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2型糖尿病患者における血糖降下薬間の効果および有害事象の比較:第1選択薬はやはりメトホルミンである(解説:小川 大輔 氏)-581

 近年、DPP4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬の登場により、数多くの糖尿病治療薬が使用できるようになった。欧米では2型糖尿病の第1選択薬はメトホルミンであるが1)、日本では患者の年齢および病態に応じて薬剤を選択することが勧められており、どの薬剤でも選択可能である2)。最近、経口血糖降下薬とインスリン、GLP-1受容体作動薬を含む、すべての糖尿病治療薬の効果と有害事象を比較したメタ解析の結果が報告された3)。 解析対象はランダム化され、24週以上の期間で行われた301の臨床研究であり、主要評価項目は心血管死、副次評価項目は総死亡、重篤な有害事象、心筋梗塞、脳卒中、HbA1c、治療失敗、低血糖、体重である。結果は、心血管死と総死亡については単剤投与、2剤投与、3剤投与のいずれの場合も薬剤間で有意な差は認められなかった。一方、単剤投与の場合、HbA1cはメトホルミンと比較し、SU薬、チアゾリジン薬、DPP4阻害薬、αグルコシダーゼ阻害薬で有意に高かった。また、低血糖はメトホルミンよりSU薬と基礎インスリンで有意に多く、体重増加はメトホルミンよりSU薬とチアゾリジン薬で有意に多かった。メトホルミンを含む2剤投与の場合、メトホルミンとどの薬剤を併用してもHbA1cは同程度であったが、メトホルミンとSGLT2阻害薬の併用が最も低血糖が少なかった。また、メトホルミンとSU薬を含む3剤投与の場合、基礎インスリンとの併用が最も治療失敗が少なく、GLP-1受容体作動薬との併用が最も低血糖が少なく、SGLT2阻害薬との併用が最も体重増加が少なかった。 このメタ解析の目的は、どの薬剤が2型糖尿病治療において最も有効かつ安全かを明らかにすることであった。結果は、インスリンを含む9種類の薬剤間で心血管死や総死亡には差がなく、単剤投与ではメトホルミンが他のすべての薬剤と比較しHbA1cを同程度もしくはより低下していた。また、併用療法ではメトホルミンに他のどの薬剤を併用しても効果は同等であった。つまり、2型糖尿病治療の第1選択薬はやはりメトホルミンであり、第2、第3選択薬は患者の病態に応じて選択するという、アメリカ糖尿病学会(ADA)のリコメンデーションを支持する内容であった。一方、日本ではADAのリコメンデーションとは異なり、第1選択薬は明確に示されていない。2型糖尿病の病態やライフスタイルが異なるわが国では、欧米の薬剤選択が実情に合致しないため、日本糖尿病学会は年齢や病態などに応じて最適な薬剤を選択するように推奨している2)。しかし、実際の臨床現場ではインスリン分泌能やインスリン抵抗性の程度の評価が難しい場合もあり、どの薬剤を投与するべきか悩むことがある。その意味で、今回の研究報告は主に欧米で行われた研究のメタ解析ではあるが、実地臨床において参考になる内容である。 2015年にSGLT2阻害薬エンパグリフロジン、2016年にGLP-1受容体作動薬リラグルチドの心血管死あるいは総死亡を抑制するという試験結果が次々と報告され話題となっている4)5)。注意しなければならないことは、これらの試験が単剤投与あるいはメトホルミンとの併用投与ではなく、通常の治療に追加して行われた試験であるという点である。また、心血管リスクの高い糖尿病患者を対象としている点も考慮しておかなければならない。心血管リスクの低い糖尿病患者も含めた通常の糖尿病診療において、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬をメトホルミンと比較する、あるいはメトホルミンと併用する試験の結果に期待したい。 興味深いことに、単剤投与においてメトホルミンと比較し、治療失敗はDPP4阻害薬で多く、SGLT2阻害薬で少ないことが示された。また、2剤投与においてもメトホルミンにDPP4阻害薬あるいはαグルコシダーゼ阻害薬を併用した場合に治療失敗が多く、メトホルミンにSGLT2阻害薬あるいはSU薬を併用した場合に治療失敗が少ないことが示された。日本ではメトホルミンよりもDPP4阻害薬が第1選択薬として、あるいは他の薬剤に併用して使用される頻度が高いが、DPP4阻害薬の有効性に関する比較検討はまだ少ないので今後の検討が待たれる。

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糖尿病治療薬が心不全治療薬となりうるのか? 瓢箪から駒が出続けるのか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-579

 チアゾリジン薬の衝撃は、FDAをしてその後の糖尿病治療薬すべての認可の際に、心血管イベントをエンドポイントとしたプラセボ対照臨床試験を義務付けた。このことにより、図らずも循環器内科医にとっては糖尿病薬に関する勉強をする機会となり、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬などの糖尿病薬と心血管イベントの関連について知識が増えてきた。 DPP-4阻害薬の1つサキサグリプチンは、SAVOR-TIMI 53試験で心不全の発症増加ありとされたものの、その後のEXAMINE試験とTECOS試験で、ほかのDPP-4阻害薬は心不全発症に差がなかったことで、SAVOR-TIMI 53試験の結果は偶然であったという結論になっているようである。一方で、インクレチン関連という意味で体内動態には共通項が多いGLP-1受容体作動薬リラグルチドは、LEADER試験において心血管イベントを有意に減らした。 最近、世を騒がせているEMPA-REG OUTCOME試験は、LEADER試験と同じような心血管疾患の背景を有する患者を対象としており、糖尿病薬が血糖降下作用以外で心血管イベントを抑制する可能性が示唆されてきている点で興味深いが、しかしながら、その機序はまったく明らかでなく、そもそもFDAの勧告に従って、非劣性ならよしとした試験であるから、瓢箪から駒といわれても仕方がない。ネガティブに出たSAVOR-TIMI 53試験を偶然であったというなら、ポジティブに出たこれらの結果もまた慎重に受け止める姿勢があってもよいと思われる。この点、ESCの心不全ガイドラインの2016年アップデートにおいて、エンパグリフロジンを心不全の予防という観点でクラスIIa、レベルBで推奨しているのは勇み足ではないか。 ところで、本題である。このFIGHT試験は、収縮不全(LVEF<40%)の症例の中で、とくに最近2週間以内に(ガイドライン遵守の薬物治療中にもかかわらず)再入院した症例またはフロセミドの用量が1日40mg以上という症例をピックアップして、比較的重症度の高い症例に対してリラグルチドの効果があるかどうかを検討したものである。試験デザインはプラセボ対照、無作為化二重盲検であり、エンドポイントは死亡や心不全入院までの時間と180日間のNT-proBNPレベルの時間平均の複合スコアである。全部で300例がエントリーされ、実薬群154例、プラセボ群146例でそれぞれITT解析された。 結論からいうと、統計学的にはイベント発症など両者に差はなかった。ただし、シスタチンCはリラグルチド群で増加しており、腎機能障害をもたらす可能性がある。また、有意ではないものの(p=0.05)、死亡や心不全再入院はむしろリラグルチド群で多い傾向にあり、カプランマイヤー曲線をみても、リラグルチドが死亡や心不全入院を増加させる傾向は(とくに糖尿病合併例で)明らかであり、患者数を増やして検討すれば有意に出てしまいそうである。先のLEADER試験やEMPA-REG OUTCOME試験は、心不全のある症例は10%程度しか含まれておらず、このFIGHT試験にエントリーされた重症な心不全とは背景が異なるものの、この試験結果によればリラグルチドは心不全増悪に傾いている感じである。 このように糖尿病薬と心血管イベントの関係は最近入り乱れてまったく混乱の極みにある。そもそも、メカニズムの理解が先行しないところで、効いた効かないということを統計的に解析するのみで解釈は後回しという体勢は、再考すべき時に来ているのではないか。

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急性心不全へのGLP-1受容体作動薬、第II相試験の結果/JAMA

