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BMIが高いとコロナワクチンの抗体応答が低い

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンが普及し、その効果に関してさまざまな報告がなされている。ワクチンと体型、とくにBMI高値の肥満の人にはどのように関係するのであろう。この疑問に対し、オーストラリア・クイーンズ大学化学・分子バイオサイエンス学部のMarcus Zw Tong氏らの研究グループは、COVID-19から回復した被験者から血液サンプルを採取し、ワクチン接種前後の抗体反応を測定・解析した。その結果、高いBMIがワクチンの抗体応答低下と関連することが示唆された。Clinical & Translational Immunology誌2023年12月3日号の報告。BMIの上昇がワクチンの体液性免疫応答の障害と関連 方法としてSARS-CoV-2感染から約3ヵ月後および13ヵ月後に回復した被験者から血液サンプルを採取(これらの対象者はSARS-CoV-2に曝露されておらず、また、その間にワクチン接種も受けていない)。そして、2回目のCOVID-19ワクチン接種後約5ヵ月経過した人(大多数はSARS-CoV-2感染歴なし)から血液サンプルを採取。SARS-CoV-2に対する体液性反応を測定し、BMIが25以上かそれ以下かでグループ分けし、結果を解析した。 主な結果は以下のとおり。・年齢および性差を考慮した場合、高いBMI(25以上)がSARS-CoV-2感染後のワクチン抗体応答の低下と関連することが示された。・感染後3ヵ月では、高いBMIはワクチン抗体価の低下と関連していた。・感染後13ヵ月では、高いBMIはワクチン抗体価の低下およびスパイク陽性B細胞の割合の低下と関連していた。・2次ワクチン接種後5ヵ月目では、BMI≧25とSARS-CoV-2に対する体液性免疫との間に有意な関連は認められなかった。 これらの結果を受けて、Tong氏らは「高いBMIはSARS-CoV-2感染に対する体液性免疫応答の障害と関連していることが示された。BMIが25以上の人における感染誘導性免疫の障害は、感染誘導性免疫に依存するのではなく、ワクチン接種のさらなる促進を示唆する」と結論付けている。

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進行胃がん1次治療、CapeOXへのsintilimab上乗せでOS改善(ORIENT-16)/JAMA

 切除不能な局所進行または転移のある胃・胃食道接合部がんの1次治療において、化学療法へのsintilimabの上乗せはプラセボと比較して、すべての患者およびPD-L1複合陽性スコア(CPS)5以上の患者の全生存期間(OS)を有意に改善したことが示された。中国・Chinese PLA General HospitalのJianming Xu氏らが同国の62病院で行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ORIENT-16試験」の結果を報告した。胃・胃食道接合部がんと診断される人は、世界で年間100万人以上に上るが有効な治療はほとんどない。sintilimabは、プログラム細胞死1(PD-1)に結合する組換えヒトIgG4モノクローナル抗体で、化学療法との併用による有望な有効性が示されていた。JAMA誌2023年12月5日号掲載の報告。化学療法+sintilimab併用のOSを評価 研究グループは、切除不能な局所進行または転移のある胃・胃食道接合部がん患者について、sintilimab+化学療法vs.プラセボ+化学療法のOSを比較した。また、CPS(スコア範囲:1~100)が5以上の患者のサブグループについても比較した。 2019年1月3日~2020年8月5日に、中国の62病院で切除不能な局所進行または転移のある胃・胃食道接合部がん患者650例を登録。最終フォローアップは2021年6月20日であった。 被験者は1対1の割合で無作為に2群に割り付けられ、カペシタビン+オキサリプラチン(CapeOXレジメン)にsintilimabまたはプラセボの併用投与を受けた(3週ごとに最大6サイクル)。維持療法として、sintilimabまたはプラセボ+カペシタビンの併用は最長2年間投与された。 主要評価項目は、全無作為化患者およびCPS5以上の患者におけるOSであった。全患者およびCPS5以上の患者で、sintilimab併用によりOSが有意に延長 650例(平均年齢59歳、男性483例[74.3%])のうち、327例がsintilimab+化学療法群に、323例がプラセボ+化学療法群に無作為化された。 無作為化された患者650例において、397例(61.1%)がPD-L1 CPS5以上の腫瘍を有しており、563例(86.6%)が試験を中断、388例(59.7%)が死亡となった。追跡不能は1例(<0.1%)。 全無作為化患者において、sintilimabはプラセボと比べてOSを有意に改善したことが示された(中央値15.2ヵ月vs.12.3ヵ月、層別ハザード比[HR]:0.77[95%信頼区間[CI]:0.63~0.94]、p=0.009)。 CPS5以上の患者においても、sintilimabはプラセボと比べてOSを有意に改善した(中央値18.4ヵ月vs.12.9ヵ月、層別HR:0.66[95%CI:0.50~0.86]、p=0.002)。 最も多くみられたGrade3以上の治療関連有害事象は、血小板数の減少(sintilimab併用群24.7% vs.プラセボ併用群21.3%)、好中球数の減少(20.1% vs.18.8%)、貧血(12.5% vs.8.8%)であった。

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早期乳がん、術前MRIで術後放射線療法の省略を判定可能?(PROSPECT)/Lancet

 MRI検査で単病巣性の乳がん(unifocal breast cancer)が認められた病状良好な女性患者は、術後の放射線療法を安全に省略できることが示された。オーストラリア・王立メルボルン病院のGregory Bruce Mann氏らが、多施設共同前向き2アーム非無作為化試験「PROSPECT試験」の結果を報告した。早期乳がんに対する術後の乳房放射線治療は、標準的な乳房温存療法として行われているが、多くの女性にとって過剰治療となる可能性が示唆されている。また、乳房MRIは、局所腫瘍の最も感度の高い評価法である。本試験は、MRIと病理学的所見の組み合わせによって、放射線治療を安全に回避可能な局所乳がんを有する女性の特定が可能であることを見極める目的で行われた。Lancet誌オンライン版2023年12月5日号掲載の報告。単病巣性の乳がんで術後のpT1N0またはN1miは放射線治療省略、5年後IIRRを評価 PROSPECT試験は、術前のMRI検査と術後の腫瘍の病理学的所見により選択した患者を対象とした、放射線治療省略に関する試験であり、オーストラリアの大学病院4施設で行われた。cT1N0非トリプルネガティブ乳がんで50歳以上の女性を適格とした。 適格となった女性のうちMRIで単病巣性の乳がんが認められた患者は、乳房温存手術(BCS)を受け、pT1N0またはN1miの場合は放射線治療が省略された(グループ1)。それ以外の患者には、MRIで検出された他のがん切除など標準治療が行われた(グループ2)。また、全患者が薬物療法を受けた。 主要評価項目は、グループ1の5年後の同側浸潤性乳がん再発率(IIRR)とした。 主要解析は、グループ1で100人目の患者の追跡調査が5年に到達した後に行われた。本試験の鑑別法(PROSPECT pathway)により治療を受けた患者の質調整生存年(QALY)と費用対効果についても分析した。5年後IIRRは1.0%、再発1件目は4.5年時点 2011年5月17日~2019年5月6日に、乳がん患者443例がMRI検査を受けた。年齢中央値は63.0歳。MRI検査によって48例(11%)で、指標となるがんとは別に61個の潜在的な悪性病変が検出された。 放射線治療を省略したBCSを受けたグループ1(201例)において、5年後のIIRRは1.0%(95%信頼区間[CI]上限値:5.4%)であった。グループ1の局所再発は、1件目が4.5年時点で、2件目が7.5年時点で報告された。 グループ2(242例)では、9例が乳房切除術を受けており(コホート全体の2%)、5年IIRRは1.7%(95%CI上限値6.1%)であった。 コホート全体で報告された唯一の遠隔転移は、指標となるがんとは遺伝子学的に異なるものであった。 PROSPECT pathwayにより、QALYが0.019(95%CI:0.008~0.029)増加し、患者1例当たり1,980オーストラリアドル(95%CI:1,396~2,528)(953ポンド[672~1,216])の節減効果が認められた。

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高中性脂肪血症が認知症を防ぐ?

