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オキシントモジュリン作動薬の臨床応用(解説:吉岡成人氏)-890

はじめに インクレチン作動薬として2005年に米国で承認・発売されたGLP-1受容体作動薬であるエキセナチド(商品名:バイエッタ)は、糖尿病の治療に大きな変革をもたらした。エキセナチドが登場し、わずか数年の期間で多くのGLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害薬が発売され、毎日の臨床の現場で使用されている。そのような中で、インクレチンの1つであるオキシントモジュリンの臨床応用についての論文がLancet誌に掲載された(Ambery P, et al. Lancet. 2018 Jun 22. [Epub ahead of print])。オキシントモジュリンとその臨床応用 オキシントモジュリンは、GLP-1と同じように、食後に腸管L細胞からの分泌が促進される消化管ホルモンである。グルカゴン構造のC端側にアミノ酸が付加されたペプチドホルモンで、食欲抑制作用を持っている。オキシントモジュリンはGLP-1受容体とグルカゴン受容体の双方に結合し、主に、GLP-1の作用を介して食欲を抑制すると考えられている。また、オキシントモジュリンはグレリンの分泌を抑制する作用を保持しており、摂食を抑制する作用に関してはグレリンとの関連も示唆されている。しかし、GLP-1と同様に血中の半減期は短く、多くの実験はオキシントモジュリンの点滴静注によって行われたものであった。今回の論文は、オキシントモジュリンと同様にGLP-1受容体とグルカゴン受容体の双方に結合する合成ペプチドであるMEDI0382を用いた第II相の臨床成績に関する報告である。 プラセボ対照の無作為化二重盲検試験であり、HbA1c 6.5~8.5%、BMI 27~40kg/m2の2型糖尿病を対象として実施されている。第II相試験が実施された51人のうち、実薬群は平均年齢56.0歳、BMI 32.0kg/m2、HbA1c 7.2%であり、対照群(平均年齢56.9歳、BMI 33.4kg/m2、HbA1c 7.3%)と差はなかったが、実薬群では6週間の治療期間中に3.84kg(対照群1.70kg)の体重減少が認められ、食事負荷試験の際の血糖曲線化面積も有意に改善したと報告されている。GLP-1受容体作動薬との差異 欧米の成績ではあるが、GLP-1受容体作動薬の週1回注射製剤であるセマグルチド(商品名:オゼンピック)は、デュラグルチド(商品名:トルリシティ)に比較して体重減少の作用が大きく、40週間の観察期間において、1mgの投与でBMI(kg/m2)25未満、25~30未満、30~35未満、35以上のすべてのサブグループで5.2~7.6kgの体重減少を認めたとしている(Pratley RE, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2018;6:275-286.)。日本人を対象とした試験でもセマグルチド1mgにより56週間で体重が71.5kgから3.2kg減少したという報告があり(Kaku K, et al. Diabetes Obes Metab. 2018;20:1202-1212.)、MEDI0382による体重減少作用が他の薬剤に比較して大きいかどうかは今後の検討が必要である。おわりに GLP-1受容体とグルカゴン受容体の双方に結合する合成ペプチドであるMEDI0382がGLP-1受容体作動薬をこえる薬剤なのかどうか、新しい薬剤として広く用いられるのかどうか、今後さらなる検討が必要である。

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週1回製剤が糖尿病患者の負担軽減

 近年、糖尿病治療にはさまざまな薬物療法が登場する中、患者の意向や負担を考慮し、個々のライフスタイルに合わせた治療方法の選択が望まれている。しかし、糖尿病患者の負担を評価する既存の質問票では、薬物治療に対しての負担を抽出して評価することは難しい。 そこで今回、奈良県立医科大学は、日本イーライリリー株式会社の支援により、2型糖尿病患者における薬物治療の負担を測定するアンケート調査手法、「DTBQ(Diabetes Treatment Burden Questionnaire:糖尿病薬物治療負担度質問票)」を開発し、検証・調査を行った。 本試験の解析結果より、DTBQの信頼性が示され、服用による患者負担は、注射薬より経口薬のほうが小さく、また投与頻度が少ないほど小さくなることが明らかになった。本結果は、論文としてDiabetes Therapy誌2018年3月29日号に掲載された。 本研究は、外来で以下の6種類のうち1種類の治療を12週間以上受けている 2型糖尿病患者236例を対象に行われた。1. 注射薬(GLP-1受容体作動薬:以下GLP-1)を週1回±経口血糖降下薬2. 注射薬(インスリンまたはGLP-1)を1日1回±経口血糖降下薬3. 注射薬(インスリンまたはGLP-1)を1日2~3回±経口血糖降下薬4. 経口血糖降下薬のみを週1回5. 経口血糖降下薬のみを1日1回6. 経口血糖降下薬のみを1日2~3回 DTBQは、(1)基本情報を聴取するパートと、(2)薬物療法に対する負担感を評価するパートで構成されている。(2)の質問は、18項目それぞれを1~7点で回答し、このスコアレベルをもとに治療負担を評価する。 検証は、信頼性評価として、236例を対象に1回目のDTBQ記入を実施、ならびに再現性評価として、47例を対象に、1回目のDTBQ記入に続き2回目の記入を実施した。 主な結果は以下のとおり。・週1回の経口薬の患者負担が最も小さく、次いで1日1回の経口薬、週1回の注射薬の順となり、1日複数回の服用は患者負担が大きかった。・HbA1c値が7.0%未満の患者と7.0%以上の患者を比較すると、後者のほうがより負担を感じていた。・低血糖経験のない患者よりも、経験のある患者のスコアが有意に高く、低血糖経験のある患者のほうが治療に対して負担を感じていた。・注射薬、経口血糖降下薬ともに、コンプライアンスのよい患者は治療に対する負担が軽度であった。・本試験の解析の結果、Cronbach’s α係数が0.7775~0.885であったことから各質問に対する回答の一貫性が示され、信頼性が明らかになった。・級内相関係数(ICC)が0.912であったことから、1回目の回答と2回目の回答の一致度が高いことが示され、再現性に優れていることが判明した。 この結果について、石井 均氏(奈良県立医科大学 糖尿病学講座 教授)は、「今後この結果は患者さんをより理解すること、そのうえで患者さんに合った、より良い治療方針を決定していくことに役立つことを確信しています」とコメントしている。■原著論文1)Ishii H, et al. Diabetes Ther. 2018 Mar 29. [Epub ahead of print]■参考日本イーライリリー株式会社 プレスリリース

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SGLT2阻害薬は死亡率、心血管イベントの低減に最も有用(解説:吉岡成人氏)-856

