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乳がん手術療法のDe-escalation、検討中の4つの方向性/日本臨床腫瘍学会

 乳がん治療における手術療法はHalsted手術以降、一貫して縮小してきており、早期乳がんに対する胸筋温存、乳房温存などが一般的に実施されている。腋窩リンパ節郭清に関してもセンチネルリンパ節生検が広く行われるようになり、その後、センチネルリンパ節に転移を認めても条件を満たせば郭清を省略するようになっている。現在、さらなる手術縮小の可能性が前向きに検討されているが、具体的な4つの方向性について現在進行中の試験を含めて、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)におけるシンポジウム「乳がん治療におけるDe-escalationを考える」の中で、岡山大学の枝園 忠彦氏が紹介した。1)術前薬物療法実施症例でのセンチネルリンパ節生検 術前薬物療法の実施後にセンチネルリンパ節生検を実施したACOSOG Z1071(Alliance)、SENTINA(Arm C)、SN FNACの各試験を、術前薬物療法なしでセンチネルリンパ節生検を実施したNSABP B-32試験と比較すると、NSABP B-32試験ではセンチネルリンパ節生検の同定率は97.2%、偽陰性率9.8%であるのに対し、他の3試験では同定率は減少し偽陰性率は増加した。しかしながら、センチネルリンパ節を多め(3個以上)に摘出もしくは腫瘍の大きさをT2までに限ることで、センチネルリンパ節生検を可能にすることが示されている。 また、偽陰性率を下げるための工夫として、転移のあったリンパ節に術前にクリップなどのマーキングをして手術で確実に切除することにより偽陰性率が低く抑えられた結果が報告されており、現在、多くの施設でさらなる検討が実施されている。 さらに、もともとリンパ節転移があり術前薬物療法でリンパ節転移が消失した症例にセンチネルリンパ節生検が有用かどうかについて前向き試験で検討されており、結果が待たれている。2)術前に臨床的にリンパ節転移が認められない症例でのリンパ節郭清の省略 現在、センチネルリンパ節生検は、術後薬物療法の実施を決定するための「診断」として利用されることが多いことから、術後薬物療法はホルモン療法のみの予定のER陽性の高齢の乳がん症例において、センチネルリンパ節生検省略の安全性と有効性を検討する試験が組まれている(NCT02564848)。 また、超音波画像で転移がないことが明らかであればセンチネルリンパ節生検は不要ではないかとのことから、超音波検査で転移陰性を診断したうえで省略するという前向きのSOUND試験(NCT02167490)も実施されている。 同様に、術前薬物療法が実施され、画像上完全奏効が得られている症例で、術後薬物療法を実施することが決定しているトリプルネガティブまたはHER2陽性症例において、センチネルリンパ節生検の省略を検討する前向き試験(NCT04101851)が実施されている。3)低悪性度のDCIS症例における手術の省略 マンモグラフィの進歩によって、石灰化を伴うごく小さな非浸潤性乳管がん(DCIS)が発見されるようになった。他方、低悪性度のDCISでは手術の有無にかかわらず予後は変わらないことが報告されている。また、すべてのDCISが浸潤がんに進行するわけではないが、進行リスクの高い患者を予測する方法がないため、すべてのDCIS症例に手術や放射線治療がなされてきた。 このような背景から、現在、世界では4つの前向き試験が実施されており、日本でもLORETTA試験(JCOG1505)が症例登録中で、いずれも低~中悪性度でER陽性のDCISを対象に、経過観察のみもしくは経過観察+ホルモン療法の安全性を検討している。枝園氏は、これらの試験の結果によっては、低悪性度の場合は手術しないというのもオプションの1つになると思われると期待を述べた。4)術前薬物療法で臨床的完全奏効が得られた症例における手術の省略 術前薬物療法は早期乳がんの標準治療の1つになっており、完全奏効が得られる症例が多くなっている。とくにHER2陽性乳がんでは半数以上がHER2阻害薬と化学療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られると報告されている。しかし、現状では手術なしでpCRを確認する方法がないため、全例に手術を行うのが標準になっている。 それに対して、海外では診断精度を高めるために、針生検を実施してがんの残存を確認する前向き試験が実施されているが、実際には完璧にpCRを予測するのが難しいとされている。 そこで、わが国では、HER2陽性乳がんで術前薬物療法(化学療法+HER2阻害薬)により画像上で腫瘍が消失した患者に対して、手術なしでも予後は変わらないことを前向きに確認するAMATERAS試験(JCOG1806)を現在実施している。 最後に枝園氏は、「手術の縮小は症状が出ることを避け、整容性を向上させることを目的としているが、逆に局所再発の増加を引き起こす。データ上、局所再発は生存に影響ないが長期的には影響が出てくるため、手術縮小と引き換えに全身療法や放射線療法が必要となる」と述べ、「これら3つの組み合わせによって手術縮小と治療を両立させることが重要である」と講演を締めくくった。

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第47回 COVID-19伝播の阻止や変異株への抗体反応をワクチンが助け、抗原検査が検診を一変しうる

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンを接種すればたとえ感染しても抑えが効いてウイルスは他人を感染させるほどには増え難いらしく、他人を感染させうる人のみを見分ける抗原検査はその感染(COVID-19)の検診の有り様を一変させるかもしれません。また、2社のmRNAワクチンは変異株に対抗する中和抗体をどうやら底上げするようです。PfizerのCOVID-19ワクチンはウイルス量を抑えて感染伝播を減らしうるイスラエルでPfizer/BioNTechのCOVID-19ワクチンBNT162b2接種済みの人と非接種の人の感染の程度を比較したところ1回目接種後12~28日のウイルス量はワクチン非接種の人の4分の1ほどに抑えられており、同ワクチンはすでに裏付けられている発症予防に加えて他人を感染させ難くする効果もあると示唆されました1,2)。ウイルス量が多い人ほど他人を感染させやすいことはLancet Infectious Diseases誌に最近掲載された別の試験で示されています。SARS-CoV-2に感染した282人とそれらと密接に接触した753人を調べたその試験の結果、他人を感染させたのは3人に1人(90人;32%)のみで、ウイルス量が多い人ほど他人を感染させていました3,4)。また、咳がある人とない人の他人への感染伝播に差はありませんでした。ということはウイルス量が多い感染者に接触した人の追跡がとくに重要なようであり4)、次に紹介する試験ではウイルス量が多くて他人を感染させやすい人の同定に抗原検査が重宝しうることが示唆されています。BD社の抗原検査はCOVID-19を移しうる有症者の検出でPCR検査に勝るようだCOVID-19を他人に感染させうる患者の検出を比較した試験でベクトン・ディッキンソン(BD)社のわずか15分ほどで済む抗原検査(製品名Veritor)がウイルスのRNAを検出するPCR検査を凌ぐと示唆され5,6)、抗原検査はCOVID-19検診の有り様をやがて一変させるかもしれません7)。試験にはCOVID-19発症患者251人が参加し、気道検体の抗原検査とPCR検査が培養検査の結果とどれだけ一致するかが調べられました。培養検査は増殖しうるウイルスが採取検体に存在するかどうかを調べます5)。培養細胞でウイルスが増えれば検体に生きているウイルスが存在することを意味し、感染可能なウイルスがいたことを示唆します。一方、培養細胞でウイルス増殖がなかった検体の患者には他人に移って感染しうるほどの生存ウイルスは恐らく存在しません。試験の被験者251人のうち培養検査で陽性だったのは28人でした。PCR検査では培養検査陽性28人とその他10人を含む38人が陽性でした。PCR検査では陽性で培養検査では陽性でなかったその差し引き10人は検体採取時点で他人を感染させる心配は恐らくなかったようです。PCR検査はそれら10人の検体のウイルスRNA断片か無欠だが少量のSARS-CoV-2を検出したのしょう。PCR検査とは対照的にBD社の抗原検査の陽性判定は培養検査とより一致していました。抗原検査で陽性の27人は培養検査でも陽性で、抗原検査と培養検査の陽性判定が食い違っていたのは1人のみでした。目下のCOVID-19流行下での検査の主な目標の1つは他人を感染させうる人を同定して暫く出歩かないようにしてもらうことです5)。安価でより多くに届けうる抗原検査は日々の暮らしでのCOVID-19伝播を封じることに大いに貢献すると今回の試験主導医師の1人Charles Cooper氏は言っています5)。今回の試験と同様にPCR検査が他人を感染させそうにない人を無闇に検出してしまうことは先立つ幾つかの試験でも示唆されています8-11)。それらの試験によると発症後8日の検体のほとんどは、PCR検査ではウイルスRNAが検出されたのとは対照的に感染可能ウイルスを有していませんでした。PCR検査のように感染可能なウイルスが存在しない人を無闇に陽性判定しない抗原検査を使うことで感染者の隔離期間をより短縮できるかどうかの検討が必要と今回の試験の著者は言っています6)。また、今回の試験は有症者が対象でしたが、無症状の人の抗原検査の性能を調べる試験をBD社はすでに進めています7)。Pfizer/BioNTech やModernaのワクチンで新型コロナウイルス変異株阻止抗体を底上げしうる南アフリカで見つかって広まる心配なSARS-CoV-2変異株B.1.351(南ア変異株)に対抗する中和抗体反応をPfizer/BioNTech やModernaのワクチン1回の接種で強力に底上げしうることが感染を経た人へのそれらワクチン接種前後の血液検体比較で示されました12,13)。米国・ワシントン州シアトルのがん研究センターFred Hutchinson Cancer Research CenterのAndrew McGuire氏のチームはCOVID-19を経た10人から血液を採取し、続いてPfizer/BioNTech かModernaのワクチンの1回目接種後に再び血液を採取しました。Pfizer/BioNTech とModernaのワクチンはどちらも中国の武漢市で見つかったSARS-CoV-2元祖株(Wuhan-Hu-1)スパイクタンパク質を作るmRNAでできています。採取した血液を使ってその元祖株と南ア変異株の細胞感染を阻止する中和抗体活性を調べたところ、ワクチン接種前の時点で元祖株への中和抗体活性は弱いながらもほとんど(10人中9人)が有しており、南ア変異株への中和抗体活性を有していたのは半数の5人のみでした。ワクチン接種後には元祖株と南ア変異株への中和抗体がどちらもおよそ1,000倍上昇していました。すでに感染を経ている人へのPfizer/BioNTech やModernaのmRNAワクチン接種はたとえ1回でも有意義であり、スパイクタンパク質に対してすでに備わる抗体反応を底上げすればワクチンが目当てとするウイルスのみならず新たに出現する変異株への中和抗体も有意に増強できそうです13)。参考1)Pfizer’s COVID-19 Vaccine Reduces Viral Load: Study / TheScientist2)Decreased SARS-CoV-2 viral load following vaccination. medRxiv. February 08, 20213)What makes a person with COVID more contagious? Hint: not a cough / Nature4)Marks M,et al. Lancet Infect Dis. 2021 Feb 2:S1473-3099,30985-3. [Epub ahead of print]5)New Clinical Data Shows BD Antigen Test May Be More Selective In Detecting Infectious COVID-19 Patients Than Molecular Tests / PRNewswire6)Pekosz A, et al. Clin Infect Dis. 2021 Jan 20:ciaa1706. [Epub ahead of print]7)Antigen tests could change Covid-19 screening culture / Evaluate8)Wolfel R, et al. Nature. 2020 May;581:465-469.9)La Scola B, et al. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2020 Jun;39:1059-1061.10)Bullard J, et al. Clin Infect Dis. 2020 May 22:ciaa638. [Epub ahead of print]11)Repeat COVID-19 Molecular Testing: Correlation with Recovery of Infectious Virus, Molecular Assay Cycle Thresholds, and Analytical Sensitivity. medRxiv. August 06, 2020. 12)Vaccines spur antibody surge against a COVID variant / Nature13)Antibodies elicited by SARS-CoV-2 infection and boosted by vaccination neutralize an emerging variant and SARS-CoV-1. medRxiv. February 08, 2021

