サイト内検索|page:196

検索結果 合計:10313件 表示位置:3901 - 3920

3901.

親または教師におけるADHDの診断精度

 小児や青年における注意欠如多動症(ADHD)の発見において親または教師の診断精度および親と教師における診断や症状の一致率について、トルコ・エーゲ大学のAkin Tahillioglu氏らが調査を行った。Nordic Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年2月22日号の報告。 ADHD診断が行われていないコミュニティサンプルより6~14歳の小児および青年417人を対象に、半構造化された親および教師のADHD Rating Scale-IVを用いて評価を行った。ADHDの診断を確実にするため、障害の基準を考慮した。各カテゴリーのサンプルより、感度、特異性、陽性予測値、陰性予測値、診断精度の測定値を算出した。そのうえで、親および教師の報告内容の一致率を調査した。 主な結果は以下のとおり。・ADHDの診断精度は、親と教師で同程度であった。・男児、女児それぞれにおける親と教師の診断精度に差は認められなかった。・女児では、男児よりも、親と教師の診断精度が高かった。・教育レベルの低い親では、教育レベルの高い親および教師よりも診断精度が低かった。・親と教師の報告には、低~中程度の一致と相関が認められた。 著者らは「ADHDの診断精度は、親と教師で同程度であった。しかし、子供の性別や親の教育レベルがADHD診断精度に影響を及ぼす可能性が示唆された。臨床医は、正確なADHD診断を行うために、親と教師の報告を評価することは重要であろう」としている。

3902.

汎HER阻害薬poziotinib、EGFRおよびHER2 exon20変異NSCLCに有望な評価/ESMO-TAT2021

 2021年3月1〜2日に開催されたESMO Targeted Anticancer Therapies(TAT)Virtual Congress 2021の発表によると、EGFR exon20変異を有する転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、汎HER阻害薬poziotinibは臨床的利益と許容できる安全性を示した。さらにこの研究では、EGFRまたはHER2のexon20変異を有する患者において、poziotinibの1日2回の投与が1回投与に比べ安全性プロファイルが改善される可能性があることを示した。このpoziotinibの研究はマルチコホート第II相ZENITH20試験である。・対象:[コホート3]転移のある未治療のEGFR exon20変異NSCLC患者79例[コホート5」EGFRまたはHER2 exoin20変異NSCLC患者40例・介入:[コホート3]poziotinib16 mg/日[コホート5」poziotinib1日1回(10、12、16mg/回)と1日2回(6mg、8mg/回)に無作為に割り付け。・評価項目:客観的奏効率(ORR)奏効期間、無増悪生存期間(PFS)および安全性 主な結果は以下のとおり。[コホート3]・追跡期間中央値9.2ヵ月時点で、79例中12例が治療を継続していた。 ・ORRは27.8%、疾患制御率は86.1%であった。・DoR中央値は6.5ヵ月であった。・ITT解析患者の91%が腫瘍縮小を示した。 ・PFS中央値は7.2ヵ月であった。・有害事象(AE)プロファイルは、第2世代EGFR-TKIと同様であった。Gade3以上のAEは皮疹が33%、下痢が23%で発現した。[コホート5]・AE発現率は16mg1日1回の31%に対し、8mg1日2回では21%、12mg1日1回の27%に対し、6mg1日2回では16%と、1日2回投与群で低かった。 これらのデータは、poziotinibの16mg/日投与が転移のある未治療のEGFR exoin20変異NSCLC患者において臨床的に意味のある活性を有することを示し、さらに、1日2回投与とすることで、忍容性と安全性が改善されたことを示唆したと、著者らは述べている。

3903.

飲酒と乳がんリスク~日本人16万人の解析

 欧米の研究から、飲酒が乳がんリスクを上昇させることが報告されている。しかし、日本人女性は欧米人女性より飲酒習慣が少なく、またアセトアルデヒドの代謝酵素の働きが弱い人が多いなど、飲酒関連の背景が欧米とは異なる。これまで日本人を対象とした大規模な研究は実施されていなかったが、今回、愛知県がんセンターや国立がん研究センターなどが共同で日本の8つの大規模コホート研究から約16 万人以上を統合したプール解析を行い、乳がんリスクと飲酒との関連を検討した。その結果、閉経前女性では飲酒により乳がん罹患リスクが上昇したことを愛知県がんセンターの岩瀬 まどか氏らが報告した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年1月26日号に掲載。 本研究には、国内の大規模コホート研究である多目的コホート研究(JPHC-I, JPHC-II)、JACC研究、大崎国保コホート研究、宮城県コホート研究、三府県宮城コホート研究、三府県愛知コホート研究、放影研寿命研究の8コホート研究が参加。それぞれのコホート研究で使用している飲酒習慣のアンケート調査結果から、飲酒習慣を頻度と量に分けて検討し、頻度は「現在非飲酒」「機会飲酒(週1日以下)」「ときどき(週1日以上4日以下)」「ほとんど毎日(週5日以上)」の4つ、量は1日飲酒量で「0g」「0~11.5g」「11.5~23g」「23g以上」の 4つのカテゴリーに分類した。年齢、地域、閉経状況、喫煙、BMI、初経年齢、出産数、女性ホルモン薬の使用、余暇の運動を調整後、非飲酒に対するその他の飲酒カテゴリーの乳がん罹患リスクを算出し、プール解析を行った。また乳がんの罹患は、閉経状態に基づき閉経前乳がんと閉経後乳がんに分け、それぞれに対する飲酒の影響を検討した。  主な結果は以下のとおり。・計15万8,164人の女性を平均14年追跡し、2,208例が新規に乳がんと診断された。・調査時の閉経状態に基づく閉経前乳がんにおいて、飲酒頻度別では非飲酒者に対する最も頻度の高い飲酒者のハザード比(HR)は1.37(1.04~1.81)、飲酒量別では1日0gの群に対する23g以上の群のHRは1.74(1.25~2.43)であった。・診断時の閉経状態に基づく閉経前乳がんにおいて、飲酒量別で1日0gの群に対する23g以上の群のHRは1.89(1.04~3.43)であった。・一方、調査時もしくは診断時での閉経状態に基づく閉経後乳がんでは、飲酒頻度、飲酒量ともに乳がんリスクとの有意な関連は認められなかった。 これらの結果から、日本人においても欧米での報告と同様に、閉経前乳がんでは飲酒が乳がんの罹患リスクを上昇させることが明らかとなった。一方、閉経後乳がんでは日本人では有意な関連が認められず、海外の結果と異なり閉経状態によって乖離がみられた。

3904.