 中性脂肪値が高いことは心血管系に悪影響を与えることが知られているが、認知機能に対する影響は異なる可能性のあることを示唆するデータが報告された。モナシュ大学(オーストラリア)のZhen Zhou氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に10月25日掲載された。 この研究では、米国やオーストラリアの高齢者を対象に低用量アスピリンの影響を前向きに検討した縦断研究(ASPREE)と、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが解析に用いられた。解析対象は、研究参加登録時に認知症や心血管イベントの既往歴のない65歳以上の高齢者で、前者は1万8,294人〔平均年齢75.1歳、女性56.3%、中性脂肪の中央値106mg/dL(四分位範囲80~142)〕、後者は6万8,200人〔同順に66.9歳、52.7%、139mg/dL(101~193)〕。 追跡期間中央値がそれぞれ6.4年、12.5年で、823人および2,778人に認知症の診断が記録されていた。解析の結果、ASPREEでは中性脂肪値が高いほど認知症リスクが低いことが示された〔中性脂肪値が2倍高いごとにハザード比(HR)0.82(95%信頼区間0.72~0.94)〕。同様の結果がUKバイオバンクの解析からも示され(HR0.83)、また遺伝的なリスク因子とされるapoE4を有するサブグループでも同じ結果(HR0.82)だった。さらに、中性脂肪値が高いほど加齢に伴う認知機能の低下速度が遅い傾向も示された。 この論文に対して、米コロンビア大学のNikolaos Scarmeas氏は付随論評を寄せ、いくつかの注意を喚起している。その指摘の主要な内容は、高中性脂肪血症が脳の加齢変化に対して保護的な作用を持つという因果関係が証明されていないという点だ。「報告されたデータは、現在の中性脂肪値が将来の認知症発症リスクに、確実に影響を与えると主張するためのエビデンスとして十分でない」と同氏は述べている。ただし、本研究の結果を「重要な知見であることには違いない」とし、「血清脂質(コレステロールや中性脂肪)は、食事または薬剤によって比較的容易に変化するため、今後の研究が重要だ」と付け加えている。 一方、Zhou氏は、中性脂肪値が低いことが認知症リスクの上昇と関連しているという結果について、「さまざまな説明が可能だ」と話す。具体的には、中性脂肪低値が、栄養失調、体重減少、健康状態不良、フレイルなどの結果として生じていることも考えられると説明している。反対に高齢になっても中性脂肪値が高いことは、栄養状態、健康状態が良好なことを意味する場合もあるという。 またZhou氏によると、今回の研究の解析対象に含まれていた高中性脂肪血症の高齢者は、基準値をやや上回る程度の中性脂肪値にとどまっている人が多く、薬物治療が必要なほど高値の人は少なかったとのことだ。さらに同氏は、「中性脂肪値の高さの違いだけでなく、高中性脂肪血症の発症年齢の違いも、認知機能へ異なる影響を及ぼす可能性がある」との推測も付け加えている。 なお、著者らによると、過去の研究の中には中性脂肪値が高い高齢者では、記憶に関与する脳領域の萎縮が顕著に認められると指摘するものもあるという。ただし、そのような過去の研究も今回発表された研究も全て、因果関係を証明可能な研究デザインでは実施されていない。

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自撮りで事故死した人の臨床的検討【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第247回

自撮りで事故死した人の臨床的検討Unsplashより使用私はすべてのSNSを網羅しているわけではないので、自撮りといえば基本的にInstagramだと思っているのですが、キレイに見せるために映える場所や修正をほどこすというのはよくあるそうで。承認欲求の高まりが抑えられず、世の中にはとても危ない場所で自撮りをする観光客がいるみたいです。それに関連した事故死が時にニュースで報道されています。そんな恐怖症例をまとめた論文があります…。Linares M, et al. Selfie-related deaths using web epidemiological intelligence tool (2008-2021): a cross-sectional study.J Travel Med. 2022 Aug 20;29(5):taab170.スマホの自撮りによって起こった事故死を調査した、稀有な研究グループからの報告です。自撮り関連事故死は、サファリパーク、線路、橋など、いろいろな場所で発生しています。線路で自撮りとか、即死することもあるわけで、もう見てられないですよね。2008年1月1日~2021年7月27日にオンラインで確認できた自撮り関連事故死を抽出しました。医学論文を抽出したわけではなく、民間・公的情報・新聞などの情報を集めたグローバルシステムであるHeimdllr-Projectツールを使っています。詳しくは知りませんが、AIが組み込まれたツールのようです。13年半の調査期間中に、292件の事故で379人が自撮り中に死亡したことがわかりました。多いですねぇ…。死亡者のうち141人(37.2%)が旅行者でした。最初の自撮り関連事故死の報告例は2008年で、2011年には5例に増えています。そして、2019年には一気に68例に増加。COVID-19パンデミックの間はこの事故死は減少しており、2020年には37例が報告されています。さて、自撮り関連事故死の平均年齢は24.4歳でした。「映え」を狙っているわけですから、さすがに若いですね。死亡が最も多く報告されているのはインド(n=100、26.4%)で、次いでアメリカ(n=39、10.3%)、ロシア(n=33、8.7%)となっています。死因としては、高所からの転落が半数で(49.9%;216人中17人が滝)、次いで交通機関(n=123;28.4%;56人が電車)、溺死(n=66;13.5%)となっています。高所からの転落および動物による負傷は、男性よりも女性に多く(それぞれ46.6% vs.58.8%、p=0.031;0.9% vs.5.3%、p=0.001)、交通機関による死亡は男性よりも女性のほうがわずかに少なかったようです(29.6% vs.20.3%、p=0.053)。というわけで、結論としては、危ない場所では自撮りしないように。

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慢性期双極性障害患者における糖尿病の有病率、ホモシステインとの相関関係

 双極性障害患者において、糖尿病の合併は、罹患率や死亡率の増加に影響を及ぼす可能性がある。中国・遼寧師範大学のLi Mu氏らは、慢性期双極性障害患者の糖尿病の有病率およびホモシステインとの相関関係を調査した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2023年11月20日号の報告。 双極性障害入院患者195例を対象に、横断的調査を実施した。双極性障害患者における糖尿病の有病率およびその臨床人口統計とホモシステインとの関連を調査した。対象患者の人口統計学的特徴、身体計測変数、臨床変数、血漿ホモシステインレベルは、アンケート、臨床測定、臨床検査により収集し、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・中国人双極性障害患者の糖尿病(1型、2型、特殊型含む)有病率は、14.9%であった。・分散分析またはカイ二乗検定では、糖尿病合併の双極性障害患者は、非合併例と比較し、年齢が高い、既婚者が多い、罹病期間が長い、オランザピン処方が少ない、高血圧の頻度が高いことが示唆された。・糖尿病合併と非合併例の双極性障害患者の間に、BMIとホモシステインレベルとの有意な関連は認められなかった。・ロジスティック回帰分析では、年齢、オランザピン処方、高血圧、BMI、ホモシステインレベルを調整した後、双極性障害患者の糖尿病合併と独立して関連していた因子は、婚姻状況と罹病期間であった。 著者らは「これらの発見は、双極性障害患者における糖尿病有病率の増加は、いくつかの代謝リスク因子との相関ではなく、臨床人口学的相関に注目する必要があることを示唆している」としている。

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小児インフルエンザ治療でのタミフル使用の実態とは

 米国では、インフルエンザに罹患した小児にはタミフルなどの抗ウイルス薬を処方することが推奨されているにもかかわらず、その処方率は低く、特に2歳未満の小児では5人に3人が同薬を処方されていないことが新たな研究で明らかになった。米ヴァンダービルト大学モンロー・カレル・ジュニア小児病院の小児科医であるJames Antoon氏らによるこの研究の詳細は、「Pediatrics」に11月13日掲載された。 この研究は、IBM MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseを用いて、米国の50州での民間保険に関連する取引データの中から2010年7月1日から2019年6月30日の間の外来または救急外来での18歳未満の小児に対する処方箋の請求データを収集し、小児インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬処方の動向を調査したもの。抗ウイルス薬の処方は、オセルタミビル(商品名タミフル)、バロキサビル(商品名ゾフルーザ)、またはザナミビル(商品名リレンザ)が処方された場合と定義された。主要評価項目は、小児インフルエンザ患者での抗ウイルス薬の処方箋受取率(抗ウイルス薬の薬局請求数を対象小児の総数で割ったもの)、副次評価項目は、インフルエンザの診断を受けた患者のうち抗ウイルス薬による治療を受けた患者の割合と、物価の上昇を考慮した抗ウイルス薬のコストとした。 その結果、研究対象期間中における治療用・予防用を合わせた抗ウイルス薬の処方件数は141万6,764件であり、そのほとんど(99.8%)がオセルタミビルであることが明らかになった。研究対象期間全体で、1インフルエンザシーズン当たりの抗ウイルス薬の平均処方件数は小児1,000人当たり20.6件であり、インフルエンザシーズンにより4.35件から48.6件の変動が見られた。 抗ウイルス薬により治療された患者の割合は、年齢層では12歳以上、インフルエンザシーズンでは2017/2018年シーズン、地理別では東南中央地域で特に高かった。これに対して、インフルエンザ合併症のリスクが高い2歳未満のインフルエンザ患者のうち、ガイドラインに則った抗ウイルス薬による治療を受けた患者の割合は40%未満(1,000人当たり367件の処方)と低かった。 物価の上昇を考慮した抗ウイルス薬の総コストは2億845万8,979ドル(1ドル150円換算で312億6884万6,850円)であり、1処方当たりのコスト(中央値)は111ドル(同1万6,650円)から151ドル(同2万2,650円)の間であった。 Antoon氏は、「ガイドラインでは、インフルエンザの小児患者に対しては、年齢を問わず抗ウイルス薬による治療が推奨されているにもかかわらず、われわれの研究から、2歳未満の小児で同治療が施されたのは40%に満たないことが明らかになった。また、全ての年齢層で抗ウイルス薬の使用率が低かったことも気に掛けるべき重要な結果だ」と話す。 また、インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の使用状況は、地域により大きく異なることも示された。この点についてAntoon氏は、「この結果は、特に最も弱い立場にある小児でのインフルエンザの予防と治療に改善の余地があることを浮き彫りにするものだ」との見方を示す。研究グループは、このような地域差が生じる原因として、小児に対する抗ウイルス薬の使用を推奨する国のガイドラインが周知されていない可能性や、副作用への懸念、あるいは薬効に対する信頼不足が存在する可能性があると推測している。 研究グループは、「今回の研究結果は、小児患者でのインフルエンザの管理の質を向上させる必要性を強調するものだ」と結論付けている。Antoon氏は、「外来で小児のインフルエンザ患者を治療することで、症状の持続期間、家庭内感染、抗菌薬の使用、中耳炎などのインフルエンザ関連の合併症が減少することが報告されている」と補足している。

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高K血症の治療は心腎疾患患者のRAASi治療継続に寄与するか?/AZ

