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DCS vs.DES:大腿動脈領域はパクリタキセル戦争(解説:中野明彦氏)-948

【EVTとPCI】 同じインターベンションでも冠動脈領域(PCI)と末梢動脈領域(EVT)には似て非なる点が多い。まずは両者の違いを列挙してみる。・対象血管の太さ:冠動脈と比較すると腸骨動脈は2~3倍、浅大腿~膝窩動脈は1.5~2倍、膝下動脈は同程度。・病変の長さ:末梢動脈のほうが数倍長い。・ステントプラットホーム:冠動脈では菲薄化と強い支持力を可能とするCoCrやPtCrを用いたballoon-expandable(バルーン拡張型)が、末梢動脈では屈曲・伸展・捻れのストレスにさらされるため柔軟性と支持力を兼ね備えたNitinolを用いたself-expandable(自己拡張型)が主体。・再狭窄のピーク:冠動脈では半年程度だが、自己拡張型ステントにより血管へのストレスが遷延するためか末梢動脈では1年以降も緩徐に再狭窄が進行する。・対象症例・マーケットの大きさ:最新の循環器疾患診療実態調査報告書では国内の症例数はPCI:EVT=4:1である。したがってEVT分野では大規模な臨床試験が遂行しにくい。【大腿~膝窩領域は群雄割拠】 さらに、病変部位によって治療戦略や成績が異なるのがEVTの大きな特徴である。腸骨動脈ではbare metal stentとくにbare nitinol stent(BNS)が5年開存率80~90%と安定した結果を残しているのとは対称的に、重症下肢虚血のみが適応となる膝下領域では閉塞性病変も多く、とくにバルーン治療しか適応されない本邦においては、その高い再狭窄率を打開する糸口が見いだせていないのが現状である。 そして大腿~膝窩動脈は最もホットな領域で、デバイスの進化と相まってガイドラインが改定されるたびに適応病変も拡大している。デバイスは従来のバルーン・BNSに加え、薬剤コーティングステント(DCS)・薬剤溶出性ステント(DES)・薬剤コーティングバルーン(DCB)、さらにはステントグラフト・アテレクトミーまで多岐に渡る。進化の過程はPCIのそれに類似するが、再狭窄予防に用いられる薬剤はlimus系が席巻しているPCIと異なり、冠動脈では一線を退いたパクリタキセルが主役を演じている。この分野にも依然として残るデバイスラグにより、本邦ではバルーン・BNS・DCS・ステントグラフトのみが使用可能であったが、新たに2017年12月からDCB:Paclitaxel-coated balloon(IN. PACT Admiral)が保険適用となった。【IMPERIAL studyについて】 本試験は大腿~膝窩動脈領域のEVTにおいて、非吸収ポリマー被覆・パクリタキセル溶出性ステント(Eluvia)の非ポリマー・パクリタキセル被覆ステント(Zilver PTX)に対する非劣性を検証した多施設単盲検無作為試験である。Eluvia stentはPCI領域(Xience stent / Promus stent)と同じポリマーにより薬剤溶出スピードがコントロールされ、再狭窄のピークとされる1年後までパクリタキセルを放出し続ける。対してポリマーのないZilver PTX stentは24時間で95%のパクリタキセルが放出され、約2ヵ月で血管壁からも消失する。すなわち前者はDrug-Eluting Stent(DES)であり、後者はDrug-Coated Stent(DCS)なのである。 試験の詳細は別項に譲るが、病変長8cm台と長くはないものの、完全閉塞が3割、高度石灰化30~40%のリアルワールドに近い病変が対象で、1年後の有効性・安全性のエンドポイントにおいてEluviaの非劣性が示されただけではなく、1次開存率はEluviaが勝り、再治療率・ステント血栓症もZilver PTXのおよそ半分だった。【Eluvia stentへの期待と懸念】 DESの優劣にはステントプラットホーム、ポリマー、薬剤とその溶出期間などが複合的に影響する。PCI領域でのCypher stent(Sirolimus-eluting stent)に少し遅れ、EVT領域で2000年代に相次いで登録されたlimus系DES:Sirolimus-eluting stent(SIROCCO I・II study)やEverolimus-eluting stent(STRIDES study)は、BNSへの優位性が示せず早々に表舞台から姿を消した。その後のZilver PTXの登場はCypher stentの時のような期待感を抱かせたが、今回のEluvia stentはPCI領域での第2世代DESのイメージである。 しかしまだ1年間の結果であり、課題も多い。たとえばパクリタキセルが溶出し終えた1年以降の長期成績が未確定である。現時点ではfirst-in-manのMAJESTIC試験(n=57、病変長:7cm、完全閉塞:46%、高度石灰化:65%)が3年次までを報告、TLR回避率85.3%と悪くない結果だった。一方、薬剤長期溶出の懸念についてはMunster all-comers registry(n=62、病変長:20cm、完全閉塞:79%、中~高度石灰化:42%)が1年後に8%の動脈瘤形成(あるいは高度の陽性リモデリング)を報告している。 いまだこのDESを持たない日本では、ステントを留置しない「leave nothing behind」の概念が注目されDCB市場がにわかに活気付いている。冠動脈とは比較にならないほどの大量の新生内膜への対応策が確立していないためである。臨床試験もIN. PACT AdmiralによるIN. PACT SFA試験(n=220、病変長:8.9cm)の3年間1次開存率は69.5%、TLR回避率84.8%と良好である。しかし完全閉塞:26%、高度石灰化:8%と重症病変は少なく、7%でステントの追加留置が必要だった。当然のことながらステント(DES・DCS)とDCBは競合的ではなく補完的に使い分けるべきなのだろう。 2016年2月にCEマークを取得、本年9月FDAに認可されたEluvia stentは、おそらく来年にはわれわれの手元に届く。今後の長期成績を見据えながら、各デバイスをどう使い分けていくのかが問われることになる。 Eluviaが“帝国”を築けるかどうか、今後も大腿~膝窩動脈領域のパクリタキセル戦争に注目である。

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特発性肺線維症〔IPF : idiopathic pulmonary fibrosis〕

特発性肺線維症特発性肺線維症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる肺胞(隔)壁などに傷害と炎症が生じ、不可逆的な線維化を起こす疾患群である。この間質性肺炎には、薬剤性、膠原病性、大量の粉塵吸入など原因が明らかなものと、原因が不明な特発性間質性肺炎とがある。主な特発性間質性肺炎は7つの病型に分類されているが、そのうち患者数が最も多く、かつ予後不良の中心的疾患が特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)である。IPFは慢性、進行性の疾患であり、高度の線維化が肺底部、肺の末梢領域から肺全体へ広がって、不可逆性の蜂巣肺と呼ばれる病変を形成する、きわめて予後不良の疾患である。IPFの病理組織像はusual interstitial pneumonia (UIP)と呼ばれている所見である。従来、有効な治療法のない疾患であったが、近年、2つの抗線維化薬が治療薬として注目されている。■ 疫学近年まで特発性間質性肺炎、IPFの患者数についての正確な調査は行われておらず、まったく不明であったが、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究班」により2008年以来、北海道において詳細な疫学研究が行われ、実態が明らかにされてきた。これによると、特発性間質性肺炎の有病率は10万人あたり10.0人であり、日本全体では少なくとも約1万3千人の患者数となり、その多くがIPFであることから、少なくみても1万数千人以上のIPF患者が日本には存在すると考えられる。■ 病因定義で述べたように、IPFの原因は不明であるが、リスク・ファクターとして喫煙、職場の粉塵(とくに金属粉塵)、ウィルスなどが考えられている。家族性で遺伝的素因が強くうかがわれる例もある。■ 症状IPFはゆっくりと進行する疾患であるが、個々の患者によって比較的急速に進行する例もある。主な症状は労作時の呼吸困難とさまざまな程度の乾性咳嗽である。労作時の息切れは、来院する6ヵ月~数年前から存在しており、聴診ではほとんどの例で、背部下肺野に捻髪音(fine crackle)を聴取する。半分~1/3の例で「ばち指」を認める。進行し末期に至ると、肺性心、末梢性浮腫、チアノーゼなどがみられてくる。■ 分類背景因子として、粉塵吸入の目立つ例、C型肝炎例、糖尿病合併例、膠原病が疑われる症状のある例、過敏性肺炎との鑑別が難しい例、家族性の例などさまざまなサブタイプの存在するheterogeneousな疾患といえる。近年、欧米からの指摘により日本でも再注目されているのが、上肺に気腫が存在し、下肺に線維化がある「気腫合併肺線維症」(CPFE:combined pulmonary fibrosis and emphysema)である。本病態は喫煙と強い関係があり、呼吸機能上、気腫と線維化が相殺されて、1秒率 (FEV1/FVC)は一見正常に近いが、肺拡散能が低下しているという特徴を有する。本病態では、肺がんの高率合併や症例によっては強い肺高血圧症を合併することからも注意が必要である。分類ではないが、IPFの病態としてきわめて重要なものに「急性増悪」と肺がん合併がある。急性増悪を一旦起こすと、死亡率約80%ともいわれ、きわめて予後不良である。■ 予後IPFはきわめて予後不良の疾患で、わが国のある調査では、初診時を起点とした平均生存期間は約5年であった。また、欧米での診断確定後の平均生存期間は28~52ヵ月とされる。しかしながら、IPFの予後にはきわめて多様性があり、数ヵ月で急性増悪などにより死亡する例から10数年以上生存する例までさまざまである。ただ、全体的にはきわめて予後不良の疾患であることは間違いのないところである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)IPFの診断については基本的には図1の「IPF診断のフローチャート」に沿って行われる。まず、原因の明らかな他の間質性肺疾患を除外し、つぎにHRCT所見で典型的なUIPパターン(表1)を示す場合には、臨床的にIPFと確定診断される。外科的肺生検が実施された例では、HRCT所見と病理所見の組み合わせで判断していく(表2)。HRCTで典型的なUIPパターンを示さない場合でもpossible UIPパターンで、臨床経過がIPFに合致するような肺機能低下を示す(disease behavior)例ではIPFと臨床診断されることも可能である。こういった診断の際には間質性肺疾患の診断経験を十分に積んだ呼吸器専門医、画像診断医、病理診断医がMDD(multi-disciplinary discussion:多職種による合議)を行い、総合的に判断していくことがIPFの正確な診断に重要とされている。血液検査所見としては、従来LDHのみであったが、近年、新しい間質性肺炎マーカーとしてKL-6、SP-D、SP-Aが導入された。これらは、診断と共に活動度の判定にも有用である。呼吸機能としては、通常肺活量(VC)や全肺気量(TLC)の低下がみられ、拘束性換気障害のパターンを示し、また同時に肺拡散能の低下も認められる。ただし、気腫合併肺線維症ではこの限りではないことは前述した。IPFとの鑑別が必要な主な疾患として、表3のようなものがあげられる。画像を拡大する■MDD(multidisciplinary discussion)の取り扱いMDD:下記のとおり、呼吸器内科医、画像診断医、病理診断医が総合的に診断するMDD-A:画像上他疾患が考えられる場合、気管支鏡検査あるいは外科的肺生検で他疾患が見込まれる場合MDD-B:外科的肺生検は積極的UIP診断の根拠になる場合が多いため、患者のリスクを勘案の上、可能な限り施行するMDD-C:IPF症例で非典型的な画像(蜂巣肺が不鮮明など)を約半数で認めるため、呼吸機能の低下など、進行経過(behavior)を総合して臨床的IPFと判断する症例があるMDD-D:病理検査のない場合の適格性を検討する各MDDにおいて最終診断が変わりうる可能性がある画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療今まで、IPFの生存率や健康関連QOLに対して明らかな有効性が証明された薬物治療法はなかったが、2008年に新しく上市された抗線維化薬ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)、さらに2015年に上市されたニンテダニブ(同:オフェブ)が大きく注目されている。IPFは治癒が期待できない難治性疾患であるため、その治療目標は改善ではなく、むしろ悪化防止(現状維持)が現実的である。予後不良因子である急性増悪の予防(感冒・心不全などの予防、無理をしないなど)、合併症の肺がん、肺高血圧症の早期発見と対応が求められる。後述する薬剤治療に関しても、治療効果と副作用を考えて選択することが重要である。次に、薬剤治療について述べる。1)N-アセチルシステイン(NAC:N-acetylcysteine)は、グルタチオンの前駆物質であり、抗酸化作用を有すると共に、活性酸素のスカベンジャー作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用などがある。IPFの病変部ではグルタチオンが減少し、レドックスバランスの不均衡が生じていることからも、NACの有用性が考えられる。NACの経口薬については欧州を中心とした臨床試験において効果が示されていたが、近年PANTHER試験で経口薬は無効とされた。しかし、日本ではNACはすでに吸入薬の形で去痰薬として長い歴史がある。吸入薬の形によるNACのIPFに対する検証がわが国でも厚生労働省の研究班を中心に行われ、一定の効果が示されている。NACの利点は副作用が少ない点であるが、吸入療法のため、アドヒアランスに欠点がある。吸入薬のNACについては、抗線維化薬との併用を含めさらに検討が必要である。2)抗線維化薬ピルフェニドンピルフェニドンは米国で創薬された薬剤であり、TNF-αなどの炎症性サイトカイン抑制、線維芽細胞のコラーゲン産生抑制といった抗炎症、抗線維化作用を有する薬剤である。わが国において軽症および中等症のIPFを対象とした第II相試験が行われ、歩行時低酸素血症の改善、呼吸機能の悪化抑制が認められた。さらに第III相試験が行われ、%VC悪化の有意な抑制、無増悪生存期間の改善が認められ、2008年12月に世界初の抗線維化薬として市販された。副作用として当初は光線過敏症が注目されていたが、実際に使用してみるとむしろ問題になるのは胃腸障害である。その後の研究でピルフェニドンはIPF患者のVC/FVCの低下を抑制し、無増悪生存期間の延長、6分間歩行距離の低下抑制を示した。とくに軽症例においてVC低下抑制、無増悪生存期間の延長が際立っていた。いくつかのトライアルの統合解析において、ピルフェニドンはIPF患者の全死亡率、疾患関連死亡率の低下を示したという。3)抗線維化薬ニンテダニブニンテダニブは、ベーリンガーインゲルハイム社によって開発された経口薬である。肺の線維化に関係する3つの分子、VEGF受容体、PDGF受容体、FGF受容体を阻害する低分子トリプリチロキンシナーゼ阻害薬である。わが国では2015年に第2の抗線維化薬として承認され市販された。ニンテダニブは全世界的規模のトライアルにおいてIPF患者の呼吸機能の年間低下率を約50%抑制した。主な副作用は下痢であり、その他肝機能障害などがみられる。4)ステロイド、免疫抑制剤これらの抗炎症薬のIPFに対する効果は基本的に否定されているが、IPFの終末期など症例によっては一定の効果をみる場合もある。また、急性増悪の際の治療としては、頻用されている。その他、進行例では在宅酸素療法が行われ、呼吸リハビリテーションも重要である。進行例で基準を満たせば肺移植の適応でもある。4 今後の展望前述の2つの抗線維化薬に対して、今後どのような重症度から投与するのか、長期の安全性、2つの薬の使い分けまたは併用の可能性などの多くの明らかにすべき課題がある。5 主たる診療科呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性間質性肺炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本呼吸器学会(医療従事者向けのまとまった情報)1)日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編. 特発性間質性肺炎診断と治療の手引き.改訂第3版:南江堂;2016.2)「びまん性肺疾患に関する調査研究」班特発性肺線維症の治療ガイドライン作成委員会編. 特発性肺線維症の治療ガイドライン2017. 南江堂;2017.3)杉山幸比古編.特発性肺線維症(IPF) 改訂版.医薬ジャーナル社;2013.4)杉山幸比古編、特発性間質性肺炎の治療と管理.克誠堂出版;2013.公開履歴初回2013年02月28日更新2018年11月13日

