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2009年イギリスのA/H1N1型インフルエンザ流行は軽度のパンデミックだった

2009年のイギリスにおけるA/H1N1型インフルエンザの流行は軽度のパンデミックであり、従来のサーベイランスシステムではパンデミックの程度を正確に推定するには不十分なことが、イギリスCambridge University Forvie SiteのA M Presanis氏らの調査で示された。2009年のA/H1N1型インフルエンザの流行が当初どの程度と推定されたかは不明であり、後に比較的軽度だが感染の年齢分布が季節性のインフルエンザとは異なることが示唆されている。パンデミックの程度に関する以前の研究では、バイアスの説明が不十分で、不確実性の定量化に関連するエビデンスが包括的に援用されておらず、パンデミックの程度の変化や定期的なサーベイランスシステムの妥当性の評価が含まれていないなどの問題があるという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載の報告。2009年のパンデミックの影響を、Bayesian evidence synthesisで評価研究グループは、2009年のA/H1N1型インフルエンザのパンデミックの影響を評価するために、2010年2月下旬までの2回の流行期における重症化の確率や感染率を推定した。パンデミックの程度の推定には、2009年6月~2010年2月までにイギリスで実施されたサーベイランスのデータを用い、ベイズ法によるエビデンスの統合解析(Bayesian evidence synthesis)を行った。イギリス国民全体の感染率は11.2%、5~14歳は29.5%A/H1N1型インフルエンザの夏の流行期には、推定60万6,100人(95%信頼区間:41万9,300~88万6,300)の症候性の患者のうち3,200人(同:2,300~4,700、0.54%[同:0.33~0.82])が入院し、310人(同:200~480、0.05%[同:0.03~0.08])が集中治療室(ICU)に収容され、90人(同:80~110、0.015%[同:0.010~0.022])が死亡した。2回目の流行期には、推定135万2,000人(95%信頼区間:82万9,900~280万6,000)の症候性の患者のうち7,500人(同:5,900~9,700、0.55%[同:0.28~0.89])が入院し、1,340人(同:1,030~1,790、0.10%[同:0.05~0.16])がICUに収容され、240人(同:310~380、0.025%[同:0.013~0.040])が死亡した。感染者の3分の1以上(35%[95%信頼区間:26~45])が症候性であったと推定された。夏の流行期には入院患者の30%(95%信頼区間:20~43)がサーベイランスシステムによって検出されたのに対し、2回目の流行期では20%(同:15~25)にとどまった。2回の流行期を通じて、イギリス国民の11.2%(95%信頼区間:7.4~18.9)がA/H1N1型インフルエンザに感染したと推定され、5~14歳の推定感染率は29.5%(同:16.9~64.1)に上昇していた。感度分析による感染率は5.9(同:4.2~8.7)~28.4(同:26.0~30.8)%と推算され、2回目の流行期の感染死亡率は0.0027(同:0.0024~0.0031)~0.017(同:0.011~0.024)%と推算された。著者は、「2009年のA/H1N1型インフルエンザの流行は軽度のパンデミックであったと推察され、就学年齢の子どもの感染率が高かった。特に重症例の把握が不十分であり、現在のサーベイランスシステムの限界が明らかとなった」と結論し、「特に2010~2011年のインフルエンザ流行期における2009年のA/H1N1株の明らかな再流行をふまえると、適切な保健医療施策の情報を伝えるには、パンデミックの程度を早期に確実に推定するシステムの確立が重要なことが浮き彫りとなった」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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大気汚染による心肺死亡率上昇、心筋梗塞リスク以外の影響が大きい

心筋梗塞のリスクは、典型的な交通関連の大気汚染物質である直径10μm未満の大気粒子(PM10)と二酸化窒素(NO2)への曝露によって一過性に上昇するものの、時間の経過とともに低下しており、大気汚染による心肺死亡率の上昇には他のメカニズムの影響が大きいことが、英国・ロンドン大学公衆衛生学熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らの検討によって示唆された。いくつかの大気汚染物質については、日常的な高レベル状態が死亡率の上昇に関連することが示されている。大気汚染が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響に関するエビデンスは存在するが、曝露後数時間における短期的な影響を評価した研究はほとんどないという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月20日号)掲載の報告。大気汚染と心筋梗塞の短期的な関連を評価する地域住民ベースの研究研究グループは、イングランドとウェールズの15の大都市圏において、大気汚染と心筋梗塞の関連を1時間単位のデータを用いて短期的に評価する地域住民ベースの研究を行った。Myocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)の臨床データと、UK National Air Quality ArchiveのPM10、オゾン、一酸化炭素(CO)、NO2、二酸化硫黄(SO2)のデータを用い、汚染時間を1~6、7~12、13~18、19~24、25~72時間に分けて解析した。2003~2006年に心筋梗塞と診断された7万9,288例のデータに基づき、汚染レベルが10μg/m3増加するごとの心筋梗塞リスクの増分を評価した。PM10、NO2への曝露により、1~6時間後の短期的な心筋梗塞リスクが上昇単一の汚染物質に関する解析では、PM10およびNO2への曝露により、1~6時間後の短期的な心筋梗塞のリスクが上昇した(10μg/m3増加ごとのリスクの上昇:PM10 1.2%[95%信頼区間:0.3~2.1]、NO2 1.1%[同:0.3~1.8])。この影響は複数汚染物質の解析でも一貫して認められたが、PM10の影響に関するエビデンスはごく弱いものであった(p=0.05)。中等度の心筋梗塞リスク上昇がみられた汚染物質も、時間の経過とともにそのリスクが低下した。5つの汚染物質のうち、72時間以上にわたって心筋梗塞のリスクを上昇させるものは確認されなかった。著者は、「PM10とNO2という典型的な交通関連汚染物質による一過性の心筋梗塞リスクの上昇がみられたが、時間の経過とともにリスクは低下していることから、大気汚染によって全体的なリスクが上昇するというよりも、イベントの発生が時間的に前倒しされる(イベント発生の短期的な置き換え)ことが考えられる」とまとめ、「大気汚染が心肺死亡率に及ぼす確固たる影響は、心筋梗塞の急性のリスク上昇によるものではなく、他のメカニズムが関与している可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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週3回血液透析における2日間隔は、死亡・入院リスクを高める

 週3回行われる血液維持透析は、1日間隔と2日間隔のインターバルが存在するが、2日という間隔が血液透析を受けている患者の死亡率を高める時間的要因であることが明らかにされた。本研究は、米国NIHの資金提供を受けたUnited States Renal Data SystemのRobert N. Foley氏らがnational studyとして行った結果で、20年来の懸念となっていた血液透析患者の生存率の低さ、および末期腎不全患者の大半は循環器疾患を有した状態で血液透析を始めるが、長期インターバルがそれら患者の死亡リスクを高めているのではないかとの仮説に対して言及することを目的に行われた。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。週3回透析を受けていた末期腎不全患者3万2,065例を対象に2日間隔後と1日間隔後を比較 試験は、米国で週3回の血液透析を受けている代表的患者集団であるEnd-Stage Renal Disease Clinical Performance Measures Projectの参加者3万2,065例を対象とした。 被験者は、2004年末から2007年末に週3回透析を受けていた末期腎不全患者で、平均年齢は62.2歳、24.2%が1年以上血液透析を受けていた。 研究グループは、死亡率および心血管関連の入院率について、2日間隔後と1日間隔後について比較を行った。一般に米国週3回の血液透析患者に行われているスケジュールから、金曜日から月曜日の間、または土曜日から火曜日の間に2日間隔があった。週3回透析において2日間隔後の日のほうが死亡率および入院率が高い 平均追跡期間2.2年の間で、週3回透析は2日間隔後の日のほうが1日間隔後の日よりも、死亡率および入院率が高かった。 死亡率については、100人・年当たりの全死因死亡22.1 vs. 18.0(P<0.001)、以下同じく心臓が原因の死亡10.2 vs. 7.5(P<0.001)、感染症関連での死亡2.5 vs. 2.1(P =0.007)、突然死1.3 vs. 1.0(P =0.004)、心筋梗塞による死亡6.3 vs. 74.4(P<0.001)であった。 入院率については、100人・年当たりの心筋梗塞による入院6.3 vs. 3.9(P<0.001)、以下同じくうっ血性心不全による入院29.9 vs. 16.9(P<0.001)、脳卒中による入院4.7 vs. 3.1(P<0.001)、不整脈による入院20.9 vs. 11.0(P<0.001)、あらゆる心血管イベントによる入院44.2 vs. 19.7(P<0.001)であった。 結果を受けてFoley氏は、「試験結果に限りはあるが、いくつかの興味深い所見が得られた。被験者は全米を代表する患者集団であり、間隔が長いことに関してサブグループと全体とで同様の転帰が認められ、未解明だがイベント発生率の格差は、臨床的に意味があるようだった。したがって本試験は、血液透析の提供方法について行われるコントロール試験の臨床的均衡(clinical equipoise)を提供する」とまとめている。

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ロタウイルスワクチン導入後、5歳未満児の入院、医療コストが激減