 左室駆出率(LVEF)が低下した急性心不全入院患者に対し、GLP-1受容体作動薬リラグルチドを投与しても退院後のより高度な臨床的安定性には結び付かないことが、米国・ペンシルベニア大学のKenneth B. Margulies氏らによる第II相二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、示された。GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病の状態にかかわらず、重症心不全患者の初期臨床試験で心保護作用を認めることが報告されていた。これを受けて研究グループは、急性心不全患者に対しGLP-1受容体作動薬を投与することで、退院後の臨床的安定性が改善するのかを検討したが、著者は「検討の結果は、そのような臨床効果を期待してのリラグルチドの使用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2016年8月2日号掲載の報告。急性心不全患者におけるGLP-1受容体作動薬vs.プラセボ 試験は2013年8月~2015年3月に、米国24施設で行われた。研究グループは被験者を無作為に2群に割り付けて、一方にはGLP-1受容体作動薬リラグルチドを1日1回皮下注にて投与(1.8mg/日量を忍容性検証期間として30日間、その後180日間投与)、もう一方はプラセボを投与した。 主要エンドポイントは、割り付け治療を問わずすべての患者における総合ランクスコアで、3項目(死亡までの期間、心不全再入院までの期間、ベースライン~180日のNT-proBNP値の時間平均化変化比率)についてランク付けを行った。ランクは高位ほどより健康(安定)であることを示す。また、探索的副次アウトカムとして、主要エンドポイントの各項目と、心構造・機能、6分間歩行テスト、QOL、複合イベント発生などを評価した。GLP-1受容体作動薬は死亡、再入院、NT-proBNP値変化などに有意差みられず 急性心不全患者300例(リラグルチド投与群154例、プラセボ群146例)が、無作為に割り付けられた。被験者は、年齢中央値61歳(IQR:52~68歳)、女性21%、2型糖尿病あり患者59%、LVEF中央値25%(IQR:19~33%)だった。 結果、プラセボと比較してGLP-1受容体作動薬リラグルチドの有意な主要エンドポイントの効果は認められなかった(平均ランク:リラグルチド群146 vs.プラセボ群156、p=0.31)。 項目別にみても、死亡(12% vs.11%、ハザード比[HR]:1.10、95%信頼区間[CI]:0.57~2.14、p=0.78)、心不全での再入院(41% vs.34%、1.30、0.89~1.88、p=0.17)、またNT-proBNP値変化(変化比率でみたp=0.65)と両群間の有意差は認められなかった。探索的副次エンドポイントも有意差はみられなかった。また、事前規定のサブグループ(糖尿病患者群)解析でも、両群間で有意差はみられなかった。 試験担当者が報告した高血糖イベント例は、リラグルチド群16例(10%)、プラセボ群27例(18%)だった。低血糖イベントの報告はわずかであった[2例(1%) vs.4例(3%)]。

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血糖降下薬9種、心血管・全死因死亡リスクは同等/JAMA

 2型糖尿病治療薬の心血管死リスク、全死因死亡リスクについて、インスリンを含む血糖降下薬9つのクラス間による有意な差はないことが明らかにされた。また、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値の低減効果については、単剤療法ではメトホルミンが他の薬剤と比べて、同等もしくは低下する効果があることが、またすべての薬剤がメトホルミンとの併用効果があることも示唆されたという。ニュージーランド・オタゴ大学のSuetonia C. Palmer氏らが、無作為化試験300件超のメタ解析の結果、明らかにした。JAMA誌2016年7月19日号掲載の報告。 追跡期間24週間以上の無作為化試験をメタ解析 研究グループは、Cochrane Library Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、EMBASEのデータベースから、2016年3月21日までに発表された試験期間24週間以上の無作為化試験を対象に、インスリンを含む血糖降下薬の有効性と有害事象について、メタ解析を行った。 主要評価項目は、心血管疾患死だった。副次評価項目は、全死因死亡、重篤な有害事象、心筋梗塞、脳卒中、HbA1c値、治療の失敗、低血糖、体重だった。メトホルミンとの併用はいずれの薬剤も血糖降下効果は同等 対象に包含されたのは、301試験、延べ141万7,367患者月だった。そのうち、単剤療法は177試験、メトホルミンに追加しての2剤併用療法は109試験、メトホルミン+SU薬への3剤併用療法は29試験だった。 分析の結果、心血管疾患死亡率と全死因死亡率については、単剤療法、2・3剤併用療法のいずれについても、薬剤クラスの別による有意な差はなかった。HbA1c値については、メトホルミンに比べ、SU薬(標準化平均差[SMD]:0.18、95%信頼区間[CI]:0.01~0.34)、チアゾリジンジオン系薬(同:0.16、0.00~0.31)、DPP-4阻害薬(同:0.33、0.13~0.52)、α-グルコシダーゼ阻害薬(同:0.35、0.12~0.58)で高かった。 低血糖リスクについては、SU薬(オッズ比[OR]:3.13、95%CI:2.39~4.12、リスク差[RD]:10%、95%CI:7~13)と、基礎インスリン(OR:17.9、95%CI:1.97~162、RD:10%、95%CI:0.08~20)で、いずれも高かった。 メトホルミンとの併用では、HbA1c値の低減効果はいずれの薬剤も同等だったが、低血糖リスクはSGLT2阻害薬が最も低かった(SU薬併用に対するOR:0.12、95%CI:0.08~0.18、RD:-22%、95%CI:-27~-18)。 メトホルミン+SU薬への3剤併用では、低血糖リスクはGLP-1受動体作動薬で最も低かった(チアゾリジンジオン系薬併用に対するOR:0.60、95%CI:0.39~0.94、RD:-10%、95%CI:-18~-2)。 著者は、「これらの結果は、米国糖尿病協会の推奨治療と一致するものだった」と述べている。

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リラグルチドはインクレチン関連薬のLEADERとなりうるか?(解説:住谷 哲 氏)-564

 インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬およびGLP-1受容体作動薬)は、血糖依存性インスリン分泌作用を有することから低血糖の少ない血糖降下薬と位置付けられ、とくにDPP-4阻害薬は経口薬であることから、わが国で多用されている。心血管イベント高リスク2型糖尿病患者に対する安全性を確認する目的でこれまでに報告されたCVOTs(CardioVascular Outcomes Trials)は、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンを用いたEMPA-REG OUTCOME試験を除くと、SAVOR-TIMI53(サキサグリプチン)、EXAMINE(アログリプチン)、TECOS(シタグリプチン)、ELIXA(リキシセナチド)とも、すべてインクレチン関連薬を用いた試験であった。しかし、これら4試験においてはプラセボに対する有益性を示すことができず、インクレチン関連薬は2型糖尿病患者の心血管イベントを減らすことはできないだろうと考えられていた時に、今回のLEADER試験が発表された。  その結果は、リラグルチド投与量の中央値1.78mg/日(わが国の投与量の上限は0.9mg/日)、観察期間3年において、主要評価項目である心血管死、非致死性心筋梗塞および非致死性脳卒中からなる3-point MACEが、リラグルチド投与により13%減少し(HR:0.87、95%CI:0.78~0.97、p=0.01)、さらに全死亡も15%減少する(同:0.85、0.74~0.97、p=0.02)との結果であった。 主要評価項目を個別にみると、有意な減少を示したのは心血管死(HR:0.78、95%CI:0.66~0.93、p=0.007)のみであり、非致死性心筋梗塞(0.88、0.75~1.03、p=0.11)、非致死性脳卒中(0.89、0.72~1.11、p=0.30)には有意な減少が認められなかった。3-point MACEの中で心血管死のみが有意な減少を示した点は、SGLT2阻害薬を用いたEMPA-REG OUTCOME試験と同様である。 この結果は、心血管イベント高リスク2型糖尿病患者に対する包括的心血管リスクの減少を目指した現時点での標準的治療(メトホルミン、スタチン、ACE阻害薬、アスピリンなど)により、非致死性心筋梗塞・脳卒中の発症がほぼ限界まで抑制されている可能性を示唆している。したがって、本試験の結果もEMPA-REG OUTCOME試験と同じく、リラグルチドの標準的治療への上乗せの効果であることを再認識しておく必要がある。 ADA/EASD2015年高血糖管理ガイドライン1)では、メトホルミンへの追加薬剤としてSU薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、基礎インスリンの6種類を横並びに提示してある。どの薬剤を選択するかの判断基準として提示されているのは、有効性(HbA1c低下作用)、低血糖リスク、体重への影響、副作用、費用であり、アウトカムに基づいた判断基準は含まれていない。今後も多くのCVOTsの結果が発表される予定であるが2)、将来的にはガイドラインにもアウトカムに基づいた判断基準が含まれることになるのだろうか? ここで、CVOTsから得られるエビデンスについて、あらためて考えてみよう。本来CVOTsは、新規血糖降下薬が心血管イベントのリスクを、既存の標準的治療に比べて増加しないことを確認するための試験である。そこで、新規血糖降下薬が有する可能性のある血糖降下作用以外のリスクを検出するために、新規血糖降下薬群とプラセボ群とがほぼ同等の血糖コントロール状態になるよう最初からデザインされている。つまり、血糖降下薬に関する試験でありながら、得られた結果は血糖降下作用とは無関係であるという、ある意味矛盾した試験デザインとなっている。さらに、対象には心血管イベントをすでに発症した、または発症のリスクがきわめて高い患者、かつ糖尿病罹病歴の長い患者が含まれることになる。したがってCVOTsで得られたエビデンスは、厳密には糖尿病罹病歴の長い2次予防患者にのみ適用されるエビデンスといってよい。 一方、ADA/EASDをはじめとした各種ガイドラインは、初回治療initial therapyを示したものであり、その対象患者はCVOTsが対象とする患者とは大きく異なっている。したがって、ここではEBMに内包されている外的妥当性 external validity(一般化可能性 generalizability)の問題を避けて通れないことになる。換言すれば、糖尿病罹病歴の長い2次予防患者で得られたCVOTsのエビデンスを、ガイドラインが対象とする初回治療患者に適用できるのだろうか?教科書的には2次予防のエビデンスと1次予防のエビデンスははっきり区別しなければならない。つまり、CVOTsで得られたエビデンスは、厳密には1次予防には適用できないことになる。しかし、2次予防のエビデンスのない薬剤と2次予防のエビデンスのある薬剤との、二者のいずれかを選択しなくてはならない場合には、眼前の患者におけるリスクとベネフィットを十分に考慮したうえで、2次予防のエビデンスのある薬剤を選択するのは妥当と思われる。この点でリラグルチドは、インクレチン関連薬のLEADERとしての資格はあるだろう。ただし、部下の標準的治療(メトホルミン、スタチン、ACE阻害薬、アスピリンなど)に支えられてのLEADERであるのを忘れてはならない。 ADA/EASDのガイドラインには、治療にかかる費用も薬剤選択判断基準の1つに含まれている。本試験における全死亡のNNTは3年間で98であり、0.9mg/日の投与で同様の結果が得られると仮定すると(大きな仮定かもしれない)、薬剤費のみで約5,500万円の医療費を3年間に使用することで、1人の死亡が防げる計算になる。これが、高いか安いかの判断は筆者にはつきかねるが、この点も患者とのshared decision makingには必要な情報であろう。