 アストラゼネカは2023年11月24日付のプレスリリースにて、リアルワールドエビデンス(RWE)の研究となるZORA多国間観察研究の結果を発表した。本結果は、2023年米国腎臓学会(ASN)で報告された。 世界中に、慢性腎臓病(CKD)患者は約8億4,000万人、心不全(HF)患者は6,400万人いるとされ、これらの患者における高カリウム血症発症リスクは2~3倍高いと推定されている1-4)。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(RAASi)治療は、CKDの進行を遅らせ、心血管イベントを低減させるためにガイドライン5-7)で推奨されているが、高カリウム血症と診断されると、投与量が減らされる、あるいは中止されることがある6-9)。このことが患者の転帰に影響を与えることは示されており、RAASiの最大投与量で治療を受けている患者と比較して、漸減または中止されたCKDおよびHF患者の死亡率は約2倍であった10)。7月の同社の発表では、米国および日本の臨床現場において、高カリウム血症発症後にRAASi治療の中止が依然として行われていることが示されている。 ZORA研究は、現行の高カリウム血症管理およびその臨床的影響について検証している世界規模のRWEプログラムである。ZORA研究「高カリウム血症発症後におけるジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(SZC)によるRAASi治療継続に関する研究」では、高カリウム血症発症後にRAASi治療を受けたCKDおよび/またはHFの患者を対象とし、ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(SZC、商品名:ロケルマ)の投与を120日以上受けた患者565例(米国)、776例(日本)、56例(スペイン)がSZC投与コホートに組み入れられ、カリウム吸着薬なしコホートには、カリウム吸着薬の処方を受けなかった患者2,068例(米国)、2,629例(日本)、203例(スペイン)が組み入れられた。2つ目のZORA研究「高カリウム血症を発症したCKD患者におけるRAASiの減量とESKDへの進行との関連性」では、CKDステージ3または4で、ベースライン時にRAASiを使用しており、高カリウム血症を発症した患者1万1,873例(米国)および1,427例(日本)が組み入れられた11)。高カリウム血症発症の前後3ヵ月におけるRAASiの処方状況に基づき、患者はRASSi減量群、中止群、維持群に分類された12)。 主な結果は以下のとおり。・高カリウム血症に対してSZCによる治療を行ったCKDまたはHFの患者は、治療されなかった患者と比較して、高カリウム血症の発症から6ヵ月後において、RAASi治療を維持できるオッズ比が約2.5倍となった(オッズ比:2.56、95%信頼区間:1.92~3.41、p<0.0001)11)。・末期腎不全(ESKD)※への進行リスクは、RAASi治療の維持群と比較し、中止群では73%増加、減量群で60%増加した12)。これらの結果は、高カリウム血症発症によるRAASi投与量の減量により、CKDまたはHFの患者における心腎イベントおよび死亡のリスクが増加することを示す過去のデータを裏付けた。・国別にみると、中止群におけるESKDへの進行リスクは維持群と比べて、米国では74%増加、日本では70%増加していた。なお、米国の対象患者(24.8%)に比べて日本の対象患者(62.6%)ではCKDステージ4の割合が高かったという違いがあったが、本研究により示されたRAASi治療が中止された患者におけるESKDへの進行リスクは、国によらず一貫していた。※高カリウム血症発症後6ヵ月以内に、CKDステージ5として診断あるいは透析開始と定義した。 UCLA HealthのAnjay Rastogi氏は、「高カリウム血症を積極的に管理することにより、ガイドライン5-7)で推奨されているRAASi治療を最適用量で維持することが可能となり、CKDまたはHFの患者の転帰を改善できることが明らかになった。しかし、本研究は、臨床現場で高カリウム血症発症後の心腎疾患患者に実際に起きていること、また、RAASiの減量や中止により重大な結果がもたらされ、転帰の悪化と死亡率の増加につながりうることについて、直視すべき実態を提示している」とコメントした。 AstraZeneca(英国)のエグゼクティブバイスプレジデント兼バイオファーマビジネスユニットの責任者であるRuud Dobber氏は、「今回のデータは、高カリウム血症が適切に管理されなければ、RAASiの減量や中止により、心血管疾患や腎疾患の転帰が悪化したり死亡率が増加したりする可能性があるという、過去に発表したエビデンスをさらに裏付けるものである。ロケルマは、高カリウム血症というしばしば緊急処置を要することのある疾病負荷に対応するための重要な治療戦略となる可能性がある。AstraZenecaは、ガイドライン5-7)で推奨されているRAASi治療を実施できるよう、また、より強力な心腎保護効果を患者に届けられるよう、引き続き医療従事者と協力していく」と述べている。■参考文献1)Jain N, et al. Am J Cardiol. 2012;109:1510-1513.2)Sarwar, CM. et al. J Am Coll Cardiol. 2016;68:1575-1589.3)Jager KJ, et al. Nephrol Dial Transplant. 2019;34:1803-1805.4)GBD 2016 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators. Lancet. 2017; 390:1211-1259.5)Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Diabetes Work Group. Kidney Int. 2020;98:S1-S115.6)Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Diabetes Work Group. Kidney Int. 2022;102:S1-S127.7)McDonagh TA, et al. Eur Heart J. 2021;42:3599-3726.8)Heidenreich PA, et al. J Am Coll Cardiol. 2022;79:e263-e421.9)Collins AJ, et al. Am J Nephrol. 2017;46:213-221.10)Epstein M, et al. Am J Manag Care. 2015;21:S212-S220.11)Rastogi A, et al. ZORA: Maintained RAASi Therapy with Sodium Zirconium Cyclosilicate Following a Hyperkalaemia Episode: A Multi-Country Cohort Study, presented at American Society of Nephrology Kidney Week, 1-5th November 2023, Philadelphia, PA, USA.12)Rastogi A, et al. ZORA: Association between reduced RAASi therapy and progression to ESKD in hyperkalaemic CKD patients, presented at American Society of Nephrology Kidney Week, 1-5th November 2023, Philadelphia, PA, USA.

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二重特異性抗体エプコリタマブ、LBCL3次治療以降の大きな選択肢に/ジェンマブ・アッヴィ

 2023年11月、二重特異性抗体エプコリタマブ(商品名:エプキンリ皮下注4mg、同48mg)の販売が開始された。適応は、再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)のうち、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、および再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(FL)。 販売開始に伴い、同薬剤を共同開発するジェンマブとアッヴィは11月28日にメディアセミナーを行った。本薬剤の承認根拠となったEPCORE NHL-3試験の治験責任者である国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科長 伊豆津 宏二氏が、「再発・難治性LBCLの治療戦略とアンメットメディカルニーズ」と題した講演を行い、疾患と治療の現状と薬剤の作用機序を解説し、メディアからの質問に答えた。――LBCLはリンパ系に発生するがんである非ホジキンリンパ腫(NHL)の1つ。日本において悪性リンパ腫の90%以上を占めるNHLの総患者数は約12.4万人と推定されており、NHLのうち30%強をDLBCLが占めるとされる。好発年齢は65~75歳と高齢者に多い疾患だ。――LBCLの標準初回治療は、多剤併用の化学療法(R-CHOP療法、Pola-R-CHP療法)であり、6割程度の患者はこれで治癒するが、残りは再発難治となる。2次以降の治療戦略は自家移植の適応があるかで異なるが、移植で治癒に至る患者は限られ、1)再発難治後は多剤併用化学療法が奏効しにくい、2)移植後の再発が多い、3)年齢等の要因で自家移植適応の患者自体が限られる、といった要因から、2次治療不応例の効果的な治療選択肢がないことが問題となっていた。――2019年にDLBCL 3次治療にCAR-T療法が承認され、国内では3剤が使えるようになっているが、CAR-T療法にも1)実施できる施設が限られる、2)製剤と治療開始までに時間を要する、3)CAR-T療法後でも半数以上が再発難治となる、といった課題が残されている。――こうした状況で登場したエプコリタマブは、T細胞上のCD3とB細胞上のCD20に同時に結合する二重特異性抗体薬であり、海外第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-1/GCT3013-01試験)および国内第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-3/GCT3013-04試験)の結果に基づいて承認された。――EPCORE NHL-3試験の奏効率は55.6%、完全奏効率は44.4%だった。主な有害事象はサイトカイン放出症候群(CRS)で全体の83%で発生し、Grade3はうち8%であったが、治療中止に至った例はなかった。初回、2回目までごく少量を投与し、3回目にfull doseを投与するステップアップ投与を行い、有害事象の多くが3回目の治療直後に起こるためマネジメントがしやすい。 講演後の質疑応答では、CAR-T療法との使い分けに関する質問が多く出た。伊豆津氏は「エプコリタマブは承認直後でエビデンスに乏しく、現時点ではガイドラインも含め、CAR-T療法が優先される。しかし、CAR-T療法が実施できない施設、CAR-T療法の実施を待てないケースなどでは、エプコリタマブも選択肢となりうるだろう。また、エプコリタマブ承認に至った治験にはCAR-T療法治療歴のある患者も含まれており、奏効率に大きな差はなかったことから、CAR-T療法不応例への治療選択肢となりうる点も魅力だ」とした。さらに「二重特異性抗体の単剤投与、あるいは化学療法やCAR-T療法との併用戦略は今後の大きなテーマであり、長期データの蓄積が待たれる」とした。

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レビー小体型認知症とアルツハイマー病の鑑別におけるCISの診断精度