GSK/Vir社の新型コロナ治療薬が入院・死亡リスクを85%低減、変異株にも有効か/第III相試験中間解析

 グラクソ・スミスクライン(本社:英国、以下GSK)は、3月15日、Vir Biotechnology,Inc.(本社:米国、以下Vir社)と共同開発したCOVID-19治療薬VIR-7831/GSK4182136について、第III相試験COMET-ICE(COVID-19 Monoclonal antibody Efficacy Trial-Intent to Care Early)で、入院・死亡リスクを85%低減させたとする中間解析を発表した。両社は今後、米国における緊急使用許可申請と、他国での承認申請を進める予定だ。本結果により十分な有効性が確認されたとして、3月10日、独立データモニタリング委員会が本試験への追加の被験者組み入れを中止するよう勧告した。 VIR-7831/GSK4182136は、COVID-19成人患者への早期治療薬としてGSKとVir社が共同開発したモノクローナル抗体薬。前臨床試験では、正常細胞へのウイルス侵入を防ぐと共に、感染細胞を除去する能力を高める可能性が示唆されている。 単剤療法としてのVIR-7831/GSK4182136を評価するCOMET-ICE第III相臨床試験では、入院していない患者を対象に、VIR-7831/GSK4182136(500mg)もしくはプラセボを単回静脈内投与した場合の安全性と有効性を評価した。今回の結果は、登録された583例のデータの中間解析に基づくもの。VIR-7831/GSK4182136を投与した患者群(291例)において、主要評価項目である入院もしくは死亡リスクが、プラセボ群(292例)に比べ、85%(p=0.002)低減したことが示された。VIR-7831/GSK4182136の忍容性は良好だった。 さらに新たなin vitro試験において、英国型、南アフリカ型およびブラジル型など現在懸念されている変異株に対し、VIR-7831/GSK4182136が活性を維持することが示されたという。この試験結果は、査読前の研究論文サーバー「bioRxiv」に3月10日付で掲載された。

3905.

イベルメクチン、軽症COVID-19の改善効果見られず/JAMA

 軽症COVID-19成人患者において、経口駆虫薬イベルメクチンの投与(5日間コース)はプラセボと比較し、症状改善までの期間を有意に改善しないことが示された。コロンビア・Centro de Estudios en Infectologia PediatricaのEduardo Lopez-Medina氏らが、約400例を対象に行った試験で明らかにした。イベルメクチンは、その臨床的有益性が不確実にもかかわらず、COVID-19の潜在的な治療薬として広く処方されている。著者は、「今回の試験では、軽症COVID-19へのイベルメクチンの使用を支持する所見は認められなかった。さらなる大規模な試験を行い、イベルメクチンの他の臨床関連アウトカムの効果を明らかにする必要があるだろう」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年3月4日号掲載の報告。軽症で発症後7日以内の成人を対象に試験 イベルメクチンが軽症COVID-19の有効な治療法であるかを確認するため、コロンビア・カリの1医療機関で二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。簡易ランダムサンプリング法を用いて、試験期間中に検査で確認された症候性COVID-19患者を州の保健部門の電子データベースから特定し被験者とした。2020年7月15日~11月30日にかけて、計476例の在宅療養または入院中の軽症かつ発症後7日以内の成人を登録し、2020年12月21日まで追跡した。 被験者は2群に分けられ、一方にはイベルメクチン(300μg/kg/日)が、もう一方にはプラセボが、それぞれ5日間投与された。 主要アウトカムは、21日以内で症状が軽快するまでの期間とした。非自発的な有害事象および重篤有害事象も収集した。症状消失までの期間中央値、イベルメクチン群10日、プラセボ群12日で有意差なし 無作為化を受けて主要解析に包含された被験者は400例だった(年齢中央値37[IQR:29~48]歳、女性58%)。そのうち試験を完了した398例(99.5%)について分析を行った。 症状消失までの日数中央値は、イベルメクチン群10日(IQR:9~13)、プラセボ群12日(9~13)で有意差はなかった(ハザード比:1.07、95%信頼区間[CI]:0.87~1.32、log-rank検定のp=0.53)。21日目までに症状が消失した被験者の割合も、それぞれ82%、79%で同等だった。 最も多くみられた非自発的な有害事象は頭痛で、報告例はイベルメクチン群104例(52%)、プラセボ群111例(56%)だった。重篤有害事象で最も多かったのは多臓器不全で、合計4例(各群それぞれ2例)で発生した。 研究グループは、本試験ではイベルメクチンの効果は支持されなかったものの、より大規模な試験を行うことで、イベルメクチンの他の臨床アウトカムについてその効果が判定できるのではないか、とした。

3906.

第49回 新型コロナと東日本大震災(後編) あの時の医療支援は、被災地の医療をどう変えたか?

東北沿岸部の医療を進化させた在宅医療の支援こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。3月11日を境に、東日本大震災の関連報道も一気に下火となりました。NHKは、先々週はドラマが主軸でしたが、11日を迎えた先週はドキュメンタリー中心で、考えさせられる番組も多かった印象です。中でも、3月11日の夜に放送された「定点映像 10年の記録〜100か所のカメラが映した“復興”〜」は、被災3県100カ所で定期的に撮影してきた映像を基につくられたドキュメンタリーで、被災地によって復興の歩みに大きな違いがあり、そこに住む人々の思いや生活も多様であることを、改めて我々に気づかせてくれる内容でした。番組の最後で被災地を取材してきたNHKの記者が、「被災地では一般の方々は復興という言葉をほぼ使わない。使っているのは行政であり、政治家であり、われわれマスコミ」と語り、「行政の復興は、基本は住まい。被災された方は住まいも大事だが、そこがゴールとは思っていない。復興という言葉をめぐる行政と一般の方々のズレが広がっている」と指摘していたのが印象的でした。さて、今回も引き続き、東日本大震災が医療に及ぼした影響について考えてみたいと思います。東日本大震災では、前回(第48回 新型コロナと東日本大震災(前編) あの時の経験は今、医療現場でどう役に立っているか?)書いたDMAT以外にも、さまざまな医療支援チームが被災地に入りました。日本医師会のJMAT、日本プライマリ・ケア連合学会のPCATなどは、急性期医療だけではなく、亜急性期や慢性期の患者にも臨機応変に対応しました。そんな中、被災地のそれまでの医療提供体制を一気に進化させた支援もありました。それは、東北沿岸部のいくつかの町で展開された「在宅医療」です。日本の10年後だった東北沿岸部東日本大震災は、高齢化が進んだ東北沿岸部を襲ったことにより、病院や介護施設など入院・入所“施設”主体であった日本の医療提供体制の問題点を浮き彫りにしました。今から10年前の2011年、日本人口はちょうど減少傾向に入ったばかりでした(日本の人口のピークは2008年の1億2,800万人)。当時、日本全体の高齢化率は23%(現在は約29%)。それに対し、東北沿岸部の市町村の多くは30%前後に達していました。つまり、震災当時の東北沿岸部は日本の10年後の姿だった、とも言えるわけです。震災直後は津波で道路が寸断され、自動車も流されて、病院に通えない患者が続出しました。また、停電が続いたことで電動ベッドが動かず、自宅や施設で褥瘡が悪化する患者が続出しました。その時、自宅や施設において渇望されたのは、病院での医療でなく、在宅医療でした。しかし、当時、東北沿岸部の多くの市町村において、在宅医療はまだ十分に普及・定着していませんでした。医療支援チームと一体になって在宅専門部隊を組織一例として、宮城県の沿岸部最北に位置する気仙沼市では、震災前までは基幹病院である気仙沼市立病院が市民の医療の最後の砦として、急性期から慢性期まで対応しており、同病院で死を迎える人も多かったと言われています。震災前から同病院でも急性期医療への特化が模索されてはいましたが、地域で在宅医療が定着しておらず、回復期の機能を持った病床も未整備で、急性期後の患者の退院先探しには難渋していました。そんな状況の中、東日本大震災が起こり、在宅医療のニーズが急速に高まったわけです。その危機をどう乗り越えたのか……。気仙沼では全国から集った医療支援チームと地元の開業医、市立病院の医師らが一体となって、急遽、「気仙沼巡回療養支援隊」が組織され、突発的な在宅医療のニーズに対応したのです。同支援隊の活動は約6ヵ月続き、地元の開業医に在宅患者を引き継ぐ形で終了しましたが、在宅医療や口腔ケア・摂食嚥下のサポートは着実に普及・定着していきました。10年経った今、気仙沼周辺は、在宅医療だけではなく、多職種連携でも先進地域となっています。それは、大震災で気仙沼巡回療養支援隊の活動をベースに、地元の医療機関や介護事業所のスタッフたちが、研修や交流などを継続し、連携を深めてきた結果だと言えます。2017年に新築移転した気仙沼市立病院も、病床を震災時の451床から340床(一般336床〈うち回復期リハビリ病床48床〉、感染症4床)まで一気にスリム化し、地域の医療機関との連携にも力を入れはじめている、とのことです。なお、気仙沼のように、地元のリソースで在宅医療を定着させた地域がある一方で、宮城県の石巻市や登米市などでは関東を本拠とする医療法人が在宅専門診療所を開設し、やはり在宅医療や医療連携の定着・普及に寄与しています。在宅医療のニーズ拡大はコロナ禍と似ている震災によって“弱者”である高齢者が自宅に留まらざるを得なくなって、在宅医療・介護のニーズが拡大した状況は、現在のコロナ禍と似ています。今、感染防止の観点から医療機関の受診を控える高齢者が増えています。また、がん手術後の患者や末期患者なども、病院ではなく自宅療養を選択する人が増加しています。コロナ患者についても、重症病床から回復期病床、在宅への流れがきちんと定まっていなかったことが、病床逼迫の一因であったことは確かです。今後の第4波の襲来に備え、通常診療の在宅医療での対応拡大や、コロナ回復患者の在宅医療での対応なども考えておく必要があるでしょう。そうした仕組みづくりには、ひょっとすると、気仙沼巡回療養支援隊をはじめとした被災地での在宅医療の展開事例が参考になるかもしれません。

3907.

経口脱毛治療薬は安全か

 脱毛治療に用いる低用量経口ミノキシジル(LDOM)の安全性について、多施設共同大規模コホートにおける研究結果が報告された。スペイン・Ramon y Cajal University HospitalのS. Vano-Galvan氏らが1,404例を対象とした検討の結果、全身性の有害事象はまれであり、有害事象のため治療を中止した患者は1.7%だった。結果を踏まえて著者は、「LDOMの安全性プロファイルは良好である」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年2月24日号掲載の報告。 研究グループは、LDOMに関する主要な懸念は全身性の副作用であったことから、大規模患者コホートにおける安全性について検討した。脱毛症のタイプを問わず、治療としてLDOMを3ヵ月以上受けていた患者を対象に、レトロスペクティブな多施設共同研究を行った。 主な結果は以下のとおり。・検討には、平均年齢43(範囲:8~86)歳の計1,404例の患者(女性943例・67.2%、男性461例・32.8%)が含まれた。・LDOMは1,065例の患者に滴定投与され、分析可能なさまざまな症例2,469件が得られた。・最も頻度の高い有害事象は多毛症(15.1%)であった。そのうち治療中止に至った患者は14例(0.5%)であった。・全身性の有害事象は、立ちくらみ(1.7%)、体液貯留(1.3%)、頻脈(0.9%)、頭痛(0.4%)、眼窩周囲浮腫(0.3%)、不眠症(0.2%)などであった。これらのうち投薬の中止に至った患者は29例(1.2%)であった。・生命に関わる悪影響は観察されなかった。

3908.