米国で2006年から開始された、乳児への5価ロタウイルスワクチン(RV5;2、4、6ヵ月齢に経口投与が標準)の直接的、間接的ベネフィットについて、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennifer E. Cortes氏らが調査を行った結果、導入後3年間で入院が推定で約6万5千件減少、医療コストは2億7,800万ドル削減と、いずれも激減したことが報告された。ワクチン導入時は、年間の下痢関連受診が約40万人、救急外来受診20万人、入院は5万5千件で、年間20~60人の5歳未満児が死亡しており、医療コストは年間3億ドルを要していたという。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。導入2年で、1歳未満児の接種率は73%調査は、MarketScanデータベースを使って、5歳未満児のRV5接種率および下痢関連の医療利用について、2007年7月~2009年6月と2001年7月~2006年6月とを比較して行われた。また、未接種児の下痢関連の医療利用の割合について、2008年と2009年それぞれの1~6月期とワクチン導入前とを比較し、間接的なベネフィットについて推定評価した。そして下痢関連の入院の全米的な減少数、およびコストについて外挿法で推定した。2008年12月31日時点で、少なくとも1回接種済みの1歳未満児は73%、1歳児は64%、2~4歳児は8%であった。ロタウイルス感染症入院、導入前と比べて導入2年目75%減、3年目60%減各年の5歳未満児の1万人・年当たりの下痢関連入院は、2001~2006年(導入前)52件、2007~2008年35件、2008~2009年39例となっており、2001~2006年と比べて相対的に、2007~2008は33%減少(95%信頼区間:31~35)、2008~2009年は25%減少(同:23~27)していた。同じく、ロタウイルス感染症と特定された入院は各年、14例、4例、6例で、75%減少(同:72~77)、60%減少(同:58~63)となっていた。2007~2009年で、入院6万4,855件減、医療費2億7,800万ドル減2008年と2009年それぞれ1~6月期の、相対的減少の接種児vs.未接種児の比較は、以下のとおりだった。下痢入院:44%(同:33~53)vs. 58%(同:52~64)、ロタウイルス感染症と診断入院:89%(同:79~94)vs. 89%(同:84~93)、下痢で救急外来受診:37%(同:31~43)vs. 48%(同:44~51)、下痢で外来受診:9%(同:6~11)vs. 12%(同:10~15)。未接種児の間接的なベネフィットは、2007~2008年は認められたが2008~2009年には認められなかった。一方で、2007~2009年の間に米国全体で、入院が推定6万4,855件減少、医療費は2億7,800万ドル削減したと推定された。(武藤まき:医療ライター)

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小児・青年期の強迫性障害、SRI+認知行動療法で治療効果が有意に向上

小児や青年期の強迫性障害(OCD)の治療には、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)の服薬指導と徹底した認知行動療法(CBT)の介入を併用することで、服薬指導のみや、服薬指導と簡単なCBT指示のみの介入に比べ、治療効果が有意に向上することが明らかにされた。米国・ペンシルベニア大学のMartin E. Franklin氏らが、7~17歳のOCD患者124人について行った、無作為化比較試験の結果報告したもので、JAMA誌2011年9月21日号で発表した。被験者はCY-BOCSスコア16以上、治療12週後の30%以上改善を評価試験は2004~2009年にかけて、3ヵ所の大学医療センターで、7~17歳のOCD患者124人を対象に行われた。被験者は、SRIを服薬後も部分奏効で、OCD症状評価スケールの「Children’s Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale」(CY-BOCS)でスコア16以上だった。研究グループは、被験者を無作為に3群に分け、一群にはSRIの服薬指導のみ(12週間中7セッション、1回約35分)、二群目には服薬指導と簡単なCBT指示のみ(12週間中7セッション、1回約45分)、もう一群には服薬指導とより徹底したCBT介入(12週間中14セッション、1回約60分)を行った。主要評価項目は、12週間後のCY-BOCSにおける30%以上の改善と、同スコアの変化とされた。評価は、intention-to-treat解析にて行われた。CY-BOCSスコア30%以上改善は、CBT治療併用群で約7割、他の2群は約3割結果、服薬指導+CBT治療併用群では、CY-BOCSスコアの30%以上改善が認められた人の割合は68.6%(95%信頼区間:53.9~83.3)と、服薬指導+CBT指示群の34.0%(同:18.0~50.0)や服薬指導単独群の30.0%(同:14.9~45.1)に比べ、有意に高率だった。CBT治療併用群は、他の2群(CBT指示併用群、服薬指導単独群)に対する優越性が認められた(いずれもp<0.01)。一方で、CBT指示併用群の服薬指導単独群に対する優越性は認められなかった(p=0.72)。推定治療必要数(NNT)は、CBT治療併用群vs. 服薬指導単独群では3人、CBT治療併用群vs. CBT指示併用群でも3人であったが、CBT治療併用群と服薬指導単独群では25人であった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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在胎週数が短いと、早期小児期と若年成人期で死亡率が増加

在胎週数の短さは、5歳以下の早期小児期と、18~36歳の若年成人期の死亡増大の独立した因子であることが明らかにされた。米国・スタンフォード大学のCasey Crump氏らが、スウェーデンの単生児約2万8,000人を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月21日号で発表した。これまで先進国において、早産は乳児死亡の大きな原因であることは知られていたが、成人期の死亡リスクとの関連については明らかにされていなかった。早期小児期の死亡リスク、在胎週数が1週増すごとに約8%減研究グループは、スウェーデン出生レジストリ67万4,820人の記録から、1973~1979年に生まれた単生児の早産児(在胎37週未満)で、生後1年以上生存した2万7,979人について追跡し、全死因死亡および死因特異的死亡について評価を行った。追跡期間は2008年末までで、被験者年齢は29~36歳だった。結果、追跡期間中に死亡したのは7,095人/2,080万人・年だった。1~5歳までの早期小児期における死亡リスクは、在胎週数が少ないほど高く、同週数が1週増加することによるハザード比は0.92(95%信頼区間:0.89~0.94、p<0.001)だった。しかし、6~12歳の後期小児期と13~17歳の青年期では、同傾向はみられなくなり、在胎週数が1週増えることによる死亡に関するハザード比はそれぞれ、0.99(同:0.95~1.03、p=0.61)と0.99(同:0.95~1.03、p=0.64)だった。若年成人期、在胎週数34週以降の早産でも死亡リスクは満期産の1.3倍にその後、18~36歳の若年成人期では、再び在胎週数と死亡率の関与が認められ、同週数が1週増えることによる死亡に関するハザード比は、0.96(同:094~0.97、p<0.001)だった。また若年成人期では、在胎週数34週以降の早産でも死亡リスクは増加し、死亡に関する満期産に対するハザード比は、1.31(同:1.13~1.50、p<0.001)だった。若年成人期の死亡の原因についてみてみると、なかでも先天異常、呼吸や内分泌、心血管の障害による死亡と在胎週数とが関連していた。一方で、神経学的異常やがん、外傷による死亡とは関連が認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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頭蓋内動脈狭窄症に対するPTAS vs. 積極的薬物治療

頭蓋内動脈狭窄症患者に対するステント治療と積極的薬物治療とを比較検討した試験「SAMMPRIS」の結果、積極的薬物治療単独のほうが予後が優れることが明らかになった。検討されたのはWingspanステントシステム(米国ボストンサイエンス社製)を用いた経皮的血管形成術・ステント留置術(PTAS)であったが、その施術後の早期脳梗塞リスクが高かったこと、さらに積極的薬物治療単独の場合の脳梗塞リスクが予測されていたより低かったためであったという。PTASは、脳梗塞の主要な原因であるアテローム硬化性頭蓋内動脈狭窄症の治療として施術が増えているが、これまで薬物療法との無作為化試験による比較検討はされていなかった。米国・南カリフォルニア大学のMarc I. Chimowitz氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年9月7日号)掲載報告より。頭蓋内動脈狭窄症患者451例を積極的薬物治療単独群とPTAS併用群に無作為化SAMMPRIS(Stenting and Aggressive Medical Management for Preventing Recurrent Stroke in Intracranial Stenosis)試験は、米国神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)から資金提供を受けた50施設から登録された、直近の一過性脳虚血発作または主要頭蓋内動脈径の70~99%狭窄を原因とする脳梗塞患者を対象とした無作為化試験であった。被験者は、積極的薬物治療単独群(アスピリン、クロピドグレル、各種降圧薬、rosuvastatinなどによる)か、積極的薬物治療に加えてPTASを併用する群に割り付けられ前向きに追跡された。主要エンドポイントは、「試験登録後30日以内の脳梗塞または死亡」「追跡調査期間中に施行された適格病変部位への血管再生処置後30日以内の脳梗塞または死亡」「30日超での適格動脈領域における脳梗塞」とした。積極的薬物治療単独群がPTAS併用群を上回る好成績本試験は、脳梗塞または死亡の30日発生率が、PTAS併用群14.7%(非致死的脳梗塞12.5%、致死的脳梗塞2.2%)、薬物治療単独群5.8%(非致死的脳梗塞5.3%、脳梗塞と関連しない死亡0.4%)となったため(P=0.002)、無作為化された被験者数451例(PTAS併用群224例、薬物治療単独群227例)で登録中止となった。追跡期間は11.9ヵ月であった(2011年4月28日現在)。事前予想では、主要エンドポイントの評価には追跡期間2年が必要と推定していた。また過去の同様の試験結果からPTAS併用群の主要エンドポイント発生は29%、一方、薬物治療単独群の同発生は24.7%とそれぞれ推定し、必要被験者数各群382例と試算して試験をデザインされていた。追跡調査は、本論発表現在も続けられているという。30日超での適格動脈領域における脳梗塞は、両群ともに13例の発生であった。1年時点の主要エンドポイントのイベント発生率は、PTAS併用群20.0%に対し薬物治療単独群は12.2%で、時間経過とともに有意に異なっていた(P=0.009)。(朝田哲明:医療ライター)