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低・中所得国は、がん手術後の転帰が不良/Lancet

 がん患者の80%が手術を必要とするが、術後の早期の転帰に関する低~中所得国(LMIC)の比較データはほとんどないという。英国・エディンバラ大学のEwen M. Harrison氏らGlobalSurg Collaborative and NIHR Global Health Research Unit on Global Surgeryの研究グループは、とくに疾患の病期や合併症が術後の死亡に及ぼす影響に着目して、世界の病院のデータを用いて乳がん、大腸がん、胃がんの術後転帰を比較した。その結果、(1)LMICでは術後の死亡率が高いが、これは病期が進行した患者が多いことだけでは十分に説明できない、(2)術後合併症からの患者救済能力(capacity to rescue)は、有意義な介入のための明確な機会をもたらす、(3)術後の早期死亡は、一般的な合併症の検出と介入を目指した、周術期の治療体制の強化に重点を置いた施策によって抑制される可能性があることなどが示された。Lancet誌2021年1月21日号掲載の報告。82ヵ国428病院の前向きコホート研究 研究グループは、全身麻酔または脊髄幹麻酔(neuraxial anaesthesia)下に施行される皮膚の切開を要する手術を受けた原発性の乳がん、大腸がん、胃がんの成人患者を対象に、国際的な多施設共同前向きコホート研究を実施した(英国国立健康研究所[NIHR]グローバル健康研究ユニットの助成による)。 主要転帰は、術後30日以内の死亡または重度合併症とした。マルチレベルロジスティック回帰により、病院および国別の患者における3段階のネストモデル内の関連性を解析した。病院レベルのインフラストラクチャー効果は、3要因媒介分析で評価した。 2018年4月~2019年1月の期間に、82ヵ国の428病院から1万5,958例(乳がん8,406例[52.7%]、大腸がん6,215例[38.9%]、胃がん1,337例[8.4%])が登録された。高所得国(31ヵ国)が9,106例、高中所得国(23ヵ国)が2,721例、低・低中所得国(28ヵ国)が4,131例であった。低・低中所得国で、胃がん、大腸がん、合併症による死亡率が高い LMICは高所得国に比べ、より進行した病変を持つ患者が多かった。30日死亡率は、胃がんが低・低中所得国(補正後オッズ比[aOR]:3.72、95%信頼区間[CI]:1.70~8.16)で高く、大腸がんは高中所得国(2.06、1.11~3.83)および低・低中所得国(4.59、2.39~8.80)で高かった。乳がんでは死亡率の差は認められなかった。 重度合併症の発現後に死亡した患者の割合は、低・低中所得国(aOR:6.15、95%CI:3.26~11.59)および高中所得国(3.89、2.08~7.29)で高かった。 合併症発現後の術後死亡は、60%が患者要因で、40%は病院または国の要因で説明が可能であった。LMICでは、一貫して利用可能な術後ケア施設がないことが、重度合併症100件当たり7~10件以上という高い死亡率と関連していた。また、がんの病期だけでは、国別の死亡率や術後合併症発現の早期のばらつきは、ほとんど説明がつかなかった。 著者は、「LMICでは、周術期死亡率が過度に高く、これががん生存の劣悪さに寄与している。術後の一般的な合併症の発現後に、回避可能な死亡を防ぐには、LMICの医師の主導により、実践的な周術期介入を緊急に評価する必要がある」としている。

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第44回 南アの変異株は免疫をかわし、ワクチンは絶えず手入れが必要かもしれない~実際のワクチン効果