非情動性精神疾患に対する持続性注射剤抗精神病薬~ネットワークメタ解析

 非情動性精神疾患の成人患者に対する長時間持続性注射剤(LAI)抗精神病薬による維持療法の再発予防および受容性について、イタリア・ベローナ大学のGiovanni Ostuzzi氏らは、検討を行った。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年2月18日号の報告。 MEDLINE、Embase、PsycINFO、CINAHL、CENTRALなどより、2020年6月までに公表されたランダム化比較試験を検索した。相対リスクと標準化平均差は、ランダム効果ペアワイズおよびネットワークメタ解析を用いてプールした。主要アウトカムは、再発率およびすべての原因による中止(受容性)とした。研究の質はCochrane Risk of Bias toolを、プールされた推定値の確実性はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究86件のうち、78件(1万1,505例)をメタ解析に含めた。・再発予防に関しては、12種類のLAIのほとんどにおいて、プラセボを上回っていた。・プラセボと比較したLAIの最大推定値および最高ランキングであった薬剤は、パリペリドン(3ヵ月製剤)とアリピプラゾールであった。・リスペリドン、pipothiazine、オランザピン、パリペリドン(1ヵ月製剤)についても、プラセボと比較し、順に優れた再発予防を有していた(GRADEの確実性:中~高程度)。・LAI同士の直接比較では、ハロペリドールのみが、アリピプラゾール、フルフェナジン、パリペリドンよりも劣っていた。・受容性に関しては、ほとんどのLAIがプラセボを上回っており、zuclopenthixol、アリピプラゾール、パリペリドン(3ヵ月製剤)、オランザピン、flupenthixol、フルフェナジン、パリペリドン(1ヵ月製剤)は、順に優れた受容性を有していた(GRADEの確実性:中~高程度)。・LAI同士の直接比較では、アリピプラゾールのみが、他のLAI(ブロムペリドール、フルフェナジン、パリペリドン[1ヵ月製剤]、pipothiazine、リスペリドン)よりも優れた受容性を示した。 著者らは「パリペリドン(3ヵ月製剤)、アリピプラゾール、オランザピン、パリペリドン(1ヵ月製剤)のLAI抗精神病薬は、再発予防と受容性において、最高のエフェクトサイズとエビデンスの確実性を有していた。このネットワークメタ解析の結果は、最前線で治療にあたっている臨床医やガイドラインの作成に役立つであろう」としている。

3909.

高リスク初回再発B-ALL小児の地固め療法、ブリナツモマブが有望/JAMA

 高リスクの初回再発B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の小児の治療において、同種造血幹細胞移植前のブリナツモマブの1サイクル投与は、標準的な多剤併用強化化学療法による地固め療法と比較して、無イベント生存割合が有意に優れ、安全性も良好であることが、イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のFranco Locatelli氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年3月2日号に掲載された。ブリナツモマブは、CD3/CD19を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子であり、T細胞を動員してCD19発現B細胞を溶解する。再発・難治性B-ALLの小児を対象とする第I/II相試験で、ブリナツモマブは抗白血病活性が示され、分子レベルでの抵抗性を有するB-ALLの成人および小児において、微小残存病変の高い完全寛解率を誘導したと報告されている。13ヵ国47施設の非盲検無作為化第III相試験 本研究は、高リスクの初回再発B-ALL小児の治療において、同種造血幹細胞移植前に残存白血病負担を軽減することで、移植後の転帰の改善を目指すアプローチにおけるブリナツモマブの有効性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、13ヵ国47施設が参加し、2015年11月~2019年7月の期間に患者登録が行われた(Amgenの助成による)。 対象は、生後28日~18歳未満の小児で、フィラデルフィア染色体陰性の高リスク初回再発B-ALLであり、M1 marrow(骨髄の芽球が<5%)またはM2 marrow(骨髄の芽球が≧5~<25%)の患者であった。 被験者は、3回目の地固め療法として、ブリナツモマブ(15μg/m2/日、4週間、持続静注)を1サイクル投与する群または化学療法を施行する群に無作為に割り付けられた。ブリナツモマブ群では、第1日のブリナツモマブ投与前にデキサメタゾン(5mg/m2)が投与された。 主要エンドポイントは無イベント生存割合とした。イベントは、再発、死亡、2次性悪性腫瘍、完全寛解導入の失敗と定義された。重要な副次エンドポイントは全生存(OS)割合であり、他の副次エンドポイントには微小残存病変の寛解(芽球<10-4)や有害事象が含まれた。死亡・再発のリスクが低く、微小残存病変の寛解割合が高い 108例(年齢中央値5.0歳[IQR:4.0~10.5]、女子51.9%、M1 marrow 97.2%)が無作為化の対象となり、ブリナツモマブ群に54例、化学療法群に54例が割り付けられた。事前に規定された中止規則に従い、ブリナツモマブの有益性により患者登録は早期中止となった。 フォローアップ期間中央値22.4ヵ月(IQR:8.1~34.2)の時点で、主要エンドポイントのイベントはブリナツモマブ群が31%(17/54例)、化学療法群は57%(31/54例)で発生し、無イベント生存割合はそれぞれ69%(37/54例)および43%(23/54例)であり、有意な差が認められた(ハザード比[HR]:0.33、95%信頼区間[CI]:0.18~0.61、log-rank検定のp<0.001)。すべてのサブグループで、HRはブリナツモマブ群が良好であった。 死亡は、ブリナツモマブ群で8例(14.8%)、化学療法群で16例(29.6%)発生した。OS割合のHRは0.43(95%CI:0.18~1.01)であった。また、再発は、ブリナツモマブ群が24.1%(13/54例)、化学療法群は53.7%(29/54例)で認められた。再発の累積発生の層別HRは0.24(0.13~0.46)だった。 第2完全寛解期の同種造血幹細胞移植は、ブリナツモマブ群で48例(88.9%)、化学療法群で38例(70.4%)に施行された。移植関連死は、それぞれ4例(8%)および4例(11%)で発生し、再発/病勢進行による死亡は3例(6%)および8例(21%)でみられた。 微小残存病変の寛解割合は、ブリナツモマブ群が90%(44/49例)と、化学療法群の54%(26/48例)に比べて高かった(群間差:35.6%、95%CI:15.6~52.5)。 致死的有害事象の報告はなかった。重篤な有害事象の発生は、ブリナツモマブ群が24.1%、化学療法群は43.1%、Grade3以上の有害事象の発生は、それぞれ57.4%および82.4%で認められた。ブリナツモマブ群で頻度の高いGrade3以上の有害事象は、血小板減少(18.5%)、口内炎(18.5%)、好中球減少(16.7%)、貧血(14.8%)であった。投与中止の原因となった有害事象は、ブリナツモマブ群で2例報告された。 著者は、「この患者集団において、移植前のブリナツモマブ投与は従来の化学療法よりも有効性が高く、有益な地固め療法となる可能性がある」としている。

