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突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード集 第6回

第6回 予約日に来院しない心不全患者が抱えていた深刻な事情<Case6>甲状腺機能亢進症に心房細動を合併し、かなりの心不全状態の30代外国人女性が診療所に来院。保険証もなければ在留資格も失っており、入院する経済的余裕はとてもないと言います。頻回に観察させて頂くことを条件に外来で治療を継続することにしましたが、患者さんは受診予定の日に来院せず…。対談相手港町診療所所長/シェア=国際保健協力市民の会副代表 沢田 貴志 氏澤田 真弓:今回は、20年以上にわたり在住外国人の診療に当たっている、沢田 貴志 先生にお話を伺います。先生、その後、この患者さんはどうなったのでしょうか。沢田 貴志 氏:予定日に来院がないたび、「支払いは後でもいいから、とにかく来て」と患者さんを呼び出す、といったことを何度も繰り返しました。よくよく事情を聞いてみると、私たちの所に来る前にも、地元の基幹病院を救急受診しては、その後の通院を中断していたことがわかりました。澤田 真弓:その患者さんは、なぜそのような行動をとってしまったのでしょうか。沢田 貴志 氏:在留資格を失って仕事を続けることができなくなり、本当に生活が困窮していたのです。面談をした結果、この患者さんは、日本人との間に子どもがありながらDVを受けて逃げていたために、在留資格が切れていたこともわかりました。こうしたやむを得ない事情で健康保険を喪失した事例を、少なからず経験してきました。澤田 真弓:そのようなときは、どう対応してきたのでしょうか。沢田 貴志 氏:在留資格がない場合でもこの方のようなケースでは、子どもの日本国籍取得など、それぞれの事情に合致した法的手続きを取ることで、在留資格が回復する場合があるのです。この患者さんもソーシャルワーカーの支援の下、法的な立場を回復させて仕事に戻り、健康と安定した生活を手にすることができました。神奈川県の基幹病院では、ソーシャルワーカーが医療通訳の手配も担当しているので、外国人患者さんの抱える社会的な問題が早期に見つかり、病状悪化を防ぐことにも貢献していると思います。医療通訳体制の整備により、患者利益の向上だけでなく、未収医療費も大幅削減澤田 真弓:この患者さんは、前の病院でソーシャルワーカーとの連携がうまくできていなかったのでしょうか。沢田 貴志 氏:時間外救急ばかりの受診だったことや日本語が不自由だったことが災いし、ソーシャルワーカーへの引き継ぎが実現しなかったのかもしれません。こういったケースに対応するためにも、医療機関における多言語体制が重要なのです。神奈川県で1993年から実施されている外国人患者さんの未収医療費を補てんする事業では、2002年に医療通訳体制を整備してからの10年間で、必要になった補てん額が数十分の1に減少したことが確認されています。澤田 真弓:患者さんの課題の早期解決がなされれば、患者さん自身のコストだけでなく、社会の総コストも下がるという、わかりやすい例ですね。沢田 貴志 氏:はい。もちろん日本の制度では解決できず、出身国側の医療につなぐ例もあります。地域医療の現場では、さまざまな立場の外国人の患者さんに遭遇します。これまで診察してきた在住外国人の患者さんには、今回のケースのように、在留資格や健康保険の加入がなく、医療費の支払いが困難であった方も少なくありません。医療機関側が言葉の体制だけ整備をすればすべて解決、とはいかない現状があるのです。また、医師法19条で「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定められています。「医療費の支払いが困難である」とか、「身分証明書を持っていない」といったことは診療を拒む正当な事由とは言えない、というのが法解釈の通例でしょう。支払い能力を理由とした診療拒否を認めてしまえば多くの病院が追従し、結局患者さんは重症化、最終的には瀕死の状態の患者さんが運び込まれた病院が大きな損失を受けることになります。これでは地域医療は崩壊します。今回のように、人道的であることを最優先に考えることで、結果的に効率の良い医療につながるという事例をしばしば経験してきました。澤田 真弓:そのような人道的な支援を実現するためには、医療コーディネーターなどを配置して積極的に外国人患者さんの受け入れをしていこうとされている医療機関も、さらに一歩踏み込んだ体制の整備が必要な状況に思えます。沢田 貴志 氏:はい。医療コーディネーターの方だけで解決するのは負担が大きいと思います。今回の事例からもわかるように、ここでコーディネーターの方が連携すべきは、ソーシャルワーカーです。ソーシャルワーカーは、患者さんの医療分野に限らない経済的・心理的・社会的な不安や問題を解決するために各所との調整を図り、さまざまな面からサポートするのが仕事です。すでに、ほとんどの基幹病院には配属されているでしょう。自治体を中心にソーシャルワーカーの活用や医療通訳の育成をし、基幹病院や診療所を含めて地域連携が進めば、在住外国人患者さんの円滑な受入れが実現できると思います。澤田 真弓:非常に現実的な仕組みだと思います。大変勉強になりました。<本事例からの学び>人道的であり続けることは、患者を救うだけでなく、医療の効率化にもつながる

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認知症に対する抗精神病薬処方、治療反応の予測因子は:慈恵医大

 東京慈恵会医科大学の永田 智行氏らは、精神病性攻撃的症状を有するアルツハイマー型認知症に対する、非定型抗精神病薬の8週間の治療継続および治療反応を、CATIE-AD(Clinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness-Alzheimer's Disease)データを用いて調査した。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2017年8月9日号の報告。 治療介入が必要な精神病性攻撃的症状を有するアルツハイマー型認知症外来患者421例の臨床データを利用した。ベースラインの社会人口統計学的および臨床的特徴が、治療継続および治療反応に及ぼす影響を、ロジスティック回帰分析を用いて調査した。臨床的特徴は、CGI-C(臨床全般印象度の変化)、NPI(Neuropsychiatric Inventory)、BPRS(簡易精神症状評価尺度)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療継続率は、48.7%であった。・欠測を直前の値で補完する LOCF法(last observation carried forward method)による治療反応率は、CGI-C 42.7%、NPI 48.6%、BPRS 37.5%であった。・白人患者331例における治療継続については、有意な予測因子が認められなかった。・より良好な治療反応の予測因子は、低MMSE(ミニメンタルステート検査)スコア、リスペリドン治療(オランザピン、クエチアピンと比較して)、糖尿病歴、より健康的な身体状態、より重度な初期精神病症状であった。■関連記事認知症者への向精神薬投与は死亡率を高めているか非定型抗精神病薬は認知症に有効なのか警告後、認知症への抗精神病薬処方は減少したのか