ひとしきり新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)を済ませるかワクチンを接種すればあとは大丈夫というわけではなさそうなことが示されつつあります。南アフリカで見つかった変異株は備わった免疫をかわしうるSARS-CoV-2変異株のうち南アフリカで去年遅くに見つかった501Y.V2は最も懸念されています1)。501Y.V2は免疫系の主な狙い所であるスパイクタンパクに多くの変異を有し、厄介なことにそれらの変異のいくつかは抗体を効き難くします。南アフリカの生物情報学者Tulio de Oliveira氏やウイルス学者Alex Sigal氏等は、同国で501Y.V2が急に広まったことへのその免疫回避の寄与を調べるべく、感染者から単離した501Y.V2を他のSARS-CoV-2感染を経た6人の血清と相見えさせました2,3)。感染を経た人の血清にはウイルスを中和、すなわち阻止する抗体が主に備わっています。検討の結果、感染者血清の501Y.V2の中和活性はより初期の感染流行で出回ったSARS-CoV-2の中和活性に比べてだいぶ劣りました。SARS-CoV-2そのものではなくその代理ウイルス(pseudovirus)を使った別の研究でも501Y.V2変異が中和活性を妨げうることが示されています4)。代理ウイルスはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を使って細胞に侵入するように加工したHIVです1)。南アフリカのヨハネスブルクのウイルス学者Penny Moore氏のチームは501Y.V2の変異一揃いを持つ代理ウイルスと感染者検体(血清/血漿)をde Oliveira氏等の試験と同様に相見えさせました4)。その結果、44の感染者検体のうち約半数(48%;21/44人)は501Y.V2変異代理ウイルスを中和できませんでした。南アフリカでは501Y.V2の再感染がすでに確認されています1)。COVID-19が席巻した地域でその変異株が広まるのは先立つ感染で人々に備わった免疫を切り抜けうることを後ろ盾としていることはかなり確かになりつつあるようです1)。mRNAワクチンは定期的な手入れが必要かもしれないSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を作るmRNAを成分とするPfizer/BioNTechやModernaのワクチン(mRNA-1273やBNT162b2)が計画通り2回接種された20人の血液を調べたところスパイクタンパク質受容体結合領域(RBD)へのIgMやIgG抗体は先立つ報告と同様に豊富で、COVID-19を経た人と同等のSARS-CoV-2細胞侵入阻止(中和)活性やRBD特異的メモリーB細胞量を備えていました5,6)。しかし、英国や南アメリカで見つかって広まるスパイクタンパク質変異・E484K、N501Y、K417N:E484K:N501Yを擁するSARS-CoV-2変異株へのワクチン接種者血漿の中和活性は劣りました。それに、ワクチン接種者に備わった最も強力なモノクローナル抗体一揃いの大部分(17のうち14)の中和活性はE484K、N501Y、K417N:E484K:N501Yで減じるか消失しました。英国ケンブリッジ大学のウイルス学者Ravindra Gupta氏が率いた別の研究でも、BNT162b2ワクチンが1回接種された後の血清は英国で見つかった変異株B.1.1.7のスパイクタンパク質変異に効き難いことが示されています7)。この研究に血清を提供した人はほとんどが高齢者で年齢の中央値は82歳でした。一方、BNT162b2を生み出したドイツのバイオテクノロジー企業BioNTechのチームの検討では変異の有意な影響はみられず、BNT162b2が2回接種された16人から採取した血清はB.1.1.7の変異スパイクタンパク質を纏った代理ウイルスを対照ウイルスとほぼ変わらず中和しました8)。血清を提供した16人のうち8人は比較的若く18~55歳、あとの8人はより高齢で56~85歳です。いずれにせよそれらはいずれも試験管研究であり、実際(real life)はどうかを調べる必要があるとGupta氏は言っています7)。変異はいまのところワクチンの予防効果に差し支えないかもしれないが、備わった抗体が減ってきたら影響があるかもしれません。また、SARS-CoV-2感染予防mRNAワクチンはインフルエンザワクチンがそうであるように効果を保つために定期的な手入れが必要かもしれません5)。[追記] その予想どおり、南アフリカで見つかった変異株(南ア変異株)を標的とする新たなCOVID-19ワクチンの開発にModerna社が早くも着手しています(プレスリリース)。すでに世界で接種され始めたmRNA-1273が南ア変異株に弱いらしいことが接種者血清と代理ウイルスを使った実験(bioRxiv. January 25, 2021)で示されたからです。実験の結果、mRNA-1273が臨床試験で2回投与された8人(18~55歳)の血清は南ア変異株の変異スパイクタンパク質を纏った代理ウイルスを中和し、その抗体活性は感染防御に必要な水準を恐らく満たしていたものの低めでした(対照ウイルス中和活性の6分の1)。その結果を受けてModerna社は南ア変異株を専門とするワクチン候補mRNA-1273.351の開発に着手しており、前臨床試験が始まります。また、Modernaの現在のワクチン接種は2回ですが、さらに多く接種したときの中和活性増強を調べる第I相試験も始まります。イスラエルでPfizerのCOVID-19ワクチン1回目接種が感染の3割を防いだCOVID-19ワクチンのこれからは別にして、世界に出回り始めた現在のワクチン普及の効果の一端がイスラエルから発表されました。イスラエルはアラブ首長国連邦と並んでワクチン接種率が世界で最も高く、両国とも人口のおよそ4分の1を占める200万人超が接種を済ませています9)。イスラエルの今回の解析ではPfizer/BioNTechのワクチンBNT162b2が接種された60歳超高齢者20万人と非接種20万人が比較されました。その結果、2回接種が必要なそのワクチンの1回目を済ませてから2週間後の検査陽性(感染)率は非接種者より33%低いことが示されました。もう何週間かすると2回目の接種を済ませた人が揃ってさらに確かな結果が判明します9)。今回のひとまずの結果を受け、BNT162b2の1回目接種後の感染阻止効果は思ったより低いようだとイスラエル最大の医療団体Clalit Health Servicesの疫学者Ran Balicer氏は言っています10)。参考1)Fast-spreading COVID variant can elude immune responses / Nature 2)Escape of SARS-CoV-2 501Y.V2 variants from neutralization by convalescent plasm.medRxiv. January 21, 20213)New Covid-19 501Y.V2 variant escapes antibodies / Africa Health Research Institute 4)SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma. bioRxiv. January 19, 20215)mRNA vaccine-elicited antibodies to SARS-CoV-2 and circulating variants. bioRxiv. January 19, 2021. 6)COVID vaccines might lose potency against new viral variants / Nature 7)Impact of SARS-CoV-2 B.1.1.7 Spike variant on neutralisation potency of sera from individuals vaccinated with Pfizer vaccine BNT162b2. medRxiv. January 20, 20218)Neutralization of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7 pseudovirus by BNT162b2 vaccine-elicited human sera. bioRxiv. January 19, 20219)Are COVID vaccination programmes working? Scientists seek first clues / Nature10)Single Covid vaccine dose in Israel 'less effective than we thought' / Guardian

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京都の老舗にコロナ対策を学ぶ【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第32回

第32回 京都の老舗にコロナ対策を学ぶ新型コロナウイルスに振り回された2020年でした。コロナ前と比較すると、わずか1年で驚くほど多くのことが変化しました。学会も大きく変化しました。これまでは、世界各地で開催される国際学会が大きな意味をもっていました。自分が属する循環器領域でいえば、代表的な国際的学術集会として、3月のACC(アメリカ心臓病学会)、8月末のESC(欧州心臓病学会)、11月のAHA(アメリカ心臓協会)などが挙げられます。国内では、JCS(日本循環器学会)はアジアを中心とした海外からの参加も多く活気があります。これらの学会は数万人の規模で、多くの医師・研究者が演劇一座の巡業のように開催地を転々と移動していたのです。2020年は、現地での対面の集会ではなく、すべてがオンラインでの開催となりました。するとその良さもわかってきました。パソコンの画面を通じて自室から参加することが可能となり、時間的・空間的な制約もありません。参加のために長期間の休みをとる必要がありません。何よりもスライドが見やすいです。新型コロナウイルス感染症の拡大は大変なことですが、それをチャンスと捉えられる面もあるのではないでしょうか。平時において変革していくには時間が必要ですが、危機や困難は変化を加速させ、その変化を容認することを容易にします。COVID-19がなければ「学会をインターネット上でWeb開催するぞ」と言ったところで相手にもされなかったでしょう。それが、わずか半年~一年で皆がZOOMの操作に習熟するまでに普及したことも事実です。驚くべきスピードです。慣れない最初は失敗することもありましたが、今では皆さん上手に操っています。「習うより慣れろ」とは良く言ったものです。従来の対面での集会には、オンラインでは補うことできない良さがあることも事実です。しかし、COVID-19が収束したとしても、学術集会が元に戻ることはないでしょう。COVID-19がわずかな期間で世界中に広がったのは航空機の利用によって人の移動が活発化したことに関連していることは明白だからです。医療関係者が感染症拡大の原因となることは避けねばなりません。新型コロナウイルス感染症の出現を嘆き悲しみ、元通りの学会の復活を願うことは得策ではありません。新たな学術集会の在り方を考えていくことは喫緊の課題です。先日、テレビ番組で京都の老舗が紹介されていました。「変わることなく守り通してきたからこそ、江戸時代から店舗が維持できたのですね、素晴らしいですね」という趣旨で、司会者が紹介しました。チャラチャラしたお笑い芸人が、アポなし突撃取材するという今風の安っぽい番組です。登場した穏やかな雰囲気の主は、「ちゃいますな」と切って捨てました。何事にも本音を感じさせない京都人としては珍しい断定的な否定でした。変化することができなかった店はすべて潰れてしまったのだそうです。特に明治維新後の東京遷都が京都にとって最大のピンチで、バタバタと閉店を与儀なくされたのです。今も続く老舗というのは、フレキシブルに時代に合わせて変化してきたからこそ継続しているのです。京都における老舗とは、保守性の真逆で柔軟性の証なのだと、反論したのです。若手芸人は直立不動で聴いておりました。自分も頭を殴られたような衝撃を受けました。自分は、京都の老舗は変化を忌み嫌う保守の権化であると信じていたからです。柔軟に変化していくことが大切なのです。猫の身体は非常に柔軟性が高いことはご存じと思います。関節が緩やかで、筋肉や靭帯も柔らかいので可動範囲が大きいです。小さな鎖骨は靭帯で強固に繋がっておらず、人間でいうといつも肩が外れている状態です。そのため肩幅をとても小さくすることができ、身体で一番幅が広く調整不可能な頭より大きな空間は自由に通りぬけることができます。猫は、京都の老舗以上に柔軟性の権化なのです。何事においても猫は師匠と崇めておりますが、新型コロナウイルスへの対応も完了しているようです。あらためて入門します。弟子にしてください。

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第43回 ブラジルで広まるコロナ変異株P.1の再感染しやすさの検討が必要/去年の新発見を疑問視