 レビー小体型認知症(DLB)の国際診断基準に取り入れられているcingulate island sign(CIS)は、アルツハイマー型認知症(AD)との鑑別診断に用いられる。最近の研究では、DLBにおけるCIS比は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアに応じて変化することが示唆されている。東京慈恵会医科大学の浅原 有揮氏らは、DLBとADを鑑別において、CIS比の診断精度(感度および特異度)がMMSEスコアに応じてどのように変化するかを評価するため、本研究を実施した。Journal of the Neurological Sciences誌2023年12月15日号の報告。 対象は、18F-FDG PETを実施しMMSEを完了したDLB患者22例、アミロイド陽性AD患者26例。MMSEスコアに応じて、3群に分類した(A群:MMSE24超、B群:MMSEスコア20以上24以下、C群:MMSEスコア20未満)。各群において、DLB患者とAD患者のCIS比を比較し、ROC曲線分析を実施して感度および特異度を算出した。 主な結果は以下のとおり。・B群では、DLB患者のCIS比はAD患者よりも有意に高かったが(p=0.0005)、A群(p=0.5117)およびC群(p=0.8671)では、この関係は認められなかった。・ROC曲線分析では、DLBとADを鑑別するためのCIS比の感度および特異度は、各群において以下のとおりであった。 【A群】感度:66.7%、特異度:77.8% 【B群】感度:91.7%、特異度:100.0% 【C群】感度:75.0%、特異度:66.7% 著者らは「DLBとADの鑑別におけるCIS比の診断精度は、MMSEスコアに応じて変化が認められ、MMSEスコアが20以上24以下の場合で、感度および特異度が高くなることが示唆された」ことを報告した。

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新規発症1型糖尿病へのバリシチニブ、β細胞機能を維持/NEJM

 発症100日以内の10~30歳の1型糖尿病患者に対し、バリシチニブの48週間経口投与は、プラセボ投与と比較して、混合食負荷後のC-ペプチド濃度で測定したβ細胞機能を維持すると思われることが、オーストラリア・St. Vincent's Institute of Medical ResearchのMichaela Waibel氏らによる第II相の二重盲検プラセボ対照無作為化試験で示された。バリシチニブなどJAK阻害薬は、サイトカインシグナル伝達を阻害することで、いくつかの自己免疫疾患に対して有効な疾患修飾薬である。バリシチニブが1型糖尿病のβ細胞機能を維持可能かどうかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年12月7日号掲載の報告。対プラセボで、2時間混合食負荷試験中のC-ペプチド濃度平均値を比較 研究グループは2020年11月~2022年2月に、オーストラリアの医療機関4ヵ所を通じて、1型糖尿病の診断後100日以内の10~30歳を対象に試験を開始した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはバリシチニブ(1日1回4mg)を48週間経口投与、もう一方にはプラセボを投与した。 主要アウトカムは、48週時点の2時間混合食負荷試験中の平均C-ペプチド濃度で、濃度-時間曲線下面積で算出した。副次アウトカムは、糖化ヘモグロビン値のベースラインからの変化、1日インスリン投与量、持続血糖モニタリングで評価した血糖コントロールの指標などだった。1日インスリン投与量、糖化ヘモグロビン値は両群同等 被験者総数は91例(バリシチニブ群は60例、プラセボ群は31例)だった。 48週時点の混合食負荷後平均C-ペプチド濃度の中央値は、バリシチニブ群は0.65 nmol/L/分(四分位範囲[IQR]:0.31~0.82)、プラセボ群0.43 nmol/L/分(0.13~0.63)だった(p=0.001)。 48週時点の1日インスリン投与量平均値は、バリシチニブ群0.41 U/kg/日(95%信頼区間[CI]:0.35~0.48)、プラセボ群で0.52 U/kg/日(0.44~0.60)だった。糖化ヘモグロビン値平均値も両群で同等だった。 一方で、48週時点の持続血糖モニタリングによる血糖値の変動係数平均値は、バリシチニブ群29.6%(95%CI:27.8~31.3)、プラセボ群33.8%(31.5~36.2)だった。 有害事象の発現頻度および重症度は両群で同程度で、重篤な治療関連有害事象は報告されなかった。

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医師が医師に薦める、今年買ってよかったモノ【CareNet.com会員アンケート結果発表】