2型糖尿病の治療薬の選択 糖尿病の治療薬の選択に対して、日本糖尿病学会では患者の病態に応じて薬剤を選択することを推奨しているが、米国糖尿病学会ではメトホルミンを第一選択薬とし、心血管疾患の既往がある患者では、SGLT2阻害薬ないしはGLP-1受容体阻害薬を併用することを推奨している。その背景には、EMPA-REG OUTCOME試験、CANVASプログラム、LEADER試験、SUSUTAIN-6などの臨床試験によって、これらの薬剤が心血管イベントに対して一定の抑制効果を示したことが挙げられる。 それでは、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体阻害薬との比較ではどうなのか、日本で最も使用されているDPP-4阻害薬と比較した場合はどうなのだろうかという疑問に答える論文が報告された。ネットワークメタ解析での比較 通常のメタ解析では治療介入を行ったランダム化比較試験(RCT)を統合して介入の効果を検証するが、3種類以上の介入の効果を比較検討することはできない。Zheng SLらはネットワークメタ解析の手法を用いて、実際のhead-to-headの試験を行うことなく、多数のRCTの結果を統計学的に併合して直接的、間接的な比較を行った結果を報告している。本論文では各薬剤を使用して12ヵ月間以上観察された236件のRCTを抽出し、各薬剤とコントロール群、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬とSGLT2阻害、GLP-1受容体阻害薬とSGLT2阻害の各群において、全死亡を主要アウトカム、心血管死、心不全、心筋梗塞と不安定狭心症、脳卒中を二次アウトカムとして薬剤間の有用性を検証している(Zheng SL, et al. JAMA. 2018 Apr 17;319: 1580-1591. )。SGLT2阻害の有用性が明らかに 各群における対象患者の平均年齢は50代前半から後半までと比較的若く、HbA1cも8.2%前後で、罹病期間が長く血糖コントロールが不良な患者は多く含まれてはいない。しかし、全死亡については、GLP-1受容体阻害薬とSGLT2阻害薬はコントロール群、およびDPP-4阻害薬投与群に比較して有意に減少させており、GLP-1受容体作動薬投与群とSGLT2阻害薬投与群との間には有意差はなかった。この傾向は心血管死亡率についても同様であった。一方、心不全イベントについては、SGLT2阻害の有用性が最も高く、コントロール群、DPP-4阻害薬投与群に対してのみならず、GLP-1受容体投与群に対しても有意に心不全イベントの抑制効果を示していた。 欧米では、2型糖尿病の治療に対して、低血糖や体重増加を来しにくい薬剤が推奨されており、メトホルミンが第一選択薬となっている。今回の結果は、心血管イベントによる死亡が多い欧米人にあっては、SGLT2阻害が第二選択薬としてのポジションをより強固なものにした印象を与える。日本でも、虚血性心疾患のハイリスク患者、心不全患者、糖尿病腎症の患者などでは積極的に、SGLT2阻害薬が使用されつつある。しかし日本人の糖尿病患者では欧米に比較して心血管イベントは少なく、65歳以上の高齢者が多く、インスリン分泌も低い。これらの点を考慮すると、現在広く用いられているDPP-4阻害が重用される現状はしばらく続くのかもしれない。

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2型DMの死亡率、SGLT2 vs.GLP-1 vs.DPP-4/JAMA

 2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬使用、プラセボ、未治療と比べて、死亡率が有意に低いことが示された。また、DPP-4阻害薬の使用は、プラセボ、未治療よりも、死亡率は低下しないことも示された。英国・Imperial College Healthcare NHS Foundation TrustのSean L. Zheng氏らによるネットワークメタ解析の結果で、JAMA誌2018年4月17日号で発表された。2型糖尿病治療について、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬を比較した臨床的な有効性は明らかになっていなかった。ネットワークメタ解析で、全死因死亡を評価 研究グループは、発刊から2017年10月11日までのMEDLINE、Embase、Cochrane Library Central Register of Controlled Trials、および公表されているメタ解析を検索し、2型糖尿病患者が登録され、追跡期間が12週間以上、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬を相互に比較またはプラセボ、未治療と比較した無作為化試験を選定した。 1人の研究者がデータのスクリーニングを行い、2人の研究者が重複抽出して、ベイジアン階層ネットワークメタ解析を行った。 主要アウトカムは全死因死亡で、副次アウトカムは心血管(CV)死、心不全(HF)死、心筋梗塞(MI)、不安定狭心症、脳卒中であった。安全性のエンドポイントは、有害事象および低血糖症の発現であった。対照群と比較して、SGLT2阻害薬群、GLP-1受容体作動薬群は有意に低下 236試験、無作為化を受けた被験者17万6,310例のデータが解析に組み込まれた。 対照(プラセボまたは未治療)群と比較して、SGLT2阻害薬群(絶対リスク差[ARD]:-1.0%、ハザード比[HR]:0.80[95%確信区間[CrI]:0.71~0.89])、GLP-1受容体作動薬群(ARD:-0.6%、HR:0.88[95%CrI:0.81~0.94])は、全死因死亡率が有意に低かった。DPP-4阻害薬群との比較においても、SGLT2阻害薬群(-0.9%、0.78[0.68~0.90])、GLP-1受容体作動薬群(-0.5%、0.86[0.77~0.96])は死亡率が低かった。 DPP-4阻害薬群は、対照群との比較で全死因死亡率の有意な低下が認められなかった(0.1%、1.02[0.94~1.11])。 SGLT2阻害薬群(−0.8%、0.79[0.69~0.91])、GLP-1受容体作動薬群(−0.5%、0.85[0.77~0.94])は、対照群との比較において、CV死についても有意に減少した。 SGLT2阻害薬群は、HFイベント(−1.1%、0.62[0.54~0.72])、MI(−0.6%、0.86[0.77~0.97])についても、対照群と比べて有意に少なかった。 GLP-1受容体作動薬群は、SGLT2阻害薬群(5.8%、1.80[1.44~2.25])、DPP-4阻害薬群(3.1%、1.93[1.59~2.35])と比べて、試験中止となった有害事象の発現リスクが高かった。

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GLP-1受容体作動薬セマグルチドが承認取得

 ノボ ノルディスク社は3月23日、週1回投与のGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:オゼンピック)が、2型糖尿病の治療薬として厚生労働省から製造販売承認を受けたことを発表した。 セマグルチドは、血糖値に応じてインスリン分泌を促進させると同時にグルカゴン分泌を抑制し、食欲を抑制して食物摂取量を減らす効果を持つ。今回の承認は、8,000例以上の2型糖尿病患者を対象とした8つの第3a相臨床試験からなるグローバル臨床試験プログラムSUSTAINに基づくもので、このうち5つの臨床試験に約1,200例の日本人2型糖尿病患者が含まれている。本プログラムでは、セマグルチドによる治療の対照薬と比較して優れたHbA1c改善効果、体重減少効果が認められている。

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Real World Evidenceからみたカナグリフロジンの有用性(解説:吉岡成人 氏)-819

カナグリフロジンの新たなエビデンス ADA(American Diabetes Association)のガイドラインでは心血管リスクを持つ2型糖尿病患者に、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンやカナグリフロジンの積極的な使用を推奨している。その根拠となる臨床試験は、EMPA-REG OUTCOME試験およびCANVASプログラムである。これらの臨床試験における主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合イベントの発生率であり、対象となった患者も心血管疾患のハイリスクグループであった。今回紹介するのは、米国における民間の医療データベースを基に、2型糖尿病患者における投与薬剤と心血管イベントについて検討したReal World Evidenceとしてのデータである。医療データベースを基に検証 今回の研究は、米国の民間の医療データベースOptum Clinformatics Datamartを基に、18歳以上の2型糖尿病の患者で、2013年4月から2015年9月までにSGLT2阻害薬であるカナグリフロジンまたはDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SU薬の使用を開始したものを対象として、心血管イベントの発症を比較したものである。処方データを抽出し、患者の背景をマッチさせ、イベントの発症を検討する後ろ向きコホート試験である。 主要評価項目は心不全による入院と複合心血管イベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中による入院)となっている。カナグリフロジンは心不全の入院を減らすが、心筋梗塞や脳卒中は抑制しない Real world dataを基にした30ヵ月間の観察において、カナグリフロジンが他の薬剤に比較して心不全による入院のリスクを有意に低下させることが確認された。カナグリフロジンンとDPP-4阻害薬を比較した場合、イベントの発生頻度はそれぞれ8.9/1,000人年、12.8/1,000人年であり、ハザード比は0.70(95%信頼区間[CI]:0.54~0.92)。GLP-1アナログ、SU薬と比較したハザード比も0.61(95%CI:0.47~0.78)、0.51(95%CI:0.38~0.67)であった。しかし、複合心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中による入院)については、抑制効果は認められず、ハザード比はDPP-4阻害薬と比較して0.89(95%CI:0.68~1.17)、GLP-1アナログでは1.03(95%CI:0.79~1.35)、SU薬でも0.86(95%CI:0.65~1.13)であった。この傾向は、ベースラインにおけるHbA1c値や心疾患や心不全の既往の有無によってサブグループ解析を行っても同様であったと報告されている。 心疾患の既往の有無などを問わず、カナグリフロジンは心不全による入院を他の薬剤に比較して有意に30~49%抑制するものの、心筋梗塞や脳卒中による入院は抑制し得ないことになる。とはいえ、解析の対象となった患者の平均年齢はおよそ57±10歳前後と若く、観察期間も各群でマッチさせることができたのは0.6±0.5年ほどでしかない。これらの点を勘案すると、SGLT2阻害薬であるカナグリフロジンは、患者の年齢を問わず、投与開始後早い時期から、心不全による入院を抑制する効果を持っているといえる。 SGLT2阻害薬が新たなカテゴリーの利尿薬として心不全を抑制しているのか、それとも、利尿効果を超えた心血管イベント抑制の効果があるのか、今後の展開に期待したい。