ブラジルで広まるコロナ変異株P.1の再感染しやすさの検討が必要ブラジルでは急速に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)が広まり、アマゾン地域の流行はとりわけ強烈でした。同地域の最大都市で200万人超が暮らすマナウスでは実に4人に3人(76%)が10月までにCOVID-19を経たと献血検体の抗体を調べた試験で推定されています1)。4人に3人が感染したとなれば感染増加を防ぐ集団免疫の想定水準を十分に満たします。しかしそれにもかかわらず最近になってマナウスでCOVID-19が再び増え始めたことは試験に携わった英国インペリアル大学(Imperial College London)のウイルス学者Nuno Faria氏を驚かせました2)。ウイルスが行き渡ったことと病院がCOVID-19患者で再び混雑することは同氏によれば両立し難いことだからです。マナウスの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム情報は乏しく、去年の春に採取されたものの記録しか存在しません3)。そこでFaria氏等は今どうなっているかを探るべく、COVID-19が再び急増し始めた時期と重なる去年12月中旬にマナウスで集めた検体のSARS-CoV-2ゲノムを読み取りました。その結果、31の検体の半数近い42%(13/31) から新たなSARS-CoV-2変異株が見つかり、P.1(descendent of B.1.1.28)と名付けられました3)。P.1は去年2020年の3月から11月にマナウスで採取された検体には存在せず、同市で先立って蔓延したSARS-CoV-2のおかげで備わった免疫を交わして感染しうる恐れがあり、すでに感染を経た人への再感染しやすさを調べる必要があるとFaria氏等は言っています2)。その問いを解くのにおそらく参考になる研究はすでに始まっています。サンパウロ大学の分子生物学者Ester Sabino氏はマナウスでの再感染の同定を開始しており、この1月からはマナウスでの検体のウイルス配列をより多く読んでP.1の広まりも追跡しています。英国で広まっていることが最初に判明してその後世界中に広まったSARS-CoV-2変異株B.1.1.7と同様にP.1もすでに国境をまたいでおり、ブラジルから日本への渡航者から見つかった変異株が後にP.1と判明しています2)。英国はSARS-CoV-2に発生する変異の影響を調べる取り組みG2P-UKを先週末15日に発表しました4)。世界保健機関(WHO)は変異株の監視や研究の協調を後押ししており、先週初めの12日の会議5)ではワクチンを接種した人や感染を経た人の血漿やウイルス検体を保管するバイオバンク体制を設けて試験に役立てる計画が話し合われています2)。本連載で紹介した新たな唾液腺発見の報告が疑問視されている新たな唾液腺(tubarial glands)を発見したという去年の報告を年初に本連載(第41回)で紹介しましたが、その報告を疑問視する意見がその出版雑誌Radiotherapy & Oncologyに複数寄せられているとわかりました。たとえば1つは新規性を疑うもので、tubarial glandsの特徴に見合う構造の存在は100年以上前から把握されていたとスタンフォード大学のAlbert Mudry氏等は指摘しています6,7)。また、唾液腺と分類することの妥当性も疑問視されています8)。その存在位置をみるに口腔に腺液は届きそうになく、唾液の生成には寄与していなさそうです。また、唾液の主成分アミラーゼもなく、唾液腺とみなすのは無理と指摘されています6)。臓器であれ技術であれ完全なる新発見を主張する報告をMudry氏はどれも疑ってかかります6)。というのも新規性の立証のために過去の報告を洗いざらい調べることを著者はたいてい怠るからです。Mudry氏によると1800年代に解剖学者2人や耳科医が既にtubarial glandsの領域の腺の存在を記録しています。新たな腺をひねり出そうとするのではなく別の観点を考察すればよかったのにとブラジルの口腔病理医Daniel Cohen Goldemberg氏は言っています。研究自体は優れているのだから撤回せずに訂正して残すべきと同氏は考えています6)。Cohen Goldemberg氏もRadiotherapy & Oncologyへの意見9)の投稿者の1人です。参考1)Buss LF, et al. Science. 2021 Jan 15;371:288-292.2)New coronavirus variants could cause more reinfections, require updated vaccines / Science3)Genomic characterisation of an emergent SARS-CoV-2 lineage in Manaus: preliminary findings / virological.org4)National consortium to study threats of new SARS-CoV-2 variants / UK Research and Innovation5)Global scientists double down on SARS-CoV-2 variants research at WHO-hosted forum / WHO6)Scientists Question Discovery of New Human Salivary Gland / TheScientist7)Mudry A, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 10:S0167-8140:31222-6. 8)Bikker FJ, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 10:S0167-8140:31224-X.9)Cohen Goldemberg D, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 11:S0167-8140:31223-8.

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第42回 南アの新型コロナウイルス変異株へのワクチン効果が心配されている/変異株はどう発生するのか

南アの新型コロナウイルス変異株へのワクチン効果が心配されている南アフリカ(南ア)で広まる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株は英国で広まる変異株にはない変異があり、英国の専門家はそれらがワクチンの効果を妨げる恐れがあると心配しています1-3)。南アの変異株B.1.351(別称501Y.V2)のスパイクタンパク質の受容体結合領域(RBD)には英国の変異株B.1.1.7と共通するN501Y変異に加えてさらに2つの変異が存在します。南アの変異株に特有のそれら2つの変異の1つE484Kは抗体を寄せ付け難くすることが知られており1)、厄介なことに先立つ感染やワクチン接種で備わった免疫防御をウイルスが回避するのを助けます。E484Kだけで南アの変異株に目下のワクチンが全く歯が立たなくなるとは考え難いが、変異株の発見にはワクチンの効果の心配がつきものであり、南アの変異株へのワクチンの効き具合はまだ想像がつかないとロンドン大学のFrancois Balloux教授は言っています1)。英国の変異株は去年9月にみつかり4)、12月中旬に同国で急速に広まりました。南アの変異株は11月中旬から他のSARS-CoV-2に取って代わって同国で広まっていることが12月18日に発表されました5)。オックスフォード大学の免疫学者で英国のワクチン開発の取り組みへの助言者の1人・John Bell氏は英国の変異株にワクチンは効きそうだが南アの変異株への効果は大変心配(big question mark)で、調査を急いでいると言っています3,6)。南アの変異株のゲノムを調べている同国の大学University of KwaZulu-Natalの感染症専門家Richard Lessells氏はその調査こそ同氏等の最優先課題であるとし、抗体がすでに備わっている人やワクチン接種を経た人の血液の中和抗体活性の検討を始めています7)。中和抗体だけでなく細胞を介した免疫を調べることも有益だろうと米国のウイルス学者Kartik Chandran氏は科学ニュースThe Scientistに述べています3)。T細胞が担うそれらの免疫は中和抗体に比べて変異への対応がより鈍いかもしれません。※幸いなことに、南アと英国の SARS-CoV-2 変異株に共通のN501Y変異はPfizer/BioNTechのワクチンの効果を妨げはしないようです。先週7日にbioRxivに掲載された実験によると、同ワクチンの第III相試験の被験者20人の血清はN501Y変異導入SARS-CoV-2を非変異SARS-CoV-2と同様に中和しました。SARS-CoV-2変異株はどう発生するのか新型コロナウイルス感染(COVID-19)から1ヵ月が過ぎてもその原因ウイルスSARS-CoV-2を排出し続けるがん(リンパ腫)患者がいることを知ったケンブリッジ大学のウイルス研究者Ravindra Gupta氏は治療を助けるために出向いてその男性患者にとりつくSARS-CoV-2の面々の変遷を調べました8,9)。その結果、抗体を効かなくするスパイクタンパク質変異対を備えるSARS-CoV-2一派が回復者血漿投与に伴って優勢になっており、その変異対の片割れΔH69/ΔV70は英国で広まる変異株B.1.1.7にも存在するものでした。男性患者は抗体を作る免疫細胞・B細胞を減らす抗がん剤リツキシマブ治療を受けていて免疫が衰えている免疫弱者であり、抗ウイルス薬Remdesivir(レムデシビル)や回復者血漿投与の甲斐なくCOVID-19診断から101日で亡くなりました。男性にとりついたSARS-CoV-2の面々は2度の一連のレムデシビル治療にも関わらず65日間はほとんど進化的変化(evolutionary change)なしで居着いていました。しかし回復者血漿が投与されるやその組成は一変し、抗体を効かなくする変異対・D796HとΔH69/ΔV70を有するSARS-CoV-2一派があたまをもたげて優勢になり、その変異対はSARS-CoV-2への主な抗体を突き放すウイルスの常套手段の一つであることが判明しました。スパイクタンパク質に8つの変異を携えて英国で広まる変異株B.1.1.7もGupta氏等が見つけた変異対保有一派と同様に免疫弱者が出どころかもしれないと研究者は考えています8)。ΔH69/ΔV70変異を備えて抗体を突っぱねることがSARS-CoV-2の常套手段であることはその変異がB.1.1.7に備わることも物語っています。Scienceのニュースによると8)、レンチウイルスを試しに使ったGupta氏の実験でΔH69/ΔV70変異は感染を捗らせました。B.1.1.7のスパイクタンパク質に備わる別の変異N501Yは南アで広まる変異株B1.351にも存在し、Science誌掲載の研究では細胞受容体ACE2との密着を促すことが示唆されました10)。N501Yのように独立して生き残る変異はウイルスにとって有益である公算が大きいとFred Hutchinson Cancer Research Centerの進化生物学者Jesse Bloom氏は言っています8)。英国の変異株B.1.1.7のスパイクタンパク質に備わるP681H変異もN501Yと同様に注意が必要とみられています。P681Hは細胞侵入に際してのスパイクタンパク質切断部位を変えます。その切断部位は20年近く前の2003年に流行したコロナウイルスSARS-CoV-1とSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の不一致領域に位置し、その領域の変化は感染をより広めやすくする恐れがあります10)。参考1)expert reaction to the South African variant / Science Media Centre2)UK scientists worried vaccines may not work on S.African coronavirus variant / Reuters3)South African SARS-CoV-2 Variant Alarms Scientists / TheScientist4)COVID-19 (SARS-CoV-2): information about the new virus variant / GOV.UK 5)SARS-CoV-2 Variants / WHO6)Covid: 'No question' restrictions will be tightened, says Boris Johnson / BBC7)South Africa testing whether vaccines work against variant / AP8)U.K. variant puts spotlight on immunocompromised patients’ role in the COVID-19 pandemic / Science9)Neutralising antibodies drive Spike mediated SARS-CoV-2 evasion. medRxiv. December 19, 202010)Gu H, et al. Science. 2020 Sep 25;369:1603-1607.