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糖尿病薬の心血管アウトカム試験をどう読むか?ADAハイライトより

 ノボノルディスクファーマ株式会社は6月27日に都内にて2016年米国糖尿病学会(ADA)ハイライトセミナーを開催し、関西電力病院総長/関西電力医学研究所所長の清野 裕氏が「糖尿病治療の流れと最適な治療薬の選択を考える」をテーマに講演した。ADA 2016でとくに注目を集めたトピックとして、「最適な2型糖尿病の管理を目指して新しい糖尿病治療薬をどのように使うか」「糖尿病治療薬の心血管系への影響(大規模心血管アウトカム試験の結果から)」が紹介され、それらを中心に同氏が解説した。個々の状態と病態に合わせた目標設定と治療法選択を 糖尿病治療においては血糖値の低下だけを目指して、低血糖が発生したり、体重が増加したりすることは好ましくないため、「血糖値の改善」「低血糖発現の抑制」「体重の維持または減量」を最終目標とすることが重要であることのことだ。 そして、欧米で第1選択薬となっているメトホルミンへの追加投与として、リラグルチドとグリメピリドを比較した臨床試験の結果を基に、GLP-1受容体作動薬の追加は前述の目標達成に有用であることが説明された。欧米における糖尿病は肥満型が多いため、SU薬の効果が出にくい、という側面があるものの、日本でもGLP-1受容体作動薬の使用について再評価する必要があるのではとの考えが示された。またADAおよび欧州糖尿病学会(EASD)においても患者中心のアプローチをより重要視する傾向になってきており、年齢、罹患期間、生活環境など個々の状態と病態に合わせた目標と治療法選択が必要であることを清野氏は強調した。糖尿病治療薬の心血管系への影響をどう考えるか? これまでに発表された糖尿病薬の心血管アウトカム試験はDPP-4阻害薬を対象としたものが3件、GLP-1受容体作動薬を対象としたものが1件あったが、いずれもプラセボと比較して非劣性という結果であった。しかし、昨年発表された、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンのEMPA-REG OUTCOME試験で初めて優越性が示された。それに続き、今回発表されたGLP-1受容体作動薬リラグルチドを用いたLEADER試験でも優越性が認められた。 LEADER試験の主な結果としては、プライマリエンドポイントである心血管死、非致死性心筋梗塞または非致死性脳卒中のいずれかが発現するまでの時間に関して、プラセボ群に対しリラグルチド群において、13%の有意なリスク低下が示された。また、全死亡については15%の有意な低下がみられ、心血管死単独では22%の有意なリスク低下が認められた。顕性アルブミン尿、血清クレアチン倍加、末期腎不全、腎死亡のいずれかの腎障害が発生するリスクについても22%の有意な低下が認められ、部分集団解析では、eGFR60未満の腎機能低下群でリラグルチドによる心血管イベントリスクの有意な抑制が認められた。優越性が認められた2つの試験結果の違いとは? プラセボ群に比較して心血管アウトカム抑制の優越性が認められたEMPA-REG OUTCOME試験とLEADER試験だが、清野氏によると、「これら2つの試験では心血管イベントの抑制の仕方が異なる」とのことだ。 両試験を比較すると、イベント発生の傾向に差が認められるようになるのは試験開始後3ヵ月付近である。EMPA-REG OUTCOME試験では、3ヵ月頃からプラセボ群とイベント発生数に顕著な差がみられるようになる。これはエンパグリフロジンに対して著しい反応性を示す患者が存在するためではないかと清野氏はみている。一方でLEADER試験では、1.5年ころから少しずつ両群に差が開いてきている。これはリラグルチドの心血管系への効果が少しずつ現れているためではないかと説明した。 さらに、個別のイベント発生に注目すると、大きな違いがみられる。心血管死については、リラグルチドでも有意な抑制が示されたが、エンパグリフロジンではより顕著な差がみられる。また、非致死性心筋梗塞や非致死性脳卒中についても傾向が異なっており、とくに非致死性脳卒中については、エンパグリフロジンはプラセボ群よりむしろ増加する傾向が示されていることを指摘した。 心不全による入院や心血管死がエンパグリフロジンにより著しい抑制が認められたのは、エンパグリフロジンが血行動態に対して好影響を与えているためではないかとの見方が示された。一方でリラグルチドに関しては、動脈硬化に対して抑制的に働いたのでは、と考えることができ、これら2つの試験におけるイベントの抑制の期間による発現の差、個別のイベント発生率の差は、それぞれの薬剤が異なる作用機序により心血管イベントを抑制しているからでは、との推論が展開された。 最後に、「DPP-4阻害薬の心血管アウトカム試験はすべて非劣性であったが、LEDEAR試験で優越性が示されたのはGLP-1受容体作動薬の作用の強さによるものなのか」との会場からの質問に対し清野氏は、血中の活性型換算からそれも1つの理由である可能性があるが、試験デザインの影響もあることを説明した。これらの試験は心血管イベント既往のある重症度の高い患者を対象としており、これらの条件で優越性を示すことは難しいと考えられ、より軽症患者を対象により長期の試験を行えば優越性が示される可能性もあるのでは、との見解を示した。

