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世界におけるがんの動向:2015年

 195の国と地域での1990~2015年における32のがん種の死亡率、罹患率、障害生存年数 (years lived with disability:YLD)、損失生存年数(years of life lost:YLL)、障害調整生命年(disability-adjusted life years:DALY)について、Global Burden of Disease Studyによる推計値が報告された。JAMA oncology誌オンライン版2016年12月3日号に掲載。 主な結果は下記のとおり。研究グループは、「今回の結果は、がんとの戦いにおいて前進が可能であることを示しているが、喫煙対策、予防接種、身体活動や健康的な食事の推進を含む、がん予防の取り組みにおけるアンメットニーズも浮き彫りにしている」と述べている。・2015年の世界におけるがん罹患数は1,750万人、死亡数は870万人であった。・2005年から2015年までにがん罹患数は33%増加し、そのうち人口の高齢化による増加が16%、人口増加による増加が13%、年齢別割合の変化による増加が4%であった。・男性で最も多かったのは前立腺がん(160万人)であった。一方、男性のがん死亡(150万人)とDALY(2,590万DALY)の主な原因は、気管・気管支・肺がんであった。・女性で最も多かったのは乳がん(240万人)で、女性のがん死亡(52万3, 000人)とDALY(1,510万DALY)の主な原因でもあった。・がんによる2015年のDALYは、世界で男女合わせて2億83万DALYであった。・2005年から2015年までに、がん全体の年齢調整罹患率は、国や地域195のうち174で増加し、年齢調整死亡率(ASDR)は140の国や地域で減少した。ASDRが増加した国の大部分はアフリカ大陸の国であった。・ホジキンリンパ腫による死亡数は、2005年から2015年の間に有意な減少がみられた(-6.1%、95%不確定区間:-10.6%~-1.3%)。食道がん・胃がん・慢性骨髄性白血病による死亡数も、統計学的に有意ではないが減少した。

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胎児発育不全を検出する子宮底長測定の国際基準を作成/BMJ

 英国・オックスフォード大学のAris T Papageorghiou氏らはINTERGROWTH-21stプロジェクトの胎児発育追跡研究から、妊娠健診において定期的に行う子宮底長(symphysis-fundal height:SFH)計測値の国際基準を作成する検討を行った。重大な合併症がなく先天奇形のない児を出産した妊婦の計測記録データについて分析を行い、臨床使用できる在胎齢(週)に比した子宮底長値(cmをパーセンタイル値で提示)を明らかにした。BMJ誌2016年11月7日号掲載の報告。8ヵ国で妊娠14週以降、標準化した方法で5週ごとに測定を実施 子宮底長計測は、妊娠期間中に胎児発育不全のスクリーニングとしてルーチンに行われている。これまでに3件のシステマティックレビューで、子宮底長計測の発育不全児の検出感度が評価されたが、観察コホート研究で示された感度は17%から93%に大きくばらついていた。研究グループは、このばらつきの原因として、測定法や記録が標準化されていないことなどを指摘し、国際標準を作成するため本検討を行った。 INTERGROWTH-21stは、多施設多人種集団ベースのプロジェクトで、妊娠初期(14週未満)から出生児(2歳まで)の発育・健康・栄養・神経発達の研究を目的に、2009~2014年に8ヵ国(ブラジル、中国、インド、イタリア、ケニア、オマーン、英国、米国)で進められた。プロジェクトの1つ、胎児発育追跡研究は、健康で栄養状態良好な妊娠9~14週の妊婦を登録し、出産まで前向きに追跡調査した研究であった。 参加者は、妊娠14週から出産まで、5週間(前後1週間の範囲内可能)ごとにフォローアップ受診を求められ、その都度、標準化された方法で子宮底長を測定された。計測は、訓練を受けた専任スタッフが、数値が見えないように工夫された巻き尺を用いて、超音波測定の前に実施した。正常出産した妊婦の計測データを基に子宮底長のパーセンタイル表を提示 妊娠初期にスクリーニングを受けた女性は1万3,108例、そのうち4,607例(35.1%)が適格基準を満たし登録された。 このうち、4,321例(93.8%)が、重大な合併症を有さず、先天異常のない児を出産した。これら妊婦の子宮底長測定回数の中央値は5.0回(範囲:1~7)で、3,976例(92.0%)が4回以上の計測を受けていた。 計測データを基に散布図を作成し、臨床に使用できる、在胎齢に比した子宮底長のパーセンタイル値(3rd、5th、10th、50th、90th、95th、97th)を示した表を作成した。 子宮底長は、在胎齢に比してほぼ線形に増大することが示され、3rd、50th、97thの線形カーブを検証した結果、観察された値と良好に一致することが認められた。 結果を踏まえて著者は、「本検討は、胎児発育不全のファーストレベルのスクリーニングツールとして、子宮底長測定のための国際基準を提示するものである」とまとめている。

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TCT 2016開催地、ワシントンD.C.のおすすめスポット

ケアネットでは、TCT2016に参加される先生方に、開催地ワシントンD.C.を楽しんでいただけるよう、米国メリーランド州に留学経験のある矢作和之氏(三井記念病院 循環器内科)にもご協力いただき、おすすめの観光名所やレストランなどの情報を集めましたのでご紹介します。ワシントンD.C.はアメリカ合衆国の首都であり、ホワイトハウスをはじめとし、多くの観光スポットがあります。また、世界中から多くの人が訪れるため、本格的な各国料理を楽しめるのも特徴です。TCT 2016注目の演題はこちら矢作氏おすすめ観光スポット5選矢作氏おすすめレストラン、その他会場周辺レストラン一覧ショッピング情報矢作氏おすすめ観光スポット5選ホワイトハウス(White House)米国大統領の官邸。表からみることもできますが、裏からみたほうがホワイトハウスを近くにみることができます。大統領がいるときは、星条旗が掲げられているそうです。[住所] 1600 Pennsylvania Avenue NW, Washington, D.C. 20500ワシントン記念塔(Washington Monument)初代大統領 ジョージ・ワシントンの偉業を称える記念塔。ワシントンD.C.の景色・夜景が一望できます。展望台に登るには、予約が必須。[住所] 2 15th St. NW, Washington, D.C. 200024リンカ―ン記念堂(Lincoln Memorial)/国会議事堂(U.S. Capitol) ナショナルモールの西側にあるのがリンカーン記念堂で、東側にあるのが国会議事堂です。その間は約4kmあり、広大な緑地帯になっています。休日には多くの人が散歩やランニングをしたり、また家族でのんびり過ごしたりしています。[住所] 2 Lincoln Memorial Circle, NW, Washington, D.C. 20002/East Capitol St NE & First St SE, Washington, D.C. 20004タイダルベイスン(Tidal Basin)ポトマック川沿いにある池。春は池の周囲に植えられた桜並木でとても綺麗なスポット。実はこの桜は日本から贈られたもの。この時期は桜をみることはできませんが、池では手漕ぎボートなどにも乗れ、学会の途中の気分転換に行くのもいいかもしれません。[住所] 1501 Maine Ave, SW, Washington, D.C. 20024スミソニアンエリア おすすめ博物館・美術館(Smithsonian Museum)ナショナルギャラリー(National Gallery of Art)石油や鉄鋼などで財を成したアンドリューメロン氏が13~19世紀の絵画や彫刻、美術品を買い求め、彼の死後、今までのコレクションを国に寄付することから始まった美術館。運営、維持費は国家予算から支出されているものの、美術品の購入に関して、国は一切お金を出していないそうです。コレクション総数は11万6,000点にも達します。[住所] 6th and Constitution Avenue NW, Washington, D.C. 20565国立自然史博物館(National Museum of Natural History)スミソニアンで最も古い博物館で100年の歴史があります。博物館のコレクションは約1億2,650万点で、世界最大の博物館といえます。入り口を入ってすぐの巨大なアフリカ像は迫力があり圧巻です。[住所] 10th St. & Constitution Ave. NW, Washington, D.C. 20560国立航空宇宙博物館(National Air and Space Museum)世界各国の航空機が展示されています。最大の魅力は、展示物に燃料を補給すればすぐにでも稼働できる状態で陳列されていることです。また、この博物館にはあの有名な日本が生み出したゼロ戦(三菱零式艦上戦闘機52型A6M5)が展示されています。[住所] Independence Ave at 6th St, SW, Washington, D.C. 20560レストラン情報<ステーキ、ハンバーガー>(せっかくアメリカに来たのだから本場のステーキを!)BLT STEAK今はやりのTボーンステーキを味わえる人気店。[住所] 1625 I St. NW(bet. 16th & 17th Sts.), Washington, D.C. 20006[TEL] 202-689-8999Shake Shackニューヨークで大人気のハンバーガーショップ。日本でも表参道に開店するなど、とても有名。日本では行列必至ですが、ワシントンD.C.ならあまり行列がなく食べられるかもしれません。Five Guys Burgers and Fries日本未上陸のハンバーガー屋さん。とてもアメリカらしいハンバーガー。がっつりいきたいときは、パテはダブルで。<シーフード>Captain White's Seafood City (Fish market)生牡蠣など、とても新鮮なシーフードを味わえるお店。[住所] 1100 Maine Ave. SW, Washington, D.C. 20024[TEL] 202-484-2722<和食>(やっぱり、アメリカでも和食が食べたくなりますよね)寿司太郎オバマ大統領も来店したことのある、とても有名なお寿司屋さん。おいしいお寿司が味わえます。[住所] 1503 17th Street, NW, Washington, D.C. 20036[TEL] 202-462-8999寿司キャピトルキャピトルヒルにあるお寿司屋さん。周辺はとても賑わっています。[住所] 325 Pennsylvania Ave SE, Washington, D.C. 20003[TEL] 202-627-0325寿司幸中心部から北部に20分程度の所にありますが、おいしい和食が味わえます。雰囲気もいいです。[住所] 5455 Wisconsin Avenue, Chevy Chase, MD 20815[TEL] 301-961-1644居酒屋関日本の居酒屋をそのままアメリカで味わえる数少ないお店の中の1つ。[住所] 1117 V St. NW, D.C.[TEL] 202-588-5841(予約は5~8名の団体のみ可)Sakedokoro Makotoメニューはコース料理でこだわりの和食屋さん。ドレスコードあり。中心部からはタクシーで。[住所] 4822 MacArthur Blvd NW, Washington, D.C. 20007[TEL] 202-298-6866<ラーメン>DAIKAYA日本のラーメンが味わえます。とても混んでいるので、時間に余裕を持って行くといいと思います。[住所] 705 6th St NW, Washington, D.C. 20001[TEL] 202-589-1600<その他、会場周辺のレストラン一覧(編集部より)>画像を拡大する1.Morton’s The Steakhouse(ステーキ)2.McCormick & Schmick’s(シーフード) 3.The Oceanaire(シーフード)4.Kaz Sushi Bistro(寿司)5.The Capital Grille(ステーキ)6.Palm(ステーキ、シーフード)7.La Taberna del Alabardero(スペイン料理)8.Meiwah(中華)9.Bourbon Steak(ステーキ)10.Farmers Fishers Bakers(アメリカン)ショッピング情報<スーパーマーケット>Whole foodsオーガニック食材や調味料が置いてあり、アメリカで人気のスーパーマーケット。サラダバーや総菜のコーナーもあり、テイクアウトもできます。トレーダージョーズクオリティの高い商品を扱っているスーパーマーケット。オリジナルアイテムが人気で、値段もリーズナブル。お土産にも使えるアイテムが豊富。<ショッピング街>ジョージタウンエリア若者が集まる町。町全体もレンガづくりでできており、とても素敵な雰囲気を持っています。今人気のあるブランドショップが集結。<アウトレット>Tanger outlet中心部からすぐに行けるアウトレット。最大70%offの商品などもあり、日本で人気があるブランドも入っています。[住所] 6800 Oxon Hill Road, National Harbor, MD 20745

