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StageIV大腸がん、無症状の原発巣切除は標準治療と見なすべき?(JCOG1007)/JCO

 切除不能の遠隔転移を有するが原発巣に起因する症状がないStageIV大腸がんの初回治療について、原発巣切除(PTR)+化学療法は化学療法単独と比較して生存率改善に寄与しないことが、日本で行われた第III相無作為化試験「JCOG1007; iPACS試験」の結果、示された。国立がん研究センター中央病院の金光 幸秀氏らが報告した。同Stage IV大腸がんに対しては、PTRが標準治療として行われているが、その意義については議論の的になっていた。結果を踏まえて著者は、「原発巣に起因する症状がない切除不能の転移を有する大腸がん患者において、PTRは標準治療と見なすべきではない」とまとめている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年2月9日号掲載の報告。 JCOGによって行われたiPACS試験は、切除不能のStageIVで原発巣に起因する症状はないが3つ以下の切除不能の転移(肝臓、肺、遠隔リンパ節、腹膜)がある大腸がん患者(適格対象20~74歳)の全生存(OS)に関して、化学療法単独に対するPTR+化学療法の優越性を検証した第III相の非盲検無作為化試験。化学療法レジメンは、mFOLFOX6+ベバシズマブまたはCapeOX+ベバシズマブで、試験登録前に決定した。主要評価項目はOSで、解析はintention-to-treatにて行われた。 主な結果は以下のとおり。・2012年6月~2019年9月に、国内38のがんセンターで計165例の患者が登録され、化学療法単独群(84例)、PTR+化学療法群(81例)に無作為に割り付けられた。・両群間の患者バランスは、原発巣(両群とも結腸およびS状結腸が93%)などを含め良好であった。最も頻度の高い切除不能の転移は肝臓(120/165例[73%])で、遠隔転移部位の分布も両群間で類似していた。・2019年9月に最初の中間解析が行われ、データカットオフ日(2019年6月5日)時点で患者160例において予想されたイベントの50%(114/227例)が観察され、データ安全モニタリング委員会は、無益性を理由として試験の早期終了を勧告した。・追跡期間中央値22.0ヵ月において、OS中央値はPTR+化学療法群25.9ヵ月、化学療法単独群26.7ヵ月であった(ハザード比:1.10、95%CI:0.76~1.59、片側p=0.69)。・PTR+化学療法群では術後死亡が3例報告された。

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乳がん手術療法のDe-escalation、検討中の4つの方向性/日本臨床腫瘍学会

 乳がん治療における手術療法はHalsted手術以降、一貫して縮小してきており、早期乳がんに対する胸筋温存、乳房温存などが一般的に実施されている。腋窩リンパ節郭清に関してもセンチネルリンパ節生検が広く行われるようになり、その後、センチネルリンパ節に転移を認めても条件を満たせば郭清を省略するようになっている。現在、さらなる手術縮小の可能性が前向きに検討されているが、具体的な4つの方向性について現在進行中の試験を含めて、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)におけるシンポジウム「乳がん治療におけるDe-escalationを考える」の中で、岡山大学の枝園 忠彦氏が紹介した。1)術前薬物療法実施症例でのセンチネルリンパ節生検 術前薬物療法の実施後にセンチネルリンパ節生検を実施したACOSOG Z1071(Alliance)、SENTINA(Arm C)、SN FNACの各試験を、術前薬物療法なしでセンチネルリンパ節生検を実施したNSABP B-32試験と比較すると、NSABP B-32試験ではセンチネルリンパ節生検の同定率は97.2%、偽陰性率9.8%であるのに対し、他の3試験では同定率は減少し偽陰性率は増加した。しかしながら、センチネルリンパ節を多め(3個以上)に摘出もしくは腫瘍の大きさをT2までに限ることで、センチネルリンパ節生検を可能にすることが示されている。 また、偽陰性率を下げるための工夫として、転移のあったリンパ節に術前にクリップなどのマーキングをして手術で確実に切除することにより偽陰性率が低く抑えられた結果が報告されており、現在、多くの施設でさらなる検討が実施されている。 さらに、もともとリンパ節転移があり術前薬物療法でリンパ節転移が消失した症例にセンチネルリンパ節生検が有用かどうかについて前向き試験で検討されており、結果が待たれている。2)術前に臨床的にリンパ節転移が認められない症例でのリンパ節郭清の省略 現在、センチネルリンパ節生検は、術後薬物療法の実施を決定するための「診断」として利用されることが多いことから、術後薬物療法はホルモン療法のみの予定のER陽性の高齢の乳がん症例において、センチネルリンパ節生検省略の安全性と有効性を検討する試験が組まれている(NCT02564848)。 また、超音波画像で転移がないことが明らかであればセンチネルリンパ節生検は不要ではないかとのことから、超音波検査で転移陰性を診断したうえで省略するという前向きのSOUND試験(NCT02167490)も実施されている。 同様に、術前薬物療法が実施され、画像上完全奏効が得られている症例で、術後薬物療法を実施することが決定しているトリプルネガティブまたはHER2陽性症例において、センチネルリンパ節生検の省略を検討する前向き試験(NCT04101851)が実施されている。3)低悪性度のDCIS症例における手術の省略 マンモグラフィの進歩によって、石灰化を伴うごく小さな非浸潤性乳管がん(DCIS)が発見されるようになった。他方、低悪性度のDCISでは手術の有無にかかわらず予後は変わらないことが報告されている。また、すべてのDCISが浸潤がんに進行するわけではないが、進行リスクの高い患者を予測する方法がないため、すべてのDCIS症例に手術や放射線治療がなされてきた。 このような背景から、現在、世界では4つの前向き試験が実施されており、日本でもLORETTA試験(JCOG1505)が症例登録中で、いずれも低~中悪性度でER陽性のDCISを対象に、経過観察のみもしくは経過観察+ホルモン療法の安全性を検討している。枝園氏は、これらの試験の結果によっては、低悪性度の場合は手術しないというのもオプションの1つになると思われると期待を述べた。4)術前薬物療法で臨床的完全奏効が得られた症例における手術の省略 術前薬物療法は早期乳がんの標準治療の1つになっており、完全奏効が得られる症例が多くなっている。とくにHER2陽性乳がんでは半数以上がHER2阻害薬と化学療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られると報告されている。しかし、現状では手術なしでpCRを確認する方法がないため、全例に手術を行うのが標準になっている。 それに対して、海外では診断精度を高めるために、針生検を実施してがんの残存を確認する前向き試験が実施されているが、実際には完璧にpCRを予測するのが難しいとされている。 そこで、わが国では、HER2陽性乳がんで術前薬物療法(化学療法+HER2阻害薬)により画像上で腫瘍が消失した患者に対して、手術なしでも予後は変わらないことを前向きに確認するAMATERAS試験(JCOG1806)を現在実施している。 最後に枝園氏は、「手術の縮小は症状が出ることを避け、整容性を向上させることを目的としているが、逆に局所再発の増加を引き起こす。データ上、局所再発は生存に影響ないが長期的には影響が出てくるため、手術縮小と引き換えに全身療法や放射線療法が必要となる」と述べ、「これら3つの組み合わせによって手術縮小と治療を両立させることが重要である」と講演を締めくくった。

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化膿性汗腺炎〔HS:Hidradenitis suppurativa〕