歴史的な物価上昇が続いた2023年。こんなときだからこそ、良い商品にお金を使っていきたいものではないでしょうか。CareNet.comの会員医師1,000人に、「今年買ってよかったモノ」をお聞きしました。先生方のおススメコメントとともにご紹介します。1.掃除機、洗濯機、トースターなど家電のおススメは?【家電部門】2.パソコンやスマホ、イヤホンなど周辺機器のおススメは?【PC&ガジェット部門】3.電気自動車?ハイブリット車?それとも…?【自動車部門】4.寝具、キッチン用品など、さまざまなおススメ商品【その他】5.番外編:サブスクや宅配サービスのおススメ1.掃除機、洗濯機、トースターなど家電のおススメは?【家電部門】[掃除機]ルンバ「j9+はゴミの収集も自動(消化器外科、30代)」「勝手に掃除してくれてゴミも収集してくれて、時短になる(内科、60代)」「すごく性能が良く、いつもベッドの下まできれいになっている(消化器外科、30代)」ダイソン「あまり汚れてないと思ったところでもかなり埃が吸えている(内科、30代)」「モップがけもできて大変良い(消化器内科、60代)」「吸引力が違う(精神科、30代)」シャーク「ハンディクリーナー:ごみ捨てが簡単で細かいところまで掃除が行いやすい(整形外科、40代)」「スティック型掃除機:コードレスで置場所もとらない(その他、50代)」その他メーカー「シャープ コードレス掃除機(最上位機種):ダイソンを使っていたが、シャープは音も静かで軽くて、吸引力も変わらなかった(心臓血管外科、50代)」「パナソニック ルーロ:スマホから操作できる(消化器内科、30代)」「エコバックス DEEBOT T20 OMNI:毎日帰るときれいな床が保たれていて最高(神経内科、30代)」[ドラム式洗濯乾燥機/乾燥機]「パナソニック:仕上がりがフワフワと口コミで見て購入したが本当だった。乾燥機つき洗濯機は乾燥がしっかりできるかが問題だが、満足できるレベル(内科、40代)」「東芝:圧倒的に生活が楽になった(臨床研修医、20代)」「アクア:コスパが良い(内科、40代)」「リンナイ 乾太くん:ガス式乾燥機は時短!(整形外科、40代)」[空気清浄機]「Airdog mini portable:車内の換気がすばらしかった(その他、50代)」「シャープ 加湿空気清浄機プラズマクラスター:今年ぜんそくにかかったが空気清浄機で改善した気がする(脳神経外科、30代)」[調理家電]トースター「アラジン:表面がカリッとしてめちゃくちゃ美味しく温まる(耳鼻咽喉科、40代)/立ち上がりが早い(呼吸器内科、60代)」「バルミューダ:パンがおいしく焼ける(血液内科、30代)」オーブンレンジ「バルミューダ:日々楽しい(心臓血管外科、50代)」「パナソニックビストロ:賢すぎる(臨床研修医、20代)」その他「Toffy ホットサンドメーカー:簡単においしいホットサンドが作れる(内科、60代)」「ソーダストリーム:家で気軽に炭酸が飲める(内科、20代)」「デロンギ コーヒーメーカー:おいしい(放射線科、30代)/エスプレッソメーカー:自宅で手軽にカフェラテが飲め、買ってよかった(小児科、30代)」「シャープ ヘルシオホットクック:発酵食品から煮物、煮込み料理まで料理の幅が広がる(皮膚科、40代)」「パナソニック ホームベーカリーSDMDX4:自宅でおいしいパンが焼ける(産婦人科、30代)」[その他]「ソニー 有機ELテレビ(BRAVIA):画像がきれい(泌尿器科、50代)」「パナソニック15V型ハイビジョンポータブル液晶テレビ(プライベート・ビエラ):家じゅう持ち歩けて便利(呼吸器内科、50代)」「ブラウン 電動歯ブラシOral-B:強力に汚れを落としてくれる(内科、40代)」「フィリップス 電動歯ブラシ:時短になる(小児科、30代)」「パナソニック ヘアドライヤーナノケアEH-NA0J:コンパクトなのに速乾・大風量で、熱くなり過ぎず、潤いを保った毛質をkeepできるすぐれもの(脳神経外科、50代)」2.パソコンやスマホ、イヤホンなど周辺機器のおススメは?【PC&ガジェット部門】[パソコン]「MacBook Air:見た目がおしゃれで使い心地が良い(内科、50代)」「MacBook Pro:早い(消化器外科、40代)/おしゃれで高機能(精神科、40代)」「Mac mini:小型で性能が良く、価格も適切(血液内科、70代以上)」「マイクロソフト Surface Go 3:軽くて持ち運びしやすい。スライド作りにもweb講演聞くのにもネット見るのにも、wifi環境があれば使えてとても便利(リハビリテーション科、50代)」「パナソニック Let's note:壊れにくく優秀(小児科、60代)」「NEC LavieA23:Web会議に使用しやすいデスクトップを購入。オールインワン型で非常にコンパクトであり、かなりハイスペック(腎臓内科、40代)」「dynabook:毎日使用するものは高くても最新のものを買うと満足度がとても高い(外科、30代)」[スマートフォン]「iPhone15:写真がきれい(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)/快適(消化器内科、50代)」「iPhone15pro:カメラ、操作性が格段に向上(脳神経外科、60代)/散々な評判に反して、熱くならないし、電池持ちもよいし、ProMotionテクノロジーも想像以上に良い(放射線科、40代)/写真が誰でも超きれいにとれる(内科、60代)」「iPhone15ProMAX:カメラの5倍ズームで写真を撮る楽しみが倍増する(麻酔科、30代)」「iPhone SE3:コスパがよい(消化器内科、40代)」「Xperia:7年ぶりに機種変更したが、スピードも使い勝手も断然良い(精神科、50代」[タブレット]「iPad mini 6:携帯性と性能が良い(消化器内科、60代)」「iPad Pro:使い勝手がよく、作業がはかどる。モチベーションも上がる(小児科、30代)」「Amazon Fire:セールで買ったから安かったし、使い勝手も良い(整形外科、40代)」「Androidのタブレット:ほとんどの作業はこれですんでしまうので、最近Windowsはいらないかなと思うようになった(外科、50代)」[イヤホン・ヘッドホン]「AirPods Pro(第2世代):低音の出がすごい(眼科、70代以上)」「OpenComm骨伝導イヤホン:骨伝導なので耳が痛くならず、周囲の環境にも注意を払える(放射線科、30代)」「オーディオテクニカ 骨伝導イヤホンATHCC500BT:待合室のような静かな環境で聴くのに最適(その他、50代)」「Anker Bluetooth5.0ワイヤレスヘッドホンSoundcoreLifeQ20+:性能が良かった(神経内科、50代)」[その他]「Apple Watch:体を動かすこと、睡眠を取ることを意識するようになった(眼科、50代)/スマホからの離脱ができる(腎臓内科、20代)/生活が便利になった(内科、20代)」「Google Chromecast:テレビでのプレゼンに便利(精神科、40代)」「Amazon Alexa:声だけでライトの点灯消灯、テレビ・エアコン・扇風機のオンオフ、カーテンの開け閉めまでらくちんになった。リモコンがほとんど不要になりサイドテーブルが広く使えるようになった(放射線科、60代)」「GERCEO モバイルバッテリー(GERCEOHP8):複数の充電方法に対応しており、日常でも災害発生時でも役立つ(麻酔科、40代)」「エレコム パッド型iPhone充電器:iPhoneにわざわざケーブルを刺す必要がなく非常に重宝(整形外科、30代)」「EXARM ZETA モニターライト:買ってから目が疲れにくくなった(小児科、40代)」「ロジクールマウス:一度使うとやめられない(放射線科、40代)」「おもいでばこ:写真や動画の保管、整理に非常に便利。ふるさと納税の商品にある(膠原病・リウマチ科、30代)」「RayCue DisplayPortHDMI変換アダプタ:PCからモニタへ接続するDsubケーブルがごつくて邪魔でネジ止めが面倒。PCのモニタ出力からHDMIに変換して通常のHDMIケーブルで自在に接続できる(整形外科、70代以上)」3.電気自動車?ハイブリット車?それとも…?【自動車部門】[トヨタ]「シエンタ:多人数で乗ることができて燃費が良い(消化器外科、60代)」「ヤリス クロス:比較的安価で安全装備が充実(糖尿病・代謝・内分泌内科、60代)」「ノア:子連れには最適なファミリーカー(麻酔科、30代)」「プリウスの新車:安全装備が充実(消化器外科、60代)」[日産]「アリア:加速や走行性、静寂性が素晴らしい(内科、60代)」「サクラ:通勤の足に最高です(神経内科、50代)」「セレナ:運転が楽(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)」[他メーカー]「スバル レガシィアウトバック:いい車です(整形外科、50代)/とてもいい車です(内科、50代)」「スバル XV:オートクルーズ機能がとても良い。運転の負担が軽減された(臨床研修医、40代)」「マツダ CX8:6~7人乗りのSUV。国産車SUVの中で唯一まともに座れる3列目。インテリアの質感は国産SUVの中でも有数の出来。希少なディーゼルエンジンがある(循環器内科、40代)」「ホンダ フィット:エコカーでしっかりしていて満足(産婦人科、50代)」「メルセデス・ベンツ 新型Cセダン:ISGで電動化された(内科、60代)」「BMW X3:燃費良く静粛(小児科、60代)」「TESLA ModelX:多少値は張るものの優れた性能と唯一性がある(形成外科、30代)」「フォルクスワーゲン Golf GTI:加速の良さ、日常の走行の安定(脳神経外科、50代)」「ポルシェ 911:楽しい(糖尿病・代謝・内分泌内科、50代)」「ロータス エミーラ:ロータス最後の純ガソリンスポーツカー(脳神経外科、50代)」4.寝具、キッチン用品など、さまざまなおススメ商品【その他】[寝具など]「エマ・スリープ マットレス:睡眠の質が格段に上がった(糖尿病・代謝・内分泌内科、20代)」「コアラマットレス:寝心地がよい(内科、40代)」「トゥルースリーパー プレミアベッドマットレス:A社ポイントで入手したが、畳でも布団より快適(内科、60代)」「DryCool 高密凸凹ウレタンマットレス:反発性強いマットで、睡眠の質が上がった(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)」「西川 マットレス:大谷翔平も選んだ寝心地の良さ(循環器内科、40代)」「西川 オーダー枕:肩こりが解消され、毎晩眠ることが楽しみになった(精神科、30代)」「シルクの枕カバー:当直中も枕カバーを付け替えるだけで良い睡眠になる(内科、20代)」「リライブシャツ:途中で目が覚めることなく眠れる(皮膚科、30代)」[その他]「レンジメート:干物もギョーザもステーキも嘘みたいにうまくできる。片付けも楽。忙しい先生方にはうってつけと思う(整形外科、50代)」「ルピシア 茶こしマグモンポット:日々忙しい中でもおいしい紅茶を手軽に味わえる時間が今の癒し。食洗機も使える(精神科、20代)」「タイガー 真空断熱炭酸ボトル(MKB-T048):炭酸、食洗器対応ながらシンプルな構造で、炭酸以外の普段使いにも良い(整形外科、50代)」「松徳硝子 うすはりタンブラー:飲み物が美味しく飲める(皮膚科、20代)」「SHINfilter ステンレスコーヒーフィルター:コーヒーの味の変化に驚かされる(小児科、40代)」「ロールシュライファー 包丁研ぎ:自炊する必要に迫られた時の相棒(ナイフ)の手入れに最適!(総合診療科、60代)」「パナソニック LEDネックライト:薄暗いところでの書類の記載等、細かい作業の際手元だけを照らしてくれるため、周囲に影響が少なく非常に便利(総合診療科、50代)」「SUWADA クラシックつめ切り:ニッパー式だが、切れ味が全然違う(精神科、50代)」「リファ ファインバブル:よく落ちる(内科、50代)」5.番外編:サブスクや宅配サービスのおススメ「Kindle Unlimited:好きな漫画がかなり読める、当直の暇つぶしになる(耳鼻咽喉科、40代)」「nosh 冷凍宅配おかず:冷凍食品だが、バランスがいい(臨床研修医、20代)/手軽においしいご飯が食べられる(臨床研修医、20代)」「ワタミの宅食 あっとごはん:子育てを機にはじめたが、とても便利で楽!(眼科、30代)」アンケート概要アンケート名『2023年を総まとめ!今年の漢字と他の医師にも薦めたい今年の購入品をお聞かせください』実施日   2023年11月8日~15日調査方法  インターネット対象    CareNet.com医師会員有効回答数 1,029件

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TN乳がん導入療法後のペムブロ、オラパリブ併用vs.化療併用(KEYLYNK-009)/SABCS2023