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冠動脈疾患患者への降圧治療、Jカーブリスクに留意が必要/Lancet

 安定冠動脈疾患で降圧治療を受ける患者において、収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧70mmHg未満と、それぞれ140mmHg以上、80mmHg以上で、死亡を含む有害心血管イベント発生リスクが増大するという「Jカーブ」を描くことが確認された。フランス・パリ第7大学のEmmanuelle Vidal-Petiot氏らが、45ヵ国、約2万3,000人を対象に行った前向きコホート研究の結果、明らかにした。至適降圧目標についてはなお議論の的であり、とくに冠動脈疾患患者では、拡張期血圧が低すぎる場合に心筋の血流低下が起きることが懸念されている。結果を踏まえて著者は、「所見は、冠動脈疾患患者に対する降圧治療は注意深く行うべきことを示すものだった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年8月26日号掲載の報告。心血管死、心筋梗塞、脳卒中の心血管イベントと血圧値の関連を分析 研究グループは、2009年11月~2010年6月にかけて45ヵ国で、安定冠動脈疾患で標準治療を受ける患者が登録されたレジストリ「CLARIFY」を基に、降圧治療を受ける2万2,672例のデータを解析した。 主要エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合心血管イベント。収縮期・拡張期血圧値(各イベント前の平均値を10mmHg単位で分類)との関連を分析した。収縮期血圧120mmHg未満、心血管リスク120~129mmHgの1.6倍 追跡期間の中央値は5.0年だった。分析の結果、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧80mmHg以上において、心血管イベントの発生リスクをそれぞれ有意に増大した。具体的に、収縮期血圧140~149mmHg群は、120~129mmHg群(収縮期参照群)に比べ、心血管イベント発生に関する補正後ハザード比は1.51(95%信頼区間[CI]:1.32~1.73)、また、150mmHg以上群の同ハザード比は2.48(同:2.14~2.87)だった。拡張期血圧については、80~89mmHg群の70~79mmHg群(拡張期参照群)に対する同ハザード比は1.41(同:1.27~1.57)だった。 一方で、収縮期血圧120mmHg未満群でも、心血管イベント発生リスクが増大することが示された。収縮期参照群に対する同ハザード比は1.56(同:1.36~1.81)だった。拡張期血圧については、60~69mmHgの拡張期参照群に対する同ハザード比は1.41(同:1.24~1.61)、60mmHg未満は同2.01(同:1.50~2.70)だった。

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魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当か

 魚類の摂取やn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、うつ病予防に効果的であるといわれているが、賛否両論がある。イタリア・Ospedaliero-Universitaria Policlinico-Vittorio EmanueleのGiuseppe Grosso氏らは、食事による魚類やn-3PUFAの摂取とうつ病との関連を調査した観察研究の結果からシステマティックレビュー、メタ解析を行った。Journal of affective disorders誌オンライン版2016年8月16日号の報告。 主要な書誌より2015年8月までの観察研究を検索した。暴露および用量反応のメタ解析における最高摂取 vs.最低摂取(参照)カテゴリのランダム効果モデルを行った。 主な結果は以下のとおり。・31件の研究より、25万5,076人、うつ病2万人以上が抽出された。・魚類の摂取とうつ病との関連を調査した21件のデータセットの解析では、中程度の異質性が認められたが、線形の用量反応と有意なリスク低減を示した(RR:0.78、95%CI:0.69~0.89)。・プールされたうつ病のリスク推定値は、総n-3PUFAと魚類由来n-3PUFA(EPA、DHA)の両端カテゴリにおける最低摂取と比較して、最高摂取においてリスク低下をもたらした(それぞれ、RR:0.78、95%CI:0.67~0.92、RR:0.82、95%CI:0.73~0.92)。・用量反応解析では、ピークJ字型の関係はn-3PUFAを1.8g/日摂取によりリスクが減少することが明らかとなった(RR:0.30、95%CI:0.09~0.98)。・本解析では、食事によるn-3PUFA摂取量は、うつ病リスク低下と関連することが示唆された。関連医療ニュース 魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大 うつ病にEPAやDHAは有用なのか 少し歩くだけでもうつ病は予防できる

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CLIの創傷治癒を改善した足首以下の血行再建「RENDEZVOUSレジストリ」ダウンロード版

Investigators InterviewCLIの創傷治癒を改善した足首以下の血行再建「RENDEZVOUSレジストリ」末梢動脈疾患(PAD)に対する治療は、末梢血管インターベンション(EVT:endovascular treatment)の進歩により大きく発展している。しかしながら、膝下病変については有効な治療法が確立していない。そのような中、膝下以下に病変を有する重症虚血肢(CLI:critical limbs ischemia)における足動脈形成術(PAA:pedal artery angioplasty)が創傷治癒率を改善することを明らかにした「RENDEZVOUSレジストリ」が発表された。今回は同レジストリのinvestigatorである宮崎市郡医師会病院 循環器内科 仲間達也氏に試験の背景とその結果について聞いた。ダウンロードこの動画をダウンロードする(MP4 127MB)右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。この音声をダウンロードする(MP3 19MB)右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。講師紹介

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金子英弘のSHD intervention State of the Art 第3回

“最強”TAVIデバイスが登場!経カテーテル大動脈弁植込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation;TAVI)の新デバイスであるSAPIEN 3(エドワーズライフサイエンス社)がついに日本上陸を果たしました。2014年2月にCEマークを取得し、欧州で導入されて以降、SAPIEN 3は瞬く間にTAVIにおける標準デバイスとしての地位を確立しています。【図1】画像を拡大するドイツではTAVIの件数自体が急増していることもあり、昨年半ばからはSAPIEN 3が在庫切れになることもしばしばです。われわれの施設でも、朝一番で北欧から空輸されるSAPIEN 3の到着を待ってから、TAVIを始めた日もありました。2013年10月に日本でTAVIが導入されてから、日本ではバルーン拡張型のTAVIデバイスとしてSAPIEN XT(エドワーズライフサイエンス社)が用いられてきました。しかし、それから半年も経たない2014年2月にはすでにヨーロッパでSAPIEN 3が導入されています。SAPIEN 3の特徴はなんといっても1)弁周囲逆流予防のスカート、2)小径となったガイドカテーテル、の2点です。SAPIEN 3においては弁周囲にスカートを付けることによって、術後の大動脈弁逆流を著しく減らすことに成功しました(図1参照)。最近報告された多施設レジストリ1)でもSAPIEN 3留置後の大動脈弁逆流(AR)は90%以上の症例で軽度以下でした。SAPIEN 3を用いたTAVIでは、軽度の大動脈弁逆流は予後を悪化させないことも示されており2)、術後大動脈弁逆流というTAVIの大きな弱点を克服したといえます。画像を拡大するさらに、従来のSAPIEN XTでは最大20Frのガイドカテーテルを挿入することが必要であったのに対し、SAPIEN 3ではデバイスサイズ20mm、23mm、 26mmは14Fr、29mmのデバイスでも16Frのガイドカテーテルで留置可能となりました。デバイスの小径化によって、これまで大腿動脈アプローチが困難であった症例でも、大腿動脈アプローチが可能になる症例が数多く存在します。私が渡独した2014年4月には、現在勤務している施設でもすでにSAPIEN 3が導入されていました。そして、SAPIEN 3導入前の2013年には心尖部アプローチがTAVI症例の約3割を占めていたのに対し、SAPIEN 3が導入された2014年には心尖部アプローチの症例は約1割に減少し、約9割の症例が大腿動脈アプローチで行われています。日本人は欧米人と比較して小柄で、大腿動脈に大口径のシースを挿入するのが困難な方が多くいらっしゃると思います。SAPIEN 3の導入によって、そのような方にも安全に大腿動脈アプローチのTAVIが施行できるのではと考えています。このように正に「最強TAVIデバイス」と呼ぶにふさわしいパフォーマンスをみせているSAPIEN 3で唯一懸念されるのが、SAPIEN XTと比較してペースメーカ留置率が若干高率になるのではないかという点です3)。SAPIEN XTと比較してSAPIEN 3はステント長が延長されており、これが留置による刺激伝導系への影響を大きくしていると考えられています。ただ、ペースメーカ留置率についても、SAPIEN 3を若干高めに留置することによって改善できると考えられており、デバイス留置手技の習熟により克服できる点だと思います。2013年10月に日本で導入されたTAVIですが、今回のSAPIEN 3導入によって、新たなステージに突入したのではないかと感じています。今後、自己拡張型デバイスであるCoreValve(メドトロニック社)についても改良型のデバイスであるEvolut Rの導入が予想されており、これらのデバイスの進化が安全なTAVIの普及と、多くの患者さんの治療に役立てられることを願っています。1)Kodali S, et al. Eur Heart J. 2016;37:2252-2262.2)Herrmann HC, et al. Circulation. 2016;134:130-140.3)De Torres-Alba F, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2016;9:805-813.

