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実臨床で安全性が高いDOACは?/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らは、プライマリケアにおいて、直接経口抗凝固薬(DOAC)と出血・虚血性脳卒中・静脈血栓塞栓症・全死因死亡リスクの関連を、ワルファリンと比較検証する前向きコホート研究を行い、概してアピキサバンが最も安全で大出血・頭蓋内出血・消化管出血のリスクが減少したのに対して、リバーロキサバンと低用量アピキサバンは全死因死亡リスクの上昇と関連していたことを明らかにした。これまで、無作為化比較試験でワルファリンに対するDOACの非劣性が示されていたが、実臨床での観察試験はほとんどが心房細動患者を対象としていた。BMJ誌2018年7月4日号掲載の報告。DOAC 3剤とワルファリンの出血リスクを英国プライマリケアベースで比較 研究グループは、QResearchおよびClinical Practice Research Datalink(CPRD)の2つのデータベースから、それぞれ2011年1月〜2016年10月および3月に、英国のプライマリケアにおいてワルファリン(13万2,231例)、ダビガトラン(7,744例)、リバーロキサバン(3万7,863例)、アピキサバン(1万8,223例)を新規に処方された患者(新規処方前12ヶ月以内に抗凝固薬を処方されたことのある患者は除外)を特定し、心房細動患者と非心房細動患者に分け分析した。 主要評価項目は、入院や死亡に至った大出血。副次評価項目は虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症および全死亡であった。DOACではアピキサバンが最も安全 心房細動患者(10万3,270例)では、ワルファリンと比較してアピキサバンが大出血(補正後ハザード比[aHR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.54~0.79)および頭蓋内出血(0.40、0.25~0.64)のリスク減少と関連していることが、また、ダビガトランは頭蓋内出血(0.45、0.26~0.77)のリスク減少と関連していることが認められた。一方、全死因死亡リスクの上昇が、リバーロキサバン内服患者(1.19、95%CI:1.09~1.29)、および低用量アピキサバン内服患者(1.27、95%CI:1.12~1.45)で確認された。 非心房細動患者(9万2,791例)では、ワルファリンと比較してアピキサバンが大出血(aHR:0.60、95%CI:0.46~0.79)、全消化管出血(0.55、0.37~0.83)、上部消化管出血(0.55、0.36~0.83)のリスク減少と関連していた。また、リバーロキサバンは、頭蓋内出血のリスク減少と関連がみられた(0.54、0.35~0.82)。一方、全死因死亡リスクの上昇が、リバーロキサバン内服患者(1.51、1.38~1.66)および低用量アピキサバン内服患者(1.34、1.13~1.58)において確認された。 なお著者は、英国のプライマリケアに限定されたものであり、アドヒアランスや処方の適応症に関する情報が不足していることなどを研究の限界として挙げている。

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NOACで頭蓋内出血は少なくなる?(解説:後藤信哉氏)-810

 各種NOACの第III相ランダム化比較試験にて、INR 2-3を標的としたワルファリン群に比較してNOAC群にて頭蓋内出血が少ないとされても、筆者の心には響かなかった。INR 1.9であればワルファリンを増量し、INR 2.9であってもワルファリンを減量しないような治療は、自らの日常診療と大きく乖離していたためである。また、NOAC登場前の観察研究にて、日本も世界もワルファリン使用時の頭蓋内出血発現率は0.2%程度とされていたので、その3倍も頭蓋内出血が起こることを示した第III相試験のメッセージは「INR 2-3を標的としたワルファリン治療は頭蓋内出血を増やす」のみであった。 米国には各種registryがある。本研究はAHAが主導するGet With The Guidelines-Strokeのデータベースを用いた。第一著者はDuke大学に留学している日本人である。データベースはしっかり構築されており、Duke大学の解析チームのデータ解析は信頼できる。後ろ向きの解析であるためN Engl J Med, Circulationには届かない。JAMAではデータベースの大きさと質、トピックの重要性が重視されたと考える。 頭蓋内出血にて入院した141,311例の対象症例のうち、15%弱は抗凝固薬使用中の症例であった。抗凝固薬使用中の症例のほうが高齢で、心房細動の合併も多かった。しかし、これらのリスク因子を補正しても、院内死亡率は抗凝固療法使用歴のある患者で高かった。ワルファリン使用歴の長い私はINR 2-3を標的としたワルファリン治療をしたことがない。多くの症例はINR 1.7前後で2を超える症例も少ない。ワルファリン群に比較してNOAC群のほうが、院内死亡率が低いとしているが、私のように低いINRにコントロールしている場合はNOACと差がない。 4つのNOACの開発試験に強く寄与して、また実臨床においてNOACが広く使用されていく現状を観察して、一貫して自らの中で変化しなかったNOACの評価は「NOACは頭蓋内出血を増加させる」「INR 2-3を標的としたワルファリン治療では容認できない重篤な出血リスクをもたらす」の2つであった。抗凝固療法は、重篤な出血リスクを増やす怖い介入である。禁煙して運動習慣をつけ、各種リスク因子を補正して総合的に脳卒中、血栓塞栓イベントを減らす努力を継続すべきである。

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脳内出血後の院内死亡、ワルファリンvs. NOAC/JAMA