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「ロマネンパー」とはなんぞや?【Dr. 中島の 新・徒然草】(246)

二百四十六の段 「ロマネンパー」とはなんぞや?何ヵ月か前の事。とある国際学会の昼食でたまたま座った4人席で、英語地獄を見ました。私以外の3人は、カナダ人夫婦とオーストラリア人女性。この3人が超高速の英語で盛り上がっては「ガッハッハッハ!」と大声で笑うのです。笑いながらも目で私に共感を求めてくるので、我が国伝統のアルカイック・スマイルで対応せざるを得ませんでした。話の中身といっても大したものではなく、宗教の話とかどこの国が住みやすいとか、そんなところです。そのような苦しい思いの後に私は決意しました。「こうなったらリスニングだ、リスニングしかない!」と。以来、色々な手段で英語を聴いております。で、一番いいのはYouTubeではないか、と思うに至りました。とくにリスニングを鍛えるのに良いのは、いくつかの例を挙げれば・映像が美しい・聴き取れない部分が少なく、学習意欲を萎えさせない・字幕をONにすることができる・時には難解なスコットランド訛りとかにも挑戦するといった動画です。結局、字幕で確認しないことには、聴き取れない所はいつまで経っても理解できません。最近、よく見ているのは、The World From Aboveというチャンネルで、英語のナレーションつきで世界の町や村を上空から撮影しているものです。しゃべっているのは歴史的な内容とか建物の由来ですが、集中すれば聴き取れるレベルの英語なので、「うん、わかるぞ。わかる、わかる」という満足感とともにどんどん見てしまいます。さて、冒頭の「ロマネンパー」が出てきたのは、“Italy from Above our best sights from Verona,Venice,Vicenza in High Definition(HD)”というタイトルの動画の冒頭、1分39秒付近です。「ネン」にアクセントのある「ロマネンパー」って何のことだか読者の皆様はおわかりでしょうか? 字幕で確認すると、何と! “Roman Empire”だったのです。Romanの“n”とEmpireの“E” がひっついて「ネ」になり、しかもそこにアクセントが来るので、私の耳には「ロマネンパー」としか聴こえなかったのです。もう“Roman Empire”と聴き取ろうとするよりも、「ロマネンパー」と聴こえたらそれは“Roman Empire”だ、と思ったほうが実用的かもしれません。そう居直ってしまえば、苦しいはずの英語リスニングも“ビックリ発音コレクション”の場として楽しめます。いくつかの例を挙げれば・「フェスティバル」→ first of all・「ロボコム」→ global economy・「カリキャン」→ current account・「カロメター」→ kilometer・「カースル」→ castleとなり、私の耳の悪さがバレてしまいます。太字の部分はアクセントのあるところです。医学英語も笑えるものばかりです。・「マイエリンシー」・「ハーピース」・「アミーナスィッド」・「ニーミック」なんじゃこりゃ?と皆さんは思うかもしれませんが、順に“myelin sheath”、“herpes”、“amino acid”、“anemic”が、私の耳にはそう聞こえたのです。ちなみに、この英語と医学が同時に勉強できる有難いYouTubeサイトはOsmosisというチャンネルで、なぜか漢字では「浸透」と翻訳されています。“Guillain-Barre Syndrome -causes, symptoms, diagnosis, treatment, pathology”をはじめとして、何十何百というテーマが10分ほどにまとめられているので便利です。普段、自分達が好き勝手に発音している医学英語、正しい発音を耳にする良い機会になります。皆さんもぜひ一度聴いてみてください。最後に1句ロマネンパー 僕の聴力 サッパリだ

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2040年の全世界平均余命、2017年から4.4歳延長/Lancet

 米国・ワシントン大学のKyle J. Foreman氏らは、195の国・地域における2016~40年の平均余命、全死因死亡、250項目の死因別死亡を予測し、多くの国では死亡率の継続的な低下と平均余命の改善が示されることを明らかにした。一方で、良い/悪いシナリオについて差がみられ、将来の展望は不安定であることも示唆された。著者は、「技術革新の継続と、世界の貧困層の人々に対する開発援助を含む医療費の増加は、すべての人が寿命を全うし健康な生活を送ることができる将来図を描くために不可欠な要素である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年10月16日号掲載の報告。世界疾病負担(GBD)研究2016のデータを用い、新たなモデルで評価 研究グループは、2017~40年の予測を立てるために、GBD(the Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study)2016のデータを用い、250の死因および死因分類を作成した。この予測枠組みは、79の独立した健康要因の変化に基づいている。 3つの構成要素(リスク因子の変化と選択された介入に起因する要素、1人当たり所得・学歴・25歳未満の合計特殊出生率に応じた各死因の基礎となる死亡率、時間との関連が不明の変化に対する自己回帰和分移動平均モデル)から成る死因別死亡のモデルを開発し、さらに、健康に関する良いシナリオと悪いシナリオ(GBDのすべてのリスク因子、1人当たり所得、学歴、選択された介入の範囲、過去の25歳未満の合計特殊出生率に関する年換算変動率の、それぞれ85および15パーセンタイル)を作成した。そしてこれらのモデルを用い、年齢・性別ごとの全死因死亡率、平均余命、および250の死因に関する損失生存年数(YLL)を算出した。世界の平均余命は2040年で男女とも4.4歳延長するも、シナリオによって差 世界的に、ほとんどの独立した健康要因が2040年までに改善するが、36の健康要因は悪化すると予測された。世界の平均余命は、2040年までに男性で4.4歳(95%UI:2.2~6.4)、女性で4.4歳(2.1~6.4)上昇すると予測されたが、良い/悪いシナリオに基づくと、曲線は、男性で7.8歳(5.9~9.8)上昇から0.4歳(-2.8~2.2)低下まで、女性で7.2歳(5.3~9.1)上昇から変化なし(0.1歳[-2.7~2.5])の範囲にあった。2040年における平均余命は、日本、シンガポール、スペイン、スイスでは男女共に85歳を超え、中国を含む59ヵ国では80歳を超えると予測された。一方、中央アフリカ共和国、レソト、ソマリア、ジンバブエでは65歳未満になると予測され、生存期間の世界格差は継続する可能性がある。 YLL予測値は、人口増加や加齢が部分的に関与するいくつかの非感染性疾患(NCD)による死亡の増加を示唆した。参照シナリオと代替シナリオの差は、HIV/AIDSで最も顕著であり、2016~40年の悪いシナリオにおいて、YLLが120.2%(95%UI:67.2~190.3)増加する可能性がある。2016年と比較すると、2040年までにNCDはすべてのGBDにおいてYLLの大部分(67.3%)を占めるが、依然として多くの低所得国においては感染性・妊産婦・新生児・栄養に関する疾患(CMNN)が2040年のYLLの大部分を占めると予想された(例:サハラ以南のアフリカでYLLの53.5%)。ほとんどの国では、医療の適応となる代謝系リスク(例:高血圧や空腹時血糖高値)と、集団レベルなどで最も目標とされるリスク(例:タバコ、高BMI、微小粒子状物質汚染)に、参照シナリオと良いシナリオとの間の最も大きな差が確認された。ただし、サハラ以南のアフリアは例外で、多くのリスク(例:危険な水と衛生、家庭内空気汚染、小児栄養失調)が貧困と発展レベルの低さに関連していることが示唆された。