3910.

1日1回服用の卵巣がんPARP阻害薬「ゼジューラカプセル100mg」【下平博士のDIノート】第70回

1日1回服用の卵巣がんPARP阻害薬「ゼジューラカプセル100mg」今回は、ポリアデノシン5'二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬「ニラパリブトシル酸塩水和物(商品名:ゼジューラカプセル100mg、製造販売元:武田薬品工業)」を紹介します。本剤は、BRCA遺伝子変異の有無にかかわらず、白金系抗悪性腫瘍剤を含む初回化学療法後もしくは再発時の化学療法後維持療法として、1日1回の服用で腫瘍細胞の増殖を抑制することが期待されています。<効能・効果>本剤は、「卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌」の適応で、2020年9月25日に承認され、同年11月20日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはニラパリブとして1日1回200mgを経口投与します。ただし、本剤初回投与前の体重が77kg以上かつ血小板数が15万/μL以上の成人には、1日1回300mgを経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量し、本剤投与により副作用が発現した場合は、添付文書の基準を参考にして休薬、減量、中止します。<安全性>国内第II相試験(Niraparib-2001試験、Niraparib-2002試験)において、副作用は39例中39例(100%)で報告されました。主なものは、悪心25例(64.1%)、血小板数減少23例(59.0%)、貧血17例(43.6%)、好中球数減少14例(35.9%)、嘔吐13例(33.3%)、食欲減退11例(28.2%)、白血球数減少10例(25.6%)でした。なお、国内外の臨床試験(上記とNOVA試験、QUADRA試験、PRIMA試験)において、本剤が投与された937例で発現した重大な副作用として、骨髄抑制(78.8%)、高血圧(9.8%)、間質性肺疾患(0.6%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.卵巣がんの初回化学療法後や再発時の維持療法に使われる薬です。1日1回、連日服用します。2.薬によって血液を作る機能が低下するため、あざができやすくなる、鼻をかんだときに血が出る、顔色が悪くなる、心拍数が増える、立ちくらみや息切れ、めまいが起こることがあります。定期的に血液検査が行われますが、気になる症状があったらすぐにご連絡ください。3.血圧が高くなることがあります。自覚症状はほとんどないため、定期的に血圧や心拍数を測定しましょう。4.吐き気や嘔吐、便秘、疲労感などが現れることがあります。小まめに水分を摂り、消化の良い食事を心掛け、疲れを溜めないようにするなど、生活に工夫を取り入れることで対処できる場合もあります。強い症状が続く場合はご相談ください。5.妊娠中の方や妊娠している可能性がある方は服用できません。また、本剤服用中や服用を中止してから一定の期間は適切な方法で避妊を行い、授乳中の方は授乳を中止する必要があります。<Shimo's eyes>卵巣がんは主に閉経後の女性に多く発症するがんですが、初期段階では症状に乏しく、早期の検出が困難であるため、女性生殖器の悪性腫瘍の中では最も死亡者数の多い疾患です。一般的な卵巣がんの治療では、まず手術で可能な限りがんを取り除いてから抗がん剤による化学療法を行い、その後、再発リスクを下げるための維持療法を実施することが多いです。PARP阻害薬は、白金系抗悪性腫瘍剤を含む初回化学療法後もしくは再発時の化学療法後の維持療法として用いられます。本剤は、卵巣がんに適応のあるPARP阻害薬として、国内ではオラパリブ(商品名:リムパーザ)に次ぐ2剤目であり、BRCA遺伝子変異の有無によらず使用できます。1日1回の経口投与で食事の影響を受けにくいため、生活リズムに合わせて服用タイミングを選択できるなどのメリットもあります。副作用としては、一般的な抗がん剤と同様に、骨髄抑制、血小板減少、好中球減少などが発現することが多いため、血液検査などによるモニタリングが求められます。また、『NCCN制吐ガイドライン2020年版』において、中等度~高度の嘔吐リスク(頻度30%以上)に分類されており、嘔吐を予防するため、服用前に5-HT3受容体拮抗薬の連日経口投与が推奨されています。重大な副作用として、高血圧クリーゼを含む高血圧などが報告されており、とくに降圧薬を服用中の患者さんは投与前に血圧が適切に管理されていることを確認する必要があります。本剤の貯法は、2~8℃で遮光保存です。患者さんにはPTPシートを冷蔵庫で保管するように指導しますが、持ち運ぶ必要がある場合は専用の保冷遮光ポーチがあるので、MRに相談しましょう。参考1)PMDA 添付文書 ゼジューラカプセル100mg

3911.