 脳内出血(ICH)患者の院内死亡リスクを、発症前の経口抗凝固薬(OAC)で比較したところ、OAC未使用群に比べ非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)あるいはワルファリンの使用群で高く、また、NOAC使用群はワルファリン使用群に比べ低いことが示された。米国・デューク大学メディカルセンターの猪原拓氏らが、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)による登録研究Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)のデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。NOACは血栓塞栓症予防としての使用が増加しているが、NOAC関連のICHに関するデータは限られていた。JAMA誌オンライン版2018年1月25日号掲載の報告。脳内出血患者約14万1,000例で、抗凝固療法と院内死亡率との関連を解析 研究グループはGWTG-Strokeに参加している1,662施設において、2013年10月~2016年12月にICHで入院した患者を対象に、ICH発症前(病院到着前7日以内)の抗凝固療法による院内死亡率について解析した。 抗凝固療法は、ワルファリン群・NOAC群・OAC未使用群に分類し、2種類の抗凝固薬(ワルファリンとNOACなど)を用いていた患者は解析から除外した。また、抗血小板療法については、抗血小板薬未使用・単剤群・2剤併用(DAPT)群に分類し、3群のいずれにも該当しない患者は解析から除外した。 解析対象は14万1,311例(平均[±SD]68.3±15.3歳、女性48.1%)で、ワルファリン群1万5,036例(10.6%)、NOAC群4,918例(3.5%)。抗血小板薬(単剤またはDAPT)を併用していた患者は、それぞれ3万9,585例(28.0%)および5,783例(4.1%)であった。ワルファリン群とNOAC群は、OAC未使用群より高齢で、心房細動や脳梗塞の既往歴を有する患者の割合が高かった。NOAC群は、未使用群よりは高いがワルファリン群よりも低い 急性ICHの重症度(NIHSSスコア)は、3群間で有意差は確認されなかった(中央値[四分位範囲]:ワルファリン群9[2~21]、NOAC群8[2~20]、OAC未使用群8[2~19])。 補正前院内死亡率は、ワルファリン群32.6%、NOAC群26.5%、OAC未使用群22.5%であった。OAC未使用群と比較した院内死亡リスクは、ワルファリン群で補正後リスク差(ARD)9.0%(97.5%信頼区間[CI]:7.9~10.1)、補正後オッズ比(AOR)1.62(97.5%CI:1.53~1.71)、NOAC群でARDは3.3%(97.5%CI:1.7~4.8)、AORは1.21(97.5%CI:1.11~1.32)であった。 ワルファリン群と比較して、NOAC群の院内死亡リスクは低かった(ARD:-5.7%[97.5%CI:-7.3~-4.2]、AOR:0.75[97.5%CI:0.69~0.81])。 NOAC群とワルファリン群の死亡率の差は、DAPT群(NOAC併用群32.7% vs.ワルファリン併用群47.1%、ARD:-15.0%[95.5%CI:-26.3~-3.8]、AOR:0.50[97.5%CI:0.29~0.86])において、抗血小板薬未使用群(NOAC併用群26.4% vs.ワルファリン併用群31.7%、ARD:-5.0%[97.5%CI:-6.8%~-3.2%]、AOR:0.77[97.5%CI:0.70~0.85])より数値上では大きかったが、交互作用p値は0.07で統計的有意差は認められなかった。 なお、著者は、GWTG-Strokeの登録データに限定していることや、NOAC群の症例が少なく検出力不足の可能性があることなどを、研究の限界として挙げている。

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心房細動患者の脳卒中予防に対するDOACのメタ解析/BMJ

 心房細動(AF)患者に対する直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の脳卒中予防効果について、英国・ブリストル大学のJose A. Lopez-Lopez氏らがネットワークメタ解析による有効性、安全性および費用対効果の解析を行い、BMJ誌2017年11月28日号で発表した。解析の結果、DOACはクラスとしてワルファリンよりも、AF患者の脳卒中および死亡リスクを抑制し、国際標準比(INR)2.0~3.0維持用量での大出血および頭蓋内出血に関してより安全であり、数種のDOACはコスト高にもかかわらずネットベネフィットが認められることが示された。予想される増分純便益(incremental net benefit:INB)は、アピキサバン5mgを1日2回投与が最も高く、次いでリバーロキサバン20mgを1日1回、エドキサバン60mgを1日1回、ダビガトラン150mgを1日2回であったという。ネットワークメタ解析で23試験を包含し有効性、安全性、費用対効果を解析 検討は、Medline、PreMedline、Embase、The Cochrane Libraryをデータソースとし、AF患者の脳卒中予防効果に対するDOAC、ビタミンK拮抗薬または抗血小板薬の使用を評価した、公表されている無作為化試験をシステマティックレビュー検索して行われた。 検索により、患者9万4,656例が関与した23試験が適格基準を満たし、解析に組み込まれた。このうち、INR 2.0~3.0目標達成用量についてDOACとワルファリンを比較検討していたのは13試験であった。また、解析に包含された介入法は27種あった。 被験者は、平均年齢70.0歳、男性63.3%、BMI値28.0、脳卒中既往20.2%(いずれも中央値)などであった。また、ワルファリン群の治療期間中に占めたTTR(time in therapeutic range)の割合は、中央値63.8%(範囲:45.1~83.0)であった。大半のアウトカムでアピキサバン5mgの1日2回投与が最高位にランク 有効性と安全性に関する解析の結果、ワルファリンと比較して脳卒中または全身性塞栓症リスクを抑制したのは、アピキサバン5mgを1日2回(オッズ比[OR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.66~0.94)、ダビガトラン150mgを1日2回(0.65、0.52~0.81)、エドキサバン60mgを1日1回(0.86、0.74~1.01)、リバーロキサバン20mgを1日1回(0.88、0.74~1.03)であった。DOAC間における比較では、ダビガトラン150mgを1日2回よりも、エドキサバン60mgを1日1回(1.33、1.02~1.75)、リバーロキサバン20mgを1日1回(1.35、1.03~1.78)が、脳卒中または全身性塞栓症リスクが高いとのエビデンスが認められた。 全死因死亡リスクは、ワルファリンと比較して、すべてのDOACで抑制効果が認められた。 大出血リスクは、ワルファリンと比較して、アピキサバン5mgを1日2回(0.71、0.61~0.81)、ダビガトラン110mgを1日2回(0.80、0.69~0.93)、エドキサバン30mgを1日1回(0.46、0.40~0.54)、エドキサバン60mgを1日1回(0.78、0.69~0.90)で低かった。頭蓋内出血リスクは、ほとんどのDOACでワルファリンよりも大幅に低かった(ORの範囲:0.31~0.65)。一方で消化管出血リスクがワルファリンよりも高いDOACが一部で認められた(ダビガトラン150mgを1日2回のOR:1.52[95%CI:1.20~1.91]、エドキサバン60mgを1日1回のOR:1.22[1.01~1.49]など)。 アピキサバン5mgを1日2回は、大半のアウトカムについて最高位にランクしており、ワルファリンとの比較によるINBは7,533ポンドで、費用対効果も最も認められた(その他投与群のINBは、ダビガトラン150mgを1日2回が6,365ポンド、リバーロキサバン20mgを1日1回が5,279ポンド、エドキサバン60mgを1日1回が5,212ポンド)。 著者は、「ネットワークメタ解析はDOACの直接比較の試験を不要なものとし、AF患者における脳卒中予防に関する選択肢を知らしめてくれるものである」と述べ、「作用機序が類似するDOACの中で、アピキサバンの常用量が最も有効かつ安全であり、費用対効果があると思われた」とまとめるとともに、「さらなる長期データで安全性に関する洞察を深め、DOACからベネフィットを得られない患者を特定し、各DOACの中和薬を開発することが重要である」と指摘している。