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第41回 去年の大発見~循環する独り立ちミトコンドリア、第四の唾液腺

去年は世界が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に見舞われ、それに関連する薬、ワクチン、診断、研究技術の開発が飛躍的に進歩しました。その一方で他の研究ももちろん進展し、たとえばよく見知ったはずの人体の新たな大発見1)がありました。その一つは、すでに知られている3つの唾液腺に加えて第4の唾液腺一対が新たに見つかったことです2)。耳管隆起(torus tubarius)近くにあることからtubarial glandと名付けられたその新たな唾液腺は手術で顕わになり難いので長く見つからないままだったようです。オランダのがん研究所Netherlands Cancer Instituteの放射線腫瘍医Wouter Vogel氏等は前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合する放射性トレーサー頼りのCTやPET撮影によってその在り処を突き止めました。PSMA PET/CTはそもそも前立腺がんの検出のためのものですが、Vogel氏によると唾液腺検出感度がすこぶる良好で、そのおかげでこれまで見えなかったものを見つけることができました1)。もう一つは健康な人の血液を独り立ちして巡るミトコンドリアの発見です3)。どこかが傷んで細胞から漏れたミトコンドリア由来と思われるその一部(DNA)が体を巡っていることは知られていました。しかし生来の機能を果たしうるミトコンドリアまるごとが健康な人の血液に細胞に入っていない状態で存在することは分かっていませんでした1)。フランスの著名な研究所INSERMのチームが見つけたそれらのむき出しのミトコンドリアが細胞の外で何をしているかはこれから調べる必要がありますが、細胞間の連絡に一役買っているのではないかと研究者は推測しています4)。人体は調べ尽くされたようでまだまだ未開の発見を待つ未知を隠しているに違いありません。今年はどんな発見があるのでしょうか。参考1)The Biggest Science News of 2020 / TheScientist 2)Valstar MH,et al. Radiother Oncol. 2020 Sep 23. [Epub ahead of print]3)Al Amir Dache Z, et al. FASEB J. 2020 Mar;34:3616-3630.4)A new blood component revealed / Eurekalert

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青年期のSNS利用と抑うつや不安症状との関連

 青年期や幼年期後期におけるソーシャルネットワーク(SNS)利用は、急激に増加している。このような変化によるメンタルヘルスへの影響は議論されているが、さらなる経験的評価が求められる。オーストラリア・メルボルン大学のLisa K. Mundy氏らは、青年期のSNS利用と抑うつ症状、不安症状との関連について調査を行った。Depression and Anxiety誌オンライン版2020年11月22日号の報告。 Childhood to Adolescence Transition Studyのデータ(1,156例)を利用し、11.9~14.8歳の4つの時点でのSNS利用時間を毎年測定した。1日1時間以上のSNS利用を、利用率が高いと定義した。SNS利用と抑うつ症状、不安症状との横断的および将来的な関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、社会経済的地位、メンタルヘルス罹病歴で調整した横断的分析により、SNS利用率が高い人においてメンタルヘルスリスクとの関連が認められたのは、以下のとおりであった。 ●SNS利用率が高い女性は抑うつ症状リスクが高い(オッズ比[OR]:2.15、95%信頼区間[CI]:1.58~2.91) ●SNS利用率が高い女性は不安症状リスクが高い(OR:1.99、95%CI:1.32~3.00) ●SNS利用率が高い男性は抑うつ症状リスクが高い(OR:1.60、95%CI:1.09~2.35)・女性では、利用頻度に波のない人と比較し、1つ前の波(OR:1.76、95%CI:1.11~2.78)と2つまたは3つ前の波(OR:2.06、95%CI:1.27~3.37)のSNS利用率の高さが、14.8歳時の抑うつ症状のORの増加と関連が認められた。 著者らは「SNS利用率の高い若者では、抑うつ症状や不安症状リスクの中程度の増加が認められた。初期のメンタルヘルス問題に対する予防プログラムにおいて、青年期初期のSNS利用に焦点を当てることが有用である可能性が示唆された」としている。

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第36回 PfizerやModernaの第III相試験成功でmRNAワクチンの展望が開けた

先月11月の早くに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防ワクチン2つの期待の持てる発表がありました。広く報じられている通り、1つはPfizer/BioNTech、もう1つはModernaの開発品のどちらも第III相試験の途中解析でCOVID-19の9割超を防いだのです。2つのワクチンはどちらも90%超の有効性を引き出したことに加えて別の共通項も有します。それは成分がどちらもメッセンジャーRNA(mRNA)ということです。投与されたmRNAは体内で細胞にウイルスタンパク質を作らせ、そのタンパク質の起源であるウイルスへの免疫反応を備わらせます。理論的にはmRNAで作れないタンパク質はありません。それにmRNAは昔なじみのワクチンで使われている弱毒化ウイルスやタンパク質より手軽に製造でき、有望視されてきました。mRNAワクチンの端緒となる取り組みは30年以上前から続いており、すでに1990年にはDNAやRNAをマウスの筋肉に注射してタンパク質を作らせることに成功したことを米国の研究チームが報告しています1)。しかし単にmRNAを注射しただけではすぐに分解されてしまい、タンパク質はほんの僅かしか作られません。それにRNAはそれが生み出すタンパク質への目当ての免疫反応とは別の余計な免疫反応の心配があります。ペンシルバニア大学のmRNAワクチン研究専門家Norbert Pardi氏によるとRNAを単に注射したのでは非常に深刻な炎症を引き起こしかねません2)。2つの技術の進歩がそれらの課題を克服し、Pfizer/BioNTechやModernaのCOVID-19ワクチン誕生へと通じるmRNAワクチン開発の道を開きました。1つは体内でタンパク質をより作り、mRNA自体への免疫反応を生じ難くするようにRNA構成要素・ヌクレオシドを加工する技術が生み出されたことです。免疫分野ジャーナル最高峰のImmunity誌に2005年に報告されたその成果3)は仲間内では大手柄となっているとInternational Society for Vaccinesの会長Margaret Liu氏は科学ニュースTheScientistに話しています2)。2つめの進歩はmRNAを脂質ナノ粒子(LNP)と呼ばれる脂肪の細かな泡に封入して体内で分解されにくくする技術が開発されたことです4)。LNPのおかげで細胞内へのmRNAの輸送が改善しました。それら技術の甲斐あってmRNAワクチンは人へ投与できるまでに至り、小規模ながら狂犬病・インフルエンザ・ジカウイルス(ZIKV)などへのmRNAワクチンの試験が実施できるようになりました。しかしそれらmRNAワクチンの先駆けはどういうわけかCOVID-19へのPfizer/BioNTechやModernaのmRNAワクチンほどの効果はなく、なぜCOVID-19へのそれらmRNAワクチンがとりわけ有効なのかは今後調べていく必要があります。また、COVID-19へのmRNAワクチンの安全性も隈なく調べねばなりません。それにmRNAワクチンを世界の隅々に届けるのには保冷設備の準備も必要です。ModernaのワクチンmRNA-1273は2~8℃で30日間、マイナス20℃なら最大6ヵ月安定なので標準的な冷蔵/冷凍庫があれば事足りそうですが、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b2はいまのところマイナス70℃もの低温で保管しなければなりません。そのような解決が必要な課題があるとはいえ、Pfizer/BioNTechやModernaの開発品の第III相試験のひとまずの成功はmRNAワクチンの明るい展望を切り開きました。英国はPfizer/BioNTechのBNT162b2を数日以内に承認し、注文済みの4,000万回分の投与が早ければ今月7日から始まると同国の経済紙ファイナンシャル・タイムズ(FT)が先月28日に報じています5)。英国はModernaのワクチンの段階的承認審査も進めており、合計700万回投与分を注文済みです6)。mRNAワクチンはCOVID-19をはじめとする感染症への使用に加えてがんへの免疫反応を引き出す用途の開発も複数進んでおり7)、今後は多くの企業がmRNAワクチンに関心を示すだろうとCOVID-19ワクチン助成組織・Coalition for Epidemic Preparedness Innovations(CEPI) の企画/技術リーダーNick Jackson氏は言っています2)。参考1)Wolff JA, et al. Science. 1990 Mar 23;247:1465-8.2)The Promise of mRNA Vaccines / TheScientist3)Kariko K, et al. Immunity. 2005 Aug;23:165-75.4)Reichmuth AM, et al. Ther Deliv. 2016;7:319-34.5)UK set to approve Pfizer-BioNTech Covid vaccine within days / FINANTIAL TIMES6)Moderna Announces Amendment to Current Supply Agreement with United Kingdom Government for an Additional 2 Million Doses of mRNA Vaccine Against COVID-19 (mRNA-1273) / businesswire7)Pardi N, et al. Nat Rev Drug Discov. 2018 Apr;17:261-279.