第51回 経口アンドロゲン受容体抑制薬がCOVID-19万能薬に?/陰茎の世界標準

経口のアンドロゲン受容体抑制薬が外来と入院を問わず新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)に有効なことがブラジルでの試験で裏付けられ、次は集中治療室(ICU)のCOVID-19患者にどうかが検討されます。また、男性諸君のおそらく多くの気をもましている陰茎の大きさの世界標準に関する報告を簡単に紹介します。経口アンドロゲン受容体抑制薬がCOVID-19患者に外来と入院を問わず有効今年1月に発表された試験で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の入院を完全またはほぼ完全に防いだ経口薬proxalutamide(プロキサルタミド)が今度はCOVID-19入院患者の死亡のほとんどを防ぎました。中国の江蘇省の蘇州を拠点とするKintor Pharmaceutical社が開発している同薬はSARS-CoV-2スパイクタンパク質の細胞表面受容体ACE2結合前の下処理に駆り出される酵素TMPRSS2の発現亢進に携わりうるアンドロゲン受容体(AR)を抑制します1)。また、ACE2の阻害と発現抑制の二手からその活性を抑制する作用もあり、AR抑制とACE2抑制のどちらもがSARS-CoV-2肺細胞侵入阻止に貢献するとの期待を背景にしてまずはCOVID-19入院抑制効果を調べる試験が去年4月にブラジルで始まりました2)。試験はCOVID-19患者の男性を募り、COVID-19による入院率の比較によって軽症患者の重症化予防効果を示すことを目指しました3)。1月10日に発表された最終解析でのproxalutamide投与群134人の入院率は0%、つまり1人も入院せずに済みました。一方、プラセボ群128人では4人に1人以上の35人(27%)が病状悪化により入院を要し、proxalutamideの重症化予防効果が裏付けられました。安全性も申し分なく、同薬15日間使用に伴う有害事象は認められませんでした。外来の女性COVID-19患者を対象にした試験の途中結果も同日1月10日に発表され、男性での試験と同様の効果が認められています。proxalutamide治療群の女性60人の入院率は男性での試験と同様に低くてわずか1.7%であり、入院したのは1人のみでした4)。プラセボ群35人では6人(17%)が入院を要しました。1月10日の発表によると患者組み入れは2月まで続き、データは今月中に揃います。今回3月11日に新たに発表された死亡抑制効果はCOVID-19流行がとくに深刻だったブラジル北部(アマゾナス州)での第III相試験に参加したCOVID-19入院男女294人の結果に基づきます。ブラジル北部でのCOVID-19入院患者の死亡率は高く、Lancet Respiratory Medicine誌に最近発表された25万例超の解析によるとブラジル北部では半数(50%;ブラジル全体では38%)が入院中に死亡しました5)。proxalutamideの試験でもプラセボ群296人の死亡率は同様に高く、およそ2人に1人、141人(48%)が14日間に死亡しました。一方、proxalutamide群294人で死亡したのはわずか11人(4%)のみであり、同薬はCOVID-19入院患者の死亡リスクを92%減らしました6)。Kintor社は今月中か来月4月初めに最終結果を手にし、同薬の取り急ぎの認可をブラジルに申請する予定です7)。また、より重症の集中治療室(ICU)患者を対象にしたブラジルでの非盲検試験も予定されています。ブラジル以外の国での取り組みも進んでいます。Kintor社は外来の男性COVID-19患者を対象にした第III相試験の米国FDA許可を今月初めに得ており8)、最初の患者が来月4月には組み入れられます7)。Kintor社はCOVID-19治療低分子薬の第III相試験FDA許可を得た最初の中国製薬会社となりました8)。また、2009年発足の同社が初めてFDA許可を得た第III相試験でもあります。陰茎の世界標準17の報告で調べられた世界の男性しめて1万5,521人の記録に基づくこれまでで恐らく最も正確なまとめ9-11)によるとペニス(陰茎)の平均的な長さは普段の緩んだ状態では9.16 cm、勃起時は13.12cmです。平均的なペニス回り(circumference)は緩んだ状態では9.31 cm、勃起時は11.66 cmでした。参考1)Anti-Androgen Treatment for COVID-19(Clinical Trial.gov)2)First Patient Enrolment for the COVID-19 Clinical Trial of Proxalutamide Completed / Kintor Pharmaceutical3)Kintor Pharmaceutical Releases the Final Data of Proxalutamide in the Treatment of Male Subjects Infected with COVID-19 / Kintor Pharmaceutical 4)Kintor's Proxalutamide (GT0918) COVID-19 Clinical Trial Shows Positive Preliminary Results in Treatment of Female Patients / PRNewswire5)Ranzani OT,et al. Lancet Respir Med. 2021 Jan 15. [Epub ahead of print]6)Kintor Pharmaceutical Announces Results from Investigator-Initiated Brazil Trial Demonstrating 92% Reduction in Mortality in Hospitalized COVID-19 Patients / PRNewswire7)Kintor’s proxalutamide reduces COVID-19 mortality risk by 92%; trial in ICU patients next / BioWorld8)Proxalutamide Phase III Clinical Trial for the Treatment of COVID-19 Patients Approved by FDA / PRNewswire9)Veale D,et al. BJU Int. 2015 Jun;115:978-86. 10)Am I Normal? British Urology Journal Measures 15,000 Penises to Find the Average / Newswise11)How big is the average penis? / Science

3912.