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DOACエドキサバン、がんの血栓症で低分子ヘパリンに非劣性

 第一三共株式会社(本社:東京都中央区)は2017年12月13日同社のニュースリリースで、抗凝固薬エドキサバン(商品名:リクシアナ)による、がん合併静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象としたHokusai-VTE CANCER試験の結果において、エドキサバンが標準治療薬である低分子量ヘパリンのダルテパリン(国内未承認)に対して有効性および安全性に係わる主要評価項目において非劣性を達成したと発表。 本試験の結果は、米国ジョージア州アトランタで開催した第59回米国血液学会(ASH)年次総会のlate breaking sessionで発表されると共に、New England Journal of Medicineにオンライン掲載された。  Hokusai-VTE CANCER試験は、欧米を中心とする海外13ヵ国において、がんを合併したVTE患者1,050名を対象に、1日1回経口投与のエドキサバンまたは1日1回皮下注射のダルテパリンを12ヵ月間投与し、両剤の有効性(VTEの再発)および安全性(重大な出血)を比較したもの。  本試験の主要評価項目(VTEの再発および重大な出血の複合発現率)において、エドキサバン群は12.8%(522名中67名)、ダルテパリン群は13.5%(524名中71名)、リスク差(エドキサバン群の発現率-ダルテパリン群の発現率)は-0.7%となり、エドキサバンのダルテパリンに対する非劣性が検証された。リスク差(-0.7%)の内訳は、VTEの再発のリスク差は-3.4%、重大な出血のリスク差は2.9%であった。特に重篤度の高い重大な出血(重篤度カテゴリー3~4)の発現数はエドキサバン群で12名、ダルテパリン群で12名であった。 VTEは、がん患者において2番目に多い死亡原因となっている。現在、がんを合併したVTE患者の欧米における治療ガイドラインは、標準治療として低分子量ヘパリン(皮下注射)の6ヵ月以上の投与を推奨しているが、服薬アドヒアランス上の未充足ニーズがある。■関連記事リクシアナ効能追加、静脈血栓症、心房細動に広がる治療選択肢DOAC時代のVTE診療の国内大規模研究、再発リスクの層別化評価と出血リスク評価の重要性が明らかに/日本循環器学会

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出血こそが問題なのだ:減量のメリット(解説:後藤信哉氏)-775

 欧米では動脈硬化の初期症状として、冠動脈疾患が出現することが多い。アジア人では脳血管疾患が多いが、脳血管疾患は梗塞と出血の境界線が明確でないので抗血栓薬の開発は困難である。出血合併症の多い抗凝固薬が、血栓イベントの既往のない非弁膜症性心房細動に使用されているのは筆者には奇異であるが、ランダム化比較試験のエンドポイントとされた脳卒中と臨床家が恐れる心原性脳塞栓を混同させたマーケット戦略、巨大企業による徹底した情報管理の勝利であった。しかし、第III相試験にて示されたDOACによる年率3%の重篤な出血合併症は実臨床においても事実であろうから、特許切れまで企業が情報管理を継続できるか否かには疑問も残る。 一度、血栓性の心筋梗塞、脳梗塞を発症した症例の2次予防であれば、出血合併症の多いDOACにもチャンスはある。出血と梗塞の境界が微妙な脳梗塞を除いて、心筋梗塞後の症例に限局すれば、重篤な出血イベント年率0.2%、血栓イベント抑制効果25%のアスピリンの標準治療には多少抗血栓薬を追加する余地がある。心房細動例に使用する用量よりもはるかに少ない2.5mg×2/日のリバーロキサバンによる、重篤な出血の増加は年率1%であった。過去に血栓イベントの既往のない心房細動症例に使用されている、15(20)mg/日による3%に比較すればはるかに少ない。アスピリンにごく微量のリバーロキサバンを追加すれば、心房細動のときに用いるほどではないが重篤な出血が増加する。しかし、増加した出血と同じ程度の年間1%程度の血栓イベントの低下効果は期待できる。 抗Xa薬の臨床開発において、筆者は抗Xa薬には用量依存性の重篤な出血がないかもしれないと考えて各企業に協力した。第III相試験を主導している途中で、並行していた第II相試験が抗Xa薬でも用量依存性の出血を起こすことを示して、筆者の期待は急速に萎んだ。心房細動であろうと、心筋梗塞であろうと、1%の血栓イベントを予防するための用量では1%の重篤な出血合併症が、3%の血栓イベントを予防するためには3%の重篤な出血合併症が起こるDOACの価値を見いだすことは難しい。売れているから企業には危機感が少ないかもしれないが、将来に向けて出血しない薬効標的を探す努力が必要である。

