update of the 2010 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation Developed withthe special contribution of the European Heart Rhythm Association. Eur Heart J 2012; doi: 10.1093/eurheartj/ehs253.4)Olesen JB et al. Validation of risk stratification schemes for predicting stroke and thromboembolism in patients with atrial fibrillation: nationwide cohort study. BMJ 2011; 342: d124. doi: 10.1136/bmj.d124.5)Mant JW et al. Protocol for Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged study(BAFTA): a randomised controlled trial of warfarin versus aspirin for stroke prevention in the management of atrial fibrillation in an elderly primary care population [ISRCTN89345269]. BMC Cardiovasc Disord 2003; 3: 9.6)Torn M et al. Risks of oral anticoagulant therapy with increasing age. Arch Intern Med 2005; 165(13): 1527-1532.7)Wieloch M et al. Anticoagulation control in Sweden: reports of time in therapeutic range, major bleeding, and thrombo-embolic complications from the national quality registry AuriculA. Eur Heart J 2011; 32(18): 2282-2289.8)Hylek EM et al. Major hemorrhage and tolerability of warfarin in the first year of therapy among elderly patients with atrial fibrillation. Circulation 2007; 115(21): 2689-2696.9)Ruiz Ortiz M et al. Outcomes and safety of antithrombotic treatment in patients aged 80 years or older with nonvalvular atrial fibrillation. Am J Cardol 2012: 107(10): 1489-1493.10)Kagansky N et al. Safety of anticoagulation therapy in well-informed older patients. Arch Intern Med 2004; 164(18): 2044-2050.11)Fang MC et al. Advanced age, anticoagulation intensity, and risk for intracranial hemorrhage among patients taking warfarin for atrial fibrillation. Ann Intern Med 2004; 141(10): 745- 752.12)Poli D et al. Bleeding risk in very old patients on vitamin K antagonist treatment. Results of a prospective collaborative study on elderly patients followed by Italian Centres for anticoagulation. Circulation 2011; 124(7): 824 -829.13)Lip GY et al. Comparative validation of a novel risk score for predicting bleeding risk in anticoagulated patients with atrial fibrillation. The HAS-BLED(Hypertension, Abnormal Renal/Liver Function, Stroke, Bleeding History or Predisposition, Labile INR, Elderly, Drugs/Alcohol Concomitantly) score. J Am Coll Cardiol 2011; 57(2): 173-180.14)Ellis RJ et al. Ciprofloxacin-warfarin coagulopathy: a case series. Am J Hematol 2000; 63(1): 28-31.15)DiMarco JP et al. Factors affecting bleeding risk during anticoagulant therapy in patients with atrial fibrillation: observations from the Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Rhythm Management(AFFIRM) study. Am Heart J 2005; 149(4): 650- 656.16)Sellers MB et al. Atrial fibrillation, anticoagulation, fall