サイト内検索|page:365

検索結果 合計:10307件 表示位置:7281 - 7300

7281.

インクレチン関連薬の心不全リスクを検証/NEJM

 インクレチン関連薬は、一般的な経口糖尿病治療薬の併用療法と比較して、心不全による入院リスクを増大しないことが示された。カナダ・ジューイッシュ総合病院のKristian B. Filion氏らが、国際多施設共同コホート研究Canadian Network for Observational Drug Effect Studies(CNODES)の一環としてデータを解析し明らかにした。インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受動体作動薬など)は、安全性に関して心不全リスクが増大する可能性が示唆されているが、現在進行中の臨床試験でこの問題を検証するには規模が不十分とされていた。NEJM誌2016年3月24日号掲載の報告。カナダ・米国・英国の約150万例でコホート内症例対照研究を実施 研究グループは、カナダ(アルバータ州、マニトバ州、オンタリオ州、サスカチワン州)、米国、英国の6施設からの糖尿病患者の医療データを用い、コホート内症例対照研究を行った(2014年6月30日まで)。コホート全体で149万9,650例が解析対象となった。 心不全により入院した患者1例に対し、同一コホートから性別、年齢、コホート登録日、糖尿病の治療期間、追跡調査期間をマッチさせた最大20例の対照を設定。条件付きロジスティック回帰分析により、経口糖尿病治療薬併用療法と比較したインクレチン関連薬の、心不全入院リスクのハザード比をコホートごとに推算し、ランダム効果モデルを用いてコホート全体を統合した。インクレチン関連薬の使用で心不全入院リスクは増大しない 全体で心不全による入院が2万9,741件認められた(発生率:9.2件/1,000人年)。経口糖尿病治療薬併用療法と比較したインクレチン関連薬の心不全入院リスクは、心不全の既往歴がある患者(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.62~1.19)、心不全の既往歴がない患者(同:0.82、0.67~1.00)いずれにおいても増加はみられなかった。 DPP-4阻害薬(HR:0.84、95%CI:0.69~1.02)、GLP-1受容体作動薬(HR:0.95、95%CI:0.83~1.10)の別にみても結果は同様であった。 著者は、「これまでの臨床試験の対象集団と比較して、本コホートの糖尿病患者の多くは罹病期間が短く(心不全既往歴なし:0.7年、心不全既往歴あり:1.8年)、そのため心不全リスクが低くなった可能性があるが、一方で2次解析により、インクレチン関連薬による心不全リスクは、糖尿病治療期間による違いはないことが示された」と述べている。

7282.

2型糖尿病における基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の有用性は…(解説:吉岡 成人 氏)-506

基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用 米国糖尿病学会(American Diabetes Association:ADA)の推奨する2型糖尿病の治療アルゴリズムでは、第1選択薬はメトホルミンであり、単剤→2剤併用(注射薬であるインスリン、GLP-1受容体作動薬との併用も可)→3剤併用とステップアップして、最終的な注射薬との併用療法として、メトホルミンをベースに基礎インスリンと食事の際の(超)速効型インスリン製剤の併用(強化インスリン療法)、または、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用が勧められている。肥満が多い欧米の糖尿病患者においては、肥満を助長せず、食欲を亢進させないGLP-1受容体作動薬が広く使用されている。基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤の有用性を検討 現在、Novo Nordisk社では持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリンデグルデク(商品名:トレシーバ)とGLP-1受容体作動薬であるリラグルチド(同:ビクトーザ)の固定用量配合剤(3ml中に300単位のインスリンデグルデク、10.8mgのリラグルチドを含むプレフィルドタイプのペン製剤;one dose stepにインスリンデグルデク1単位、リラグルチド0.036mgを含有)に関する臨床試験を行っており、本論文は、配合剤と持効型溶解インスリン製剤であるグラルギン(同:ランタス)を使用してタイトレーションを行った際の有用性を比較検討した試験である。 10ヵ国、75施設から患者をリクルートした多施設国際共同試験であり、ランダム化、オープンラベルの第III相試験である。グラルギン20~50Uと1,500mg以上のメトホルミンの併用でも血糖コントロールが不十分(HbA1c>7.0~10.0%)な2型糖尿病患者557例(平均年齢58.8歳、男性が51,3%、平均BMI:31.7kg/m2)を対象として、空腹時血糖値72~90mg/dLをターゲットに、週に2回、デグルデク/リラグルチドないしはグラルギンでタイトレーションを行う2群に分け、26週にわたって経過を観察した試験である。デグルデク/リラグルチド群(278例)では、16 dose steps(デグルデク16単位、リラグルチド0.6mg)から開始し、50 dose steps(デグルデク50単位、リラグルチド1.8mg)まで増量し、グラルギン群(279例)では最大投与量に上限値を設けずに増量するというプロトコルを採用している。デグルデク/リラグルチド群ではHbA1c、体重が有意に低下、低血糖の頻度も減少 その結果、デグルデク/リラグルチド群ではHbA1cが-1.81%(8.4→6.6%)、グラルギン群-1.13%(8.2→7.1%)となり、推定治療差(ETD)は-0.59%(95%信頼区間:-0.74~-0.45)と非劣性基準を満たし、統計的な優越性基準も満たした(p<0.001)。また、体重についてもデグルデク/リラグルチド群では1.4kg減少し(グラルギン群では1.8kg増加)、低血糖はデグルデク/リラグルチド群で2.23件/患者年(ランタス群では5.05件/患者年)と有意に少なかった。非重篤な胃腸障害はデグルデク/リラグルチド群で79件、グラルギン群で18件とデグルデク/リラグルチド群で多かったが、重篤な有害事象の頻度に差はなかった。日本におけるデグルデク/リラグルチド配合剤の有用性は… 日本ではリラグルチド(商品名:ビクトーザ)、エキセナチド(同:バイエッタ)、エキセナチド持続性注射剤(ビデュリオン)、リキシセナチド(リキスミア)、デュラグルチド(トルリシティ・アテオス)の5種類のGLP-1受容体作動薬が発売されている。インスリンや経口糖尿病治療薬との併用についての保険適用で、薬剤間に若干の差はあるものの、副作用としての嘔気などの消化管機能障害のため、適正な用量までの増量が難しい患者が少なくない。また、発売当初に期待されていた膵β細胞の保護機能に関する臨床データは得られておらず、体重減少や血糖管理が長期間にわたり持続する症例は期待されたほど多くはなく、薬剤の有用性を実感しにくいことも事実である。しかし、週1回製剤のデュラグルチドは注射の操作も簡単であり、認知機能が低下した高齢者などに対して、患者や家族ではなく訪問看護師や地域の一般医が週に1回の注射を行うことで安定した血糖管理が得られる症例もあり、今後幅広く医療の現場で使用される可能性も示唆されている。 いずれにしても、欧米人ほどは大量のインスリンを必要とせず、BMI30kg/m2を超える肥満2型糖尿病患者がさほど多くない日本において、インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤がどの程度の価格で発売され、どのようなタイプの患者にとって福音となるのか、慎重な検討が必要であろう。

7283.

サルマラリアに気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第19回となる今回は、前回のジカウイルス感染症との蚊つながりで、マラリアについてご紹介いたします。マラリアは古典?「おいおい、マラリアなんて超古典的な感染症じゃねえかよ、どこが新興再興感染症なんだよ」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、今回取り上げるのはそのマラリア原虫の中でも、最近注目を集めているサルマラリアの1つPlasmodium knowlesiというものです(このP.knowlesi以外にもサルに感染するマラリアはたくさんあり、それらをひっくるめていわゆる「サルマラリア」と呼びます)。マラリアは、結核とHIVに並ぶ世界3大感染症の1つであり、今もアフリカを中心に2億人を越える感染者を出しています1)。その大半が熱帯熱マラリア(Plasmodium falciparum)または三日熱マラリア(Plasmodium vivax)によるものであり、残りの数%が四日熱マラリア(Plasmodium malariae)と卵形マラリア(Plasmodium ovale)によるものです。しかし、これまで4種類とされてきたヒトに感染するマラリア原虫に第5の刺客が登場したのですッ! それがP.knowlesiなのですッ! ちなみに“knowlesi”の発音ですが、「ノウレジ」と言う人もいますが、通は「ノウザイ」と発音するようです。“Dengue”を「デング」と呼ぶか、「デンギー」と呼ぶかと同じで、まあどっちでもいいかと思いますが。知っておきたいP.knowlesiの発生地域P.knowlesiは、アカゲザルやカニクイザルなどのサルを固有の宿主とするマラリア原虫の1種で、1965年にマレーシアでヒトへの自然感染例が初めて報告されましたが、ヒトに感染するのはきわめてまれな感染症であると考えられていました。しかし、マレーシアでこれまで四日熱マラリアと診断されていた症例の大部分が、実はどうやらP.knowlesi感染症であったことが近年明らかとなり、現在ではP.knowlesiはマレーシアの他、タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、インドネシア、シンガポールなど東南アジアの森林地帯に分布していることがわかっています(図1)2)。すでに日本でも1例の輸入例が報告されています。これは国立国際医療研究センターで診断された症例で、私も診療に加わらせていただいた症例です3)。画像を拡大するP.knowlesiの症状と診断P.knowlesiの臨床症状は、他のマラリアと同じく非特異的な発熱であり、発熱以外には頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢などの症状を呈することがあります。卵形マラリアや三日熱マラリアは48時間、四日熱マラリアは72時間周期の発熱を呈することがありますが、P.knowlesiは24時間周期といわれています。これはマラリア原虫の体内での分裂周期が、この時間だから周期的な発熱になるわけですが、発症してしばらくは原虫の周期がそろわず、かならずしも周期的な発熱にならないこともしばしばです。周期性が出てくるのはだいたい発症から5~7日くらいとされています4)。マラリア原虫種の鑑別には、ギムザ染色による顕微鏡検査がゴールドスタンダードです。たとえば図2がP.knowlesiのギムザ染色での所見です。画像を拡大する感染赤血球の大きさが変化していないので熱帯熱マラリアか四日熱マラリアかP.knowlesiかということがわかりますし、環状体が少し変形しているので後期栄養体かな? とかまではわかりますが、P.knowlesiは後期栄養体の帯状体が四日熱マラリア原虫と類似していたり、早期栄養体の環状体が熱帯熱マラリア原虫との鑑別を要することもあるため、なかなかギムザ染色だけでは原虫種まではわかりません。確定診断のためにはPCR検査を依頼することが、望ましいとされます(マラリア原虫のPCR検査は、国立国際医療研究センター研究所 マラリア研究部で行うことができます)。P.knowlesiの治療と発熱渡航者に気を付けろP.knowlesi感染症はほとんどが軽症~中等症ですが、まれに重症化する症例が報告されており、注意が必要です。P.knowlesi感染症の治療としては、海外ではクロロキンが第1選択薬として使用されていますが、わが国ではクロロキンは使用できないため、本症例ではメフロキン(商品名:メファキン)またはアトバコン・プログアニル(同:マラロン)を使用することになります。ただし、重症例では他のマラリア原虫種同様、アーテミシニン併用療法による治療が推奨されます。幸いなことにアーテメーター・ルメファントリン合剤(同:リアメット)が国内でも承認されましたので、もうすぐ使用できるようになります。また、P.knowlesiは休眠体をつくらないため、プリマキンによる根治療法を行う必要はありません。P.knowlesi常在地から帰国後の発熱患者に血液塗抹標本で、四日熱マラリア原虫に似た原虫を認めたら、P.knowlesi感染症を疑うようにしましょう!次回は最近あまり注目されていないけれど、地味に感染者を出している「H7N9インフルエンザ」についてご紹介いたしますッ!1)World Health Organization. World Malaria Report 2015.(参照 2016.3.23).2)Singh B, et al. Clin Microbiol Rev. 2013;26:165-184.3)Tanizaki R, et al. Malar J. 2013;12:128.4)Taylor T, et al. Hunter's Tropical Medicine and Emerging Infectious Diseases. 9th ed. Philadelphia:Saunders Elsevier;2012. p.696-717.