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乳児血管腫(いちご状血管腫)〔infantile hemangioma〕

1 疾患概要■ 概念・定義乳児血管腫(infantile hemangioma)は、ISSVA分類の脈管奇形(vascular anomaly)のうち血管性腫瘍(vascular tumors)に属し、胎盤絨毛膜の微小血管を構成する細胞と類似したglucose transporter-1(GLUT-1)陽性の毛細血管内皮細胞が増殖する良性の腫瘍である1,2)。出生時には存在しないあるいは小さな前駆病変のみ存在するが、生後2週間程度で病変が顕在化し、かつ自然退縮する特徴的な一連の自然歴を持つ。おおむね増殖期 (proliferating phase:~1.5歳まで)、退縮期(消退期)(involuting phase:~5歳ごろ)、消失期(involuted phase:5歳以降)と呼ばれるが、経過は個人差が大きい1,2)。わが国では従来ある名称の「いちご状血管腫」と基本的に同義であるが、ISSVA分類にのっとって乳児血管腫が一般化しつつある。なお、乳幼児肝巨大血管腫では、肝臓に大きな血管腫やたくさんの細かい血管腫ができると、血管腫の中で出血を止めるための血小板や蛋白が固まって消費されてしまうために、全身で出血しやすくなったり、肝臓が腫れて呼吸や血圧の維持が難しくなることがある。本症では、治療に反応せずに死亡する例もある。また、まったく症状を呈さない肝臓での小さな血管腫の頻度は高く、治療の必要はないものの、乳幼児期の症状が治療で軽快した後、成長に伴って、今度は肝障害などの症状が著明になり、肝移植を必要とすることがある。■ 疫学乳児期で最も頻度の高い腫瘍の1つで、女児、または早期産児、低出生体重児に多い。発生頻度には人種差が存在し、コーカソイドでの発症は2~12%、ネグロイド(米国)では1.4%、モンゴロイド(台湾)では0.2%、またわが国での発症は0.8~1.7%とされている。多くは孤発例で家族性の発生はきわめてまれであるが、発生部位は頭頸部60%、体幹25%、四肢15%と、頭頸部に多い。■ 病因乳児血管腫の病因はいまだ不明である。腫瘍細胞にはX染色体の不活性化パターンにおいてmonoclonalityが認められる。血管系の中胚葉系前駆細胞の分化異常あるいは分化遅延による発生学的異常、胎盤由来の細胞の塞栓、血管内皮細胞の増殖関連因子の遺伝子における生殖細胞変異(germline mutation)と体細胞突然変異(somatic mutation)の混合説など、多種多様な仮説があり、一定ではない。■ 臨床症状、経過、予後乳児血管腫は、前述のように他の腫瘍とは異なる特徴的な自然経過を示す。また、臨床像も多彩であり、欧米では表在型(superficial type)、深在型(deep type)および混合型(mixed type)といった臨床分類が一般的であるが、わが国では局面型、腫瘤型、皮下型とそれらの混合型という分類も頻用されている。superficial typeでは、赤く小さな凹凸を伴い“いちご”のような性状で、deep typeでは皮下に生じ皮表の変化は少ない。出生時には存在しないあるいは目立たないが、生後2週間程度で病変が明らかとなり、「増殖期」には病変が増大し、「退縮期(消退期)」では病変が徐々に縮小していき、「消失期」には消失する。これらは時間軸に沿って変容する一連の病態である。最終的には消失する症例が多いものの、乳児血管腫の中には急峻なカーブをもって増大するものがあり、発生部位により気道閉塞、視野障害、哺乳障害、難聴、排尿排便困難、そして、高拍出性心不全による哺乳困難や体重増加不良などを来す、危険を有するものには緊急対応を要する。また、大きな病変は潰瘍を形成し、出血したり、2次感染を来し敗血症の原因となることもある。その他には、シラノ(ド・ベルジュラック)の鼻型、約20%にみられる多発型、そして他臓器にも血管腫を認めるneonatal hemangiomatosisなど、多彩な病型も知られている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)臨床像などから診断がつくことが多いが、画像診断が必要な場合がある。造影剤を用いないMRIのT1強調画像と脂肪抑制画像(STIR法)の併用は有効で、増殖期の乳児血管腫は微細な顆粒が集簇したような形状の境界明瞭なT1-low、T2-high、STIR-highの病変として、脂肪織の信号に邪魔されずに描出される。superficial typeの乳児血管腫のダーモスコピー所見では、増殖期にはtiny lagoonが集簇した“いちご”様外観を呈するが、退縮期(消退期)になると本症の自然史を反映し、栄養血管と線維脂肪組織の増加を反映した黄白色調の拡がりとして観察されるようになる。病理診断では、増殖期・退縮期(消退期)・消失期のそれぞれに病理組織像は異なるが、いずれの時期でも免疫染色でグルコーストランスポーターの一種であるGLUT-1に陽性を示す。増殖期においてはCD31と前述のGLUT-1陽性の腫瘍細胞が明らかな血管構造に乏しい腫瘍細胞の集塊を形成し、その後内皮細胞と周皮細胞による大小さまざまな血管構造が出現する。退縮期(消退期)には次第に血管構造の数が減少し、消失期には結合組織と脂肪組織が混在するいわゆるfibrofatty residueが残存することがある。鑑別診断としては、血管性腫瘍のほか、deep typeについては粉瘤や毛母腫、脳瘤など嚢腫(cyst)、過誤腫(hamartoma)、腫瘍(tumor)、奇形(anomaly)の範疇に属する疾患でも、視診のみでは鑑別できない疾患があり、MRIや超音波検査など画像診断が有用になることがある。乳児血管腫との鑑別上、問題となる血管性腫瘍としては、まれな先天性の血管腫であるrapidly involuting congenital hemangiomas(RICH)は、出生時にすでに腫瘍が完成しており、その後、乳児血管腫と同様自然退縮傾向をみせる。一方、non-involuting congenital hemangiomas(NICH)は、同じく先天性に生じるが自然退縮傾向を有さない。partially involuting congenital hemangiomas(PICH)は退縮が部分的である。これら先天性血管腫ではGLUT-1は陰性である。また、房状血管腫(tufted angioma)とカポジ肉腫様血管内皮細胞腫(kaposiform hemangioendothelioma)は、両者ともカサバッハ・メリット現象を惹起しうる血管腫であるが、乳児血管腫がカサバッハ・メリット現象を来すことはない。房状血管腫は出生時から存在することも多く、また、痛みや多汗を伴うことがある。病理組織学的に、内腔に突出した大型で楕円形の血管内皮細胞が、真皮や皮下に大小の管腔を形成し、いわゆる“cannonball様”増殖が認められる。腫瘍細胞はGLUT-1陰性である(図1)。カポジ肉腫様血管内皮細胞腫は、異型性の乏しい紡錘形細胞の小葉構造が周囲に不規則に浸潤し、その中に裂隙様の血管腔や鬱血した毛細血管が認められ、GLUT-1陰性である。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)多くの病変は経過中に増大した後は退縮に向かうものの、機能障害や潰瘍、出血、2次感染、敗血症の危険性、また将来的にも整容的な問題を惹起する可能性がある。これらの可能性を有する病変に対しては、手術療法(全摘・減量手術)、ステロイド療法(外用・局所注射・全身投与)、レーザー、塞栓/硬化療法、イミキモド、液体窒素療法、さらにはインターフェロンα、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ビンクリスチン、becaplermin、シロリムス、放射線療法、持続圧迫療法などの有効例が報告されている。しかし、自然消退傾向があるために治療効果の判定が難しいなど、臨床試験などで効果が十分に実証された治療は少ない。病変の大きさ、部位、病型、病期、合併症の有無、整容面、年齢などにより治療方針を決定する。以下に代表的な治療法を述べる。■ プロプラノロール(商品名:ヘマンジオル シロップ)欧米ですでに使われてきたプロプラノロールが、わが国でも2016年に承認されたため、本邦でも機能障害の危険性や整容面で問題となる乳児血管腫に対しては第1選択薬として用いられている3,4)。局面型、腫瘤型、皮下型とそれらの混合型などすべてに効果が発揮でき、表面の凹凸が強い部位でも効果は高い(図2)。用法・容量は、プロプラノロールとして1日1~3mg/kgを2回に分け、空腹時を避けて経口投与する。投与は1日1mg/kgから開始し、2日以上の間隔を空けて1mg/kgずつ増量し、1日3mg/kgで維持するが、患者の状態に応じて適宜減量する。画像を拡大する副作用として血圧低下、徐脈、睡眠障害、低血糖、高カリウム血症、呼吸器症状などの発現に対し、十分な注意、対応が必要である5)。また、投与中止後や投与終了後に血管腫が再腫脹・再増大することもあるため、投与前から投与終了後も患児を慎重にフォローしていくことが必須となる。その作用機序はいまだ不明であるが、初期においてはNO産生抑制による血管収縮作用が、増殖期においてはVEGF、bFGF、MMP2/MMP9などのpro-angiogenic growth factorシグナルの発現調節による増殖の停止機序が推定されている。また、長期的な奏効機序としては血管内皮細胞のアポトーシスを誘導することが想定されており、さらなる研究が待たれる。同じβ遮断薬であるチモロールマレイン酸塩の外用剤についても有効性の報告が増加している。■ 副腎皮質ステロイド内服、静注、外用などの形で使用される。内服療法として通常初期量は2~3mg/kg/日のプレドニゾロンが用いられる。ランダム化比較試験やメタアナリシスで効果が示されているが、副作用として満月様顔貌、不眠などの精神症状、骨成長の遅延、感染症などに注意する必要がある。その他の薬物治療としてイミキモド、ビンクリスチン、インターフェロンαなどがあるが、わが国では本症で保険適用承認を受けていない。■ 外科的治療退縮期(消退期)以降に瘢痕や皮膚のたるみを残した場合、整容的に問題となる消退が遅い血管腫、小さく限局した眼周囲の血管腫、薬物療法の危険性が高い場合、そして、出血のコントロールができないなど緊急の場合は、手術が考慮される。術中出血の危険性を考慮し、増殖期の手術を可及的に避け退縮期(消退期)後半から消失期に手術を行った場合は、組織拡大効果により腫瘍切除後の組織欠損創の閉鎖が容易になる。■ パルス色素レーザー論文ごとのレーザーの性能や照射の強さの違いなどにより、その有効性、増大の予防効果や有益性について一定の結論は得られていない。ただ、レーザーの深達度には限界がありdeep typeに対しては効果が乏しいという点、退縮期(消退期)以降も毛細血管拡張が残った症例ではレーザー治療のメリットがあるものの、一時的な局所の炎症、腫脹、疼痛、出血・色素脱失および色素沈着、瘢痕、そして潰瘍化などには注意する必要がある。■ その他のレーザー炭酸ガスレーザーは炭酸ガスを媒質にしたガスレーザーで、水分の豊富な組織を加熱し、蒸散・炭化させるため出血が少ないなどの利点がある。小さな病変や、気道内病変に古くから用いられている。そのほか、Nd:YAGレーザーによる組織凝固なども行われることがある。■ 冷凍凝固療法液体窒素やドライアイスなどを用いる。手技は比較的容易であるが、疼痛、水疱形成、さらには瘢痕形成に注意が必要で熟練を要する。深在性の乳児血管腫に対してはレーザー治療よりも効果が優れているとの報告もある。■ 持続圧迫療法エビデンスは弱く、ガイドラインでも推奨の強さは弱い。■ 塞栓術ほかの治療に抵抗する症例で、巨大病変のため心負荷が大きい場合などに考慮される。■ 精神的サポート本症では、他人から好奇の目にさらされたり、虐待を疑われるなど本人や家族が不快な思いをする機会も多い。前もって自然経過、起こりうる合併症、治療の危険性と有益性などについて説明しつつ、精神的なサポートを行うことが血管腫の管理には不可欠である。4 今後の展望プロプラノロールの登場で、乳児血管腫治療は大きな転換点を迎えたといえる。有効性と副作用に関して、観察研究に基づくシステマティックレビューとメタアナリシスの結果、「腫瘍の縮小」に関してプロプラノロールはプラセボと比較し、有意に腫瘍の縮小効果を有し、ステロイドに比しても腫瘍の縮小傾向が示された。また、「合併症」に関しては、2つのRCTでステロイドと比し有意に有害事象が少ないことが判明し、『血管腫・血管奇形診療ガイドライン2017』ではエビデンスレベルをAと判定した。有害事象を回避するための対応は必要であるが、今後詳細な作用機序の解明と、既存の治療法との併用、混合についての詳細な検討により、さらに安全、有効な治療方法の主軸となりうると期待される。5 主たる診療科小児科、小児外科、形成外科、皮膚科、放射線科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)『血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017』(医療従事者向けのまとまった情報)日本血管腫血管奇形学会(医療従事者向けのまとまった情報)国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)(医療従事者向けのまとまった情報:英文ページのみ)ヘマンジオル シロップ 医療者用ページ(マルホ株式会社提供)(医療従事者向けのまとまった情報)乳児血管腫の治療 患者用ページ(マルホ株式会社提供)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報混合型脈管奇形の会(患者とその家族および支援者の会)血管腫・血管奇形の患者会(患者とその家族および支援者の会)血管奇形ネットワーク(患者とその家族および支援者の会)1)「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班作成『血管腫・血管奇形診療ガイドライン2017』2)国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)3)Leaute-Labreze C, et al. N Engl J Med. 2008;358:2649-2651.4)Leaute-Labreze C, et al. N Engl J Med. 2015;372:735-746.5)Drolet BA, et al. Pediatrics. 2013;131:128-140.公開履歴初回2018年10月23日