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第2回 薬物療法のキホン(総論)【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第2回】薬物療法のキホン(総論)-薬物療法のポイントを教えてください。 糖尿病では、血糖のみならず、体重、血圧、脂質の良好なコントロール状態を維持し、細小血管合併症や動脈硬化性疾患の発症・進展を抑制し、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)を維持し、寿命を確保することが求められます1)。そのために、まず、食事・運動療法から開始し、効果がなければ薬物療法を開始しますが、そのときも重要なのは“食事・運動療法”です。 第1回でもお話ししましたが、糖尿病では、食事・運動療法は治療の大前提です(第1回 食事療法・運動療法のキホン)。食事・運動療法、とくに食事療法が守られなければ、薬物療法の効果が十分に得られないからです。薬物治療を開始する際には、患者さんに“食事療法の代わりになる薬はない”こと、“食事療法が守られないと、どんな薬を使っても十分な効果が得られない”ことをお伝えするとよいでしょう。また、薬物療法で期待できる効果が得られないときには、食事・運動療法が守られていない可能性があるので、生活習慣が乱れていないかを確認してください。-経口血糖降下薬のファーストチョイスは?DPP-4阻害薬かメトホルミンかで迷っています。 DPP-4阻害薬、メトホルミンのいずれの薬剤も単独で低血糖を来しにくく、体重増加を来さないという点で使いやすい薬剤です。 DPP-4阻害薬は、腎機能、あるいは肝機能障害に注意が必要ですが、薬剤によって異なるので、各薬剤の腎・肝機能障害のある患者さんに対する適応を確認して選択します。メトホルミンは、高齢者や腎機能低下進行例注)では注意が必要ですが、薬価が安いというメリットがあります。糖尿病患者さんは他の薬剤を服用していることも多いため、経済的事情を考慮するのも大切な視点です。 私は、メトホルミンを最初に処方することが比較的多く、メトホルミンが使えない場合はDPP-4阻害薬を選択することがあります。また、メトホルミンで治療を開始するも、副作用である消化器症状のために治療が継続できない場合には、DPP-4阻害薬に切り替えることがあります。 DPP-4阻害薬はインスリン分泌促進系の薬剤で、メトホルミンはインスリン抵抗性改善系の薬剤ですので、若くて肥満があり、食事療法が守れない方であればメトホルミン、非肥満、高齢であればDPP-4阻害薬という考え方もよいと思います。それぞれの薬剤の特性や副作用、禁忌などを考慮し、患者さんに適した薬剤を選択するとよいでしょう。注:メトグルコを除くビグアナイド薬は、腎機能障害患者に禁忌となっています。-機序の異なる薬の使い分け・効果的な組み合わせを教えてください。 日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド」1)では、病態に合わせた経口血糖降下薬の選択が示されています。病態で分けるとすれば、インスリン分泌能低下、あるいはインスリン抵抗性のどちらが優位かによって薬剤を選択できます。いずれかを使っても目標とする血糖コントロールが得られなければ、異なる作用機序の薬剤を組み合わせるのも有用です。 もう1つは、「平均血糖」と「血糖変動」という考え方です。診断、あるいは治療開始後の血糖コントロール状況の確認のために、空腹時血糖値とHbA1cでみることが多いと思いますが、HbA1cは、過去1~2ヵ月の血糖値の平均をみているものです。しかし、血糖値は1日の中で常に変動していて、その変動する血糖値をならした「平均血糖」を反映しているのがHbA1cであり、そこに大きく影響するのは基本的には空腹時血糖値です。 血糖値は、食事のたびに上昇し、食後1時間半~2時間の間にピークを迎えますが(食後血糖値)、糖尿病、あるいは予備軍であるIGT(境界型)で、食後高血糖が心血管疾患のリスクになることが、幾つかの大規模臨床試験で示されています2,3)。しかし、食後高血糖をHbA1cでみることはむずかしく、空腹時血糖値やHbA1cで良好な血糖コントロールが得られている患者さんで、CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続血糖測定)により24時間の血糖変動をみたところ、空腹時血糖値は正常範囲でしたが、食後高血糖が認められたというケースも少なくありません。 糖尿病で血糖値を下げる目的は、合併症の予防です。生命予後を左右する心血管疾患などの大血管障害予防のために、空腹時血糖のみならず、食後の急激な血糖上昇を抑制し、血糖変動幅を縮小させる治療が重要だと私は考えています。血糖変動幅の縮小によりHbA1cが低下することを、われわれは「“上質”なHbA1cの低下」と呼んでいます。 平均血糖、つまり主に空腹時血糖値を低下させる薬剤には、スルホニル尿素(SU)薬、チアゾリジン薬、BG薬、SGLT2阻害薬があります。対して、食後高血糖を抑制し、血糖変動幅を縮小させる薬剤には、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)と速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)があります。DPP-4阻害薬はいずれの作用も持ちます。空腹時血糖値、食後血糖値ともに高い患者さんであれば、空腹時血糖値を低下させる薬剤と食後高血糖を改善する薬剤を組み合わせるのもよいでしょう。 このように病態や血糖日内変動幅などの観点から患者さんに適した薬剤を選択しますが、加えて年齢や肝・腎などの生理機能、肥満の有無や低血糖を起こしにくい、といった視点も合わせて、最適な治療を決めていきます。-同グループ内での薬剤の選択、使い分けを教えてください。 いざ、薬剤を選択しようとすると、同種・同効の薬剤が多いものもあり、どれを選べばよいか迷うこともあると思います。とくに比較的新しい薬剤はそうですね。 DPP-4阻害薬は血糖低下作用についてはおおむね同等ですが、排出経路が薬剤によって異なります。主に腎で排泄される薬剤と肝で排泄される薬剤があるので、腎機能、もしくは肝機能障害がある患者さんで使い分けるとよいでしょう。また、半減期の違いから、1日1回投与のものと2回投与のものがあるので、服薬回数で選択するというのもよいでしょう。 最も新しい薬剤であるSGLT2阻害薬は、腎の近位尿細管で糖の再吸収を担うSGLT2を阻害することで、腎における糖の再吸収を抑制し、尿中への糖排泄を促進させて血糖を低下させます。SGLT2阻害薬の血糖低下作用についてもおおむね同等と思っていますが、私は、SGLT2以外に腎でブドウ糖の再吸収を担うSGLT2と同じファミリーであるSGLT1に注目しています。 腎における糖の再吸収の90%はSGLT2によるものですが、残り10%を担っているのがSGLT1です4)。このSGLT1は主に小腸に存在し、腸管からの糖の吸収・再吸収という役割を担っています5)。SGLT2に選択性が高い場合、腎における糖の再吸収抑制という点ではよいのですが、食直後に消化管から糖が吸収されるスピードに、尿細管での糖の再吸収阻害がどうしても追い付かないという問題が出てきます。SGLT2阻害薬の中にはSGLT2に対する選択性が低い、つまりSGLT1の阻害作用を持つ薬剤もあり、その場合、食後の消化管における糖の吸収遅延が期待できます。実際に、カナグリフロジン(商品名:カナグル)で、小腸での糖の吸収を遅らせ、食後の血糖上昇を抑制したというデータもあります6)。α-GIと同じ作用と考えてよいでしょう。このSGLT1の小腸における糖の吸収・再吸収という作用に着目し、SGLT2とSGLT1の両方を阻害するデュアルインヒビターが現在、海外では開発中です。 インスリン分泌を促進する消化管ホルモンであるインクレチンに着目し、7年前にその関連薬として臨床応用できるようになったのがDPP-4阻害薬と、もう1つGLP-1受容体作動薬があります。間接的に作用するのがDPP-4阻害薬であるのに対し、直接作用するのがGLP-1受容体作動薬です。GLP-1受容体作動薬は注射ですので、インスリン療法のようにきめ細やかな用量設定の必要はないものの、患者さんの注射に対する心理的障壁もあって、導入は容易ではないかもしれません。GLP-1受容体作動薬では、血糖低下以外に体重減少が期待できますが、これは、中枢神経系にも作用して食欲を抑制する以外に、胃の内容物の排出を遅らせることで、内容物が胃にとどまっている時間が長くなり、満腹感を感じやすいことにもよります。 GLP-1受容体作動薬には、半減期の長い長時間作用型[リラグルチド(商品名:ビクトーザ)、持続性エキセナチド(同:ビデュリオン)、デュラグルチド(同:トルリシティ)]と、半減期の短い短時間作用型[エキセナチド(同:バイエッタ)、リキシセナチド(同:リキスミア)]があり、短時間作用型のものは、高濃度のGLP-1が維持されないため、胃排泄の遅延作用に対するタキフィラキシー(効果減弱)が起こりにくいという特徴があります。胃排泄の遅延作用が継続するため、体重減少効果が期待でき、さらに、食後高血糖の抑制作用が期待できます。対して、長時間作用型のものは、高濃度のGLP-1が維持されるため、空腹時の血糖低下作用が期待できます。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2015-2016. 文光堂;2016. 2)DECODE Study Group, the European Diabetes Epidemiology Group. Arch Intern Med 2001;161:397-405.3)Tominaga M et al. Diabetes Care 1999;22:920-924.4)Fujita Y, et al . J Diabetes Investig. 2014;5:265-275.5)稲垣暢也編. 糖輸送体の基礎を知る. SGLT阻害薬のすべて. 先端医学社;2014. 6)Polidori D et al. Diabetes Care. 2013;36:2154-2161.

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リラグルチドで2型糖尿病の心血管イベントリスク低下/NEJM

 心血管イベントの発生リスクが高い2型糖尿病患者に対し、標準治療に加えてGLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)を投与することで、心血管イベントリスクが有意に低下したことが報告された。米国・テキサス大学のSteven P. Marso 氏らによる9,000例超を対象とした国際多施設共同のプラセボ対照無作為化二重盲検試験「LEADER」の結果で、NEJM誌オンライン版2016年6月13日号で発表された。2型糖尿病患者で、標準治療に追加投与した場合のリラグルチドの心血管系の効果については明らかになっていなかった。心血管死、非致死的心筋梗塞・脳卒中の初回発生を時間事象分析 LEADER試験は、32ヵ国、410ヵ所の医療機関を通じ、2型糖尿病で心血管イベントの発生リスクが高い9,340例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に割り付け、一方にはリラグルチドを(1.8mgまたは最大耐容量)、もう一方の群にはプラセボを、それぞれ1日1回標準治療に加え投与した。 主要評価項目は心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の初回発生の複合で、時間事象分析にて評価した。本試験は、主要アウトカムについてリラグルチドはプラセボに対し非劣性であると仮定して行われ、非劣性マージンの設定は、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値1.30とされた。また、事前規定の探索的アウトカムについて、多様性に関する補正は行われなかった。リラグルチド投与で心血管死リスクが約2割低下 追跡期間中央値は3.8年だった。主要評価項目の複合イベントの発生は、プラセボ群14.9%(694/4,672例)に対し、リラグルチド群は13.0%(608/4,668例)と有意に低率だった(HR:0.87、95%CI:0.78~0.97、非劣性p<0.001、優越性p=0.01)。 個別にみると、心血管死亡の発生は、プラセボ群6.0%(278例)に対し、リラグルチド群は4.7%(219例)で有意に低率だった(HR:0.78、95%CI:0.66~0.93、p=0.007)。また全死因死亡も、それぞれ9.6%(447例)と8.2%(381例)と、リラグルチド群で有意に低かった(同:0.85、0.74~0.97、p=0.02)。 一方で、非致死的心筋梗塞(同:0.88、0.75~1.03、p=0.11)、非致死的脳卒中(0.89、0.72~1.11、p=0.30)、心不全による入院(0.87、0.73~1.05)の発生については、プラセボ群と比べてリラグルチド群で有意な低下は認められなかった。 試験薬の中断率は、リラグルチド群がプラセボ群よりも有意に多かった(9.5% vs.7.3%、p<0.001)。リラグルチド群服用中止の原因で最も頻度の高かった有害事象は、消化管イベントだった。膵炎の発生は、リラグルチド群のほうが少なかったが有意差はみられなかった(急性膵炎18例[0.4%] vs.23例[0.5%](p=0.44)。