1 疾患概要■ 定義化膿性汗腺炎(Hidradenitis suppurativa:HS)は臀部、腋窩、外陰部、乳房下部などに有痛性の皮下結節、穿掘性の皮下瘻孔、瘢痕を形成する慢性の炎症を繰り返す慢性炎症性再発性の毛包の消耗性皮膚疾患で難治性疾患である。アポクリン腺が豊富に存在する部位に好発する。Acne inversa (反転型ざ瘡)とも呼ばれている。集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎とともに毛包閉塞性疾患の1型と考えられている。従来からの臀部慢性膿皮症は化膿性汗腺炎に含まれる。■ 疫学発症頻度は報告者によってさまざまであるが、欧米では0.1~4%で平均約1%程度と考えられている。わが国では大規模調査が行われていないので、明らかではないが、日本皮膚科学会研修施設を対象とした調査で100例1)、300例2)の報告がある。性差については欧米からの報告では男女比が1:3で女性に多く3)、わが国では男女比が3:1で男性に多い1,2)。好発年齢は20~30歳代に発症し、平均年齢は海外で36.8歳、わが国では40.1歳である1)。発症から正しい診断に至るまでの罹病期間は約7年である1,2)。好発部位は臀部、外陰部、腋窩に多い。男性では肛囲、臀部に多く、女性では腋窩、外陰部に多い1,2)。■ 病因明らかな病因は不明であるが、遺伝、毛包の閉塞、嚢腫形成などの病変に炎症が加わって起こる再発性の慢性の自己免疫性炎症性疾患である。遺伝的因子について、海外では家族性の場合が多く、約30~40%に家族歴があるが3,4)、わが国では2~3%と海外に比べて、非常に低い1,2,4)。家族性HSの場合、γ-セクレターゼの欠損が関連していると考えられている3,4)。TNFα、IL-1β、IFN-γ、IL-12、IL-23、IL-36などのTh1細胞とIL-17を産生するTh17細胞が化膿性汗腺炎の病変部で発現し、これらのサイトカインが重要な役割を演じていることが明らかになってきている3,4)。二次的に細菌感染を合併することもある。悪化因子として喫煙、肥満、耐糖能異常、内分泌因子、感染、機械的刺激などが関連している1,2,3,4)。合併する疾患として、毛包閉塞性疾患である集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎、毛巣洞がある1,4)。併存疾患として糖尿病、壊疽性膿皮症、自己炎症症候群、クローン病、外痔瘻、有棘細胞がんがある4)。■ 症状多くは単発性の疼痛を伴う深在性の皮下結節で始まる。皮下結節は増大、多発して、血性の排膿がみられる。皮疹は黒色面皰がかなり高率にみられる。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。隣接する瘻孔は皮下で交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成し,瘻孔の開口部より滲出液、血性膿、粥状物質などを排出し、悪臭を伴う(図1)。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。瘻孔が破裂し、真皮に角層などの異物が流出すると肉芽形成が起こり、肥厚性瘢痕、ケロイドを形成する(図1)。重症では蜂巣炎から敗血症を合併することもある。生活のQOLが著しく低下し、疼痛、うつ、性生活、Dermatology Life Quality Index(DLQI)も低下する。図1 化膿性汗腺炎の臨床所見画像を拡大する腋窩に皮下瘻孔、肥厚性瘢痕がみとめられる■ 分類重症度分類として、Hurleyのステージ分類が重症度の病期分類として最も用いられて3期に分類される。第I期 単発、あるいは多発する皮下膿瘍形成。皮下瘻孔、瘢痕はなし。第II期再発性の皮下膿瘍、皮下瘻孔、瘢痕。 単発あるいは多発性の孤立した複数の病巣。第III期広範なびまん性の交通した皮下瘻孔と皮下膿瘍。とされている。その他、修正Sartorius分類が用いられている。Sartoriusらは(1)罹患している解剖学的部位、(2)病巣の数とスコア、(3)2つの顕著な病巣間の最長距離、(4)すべての病巣は正常の皮膚から明確に離れているか否かという4項目について点数化する方法をHSの重症度として提唱している4)。治療の重症度スコアの評価指標として国際的HS重症度スコアリングシステム(IHS4)とHiSCR(Hidradenitis Suppurativa Clinical Response)がある。IHS4(International Hidradenitis Suppurativa Severity Score System)3)は炎症性結節、膿瘍、瘻孔・瘻管の数で評価される。中等度から重症の症例の鑑別、早期発見を可能にする。また、HiSCRと組み合わせて使いやすい。HiSCRは化膿性汗腺炎の薬物治療に対する“反応性”を数値化して指標で治療前後での12部位の炎症性結節、膿瘍、排膿性瘻孔の総数を比較する。HiSCRが達成されていれば、症状の進行が抑えられていると判定する。治療前の炎症性結節、膿瘍の合計が50%以上減少し、さらに膿瘍、排膿性瘻孔がそれぞれ増加していなければ、HiSCR達成となる。PGA(Physician Global Assessment)(医師総合評価)は薬物療法の臨床試験での効果判定に最も広く用いられている。■ 予後化膿性汗腺炎は慢性に経過し、治療に抵抗する疾患である。まれに有棘細胞がんを合併することもある。頻度は0.5~4.6%で男性に多く、臀部、会陰部の発症が多いとされている4)。化膿性汗腺炎の発症から平均25年を要するとされている4)。2 診断 (検査・鑑別診断を含む)■ 確定診断化膿性汗腺炎の確定診断には以下の3項目を満たす必要がある。1)皮膚深層に生じる有痛性結節、膿瘍、瘻孔、および瘢痕などの典型的皮疹がみとめられる。2)複数の解剖学的部位に1個以上の皮疹がみとめられる。好発部位は腋窩、鼠径、会陰、臀部、乳房下部と乳房間の間擦部である。3)慢性に経過し、再発を繰り返す。再発は半年に2回以上が目安である。病理組織所見病初期は毛包漏斗部の角化異常より角栓形成がみられる。その後、好中球を主体として毛包周囲の炎症性細胞浸潤が起きる。毛包漏斗部の皮下瘻孔は次第に深部に進展し、皮膚面と平行に走り、隣接する皮下瘻孔と交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成する(図2)。炎症細胞浸潤が広範囲に及び、瘻孔壁が破裂すると、角質、細菌などの内容物が真皮に漏出して、異物肉芽腫が形成される。ときに遷延性の皮下瘻孔より有棘細胞がんが生じることがあるので、注意を要する。図2 化膿性汗腺炎の病理組織学的所見画像を拡大する一部、上皮をともなう皮下瘻孔がみとめられる(文献5より引用)。■ 鑑別診断表皮嚢腫:通常、単発で皮下瘻孔を形成しない。せつ:毛包性の膿疱がみられ、周囲の発赤、腫脹をともなう。よう:毛包性の多発性の膿疱がみられ、巨大な発赤をともなう結節を呈する。蜂巣炎、皮下膿瘍:発赤、腫脹、熱感、圧痛、皮下硬結をともなう。毛巣洞: 臀裂部正中に好発し、皮下瘻孔がみられる。皮下血腫:斑状出血をみとめ、穿刺にて凝固塊の排出をみとめる。クローン病による皮膚症状:肛門周囲に皮膚潰瘍をみとめ、皮下瘻孔を形成し、肛門との交通があることがある。■ 問診で聞くべきこと家族歴、喫煙、肥満、糖尿病の有無。■ 必要な検査とその所見採血(赤血球数、白血球数、白血球の分画、CRP、血沈、ASOなど)、尿検査を行う。蜂巣炎の合併の有無に必要である。 皮膚生検  有棘細胞がんの有無の確認に重要である。細菌検査  好気、嫌気培養も行う。蜂巣炎を合併している場合、細菌の感受性を検査して、抗菌剤の投与を行う。超音波エコー病巣の罹患範囲を把握し、手術範囲の確定に有用である。3 治療病初期には外用、内服の薬物療法が試みられる。局所的に再発を繰り返す場合は外科的治療の適応となる。病変部が広範囲に及ぶ場合には薬物療法の単独、あるいは外科的療法との併用が適している。薬物療法としては抗菌剤、レチノイド、生物学的製剤があるが、わが国において生物学的製剤で化膿性汗腺炎に保険適用があるのはアダリムマブだけである4)。■ 具体的な治療法抗菌剤の内服、外用、あるいは外科的治療と併用される。抗菌剤の外用は軽症の場合に有効であることがある。クリンダマイシン、フシジンレオ酸が用いられている4)。抗菌剤の内服は細菌培養で好気性菌と嫌気性菌が検出される場合が多いのでセフェム系、ペネム系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗薗剤が用いられる。ステロイド局所注射:一時的な急性期の炎症を抑えるのに有効である。デ・ルーフィング(天蓋除去):皮下瘻孔の屋根を取り除くことも有効である。局所の切開、排膿、生理食塩水による洗浄、タンポンガーゼによるドレナージも一時的に有効な処置である。 生物学的製剤としてアダリムマブが有効である。適応として既存の治療が無効なHurley stageII、IIIが対象となる。外科的治療:外科的治療は特に重症例に強く推奨される治療法である。病巣の範囲を正確に把握し,切除範囲を決めることが 重要である。CO2レーザーによる治癒も軽症~中等症に対して有効である。広範囲切除はHurleyの第III期が適応となる。切除範囲は病変部だけの限局した切除は十分でなく、周囲の皮膚を含めた広範囲な切除が必要である。有棘細胞がんが合併した場合は外科的切除が最優先される。■ その他の補助療法1)対症療法疼痛に対して、消炎鎮痛剤などの投与を行う。重複感染の管理を行う。生活指導:喫煙者は悪化因子である喫煙をやめる。肥満については減量、糖尿病があれば、原疾患の治療を行う。深在性の皮下瘻孔があり、入浴で悪化する場合、入浴を避け、シャワーにする。2)その他、治療の詳細については文献(4)を参照されたい。4 今後の展望今後、治験中の薬剤としてインフリキシマブ、IL-17阻害薬, IL-23阻害薬などがある。5 主たる診療科皮膚科、形成外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)皮膚の遺伝関連性希少 難治性疾患群の網羅的研究班1)Kurokawa I, et al. J Dermatol. 2015;42:747-749. 2)Hayama K, et al. J Dermatol. 2020;47:743-748.3)Zouboulis CC, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2015;29:619-644.4)葉山惟大、ほか. 日皮会誌.2021;131;1-28.5)Plewig G, et al. Plewig and Kligman’s Acne and TRosacea. Springer.2019;pp.473.公開履歴初回2021年2月26日

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メトホルミンはCOVID-19の発症・死亡に影響するのか?