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新たな僧帽弁治療デバイス、初期成績は良好/Lancet

 重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対し、新たに開発された経カテーテル僧帽弁修復(TMVr)デバイス「エドワーズPASCAL TMVrシステム」は、手術終了時点の成功率が96%、30日時点のデバイス成功率は78%と高いことが示された。スイス・ベルン大学病院のFabien Praz氏らによる、ヒトでは初となる多施設共同前向き観察試験の結果で、「今回の試験で実用可能性は立証された。さらなる試験を行い、デバイスの手技上および長期の臨床的アウトカムへの影響を明らかにする必要がある」と報告している。新デバイスは、従来デバイスの限界を見据えて左心房でのナビゲーションを容易なものとし、セントラルスペーサーの実用化でMRの改善を向上するなどしたものだという。Lancet誌2017年8月19日号掲載の報告。5ヵ国7施設で特例的使用試験で安全性と有効性を評価 試験は、5ヵ国(カナダ、ドイツ、ギリシャ、スイス、米国)7つの3次医療病院で行われ、経カテーテル僧帽弁修復を受ける患者に、特例的にエドワーズPASCAL TMVrシステムを使用するプログラムを用いてデータの収集が行われた。症候性で機能的に重度、器質的または混合型MRで、高リスクもしくは手術不能とみなされた患者を適格とした。 手技の安全性と有効性を、デバイス留置時、退院時、留置後30日時点で前向きに評価。主とした試験エンドポイントは、手術終了時に評価した技術的成功率と、留置後30日時点で評価したデバイス成功率であった。評価にはMitral Valve Academic Research Consortium定義を用いた。手術終了時の技術成功率は96%、30日時点デバイス成功率は78% 2016年9月1日~2017年3月31日の間に、23例(年齢中央値75歳[IQR:61~82])がエドワーズPASCAL TMVrシステムを用いて、中等症~重症(grade 3+)または重症(grade 4+)MRに対する治療を受けた。ベースライン時において、EuroScore IIスコア中央値は7.1%(IQR:3.6~12.8)、MR修復のSTS PROM(Society of Thoracic Surgeons predicted risk of mortality)スコア中央値は4.8%(同:2.1~9.0)、MR置換のSTS PROMスコア中央値は6.8%(同:2.9~10.1)であり、22例(96%)が、NYHA分類IIIまたはIVであった。 全患者において1個以上のデバイス留置が成功し、22例(96%)がgrade2+以下のMRになった。なお、6例(26%)が2個のデバイス留置を受けた。 周術期合併症の発生は、2例(9%)が報告された。1例は小出血イベントで、1例は一過性脳虚血発作であった。 MRの解剖学的複雑さにもかかわらず、22例(96%)で技術的成功が達成された。また、30日時点のデバイス成功例は18例(78%)で認められた。30日フォローアップ中の死亡は3例(13%)で、留置後30日生存した患者20例のうち19例(95%)はNYHA分類がIまたはIIであった。

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消化管が髪の毛で埋め尽くされていた女の子【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第98回

消化管が髪の毛で埋め尽くされていた女の子 ぱくたそより使用 皆さんはラプンツェル症候群という疾患をご存じでしょうか。ディズニーの映画で有名になったあのラプンツェルは、グリム童話の中に登場する美しくて長い髪を持つプリンセスです。髪の毛が異常に長いキャラクターなので、記憶に残っている人も多いでしょう。このラプンツェル症候群は、自分の髪の毛だけではなく他人の髪の毛をも食べたい衝動に駆られてしまう珍しい疾患で、胃の中に大きな毛玉が形成されるという特徴があります。ひどい場合、それが消化管を閉塞させてしまい、いろいろな症状を引き起こします。 Islek A, et al.A rare outcome of iron deficiency and pica: Rapunzel syndrome in a 5-year-old child iron deficiency and pica.Turk J Gastroenterol. 2014;25:100-102.5歳の女児が腹痛を訴えて救急外来にやってきました。彼女はヘモグロビンが4.5g/dLという強度の貧血を起こしており、腹部には腫瘤を触れました。詳しく調べてみると、胃から小腸までびっしりと髪の毛の塊が詰まっていたのです。ラプンツェル症候群はお察しのとおり、異食症です。鉄欠乏性貧血のときに氷を食べる患者さんが典型的ですよね。おそらく、この女の子はもともと鉄欠乏性貧血があり、その異食症として髪の毛を食べてしまう症状が発現。そこに胃から小腸の吸収不良によってさらなる二次性貧血を起こし、異食症が悪化…という悪循環に陥っていたのかもしれません。女児は手術を受けて、髪の毛の大きな塊は除去されました。髪の毛って胃の中で溶けてくれるのかと思いきや、そうでもないんですね。皆さんも髪の毛を食べないように注意しましょう。え? おまえには抜くほどの髪の毛はないだろうって? な、な、なんてことを!インデックスページへ戻る