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ESC 2016 注目の演題

2016年8月27~31日、イタリア・ローマでESC(欧州心臓病学会)2016が開催されます。ケアネットでは、聴講スケジュールを立てる際の参考にしていただけるよう注目演題に関するアンケートを実施しましたので、その結果を学会開催前にご紹介します。また、ローマのおすすめスポットについても、会員の方々から情報をお寄せいただきました。併せてご活用ください。ローマのおすすめスポットはこちらイタリア留学経験のある循環器内科医が選ぶESC 2016注目の演題はこちら※演題名および発表順は、8月12日時点でESC 2016ウェブサイトに掲載されていたものです。当日までに発表順などが変更となる可能性がございますのでご注意ください。Clinical Trial Update coronary artery diseaseChairperson: Stephan ACHENBACH8/29(月)14:00 - 15:30、Forum - The Hub1.5-year outcomes after implantation of biodegradable polymer-coated biolimus-eluting stents versus durable polymer-coated sirolimus-eluting stents in unselected patients2.A life-time perspective on the effects of an early invasive compared with a non-invasive treatment strategy in patients with non-ST-elevation acute coronary syndrome - the FRISC II 15 years follow-up3.10-year follow-up of clinical outcomes in a randomized trial comparing routine invasive versus selective invasive management in patients with non ST-segment elevation acute coronary syndrome.4.Comparative Efficacy of Coronary Artery Bypass Surgery Versus Percutaneous Coronary Intervention in Diabetic Patients with Multivessel Coronary Artery Disease With or Without Renal Dysfunction5.The effect of CABG by age in patients with heart failure: 10 year follow data from the STICHES study6.ABSORB Japan: 2-year clinical results from a randomized trial evaluating the Absorb Bioresorbable Vascular Scaffold vs. metallic drug-eluting stent in de novo native coronary artery lesionsQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するHot Line coronary artery disease and imagingChairpersons: Fausto Jose PINTO, Michael HAUDE8/29(月)16:30-18:00、Rome - Main Auditorium1.CONSERVE - Direct catheterization versus selective catheterization guided by Coronary Computed Tomography in patients with stable suspected Coronary Artery Disease2.DOCTORS - Does Optical Coherence Tomography Optimise Results of Stenting?3.CE-MARC 2 - A randomized trial of 3 diagnostic strategies in patients with suspected coronary heart disease.4.PACIFIC trial - Head-to-head comparison of coronary CT angiography, myocardial perfusion SPECT, PET, and hybrid imaging for diagnosis of ischemic heart disease5.AMERICA - Systematic detection and management of multivascular involvement of atherothrombosis in coronary patients in comparison with treatment of coronary disease onlyQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するRegistries coronary artery disease, stroke and interventionChairperson: Elliott ANTMAN, Leonardo BOLOGNESE8/29(月)16:30-18:00、Sarajevo - Village 21.SWEDEHEART: Stent thrombosis and all-cause mortality in bivalirudin and heparin treated ST-elevation myocardial infarction patients undergoing primary percutaneous intervention2.Feasibility and safety of direct catheter-based thrombectomy in the treatment of acute ischemic stroke. Prospective registry PRAGUE-163.Quality Indicators for Acute Myocardial Infarction: rate of implementation and relation with 3 year survival. A study using data from the nationwide FAST-MI 2005 and FAST-MI 2010 registries4.Modulators of the response to CRT in international practice: the ADVANCE CRT registry5.ELECTRa (European Lead Extraction ConTRolled) Registry: a deeper snapshot on transvenous lead extraction in europe6.Two year prospective follow up of patients treated with dabigatran etexilate for stroke prevention in non-valvular atrial fibrillation: The GLORIA-AF RegistryQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大するHot Line coronary artery disease and stentingChairpersons: Steen Dalby KRISTENSEN, Andreas BAUMBACH8/30(火) 11:00-12:30、Rome - Main Auditorium1.NorStent - Comparison of long term effects of new generation DES vs contemporary BMS on mortality, morbidity, revascularization, and quality of life2.BASKET-SAVAGE - Drug-eluting vs. bare metal stents in saphenous vein grafts3.PRAGUE -18 - Randomized comparison of ticagrelor versus prasugrel in ST elevation myocardial infarction4.Can patients with acute coronary syndromes caused by plaque erosion be treated with anti-thrombotic therapy without stenting?5.BBK II trial - Culotte versus T-stenting for treatment of coronary bifurcation lesionsQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=100)画像を拡大する欧州留学経験のある循環器内科医が選ぶESC 2016の注目演題ESC 2016開催に当たり、欧州留学経験のある循環器内科臨床医、大野 洋平氏が注目の演題を厳選して紹介する。ESCならではの循環器領域の多岐にわたる興味深い臨床研究が幾つもあり、会場でのdiscussionも含めて非常に楽しみである。まずは、ABSORB Japanの2年フォローアップの臨床結果に注目したい。ABSORB Japanは、薬剤溶出性生体吸収スキャフォールドAbsorbと第3世代薬剤溶出性ステントXienceの無作為化比較試験であり、昨年ロンドンで開催されたESC 2015のLate Breakingで1年フォローアップのデータが発表された。現在、スキャフォールド血栓症が話題であるが、本試験でのVery Late Scaffold Thrombosisが比較対象のXience 群と比べてどうだったのか、非常に気になるところである。血管内イメージング王国である日本では、IVUSあるいはOCTガイドによるPCIが日常臨床で行われている。しかし、OCTガイドPCIがはたして良好な治療転帰につながるかという明確な答えはまだ存在しない。今回のHot Lineでは、OCTはPCIの治療成績を最適化するか?という命題に答えを出すべく、フランスの多施設で実施されているDOCTORS(NCT01743274)試験の結果が発表される。非ST上昇型急性冠症候群の患者を「通常透視のみ使用群」と「OCTガイド群」に無作為に割り付け、DESあるいはBMSを留置するというもので、ステント留置後にFFRを評価する1次エンドポイントが特徴の試験である。半年後の有害心イベント(死亡、心筋梗塞の再発、ステント血栓症、標的血管血行再建)と併せて結果を確認したい。金属ステントだけでなく、BRSも入ってくるともっと面白いのだが。“Hot Line coronary artery disease and stenting”のセッションでは、“Can patients with acute coronary syndromes caused by plaque erosion be treated with anti-thrombotic therapy without stenting?”という演題に注目したい。近年、急性冠症候群を呈した患者の血管内イメージングにて、“plaque erosion”というplaque ruptureは来していないが病変に血栓を伴う症例が報告されるようになり、ステントを留置せず、抗血小板療法や抗凝固療法といった抗血栓療法のみで加療が可能ではないかという議論がある。こういった病変に対して金属ステントを留置することなく、抗血栓療法のみで安全に加療できるのであれば、非常に意義のあることだと考える。それを裏付ける結果が得られるかどうか、楽しみである。TAVI関連の臨床試験は今回あまり多くはないようだが、SENTINEL(NCT02214277)試験に注目したい。TAVIの合併症の1つに脳梗塞がある。幸い、後遺症を残すようないわゆるdisabling strokeに臨床で遭遇することはあまりないが、もちろん可能であれば予防したい。ちなみに、最新の自己拡張型生体弁であるMedtronic社のEvolut Rを使用した臨床試験(Evolut R CE Study)では、30日のdisabling strokeはなんと0%。より太いシステムであるEdwards Lifesciences社のSapien 3を使用した臨床試験(PARTNER II S3 Trial)でも0.9%と非常に良好な成績が報告されている。本試験で使用する脳梗塞予防デバイスはClaret Medical社のSentinelという脳保護システムである。右橈骨動脈よりアプローチして、右腕頭動脈および左総頸動脈にフィルターをかけるデバイスである。日本人オペレーターであれば、フィルターの留置に難渋することは少ないと思われるが、処置時間が短くなってきた現在のTAVIという治療の中では、やはり時間のかかる操作になる。筆者もイタリアで使用経験があるが、時間がかかるわりに効果はどうなのか、という印象がある。脳梗塞ハイリスクの一部の患者のみをターゲットにすれば有用である可能性はあるが、少なくとも全例に使用するデバイスではないと考える。どういった結果が出るのか、注目したい。

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“身体不活動”が世界の大きな経済負荷に/Lancet

 罹患率や早期死亡率だけではなく、身体不活動(physical inactivity)はかなりの経済負荷を招いていることが、オーストラリア・シドニー大学のDing Ding氏らによる検討の結果、明らかにされた。著者は、「本報告は、世界中で非伝染性疾患を減らすための包括的戦略の一部として、定期的な身体活動の促進を優先すべき根拠となるものだ」と述べている。世界的に広がっている身体不活動は、慢性疾患の拡大および早期死亡に関連しているとされる。これまで疾病負荷については多数の報告がある一方、身体不活動の経済負荷について世界レベルでの定量化はされていなかった。Lancet誌オンライン版2016年7月27日号掲載の報告。身体不活動に起因する経済負荷を142ヵ国について推算 研究グループは、経済負荷を理解することはリソースの優先順位付けに関する情報提供に役立ち、身体活動の増大への世界的な取り組みを促すことにつながるとして本検討を行った。 身体不活動に起因する直接的な医療費用、生産性損失、障害調整生命年(DAILY)を、標準化した方法および142ヵ国(世界人口の93.2%)から入手できた最適データを使って推算した。直接医療費用とDAILYは、冠動脈疾患、脳卒中、2型糖尿病、乳がん、大腸がんについて算出。生産性損失は、フリクションコストアプローチを用いて身体不活動関連の死亡に関して推算した。 解析は、データを入手できた国ごとで身体不活動をベースに行い、身体不活動に関連した各疾患アウトカムおよび全死因死亡の補正後人口寄与割合(PAF)を調べた。高所得国は身体不活動の経済負荷の占める割合が大きい 2013年の世界の身体不活動による医療費用は、国際ドル単位で保守的に見積もって538億ドルと推算された。そのうち312億ドルは公的セクターが、129億ドルは民間セクターが、97億ドルは家庭によって支払われたものであった。疾患別では、50億ドルが冠動脈疾患、60億ドルが脳卒中、2型糖尿病は376億ドル、乳がん27億ドル、大腸がん25億ドルであった。 身体不活動の死亡がもたらした生産性損失は137億ドルであり、DALYへの影響は1,340万ドルであった。 高所得国は身体不活動の経済負荷の占める割合が大きく(医療費用の80.8%と間接費用の60.4%)、低・中所得国は疾病負荷の占める割合が大きかった(DALYの75.0%)。 全体として2013年の世界の身体不活動の経済負荷は、保守的解析(conservative analyses)では675億ドル(185~1,821億ドル)であった一方、非保守的解析では1,452億ドル(470~3,388億ドル)と、より高値の推算値が示された。

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SU薬とメトホルミン、単独服用時の低血糖リスクを比較/BMJ

 血糖降下薬SU薬単独服用者は、メトホルミン単独服用者と比べて、低血糖発症リスクが約2.5倍と有意に高く、同リスクは、グリベンクラミド服用者や、腎機能が低下している人では、さらなる増大が認められた。オランダ・マーストリヒト大学のJudith van Dalem氏らが、12万例超を対象に行ったコホート試験の結果、明らかにした。低血糖リスクの増大は、すべてのSU薬服用者で観察されたという。現行のガイドラインの中には、低血糖リスクがより低いとして、SU薬の中でもグリクラジドを第1選択薬とするものがあるが、今回の試験結果は相反するものとなった。そのため著者は、「さらなる検討が必要である」と述べている。BMJ誌オンライン版2016年7月13日号掲載の報告。1,100万人超の患者データベースを基に試験 研究グループは、英国内674ヵ所の医療機関からの1,100万例超の診療録データを包含する「Clinical Practice Research Datalink」(CPRD)を基に、2004~12年に非インスリン抗糖尿病薬の処方を受けた18歳以上の患者12万803例を対象に、コホート試験を行った。 SU薬の服用量や、腎障害、SU薬のタイプと低血糖症リスクについて、Cox比例ハザードモデルで解析を行った。年齢や性別、ライフスタイル、併存疾患、使用薬剤については補正を行った。低血糖症リスク、グリベンクラミドはメトホルミンに比べ7.48倍 その結果、低血糖症の発症リスクは、メトホルミンのみを服用している人に比べ、SU薬のみを服用している人では約2.5倍の有意な増大が認められた(補正後ハザード比[HR]:2.50、95%信頼区間[CI]:2.23~2.82)。グリクラジド服用患者の同ハザード比も2.50(同:2.21~2.83)だった。 SU薬単独服用者の中でも、糸球体濾過量(GFR)が30mL/分/1.73m2未満の人で、低血糖症リスクはさらに増大した(同:4.96、同:3.76~6.55)。また、SU薬服用量が多い人(グリベンクラミド10mg同等量超)や、グリベンクラミド服用患者では、よりリスクの増大がみられた。それぞれの補正後HRは、3.12(95%CI:2.68~3.62)、7.48(同:4.89~11.44)だった。なお、SU薬の第1選択薬であるグリクラジドの補正後HRは2.50(同:2.21~2.83)で、その他のSU薬(グリメピリド:1.97[1.35~2.87]、glipizide:2.11[1.24~3.58]、トルブタミド:1.24[0.40~3.87])も同程度だった。

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ウイルス性肝炎の世界疾病負担、約20年間で上昇/Lancet