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One dose fit all!の限界(解説:後藤信哉氏)-757

 いわゆるNOACs、DOACsの臨床開発に当たって、選択的抗トロンビン薬では有効性、安全性は薬剤の用量依存性と予測していた。開発試験の結果が出るまで、Xa阻害薬では出血合併症には用量依存性が少ないとの期待があった。急性冠症候群を対象とした第II相試験の結果を見て、抗Xa薬でも用量依存性に重篤な出血合併症が増加することを知って失望した。 それでも抗Xa薬は競争相手のワルファリンの自由度を縛ることによって、見かけ上安全な薬剤として開発、上梓された。論理の緻密な英語では「PT-INR 2~3を標的としたワルファリン治療より安全」と必ず述べるが、あいまいな日本語では「ワルファリン治療より安全」との誤解も広まった。目の前の自分の患者の予後を最重視する臨床医にはメーカー、メーカーの教育を受けた医師の「ワルファリン治療より安全」が、現場では「?」であることをすぐに実感する。 本論文は台湾の医療データベースの解析である。重篤な出血合併症の発症率は1%程度で第III相試験より著しく少ない。報告されていない出血もあると想定されるが、実臨床では添付文書に規定された用量よりも少量を使用していることが、出血イベントの実態が少ない原因と想定される。 「One dose fit all」と喧伝されたNOACsであるが、アミオダロン、フルコナゾールなどの併用性では出血合併症が多い。いわゆるNOACs、DOACsであっても薬剤との相互作用は重篤な出血イベントを倍増させるほどのインパクトがある。ワルファリンと異なり、個別最適化のためのバイオマーカーはない。INRの延長に相当する黄色信号なしに、いきなり出血の赤信号となるNOACs、DOACsを、実態を知りながら服用したいと思うヒトはきわめて少ないと私は思うが、いかがだろうか?

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脳卒中予防の重要性とアスピリンのインパクト!(解説:後藤信哉氏)-755

 冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患は全身の動脈硬化と血栓性が局所臓器にて症状を発現した疾病である。世界から外来通院中の安定した各種動脈硬化、血栓性疾患6万8千例を登録、観察したREACH registry研究では、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患ともに年間の脳卒中の発症が最大の問題であることを示した。脳卒中の発症率が最も低い冠動脈疾患でも脳卒中発症率は年間1.6%であり、実臨床における新規に診断された心房細動症例の脳卒中発症率と同程度であった。価格の高い新薬を特許期間内に売り切ろうとするのか、年間3%程度に重篤な出血イベントを惹起することが第III相試験にて確認されている経口抗トロンビン薬、抗Xa薬がNOACs、DOACsなど非科学的なネーミングにより非弁膜症性心房細動に広く使用されているのは筆者の驚くところである。非弁膜症性であっても心房細動を合併すれば近未来の脳卒中リスクは増える。しかし、すでに脳卒中を発症した症例の再発率ほど発症リスクが高くなるわけではない。年間3%という重篤な出血合併症というコストに見合う効果を、非弁膜症性心房細動の脳卒中1次予防にて示した臨床研究は過去に施行されていない。同じく年間3%以上の重篤な出血性合併症を惹起する、INR 2~3を標的とした、現実の医療とは乖離した過去の「仮の標準治療」より出血が少ないといっても、年間3%以上の重篤な出血合併症は1次予防にて受け入れられる水準ではない。 心房細動になれば左房内の血流がうっ滞するように「思える」。血流がうっ滞すると左房内に血栓ができる「気」がする。このような「思い」「気」は、科学的に証明されていない。さらに、血流うっ滞部位の血栓には凝固系の寄与が大きい「雰囲気」がある。この「雰囲気」も科学的には証明されていない。むしろ、体内の血栓は血流条件にかかわらず血小板と凝固系の混合血栓であることが科学的事実である。 生体には連続性がある。加齢とともに心房細動の有病率が増加するのは事実であるが、心房細動の発症とともにヒトが激変するわけではない。心筋梗塞後の症例であってもCHADS2スコアが高ければ脳卒中リスクは高い。脳卒中の発症に対するCHADS2スコアと心房細動の寄与を比較して後者が大きいわけではない。さらに、心房細動の症例の脳卒中の多くが心原性脳塞栓であるわけでもない。高齢でCHADS2スコアの高い症例は心房細動の有無にかかわらず脳卒中予防が重要である。 COMPASS試験では冠動脈疾患、末梢血管疾患を対象に1)2.5mg×2/日の極微量のリバーロキサバンとアスピリンの併用、2)5mg×2/日の微量のリバーロキサバン、3)アスピリン単独の3群の比較を行った。2.5mg×2/日の極微量のリバーロキサバンは過去にアスピリン・クロピドグレルとの併用により急性冠症候群の心血管イベントとステント血栓症を低減させた用量である。アスピリンを抜いてクロピドグレル、チカグレロルと併用したときには抗血小板薬に比較した有効性を第II相試験において示せなかった。動脈系における極微量のリバーロキサバン開発試験を素直にみると、極微量のリバーロキサバンは心血管イベント発症予防に有効であるが、出血は増加させる。有効性はアスピリンとの併用時に明確になる。出血合併症は増加するが20mg×1/日に比較すれば少ない。今まで世界では20mg/日、日本では15mg/日を標準用量として心房細動の2次予防中心に販売攻勢をかけた開発企業には方向転換になるが、COMPASS試験はアスピリンとの併用における2.5mg×2/日にリバーロキサバンの有効性を再確認させるインパクトがあった。脳卒中予防効果も確認された。重篤な出血合併症は増加するが、20mg(15mg)×1/日よりは少ない。心血管病の2次予防でもあるため出血イベントリスクも受け入れやすい。出血リスクとの釣り合いが取れなかった非弁膜症性心房細動から、心血管病の再発予防の極微量投与に販売方針を転換してくれれば、わけのわからないうちに重篤な出血リスクに曝露される非弁膜症性心房細動の症例を減らせるかもしれない。重要なことは低リスクにおける脳卒中予防である。COMPASS試験ならば実臨床に投影できる可能性があると筆者は期待している。