7284.

卵円孔開存への経皮的閉鎖術、片頭痛の頻度は減少せず

 西洋諸国における片頭痛の有病率は8~13%と言われおり、幾つかの研究が、片頭痛と卵円孔開存(PFO)の関連性を指摘している。今回、前兆を伴う片頭痛患者に対する経皮的PFO閉鎖術の効果を無作為化比較で検討した試験の結果が、European Heart Journal誌オンライン版2016年2月22日号に発表された。スイス、ドイツ、イギリスなどの20施設による共同発表。なお、本試験は、Amplatzer卵円孔開存閉鎖栓の製造元であるSt. Jude Medical社がスポンサーとなっている。卵円孔閉鎖術と薬物治療による無作為化比較試験 PRIMA(The Percutaneous Closure of PFO in Migraine with Aura)試験は、内服治療が無効な片頭痛患者に対するカテーテルを用いた経皮的PFO閉鎖術の有効性の評価を目的とした、多施設共同無作為化試験である。前兆を伴う片頭痛とPFOを有し、かつ片頭痛に対する予防的な内服が無効であった患者をPFO閉鎖術群と内服治療群に無作為化したうえで、片頭痛の頻度を比較した。両群ともアセチルサリチル酸(75~100mg/日、6ヵ月間)とクロピドグレル(75mg/日、3ヵ月間)が投与された。 主要評価項目は、無作為化前の3ヵ月間(ベースライン)と比較して、無作為化後9~12ヵ月の3ヵ月間における片頭痛の頻度の減少とされた。患者がどちらの群に属するかは、頭痛日記を確認するメンバーにはわからないようになっていた。片頭痛の頻度の減少は閉鎖群-2.9日/月、対照群-1.7日/月で有意差なし 107例が、Amplatzer卵円孔開存閉鎖栓での治療群53例、対照群54例に無作為に振り分けられた。患者の組み入れのペースが遅すぎたため、スポンサーが中止を決定し、試験は終了となったが、83例(閉鎖群40例、対照群43例)が12ヵ月のフォローアップを終了した。ベースラインでの1ヵ月当たりの平均片頭痛日数(±SD)は、閉鎖群で8±4.7日、対照群で8.3±2.4日。主要評価項目は、閉鎖群-2.9日/月、対照群-1.7日/月で、有意差は認められなかった(p=0.17)。閉鎖群で5つの合併症が起きたが、一時的な後遺症にとどまった。試験後の解析では、閉鎖群における前兆を伴う片頭痛の頻度は、対照群に比べて有意に減少した(-2.4日/月 vs.-0.6日/月、p=0.0141)。 著者らは、当初、対照群に偽の手技を行うことも検討したが、それには、閉鎖術に必ずしも必要のない鎮静や全身麻酔を行わなければならないため、認められなかった。そのため、閉鎖群にプラセボ効果が生じ、結果にバイアスが生じている可能性があるとしている。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記 

7285.