肝内胆管癌診療ガイドライン2021年版発刊

 日本肝癌研究会が肝内胆管癌診療ガイドライン2021年版を2020年12月に発刊した。これまで胆道癌診療ガイドラインが発刊されてきたが、肝外胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌が対象とされ、肝内胆管癌に対するガイドラインは存在していなかった。肝内胆管癌診療ガイドラインは腫瘤形成型およびその優越型を対象として作成 今回初版となる肝内胆管癌診療ガイドラインは、肝内胆管癌の分類、患者数や治療法などを踏まえ肝内胆管癌のうち腫瘤形成型およびその優越型を対象として作成されている。構成は総論・各論からはじまり、アルゴリズム、Background Statements/Clinical Topics、Clinical Questionsの枠組みで記載されている。 肝内胆管癌診療ガイドラインの主な内容は以下のとおり。<Background Statements/Clinical Topics> BS1:全世界における肝内胆管癌の罹患率の変動と地域特性 BS2:肝内胆管癌発生の危険因子 BS3:本邦と欧州における肝内胆管癌の進行度(Stage)分類の相違点 BS4:肝内胆管における前癌・早期癌病変 BS5:肝内胆管における腫瘍類似病変 CT1:肝門部胆管癌と肝内胆管癌の肝門部浸潤の区別は可能か?<Clinical Questions> CQ1:有効なスクリーニング法はあるか? CQ2:診断に有用な臨床検査は何か? CQ3:診断に有用な画像検査は何か? CQ4:腫瘍の進展範囲(T因子)の診断に有用な検査は何か? CQ5:リンパ節転移の診断に有用な画像検査は何か? CQ6:遠隔転移の診断に有用な画像検査は何か? CQ7:腫瘍生検はどのような症例に行われるべきか? CQ8:腫瘍条件からみた外科治療の適応は? CQ9:安全で合理的な手術術式は? CQ10:リンパ節郭清に意義はあるのか? CQ11:穿刺局所療法の適応となる症例は? CQ12:切除不能肝内胆管癌に推奨される薬物療法は何か? CQ13:術前化学療法は推奨されるか? CQ14:術後補助化学療法は推奨されるか? CQ15:切除不能肝内胆管癌に定位放射線治療は推奨されるか? CQ16:切除不能肝内胆管癌に粒子線治療は推奨されるか?

3913.

ブリナツモマブは、1~30歳の初回再発B-ALLの無病生存を改善するか/JAMA

 高または中リスクの初回再発B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の小児・青年・若年成人の再寛解導入療法後の治療において、ブリナツモマブ投与後の造血幹細胞移植(HSCT)と、化学療法施行後のHSCTでは、無病生存割合に関して統計学的に有意な差はないことが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のPatrick A. Brown氏らChildren's Oncology Group(COG)が行った「AALL1331試験」で示された。試験の早期中止による検出力不足の可能性があるため、結果の解釈には限界があるという。研究の詳細は、JAMA誌2021年3月2日号で報告された。小児・青年・若年成人B-ALLの初回再発に対する標準的な化学療法は、とくに早期再発(高リスク)または再導入化学療法後の残存病変の晩期再発(中リスク)の患者において、重度の毒性、その後の再発、および死亡の発生率が高いとされる。ブリナツモマブは、CD3/CD19を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体で、再発・難治性B-ALLに有効であり、良好な毒性プロファイルを有すると報告されている。4ヵ国155施設の無作為化第III相試験 研究グループは、高/中リスクの初回再発B-ALLの小児・青年・若年成人の地固め療法において、強化化学療法をブリナツモマブで代替することで生存率が改善するかの検証を目的に、無作為化第III相試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]/国立がん研究所[NCI]などの助成を受けた)。 2014年12月~2019年9月の期間に、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの155施設で患者登録が行われ、フォローアップは2020年9月30日まで実施された。 対象は、年齢1~30歳の初回再発B-ALL患者であり、ダウン症候群、フィラデルフィア染色体陽性ALL、HSCTやブリナツモマブ治療の施行歴のある患者は除外された。 全例が、4週間の再導入化学療法を受けた後、ブリナツモマブ(15μg/m2/日、28日)を1週の休薬期間を置いて2サイクル投与する群または多剤併用化学療法を2サイクル(1サイクルは4週)施行する群に無作為に割り付けられた。引き続き、HSCTが施行された。 主要エンドポイントは無病生存割合、副次エンドポイントは全生存割合とした。統計学的有意差の閾値は、片側検定のp値が<0.025と設定された。2年全生存やMRD陰性化、HSCT施行の割合は良好 最終解析には208例(年齢中央値9歳、女性97例[47%])が含まれ、このうち105例がブリナツモマブ群、103例は化学療法群であった。118例(57%)が試験薬の投与を完遂した。中間解析時に、予測されていた131件のイベントのうち実際に発生したのは80件(61%)で、有効性または無益性の中止規則を満たさなかったが、安全性・データ監視委員会の勧告により無作為化が中止された。 フォローアップ期間中央値2.9年の時点で、2年無病生存割合はブリナツモマブ群が54.4%、化学療法群は39.0%と、両群間に有意な差は認められなかった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.47~1.03、片側検定のp=0.03)。 2年全生存割合は、ブリナツモマブ群が71.3%と、化学療法群の58.4%に比べ有意に良好であった(死亡のHR:0.62、95%CI:0.39~0.98、片側検定のp=0.02)。 探索的エンドポイントである微小残存病変(MRD)の陰性例の割合は、無作為化の時点で両群間に差はなかった(ブリナツモマブ群26例[25%]vs.化学療法群31例[30%]、群間差:-5%、95%CI:-17~7、p=0.39)。これに対し、1サイクル施行後(79例[75%]vs.33例[32%]、43%、31~55、p<0.001)および2サイクル施行後(69例[66%]vs.33例[32%]、34%、21~46、p<0.001)のMRD陰性例の割合はいずれも、ブリナツモマブ群で有意に良好であった。 HSCTは、ブリナツモマブ群は74例(70%)で実施され、化学療法群の44例(43%)に比し施行割合が高かった(群間差:27%、95%CI:15~41、p<0.001)。 とくに注目すべき重篤な有害事象として、ブリナツモマブ群では感染症が15%、発熱性好中球減少が5%、敗血症が2%に、化学療法群では感染症が65%、発熱性好中球減少が58%、敗血症が27%、口腔粘膜炎が28%にみられた。 著者は、「この試験の解釈については、早期中止による主要エンドポイントの検出力不足の可能性があるため限界がある」とまとめ、「安全性・データ監視委員会の中止勧告の理由は、『両群間の臨床的均衡(clinical equipoise)の喪失』であった」としている。

3914.