risk, and outcomes in elderly patients. Am Heart J 2011; 161(2): 241-246.17)Bond AJ et al. The risk of hemorrhagic complications in hospital in-patients who fall while receiving antithrombotic therapy. Thromb J 2005; 3(1): 1.18)Donze J et al. Risk of falls and major bleeds in patients on oral anticoagulation therapy. Am J Med 2012; 125(8): 773-778.19)Diug B et al. The unrecognized psychosocial factors contributing to bleeding risk in warfarin therapy. Stroke 2012; 42(10): 2866-2871.20)Connolly SJ et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361(12): 1139-1151.21)Eikelboom JW et al. Risk of bleeding with 2 doses of dabigatran compared with warfarin in older and younger patients with atrial fibrillation:An analysis of the Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulant Therapy(RE-LY) trial. Circulation 2011; 123(21) 2363-2372.22)Patel MR et al. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365(10): 883-891.23)The Task Force for the Management of Atrial Fibrillation of the European Society of Cardiology(ESC) . Eur Heart J 2010; 31(19): 2369-2429.24)Van Gelder IC et al. Lenient versus strict rate control in patients with atrial fibrillation. 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雇用不安は冠動脈疾患発症のリスク因子/BMJ

 雇用への不安の自覚と冠動脈疾患(CHD)の発症には緩やかであるが関連があることが、フィンランド・労働衛生研究所のMarianna Virtanen氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかにされた。同関連の一部は社会経済的状況が低いことに起因しており、著者は、「雇用不安を持つ人においては、好ましくないリスク因子である」と報告している。BMJ誌2013年オンライン版2013年8月8日号掲載の報告より。雇用不安レベルとCHD発症リスクの関係をメタ解析 雇用不安とCHD発症の関連を明らかにするため、共同コンソーシアムから得た個人データとシステマティックレビューで同定した公表済みの研究を合わせてメタ解析を行った。具体的には、Individual-Participant-Data Meta-analysis in Working Populations Consortiumに参加する13のコホート研究から個人データを入手し、Medline(2012年8月まで)とEmbaseデータベース(2012年10月まで)の検索および手動検索にて同定した4つの前向きコホート研究を組み込んだ。 レビューは、2人の独立したレビュアーがデータを抽出して行われ、雇用不安の自己申告レベルによるCHD発症(臨床的に確認)リスクの推定値を解析した。関連推定値はランダムエフェクトモデルを用いて入手した。雇用不安が高い人のCHDリスクは低い人の1.32倍 解析に組み込んだ13のコホート研究および4つの前向きコホート研究の参加者は合計17万4,438人であった。平均追跡期間は9.7年、その間に発症したCHDは1,892例だった。 解析の結果、高い雇用不安の人の年齢補正後リスクは、同低い人との比較で1.32(95%信頼区間1.09~1.59)だった。 なお、社会人口統計学的因子およびリスク因子で補正後、雇用不安の相対リスクは1.19(同1.00~1.42)だった。 上記の関連における有意差のエビデンスは、性別、年齢(50歳未満対50歳以上)、国の失業率、福祉制度、雇用不安基準では認められなかった。

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原発性骨髄線維症〔 primary myelofibrosis 〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis)は、造血幹細胞レベルで生じた遺伝子異常により骨髄で巨核球と顆粒球系細胞が増殖し、骨髄に広範な線維化を来す骨髄増殖性腫瘍である。本疾患は骨髄組織における異型性のある巨核球の過形成を伴う、広範かつ過剰な反応性の膠原線維の増生による造血巣の縮小と骨硬化、および脾腫を伴う著明な髄外造血を特徴とする。■ 疫学わが国における推定新規発症例は年間40~50例で、患者数は全国で約700人と推定される。本疾患は高齢者に多く、発症年齢中央値は65歳、男女比は1.96:1である。■ 病因原発性骨髄線維症の40~50%には、サイトカインのシグナル伝達に必須なチロシンキナーゼであるJAK2において、617番目のアミノ酸がバリンからフェニルアラニンへ置換(V617F)される遺伝子変異が生じ、JAK2の活性が恒常的に亢進する。その結果、巨核球が腫瘍性に増殖し、transforming growth factor-β(TGF-β)やosteoprotegerin(OPG)を過剰に産生・放出し、二次的な骨髄の線維化と骨硬化を生じるものと考えられる。JAK2以外には、c-MPL(トロンボポエチンのレセプター)に遺伝子変異を有する症例が5~8%存在し、ほかにはTET2、C-CBL、ASXL1、EZH2などの遺伝子変異が報告されている。■ 症状初発症状のうち最も多いのが動悸、息切れ、倦怠感などの貧血症状であり、40~60%に認められる。脾腫に伴う腹部膨満感、食欲不振、腹痛などの腹部症状を20~30%に認め、ときに臍下部まで達する巨脾を来すことがある。ほかには紫斑、歯肉出血などの出血傾向や、発熱、盗汗、体重減少が初発症状になりうる。一方、20~30%の症例は診断時に無症状であり、健康診断における血液検査値異常や脾腫などで発見される。■ 分類骨髄線維症は骨髄に広範な線維化を来す疾患の総称であり、骨髄増殖性腫瘍に分類される原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis)と、基礎疾患に続発する二次性骨髄線維症(secondary myelofibrosis)に分けられる。二次性骨髄線維症は、骨髄異形成症候群、真性多血症、原発性血小板血症などの血液疾患に続発することが多く、ほかには固形腫瘍、結核などの感染症、SLEや強皮症などの膠原病に続発することもある。本稿では原発性骨髄線維症を中心に述べる。■ 予後わが国での原発性骨髄線維症466例(1999~2009年)の後方視的な検討では、5年生存率38%、平均生存期間は3.4年である。しかし、原発性骨髄線維症の臨床経過は均一ではなく、症例間によるばらつきが大きい。わが国での主な死因は、感染症27%、出血6%、白血化15%である。2008年にInternational Working Group for Myelofibrosis Research and Treatmentから発表された予後不良因子と、後方視的に集積したわが国での70歳以下の症例を用いた特発性造血障害に関する調査研究班(谷本ほか)による解析を表1に示す1,2)。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)増殖した巨核球や単球から産生される種々のサイトカインが骨髄間質細胞に作用し、骨髄の線維化、血管新生および骨硬化、髄外造血による巨脾、無効造血、末梢血での涙滴状赤血球(tear drop erythrocyte)の出現、白赤芽球症(leukoerythroblastosis)などの特徴的な臨床症状を呈する。骨髄穿刺の際、骨髄液が吸引できないことが多く(dry tap)、このため骨髄生検が必須であり、HE染色にて膠原線維の増生を、あるいは鍍銀染色にて細網線維の増生を証明する。2008年のWHO診断基準を表2に示す。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)低リスク群は支持療法のみでも長期の生存が期待できるために、無症状であればwatchful waitingの方針が望ましい。中間群および高リスク群では、適切なドナーが存在する場合には、診断後早期の同種造血幹細胞移植を念頭に治療にあたる。■ 薬物療法症状を有する低リスク群、移植適応のない中間群および高リスク群では、貧血や脾腫の改善などの症状緩和を期待して薬物療法を選択する。蛋白同化ホルモンであるダナゾール(商品名: ボンゾール:600mg/日)や酢酸メテノロン(同: プリモボラン:0.25~0.5mg/kg/日)は、30~40%の症例で貧血改善に有効である。少量メルファラン(同:アルケラン、1日量2.5mg、週3回投与)、サリドマイド(同:サレド、50mg/日)+プレドニゾロン(0.5mg/kg/日)、レナリドミド(同:レブラミド、5~10mg/日、21日間投与、7日間休薬)+プレドニゾロン(15~30mg/日)は、貧血、血小板減少、脾腫の改善効果が報告されている(保険適用外)。■ 脾臓への放射線照射・脾臓摘出脾腫に伴う腹部症状の改善を目的に脾臓への放射線照射を行うと、93.9%に脾腫の縮小が認められ、その効果は平均6ヵ月(1~41ヵ月)持続した。主な副作用は血球減少であり、23例中10例(43.5%)に出現した。脾摘に関しては、脾腫による腹部症状の改善や貧血に対し効果が認められているが、周術期の死亡率が9%と高く、合併症も31%に生じていることから、適応は慎重に判断すべきである。■ 同種造血幹細胞移植原発性骨髄線維症は薬物療法による治癒は困難であり、同種造血幹細胞移植が唯一の治癒的治療法である。しかし、移植関連死亡率は27~43%と高く、それに伴い全生存率は30~40%前後にとどまっている。治療関連毒性がより少ない骨髄非破壊的幹細胞移植(ミニ移植)は、いまだ少数例の検討しかなされておらず長期予後も不明ではあるが、移植後1年の治療関連死亡は約20%、予測5年全生存率も67%であり、期待できる成績が得られている。現時点では、骨髄破壊的前治療と骨髄非破壊的前治療のどちらを選択すべきかの結論は出ておらず、今後の検討課題である。4 今後の展望今後、わが国での臨床試験を経て実地医療として期待される治療としては、pomalidomide、JAK2阻害薬などがある。新規のサリドマイド誘導体であるpomalidomideの第II相試験が行われており、pomalidomide(0.5mg/日)+プレドニゾロン投与により、22例中8例(36%)に貧血の改善がみられた。現在開発中のJAK2阻害薬であるINCB018424(Ruxolitinib)は、腫瘍クローンの著明な減少・消失は来さないものの、脾腫の改善、骨髄線維症に伴う自覚症状の改善がみられている。ただし、生命予後の改善効果の有無は、今後の検討課題である。わが国での臨床試験が待たれる薬剤として、ほかにはCEP-701(Lestautinib)、TG101209などがある。5 主たる診療科血液内科、あるいは血液・腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)特発性造血障害調査に関する調査研究班(診療の参照ガイドがダウンロードできる)1)Cervantes F, et al. Blood. 2009; 113: 2895-2901.2)Okamura T, et al. Int J Hematol. 2001; 73: 194-198.