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戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

1985年新潟大学医学部卒業。現在、廿日市記念病院リハビリテーション科勤務。2001年1月~2004年2月までアメリカ国立衛生研究所に勤務した際、線維筋痛症に出会い、日本の現状を知る。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群などの治療にあたっている。日本線維筋痛症学会評議員。著書に『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)。線維筋痛症の現状先進国の線維筋痛症(fibromyalgia : FM)の有病率はわずか2%だが、グレーゾーンを含めると約20%になる。そのため、患者数が多いと予想される。また、先進国や少なくない非先進国ではFMは常識だが、日本ではまだよく知られていない。この疾患特有の愁訴を訴える患者さんを、プライマリ・ケア医や勤務医が診察する機会が多いと予測される。今回、FMの標準的な診療について、正しく理解していただくために診療のサマリーと診療スライドを公開させていただく。よりよい治療成績を求めることが臨床医の努めと考えているので、是非実践していただきたい。線維筋痛症の疫学・病態画像を拡大する腰痛症や肩こりから慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)や慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)を経由してFMは発症するが、それまで通常10~20年かかる(図1)。FMの有病率は先進国では約2%、FMを含むCWPの有病率は約10%、CRPの有病率はCWPのそれの1-2倍である*1。FMの原因は不明だが、中枢神経の過敏状態(中枢性過敏)が原因であるという説が定説である*1。中枢性過敏によって起こった中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome)にはうつ病、不安障害、慢性疲労症候群、むずむず脚症候群などが含まれるが、FMはその代表的疾患である(図2)。画像を拡大する女性がFM患者の約8割を占める。未就学児にも発生するが、絶対数としては30歳代~60歳代が多数を占める。線維筋痛症の症状全身痛、しびれ、疲労感、感覚異常(過敏や鈍麻)、睡眠障害、記憶力や認知機能の障害などいわゆる不定愁訴を呈する。中枢性過敏症候群に含まれる疾患の合併が多い。痛みや感覚異常の分布は神経分布とは一致せず、痛みやしびれの範囲は移動する。天候が悪化する前や月経前後に症状がしばしば悪化する。症状の程度はCRP<CWP<FMとなる(図1)。線維筋痛症の検査・診断(2012年1月30日に内容を更新)画像を拡大する圧痛以外の他覚所見は通常存在せず、理学検査、血液検査、画像検査も通常正常である。従来はアメリカリウマチ学会(ACR)による1990年の分類基準(図3)が実質的に唯一の診断基準となっていたが、2010年(図4)*2と2011年*3に予備的診断基準が報告された。ACRが認めた2010年の基準は臨床基準であり、医師が問診する必要がある。ACRが現時点では認めていない2011年の基準は研究基準であり、医師の問診なしで患者の回答のみでも許容されるが、患者の自己診断に用いてはならない。2011年の基準は2010年の基準とほぼ同じであるが、「身体症状」が過去6カ月の頭痛、下腹部の痛みや痙攣、抑うつの3つになった。共に「痛みを説明できる他の疾患が存在しない」という条件がある*2、*3。1990年の分類基準は廃止ではなく、使用可能である*2、*3。CRPやCWPにFMと同じ治療を行う限り、FMの臨床基準には存在意義がほとんどない。どの診断基準がどのくらいの頻度で、どのように使用されるのかは現時点では不明である。画像を拡大する1990年の分類基準によると、身体5カ所、つまり、左半身、右半身、腰を含まない上半身、腰を含む下半身、体幹部(頚椎、前胸部、胸椎、腰部)に3カ月以上痛みがあり、18カ所の圧痛点を約4kgで圧迫して11カ所以上で患者が「痛い」といえば他にいかなる疾患が存在しても自動的にFMと診断される*1(図3)。つまり、圧痛以外の理学検査、血液検査、画像検査の結果は、診断基準にも除外基準にもならない。通常、身体5カ所に3カ月以上痛みがあれば広義のCWPと、CWPの基準を満たさないが腰痛症のみや肩こりのみより痛みの範囲が広い場合にはCRPと診断される。FMとは異なり他の疾患で症状が説明できる場合には、通常CRPやCWPとは診断されない。~~ ここまで2012年1月30日に内容を更新~~従来の基準を使う限り、FMには鑑別疾患は存在しないが、合併する疾患を見つけることは重要である。従来、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)、心因性疼痛、仮面うつ病と診断されたかなりの患者はCRP、CWP、FMに該当する。線維筋痛症の治療(2012年7月24日に内容を更新)画像を拡大する世界ではCWPに対して通常FMと同じ治療が行われており、CRPやCWPにFMと同じ治療を行うとFM以上の治療成績を得ることができる*1。FMの治療は肩こり、慢性腰痛症、慢性掻痒症、FM以外の慢性痛にもしばしば有効である。他の疾患を合併している場合、一方のみの治療をまず行うのか、両方の治療を同時に行うのかの判断は重要である。FMの治療の基本は薬物治療と非薬物治療の組み合わせである。非薬物治療には認知行動療法、有酸素運動、減量、禁煙(受動喫煙の回避を含む)、人工甘味料アスパルテームの摂取中止*4が含まれる(図5)。鍼の有効性の根拠は弱く高額であるため、週1回合計5回行っても一時的な効果のみであれば、中止するか一時的な効果しかないことを了解して継続すべきである。薬物治療の基本は一つずつ薬の効果を確認することである。一つの薬を少量から上限量まで漸増する必要がある。効果と副作用の両面から最適量を決定し、それでも不十分な鎮痛効果しか得られなければ次の薬を追加する。上限量を1-2週間投与しても無効であれば漸減中止すべきで、上限量を使用せず無効と判断してはならない。メタ解析や系統的総説により有効性が示された薬はアミトリプチリン〔トリプタノール〕、ミルナシプラン〔トレドミン〕、プレガバリン〔リリカ〕、デュロキセチン〔サインバルタ〕である*1、4。二重盲検法により有効性が示された薬はガバペンチン〔ガバペン〕、デキストロメトルファン〔メジコン〕、トラマドールとアセトアミノフェンの合剤〔トラムセット配合錠〕などである*1、4。ノルトリプチリン〔ノリトレン〕は体内で多くがアミトリプチリンに代謝され、有効性のエビデンスは低いが実際に使用すると有効例が多い。ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕、ラフチジン〔プロテカジン〕は対照群のない研究での有効性しか示されていないが、有効例が多く副作用が少ない。抗不安薬はFMに有効という証拠がないばかりか常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的で使用すべきではない*1、4。また、ステロイドが有効な疾患を合併しない限りステロイドはFMには有害無益である*1。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は通常無効であるが、個々の患者では有効なことがある。個々の薬物の有効性のレベルは文献*1、4を参照していただきたい。論文上の効果や副作用、私自身が経験した効果や副作用、費用の点を総合的に考慮した私の個人的な優先順位は〔ノイロトロピン〕、アミトリプチリン、デキストロメトルファン、ノリトレン、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、ミルナシプラン、ガバペンチン、デュロキセチン、プレガバリンである。これには科学的根拠はないが、薬物治療が単純になる。不都合があれば各医師が優先順位を変更すればよい。日本のガイドラインにも科学的根拠がないことはガイドラインに記載されている*5。筋付着部炎型にステロイドやサラゾスフファピリジン〔アザルフィジン〕が推奨されているが、それらはFMに有効なのではなくFMとは別の疾患に有効なのである。肺炎型FMに抗生物質を推奨することと同じである。線維筋痛症の治療成績画像を拡大する2007年4月の時点で3カ月以上私が治療を行った34人のFM患者のうち薬物を中止できた人は5人(15%)、痛みが7割以上改善した人が4人(12%)、痛みが1割以上7割未満改善した人が17人(50%)、不変・悪化の人が8人(24%)であった*1。CRPやCWPにFMとまったく同じ治療を行えば、有意差はないがFMよりはよい治療成績であった*1(図6)。※〔 〕内の名称は商品名です文献*1 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.*2 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: The American College of Rheumatology preliminary diagnostic criteria for fibromyalgia and measurement of symptom severity. Arthritis Care Res (Hoboken) 62: 600-610, 2010. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20461783*3 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: Fibromyalgia Criteria and Severity Scales for Clinical and Epidemiological Studies: A Modification of the ACR Preliminary Diagnostic Criteria for Fibromyalgia. J Rheumatol 38: 1113-1122, 2011. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21285161*4 戸田克広: エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む). 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 93-105.*5 西岡久寿樹: 治療総論. 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 82-92.質問と回答を公開中!