原発性胆汁性胆管炎〔PBC : Primary Biliary Cholangitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、病因・病態に自己免疫学的機序が想定される慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患である。中高年女性に好発し、皮膚掻痒感で初発することが多い。しかし、多くの症例では無症候性の時期にたまたま発見され、長く無症候性のまま経過する。黄疸はいったん出現すると、消退することなく漸増することが多い。一部の症例では門脈圧亢進症状が高頻度に出現する(表1)。画像を拡大する従来、病名は「原発性胆汁性肝硬変」となっていたが、現在は早期に診断することができるようになり、またウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid;UDCA)の効果もみられることから、現在診断されている多くの患者は肝硬変には至っていない。実際は肝硬変ではないにもかかわらず「肝硬変」が病名に入っていることで、患者の精神的負担が大きい、との患者団体の要請に応じ、2016年より世界的に、英文字略語のPBCはそのまま残し、「Primary Biliary Cholangitis(PBC)」と改名された。日本語では、「原発性胆汁性胆管炎」と改名されることになった。■ 疫学男女比は約1:7、診断時平均年齢は50~60歳で、幼小児期での発症はみられない1)。発生数は1980年の調査開始以来増加傾向にあったが、1990年代以降は横ばいで推移している。新たに診断される症例のうち約70~80%は無症候性PBCである。無症候性PBCを含めた総患者数は全国で約5万~6万人と推計される1)。■ 病因本症は種々の免疫異常とともに、自己抗体の1つである抗ミトコンドリア抗体(Anti-mitochondrial antibody:AMA)が特異的(90%)かつ高率(90%)に陽性化し、また、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群などの自己免疫性疾患や膠原病を合併しやすい。さらに、組織学的には障害胆管周囲にT細胞優位の高度の単核球浸潤がみられることなどから、病態形成には自己免疫学機序が強く関与していると考えられる。多くの疾患同様、本疾患も多因子疾患であり、遺伝学的要因を基盤に環境要因が作用することよって発症し、病態形成がなされることが想定されている。家族集積性のあることや一卵性双生児における一致率がきわめて高いことなどから、発症には遺伝的素因の関与が示唆される。HLA-DR8 (DRB1*08)が人種を超えて疾患感受性遺伝子として働いている可能性が想定され、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、HLA-DR以外の新たな疾患関連遺伝子多型の情報が集積されつつある2)。環境因子としては、大腸菌などの細菌からの感染が想定されている。また、工業地帯や汚染廃棄物処理施設の近郊で発症が多いとの疫学研究などより、大気汚染や化学物質、化粧品などによる抗原の修飾がPBC発症のきっかけとなっている可能性が想定されている。■ 症状本疾患にみられる症状は、(1)胆汁うっ滞に基づく症状(2)肝障害・肝硬変および随伴する病態に伴う症状(3)合併した他の自己免疫疾患に伴う症状に分けて考えることができる。病初期は無症状であるが(無症候性PBC)、黄疸を呈する以前から胆汁うっ滞に基づく搔痒感が出現する。身体所見としては、症候性PBCでは黄疸のほか、掻痒のために生じた掻き傷、高脂血症に伴う眼瞼黄色腫が観察され、肝臓は腫大していることが多い。本疾患は他の自己免疫性疾患・膠原病を合併しやすく、なかでもシェーグレン症候群、慢性甲状腺炎、関節リウマチの頻度が高い。門脈圧亢進症状を早期から呈しやすく、高齢者や進行例では肝細胞がんの併発も考慮する必要がある。■ 分類1)臨床病期分類皮膚搔痒感、黄疸、食道静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく症候を伴う症候性PBC(sPBC)とこれらの症候を欠く無症候性PBC(aPBC)に分類される。症候性PBCはさらに、皮膚掻痒感のみ認め血清総ビリルビン値が2.0mg/dL未満のs1PBCと、血清総ビリルビン値が2.0mg/dL以上の黄疸を認めるs2PBCに細分される1)。2)組織学的病期分類わが国の診療ガイドラインでは、サンプリングエラーを最小限にするように工夫された中沼らによる新しい分類の使用が推奨されている。1期(no progression)、2期(mild progression)、3期(moderate progression)、4期(advanced progression)の4期に分類される。3)特殊型特殊なタイプとして、以下の病態がある。(1)PBC-AIHオーバーラップ症候群(PBC-AIH overlap syndrome)PBCの特殊な病態として、肝炎の病態を併せ持ちALTが高値を呈する本病態がある。副腎皮質ステロイドの投与によりALTの改善が期待できるため、PBCの亜型ではあるが、PBCの典型例とは区別して診断する必要がある。(2)AMA陰性PBC、自己免疫性胆管炎(AIC)AMAは陰性であるが、PBCに特徴的な臨床像と肝組織像を呈し、PBC症例の約10%を占める。これらのうち抗核抗体陽性を呈する病態に対しautoimmune cholangiopathyあるいはautoimmune cholangitis(AIC)などの名称が提唱された。副腎皮質ステロイドの投与が奏効する症例もあり、UDCAの効果がみられない症例に対して試みられる。■ 予後PBCの進展形式は、緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型の大きく3型に分類される(図)。多くは長期間の無症候期を経て徐々に進行するが(緩徐進行型)、黄疸を呈することなく食道静脈瘤が比較的早期に出現する症例(門脈圧亢進症型)と早期に黄疸を呈し、肝不全に至る症例(黄疸肝不全型)がみられる。肝不全型は比較的若年の症例にみられる傾向がある。黄疸期(s2PBC)になると進行性で予後不良である。5年生存率は、血清総ビリルビン値が5.0mg/dLで55%、8.0mg/dLを超えると35%となる。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、厚労省研究班の診断基準(表1)に則って行うが、(1)血液所見で慢性の胆汁うっ滞所見(ALP、γ-GTPの上昇)(2)AMA陽性所見(間接蛍光抗体法またはELISA法)(3)肝組織学像で特徴的所見(CNSDC、肉芽腫、胆管消失)の3項目が重要である1)。〔肝組織像が得られる場合〕(1)組織学的にCNSDCを認め、検査所見がPBCとして矛盾しないもの。(2)AMAが陽性で、組織学的にはCNSDCの所見を認めないが、PBCに矛盾しない(compatible)組織像を示すもの。〔肝組織像が得られない場合〕AMAが陽性で、しかも臨床像および経過からPBCと考えられるもの。■ 臨床検査成績慢性の胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇、血清IgMの高値、AMAの出現が特徴的である。■ 抗ミトコンドリア抗体(AMA)と抗核抗体AMAの対応抗原として、ピルビン酸脱水素酵素E2コンポーネント(PDC-E2)をはじめとするミトコンドリア内膜に存在するオキソ酸脱水素酵素複合体を構成する蛋白が明らかになっている。PDC-E2反応性CD4陽性T細胞がPBC患者の肝臓、所属リンパ節および末梢血で有意に増加していることが示され、本疾患の成立・維持に重要な役割を果たしていることが想定される。PBCではAMAのほか、抗セントロメア抗体、抗核膜孔抗体(抗gp210抗体)、抗multiple nuclear dot抗体(抗sp100抗体)など数種の抗核抗体も陽性化する。核膜孔の構成成分に対する抗gp210抗体は特異度ほぼ100%と疾患特異性が高く、PBC患者の約20~30%で陽性化する。本抗体は予後不良なPBC症例で陽性になる率が高く、PBCの臨床経過の予測因子として有用であることが示されている1)。■ 肝組織像自己免疫機序を反映する肝内胆管病変(CNSDC)がPBC肝の基本病理所見であり、肉芽腫の形成も特徴的である。肝内小型胆管が選択的に進行性に破壊される。その結果、慢性に持続する肝内胆汁うっ滞が出現し、肝細胞障害、線維化、線維性隔壁が2次的に形成され肝硬変に進行する。■ 鑑別診断・除外診断画像診断(超音波、CT)で閉塞性黄疸を完全に否定したうえで、慢性の胆汁うっ滞性肝疾患および自己抗体を含む免疫異常を伴った疾患という観点から鑑別診断が挙げられる(表2)。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根治的治療法は確立されていないが、ウルソデオキシコール酸はPBC進展抑制効果を有し、現在第1選択薬である。予後の改善も期待でき、実際UDCAが投与される以前の時期と比較するとPBCの予後はかなり改善している。進行したPBCではUDCAで進展を止めることは難しく、肝硬変・肝不全に進行すれば肝移植が唯一の治療手段となる。血清総ビリルビン値が5.0mg/dL以上になると肝移植を考慮し、肝移植専門医へ紹介することが望まれる。■ 薬物療法1)ウルソデオキシコール酸(UDCA)(商品名:ウルソなど)胆道系酵素の低下作用のみでなく、組織の改善、肝移植・死亡までの期間の延長効果が確認されている1)。通常1日600mgが投与されるが、効果が不十分の場合は900mgに増量される。2)ベザフィブラート(同:ベザトールSR、ベザリップなど)UDCAの効果が乏しい症例でベザフィブラート(400mg/日)が有効な症例もみられる1)。UDCAとは作用機序が異なることから併用投与が望ましいとされる。3)副腎皮質ステロイド通常のPBCに対する投与は病態の改善には至らず、とくに閉経後の中年女性においては骨粗鬆症を増強する副作用が表面に出てくるので、むしろ禁忌とされている。PBC-AIHオーバーラップ症候群で肝炎所見が明瞭である場合は、本剤の投与が推奨される1)。■ 肝移植胆汁うっ滞性肝硬変へと進展した場合は、もはや内科的治療で病気の進展を抑えることができなくなるため、肝移植が唯一の救命法となる1)。肝移植適応時期の決定は、Mayo(updated)モデルや日本肝移植適応研究会のモデルが用いられている。移植後は免疫抑制薬を投与し、術後合併症、拒絶反応、再発、感染に留意し経過を追う。4 今後の展望本疾患を含め、自己免疫疾患の病因および発症原因の早期解明は期待しがたい。したがって、根本治療の開発にはまだ長い期間がかかるものと思われる。しかし、UDCAについては確実に長期効果もみられており、また、ベザフィブラートについては長期効果のレベルの高いデータは得られていないものの、作用機序に関する基礎データを含め、臨床データも集積しつつあり、UDCAとの併用効果が確立するものと思われる。一方、細胞レベルでの解析や、疾患感受性および進行に関与する遺伝子の解析データも出つつあり、病因の解明とともに、個別化医療が可能となる日もそう遠いものではないと思われる。5 主たる診療科内科、肝臓内科、消化器内科、肝臓移植外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)診療ガイドライン厚生労働科掌研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン2012(医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省難病情報センターホームページ 原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公的助成情報難病情報センター 各相談窓口紹介(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会東京肝臓友の会(患者向けの情報)大阪肝臓友の会(患者向けの情報)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班.原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2012年). 肝臓. 2012; 53: 633-686.2)厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイド. 文光堂. 2010.3)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 患者さん・ご家族のための原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック. 研究班2013事務局. 2013.4)The Intractable Hepatobiliary Disease Study Group supported by the Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan Guidelines for the management of primary biliary cirrhosis. Hepatol Res. 2014; 44: 71-90.公開履歴初回2014年01月09日更新2016年03月29日

7286.

肥満妊婦と新生児の過体重、因果関係が明らかに?/JAMA

 遺伝的にBMIや血糖値が高い母親の子供は出生時体重が重く、これらの関連には因果関係がある可能性が、英国・エクセター大学医療センターのJessica Tyrrell氏らEarly Growth Genetics(EGG)Consortiumの検討で示唆された。研究の成果は、JAMA誌2016年3月15日号に掲載された。過体重で出生した新生児や肥満女性は出産時の合併症のリスクが高いとされる。観察研究では、母親の肥満関連の遺伝形質が出生時体重と関連することが報告されているが、その因果関係はよく知られていないという。約3万組の母子をメンデル無作為化解析で評価 研究グループは、母親のBMIや肥満関連の遺伝形質と子供の出生時体重との因果関係のエビデンスを検証するための検討を行った。 欧州、北米、オーストラリアで実施された人口ベースまたは地域ベースの18試験に参加した欧州系の女性と、EGG Consortiumに参加した女性の合計3万487人のデータを、メンデル無作為化法を用いて解析した。1929~2013年に、単胎の正期産の生児として出生した子供を解析の対象とした。 BMI、空腹時血糖、2型糖尿病、収縮期血圧(SBP)などの遺伝スコアの評価を行った。 3万487人の新生児の各コホートの平均体重は3,325~3,679gであった。母親の妊娠前の平均BMIは22.78~24.83であり、出産時の平均年齢は24.5~31.5歳だった。母親のSBPの遺伝スコアが高い場合は、出生時体重が軽い 母親のBMIの遺伝スコアは、母親のBMI亢進アレル(BMI-raising allele)による子供の出生時体重の2g(95%信頼区間[CI]:0~3)の増加と関連が認められた(p=0.008)。 また、母親の空腹時血糖の遺伝スコアも血糖亢進アレルによる出生時体重の8g(95%CI:6~10)の増加と関連した(p=7×10-14)のに対し、母親のSBPの遺伝スコアはSBP亢進アレルによる出生時体重の4g(同:-6~-2)の減少と関連がみられた(p=1×10-5)。 一方、母親のBMIの遺伝スコアが1 SD(=4ポイント)上昇すると、子供の出生時体重が55g(95%CI:17~93)増加した。また、母親の空腹時血糖が1 SD(=7.2mg/dL)上昇した場合、出生時体重は114g(同:80~147)増加した。これに対し、SBPの1 SD(=10mmHg)の上昇により、出生時体重は208g(同:-394~-21)減少した。 BMIと空腹時血糖は、その遺伝的関連が観察的関連と一致していたが、SBPの遺伝的関連は観察的関連とは逆であった。 著者は、「他の試験で再現されれば、これらの知見は妊婦のカウンセリングや妊娠管理において、体重関連の有害な出生アウトカムの回避に有用となる可能性がある」と指摘している。

7287.

ニフェジピンによるDES留置後の血管保護効果を確認

 2016年3月19日、宮城県仙台市にて開催された第80回日本循環器学会学術集会の「Late Breaking Clinical Trials/Cohort Studies III」にて、長時間作用型ニフェジピンの薬剤溶出ステント(DES)留置後の冠動脈に対する保護効果を検討した無作為化前向き試験“NOVEL study”の結果が、東北大学 循環器内科学の圓谷 隆治氏より発表された。 同氏の研究グループはこれまでに、第1世代のDESによる冠動脈過収縮反応を、長時間作用型ニフェジピンの慢性投与が抑制することが動物実験で示されたことを報告している。本試験では、現在主に臨床で使用されている第2世代のDESであるエベロリムス溶出ステントを用いて、ヒトにおける同様の効果について検討された。 対象は、左冠動脈へのDES留置を予定している146例の安定狭心症患者であった。被験者を、スタチン、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、アスピリン、クロピドグレルによる一般的な薬物治療を実施する対照群と、それらに長時間作用型ニフェジピンを追加投与する群に無作為に割り付けた。ニフェジピン群57例および対照群53例に対し、ステント留置から8~10ヵ月後、冠動脈造影のフォローアップ検査を実施し、アセチルコリン負荷試験による冠動脈の収縮反応の確認が行われた。 その結果、冠動脈過収縮反応は、非治療血管に比べ、ステントの遠位部において顕著であった(p<0.001)。また、対照群と比較して、ニフェジピン投与群においてその反応は有意に抑制された(p<0.01)。さらには、血液検査により、炎症反応に関してもニフェジピン群のみにおいて改善が認められた(p<0.05)。 圓谷氏は、本試験の対象患者は、基礎疾患などのベースライン時の特徴から、比較的高リスクであったことを説明した。そのような患者においては、血管に対するストレスが減少したとされる第2世代のDESを用いた場合でも、血管の異常反応である過収縮が認められ、それに対して長時間作用型のニフェジピンの抗炎症作用が有益な効果に関連していることを述べた。 同発表のコメンテーターである岐阜大学 循環病態学・呼吸病態学・第二内科の西垣 和彦氏は、ニフェジピンの抗炎症作用が「クラスエフェクトとしてほかのカルシウム拮抗薬にもあるのか」、また、「ステントを留置した患者の長期予後へどのような影響を及ぼすのか」、という2点が、今後のさらなる研究で明らかになることに期待を寄せた。

7288.

無症候性高度頸動脈狭窄症に対するEPD併用CASのCEAに対する非劣性を証明(解説:中川原 譲二 氏)-505

 これまでの臨床試験で、遠位塞栓を予防するデバイス(embolic protection device:EPD)を用いた頸動脈ステント留置術(CAS)は、手術による合併症の標準または高リスク患者において、頸動脈内膜剥離術(CEA)の代替として効果的な治療であることが示唆されていた。 米・マサチューセッツ総合病院のKenneth Rosenfield氏らは、手術による合併症が高リスクに該当しない患者のみを対象に、EPDを用いたCASとCEAを比較する多施設共同無作為化比較試験「Asymptomatic Carotid Trial(ACT)I」を実施し、EPD併用CASのCEAに対する非劣性を証明した。1,453例でEPD併用CASとCEAを比較 この研究では、高度(70%以上)内頸動脈狭窄を有する79歳以下の患者で、無症候性(登録前180日以内の脳卒中・一過性脳虚血発作・一過性黒内障などの既往なし)で、手術による合併症が高リスクに該当しない患者を対象として、EPDを用いたCAS群とCEA群を比較した。EPD併用CAS群とCEA群を3対1の割合で無作為に割り付けた。試験は、当初1,658例の患者登録を予定していたが、登録が進まず1,453例で止まった。追跡調査期間は5年間であった。主要複合エンドポイントは、術後30日以内の死亡・脳卒中・心筋梗塞、または1年以内の同側脳卒中とし、3%を非劣性マージンとして評価した。EPD併用CASの非劣性を証明、5年後の転帰も有意差認められず 解析対象の内訳は、CAS群1,089例、CEA群364例で、平均年齢は両群とも68歳、ほとんどが65歳以上であった。主要複合エンドポイントのイベント発生率はCAS群3.8%、CEA群3.4%で、CASのCEAに対する非劣性が認められた(非劣性に関してp=0.01)。30日以内の死亡または脳卒中の発生率は、CAS群2.9%、CEA群1.7%であった(p=0.33)。術後30日から5年までに、同側脳卒中の無発生率はCAS群97.8%、CEA群97.3%(p=0.51)、全生存率はCAS群87.1%、CEA群89.4%(p=0.21)であった。5年間の累積無脳卒中生存率はCAS群93.1%、CEA群94.7%であった(p=0.44)。 本研究では、手術による合併症が高リスクではない無症候性高度頸動脈狭窄症患者において、EPDを用いたCASのCEAに対する非劣性が示された。また、5年の追跡調査でも、非手術関連脳卒中、全脳卒中および全生存率について、両群間で有意差は認められなかった。これらの結果は、EPDを用いたCASが、手術による合併症が標準または高リスクの患者だけでなく、高リスクではない無症候性高度頸動脈狭窄症に対しても、CEAの代替として効果的な治療であることを証明したといえる。

7289.

ACC(米国心臓病学会)2016 注目のLate Breaking Clinical Trial

2016年4月2~4日、米国シカゴでACC2016(米国心臓病学会)が開催されます。今年のACCは、5つのLate Breaking Clinical Trialセッションと2つのFeatured Clinical Researchセッションで最新の研究が発表される予定です。ケアネットでは、聴講スケジュールの参考としていただくために、Late Breaking Trialでの注目演題のアンケートを実施いたしました。その結果をセッションごとに、北里大学医学部循環器内科学 教授 阿古潤哉氏のコメントとともにご紹介いたします。また、レストランをはじめ開催地シカゴのおすすめスポットについても、会員の方々から情報をお寄せいただきました。ぜひ、ご活用ください。開催地シカゴのおすすめスポットはこちらOpening Showcase and the Joint ACC/JACC Late-Breaking Clinical Trials<Session 401:4/2(土)8:00am~10:00am、Main Tent (North Hall B1)>Partner 2: Transcatheter Aortic Valve Replacement Compared with Surgery in Intermediate Risk Patients with Aortic Stenosis: Final Results from the Randomized Placement of Aortic Transcatheter Valves 2 StudyHOPE 3: Blood Pressure Lowering in People at Moderate RiskHOPE 3: Effects of Combined Lipid and BP-Lowering on Cardiovascular Disease in a Moderate Risk Global Primary Prevention PopulationQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はTAVRに注目が集まっている様子。最初は手術リスクが高い人にのみ行われてきたTAVRが、中等度リスクの患者でどのような結果になるか、無作為化試験に注目が集まる。結果次第では現在の適応を大きく変えていく可能性も。Joint American College of Cardiology/Journal of the American Medical Association Late-Breaking Clinical Trials<Session 404:4/3(日) 8:00am~9:15am、Main Tent (North Hall B1)>ACCELERATE: Impact of the Cholesteryl Ester Transfer Protein Inhibitor Evacetrapib on Cardiovascular Events: Results of the ACCELERATE trialGAUSS-3: Comparison of PCSK9 Inhibitor Evolocumab Versus Ezetimibe in Statin-intolerant Patients: The Goal Achievement After Utilizing an Anti-PCSK9 Antibody in Statin Intolerant Subjects 3 (GAUSS-3) TrialFH Mutations: Low-density Lipoprotein Cholesterol, Familial Hypercholesterolemia Mutation Status and Risk for Coronary Artery DiseaseStepathlon: Reproducible Impact of a Global Mobile Health (mHealth) Mass-Participation Physical Activity Intervention on Step Count, Sitting Behavior and Weight: the Stepathlon Cardiovascular Health StudyLow Risk Chest Pain: Involving Patients with Low Risk Chest Pain in Discharge Decisions: A Multicenter TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はGAUSS試験に注目が集まっている。わが国でも承認されたPCSK9阻害薬が、スタチンを投与することができない患者に対してどの程度、有効性・安全性を示すか注目される。ACCELERATEはCETP阻害薬の試験。今までHDL-Cを上げる治療はなかなか有効性が示されていないが、evacetrapibでどのような結果となるか?Joint American College of Cardiology/TCT Late-Breaking Clinical Trials<Session 405:4/3(日)10:45am~noon、Main Tent (North Hall B1)>DANish (DEFERred stent): The Third DANish Study of Optimal Acute Treatment of Patients with ST-segment Elevation Myocardial Infarction: DEFERred stent implantation in connection with primary PCIDANish (iPOST conditioning): The Third DANish Study of Optimal Acute Treatment of Patients with ST-segment Elevation Myocardial Infarction: iPOSTconditioning during primary PCIEarly-BAMI: Effect Of Early Administration Of Intravenous Beta Blockers In Patients With ST-elevation Myocardial Infarction Before Primary Percutaneous Coronary Intervention. The Early-BAMI trial.Sapien 3: Sapien 3 Transcatheter Aortic Valve Replacement versus Surgery in Intermediate-Risk Patients with Severe Aortic Stenosis: A Propensity-Matched Comparison of One-Year OutcomesTAVR Volume/Outcome: Relationship Between Procedure Volume and Outcome for Transcatheter Aortic Valve Replacement in U.S. Clinical Practice: Insights from the STS/ACC TVT RegistryQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はSTEMIに対する試験が注目されている様子である。TAVRの演題は数字上低めとなっている。しかし、この日もSapienはintermediate riskの患者のデータであり、TAVR治療の今後の広がりを考える上では注目されよう。Featured Clinical Research Session I<Session 406:4/3(日)12:30pm~1:45pm、ACC.16 Main Tent (Room S103cd)>MR: Papillary Muscle Approximation versus Undersizing Restrictive Annuloplasty Alone for Severe Ischemic Mitral Regurgitation: a Randomized Clinical TrialIsch MR: Two-year Outcomes of Surgical Treatment of Moderate Ischemic Mitral Regurgitation: A Randomized Clinical Trial from The Cardiothoracic Surgical Trials NetworkSurgery Ischemic HF: Ten-Year Outcome of Coronary Artery Bypass Graft Surgery Versus Medical Therapy in Patients with Ischemic Cardiomyopathy: Results of the Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure Extension StudyCoreValve: 3-Year Results From the CoreValve US Pivotal High Risk Randomized Trial Comparing Self-Expanding Transcatheter and Surgical Aortic ValvesValve Deterioration: Incidence and Outcomes of Valve Hemodynamic Deterioration in Transcatheter Aortic Valve Replacement in U.S. Clinical Practice: A Report from the Society of Thoracic Surgery / American College of Cardiology Transcatheter Valve Therapy RegistryQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はischemic MRに対する試験と、虚血性心筋症に対するバイパス術と内科的治療を比較した臨床試験が注目を集めている。いずれも、clinical decision makingの助けとなる臨床試験が不足している領域であり、今後のガイドラインにも影響を与えそうな試験内容である。Joint American College of Cardiology/New England Journal of Medicine Late-Breaking Clinical Trials<Session 410:4/4(月)8:00am~9:15am、Main Tent (North Hall B1)>Resuscitation Outcomes: Antiarrhythmic Drugs for Shock-Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest: The Resuscitation Outcomes Consortium Amiodarone, Lidocaine or Placebo StudyFIRE AND ICE: Largest Randomized Trial Demonstrates an Effective Ablation of Atrial Fibrillation: the FIRE AND ICE TrialRate v Rhythm: A Randomized Trial of Rate Control Versus Rhythm Control for Atrial Fibrillation after Cardiac SurgeryLATITUDE-TIMI 60: The Losmapimod To Inhibit P38 MAP Kinase As A Therapeutic Target And Modify Outcomes After An Acute Coronary Syndrome (LATITUDE-TIMI 60) Trial: Primary Results Of Part ACARIN: CMX-2043 for Prevention of Contrast Induced Acute Kidney Injury: The Primary Results of the CARIN TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日はresuscitation、ablation、rate control or rhythm controlに注目が集まっているが、個人的にはLATITUDE試験の結果も興味深いのではないかと考える。Late-Breaking Clinical Trials<Session 412:4/4(月)10:45am~noon、Main Tent (North Hall B1)>ATMOSPHERE: Direct Renin-inhibition With Aliskiren Alone And In Combination With Enalapril, Compared With Enalapril, In Heart Failure (the ATMOSPHERE Trial)TRUE-AHF: Effect of Ularitide on Short- and Long-Term Clinical Course of Patients with Acutely Decompensated Heart Failure: Primary Results of the TRUE-AHF TrialIxCell-DCM: The Final Results of the IxCell-DCM Trial: Transendocardial Injection of Ixmyelocel-T in Patients with Ischemic Dilated CardiomyopathyINOVATE-HF: The Effect of Vagal Nerve Stimulation in Heart Failure: Primary Results of the INcrease Of VAgal TonE in chronic Heart Failure (INOVATE-HF) TrialIMPEDANCE-HF: Non-invasive Lung IMPEDANCE-Guided Preemptive Treatment in Chronic Heart Failure Patients: a Randomized Controlled Trial (IMPEDANCE-HF trial)Low Risk Chest Pain: Involving Patients with Low Risk Chest Pain in Discharge Decisions: A Multicenter TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこの日は心不全関連の演題が多く出されている。アリスキレンの演題の注目度が高いようだが、vagal stimulationなどの新たな試みも出てくるということで、心不全に関する新たな知見が期待される。Featured Clinical Research Session II<Session 416:4/4(月)2:00pm~3:30pm、Main Tent (Grand Ballroom S100bc)>PROMISE (Sex Differences): Sex Differences in Functional Stress Test vs CT Angiography Results and Prognosis in Symptomatic Patients with Suspected Coronary Artery Disease: Insights from the PROMISE TrialSTOP-CHAGAS: Short and Long Term Effects of Benznidazole, Posaconazole, Monotherapy and their Combination in Eliminating Parasites in Asymptomatic T. cruzi Carriers: The Study of Oral Posaconazole in the Treatment of Asymptomatic Chagas Disease (STOP-CHAGAS Trial)STAMPEDE: Bariatric Surgery vs. Intensive Medical Therapy for Long-term Glycemic Control and Complications of Diabetes: Final 5-Year STAMPEDE Trial ResultsVindicate: Vitamin D Supplementation Improves Cardiac Function In Patients With Chronic Heart Failure - Preliminary Results Of The Vitamin D Treating Chronic Heart Failure (vindicate) StudyRxEACH Trial: The Effect of Community Pharmacist Prescribing and Care on Cardiovascular Risk Reduction: The RxEACH Multicenter Randomized Controlled TrialQ.上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=99)画像を拡大する阿古 潤哉氏のコメントこのセッションにはさまざまなものが混じって入れられている。わが国にも関連があるのはsex differenceの演題かもしれないが、世界的にみるとCHAGAS病、肥満に対するbariatric surgeryなども重要な位置を占める。

7290.

ACC2016 開催地シカゴのおすすめスポット

ケアネットでは、学会に参加しながらアメリカ第二の都市シカゴを十分にお楽しみいただくため、会員の方々から現地の名所、おすすめのレストラン情報などを募集しましたので、ここでご紹介します。注目のLate Breaking Clinical Trialはこちらレストランシカゴといえばシカゴピザ。生地がパンのように厚いディープ・ディッシュ・ピザが有名だそうです。Lou Malnati's PizzeriaConnie's Pizzaシカゴピザを食べに行くときは、中川 義久氏(天理よろづ相談所病院)からの以下のアドバイスをご参考にどうぞ。“本場のシカゴピザ、それもディープ・ディッシュ・ピザを食してしまうと、その後に日本でピザを食べても、すべて悲しい偽物に思えてしまうことでしょう。カロリーや健康、ましてや冠狭窄の進展などを気に掛ける方にはお勧めしません。不健康な食事の持つ麻薬的な魅力が凝縮されたのがディープ・ディッシュ・ピザです。大きいのを頼むと完食は不可能です。小さいのでも完食は困難です。ぜひともトライしてください。シーザーサラダも頼みましょう。馬の餌かと思うほど大量のサラダが供されます。このサラダに関しては現地人でも完食せず残すことが通常のようですのでご安心ください。(2014年当時の感想)”ピザの次は肉でしょうか。高級ステーキハウスとして有名なモートンズはシカゴが本店。数店舗あるようですが、ダウンタウンのThe Originalが発祥とのこと。Morton’s Steakhouse(The Original)BBQスペアリブのお店。シカゴ名物だそうです。Carson’sお米が食べたい先生へ、チャイナタウンはいかがでしょうか。Lao Sze ChuanLao Hunan日曜日はオープンエアーマーケットが開催されます。ここでも、いろいろなグルメが味わえるそうです。Maxwell Street MarketシカゴにはMichelinレストランが25軒ありました。Michelin Awards Stars To 25 Chicago Restaurants (Business Insider)アメリカ版 食べログYelp(イェルプ)で学会場McCormick Place近辺の人気の店を調べました。このサイト評価、当たると評判とのこと。The 10 Best Places near Near Southside, Chicago, IL (Yelp)名所ミシガン湖や美術館・博物館などの情報をお寄せいただきました。シカゴで最も高く、アメリカで2番目に高いビルだそうです。ウィリス・タワー(Willis Tower)アメリカの三大美術館の1つに数えられるそうです。シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)世界で最も有名な恐竜ティラノサウルス(スー)が展示されているとのこと。フィールド博物館(The Field Museum)スポーツスポーツについての投稿も数多くいただきました。シカゴにはいろいろなプロスポーツチームがあります。時間がとれる先生はぜひ観戦を。アメリカンフットボール(NFL)シカゴBEARSバスケットボール(NBA)シカゴBULLS野球(MLB)シカゴの2チームは4月4日が開幕戦です。残念ながらアウェイのようですが。シカゴCUBSシカゴWHITE SOXサッカー(MLS)シカゴFIREACC2016のサイトにも観光やダイニングの情報が載っています。ACC.16 (Choose Chicago)

7291.

海外学会開催地オススメ情報「シカゴ」

ケアネットでは、学会に参加しながらアメリカ第二の都市シカゴを十分にお楽しみいただくため、会員の方々から現地の名所、おすすめのレストラン情報などを募集しましたので、ここでご紹介します。※掲載されている情報は2016年3月時点のものです。レストランシカゴといえばシカゴピザ。生地がパンのように厚いディープ・ディッシュ・ピザが有名だそうです。Lou Malnati's PizzeriaConnie's Pizzaピザの次は肉でしょうか。高級ステーキハウスとして有名なモートンズはシカゴが本店。数店舗あるようですが、ダウンタウンのThe Originalが発祥とのこと。Morton’s Steakhouse(The Original)BBQスペアリブのお店。シカゴ名物だそうです。Carson’sお米が食べたい先生へ、チャイナタウンはいかがでしょうか。Lao Sze ChuanLao Hunan日曜日はオープンエアーマーケットが開催されます。ここでも、いろいろなグルメが味わえるそうです。Maxwell Street MarketシカゴにはMichelinレストランが25軒ありました。Michelin Awards Stars To 25 Chicago Restaurants (Business Insider)アメリカ版 食べログYelp(イェルプ)で学会場McCormick Place近辺の人気の店を調べました。このサイト評価、当たると評判とのこと。The 10 Best Places near Near Southside, Chicago, IL (Yelp)名所ミシガン湖や美術館・博物館などの情報をお寄せいただきました。シカゴで最も高く、アメリカで2番目に高いビルだそうです。ウィリス・タワー(Willis Tower)アメリカの三大美術館の1つに数えられるそうです。シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)世界で最も有名な恐竜ティラノサウルス(スー)が展示されているとのこと。フィールド博物館(The Field Museum)スポーツスポーツについての投稿も数多くいただきました。シカゴにはいろいろなプロスポーツチームがあります。時間がとれる先生はぜひ観戦を。アメリカンフットボール(NFL)シカゴBEARSバスケットボール(NBA)シカゴBULLS野球(MLB)シカゴCUBSシカゴWHITE SOXサッカー(MLS)シカゴFIRE

7292.

治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

 うつ病患者は、適切な第1選択の抗うつ薬治療を受けていなかった場合、誤って治療抵抗性うつ病として分類されることがある。治療レジメンへの第2選択薬の追加は、患者と医療システムの両方における負担を増加させる。米国・D'Youville CollegeのAmany K Hassan氏らは、うつ病患者が第2選択治療を開始する前に、適切な抗うつ薬治療を受けていたかを検討し、単極性 vs.双極性患者における第2選択治療の種類とうつ病重症度との関連も調査した。International journal of clinical pharmacy誌オンライン版2016年3月2日号の報告。治療抵抗性として分類され第2選択治療を受けたうつ病患者を分析 2006~11年のオクラホマ州医療申請データを使用した。対象は、2種類以上の処方を受けた後、第2選択治療を受けた成人うつ病患者。対象患者は第2選択治療の種類により、非定型抗精神病薬群、他の増強薬(リチウム、buspirone、トリヨードサイロニン)治療群、抗うつ薬追加群の3群に分類された。適格とした試験は、米国精神医学会のガイドラインの定義に準じたものとした。治療の種類に関連する要因は、うつ病のタイプ(単極性 vs.双極性)で層別化した多項ロジスティック回帰分析を用い検討した。主要評価項目変数は、適切な抗うつ薬治療(投与期間、アドヒアランス、投与量の妥当性、個々の抗うつ薬治療の数など)が受けられたかを調べるために使用した。 主な結果は以下のとおり。・合計3,910例の患者による分析を行った。・ほとんどの患者で、推奨用量の抗うつ薬が処方されていた。・28%の患者は、抗うつ薬治療期間が4週未満であった。また、第2選択治療を行う前に、2種類以上の抗うつ薬治療レジメンが試みられた患者は60%のみであった。・対象者の約50%は、全群を通じてアドヒアランス不良であった。・重症度と適切な抗うつ薬治療の受療は、第2選択治療の種類を予測するものではなかった。 著者らは「多くの患者は、第2選択薬治療を開始する前に、十分な抗うつ薬治療を受けていなかった。また、第2選択治療の種類は、うつ病の重症度との関連が認められなかった」とし、「第2選択薬治療を追加する前に、第1選択薬の推奨投与量や投与期間を確認する必要がある」としている。■関連記事治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬の比較治療抵抗性うつ病に対し抗精神病薬をどう使う治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ

7293.

公表論文のp値、ほとんどが有意差あり/JAMA

 p値の記載のある抄録や論文は増加しており、そのほとんどが統計学的に有意差のある結果の報告であることが、パリ・イル・ド・フランス複雑系研究所(ISC-PIF)のDavid Chavalarias氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2016年3月15日号に掲載された。生物医学などの研究分野では、研究結果から得られる結論の伝達に、p値による統計的検定が用いられるが、p値の誤用や誤解、伝達不良への関心が高まっている。また、報告バイアス(reporting bias、「否定的な」結果とは対照的に、統計学的に有意差のある結果は優先的に公表され、強調されることによるバイアス)に関するさまざまな分野からのエビデンスが増えており、これは公表された科学文献の信頼性において重大な意味を持つ可能性があるという。過去25年間の文献で、p値と他の統計情報の報告状況を評価 研究グループは、過去25年間における生物医学文献のp値の報告状況を調査し、p値以外の方法による統計情報の提示について検討した。 自動テキスト・マイニング分析法を用いて、1990~2015年にMEDLINEに登録された1,282万1,790編の抄録およびPubMed Central(PMC)に登録された84万3,884編の抄録と論文全文で報告されたp値のデータを抽出した。 PubMedの分類で臨床コアジャーナル(core clinical journals)に指定された151の英語専門誌と、臨床試験や無作為化対照比較試験、メタ解析、総説に分類された特定の論文におけるp値の報告の評価も行った。 無作為に選出した1,000編のMEDLINEの抄録で、p値と他の統計情報を手作業で確認した。また、経験的データ(empirical data)を報告している抄録のうち100編の論文の全文の検討も行った。 テキスト・マイニングにより、MEDLINEの160万8,736編の論文抄録から457万2,043の、PMCの38万5,393編の論文全文から343万8,299のp値が同定された。p値だけでなく効果量なども記述すべき 抄録でのp値の報告は、1990年の7.3%から2014年には15.6%に増加した。2014年のp値の報告の割合は、151誌の臨床コアジャーナルの抄録(2万9,725編)が33.0%、メタ解析(5,620編)が35.7%、臨床試験(4,624編)が38.9%、無作為化対照比較試験(1万3,544編)が54.8%、総説(7万1,529編)は2.4%であった。 p値の分布は、抄録および全文の双方において、0.05および0.001以下に高度に集中しており、0.01への集中は相対的に低かった。また、最大のp値(統計学的有意差が最も大きいp値)は経時的にわずかに低くなり、最小のp値(有意差が最も小さいp値)もわずかに低下した。 MEDLINEの抄録とPMCの全文のp値のうち、96%が1つ以上のp<0.05を報告しており、PMCの全文ではこの割合が経時的にほぼ一定していた。 手作業で検討した1,000編の抄録のうち、796編が経験的データを報告した論文のものであった。このうち抄録にp値が記述されていたのは15.7%(125/796編、95%信頼区間:13.2~18.4)で、信頼区間の記述は2.3%(18/796編、1.3~3.6)、ベイズ因子は0%(0/796件、0~0.5)、効果量(effect size)は13.9%(111/796件、11.6~16.5)、p値が推定できる他の情報は12.4%(99/796件、10.2~14.9)、有意差に関する定性的記述は18.1%(181/1,000件、15.8~20.6)であり、効果量と信頼区間の双方を1つ以上報告している抄録は1.8%(14/796件、1.0~2.9)しかなかった。 99編の論文全文の手作業による検討では、55編がp値を報告しており、4編がすべての効果量の信頼区間を記載していた。ベイズ法を用いた論文はなく、1編が偽発見率(false-discovery rate:FDR)を使用し、3編がサンプルサイズ/検出力を算定しており、5編が主要アウトカムを規定していた。 著者は、「25年間で、p値を報告したMEDLINEの抄録は経時的に増加しており、p値を記載した抄録、論文のほとんどが統計学的に有意差のある結果を報告していたが、信頼区間、ベイズ因子、効果量の記載のある論文はほとんどなかった」とまとめ、「p値を単独で記述するよりも、効果量や不確実性(uncertainty)の測定基準も論文に含めるべきである」としている。

7294.

足動脈血管形成術、中等度CLI(重症下肢虚血)に有効性

 2016年3月19日、日本循環器学会学術集会「Late Breaking Clinical Trials/Cohort Studies III」が行われ、宮崎市郡医師会病院 仲間 達也氏が、足首以下にも病変を持つ重症下肢虚血(以下CLI:critical limb ischemia)患者に対する血行再建の臨床的意義を評価した多施設共同試験RENDEZVOUSレジストリについて報告した。 重症下肢虚血患者の救肢において血行再建は不可欠である。従来のバイパス手術に匹敵する救肢率が報告されている血管内治療(EVT)への注目度が増している。しかしながら、EVTの創傷治癒率には依然として課題が残る。 そのようななか、足首以下までの血行再建(以下PAA:pedal artery angioplasty)により、創傷治癒率の向上と治癒までの期間の短縮を示した単施設研究が、昨年報告されている1)。今回の研究の目的は、PAAの追加がCLI患者の予後にどう影響するのかを多施設研究で評価することである。 試験は、日本全国の5施設によるデータベースから後ろ向き解析で行われた。試験対象は、2012年1月~14年6月に登録された257患者、257肢。患者はRutherford4を除くCLIで、ひざ下と足首以下に虚血性潰瘍または壊死を含む病変を有する。患者の半数が、車いす以下のADLであった。病変は、Rutherford分類5が78%、6が22%、感染肢が半数、小切断術またはデブリードマン施行も半数で行われており、重篤な状態であった。試験の主要評価項目は、EVT後12ヵ月の創傷治癒率と創傷治癒までの時間。副次的評価項目は救肢率、切断後生存期間、再血行再建回避率であった。また、創傷治癒率の独立危険因子を多変量で解析し、危険因子の数でリスク層別化を行い、どの患者に対してPAAを行うべきかを明らかにした。 結果、主要評価項目である創傷治癒率は、PAA施行群で59.3%、非施行群では38.1%、とPAA施行群で有意に高かった。創傷治癒までの時間もPAA施行群で有意に短かった。副次的評価項目については統計学的な差は認められていない。 創傷治癒遅延の危険因子は、車いす以下、テキサス分類2以上の深い潰瘍、透析施行。一方、PAAは治癒遅延陰性因子、すなわち治癒促進因子であった。 上記危険因子の数により3段階で評価されたリスク層別化をみると、中等度リスク群(危険因子1~2個)では、PAA施行群の創傷治癒率59.3%に対し、非施行群では33.9%と、有意にPAA施行群の創傷治癒率が高かった。低リスク群(危険因子なし)では、PAA施行群に高い傾向があったが、統計的有意差は認められなかった。高リスク群(危険因子3個)においても統計的有意差は認められなかった。 仲間氏は「この試験から、積極的にPAAを行うことで、中等度リスクの患者のアウトカムの改善を期待できることが明らかになった。一方、低リスク群では、PAA非施行でも比較的良好な成績が得られ、PAAの意義は明らかではない。また、高リスク群では、障害が大きいことから血管内治療で介入できる範囲を超えている可能性が示唆された」と述べている。参考文献1)Nakama T, et al. J Endovasc Ther. 2016;23:83-91.

7295.

タバコと肺がんは関係ない!?

タバコと肺がんは関係ない!?米国の喫煙者と肺がん死の関係(本)(人/10万人当たり)5000---1004500--- 904000--- 803500-たとえば…グラフのこの部分だけ抜き出したメディアの報道がありました。-- 703000-1人当たりのタバコ消費量-- 602500--- 50男性の肺がん死亡率2000--- 402000-1990-1980-1970-1960-1900-01950-女性の肺がん死亡率 -- 101940-500-タバコ消費量は減っているのに肺がん死亡率は増えている!?-- 201930-1000-1920--- 301910-1500-0(年)喫煙と肺がんは関係ない!?グラフの一部分だけでは正確な情報とはいえません!グラフを都合良く切り出し、誤解を広めるようなメディアの説明に惑わされてはいけません!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

7296.

長期アスピリン使用によるがん予防効果~13万6千人の前向き研究

 米国での医療従事者の2つの大規模前向きコホート研究における検討で、長期のアスピリン使用が、がん全体とくに消化管腫瘍のリスク低下に、わずかではあるが有意に関連することが認められた。また、定期的なアスピリン使用が大腸がんのかなり高い割合で予防し、スクリーニング検査によるがん予防を補う可能性が示唆された。JAMA oncology誌オンライン版2016年3月3日号に掲載。 U.S. Preventive Services Task Force(USPSTF)は、米国の成人における大腸がんおよび心血管疾患予防のためにアスピリン使用を推奨しているが、アスピリン使用と他のがんリスクとの関連や、集団全体でのアスピリン使用の効果は明らかになっていない。米国ハーバード大学のYin Cao氏らは、アスピリンのさまざまな用量・使用期間で、がん全体およびサブタイプ別のがん予防における潜在的なベネフィットを調べ、さらに、スクリーニング検査の有無別にアスピリンの絶対ベネフィットを推定した。 対象は、米国の大規模前向きコホート研究であるNurses' Health Study(1980~2010年)とHealth Professionals Follow-up Study(1986~2012年)において、アスピリン使用を報告した医療従事者13万5,965人(女性8万8,084人、男性4万7,881人)で、1年おきにフォローアップした。女性は1976年の登録時に30~55歳、男性は1986年に40~75歳であった。主なアウトカムは、がん発症の相対リスク(RR)および人口寄与リスク(PAR)であった。 主な結果は以下のとおり。・32年間追跡した女性8万8,084人と男性4万7,881人のうち、女性2万414例、男性7,571例にがんが発症した。・定期的なアスピリン使用は不定期の使用と比較して、がん全体のリスク低下と関連していた(RR:0.97、95%CI:0.94~0.99)。これは、主に消化管がんの発症率低下(RR:0.85、95%CI:0.80~0.91)、とくに大腸がんの発症率低下(RR:0.81、95%CI:0.75~0.88)によるものであった。・消化管がん予防におけるアスピリンのベネフィットは、少なくとも、アスピリンの標準的な錠剤0.5~1.5錠/週の使用でみられた。定期的使用とリスク低下との関連がられる最短期間は6年であった。・50歳超の被験者のうち、定期的なアスピリン使用は下部内視鏡検査によるスクリーニングを受けていない人では10万人年当たり33の大腸がん(PAR:17.0%)を、受けた人では10万人年当たり18の大腸がん(PAR:8.5%)を防ぐことができた。・定期的なアスピリン使用は、乳がん・進行前立腺がん・肺がんのリスクには関連していなかった。

7297.

敗血症患者のICUでの2次感染、死亡への影響は?/JAMA

 ICUでの2次感染は、重症度が高い敗血症入室患者でより多く発生していたが、全死亡に対する寄与はごくわずかであることが、オランダ・アムステルダム大学のLonneke A. van Vught氏らが、Molecular Diagnosis and Risk Strati- fication of Sepsis(MARS)プロジェクトの一部として行った前向き観察研究の結果、示された。なお、敗血症患者のゲノム応答を調べたところ、免疫抑制は2次感染発症時に起きたことを示すものであったという。これまで、敗血症は免疫抑制を引き起こし、2次感染と死亡との関連感度を高めるのではないかと考えられていた。JAMA誌オンライン版2016年3月15日号掲載の報告。ICUへの敗血症入室約1,700件、非感染症入室約1,900件を解析 研究グループは、2011年1月~13年7月、オランダ2施設のICUに連続48時間以上入室した患者を対象に、前向き観察研究を行った。患者は、入室時の診断によって敗血症入室と非感染症入室に層別化され、解析対象は敗血症入室1,719件(1,504例、年齢中央値62歳、四分位範囲[IQR]:51~71歳、男性924例[61.4%])、非感染症入室1,921件(1,825例、年齢中央値62歳、IQR 49~71歳、男性1,128例[61.8%])であった。 主要評価項目は、ICU入室48時間以降に発症したICUでの2次感染(ICU内感染)で、time-to-eventモデルを用いて寄与死亡割合(リスク因子やICU内感染を排除することで予防されうる死亡の割合)を算出した。 また、一部の敗血症入室例(461件)について、血中遺伝子発現の分析(白血球の全ゲノムトランスクリプトーム)を、ベースラインとICU内感染発症時、および急性心筋梗塞などの非感染性イベント発症時に行った。ICUでの2次感染、重症敗血症患者で多いが全死亡への寄与はわずか ICU内感染を発症したのは、敗血症入室群13.5%(232件)、非感染症入室群15.1%(291件)であった。 敗血症入室群について、ICU内感染発症患者の疾患重症度スコアは、非発症患者と比べてICU入室期間を通して高かった(APACHE IV スコア中央値:90 [IQR:72~107] vs.79 [62~98]、p<0.001)。しかし、両者のベースラインでの遺伝子発現に違いはみられなかった。 60日目までの敗血症入室患者におけるICU内感染の人口寄与死亡割合は10.9%(95%CI:0.9~20.6%)であった。また、敗血症入室全患者の死亡とICU内非感染患者の死亡との差は2.0%と推定された(95%CI:0.2~3.8%)。 一方、非感染症(非敗血症)入室群について、60日目までのICU内感染の人口寄与死亡割合は21.1%であった(95%CI:0.6~41.7%)。 敗血症入室群について行った遺伝子発現の分析の結果、ベースラインと比較しICU内感染発症時において、糖新生や解糖に関連する遺伝子発現の低下が認められた。

7298.

生体吸収性ステントBVSに対する期待とエビデンスの持つ意味~メタ解析の結果~(解説:上田 恭敬 氏)-502

 新たに開発された生体吸収性ステント(BVS:bioresorbable vascular scaffold)と、現時点で最も優れた臨床成績を示している金属製薬剤溶出性ステント(DES:metallic drug-eluting stent)の1つであるXienceステントを比較した、4つの無作為化比較試験の1年時成績のメタ解析が報告された。症例数の合計は、BVSが2,164症例、Xienceが1,225症例である。 結果は、患者についての複合エンドポイントもデバイス(ステント)についての複合エンドポイントも、群間で有意差を認めなかったというものであった。 論文内でも述べられているが、大規模な長期の臨床試験の結果によって、この新しく開発されたデバイスであるBVSが、従来のDESに比べて本当に優れているか否かを示すには、まだまだ長い時間が必要である。しかし、それまでの間、この新しいデバイスを使い続けるためには、1年時のエビデンスとして、BVSの使用によって患者の予後を悪化させていないことを示す必要があるとの考えから、この解析が行われている。 しかし、1年時の成績から必ずしも長期の予後を予測できないことは、CypherステントとEndeavorステントの比較試験の結果が、1年時と5年時でまったく逆になったことからも明らかである。そのことをわかっていながらも、形だけでもエビデンスと呼べるものをつくらないといけない、現在の過度なエビデンス依存状態がみえる。1年時のBVSの成績がXienceよりも優れていようが劣っていようが、5年あるいはそれ以上の長期の成績において、どちらが優れた結果を示すことになるのかは神のみぞ知る問題である。もし、少しでも長期成績を予測しようと思うのであれば、このような統計データではなく、病理やイメージングを用いた研究の結果を、もっと詳細に議論するべきではないだろうか。 しかも、主なエンドポイントとして設定される複合エンドポイントは、通常、試験の目的(今回の場合「BVSが劣っていないこと」)を示しやすいように工夫されているものである。その主なエンドポイントに差がなかったことを第1に主張している論文の表現法にも、この目的がにじみ出ていると感じる。しかし結果としては、標的血管関連心筋梗塞の発症頻度が有意差をもってBVSで高くなっていて、有意差には至っていないが、ステント血栓症が高頻度となっていることが指摘されている。BVSで手技時間が有意に長く、手技成功率が有意に低くなっていることも重要である。また、無作為化試験のメタ解析でありながら、背景因子にかなりの偏りが存在することも問題と思われる。 本解析の結果から出るメッセージは、「成績に差がなかったからBVSを使い続けることは問題ないですよ」といったお墨付きではなく、「BVSによる心筋梗塞の発症増加が認められ、手技成功率も低いので、広く使われればXienceを使うよりも患者の予後を悪化させる可能性がある」といった、注意喚起の内容とすべきではないだろうか。もちろん、金属が体内に残らないことから生じるメリットも想定される新しい技術であり、長期成績については長期の大規模試験の結果が出るまでは誰にもわからないので、「BVSを使うべきではない」とまではいうべきではないが、その真逆の「1年時点ではまったく劣っていなかった」というのは、やはり違和感を覚える。この解析もいずれ結果の詳細は忘れ去られて、結論のみが独り歩きしてしまうことになるのであろうから、結論にどの結果を強調するかは、非常に重要であると思われる。逆に、さまざまな大規模試験の結論が独り歩きしている中で、その結論のみを鵜呑みにしない態度も重要である。蛇足かもしれないが、COURAGE試験の結論として指摘される「安定狭心症患者には、十分な薬物療法をすれば、必ずしも冠動脈形成術をしなくてもよい」という考えも、鵜呑みにすべきでないエビデンスの1つと著者は考えている。

7299.

発表! 1人ライザップの途中経過【Dr. 中島の 新・徒然草】(111)

百十一の段 発表! 1人ライザップの途中経過以前、60代にしてライザップで腹筋を割った知人に触発され、自らもダイエットを開始したことを述べました。その名も「1人ライザップ」です。ライザップを知らない人のために、世に知られているところを紹介すると、キャッチフレーズは「結果にコミットする」パーソナルトレーニングジムである1人では続かない人のためのマンツーマンコーチ会費は2ヵ月で30万円以上と高い2ヵ月で10kg近く痩せている人が多い有名人がコマーシャルで割れた腹筋を見せつけているといったところです。で、私も腹筋を割りたいとは思ったのですが、とにかく高い! それに2ヵ月で腹筋を割るなんて、ちと不自然というか、体に悪そう。というわけで、誰でもできる1人ライザップを始めたのがちょうど2ヵ月前です。その結果、体重は2ヵ月で4.3kg減!腹筋はまだ割れていない。腹囲は……測っていなかったでも、ベルトの穴が1つ狭くなったような。まあまあの結果です。方法はこんな感じ。カロリー摂取を抑える。間食をやめ腹八分目にするゆるい筋トレを行う体重計でモニタリングするたったこれだけです。とはいえ、実行する過程で方法論についていろいろ考えさせられたのは事実です。たとえば、間食をやめる、というところ。そう簡単には実行できません。最近、私を訪ねて来たお客さんが、ラスクを手土産に持って来てくれたのですが、そのカロリーたるや1枚120kcalもあります。これを運動で消費しようとしたら、3kmも歩かねばなりません。ラスクを食べて3km歩くか、歩かない代わりにラスクを我慢するか? どちらが楽かといえば圧倒的に後者が楽なのですが、意志の弱い私は……歩かないうえに、ラスクを食べてしまう情けない毎日になってしまいました。机の引き出しに何枚もラスクが入っている状況を考えれば、当然の結果です。なので、外来の冷蔵庫かどこか、自分にとってアクセスの悪いところにラスクを持っていき、皆さんで食べてもらえばいいわけです。自分も外来診察の最中、ひょいパクッと1枚くらいは食べてしまうかもしれませんが、それは許容範囲というものでしょう。そういえば40代男性の外来患者さんで、毎日夕食後にアイスクリームを食べている人がおられます。この方は独身なので、ガミガミ言われる相手もおらず、結果としてかなり栄養の行きわたった体形となっています。中島「そのアイスクリームをやめることはできませんか?」患者「でも、これだけが僕の楽しみなんです」中島「せめて減らすとか?」患者「無理ですよ」なんだか喫煙者に禁煙を迫っている気分ですね。そこで、こんなアドバイスを。中島「アイスクリームのカロリーを歩いて消費するなら7kmくらいですよ」患者「そんなに?」中島「だから夕食を食べるときは、後のアイスクリーム分を空けておいたらどうですか」患者「少な目に食べるんですか」中島「そうです。ちょっと少ないな、と思う程度に食べて10分休憩です」患者「……」中島「少し休むと満腹感が出てくるので、その時点でアイスクリームを食べるか、少し先延ばしにするか、考えたらどうでしょうか」患者「それならできるかも」中島「腹一杯食べて、その後、アイスクリームまで詰め込んでいたら、いくらなんでもマズイでしょ」患者「そうですね」私も人様に説教するだけでなく、自分でも頑張らなくてはなりません。また2ヵ月後に結果を報告しましょう。最後に1句ちょっと待て その1枚が 命とり

7300.

IRIS試験:脳梗塞とピオグリタゾン-インスリン抵抗性改善薬が経た長い道のり-(解説:住谷 哲 氏)-500

 本論文のタイトルを見た時には、2型糖尿病患者における脳梗塞(以下では虚血性脳卒中および一過性脳虚血発作を脳梗塞とする)の再発予防にピオグリタゾンが有効なのかと思ったが、正しくは「インスリン抵抗性および脳梗塞の既往を有する非糖尿病患者に対して、ピオグリタゾンの投与は脳梗塞または心筋梗塞の発症リスクを有意に抑制した」との内容である。ピオグリタゾンの2型糖尿病患者における心血管イベントの2次予防効果を検討したPROactive試験1)の結果についてはいろいろと議論があるが、本試験の結果の解釈についても注意が必要と思われる。少なくとも2型糖尿病患者の脳梗塞再発を予防するために明日の外来からピオグリタゾンを積極的に投与すべきである、との結果ではない。 インスリン抵抗性が2型糖尿病患者の心血管イベント発症に深く関与していることは、以前から知られている。したがって、インスリン抵抗性改善薬が心血管イベント発症予防に有効だろうと考えるのは自然である。そこで「ピオグリタゾンによるインスリン抵抗性の改善は2型糖尿病患者における心血管イベントリスクを減少させる」との仮説を証明する目的でPROactive試験が行われたが、結果は解析手法の問題もあり、その仮説は証明されなかった。つまり、インスリン抵抗性を改善することで2型糖尿病患者の心血管イベントが抑制されるか否かは、これまで不明であった。 PROactive試験において、ピオグリタゾンの投与により脳梗塞の発症は抑制されなかったが(ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.61~1.07)、その後に発表されたサブ解析では、脳梗塞既往患者においてピオグリタゾンの投与により、脳梗塞再発が47%(95%信頼区間:0.34~0.85、p=0.009)減少することが報告された2)。本試験Insulin Resistance Intervention after Stroke (IRIS)が、ClinicalTrial.govに登録されたのが2004年であることを考えると、本試験の対象患者が心筋梗塞ではなく、脳梗塞既往患者が選択されたのもそのあたりに理由があるのかもしれない。しかしその後、同じくチアゾリジン薬に属するロシグリタゾンが心筋梗塞を増加させる可能性が指摘され、さらに、ピオグリタゾンと膀胱がんとの関連も示唆される中で、インスリン抵抗性改善薬に対する熱狂は潮が引くように冷めていった。本試験は、そのような四面楚歌の状況下で地道に続けられていた臨床試験が、ようやく実を結んだといって良い。実臨床で使用され始めてから20年後に、ようやくインスリン抵抗性改善薬の心血管イベント抑制作用が証明されたのである。 本試験では、試験参加6ヵ月以内に脳梗塞を発症した、HOMA-IR>3.0で定義されるインスリン抵抗性を有する非糖尿病患者3,876例を、プラセボ群とピオグリタゾン群に分けて、中央値4.8年にわたり観察した。主要評価項目は、致死性・非致死性脳梗塞および致死性・非致死性心筋梗塞からなる複合エンドポイントとされた。その結果、ピオグリタゾン投与群で主要評価項目が24%減少した(ハザード比:0.76、95%信頼区間:0.62~0.93、p=0.007)。全死亡については両群に差を認めなかった。しかし、副次評価項目である脳梗塞の発症は、ピオグリタゾン群で減少傾向はあるようにみえるが有意差はついていない(ハザード比0.82、95%信頼区間:0.61~1.10、p=0.19)。脳梗塞の再発予防に対する、ピオグリタゾンの効果を検討する目的であれば、脳梗塞の発症のみを主要評価項目に設定すべきであると思われるが、なぜこのような複合エンドポイントになったのかは記載がない。 ピオグリタゾンを使用する際に、現在最も懸念されているのは心不全および骨折である。心不全の発症に関しては、NYHA III、IVの患者およびNYHA IIでEFの低下している患者は最初から除外されており、さらに、心不全の発症を予防するためのアルゴリズムに基づいて、適宜薬剤の減量が行われたため両群に有意な差はなかった。一方、骨折はピオグリタゾン投与群で明らかに増加しており、100例の患者に5年間ピオグリタゾンを投与すると、3例の患者で脳梗塞および心筋梗塞の発症が予防できるが、入院または手術を必要とする骨折が2例発生する計算となった。 インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンが、心血管イベント発症のリスクを低下させることを初めて明らかにした点において、本試験は重要である。しかし、本試験の結果を実臨床に適用するためには下記の点に留意する必要がある。(1)対象は2型糖尿病患者ではない。(2)インスリン測定系は現時点で国際的に統一されていないのでHOMA-IR>3.0は目安程度の意味しかない。(3)脳梗塞および心筋梗塞の複合エンドポイントのリスクが減少したことが示されたのであり、脳梗塞再発予防効果が示されたのではない。(4)心血管イベントの再発予防と引き換えに、入院または手術を必要とする骨折が同程度に増加する可能性がある。 今後、2型糖尿病患者において同様の試験が行われることを期待したいが、現実にはその可能性はきわめて小さいだろう。本論文に対する付属論評でも指摘されているように3)、今後はprecision-medicine approach、つまりピオグリタゾン投与によるリスク・ベネフィット比が最も高い一群(ピオグリタゾン投与により心血管イベントは減少するが心不全、骨折などは増加しない一群)をDNA解析などの結果により投与前に同定し、その一群に対してのみ投与を行うことになっていくだろう。

検索結果 合計:10307件 表示位置:7281 - 7300