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GLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」、いよいよ治療の選択肢に

 2010年1月20日、国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ(一般名:リラグルチド)」が承認された。ここでは、2月16日に大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)にて開催された糖尿病プレスセミナー「国内初のGLP-1受容体作動薬 ビクトーザ承認取得-2型糖尿病治療のパラダイムシフト」(演者:東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝氏)<ノボ ノルディスクファーマ株式会社主催>について報告する。糖尿病患者は十分コントロールされていない わが国の糖尿病患者は、この50年で38倍も増加しており、その原因として考えられるのが、近年の食生活の変化や運動不足である。糖尿病治療では、血糖、体重、血圧、脂質を総合的にコントロールし、合併症の発症・進展を防ぎ、健康な人と変わらない日常生活の質を維持し、寿命を確保することを目標としている(日本糖尿病学会編. 糖尿病治療ガイド2008-2009)。しかし、実際には、腎症や虚血性心疾患、脳梗塞などにより、糖尿病患者の平均寿命は、男性で約10年、女性で約14年短いことが報告されている。 そして、血糖コントロールの評価として、HbA1c値 6.5%未満、空腹時血糖値139mg/dL未満、大血管障害の独立した危険因子である食後2時間血糖値180mg/dL未満が「良」とされているが、門脇氏は「現状では、十分コントロールされているとはいえない」と述べた。早期から、低血糖を起こさずに厳格な血糖コントロールを UKPDS80で早期治療による「Legacy Effect(遺産効果)」が示されたこと、UKPDS、ACCORD、VADTなど、5つの大規模試験のメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心血管イベントリスクの減少が示されたことを報告し、門脇氏は「大血管障害の発症・進展を阻止するためには、やはり早期から厳格な血糖コントロールを行うべき」と強調した。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、その原因の一つが低血糖であると考察した上で、「できるだけ低血糖を起こさずに、厳格に血糖コントロールすることが重要」と述べた。 また、自身が中心となって現在進められている「J-DOIT3(2型糖尿病患者を対象とした血管合併症抑制のための強化療法と従来療法のランダム化比較試験)」を紹介し、できるだけ低血糖を起こさず、厳格な血糖コントロールを行うために、チアゾリジン薬をベースにしていると述べた。 さらに、中止されたACCORD試験では、強化療法群で著明な体重増加を認めていることから、体重増加をきたさずに血糖コントロールを行うことも重要であると述べた。国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」 2010年1月20日に承認された国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」は、1日1回投与のGLP-1誘導体。GLP-1は、消化管ホルモンであるインクレチンの1つであり、栄養素が消化吸収されると消化管から分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合して、インスリンを分泌させる。しかし、血中で酵素(DPP-4)により分解されてしまうため、分解されないようにしたものがGLP-1誘導体である。GLP-1は、グルコース濃度に依存して分泌されるため、GLP-1誘導体は、単独で低血糖を起こしにくい。 門脇氏は、その血糖降下作用について、HbA1cの目標達成率が高いことを報告、欧米人と異なり、インスリン分泌の少ない日本人の2型糖尿病の病態に適しており、少量で優れた効果が得られることを示した。 また、食欲抑制作用があると述べ、実際に、体重増加がない、あるいは肥満では体重が減少することを報告した。 糖尿病患者の膵β細胞の機能は、発症した時点で、すでに健康な人の半分以下になっている。たとえ治療を行っても、膵β細胞の機能低下を阻止することは困難で、罹病期間が長くなると、インスリン治療を行わなければならない患者が多くなる。GLP-1誘導体は、動物で膵β細胞の機能を改善させることが報告されていることから、門脇氏は、「GLP-1誘導体は、膵β細胞機能の改善により、糖尿病の進行を阻止する可能性がある」と述べた。発症早期からの処方を 門脇氏は、いくつかの臨床試験の結果を紹介した上で、ビクトーザの有用性として、■血糖降下作用に優れる■低血糖が少ない■体重増加がない(時に体重減少)■膵β細胞保護により、糖尿病の進行を阻止する可能性があるなどを挙げ、糖尿病発症早期から適応できるとの見解を示した。そして、具体的には、臨床試験の結果から、HbA1c 7.5%以下であれば単独で、8.0%以下であれば、現在保険適応とされているSU薬との併用で十分な効果が得られるだろうと述べた。 主な副作用として、消化器症状(悪心、腹痛、下痢、嘔吐)があるが、少量から開始し、漸増していくことで、軽減できる。長期的な安全性としては、動物実験で甲状腺腫瘍が見られているが、臨床データでは報告されていないと述べた。また、膵炎については、糖尿病では、非糖尿病に比べて多く認められるが、ビクトーザでの有意な増加の報告はないと述べた。 さらに、これまでの糖尿病治療薬は、使用されるようになってから、作用機序が明らかになっていたが、GLP-1誘導体は、「GLP-1受容体への作用」という作用機序が明確であることから、この点も安全性の観点から重要であると述べた。しかし、長期的な安全性については、今後も検討していく必要があるとした。

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新しい糖尿病治療薬、GLP-1受容体作動薬2剤の直接比較:LEAD-6

体重減少の促進作用が期待できる、新しい糖尿病治療薬GLP-1受容体作動薬liraglutideの有効性と安全性について、同じクラスのexenatideとの比較で検討した「LEAD-6」試験の結果が、Lancet誌2009年7月4日号(オンライン版2009年6月8日号)で報告された。本試験は、米国ノースカロライナ医科大学内分泌学部門のJohn B Buse氏らによる、15ヵ国が参加し26週間にわたって行われた、オープンラベルパラレル平行無作為化試験。試験の結果は、liraglutideのほうが有効性および安全性に優れるというものだった。HbA1cの7%未満低下、liraglutide群がexenatide群の2.02倍試験は、メトホルミンあるいはSU剤、もしくは両剤とも最高用量服用しても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(18~80歳)を対象とし行われた。患者は、既存の経口剤治療によって層別化されたうえで、無作為に、liraglutide 1.8mg(1日1回)投与群(233例)と、exenatide 10μg(1日2回)投与群(231例)とに割り付けられた。主要アウトカムは、HbA1cの変化とし、有効性についてintention to treat解析が行われた。26週間でHbA1c値は、liraglutide群のほうが有意に低下した。liraglutide群対exenatide群(基線中央値:8.2%対8.1%)の低下は、-1.12%(SE:0.08)対-0.79%(0.08)、推定両群差は-0.33(95%信頼区間:-0.47~-0.18、p

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(第51回日本糖尿病学会年次学術集会から) -2型糖尿病治療の新たな戦略- インクレチン治療(1) GLP-1誘導体