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戸田克広 先生の答え

麻薬の使用法治療としていわゆる麻薬はどのような状況、症状の時に使うべきなのでしょうか。また、投与中止はどのようにおこなうべきでしょうか。非癌性慢性痛に麻薬を使用することは依存を引き起こすのではないかと危惧する意見があります。しかし、痛みがある患者さんに適切に使用する限りは、依存は起こらないと考えられています。後者の仮説には明確なデータはないため麻薬の使用は慎重におこなうべきです。しかし、適切な治療を1年以上おこなっても鎮痛効果が不十分な場合や、初診時に激烈な痛みがあり、自殺の恐れがある場合には麻薬を使用してもよいと思います。喫煙者などの物質依存者や約束を守らない人格と判断される場合には麻薬を使用しないことが望ましいと思います。モルヒネには「天井効果がないため上限量はない」という考えもありますが、「200mg / 日を超える場合にはさらに十分な評価が必要」という意見もあります。ペインクリニック専門医ではない場合には200mg / 日を超えるモルヒネは査定される可能性が高いという非公式の制度があるため注意が必要です。ブプレノルフィン、ペンタゾシンは使用すべきではありません。トラマドール塩酸塩〔トラムセット〕またはコデイン、モルヒネ、フェンタニル〔デュロテップパッチ〕の順で使用することが一般的です。モルヒネは薬価が高いため、1回量が20mgになれば薬価の安い散剤にした方が良いと思います。麻薬が有効な場合、その他に有効な薬を見つけて麻薬を減量または中止する努力が必要です。減量とは1回量の減量であって、投与間隔を延長してはいけません。モルヒネであれば1回量を2-4週間ごとに10mgずつ減量し、痛みが悪化すれば再び増量することが望ましいと思います。※〔 〕内の名称は商品名です 中枢性過敏についてこの概念と定義はどなたが提唱したものなのでしょう。概念をもう少し詳しくお聞かせください。御多忙中とは存じますが、どうぞ宜しくお願いいたします。Woolfが中枢性過敏(central sensitization: CS)を提唱しました。CSにはさまざまな定義があります。Woolfは「侵害受容刺激により中枢の侵害受容経路のシナプス効果と興奮性が長期間ではあるが可逆的に増加すること」と定義していますが、国際疼痛学会は「正常あるいは閾値下の求心性入力に対する中枢神経系内の侵害受容ニューロンの反応性の増加」と定義しています。私は次のように考えています。侵害受容性疼痛や末梢性神経障害性疼痛という痛み刺激のみならず、精神的ストレスなどの刺激が繰り返し脳に送られ続けると、中枢神経に機能障害が起こってしまいます。機能障害ではなく器質的障害なのかもしれませんが、現時点の医学レベルではよくわかっていません。中枢神経に機能障害が起こるとさまざまな刺激に対して過敏になり、痛みを感じない程度の刺激が中枢神経に入っても痛みを感じさせてしまいます。また、中枢神経に起こった機能障害の部位そのものが痛みなどの症状の原因になる、つまり機能障害の部位から痛みなどの情報が流れてしまうと推測しています。一方、Yunusが中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome: CSS)を提唱しました。CSSの主な原因はCSと推測されています。CSは主に痛みに関する理論ですが、CSSには痛みを主訴とするFM以外にも、慢性疲労症候群、異常感覚を主訴とするむずむず脚症候群、化学物質過敏症、うつ病、外傷後ストレス障害なども含まれます。CSSの代表疾患の一つがFMなのです。CSは日本でも知られていますが、CSSはFM以上に日本では知られていません。CSSに含まれる疾患は定まっていません。不安障害、皮膚掻痒症、機能性胃腸障害、更年期障害、慢性広範痛症、慢性局所痛症などもCSSに含まれると私は考えています。(日本医事新報No4553, 84-88, 2011)FMの症状について口の中が痛くて、硬いものがかめない症状や、下肢痛があり車や電車に乗ると悪化するような症状はFMに該当するでしょうか?口の症状はFMの症状です。FMでは身体のどこにでもアロジニア(通常痛みを引き起こさない程度の刺激により痛みが起こること)が起こります。口腔内にそれが起これば、硬いものをかめない症状が生じます。口の症状のみがある場合には舌痛症と診断すべきかもしれませんが、舌痛症はFMの部分症状と考えることも可能です。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化すると訴えるFM患者を私は知りませんが、FMの症状と考えても矛盾はありません。FMでは、歩行時より下肢を動かさない状態の時に痛みが強い場合が多いからです。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化する場合には、むずむず脚症候群の可能性もあります。むずむず脚症候群では歩行時よりも安静時に下肢のむずむず感が強くなるため、自動車や電車に乗るとそれが強くなる場合があります。むずむず感などの違和感を痛みと表現する患者さんもいます。FMとむずむず脚症候群はしばしば合併するため注意が必要です。者の性差について患者で女性が8割を占める理由について病態の解明は進んでおりますでしょうか。現在わかっている範囲でお教えください。FMの原因は脳の機能障害という説が定説ですが、厳密にはわかっていません。そのため、女性が8割を占める理由も当然わかっていません。FMの原因解明が進めば、その理由もわかるのではないかと期待しています。FMを含むFMよりも広い概念の慢性広範痛症においては双子を用いた研究により半分が遺伝要因、半分が環境要因と報告されています。性ホルモンはFMに影響を及ぼす要因の一つと考えられています。ただし、性ホルモンは遺伝子により大きな影響を受けるため、性ホルモンの差と遺伝子の差を厳密に区別することは困難です。なお、FM患者の中で女性と男性でどちらの症状が強いかに関しては、男女差はないという報告、女性の症状が強いという報告、男性の症状が強いという報告があり、何ともいえません。治療選択について非薬物療法を患者さんが選択し、希望する場合、一番効果的なものはどれでしょうか。先生の私見でも結構ですのでご教示願えますか。非薬物療法の中では禁煙、有酸素運動、認知行動療法、温熱療法、減量、患者教育が有用です。激しい受動喫煙を含めた喫煙者では、禁煙が一番有効と考えていますが、非喫煙者では有酸素運動が一番有効と考えています。患者本人の喫煙継続は論外ですが、間接受動喫煙防止のため配偶者には禁煙、その他の家族には屋外喫煙が必要です。有酸素運動は、技術や人手が不要、安価で、誰でもできるという長所があるため、非喫煙者では最も有効と考えています。散歩や水中歩行のみならずヨガ、太極拳も有効です。歩行すると痛みが悪化する人では、深呼吸で代用も可能です。安静が有効な場合もありますが、これは痛みが起こらない程度の安静を保つことを意味するのであって、過度な安静は逆に有害です。痛みに対する認知行動療法は、論文上有効なのですが、実際に何をすれば良いのかよくわからないこと、適切な治療を行う施設が少ないこと、費用が高いことが欠点です。欧米を中心にしたインターネットによる調査では約8%の人しか認知行動療法を受けておらず、患者さんが自己評価した有効性もあまりよくありませんでした。温熱療法には、温泉療法、温水中の訓練、遠赤外線サウナ、近赤外線の照射などが含まれます。FMは心因性疼痛ではなく、恐らく脳の機能障害が原因であろうことの説明や痛いときには無理をしないことの説明などが患者教育です。星状神経節ブロックを含む交感神経ブロックが有効という根拠はありません。対照群のない研究では鍼は有効なのですが、適切な対照群のある研究では鍼の有効性が証明されていません。交感神経ブロックも鍼も、5回行って一時的な鎮痛効果しかなければ、それ以上継続しても一時的な効果しかないと私は考えています。トリガーポイントブロックの長期成績は不明です。非薬物治療は組み合わせて行うことが望ましく、さらに言えば、非薬物治療は薬物治療と併用することが望ましいと報告されています。線維筋痛症の患者とうつ病同症の患者では精神疾患(特にうつ病)を併発されている方も多いと聞きます。その場合のケアと薬剤の処方のポイントについてご教示ください。抑うつ症状あるいはうつ病に痛みが合併した場合、痛みはうつ病の一症状であるという理論は捨てる必要があります。痛みと、抑うつや不安症状は対等の症状と見なすことが重要です。FMとうつ病(または不安障害)が合併した場合、当初はより重症な症状のみを治療することをお勧めします。一方の症状がある程度軽減した後に、他方の症状を治療した方が治療は容易です。抗うつ作用がまったくない薬で痛みが軽減しても、抑うつ症状が軽減することはありふれたことです。しかし、両症状とも強い場合には、両方を同時に治療せざるを得ないこともあります。その場合には抑うつ症状に対する治療と、痛みに対する治療は分けた方がよいと思います。SSRIと短期間の抗不安薬を抑うつ症状に対する治療と考え、その他の薬は痛みに対する治療と考えた方がよいと思います。三環系抗うつ薬とSNRIは抑うつにも痛みにも有効ですが、痛みのみに有効と見なし、抑うつがついでに軽減すれば「儲け物」という程度に考えた方がよいと思います。なお、三環系抗うつ薬では鎮痛効果を発揮する投与量より抗うつ効果を発揮する投与量の方が多いのですが、SNRIでは両効果を発揮する投与量は同程度です。SSRIも痛みに対する薬も通常漸増する必要があります。それらを同日投与や同日増量すると副作用が生じた場合に、原因薬物の特定が困難になる場合があります。そのため、投与開始や増量は少なくとも中2日は空けたほうがよいと思います。抗不安薬は、SSRIが抗うつ効果や抗不安効果を発揮するまでの一時しのぎとして抗不安薬を使用すべきです。抗不安薬を半年以上投薬する場合には、転倒や骨折の増加、運動機能の低下、理解力の低下、認知機能の低下、抑うつ症状の悪化、新たな骨粗鬆症の発症、女性での死亡率の増加を説明する必要があります。抗不安薬を半年以上使用すると常用量依存が起こりやすく、その場合中止が困難になります。薬物療法とガイドライン解説の中で薬物療法について「ガイドラインでは科学的根拠がない」と記されていますが、近々に発表される、または欧米のものが翻訳される見込みはございますか。教えていただける範囲でお願いします。「線維筋痛症のガイドライン」は、アメリカ、ドイツ、ヨーロッパ、カナダ、スペインから発表されています。日本語に翻訳されて発表される見込みは現在不明です。日本のガイドラインの改訂版は今後発表される予定ですが、いつになるのか未定です。アメリカ、ドイツ、ヨーロッパのガイドラインは各治療方法の有効性のエビデンスを記載しています。カナダのガイドラインはエッセイ様式です。スペインと日本のガイドラインはサブグループに分けています。スペインのガイドラインは修正デルフィ法(参加者の匿名のアンケートとそれに対する評価を繰り返し一つの結論を出す方法)によりGieseckeらの分類方法を採用しています。日本のガイドラインの最大の特徴はFMをサブグループに分けて、サブグループごとに治療方法を変える点です。世界では、FMのサブグループ分けは多くの研究者により行われています。痛み、抑うつ状態などのさまざまな指標により得られたデータによりサブグループ分けが行われていますが、報告により異なるサブグループに分けられています。ただし、日本のガイドラインに含まれる「筋付着部炎型」は私が知る限り、報告された分類方法のどのサブグループにも存在しません。また、前回と今回の日本のガイドラインでは同じサブグループの推奨薬物が異なっていますが、その変更の根拠が記載されていません。「分類の根拠、およびサブグループごとに推奨する薬物が異なる根拠は論文化されていない」由が、今回のガイドラインに記載されています。日本のガイドラインでは各執筆者は自分自身の執筆した部分のみに責任を持つことも特徴の一つです。睡眠薬との関連痛みがひどくて眠れない患者さんに睡眠薬を処方することもあるかと思います。その場合、注意する点などご教示ください。FMに限らず、痛みのために不眠の患者さんの睡眠改善目的にまず処方する薬は、睡眠薬ではなく鎮痛薬です。もちろん非ステロイド性抗炎症薬ではなく神経障害性疼痛に対する鎮痛薬です。鎮痛薬が主で、睡眠薬は従の関係です。当初は睡眠薬を処方せず、鎮痛薬を私は処方しています。三環系抗うつ薬、ガバペンチン〔ガバペン〕、プレガバリン〔リリカ〕は鎮痛効果が強い上に、眠気の副作用が強いのでその副作用を睡眠改善に使用することも可能です。しかし、眠気の副作用がほとんどないワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕やデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物〔メジコン〕により痛みが改善すれば、結果的に睡眠が改善することもあります。FMの不眠に有効な睡眠薬はゾピクロン〔アモバン〕、ゾルピデム酒石酸塩〔マイスリー〕ですが、副作用報告の少ないゾピクロンを私は優先使用しています。FMの睡眠障害に対して抗不安薬を使用することは避けるべきです。常用量依存を作りやすいからです。特に、作用時間が短く抗不安作用が強いため常用量依存を作りやすいエチゾラム〔デパス〕を睡眠薬として使用することは避けるべきです。※〔 〕内の名称は商品名です。日本での患者数わが国における患者の推定数はどのくらい見積もられておりますでしょうか、また、欧米の患者数、人種差、性差なども合わせてお教え下さい。日本における地域住民の有病率は約1.7%と報告されていますが、その報告には調査人数や具体的な調査方法が記載されていません。今後、科学的根拠の高い日本人の有病率が世界に知られることを期待しています。日本の病院敷地内での女性就労者の2.0%、男性就労者の0.5%がFMと報告されています。アジア、欧米を中心とした報告によるとFMの有病率は約2%、そのグレーゾーンの有病率は約20%と推測されます。圧痛点の数は経時的に変動することや論文上の有病率は一時点の有病率であることを考えると、真の有病率は約2%、日本では250万人程度のFM患者がいると推測しています。中国での有病率は0.05%という報告がありますが、調査方法や診断能力に原因があるのかもしれません。同一の研究チームが異人種を調べた研究は3つあり、ブラジル(非白人2.65%と白人2.26%)とイラン(Caucasians0.6%とトルコ人0.7%)では人種差がなく、マレーシア(マレー系1.19%、インド系2.58%、中国系0.33%)では人種差がありました。そのため有病率に人種差があるのかどうかは不明です。FM患者の約8割は女性であり、性比には大きな人種差はないようです。医師以外の関与線維筋痛症について、ナースやコメディカルが介入できる余地はありますでしょうか。例えば理学療法士がストレッチを指導する、ナースが話を聞くなどで患者の日常生活から改善していくなどです。その際の保険点数など参考になるものがございましたらご教示お願いします。薬物治療以外では、コメディカルが介入できる余地がたくさんあります。ただし、FMという病名では保険点数はつきません。理学療法士や作業療法士は、有酸素運動、筋力増強訓練、ストレッチ、水中訓練などを指導できます。しかし、FMなどの痛みを引き起こす疾患では保険点数は取れません。関節の変性疾患、関節の炎症性疾患、運動器不安定症などが合併していれば運動器リハビリテーション料を請求することができます。ナースが患者の話を聞いたり、患者の痛みや生活の質を評価するアンケートの記載方法の説明を行うことができます。ただし、ナースが患者の話を聞いても保険点数を請求できません。うつ病に対する認知行動療法に対して、厳しい条件はあるものの2010年から保険点数が取れるようになりました。しかし、FMなどの痛みに対する認知行動療法では保険点数を請求できません。総括FMが知られていない日本医学は世界の標準医学から大きく乖離しています。FM以上に中枢性過敏症候群は、日本では知られていません。FMのみならず中枢性過敏症候群を認めて世界の標準医学に追いつく必要があります。FMの治療はFMのみならずそのグレーゾーン、つまり人口の約20%に有効です。グレーゾーンにもFMの治療を行うのですから、臨床の観点ではFMの診断は厳密に行う必要はありません。心因性疼痛、仮面うつ病、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)と診断するより、FMやそのグレーゾーンと診断する方が、有効な治療方法が多いためほぼ間違いなく治療成績が向上します。異なる医学理論が衝突した場合には、「脚気論争」と同様に治療成績がよい医学理論を採用すべきです。自分が長年信じていた医学理論を捨てることは困難ですが、臨床医は自分が信じる医学理論を守ることより、よりよい治療成績を求めるべきです。戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