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フルベストラント単独による乳がん1次治療を承認:FDA

 AstraZenecaは2017年8月28日、米国食品医薬品局(FDA)が、HR陽性HER2陰性で内分泌療法未治療の閉経後進行または転移を有する乳がん(MBC)患者に対する単剤療法としてフルベストラント(商品名:フェソロデックス)の拡大使用を承認したと発表した。当承認は、第III相FALCON試験の結果に基づいている。 FALCON(Fulvestrant and AnastrozoLe COmpared in hormonal therapy-Naïve advanced breast cancer)試験は、上記患者462例を対象に、フルベストラント500mg+プラセボとアロマターゼ阻害剤アナストロゾール1mg+プラセボを比較した無作為化二重盲検多施設試験。試験の結果、治験担当医評価の無増悪生存期間中央値は、フルベストラント群16.6ヵ月、アナストロゾール群13.8ヵ月と、フルベストラント群で有意に増加した(HR:0.797、95%CI:0.637~0.999、p=0.049)。 FDAによるフルベストラントの最初の承認は、2002年の抗エストロゲン療法で進行したHR陽性の閉経後MBCに対する単独療法。その後、2016年にpalbociclibとの組み合わせで、内分泌療法後に進行したHR陽性HER2陰性の進行またはMBCに承認された。欧州では2017年7月26日、内分泌療法未治療の閉経後ER陽性の局所進行乳がんに承認されている。■参考AstraZeneca(グローバル)メディアリリースFALCON試験(Clinical Trials.gov)■関連記事HR陽性乳がんへのフルベストラント、PFSを有意に延長/Lancet

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インスリン療法開始後のスタチンの影響

 スタチンは、糖尿病の新規発症リスクを増大させ、血糖コントロールに悪影響を及ぼす可能性があるが、2型糖尿病患者のインスリン療法開始後の血糖応答および転帰への影響は不明である。今回、英国・ノッティンガム大学のUchenna Anyanwagu氏らの研究で、通常治療中の2型糖尿病患者のインスリン療法開始後、スタチン併用者の短期血糖コントロールはあまり良好ではなかったものの、主要心血管イベントリスクは大幅に低かったことが報告された。Cardiovascular diabetology誌2017年8月22日号に掲載。 本研究は、英国のHealth Improvement Network(THIN)UKデータベースを使用し、インスリン療法を開始した2型糖尿病患者1万2,725例での後ろ向きコホート研究。6、12、24、36ヵ月でのHbA1cの変化、死亡および3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)の5年リスクを、新たにインスリン療法を開始した患者において、スタチン使用者(1万682例)と非使用者(2,043例)で比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて、異なるアウトカムのハザード比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・コホートの平均年齢は58.7±14.0歳(男性51%)であり、ベースラインHbA1cの平均値は8.7±1.8%であった。・インスリン療法開始後初期に、スタチン使用者に比べて非使用者でHbA1c値の大きな減少がみられ、その減少は短期で有意であった(6ヵ月で-0.34% vs.-0.26%、平均差:-0.09%、p=0.004)が、長期では有意ではなかった(3年で-0.31% vs.-0.35%、平均差:0.05%、p=0.344)。・スタチン使用者と非使用者の心血管イベント(3-point MACE)は、それぞれ878件と217件であった(1,000人年当たり20.7 vs.30.9、調整ハザード比:1.36、95%CI:1.15~1.62、p<0.0001)。・各スタチンでのサブグループ解析では、スタチン非使用者に比べて、すべてのスタチンで試験期間を通じてHbA1cが高かった(p<0.05)。・アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチンにおける3-point MACEの調整ハザード比は、それぞれ0.82(95%CI:0.68~0.98)、0.67(同:0.55~0.82)、0.56(同:0.39~0.81)、0.78(同:0.60~1.01)であった。

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STEMIへの線溶療法、薬剤により死亡リスクに差/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する線溶療法では、薬剤などによって重要な相違点があり、アルテプラーゼ急速投与、テネクテプラーゼ(tenecteplase)およびレテプラーゼ(reteplase)は、ストレプトキナーゼ(streptokinase)やアルテプラーゼ非急速投与より優先して考慮されるべきで、線溶療法への糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の追加は避けるべきである。タイ・ウボンラーチャターニー大学のPeerawat Jinatongthai氏らが、無作為化試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。線溶療法は、医療資源が乏しい環境下のSTEMI患者に対する、機械的再灌流に代わる治療法であるが、各種線溶療法を比較した包括的なエビデンスは不足していた。Lancet誌2017年8月19日号掲載の報告。約13万例を含む計40試験をネットワークメタ解析 研究グループは、PubMed、Embase、the Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO-ICTRPを用い、2017年2月28日までに発表された、成人STEMI患者の再灌流療法としての線溶薬の無作為化比較試験(対照は他の線溶薬、プラセボまたは無治療。単独投与または補助的な抗血栓療法との併用投与は問わず)を検索。STEMIに対する再灌流療法の適応が承認されている線溶薬(ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ)を検証した試験のみを対象に、ネットワークメタ解析を行った。 主要評価項目は、30~35日以内の全死因死亡率、安全性評価項目は大出血(BARC基準の3a、3b、3c)。 選択基準を満たした試験は40件で、12種類の異なる線溶療法を受けた12万8,071例が解析に組み込まれた。死亡リスク増加、出血リスク増加の種類別特性が明らかに アルテプラーゼ急速投与(tPA_acc)+非経口抗凝固薬(PAC)と比較し、ストレプトキナーゼ+PACおよびアルテプラーゼ非急速投与(tPA)+PACは、全死因死亡のリスク増加と有意な関連が認められた。リスク比(RR)は、ストレプトキナーゼ+PACが1.14(95%信頼区間[CI]:1.05~1.24)、tPA+PACが1.26(同:1.10~1.45)であった。一方、tPA_acc+PACと、テネクテプラーゼ+PACおよびレテプラーゼ+PACは、死亡リスクに差はなかった。 大出血に関しては、テネクテプラーゼ+PACは、他のレジメンと比較して出血リスクの低下と関連している傾向があった(RR:0.79、95%CI:0.63~1.00)。一方、線溶薬+PACへの糖蛋白IIb/IIIa阻害薬(GP)の追加は、tPA_acc+PACと比較して、大出血リスクの増加がみられた。RRは、tPA+PAC+GPが1.27(95%CI:0.64~2.53)、テネクテプラーゼ+PAC+GPが1.47(同:1.10~1.98)、レテプラーゼ+PAC+GPが1.88(同:1.24~2.86)、ストレプトキナーゼ+GPが8.82(同:0.52~151.04)であった。 なお著者は、大出血の定義の異質性や、観察期間が短いこと、脳卒中の診断法に関する詳細が不明などを研究の限界として指摘し、「脳卒中の転帰に対する線溶薬の有効性については解釈に注意が必要である」と述べている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第39回