 ペムブロリズマブ+化学療法による導入療法で臨床的有用性が得られた切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象に、その後の維持療法としてペムブロリズマブ+オラパリブとペムブロリズマブ+化学療法の有効性と安全性を比較した第II相KEYLYNK-009試験の結果を、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。その結果、ペムブロリズマブ+オラパリブ群はITT集団では無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善しなかったが、BRCA変異陽性集団においては良好な傾向にあり、治療関連有害事象(TRAE)は少ないことが明らかになった。・対象:導入療法としてカルボプラチン(AUC2を3週ごとに1・8日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2を3週ごとに1・8日目)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を4~6サイクル投与し、完全奏効(CR)/部分奏効(PR)/病勢安定(SD)が得られた切除不能な局所再発または転移を有するTNBC患者 271例・試験群:オラパリブ(300mg、1日2回)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと、導入療法を含めて35サイクルまで)【ペムブロ+オラパリブ群:135例】・対照群:カルボプラチン(AUC2を3週ごとに1・8日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2を3週ごとに1・8日目)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと、導入療法を含めて35サイクルまで)【ペムブロ+化学療法群:136例】・評価項目:[主要評価項目]ITT集団におけるRECIST v1.1を用いた盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、OS[副次評価項目]PD-L1 CPS≧10およびBRCA変異陽性集団におけるPFSおよびOS、安全性・層別化因子:導入療法の臨床的有用性(CR/PR/SD)、PD-L1発現状況(CPS≧1/CPS<1)、腫瘍のBRCA変異 主な結果は以下のとおり。・導入療法を受けた460例のうち、271例がペムブロ+オラパリブ群またはペムブロ+化学療法群に1:1に無作為に割り付けられた。2022年12月15日のデータカットオフ時点での追跡期間中央値は17.2ヵ月であった。・ベースライン時のペムブロ+オラパリブ群およびペムブロ+化学療法群の年齢中央値はそれぞれ54歳/52歳、PD-L1 CPS≧10は48.1%/47.8%、BRCA変異陽性は21.5%/22.1%、CRまたはPRは70.4%/70.6%で、両群でバランスがとれていた。・ITT集団におけるPFS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群5.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~8.3)、ペムブロ+化学療法群5.6ヵ月(4.3~6.9)で、ハザード比(HR)は0.98(0.72~1.33)であった(p=0.4556)。12ヵ月PFS率はそれぞれ33.3%(24.5~42.3)、29.3%(21.2~37.8)であった。・ITT集団におけるOS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群25.1ヵ月(95%CI:18.3~NR)、ペムブロ+化学療法群23.4月(15.8~NR)で、HRは0.95(0.64~1.40)であった。18ヵ月OS率はそれぞれ62.0%(51.9~70.6)、55.7%(45.5~64.7)であった。・BRCA陽性集団のPFS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群(12.4ヵ月[95%CI:8.3~NR])のほうが、ペムブロ+化学療法群(8.4ヵ月[5.4~NR])より長かった(HR:0.70[0.33~1.48])。しかし、PD-L1 CPS≧10集団ではそれぞれ5.7ヵ月(2.9~13.9)および5.7ヵ月(3.8~7.6)で同程度であった(HR:0.92[0.59~1.43])。・BRCA陽性集団のOS中央値はペムブロ+オラパリブ群はNR(95%CI:17.1~NR)、ペムブロ+化学療法群は23.4ヵ月(17.3~NR)であった(HR:0.81[0.28~2.37])。PD-L1 CPS≧10集団では両群ともNR(17.0~NR vs.15.5~NR)であった(HR:0.97[0.53~1.76])。・治療患者268例において、TRAEはペムブロ+オラパリブ群で114/135例(84.4%)、ペムブロ+化学療法群で128/133例(96.2%)に発現した。Grade3以上のTRAEはそれぞれ44例(32.6%)、91例(68.4%)に発現し、治療中止に至ったTRAEは12例(8.9%)、26例(19.5%)であった。ペムブロ+化学療法群において死亡が2例(1.5%)認められた。安全性プロファイルとは既知のものと一致していた。 これらの結果より、Rugo氏は「導入療法で臨床的有用性が得られた再発・転移TNBC患者が化学療法を中止してペムブロリズマブ+オラパリブの維持療法を行った場合、ペムブロリズマブ+化学療法を継続した場合と同等の有効性が得られ、安全性プロファイルはより良好である」とまとめた。

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外傷患者への人工呼吸器の深呼吸機能は有効か/JAMA

 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のリスク因子を有し、人工呼吸器による管理を受けている外傷患者では、通常ケア単独と比較して、通常ケアに人工呼吸器による深呼吸を追加しても、28日目まで人工呼吸器不要日数は増加しないが、死亡率は改善したとの結果が、米国・コロラド大学のRichard K. Albert氏らが実施した「SiVent試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年11月28日号で報告された。米国15施設の実践的な無作為化試験 SiVent試験は、米国の15の外傷治療施設が参加した実践的な無作為化試験であり、2016年4月~2022年9月の期間に患者の無作為化を行った(Department of Defense Peer-Reviewed Medical Research Program Clinical Trial Awardの助成を受けた)。 年齢18歳以上、人工呼吸器の使用時間が24時間未満の外傷患者で、ARDS発症の5つのリスク因子のうち1つ以上を有し、今後の人工呼吸器の使用時間が24時間以上、生存期間が48時間以上と予測される患者524例(平均年齢43.9[SD 19.2]歳、男性75.2%)を登録し、通常ケア+人工呼吸器による深呼吸を行う群(深呼吸群)に261例、通常ケアのみを行う群(通常ケア群)に263例を無作為に割り付けた。 深呼吸群では、人工呼吸器により6分ごとにプラトー圧35cmH2O(BMI値>35の患者は40cmH2O)の深呼吸を導入し、通常ケア群では、医師が患者の希望に応じて治療を行うこととした。 主要アウトカムは、人工呼吸器不要日数(VFD)とし、28日目までの、侵襲的換気の再導入がなく、呼吸補助なしの日数と定義した。副次アウトカムは、28日目までの全死因死亡などであった。抜管成功までの期間は深呼吸群で短い 28日目までのVFD中央値は、深呼吸群が18.4日(四分位範囲[IQR]:7.0~25.2)、通常ケア群は16.1日(1.1~24.4)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.08)。VFDの補正前平均群間差は1.9日(95%信頼区間[CI]:0.1~3.6)、事前に規定された補正後平均群間差は1.4日(95%CI:-0.2~3.0)だった。 抜管成功までの期間は深呼吸群のほうが短かった(部分分布ハザード比[HR]:1.21、95%CI:1.00~1.47、p=0.05)。 また、28日死亡率は、通常ケア群が17.6%(46/261例)であったのに対し、深呼吸群は11.6%(30/259例)と良好であった(オッズ比[OR]:0.61、95%CI:0.37~1.00、p=0.05)。死亡の補正前HRは0.64(95%CI:0.41~1.02、p=0.06)、同補正後HRは0.70(0.43~1.15、p=0.16)だった。非致死性の重篤な有害事象の頻度はほぼ同じ ICU非入室日数中央値は、深呼吸群が13.7日(IQR:2.0~20.6)、通常ケア群は11.9日(0~20.0)であった(p=0.10)。 合併症の発生率には、両群間に差を認めなかった。また、非致死性の重篤な有害事象の割合は、深呼吸群で30.9%(80/259例)、通常ケア群で30.7%(80/261例)と両群で同程度であったが、深呼吸群で低血圧(2.7%[7例]vs.0%)が多くみられた。 著者は、「死亡率が低下し、合併症が増加しなかったことなどから、人工呼吸器による深呼吸の導入は忍容性が高く、臨床アウトカムを改善する可能性があることを示唆する」と指摘し、「深呼吸と死亡率低下を結び付けるメカニズムは推測しかできない」としている。

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ピーナツアレルギーを特殊な歯磨き粉で治療できる?

 ピーナツなど特定の食品にアレルギーを持つ人に対する治療用歯磨き粉の開発に向けた第1相臨床試験の結果を、米オレンジ郡小児病院(CHOC)の小児アレルギー専門医であるWilliam Berger氏らが、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(ACAAI 2023 Annual Scientific Meeting、11月9~13日、米アナハイム)で発表した。口腔粘膜免疫療法(oral mucosal immunotherapy;OMIT)と呼ばれるこの免疫療法は、医師などの専門家の監視下でアレルゲンとなっている物質を、少しずつ量を増やしながら摂取する「経口免疫療法」にひと工夫加えたもので、多くの免疫応答細胞が分布する口腔粘膜を通じた減感作を目指す。 この治療では、患者は、ピーナツタンパク質が配合された特別な歯磨き粉(以下、ピーナツ歯磨き粉)で歯を磨きさえすればよい。INT301と呼ばれるこの歯磨き粉は1回量ずつ処方され、減感作療法と同時に歯をきれいにする役目も果たす。Berger氏は、「この免疫療法では注射の必要はなく、1日1回、歯を磨くだけで投与できる便利なものだ。何かを食べる必要も準備する必要もない。ただ、いつも通り朝起きたら歯を磨くだけで良い」と説明する。 Berger氏らは同試験で、ピーナツアレルギーのある18~55歳の成人32人を、48週間にわたってピーナツ歯磨き粉を徐々に増量しながら使用する群と、プラセボを使用する群のいずれかにランダムに割り付けた。 その結果、ピーナツ歯磨き粉を使用した全ての患者で事前に設定されていた最高用量に対して一貫して忍容性を示すことが確認された。また、中等度あるいは重度の全身反応は認められず、非全身反応が生じた場合でも、そのほとんどは軽度かつ一時的な口腔内のかゆみだった。Berger氏は、「われわれが実施した試験から、極めて優れた安全性のデータが得られた」としている。さらに、試験に参加した患者のピーナツ歯磨き粉による治療の遵守率は97%で、治療を中止した患者はいなかった。こうした結果からBerger氏は、このピーナツ歯磨き粉がピーナツアレルギーの患者にとって安全で便利な治療選択肢の一つになるとの見解を示している。 この第1相試験は、ピーナツ歯磨き粉を高用量使用した場合の安全性と治療の遵守率、忍容性を評価する目的で実施された。このピーナツ歯磨き粉の製造企業は、得られた結果を米国の規制機関である米食品医薬品局(FDA)に提出し、FDAは4歳から17歳の小児患者を対象とした試験の実施にゴーサインを出した。 この研究には関与していない、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院食物アレルギー・センター長のJoyce Hsu氏は、この試験とピーナツ歯磨き粉について「興味深い」としながらも、より多くのデータとその原理の実証が必要だと話している。同氏はまた、ピーナツ歯磨き粉の製造企業にこの試験の研究者が関与していることを指摘。その上で、本試験の結果について、外部研究者による独立した検証が必要であると述べている。 Hsu氏によると経口免疫療法の相対的な有効性に関するデータが増えつつある一方、食物アレルギーに対する舌下免疫療法に関するデータも蓄積されつつあるという。舌下免疫療法とは、アレルゲンを少量ずつ摂取する代わりに、アレルゲンを含む液体を舌の下に保持して口から吸収させる方法だ。 Hsu氏は「われわれは食物アレルギーの患者の生活をより安全なものにするための新たな方法を常に探し求めているが、そのメカニズムと投与方法の両方を検証する真に優れた研究を行うことが重要だ。そして、安全性だけでなく確実に有効であることを確認することで、効果が得られない治療を行わないようにする必要がある」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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うがいと鼻洗浄がコロナ感染による入院リスクを低減か