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インクレチン関連薬の心不全リスクを検証/NEJM

 インクレチン関連薬は、一般的な経口糖尿病治療薬の併用療法と比較して、心不全による入院リスクを増大しないことが示された。カナダ・ジューイッシュ総合病院のKristian B. Filion氏らが、国際多施設共同コホート研究Canadian Network for Observational Drug Effect Studies(CNODES)の一環としてデータを解析し明らかにした。インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受動体作動薬など)は、安全性に関して心不全リスクが増大する可能性が示唆されているが、現在進行中の臨床試験でこの問題を検証するには規模が不十分とされていた。NEJM誌2016年3月24日号掲載の報告。カナダ・米国・英国の約150万例でコホート内症例対照研究を実施 研究グループは、カナダ(アルバータ州、マニトバ州、オンタリオ州、サスカチワン州)、米国、英国の6施設からの糖尿病患者の医療データを用い、コホート内症例対照研究を行った(2014年6月30日まで)。コホート全体で149万9,650例が解析対象となった。 心不全により入院した患者1例に対し、同一コホートから性別、年齢、コホート登録日、糖尿病の治療期間、追跡調査期間をマッチさせた最大20例の対照を設定。条件付きロジスティック回帰分析により、経口糖尿病治療薬併用療法と比較したインクレチン関連薬の、心不全入院リスクのハザード比をコホートごとに推算し、ランダム効果モデルを用いてコホート全体を統合した。インクレチン関連薬の使用で心不全入院リスクは増大しない 全体で心不全による入院が2万9,741件認められた(発生率:9.2件/1,000人年)。経口糖尿病治療薬併用療法と比較したインクレチン関連薬の心不全入院リスクは、心不全の既往歴がある患者(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.62~1.19)、心不全の既往歴がない患者(同:0.82、0.67~1.00)いずれにおいても増加はみられなかった。 DPP-4阻害薬(HR:0.84、95%CI:0.69~1.02)、GLP-1受容体作動薬(HR:0.95、95%CI:0.83~1.10)の別にみても結果は同様であった。 著者は、「これまでの臨床試験の対象集団と比較して、本コホートの糖尿病患者の多くは罹病期間が短く(心不全既往歴なし:0.7年、心不全既往歴あり:1.8年)、そのため心不全リスクが低くなった可能性があるが、一方で2次解析により、インクレチン関連薬による心不全リスクは、糖尿病治療期間による違いはないことが示された」と述べている。

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2型糖尿病における基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の有用性は…(解説:吉岡 成人 氏)-506

基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用 米国糖尿病学会(American Diabetes Association:ADA)の推奨する2型糖尿病の治療アルゴリズムでは、第1選択薬はメトホルミンであり、単剤→2剤併用(注射薬であるインスリン、GLP-1受容体作動薬との併用も可)→3剤併用とステップアップして、最終的な注射薬との併用療法として、メトホルミンをベースに基礎インスリンと食事の際の(超)速効型インスリン製剤の併用(強化インスリン療法)、または、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用が勧められている。肥満が多い欧米の糖尿病患者においては、肥満を助長せず、食欲を亢進させないGLP-1受容体作動薬が広く使用されている。基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の有用性を検討 現在、Novo Nordisk社では持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリンデグルデク(商品名:トレシーバ)とGLP-1受容体作動薬であるリラグルチド(同:ビクトーザ)の固定用量配合剤(3ml中に300単位のインスリンデグルデク、10.8mgのリラグルチドを含むプレフィルドタイプのペン製剤;one dose stepにインスリンデグルデク1単位、リラグルチド0.036mgを含有)に関する臨床試験を行っており、本論文は、配合剤と持効型溶解インスリン製剤であるグラルギン(同:ランタス)を使用してタイトレーションを行った際の有用性を比較検討した試験である。 10ヵ国、75施設から患者をリクルートした多施設国際共同試験であり、ランダム化、オープンラベルの第III相試験である。グラルギン20~50Uと1,500mg以上のメトホルミンの併用でも血糖コントロールが不十分(HbA1c>7.0~10.0%)な2型糖尿病患者557例(平均年齢58.8歳、男性が51,3%、平均BMI:31.7kg/m2)を対象として、空腹時血糖値72~90mg/dLをターゲットに、週に2回、デグルデク/リラグルチドないしはグラルギンでタイトレーションを行う2群に分け、26週にわたって経過を観察した試験である。デグルデク/リラグルチド群(278例)では、16 dose steps(デグルデク16単位、リラグルチド0.6mg)から開始し、50 dose steps(デグルデク50単位、リラグルチド1.8mg)まで増量し、グラルギン群(279例)では最大投与量に上限値を設けずに増量するというプロトコルを採用している。デグルデク/リラグルチド群ではHbA1c、体重が有意に低下、低血糖の頻度も減少 その結果、デグルデク/リラグルチド群ではHbA1cが-1.81%(8.4→6.6%)、グラルギン群-1.13%(8.2→7.1%)となり、推定治療差(ETD)は-0.59%(95%信頼区間:-0.74~-0.45)と非劣性基準を満たし、統計的な優越性基準も満たした(p<0.001)。また、体重についてもデグルデク/リラグルチド群では1.4kg減少し(グラルギン群では1.8kg増加)、低血糖はデグルデク/リラグルチド群で2.23件/患者年(ランタス群では5.05件/患者年)と有意に少なかった。非重篤な胃腸障害はデグルデク/リラグルチド群で79件、グラルギン群で18件とデグルデク/リラグルチド群で多かったが、重篤な有害事象の頻度に差はなかった。日本におけるデグルデク/リラグルチド配合剤の有用性は… 日本ではリラグルチド(商品名:ビクトーザ)、エキセナチド(同:バイエッタ)、エキセナチド持続性注射剤(ビデュリオン)、リキシセナチド(リキスミア)、デュラグルチド(トルリシティ・アテオス)の5種類のGLP-1受容体作動薬が発売されている。インスリンや経口糖尿病治療薬との併用についての保険適用で、薬剤間に若干の差はあるものの、副作用としての嘔気などの消化管機能障害のため、適正な用量までの増量が難しい患者が少なくない。また、発売当初に期待されていた膵β細胞の保護機能に関する臨床データは得られておらず、体重減少や血糖管理が長期間にわたり持続する症例は期待されたほど多くはなく、薬剤の有用性を実感しにくいことも事実である。しかし、週1回製剤のデュラグルチドは注射の操作も簡単であり、認知機能が低下した高齢者などに対して、患者や家族ではなく訪問看護師や地域の一般医が週に1回の注射を行うことで安定した血糖管理が得られる症例もあり、今後幅広く医療の現場で使用される可能性も示唆されている。 いずれにしても、欧米人ほどは大量のインスリンを必要とせず、BMI30kg/m2を超える肥満2型糖尿病患者がさほど多くない日本において、インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤がどの程度の価格で発売され、どのようなタイプの患者にとって福音となるのか、慎重な検討が必要であろう。

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インクレチン製剤で膵がんリスクは増大するか/BMJ

 糖尿病治療薬であるインクレチン製剤による膵がんの発症リスクは、スルホニル尿素(SU)薬と変わらないことが、カナダ・マギル大学のLaurent Azoulay氏らが行ったCNODES試験で確認された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年2月17日号に掲載された。インクレチン製剤は低血糖のリスクが低く、体重への好ましい作用があるが、膵がんとの関連が示唆されている。インクレチン製剤の膵がんリスクについては、これまでに6件の観察研究があるが、結果は相反するものであり、方法論上の欠陥の指摘もあるという。97万例以上を追跡し、コホート内症例対照研究で関連を評価 CNODES試験は、2型糖尿病患者の治療におけるインクレチン製剤とその膵がんリスクの関連を検証する国際的な多施設共同コホート研究(カナダ保健省健康研究所の助成による)。 カナダ、米国、英国の6施設が参加し、2007年1月1日~13年6月30日の間に抗糖尿病薬による治療を開始した97万2,384例が解析の対象となった。 各参加施設においてコホート内症例対照研究を行った。膵がん発症例に対し、性別、年齢、登録日、糖尿病治療期間、フォローアップ期間をマッチさせた対照を最大20例まで設定した。 SU薬と比較したインクレチン製剤の膵がん発症のハザード比(OR)および95%信頼区間(CI)を推算した。また、薬剤のクラス別(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)および使用期間別(累積使用期間、治療開始後期間)の膵がんリスクの評価を行った。 DPP-4阻害薬はリナグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチンが、GLP-1受容体作動薬にはエキセナチド、リラグルチドが含まれた。使用期間が長くなると、リスクが低下する傾向に 全体(97万2,384例)の平均年齢は56.9歳、男性が50.9%含まれた。各施設のフォローアップ期間中央値は1.3~2.8年であり、全体のフォローアップ期間は202万4,441人年だった。 この間に、1,221例が新規に膵がんを発症した(粗発症率:0.60/1,000人年)。背景因子をマッチさせた対照は2万2,298例であった。 対照群に比べ、膵がん群は肥満が少なかったが、糖尿病のコントロール不良やアルコール関連疾患を有する患者が多く、喫煙歴や急性/慢性膵炎歴を有する症例も多かった。 SU薬の使用例はインクレチン製剤使用例よりも年齢が若く、治療期間が長く、肥満の頻度が高く、HbA1c値が高かった。また、インクレチン製剤使用例は、細小血管合併症の診断例が少なかった。膵炎の既往例は両薬剤で同等だった。 SU薬と比較したインクレチン製剤の膵がん発症の補正HRは1.02(95%CI:0.84~1.23)であり、有意な差を認めなかった。また、SU薬に比べて、DPP-4阻害薬(補正HR:1.02、95%CI:0.84~1.24)およびGLP-1受容体作動薬(1.13、0.38~3.38)の膵がん発症リスクは、いずれも同等であった。 累積使用期間が1年未満の症例では、インクレチン製剤で膵がんリスクが増大したが有意ではなかった(補正HR:1.53、95%CI:0.93~2.51)。これに対し、有意差はないものの、投与期間が1~1.9年の症例ではリスクが低下し(1.07、0.82~1.39)、2年以上の症例ではむしろインクレチン製剤のほうがリスクは低くなった(0.62、0.36~1.07)。 治療開始後期間についても、インクレチン製剤の膵がんリスクに有意な影響はなかった(1~1.9年=HR:1.06、95%CI:0.86~1.31、2年以上:0.93、0.60~1.45)。 個々のインクレチン製剤についても、同様の知見が得られた。 著者は、「インクレチン製剤に起因するがんが潜在している可能性があるため監視を継続する必要があるが、これらの知見によりインクレチン製剤の安全性が再確認された」としている。