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米国18歳未満対象の段階的運転免許制度、死亡事故抑制には機能しておらず

米国の18歳未満を対象とする段階的運転免許(graduated driver licensing:GDL)制度の効果について検証したCalifornia Department of Motor VehiclesのScott V. Masten氏らは、16歳ドライバーの死亡事故はかなり低かったが、18歳ドライバーの死亡事故がやや高くなっており、「18歳ドライバー死亡事故の原因解明とGDL制度を改善すべきかを検証する必要がある」とまとめた報告を、JAMA誌2011年9月14日号で発表した。米国では自動車事故死が10代若者の主要な死因となっており、2000~2008年の16~19歳自動車死亡事故者は、ドライバー2万3,000人、同乗者1万4,000人以上に上った。また、事故発生は18~19歳で最も多かったが、走行距離補正後の死亡事故発生はより若い年齢で高く、18~19歳と比べて16歳は150%増、17歳は90%増であったという。GDL制度と1986~2007年の16~19歳自動車死亡事故との関連を調査現在全米50州とワシントンD.C.で導入されているGDL制度は、18歳未満を対象とした、無制限の運転免許を与える前に低リスク下での運転経験を十分に積んでもらうことを目的としたもので、最初の段階では3ヵ月以上の成人運転熟達者の同乗が必要とされ、続く段階として運転熟達者の同乗は不要だが夜間運転の禁止もしくは10代同乗者の禁止(またはいずれも禁止)が特徴となっている。Masten氏らは、GDL制度と16~19歳自動車死亡事故との関連を調べるため、1986~2007年の四半期ごとの自動車死亡事故についてプール横断時系列解析を行った。主要評価項目は、年齢ごとの対人口でみた死亡事故発生率と、GDL制度を取り入れていない州-地域と比較した、規制が強い州-地域(夜間運転と10代同乗者のいずれも禁止されている)、規制が緩い州-地域(どちらか一方のみが禁止されている)それぞれの割合および95%信頼区間とした。解析は、22年間で4地域・51州の4,488州-地域を対象に含んだ。規制が強い州-地域とGDL制度なし州-地域との、全年齢複合死亡事故発生率比は0.97結果、死亡事故発生率はおおよそ年齢とともに増加する傾向にあり、人口10万人当たり、16歳ドライバー28.2、17歳ドライバー36.9、18歳ドライバー46.2、19歳ドライバー44.0だった。16歳が最も低く、18歳が高かった。潜在的交絡因子で補正後、16歳ドライバー死亡事故発生率の低さと、GDL制度の特徴である規制との関連が認められた。規制のない州-地域との比較でみた、規制が強い州-地域の発生割合(RR)は0.74(95%信頼区間:0.65~0.84)だった。しかしながら一方で、18歳ドライバーの死亡事故発生率の高さと、GDL制度規制の強さとの関連も認められ、規制のない州-地域との比較でみた、規制が強い州-地域のRRは1.12(同:1.01~1.23)だった。また、その他の年齢および全年齢複合の規制との関連については、統計的な格差が認められなかった。RRはそれぞれ、17歳ドライバー0.91(95%信頼区間:0.83~1.01)、19歳ドライバー1.05(同:0.98~1.13)、16~19歳ドライバー複合0.97(同:0.92~1.03)だった。(武藤まき:医療ライター)