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カナグリフロジン、心不全入院を低下も心血管系入院は同等/BMJ

 2型糖尿病の治療において、SGLT2阻害薬カナグリフロジンは、クラスが異なる他の3つの経口薬(DPP-4阻害薬[DPP-4i]、GLP-1受容体作動薬[GLP-1RA]、スルホニル尿素[SU]薬)と比べて、心不全による入院リスクは30~49%低いことが、また急性心筋梗塞/脳卒中による入院リスクは同程度であることが示された。米国・ハーバード大学医学大学院のElisabetta Patorno氏らが、大規模な住民ベースの後ろ向きコホート試験を行い明らかにしたもので、BMJ誌2018年2月6日号で発表した。これまで、カナグリフロジンの心血管安全性を評価した「CANVAS試験」などの結果において、同薬は心不全による入院リスクの低減効果を示しており、今回3種の糖尿病治療薬と直接比較を行うことで、その効果が確認された。米国の民間医療データベースで検証 研究グループは、米国の民間医療データベース「Optum Clinformatics Datamart」を基に、18歳以上の2型糖尿病の患者で、2013年4月~2015年9月にかけて、カナグリフロジンまたはDPP-4i、GLP-1RA、SU薬の服用を開始した患者を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。 主要アウトカムは、心不全による入院と複合心血管エンドポイント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中による入院)だった。100以上のベースライン特性を調整した傾向スコアでマッチング法を用い、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算した。SU薬群との比較では、心不全入院リスクおよそ半減 30ヵ月の追跡期間中、カナグリフロジン群の心不全による入院に関するHRは、DPP-4i群との比較で0.70(95%CI:0.54~0.92、比較対象:1万7,667組)、GLP-1RA群との比較で0.61(0.47~0.78、2万539組)、SU薬群との比較で0.51(0.38~0.67、1万7,354組)だった。 複合心血管エンドポイントに関するカナグリフロジン群のHRは、DPP-4i群との比較で0.89(0.68~1.17)、GLP-1RA群との比較で1.03(0.79~1.35)、SU薬群との比較で0.86(0.65~1.13)だった。 なお、ベースライン時のHbA1c値による追加補正を行った感度分析や、心血管疾患または心不全の既往歴の有無によるサブグループ解析の結果も同様なものだった。

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経口semaglutideがもたらした血糖降下薬のパラダイムシフト(解説:住谷哲氏)-780

 GLP-1は数十個のアミノ酸からなるペプチドホルモンであり、インスリンをはじめとする他のペプチドホルモンと同様に経口投与では消化管で分解されてほとんど吸収されない。これまで経口インスリンの開発が進められてきたが残念ながら現時点では実用化に至っていない。本論文は経口GLP-1受容体作動薬である経口semaglutideが注射薬とほぼ同等の血糖降下作用および体重減少作用を有することを明らかにした点で、糖尿病治療におけるbreakthroughと考えてよい。 どのようにしてペプチドホルモンであるsemaglutideが吸収可能となったのだろうか?DDS(drug-delivery system)は薬剤開発の重要な1分野であるが、筆者の知らない間に急速な進歩をとげているようである。本論文のIntroductionに記載があるが、吸収促進剤であるsodium N-[8 (2-hydroxylbenzoyl) amino] caprylate (SNAC)とsemaglutideの混合物が胃に到達すると、SNACが胃粘膜局所のpHを上昇させることで胃液によるsemaglutideの加水分解を阻害し、かつsemaglutideの溶解度を上昇させる。その後、semaglutideは輸送蛋白を介さず、胃粘膜細胞間隙を通して吸収されるらしい1)。つまりsemaglutideは小腸ではなく胃粘膜から吸収されるようだ。この方法の優れた点は、注射ではなく経口投与であるのに加えて、薬剤が門脈を通して肝臓に達する点にある。インスリンもそうであるが、GLP-1は本来腸管から門脈を通して肝臓に達するのが生理的経路であり、経口semaglutideはそれを実現したといえるだろう。 26週の観察期間において経口semaglutideは注射薬と同等のHbA1c低下作用および体重減少作用を示した。SGLT2阻害薬が体重減少作用を有する経口血糖降下薬として処方数が増加している。しかしSGLT2阻害薬の体重減少作用は食事療法が守れないと期待どおりの効果が得られないことが明らかになりつつある。それに比べてGLP-1受容体作動薬であるsemaglutideには食欲抑制作用があるため、より確実な体重減少作用が実臨床において期待される。 注射または経口と投与経路は異なるが同じsemaglutideであり、SUSTAIN-6 2)で示されたsemaglutideの心血管イベント抑制作用はおそらく経口semaglutideでも再現されるだろう。しかし、これは今後米国において認可のために実施されると思われるCVOTの結果を待つ必要がある。いずれにせよ注射薬から経口薬へのパラダイムシフトが経口semaglutideによってもたらされたのは間違いない。

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経口GLP-1受容体作動薬で良好な結果/JAMA

 2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬の経口semaglutideはプラセボとの比較で、26週にわたり良好な血糖コントロールを示したことが報告された。英国・レスター大学のMelanie Davies氏らによる第II相無作為化試験の結果で、著者は「長期間および臨床的アウトカム、ならびに安全性を評価する第III相試験の実施を支持するものであった」とまとめている。GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病の有効な治療薬として、現在すべて注射剤での利用が可能となっている。研究グループは、開発中の経口semaglutideの有効性をプラセボと比較し(主要目的)、また非盲検下でsemaglutide皮下注と比較する(副次目的)検討を行った。JAMA誌2017年10月17日号掲載の報告。経口semaglutide各用量群、semaglutide皮下注群、プラセボ群に割り付け評価 検討は第II相の無作為化並行用量探索試験で、2013年12月~2014年12月に14ヵ国の100施設(病院クリニック、一般診療所、臨床研究センター)で行われた。試験期間は26週間+フォローアップ5週間であった。 1,106例がスクリーニングを受け、食事療法と運動療法または一定用量のメトホルミンで血糖コントロール不良な2型糖尿病患者632例が無作為化を受けた。無作為化ではメトホルミン使用による層別化も行われた。 被験者は、1日1回の経口semaglutide 2.5mg投与群(70例)、同5mg投与群(70例:当初4週は2.5mg)、同10mg投与群(70例:当初4週は5mg)、同20mg投与群(70例:当初4週は5mg、5~8週は10mg)、同40mgの4週漸増(標準漸増)投与群(71例:当初4週5mg、5~8週10mg、9~12週20mg)、同40mgの8週漸増(緩徐漸増)投与群(70例:当初8週5mg、9~16週10mg、17~24週20mg)、同40mgの2週漸増(急速漸増)投与群(70例:当初2週5mg、3~4週10mg、5~6週20mg)、プラセボ投与(経口)群(71例:二重盲検)、週1回のsemaglutide 1.0mg皮下注群(70例)に無作為化を受け、26週間の介入を受けた。 主要エンドポイントは、ベースラインから26週時点のHbA1c値の変化であった。経口群のHbA1c値、プラセボと比べて有意に低下 ベースラインの被験者の特性は、全投与群とも類似していた。632例は、平均年齢57.1歳(SD 10.6)、男性395例(62.7%)、平均糖尿病罹病期間6.3年(SD 5.2)、平均体重92.3kg(SD 16.8)、平均BMI値31.7(SD 4.3)であった。583例(92%)が試験を完遂した。 経口semaglutide投与群のベースラインから26週時点までのHbA1cの平均変化値は、プラセボ群と比べて有意な低下が認められた。経口semaglutide投与群は-0.7%~-1.9%(用量依存的範囲)、semaglutide皮下注群は-1.9%、プラセボ群は-0.3%であった。経口semaglutide群とプラセボを比較した、用量依存的推定治療差(ETD)範囲は-0.4%~-1.6%であった(2.5mg投与群のp=0.01、すべての用量群のp<0.001)。 体重は、経口semaglutide群でより低下が認められた(用量依存的範囲:-2.1kg~-6.9kg)。semaglutide皮下注群は-6.4kg、プラセボ群は-1.2kgで、10mg以上の経口semaglutide投与群ではプラセボとの比較において有意差が認められた(用量依存的ETD範囲:-0.9kg~-5.7kg、p<0.001)。 有害事象は、経口semaglutide群63~86%(371/490例)、semaglutide皮下注群81%(56/69例)、プラセボ群68%(48/71例)で報告された。軽度~中等度の消化管イベントの頻度が最も高かった。