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ACS発症の糖尿病におけるリキシセナチド、心血管転帰への影響は?/NEJM

 2型糖尿病で急性冠症候群(ACS)を発症した患者に対し、GLP-1受容体作動薬リキシセナチド(商品名:リキスミア)を追加投与しても通常治療のみの場合と比べて、主要心血管イベントやその他重篤有害事象の発生率について有意な変化はみられなかった。米国ハーバード・メディカル・スクールのMarc A. Pfeffer氏らによる6,068例を対象とした多施設共同無作為化プラセボ対照試験ELIXAの結果、報告された。リキシセナチドなどGLP-1受容体作動薬は多くの国で2型糖尿病患者への血糖降下薬として承認されているが、これまで大規模な心血管アウトカム試験の報告はなかった。NEJM誌2015年12月3日号掲載の報告。49ヵ国で6,068例を対象に無作為化プラセボ対照試験 試験は2010年7月9日~13年8月2日に、49ヵ国で6,068例の患者を登録して行われた。被験者は、2型糖尿病で、無作為化前180日以内に心筋梗塞または不安定狭心症で入院歴のある患者で、通常治療に追加してリキシセナチドまたはプラセボを投与する群に無作為に割り付け、リキシセナチドのプラセボに対する非劣性(ハザード比の95%信頼区間上限値を1.3と定義)と優越性(同1.0と定義)を評価した。 主要エンドポイントは、心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症による入院の複合であった。 両群の被験者特性は類似しており、リキシセナチド群(3,034例)は平均年齢59歳、65歳以上被験者比率33.1%、女性30.4%、糖尿病罹病期間9.2年、HbA1c値7.7%、BMI 30.1、喫煙者11.7%、指標ACS以前の心筋梗塞歴22.1%、無作為化時の病歴は高血圧75.6%、PCI 67.6%、心不全22.5%など。また収縮期血圧129mmHg、LDL-C値78.8mg/dL、確認されたACSイベントはSTEMIが44.5%、非STEMI 38.4%、不安定狭心症16.9%、ACSから無作為化までの期間は71.8日などの特性を有していた。主要心血管イベントの発生、プラセボに対する優越性は認められず 追跡期間は中央値25ヵ月であった。主要エンドポイントの発生は、リキシセナチド群406例(13.4%)、プラセボ群399例(13.2%)で(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.89~1.17)、リキシセナチドのプラセボに対する非劣性は確認されたが(p<0.001)、優越性は認められなかった(p=0.81)。また両群間で、追加エンドポイント指標の心不全による入院(リキシセナチド群のHR:0.96、95%CI:0.75~1.23)、全死因死亡(同:0.94、0.78~1.13)についても有意差は示されなかった。 一方で、リキシセナチドはプラセボと比べて、重篤有害事象の発生は高率ではなかった(20.6% vs.22.1%)。また重症低血糖、膵炎、膵腫瘍、アレルギー反応の発生率もプラセボと変わらなかった。

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MDI Liraglutide 試験:強化インスリン療法にGLP-1受容体作動薬を追加する意義(解説:小川 大輔 氏)-455

 2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性増大により、インスリン作用不足を来し高血糖が持続する疾患である。薬物療法は通常、経口血糖降下薬で開始し併用することが多いが、進行するとGLP-1受容体作動薬や持効型インスリンを併用したり、強化インスリン療法に変更したりする。2型糖尿病の症例に強化インスリン療法を長期間続け、インスリン投与量を徐々に増やしていくと、しばしば体重の増加と低血糖症の出現が問題となる。 今回、BMJ誌に掲載されたMDI Liragultide Trialは、強化インスリン療法を行っている血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者に対し、GLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)1.8mgを24週間併用することで、血糖コントロールが改善するか、また体重やインスリン投与量を減らすことができるかを、プラセボと比較検討した試験である。スウェーデンの14施設で施行され、リラグルチド投与群ではHbA1cが開始前より約1.5%有意に低下した。また、体重も3.8 kg有意に減少し、インスリン投与量も18.1単位有意に低下した。さらにCGMで血糖変動も評価しており、リラグルチド群はプラセボ群と比べて有意に血糖変動を改善した。有害事象については、低血糖は両群間で有意差はなく、悪心はリラグルチド投与群で多く認めた。 経口血糖降下薬あるいは持効型インスリンを投与中の2型糖尿病症例に、GLP-1受容体作動薬を追加して効果を検討した試験はすでにあるが、強化インスリン療法にGLP-1受容体作動薬を追加した試験はこれが初めてである。これまで、強化インスリン療法まで行っても血糖や体重のコントロールができない場合、次の一手に困る「手詰まり」感があったが、インクレチン関連薬であるGLP-1受容体作動薬を追加することにより、血糖コントロールが改善し、体重が減少し、さらにインスリン投与量を減らせることが示された意義は大きい。この試験のリミテーションは、観察期間が24週間と短いため、リラグルチドを長期間併用した際の有害事象や心血管イベントに対する影響が不明であること、また、わが国で承認されているリラグルチド投与量の0.9mgより多いという点である。今後、日本人の糖尿病患者を対象とした検討に期待したい。

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EMPA-REG OUTCOME試験:リンゴのもたらした福音(解説:住谷 哲 氏)-422