第39回:眠れない≠睡眠導入剤監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 眠れないという患者の訴えに対し、睡眠導入剤を処方する医師が多いと思いますが、本当にそれだけでよいのでしょうか?睡眠導入剤内服を開始して、どんどん薬が効かなくなっていって、どんどんお薬の強さや量が増えていって……というケースをよく見ます。 今回取り上げるarticleは、慢性の不眠症に対する薬物療法以外のマネジメントについてです。睡眠導入剤以外の治療について非常に勉強になったため、ご紹介いたします。また本邦でも厚生労働科学研究班 日本睡眠学会のワーキンググループによる「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」が閲覧できるので、ご一読をお勧めします。 以下、American family physician 2015年12月15日号1) より不眠症は、人口の10~30%に影響を与え、年間925~1,075億ドルの医療費が掛かっている。睡眠障害国際分類第3版では、不眠症の診断の基準として、(1)入眠障害、(2)睡眠の維持の障害、(3)早朝覚醒、(4)日中の機能障害―の4項目について、週に3回以上、1ヵ月以上続くこととしている。また、日中の機能障害としては、(1)疲労や倦怠感、(2)注意力や集中力の低下、(3)社会的または職業的・教育的障害、(4)気分障害や過敏症、(5)日中の眠気、(6)モチベーションやエネルギーの低下、(7)エラーや事故の増加、(8)多動性・衝動性または攻撃性などの行動上の問題、(9)睡眠に関する継続的な心配―があり、いずれか1つを満たせばよい。不眠症に寄与する要因として、精神疾患、医学的な問題、薬物の使用、薬物の乱用は除外されるべきである。また、不眠症の非薬理学的療法には、睡眠衛生、認知行動療法、リラクゼーションセラピーなどがある。アメリカ睡眠医療学会によると、慢性の不眠症に対しては、初期治療として睡眠導入剤の使用は避けることが推奨されており、認知行動療法等の非薬物療法の提供を推奨している。またアメリカ老年医学会は、不眠症、せん妄等に対しての初期治療として、ベンゾジアゼピンやその他の鎮静作用のある睡眠薬の使用をしないよう推奨している。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Am Fam Physician. 2015 Dec 15;92:1058-1064. 2) International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed. Darien, Ill.: American Academy of Sleep Medicine; 2014. 3) 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療療ガイドライン―出口を見据えた不眠医療マニュアル―

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米国の開業皮膚科医、グループ診療が増加

 米国皮膚科学会(AAD)では、皮膚科医の労働力需給の傾向を評価する目的で診療プロファイル調査を10年以上行っている。米国・ジョージ・ワシントン大学のAlison Ehrlich氏らは最新の解析結果として、新たな技術に基づいた医療記録の実現による部分的な間接費の増大に関連して診療環境の変化がみられ、電子カルテの普及とともに遠隔診療の実施が進んでいることを示した。著者は、「回答バイアスや報告の曖昧さがある可能性があり、調査で得られた回答がすべての地域を代表するわけではない」と調査の限界を述べたうえで、「皮膚科医療への需要は高いままである」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年8月4日号掲載の報告。 研究グループは、皮膚科診療の実態と傾向を調べる目的で、無作為に抽出したAAD会員の皮膚科医を対象に、電子メールおよび郵送でアンケート調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・プライマリケアでは、以前より個人開業の皮膚科医が少なくグループ診療を行う皮膚科医が多い、という変化がみられた。・皮膚科遠隔診療の実施は、2012~14年の間に7%から11%まで増加した。・電子カルテの導入は、2011年の51%から2014年には70%まで増加した。

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妊娠中の抗うつ薬治療、注意すべきは

 うつ病は、妊娠中にみられる一般的な合併症である。うつ病と診断されれば、医師は治療計画を作成し、妊婦を援助しなければならない。米国・ノースウェスタン大学のCara Angelotta氏らは、妊娠中のうつ病治療について、検討を行った。Birth defects research誌2017年7月17日号の報告。妊娠中に抗うつ薬治療を決定する際の根拠 妊娠中のうつ病治療について検討した主な内容は以下のとおり。・抗うつ薬を検討する際には、妊婦の疾患管理のための薬物治療のメリットと胎児への薬物療法のリスクのバランスをとることが求められる。・これは、疾患の特徴、妊婦のうつ病への治療反応の可能性、胎児への悪影響の可能性、患者の特性や価値観に応じて、個別に決定しなければならない。・妊娠中のうつ病に対する治療を行う際、リスクをゼロにする解決策はなく、疾患と薬物治療のどちらも、妊婦および胎児へのリスクを伴う。・妊娠中に抗うつ薬治療を決定する際には、疾患リスクが治療リスクよりも大きいことが根拠となる。・妊婦と胎児に対する疾患リスクを最小化するための症状緩和が目的となる。 妊婦に対するSSRI使用の最適化には、以下のような治療ゴールが必要である。(1)妊婦にとって、許容できる副作用とともに最良の治療反応が得られる最適な用量でなければならない。(2)妊娠中の薬物動態の変化を考慮し、症状の継続的な測定を繰り返し、最適な抗うつ効果を維持するための調整が必要となる。(3)出産後、女性が非妊娠期(母乳育児状態)に移行した際には、用量調節が必要である。■関連記事日本人妊婦のうつ病診断、適切なカットオフ値はいくつか母親の体格がADHD、自閉症リスクと関連か妊娠中、血中濃度変化に注意が必要な抗精神病薬は