 ウイルス性肝炎は、世界的に死亡と障害の主な原因となっており、結核、AIDS、マラリア等の感染症と異なり、ウイルス性肝炎による絶対的負担と相対的順位は、1990年に比べ2013年は上昇していた。米国・ワシントン大学のJefferey D Stanaway氏らが、世界疾病負担(Global Burden of Disease:GBD)研究のデータを用い、1990~2013年のウイルス性肝炎の疾病負担を推定した結果、報告した。検討は、ウイルス性肝炎に対するワクチンや治療が進歩してきていることを背景に、介入戦略を世界的に周知するためには、疾病負担に対する理解の改善が必要として行われた。結果を踏まえて著者は、「ウイルス性肝炎による健康損失は大きく、有効なワクチンや治療の入手が、公衆衛生を改善する重要な機会となることを示唆している」と述べている。Lancet誌オンライン版2016年7月6日号掲載の報告。急性ウイルス性肝炎、肝硬変と肝がんの罹患率と死亡率を評価 研究グループは、GBDのデータを用い1990~2013年における、重要な4つの肝炎ウイルス(HAV、HBV、HCV、HEV)による急性ウイルス性肝炎の罹患率と死亡率、ならびにHBVとHCVによるウイルス性肝炎に起因した肝硬変および肝がんの罹患率と死亡率を、年齢・性別・国別に算出した。 方法としては、急性肝炎については自然経過モデルを、肝硬変・肝がんについてはGBD 2013の死因集合モデルを用いて死亡率を推定するとともに、メタ回帰モデルを用いて全肝硬変有病率および全肝がん有病率、ならびに各原因別の肝硬変および肝がんの割合を推定した。その後、原因別有病率(全有病率と特定の原因別の割合の積)を算出した。障害調整生存年(DALY)は、損失生存年数(YLL)と障害生存年数(YLD)の合計とした。ウイルス性肝炎に起因する死亡数は世界で63%増加 世界のウイルス性肝炎による死亡数は、1990年の89万人(95%不確定性区間[UI]: 86~94万)から2013年は145万人(134~154万)に増加した。同様にYLLは、3,100万年(2,960~3,260万)から4,160万年(3,910~4,470万)へ、YLDは65万年(45~89万)から87万年(61~118万)へ、DALYは3,170万年(3,020~3,330万)から4,250万年(3,990万~4,560万)に上昇した。 ウイルス性肝炎は、1990年では主要死因の第10位(95%UI:10~12位)であったのに対して、2013年では第7位(95%UI:7~8位)であった。 2013年にウイルス性肝炎に起因する死亡が最も多かったのは、アジア東部および南部で、ウイルス性肝炎関連死亡の96%(95%UI:94~97)をHBVとHCVが占めていた。この2つのウイルスの割合はほぼ同等で(HBV 47%[95%UI:45~49] vs.HCV 48%[46~50])であった。 ウイルス性肝炎による死亡数は、結核、AIDS、マラリアの年間死亡数と同等以上であった。

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CVIT 2016(第25回日本心血管インターベンション治療学会学術集会)会長インタビュー

第25回日本心血管インターベンション治療学会学術集会(CVIT 2016)が本年(2016年)7月7日~9日開催される。今大会の開催への思いと見どころについて、会長である東邦大学医療センター 大橋病院 中村正人氏に聞いた。今回の大会は公募演題を広く集められたそうですね?従来の大会のシンポジウム、パネルディスカッションなどは指定演題がほとんどだったのですが、日常臨床で遭遇する課題を取り上げるため、今回は公募演題を数多く採用しました。それもあって、演題数は当初の予定以上に増え、1,000題以上となりました。最近は循環器系の学会でもインターベンションを取り上げる機会が減っており、インターベンションを専門とする若い医師の発表の場が少なくなってきました。そういうこともあり、今大会は若い先生方がドキドキしながら発表するチャンスをたくさん作っています。大会テーマ「The road to Professional」の意味を教えていただけますか?それぞれの道は違えども、皆さんがプロフェッショナルという同じ目的地を目指してほしい、という思いでこのテーマにしました。ただ技術や知識があるだけではプロフェッショナルとはいえません。知識を持ったうえで、それを上手に活用してこそプロフェッショナルです。そのためには、チームワークや、自分たちができないことをできるようにするものづくりの工夫が必要となります。そのような考えから、今回は特別公演を3名にお願いしています。エディンバラ大学のKeith Fox先生には全般的なエビデンスの話を、早稲田大学で介護ロボットを作っておられる藤江 正克先生には“ものづくり”とイノベーションについて、サッカー日本代表元監督の岡田 武史氏にはチームワーク作りの話をしていただく予定です。●特別講演Unmet need of NOAC7月7日(木)16:00~17:00、第1会場 ホールCチームマネージメント~今治からの挑戦~7月8日(金)10:20~11:20、第1会場 ホールCヘルスケアロボティクスにおけるイノベーション7月9日(土)11:00~12:00、第1会場 ホールC“ものづくり”についてですが、今回の学会では「“ものづくり”のセッション」を設けていらっしゃいますね?この企画は今大会の新しい取り組みの1つで、経済産業省関東経済産業局の後援で開催します。これからは日本のインターベンションも新しいシーズを見つけて形にしていくという考え方が必要になります。そのため、日本での医療機器開発の成功例を講演していただくとともに、医療機器開発の海外との違いを議論したいと思います。また、技術展示ブースに日本のものづくり企業に出展いただき、医療側のニーズを知っていただくとともに、技術相談コーナーで開発アイデアを持つ医師との接点を持っていただければと思います。●医工産連携ものづくり企画シンポジウム「医療機器開発の成功例を知ろう」7月7日(木)13:00~16:00、展示会場(地下2階「展示ホール内」)パネルディスカッション「医療機器開発で、世界の競合に勝てるにはどうしたらよいか?」7月8日(金)9:00~12:30、展示会場(地下2階「展示ホール内」)技術相談コーナー「ホールE」内(地下2階)http://www2.convention.co.jp/cvit2016/contents/event.html産官学連携のセッションもあるそうですね?今後多くのデバイスが出てきますが、それらを無制限に使うことは医療費の観点から考えると不可能です。どのように市場に導入していくか検討し工夫していく必要があります。また今後、新規性のあるデバイスを早期に導入しようとすると未知のリスクが伴います。それを踏まえ、アカデミア、関連企業、PMDA、FDAそれぞれのスタンスを明らかにして議論したいと考え、産官学の連携セッションを企画しました。Harmonization by doing(HBD)のセッションでは、米国と日本の共同試験による早期承認の取り組みについての今までの経験を説明します。次に、近々上市が予定される話題の新デバイス生体吸収性ステント(BRS)について取り上げます。BRSは、そのベネフィットとともに血栓症リスクも議論されていますが、データは依然として限られています。このデバイスを日本にどう導入するかを議論します。さらに、CT-FFRについても取り上げます。日本にはEU全土と同じ台数のCTがあります。非侵襲的な検査としての大きなメリットがありますが、すべての施設で使うと大変なことになります。医療経済の点からマッチできるシナリオを議論したいと思います。もう1つ、近年注目されている出血合併症についても取り上げます。とくに、ハイリスクサブセットの定義は論文によってまちまちです。このサブセットの定義をどう考えるか企業とアカデミアの合意を形成していきたいと思います。日米欧 産官学共催セッション:最新テクノロジー(デバイス)の福音とリスク7月7日(木) 13:30~19:00、第14会場 G610Controversyセッションではどのようなテーマを取り上げるのですか?ここでは、DAPTの投与期間、心房細動合併患者の抗血小板薬の扱い、イメージングモダリティ(CT、FFR、OCTなど)をどのように適切に使っていくか、という従来から議論されていたテーマについて取り上げます。また、インターベンションの適切な実施については世界的に議論されており、欧米でもAUC(Appropriate Use Criteria)やハートチームといった取り組みが始まっています。しかし、それをそのまま日本に当てはめることは難しいと思います。どのように日本版のStandardized PCIを作っていくか、学会として取り上げています。Optimal Medication Following PCI Duration of DAPT after DES7月7日(木)10:30~12:00、第3会場 ホールB7-2Optimal Medication Following PCI Patients with Atrial Fibrillation7月8日(金)13:10~14:40、第3会場 ホールB7-2Imaging Appropriate Use of Multimodalities in Ischemic Heart Disease7月7日(木)17:20~18:50、第3会場 ホールB7-2日本におけるPCIの標準的適応7月8日(金)17:30~19:00、第3会場 ホールB7-2今年(2016年)4月に発生した熊本地震についても取り上げていますか?被災地である熊本の済生会熊本病院の中尾 浩一先生に、この地震での循環器医としての体験をお話しいただきます。あまり報道されませんが、この地震では多くの方が肺血栓塞栓症を発症しています。さらに、搬送の途中で亡くなる方も少なくなかったそうです。中尾先生の体験を通し、われわれ医師および医療者は、どういうことを知っておくべきかを学んでいきたいと思います。緊急企画 熊本地震の経験 現況報告7月7日(木) 18:30~19:00、第15会場 ホールE内40歳未満の参加者のための「Under 40」セッションではどのようなことが行われるのですか?このセッションの副題は「10年後のカテーテル治療を語ろう」です。インターベンションの適応はどう変わっていくか? CVITはどう変わっているか? といったテーマを事前に設定し、5名の代表演者に発表いただきます。40代未満の先生に、自分たちが携わっているインターベンションが将来どうなっているか予想していただき、自由闊達に意見交換をしていただきたいと思います。会長企画1 Under 40 ~10年後のカテーテル治療を語ろう7月7日(木)17:00~18:30、ポスター会場 ホールE教育セッションについても工夫されたそうですね?教育セッションは、従来は並列で行われていましたが、見たいものが重複してしまうという声を聞いていました。そこで今回は見たいテーマが重ならないよう、1部屋を教育セッション用に充て、3日間通して開催することにしています。教育セッション7月7日(木)16:00~18:00、第10会場 G4097月8日(金)8:30~18:00、7月9日(土)8:30~14:10、第8会場 G701その他にも興味深い取り組みがあるそうですね?「子ども体験コーナー」を作ります。このコーナーでは、CT、MRI、心電図、血圧計測を子供たちに体験してもらい、医療に興味を持ってもらいたいとの思いで企画しました。子ども体験コーナー7月8日(金)10:00~18:00、7月9日(土)10:00~18:00、地下2F セミナー室1http://www2.convention.co.jp/cvit2016/contents/kodomo.html企業展示については、参加者が楽しめ出展企業にもベネフィットがあるよう工夫しました。各ブースでアンケート調査を用意していただき、スタンプラリーを行います。集まったスタンプの数で賞品をお渡しする仕組みです。参加者の息抜きになりますし、出展企業も使用者の声を聞き、マーケティングに利用していただくことができます。また、展示ブースは格子戸などをアレンジし江戸時代の街並みを演出します。ポスター会場についても、領域ごとに照明を色分けし、わかりやすくしています。こちらは、近代的デザインにして、同じフロアにある江戸時代風の展示会場との対比を楽しんでいただけるようにします。ケアネット会員の方へメッセージをお願いします。これからは日本からエビデンスを発信する時代ですから、若い世代にはリサーチマインドを持ってほしいと思います。そういう意味でも、たくさんの若い先生に参加していただきたいと考えています。今大会は、私が思い描くこと、興味のあることを企画として取り上げました。この大会を通じて皆が同じ方向を向いて歩んでいってほしいと願っています。CVIT 2016 ホームページhttp://www2.convention.co.jp/cvit2016/index.html