 新型コロナウイルスに感染した際には、生理食塩水でうがいと鼻洗浄(鼻うがい)をすることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクを低減できる可能性のあることが、小規模研究で明らかになった。米テキサス大学ヒューストン医療科学センター産婦人科・生殖科学分野教授のJimmy Espinoza氏らによるこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(ACAAI 2023 Annual Scientific Meeting、11月9~13日、米アナハイム)で発表された。 この研究では、2020年から2022年の間に新型コロナウイルスのPCR検査で陽性が確認された58人(18〜65歳)を、低濃度(27人、平均年齢39歳)または高濃度(28人、同41歳)の生理食塩水でうがいと鼻洗浄をする群にランダムに割り付け、COVID-19の症状の発症頻度や持続期間、転帰(入院、集中治療室入室、機械的人工換気によるサポート、死亡)について比較を行った。対照者は、本試験期間中に新型コロナウイルスに感染した9,398人(平均年齢45歳)とした。生理食塩水は、8オンス(約237mL)のお湯に2.13gの塩を溶かした場合を低濃度、6gを溶かした場合を高濃度とし、対象者には1日4回、14日にわたってうがいと鼻洗浄を行ってもらった。対象者のうちの3人は追跡不能となった。 その結果、入院率は低濃度群で18.5%、高濃度群で21.4%であったのに対して対照群では58.8%であり、生理食塩水によるうがいと鼻洗浄を行った群では濃度の高低にかかわらず、対照群よりも入院率が有意に低いことが明らかになった(P<0.001)。それ以外の検討項目については、いずれの群でも対照群との間に有意な差は認められなかった。 Espinoza氏は、「われわれの目的は、生理食塩水によるうがいと鼻洗浄が、新型コロナウイルス感染に伴う呼吸器症状の改善と関連するかどうかを確認することだった。検討の結果、高濃度または低濃度のいずれであっても生理食塩水でうがいと鼻洗浄を行った人では、対照群と比べてCOVID-19による入院率が低いことが明らかになった」と話す。その上で同氏は、「この生理食塩水によるうがいと鼻洗浄の効果に関する結果は、より大規模な試験で検証する必要がある。また、この方法が新型コロナウイルスのあらゆる株に有効であるかどうかについての検討も必要だ」と述べている。 ただしEspinoza氏は、生理食塩水によるうがいや鼻洗浄がワクチン接種や抗ウイルス薬に取って代わるものではないことを強調している。同氏は、「うがいや鼻洗浄は非常に単純な介入だが、われわれが臨床で行っている介入に取って代わるものではない。しかし、実施の容易さから、補完的な介入にはなるだろう。実際、塩は安価な上にどこででも入手可能だ」と話す。 一方、この研究には関与していない、米ノースショア大学病院の感染症専門医であるBruce Hirsch氏は、「生理食塩水によるうがいや鼻洗浄をCOVID-19の治療の一部とするには時期尚早だ」との見方を示す。同氏は、「ささいな介入ではあるが、私は、生理食塩水によるうがいや鼻洗浄を患者に勧めるのはもう少し様子を見てからにしたいと考えている」とコメントしている。

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英語で「ミュートになっていて聞こえません」は?【1分★医療英語】第109回

第109回 英語で「ミュートになっていて聞こえません」は?《例文1》 Hey, can you please turn off your mute? We're having trouble hearing you.(あの、ミュートをオフにしてもらえませんか? 声が聞こえていません)《例文2》I'm afraid we can't hear you, as you are still on mute. Could you please unmute yourself?(すみませんが、まだミュートになっていて声が聞こえません。ミュートを解除していただけますか?)《解説》この“You are on mute.”という英語表現は、オンライン会議やビデオチャットなどで使用されることの多い表現で、新型コロナのパンデミック以降、急速にその使用頻度が増えました。相手がミュートになっているため、自分の側に相手の声が聞こえてこないことを伝えるのに用いられる表現です。加えて、「ミュートを解除してほしい」と伝えるためには、《例文1》のように“turn off your mute”と言うか、《例文2》のように“unmute yourself”という表現を用いることができます。逆に、参加者が“mute”にしておらず、雑音が入ってしまっている状態の時には“Could you please mute yourself?”と言って、ミュートにしてもらうようにします。このように、“mute”は名詞としても動詞としても用いることができます。以上のように、“I can't hear you because you are on mute.”は、オンライン会議などでよく使われる表現ですので、ぜひ覚えておきましょう。講師紹介

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第193回 米国のゲノム編集治療の幕開け~鎌状赤血球症の遺伝子編集治療を英国に次いで米国も承認

米国のゲノム編集治療の幕開け~鎌状赤血球症の遺伝子編集治療を英国に次いで米国も承認2008年の胎児ヘモグロビン(HbF)抑制遺伝子BCL11A同定の報告1)から15年の月日が過ぎ、そのBCL11A狙いの遺伝子(ゲノム)編集による鎌状赤血球症(SCD)治療Casgevy(exagamglogene autotemcel[exa-cel])を英国に次いで米国もこの週末8日に承認しました2,3)。米国ではおよそ10万例がSCDを患います。同国のアフリカ系アメリカ人(African Americans)に最も多く生じますが、より少ないながらヒスパニック系にも認められます。SCDは体の隅々に酸素を運ぶ赤血球のタンパク質ヘモグロビンを作る遺伝子の変異を根本原因とします。その変異のせいでいびつな「鎌状」に変形した赤血球が血流を滞らせ、体内の組織への酸素運搬を妨げます。鎌状赤血球で血管がいよいよ詰まると、体の自由を奪う激痛の血管閉塞発作(vaso-occlusive crisis:VOC)が発生します。VOCを何度も繰り返すことは致命的な体の障害や若くしての死をもたらします。米国のバイオテクノロジー企業Vertex Pharmaceuticals社がCRISPR Therapeutics社と組んで開発したCasgevyは、VOCを繰り返す12歳以上のSCD患者を対象に今回米国で承認されました。CasgevyはFDAが初めて承認したCRISPR遺伝子編集技術込み治療となりました。Casgevyは患者それぞれから採取した造血幹細胞(HSC)をゲノム編集技術CRISPR/Cas9を利用してHbFが作られるようにBCL11A封印加工したものであり、加工が済んだら急速静注によってそれぞれの患者に1回きり投与されます。HbFは胎児の体内で酸素を運ぶヘモグロビンの一種であり、SCD患者のHbFを増やすことは赤血球の鎌状化を防ぎます。CasgevyはそのHbF増加をもたらし、赤血球がより作られて機能するようにし、VOCをSCD患者が被らずに済むようになることを目指します。Casgevyが投与された31例の長期追跡でVOCの抑制効果が裏付けられています。31例は先立つ2年間に1年あたり4回近く重度のVOCを被っていましたが、Casgevy投与後2年間は2例を除く29例(93.5%)が少なくとも1年間を通してVOCなしで過ごすことができました4)。VOCを繰り返す患者の米国での生涯の医療費は400~600万ドルと推定されています。そのような経済的負担などを考慮して定価220万ドル5)のCasgevyの価値は判断されるでしょう。Casgevyの投与には幹細胞移植の専門的経験が必要です。ゆえにVertex社はCasgevyを投与できる治療拠点を米国全域に設けるべく経験豊富な病院に掛け合っています。すでに以下の病院は受け入れ可能となっています。マサチューセッツ州ボストンのBoston Medical CenterワシントンDCのChildren’s National Hospitalカリフォルニア州ロサンゼルスのCity of Hope Children’s Cancer Centerテキサス州ダラスのMedical City Children’s Hospitalテキサス州サンアントニオのMethodist Children’s Hospitalオハイオ州コロンバスのNationwide Children’s Hospitalテネシー州ナッシュビルのThe Children’s Hospital at TriStar Centennialオハイオ州コロンバスのThe Ohio State University Comprehensive Cancer Center - James Cancer Hospital and Solove Research Instituteイリノイ州シカゴのUniversity of Chicago/Comer Children’s Hospital今回のFDA承認によりVertex社は提携会社にしてCasgevyの生みの親であるCRISPR社に達成報奨金2億ドルを払います。主導権はVertex社にあり、同社がCasgevyの開発、製造、販売を行います。FDAはCasgevyに加えて別のSCD遺伝子治療Lyfgenia(lovotibeglogene autotemcel、lovo-cel)も時を同じくして承認しました2,6)。Lyfgeniaは鎌状化赤血球を生じ難くするヘモグロビン(HbAT87Q)が作られるようにする遺伝子入りのHSCを患者ごとに体外で作って体内に戻すことを治療の中身とし、Casgevyの用途と同様に血管閉塞発作の経験がある12歳以上のSCD患者への使用が承認されました。日本でSCDは少なくとも今のところ縁遠い病気だと思いますが、日本でも馴染みのある病気の遺伝子編集治療の臨床開発も進んでいます。たとえばVerve Therapeutics社は家族性高コレステロール血症の遺伝子編集治療を開発しており、LDLコレステロール低下作用を裏付ける第I相試験結果を先月発表しています7)。VERVE-101という名称のその遺伝子編集治療はCasgevyやLyfgeniaと違って体外に細胞を取り出す必要がなく、目当ての遺伝子編集を体内でやってのけます。VERVE-101もCRISPR社との提携の下で開発されています。参考1)Sankaran VG, et al. Science. 2008;322:1839-1842.2)FDA Approves First Gene Therapies to Treat Patients with Sickle Cell Disease / PRNewswire3)Vertex and CRISPR Therapeutics Announce US FDA Approval of CASGEVY (exagamglogene autotemcel) for the Treatment of Sickle Cell Disease / BUSINESS WIRE4)Casgevy添付文書5)US FDA approves two gene therapies for sickle cell disease / Reuters6)bluebird bio Announces FDA Approval of LYFGENIATM (lovotibeglogene autotemcel) for Patients Ages 12 and Older with Sickle Cell Disease and a History of Vaso-Occlusive Events / BusinessWire7)Verve Therapeutics Announces Interim Data for VERVE-101 Demonstrating First Human Proof-of-Concept for In Vivo Base Editing with Dose-Dependent Reductions in LDL-C and Blood PCSK9 Protein in Patients with Heterozygous Familial Hypercholesterolemia / GLOBE NEWSWIRE