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DOAC、静脈血栓塞栓症でワルファリンと同等の安全性/BMJ

 静脈血栓塞栓症を呈した患者に対する直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与は、ワルファリン投与に比べ、治療開始90日以内の大出血リスクや全死因死亡リスクを増大しないことが示された。カナダ・カルガリー大学のMin Jun氏らが、6万人弱を対象に行った大規模コホート試験で明らかにしたもので、BMJ誌2017年10月17日号で発表した。これまでに、無作為化試験でDOACのワルファリンに対する非劣性は示されていたものの、臨床試験の被験者は高度に選択的であるため、実際の臨床現場におけるルーチン投与の状況を反映したものなのか疑問の余地があった。90日以内の大量出血、総死亡リスクを比較 研究グループは、2009年1月1日~2016年3月31日にかけて、カナダと米国の6州のヘルスケアデータを用いて傾向スコアでマッチングした、住民ベースの後ろ向きコホート試験を行った。試験対象期間中に静脈血栓塞栓症の新規診断を受け、診断後30日以内にDOACまたはワルファリンの処方を受けた5万9,525例のデータを分析し、DOACの安全性についてワルファリンと比較検討した。 アウトカムは、大出血による入院または救急部門受診と、治療開始後90日以内の全死因死亡率などだった。傾向スコアマッチング法と共用異質性モデルにより、DOACとワルファリンの補正後ハザード比を推定した。CKDの有無、年齢、性別で分けても安全性は同等 5万9,525例について、追跡期間平均値85.2日の間に、1,967例(3.3%)が大出血を呈し、死亡は1,029例(1.7%)だった。 大出血リスクは、DOAC服用群とワルファリン服用群で同程度だった(プールハザード比:0.92、95%信頼区間[CI]:0.82~1.03)。また、死亡リスクも、両群間の差は認められなかった(同:0.99、0.84~1.16)。 なお、試験を実施した医療施設間に不均一性はなく、示された結果について、患者の慢性腎臓病(CKD)の有無、年齢、性別などによる違いは認められなかった。

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血尿よ、お前もか!-抗血栓薬は慎重に(解説:桑島巖氏)-748

 最近、循環器領域の疾患では、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)や抗血小板薬を処方する傾向が顕著になっている。確かに脳卒中や心筋梗塞予防効果はあることはあるが、そのウラ側にある有害事象のことも考えてほしいというのが本研究のメッセージである。抗血栓薬処方の爆発的な増加には企業の激しい宣伝合戦も影響しているかもしれないが、ここで一歩立ち止まって考える必要がありそうだ。言うまでもないことではあるが、抗血栓薬は血栓を予防して梗塞性イベントを防ぐ一方で、大出血という重大な有害事象を発生することも、あらためて認識する必要がある。 すでに、JAMA誌(Gaist D, et al. JAMA. 2017;317:836-846.)では、抗血栓薬で明らかに硬膜下血腫リスクが増大しているというデータを示しているが、今回の本論文は血尿である。 カナダ・オンタリオ州における66歳以上の一般住民の追跡調査であるが、抗凝固薬や抗血小板薬などの抗血栓薬服用者の肉眼的血尿発現率は、123.95イベント/1,000人年であり、これは非服用者の80.17人年に比べて1.44倍高かったという。この調査での血尿は、入院と救急外来受診者に限定され、一般診療での血尿は含まれておらず、一般臨床での血尿を含めるとさらに多くなると思われる。 本研究はあくまでも一般住民での追跡調査成績であり、いくつかのlimitationはあるとしても、抗血栓薬の安易な処方傾向に一石を投じる報告である。 抗血栓薬服用者では、泌尿器科処置に伴う合併症や、入院、救急外来受診率などの頻度も、非服用者に比していずれも有意に高かった。これらは医療行為による医師の負担を増大させ、医療経済の点から言ってもマイナスの要因であろう。 抗血栓薬処方の裏では、消化管出血、血尿、硬膜下血腫などの副作用で、消化器科医師、泌尿器科医師、脳外科医師がその後始末に四苦八苦している事情も知っておくべきである。 近年では、脳卒中の急性期治療の進歩により、脳卒中死は著しく減少したが、消化管出血、硬膜下血腫などは死亡に直結する有害事象であることは、あらためて認識する必要がある。とくにDOACは効果のマーカーがないだけに、高齢者では慎重な処方が必要である。