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エキセナチドの週1回製剤とリラグルチドの週1回製剤は異なる作用を持つのだろうか…?(解説:吉岡成人 氏)-743

 GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドとリラグルチドの週1回製剤であるセマグルチドは、LEADER(Liraglutide Effect and Action in Diabetes: Evaluation of Cardiovascular Outcome Results)、SUSTAIN-6(Trial to Evaluate Cardiovascular and other Long-Term Outcomes with Semaglutide in Subjects with Type2 Diabetes)の2つの臨床試験により、心血管イベントに対して一定の抑制効果があることが示されている。「GLP-1受容体作動薬」そのものにGLP-1を介した心血管イベント抑制の効果があるのではないかと考えられていたのだが、エキセナチド徐放剤(商品名:ビデュリオン、エキセナチドをマイクロスフェアに包埋し持続的に放出する製剤)の週1回投与では心血管死、心筋梗塞、脳卒中を抑止する効果が認められなかったとする報告がなされた。 EXSCEL(Exenatide Study of Cardiovascular Event Lowering)と命名されたこの臨床試験は、心血管疾患の既往ないしは心血管疾患のリスクを有する2型糖尿病14,752人を対象に、糖尿病の標準治療にエキセナチド徐放剤を併用する群とプラセボを併用する群に割り付けて、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合エンドポイントを主要心血管イベントとして3.2年間追跡したものである。主要心血管イベントの発症率はエキセナチド徐放剤群で11.4%(3.7イベント/100人年)、プラセボ群で12.2%(4.0イベント/100人年)であり、ハザード比は0.91(95%信頼区間:0.83~1.00)で優越性を認めることができなかった(p=0.061)。EXSCELとSUSTAIN-6を比較すると、年齢(62.0 vs.64.6歳)、HbA1c(8.0 vs.8.7%)などは若干異なるものの、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合エンドポイントの発症頻度はセマグルチド群3.2イベント/100人年、プラセボ群4.4イベント/100人年であり、同じようなリスクの患者を対象とした試験であると想定される。患者の年齢についてはEXSCELではサブグループ解析が行われており、ベースライン時の年齢が65歳以上の集団ではエキセナチド徐放剤群における主要心血管イベントのハザード比が0.80(95%信頼区間:0.71~0.91)であり、リスクの減少は統計学的に有意であると記載されている。エキセナチドを追加投与し、観察期間中に中央値でHbA1cは0.53%低下し、体重は1.27kg減少している。有害事象としての膵炎、膵がんなどの発症率は同等であった。 これらの成績からEXSCELにおける安全性とサブグループ解析を重くみて、エキセナチド徐放剤は心血管疾患のリスクを増加させることなく安全に使用でき、とくに高齢患者では心血管イベントを抑制しうる効果が期待されるのではないかと受け止めることができるのか、エキセナチド徐放剤は他の薬剤を超える素晴らしい(exceed and excellent)薬剤とは言い難いと解釈するのか、LEADER、SUSTAIN-6とやや異なる結果が得られたことは悩ましい。

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イベント発症後に後悔。糖尿病患者さんの本音

 9月29日は、ワールド・ハート・デー。世界心臓連合が2000年に定めた、地球規模の心臓血管病予防キャンペーン活動を行う日である。この日に先駆け2017年9月26日、都内で糖尿病のセミナーが開かれた(主催:ノボ ノルディスク ファーマ株式会社)。セミナーでは、心血管疾患既往の2型糖尿病患者さんを対象とした意識調査が紹介され、患者さんの2~3人に1人は、心血管疾患を糖尿病の合併症とは認識していなかったことなどが明らかになった。2型糖尿病が心血管疾患リスクになることは、医療者側はよく知っているが、患者さん自身は自分に心血管疾患リスクがあるとは認識していないのかもしれない。演者は、槇野 久士氏 (国立循環器病研究センター病院 動脈硬化・糖尿病内科 医長)。以下、セミナーの内容を記載する。調査対象者の3人に1人が「合併症に気を配るべきだった」と後悔 心血管疾患既往の2型糖尿病患者さん104例を対象としたインターネット調査において、患者さんの2~3人に1人が、心血管疾患発症前には、心・脳血管系疾患(狭心症、心筋梗塞、虚血性心不全、脳梗塞)を糖尿病の合併症だと認識していなかったことが明らかとなった。 また、「2型糖尿病が心血管疾患の死亡リスクを約2倍高める」ことを事前に認識していなかった患者さんの8割が「もし知っていたら何らかの対策を行いたかった」と回答した。さらに、調査対象となった患者さんの3人に1人が「2型糖尿病の合併症について、もっと気を配るべきだったと後悔した」「経済的な負担を心配した」と回答した。 このように、心血管疾患を発症した2型糖尿病患者さんの一部は、糖尿病と心血管疾患の関係について事前に知っていれば、よりよい選択をできたのではないか、と後悔していることが明らかになった。医療者側はどのように対応すべきか この調査結果について、演者の槇野氏は、「実際には、糖尿病による心血管疾患発症リスクの説明を聞いたことがない患者さんは少ないはずだ」と前置きしたうえで、「医療者側は診断時だけではなく、継続的に心血管疾患発症リスクを説明することが重要だ」と述べた。心血管疾患の発症予防のためには、こうした啓発とともに、患者さんの生活習慣の改善と定期的な受診の推進が求められる。しかし、糖尿病患者さんの指導には難しいことが多い。 患者さんの中には、「夏は暑いし、冬は寒いし、外に出て歩くなんて無理です」「仕事が忙しいのに運動する余裕なんてありません」とさまざまな理由をつけて、運動を拒否する方も多い。そのような場合、1日のテレビを見る時間が長いほど心血管疾患発症リスクが上がることなどを例に、特別な運動をせずとも、ごろごろしないで家の中を立って歩くよう心掛けるだけでもよいのだ、と伝えると効果的だという。 より高い効果を生み出すためにはチーム医療も重要だ。日本の診療システムでは医師が患者1人当たりに割ける時間は限られる。ここでチーム医療が力を発揮する。医師、看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師がチームを組んで指導の個別化を行うことで、より高い効果が生み出されるだろう。可能な範囲での取り組みを推奨したい。 また、薬剤選択においては血糖値を下げるだけではなく、心血管疾患の発症予防を重視して薬剤を選ぶことも有用だ。最近では、LEADER試験をはじめ、いくつかの新薬で血糖値を下げるだけに留まらない、心血管疾患発症リスクを抑制する効果も示されてきている。 糖尿病治療では、血糖値を下げるだけではなく、心血管疾患の発症予防を見据えて治療に取り組むことが重要である。ワールド・ハート・デーをきっかけに、2型糖尿病患者さんの心血管疾患予防について、あらためて意識してみてはどうだろうか。