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治療抵抗性統合失調症の初回エピソードに関する長期フォローアップコホート研究

 統合失調症患者の約3分の1は、最終的に治療抵抗性統合失調症(TRS)へ移行する。TRSに至るまでの時間経過は患者により異なるが、これらの変動に関する詳細は、明らかとなっていない。千葉大学の金原 信久氏らは、TRSへの移行に、分岐点が存在するかを判断するため、TRS患者と非TRS患者の初回エピソード精神病(FEP)のコントロール達成までに要した時間について比較を行った。BMC Psychiatry誌2018年9月3日号の報告。 対象は、統合失調症患者271例。臨床評価に基づき、TRS群(79例)または非TRS群(182例)に割り付けられた。初回入院期間や改善度などのFEP治療に関連する臨床的要因をレトロスペクティブに評価した。 主な結果は以下のとおり。・初回入院期間(治療開始から退院するまでの時間として定義)は、両群間で有意な差が認められなかった(TRS群:平均87.9日、非TRS群:平均53.3日)。・初回入院時の機能の全体的評価(Global Assessment of Functioning:GAF)スコアの改善度は、TRS群が非TRS群よりも有意に低かった(50点vs.61点)。・TRS群の約半数は、FEPの急性発症パターンを示し、入院期間も長かった(平均169日)。・入院を必要としなかったTRS群の残り半数は、明確な精神病エピソードがなく、入院することなく治療導入を行うような、潜行的な発症パターンを示した。 著者らは「TRSへ移行する患者は、FEP中の改善が困難な可能性がある。TRSへの移行パターンは、2種類あると考えられる。1つは、難治性の陽性症状およびFEPをコントロールするまでに長期間を要する場合。もう1つは、潜在的または潜行的な発症および初回治療に対し治療反応不良を示す場合」としている。■関連記事難治性統合失調症患者に対する治療戦略:千葉大治療抵抗性統合失調症へ進展する重要な要因とは:千葉県精神科医療C治療抵抗性統合失調症は予測可能か

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第8回 アセトアミノフェンもワルファリン併用で用量依存的にINR上昇【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 ワルファリンはさまざまな食品や薬剤と相互作用があり、併用注意に当たる飲み合わせが多いことはよく知られています。私も以前、脳梗塞の既往があり、ワルファリンを服用している患者さんに、市販の解熱鎮痛薬を一緒に服用してよいか質問され、薬剤の種類や使用目的について少し回答に悩んだことがあります。ワルファリンの添付文書にも記載があるように、NSAIDsには血小板凝集抑制作用があり、互いに出血傾向を助長するおそれがあるため、アセトアミノフェンが優先して使用されることも多くあります。しかし、アセトアミノフェンも機序は不明ですが、ワルファリンの併用注意欄に作用増強の記載があり、疑義照会の判断に迷うところです。そこで、今回はワルファリンとアセトアミノフェンを併用したいくつかの研究を紹介します。まずは、1998年にJAMA誌に掲載された症例対照研究です(Hylek EM, et al. JAMA. 1998;279:657-662.)。症例対照研究はまれな疾患や症状を検証するのに適した研究デザインで、すでにある事象が発生している「症例群」と、その事象が発生しておらず条件をマッチさせた「対照群」を選び、過去にさかのぼって事象が生じた要因を特定しようとする研究です。研究開始時点ですでに事象が発生しているものを調べる後ろ向き研究であるという点で、コホート研究と趣が異なります。この研究では1995年4月~1996年3月に、ワルファリンを1ヵ月以上服用しており、目標INR 2.0~3.0の外来患者を対象としました。INRが6.0以上の症例群(93例)と1.7~3.3の対照群(196例)の比較から得られた結果の多変量解析により、INR 6.0以上になる要因としてアセトアミノフェンが独立して関連している可能性が示唆されました。とくにアセトアミノフェン服用量が9.1g/週(1.3g/日)以上のときのオッズ比は10倍以上(95%信頼区間:2.6~37.9)でした。次に、2006年に発表された二重盲検クロスオーバー試験です(Mahe I, et al. Haematologica. 2006;91:1621-1627.)。こちらもワルファリンを1ヵ月以上服用している患者(20例)が参加しています。アセトアミノフェン1gまたはプラセボを1日4回に分けて14日間服用し、2週間のウォッシュアウト期間を設けた後に試験薬と対照薬を入れ替えて経過を調査しました。4日目で脱落しINR値を測定できなかった患者1例とプロトコール違反1例が最終解析から除かれています。平均INRはアセトアミノフェンを服用開始後急速に上昇し、1週間以内にプラセボよりも有意に増加しました。INRの平均最大値はアセトアミノフェンで3.45±0.78、プラセボで2.66±0.73で、ベースラインからの上昇幅はアセトアミノフェンで1.20±0.62、プラセボで0.37±0.48でした。なお、プロトコールから逸脱する数値の上昇がある場合は中止され、出血イベントはいずれの群においてもみられませんでした。さらに、プラセボ対照のランダム化比較試験の報告もあります(Zhang Q, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2011;67:309-314.)。ワルファリン継続中の患者(45例)をアセトアミノフェン2g/日群、アセトアミノフェン3g/日群、またはプラセボ群に2:2:1の比率で割り付けて比較した研究です。2g群、3g群、プラセボ群のINRの平均最大増加率はそれぞれ0.70±0.49、0.67±0.62、0.14±0.42で、INRの上昇はアセトアミノフェン開始3日目で有意となりました。なお、INRが3.5を超えた場合には治療は中止されています。同様に、メタ解析の論文(Caldeira D, et al. Thromb Res. 2015;135:58-61.)や観察研究の系統的文献レビュー(Roberts E, et al. Ann Rheum Dis. 2016;75:552-559.)でも、その相互作用の可能性について警鐘が鳴らされています。アセトアミノフェン1.3g/日以上を3日以上連用なら注意が必要実践に落とし込むとすると、INRのモニタリングについて、アセトアミノフェン1.3g~2g/日を超える用量を連続3日以上服用している場合は、一定の注意を払ってもよいと思います。時にはその服用状況をワルファリンの処方医に報告することも必要でしょう。一方で、急性疾患による数日間の短期治療でアセトアミノフェンが1g/日を超えない程度であれば影響は少なそうです。この相互作用の機序については不明とされていますが、いくつかの説はありますので、最後にそのうちの1つであるNAPQI(N-acetyl-p-benzoquinone-imine)の影響だとする仮説を紹介しましょう。アセトアミノフェンは代謝を受けると毒性代謝産物であるNAPQIを生成します。通常は肝臓中のグルタチオン抱合を受けて速やかに無毒化されて除去されますが、アセトアミノフェンの服用量過多や糖尿病の合併などでNAPQIが蓄積しやすくなることがあります。これは、アセトアミノフェンによる肝障害の原因としても知られています。このNAPQIがビタミンK依存性カルボキシラーゼおよびビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を阻害するため、複数のポイントでビタミンKサイクルを阻害し、ワルファリンの効果に影響を及ぼしているのではないかというものです(Thijssen HH, et al. Thromb Haemost. 2004;92:797-802.)。あくまでも仮説ですが、説得力はありますね。ワルファリンとアセトアミノフェンの併用はよくある飲み合わせですが、つい見落としがちな相互作用ですので意識してみてはいかがでしょうか。 1.Hylek EM, et al. JAMA. 1998;279:657-662. 2.Mahe I, et al. Haematologica. 2006;91:1621-1627.(先行研究はMahe I, et al. Br J Clin Pharmacol. 2005;59:371-374.) 3.Zhang Q, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2011;67:309-314. 4.Caldeira D, et al. Thromb Res. 2015;135:58-61. 5.Roberts E, et al. Ann Rheum Dis. 2016;75:552-559. 6.Thijssen HH, et al. Thromb Haemost. 2004;92:797-802. 7.ワーファリン錠 添付文書 2018年4月改訂(第26版)

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小血管で良好な前拡張が得られればDCBはDESと同等に優れる(解説:上田恭敬氏)-919