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世界のリウマチ性心疾患死、25年で半減/NEJM

 1990~2015年の25年間で、世界のリウマチ性心疾患・年齢標準化死亡率は、約48%も減少したことが明らかになった。一方で、同死亡率には地域により大きな差が認められ、オセアニアや南アジア、サハラ以南の中央アフリカは高率だった。リウマチ性心疾患は、とくに低・中所得国では依然として心血管系の障害・死亡の、重要かつ予防可能な原因とされている。米国・ワシントン大学のDavid A.Watkins氏らは、2015年世界疾病負担(GBD)研究の一環として、世界、各地域、各国のリウマチ性心疾患有病率や死亡率を推定、分析し、NEJM誌2017年8月24日号で発表した。132ヵ国からのリウマチ性心疾患データを分析 研究グループは、132ヵ国から集めた1990~2015年の致死的・非致死的リウマチ性心疾患データについて、システマティック・レビューを行った。GBD試験の分析ツールである、CDE(Cause of Death Ensemble)モデルとDisMod-MR 2.1を用いて、死亡率と有病率を、不確実性の評価とともに推定した。リウマチ性心疾患により失われた障害調整生存年数は1,050万年 2015年のリウマチ性心疾患による推定死亡数は、31万9,400例(95%不確実性区間:29万7,300~33万7,300)だった。 1990~2015年の間に、世界のリウマチ性心疾患・年齢標準化死亡率は、9.2/10万(同:8.7~9.7)から4.8/10万(同:4.4~5.1)へと、47.8%(同:44.7~50.9)減少した。一方で、地域による大きな格差が認められ、2015年に、とくにオセアニア、南アジア、サハラ以南の中央アフリカで、リウマチ性心疾患の年齢標準化死亡率や有病率が高かった。 2015年の世界のリウマチ性心疾患の症例数は3,340万例(同:2,970万~4,310万)、またリウマチ性心疾患により失われた障害調整生存年数は1,050万(同:960万~1,150万)と推定された。

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PARP阻害薬olaparib、卵巣がんの適応を拡大/FDA

 AstraZeneca(本社:英国ロンドン、CEO:Pascal Soriot)およびMerck&Co., Inc.,(本社:米国ニュージャージー)は2017年8月17日、米国食品医薬品局(FDA)が PARP阻害剤olaparibに対し下記の通り承認を付与したことを発表した。・BRCA遺伝子変異の有無を問わず、プラチナ製剤ベースの化学療法後に奏効を示している再発上皮性卵巣がん、卵管がんあるいは原発性腹膜がん成人患者に対する維持療法。・olaparib錠の新たな承認(従来はカプセル)。・olaparib錠が3レジメン以上の化学療法治療歴を有する病的変異または病的変異疑いに分類される生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がん患者の治療薬としても正式に承認された(現在の迅速承認からの変更)。 今回の新規承認および当初単群試験に基づく迅速承認から正式承認への変更は、SOLO-2 試験、19試験の2つの無作為化試験に基づいている。 SOLO-2試験はgBRCA遺伝子変異陽性プラチナ製剤感受性再発卵巣がん、卵管がんおよび原発性腹膜がん患者を対象としたolaparib錠の単剤維持療法の有効性をプラセボと比較した無作為化二重盲検多施設共同第III相試験。患者は2レジメン以上のプラチナベース化学療法でCRおよびPRを示したBRCA1または2遺伝子変異を有する295例。結果、olaparibのベネフィットが確認され、olaparibは病勢進行あるいは死亡リスクを70%低減し(治験担当医師評価、HR:0.30、95%CI: 0.22~0.41、p<0.0001)、無増悪生存期間(PFS)をプラセボ群の5.5ヵ月に対し、19.1ヵ月に改善した。 19試験は16ヵ国82施設における高悪性度再発卵巣がん患者を対象としてolaparibの有効性と安全性を比較した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験。結果、olaparibはBRCA遺伝子変異状況を問わず、病勢進行あるいは死亡リスクを65%低減した。PFSをプラセボ群の4.8ヵ月に対しolaparib群8.4ヵ月と有意に改善した(HR:0.35、95%CI:0.25~0.49、p<0.0001)。さらに、全生存期間(OS)の中央値は、プラセボの27.8ヵ月に対し、29.8ヵ月を示した (HR:0.73、95% C:0.55~0.95)。■参考アストラゼネカ株式会社プレスリリースAstraZeneca(米国)プレスリリースFDAニュースリリースSOLO-2試験■関連記事遺伝性の卵巣がん治療とPARP阻害薬の可能性オラパリブ、BRCA変異陽性卵巣がんの病勢進行リスクを70%低減:アストラゼネカ