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GLP-1受容体作動薬は心イベントのみならず、腎イベントも抑制する(解説:吉岡成人 氏)-735

 2017年に公表された米国糖尿病学会のガイドラインでは、心血管疾患のハイリスク患者に対するGLP-1受容体作動薬の使用が推奨されている。その根拠となっている臨床試験がLEADER試験(Liraglutide Effect and Action in Diabetes: Evaluation of Cardiovascular Outcome Results)であり、リラグルチドによって2型糖尿病患者の心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死的脳卒中)がわずかではあるが、統計学的に有意差をもって抑制される(ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.87~0.97)ことが示されている。今回の報告は、LEADER試験の副次評価項目としての腎アウトカムについて分析したものである。 持続性顕性アルブミン尿の新規発症、血清クレアチニン値の持続的倍化、末期腎不全、腎疾患による死亡の4項目を腎アウトカムとして評価し、推定糸球体濾過量(eGFR)、アルブミン尿の推移についても検討を加えている。 9,340例の2型糖尿病を対象とした二重盲検プラセボ対照比較試験で、追跡期間の中央値は3.84年である。腎アウトカムの発生はプラセボ群7.2%(4,672例中337例、19.0/1,000人年)、リラグルチド群5.7%(4,668例中268例、15.0/1,000人年)であり、リラグルチド群で有意な減少を認めた(ハザード比:0.78、95%信頼区間:0.67~0.92、p=0.003)。腎アウトカムの4項目の中で有意に減少しているのは持続性顕性アルブミン尿の新規発症であり(4.6% vs.3.4%、ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.004)、その他のアウトカムでは差がなかった。さらに層別解析ではeGFRが60mL/min/1.73m2以上の群、すでに微量アルブミン尿、顕性アルブミン尿が認められる群でのハザード比の有意な低下が確認されている。 一方で、SGLT2阻害薬による大規模臨床試験であるEMPA-REGアウトカム試験やCANVAS試験で認められたeGFRの低下を防ぐことを示すことはできなかった。おそらく、SGLT2阻害薬の腎保護効果が腎血行動態やケトン体などによる複合的なものであるのに対し、リラグルチドの腎保護効果はアルブミン尿の排泄減少が主体であり、酸化ストレスや、糸球体における炎症の軽減によるものなのかもしれない。 日本において広く使用されているDPP-4阻害薬ではアルブミン尿の減少などの腎保護作用は臨床的に確認されておらず、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の差異を示す1つの臨床データとも受け止めることができる。

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パーキンソン病におけるエキセナチド週1回投与の効果(解説:山本康正 氏)-736

【目的】 2型糖尿病に使用されているglucagon-like peptide-1(GLP-1)の受容体作動薬であるエキセナチドには、げっ歯類において神経毒により作成されたパーキンソン病モデルで神経保護作用・神経修復作用があることが示されている。著者らは以前に、少数例のオープンラベル試験でエキセナチドがパーキンソン病患者の運動・認知機能障害を改善した結果を得ており、今回パーキンソン病患者に対するエキセナチドの効果を、single-centre, randomized, double-blind, placebo-controlled trialによって確認する試験を行った。【方法】 25~75歳のQueen Square Brain Bank criteriaで評価された特発性パーキンソン病患者で、ドーパミン治療がなされているがwearing offを有し、治療下においてYahl分類が2.5以下の患者を対象とした。通常のドーパミン系治療に加えて、エキセナチド2mgとプラセボの週1回皮下注射を48週間行い、12週間のwash out期間の後、評価を行った。患者は12週ごとに受診し、抗パーキンソン病薬服用後8時間以上あけたoff-medication stateにおいて、運動・非運動症状や認知機能、心理テスト等の総合的評価がなされた。最初と60週目にドーパミンの働きを見る検査であるDaTscan(ダットスキャン)を行った。1次エンドポイントは、60週目にMovement Disorders Society Unified Parkinson's Disease Rating Scale(MDS-UPDRS)のmotor subscale part3を用いて評価したスコアの差である。【結果】 62例がエントリーされ、32例がエキセナチド、30例がプラセボに割り付けられた。最終60週目において、MDS-UPDRS-part3はプラセボ群で2.1点悪化し、エキセナチド群で1.0点改善した。調整後の差は-3.5点で、エキセナチド群で有意に改善した(p=0.031)。ちなみに48週目の時点では、-4.3点の差でエキセナチド群が勝っていた(p=0.0026)。認知機能、非運動症状、QOL、気分、ジスキネジア等に差はなかった。DaTscan imagingでは、1回目に比べて2回目は両群とも低下傾向にあったが、エキセナチド群で低下はより軽度であった。【考察】 48週目のみならず12週間のwash out期間の後もエキセナチドの効果が持続していたことは注目すべきであり、これはエキセナチド持続の長い症候改善作用を有するためなのか、あるいは、疾患の病態生理に影響を与えた結果なのかは今後の検討が待たれる。【解説】 パーキンソン病は年月とともに進行性で、進行期には、不随意運動、幻覚、起立性低血圧や頑固な便秘など自律神経障害も出現して難渋することが多い。ドーパミン受容体作動薬やモノアミン酸化酵素阻害薬に神経保護作用が期待されているが、さらに新規の神経保護作用を有する薬剤が待たれている。エキセナチドは2型糖尿病に使用されているGLP-1の受容体作動薬であるが、今回の試験では従来の抗パーキンソン病薬に追加することで、運動症状の改善のみならず12週間のwash out期間の後も効果が持続していた。このことは、単に持続作用が長いことを示しているのかもしれないが、疾患の病態生理に作用し神経保護作用を有する可能性があり期待される。

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ケアネット白書~糖尿病編2017

ケアネットでは今年3月、2型糖尿病患者を1ヵ月10例以上診察している医師を対象にアンケート調査を実施し、経口血糖降下薬の処方割合やその理由などを聞いた。その回答は、「ケアネット白書~糖尿病編2017」としてまとめているが、本稿では、主な質問項目とその回答について抜粋して紹介する。CONTENTS1.調査概要2.結果(1)回答医師の背景(2)薬剤の処方状況(1stライン)(3)薬剤の処方状況(2ndライン)(4)薬剤選択の際に重要視する項目