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抗うつ薬治療抵抗性うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法~国内第II/III相ランダム化比較試験

 抗うつ薬への治療反応が不十分であることは、効果的なうつ病治療の妨げとなる。関西医科大学の加藤 正樹氏らは、抗うつ薬治療で効果不十分な日本人うつ病患者を対象に、ブレクスピプラゾール補助療法の投与量、有効性、安全性を評価するため、国内第II/III相ランダム化比較試験であるBLESS試験を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年11月7日号の報告。 BLESS試験は、8週間の単盲検期間では抗うつ薬治療で効果不十分であった日本人治療抵抗性うつ病患者を対象としたプラセボ対照ランダム化多施設共同並行群間第II/III相試験である。SSRI/SNRI治療で効果不十分なうつ病患者を対象に、6週間のブレクスピプラゾール1mg、2mgまたはプラセボの補助療法を行う群にランダムに割り付けられた。治療抵抗性うつ病患者の定義は、1~3の抗うつ薬治療では、ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)合計スコア14以上と効果不十分であった患者とした。主要エンドポイントは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアのベースラインからの変化とした。副次的エンドポイントは、MADRSによる治療反応、寛解率、臨床全般印象度の改善度(CGI-I)スコアとした。安全性は、とくに抗精神病薬の有害事象に関して包括的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニング対象患者1,194例中740例をランダム化した。・ベースライン時およびベースライン後のMADRS合計スコアは、1以上であった。・対象患者の内訳は、ブレクスピプラゾール1mg群248例、ブレクスピプラゾール2mg群245例、プラセボ群243例であった。・MMRM分析では、6週目のMADRS合計スコアのベースラインからのLSM(SE)変化は、ブレクスピプラゾール1mg群で-8.5±0.47(調整済み対プラセボ群変化量の差:-1.7、95%信頼区間[CI]:-3.0~-0.4、p=0.0089)、ブレクスピプラゾール2mg群で-8.2±0.47(同:-1.4、95%CI:-2.7~-0.1、p=0.0312)、プラセボ群で-6.7±0.47であった。・副次的有効性の結果は、主要エンドポイントを裏付けていた。・ブレクスピプラゾール補助療法の忍容性は、良好であった。 著者らは「抗うつ薬治療で効果不十分な日本人治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法は、1mg/日および2mg/日のいずれも有用であり、忍容性も良好であり、ブレクスピプラゾール補助療法における開始用量は、1mg/日が適切であることが示唆された」としている。

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最新の制吐療法、何が変わった?「制吐薬適正使用ガイドライン」改訂

 『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版』が発刊された。本書は2015年10月【第2版】(Web最新版ver.2.2)を全面改訂したもので、書籍としては8年ぶりの改訂となる。悪心・嘔吐治療の基本は“過不足ない適切な発現予防を目指す”ことであることから、制吐薬適正使用ガイドライン第3版では、がん薬物療法の催吐性リスクに応じた適切な最新の制吐療法を提示するのはもちろん、有用性が明確ではないまま行われている非薬物療法のエビデンスに基づいた評価、患者サポートとして医療現場で行うべき制吐対応などにも焦点が当てられている。今回、ガイドライン改訂ワーキンググループ委員長の青儀 健二郎氏(四国がんセンター乳腺外科 臨床研究推進部長)に主な制吐薬適正使用ガイドライン改訂ポイントについて話を聞いた。制吐薬適正使用ガイドライン改訂で用法・用量を図式化 まず、『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版』は8つの章で構成されている。第I章のガイドライン概要にはアルゴリズム、用法・用量を図式化したダイアグラムが明記され(p.18)、第II章の総論では各種抗がん薬の催吐性リスク分類を掲載(p.29~35)。これらを組み合わせれば、患者のレジメンに応じた制吐対策が誰でも確認可能なのが一つの特徴である。なお、悪心・嘔吐の発現時期や状態の定義は以下のとおり制吐薬適正使用ガイドライン前版からの変更はない。<悪心・嘔吐の定義>・急性期悪心・嘔吐:抗がん薬投与開始後24時間以内に発現する悪心・嘔吐・遅発期悪心・嘔吐:抗がん薬投与開始後24~120時間(2~5日目)程度持続する悪心・嘔吐・突出性悪心・嘔吐:制吐薬の予防的投与にもかかわらず発現する悪心・嘔吐・予期性悪心・嘔吐:抗がん薬のことを考えるだけで誘発される悪心・嘔吐*急性期と遅発期を合わせて全期間(抗がん薬投与開始から5日間程度)とする。*抗がん薬投与開始120時間後以降(6日目以降)も持続する超遅発期悪心・嘔吐(beyond delayed nausea and vomiting)も注目されている。制吐薬適正使用ガイドライン改訂にオランザピンの影響力強く 『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版』第III~VII章には推奨やステートメントが盛り込まれており、Clinical Question(CQ)全12項目、Future Research Question(FQ)全3項目、Background Question(BQ)全13項目が設けられている。とくに、適応外使用されていた非定型抗精神病薬オランザピン(商品名:ジプレキサ ほか)が2017年に本邦でのみ「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」に対して保険適用となり、急性期・遅発期ともに有効な新たな制吐薬として使用可能になった点、予防的制吐療法としてオランザピン処方が開発された点が制吐薬適正使用ガイドライン改訂に大きな影響を与えている(CQ1、4、5参照)。また、遅発期のデキサメタゾン投与省略のエビデンスが示されたこと(CQ2、6参照)、中等度催吐性リスク抗がん薬に対するNK1受容体拮抗薬の予防的投与について新たなエビデンスが示された(CQ3)。 同氏は「オランザピン投与に際し、傾眠などの副作用を考慮して国内では1日の投与量を5mg(1日量は最大10mg)に設定している。また、糖尿病への投与について、海外では禁忌ではないため糖尿病患者にも注意したうえで処方がなされているが、“国内では禁忌”のため、本書ではオランザピン投与の推奨を国内版にアレンジしている」とし、「この点が国内でのオランザピン処方拡大の足かせになっている」と処方におけるジレンマについても語った。制吐薬適正使用ガイドライン改訂で非薬物療法も記載 続いて『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版』第VI章では、第2版では取り上げなかった非薬物療法による制吐療法にも踏み込み、患者から希望を受けた際にどのような根拠を基に説明するべきか、文献のシステマティックレビューに基づいた具体的な内容が記載されている(CQ10、11参照)。非薬物療法に該当するものとして、以下が挙げられる。・ショウガ   ・鍼      ・経皮的電気刺激   ・指圧   ・運動    ・漸進的筋弛緩 ・ヨガ     ・アロマ       ・食事   ・音楽   ・呼吸     ・患者教育   ・オステオパシー   ・リフレクソロジー  ・マッサージ  ・セルフケア  ・ベッドサイドウェルネス 同氏は「悪心・嘔吐ならびに予期性悪心・嘔吐に対して非薬物療法を併施しないことを弱く推奨する、で合意に至った。これまでの治療の明確化のみならず手広く実臨床でニーズがあるものを拾い集めたうえで議論を重ねた」とコメントした。なお、技法全般を総括すると、鍼治療による悪心抑制(エビデンスの強さ:C[弱])、運動療法による悪心・嘔吐抑制(同:D[非常に弱い])、アロマ療法による悪心抑制(同D[非常に弱い])で有意な効果を認め、制吐薬適正使用ガイドラインにはランダム化比較試験が2編以上抽出された9つの技法について、システマティックレビューのまとめを記載している(p.120~141参照)。制吐薬適正使用ガイドラインの今後の課題は“超遅発期”対応 このほか『制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版』第VII章では制吐療法の評価と患者サポート、第VIII章では医療経済評価に触れている。患者サポートの例としては、昨今、世界的にも注目を集めている超遅発期への対応が該当する。超遅発期の悪心・嘔吐は退院後も尾を引き、自宅生活を送るなかで生じるため医療者の目に触れにくく、在宅療養中のためにエビデンス収集できていないのが現状である。「患者の声を受け取りしっかりフォローできるかどうか、看護師を中心にエビデンスを収集し方針を固めた。そして、超遅発期にも応用できる制吐療法を提言していきたい」と同氏は今後の課題にも触れた。一方で、医療経済面においては「日本癌治療学会で行ったアンケート調査によると、制吐療法を手厚く行う施設も散見されるため、ぜひ本書の催吐性リスク分類を参照にしたり、1サイクル目に悪心がなかった患者には2サイクル目から制吐薬を一部減らせるかなどを検討したりしてもよいのではないか」と説明した。 今後の動向として、「ガイドライン発刊前後での診療動向の変化を調査するため、改訂ワーキンググループ主導で本書の普及率に関するWebアンケート調査を行った。来年も調査を行い学会などで報告することで制吐療法の適正使用の啓発に努めていく」と締めくくった。

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