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【ご案内】レジデントメディカルラリーに挑戦しませんか? 目指せ『King of Residents』!

 今年10月13日(日)、第17回へき地離島救急医療学会主催で『レジデントメディカルラリー』が開催されます。当日の研修医の先生方の参加を募集いたします(受付期間:8月5日まで)。■メディカルラリーとは? 医師、看護師、救急救命士がチームを組み、模擬患者を時間内にどれだけ的確に治療できるか競う競技会です。今回のメディカルラリーは、全国初の研修医だけを対象としたメディカルラリーです。日々の研修で学んだ力を存分に発揮し、目の前の患者を救命する達成感を味わってください。 全国の研修病院から集まった初期研修医たちがライバルです。予選と決勝戦を勝ち抜き、『King of Residents』を目指してください。■レジデントメディカルラリーの内容(予定)<予選>メディカルラリー本選に先立ち、臨床研修において十分な経験が求められる知識や技能を試す予選競技会を行い、予選の結果をもとに本選出場チームを10チーム選抜します。1)メディカルラリー 基本シナリオ  実際の救急現場を想定した模擬診察による診断、治療の的確さを競います。2)救急知識クイズ  医学知識、特に救急関連の知識を競います。3)救急実技タイムレース  救急で必要とされる手技、実技の正確性、スピードを競います。<本選>メディカルラリー本選では、予選を勝ち抜いた10チームが、現実の場面を想定したシナリオと現場設定のもとで模擬患者に対して診療を行い、制限時間内にどれだけ的確な治療ができるかを競います。■募集要項対象:初期臨床研修中の医師(卒後1〜2年目)日程:10月12日(土)19時より、グランドサンピア八戸にて競技説明会(出席必須)・競技ルールの説明、懇親会を行います。・後期研修プレゼンテーションも受付けます。・競技者はグランドサンピア八戸に宿泊して頂きます。10月13日(日) 9時より競技開始!・午前中に予選を行い、成績順に10チームが選抜されます。・午後にかけて、予選を勝ち抜いた10チームが本選ラリーに挑戦!・15時より表彰式を行い、15時20分には解散とします。場所:八戸市立市民病院および周辺人数:臨床研修医3名1チームにて募集(最大40チーム)   参加チームは原則として同一施設の研修医のみとする。   複数施設の混成チームも参加可能だが、本選の表彰対象外とする(得点は発表する)。費用:1名18,000円募集受付期間:2013年7月5日~8月5日詳細・申し込みはこちらから>>> http://irakuza.carenet.com/medicalrally/※ケアネットは、本企画にサイト運営・撮影・編集・配信において支援しています。

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SSRIは月経前症候群の治療に有用か?