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会員医師37%の金融資産が1,000万円未満

CareNet.comでは、過日、会員医師の方々に金融資産に関するアンケートへのご協力をお願いしました。今回、その結果がまとまりましたので、3回に分けて報告いたします。2017年8月3日にCareNet.comの会員医師を対象にインターネット上でアンケートを実施、回答者総数は324名でした。第1回は、先生の金融資産についての結果です。結果概要金融資産は安全な預貯金が主流設問1「金融資産合計(負債を含まない)について」の回答では、1,000万円未満:37%、1,000~3,000万円:26%、3,000~6,000万円:19%、6,000万円~1億円:8%、1~3億円:7%、3~5億円:1%、5億以上:2%という結果となり、金融資産が3,000万円以下という回答が全体の約6割を占めました。その一方で、10%の方が金融資産1億円以上を保有するという結果も得ました。■設問1 先生の金融資産合計(負債を含みません)についてご教示ください。1) 1,000万円未満2) 1,000万円~3,000万円3) 3,000万円~6,000万円4) 6,000万円~1億円5) 1億円~3億円6) 3億円~5億円7) 5億以上設問2「資産の内訳について、持っている資産の項目(複数回答)」では、円建て預貯金(258回答)が最も多く、次いで生命保険・個人年金(110回答)、株券(76回答)、不動産(73回答)、投資信託(54回答)、外貨建て預貯金(47回答)、国債・債権(27回答)、金などの実物資産(24回答)、その他(8回答)という順になりました。比較的安全な金融商品を選択し、銀行などへの預貯金や生命保険などが過半数を占めるなど、会員の方々の安全志向が見受けられました。■設問2 資産の内訳についてお持ちの資産の項目をすべてお選びください。(複数回答)1) 円建て預貯金2) 外貨建て預貯金3) 株券4) 国債/債権5) 投資信託6) 生命保険/個人年金7) 金などの実物資産8) 不動産9) その他資産形成への関心は低い傾向設問3の「資産形成で実践したいと思っている内容について(複数回答)」の質問では、「とくに何もない」が104回答で最も多く、次いで円建て預貯金(101回答)、株式投資(87回答)、外貨建て預貯金、投資信託が同数(各50回答)、不動産経営(32回答)、FX[外国為替証拠金取引](31回答)、生命保険、金などの実物資産への投資が同数(各27回答)、国債・債権投資(24回答)、ビットコインなどの仮想通貨への投資(12回答)という順番になりました。「とくに何もない」の回答が多いことから、資産形成にはあまり関心がないという傾向が読み取れる一方で、安全な預貯金のほかに株式投資への意欲もあり、比較的リスクの低い金融商品への関心もうかがえました。■設問3 先生が、資産形成で実践したいと思っている内容をご教示ください。(複数回答)1) 円建て預貯金2) 外貨建て預貯金3) FX4) 株式投資5) 国債/債権投資6) 投資信託 7) 生命保険 8) 金などの実物資産への投資 9) ビットコインなどの仮想通貨への投資10) 不動産経営11) とくに何もない12) 上記以外

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CABG後5年転帰、off-pumpはon-pumpより優れるか/NEJM

 人工心肺装置を用いないoff-pump冠動脈バイパス術(CABG)は、これを用いるon-pump CABGに比べ、術後5年の生存率と無イベント生存率が劣ることが、米国・ノースポート退役軍人局(VA)医療センターのA Laurie Shroyer氏らが行ったROOBY-FS試験で示された。研究の成果はNEJM誌2017年8月17日号に掲載された。2009年に発表された本試験の追跡期間1年時の結果では、1)短期の主要エンドポイント(CAGB施行後30日時の死亡および主な合併症[再手術、新規の機械的循環補助、心停止、昏睡、脳卒中、透析を要する腎不全]の複合)に有意な差はなく(off-pump群7.0% vs.on-pump群5.6%、p=0.19)、2)長期の主要エンドポイント(CAGB施行後1年時の全死亡、30日~1年の非致死性心筋梗塞、30日~1年の血行再建術再施行の複合)はoff-pump群で不良であった(9.9 vs.7.4%、p=0.04)。ROOBY-FS試験の術後5年時の臨床成績 研究グループは、off-pump CABGとon-pump CABGを比較するROOBY-FS試験の術後5年時の臨床成績を報告した(退役軍人省研究開発共同研究プログラムなどの助成による)。 2002年2月~2007年6月に、米国内18ヵ所のVA医療センターで2,203例が登録され、off-pump群に1,104例、on-pump群には1,099例が無作為に割り付けられた。術後1年の評価は2008年5月までに完了した。 術後5年時の主要評価項目は、全死因死亡および主要有害心血管イベント(MACE)の複合転帰の2つであった。MACEは、全死因死亡、血行再建術再施行(CABGまたは経皮的冠動脈インターベンション[PCI])、非致死的心筋梗塞と定義した。 術後5年時の副次評価項目は、心臓が原因の死亡、血行再建術再施行、非致死的心筋梗塞などであった。主要評価項目はp<0.05、副次評価項目はp<0.01の場合に有意差ありと判定した。off-pump群で優れる評価項目なし ベースラインの全体の平均年齢は62.7歳、男性が99.4%を占めた。2枝病変または3枝病変が94.1%、高血圧が86.2%、左室駆出率≧45%が82.3%の患者に認められた。 追跡期間5年の時点で299例(13.6%)が死亡し、心臓関連死が128例(5.8%)含まれた。非致死的心筋梗塞は239例(10.8%)で認められ、血行再建術再施行は276例(12.5%)(CABG再施行:21例、CABG後のPCI施行:258例)に行われた。 5年死亡率は、off-pump群が15.2%と、on-pump群の11.9%に比べ有意に高かった(相対リスク:1.28、95%信頼区間[CI]:1.03~1.58、p=0.02)。また、MACEの5年発生率は、off-pump群が31.0%であり、on-pump群の27.1%に比し有意に不良であった(相対リスク:1.14、95%CI:1.00~1.30、p=0.046)。 術後5年時の副次評価項目には有意な差を認めず、非致死的心筋梗塞の発生率はoff-pump群が12.1%、on-pump群は9.6%(p=0.05)、心臓が原因の死亡はそれぞれ6.3%、5.3%(p=0.29)、血行再建術再施行は13.1%、11.9%(p=0.39)、CABG再施行は1.4%、0.5%だった(p=0.02)。 著者は、「off-pumpのような技術的に高度で革新的な手術アプローチが、優れた臨床アウトカムをもたらすとは限らないことが明らかとなった」とし、「さらに追跡を行って、術後10年のアウトカムを厳格に評価する必要がある。今後は、長期的な無イベント生存率の改善を目標に、血行再建術の長期アウトカムに影響を及ぼす患者側および心臓手術手技のリスク因子を同定する必要がある」と指摘している。