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CLIの創傷治癒を改善した足首以下の血行再建「RENDEZVOUSレジストリ」

Investigators InterviewCLIの創傷治癒を改善した足首以下の血行再建「RENDEZVOUSレジストリ」末梢動脈疾患(PAD)に対する治療は、末梢血管インターベンション(EVT:endovascular treatment)の進歩により大きく発展している。しかしながら、膝下病変については有効な治療法が確立していない。そのような中、膝下以下に病変を有する重症虚血肢(CLI:critical limbs ischemia)における足動脈形成術(PAA:pedal artery angioplasty)が創傷治癒率を改善することを明らかにした「RENDEZVOUSレジストリ」が発表された。今回は同レジストリのinvestigatorである宮崎市郡医師会病院 循環器内科 仲間達也氏に試験の背景とその結果について聞いた。講師紹介

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足動脈血管形成術、中等度CLI(重症下肢虚血)に有効性

 2016年3月19日、日本循環器学会学術集会「Late Breaking Clinical Trials/Cohort Studies III」が行われ、宮崎市郡医師会病院 仲間 達也氏が、足首以下にも病変を持つ重症下肢虚血(以下CLI:critical limb ischemia)患者に対する血行再建の臨床的意義を評価した多施設共同試験RENDEZVOUSレジストリについて報告した。 重症下肢虚血患者の救肢において血行再建は不可欠である。従来のバイパス手術に匹敵する救肢率が報告されている血管内治療(EVT)への注目度が増している。しかしながら、EVTの創傷治癒率には依然として課題が残る。 そのようななか、足首以下までの血行再建(以下PAA:pedal artery angioplasty)により、創傷治癒率の向上と治癒までの期間の短縮を示した単施設研究が、昨年報告されている1)。今回の研究の目的は、PAAの追加がCLI患者の予後にどう影響するのかを多施設研究で評価することである。 試験は、日本全国の5施設によるデータベースから後ろ向き解析で行われた。試験対象は、2012年1月~14年6月に登録された257患者、257肢。患者はRutherford4を除くCLIで、ひざ下と足首以下に虚血性潰瘍または壊死を含む病変を有する。患者の半数が、車いす以下のADLであった。病変は、Rutherford分類5が78%、6が22%、感染肢が半数、小切断術またはデブリードマン施行も半数で行われており、重篤な状態であった。試験の主要評価項目は、EVT後12ヵ月の創傷治癒率と創傷治癒までの時間。副次的評価項目は救肢率、切断後生存期間、再血行再建回避率であった。また、創傷治癒率の独立危険因子を多変量で解析し、危険因子の数でリスク層別化を行い、どの患者に対してPAAを行うべきかを明らかにした。 結果、主要評価項目である創傷治癒率は、PAA施行群で59.3%、非施行群では38.1%、とPAA施行群で有意に高かった。創傷治癒までの時間もPAA施行群で有意に短かった。副次的評価項目については統計学的な差は認められていない。 創傷治癒遅延の危険因子は、車いす以下、テキサス分類2以上の深い潰瘍、透析施行。一方、PAAは治癒遅延陰性因子、すなわち治癒促進因子であった。 上記危険因子の数により3段階で評価されたリスク層別化をみると、中等度リスク群(危険因子1~2個)では、PAA施行群の創傷治癒率59.3%に対し、非施行群では33.9%と、有意にPAA施行群の創傷治癒率が高かった。低リスク群(危険因子なし)では、PAA施行群に高い傾向があったが、統計的有意差は認められなかった。高リスク群(危険因子3個)においても統計的有意差は認められなかった。 仲間氏は「この試験から、積極的にPAAを行うことで、中等度リスクの患者のアウトカムの改善を期待できることが明らかになった。一方、低リスク群では、PAA非施行でも比較的良好な成績が得られ、PAAの意義は明らかではない。また、高リスク群では、障害が大きいことから血管内治療で介入できる範囲を超えている可能性が示唆された」と述べている。参考文献1)Nakama T, et al. J Endovasc Ther. 2016;23:83-91.

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らい性結節性紅斑〔ENL : erythema nodosum leprosum〕

1 疾患概要■ 概念・定義ハンセン病はらい菌(Mycobacterium leprae)による慢性抗酸菌感染症である。しかし、病気の経過中にらい菌の成分に対する免疫反応が亢進し、急性の炎症症状を呈することがあり、これをらい反応(lepra reaction)という1、2)。この反応によって組織障害、とくに末梢神経障害が起こり、後遺症となることがある。らい反応には2つの型、すなわち1型らい反応(type 1 reaction、同義語として境界反応〈borderline reaction〉、あるいはリバーサル反応〈reversal reaction:RR〉)と、2型らい反応(type 2 reaction、同義語としてらい性結節性紅斑〈erythema nodosum leprosum:ENL〉)がある。本項ではENLについて記載するが、理解を深めるためハンセン病についても適宜記載する2、3、4)。なお、ハンセン病、ENLは一般病院で保険診療として取り扱っている。■ 疫学ENLはハンセン病患者のうち、菌の多いタイプ(多菌型〈multibacillary:MB〉)に発症する(表1)。らい菌に対する生体の免疫応答を基にした分類であるRidley-Jopling分類では、LL型とBL型に発症する。ENLはMB患者の10~50%にみられる。発症はハンセン病治療前に1/3、1/3は治療6ヵ月以内(とくに治療数ヵ月後)に、残り1/3は6ヵ月後に起こるとされている。画像を拡大する■ 病因多菌型(MB)のLL型、BL型の患者では、らい菌に対する細胞性免疫能は低下しているが、十分なB細胞と形質細胞が存在するので、それらの細胞が活性化を受け、大量の菌抗原が大量の抗体を作る。この場合、過剰に作られた抗体と菌抗原と補体との間で免疫複合体(immune complex)が作られ、皮膚、神経、血管壁やほかの臓器に沈着し、多数の好中球浸潤を伴った炎症性反応を生む。TNF-αは、ENL発症で重要な役割を演じると考えられている。■ 症状ENLは、らい菌抗原があれば、すなわちLL型やBL型の病巣のある所では、皮膚、リンパ節、神経、関節、眼、睾丸など、どこでも急性炎症を起こしうる(表2)。画像を拡大する典型的なENLは、いわゆる発熱を伴って発症する。39~41℃ほどの高熱を発し、全身倦怠・関節痛が起きる。皮膚では一見正常の皮膚に、小豆大から拇指頭大までの圧痛を伴う硬結や隆起性紅斑を生ずる(図1)。画像を拡大する四肢によくみられるが半数の症例で顔面にも生じる。個疹は数日で消退するが、次々と皮疹が新生する。重症例では圧痛を伴う膿疱ができたり、膿瘍形成や、平坦な紅斑に囲まれた紫斑様皮疹、中心臍窩を有する結節性紅斑、水疱をもつもの、自壊して潰瘍を形成し瘢痕化するものもある。白斑や瘢痕を残すことがある。鼻腔粘膜のENLは、結節形成よりも浸潤性変化として、鼻閉、鼻汁、痂皮、鼻中隔の萎縮が起こる。病理組織学的には真皮から皮下脂肪織に多数の好中球の集積を認める。血管壁に多核球が浸潤し壊死性血管炎を認めたり、免疫組織化学染色で免疫複合体が沈着したりすることもある。末梢神経炎を起こし、耐え難い疼痛に苦しめられる。とくに尺骨神経の上方の部分に腫脹疼痛がよく起こり、ENLの経過中に手指などに変形を起こしてくる例も少なくない。神経炎だけで不眠・食欲減退・うつ状態が起こる。ENLの末梢神経炎が引き起こす機能障害は、急激に高度に現れるものではないが、目立たない形で徐々に障害が起こる。眼に急性の虹彩毛様体炎や上強膜炎を起こし、充血・眼痛・羞明・視力低下を来す。ENLを繰り返すと慢性の虹彩毛様体炎を起こし、虹彩癒着・小瞳孔の原因ともなり、続発性緑内障につながって失明の遠因になる。感覚神経障害性の難聴が起こる。精巣炎や陰嚢水腫を起こすが、その後の睾丸の萎縮の程度は、罹病期間とENLの既往歴に深く関係する。■ 予後通常良好である。しかし、軽度の炎症が数ヵ月から数年にわたって持続し、神経障害が少しずつ進行することもある。ENLは再発しやすいので、ENLを発症したときには長く経過観察を続けるようにする。ENLが起こっても、この反応自体が菌を殺したり、排除するためには役に立たないので、菌陰性化が進むわけではない。したがってハンセン病そのものの予後とは関係がない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在、反応状態であるという診断は、主に臨床像で決められている。らい反応を診断するには、らい反応を疑うことから始まる。ハンセン病の診断がなされていなくてENLを主訴として初めて外来受診することもある。診断は臨床症状(表2)と検査所見(白血球数増加、好中球数増多、血沈亢進、CRP高値、血清TNF-α上昇など)、皮膚病理組織所見などを総合して行う。ENLとその他の主な皮膚疾患との鑑別を表3に示した。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)基本的な注意として安静を守らせる。仕事、学校などは無理のない程度に行う。飲酒を控え睡眠を十分にとる。多臓器症状を呈する場合には、入院安静も考慮する。ENLを軽症と重症に分類し、それに従って治療方針を立てる(表4)。なお、ハンセン病の治療については、ENLを起こしていても継続する。画像を拡大する軽症では、疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)や鎮静薬などを適宜投与する。重症と診断すれば、積極的に反応を抑制する治療を行う。ENLにはサリドマイド(thalidomide)が著効する。投与したその日から、ENLの自覚症状や発熱などの全身症状が劇的に消退する。サリドマイドは、ENLの90%の患者で効果的であり、第1選択薬である。サリドマイドが効果的であることが、ENLの診断を確定する方法としても有用である。サリドマイドの使用法を図2に示した。「らい性結節性紅斑(ENL)に対するサリドマイド診療ガイドライン」が作成されているので、使用にあたっては熟読する5)。画像を拡大するサリドマイドは、ヒトにおいて催奇形性が確認されているので、安全管理手順を順守する。現在日本で保険適用になっているサリドマイドは、サレド(商品名)カプセルであり、「サリドマイド製剤安全管理手順(Thalidomide Education and Risk Management System:TERMS®)」を厳守する。何らかの事情でサリドマイド治療が困難な場合、ステロイド内服薬の全身投与も有効である。投与量は0.5~1mg/kg/日で開始する。減量方法は通常の漸減方法と同様であるが、とくに少量になってからは漸減の間隔を延ばすほうがよい。ステロイド内服薬の長期投与が必要なときは、クロファジミン(clofazimine:CLF、B663〈商品名:ランプレン〉)を併用するとよい。CLFはENLを抑制する効果がある。虹彩毛様体炎を抑制するともいわれている。したがって、ENLが生じた場合に、あるいは神経痛などの症状があり、らい反応も疑われるような時期にCLFの投与を行うことがある。しかし、サリドマイドやステロイド内服薬に認められるような明らかな抗ENL作用はないと考えられる。通常50mg/日を100mg/日(外国では最大200mg/日処方する例もある)にすることで、サリドマイドやステロイド内服薬の投与量の減少を試みる。ただし100mg/日の投与で色素沈着が顕著になり、まれに下痢・腹痛も起こる。ENLについては、何か自覚症状に気付いたら、すぐに受診させる。皮疹の発赤と腫脹、新しい皮疹、神経の急な腫脹、神経痛、羞明、発熱などのほかに、かすかな筋力の低下や感覚異常、時にはかゆみ、神経過敏にも注意深い観察をするように指導する。ハンセン病治療終了後に初めてのENLが起きることがあること、3年以内は皮膚症状も生じうること、それ以降も数年にわたって神経症状だけが出ることがあることも事前に説明しておく。ENLは、年余にわたり服薬指導の厳しいサリドマイド、副反応の起こりやすいステロイド内服薬を長期間内服し、さらに全身の痛みや発熱、失明の不安などもあるため、精神的なケア(カウンセリング、抗うつ薬投与など)も重要である。4 今後の展望ENLの治療薬であるサリドマイドは、ブラジル、日本、米国などでは使用されているが、患者の多い途上国では催奇形性の関係から使用されていない。安全で有効性の高い抗ENL薬の早期の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国立感染症研究所 ハンセン病研究センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)WHOのハンセン病ページ(医療従事者向けのまとまった英文情報サイト)国立感染症研究所 感染症疫学センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)熊野公子. 日ハンセン病会誌.2002;71:3-29.2)石井則久著 中嶋 弘監修. 皮膚抗酸菌症テキスト.金原出版;2008.p.1-130.3)石井則久ほか責任編集. ハンセン病アトラス.金原出版;2006.p.1-70.4)後藤正道ほか. 日ハンセン病会誌.2013;82:143-184.5)石井則久ほか. 日ハンセン病会誌.2011;80:275-285.公開履歴初回2013年11月28日更新2016年03月01日

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Vol. 4 No. 3 巻頭座談会 脂質管理の今を整理する  循環器医に必要な知識はなにか?