 直径3mm未満の小血管に対するPCIにおいて、良好な前拡張が得られた症例を対象として、12ヵ月のMACE(cardiac death, non-fatal myocardial infarction, and target-vessel revascularization)を主要評価項目とした、DCBのDESに対する非劣性を示すためのRCTの結果が報告された。DCB群に382症例、DES群に376症例が無作為に割り付けられた。 MACEの頻度は、DCB群で7.5%、DES群で7.3%となり、統計的に非劣性が証明された。すなわち、このような症例においては、DESを留置しなくてもDCBで十分であることが示された。 このエビデンスに従えば、不要なステントの留置を回避することができるので、臨床的に非常に有用な臨床試験であったといえる。ただし、「小血管はDESを留置しなくてもDCBでよい」という間違った結果が独り歩きしないように注意が必要である。 この試験の最大のポイントは、エントリー基準にあるように「前拡張によって解離やslow flow、残存狭窄がなく良好に開大された症例」に対象を限定した結果であることである。いわゆるstent-likeな結果が得られれば、DESを留置しなくても、DCBを行えば結果は同じと解釈できる。 他にもいくつかのLimitationが指摘されている。DESの中にpaclitaxel-eluting Taxus Element stentとeverolimus-eluting Xience stentの2種類が含まれており、MACEの頻度は統計的有意ではないものの12.8% vs.5.7%とTaxus群で高くなっている。また、DCB後に解離などのためにDESが追加された症例があり、MACEの頻度は統計的有意ではないものの15.8% vs.7.0%とDCB+DES群においてDCB単独群に比して高くなっている。そのため、DESとして「Xienceを使えば」という限定も付くように思われる。実際、論文中でも、DCB群とTaxus群の比較ではHRが0.52(0.26ー1.04、p=0.0649)、DCB群とXience群の比較ではHRが1.21(0.63ー2.32、p=0.5751)と報告している。さらに、本試験では、DCBとしてpaclitaxel-coated balloon SeQuent Pleaseが用いられており、他のDCBにおいて同じ結果となるか否かはわからない。 以上より、多少言い過ぎかもしれないが、本試験の結果は、「3mm未満の小血管に対するPCIで、前拡張によってstent-likeに仕上がれば、Xienceを留置する場合とSeQuent PleaseでDCBを行う場合のMACEはほぼ同等である」と解釈できるだろう。ただし、論文中の図5を見ると、DCB後に追加ステントが必要となる頻度が高くなれば、初めからXienceを留置するほうが優れているかもしれないし、DCB後に追加ステントが必要となる頻度を低くできれば、DCBのほうが優れているかもしれないと思われる。

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EBMの威力を痛感させたGLOBAL LEADERS試験(解説:後藤信哉氏)-914

 ステント留置後の血栓性閉塞にはアスピリン・チクロピジン併用療法が画期的効果を示した。その後、多くの抗血小板薬が冠動脈インターベンション、急性冠症候群を対象として開発された。血栓イベントを恐れるあまり、欧米では大容量の抗血小板薬が使用され、出血イベントが増えた。その結果、抗血小板薬の早期中止を求めて「必要期間短縮」を目指すランダム化比較試験が計画された。本研究でも12ヵ月のアスピリン・P2Y12受容体阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)を標準治療として、アスピリン・チカグレロル1ヵ月使用後、チカグレロル単剤にするプロトコールと比較された。実臨床に近い試験としてエンドポイントは冠動脈の閉塞を反映するQ波性心筋梗塞と総死亡とされた。 世界の実臨床を反映する試験として、試験結果以上にベースラインの各項目が興味深い。登録された症例の半数弱は急性冠症候群であった。70%以上の症例は橈骨動脈アプローチが選択されている。インターベンション施行前から75%程度の症例ではTIMI 3の血流があり、インターベンション後に99%以上になった。カテーテルの術者にとってステント血栓症、Q波性心筋梗塞に興味が集中しがちだが、これらのイベントは総死亡の半数以下であった。総死亡の詳細は示されていない。心血管死亡でなく総死亡であることに注目する必要がある。急性冠症候群、冠動脈インターベンション後の症例は血栓イベントリスクが高いとして抗血小板薬の開発標的となっていた。今回のGLOBAL LEADERS試験は半数に急性冠症候群を選択しても、冠動脈インターベンション後の症例の予後は現在の標準治療にて十分に良好であることを示した。多数の薬剤を開発し、多数のランダム化比較試験を施行した結果、疾病の予後がシステム的に改善された好例である。まさに仮説検証を繰り返し、標準治療をシステム的に改善させたEBMの威力を実感させた試験であった。

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チカグレロル併用DAPT1ヵ月+単剤23ヵ月を標準DAPTと比較/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後2年の全死因死亡あるいは新規Q波心筋梗塞の抑制という点で、チカグレロルとアスピリンによる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)1ヵ月→チカグレロル単剤療法23ヵ月は、標準的DAPT 12ヵ月→アスピリン単剤療法12ヵ月と比較し優越性は認められなかった。ベルギー・ハッセルト大学のPascal Vranckx氏らが、18ヵ国130施設で実施した無作為化非盲検優越性試験「GLOBAL LEADERS」の結果を報告した。アスピリンとの併用において、チカグレロルはクロピドグレルより主要有害心イベントと全死亡率を有意に低下するが、アスピリン150mg/日以上がチカグレロルの治療効果を弱めることが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2018年8月24日号掲載の報告。DES留置患者約1万6千例で検討したGLOBAL LEADERS試験 GLOBAL LEADERS試験の対象は、PCIを施行しバイオリムスA9薬剤溶出性ステント(DES)を留置する安定冠動脈疾患(安定CAD)/急性冠症候群(ACS)患者。アスピリン(75~100mg/日)+チカグレロル(1日2回90mg)を1ヵ月間、その後チカグレロル単剤療法を23ヵ月間行う介入群と、標準的DAPT(アスピリン75~100mg/日+クロピドグレル75mg/日[安定CAD患者]またはチカグレロル1日2回90mg[ACS患者])を12ヵ月間、その後アスピリン単剤療法を12ヵ月間行う対照群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、2年時点の全死因死亡または中央評価による新規の非致死性Q波心筋梗塞の複合(評価者盲検)。主な副次安全性評価項目は、施設報告によるBARC出血基準Grade3または5の出血で、intention-to-treat解析で評価した。 2013年7月1日~2015年11月9日に、1万5,968例が介入群7,980例と対照群7,988例に無作為に割り付けられた。全死因死亡および非致死性心筋梗塞の発生に有意差なし 2年時点における死亡または非致死性新規Q波心筋梗塞の発生は、介入群で304例(3.81%)、対照群で349例(4.37%)に認められた(率比:0.87、95%信頼区間[CI]:0.75~1.01、p=0.073)。事前に定義したACSと安定CADのサブグループ解析においても、主要評価項目に関する治療効果に差はなかった(p=0.93)。 Grade3または5の出血は、介入群163例ならびに対照群169例で確認された(2.04% vs.2.12%、率比:0.97、95%CI:0.78~1.20、p=0.77)。 著者は、今回の試験は非盲検で行われており、全死因死亡と2年時点の複合エンドポイントに関して検出力不足であったことなどを研究の限界として挙げている。

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尿崩症の診断におけるコペプチンの測定(解説:吉岡成人氏)-906

中枢性尿崩症とバゾプレッシン 中枢性尿崩症は、バゾプレッシン(arginine vasopressin:AVP)の分泌障害によって腎臓の集合管における水の再吸収が障害され、多尿をきたす疾患である。検査所見では、尿浸透圧/血漿浸透圧比は1未満であり、血漿AVP濃度は血漿浸透圧に比較して低値となる。水制限試験、高張食塩水負荷試験、ピトレッシン(DDAVP)負荷試験などの負荷試験を行い、最終的な診断を下すこととなる。 臨床の現場において血漿AVPを測定する際にはいくつかの問題がある。まず、AVPはアミノ酸9個からなる分子量約1,000の小さなペプチドホルモンであり抗体の作成が難しく、構造の類似したオキシトシンと交差反応を引き起こす。また、プロテアーゼによる分解を受けやすく、EDTA入りの採血管で採血を行い、採血後の検体は氷冷のうえ、速やかに血漿分離を行い冷凍保存する必要がある。さらに、血中AVPは半減期が短く、その約90%は血小板と結合しているため、採血後、検体を長時間放置すると血小板と結合したAVPが血漿中に遊離して見かけ上の高値を呈する。コペプチンとは AVPの前駆体であるプロバゾプレッシンはバゾプレッシン、ニューロフィジンII、コペプチンの3つのタンパク物質からなるホルモンであり、下垂体後葉の分泌顆粒の成熟に伴いプロセッシング、末端修飾を受けて、分泌刺激に応じて放出される。AVPが放出される際には同時に等モル(1:1の割合)でコペプチンが放出される。コペプチンは安定性が高く、2006年にドイツのBRAHMS社でEIAによる測定系が確立されており、血漿AVP濃度と良好な相関があること、血漿浸透圧の変動に対しても生理的な応答を示すことが確認されている。しかし、水代謝異状における血漿コペプチン測定の意義は確立されていない。中枢性尿崩症におけるコペプチン測定の意義 NEJM誌に発表された論文では、尿崩症が疑われる患者141名に対して水制限試験、高張食塩水負荷試験を実施し、中枢性尿崩症、心因性多飲、腎性尿崩症の鑑別を行っている。水制限試験で鑑別ができた症例は108例(診断精度76.6%)、高張食塩水負荷試験を行い、コペプチン濃度のカットオフ値を>4.9pmol/Lとした際に正確に鑑別診断ができたのは136例(診断精度96.5%)であった。また、コペプチンのカットオフ値を6.5pmol/Lとすると感度は94.9%、特異度100%で診断精度は97.9%となっている。時間のかかる水制限試験よりも、高張食塩水負荷試験を行い血漿コペプチン濃度を測定することで、尿崩症が疑われる患者に対してより正確な診断を行うことができるという報告である。 コペプチン濃度を心不全患者や肺塞栓患者の予後予測のマーカーとして測定するなどの臨床的な研究報告が散見されるが、診断の場でコペプチンが応用されるかどうか今後のさらなる検討が待たれる。

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乾癬に対するイキセキズマブ vs.ウステキヌマブ

 インターロイキン(IL)-17Aを標的とする生物学的製剤は、臨床で安全なプロファイルを有し、尋常性乾癬のプラークを迅速に除去できる。フランス・ポール・サバティエ大学のCarle Paul氏らは、抗IL-17A抗体イキセキズマブの尋常性乾癬に対する有効性および安全性をIL-12/23阻害薬ウステキヌマブと直接比較したIXORA-S試験において、52週時の有効性はイキセキズマブがウステキヌマブより優れており、安全性は類似していることを報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年6月30日号掲載の報告。 IXORA-S試験の対象である尋常性乾癬患者を、イキセキズマブ群(136例)およびウステキヌマブ群(166例)に無作為に割り付け、承認された用法・用量で52週間それぞれ投与した。 主要評価項目は、52週時のPsoriasis Area and Severity Index(PASI)の達成率(PASI 90)と、static Physician Global Assessment(sPGA)の0または0/1の達成率であった(脱落例はノンレスポンダーとして数えた)。安全性は、治療下で発現した有害事象(TEAE)などで評価した。 主な結果は以下のとおり。・52週時において、イキセキズマブ群はウステキヌマブ群と比較し、PASI 90(104例、76.5% vs.98例、59.0%)、sPGA 0(72例、52.9% vs.60例、36.1%)およびsPGA 0/1(110例、82.1% vs.108例、65.1%)が、いずれも有意に高かった(p<0.01)。・TEAEおよび重篤な有害事象(AE)の発現率、ならびに試験中止率は、両群間で差はなかった。・注射部位反応は、イキセキズマブ群がウステキヌマブ群より高頻度であった(22例、16.3% vs.2例、1.2%、p<0.001)。

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クローズドループシステムの人工膵臓、入院中の2型DMに有用/NEJM