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重度肺気腫への気管支バイパス術、持続的ベネフィットは確認されず

重度肺気腫患者に対する気管支バイパス術は、安全であり一過性の改善は認められたが、持続的なベネフィットは認められなかったことが報告された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのP L Shah氏らが有効性と安全性を検討したEASE(Exhale airway stents for emphysema)試験の結果による。気管支バイパスは、気管支鏡下肺容量減少療法で、パクリタキセル・コート・ステントで肺への通気性を確保し呼吸を容易にする手術療法である。Lancet誌2011年9月10日号掲載報告より。過膨張が認められる315例を対象に無作為化二重盲検シャム対照試験試験は、2006年10月~2009年4月に、世界38ヵ所の呼吸器専門医療センターから被験者を募り行われた無作為化二重盲検シャム対照試験であった。 1,522例がスクリーニングされ、重度の過膨張[全肺気量(TLC)に対する残気量(RV)の割合が≧0.65)が認められた315例が、コンピュータにて作成した乱数表に基づき2対1の割合に、気管支バイパス術群(208例)またはシャム対照群(107例)に割り付けられた。また本試験では、研究者がチームA(マスキングされた群、処置前後の評価を完了)とチームB(マスキングされなかった群、患者とさらなる交互作用なしで気管支鏡検査をするだけ)に分けられ、それぞれが評価を行った。 共通主要有効性エンドポイントは6ヵ月時点での、基線からの、努力肺活量(FVC)12%以上の改善と改訂英国MRCスコア(Medical Research Council dyspnoea score)1ポイント以上の低下とされた。複合主要安全性エンドポイントには、5つの重度有害事象(重大喀血、24時間以上の人工換気を要した呼吸不全、肺感染症またはCOPD増悪、7日以上ドレナージを要した気胸、処置または初回入院から30日以内での死亡)が組み込まれた。解析は、ベイズ法を用いて、気管支バイパス術のシャム対照に対する優越性の事後確率を示し(成功閾値0.965)評価した。事前規定事後確率0.965に対し、共通主要有効性0.749、複合主要安全性は1.00被験者は12ヵ月間追跡され、intention to treat解析された。 6ヵ月時点での共通主要有効性エンドポイントについて、両群間に差は認められなかった。気管支バイパス術群30/208例、シャム対照群12/107例であり、事後確率は0.749で優越性の規定値を下回った。一方、6ヵ月時点での複合主要安全性エンドポイントは、気管支バイパス術群の非劣性が認められた。気管支バイパス術群14.4%(30/208例)、シャム対照群11.2%(12/107例)で、事後確率は1.00であった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心房細動患者の脳卒中、全身性塞栓症予防に、rivaroxabanはワルファリンに対して非劣性

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症予防に関して、経口第Xa因子阻害薬rivaroxabanはワルファリンに対して非劣性であることが明らかにされた。重大出血のリスクについては両者間に有意差はなく、頭蓋内および致死的出血の頻度はrivaroxabanのほうが少なかった。米国・Duke Clinical Research InstituteのManesh R. Patel氏らROCKET AF治験グループによる二重盲検無作為化試験の結果、報告した。NEJM誌2011年9月8日号(オンライン版2011年8月10日号)掲載報告より。脳卒中リスクの高い非弁膜症性心房細動患者1万4,264例を対象に試験は、脳卒中リスクの高い非弁膜症性心房細動患者1万4,264例を、rivaroxaban投与群(20mg/日)または用量調整(目標INR:2.0~3.0)したワルファリン投与群に無作為に割り付け行われた。主要エンドポイントは、脳卒中または全身性塞栓症の発生であった。主要解析はper-protocol、as-treatedで、rivaroxabanのワルファリンに対する非劣性を検討するようデザインされ解析が行われた。rivaroxabanの非劣性と頭蓋内・致死的出血の抑制を確認主要解析の結果、主要エンドポイント発生は、rivaroxaban群188例(1.7%/年)、ワルファリン群241例(2.2%/年)で、rivaroxaban群の非劣性が認められた(rivaroxaban群のハザード比:0.79、95%信頼区間:0.66~0.96、非劣性に関するP<0.001)。intention-to-treat解析では、主要エンドポイント発生は、rivaroxaban群269例(2.1%/年)、ワルファリン群306例(2.4%/年)であった(ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.74~1.03、非劣性に関するP<0.001、優越性に関するP=0.12)。重大出血または重大ではないが臨床的意義のある出血は、rivaroxaban群で1,475例(14.9%/年)、ワルファリン群で1,449例(14.5%/年)発生した(ハザード比:1.03、95%信頼区間:0.96~1.11、P=0.44)。頭蓋内出血(0.5%対0.7%、P=0.02)と致死的出血(0.2%対0.5%、P=0.003)は、rivaroxaban群のほうが有意に少なかった。(朝田哲明:医療ライター)

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進行がん末期の緩和ケアを改善する新たな予後予測モデル「PiPS」が開発

 英国・St George’s University of LondonのBridget Gwilliam氏らは、進行がんの緩和ケアを改善可能な、新たな予後予測モデル「PiPS(Prognosis in Palliative care Study)」を開発したことを発表した。臨床変数と検査変数を組み合わせた同モデルは、もはや治療がなされない進行がん患者について、2週生存および2ヵ月生存を確実に予測できるという。BMJ誌2011年9月3日号(オンライン版2011年8月25日号)掲載報告より。2週と2ヵ月の予後を、臨床家の推定よりも有意に良好に予測する因子を開発 モデルの開発は、前向き多施設観察コホート研究にて行われ、臨床家が推定する生存よりも、有意に良好に予後を予測する指標を新たに開発することを目標とした。 研究は、英国内の18の緩和ケアサービス(ホスピス、病院サポートチーム、コミュニティチームなど)を拠点に、今後がん治療はなされず緩和ケアサービスに一任されることになった局所進行型転移性がん患者1,018例が対象であった。患者が生存した「日数」(0~13日)または「週数」(14~55日)あるいは「月数+」(55日超)について、新たに開発した複合モデルの予測と、実際の生存、臨床家の予測とを比較した。 核となるのは11の変数 多変量解析の結果、11の変数(脈拍、健康状態、メンタルテスト、パフォーマンス状態、摂食障害の有無、あらゆる部位の転移性疾患、肝転移の有無、CRP、白血球数、血小板数、尿素値)が、2週生存および2ヵ月生存の独立した予後予測因子であった。 2週生存についてのみの有意な予後予測因子は、4つ(呼吸困難、嚥下障害、骨転移、ALT)であった。また、2ヵ月生存についてのみの有意な予後予測因子は8つ(原発性乳がん、男性生殖器がん、疲労、体重減少、リンパ球数、好中球数、ALP、アルブミン)であった。 これらを踏まえ、研究グループは、血液検査結果がある患者(PiPS-A)と、ない患者(PiPS-B)とに分けた2つの予測モデルを開発した。それらモデルは、曲線下面積(AUC)0.79~0.86であった。 実際の生存とPiPS予測との完全な一致率は、57.3%(超オプティミス的補正後で)であった。 PiPS-A分類における生存期間の中央値は5日、33日、92日であった。PiPS-B分類での生存期間中央値は、7日、32日、100.5日であった。 開発したすべてのモデルは、臨床家の推定とほぼ同等、またはよりよく生存を推定していた。

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治療抵抗性の慢性痛風に対するpegloticase、プラセボ群に比べ尿酸値低下

慢性痛風で従来療法に治療抵抗性の患者に対する、新規痛風治療薬のpegloticaseについて、有効性と耐用性に関する、投与間隔が異なる2つの無作為化プラセボ対象試験の結果が報告された。8mg投与を2週間ごとまたは4週間ごとに6ヵ月間投与した結果は、いずれもプラセボ群と比べ血漿尿酸値低下に結びついたという。米国・デューク大学医療センターJohn S. Sundy氏らが、2つの無作為化試験の結果を、JAMA誌2011年8月17日号で発表した。pegloticaseは、従来療法に代わる酵素として、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)結合の哺乳類組み換え型ウリカーゼが特徴の尿酸降下薬である。隔週投与群、月1回投与群、プラセボ群の、3、6ヵ月時点の尿酸値降下達成を比較2つの反復無作為化二重盲検プラセボ対照試験(C0405とC0406)は2006年6月~2007年10月の間に、米国、カナダ、メキシコから56のリウマチ診療所で行われた。被験者は、重度の痛風で、標準薬となっているアロプリノール(商品名:ザイロリックほか)に不耐性または不応性であり血清尿酸値8.0mg/dL以上の患者であった。両試験合計225例(C0405試験109例、C0406試験116例)の患者は、隔週投与群(8mg投与を2週間に1回静注、これを12回行う)、月1回投与群(前述投与スケジュールで2回に1回はプラセボに替えて静注)、プラセボ群に割り付けられ、主要評価項目を3~6ヵ月の間の5つの事前特定測定ポイントにおける、血漿尿酸値6.0mg/dL未満達成とし評価が行われた。プール解析で、隔週投与群42%、月1回投与群35%、プラセボ群0%C0405試験での主要エンドポイント達成は、隔週投与群で20/43例(47%、95%信頼区間:31~62)、月1回投与群8/41例(20%、同:9~35)、プラセボ群0/20例(0%、同:0~17)であった(隔週投与群と月1回投与群vs. プラセボ群の比較はそれぞれP<0.001、P<0.04)。C0406試験では、隔週投与群で16/42例(38%、95%信頼区間:24~54)、月1回投与群21/43例(49%、同:33~65)、プラセボ群0/23例(0%、同:0~15)であった(それぞれP=0.001、P<0.001)。2試験データのプール解析の結果、隔週投与群で36/85例(42%、95%信頼区間:32~54)、月1回投与群29/84例(35%、同:24~46)、プラセボ群0/43例(0%、同:0~8)であった(それぞれのP<0.001)。無作為化から研究データベース締め切り時点まで(2008年2月15日)の間の死亡発生は、7例(pegloticase投与群4例、プラセボ投与群3例)であった。(武藤まき:医療ライター)