 糖尿病は、COVID-19による死亡の重要なリスク因子として考えられており、これまでのさまざまな研究で、糖尿病治療薬メトホルミンが複数のメカニズムを介してCOVID-19に影響を与えることが示唆されている。今回、英・バーミンガム大学のJingya Wang氏らが、2型糖尿病患者におけるCOVID-19へのメトホルミンの影響を調査した。その結果、メトホルミンの処方は、COVID-19発症または死亡のリスクとは関連していなかった。Journalof Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2021年2月9日号での報告。 研究グループは、英国の大規模なプライマリケアデータThe Health Improvement Network(THIN)を使用し、成人の2型糖尿病患者を対象とした人口ベースの後ろ向きコホート研究を実施。解析データにはインデックスの1年前までに2型糖尿病の一般診療を受けている患者が含まれ、2020年1月30日~10月13日まで追跡された。12歳以前に糖尿病と診断された人、1型糖尿病、血糖降下薬に対する副作用の既往歴、膵炎、推定糸球体濾過率(eGFR)測定値が30mL/min/1.73m2未満、前年に妊娠した人は除外された。 メトホルミンおよびその他の血糖降下薬8種のうち、少なくとも1種類の処方がある患者(MF+)と、メトホルミンを含まない血糖降下薬の処方がある患者(MF-)を比較。アウトカムとして、疑い例を含むCOVID-19、RT-PCR検査で確定診断されたCOVID-19、およびそれに関連する死亡率を調査した(COVID-19に関連する死亡は、診断後28日以内の死亡として定義)。ネガティブコントロールとして、腰痛の結果分析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析データには、2万9,558例のメトホルミン群(MF+)および1万271例の対照群(MF-)が含まれ、そこから社会人口統計学的要因(年齢と性別、肥満度指数およびその他の代謝プロファイル測定値、血圧、心血管およびその他の併存疾患)を含む交絡因子の傾向マッチングにより、各群から1万183例を抽出した。・マッチング後、疑い例を含むCOVID-19と確認されたのは、メトホルミン群で172例(うち確定は47例)、対照群で186例(同54例)だった。対照群と比較したメトホルミン群におけるCOVID-19発症の調整ハザード比(HR)は、疑い例を含むCOVID-19で0.85(95%CI:0.67~1.08)、確定診断されたCOVID-19で0.80(95%CI:0.49〜1.30)であり、いずれも統計的有意性は得られなかった。・メトホルミン群で死亡した214例のうち17例、および対照群で死亡した266例のうち20例が、COVID-19に関連していた。すべての原因による死亡の調整HRは0.89(95%CI:0.74〜1.07)で、COVID-19関連死亡の調整HRは0.87(95%CI:0.34〜2.20)であり、グループ間に有意差は見られなかった。・ネガティブコントロール分析は、見落とされた交絡を示唆しなかった。 著者らは、「メトホルミンの処方は、COVID-19の発症率または死亡率のリスク上昇とは関連しなかった。COVID-19への懸念にかかわらず、糖尿病患者の血糖コントロールを改善するためにメトホルミンを処方し続けることは安全だ」とコメントしている。

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TNBC術前化療への免疫療法併用、メタ解析結果/日本臨床腫瘍学会

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における術前化学療法と免疫療法併用の有効性についてメタ解析が行われ、併用による病理学的完全奏効率(pCR)の有意な改善が示された。またPD-L1発現状態に基づくサブグループ解析の結果、PD-L1陽性集団では併用によるpCRの有意な改善が示されたが、陰性集団では統計学的有意差は得られなかった。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)で、フィリピン・St. Luke's Medical CenterのJessa Gilda Pandy氏が発表した。 Pubmed、Embase、Cochrane、臨床試験データベースの系統的検索と手作業による検索により、TNBCにおける術前化学療法とPD-1/PD-L1阻害薬併用についての無作為化比較試験(RCT)を特定した。2020年3月までに発表された試験が対象。変量効果モデルを使用して、統合オッズ比(OR)がpCRについて計算された。また、PD-L1発現状態に基づくpCRのサブグループ解析も実施された。 主な結果は以下のとおり。・4つのRCT(Keynote-522、I-SPY2、NeoTRIPaPDL1、GeparNuevo)が解析対象とされた(384例)。・術前化学療法と免疫療法の併用は、化学療法単独と比較して有意にpCRを改善した(58.5% vs.42.4%、OR:1.76、95%信頼区間[CI]:1.11~2.79、p<0.02)。・PD-L1発現状態に基づくサブグループ解析の結果、併用群では、PD-L1陽性集団でPD-L1陰性集団よりも高いpCRが示された(64.5% vs.52.2%)。また、陽性集団では併用によるpCRの有意な改善が示されたが(OR:1.55、95%CI:1.16~2.09、p=0.003)、陰性集団では統計学的有意差は得られなかった(OR:1.42、95%CI:0.80~2.52、p=0.23)。・有害事象は既知の安全性プロファイルと一致していた。多くみられたのは内分泌障害、甲状腺機能低下症であった。 Pandy氏は、症例数の少なさなど本研究の限界に触れたうえで、PD-L1発現状態は、免疫療法併用によるベネフィットをより多く受けうる患者の選択に活用できる可能性があると結論づけている。

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カボザンチニブ、転移乳頭状腎がんでPFS延長(SWOG1500)/Lancet

 転移のある乳頭状腎細胞がん(PRCC)患者において、カボザンチニブはスニチニブと比較して無増悪生存(PFS)期間を有意に延長したことが示された。米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのSumanta K. Pal氏らが、米国およびカナダの65施設で実施した、METキナーゼ阻害薬カボザンチニブ、クリゾチニブおよびsavolitinibとスニチニブを比較する無作為化非盲検第II相試験「SWOG 1500試験」の結果を報告した。METシグナル伝達経路はPRCCの重要なドライバーであるが、転移のあるPRCCに対する最適な治療は存在していなかった。Lancet誌2021年2月20日号掲載の報告。カボザンチニブ、クリゾチニブ、savolitinibの有効性をスニチニブと比較 研究グループは、1レジメンまでの治療歴(VEGFおよびMETを標的とする薬剤を除く)を有する18歳以上の転移のあるPRCC患者を、スニチニブ群、カボザンチニブ群、クリゾチニブ群またはsavolitinib群に1対1対1対1の割合で、治療歴およびPRCCサブタイプで層別化し無作為に割り付けた。 スニチニブは4週投与2週休薬で50mgを1日1回経口投与(37.5mgおよび25mgに減量可)、カボザンチニブは60mgを1日1回経口投与(40mgおよび20mgに減量可)、クリゾチニブは250mgを1日2回経口投与(200mgを2回/日および250mgを1回/日に減量可)、savolitinibは600mgを1日1回経口投与(400mgおよび200mに減量可)とした。 主要評価項目はPFSで、intention-to-treat解析を行った。プロトコールの治療を受けなかった患者は安全性解析対象集団から除外された。カボザンチニブはスニチニブと比較してPFSを有意に延長 2016年4月5日~2019年12月15日の期間に152例が登録され、4つの治療群に無作為化された。無作為化後に5例の不適格を確認し本解析から除外したため、解析対象集団は147例であった。 savolitinib群(29例)およびクリゾチニブ群(28例)への割り付けは、事前に設定された無益性解析後に中止された。スニチニブ群(46例)およびカボザンチニブ群(44例)では予定症例数が達成された。 PFS中央値は、カボザンチニブ群が9.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:6~12)、スニチニブ群が5.6ヵ月(95%CI:3~7)であり、カボザンチニブ群で有意に延長した(進行または死亡のハザード比:0.60、95%CI:0.37~0.97、片側p=0.019)。また、奏効率は、カボザンチニブ群23%、スニチニブ群4%であった(両側p=0.010)。 savolitinib群とクリゾチニブ群は、スニチニブ群と比較してPFSを延長しなかった。 Grade3/4の有害事象は、スニチニブ群69%(31/45例)、カボザンチニブ群74%(32/43例)、クリゾチニブ群37%(10/27例)、savolitinib群39%(11/28例)に発生した。Grade5の血栓塞栓症が、カボザンチニブ群で1例確認された。

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PSMA標的治療のルテチウム-177、転移のある去勢抵抗性前立腺がんに有効/Lancet