宮内 克己 氏順天堂大学大学院 医学研究科循環器内科森野 禎浩 氏岩手医科大学 内科学講座循環器内科分野2013年秋にACC/AHAが発表したコレステロール管理ガイドラインは、臨床現場に大きな議論をもたらした。LDLコレステロールの治療目標はどうあるべきか?treat to targetか? fire and forgetか?the lower, the betterの解釈は?最近のエビデンスも踏まえ、現時点の脂質管理のあり方を整理する。LDL-C高値による心血管疾患の発症リスク森野: 冠動脈疾患患者の2次予防において、脂質管理は重要な課題です。1989年に初のスタチン、2000年にストロングスタチンが登場したことで、われわれの脂質管理は大きく変化しました。一方、スタチンで抑制できない残存リスクも明らかとなり、新しい脂質異常症治療薬の開発も進んでいます。本誌の読者はすでに脂質管理について十分な知識をおもちと思いますが、そのうえで脂質管理をどう行うべきかについて、オピニオンリーダーとして多くのエビデンスを発信されている宮内先生にお話をうかがいながら、知識を深めていきたいと思います。宮内先生、よろしくお願いいたします。はじめにLDLコレステロール(LDL-C)に関する研究や考え方についてまとめていただけますでしょうか。宮内: LDL-Cが高ければ予後が悪く、下げれば予後が改善するというLDL-C仮説は、もともと高LDL-C血症が心筋梗塞のリスクであるという疫学研究、家族性高コレステロール血症(FH)では早発性の心筋梗塞が認められるという臨床的観察、動物にコレステロールを負荷すると粥状硬化が認められるという実験の3つが根拠となっています。ここでもう一度、近年の研究について見直してみます。疫学研究については、20代男子大学生約1,000人を30~40年追跡した米国の調査で、総コレステロール高値が心血管イベントに関与することが1993年に報告されました1)。この研究で注目されるのは、追跡後15~20年以降にイベント発現の差がみられ始めた点です。つまり、コレステロール高値が何年つづいているかの“積分”が重要であることを意味しています。このことは、家族性高コレステロール血症をみるとよくわかると思います。未治療の場合、非FHの脂質異常症では55歳で累積LDL-Cが心血管イベント発症閾値に達するのに対し、ヘテロ接合体FHでは35歳、ホモ接合体FHでは12.5歳で到達すると推定されています2)。日本の疫学調査としては、心血管疾患の既往歴のない一般住民を22年間追跡したCIRCS研究において、冠動脈疾患発症リスクが有意に増加するLDL-Cの閾値は80mg/dLであることが示されています3)。LDL-Cはthe lower, the better宮内: 次に、これまでのスタチンを用いた介入試験の結果をまとめると、2次予防も1次予防もイベント減少はLDL-C低下と相関していることは明らかです(図)4,5)。2次予防は70mg/dL、1次予防は100mg/dLまでのエビデンスが構築されています。CTT(Cholesterol Treatment Trialists')の2010年のメタ解析では、介入前のLDL-Cにかかわらずスタチンは心血管イベンの相対リスクを22%減少させることが認められました6)。急性冠症候群(ACS)は発症後早期からアトルバスタチン80mgを投与することで、非投与群に比べ心血管イベントが有意に低下することもMIRACL試験で示されています7)。こうしたことから、2012年のESC/EAS(欧州心臓病学会/欧州動脈硬化学会)脂質異常症管理ガイドラインでは「ハイリスク患者はLDL-C 100mg/dL以下、 2次予防ハイリスク患者はLDL-C 70mg/dL以下、ACSは入院中にストロングスタチン高用量をLDL-C値に関係なく早期に使用すること」が推奨されることになったわけです。そして、2013年、ACC/AHA(米国心臓病学会/米国心臓協会)は動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease : ASCVD)予防のためのコレステロール管理ガイドラインを発表し、スタチンの有用性が期待できる4つの患者群を示したうえで、ASCVD患者にはストロングスタチンを高用量で使用すべきと、いわゆる“fire and forget”の概念を提唱したのです。森野: この、fire and forgetの考え方はさまざまな議論を呼びましたね。宮内: これまでの研究で、LDL-C値は70mg/dL以下にすべきことはわかってきたけれども、それをターゲットにすることは、裏を返せば70mg/dL以下は介入しなくてよいということになります。しかしそのようなエビデンス、つまりどこまで下げればリスクが最も小さくなるかというエビデンスはないわけです。一方で、スタチンによりLDL-Cを下げすぎても死亡率は増加しないというデータはあります。こうしたことから、目標値は設定しないという考え方がでてきたのだと思います。英国のコホート研究でも、急性心筋梗塞(AMI)発症後にスタチンを中止すると、AMI前後ともスタチン未使用者より予後が有意に悪いことが示されています8)。この結果は、まさにfire and forgetの重要性を示唆していると思います。森野: 日本では、既往があればLDL-Cに関係なく高用量スタチンを投与するという欧米の考え方に違和感をおもちの先生方は少なくないと思いますが、その背景をあらためて振り返ってみると理解しやすいですね。宮内: LDL-Cは“lipid-modifying treatment、the lower, the better”が世界の潮流となっています。図 LDL-C値と冠動脈疾患イベント発症率の関係画像を拡大する超ハイリスク患者ではLDL-Cが低下してもスタチン継続を森野: そうしますと、2次予防ではLDL-Cが正常値でも介入が必要ということでしょうか。宮内: 2012年のCTTメタ解析では、5年間で起きる心血管イベントリスクで5群に分けてみても、リスクに関係なくスタチンによるLDL-C低下に比例して心血管イベントが減少することが示されました9)。どの群でも、心血管イベント数の減少率は同じです。しかしよくみると、絶対数は、当然ながらリスクが高いほど大きいことがわかります。また、最近、IMPROVE-IT試験の結果が発表され、ACSによる入院10日以内のハイリスク患者はスタチン+エゼチミブでLDL-C値を約55mg/dLに低下させると、スタチンのみで約70mg/dLに低下させた場合に比べ、心血管イベントのリスクが7年間で6.4%減少と、軽度ながら有意差が認められました10)。この試験は、スタチンにスタチン以外の薬剤を併用することでさらなるLDL-C低下をめざした治療の有効性が示された点で、たいへん注目されています。ただし、どのような患者群で脂質低下によるイベント減少効果が大きかったかを層別解析でみてみると、有意差が認められたのは糖尿病群と非糖尿病群の間だけでした。つまり、ACSかつ糖尿病という超ハイリスク患者ではthe lower, the betterが証明されたということです。実際は、全体でみても今回の結果はこれまでの臨床試験で示されているLDL-C低下と心血管イベント低下の直線上に乗っており、the lower, the betterを示した点で非常に価値の高い試験といえます。また、この結果を導いたのが特に超ハイリスク患者であることに大きな意義があると思います。森野: 見事にほぼ直線ですね。日本人でも、このthe lower, the betterがあてはまるでしょうか。宮内: 傾きは違うと思いますが、ほぼ直線になるという印象はもっています。これまで日本人でハードエンドポイントをめざした大規模臨床試験はありませんでしたが、現在、慢性冠動脈疾患患者を対象に積極的脂質低下療法と通常療法を比較するREAL-CAD試験が行われており、その結果が出ればはっきりすると思います。日本人でも超ハイリスク患者はthe lower, the better森野: 実際のところ、日本人の場合、LDL-Cの管理はどうすべきとお考えですか。宮内: 日本人のエビデンスには、ESTABLISH、JAPAN-ACS、COSMOS試験などがあります。前2者がACS、後者が安定型冠動脈疾患を対象に、冠動脈プラークの進展・退縮を検討した試験ですが、いずれも日本で使用可能なストロングスタチンの最大用量によりLDL-C値は80mg/dLまで低下し、プラーク退縮が認められました。代替エンドポイントですが、プラーク退縮に依存してイベントが減少することが示されており、2次予防ではスタチンの最大用量を少なくともある一定期間は用いたほうがよいと考えています。森野: 実地医家の多くが最大用量は使っていないのが現状ですね。宮内: 日本人のエビデンスがないからだと思います。森野: JAPAN-ACSでは、糖尿病群でプラークの退縮率が悪かったという結果でしたね。宮内: はい。おっしゃるとおり、糖尿病患者も非糖尿病患者もLDL-Cの低下はほぼ同じでしたが、プラーク退縮率は13%および19%で、糖尿病群が低値でした。そこで当院では、より大きなLDL-C低下により退縮率がどうなるかを検討するため、ACS患者を対象にスタチン+エゼチミブ併用療法とスタチン単独を比較するZEUS(eZEtimibe Ultrasound Study)を行いました。IMPROVE-IT試験が発表される前のことです。結果は、LDL-Cの低下は糖尿病の有無にかかわらず併用群で大きかったのですが、プラーク退縮率は非糖尿病患者では単独群と併用群で差はなかったのに対し、糖尿病患者では併用群のほうが有意に大きいことが認められました11)。森野: ACSや糖尿病患者では、より厳格なLDL-C低下をめざすことで大きなベネフィットが得られるということですね。宮内: はい。ZEUSの結果が意味するところはIMPROVE-IT試験と同じであり、日本人でも超ハイリスク患者ではthe lower, the betterといえるのではないかと思っています。さらなるLDL-Cの低下をめざして森野: the lower, the betterということは、いったいどこまで下げればよいのでしょうか。宮内: 胎児レベルまでLDL-Cを低下させると心血管イベントを減少できるのではないかと考えられています。つまり、イベントがゼロになるLDL-Cのポイントがあって、それが胎児の値の25~29mg/dLといわれています12, 13)。そこで、LDL-Cを約30mg/dLまで低下させたらどうなるかという仮説のもと、盛んに研究が行われています。そのなかで注目されているのが、LDL-C受容体とPCSK9です。PCSK9は、周知のとおり2003年にFHの原因遺伝子として同定されたプロテアーゼで、LDL受容体と結合しこれを分解します。PCSK9があるとLDL-Cは肝臓表面のLDL受容体に結合し受容体ごと貪食されるため、LDL受容体のリサイクルが障害され血中からのLDL-C取り込みが低下、すなわちLDL-C値が増加しますが、PCSK9がないとLDL-Cのみが貪食されLDL受容体はリサイクルされて肝臓表面に戻るため血中からのLDL-C取り込みが高まり、LDL-C値が低下します。このメカニズムに着目して開発されたのがPCSK9阻害薬です。日本でも抗PCSK9モノクローナル抗体製剤の臨床開発が進んでいます。evolocumabはすでに2015年3月に承認申請がなされ、alirocumabは第III相試験を終了し、ほかにbococizumabとLY3015014はそれぞれ第II/III相および第II相試験が行われているところだと思います(CareNet.com編集部注:本記事は2015年9月発行誌より転載)。最近、evolocumabとalirocumabの長期成績が発表され、どちらもスタチンに併用することでLDL-Cを低下させ、心血管イベントを減少させることが示唆されました。この2剤の臨床試験24件、合計約1万例のメタ解析でも、全死亡、心血管死、心筋梗塞ともに約50%リスクを減少すると報告されています14)。