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作りました、「時間がない人」専用のPubMed

ケアネットは2011年8月、世界初のクラウド型論文検索サービス「PubMed CLOUD」をWEB サイト上および App Store にて提供を開始した。開始後iPadアプリはiTunesメディカル(無料)部門でダウンロード第1位を獲得し、好評を得ている同サービスについて開発担当の同社藤原健次氏に話を伺った。PubMed CLOUDとは?PubMed CLOUD(パブメド クラウド)は、気になった論文を世界最大級の医学文献データベース「PubMed」(※1)を検索して、その論文のアブストラクトを保存・管理できるツールです。2011年8月より、医師・医療従事者専門サイト「CareNet.com」会員に向けて、無料でサービスを提供しています。このサービスにはクラウドで連動している、iPhone、iPadに対応したiOSアプリも用意しましたのでApp Store にてアプリをダウンロードしていただければ、保存したアブストラクトをいつでもどこでも、好きな時間にアクセス、閲覧することができます。ケアネット会員であれば、医師でなくても誰でも利用できますので、多くの会員の皆さんに活用していただきたいです。※1「PubMed」は米国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)により提供されている世界最大級の医学・生物文献データベース「MEDLINE」を、インターネットで検索できるサービス。PubMed CLOUDで時間を有効活用私も仕事で「PubMed」はよく利用していたのですが、「PubMed」は、検索結果とアブストラクトが別の画面に表示されるので、画面を行ったり来たりと手間がかかり、目的のアブストラクトにたどり着くまで、時間がかかっていました。しかし、「PubMed CLOUD」では検索結果とアブストラクトを同じ画面に表示させるレイアウトを採用しているので、これにより検索結果をさくさくと閲覧でき、目的のアブストラクトに素早く到達することができます。また、過去に「PubMed」で検索して見つけた論文が再度必要となり、その時に入力した検索式をどこかにメモを残していたりしていないので、またもう一度同じ論文を求めて検索し直すという煩わしい経験を何度もしたことがありました。でも「PubMed CLOUD」では、気になった論文をその場でボタン一つで保存できるので、簡単に自分専用の論文ライブラリーができあがります。さらに、保存されたデータはインターネット上に記録されるので、勤務先でも自宅でも、またiPhoneやiPadにアプリを入れておけばいつでも、どこでも自分専用論文ライブラリーにアクセスできます。時間がない先生方にとって論文検索時間の短縮、閲覧時間の確保・拡張となり、時間の有効活用になると考えています。WEB サイトとモバイル間で同期ができる「PubMed」がほしい!これまでにも「PubMed」を検索できるiPhone、iPad向けアプリは存在していましたが、iPadとiPhone間との同期の機能がなかったため、例えばiPad上に検索・保存したものがiPhoneでは見ることができず、残念な思いをしていました。また「PubMed」はパソコンでの利用が多いため、WEB サイトとiPhone、iPadで同期ができる「PubMed」の開発を始めました。7割超のユーザーから保存機能がよいと好評価8月にリリースする前に、7月21~23日に開催された第9回日本臨床腫瘍学会(JSMO)のブースにて「PubMed CLOUD」のβ版を先行して公開いたしました。「PubMed」というキーワードで足を止めた学会参加者の方も多く、多くの先生方に興味を持っていただき3700名の学会参加者のうち300名もの方々からβ版のご利用の申し込みをいただくことができました。また、サービスを開始してから「CareNet.com」会員の方に「PubMed CLOUD」についてアンケートをしたところ、「非常に興味あり」「興味あり」と答えた方が7割強と会員の方々からの関心の高さを伺い知ることができました。7割くらいの方が気に入った点として「保存機能」を挙げており、私と同じように、従来の「PubMed」をもっと快適に利用したい会員の方々が多いのかもしれませんが、早々に「PubMed CLOUD」が支持され始めているのだと実感いたしました。役立つ論文を自分専用ライブラリーにどんどん保存できるのが醍醐味1ユーザーとして、私はインターネットでお気に入りのホームページ等をブックマークするように、「PubMed CLOUD」で論文を検索して、役立つ論文を自分専用ライブラリーにどんどん保存できるのがこのサービスの醍醐味だと感じています。これまでは購入した原著論文はパソコンのフォルダで管理していましたので、外出先でとっさに閲覧した場合も確認することはできませんでした。現在では原著を「PubMed CLOUD」で保存・管理していますのでiPadで見たい時に見られるようになり、論文の利用機会が一変しました。これまで文献検索結果や原著の管理方法にゴールデンスタンダードはなかったので、会員の方々のゴールデンスタンダードになれば嬉しいですね。「PubMed CLOUD」を通して、会員の方々の臨床力向上のお手伝いができればと思っています。

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中高生の最適な眼鏡作成に、自己調整型の油圧式視力検査用眼鏡が有用:中国

中高生の眼鏡を作成する際に行う視力検査について、従来法と、屈折矯正を自己調整で行う方法との比較検討が行われた。中国・広東省汕頭共同国際視力センターのMingzhi Zhang氏らが、中国南部の地方都市在住の12~18歳648例を対象に断面研究にて行った。結果、自己調整法のほうが従来法よりも視力結果は悪かったが、鋭敏さに優れ、眼鏡をかけても視力が十分に得られないという頻度が少なかった。Zhang氏は「自己調整型の視力検査用眼鏡は、訓練を十分に受けていない検査要員や高価な視力測定器、点眼による毛様体筋麻痺といった必要条件を減らすことが可能である」と結論している。BMJ誌2011年8月20日号(オンライン版2011年8月9日号)掲載報告より。自分で度を調整できる油圧式眼鏡が、視力検査に有用か648例の若者を対象に検討中国地方都市の中高生では約60%が屈折矯正を必要とする。しかし、その3分の2は適正な視力矯正を手にすることができておらず、視力不良の状況にあるという。Zhang氏らは、2010年3月末~5月末に、両眼視力が6/12以下の12~18歳(中央値14.9、SD 0.98)の若者648例について、毛様体筋麻痺なしの自己調整型屈折矯正、毛様体筋麻痺なしの自動視力検眼器による屈折矯正、毛様体筋麻痺ありの検眼医による屈折矯正を行った。この研究で用いられた自己調整型の視力検査用眼鏡は、「Adspecs」(英国、Adaptive Eyecare社)というレンズを変えることなく、自分で屈折率を油圧によって変えることができるというものである。調整に難があるのは近視、遠視、乱視がより強い人被験者のうち、女子が59%(384例)、眼鏡着用者は44%(288例)、右目が2.00ジオプター以上の近視であった者が61%(393/648)だった。自己調整型屈折矯正は全員に行われた。視力が良好な≧6/7.5の割合は、視力非矯正においては5.2%(95%信頼区間:3.6~6.9)、使い込んだ眼鏡を着用していた人では30.2%(同:25.7~34.8)、自己屈折矯正においては96.9%(同:95.5~98.3)、自動屈折矯正では98.4%(同:97.4~99.5)、検眼医屈折矯正では99.1%(同:98.3~99.9%)であった(自己屈折矯正vs. 自動屈折矯正のp=0.033、自己屈折矯正vs. 検眼医屈折矯正のp=0.001)。自己屈折矯正と検眼医屈折矯正での視力改善は、被験者の98%で視力検査表の1ライン上で認められた。ロジスティック回帰モデル分析の結果では、自己屈折矯正で右目の視力6/7.5に達しなかったことに関連していたのは、近視/遠視がより強いこと(p<0.001)、乱視がより強いこと(p=0.001)、現に使っている眼鏡を使っていないこと(p=0.002)で、年齢や性別との関連は認められなかった。有意な不正確さ(≧1.00ジオプター)は、自動屈折矯正よりも自己屈折矯正で頻度が少なかった(5%対11%、p<0.001)。

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術後タモキシフェン5年投与、ER陽性乳がんの再発・死亡リスクを長期に低減