 ドセタキセル治療が無効となった転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)男性の治療において、ルテチウム-177[177Lu]Lu-PSMA-617はカバジタキセルと比較して、前立腺特異抗原(PSA)反応(PSA値のベースラインから50%以上の低下)の達成率が高く、Grade3/4の有害事象の頻度は低いことが、オーストラリア・Peter MacCallumがんセンターのMichael S. Hofman氏らが行った「TheraP(ANZUP 1603)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年2月11日号で報告された。[177Lu]Lu-PSMA-617は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現する細胞にβ線を照射する放射線標識低分子化合物であり、mCRPC患者において抗腫瘍活性と安全性が確認されている。オーストラリアの無作為化第II相試験 本研究は、mCRPCの治療における[177Lu]Lu-PSMA-617の有用性をカバジタキセルと比較する非盲検無作為化第II相試験であり、オーストラリアの11施設が参加し、2018年2月~2019年9月の期間に患者登録が実施された(オーストラリア前立腺がん財団、米国Endocyteなどの助成による)。 対象は、ドセタキセル治療で病勢が進行し、カバジタキセルが次の適切な治療と考えられるmCRPCの男性で、全身状態(ECOG PS)が0~2の患者であった。アンドロゲン受容体標的療法(androgen receptor-directed therapy)による前治療は許容された。 被験者は、ガリウム-68[68Ga]Ga-PSMA-11 PET-CTと、2-フッ素-18[18F] fluoro-2-deoxy-D-glucose (FDG) PET-CTによる検査を受けた。本試験のPET適格基準は、PSMA陽性病変を有し、FDG陽性/PSMA陰性の所見が一致しない転移部位がないことであった。適格例は、[177Lu]Lu-PSMA-617(6.0~8.5 GBq、6週ごとに静脈内投与、最大6サイクル)またはカバジタキセル(20mg/m2、3週ごとに静脈内投与、最大10サイクル)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントはPSA反応とし、PSA値のベースラインから50%以上の低下と定義された。ITT集団のPSA反応率:66% vs.37% PET適格基準を満たした200例のうち、99例(年齢中央値72.1歳、PSA中央値93.5ng/mL)が[177Lu]Lu-PSMA-617群に、101例(71.8歳、110ng/mL)はカバジタキセル群に割り付けられた。両群とも91例(91%)が、エンザルタミドまたはアビラテロンによる前治療を受けていた。実際に試験薬の投与を受けたのは、[177Lu]Lu-PSMA-617群が98例(99%)、カバジタキセル群は85例(84%)だった。 intention to treat集団では、PSA反応は[177Lu]Lu-PSMA-617群が66%(65例)で得られ、カバジタキセル群の37%(37例)に比べ有意に良好であった(群間差:29%、95%信頼区間[CI]:16~42、p<0.0001)。また、実際に投与を受けた集団でも、PSA反応率は[177Lu]Lu-PSMA-617群で有意に優れた(66% vs.44%、群間差:23%、9~37、p=0.0016)。 病変の増悪(画像所見またはPSA値で評価)は173例([177Lu]Lu-PSMA-617群90例、カバジタキセル群83例)で認められ、増悪までの期間は[177Lu]Lu-PSMA-617群がカバジタキセル群に比べ遅延していた(ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.46~0.86、p=0.0028)。また、12ヵ月の時点での無増悪生存(PFS)率は、[177Lu]Lu-PSMA-617群が19%、カバジタキセル群は3%であり、PFS期間中央値は両群とも5.1ヵ月だった。 Grade3/4の有害事象は、[177Lu]Lu-PSMA-617群が33%(32/98例)で発現したのに対し、カバジタキセル群の発現率は53%(45/85例)であった。[177Lu]Lu-PSMA-617群では、Grade3/4の血小板減少(11% vs.0%)が多く、Grade3/4の好中球減少(4% vs.13%)は少なく、発熱性好中球減少のエピソード(0% vs.8%)はみられなかった。また、[177Lu]Lu-PSMA-617関連の死亡例はなかった。 著者は、「[177Lu]Lu-PSMA-617は、新たなクラスの有効な治療法であり、カバジタキセルの代替治療となる可能性がある」としている。

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第48回 コーヒーは血中脂質を増やす/イスラエル医療従事者のCOVID-19発症がワクチンで85%減少

コーヒーは血中脂質を増やす~飲むならカフェストールが抜ける濾過コーヒーが賢明重要な慢性疾患や怪我の要因を見つけることを主な目的1)とする観察試験UK Biobankの被験者36万2,571人の解析でコーヒーと血中コレステロール濃度上昇の関連が改めて示されました2,3)。コーヒーをより飲んでいる人ほど総コレステロール、それに悪名高いLDLコレステロール(LDL-C)やアポリポタンパク質B(apoB)の血中濃度がより高いという結果が得られており、コーヒーの飲みすぎを長く続けると脂質に障ってやがては心血管疾患を生じやすくする恐れがあると示唆されました。コーヒーを飲むこととコレステロール上昇の関連はノルウェーの街トロムソの住人を調べたおよそ40年前の試験(Tromso Heart Study)ですでに示されています。被験者はコーヒーといえば挽いたコーヒー豆を水で煮てその上澄みを濾過せずに飲むのを主とし、UK Biobankの試験と同様にコーヒーをより多く飲んでいる人ほど血清の総コレステロールやトリグリセリド値がより高めでした4)。それから7年後の1990年には冒頭のUK Biobank試験の著者の懸念を裏付ける中年男女およそ4万人の追跡調査結果がBMJ誌に掲載されています。Tromso Heart Studyと同様にノルウェーでの試験であり、非濾過コーヒーがしばしば飲まれていた同国でのコーヒー摂取と冠動脈心疾患による死亡の関連が示されました5)。非濾過コーヒーにはコレステロールを上げるコーヒー豆成分カフェストール(cafestol)が多く含まれます。たとえば豆の粗挽きを10分以上煮出すか熱湯で煎じた上澄みの非濾過コーヒーには紙フィルター濾過コーヒーに比べて30倍多く含まれます6)。コーヒー豆のカフェストールが血清コレステロールを上げることを発見した1994年の研究報告の引用文献によると、ノルウェーの隣国フィンランドでは非濾過から濾過コーヒーへの嗜好の変化が血清コレステロール低下に一役買い、7%の心血管疾患減少をもたらしました7,8)。上述のNEJM報告の筆頭著者Dag Thelle氏が率いたごく最近の試験9)でもどうやら非濾過コーヒーの飲み過ぎは心臓に悪そうなことが示唆されています。Thelle氏等のその新たな試験ではノルウェーの20~79歳の約51万人のデータを使ってコーヒーと心血管疾患や死亡率等との関連への抽出方法の影響が調べられました。その結果、コーヒー全般と死亡や心血管疾患を生じやすくなることの関連は認められませんでしたが、コーヒーを飲む人のうち1日に濾過コーヒーを1~4杯飲む人は死亡率が最も低く、非濾過コーヒーを1日に9杯以上飲む人は逆に死亡率が最も高くなっていました。ペーパーフィルター濾過コーヒーでもコレステロールが上昇しうることが示されている10)ので過信は禁物ですが、血中脂質にできるだけ障らないようにするにはコレステロール上昇成分カフェストールが抜ける濾過コーヒーを適度に飲むのが賢明なようです2)。イスラエルでPfizerワクチン1回目接種後15~28日間のCOVID-19発症が85%減ったPfizer(ファイザー)/BioNTech(ビオンテック)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防ワクチンBNT162b2の接種が進むイスラエルの医療従事者およそ9,000人(9,109人)を調べたところ、その1回目接種後15~28日のCOVID-19発症は非接種に比べて85%少なくて済みました11,12)。接種から1~14日のCOVID-19発症も47%少なく、非接種のおよそ半分で済みました。PCR検査でのSARS-CoV-2検出率も非接種群に比べて低下しました。1回目接種から1~14日には30%、15~28日には75%低下しています。1回目接種からすぐにCOVID-19が減った今回の結果を受けて著者はワクチンや人手不足の国では2回目接種を遅らせてもよさそうだと示唆しています11)。参考1)Batty GD,et al. BMJ. 2020 Feb 12;368:m131. 2)Deja brew? Another shot for lovers of coffee / EurekAlert3)Zhou A, et al. Clin Nutr. 2021 Jan 11:S0261-5614,00014-5. [Epub ahead of print]4)Thelle DS, et al. N Engl J Med. 1983 Jun 16;308(24):1454-7.5)Tverdal A, et al. BMJ. 1990 Mar 3;300:566-9.6)Urgert R, et al. J R Soc Med. 1996 Nov;89:618-23.7)Weusten-Van der Wouw MP, et al.J. Lipid Res. 1994. 35: 721-733.8)Salonen JT, et al.Prev Med. 1987 Sep;16:647-58.9)Tverdal A, et al. Eur J Prev Cardiol. 2020 Dec;27:1986-1993. 10)Correa TA, et al. Nutrition. 2013 Jul-Aug;29:977-81.11)Amit S,Lancet. February 18, 2021. [Epub ahead of print]12)Study finds first COVID vaccine dose lowers disease risk 30% to 85% / University of Minnesota

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認知症介護者の人道的負担~日本の大規模横断研究

 急速な高齢化社会へ進む日本では、認知症やアルツハイマー病の有病率の増加に伴い、介護者の必要性が高まっている。岐阜薬科大学の大野 慎也氏らは、日本での認知症やアルツハイマー病の介護者における人道的負担について、それ以外の介護者との比較を行った。Journal of Medical Economics誌2021年号の報告。 日本の健康調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の2018年のデータを用いて、横断的研究を行った。対象は、認知症やアルツハイマー病の介護者805人、それ以外の介護者1,099人、非介護者2万7,137人。アウトカムの指標は、健康関連QOL尺度(HRQoL)であるSF-12、健康状態を評価するEQ-5D、健康が生産性や活動に及ぼす影響、うつ病と不安症の評価とした。群間比較を行うため、潜在的な交絡因子で調整した後、多変量解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・認知症かそれ以外かにかかわらず介護者は、非介護者よりも、HRQoL、EQ-5Dスコアが低く、全活動障害が多く、不安を経験する傾向が認められた。・日常生活動作(ADL)については、基本的ADLおよび手段的ADLへの影響は、認知症介護者とそれ以外の介護者との間で有意な差は認められなかった。・認知症介護者は、それ以外の介護者よりも、治療の決定や財政的マネジメントと深い関わりが認められた。・患者の居住環境をみると、1人の患者をケアしている認知症介護者において、施設入所は282人、地域社会居住は395人であった。・地域社会居住患者の認知症介護者では、基本的ADLおよび手段的ADLへの影響が大きかった。・認知症とがんの両方を有する患者の介護者は、どちらか一方を有する患者の介護者よりも、介護負担がより大きかった。 著者らは「日本において認知症やアルツハイマー病介護者の人道的負担は、患者の生活環境や合併症に影響されることが示唆された。介護者の負担を軽減するためにも、効果的なケアサポートの提供は不可欠である」としている。