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ケアネット白書~糖尿病編2017

インデックスページへ戻る1.調査概要本調査の目的は、糖尿病診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている糖尿病治療薬を評価することである。調査はインターネット上にてアンケート形式。2017年3月1~8日に、ケアネットの医師会員約13万人のうち、2型糖尿病患者を1ヵ月に10人以上診察している医師500人を対象に実施した。2.結果(1)回答医師の背景回答医師500人の主診療科は、糖尿病・代謝・内分泌科が234人(46.8%)で最も多く、一般内科167人(33.4%)、循環器科42人(8.4%)などが続いた。医師の所属施設は、一般病院が190人(38.0%)で最も多く、以下、医院・診療所・クリニック134人(26.8%)、大学病院92人(18.4%)、国立病院機構・公立病院83人(16.6%)など。医師の年齢層は50代が159人(31.8%)で最も多く、次いで40代(135人、27.0%)、30代(128人、25.6%)が続いた。(2)薬剤の処方状況(1stライン)糖尿病治療薬をSU薬、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、ビグアナイド(BG)薬、チアゾリジン薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド)、DPP-4阻害薬、インスリン、GLP-1、SGLT2阻害薬、その他に分類し、食事・運動療法に加えて薬物療法を実施する際の1stラインの処方状況を聞いた(図1)。図1を拡大する処方が最も多かったのはDPP-4阻害薬で、回答した医師全体の38.4%が1stラインで使っている。しかしながらその割合は、昨年と比べて6.1ポイント減少し、過去5年間において最も少ない。次いで多かったのはBG薬(26.3%)で、昨年(26.6%)とほぼ横ばいであった。<糖尿病・代謝・内分泌科での1stライン>回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科の場合、1stラインでの処方割合が最も多かったのはDPP-4阻害薬(35.9%)だが、これに続くBG薬が33.4%であり、割合は拮抗している。一方、SU薬とα-GIは過去5年の推移をみても一貫して減少傾向にあるようだ(図2)。図2を拡大する<その他の診療科(糖尿病・代謝・内分泌科以外)での1stライン>回答医師の属性がその他の診療科の場合、1stラインの処方割合はDPP-4阻害薬が最も多いものの、前年より7%減少し、その分、その他(併用など)が増加した。BG薬(20.1%)とSU薬(6.9%)は、前年と比べほぼ横ばいであった(図3)。図3を拡大する(3)薬剤の処方状況(2ndライン)DPP-4阻害薬単剤処方例からの治療変更1stラインでDPP-4阻害薬を単剤投与しても血糖コントロールが不十分だった場合、2ndラインではどのような治療変更を行うかについて、1.SU薬を追加、2.速効型インスリン分泌促進薬を追加、3.α-GIを追加、4.GU薬を追加、5.チアゾリジン薬を追加、6.GLP-1を追加、7.インスリンを追加、8.SGLT2阻害薬を追加、9.他剤への切り替え、10.その他―の分類から処方状況を聞いた(図4)。図4を拡大する最も多かったのはBG薬の追加で、回答した医師の40.3%に上った。過去5年の推移を見ると一貫して増加傾向にありSGLT2阻害薬の追加も9.9%に増加した。一方、SU薬の追加やα-GIの追加は減少傾向にある。回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科とその他の診療科を比較すると、専門医ではBG薬の追加が全体平均よりも高い傾向にあり、逆にSGLT2阻害薬の追加を選ぶ医師は少ない傾向があった。専門医以外では、SGLT2阻害薬の追加やα-GIの追加を選択する割合が多い傾向があるようだ(図5)。図5を拡大するBG薬単剤処方例からの治療変更また、1stラインでBG薬を単剤投与しても血糖コントロールが不十分だった場合2ndラインではどのような治療変更を行うかについて、1.SU薬を追加、2.速効型インスリン分泌促進薬を追加、3.α-GIを追加、4.チアゾリジン薬を追加、5.DPP-4阻害薬を追加、6.GLP-1を追加、7.インスリンを追加、8.SGLT2阻害薬を追加、9.他剤への切り替え、10.その他―の分類から処方状況を聞いた(図6)。図6を拡大する最も多かったのは前年に引き続きDPP-4阻害薬の追加(55.6%)であった。SGLT2阻害薬の追加(8.0%)を選択する医師の割合は、前年比で2.2ポイント増となり、SU薬の追加(8.3%)と拮抗する結果となった。回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科とその他の診療科を比較すると、専門医で最も多かったのはDPP-4阻害薬の追加(56.4%)で、次いでSGLT2阻害薬の追加(9.3%)、SU薬の追加(8.3%)となっていた。その他の診療科と比べると、SGLT2阻害薬の追加が多かった(図7)。図7を拡大する(4)薬剤選択の際に重要視する項目本調査では、薬剤を選択する際に重要視する項目についても聞いている(複数回答)。最も多いのは昨年に続き「低血糖を来しにくい」で、75.2%の医師が挙げている。以下、「重篤な副作用がない」(68.48%)、「血糖降下作用が強い」(66.4%)などが続いた(図8)。図8を拡大する<糖尿病・代謝・内分泌科での重要視項目>回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科の場合も、薬剤選択で重要視する項目として最も多かったのは「低血糖を来しにくい」で、81.6%の医師が挙げている。次いで多かったのが、「体重増加を来しにくい」(73.5%)で、他科も含めた全体では56.4%だったのと比べると顕著に割合が高く、専門医に特徴的な傾向といえる。<その他の診療科(糖尿病・代謝・内分泌科以外)での重要視項目>回答医師の属性がその他の診療科の場合も、薬剤選択で重要視する項目として最も多かったのは「低血糖を来しにくい」であった(69.5%)。以下、「重篤な副作用がない」(65.4%)、「血糖降下作用が強い」(63.9%)などが続いた。インデックスページへ戻る