 非集中治療下の2型糖尿病(DM)患者において、クローズドループ型インスリン注入システム、いわゆる人工膵臓の使用は、従来のインスリン療法と比較して、低血糖リスクは上昇せず血糖コントロールを有意に改善することを、スイス・ベルン大学のLia Bally氏らが、非盲検無作為化試験で明らかにした。DM患者は、入院すると急性疾患に対する代謝反応の変動、食事摂取の量やタイミングの変化、薬物性の一時的なインスリン感受性の急速な変化などによって、血糖コントロールの目標達成が難しくなることがある。クローズドループ型インスリン注入システムは、1型DM患者において血糖コントロールを改善できるという報告が増えていた。NEJM誌オンライン版2018年6月25日号掲載の報告。人工膵臓と従来のインスリン療法の血糖コントロールを比較 研究グループは、英国とスイスにある第3次病院において、一般病棟に入院中のインスリン療法を必要とする18歳以上の2型DM患者136例を、クローズドループ型インスリン注入システム(人工膵臓)群(70例)と、従来の皮下投与によるインスリン療法を受ける対照群(66例)に無作為に割り付けた。 両群とも、血糖値はAbbott Diabetes Care社の持続血糖測定器(CGM)Freestyle Navigator IIを用いて測定した。人工膵臓群では、インスリン注入は完全に自動化され、CGMの低血糖アラームは63mg/dLに設定された。対照群では、CGMのデータは盲検下で、臨床チームが末梢血の随時血糖測定によりインスリン投与量の調整を行った。 主要評価項目は、最大15日間あるいは退院までの期間における、CGMによる血糖値が目標範囲内(100~180mg/dL)であった時間の割合で、intention-to-treat解析にて評価した。人工膵臓群で血糖コントロールが良好 血糖値が目標範囲内であった時間の割合(平均±SD)は、人工膵臓群65.8±16.8%、対照群41.5±16.9%、群間差は24.3±2.9ポイント(95%信頼区間[CI]:18.6~30.0、p<0.001)で、人工膵臓群が有意に高値であった。また、目標範囲を超えていた時間の割合は、それぞれ23.6±16.6%および49.5±22.8%、群間差は25.9±3.4ポイント(95%CI:19.2~32.7、p<0.001)であった。 平均血糖値は、人工膵臓群154mg/dL、対照群188mg/dLであった(p<0.001)。低血糖(CGMによる血糖値が54mg/dL未満)の期間(p=0.80)や、インスリン投与量(投与量中央値は人工膵臓群44.4単位、対照群40.2単位、p=0.50)に関しては、両群で有意差は認められなかった。 重症低血糖あるいは臨床的に重大なケトン血症を伴う高血糖は、両群ともに発生がみられなかった。

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チオ硫酸Na、シスプラチン誘発難聴予防に有効/NEJM

 標準リスク肝芽腫の小児において、チオ硫酸ナトリウムをシスプラチンによる化学療法終了後に追加投与することで、全生存と無イベント生存に影響することなく、シスプラチン誘発難聴の発生率が低下した。英・Great Ormond Street HospitalのPenelope R. Brock氏らが、シスプラチンによる聴覚障害に対するチオ硫酸ナトリウムの予防効果を検討した評価者盲検無作為化第III相臨床試験(SIOPEL6試験)の結果を報告した。標準リスク肝芽腫の小児に対するシスプラチンと外科手術は有効な治療法であるが、多くの患者に不可逆的な聴覚障害を引き起こすことが知られていた。NEJM誌2018年6月21日号掲載の報告。シスプラチン単独投与とチオ硫酸ナトリウム追加投与で、最小可聴値を評価 研究グループは、2007~14年に12ヵ国52施設において、生後1ヵ月超~18歳未満の標準リスク肝芽腫(肝病変3区域以下、転移なし、α-フェトプロテイン値>100ng/ml)小児116例を登録し、シスプラチン単独投与群(80mg/m2体表面積を6時間以上かけて投与)と、チオ硫酸ナトリウム追加併用投与群(シスプラチン投与終了6時間後に、20g/m2体表面積を15分以上かけて静脈内投与)に無作為に割り付け、いずれも術前4クールおよび術後2クール投与した。 主要評価項目は、最低年齢3.5歳時における純音聴力検査による最小可聴値で、聴覚障害はBrockグレード(0~4、グレードが高いほど聴覚障害が重度)で評価した(中央判定)。主な副次評価項目は、3年全生存および無イベント生存などであった。チオ硫酸ナトリウムの追加投与により、聴覚障害の発生率が半減 登録された116例中113例が無作為化され、不適格症例を除く109例(チオ硫酸ナトリウム追加併用群57例、シスプラチン単独群52例)が解析対象(intention-to-treat集団)となった。 絶対聴覚域値の評価可能症例101例において、Brockグレード1以上の聴覚障害の発生率はチオ硫酸ナトリウム追加併用群33%(18/55例)、シスプラチン単独群63%(29/46例)であり、チオ硫酸ナトリウム追加併用により聴覚障害の発生が48%低下することが確認された(相対リスク:0.52、95%信頼区間[CI]:0.33~0.81、p=0.002)。追跡期間中央値52ヵ月における3年無イベント生存率は、チオ硫酸ナトリウム追加併用群82%(95%CI:69~90)、シスプラチン単独群79%(95%CI:65~88)、3年全生存率はそれぞれ98%(95%CI:88~100)および92%(95%CI:81~97)であった。 重篤な副作用は16例に認められ、このうちチオ硫酸ナトリウムと関連があると判定されたのは8例(Grade3の感染症2例、Grade3の好中球減少2例、Grade3の輸血を要する貧血1例、腫瘍進行2例、Grade2の悪心嘔吐1例)であった。

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世界のがん患者、10年で28%増加/JAMA Oncology

 世界におけるがん患者が2016年までの10年間で28%増加したことを、世界のがんの疾病負担を調査するGlobal Burden of Disease(GBD)studyの研究グループが報告した。一方、平均年齢調整死亡率は世界195の国や地域のうち143で減少したという。JAMA Oncology誌オンライン版2018年6月2日号に掲載。 本研究は、29のがん種について、195の国や地域における年齢・性別ごとのがん罹患率、死亡率、障害生存年数、損失生存年数、障害調整生命年(DALY)を評価。レベルと傾向は社会人口統計学的指標(SDI)別および経時的に分析された。罹患患者における変化は、疫学転換vs人口転換による変化で分類された。世界のがんの平均年齢調整罹患率は増加、平均年齢調整死亡率は減少 主な結果は以下のとおり。・2016年における世界のがん患者は1,720万例、死亡例は890万例であった。・がん患者は2006年から2016年の間に28%増加した。・高SDI諸国では最も増加が小さかった。・世界において、この変化に対する寄与割合は、人口の高齢化が17%、人口の増加が12%、年齢別比率の変化が-1%であった。・世界的に、男性における最も多いがんは前立腺がん(140万例)であった。・がん死亡およびDALYの主因は、気管・気管支・肺がん(死亡120万例、2,540万DALY)であった。・女性では、乳がんが最も多く(170万例)、がん死亡およびDALYの主因であった(死亡53万5,000例、1,490万DALY)。・2016年のがんによるDALYは、男女合わせて世界で2億1,320万DALYであった。・2006~16年において、世界のがん全体の平均年齢調整罹患率は195の国や地域のうち130の国や地域で増加し、平均年齢調整死亡率は195の国や地域のうち143の国や地域で減少した。 GBD studyの結果はすべて、下記サイトで見ることができる。https://vizhub.healthdata.org/gbd-compare/

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第61回

第61回:ALK-TKIの使い分け、irAEへのステロイド長期使用(視聴者からの質問)キーワード肺がんメラノーマALK-TKIアレクチニブirAE動画書き起こしはこちら音声だけをお聞きになりたい方はこちら //playstopmutemax volumeUpdate RequiredTo play the media you will need to either update your browser to a recent version or update your Flash plugin.こんにちは。ダートマス大学腫瘍内科の白井敬祐です。今日はこのプログラムを見てくださっている方からの質問があるので、お答えしたいと思います。1つ目はALKインヒビターをどのように使っているか、ということなんですけども、J-ALEX、Global ALEX study両方で、アレクチニブのPFSの結果がでたので、アレクチニブを1stラインに使うことが多くなっています。ただ、アレクチニブが効かなくなったときはどうするのかということで、リキッドバイオプシーを使って研究を進めるという話を聞いたことあるんですけど、そこに使われるGUARDANTという会社のキット、ALKインヒビター耐性のさまざまなミューテーションについて結果を出してくるので、それを使うことが多くなっています。リキッド・バイオプシーのメリットとしては、病気が進行したときに、繰り返しできる…やはりティシュー・バイオプシーに比べるとやりやすいということなんですけど、ただコストがかかるので、日本では1回の診断につき1回のみと聞いたことがありますが、アメリカでもそれを何回まで許すか、どこまで保険会社が払ってくれるかというのは、まだはっきりしてないようです。数年前にAlice Shaw先生というMGH(Massachusetts General Hospital)の先生が出した論文でも、そういうものを使うことで、kinaseインヒビターをリサイクルできるということがあったので、刻々と変わってく可能性があるものを追跡するというのは、学問的には非常に興味のあるところです。ただ、耐性のミューテーションに対して、この薬が効くとか効かないとか、今一覧表みたいなものが出てるんですけれども、必ずしもそれでは一概には言えないようなこともあるのでそれがまだ難しいところですね。ローラチニブという薬が今、compassionate use、まだFDAには認可されてないけども、そういう特殊なミューテーションがあった場合にはFDAに手紙を書くことで、使うことが許可されるというような状況になっています。効果があることがわかっている薬を、少しでも早く患者さんに届けようというところでしょうか。実際、イピリムマブでも認可数ヵ月前から使いましたし、キイトルーダもそういう状況にありました。もう1つの質問はirAEですね。Immune relaed adverse eventに対してステロイドを長期に使用することがあるかもしれないですけど、どういったところに注意をするかというご質問をいただいたんですけど、ほとんどのirAEのステロイドというのは、僕の印象では9割5分以上は結局中止できるんですけども、確かに中には多発性筋痛症のような感じの方で、5mgとか10mg程度のプレドニゾロンを長く使われている方はいます。何回も7.5とか5とかにテーパリンしようとすると痛みが強くなって日常生活に支障を来たす方はおられますね。そういう方には、骨粗鬆症も考えてビタミンDとカルシウムを飲んでもらったりしてるんですが、それも実際どの程度効果があるのか、わからないところは多いです。あと、やはりホルモン補充…たとえば甲状腺ホルモンとか、副腎不全になってステロイドの補充が必要という人は、ほとんどの場合、長く補充することが必要なようです。2月24日に、NCCNとASCOの共同のirAEに対するガイドラインが出たことは、以前も紹介させていただいたと思うんですけれども。流れとしては昔に乗り比べると、ステロイドから早めにインフリキシマブなどを使うことが多くなってきている印象はあります。抗炎症薬も、新しいものが出てきているので、消化器の先生と一緒に診ながら、新しいインフリキシマブではない抗炎症薬を使っている患者も数人います。この間アジュバントのニボルマブが認可になったんですけれども、クローン病をアクティブに治療されてる方が、StageIIIのメラノーマで来られて、その方は今ニボルマブとクローン病に対するmab(monoclonal antibody)を併用しながら治療しています。どういう結果になるかは、まだわからないですけれど、StageIVに関しては、自己免疫疾患に対するmabを使いながら、メラノーマに対するmabを使っても抗腫瘍効果があったという報告が、ケースレポートレベルでは出ています。大きな臨床試験グループ、ALLIANCEなどではそういう自己免疫疾患がある患者に対する、抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体を使うことに対する臨床試験(正確にデータを取ろうということなんですけど)そういう臨床試験も始まるようです。ハーバードとかスローンケタリングになると、たとえば消化器の先生でもirAEのcolitisといった消化器症状を専門にした、若手の研究者の方がたくさん出てきて(います)。そういうことで臨床の知見、経験値は上がってくるものだと考えています。アレクチニブ、未治療ALK陽性非小細胞肺がんに奏効/NEJMShaw AT,et al.Resensitization to Crizotinib by the Lorlatinib ALK Resistance Mutation L1198F.N Engl J Med.2016;374:54-61