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プラスグレル治療におけるde-escalation?(解説:上田恭敬氏)-1319

 韓国の35病院において、PCIを施行したACS患者2,338例を対象として、1ヵ月間の標準療法(プラスグレル10mgとアスピリン100mg)後に、標準療法を続ける群とde-escalation群(プラスグレル5mgとアスピリン100mg)に無作為に割り付けを行い、1年間の予後を比較した試験の結果が報告された。主要エンドポイントは全死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、再血行再建術、脳卒中、BARC grade2以上の出血イベントの複合エンドポイントである。75歳以上、体重60kg未満、あるいは一過性脳虚血発作・脳卒中の既往がある人は除外されている。 結果としては、標準治療群に比してde-escalation群の非劣性が示され、さらに主要エンドポイントを有意に低下させたことが示された(HR:0.70[95%CI:0.52~0.92]、p=0.012)。内訳としては、出血性イベントを有意に低下させた(HR:0.48[0.32~0.73]、p=0.0007)が、虚血性イベントの有意な増加は認めなかった(HR:0.76[0.40~1.45]、p=0.40)。 この論文で議論されているのは、「虚血性イベントのリスクはACS発症あるいはPCI直後には高く次第に低下してくるのに対して、出血性イベントのリスクは同様に継続することから、虚血性イベントのリスクが低下すると考えられる1ヵ月後にde-escalationすることに意義がある」ということである。次に、「de-escalationの方法には、投与量を減らす方法とクロピドグレルのような効果の弱い薬剤へ変更する方法があるが、投与量を減らす方法を検討したのは本試験が初めて」としている。また、本試験が、出血性イベントが多く虚血性イベントが少ない「east Asian population」で行われたことも、このような結果が得られた背景として指摘している。 ここで、日本人として注意すべきことがある。まず、日本におけるプラスグレルの標準投与量は3.75mgであり、この試験の結果は適用できない。そもそも同じ「east Asian population」である韓国と日本で異なった標準投与量が承認されていることに対して疑問がある。韓国が欧米の標準投与量をそのまま採用したのに対して、日本はPRASFIT-ACSという独自の試験によって、プラスグレル3.75mgが従来のクロピドグレル治療よりも虚血性イベントを低下させるが、出血性イベントを増やさないことを確認して、標準投与量として承認している。この結果は、「CYP2C19 loss-of-function alleles」を持つ人が多い「east Asian population」では、そのためにクロピドグレルの効果が不十分となるのに対して、プラスグレルではこの遺伝子多型に依存せずに十分な効果が得られることに起因すると考えられている。すなわち、クロピドグレルの効果を十分に得られていた人においては、同等の効果が得られるようにプラスグレルの投与量が決められているため、出血性イベントが有意に増加しなかったと考えられる。そのため、日本においてプラスグレル3.75mgをクロピドグレルへ変更することは、一部の遺伝子多型の人を効果不十分にするだけで「de-escalation」とは言えない。プラスグレルを3.75mgよりもさらに低用量にすることにメリットがあるかどうかはわからないが、今回報告されている5mgは、同じ「east Asian population」である韓国において、まだ多すぎるのではないだろうか。 話は変わるが、本試験の結果がLancet誌に採択されたのは、国際標準投与量をベースとして減量を検討したことと、1ヵ月以後虚血性イベントのリスクが減るだろうという仮説に沿った結果を示したことが要因と推測する。その点において本試験の結果は、欧米にもある程度適用可能であるからである。もし、プラスグレル3.75mgをベースとした大規模な試験が行われても、その結果がLancet誌に採択されるかどうか、国際的公平性の観点から気になるところである。

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第35回 母乳保育は子にCOVID-19防御免疫を授けうる

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)後の出産女性の大半の母乳にはSARS-CoV-2への抗体反応が備わっており1)、それらの女性の母乳保育は子に抗ウイルス免疫を授けうると示唆されました。ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)の免疫学者Rebecca Powell氏等はPCR検査でSARS-CoV-2が検出された8人と検査はされなかったけれども感染者との濃厚接触などがあって恐らく感染した7人の感染期間終了から数週間後の母乳を集めてSARS-CoV-2への抗体を調べました。その結果15人全員の母乳にSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質に反応する抗体が認められました。また、15人中12人(80%)の母乳には細胞感染阻止(neutralization)に重要なSタンパク質抗原決定基・受容体結合領域(RBD)への結合抗体も認められました。目下のCOVID-19流行の最中(2月30日~4月3日)に41人の女性からCOVID-19経験の有無を問わず集めた母乳を解析した別の試験2)でもSタンパク質反応抗体がほとんどの女性から検出されています。それらの女性のSARS-CoV-2感染の有無の記録はなく、SARS-CoV-2に反応する抗体の出処は不明ですが、SARS-CoV-2以外のウイルスの貢献が大きいようです。Sタンパク質に反応するIgG抗体レベルは先立つ1年間に呼吸器ウイルス感染症を経た女性の方がそうでない女性に比べて高く、SARS-CoV-2へのIgAやIgM抗体の反応はSタンパク質に限ったものではなさそうでした。2018年に採取された母乳でもSARS-CoV-2タンパク質へのIgAやIgM抗体反応が認められ、目下のCOVID-19流行中に採取された母乳と差はなく、どうやらSARS-CoV-2以外のウイルスに接したことがSARS-CoV-2にも反応する抗体を生み出したようです。母乳中に分泌される抗体はSARS-CoV-2への抵抗力を含む幅広い免疫を授乳を介して子に授けうると研究チームの主力免疫学者Veronique Demers-Mathieu氏は言っています3)。この8月にJAMA誌オンライン版に掲載された試験でCOVID-19感染女性の母乳から生きているウイルスは検出されておらず4)、今回の結果も含めると、女性はCOVID-19流行のさなかにあっても少なくとも安心して母乳保育を続けることができそうです。もっと言うなら母乳保育は子にCOVID-19疾患の防御免疫を授ける役割も担うかもしれません。マウントサイナイ医科大学のPowell氏等は次の課題として母乳中の抗体がSARS-CoV-2の細胞感染を阻止しうるかどうかを調べます。また、母乳中のSARS-CoV-2反応抗体はCOVID-19疾患を予防する経口の抗体薬となりうる可能性を秘めており2)、Powell氏等のチームはCOVID-19を食い止める抗体を母乳から集める取り組みをバイオテック企業Lactigaと組んで進めています3)。参考1)Fox A, et al. iScience. 2020 Nov 20;23:101735.2)Demers-Mathieu V, et al. J Perinatol. 2020 Sep 1:1-10c3)Breastmilk Harbors Antibodies to SARS-CoV-2/TheScentist4)Chambers C, et al. JAMA. 2020 Oct 6;324:1347-1348.

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75歳以上への脂質低下療法、心血管イベントの抑制に有効/Lancet

 脂質低下療法は、75歳以上の患者においても、75歳未満の患者と同様に心血管イベントの抑制に効果的で、スタチン治療とスタチン以外の脂質低下薬による治療の双方が有効であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のBaris Gencer氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年11月10日号に掲載された。高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法の臨床的有益性に関する議論が続いている。2018年の米国心臓病学会と米国心臓協会(ACC/AHA)のコレステロールガイドラインでは、高齢患者に対する脂質低下療法の推奨度が若年患者よりも低く、2019年の欧州心臓病学会(ESC)と欧州動脈硬化学会(EAS)の脂質異常症ガイドラインは、高齢患者の治療を支持しているが、治療開始前に併存疾患を評価するための具体的な考慮事項を追加している。75歳以上における主要血管イベントをメタ解析で評価 研究グループは、高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法のエビデンスを要約する目的で、系統的レビューとメタ解析を実施した(研究助成は受けていない)。 医学データベース(MEDLINE、Embase)を用いて、2015年3月1日~2020年8月14日の期間に発表された論文を検索した。対象は、2018年のACC/AHAガイドラインで推奨されているLDLコレステロール低下療法の心血管アウトカムを検討した無作為化対照比較試験のうち、フォローアップ期間中央値が2年以上で、高齢患者(75歳以上)のデータを含む試験であった。心不全または透析患者だけを登録した試験は、これらの患者にはガイドラインで脂質低下療法が推奨されていないため除外した。標準化されたデータ形式を用いて高齢患者のデータを抽出した。 メタ解析では、LDLコレステロール値の1mmol/L(38.67mg/dL)低下当たりの主要血管イベント(心血管死、心筋梗塞/他の急性冠症候群、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合)のリスク比(RR)を算出した。主要血管イベントの個々の構成要素のすべてで有益性を確認 系統的レビューとメタ解析には、スタチン/強化スタチンによる1次/2次治療に関するCholesterol Treatment Trialists' Collaboration(CTTC)のメタ解析(24試験)と、5つの単独の試験(Treat Stroke to Target試験[スタチンによる2次予防]、IMPROVE-IT試験[エゼチミブ+シンバスタチンによる2次予防]、EWTOPIA 75試験[エゼチミブによる1次予防、日本の試験]、FOURIER試験[スタチンを基礎治療とするエボロクマブによる2次予防]、ODYSSEY OUTCOMES試験[スタチンを基礎治療とするアリロクマブによる2次予防])の6つの論文のデータが含まれた。 合計29件の試験に参加した24万4,090例のうち、2万1,492例(8.8%)が75歳以上であった。このうち1万1,750例(54.7%)がスタチンの試験、6,209例(28.9%)がエゼチミブの試験、3,533例(16.4%)はPCSK9阻害薬の試験の参加者であった。フォローアップ期間中央値の範囲は2.2~6.0年だった。 LDLコレステロール低下療法により、高齢患者における主要血管イベントのリスクが、LDLコレステロール値の1mmol/L低下当たり26%有意に低下した(RR:0.74、95%信頼区間[CI]:0.61~0.89、p=0.0019)。これに対し、75歳未満の患者では、15%のリスク低下(0.85、0.78~0.92、p=0.0001)が認められ、高齢患者との間に統計学的に有意な差はみられなかった(pinteraction=0.37)。 高齢患者では、スタチン治療(RR:0.82、95%CI:0.73~0.91)とスタチン以外の脂質低下療法(0.67、0.47~0.95)のいずれもが主要血管イベントを有意に抑制し、これらの間には有意な差はなかった(pinteraction=0.64)。また、高齢患者におけるLDLコレステロール低下療法の有益性は、主要血管イベントの個々の構成要素のすべてで観察された(心血管死[0.85、0.74~0.98]、心筋梗塞[0.80、0.71~0.90]、脳卒中[0.73、0.61~0.87]、冠動脈血行再建術[0.80、0.66~0.96])。 著者は、「これらの結果は、高齢患者におけるスタチン以外の薬物療法を含む脂質低下療法の使用に関するガイドラインの推奨を強化するものである」としている。