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NSCLC1次治療、ペムブロリズマブへのイピリムマブ上乗せは効果示せず/JCO

 PD-1阻害薬のニボルマブでは、CTLA-4阻害薬イピリムマブとの併用で非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療の有効性の向上を示している。同じくPD-1阻害薬であるペムブロリズマブにおいても、イピリムマブを追加することで有効性が改善するのか。PD-L1(TPS)50%以上のNSCLC集団において、ペンブロリズマブとイピリムマブの併用とペムブロリズマブ単剤を比較した第III相KEYNOTE-598試験の結果が、Journal of Clinical Oncology誌2021年1月29日号で発表された。対象:TPS≧50%の転移のあるNSCLC試験群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週ごと̟+イピリムマブ1mg/kg 6週ごと 18サイクルまで(P+I群)対照群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週ごと+プラセボ 6週ごと 18サイクルまで(P群)評価項目:無増悪生存期間(PFS) 主な結果は以下のとおり。・各群に284例が無作為に割付けられた・P+I群の0S中央値は21.4カ月、P群は21.9カ月であった(HR:1.08、95%CI:0.85~1.37、p=20.74)。・P+I群のPFS中央値はP+I群8.4ヵ月、P群は8.4ヵ月であった(HR:1.06、95%CI:0.86~1.30. p=0.72)。・ Grade3~5の有害事象発現はP+I群62.4%、P群50.2%であった。 ペムブロリズマブへのイピリムマブの追加は、有効性を改善せず、有害事象はペムブロリズマブ単剤より頻度が高い結果となった。

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『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』発刊―肝線維化の早期発見へ

 日本消化器病学会と日本肝臓学会が合同制作した『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』が2020年11月に発刊された。今回5年ぶりの改訂を迎えたNAFLD/NASH診療ガイドラインには、非ウイルス性肝疾患、とくに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の増加を背景とした診療の進歩が取り入れられている。そこで今回、作成委員長を務めた徳重 克年氏(東京女子医科大学消化器病センター消化器内科 教授・講座主任)にNAFLD/NASH診療ガイドラインの改訂ポイントや活用方法を伺った。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020、非専門医にも活用意義あり 今回のNAFLD/NASH診療ガイドライン改訂における注目ポイントは、NAFLDの進展に深く関わっている『肝線維化進展例の絞り込み』『脳・心血管系疾患リスクの絞り込み』に関するフローチャートやClinical Question(CQ)が追加された点である。 NAFLD/NASHの予後や肝硬変への病態進展に影響を及ぼす肝線維化は、診断時に肝生検を要するなど非専門医による診断が難しく取りこぼしの多い病態であった。しかし、肝線維化の有病率は日本でもNAFLDの増加に比例し、線維化ステージ3以上のNAFLDは2016年時点で66万人、2030年では99万人に達すると予測されているくらい深刻な状況である(BQ1-2:NAFLD/NASHの有病率は増加しているか?)。また、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病、高齢化が線維化進展のリスクであることから、このような患者を診察する非専門医にも「NAFLD/NASH診療ガイドラインを役立ててほしい」と徳重氏は話した。 そこで、今回のNAFLD/NASH診療ガイドライン2020より肝線維化進展例の絞り込みフローチャートを非専門医向け(1)と専門医向け(2)の2種類設けることで、それぞれの視点で線維化を評価できるようになっている。今回のフローチャート作りでは「肝線維化を拾い上げ、早期治療に介入できることで肝硬変や肝がんへの進展を抑え込む」ことを目的としているため、非専門医と専門医の評価方法を分けることで評価時の負担軽減につながる工夫もなされている。たとえば、評価時のネックになっていたエラストグラフィや肝生検を、かかりつけ医らによる1次スクリーニングではFIB-4 indexや線維化マーカー(ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S…)に留めている。これについて、「FIB-4 indexは血液検査の4項目(AST、ALT、血小板数、年齢)から算出されたデータを基に線維化の進展を評価する方法。肝線維化の進展を調べるのに肝生検を全例に実施するのは現実的ではないが、このスコアリングシステムを用いれば、おおよその予後をステージ区分できたり、肝生検実施の絞り込みを行ったりするのに役立つ。さらには非専門医が専門医へコンサルテーションする手立てにも有用」と同氏はこの評価基準に期待を示した。一方で、「80歳以上の高齢者やアルコール性肝疾患はスコアの整合性がとれないためFIB-4 indexの使用は控えたほうが良い」とデメリットも挙げた(CQ3-3:NAFLD/NASH患者の肝線維化進行度の評価に血液学的バイオマーカーおよびスコアリングシステムは有用か?)。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では心血管リスク考慮のフローチャートが追加 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020の第5章『予後、発癌、follow up』のBackground Question(BQ)で述べられているように、NAFLDでは心血管イベントのリスクが増加すると多数報告されている。これを踏まえ、肝線維化の程度に応じ、肝関連疾患(肝硬変・肝がん)だけではなく心血管イベントなどを考慮したフォローが必要であることが明記、フローチャートが追加された(CQ5-1 NAFLD/NASHのfollow upは、どのように行うのが適当か?)。これについては、「心血管リスクが現段階でなかったとしても、前述のFIB-4 indexを活用して2~3年ごとに確認を行ってほしい」と説明した。SGLT2阻害薬やGLP-1アナログほか、将来に期待する薬剤多数 NASH症例は患者の約50%以上が肥満である。それを逆手にとり、現在では体重減少作用のあるSGLT2阻害薬や糖尿病治療薬GLP-1アナログを使用したNAFLDに対する治験が進行中である。SGLT2阻害薬は血液生化学検査での改善や脂肪肝の減少が見られることからNAFLD/NASH患者に対し弱い推奨(CQ4-5 SGLT2阻害薬はNAFLD/NASHに有用か?)、GLP-1アナログは血液生化学検査や肝組織検査でも有用性が示されているもののデータ不十分なため、現時点では糖尿病を有するNASH患者において、弱い推奨となっている(CQ4-6 GLP-1アナログ、DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬はNAFLD/NASHに有用か?)。今後、多数例での検討結果が期待される。 このほか、将来性のある薬剤として、高脂血症治療剤ペマフィブラート(商品名:パルモディア)をはじめ14品目の臨床研究が進行中である。同氏は「ペマフィブラートは国内治験のサブ解析でも肝機能改善効果が得られているので、脂質異常症を併存する患者に使用するのは有用ではないか」とコメントした。NAFLD/NASHの線維化が進行した肝がんスクリーニングに課題 NAFLD/NASHの線維化が進行すれば肝がんを発症しかねないが、その発症率の少なさや医療経済的な側面が壁となり全症例への肝がんスクリーニングはそぐわないという。それゆえ、これまで同氏が述べてきたような線維化の早期発見や線維化進展抑制のための治療が功を奏する。“沈黙の臓器”の所以ともいえる自覚症状なき肝臓の線維化。その進展食い止めの重要性を強調してきた同氏は、「ぜひ、肝線維化の理解を深めてもらいたい」と述べるとともに「より簡便な肝がんスクリーニング方法の確立を目指したい」と締めくくった。

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cemiplimab単独療法、PD-L1≧50%進行NSCLCのOSとPFSを延長/Lancet