2008年5月21日~24日(土)まで、東京国際フォーラムにおいて、これまでで最多である11,623名が参加した「第51回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:東京大学大学院医学系研究科 門脇 孝氏)」が、開催された。数多くのシンポジウムやワークショップ、共催セミナーが開催され、さらには過去最多の一般演題が発表、海外から第一線で活躍する50名以上の先生方が参加した本集会において、最も多くの参加者を集めたのは、「インクレチン治療」をテーマとしたプログラムであった。わが国では現在、インクレチンを利用したいくつかのGLP-1受容体作動薬(皮下注射剤)およびDPPⅣ阻害薬(経口薬)が、申請中、あるいは臨床試験中であり、発売が待たれているが、欧米では、これら薬剤は、既に数年前から、多くの2型糖尿病患者に用いられている。古くて新しい“インクレチン”インクレチンは、小腸から分泌されるホルモンの総称で、栄養素の消化吸収とともに、消化管から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌を促進させる作用を有する。100年くらい前には既に小腸から抽出した因子に、血糖降下作用があることがわかっていたが、その実態については、しばらく明らかにされていなかった。しかし、血中の血糖上昇を同程度になるよう調整したブドウ糖を経静脈により流入させたときと、経口で摂取させたときの血糖降下程度に差があり、後者の方がより低下し、より血中のインスリン濃度が高くなることが明らかになったことから、それら因子は、糖が消化管を通過することで、インスリン分泌を促進させる作用を持つことが示された。その後の研究により、それが小腸から分泌されるいくつかのホルモンであることが明らかとなり、それらは総称して、その働きである「Secreti(o)n of insulin(インスリン分泌)」から、「incretin」と名づけられた。インクレチンの中で、膵β細胞に結合し、インスリン分泌を促進させる作用があることがわかっているのは、小腸上部のK細胞から分泌されるGIP(Gastric inhibitory polypeptide)と、小腸下部のL細胞から分泌されるGLP-1(Glucagon-like peptide-1)であり、GLP-1は、その機能を保ちつつ、体内で分解されにくい構造にしたGLP-1誘導体として、欧米では既に多くの2型糖尿病患者に用いられている。GLP-1は、SU薬とは異なる機序でインスリン分泌を促進元来、インスリン分泌能の低い日本人では、糖尿病を発症すると、インスリン分泌の低下が主体となる病態になることが多いため、インスリン分泌を促進する薬剤は非常に有用となる。現在、インスリン分泌を促進する薬剤としては、スルホニル尿素(SU)薬と速効型インスリン分泌促進薬がある。SU薬は、古くから使われており、確実に血糖を低下させることから、非常に多くの2型糖尿病患者に使われているが、しばしば、膵β細胞の疲弊による効果の減弱(二次無効)や低血糖の発現、体重の増加が問題となる。GLP-1は小腸で栄養素が消化吸収されることにより分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合し、インスリン分泌を促進させる。つまり、投与されたGLP-1誘導体のインスリン分泌促進作用は血中グルカゴン濃度依存性であるため、GLP-1誘導体は、絶え間なく膵臓を刺激し、インスリン分泌を促進し続けるSU薬と異なり、生理的なインスリン分泌促進作用(食後のインスリン分泌作用)を持ち、低血糖を来たしにくいという利点を有する。GLP-1は膵β細胞の機能を回復?GLP-1は膵β細胞のアポトーシスを抑制させる(in vitro)との報告や、糖尿病モデルラットにおいて、膵β細胞の数を増加させたとの報告などから、GLP-1誘導体は膵β細胞の機能を回復させる可能性があることが示唆されている。GLP-1は食欲を抑制し、体重を減少させる-GLP-1の膵外作用-膵外作用として、GLP-1は中枢神経に作用し、食欲を抑制することが、ラットおよびヒトで明らかになっており、実際にGLP-1誘導体を服用した2型糖尿病患者において、体重が減少することが報告されている。強力な血糖低下作用を持つSU薬を服用すると、空腹感から食欲が増し、体重が増加、さらに血糖が悪化するという悪循環に陥ることがあるが、この点からも、GLP-1誘導体が有用であると考えられている。わが国で発売が待たれるGLP-1誘導体現在、わが国では、GLP-1誘導体として、エクセナチド(イーライリリー/既に米国と欧米で使用中)が第2相試験中、リラグルチド(ノボノルディスク/米国と欧米で承認申請中)が第3相試験中である(ともに1日1回投与)。これらについては、本集会においても、海外における数多くのエビデンスが報告され、多くはないが日本人のエビデンスも発表された。生理的なインスリン分泌促進作用を持つGLP-1誘導体。さらに、低血糖が発現しにくく、体重増加がなく、むしろ体重を減少させ、その上、膵β細胞の機能を回復させる可能性が示唆されている。このように非常に期待できる有用な治療薬であり、わが国でもその使用が待たれているが、唯一の弱点は、皮下注射剤であるということである。インスリン注射と同様に、注射剤は、診療する医師にとっても、患者にとっても、なかなか導入が困難であるが、エクセナチドについては、週1回製剤も開発段階にあり、将来的には、週1回の注射のみで、良好な血糖コントロールが可能になる時代も期待できるかもしれない。次回は「(第51回日本糖尿病学会年次学術集会から)-2型糖尿病治療の新たな戦略-インクレチン治療(2) DPP-IV阻害薬」を紹介する。(ケアネット 栗林 千賀)

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