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アジアの小児自閉スペクトラム症の過敏性に対するアリピプラゾールのオープンラベル試験

 アジアの小児および青年(6~17歳)の自閉スペクトラム症の過敏性に対する、アリピプラゾールの有効性および忍容性を調査するため、韓国・蔚山大学校のHyo-Won Kim氏らは、12週間の多国籍多施設オープンラベル試験を実施した。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2018年4月24日号の報告。 小児および青年の自閉スペクトラム症患者67例(10.0±3.1歳、男子:52例)を対象に、アリピプラゾールをフレキシブルドーズ(平均投与量:5.1±2.5mg、範囲:2~15mg)で12週間投与を行った。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールは、異常行動チェックリストのサブスケールにおいて、過敏性、無気力/引きこもり、常同行動、多動性、不適切な話し方の介護者評価スコアの平均値を、ベースラインから12週目までに有意に減少させた(各々、p<0.001)。・臨床全般印象・重症度スコア(Clinical Global Impression Severity of Illness scale score)も、ベースラインから12週目までに改善した(p<0.001)。・最も多く認められた有害事象は、体重増加であった。また、アリピプラゾールでの治療に関連する重篤な有害事象は認められなかった。 著者らは「本結果より、アジアの小児自閉スペクトラム症の過敏性に対する治療で、アリピプラゾールは、有効かつ忍容性のあることが示唆された。今後は、より大規模なサンプルサイズ、より長期間の研究が求められる」としている。■関連記事日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの効果は日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果は自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較

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2040年のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成には?/Lancet

 米国・ワシントン大学のJoseph L. Dieleman氏らGlobal Burden of Disease Health Financing Collaborator Networkは、保健医療費、および保健医療費とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(universal health coverage:UHC)との関連について、将来のシナリオを作成し、すべての国が持続可能な保険財源を持つことが、UHCの達成に重要であることを報告した。UHCの達成には、家計への過度の金銭的負担を強いることなく主要な医療サービスを提供する、保険医療システムが必要とされている。しかし、どのような財源が将来的なUHC達成を可能とするのか、あるいは制限するかについては、明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2018年4月17日号掲載の報告。188ヵ国の1995~2015年のデータから、2040年までの保健医療費を予測 研究グループは、1995~2015年における188ヵ国の国内総生産(GDP)および保健医療費のデータを抽出し、2015年から2040年までの年間GDP、健康開発支援、および政府財源(一般政府管掌健康保険、社会健康保険)・自己負担支出(サービス提供時点の全費用と自己負担分)・民間前納支出(民間保険と民間公益団体の支出)の保健医療費を推定した基本シナリオを作成した。それぞれの推定値は、主要な人口統計学的および社会経済学的決定要因を変数としたアンサンブルモデルを用いて算出した。 推定値を基に、過去の保健医療費増加率の世界分布に基づいて代替シナリオ(良いシナリオと悪いシナリオ)を作成し、確率フロンティア分析を用いて、保険財源とUHC指標(世界の疾病負担研究[Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD]2016で開発された各国のUHCサービス範囲の測定尺度)との関連性を検証した後、将来的なUHCの実績と将来の3つのシナリオ下で保障される人数を推定した。1人当たりの保険財源がUHC達成の可否を握る 基本シナリオでは、世界の保健医療費(米ドル)は、2015年の10兆ドル(95%不確実性区間[UI]:10兆~10兆)から、2040年には20兆ドル(95%UI:18兆~22兆)まで増加すると予測された。 1人当たりの保健医療費は、高中所得国で1年当たり4.2%(95%UI:3.4~5.1)と急増し、続いて低中所得国(4.0%、95%UI:3.6~4.5)、低所得国(2.2%、95%UI:1.7~2.8)の順であった。1人当たりの保健医療費は世界的に増加するが、低所得国は2015年40ドル(95%UI:24~65)から2040年は413ドル(95%UI:263~668)に、低中所得国は140ドル(95%UI:90~200)から1,699ドル(95%UI:711~3,423)に増加するという予測であった。 世界的に、保険財源で賄われる保健医療費の割り当ては、ナイジェリアの19.8%(95%UI:10.3~38.6)から、セーシェルの97.9%(95%UI:94.6~98.5)と、ばらつきは大きいままだと考えられた。 過去のUHC指標達成の実績は、1人当たりの保険財源と有意に相関していた。代替シナリオでは、2030年にはUHCは、51億人(95%UI:49億~53億)~56億人(95%UI:53億~58億)に対して達すると推定された。

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バッド・キアリ症候群〔BCS:Budd-Chiari Syndrome〕

