うがいと鼻洗浄がコロナ感染による入院リスクを低減か

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/12/13

 

 新型コロナウイルスに感染した際には、生理食塩水でうがいと鼻洗浄(鼻うがい)をすることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクを低減できる可能性のあることが、小規模研究で明らかになった。米テキサス大学ヒューストン医療科学センター産婦人科・生殖科学分野教授のJimmy Espinoza氏らによるこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(ACAAI 2023 Annual Scientific Meeting、11月9~13日、米アナハイム)で発表された。

 この研究では、2020年から2022年の間に新型コロナウイルスのPCR検査で陽性が確認された58人(18〜65歳)を、低濃度(27人、平均年齢39歳)または高濃度(28人、同41歳)の生理食塩水でうがいと鼻洗浄をする群にランダムに割り付け、COVID-19の症状の発症頻度や持続期間、転帰(入院、集中治療室入室、機械的人工換気によるサポート、死亡)について比較を行った。対照者は、本試験期間中に新型コロナウイルスに感染した9,398人(平均年齢45歳)とした。生理食塩水は、8オンス(約237mL)のお湯に2.13gの塩を溶かした場合を低濃度、6gを溶かした場合を高濃度とし、対象者には1日4回、14日にわたってうがいと鼻洗浄を行ってもらった。対象者のうちの3人は追跡不能となった。

 その結果、入院率は低濃度群で18.5%、高濃度群で21.4%であったのに対して対照群では58.8%であり、生理食塩水によるうがいと鼻洗浄を行った群では濃度の高低にかかわらず、対照群よりも入院率が有意に低いことが明らかになった(P<0.001)。それ以外の検討項目については、いずれの群でも対照群との間に有意な差は認められなかった。

 Espinoza氏は、「われわれの目的は、生理食塩水によるうがいと鼻洗浄が、新型コロナウイルス感染に伴う呼吸器症状の改善と関連するかどうかを確認することだった。検討の結果、高濃度または低濃度のいずれであっても生理食塩水でうがいと鼻洗浄を行った人では、対照群と比べてCOVID-19による入院率が低いことが明らかになった」と話す。その上で同氏は、「この生理食塩水によるうがいと鼻洗浄の効果に関する結果は、より大規模な試験で検証する必要がある。また、この方法が新型コロナウイルスのあらゆる株に有効であるかどうかについての検討も必要だ」と述べている。

 ただしEspinoza氏は、生理食塩水によるうがいや鼻洗浄がワクチン接種や抗ウイルス薬に取って代わるものではないことを強調している。同氏は、「うがいや鼻洗浄は非常に単純な介入だが、われわれが臨床で行っている介入に取って代わるものではない。しかし、実施の容易さから、補完的な介入にはなるだろう。実際、塩は安価な上にどこででも入手可能だ」と話す。

 一方、この研究には関与していない、米ノースショア大学病院の感染症専門医であるBruce Hirsch氏は、「生理食塩水によるうがいや鼻洗浄をCOVID-19の治療の一部とするには時期尚早だ」との見方を示す。同氏は、「ささいな介入ではあるが、私は、生理食塩水によるうがいや鼻洗浄を患者に勧めるのはもう少し様子を見てからにしたいと考えている」とコメントしている。

[2023年11月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら