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第22回 借金まみれのフェローたち米国における6月は卒業のシーズンであり、われわれのフェローシッププログラムからもフェローが卒業していきます。この夏から一般循環器内科医として働き始める友人は、悩んだ末に、少し郊外の給料が高い病院を選びました。35万ドル(3,800万円)と高額な給料をもらえるようですが、借金の額が多過ぎて喜んではいられないと言っています。どういうことかというと、彼には現在、借金が30万ドル(3,300万円)以上あり、これから約10年間、借金を減らすために、月に4,000ドル(44万円)ずつ返していかなければいけないとのことでした。決して、彼が特段高い借金を抱えているわけではありません。 Medscapeの報告によると、40%以上の研修医が20万ドル(2,200万円)の借金を抱えています。一般的に親が学費を払う日本と違い、多くの医学生はローンを組んで、自分で学費を払っています。ですから、卒業時にはUndergraduate(医学部の前の一般大学)とMedical school(医学部)の学費や、その間の生活費を借金として抱えることになります。Association of American Medical Collegesのデータによると、平均的な4年間の医学部のコストは、公立で23万2,838ドル(2,500万円)、私立で30万6,171ドル(3,400万円)と計算されています。研修医やフェローの間は給料が5~7万ドルと安いため、独身であれば辛うじて利子だけ返すことも可能ですが、家族がいると、その期間も借金が増えていきます。仮に、循環器内科医になろうとすると、高校卒業後、大学4年間、医学部4年間、内科のレジデント3年間に循環器の3年間が加わり、合計14年間はかかることになります。この間、ずっと借金が増えるわけです。飛び級などを除けば、最も早くて32歳です。また、循環器などの競争が激しい科では、1~2年余計に費やすこともありますから、フェローを修了時に34~35歳ということもよくあり、配偶者や子供などがいることが多いです。35歳で家族はいるが、家もなく、借金が2,000~3,000万円近くあるというのが、平均的なフェローの状態なのです。この長いトレーニング期間と借金は問題と考えられています。せめて医学部が4年から3年に短縮できれば、それに伴うトレーニング期間、借金ともに減るはずです。実際、それが可能かを検証すべく、実験的に3年制の医学部を試行している大学があります。しかし、問題もいくつかあるようです。3年生の初めにはどの科を目指すかを決めなければなりませんので、座学だけを修了した段階で、専門の科を決めることになります。日本は研修医の間に決めれば良いわけですから、医学部6年間の後、研修医2年目、つまり医学部入学後8年目でも間に合います。また、専門とする科の変更は日本では容易ですが、アメリカでは科を変わるということはマッチングからやり直しですから容易ではありません。まだ、結論は出ていませんが、3年制の大学が主流となる日も近いかもしれません。