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口腔がんになりやすい職業

 フィンランド・ヘルシンキ大学のLaura Tarvainen氏らが、舌・口腔(oral cavity)・咽頭がんにおける職業別リスクについて、飲酒・喫煙を調整し評価したところ、歯科医師などいくつかの職業で舌がんの相対リスクが高いことがわかった。著者らは、職業的な化学物質への曝露、飲酒や喫煙の増加、ヒトパピローマウイルス感染が関連する可能性を示唆している。Anticancer research誌2017年6月号に掲載。 著者らは、1961~2005 年における北欧諸国の1,490万人と、舌・口腔・咽頭がん2万8,623例のデータを調査。職業別の飲酒については肝硬変による死亡率と肝臓がん発症率に基づいて推定し、職業別の喫煙については肺がん発症率に基づいて推定した。 飲酒・喫煙について調整後、舌・口腔・咽頭がんの相対リスクが1.5を超えた職業は、歯科医師、芸術系職、美容師、ジャーナリスト、司厨、船員、ウエイターなどであった。

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迅速承認医薬品、承認前後の試験の特色を比較/JAMA

 重篤または生命を脅かす症状の治療薬は、米国FDAによる迅速承認制度の下、有効性のエビデンスが代用評価でも臨床上の有益性をもたらす可能性がかなりあることが示されれば迅速承認に至る。ただし実際に臨床的改善をもたらすかについて、その後に「確認試験」を行うことが求められる。英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のHuseyin Naci氏らは、それら迅速承認医薬品の、承認前試験と確認試験の特色について調べた。その結果、承認後3年以内に約7割が臨床的有効性を検討していたが、アウトカムの拠り所が代用評価のままであるなど、承認前試験と試験デザインの要素は似通っていたという。JAMA誌2017年8月15日号掲載の報告。承認前試験と確認試験の特徴付け 研究グループは、FDAの公開文書をレビューし、2009~13年に迅速承認された医薬品の承認前試験を特定し、また、FDAデータベースの上市後要件とコミットメント、ClinicalTrials.gov、適合ピアレビューの情報から、確認試験の状況や結果を抽出し、評価した。最終フォローアップは2017年4月7日。 承認前試験と確認試験の特徴付けを、試験デザイン(無作為化、盲検化、比較対照、主要エンドポイント)の特色比較で行った。その後の規制当局の判断、迅速承認と当局が求めた調整要件履行までの推定期間についても要約した。66%が承認後に有効性を検討、実証済みは42%だが代用評価試験がベース 調査対象期間中に迅速承認を受けた医薬品は22種、適応は24個(うち19個はがん治療関連)であった。適応24個のエビデンスとなった承認前試験は合計30件。それらへの登録被験者数の中央値は132例(四分位範囲:89~224)であった。また、包含被験者数が100例未満であった試験が8試験(27%)、200例未満は20試験(60%)であった。 最短フォローアップの3年時点で、求められた確認試験を完了していたのは19/38件(50%)で、結果については18件が公表していた。 臨床的有効性を検討していたのは25/38件(66%)あった。長期追跡評価を行っていたのは7件(18%)、安全性にフォーカスしていたのは6件(16%)であった。 無作為化デザインを採用していた試験の割合は、迅速承認前試験12/30件(40%)、承認後試験10/18件(56%)で、有意な差は認められなかった(差:16%、95%信頼区間[CI]:−15~46、p=0.31)。 承認後の調整要件を完了し有効性を実証していたのは10/24適応(42%)であったが、それらは代用評価の試験に基づくものであった。また、全要件を完遂していなかった14/24適応(58%)において、2適応(8%)が少なくとも1つの確認試験で臨床的有益性を実証することができず、2適応(8%)は終了、3適応(13%)は1年以上遅延中であり、残る7適応(29%)は目標タイムラインにしたがって試験が進行中であった。なお、5年以上前の初期に承認された8適応で、まだ臨床的有益性が確認されていなかった。

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心室収縮能評価に寄与する心臓の形状変化(ジオメトリー)、EFはいかに保たれているか

 収縮能は保たれているが心筋ストレインが低下している症例が、肥大型心筋症、虚血性心疾患、糖尿病などの患者において報告されている。そこで、Oslo University Hospital(ノルウェー)のThomas M. Stokke氏ら研究グループが、左室駆出率(EF)とストレインが一致しないことを検証するため、数学的および心エコーを組み合わせた解析を行った。Journal of American College of Cardiology誌2017年8月22日号に掲載。ストレインを含む4つのパラメータからEFを求める方程式を作成 本研究では、楕円形の左室形状モデルからEFと4つのパラメータであるGlobal longituidal strain (GLS:縦方向のストレイン)、Global circumferential strain (GCS:円周方向のストレイン)、壁厚および短軸方向の直径の関係を導く方程式が考案された。EFが16~72%の被験者100例において、EFの予想値と実際の計測値を比較し、この方程式の妥当性が確認された。また、異なるパラメータのEFに対する影響についても検証し、患者データとの比較を行った。円周性の収縮は長軸性の収縮より2倍以上もEFと関連 計算によって導き出されたEFの予測値と、実際の計測値はかなりの割合で一致していた(r=0.95)。またこのモデルでは、GCSがGLSと比べて2倍以上EFに関連することが示され、縦方向の収縮の大幅な減少は、円周方向の収縮のわずかな増加で補うことが可能と考えられた。壁厚が増加し、直径が減少した心室においては、長軸性および円周性の収縮が低下するが、そういった症例では、拡張末期容量を少なくすることで、EFを保っていた。このことは、正常コントロール20例と、壁厚が増加しかつ円周性および長軸方向の収縮が低下した肥大型心筋症患者20例とで、EF同様の値であるという結果と合致していた。 心筋の収縮が低下しているにもかかわらず、EFが保たれているという矛盾は、心臓の形状変化(ジオメトリー)の寄与を考えると、数学的に説明しうる。つまり、心筋の縦方向および円周方向の短縮が大きく変化しても、その他の形状学的な変化でそれを補い、EFが保持されている。EFが保たれている場合、ストレインは左室の収縮能を反映している EFは保たれていても、心臓全体としての変形が小さくなりうることが数学的に説明された。心臓の形体上の変化が大きく寄与していることを考えると、EFが保たれている症例ではストレインが心室の収縮能をより正確に反映していると考えられた。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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早産児の神経発達遅延リスクは改善したか/BMJ