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第11回 GLP-1受容体作動薬による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第11回】GLP-1受容体作動薬による治療のキホン―どのような患者さんが良い適応になりますか?また導入の判断となる指標があれば教えてください。 食事から吸収された糖質などの刺激により、消化管から消化管ホルモンであるGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)が血中に分泌されると、血行性に膵β細胞上のGIP受容体とGLP-1受容体にそれぞれ結合し、インスリン分泌が促進されます。その作用を応用したのがインクレチン関連薬と呼ばれるDPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬で、GLP-1受容体作動薬は、膵β細胞上にあるGLP-1受容体に結合して、インスリン分泌を促進させます。 インクレチン関連薬は、膵β細胞内で代謝されたグルコースによるインスリン分泌の惹起経路を増幅させることで、インスリン分泌を促進させます。つまり、グルコースによるインスリン分泌惹起経路が働いて初めて、インクレチンによる増幅作用が働くことになります。そのため、GLP-1受容体作動薬のインスリン分泌作用は、グルコース濃度依存性であり、単独では低血糖を起こさないという特徴があります。 GLP-1受容体作動薬のもう1つ大きな特徴は「体重減少」です。GLP-1受容体は食欲をつかさどる視床下部にもあり、GLP-1受容体作動薬により、食欲が抑制されることで、体重減少効果が得られます。また、胃内容物の排泄抑制作用もあり、それによる体重減少効果、さらには、食後血糖の上昇抑制も期待できます。GLP-1受容体作動薬は、非肥満、肥満のいずれでも血糖低下効果は得られますが、とくに「体重減少」については、他の薬剤を上回る効果が得られるため、肥満の患者さんが良い適応であると考えています。ただ、GLP-1受容体作動薬は注射薬であるため、抵抗を示す患者さんも少なくありません。高用量のSU薬を含むいくつかの経口薬を使用しているにもかかわらず、良好な血糖コントロールが得られない患者さんで、体重減少も期待したいような場合に検討するとよいのではないでしょうか。―DPP-4阻害薬との作用機序や適応の違いについて教えてください。 GLP-1受容体作動薬が、膵β細胞上にあるGLP-1受容体に結合してインスリン分泌を促進させる、直接的に作用する薬剤であるのに対し、DPP-4阻害薬は、GIPおよびGLP-1が分泌された後に、それらを急速に分解する酵素であるDPP-4の活性を阻害して、GIPとGLP-1の不活化を抑制する、すなわち、間接的に作用する薬剤です。いずれも、前述のように、グルコース濃度依存性であり、単独では低血糖を起こさない薬剤ですが、DPP-4阻害薬は“生理的レベル”で効果を発揮するのに対し、GLP-1受容体作動薬は“非生理的レベル”で効果を発揮するため、DPP-4阻害薬は「体重増加を来さない」という効果が得られ、GLP-1受容体作動薬は「体重を減少させる」という効果が期待できます。“体重増加を来さない”で血糖を低下させる、“体重を減少させて”血糖を低下させる、という目的で使い分けるのがよいと思います。 ただ、DPP-4阻害薬は経口薬で、GLP-1受容体作動薬は注射薬です。導入のしやすさという点でも違いはありますが、今は、週1回投与のGLP-1受容体作動薬もあります。「週に1回なら」「自分で打つのはいやだけど、医療従事者に打ってもらうのであれば」という患者さんもいらっしゃいます。週1回製剤の中には、針の取り付けが不要なものもあり、取り扱いが非常に簡便なものもありますし、「“週に1回だけ”ならどうですか?」「ご自分で打つのが難しければ、週に1回、病院に来て打つのはどうですか?」というやり方で導入するのも良い方法です。―投与量の調整方法について教えてください。 GLP-1受容体作動薬はインスリン製剤と同じ注射薬ですが、インスリン製剤のような細やかな投与量の調整をする必要はありません。ただし、副作用としてみられる下痢や便秘、嘔気などの消化器症状が投与初期に認められるため1)、1回の投与量が決められている週1回の製剤ではなく、1日1回もしくは2回注射の製剤の場合は、最小用量から始め、様子をみながら、各製剤の添付文書に従って、増量していくのがよいでしょう。―適切な併用薬について教えてください。 前述のように、GLP-1受容体作動薬では、血糖低下以外に、体重減少効果が期待できます。さらなる体重減少という点で、体重減少効果のあるSGLT2阻害薬との併用※も効果的です。 (※2017年8月現在、日本でSGLT2阻害薬との併用が認められているのは、「リラグルチド(商品名:ビクトーザ)」、「リキセナチド(商品名:リスキミア)」と「デュラグルチド(商品名:トルリシティ)」のみ。) また、SGLT2阻害薬を使っていて、体重が増加してしまう場合に、体重減少を期待して、GLP-1受容体作動薬を上乗せするのもよいでしょう。実際に、海外で行われた、GLP-1受容体作動薬「エキセナチド(商品名:ビデュリオン)」と、SGLT2阻害薬「ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)」の併用の効果をみた「DURATION-8試験」で、それぞれの単独療法よりも、血糖低下および体重減少において効果が認められたことが示されました2)。 また、GLP-1受容体作動薬には、半減期の長い長時間作用型と、半減期の短い短時間作用型があり、短時間作用型では、高濃度のGLP-1が維持されないため、胃排泄の遅延作用に対するタキフィラキシー(効果減弱)が起こりにくいという特徴があります。胃排泄の遅延作用が継続するため、体重減少に加え、「食後高血糖の抑制作用」が期待できますが、空腹時高血糖の改善は得意ではないため、空腹時血糖値を低下させるSU薬やチアゾリジン薬、ビグアナイド(BG)薬、SGLT2阻害薬との併用が効果的です。一方、長時間作用型では、高濃度のGLP-1が維持されるため、空腹時の血糖低下作用が期待できます。食後高血糖を改善する速効型インスリン分泌促進薬やα-グルコシダーゼ阻害(GI)薬との併用がよいでしょう。ただし、SU薬や速効型インスリン分泌促進薬のように、インスリン分泌を直接惹起する経路に働く薬剤とそれを増幅させるGLP-1受容体作動薬を併用することはより効果的ではありますが、SU薬や速効型インスリン分泌促進薬の効果を増幅させることで、低血糖リスクが増加する恐れがあるため、慎重に投与する必要があります。―長期使用における安全性について教えてください。 インクレチン関連薬は、SU薬など古くから使われる糖尿病治療薬に比べると比較的新しい薬剤ですので、長期の安全性を懸念される方も多いと思います。GLP-1受容体作動薬では、DPP-4阻害薬と同様、膵炎や膵がんといった膵疾患との関連がいわれていますが、現時点で、GLP-1受容体作動薬においても、これら膵疾患への関連について、前向きに検討した報告はありません。ただ、GLP-1の薬理効果について、まだ十分解明されていない部分も多いため、長期安全性を含め、今後、未知な生理作用や副作用について、みていく必要はあります。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2016-2017. 文光堂;2016.2)Frias JP, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4:1004-1016.

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GLP-1製剤、パーキンソン病の運動機能を改善/Lancet

 GLP-1受容体作動薬エキセナチドを中等度のパーキンソン病患者に投与すると、運動機能が改善する可能性があることが判明した。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDilan Athauda氏らが、62例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月3日号で発表した。エキセナチド2mgを48週間投与、60週後の運動機能変化を比較 Athauda氏らは2014年6月18日~2015年3月13日にかけて、25~75歳の中等度パーキンソン病の患者62例を無作為に2群に分け、通常服用している薬に加え、一方にはエキセナチド2mgを(32例)、もう一方にはプラセボを(30例)、それぞれ週1回48週にわたり皮下投与した。その後、試験薬を中止し12週間のウォッシュアウト後(60週時点)に最終評価を行った。 被験者は、Queen Square Brain Bank基準で特発性パーキンソン病の診断を受け、ドーパミン療法によるウェアリング・オフ現象を伴い、治療下の症状はホーン・ヤール重症度分類で2.5以下だった。患者および研究者は、治療割り付けについてマスキングされていた。 主要アウトカムは、実質的に非薬物治療下と定義される時点(60週)で評価したベースライン(0週)からの、国際運動障害学会が作成したパーキンソン病統一スケール「MDS-UPDRS」の運動機能サブスケール・パート3の変化値に関する両群間の補正後差だった。エキセナチド群で運動機能サブスケールは1.0ポイント改善 有効性解析には、無作為化後の追跡評価を完遂したエキセナチド群31例、プラセボ群29例が含まれた。 0~60週時のMDS-UPDRS・パート3スコアの変化値は、エキセナチド群が-1.0点(95%信頼区間[CI]:-2.6~0.7)と改善を示したのに対し、プラセボ群は2.1点(同:-0.6~4.8)と悪化が示された。両群の補正後平均差は-3.5点(同:-6.7~-0.3、p=0.0318)で有意差が認められた。 有害事象は、注射部位反応と消化器症状の発現が両群で最も頻度が高かった。重篤な有害事象は、エキセナチド群で6件、プラセボ群では2件報告されたが、いずれも試験による介入とは関連がないと判断された。 なお結果について著者は、「エキセナチドの陽性効果は、投与期間を過ぎてからも示されたが、エキセナチドがパーキンソン病の病態生理に影響を及ぼすのか、それとも単に持続的な症候性の作用が引き起こされただけなのかは不明である」と述べ、長期の検討を行い、エキセナチドの日常的な症状への効果を調べる必要があるとしている。

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インクレチン薬で死亡リスク上昇せず、189件のRCTメタ解析/BMJ

 中国・West China HospitalのJiali Liu氏らは、インクレチン関連薬の無作為化試験についてシステマティックレビューとメタ解析を行い、2型糖尿病患者に対するインクレチン関連薬による治療が死亡リスクを上昇させるというエビデンスは得られなかったと報告した。大規模無作為化試験(SAVOR-TIMI 53)において、サキサグリプチンはプラセボと比較して死亡率が高い(5.1% vs.4.6%)傾向が示され、インクレチン関連薬による治療と死亡リスク増加との関連が懸念されていた。BMJ誌2017年6月8日号掲載の報告。インクレチン関連薬の無作為化比較試験189件をメタ解析 研究グループは、GLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬と、プラセボまたは糖尿病治療薬(実薬)を比較した、2型糖尿病患者対象の無作為化試験について、Medline、Embase、the Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、ClinicalTrials.gov.を用いて検索した。収集と解析として、2人の研究者が独立して、引用文献のスクリーニング、バイアスリスクの評価、データ抽出を行った。189件の無作為化試験(合計15万5,145例)が解析に組み込まれた。 統合効果推定値はPeto法を用いて算出し、感度解析には他の統計法を使用した。また、事前に設定された6つの項目(ベースライン時の心血管疾患、インクレチン関連薬の種類、追跡期間の長さ、対照薬の種類、治療の形態、使用したインクレチン関連薬)について、メタ回帰分析にて探索的に異質性を検証した。エビデンスの質の評価にはGRADE法を使用した。インクレチン関連薬の死亡リスクは対照薬と同程度 189件の無作為化試験すべてにおいてバイアスリスクは低~中程度で、そのうち77件では死亡の報告がなく、112件(計15万1,614例)において3,888例の死亡が報告された。 189件をメタ解析した結果、インクレチン関連薬と対照薬の間で全死因死亡に差は認められなかった(1,925/8万4,136例 vs.1,963/6万7,478例、オッズ比:0.96、95%信頼区間[CI]:0.90~1.02、I2=0%、5年間のリスク差:-3イベント/1,000例[95%CI:-7~1]、エビデンスの質:中程度)。 サブグループ解析において、DPP-4阻害薬ではなくGLP-1作動薬で死亡リスクが低下する可能性が示唆されたが、信頼性は低かった。感度解析で効果推定値に重要な差は示されなかった。 著者は、「GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の間に効果の違いがあるかどうか、今後の検証が必要である」とまとめている。