 ニュージーランド・オークランド大学のJane Marjoribanks氏らは、月経前症候群(PMS)に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の有効性と安全性を評価するため、これまでに実施された臨床試験をもとにレビューを行った。その結果、SSRIは服用方法にかかわらずPMSの症状軽減に有効であるが、用量依存的に有害事象が比較的高頻度に発現することを報告した。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年6月7日掲載の報告。 月経前症候群(PMS)は、出産可能年齢の女性においてしばしば身体的、精神的および社会的問題をもたらす一般的な要因となる。PMSの主な特徴は症状がみられるタイミングで、それは月経前2週間すなわち黄体期においてのみ生ずることである。 PMS治療のファーストラインとしてSSRIの使用機会が増えており、黄体期のみもしくは継続的(連日)に使用される。SSRIは一般に月経前症状の軽減に有効だと考えられているが、有害事象を惹起しうる。そこで、PMSの治療としてSSRIの有効性と安全性を評価することを目的にレビューを行った。Cochrane Library、MEDLINE、EMBASEなどをデータソースに、2013年2月時点において関連する無作為化比較試験(RCT)の検索を行った。報告内に不十分なデータがみられた際、詳細を確認するため原著者との連絡を試みた。プロスペクティブにPMSと診断され月経前不快気分障害(PMDD)または後期黄体期不快気分障害(LPDD)を呈する被験者が、SSRIまたはプラセボ群に無作為化された試験を選択した。 2名のレビュワーが自由に試験を選び、バイアスのリスクが適格とされる試験について評価を行い、月経前症状と有害事象のデータを抽出した。ランダム効果モデルを用いて試験を集積した。連続データ(最終スコアおよびスコアの変化)に対する別の解析により、月経前症状スコアにおける標準化平均差(SMD)と95%信頼区間(CI)を算出した。2つのアウトカムについてオッズ比(OR)と95%CIを算出した。薬剤の服用方法(黄体期のみまたは連日)、投与量(低、中、高)により層別解析を行った。何人に中用量のSSRIを投与すれば1件の有害事象が発現するのか、その人数を算出した(number needed to harm:NNH)。主要な知見に対する全体的なエビデンスの質は、GRADE working group methodsにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・31件のRCTについてレビューを行った。それらRCTでは、フルオキセチン(本邦未承認)、パロキセチン(商品名:パキシル)、セルトラリン(同:ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(同:レクサプロ)、シタロプラム(国内未承認)などとプラセボとの比較が行われていた。・SSRIはプラセボに比べ、自己評価による症状を有意に軽減させた。・最終スコアを報告している試験集団において、エフェクトサイズは中程度であった[中用量のSSRI、SMD:-0.65、95%CI:-0.46~-0.84、9試験、女性1,276例、不均質性は中(I2=58%)、エビデンスの質は低]。・スコア変化について報告している試験集団において、エフェクトサイズは小さかった[中用量のSSRI、SMD:-0.36、95%CI:-0.20~-0.51、4試験、女性657例、不均質性は低(I2=29%)、エビデンスの質は中]。・SSRIは、黄体期のみの使用あるいは連日使用のいずれにおいても症状の軽減に効果的で、これら服用方法による明らかな有効性の相違はみられなかった。しかし、黄体期のみの使用と連日使用のレジメンを直接比較した試験はほとんどないため、これに関する結論を得るにはさらなるエビデンスが必要である。・有害事象による脱落は、SSRI群で有意に多い傾向にあった[中用量、OR:2.55、95%CI:1.84~3.53、15試験、女性2,447例、不均質性なし(I2=0%)、エビデンスの質は中]。・中用量のSSRIに関連する主な副作用は、悪心(NNH=7)、無力症または活力減退(NNH=9)、傾眠(NNH=13)、疲労(NNH=14)、性欲減退(NNH=14)および発汗(NNH=14)であった。・二次解析において、SSRIは、精神的、身体的および機能的症状ならびにイライラ感などの特別な症状に有効であった。なお、有害な影響は用量依存性にみられた。・全体的に、各種試験の方法論に関する報告が不十分であったことを主因に、エビデンスの質は低~中程度であった。また、不均質性は初回解析の一つは中程度であったが、大半のアウトカムについては低い、あるいは認められなかった。・以上より、SSRIは服用方法にかかわらずPMSの症状軽減に有効であることが明らかとなった。ただし、用量依存性に有害事象が発現し、比較的高頻度であることに注意が必要である。関連医療ニュース 日本語版・産後うつ病予測尺度「PDPI-R-J」を開発 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学 抗精神病薬によるプロラクチン濃度上昇と関連する鉄欠乏状態