 在胎期間22~34週の早産児の2歳時の神経発達アウトカムは過去20年で、重度または中等度の運動/感覚器障害のない生存が有意に増大していたが、発達遅延のリスクは高いままであることが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のVeronique Pierrat氏らによる、同国の早産児に関する住民コホート研究「EPIPAGE(1997年)」「EPIPAGE-2(2011年)」の結果、報告された。世界的に早産児の生存は増加しており、重度の新生児罹患率は低下している。しかし、最近の2000年代に生まれた早産児のアウトカムに関する研究は、超早産児に焦点が集まっており、在胎期間がある程度ある早産児についての報告はまれだという。BMJ誌2017年8月16日号掲載の報告。在胎期間22~34週の早産児の2歳時のアウトカムを検討 研究グループは、2011年に生まれた在胎期間22~26週、27~31週、32~34週の各早産児について、2歳時の神経発達アウトカムを検討し、さらに1997年のデータと比較した。 2011年に在胎期間22~34週で生まれた新生児は5,567例。そのうち2歳時に生存していた4,199例がフォローアップに包含された。アウトカムの比較は、両研究に参加する国内9地域における、1997年3,334例、2011年2,418例の新生児について報告された。 生存児について以下の評価を行った。1)脳性麻痺(2000 European consensusで定義)、2)神経発達の程度:保護者によるASQ(Ages and Stages Questionnaire)の評価で神経発達に関するスコアが閾値以下(5領域のうち少なくとも1つ以上)。データは、修正月齢22~26ヵ月、脳性麻痺・失明・聴覚障害のない児に行われたものを解析に含んだ。3)重度または中等度の運動/感覚器障害(脳性麻痺のレベルはGross Motor Function Classification Systemで2~5、片側性または両側性の失明もしくは聴覚障害)のない生存。 結果は、95%信頼区間(CI)とともに、アウトカム評価の割合で示した。1997年と2011年で重度障害児の割合は減少したが発達遅延のリスクは高いまま 5,170例の早産生存児において、2歳時の生存率は、在胎期間22~26週群が51.7%(95%CI:48.6~54.7)、27~31週群が93.1%(同:92.1~94.0)、32~34週群が98.6%(同:97.8~99.2)であった。22~23週群では、生存例は1例のみであった。 脳性麻痺に関するデータは、3,599例で得られた(適格集団の81.0%)。脳性麻痺児の割合は、22~26週群6.9%(95%CI:4.7~9.6)、27~31週群4.3%(同:3.5~5.2)、32~34週群1.0%(同:0.5~1.9)であった。 ASQデータは、2,506例について得られた(適格集団の56.4%)。スコア閾値以下の児の割合は、22~26週群50.2%(95%CI:44.5~55.8)、27~31週群40.7%(同:38.3~43.2)、32~34週群36.2%(同:32.4~40.1)であった。 重度または中等度の運動/感覚器障害のない生存児の割合は、1997年と比べて2011年は増加していた。しかし、在胎期間が25~26週群では45.5%(95%CI:39.2~51.8)から62.3%(同:57.1~67.5)へ増加していたが、22~24週群では変化が観察されなかった。また、32~34週群では、統計的に有意な増加はみられなかったが(p=0.61)、脳性麻痺の生存児の割合は有意に減少していた(p=0.01)。

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抗CD20抗体obinutuzumab、濾胞性リンパ腫に承認申請

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長CEO:永山 治)および日本新薬株式会社(本社:京都、代表取締役社長:前川重信)は、「CD20陽性のB細胞性濾胞性リンパ腫」を対象として国内で共同開発を進めていた抗CD20モノクローナル抗体obinutuzumabについて、中外製薬が2017年8月23日、製造販売承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。 今回の申請は、ロシュ社が実施し、国内からも参加した国際共同第III相試験(GALLIUM試験)などの成績に基づいている。GALLIUM試験は、1,401例の未治療のCD20陽性進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫患者を対象に、リツキシマブ・化学療法併用の導入療法後にリツキシマブ維持療法を継続した群(リツキシマブ群)に対する、obinutuzumab・化学療法併用の導入療法後にobinutuzumab維持療法を継続した群(obinutuzumab群)の有効性と安全性を比較した非盲検無作為化国際共同第III相試験。GALLIUM試験の主要評価項目は、主治医評価による濾胞性リンパ腫患者(1,202例)における無増悪生存期間(PFS)であった。副次的評価項目は独立評価委員会判定によるPFS、全生存期間(OS)、および安全性など。 GALLIUM試験の主要評価項目において、obinutuzumab群はリツキシマブ群と比較して34%、統計学的に有意に減少させたが(HR:0.66、95%CI:0.51~0.85、p=0.0012)、PFS中央値は未達である。副次的評価項目については未達であったが、病勢進行・再発・死亡のリスクはobinutuzumab群で29%減少した(HR:0.71、95%CI:0.54~0.93、p=0.0138)。OSは両群とも未達であった。GALLIUM試験において両群で発現した有害事象はこれまでに報告されたものと同様であったが、リツキシマブ群に比べobinutuzumab群で5%以上高く認められたGrade 3以上の有害事象は、好中球減少(43.9%対37.9%)であった。■参考中外製薬株式会社ニュースリリースGALLIUM試験(Clinical Trials.gov)

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