森野: ここまでのところをまとめますと、LDL-Cの高さと持続期間の積分が重要という概念は理解しやすく、介入後もやはり10年、15年というスパンで考えなくてはならないことがよくわかりました。将来的にはストロングスタチンよりさらに強力にLDL-Cをコントロールできる時代が来ると思われますが、いまは高用量のストロングスタチンがベストセラピーであり、若年者ほどより早期に介入されるべきということですね。宮内: はい。若年といっても2次予防の患者さんは40代、30代後半になると思いますが、LDL-C値に関係なく積極的に介入すべきだと考えています。HDL-Cを増やしても心血管リスクは減らない森野: 次にHDLコレステロール(HDL-C)の話題に移りたいと思います。一般的に若年者はHDL-Cが低くLDL-Cはそれほど高くないので、薬物介入が難しいのが現状です。宮内: そうですね、特に若年者ではHDL低値が非常に影響することは事実だと思います。日本人を対象とした調査では、HDL-Cが40mg/dL以下で虚血性心疾患、脳梗塞の合併率が高いことが示されています。森野: 残存リスクとしてHDL-Cはやはり重要なのでしょうか。つまり、スタチンを十分使っていてもHDL-C低値はイベントリスクに関与するんでしょうか。宮内: その点について非常に重要な示唆を与えてくれるのが、TNT試験の事後解析です。LDL-Cで層別化した場合、70mg/dL未満であってもHDL-Cが最低5分位群は最高5分位群より心血管疾患リスクが高いことが示されました15)。やはりカットオフ40mg/dLを境に、HDLが低くなるとイベントが多くなることが明らかになっています。森野: そうすると、次のステップは介入ということになりますが、その方法はありますか。宮内: HDL-Cの増加にはコレステリルエステル転送タンパク(CETP)が重要と考えられています。簡単にいえば、HDL-CはCETPによって分解されるので、これを阻害すればHDL-Cが増え、LDL-Cを引き抜いてくれるだろうという理論になるわけです。実際、CETP阻害薬としてdalcetrapib、torcetrapib、anacetrapib、evacetrapibなどの開発が進められています。しかし残念ながら、dalcetrapibはHDL-Cが30~40%増加したものの心血管イベント抑制効果は認められず、torcetrapibもHDL-Cが増加しLDL-Cが減少したものの全死亡と心血管死が増加し、いずれも開発中止となりました。そのほか、ナイアシンやフィブラート系薬でも検討されていますが、いずれにおいても心血管イベント低下は示されていません。HDL-C低値は、確かに悪影響を及ぼしているけれども、薬物介入によってHDL-Cを増加させてもポジティブな結果は得られていない、というのが現状です。森野: CETP阻害薬の場合、HDLはmg/dLという量でみると増えていますが、働く粒子の数はむしろ減っているのではないかという議論がありますね。宮内: 賛否両論があって、現時点でははっきりした結論は出ていません。森野: LDL-Cをターゲットにして、結果としてHDL-Cが増加することがあると思いますが、それはどうなのでしょうか。宮内: 最近、スタチンやナイアシン投与によりHDL-Cが有意に増加するけれども、メタ回帰分析を行うとLDL-Cで調整したHDL-C増加はイベントリスクと関連していないことが報告されています16)。森野: ということは、スタチンで副次的にHDL-Cが増えることは意味がないと。宮内: はい。もともとその増加量は絶対値でみるとわずかですから、ポジティブな結果は出ないと思います。中性脂肪も介入の効果は確立されていない森野: 中性脂肪の管理についてはいかがでしょうか。LDL-Cと中性脂肪の両方が高い場合はどうするか、いまだに悩ましい問題です。宮内: 中性脂肪が残存リスクであることは間違いありません。当院で1984~1992年に血行再建を行った連続症例を約11年追跡したところ、試験開始時の空腹時中性脂肪値が心血管死と有意に関連しており17)、200mg/dLがカットオフであることが推察されました。実はPROVE IT-TIMI22試験の事後解析でも、LDL-C 70mg/dL未満の症例のみでは中性脂肪200mg/dL以上で200mg/dL未満よりACS後30日以内の心血管イベントリスクが有意に高いことが報告されています18)。これらの結果から、2次予防における中性脂肪のカットオフ値は200mg/dLと考えられます。ただし、介入試験のデータはほとんどないのが現状です。唯一、ポジティブな結果が得られているのは高リスク2型糖尿病患者を対象としたACCORD試験で、中性脂肪204mg/dL以上かつHDL-C 34mg/dL以下の患者のみフィブラート併用の有効性が認められました19)。森野: そうしますと、HDL-Cも中性脂肪も残存リスクとしての価値があることはわかっているけれども、薬物介入の有効性は証明できていないので、脂質管理において重要なのは、やはりスタチン高用量といえるわけですね。宮内: ええ。ただし、運動と食事療法が重要であることはいうまでもありません。脂肪酸の重要性と介入の可能性森野: 食事療法といえば、最近は脂肪酸がたいへん注目されています。現在、宮内先生が中心となり大規模介入試験も進行中ですが、その話題も含め脂肪酸に関する知見をまとめていただけますか。宮内: 脂肪酸が注目されるきっかけになったのは、全国11保健所を拠点に多くの医療機関が共同で行っている長期コホート研究(JPHC研究)です。この研究は、心血管疾患と癌の既往のない40~59歳の日本人約41,000人を1990年~2001年まで追跡したもので、魚食に由来するn-3系脂肪酸摂取が2.1g/日と多い群は、少ない群(0.3g/日)に比べCHD発症リスクが有意に低いことが示されました20)。興味深いことに、血中EPA・DHA濃度が高い方は脂質コアが小さくて線維性皮膜が厚く、プラーク破綻を生じにくい性状であることもわかってきました。また、久山町研究でも、血清EPA/AA比は心血管疾患発症や死亡の有意な危険因子であることが示されました。血清EPA/AA比はEPA摂取量に依存することから、やはりEPAを多く摂取するとイベントが少ないといえると思います。では介入したらどうなるか。動物実験では、ApoE欠損マウスに西洋食または西洋食+EPAを13週間投与すると、動脈硬化病変は後者が前者の1/3と有意に少ないことが認められました。経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行した脂質異常を合併する安定狭心症またはACS患者を対象にスタチンまたはスタチン+高純度EPAを投与しプラークの性状を検討した報告では、9か月後、スタチン単独群に比べEPA併用群で線維性被膜厚の有意な増加、脂質性プラークの角度と長さの有意な減少が認められ、EPAは不安定プラークを安定化することが示されています。さらに、JELIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)でも、冠動脈疾患の既往歴のある患者はスタチン+EPA併用により非併用と比べ心血管イベントが19%有意に減少することが認められ、その後の解析でも血漿EPA/AA比が高い群ほど冠動脈イベントの発症リスクは低く、1番高い群(血漿EPA/AA比1.06以上)は1番低い群(血漿EPA/AA比0.55以下)に比べ、突然心臓死または心筋梗塞の発症リスクが42%有意に低下することが示されました。これらの結果を踏まえ、現在、RESPECT-EPA試験が行われています。慢性冠動脈疾患患者約4,000例を対象に、対照群(通常治療)とEPA群(通常治療+高純度EPA製剤追加投与)にランダムに割り付けし、心血管イベント抑制効果を比較検討するもので、EPA/AA比とイベント発症との関連も検証する予定です。森野: たいへん興味深い試験で、結果が楽しみです。いまおっしゃったようなデータに基づいて考えると、魚を食べるという日本の食習慣が変化してきていることに危惧を感じますね。これは食育という学校教育の課題ではないかと常々思っています。宮内: 私も同じ意見です。教育、文化の見直しは非常に重要だと感じています。脂質管理で重要なのはー今後の課題森野: 最後に、循環器医に必要な知識としてなにかメッセージをお願いいたします。宮内: わが国における現在の動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、2次予防におけるLDL-Cの管理目標値が100mg/dL未満と設定されていますが、根拠となる国内の大規模臨床試験はありませんし、しかも層別化されていないので不十分だと考えています。また、1次予防でいうところのハイリスク、すなわち糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患については特に考慮すべきと思います。これらハイリスク群は、1次予防においてLDL-C 120mg/dL未満と設定されていますが、2次予防と同じように扱い、スタチンの使用や生活習慣の改善に対する介入が大切だと思います。こうしてあらためて振り返ってみますと、繰り返しになりますが、食育をはじめとした教育の問題が重要で、今後は若い人に対してどのように啓発していくかも大きな課題といえるでしょうね。森野: 本日は「脂質管理のいまを整理する」というテーマで宮内先生とお話をしてきました。LDL-C、HDL-C、中性脂肪、そして脂肪酸と幅広くレビューしていただき、脂質管理についての知識を整理するとともに、現在のわが国における脂質管理の問題点や課題も認識できたのではないかと思います。宮内先生、ありがとうございました。文献1)Klag MJ et al. N Engl J Med 1993; 328: 313-318.2)Nordestgaard BG et al. Eur Heart J 2013; 34: 3478-3490a.3)Imano H et al. Prev Med 2011; 52: 381-386.4)Rosenson RS. Exp Opin Emerg Drugs 2004; 9: 269-279.5)LaRosa JC et al. N Engl J Med 2005; 352: 1425-1435.6)CTT Collaboration. Lancet 2010; 376: 1670-1681.7)Schwartz GG et al. JAMA 2001; 285: 1711-1718.8)Daskalopoulou SS et al. Eur Heart J 2008; 29: 2083-2091.9)CTT Collaboration. Lancet 2012; 380: 581-590.10)Cannon CP et al. N Engl J Med 2015; 372: 2387-2397.11)Nakajima N et al. IJC Metab Endocr & Endocrine 2014; 3: 8-13.12)清島 満ほか. 臨床病理 1988; 36: 918-922.13)Blum CB et al. J Lipid Res 1985; 26: 755-760.14)Navarese EP et al. Ann Intern Med 2015; 163: 40-51.15)Falk E et al. N Engl J Med 2007; 357: 1301-1310.16)Hourcade-Potelleret F et al. Heart 2015; 101: 847-853.17)Kasai T et al. Heart 2013; 99: 22-29.18)Miller M et al. J Am Coll Cardiol 2008; 51: 724-730.19)ACCORD Study Group. N Engl J Med 2010; 362: 1563-1574.20)Iso H et al. Circulation 2006; 113: 195-202.