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脳卒中患者の下肢への間欠的空気圧迫法、DVTリスクを低減/Lancet

 脳卒中により自力歩行が困難な患者において、下肢への間欠的空気圧迫法(intermittent pneumatic compression:IPC)は深部静脈血栓症(DVT)のリスクを有意に抑制し、生存率を改善する可能性もあることが、英国・エジンバラ大学のMartin Dennis氏らが行ったCLOTS 3試験で示された(http://www.dcn.ed.ac.uk/clots/)。脳卒中などで入院した患者に高頻度にみられる静脈血栓塞栓症(VTE)は、回避可能な死因、併存症と考えられている。外科手術を受けた患者ではIPCにより下肢を連続的に圧迫することでDVTのリスクが低下することが知られているが、脳卒中患者に対する効果を示す信頼性の高いエビデンスはこれまでなかったという。本研究は2013年5月31日に欧州脳卒中学会(ESC、ロンドン市)で報告され、同日付けLancet誌オンライン版に掲載された。DVTリスク低減効果を無作為化試験で評価 CLOTS(Clots in Legs Or sTockings after Stroke)3試験は、脳卒中患者におけるIPCのDVTリスク低減効果を評価する多施設共同無作為化試験。急性脳卒中で入院後3日以内の、自力では動けない(介助なしではトイレに行けない)患者を対象とした。 これらの患者がIPC(両下肢)を施行する群または非IPC群に無作為に割り付けられ、7~10日および25~30日に圧迫duplex超音波検査(CDU)によるDVTの評価が行われた。6ヵ月間のフォローアップを行い、生存および症候性VTEの発現状況について検討した。 画像診断医やCDU技師には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は30日までにCDUで検出された近位静脈のDVTまたは画像検査で確認された近位静脈の症候性DVTとした。DVTリスクを35%抑制、とくに出血性脳卒中で高い効果 2008年12月8日~2012年9月6日までに英国の94施設から2,876例が登録され、IPC群に1,438例(年齢中央値76歳、男性48%)が、非IPC群にも1,438例(77歳、48%)が割り付けられた。 主要評価項目の発現率はIPC群が8.5%(122/1,438例)、非IPC群は12.1%(174/1,438例)であり、IPCによる絶対リスク減少率(ARR)は3.6%(95%信頼区間[CI]:1.4~5.8)であった。 主要評価項目到達前に死亡した323例およびCDUを受けなかった41例を除外した場合の主要評価項目の発現率は、IPC群9.6%(122/1,267例)、非IPC群14.0%(174/1,245例)であり、調整オッズ比(OR)は0.65(95%CI:0.51~0.84、p=0.001)と有意差が認められた。 30日死亡率はIPC群が10.8%(156例)と、非IPC群の13.1%(189例)に比べ良好な傾向が認められた(OR:0.80、95%CI:0.63~1.01、p=0.057)。 下肢の皮膚損傷がIPC群の3.1%(44例)にみられ、非IPC群の1.4%(20例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.002)が、負傷を伴う転倒はそれぞれ2.3%(33例)、1.7%(24例)と両群間に差を認めなかった(p=0.221)。 著者は、「IPCは、運動能が低下した脳卒中患者におけるDVTリスクの低減に有効な方法であり、生存率を改善する可能性も示唆される」と結論し、「とくに出血性脳卒中患者に対する高い効果は注目に値する(OR:0.36、95%CI:0.17~0.75)。また、IPCはDVTリスクの高い他の疾患にも有効な可能性がある」と指摘している。

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薬物依存合併の初発統合失調症患者、精神症状の程度に違いがあるか?