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PFO閉鎖術で脳梗塞再発が大幅に低減/NEJM

 卵円孔開存(PFO)との関連が考えられる原因不明の脳梗塞を呈し、関連する心房中隔瘤または心房間の大きな短絡が認められる患者に対して、PFO閉鎖術と抗血小板療法を組み合わせた治療は、抗血小板療法単独に比べ脳梗塞の再発を大幅に低減したことが示された。フランス・サン・タンヌ病院のJean-Louis Mas氏らが、663例を対象に行った非盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌2017年9月14日号で発表した。これまでの試験で、PFO閉鎖術の脳梗塞再発予防に対する結論は得られていない。研究グループは、原因不明の脳梗塞患者および心エコーの特色が脳梗塞リスクを示す患者を対象に、抗血小板療法との比較において、PFO閉鎖術または抗凝固療法がベネフィットをもたらすかを調べる検討を行った。PFO閉鎖術+抗血小板療法、抗血小板療法単独、経口抗凝固療法を比較 Mas氏らは、PFOとの関連が考えられる脳卒中を発症したばかりで、関連する心房中隔瘤または心房間の大きな短絡が認められる16〜60歳の患者を、無作為に1対1対1に分け、PFO閉鎖術+長期抗血小板療法、抗血小板療法単独、経口抗凝固療法をそれぞれ行った(無作為化グループ1)。 また、別の無作為化グループとして、抗凝固薬またはPFO閉鎖術のいずれかが禁忌の患者を無作為に分け、禁忌ではない方の治療を行う群と、抗血小板療法を行う群に割り付けた(無作為化グループ2、3)。 PFO閉鎖術+抗血小板療法と抗血小板療法単独の比較については、無作為化グループ1と2を、経口抗凝固療法と抗血小板療法の比較については無作為化グループ1と3を、それぞれ統合して分析した。 主要評価項目は、致死的・非致死的脳梗塞の発症だった。PFO閉鎖術+抗血小板療法で脳梗塞再発リスクは0.03倍に 被験者総数は663例で、平均追跡期間は5.3年(標準偏差:2.0)だった。 脳梗塞を発症したのは、抗血小板療法単独群(235例)では14例だったのに対し、PFO閉鎖術+抗血小板療法群(238例)では再発例はなかった(ハザード比:0.03、95%信頼区間:0~0.26、p<0.001)。 一方で、PFO閉鎖術+抗血小板療法では、手技に関連する合併症が14例で発生した(5.9%)。また、心房細動発症率は、抗血小板療法単独群で0.9%だったのに対し、PFO閉鎖術+抗血小板療法群では4.6%で有意に高率だった(p=0.02)。重篤有害事象の発現率については、PFO閉鎖術と抗血小板療法群と抗血小板療法単独群の両群で同等だった(p=0.56)。 なお、経口抗凝固療法と抗血小板療法の比較では、脳梗塞を発症したのは経口抗凝固療法群187例中3例、抗血小板療法群174例中7例で、統計的有意差については検出力不足のため分析しなかった。

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日本初、ワルファリンでの出血傾向を迅速に抑える保険適用製剤

 ワルファリン服用者の急性重篤出血時や、重大な出血が予想される手術・処置の際に、出血傾向を迅速に抑制する日本初の保険適用製剤として、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体(商品名:ケイセントラ静注用)が9月19日に発売された。発売に先立ち、15日に開催されたCSLベーリング株式会社による記者発表において、矢坂 正弘氏(国立病院機構九州医療センター脳血管センター 部長)が、本剤の開発経緯や臨床成績、位置付けについて講演した。その内容をお届けする。ケイセントラは厚生労働省への早期開発要望により開発 ワルファリンは直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)より適応が広く、腎機能が低下している高齢者など幅広い患者に使用できる。しかし、ワルファリン投与中は頭蓋内出血を発症しやすく、大出血時には休薬などの処置に加え、ビタミンKの投与、新鮮凍結血漿の投与が行われる。これらの投与に関して矢坂氏は、ビタミンKは緊急止血には間に合わず、新鮮凍結血漿は800mL~1Lの投与が必要だが心不全を防ぐためにゆっくり投与せざるを得ず、また輸血による感染症のリスクもあったことを指摘した。 今回発売されたケイセントラは乾燥濃縮人プロトロンビン複合体であり、1996年にドイツで承認されて以降、欧州各国で承認され、2017年1月時点で米国を含む42の国と地域で承認されている。日本では、2011年に厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」の開発要望募集で日本脳卒中学会が早期開発要望書を提出し、厚生労働省がCSLベーリング社に開発を要請、今年3月に「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時、又は重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」を効能・効果として承認された。30分以内の速やかなPT-INRの是正効果においてケイセントラの非劣性が確認された ケイセントラの臨床試験成績について、矢坂氏はまず、海外で実施された2つの第III相試験を紹介した。1つは、ビタミンK拮抗薬投与中に急性重篤出血を来した患者を対象に、全例にビタミンKを静脈内投与し、ケイセントラ投与もしくは血漿投与に無作為に割り付け、止血効果と速やかなPT-INRの是正効果を比較した無作為化非盲検非劣性多施設共同試験である。本試験で、投与終了後30分以内にPT-INRが1.3以下に低下した患者の割合は、ケイセントラ群が62.2%で血漿群の9.6%に対して非劣性が確認された。また、投与開始から24時間までの止血効果が有効であった患者の割合についても、ケイセントラ群が72.4%と血漿群の65.4%に対して非劣性が確認された。 もう1つは、ビタミンK拮抗薬投与中で緊急の外科手術または侵襲的処置を要する患者を対象とした無作為化非盲検非劣性多施設共同試験で、全例にビタミンKを投与し、ケイセントラ投与もしくは血漿投与に無作為に割り付けた。試験の結果、投与終了後30分以内にPT-INRが1.3以下に低下した患者の割合は、ケイセントラ群55.2%、血漿群9.9%、また投与開始から外科手術または侵襲的処置終了までの間に止血効果が有効であった患者の割合は、ケイセントラ群89.7%、血漿群75.3%と、どちらも血漿群に対しケイセントラの非劣性が確認された。 また、日本人を対象とした国内の第III相試験では、ビタミンK拮抗薬療法に起因する抗凝固状態で急性重篤出血を来した、あるいは外科手術または侵襲的処置を要する患者に対して、ビタミンKとケイセントラ投与により、PT-INR中央値はベースラインの3.13から、投与終了後30分で1.15に減少した。 最後に矢坂氏は、「ワルファリンは幅広い適応を持っているので今後も使われていく薬剤だが、注意すべきは出血性合併症」と述べ、ケイセントラの発売で「ワルファリン治療中の大出血時、緊急手術が必要な場合にワルファリン作用の緊急是正に使用できるようになり、非常に期待される」と締め括った。