 未治療のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現率≧50%の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、cemiplimab単剤療法はプラチナ製剤ベースの2剤併用化学療法と比較して、全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、1次治療の新たな選択肢となる可能性があることが、トルコ・バシケント大学のAhmet Sezer氏らが行った「EMPOWER-Lung 1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年2月13日号に掲載された。cemiplimabは、PD-1に直接的に作用する強力な完全ヒト・ヒンジ安定化IgG4モノクローナル抗体。根治的手術や根治的放射線治療が適応とならない転移を有する/局所進行皮膚有棘細胞がんの治療薬として米国などで承認されており、進行固形腫瘍では他のPD-1阻害薬と同程度の抗腫瘍活性と安全性プロファイルが確認されている。24ヵ国138施設の無作為化第III相試験 研究グループは、進行NSCLCの1次治療におけるcemiplimabの有用性を評価する目的で、国際的な非盲検無作為化対照比較第III相試験を実施した(Regeneron PharmaceuticalsとSanofiの助成による)。2017年6月~2020年2月の期間に、24ヵ国138施設で患者登録が行われた。 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的にStageIIIB/IIIC/IVのNSCLCと確定され、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。生涯非喫煙者は除外された。 被験者は、cemiplimab(350mg、3週ごと)またはプラチナ製剤ベース2剤併用化学療法薬の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法群の患者は、病勢進行後にcemiplimabへのクロスオーバーが許容された。 主要エンドポイントは、マスクされた独立審査委員会の評価によるOS期間およびPFS期間とし、intention-to-treat(ITT)集団および米国食品医薬品局(FDA)の要請で事前に規定されたPD-L1発現率≧50%の集団で評価された。有害事象の評価は、少なくとも1回の投与を受けたすべての患者で行われた。死亡リスクが43%低減、2年OS率は50% 710例(ITT集団)が登録され、cemiplimab群に356例(年齢中央値63歳、女性12%)、化学療法群には354例(64歳、17%)が割り付けられた。このうちPD-L1発現率≧50%の患者は563例で、cemiplimab群283例(63歳、12%)、化学療法群280例(64歳、18%)だった。化学療法群の病勢進行例は203例で、このうち150例(74%)がクロスオーバーとしてcemiplimabの投与を受けた。 PD-L1発現率≧50%の集団におけるOS期間中央値は、cemiplimab群が未到達(95%信頼区間[CI]:17.9~評価不能)、化学療法群は14.2ヵ月(11.2~17.5)であり、ハザード比(HR)は0.57(0.42~0.77)と、cemiplimab群で有意に良好であった(p=0.0002)。また、2年OS率は、cemiplimab群50%(36~63)、化学療法群27%(14~43)だった。 同集団のPFS期間中央値は、cemiplimab群が8.2ヵ月(95%CI:6.1~8.8)と、化学療法群の5.7ヵ月(4.5~6.2)に比べ有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.43~0.68、p<0.0001)。また、1年PFS率は、cemiplimab群41%(34~48)、化学療法群7%(4~12)だった。 同集団の客観的奏効率は、cemiplimab群が39%(111/283例、CR:6例[2%]、PR:105例[37%])、化学療法群は20%(57/280例、3例[1%]、54例[19%])であり(オッズ比[OR]:2.53、95%CI:1.74~3.69、p<0.0001)、奏効期間中央値はそれぞれ16.7ヵ月および6.0ヵ月であった。 一方、ITT集団でも、高いクロスオーバー率(74%)にもかかわらず、OS期間中央値(22.1ヵ月[95%CI:17.7~評価不能]vs.14.3ヵ月[11.7~19.2]、HR:0.68[95%CI:0.53~0.87]、p=0.0022)およびPFS期間中央値(6.2ヵ月[4.5~8.3]vs.5.6ヵ月[4.5~6.1]、0.59[0.49~0.72]、p<0.0001)は、いずれもcemiplimab群で有意に良好であった。 治験薬投与中に発現したGrade3/4の有害事象は、cemiplimab群が28%(98/355例)、化学療法群は39%(135/342例)で認められ、cemiplimab群では肺炎(16例[5%])、貧血(12例[3%])、低ナトリウム血症(9例[3%])の頻度が高く、化学療法群では貧血(56例[16%])、好中球減少(35例[10%])、血小板減少(28例[8%])が高頻度にみられた。 著者は、「探索的解析では、PD-L1発現の増加と良好な転帰に相関が認められ、有効性の腫瘍バイオマーカーとしてのPD-L1のエビデンスがもたらされた」としている。

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チューインガムは心不全の口渇感を減らす【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第181回

チューインガムは心不全の口渇感を減らすいらすとやより使用前回から引き続き、チューインガムの論文です。まさか心不全にも有効とは、もはや万能のお菓子ですやん!チューインガム、マストバイ!Allida SM, et al.A Randomised Controlled Trial of Chewing Gum to Relieve Thirst in Chronic Heart Failure (RELIEVE-CHF)Heart Lung Circ . 2020 Oct 5;S1443-9506(20)30480-7.慢性心不全の患者さんでは、口渇感に悩まされる人が結構います。ガブガブ飲んでしまうと心不全が悪化してしまうこともあって、さらなる悪循環に陥ります。そんなときに!チューインガム!いや、本当かな……。疑念を抱きつつ、論文を読んでみることにしました。これは経口ループ利尿薬を内服している慢性心不全の患者さん71人を集めた、前向きランダム化比較試験です。おおお、なんかチューインガムが素晴らしいものに見えてくる。ランダム化から短期間(平均24時間~7日)と長期間(ランダム化7日~28日目)の口渇感を比較しました。結果、チューインガム群の患者さんは、4日目、14日目のいずれの時期においても、有意に口渇感が減ることがわかりました(VAS:p=0.04、p=0.02)。画像を拡大する唾液を分泌させて、うまく身体をごまかしているのかどうかは定かではありませんが、口渇感の解消のためにたくさん水を飲まれるより、はるかにマシです。ただ、ガムにハマりすぎて激ヤセしたチューイングダイエット事例も報告されているので1)、過ぎたるは及ばざるがごとし、ほどほどに噛んでもらうくらいでよいと思います。1)Bauditz J, et al. Severe weight loss caused by chewing gum. BMJ. 2008 Jan 12;336(7635):96-7.

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前立腺がんの心血管・死亡リスク、経皮エストロゲンvs.LHRHa/Lancet

 進行前立腺がん患者において、エストラジオールの経皮投与(tE2)パッチによる治療と黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬(LHRHa)による治療で、心血管疾患または死亡の発生に差は示唆されなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRuth E. Langley氏らが、英国の52施設で実施した多施設共同無作為化第II/III相試験「Prostate Adenocarcinoma Transcutaneous Hormone trial:PATCH試験」における長期的な心血管追跡調査データを報告した。アンドロゲン抑制は前立腺がん治療の柱であるが、長期毒性が問題となる。tE2は肝初回通過効果を受けないため、経口エストラジオールでみられる心血管毒性や、LHRHaでみられるエストロゲン枯渇効果を避けられると考えられていた。Lancet誌2021年2月13日号掲載の報告。局所進行・転移のある前立腺がん患者1,694例を追跡 研究グループは、局所進行・転移のある前立腺がん患者1,694例を、LHRHa群またはtE2パッチ群のいずれかに、病期、年齢、喫煙状況、心血管疾患の家族歴などで層別化し無作為に割り付けた(2007年8月14日~2011年2月17日までは1対2、その後は1対1)。 LHRHaは各施設の診療に従って投与し、tE2パッチは100μg/24時間パッチ4枚を最初の4週間は週2回交換、4週後にテストステロンが去勢レベル(≦1.7nmol/L)に達した場合は3枚を週2回交換に減量した。 主要評価項目は、心血管疾患(心不全、急性冠症候群、血栓塞栓性脳卒中、および他の血栓塞栓性イベントなど)および死亡であった。tE2パッチとLHRHaで心血管転帰に有意差なし 2007年8月14日~2019年7月30日の期間に、計1,694例がLHRHa群(790例)またはtE2パッチ群(904例)に無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は3.9年(四分位範囲2.4~7.0年)であった。 1ヵ月および3ヵ月時点での去勢率は、LHRHa群でそれぞれ65%および93%、tE2パッチ群で83%および93%であった。 事前に定義された基準を満たす心血管イベントは、153例・計167イベントが報告された。致死的心血管イベントは、1,694例中26例(2%)に認められた(LHRHa群15例[2%]、tE2パッチ群11例[1%])。心血管イベントの初回発生までの期間は、治療間で差はなかった(検視報告書なしの突然死を含む場合のハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[CI]:0.80~1.53、p=0.54、検視報告書が確認された場合のみのHR:1.20、95%CI:0.86~1.68、p=0.29)。 tE2パッチ群での心血管イベント89件中30件(34%)が、tE2パッチを中断あるいはLHRHaへ変更後3ヵ月以降に発生した。主な有害事象(全グレード)は、女性化乳房(LHRHa群38% vs.tE2パッチ群86%、p<0.0001)、ホットフラッシュ(LHRHa群86% vs.tE2パッチ群35%、p<0.0001)であった。

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中国本土の研究者が書いた原著論文の8割が重複出版だった(解説:折笠秀樹氏)-1356

 スタチンによる心血管イベント抑制の効果は今では周知ですが、それが診療ガイドラインで推奨されるようになったのは2008年ごろのようです。それは累積メタアナリシスでも確認済みのようです。 原著論文は、過去の研究論文と重複してはいけません。新規の結果を示すのが原則だからです。そうでないと、それは重複出版(redundant publication)といわれます。本研究は、中国本土の研究者が書いた原著論文で、80%が重複出版に相当することを示したのです。2008年以降に上記と同じ効果を示す論文があったら、それは重複出版としたようです。すでにコンセンサスになっている結果を、原著論文として出版するのは研究者倫理に反します。ふつうなら、すでに明らかになっていることを結語した論文を投稿しても、それは既知だとして却下になるはずです。 今回は中国本土の研究者に限っていますが、それにしても重複出版が80%もあったのは大問題です。それらの論文では、96%が財源を明示していませんでした。87%はIRB承認を報告していませんでした。そして、中国語で書かれた論文が99.7%ありました。ほぼすべてです。いい加減な論文がまん延していることがわかります。これをみて、日本人著者は大丈夫かなと心配してしまいました。でも、このような新薬に関する臨床試験を、日本語の論文として出版する研究者はいなくなったのではないでしょうか。ただ、一昔前(2000年以前)までは治験論文を中心に、日本語で書かれた原著論文はたくさんありました。試験の品質は悪かったかもしれませんが、このような重複出版はなかったと信じています。 なんといっても、著者に中国人が入っていたのにはびっくりしました。もちろん、米国に住む中国人です。中国人が著者にいたため、中国語のデータベースを調査できたものと思います。ふつうの人なら、中国語は読めないからです。粛清されないか心配です。帰国しないほうが身のためでしょうね。 先端分野について、英語以外で書かれた論文はほとんど見向きもしなくなりました。今回怪しげな中国の論文が見つかったわけですが、誰も読まなければ害はなさそうに思います。ただ、それが英語論文で引用されると別の問題が生じるかもしれません。