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高齢者糖尿病診療ガイドライン2017発刊

 「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」による「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」(2016年5月)を受け、2017年5月開催の第60回 日本糖尿病学会年次学術集会において、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』(編・著 日本老年医学会・日本糖尿病学会)が書籍として発刊された。高齢者糖尿病診療ガイドライン2017はCQ方式で15項目に分けて記載 『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』はクリニカルクエスチョン(以下「CQ」)方式でまとめられ、CQ一覧を冒頭に示し、これに対する要約、本文、引用文献(必要により参考資料)のフォーマットで記されている。そして、可能な場合はエビデンスレベル(レベル1+および1~4)、推奨グレード(AおよびB)を付している。 『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』の具体的な内容としては、I.高齢者糖尿病の背景・特徴、II.高齢者糖尿病の診断・病態、III.高齢者糖尿病の総合機能評価、IV.高齢者糖尿病の合併症評価、V.血糖コントロールと認知症、VI.血糖コントロールと身体機能低下、VII.高齢者糖尿病の血糖コントロール目標、VIII.高齢者糖尿病の食事療法、IX.高齢者糖尿病の運動療法、X.高齢者糖尿病の経口血糖降下薬治療とGLP-1受容体作動薬治療、XI.高齢者糖尿病のインスリン療法、XII.高齢者糖尿病の低血糖対策とシックデイ対策、XIII.高齢者糖尿病の高血圧、脂質異常症、XIV.介護施設入所者の糖尿病、XV.高齢者糖尿病の終末期ケア、と大きく15項目に分けて記載されている。時間がないときは高齢者糖尿病診療ガイドラインの要約だけでも通読 高齢者糖尿病患者に特有の身体的特徴などを踏まえて、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』では次のように示されている。たとえば「低血糖」について、「高齢者糖尿病の低血糖にはどのような特徴があるか?」のCQに対し、要約では「高齢者の低血糖は、自律神経症状である発汗、動悸、手のふるえなどの症状が減弱し、無自覚低血糖や重症低血糖を起こしやすい。低血糖の悪影響が出やすい」と端的に示されている。また、食事療法の「高齢者における食事のナトリウム制限(減塩)は有効か?」では、「高齢者においても減塩は血圧を改善する(推奨グレードA)」と記されており、運動療法の「高齢者糖尿病において運動療法は血糖コントロール、認知機能、ADL、うつやQOLの改善に有効か?」では、「高齢者糖尿病でも定期的な身体活動、歩行などの運動療法は、代謝異常の是正だけでなく、生命予後、ADLの維持、認知機能低下の抑制にも有効である(推奨グレードA)」と記載されている。 今後、さらに増えると予測される高齢者糖尿病患者の診療に、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』をお役立ていただきたい。

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高齢者における潜在性甲状腺機能低下症への対応(解説:吉岡 成人 氏)-673

潜在性甲状腺機能低下症とその頻度 血中サイロキシン(T4)あるいは遊離サイロキシン(FT4)値は基準範囲にありながら、血中TSHのみが基準値上限を超えて高値を示している場合が潜在性甲状腺機能低下症である。血清TSHが10μU/mLを超え、血清FT4が基準値を下回っている場合は顕性甲状腺機能低下症と診断される。潜在性甲状腺機能低下症の診断には血清TSHの測定が最も重要であるが、TSH値の基準値の上限は加齢に伴い変化し、40歳以上では10歳ごとに0.3μU/mL上昇すると報告されており1)、日本人においても同様の傾向が確認されている2)。 日本における潜在性甲状腺機能低下症の疫学を検討した聖路加国際病院予防医療センターの成績によれば、頻度は、健診受診者のうち4.03%(38万6,846人中1万5,540人、男性1.99%、女性2.03%)、男女とも加齢とともに頻度が増加することが報告されている3)。潜在性甲状腺機能低下症の治療 潜在性甲状腺機能低下症であることのデメリットとしては、倦怠感などの自覚症状の出現、脂質代謝への悪影響、動脈硬化の進展、心機能の低下、妊婦においては流・早産の増加、児の精神発育遅延などが挙げられる。しかし、潜在性甲状腺機能低下症を治療することに対しての十分なエビデンスは確立しておらず、一般的には、TSHが10μU/mL以上の場合に甲状腺ホルモンを補充することが多いものの、TSHが10μU/mL未満の「軽症」患者にどのように対応するかについては意見の一致をみていない。日本甲状腺学会の「Subclinical hypothyroidism潜在性甲状腺機能低下症:診断と治療の手引き」にはTSHが10μU/mLを持続して超える場合に補充を行うとしながらも、甲状腺ホルモンを補充することの有用性と危険性を勘案し、個々の患者の状況を総合的に判断して補充の適応を考慮すべきとしている4)。一般に、抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体が陽性の場合には顕性甲状腺機能低下症に移行しやすいことが知られており、慢性甲状腺炎などの疾患が背景に隠れていないかどうかを判定することも重要である。また、甲状腺ホルモンを補充することの有害性としては、潜在性冠不全の顕性化、心房細動の誘発、骨粗鬆症の進行などが挙げられ、80歳以上の高齢者では慎重に治療の適否を判定すべきである。高齢潜在性甲状腺機能低下症患者への対応 NEJM誌オンライン版2017年4月3日号に65歳以上の高齢潜在性甲状腺機能低下患者を対象として甲状腺ホルモンを投与することの有用性を検討した無作為二重盲検プラセボ対照試験の結果が掲載されている5)。737名(女性396名)、平均年齢74.4歳の潜在性甲状腺機能低下症患者に甲状腺ホルモンを投与しても、甲状腺機能低下症の症状や甲状腺関連QOLに関した質問票の疲労感のスコアには差を認めないという結論が示されている。甲状腺ホルモンを補充することの有害事象である、心房細動や心不全、骨粗鬆症の出現についても差はなかったという。甲状腺自己抗体の測定は実施しておらず、慢性甲状腺炎患者の頻度などは勘案されていない。この臨床試験の結果を日常診療の現場に即座に置き換えることの有用性についてはさらなる検証が必要である。とはいえ、顕性の甲状腺機能低下症患者はもちろん治療の対象となるが、TSHの異常のみを指摘された潜在性甲状腺機能低下症の高齢者に対しては、慌てることなく、十分な経過観察を行い、甲状腺ホルモンの補充の必要性についても慎重に考えてよいといえる。参考文献1)Boucai L, et al. Thyroid. 2011; 21: 5-11.2)Yoshihara A, et al. Thyroid. 2011; 58: 585-588.3)武田京子.日本甲状腺学会誌.2015;6:95-98.4)網野信行ほか.ホルモンと臨床.2008;56:705-724.5)Stott DJ, et al. N Engl J Med. 2017 Apr 3. [Epub ahead of print]

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