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術後補助化学療法が有効なStageII大腸がんのバイオマーカー/NEJM

 StageII大腸がんのうち、腫瘍細胞にcaudal-type homeobox transcription factor 2(CDX2)の発現がみられない患者は再発リスクが高く、術後補助化学療法からベネフィットを得る可能性が高いことが、米国・コロンビア大学のPiero Dalerba氏らの検討で明らかとなった。高リスクStageII大腸がんの同定は、術後補助化学療法を要する患者の選択において重要とされる。マイクロアレイによる幹細胞や前駆細胞由来の多遺伝子発現解析が期待されているが、臨床での使用は困難だという。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。臨床で使用可能なバイオマーカーを探索、検証 研究グループは、臨床で使用できるStageII/III大腸がんの予後を予測するバイオマーカーを確立するための検討を行った(National Comprehensive Cancer Networkなどの助成による)。 新たなバイオインフォマティクスのアプローチを用いて、遺伝子発現アレイで結腸上皮の分化のバイオマーカーを探索し、臨床での診断検査に使用可能かを基準に、候補遺伝子を順位付けした。 独立のレトロスペクティブなStageII/III大腸がん患者コホートのサブグループ解析を行い、最上位の候補遺伝子と無病生存(DFS、転移・再発のない生存)および術後補助療法のベネフィットとの関連を検証した。陰性例は再発リスクが高く、補助化学療法の効果が高い スクリーニング検査では、転写因子CDX2が最上位であった。2,115の腫瘍検体のうち87検体(4.1%)ではCDX2の発現を認めなかった。 探索データセットは466例で、そのうちCDX2陰性大腸がんが32例(6.9%)、陽性大腸がんは434例(93.1%)であった。5年DFS率は、陰性例が41%であり、陽性例の74%に比べ有意に不良であった(p<0.001)。このうち病理所見のある216例で多変量解析を行ったところ、CDX2陰性例は陽性よりも再発リスクが有意に高かった(再発のハザード比[HR]:3.44、95%信頼区間[CI]:1.60~7.38、p=0.002)。 検証データセットは314例で、CDX2蛋白陰性大腸がんが38例(12.1%)、陽性大腸がん患者は276例(87.9%)であった。5年DFS率は、陰性例が48%と、陽性例の71%に比し有意に不良であり(p<0.001)、全生存率にも有意差がみられた(33 vs. 59%、p<0.001)。多変量解析では、陰性例は陽性例よりも再発リスクが有意に高かった(HR:2.42、95%CI:1.36~4.29、p=0.003)。 この2つのサブグループのいずれにおいても、これらの知見は患者の年齢、性別、腫瘍のStageやGradeとは独立していた。 StageII大腸がん患者に限定した5年DFS率の解析を行ったところ、探索データセットではCDX2陰性例(15例)が49%と、陽性例(191例)の87%に比べ有意に低く(p=0.003)、検証データセットでは陰性例(15例)が51%であり、陽性例(106例)の80%に比し有意に低値であった(p=0.004)。 全患者コホートの統合データベースの解析では、5年DFS率はCDX2陰性StageII大腸がんで補助化学療法を受けた23例が91%と、補助化学療法を受けなかった25例の56%よりも高値を示した(p=0.006)。 著者は「CDX2発現の欠損により、術後補助化学療法からベネフィットが得られると考えられる高リスクのStageII大腸がん患者のサブグループが同定された」とまとめ、「通常は手術のみとされるStageII大腸がんのうち、CDX2陰性例には術後補助化学療法が治療選択肢となる可能性がある。本試験は探索的でレトロスペクティブな検討であるため、さらなる検証を要する」と指摘している。

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てんかんと自殺企図、病因は共通している

 てんかん発症患者は非発症者と比べて、てんかん診断前でも初回自殺企図のリスクが2.9倍高く、また再発リスクも1.8倍高いことが、米国・コロンビア大学のDale C. Hesdorffer氏らによる、住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。JAMA Psychiatry誌2016年1月号の掲載報告。 先行研究で、てんかん患者は自殺リスクが5倍高いことが示されているが、自殺企図に関してや、精神障害や抗てんかん薬が自殺企図リスクに影響を及ぼすかどうかは、ほとんど明らかとなっていない。そこで研究グループは、自殺企図とてんかんとの関連の程度を評価するため、てんかん診断以前に初回の自殺企図および2回目の自殺企図(自殺企図の再発)を試みた患者(症例患者)と、てんかんを認めず初回および再発の自殺企図がみられた患者(対照患者)を比較する検討を行った。また、同関連について、精神障害の併存、および抗てんかん薬処方の除外による影響についても評価した。検討は、住民ベースの後ろ向きコホート研究にて、英国のClinical Practice Research Datalinkを用いて、一般診療を受けている人から症例患者と対照患者を特定して行った。症例患者は1987~2013年に診断を受けた10~60歳。対照患者は、各症例患者のてんかん診断日以前にてんかんの診断を受けていない、誕生年、性別、一般診療を適合させた各4例(症例患者1例に対し、対照患者4例)を無作為に選定した。主要評価項目は、症例患者と対照患者の初回自殺企図および自殺企図再発のハザード比(HR)であった。 主な結果は以下のとおり。・症例患者1万4,059例(年齢中央値:36歳)vs.対照患者5万6, 184例(同36歳)において(年齢範囲は両群とも10~60歳)、症例患者のてんかん診断前における初回自殺企図リスクは2.9倍(95%信頼区間[CI]:2.5~3.4)高率であった。・症例患者278例(年齢中央値:37歳)vs.対照患者434例(同35歳)において(年齢範囲は両群とも10~61歳)、症例患者のてんかん診断前における自殺企図再発リスクは1.8倍(95%CI:1.3~2.5)高率であった。・診断日以前の抗てんかん薬処方を除外しても、結果に意味のある変化は認められなかった。・精神障害の有無別の解析でも、結果に意味のある変化は認められなかった。 著者らは、「てんかんと自殺企図およびその再発の関連が発症前でもみられたことは、両者の生物学的基盤が共通していることを示唆するものである」と述べ、「自殺企図およびその再発は、抗てんかん薬の服用がなくても、また精神障害の診断がなくても関連がみられ、機序は不明だが病因が共通しているとのエビデンスを強化する所見が示された」とまとめている。関連医療ニュース 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか 寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきか

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高齢肥満の左室駆出率保持心不全患者、食事・運動への介入効果/JAMA

 臨床的に安定している左室駆出率保持心不全(HFPEF)の高齢肥満患者に対して、20週間にわたるカロリー食事制限もしくは有酸素運動トレーニングによる介入は、運動耐容能を改善するとの無作為化試験の結果が、米国・ウェイクフォレスト大学医学部のDalane W. Kitzman氏らにより報告された。介入効果は相加的に認められ、またQOLへの影響はみられなかった。心不全を有する高齢患者の割合は高く、またHFPEF患者の80%以上が過体重であるという。運動耐容能の低下は慢性HFPEF患者でみられる主要な症状で、QOL低下の重大要素とされている。JAMA誌2016年1月5日号掲載の報告。カロリー制限食または有酸素運動の介入を20週間 試験は2×2要因法にて、2009年2月~14年11月に、米国都市部の大学病院で行われた。577例がスクリーニングを受け、最終的に100例の高齢肥満患者を対象に、20週間にわたるカロリー制限(食事群)または有酸素運動(運動群)もしくは両方の介入(運動+食事群)を行った(2週ごとに電話で注意喚起)。 主要アウトカムは2つで、最大酸素摂取量(VO2;mL/kg/分)で測定した運動耐容能改善、およびMinnesota Living with Heart Failure(MLHF)質問票(スコア範囲:0~105、高スコアほど心不全関連QOL低下を示す)とした。付加的な運動耐容能の改善効果がみられ、QOLへは影響なし 被験者100例は、平均年齢67(SD 5)歳、BMI 39.3(5.6)、HFPEFは臨床的に安定していた。26例が運動群に、24例が食事群に、25例が運動+食事群、25例が対照群に無作為に割り付けられ、合計で92例が試験を完了した。運動介入への参加率は84%(SD:14%)、食事介入のアドヒアランスは99%(SD:1%)であった。 主要効果分析の結果、最大VO2は両介入群ともに有意な増大が認められた。運動群は1.2mL/kg/分(95%信頼区間[CI]:0.7~1.7)、食事群は1.3mL/kg/分(同:0.8~1.8)であった(両群ともp<0.001)。また、運動+食事群の効果は相加的にみられ、最大VO2は2.5mL/kg/分であった。 一方、MLHF質問票スコアについては、両群とも統計的に有意な変化はみられなかった。食事群のスコアの変化は-6(95%CI:-12から1、p=0.08)、運動群は-1(-8~5、p=0.70)であった。 最大VO2の変化は、BMI変化と正の相関がみられ(r=0.32、p=0.003)、また大腿筋(筋肉内脂肪)変化との正の相関がみられた(r=0.27、p=0.02)。 試験に関連した重大有害事象の報告はなかった。 なお、体重は、食事群が7%(7kg、SD 1)減量し、運動群は3%(4kg、SD 1)減量、運動+食事群は10%(11kg、SD 1)の減量がみられた。

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アルツハイマー病へのBZD、使用頻度の追跡調査

 ベンゾジアゼピンおよび関連する薬剤(BZDR)は、アルツハイマー病(AD)の特定の症状を治療するために用いられることがある。しかし、高齢者ではBZDR使用に関連するリスクが高くなる。ADに対するBZDR使用についての報告はしばしばあるが、先行研究は、ADに対するBZDR使用の頻度に焦点を当てたものではなかった。東フィンランド大学のLaura Saarelainen氏らは、ADの有無別にBZDRの使用頻度について、5年間の追跡調査を行った。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2015年10月17日号の報告。 対象は、フィンランド全土のレジスタベースMEDALZコホートより得られた2005~11年にADの臨床的診断を受けたすべてのAD症例7万718例、およびそれにマッチさせた対照者。ベンゾジアゼピン(ロラゼパム、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ニトラゼパム、oxazepam、temazepam)およびZ薬(ゾルピデム、ゾピクロン)を含むBZDRの使用頻度を、AD診断2年前~診断3年後のコホートより調査した。さらに、BZDR処方開始についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・AD患者におけるBZDRの使用頻度は、AD診断12ヵ月前から高くなり、AD診断6ヵ月後でピークを迎えた(発生率比[IRR]:2.6、95%CI:2.5~2.8)。・ベンゾジアゼピンは、AD患者でより頻繁に開始されており、AD診断後6ヵ月の時点で使用頻度はピークに達し(IRR:4.5、95%CI:4.1~4.9)、対照者と比較し診断3年後まで3倍以上高かった。 結果を踏まえ、著者らは「BZDRによる早期対症療法は、AD治療ガイドラインに反している。BZDR早期治療により認知機能が損なわれることから、AD治療の有用性モニタリングが複雑化している可能性がある」とまとめている。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は 長期ベンゾジアゼピン使用は認知症発症に影響するか アルツハイマー病へ進行しやすい人の特徴は  担当者へのご意見箱はこちら

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