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迅速承認薬の治療的価値は本物か?/BMJ

 過去10年で米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)が承認した新薬について、他の5つの独立組織(4ヵ国[カナダ、フランス、ドイツ、イタリア]の保健当局とPrescrire誌を発行する国際非営利組織)のうち少なくとも1組織によって「治療的価値が高い」と評価されたのは3分の1に満たないことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学医学大学院のThomas J. Hwang氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で明らかにされた。FDAおよびEMAによる新薬承認は、医薬品開発・承認の促進プログラムが一因し、これまでになく多数かつ迅速になっているという。今回の検討では、FDAおよびEMAによって治療的価値が高いとされた新薬は、非迅速開発薬よりも迅速開発薬で有意に多く、FDAで承認されたがEMAでは承認されなかった迅速承認薬の大半は治療的価値が低いと評価されていることも示された。BMJ誌2020年10月7日号掲載の報告。治療的価値が高いとされた新薬の割合などを調査 研究グループは本検討で、FDAおよびEMAにより承認された新薬の治療的価値を特徴付けること、また、FDAおよびEMAによる評価と開発促進プログラムによる承認調整との関連を明らかにすることを目的とした。 2007~17年にFDAおよびEMAで承認された新薬について、2020年4月1日までフォローアップを行い、5つの独立組織(Prescrire、カナダ・フランス・ドイツ・イタリアの保健当局)による新薬の評価法を用いて治療的価値を測定した。 治療的価値が高いとされた新薬の割合、および治療的価値が高いとの評価と開発促進プログラム該当の有無との関連を調べた。FDAとEMAの承認新薬、他組織で治療的価値が高いとされたのは31% 2007~17年に、FDAが320、EMAが268の新薬を承認していた。そのうち、少なくとも1つ以上の開発促進プログラムに該当していた新薬は、FDAは181(57%)あったが、EMAは39(15%)であった。 治療的価値の評価が行われていた267の新薬において、少なくとも1つの組織で治療的価値が高いと評価されたのは84(31%)であった。 治療的価値が高いと評価された割合は、非迅速開発薬と比較して迅速開発薬のほうが、FDA承認薬(45%[69/153]vs.13%[15/114]、p<0.001)、EMA承認薬(67%[18/27]vs.27%[65/240]、p<0.001)ともに有意に高率であった。 治療的価値が高いと独立的に評価された新薬について、開発促進プログラムの感度および特異度は、FDA承認薬では82%(95%信頼区間[CI]:72~90)と54%(47~62)であったが、EMA承認薬では25.3%(16.4~36.0)と90.2%(85.0~94.1)であった。 結果を踏まえて著者は、「政策立案者と規制当局は、評価プロセスの結果と新薬承認の制限について、患者や医師にもっとよく知らせる方法を模索すべきである」と提言している。

275.

SGLT2阻害薬でも糖尿病患者の心血管イベントは抑制されない?(解説:吉岡成人氏)-1304

 糖尿病患者における心血管疾患のリスクを低減するためにSGLT2阻害薬が有用であると喧伝されている。米国糖尿病学会(ADA)では心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)、心不全の既往のある患者やハイリスク患者では、血糖の管理状況にかかわらずGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬を第一選択薬であるメトホルミンと併用することが推奨されている。欧州心臓病学会(ESC)と欧州糖尿病学会(EASD)による心血管疾患の診療ガイドラインでは、心血管リスクが高い患者での第一選択薬としてSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬を用いることも選択肢の一つであるとしている。 日本においても、循環器学会と糖尿病学会が「糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント」が公表され、糖尿病患者は心血管疾患のハイリスク群であり、心不全の合併が多いことが記されている。日本人においても欧米同様にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を推奨すべきかの結論は得られていないというコメントはあるが、心不全ないしは心不全の高リスク患者ではSGLT2阻害薬の使用が推奨されている。 そのような背景の中、2020年6月にWebで開催されたADAにおいてSGLT2阻害薬であっても心血管イベントの抑制効果が認められない薬剤があることが報告された。日本では未発売のSGLT2阻害薬であるertugliflozinの心血管イベント抑制効果に関する臨床試験(Evaluation of Ertugliflozin Efficacy and Safety Cardiovascular Outcomes Trial:VERTIS-CV)であり、その詳細が、2020年9月23日のNEJM誌に掲載されている。 VERTIS試験の対象は冠動脈、脳血管、末梢動脈の少なくともいずれかにアテローム動脈硬化性疾患を持つ8,246例であり、平均年齢は64歳、88%が白人で糖尿病の罹病期間は平均で13年、ベースラインにおけるHbA1cは8.2%であった。平均で3.5年の追跡期間における1次評価項目(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発生率は実薬群、プラセボ群ともに11.9%、100人年当たりの発生率は実薬群3.9、プラセボ群4.0であり差がなかった。EMPA-REG試験においても1次評価項目はVERTIS試験とまったく同じであり、100人年当たりの発生率は、実薬群3.74、プラセボ群4.39であった。2次評価項目である心血管死、心不全での入院についても差はなかったものの、心不全での入院のみで比較をするとプラセボ群3.6%(1.1/100人年)、実薬群2.5%(0.7/100人年)であり統計学的に有意な差(ハザード比0.70、信頼区間:0.54~0.90)があった。腎関連の評価項目(腎死、腎代替療法、クレアチニンの倍加)にも有意差は認められなかった。プラセボ群との非劣性を確認するための臨床試験とはいえ、SGLT2阻害薬として従来報告されていた心血管イベントに対する抑制効果が疑問視される結果であった。なぜ、ertugliflozinでほかのSGLT2阻害薬で確認された臨床効果が認められなかったのか、単なる薬剤による違いなのかは判然としない。 ともあれ、欧米の糖尿病患者と日本の糖尿病患者では臨床的な背景も、病態も異なっている。日本人における高齢率は28%であり2型糖尿病の平均年齢は65歳を超え、死因の38%は悪性腫瘍、11%が心疾患である(中村二郎ほか. 糖尿病. 2016;59:667-684.)。一方、米国での高齢化率は14.5%にすぎず、糖尿病患者の死因の第1位は心血管疾患で34%、悪性腫瘍は20%である(Gregg EW, et al. Lancet. 2018;391:2430-2440.)。欧米のガイドラインや臨床試験の結果を日本の臨床の現場に応用する場合には、一定の距離感を保ちつつ十分に吟味する必要があると思われる。

276.

PCI後プラスグレルのde-escalation法、出血リスクを半減/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行った急性冠症候群(ACS)患者に対し、術後1ヵ月間プラスグレル10mg/日を投与した後、5mg/日に減量する、プラスグレルをベースにしたde-escalation法は、1年間のネット有害臨床イベントを低減することが、韓国・ソウル大学病院のHyo-Soo Kim氏らが同国35病院2,338例を対象に行った「HOST-REDUCE-POLYTECH-ACS試験」の結果、示された。イベントリスクの低減は、主に虚血の増大のない出血リスクの減少によるものであった。PCI後のACS患者には1年間、強力なP2Y12阻害薬ベースの抗血小板2剤併用療法(DAPT)が推奨されている。同療法では早期の段階において薬剤の最大の利点が認められる一方、その後の投与期には出血の過剰リスクが続くことが知られており、研究グループは、抗血小板薬のde-escalation法が虚血と出血のバランスを均衡させる可能性があるとして本検討を行った。Lancet誌2020年10月10日号掲載の報告。韓国35病院で2,338例を無作為化、有害臨床イベント発生を比較 HOST-REDUCE-POLYTECH-ACS試験は、韓国35病院で行われた多施設共同無作為化非盲検非劣性試験。PCIを実施したACS患者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、全例に術後1ヵ月間プラスグレル10mg/日+アスピリン100mg/日を投与した後、一方の群ではプラスグレルを5mg/日に減量(de-escalation群)、もう一方の群には10mg/日を継続投与した(対照群)。 主要エンドポイントは、1年時点のネット有害臨床イベント(総死亡、非致死的心筋梗塞、ステント血栓症、血行再建術の再施行、脳卒中、BARC出血基準2以上の出血)の発生で、絶対非劣性マージンは2.5%とした。 主な副次エンドポイントは、有効性アウトカム(心血管死、心筋梗塞、ステント血栓症、虚血性脳卒中)と安全性アウトカム(BARC出血基準2以上の出血)だった。de-escalation群、虚血リスクの増大なし、出血リスクは半減 2014年9月30日~2018年12月18日に3,429例がスクリーニングを受け、うち1,075例がプラスグレル適応基準を満たさず、16例が無作為化エラーにより除外され、2,338例がde-escalation群(1,170例)、対照群(1,168例)に割り付けられた。 ネット有害臨床イベントの発生は、de-escalation群82例(Kaplan-Meier法による予測値:7.2%)、対照群116例(10.1%)で、de-escalation群の非劣性が示された(絶対リスク差:-2.9%、非劣性のp<0.0001、ハザード比[HR]:0.70[95%信頼区間[CI]:0.52~0.92]、同等性のp=0.012)。 de-escalation群は対照群に比べ、虚血のリスク増大はみられず(HR:0.76、95%CI:0.40~1.45、p=0.40)、出血イベントリスクは有意に減少した(0.48、0.32~0.73、p=0.0007)。

277.