 ドイツ・ゲオルク・アウグスト大学のT. Wobrock氏らは、初発統合失調症患者において、薬物使用障害(薬物乱用または依存:SUD)合併の有無による精神病理および神経認知機能に及ぼす影響を検討した。その結果、統合失調症患者のSUD合併例と非合併例の、精神薬理および神経精神機能は同様であることを報告した。先行研究およびメタ解析では、コントラバーシャルな結果が示されており、大半の研究は母集団が小さく、かつ初発統合失調症患者のみに焦点をあてたものではなかった。Schizophrenia Research誌オンライン版2013年3月25日号の掲載報告。 研究グループは、European First Episode Schizophrenia Trial(EUFEST)の事後解析を行い、SUD合併患者(初発統合失調症-SUDあり119例:内訳はベースライン時にSUDあり88例、SUDの既往31例)と、SUD非合併患者(初発統合失調症-SUDなし204例)のベースラインおよび観察期間6ヵ月における精神薬理と認知行動を比較検討した。神経認知機能は、Rey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)、Trail Making Tests A and B (TMT)、Purdue Pegboard and Digit-Symbol Codingにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者の31.1%がSUDを合併しており、22.2%が大麻を使用していた。・SUD合併患者と非合併患者の間で、PANSSスコア、錐体外路症状、神経認知機能において有意な差は認められなかった。ただし、観察期間6ヵ月時、SUD合併患者では精神運動速度に関してより良好な状況がみられた(TMT-A、p=0.033、Cohen's d=0.26)。・興味深いことに、観察時点で薬物使用中のSUD患者は、使用を控えている患者と比べて、陽性症状の増加がみられた(PANSS陽性スコア、p=0.008、Cohen's d=0.84)。・16歳以前にSUDを発症した患者では、ベースラインのPANSSスコアが高かった。・さらに、大麻を高頻度に使用している患者において、症状改善の減少および錐体外路症状との関連だけでなく、大麻の使用期間が長いほど認知機能が高いという関連が示された。関連医療ニュース ・統合失調症患者とタバコ、どのような影響を及ぼすのか? ・薬剤誘発性高プロラクチン血症への対処は? ・統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例解説

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症腰椎圧迫骨折の急性期に、NSAIDs抵抗性の侵害受容性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を段階的に導入して十分な鎮痛効果が得られ、痛みの緩和だけでなくADLの改善が達成された症例である。高齢者の腰椎圧迫骨折後の5年生存率は30%との報告(Lau E, et al. J Bone Joint Surg Am. 2008; 90: 1479-1486)もあり、腰椎圧迫骨折による疼痛(とくに体動時痛)→安静臥床の遷延→廃用症候群→寝たきり→誤嚥性肺炎→生命危機という経過が考えられる。オピオイド鎮痛薬は最も強力な鎮痛薬であることから、痛みの程度に応じて使用しADLを改善することはきわめて重要な意義を持つ。さらに、オピオイド鎮痛薬の導入にあたっては嘔気や便秘といった副作用対策も予防的に行われており、患者のオピオイド鎮痛薬に対する忍容性も達成されていた。本症例のように腰椎圧迫骨折後に痛みが遷延することは決して珍しくはない。しかしながら、このような遷延する痛みが骨折に伴う侵害受容性疼痛だといえるだろうか。言い換えると、「遷延する痛みが器質的な原因の結果として妥当であるか否か」ということだが、これは必ずしも明確に妥当であるとは言えないことが多い。確かに、本症例では、通常組織傷害が治癒すると考えられる3ヵ月を経過しても、体動とは無関係な持続痛が徐々に増悪・拡大しており、当初の腰椎圧迫骨折だけが痛みの原因とは考えにくい。したがって、われわれは非特異的腰痛症と診断した。このような症例に対して、オピオイド鎮痛薬の効果が明確では無いにもかかわらず、オピオイド鎮痛薬をやみくもに漸増し、さらに頓用薬を併用していたことは不適切であるといわざるを得ない。オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、1. Analgesia (オピオイド鎮痛薬を適切に使用し痛みを緩和させること)、2. Activities of daily living(オピオイド鎮痛薬の使用はADLを改善するためであることを医師が理解し患者に教育すること)、3. Adverse effects(オピオイド鎮痛薬による副作用対策を十分に実施すること)、4. Aberrant drug taking behavior(精神依存や濫用を含む不適切な使用を常に評価し、患者教育を行うこと)の頭文字をとって4Asという注意事項が知られている。本症例は急性期のAnalgesiaとAdverse effectsへの対処は適切であったと考えられるが、腰椎圧迫骨折から3ヵ月が経過した慢性期での対応については検討の余地がある。日本ペインクリニック学会が発行した「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」では、オピオイド鎮痛薬の使用目的として、痛みを単に緩和するだけでなくADLを改善するために使用することを推奨している。したがって、組織修復(骨癒合)がある程度進んだであろう時期には、痛みが残存している状況でもオピオイド鎮痛薬を増加させずに運動療法の導入やADL改善の意義について教育すべきであったと考えられる。このことは、慢性腰痛に対して長期安静がred flagとして認識されていることと同義である。よって本症例で慢性期に痛みが残存しておりオピオイド鎮痛薬を増量しても痛みが緩和しないことから、医師が安静を指示していたことは適切であるとは言い難い。また、器質的障害による疼痛(侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛)に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合には精神依存や濫用を引き起こしにくいことが基礎研究によって示されているが、この知見は言い換えるとオピオイド鎮痛薬を非器質的な疼痛に対して使用する場合には精神依存を防止し難いことを意味する。また、オピオイド鎮痛薬の血中濃度が乱高下すると精神依存を形成しやすい。したがって、日本ペインクリニック学会の指針でも、オピオイド鎮痛薬は器質的障害が明確な疼痛疾患に対して使用し、その使用時にはオピオイド鎮痛薬の血中濃度を一定にするために徐放製剤(2013年3月現在、非がん性慢性疼痛に対して保険適応を持つ製剤は、デュロテップMTパッチ®、トラムセット®、ノルスパンテープ®である)を使用することが推奨されている。また、このようなオピオイド鎮痛薬を使用する場合にも、非がん性慢性疼痛に対しては一日量として経口モルヒネ製剤120mg換算までにとどめることも推奨されている。これは、鎮痛薬を増量することとQOLの改善効果が必ずしも線形相関にはならず天井効果が現れることがあり、高用量では精神依存や濫用への懸念があるからである。さらに、オピオイド鎮痛薬の使用期間が長くなればなるほど精神依存や濫用、不適切使用が増加することも報告されており、オピオイド鎮痛薬の使用期間は可能な限り短期間にとどめなければならない。このほか、患者自身が鎮痛薬を管理する能力が低下している場合には、家族など患者の介護者にオピオイド鎮痛薬についての知識を教育し、その管理に関与するように指導することも重要である。本症例をまとめると、急性期の腰椎圧迫骨折に対してオピオイド鎮痛薬を早期から導入し、疼痛緩和とADLの改善を達成したことは適切であった。慢性期の腰痛に対して、オピオイド鎮痛薬を増量するとともに頓用させていた点は不適切であった。したがって、オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、治療指針などの推奨事項を十分に理解したうえで適切に使用し、そのことを患者に教育しなければならない。つまり、オピオイド鎮痛薬に対する精神依存や濫用の形成から患者を保護することは医師の義務であると同時に、これらが疑われる患者やオピオイド鎮痛薬の不適切使用が認められる患者に対しては、痛みの重症度にかかわらずオピオイド鎮痛薬を処方しないことは医師の権利であると考えている。

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