 リンゴを手に取ったために、アダムとイブは楽園から追放された。ニュートンは、リンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見した。どうやら、リンゴは人類にとって大きな変化をもたらす契機であるらしい。今回報告されたEMPA-REG OUTCOME試験の結果も、現行の2型糖尿病薬物療法に変革をもたらすだろう。 優れた臨床試験は、設定された疑問に明確な解答を与えるだけではなく、より多くの疑問を提出するものであるが、この点においても本試験はきわめて優れた試験といえる。本試験は、FDAが新たな血糖降下薬の認可に際して求めている心血管アウトカム試験(cardiovascular outcome trial:CVOT)の一環として行われた。SGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害薬であるエンパグリフロジンが、心血管イベントリスクを増加しないか、増加しないならば減少させるか、が本試験に設定された疑問である。短期間で結果を出すために、対象患者は、ほぼ100%が心血管疾患を有する2型糖尿病患者が選択された。かつ、心血管疾患を有する2型糖尿病患者に対する標準治療に加えて、プラセボとエンパグリフロジンが投与された。その結果、3年間の治療により心血管死が38%減少し、さらに、総死亡が32%減少する驚くべき結果となった。しかし、奇妙なことに、非致死性心筋梗塞および非致死性脳卒中には有意な減少が認められず、心不全による入院の減少が、心血管死ならびに総死亡の減少と密接に関連していることを示唆する結果であった。さらに、心血管死の減少は、治療開始3ヵ月後にはすでに認められていることから、血糖、血圧、体重、内臓脂肪量などのmetabolic parameterの改善のみによっては説明できないことも明らかになった。つまり、インスリン非依存性に血糖を降下させるエンパグリフロジンが、血糖降下作用とは無関係に患者の予後を大きく改善したことになる。この結果の意味するところを、われわれはじっくりと咀嚼する必要があるだろう。 エンパグリフロジンが心血管死を減少させたメカニズムは何か? これが本試験の提出した最大の疑問である。残念ながら本試験は、この疑問に解答を与えるようにはデザインされておらず、新たなexplanatory studyが必要となろう。科学史における多くの偉大な発見は、瞥見すると突然もたらされたようにみえるが、実際はそこに至るまでに多くの知見が集積されており、そこに最後の一歩が加えられたものがほとんどである。したがって本試験の結果も、これまでに蓄積された科学的知見の文脈において理解される必要がある。ニュートンも、過去の多くの巨人達の肩の上に立ったからこそ、はるか遠くを見通せたのである。この点において、われわれは糖尿病と心不全との関係を再認識する必要がある。 糖尿病と心不全との関係は古くから知られているが、従来の糖尿病治療に関する臨床試験においては、システマティックに評価されてきたとは言い難い1)。これは、FDAの規定する3-point MACE(Major adverse cardiac event:心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)および4-point MACE(3-point MACEに不安定狭心症による入院を加えたもの)に、心不全による入院が含まれていないことから明らかである。糖尿病と心不全との関係は病態生理学的にも血糖降下薬との関係においても複雑であり、かつ現時点でも不明な点が多く、ここに詳述することはできない(興味ある読者は文献2)を参照されたい)。血糖降下薬については、唯一メトホルミンが3万4,000例の観察研究のメタ解析から心不全患者の総死亡を抑制する可能性のあることが報告されているだけである3)。 本試験においては、ベースラインですでに心不全と診断されていた患者が約10%含まれていたが、平均年齢が60歳以上であること、すべての患者が心血管病を有していること、糖尿病罹病期間が10年以上の患者が半数を占めること、約半数の患者にインスリンが投与されていたことから、多くの潜在性心不全患者または左室機能不全(収縮不全または拡張不全)患者が含まれていた可能性が高い。筆者が考えるに、これらの患者に対して、エンパグリフロジンによる浸透圧利尿が心不全の増悪による入院を減少させたと考えるのが現時点での最も単純な推論であろう。これは、軽症心不全患者に対するエプレレノン(選択的アルドステロン拮抗薬)の有用性を検討したEMPHASIS-HF試験4)において、総死亡の減少が治療開始3ヵ月後の早期から認められている点からも支持されると思われる。興味深いことに、ベースラインで約40%の患者がすでに利尿薬を投与されており、エンパグリフロジンには既存の利尿薬とは異なる作用がある可能性も否定できない。 本試験の結果から、エンパグリフロジンは2型糖尿病薬物療法の第1選択薬となりうるだろうか? 筆者の答えは否である。EBMのStep4は「得られた情報の患者への適用」とされている。Step1-3は情報の吟味であるが、本論文の内的妥当性internal validityにはほとんど問題がない。しいて言えば、研究資金が製薬会社によって提供されている点であろう。したがって、この論文の結果はきわめて高い確率で正しい。ただし、本論文のpatient populationにおいて正しいのであって、明日外来で目前の診察室の椅子に座っている患者にそのまま適用できるかはまったく別である。つまり、外的妥当性applicabilityの問題である。そこでは医療者であるわれわれの技量が問われる。その意味において、本論文は糖尿病診療におけるEBMを考えるうえでの格好の教材だろう。 薬剤の作用は多くの交互作用のうえに成立する。そこで注意すべきは、本試験が心血管病の既往を有する2型糖尿病患者における2次予防試験であることである。2次予防で有益性の確立した治療法が1次予防においては有益でないことは、心血管イベント予防におけるアスピリンを考えると理解しやすい。心血管イベント発症絶対リスクの小さい1次予防患者群においては、消化管出血などの不利益が心血管イベント抑制に対する有益性を相殺してしまうためである。同様に、心不全発症絶対リスクの小さい1次予防患者においては、性器感染症やvolume depletionなどの不利益が、心不全発症抑制に対する有益性を相殺してしまう可能性は十分に考えられる。さらに、エンパグリフロジンの長期安全性については現時点ではまったく未知である。 薬剤間の交互作用については、メトホルミン、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬、β遮断薬、スタチン、アスピリンなどの標準治療に追加することで、エンパグリフロジンの作用が発揮されている可能性があり、本試験の結果がエンパグリフロジン単剤での作用であるか否かは不明である。それを証明するためには、同様の患者群においてエンパグリフロジン単剤での試験を実施することが必要であるが、その実現可能性は倫理的な観点からもほとんどないと思われる。 糖尿病治療における基礎治療薬(cornerstone)に求められるのは、(1)確実な血糖降下作用、(2)低血糖を生じない、(3)体重を増加しない、(4)真のアウトカムを改善する、(5)長期の安全性が担保されている、(6)安価である、と筆者は考えている。現時点で、このすべての要件を満たすのはメトホルミンのみであり、これが多くのガイドラインでメトホルミンが基礎治療薬に位置付けられている理由である。本試験においても、約75%の患者はベースラインでメトホルミンが投与されており、エンパグリフロジンの総死亡抑制効果は、前述したメトホルミンの持つ心不全患者における総死亡抑制効果との相乗作用であった可能性は否定できない。 ADA/EASDの高血糖管理ガイドライン2015では、メトホルミンに追加する薬剤として6種類の薬剤が横並びで提示されている。メトホルミン以外に、総死亡を減少させるエビデンスのある薬剤のないのがその理由である。最近の大規模臨床試験の結果から、インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬およびGLP-1受容体作動薬)の心血管イベント抑制作用は、残念ながら期待できないと思われる。本試験の結果から、心血管イベント、とりわけ心不全発症のハイリスク2型糖尿病患者に対して、エンパグリフロジンがメトホルミンに追加する有用な選択肢としてガイドラインに記載される可能性は十分にある。EMPA-REG OUTCOME試験は、2型糖尿病患者の予後を改善するために実施された多くの大規模臨床試験が期待した成果を出せずにいる中で、ようやく届いたgood newsであろう。参考文献はこちら1)McMurray JJ, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2014;2:843-851.2)Gilbert RE, et al. Lancet. 2015;385:2107-2117.3)Eurich DT, et al. Circ Heart Fail. 2013;6:395-402.4)Zannad F, et al. N Engl J Med. 2011;364:11-21.関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験:試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)

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肥満症治療におけるGLP-1受容体作動薬(リラグルチド)の可能性(解説:小川 大輔 氏)-412

 肥満症は糖尿病のみならず、高血圧症、脂質異常症や睡眠時無呼吸症候群、さらに心血管イベントを引き起こすことが知られている。これらの合併症はQOLの低下や死亡率の増加に繋がるため、肥満症の治療が臨床上重要であることはよく認識されているが、その一方で、肥満の治療が実際には困難であることも経験するところである。最近、欧米では数種類の抗肥満薬(Belviq、Qsymiaなど)が上市されているが、これらの薬剤はわが国では承認されていない。 今回、JAMA誌に掲載された論文は、肥満(BMI 27以上)の2型糖尿病患者を対象とし、GLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)3.0mgあるいは1.8mgを1日1回皮下注射し、プラセボと比較して有効性および安全性を検討した研究である。56週間の対プラセボ群の体重減少量は、リラグルチド3.0mg群が約4.3kg、リラグルチド1.8mg群が約3.0kgであり、優位な体重減少効果が認められた。また、5%または10%超の減量達成者の割合もリラグルチド3.0mg群およびリラグルチド1.8mg群とも優位に多かったことが示された。 ただ、この論文を解釈するうえで注意しなければならないのは、この試験ではリラグルチド3.0mgと1.8mgの2用量が投与されているが、わが国で承認されている投与量の0.9mgよりどちらも多いという点である。現時点において、日本人の肥満症患者を対象としたリラグルチドの治験が行われるかについては不明であるが、肥満症に対して効果的な治療薬がない現状を考えると、個人的にはぜひ治験を行ってほしいと考える。【参考文献】Bakris GL, et al. JAMA. 2015;314:884-894.Sweetwyne MT, et al. Diabetes. 2015 Aug 20. [Epub ahead of print]You YH, et al. J Am Soc Nephrol. 2015 Jul 22.[Epub ahead of print]Rhee EP. J Am Soc Nephrol. 2015 Jul 22.[Epub ahead of print] Michel MC, et al. Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 2015;388:801-816.Matthaei S, et al. Diabetes Care. 2015 Aug 31.[Epub ahead of print]

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肥満成人におけるリラグルチドの減量効果/NEJM

 先行研究において、GLP-1受容体作動薬のアナログ製剤リラグルチドの1日1回3.0mg皮下注が、体重管理に有用である可能性が報告されていた。これを踏まえて米国・コロンビア大学のXavier Pi-Sunyer氏らは、2型糖尿病を有していない肥満成人、脂質異常症か高血圧を有する(治療の有無を問わず)過体重成人の計3,731例を対象に、同薬投与の有効性、安全性に関する56週の二重盲検無作為化試験を行った。その結果、食事および運動療法の補助としての同薬投与は、体重の減少および代謝コントロールの改善と関連していたことを報告した。NEJM誌2015年7月2日号掲載の報告より。27ヵ国191施設で3,731例を対象にリラグルチドの体重減量効果を検討 対象とした被験者は18歳以上で、2型糖尿病を有していないBMI 30以上、または脂質異常あるいは高血圧を有する(治療、未治療を問わない)BMI 27以上。2011年6月1日~2013年3月18日に、欧州、北南米、アジア、アフリカ、オーストラリアの27ヵ国191施設で総計3,731例が試験に登録され、2対1の割合でリラグルチド3.0mg 1日1回皮下注群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。両群にはいずれも生活習慣改善のカウンセリングが行われた。 主要エンドポイントは、体重変化と、ベースライン体重から5%以上減量および10%超減量した人の割合であった。56週時までに5%以上減量63.2% vs.27.1%、10%超減量33.1% vs.10.6% ベースラインにおける被験者の特性は、平均年齢45.1±12.0歳、平均体重106.2±21.4kg、平均BMI値は38.3±6.4であった。女性被験者が78.5%を占め、61.2%が前糖尿病であった。 リラグルチド群には2,487例が、プラセボ群には1,244例が割り付けられた。56週の治療を完了したのは、それぞれ1,789例(71.9%)、801例(64.4%)であった。試験中断理由として、リラグルチド群のほうが多かったのは有害事象によるもの(9.9% vs.3.8%)、逆に少数であったのは治療無効による(0.9% vs.2.9%)、同意取り下げ(10.6% vs.20.0%)であった。 結果、56週時点でリラグルチド群の患者の体重は平均8.4±7.3kg減少したのに対し、プラセボ群は2.8±6.5kgの減少であった(差:-5.6kg、95%信頼区間[CI]:-6.0~-5.1、p<0.001、最終観察繰越し外挿法による)。 全体で体重が5%以上減量した人の割合は、リラグルチド群が63.2%に対しプラセボ群は27.1%(p<0.001)、10%超減量は33.1%、10.6%であった(p<0.001)。 リラグルチド群で最も頻度が高かった有害事象は、軽度~中等度の悪心および下痢であった。重篤有害事象の発現率は、リラグルチド群6.2%、プラセボ群5.0%であった。