タモキシフェン(TAM、商品名:ノルバデックスなど)を用いた5年間の術後補助内分泌療法は、エストロゲン受容体(ER)陽性の早期乳がん患者の10年再発および15年乳がん死のリスクを有意に低下させることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG)の検討で示された。術後TAM 5年投与の臨床試験の無作為割り付け後の追跡期間が10年を超えるようになり、乳がん死や他の死因による死亡に及ぼす効果、さらにホルモン受容体が弱陽性の患者に対する効果の評価が可能な状況が整いつつあるという。Lancet誌2011年8月27日号(オンライン版2011年7月29日号)掲載の報告。20の無作為化試験の個々の患者データを解析EBCTCGは、早期乳がんの術後補助内分泌療法としてのTAMの5年投与に関する無作為化試験のメタ解析を行い、ホルモン受容体の発現状況などの背景因子が本治療法の長期的な転帰に及ぼす影響について評価した。解析には、早期乳がんに対する術後TAM 5年投与と非投与を比較した20の無作為化試験に参加した2万1,457例の個々の患者データを用いた。全体の服薬コンプライアンスは約80%であった。log-rank検定を行って再発および死亡の率比(rate ratio; RR)を算出した。服薬コンプライアンスが十分であれば、全ER陽性例で死亡リスクが約3分の1低下ER陽性例(1万645例)では、治療開始から10年間の再発率はTAM群のほうが非TAM群に比べ有意に低下しており、RRは0~4年が0.53(SE 0.03)、5~9年は0.68(SE 0.06)であった(いずれも2p<0.00001)。しかし、10~14年のRRは0.97(SE 0.10)であり、治療期間が10年以降になると、TAMによる再発抑制効果はそれ以上高くも低くもならないことが示唆された。ER弱陽性(1mgのサイトゾル蛋白当たり10~19fmol)例においても、RRは0.67(SE 0.08)と、TAMによる再発抑制効果が確認された。ER陽性例における再発のRRには、プロゲステロン受容体(PgR)の陽性/陰性や陽性の程度、年齢、リンパ節転移の有無、化学療法の有無の影響はほとんどなかった。乳がんによる死亡率は、治療開始から15年で約3分の1低下しており、RRは0~4年が0.71(SE 0.05)、5~9年は0.66(SE 0.05)、10~14年は0.68(SE 0.08)であった(いずれも超過死亡率低下のp<0.0001)。ERの状態は、リスク低下に関する唯一の有意な予測因子TAMは、55歳以上の患者でのみ血栓塞栓症および子宮がんによる死亡のリスクをわずかに上昇させたものの、非乳がん死亡にはほとんど影響を及ぼさず、したがって全死因死亡は非TAM群に比べて有意に低かった。ER陰性例では、TAM投与による乳がんの再発、死亡への影響は認めなかった。著者は、「術後のTAM 5年投与は、早期乳がんの再発および乳がん死のリスクを10~15年にわたり低下させ、安全性にも問題はなかった。ERの状態は、リスク低下に関する唯一の有意な予測因子であった」と結論し、「弱陽性を含むすべてのER陽性乳がん患者では、服薬コンプライアンスが十分であれば、術後TAM 5年投与によって15年間の乳がん死のリスクが、術後補助内分泌療法を施行しない場合に比べ、少なくとも約3分の1低減することが示された」としている。(菅野守:医学ライター)

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COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。250mg/日を1年間投与COPDの急性増悪は、死亡リスクの上昇や肺機能の急速な低下はもとより、本人の労働機会を奪い、開業医やER受診、入院機会の頻度を増し治療コストを上昇させる。標準治療〔吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬〕も頻度は減らすものの、なお年平均1.4回の急性増悪が認められることから、Albert氏らは、種々の炎症性気道疾患に有効なマクロライド系抗菌薬の予防的投与について検討した。試験対象となったのは、40歳以上のCOPDの増悪リスクは高いが、聴覚障害、安静時頻脈または補正QT間隔延長の著明なリスクはない患者であった。合計1,577例がスクリーニングを受け、うち1,142例(72%)が、標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を1年間受ける群(570例)、または同プラセボを受ける群(572例)に無作為に割り付けられた。試験登録は2006年3月から始まり、1年間投与後2010年6月末まで追跡評価された。主要アウトカムは、初回急性増悪までの期間。副次アウトカムには、QOL、黄色ブドウ球菌や肺炎レンサ球菌などの鼻咽頭細菌コロニー形成、服薬アドヒアランスが含まれた。急性増悪の頻度減少、QOL改善も、一部患者で聴覚障害、耐性菌出現の影響は不明1年間の追跡調査を完了した患者は、アジスロマイシン群89%、プラセボ群90%であった。初回増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群266日(95%信頼区間:227~313)に対して、プラセボ投与群は174日(同:143~215)で有意な延長が認められた(P

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電子カルテの自由記述から導出した患者安全指標、従来ツールより良好:米国

電子カルテシステム導入が進む中、その自由記述欄から自然言語処理にて導き出した患者安全指標の精度に関する検討が、米国・Tennessee Valley Healthcare SystemのHarvey J. Murff氏らにより行われた。術後合併症を特定するかどうかについて、現状ツールである退院コーディング情報をベースとした指標と比べた結果、感度では優れ、特異度は若干劣ったものの90%以上と非常に高い値が示されたという。電子カルテデータを活用した患者安全特定の方法は、現状では診療データコード(ICD)に依存している。研究グループは、それよりも自由記述から導き出した指標のほうが、高い検出力を示すのではないかと仮定し検討を行った。JAMA誌2011年8月24日号掲載報告より。術後合併症の特定力について、退院コーディング情報ベースの指標と比較Murff氏らは、1999~2006年の3州6ヵ所の退役軍人医療センターで外科的手術を受けた患者2,974例に関する断面調査を行った。電子カルテデータから特定された、透析を要した急性腎不全、深部静脈血栓症、肺塞栓症、敗血症、肺炎または心筋梗塞の術後発生を、VASQIP(VA Surgical Quality Improvement Program)で再評価し、それら合併症を特定する自然言語処理アプローチの感度と特異度を求め、退院コーディング情報をベースとした患者安全指標とのパフォーマンスを比較した。感度、特異度ともに優れる各合併症発生率は、透析を要した急性腎不全2%(39/1,924例)、肺塞栓症0.7%(18/2,327例)、深部静脈血栓症1%(29/2,327例)、敗血症7%(61/866例)、肺炎16%(222/1,405例)、心筋梗塞2%(35/1,822例)だった。急性腎不全例を正確に特定する感度は、従来患者安全指標が38%(95%信頼区間:25~54%)であったのに対し、自然言語処理アプローチは82%(同:67~91%)だった(p<0.001)。深部静脈血栓症(59%vs 46%、p=0.30)、敗血症(89%vs 34%、p<0.001)、肺炎(64%vs 5%、p<0.001)、心筋梗塞(91%vs 89%、p=0.67)についても同様の結果が得られた。特異度は、自然言語処理アプローチが従来患者安全指標よりも低値を示したが、いずれも90%以上と非常に高かった。急性腎不全(94%vs 100%)、深部静脈血栓症(91%vs 98%)、敗血症(94%vs 99%)、肺炎(95%vs 99%)、心筋梗塞(95%vs 99%)だった(すべてp<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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心血管イベントリスクの予測、冠動脈カルシウムスコアが高感度CRPよりも有用

心臓CTで検出される冠動脈カルシウム(CAC)スコアが、高感度C反応性蛋白(CRP)値と比べて、スタチン治療のベネフィットが最大あるいは最小と予想される人を特定するのに有用であることが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンスCiccarone心臓病予防センターのMichael J Blaha氏らが、多人種アテローム性動脈硬化症試験(MESA)から、JUPITER試験適格条件を満たした被験者950例を対象とした住民ベースコホート試験の結果による。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。冠動脈カルシウムスコアと高感度CRPとの予測能を比較rosuvastatin治療を受けている人を対象としたJUPITER試験では、心血管イベントの絶対リスクが低下した人として示されたのは、LDL-C値130mg/dL(3.37mmol/L)未満、高感度CRP値2mg/L以上の人に限定されていた。Blaha氏らは、同条件の被験者を対象に、CACスコアのほうがリスク階層化に優れるかを検討。MESA被験者のうちJUPITER試験適格条件を満たした2,083例を試験ベースコホートとし(平均年齢67歳、女性40%)、そのうち高感度CRP値2mg/L以上の950例(MESA JUPITER population)を対象とした試験を行った。被験者をCACスコア(0、1~100、>100)にて階層化後、冠動脈心疾患と心血管疾患のイベント発生率、多変量補正ハザード比を比較し、また、JUPITER試験で示されたベネフィットを適用した各CAC階層群の5年NNT(治療必要数)を算出した。追跡期間は5.8年(IQR:5.7~5.9)。各CACスコア階層群は、0群444例(47%)、1~100群267例(28%)、>100群239例(25%)だった。心血管イベントの関連、冠動脈カルシウムスコアとは有意だが高感度CRPとは関連示さず結果、全心血管イベントの74%は、スコア>100群での発生だった。スコア0群での冠動脈心疾患発生率は1,000人・年当たり0.8、心血管疾患は同3.7、だったのに対し、スコア>100群ではそれぞれ20.2、26.4であった。5年NNTは、冠動脈心疾患についてはスコア0群549、スコア1~100群94、スコア>100群24、心血管疾患についてはそれぞれ124、54、19だった。高感度CRP値2mg/L未満群を含む試験ベースコホート(2,083例)において、CACスコア検出群の補正後ハザード比(高感度CRP値2mg/L未満群を1とする)は、冠動脈心疾患は4.29(95%信頼区間:1.99~9.25、p<0.0001)、心血管疾患は2.57(同:1.48~4.48、p=0.001)でスコアと疾患との関連が有意だった。一方高感度CRP値(2mg/L以上)の同値は、それぞれ0.90(p=0.69)、1.08(p=0.73)で関連が有意ではなかった。Blaha氏は、「測定可能なアテローム性動脈硬化症を有する人に治療をフォーカスすることで、医療資源のより適正な供給が可能となるだろう」と結論している。

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