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AF患者の経口抗凝固療法、教育的介入で増加/Lancet

 心房細動患者への経口抗凝固療法に関して、多角・多面的な教育介入により同療法を受ける患者の割合が有意に増加したことが、ルーマニア・キャロルダビラ医科大学のDragos Vinereanu氏らが5ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、ルーマニア)を対象に行った国際クラスター無作為化試験「IMPACT-AF試験」の結果、示された。心房細動患者は脳卒中を発症するリスクが高いが、経口抗凝固療法で予防は可能であり、現行ガイドラインでも推奨されている。しかし、適応患者への同療法が十分に行われていない状況が報告されており、とくに中所得国において過少で、任意抽出集団を対象に調べた投与患者の割合は、東ヨーロッパ・南米・インドでは40%未満、中国では11%にとどまるという。研究グループはこれらの国々における教育介入のインパクトを評価した。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。医療提供者と患者に啓発、Webやeメール、SNSを活用 IMPACT-AF試験では、心房細動を有し経口抗凝固療法が適応(CHA2DS2-VAScスコア2以上、またはリウマチ性心臓弁膜症)の18歳以上の患者を包含したクラスターを、質的改善の教育介入を受ける群(介入群)または通常治療群(対照群)に、無作為に1対1の割合で割り付けた。無作為化は、eClinicalOS電子データ収集システムを用いて中央コーディングセンターで行われた。 介入は、医療提供者および患者の両者に対して行われ、定期的なモニタリングとフィードバックを伴った。患者・家族に対しては小冊子やウェブベースのビデオ教材を用いた啓発を行い、医療提供者には定期的なeメール送付で系統的レビューや関連論文、ウェブカンファレンスやオンラインセミナー、コーディングセンターとの質疑応答ができる掲示板の案内などを行った。介入は経口抗凝固療法の導入と継続を奨励することに焦点が置かれていた。 主要アウトカムは、ベースラインから教育介入1年時点までの、経口抗凝固療法を受けた患者の割合の変化であった。1年間で介入群12%増に対し対照群3%増、オッズ比は3.28 2014年6月11日~2016年11月13日の間に、5ヵ国の48クラスター(ブラジル8、その他各国10クラスター)、患者計2,281例(アルゼンチン343例、ブラジル360例、中国586例、インド493例、ルーマニア499例)が登録された。追跡期間は中央値12.0ヵ月(IQR:11.8~12.2)。 介入群において、経口抗凝固療法を受けた患者の割合は、ベースライン時68%(804/1,184例)から1年時点80%(943/1,184例)へ増大した(変化:12%)。一方、対照群は64%(703/1,092例)から67%(732/1,092例)への増大であった(同3%)。両群の変化の絶対差は9.1%(95%信頼区間[CI]:3.8~14.4)であり、オッズ比(OR)は3.28(95%CI:1.67~6.44、補正後p=0.0002)であった。 抗凝固療法に関する主な副次アウトカムをみると、ベースラインと1年時点いずれにおいても同療法を受けていた患者の割合は介入群と対照群で有意差はなかったが(補正後OR:1.68、p=0.10)、介入群においてわずかだがビタミンK拮抗薬の使用率が低下した変化がみられた(87%から78%、対照群は78%で推移)。また、同療法をベースラインでは受けていなかったが1年時点では受けていた患者の割合は、介入群48%、対照群18%であった(補正後OR:4.60、95%CI:2.20~9.63、p<0.0001)。 副次臨床的アウトカムのうち、Kaplan-Meier法で推定した脳卒中の発生は、対照群と比べて介入群で減少したことが示された(HR:0.48、95%CI:0.23~0.99、log-rank検定p=0.0434)。同値は補正後Coxモデルの評価でも変わらなかったが、CI値の上下限値幅が大きかった(HR:0.49、95%CI:0.21~1.13、p=0.09)。なお、全死因死亡、複合アウトカム(脳卒中・全身性塞栓症・大出血)、大出血の発生は、両群で差はなかった。

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抗凝固薬の中和薬:マッチポンプと言われないためには…(解説:後藤 信哉 氏)-715

 手術などの侵襲的介入時におけるヘパリンの抗凝固効果はプロタミンにより中和可能であり、経口抗凝固薬は外来通院中の症例が使用しているので、ワルファリンの抗凝固効果は新鮮凍結血漿により即座に、ビタミンKの追加により緩除に中和できることを知っていても、中和薬の必要性を強く感じる場合は少なかった。止血と血栓は裏腹の関係にあるので、急性期の血栓、止血の両者を管理する必要のある症例の多くは入院症例であり、その多くは調節可能な経静脈的抗凝固療法を受けていた。 モニタリングせずに使用する経口抗トロンビン、抗Xa薬(いわゆるNOACs、DOACs)は、血栓イベントリスクの高い機械弁、僧帽弁狭窄症では使われていない。緊急手術が必要な状態になった場合、重篤な出血が薬剤により惹起されたとき、薬剤投与を中止して止血できるまで、どの程度の時間が必要であるかがわからない。プロトロンビンを濃縮した血液製剤などを使うと直感的に止血を実感できる。本研究ではトロンビンの酵素作用を直接阻害するダビガトランに中和抗体を作用させれば、即座に抗トロンビン効果は消失することを示した。臨床的な止血効果をおそらく医師は現場で実感したと想定するが、臨床試験にて有効性を数値で示すことはできなかった。 血液凝固カスケードは液相の反応が広く知られるが、現実の血液凝固の重要部分は活性化血小板膜上にて起こる。Xaは血小板上のプロトロンビナーゼ複合体の形成に未知の複雑なメカニズムで作用するので、Xaのおとりではプロトロンビン時間が正常化しても血栓イベントは増えるような結果であった。ダビガトランの抗体の作用は、Xa阻害薬の中和薬よりは作用が直線的である。それでも、「抗凝固薬を不必要に多用して、自然歴ではない出血イベントを多発させ、抗凝固薬の中和薬を多用する」のは、マッチポンプ的で患者にも社会にも不利益をもたらす。抗Xa薬の中和薬よりは直線的だがダビガトラン抗体に価値があるのかどうか、現時点では筆者にもわからない。 放置すれば近未来ほぼ確実に血栓イベントが起こる症例に、抗凝固薬を限局的に使用する世界が筆者には効率的に思える。

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金子英弘のSHD intervention State of the Art 第13回

実臨床におけるWATCHMAN1,000例超の結果が明らかに本連載でも取り上げてきたように、左心耳閉鎖デバイスであるWATCHMAN(Boston Scientific社)は非弁膜症性心房細動における心原性脳塞栓症予防として欧米で広く使用されています。今回は、WATCHMANの大規模レジストリーであるEWOLUTION試験の1年フォローの結果について取り上げたいと思います。1)連載の第2回「左心耳閉鎖デバイスWatchmanの真の実力を検証!!」でも紹介しましたが、EWOLUTION試験には、ヨーロッパ、ロシア、中東の13ヵ国47施設が参加し、WATCHMANの実臨床における効果と安全性について評価しています。2013年10月から2015年5月までに登録された1,025症例の平均年齢は73歳で平均CHA2DS2-VAScスコア4.5、平均HAS-BLEDスコア2.3、そして約3割の症例に脳卒中の既往を認めました。同時に約3割の症例に大出血の既往があり、73%の症例は抗凝固療法が不適切であるとの判断からWATCHMANの適応となっています。手技成功率は98.5%と高率で、デバイス留置における最も大きな合併症である心タンポナーデ・心嚢液貯留はわずか0.3%と極めてまれでした。約9割の症例でフォローアップの経食道心エコー検査が行われ、適切なシーリング(デバイス周囲に幅5mmを超えるリークを認めない)は99%で確認され、デバイス血栓症の発生率は3.7%でした。抗血栓薬のプロトコールについては各施設の判断に委ねられていますが、治療直後は、抗血小板剤2剤(DAPT)が60%、経口抗凝固薬は27%に処方され、6%の症例は一切の抗血栓薬が処方されていませんでした。フォロー中に抗血栓薬のプロトコールは切り替えられ、抗血小板剤単剤(SAPT)が55%と最多となり、経口抗凝固薬の処方率は8%まで減少していました。術後1年間の死亡率は9.8%であり、虚血性脳卒中は1.1%、大出血イベントは2.6%の症例に認められました。CHA2DS2-VAScスコアに基づいて予想される年間虚血性脳卒中の発生率は7.2%であり、実に84%のリスク減少が達成されています(図1)。またHAS-BLEDスコアに基づくワルファリン使用時の年間大出血イベント発生率は5.0%であることから、こちらも48%のリスク減少が得られています(図2)。図1:CHA2DS2-VAScスコアに基づいて予測される年間虚血性脳卒中の発生率とEWOLUTION試験における同値の比較画像を拡大する図2:HAS-BLEDスコアに基づくワルファリン使用時の年間大出血イベント発生率とEWOLUTION試験における同値の比較画像を拡大する虚血性脳卒中予防効果に関しては、当然のことながらWATCHMANの効果だけでなく、経過中に処方された抗血栓薬の効果も考えなければなりません。一方で抗血栓薬のプロトコールを切り替えた後は9割以上の症例で経口抗凝固療法が行われていないことから、さらに長期のフォローを行うことで、WATCHMAN留置による虚血性脳卒中予防効果がより明らかになるでしょうし、その結果によってWATCHMAN留置後の抗血栓薬の至適プロトコールも確立されるものと期待されます。また、HAS-BLEDスコアはワルファリンを使用した場合の出血リスクを予想するスコアですので、出血性合併症の少ない直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)との比較については今後、さらなる議論が必要となると思われます。このように左心耳閉鎖術のリーディングデバイスであるWATCHMANについては今後、まだまだ明らかにすべき点が数多く挙げられますが、そのような中でも今回の研究はWATCHMANの実臨床における成果を考えるうえで非常に意義のあるものです。WATCHMANについてはわが国における治験もすでに開始されており、近い将来の導入が期待されています。わが国への安全で有効な本治療の導入のためにも、引き続きWATCHMANの臨床成績に注目していきたいと思います。1)Boersma LV, et al. Heart Rhythm. 2017 May 31. [Epub ahead of print]

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