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なんと!血糖降下薬RCT論文の1/3は製薬会社社員とお抱え医師が作成(解説:桑島 巌 氏)-384

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのFrits Holleman氏らは、1993年から2013年までの血糖降下薬に関するランダム化比較試験(RCT)論文の執筆者が、どの程度論文を量産(productivity)しているかについて、PubMedで検索した。 血糖降下薬に関するRCTは、2001年には70論文だったのが、2013年には566論文と急激に増加した。 1万3,592人の著者による論文(3,782本)のうち、論文多産トップ110人の執筆者だけで991本のRCT論文を出版しており、1人当たり中央値20本の論文に関わっていた。 そのうち、906本(91%)はスポンサー付きであった。しかも、110人のうち48人は製薬会社と雇用関係にあったという。そして、実はその439本(44%)は医学ライターにより執筆されており、そのうち204本はスポンサーが提供したライターであったという。 トップ11(10位は2人)の執筆者だけでみると、354本のRCT論文を発表しており、1人あたり42本に関わっていたというから、ものすごいエネルギーである。 わが国でもRCT論文に関わることが大きな業績とされるようだが、企業とは一線を画した研究者は非常に少ないように思う。 著者らが、利益相反の面から検討した結果、企業とは独立した内容と考えられたのはたった42本(6%)にすぎないというから、RCT論文の3分の1は、製薬会社社員とお抱え医師によって執筆されていたというのは、いかにこの領域のRCTが企業誘導型であるかを如実に表している。高血圧や高脂血症治療薬をはじめ、ほかの領域でもおそらく同様であろう。 この調査は、SU薬やビグアナイド類などの古典的薬剤に加えた、αグルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン誘導体などが登場した時期であり、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬のRCTは、まだ登場していない時期での調査である。企業の販売競争が激化している今日においては、DPP-4阻害薬などの新規治療薬について、有害事象情報も含めて適正な情報提供を期待したい。 このようなCommercial-based Medicineに惑わされたくないと思う医療関係者の方々には、臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)会員になることをお勧めする。

278.

週1回デュラグルチド、1日1回グラルギンに非劣性/Lancet

 コントロール不良の2型糖尿病患者に対し、食前インスリンリスプロ併用下でのGLP-1受容体作動薬dulaglutideの週1回投与は、同併用での就寝時1日1回インスリン グラルギン(以下、グラルギン)投与に対し、非劣性であることが示された。米国Ochsner Medical CenterのLawrence Blonde氏らが行った第III相の非盲検無作為化非劣性試験「AWARD-4」の結果、示された。Lancet誌2015年5月23日号掲載の報告より。26週時のHbA1c変化の平均値を比較 試験は2010年12月9日~2012年9月21日にかけて、15ヵ国、105ヵ所の医療機関を通じ、コントロール不良の18歳以上、2型糖尿病患者884例を対象に52週にわたって行われた。 同グループは被験者を無作為に3群に分け、(1)dulaglutide 1.5mg/週(295例)、(2)dulaglutide 0.75mg/週(293例)、(3)1日1回就寝時グラルギン(296例)を、それぞれ食前インスリンリスプロ併用で投与した。 主要アウトカムは、26週時のHbA1c変化の平均値だった。非劣性マージンは0.4%とし、ITT解析を行った。HbA1c変化平均値、dulaglutide群でグラルギン群より大幅増 26週時のHbA1c変化平均値は、dulaglutide 1.5mg群が-1.64%、-17.39mmol/mol、dulaglutide 0.75mg群が-1.59%、-17.38 mmol/molであり、グラルギン群は-1.41%、-15.41mmol/molであった。 グラルギン群に比べた変化幅は、dulaglutide 1.5mg群-0.22%(非劣性のp=0.005)、dulaglutide 0.75mg群が-0.17%(同p=0.015)であり、いずれのdulaglutide投与群ともに非劣性であることが示された。 無作為化後の死亡は5例(1%未満)であった。死因は、敗血症(dulaglutide 1.5mg群の1例)、肺炎(dulaglutide 0.75mg群の1例)、心原性ショック、心室細動、原因不明(グラルギン群の3例)だった。 重度有害事象の発生件数は、dulaglutide 1.5mg群が27例(9%)、dulaglutide 0.75mg群が44例(15%)、グラルギン群が54例(18%)だった。グラルギン群に比べdulaglutide群でより多く発生した有害事象は、吐き気、下痢、嘔吐などだった。

280.

GLP-1受容体作動薬と基礎インスリンの併用療法のポジショニング(解説:吉岡 成人 氏)-265

2型糖尿病の基本的な病態として、膵β細胞機能が経年的に低下することに対するコンセンサスがこの10年ほどの間で形成され1)、膵β細胞の機能を温存する可能性を持つホルモンとしてGLP-1が脚光を浴び、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬が市場に登場した。確かに、マウスやラットではGLP-1の膵β細胞保護作用が示されているが、ヒトではいまだ確認されていない。 臨床的には発症早期の2型糖尿病患者にGLP-1受容体作動薬を投与すると、持続血糖モニター(CGM)ではわずか2~3日で血糖変動は平坦となることが確認される。しかし、生理的にわずか数分の半減期しか持たないホルモンを、長時間にわたって高く維持することの長期的な安全性や有効性については何の保証もない。 しかも、毎日の外来診療の場でわかることは、GLP-1受容体作動薬を使用している患者の半数以上で、体重減少効果や血糖降下作用が半年から1年で消失してしまうという事実である。治療開始のタイミングや併用薬、さらには、日本人では肥満が少なく、欧米人との2型糖尿病の病態が異なっていることも関係があるのかもしれない。 そのような中で、3~4年前から基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬との併用が話題となり、多くの臨床試験が積み重ねられ、日本でも、GLP-1受容体作動薬であるリキシセナチド(商品名:リキスミア)とリラグルチド(同:ビクトーザ)の基礎インスリンとの併用が保険適適用となっている。 このような背景のもとに、Conrad EngらはGLP-1受容体作動薬と基礎インスリンを併用することの有用性を、無作為化対照比較試験の論文をメタアナリシスすることによって検討している。 検討の対象となった論文には、日本人を対象とした臨床試験も含まれている。基礎インスリン(±SU薬)にリキシセナチドないしはプラセボを併用した試験(対象患者331例)と、基礎インスリンないしは混合インスリン、強化インスリン療法にリラグルチドないしはプラセボを併用した試験(対象患者257例)である。 主要評価項目は血糖コントロール、低血糖、体重の変化の3項目であり、解析の対象となった4,348例のベースラインにおけるHbA1c値(平均)は8.13%、BMI(平均)は32.9、糖尿病の罹病期間(平均)は12.2年であった。 GLP-1受容体作動薬と基礎インスリンの併用療法群では、HbA1c値が平均で0.44%(95%信頼区間[CI]:-0.60~-0.29%)低下し、HbA1c値7.0%以下の達成率も多く(相対リスク[RR]:1.92、95%CI:1.43~2.56)、統計学的に有意差が確認されている。また、低血糖の頻度については差がなく(RR:0.99、95%CI:0.76~1.29)、体重は併用療法群で3.22kg(95%CI:-4.90~-1.54kg)、有意差をもって減少したと報告されている。 観察期間は12週から36週、多くは24週前後であり、半年前後の検討ではGLP-1受容体作動薬と基礎インスリンの併用による、血糖管理状況の改善、体重減少効果が確認されたこととなる。 しかし、年余にわたる効果については未知数であり、GLP-1受容体作動薬は、製剤間で差はあるものの1本当たりの薬価は7,171円から10,245円であり、1年間使用すると薬価のみで12~18万円にも及ぶ。欧米人ほど肥満患者が多くなく、期待したほどは有用な臨床効果が得られていない日本で、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬を併用することの有用性、またそのポジショニングについては今後のさらなる検討が必要である。

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