非小細胞肺がん、デュルバルマブ術前補助療法の成績/ESMO2020

 早期非小細胞肺がん(NSCLC)における免疫チェックポイント阻害薬の術前補助療法は、すでに幾つかの試験で検討され、有望な結果が得られている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、デュルバルマブの術前補助療法を評価する第II相多施設共同試験(IFCT-1601 IONESCO)の中間解析の結果を、フランス・Cochin病院のMarie Wislez氏が発表した。・対象:Stage1B(4cm以上)、2、3A(N2除く)の切除可能NSCLC・介入:デュルバルマブ750mg 2週ごと3サイクル投与後2〜14日目に手術・評価項目:[主要評価項目]完全(R0)切除の割合[副次評価項目]術後90日死亡率、安全性、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、奏効率、MPR(Major Pathologic Response、生存腫瘍細胞10%以下)、初回投与から手術までの期間 主な結果は以下のとおり。・2017年4月〜2019年8月に50例が登録され、46例がデュルバルマブ投与対象となった。・患者の年齢中央値61.0歳、 男性70%、喫煙者は94%であった。・R0切除割合は89.1%(46例中41例)と、仮説割合の85%を超え、主要評価項目を達成した。・46例中4例はPR、36例がSD、6例がPDで、MPRは43例中8例の18.6%であった。・術後90日の死亡率は9%(4例)。そのため、登録は中止となった。死亡した4例中3例は、心血管系などの併存疾患を有しており、デュルバルマブとの直接の関連はみられなかった。・全Gradeの有害事象(AE)は33.3%、すべてGrade2以下であった。 ・追跡期間23ヵ月におけるOSとDFSの中央値は未達、 1年OS率は89.7%、12ヵ月DFS率は78.2.%であった。

278.

職場における不眠症介入~メタ解析

 スペイン・セビリア大学のJuan Vega-Escano氏らは、従業員の不眠症の改善または軽減に対する介入の影響を特定および評価するため、ランダム化臨床試験を通じたシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2020年9月2日号の報告。 PRISMAおよびMARSステートメントの推奨事項に従って、PubMed、Web of Science、CINHAL、PsycINFOのデータベースよりシステマティックに文献を検索した。アウトカムの尺度として、変量効果モデルと不眠症重症度指数を用い、メタ解析を実施した。バイアスリスクとエビデンスの質の評価には、コクラン共同計画ツールとGRADEシステムをそれぞれ用いた。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューで22件の研究が抽出され、メタ解析には12件を用いた。・従業員のサンプル数は827例で、14の介入グループを作成した。・最も用いられていた介入は、認知行動療法であった。・平均間の推定差では、介入は不眠症状軽減に対する中程度の効果が認められ(MD:-2.08、95%CI:-2.68~-1.47)、不均一性の程度に有意な差は認められなかった(p=0.64、I2=0%)。・エビデンスの質とバイアスリスクは、中程度であった。 著者らは「職場における不眠症への介入は、従業員の健康を改善するのに効果的である。週間の睡眠時間の増加や入眠潜時の短縮は、睡眠の質を改善し、不眠症状を軽減させる可能性が示唆された。仕事面では、生産性向上、プレゼンティズムの改善、燃え尽き症候群の対策につながるであろう」としている。

279.

アジア人統合失調症患者におけるBMIと錐体外路症状との関係~REAP-AP研究

 これまでBMIとパーキンソン病との関連がいくつか報告されているが、統合失調症患者におけるBMIと抗精神病薬誘発性の錐体外路症状(EPS)との関連を報告した研究は少ない。韓国・Inje University Haeundae Paik HospitalのSeon-Cheol Park氏らは、統合失調症患者におけるBMIとEPSの関連を評価するため、検討を行った。Psychiatria Danubina誌2020年夏号の報告。 向精神薬処方に関するアジア国際共同研究の抗精神病薬(Research on Asian Psychotropic Prescription Patterns for Antipsychotics:REAP-AP)のデータを用いて、体重で層別化した統合失調症患者1,448例を対象にEPSの発現率を比較した。体重の層別化には、WHOの肥満度分類およびアジアパシフィック肥満分類を用いた。主な結果は以下のとおり。・WHO肥満度分類を用いた検討において、多項ロジスティック回帰モデル(交絡因子の潜在的な影響を調整)では、低体重は運動緩慢、筋強剛の発現率増加および歩行障害の発現率低下との有意な関連が認められた。・アジアパシフィック肥満分類を用いた検討において、多項ロジスティック回帰モデル(交絡因子の潜在的な影響を調整)では、低体重は筋強剛の発現率増加との有意な関連が認められた。 著者らは「アジア人統合失調症患者では、低体重が筋強剛の発現率増加と段階的なパターンで関連していることが明らかとなった。このメカニズムについては、不明な点があるものの、第1世代抗精神病薬の使用や抗精神病薬の用量にかかわらず、低BMIが筋強剛の発現に影響を及ぼしていると推測される」としている。

280.

第25回 脳の“女性”が雄の性欲の原動力~バイアグラ発売時の熱狂を雄弁に語る映画

男性ホルモン・テストステロンを女性ホルモン・エストロゲン(エストラジオール)に変える酵素・アロマターゼを発現している脳領域が雄マウスの性欲を支える原動力の一翼を担うと分かりました1,2)。脳に限ってアロマターゼを発現しない雄マウス(脳アロマターゼ欠損雄マウス)を調べたノースウエスタン大学の今回の成果はテストステロンが性欲を増進させる仕組みを初めて明らかにしました。雄マウスは雌マウスと一緒にいると正常であれば雌マウスを追いかけて交尾を試みます。しかし脳アロマターゼ欠損雄マウスは性活動に熱心ではなく、血中のテストステロン濃度が充分にもかかわらず正常マウスの半分しか性活動に取り組みませんでした。交尾の頻度は低下し、著者曰く性に“無関心”になっていました。脳アロマターゼ欠損雄マウスを去勢してテストステロンを投与しても性行動の完全な回復は認められませんでした。一方テストステロンとエストラジオールの両方を投与すると性活動が完全に回復し、脳のアロマターゼがテストステロンを発端とする雄の完全な性活動に必要なことが裏付けられました。今回の結果によると病的な性欲衝動を抑えるのに既存のアロマターゼ阻害剤が有効かもしれません。しかし骨粗鬆症などの副作用の心配があります。脳のアロマターゼ遺伝子プロモーター領域のみ抑制する薬が将来的に開発できれば既存のアロマターゼ阻害剤につきものの副作用を引き起こすことなく目当ての効果を引き出すことができそうです。また、逆にアロマターゼ活性を上げる治療は性欲減退に有効かもしれません。性欲減退はよくあることであり、うつ病を治療する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの広く使われている薬剤で生じることもあります。そのような性欲減退に対してアロマターゼ活性を底上げする性欲増進治療が可能かもしれないと今回の研究を率いたSerdar Bulun氏は言っています。男性の性機能改善薬の先駆けバイアグラ発売時の熱狂ぶりがわかる映画ところで男性の性活動を助ける薬といえばおよそ20年前の1998年に米国FDAに承認されたPfizer(ファイザー)のバイアグラ(Viagra)3)が先駆けです。実話に基づく2011年の映画「ラブ&ドラッグ」ではバイアグラの米国での発売時の熱狂ぶりを垣間見ることができます4)。物語はバイアグラのセールスマンと若くしてパーキンソン病を患う女性を中心に進み、アン・ハサウェイが演じる女性・マギーはパーキンソン病患者やその家族の困難や希望を映し出します。性的な描写があるR15+指定(15歳以上鑑賞可)の映画で一緒に見る相手を選びますし好みが分かれると思いますが、美男美女2人の恋愛成就までの道のりを通じてバイアグラ発売の頃のアメリカの医療の実際を伺い知ることができる作品となっています。参考1)Site of male sexual desire uncovered in brain / Eurekalert2)Brooks DC,et al. Endocrinology. 2020 Oct 01;161.3)VIAGRA PRESCRIBING INFORMATION4)「ラブ&ドラック」公式ホームページ

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