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FDA、再発/難治性大細胞型B細胞リンパ腫の新CAR-T療法lisocabtagene maraleucelを承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年2月5日、米国食品医薬品局(FDA)が、原発性中枢神経系リンパ腫を除く、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)非特定型(インドレントリンパ腫に起因するものを含む)、高悪性度B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、およびグレード3B濾胞性リンパ腫を含む、2種類以上の全身療法による治療歴を有する再発または難治性(R/R)の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の成人患者の治療薬として、CD19を標的とするCAR-T細胞療法のliso-cel(lisocabtagene maraleucel、海外商品名:Breyanji)を承認したと発表。 liso-celは、あらかじめ定められた成分と4-1BB共刺激ドメインを有するCD19を標的とするCAR T細胞療法。3次治療以降のLBCLリンパ腫を対象とした最大のピボタル試験であるTRANSCEND NHL 001試験において、73%の奏効割合率および54%の完全奏効(CR)割合を示した。

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肺血栓塞栓症はCOPD増悪の原因と考えてよいか?(解説:山口佳寿博氏)-1355

 まず言葉の定義から考えていく。COPDの分野にあって、“急性増悪”という言葉が使用されなくなって久しい。現在では、単に“増悪(Exacerbation)”という言葉を使用する。さらに、増悪は“気道病変(炎症)の悪化を原因とする呼吸器症状の急性変化”と定義される(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD) 2006以降)。GOLD 2003では、増悪は狭義のもの(一次性原因)と広義のもの(二次性原因)の2種類に分類されたが、GOLD 2006以降では、気道病変(炎症)の悪化を原因とする“狭義の増悪”を“増悪”と定義し、それ以外の原因に起因する“広義の増悪”は増悪ではなく“増悪の鑑別診断/修飾因子”として考慮することになった(肺炎、肺血栓塞栓症、気胸、胸部外傷、胸水、心不全/不整脈、麻薬/鎮静剤、β blocker。GOLD 2011以降では、麻薬/鎮静剤、β blockerが鑑別から除外)。増悪の定義が厳密化されたのは、増悪様症状を示した症例のうち80%以上が感染性(気道感染)、非感染性(環境汚染など)による気道炎症の悪化に起因し、それに対してSteroid、抗菌薬を中心とした基本的治療法が確立されたためである。その意味で、肺血栓塞栓症(PTE:Pulmonary thromboembolism)は増悪を惹起する原因ではなく、増悪の鑑別診断となる病態であることをまず理解していただきたい。 COPDとPTEの合併に関しては古くから多くの検討がなされ、COPD患者におけるPTEの合併率は、19%(Lesser BA, et al. Chest. 1992;102:17-22.)から23%(Shetty R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2008;26:35-40.)と報告されている。これらのPTE合併頻度は本邦の一般人口におけるPTEの発症頻度(剖検例での検討:無症候性の軽症を含め18~24%)とほぼ同等であり、COPD自体がPTE発症を助長しているわけではない。しかしながら、原因不明のCOPD増悪(一次性原因と二次性原因を含む)症例を解析した論文では、その3.3%(Rutschmann OT, et al. Thorax. 2007;62:121-125.)から25%(Tillie-Leblond I, et al. Ann Intern Med. 2006;144:390-396.)にPTEの合併を認めたと報告された。本論評で取り上げたCouturaudらの論文では、COPD増悪様症状を呈した症例の5.9%にPTEの合併を認めたと報告されている(Couturaud, et al. JAMA. 2021;325:59-68.)。これら3論文を合わせて考えると、増悪様症状を呈したCOPD患者のうち少なくとも10%前後に、二次性原因としてのPTEが合併しているものと考えなければならない。以上の解析結果は、安定期COPDはPTEの発生要因にはならないが、COPDの増悪様症状を呈した患者にあってはPTEに起因するものが少なからず含まれ、COPDの真の増悪(一次性増悪)の鑑別診断としてPTEは重要であることを示唆する。PTEの合併はCOPD患者のその後の生命予後を悪化させ、1年後の死亡率はPTE合併がなかったCOPD患者の1.94倍に達する(Carson JL, et al. Chest. 1996;110:1212-1219.)。 Couturaudらのものを含め現在までに報告された論文からは、COPDの真の増悪とPTEとの関連を明確には把握できない。COPDの増悪がPTEの危険因子となる、あるいは、逆にPTEの合併がCOPDの真の増悪をさらに悪化させるかどうかを判定するためには、増悪様症状を呈したCOPD患者を真の増悪(一次性原因)とそうでないもの(二次性原因)に分類し、各群でPTEの発症頻度を評価する必要がある。COPDの真の増悪は、一秒量(FEV1)関連の閉塞性換気指標の悪化、喀痰での好中球、好酸球の増加、喀痰中の微生物の変化などから簡単に判定できる。これらの変化は、PTEなどの二次性原因では認められないはずである。以上のような解析がなされれば、COPDの真の増悪とPTE発症の関係が正確に把握でき、COPDの真の増悪がPTE発症の危険因子として作用するか否かの問題に決着をつけることができる。今後、このような解析が世界的になされることを念願するものである。本邦のPTEガイドライン(cf. 10学会合同の『肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症[静脈血栓塞栓症]予防ガイドライン』[2004])では、COPDの増悪がPTEの危険因子の1つとして記載されているが、この場合の増悪がいかなる意味で使用されているのか、再度議論される必要がある。

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第25回 その吐血、緊急内視鏡は必要ですか?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)上部消化管出血を疑うサインを知ろう!2)緊急内視鏡の判断を適切に行えるようになろう!【症例】45歳男性。自宅で洗面器1杯分の吐血を認めたため、両親の運転する車で救急外来を受診した。独歩可能な状態で、その後吐血は認めていない。どのようなマネジメントが適切だろうか?●受診時のバイタルサイン意識清明/JCS血圧128/51mmHg脈拍95回/分(整)呼吸20回/分SpO297%(RA)体温36.0℃瞳孔3/3 +/+既往歴高血圧内服薬定期内服薬なしはじめに吐血を主訴に救急外来を受診する患者さんは多く、救急外来が血の海になることも珍しくありません。バイタルサインの管理、内視鏡のタイミング、輸血のタイミングなど悩んだ経験があるのではないでしょうか?今回はまず押さえておくべき上部消化管出血の管理についてまとめておきます。上部消化管出血を疑うサインとは新鮮血の吐血やコーヒー残渣様の嘔吐を認める場合には、誰もが上部消化管出血を疑うと思いますが、それ以外にはどのような場合に疑うべきでしょうか。黒色便、鉄欠乏性貧血などは有名ですね。救急外来などの外来で見逃しがちなのが、訴えがはっきりしない場合です。脱力など自宅で動けない、元気がない、倦怠感などの主訴で来院した場合には、消化管出血に代表される出血性病変を考えるようにしましょう。その他、急性冠症候群、カリウムやカルシウムなどの電解質異常、そして敗血症や菌血症を考えるとよいでしょう。[失神・前失神を見逃すな]失神は以前に「第13回 頭部外傷その原因は?」でも取り上げましたが、診察時には状態は安定しており重症度を見誤りがちです。しかし、心血管性失神を見逃してしまうと致死的となり得ます。また、出血に伴う起立性低血圧も対応が遅れれば、予後はぐっと悪くなってしまうため必ず出血源を意識した対応が必要になります。ちなみに、前失神は失神と同様に危険なサインであり、完全に意識を失っていなくても体内で起こっていることは同様であり軽視してはいけません。意識を失ったか、失いそうになったかは必ず確認しましょう。緊急内視鏡の適応は?目の前の上部消化管出血疑い患者さんの内視鏡はいつ行うべきでしょうか?ショックバイタルでマズい場合には誰もが緊急内視鏡が必要と判断できると思いますが、本症例のように、一見するとバイタルサインが安定している場合には意外と判断は難しいものです。いくつかの指標が存在しますが、今回は“Glasgow Blatchford score(GBS)”(表1)を覚えておきましょう。GBS≦1の場合には入院の必要性はなく、緊急での対応は一般的には不要です1,2)。前述した通り、失神は重要なサインであり、点数も2点と黒色便よりも高く設定されています。失神を認める上部消化管出血は早期の内視鏡治療が必要と覚えておきましょう。1分1秒を争うわけではありませんが、血圧が普段よりも低めであるが故に止まっているだけですので、処置を行うことなく帰宅の判断はお勧めできません。表1  Glasgow Blatchford score(GBS)画像を拡大するちなみに、Hb値は濃度であり、また早期に変化は認められないため、Hb値が問題ないからと出血はたいしたことないと判断してはいけません。黒色便を認める場合には、数日の経過が経っていることが多く、Hb値も普段よりも低下しています。GBSも2点以上となりますが、即刻内視鏡なのか、24時間以内に内視鏡なのか、より具体的な緊急度は、その他バイタルサインやNSAIDs、抗血栓薬などのリスク因子も考慮し判断します。[抗血栓薬内服中の患者ではどうする?]絶対的な指標はありませんが、頭部外傷患者の対応と同様に、内服しているから緊急かというとそうではありません。しかし、リスクの1つではあるため、具体的な処方薬と用量、内服している理由、効果の評価(PT-INRなど)などと共に慎重な経過観察が必要となります。抗血栓薬を止めるのは簡単ですが、そのおかげで脳梗塞などを引き起こしてしまっては困りますよね。明らかな出血を認めている場合に内服を中止することはもちろんですが、その後の具体的な対応をきちんと決めておく必要があります。GBS以外の有名なリスクスコアに“AIMS65”(表2)がありますが、それにはPT-INRの項目が含まれており、緊急度に関わるとされます3)。また、PT-INRが1.5未満であってもDOAC(Direct oral anticoagulants)内服中の患者では、早期の内視鏡が推奨されています。そのような理由から、抗血栓薬を内服している患者さんでは、早期の内視鏡(24時間以内)を行うのが理想的でしょう。※GBSもAIMS65も覚えるのは大変ですよね。私は“MDCalc”というアプリをスマホに入れて計算しています。表2 AIMS65画像を拡大する現実問題として、夜間や時間外などに来院した患者の内視鏡をすぐに行うのか、一晩様子をみてOKなのかどうかを判断する必要があります。上記の内容を頭に入れつつ、施設毎の対応を構築しておきましょう。消化器内科医師などがいつでもすぐに対応可能な施設であれば、GBS≧2でも輸液や輸血でバイタルサインが安定している場合には一晩待てるかもしれませんが、そうではない場合には、「GBSで◯点以上の場合」、「肝硬変患者の吐血の場合」、「抗血栓薬を内服している場合」には緊急で行うなど、具体的なプランを立てておくとよいでしょう。スコアは絶対的なものではありませんが、GBSやAIMS65などを意識しておくと、確認すべき項目を見落とさなくなるでしょう。失神の有無は前述の通り重要ですし、抗血栓薬などの影響から凝固線溶機能に異常を来している場合には拮抗薬など追加の対応が必要なこともありますからね。最後に、上部消化管出血に伴い緊急内視鏡の判断をした場合には、気管挿管など気道の管理が必要ないかは必ず意識してください。ショックや重度の意識障害は気管挿管の適応であり、バイタルサインが不安定な場合には確実な気道確保目的の気管挿管が必須となります。慌てて内視鏡室へ移動し、不穏になり急変、誤嚥して酸素化低下などは避けなければなりません。救急外来で人数をかけ対応することができればベストですが、どうしても少ない人数で対応しなければならない場合には、確実な気道確保を行い万全の状態で内視鏡を行うようにしましょう。まとめ失神・前失神を伴う上部消化管出血は緊急性が高い!GBSやAIMS65を参考に、患者背景・薬の内服理由も考慮し対応を!緊急内視鏡を行う場合には、気管挿管など気道管理の徹底を!1)Blatchford O, et al. Lancet. 2000;356:1318-1321.2)Stanley AJ, et al. BMJ. 2017;356:i6432.3)Saltzman JR, et al. Gastrointest Endosc. 2011;74:1215-1224.