1 疾患概要バッド・キアリ症候群(Budd-Chiari Syndrome:BCS)とは、肝静脈の主幹あるいは肝部下大静脈の閉塞や狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群をいう。わが国では両者を合併している病態が多い。重症度に応じ易出血性食道・胃静脈瘤、異所性静脈瘤、門脈圧亢進症性胃腸症、腹水、肝性脳症、出血傾向、脾腫、貧血、肝機能障害、下腿浮腫、下肢静脈瘤、胸腹壁の上行性皮下静脈怒張などの症候を示す1)。■ 概念・定義肝静脈の主幹あるいは肝部下大静脈の閉塞や狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群。■ 疫学2004年の年間受療患者数(有病者数)の推定値は、190~360人である(2005年全国疫学調査)。男女比は約1:0.7とやや男性に多い。確定診断時の年齢は、20~30代にピークを認め、平均は約42歳である2)。2013年の門脈血行異常症に関する定点モニタリング調査では、発症時平均年齢が32.2歳、診断時平均年齢が44.7歳であった3)。■ 病因本症の病因は明らかでない例が多く、わが国では肝部下大静脈膜様閉塞例が多い。肝部下大静脈の膜様閉塞や肝静脈起始部の限局した狭窄や閉塞例は アジア、アフリカ地域で多く、欧米では少ない。発生は、アランチウス静脈管の異常をもとに発症するとする先天的血管形成異常説が考えられてきた。最近では、本症の発症が中高年以降で多いこと、膜様構造や肝静脈起始部の狭窄や閉塞が血栓とその器質化によって、その発生が説明できることから後天的な血栓説も考えられている。これに対して欧米では、肝静脈閉塞の多くは基礎疾患を有することが多い。基礎疾患としては、血液疾患(真性多血症、発作性夜間血色素尿症、骨髄線維症)、経口避妊薬の使用、妊娠出産、腹腔内感染、血管炎(ベーチェット病、全身性エリテマトーデス)、血液凝固異常(アンチトロンビンIII欠損症、protein C欠損症)などが挙げられる。多くは発症時期が不明で慢性の経過(アジアに多い)をたどり、うっ血性肝硬変に至ることもあるが、急性閉塞や狭窄により急性症状を呈する急性期のBCS(欧米に多い)もみられる。アジアでは下大静脈の閉塞が多く、欧米では肝静脈閉塞が多い。分類として、原発性BCSと続発性BCSとがある。原発性BCSの病因はいまだ不明であるが、血栓、血管形成異常、血液凝固異常、骨髄増殖性疾患の関与が疑われている。続発性BCSを来すものとしては肝腫瘍などがある。■ 症状BCSは発症形式により急性型と慢性型に分けられる。急性型は一般に予後不良であり、腹痛、嘔吐、急速な肝腫大および腹水にて発症し、1~4週間で肝不全により死の転帰をたどる重篤な疾患であるが、わが国ではきわめてまれである。一方、慢性型は80%を占め、多くの場合は無症状に発症し、次第に下腿浮腫、腹水、腹壁皮下静脈怒張、食道・胃静脈瘤を認める。重症度に応じ易出血性食道・胃静脈瘤、異所性静脈瘤、門脈圧亢進症性胃腸症、腹水、肝性脳症、出血傾向、脾腫、貧血、肝機能障害、下腿浮腫、下肢静脈瘤、胸腹壁の上行性皮下静脈怒張などの症候を示す3)。■ 分類1)病型杉浦らは本症の病型を以下の4つに分類している(図1)4)。図1 BCSの病型画像を拡大する(文献4より引用改変)I型:横隔膜直下の肝部下大静脈の膜様閉塞例、このうち肝静脈の一部が開存する場合をIa、すべて閉塞している場合をIbII型:下大静脈の1/2から数椎体にわたる完全閉塞例III型:膜様閉塞に肝部下大静脈全長の狭窄を伴う例IV型:肝静脈のみの閉塞例出現頻度は各々34.4%、11.5%、26.0%、7.0%、5.1%と報告がある。2)発症形式発症形式により急性型と慢性型に分けられる。上記の症状でも既述したが、急性型は一般に予後不良であり、腹痛、嘔吐、急速な肝腫大および腹水にて発症し、1~4週間で肝不全により死の転帰をたどる重篤な疾患であるが、わが国ではきわめてまれである。一方、慢性型は80%を占め、多くの場合は無症状に発症し、次第に下腿浮腫、腹水、腹壁皮下静脈怒張、食道・胃静脈瘤を認める。わが国においては慢性型が典型例として考えられている。■ 予後慢性の経過をとる場合、うっ血性肝硬変に至る。また、病状が進行すると肝細胞がんを合併することがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断基準本症は症候群として認識され、また病期により病態が異なることから一般検査所見、画像検査所見、病理検査所見によって総合的に診断されるべきである。確定診断は、造影CTや肝静脈造影による下大静脈・肝静脈閉塞(狭窄)と、肝臓の病理組織学的所見に裏付けされることが望ましい。1)一般検査所見血液検査:1つ以上の血球成分の減少を示す。肝機能検査:正常から高度異常まで重症になるにしたがい、障害度が変化する。内視鏡検査:しばしば上部消化管の静脈瘤を認める。門脈圧亢進症性胃腸症や十二指腸、胆管周囲、下部消化管などにいわゆる異所性静脈瘤を認めることがある。2)画像検査所見(1)超音波、CT、MRI、腹腔鏡検査肝静脈主幹あるいは肝部下大静脈の閉塞や狭窄が認められる(図2)。超音波ドプラ検査では肝静脈主幹や肝部下大静脈流ないし乱流が見られることがあり、また、肝静脈血流波形は平坦化あるいは欠如することがある。脾臓の腫大を認める。肝臓のうっ血性腫大を認める。とくに尾状葉の腫大が著しい。肝硬変に至れば、肝萎縮となることもある。図2 BCSの腹部造影CT(門脈相)像画像を拡大する2A:水平断、2B:冠状断、2C:矢状断。肝部レベルで下大静脈が高度狭窄している(矢印)。肝静脈の3主幹および分枝も閉塞し、造影されない。肝内は粗雑化し、硬変様に変化し、肝表に腹水も見られる。また、肝内に腫瘍性病変も出現している(矢頭)。(2)下大静脈、肝静脈造影および圧測定肝静脈主幹あるいは肝部下大静脈の閉塞や狭窄を認める(図3)。肝部下大静脈閉塞の形態は膜様閉塞から広範な閉塞まで各種存在する。また、同時に上行腰静脈、奇静脈、半奇静脈などの側副血行路が造影されることが多い。著明な肝静脈枝相互間吻合を認める。肝部下大静脈圧は上昇し、肝静脈圧や閉塞肝静脈圧も上昇する。図3 BCSの下大静脈造影像画像を拡大する右大腿静脈からカテーテルを入れて造影した。肝部下大静脈の一部分が完全に狭窄化し、血流がほとんど途絶している。3)病理診断(1)肝臓の肉眼所見急性期のうっ血性肝腫大、慢性うっ血に伴う肝線維化、さらに進行するとうっ血性肝硬変となる。(2)肝臓の組織所見急性のうっ血では、肝小葉中心帯の類洞の拡張が見られ、うっ血が高度の場合には中心帯に壊死が生じる。うっ血が持続すると、肝小葉の逆転像(門脈域が中央に位置し、肝細胞集団がうっ血帯で囲まれた像)や中心帯領域に線維化が生じ、慢性うっ血性変化が見られる。さらに線維化が進行すると、主に中心帯を連結する架橋性線維化が見られ、線維性隔壁を形成し、肝硬変の所見を呈する。■ 重症度分類表に重症度分類を示す。画像を拡大する● 重症度重症度I:診断可能だが、所見は認めない。重症度II:所見を認めるものの、治療を要しない。重症度III:所見を認め、治療を要する。重症度IV:身体活動が制限され、介護も含めた治療を要する。重症度V:肝不全ないしは消化管出血を認め、集中治療を要する。● 付記1.食道・胃・異所性静脈瘤(+):静脈瘤を認めるが、易出血性ではない。(++):易出血性静脈瘤を認めるが、出血の既往がないもの。易出血性食道・胃静脈瘤とは『食道・胃静脈瘤内視鏡所見記載基準(日本門脈圧亢進症研究会)』『門脈圧亢進症取扱い規約(第3版、2013年)』に基づき、F2以上のもの、またはF因子に関係なく発赤所見を認めるもの。異所性静脈瘤の場合もこれに準じる。(+++):易出血性静脈瘤を認め、出血の既往を有するもの。異所性静脈瘤の場合もこれに準じる。2.門脈圧亢進所見(+):門脈圧亢進症性胃腸症、腹水、出血傾向、脾腫、貧血のうち1つもしくは複数認めるが、治療を必要としない。(++):上記所見のうち、治療を必要とするものを1つもしくは複数認める。3.身体活動制限(+):当該3疾患による身体活動制限はあるが歩行や身の回りのことはでき、日中の50%以上は起居している。(++):当該3疾患による身体活動制限のため介助を必要とし、日中の50%以上就床している。4.消化管出血(+):現在、活動性もしくは治療抵抗性の消化管出血を認める。5.肝不全(+):肝不全の徴候は、血清総ビリルビン値3mg/dL以上で肝性昏睡度(日本肝臓学会昏睡度分類、第12回犬山シンポジウム、1981)II度以上を目安とする。6.異所性静脈瘤門脈領域の中で食道・胃静脈瘤以外の部位、主として上・下腸間膜静脈領域に生じる静脈瘤をいう。すなわち胆管・十二指腸・空腸・回腸・結腸・直腸静脈瘤、および痔などである。7.門脈亢進症性胃腸症組織学的には、粘膜層・粘膜下層の血管の拡張・浮腫が主体であり、門脈圧亢進症性胃症と門脈圧亢進症性腸症に分類できる。門脈圧亢進症性胃症では、門脈圧亢進に伴う胃体上部を中心とした胃粘膜のモザイク様の浮腫性変化、点・斑状発赤、粘膜出血を呈する。門脈圧亢進症性腸症では、門脈圧亢進に伴う腸管粘膜に静脈瘤性病変と粘膜血管性病変を呈する。■ 鑑別診断特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症、肝硬変との鑑別を要する。BCSは進行すれば肝硬変に至り鑑別困難になることが多いが、肝静脈や下大静脈の閉塞・狭窄の有無がポイントとなる。閉塞部(狭窄部)を開存させる治療で症状の著明な改善が望まれる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)肝静脈主幹あるいは肝部下大静脈の閉塞ないし狭窄に対しては臨床症状、閉塞・狭窄の病態に対応して、カテーテルによる開通術や拡張術、ステント留置あるいは閉塞・狭窄を直接解除する手術、もしくは閉塞・狭窄部上下の大静脈のシャント手術などを選択する。急性症例で、肝静脈末梢まで血栓閉塞している際には、肝切離し、切離面-右心房吻合術も選択肢となる。肝不全例に対しては、肝移植術を考慮する。門脈圧亢進の症候に対する治療法は以下のとおりである。■ 食道静脈瘤に対して1)食道静脈瘤破裂による出血中の症例では、一般的出血ショック対策、バルーンタンポナーデ法などで対症的に管理し、可及的速やかに内視鏡的硬化療法、内視鏡的静脈瘤結紮術などの内視鏡的治療を行う。上記治療によっても止血困難な場合は緊急手術も考慮する。2)一時止血が得られた症例では状態改善後、内視鏡的治療の継続、または待期手術、ないしはその併用療法を考慮する。3)未出血の症例では、食道内視鏡所見を参考にして内視鏡的治療、または予防手術、ないしはその併用療法を考慮する。4)単独手術療法としては、下部食道を離断し、脾摘術、下部食道・胃上部の血行遮断を加えた「直達手術」、または「選択的シャント手術」を考慮する。内視鏡的治療との併用手術療法としては、「脾摘術および下部食道・胃上部の血行遮断術(Hassab手術)」を考慮する。■ 胃静脈瘤に対して1)食道静脈瘤と連続して存在する噴門部の胃静脈瘤に対しては、上記の食道静脈瘤の治療に準じた治療によって対処する。2)孤立性胃静脈瘤破裂による出血中の症例では一般的出血ショック対策、バルーンタンポナーデ法などで対症的に管理し、可及的速やかに内視鏡的治療を行う。上記治療によっても止血困難な場合は、バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:B-RTO)などの血管内治療や緊急手術も考慮する。3)一時止血が得られた症例では状態改善後、内視鏡的治療の継続、B-RTOなどの血管内治療、または待期手術(Hassab手術)を考慮する。4)未出血の症例では、胃内視鏡所見を参考にして内視鏡的治療、血管内治療、または予防手術を考慮する。5)手術方法としては「脾摘術および胃上部の血行遮断術(Hassab手術)」を考慮する。■ 異所性静脈瘤に対して1)異所性静脈瘤破裂による出血中の症例では、一般的出血ショック対策などで対症的に管理し、可及的速やかに内視鏡的治療を行う。 上記治療によっても止血困難な場合は、血管内治療や緊急手術を考慮する。2)一時止血が得られた症例では状態改善後、内視鏡的治療の継続、血管内治療、または待期手術を考慮する。3)未出血の症例では、内視鏡所見を参考にして内視鏡的治療、血管内治療、または予防手術を考慮する。■ 脾腫、脾機能亢進症に対して巨脾に合併する症状(疼痛、圧迫)が著しいとき、および脾腫が原因と考えられる高度の血球減少(血小板5×104以下、白血球3,000以下、赤血球300×104以下のいずれか1項目)で出血傾向などの合併症があり、内科的治療が難しい症例では、部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization:PSE)ないし脾摘術を考慮する。4 今後の展望國吉 幸男氏(琉球大学大学院 医学研究科 胸部心臓血管外科学講座)らが行っている直達手術(senning手術)が根治手術として有名であり、好成績をおさめている5,6)。肝移植も有効なことが多いが、ドナーの問題などから、わが国ではあまり行われていない。しかし、根治的治療として今後の期待がかかった治療法といえる。外科治療に至るまでの間に、カテーテル治療による閉塞部拡張術やステント挿入術(経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術)が行われることもあり、良好な効果を得ている。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科、血管外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業) バッド・キアリ症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Moriyasu F, et al. Hepatol Res. 2017;47:373-386.2)廣田良夫ほか. 2005年全国疫学調査. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業「門脈血行異常に関する調査研究」平成25年度研究報告書;2013.3)廣田良夫ほか. 門脈血行異常症に関する定点モニタリングシステムの構築. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業「門脈血行異常に関する調査研究」平成25年度研究報告書;2013.4)Okuda H, et al. J Hepatol. 1995;22:1-9.5)國吉幸男ほか, 日本心臓血管外科学会雑誌. 1991;20:919-921.6)Pasic M, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 1993;106:275-282.公開履歴初回2018年05月08日

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第58回

第58回:肺がんのEGFR-TKI、1次治療選択は何?(視聴者からの質問)キーワード肺がんメラノーマ動画書き起こしはこちら音声だけをお聞きになりたい方はこちら //playstopmutemax volumeUpdate RequiredTo play the media you will need to either update your browser to a recent version or update your Flash plugin.視聴者からの質問1「肺がんEGFR-TKI、1次治療は何?」薬剤師さんからご質問をいただいたとのことです。昨年のESMOでオシメルチニブ vs. エルロチニブの1stラインの臨床試験がEGFR陽性肺がんに対して行われました。そこで、PFSが17ヵ月と非常に大きな延長認めたんのすが、アメリカではまだオシメルチニブの1stラインの認可はとれていません。(FDAは2018年4月18日、オシメルチニブの1stラインを認可しました。このビデオは、その前に撮影したものです)ただ、なかには副作用でアファチニブが使えなかったとか、あるいはタルセバを使い出したけど、副作用が強かったという人は、比較的早期にスイッチするような形になってきています。実臨床では、T790Mを証明しなくてもスイッチするようなことが起こってきています。ただ、実際どうなるかというのは、まだわからないですよね。よく僕らが言うのは、Big Gunを先に使う方が良いのか、先にアファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブを使って、進行してT790Mがある患者、あるいはT790Mがなくても進行した患者に、オシメルチニブを使うほうが良いのか?臨床試験をしないことには結局のところ分からないのですが…僕が興味あるのはオシメルチニブを1stラインで使った患者さんで再発が起こった場合に、どのような治療行われて、どのようなレスポンスであったかということ。まだ発表はされていないようですけれども、興味がありますね。視聴者からの質問2「ALKインヒビターの使い分けは?」ALKインヒビターでは、アレクチニブが、Global ALEX study…日本ではJ-ALEX…クリゾチニブに比べて画期的にPFSを伸ばすということで、アメリカでは認可になっています。それで、ものすごいマーケティング攻勢があって、自宅にも病院のオフィスにも送られてくるいろいろな雑誌があるんですけども、その雑誌の中に袋とじで入ってくることが多いです。ビニール袋の中に、このような販促のパンフレットが入っています。厚紙で非常にしっかりしてるのですが、これを見ると「Alencensa is FDA approved for first-line treatment on ALK positive metastatic non-small cell lung cancer」と。ここには「Category 1 reffered NCCN」NCCNで奨められていると。非常に丁寧でわかりやすいですが、少なくとも、もう10通ぐらい、このような同じものをもらっています。こういうふうに、一度FDAの認可があると、マーケティング攻勢がかけられるという状況です。僕からすると、こういうところに使うお金があったら、ほかのところに使ったほうが、いいんじゃないかな?と思うんですけれども、製薬会社の担当の方に言わせると、こういうOpportunityがあるのに、それを知らないのは、患者さんにとって不利益だと。だから、そういうことがないように、多くの人に知ってもらいたいんだ、といったことを言われます。同じように、PACIFIC trialの結果で、durvalumabがStageIIIの肺がんで化学放射線療法終了後に1年consolidationのような形で使われることが、認可になったのですけど、それもいろいろな販売促進のアピールがなされています。ここら辺が、オプジーボとかキイトルーダのTVコマーシャルが普通に送られてるアメリカと日本の違いだと思います。

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