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前立腺がん・膵がんでオラパリブをどう使うか、遺伝子検査の位置付けは?

 前立腺がん、膵がん、卵巣がんに対し、PARP阻害薬オラパリブ(商品名:リムパーザ)が2020年12月25日に追加承認を取得した。同薬が初めて承認された前立腺がん、膵がんにおける治療の実際について、1月20日オンラインメディアセミナー(共催:アストラゼネカ、MSD)が開催され、大家 基嗣氏(慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室)、池田 公史氏(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)が登壇。各領域におけるオラパリブの使い方、遺伝子検査の位置付けについて講演した。オラパリブの適応取得の根拠となった第III相試験の結果 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は、診断後の生存期間は約3年程度とされ、予後不良な病態である。さらに、CRPCになると治療への抵抗性に関係してさまざまな遺伝子変異が発生することが知られ、なかでもDNAの修復に関わるBRCA遺伝子に変異があると、さらに予後が不良となる。進行前立腺がんでは、5~6人に1人程度の割合(18%)で、BRCA1/2遺伝子に変異が生じているとされ、遺伝によるもの(生殖細胞系列変異)と後天的に生じたもの(体細胞変異)がそれぞれ約半数ずつ含まれると報告されている1)。 今回オラパリブが適応となったのは、「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん」。オラパリブの適応取得の根拠となった第III相PROfound試験では、アンドロゲン受容体標的薬(ARAT)が無効となったBRCA遺伝子変異陽性の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん患者(160例)において、画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)中央値を、エンザルタミドまたはアビラテロン(ARAT)投与群3.0ヵ月に対しオラパリブ投与群では9.8ヵ月と延長した(ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.15~0.32)。全生存期間(OS)中央値についても、ARAT投与群14.4ヵ月に対しオラパリブ投与群20.1ヵ月と延長している(HR:0.63、95%CI:0.42~0.95)。 同試験でのオラパリブ投与群の主な有害事象は、貧血、悪心、食欲減退、疲労、下痢など。大家氏は「副作用は非常に穏やかな印象」とし、経口薬でもあり、適応の患者さんには確実に届けていきたいと話した。ただし、適切な対処と定期的なモニタリングが必要な副作用として、貧血、血小板減少、リンパ球減少、白血球減少、間質性肺疾患を挙げた。オラパリブの適応を判断する2つの検査法 オラパリブの適応を判断するコンパニオン診断としては、体細胞変異と生殖細胞系列変異を検出するFoundationOne CDx、生殖細胞系列変異を検出するBRACAnalysisの2つの検査法が承認されている。体細胞変異と生殖細胞系列変異が約半数ずつとされる前立腺がんでは両方を検査したいところだが、FoundationOne CDxを使った場合、コンパニオン診断として使用しただけでは、医療機関の持ち出し分が発生してしまう。オラパリブを含めた標準治療終了(見込み)後にエキスパートパネルを開催し、患者への結果説明まで行うと持ち出し分は発生しない。このため大家氏は、「事務系含め病院内でのコンセンサスを得たうえで、患者さんを長くフォローできるようシステムを構築しておく必要がある」と述べた。 また遺伝子検査を行うタイミングについて、日本泌尿器科学会では見解書2)をホームページに掲出している。「ARAT1剤が抵抗性になった時点で行うというのが学会としての見解」と同氏。学会からは厚生労働省へ要望書も提出しているという。「医療機関側の持ち出しが発生するような形ではなくFoundationOne CDxが活用可能となるよう、注力していきたい」と話した。膵がんに対するオラパリブの適応取得の根拠 膵がん患者の5年生存割合は10%未満と報告されており3)、がんの中で最も予後が悪い。今回承認された、膵がんに対するオラパリブの適応は、「BRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法後の維持療法」。プラチナ製剤を含む化学療法(16週以上)後に病勢進行が認められていない (CR、PR、SD)患者に対する維持療法として使用できる。なお、固形がんにおけるBRCA遺伝子変異陽性割合をがん種ごとに調べた研究では、膵がん患者の5.2%が陽性であったと報告されている4)。膵がんでは、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異(gBRCA)のみを対象として承認されている。 オラパリブの適応取得の根拠となった第III相POLO試験は、gBRCA遺伝子変異陽性で、プラチナ製剤を含む一次化学療法後に疾患進行が認められていない、遠隔転移を有する膵腺がん患者(154例)が対象。主要評価項目であるPFS中央値を、プラセボ群3.8ヵ月に対しオラパリブ投与群では7.4ヵ月と有意に延長した(HR:0.531、95%CI:0.346~0.815)。OS中央値については、中間解析時点では、プラセボ群18.1ヵ月に対しオラパリブ投与群18.9ヵ月と両群間で有意な差は得られていない(HR:0.906、95%CI:0.563~1.457)。ただし、オラパリブ群で生存曲線が後半になるにつれ若干伸びてきている傾向がみられ、1月開催のASCO GIで発表されたアップデートデータでは、よりオラパリブ群で良好な傾向が報告されている。 同試験でのオラパリブ投与群でみられた主な有害事象は、疲労、悪心、腹痛、下痢、貧血、食欲減退、便秘。しかしGrade3以上の有害事象は少なく、「忍容性は高いと考えられる」と池田氏はコメントした。膵がん患者でのオラパリブの適応を判断する検査結果がでるまでの治療は? 膵がん患者におけるオラパリブの適応を判断するコンパニオン診断には、生殖細胞系列変異を検出するBRACAnalysisを用いる。ここで課題となるのが、検査結果が出るまでにかかる約3週間という期間だ。「膵がんの患者さんにとって、3週間は貴重な時間」と同氏。ゲムシタビン(Gem)+ナブパクリタキセル(nab-PTX)による治療を開始しておいて、もし検査結果が陽性であればプラチナ製剤に切り替えるというのが1つの考え方とした。「Gem+ nab-PTXが効いていれば継続するという考え方もあるが、個人的には、積極的にプラチナ製剤に切り替えていっていいのではないかと考えている」と話し、その理由として、BRCA遺伝子変異陽性患者におけるプラチナ製剤の有効性が示されていること、進行してプラチナ製剤が使えなくなると治療法が限られてしまうことを挙げた。

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