EGFR変異肺がん2次治療、オシメルチニブ+ベバシズマブの評価は?【肺がんインタビュー】 第60回

第60回 EGFR変異肺がん2次治療、オシメルチニブ+ベバシズマブの評価は?出演:和歌山県立医科大学 内科学第3講座 赤松 弘朗氏EGFR変異非小細胞肺がんにおけるEGFR-TKIとVEGF阻害薬の併用による有効性の向上が報告されている。そこで2次治療のT790 M変異陽性例に対するオシメルチニブ+ベバシズマブを評価するWJOG8715L試験が行われ、その結果がJAMA Oncology誌で発表された。筆頭著者である和歌山県立医科大学の赤松 弘朗氏に同研究の内容と結果について聞いた。参考Akamatsu H, et al. Efficacy of Osimertinib Plus Bevacizumab vs Osimertinib in Patients With EGFR T790M-Mutated Non-Small Cell Lung Cancer Previously Treated With Epidermal Growth Factor Receptor-Tyrosine Kinase Inhibitor: West Japan Oncology Group 8715L Phase 2 Randomized Clinical Trial.JAMA Oncol. 2021 Jan.[Epub ahead of print]

3915.

双極性障害のうつ病エピソード再発に対する光曝露の影響

 光線療法は、双極性うつ病に対する効果が示唆されている治療方法であるが、うつ病エピソードに対する予防効果が認められるかは、よくわかっていない。桶狭間病院の江崎 悠一氏らは、実生活環境における光曝露が、双極性障害患者のうつ病エピソードの再発に対する予防効果と関連しているかについて、評価を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年2月15日号の報告。 本研究は、2017年8月~2020年6月に日本で行われたプロスペクティブ自然主義的観察研究である。双極性障害外来患者202例を対象に、ベースラインから7日間連続して日中の光曝露を客観的に評価し、その後の気分エピソードの再発について、12ヵ月間フォローアップを行った。光曝露の測定には、周囲の光を測定できるアクチグラフを用いた。 主な結果は以下のとおり。・202例中198例(98%)が12ヵ月間のフォローアップを完了した。・フォローアップ期間中に、うつ病エピソードの再発が認められた患者は、78例(38%)であった。・潜在的な交絡因子で調整したCox比例ハザードモデルでは、日中の光曝露が1,000luxを超える時間の増加と、うつ病エピソードの再発の減少との間に有意な関連が認められた([log min]ハザード比:0.66、95%CI:0.50~0.91)。・朝の平均照度が高く([log lux]ハザード比:0.65、95%CI:0.49~0.86)、1,000luxを超える時間が増加すると([log min]ハザード比:0.61、95%CI:0.47~0.78)、うつ病エピソードの再発に有意な減少が認められた。・日中の光曝露と躁、軽躁、混合エピソードの再発との間に有意な関連は認められなかった。 著者らは「日中の光曝露の増加とうつ病エピソードの再発の減少との間に有意な関連が認められた。これは、主に朝の光曝露と関連していることが示唆された」としている。

3916.

がん治療、臨床的に意味のあるQOL改善のエビデンスはほとんど提示なし/JAMA Netw Open

 カナダ・Sunnybrook Research InstituteのVanessa Arciero氏らがシステマティックレビューを行い、がん治療においてQOLの重要性が認識されているにもかかわらず、QOLの改善を示唆するエビデンスが公表されていないことを明らかにした。緩和治療を受けるがん患者にとって、QOLは生存と並び治療意思決定の重要な側面であるが、規制当局はQOL改善のエビデンスがなくても生存期間延長または抗腫瘍効果だけに基づいて承認することがある。著者は、「統計学的な改善に関するエビデンスがある適応症のうち、臨床的に意味のあるQOL改善を示したものはほとんどなかった」と述べている。JAMA Network Open誌2021年2月1日号掲載の報告。 研究グループは、近年承認されたがん治療が臨床的に意味のあるQOL改善効果を示すかどうかを調査する目的で、2006年1月~2017年12月に米国食品医薬品局(FDA)ならびに欧州医薬品庁(EMA)の承認を得たがん治療の適応症と、それを裏付ける臨床試験(2019年10月までに特定できたQOLに関する公表論文)を特定し、公表されたQOLに関するエビデンスについて評価した。 QOLに関するエビデンスとは、米国臨床腫瘍学会Value Framework(ASCO-VF)バージョン2.0および欧州臨床腫瘍学会Magnitude of Clinical Benefit Scale(ESMO-MCBS)バージョン1.1のQOL bonus criteriaに従ったQOLの有益性、および臨床的に意義のある最小変化量を超えた臨床的に意味のあるQOL改善とした。 QOLのエビデンスと承認年との関連を、ロジスティック回帰モデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・調査期間に承認されたがん治療の適応症は、FDAで214(血液学的腫瘍77[36%])、EMAで170(同52[31%])であった ・カットオフ日までにQOLに関するエビデンスが公開されていたのは、FDA承認適応症40%、EMA承認適応症58%であった。・ASCO-VFおよびESMO-MCBSのQOL bonus criteriaを満たしていたのは、FDA承認適応症ではそれぞれ13%および17%、EMA承認適応症では21%および24%であった。・臨床的に意義のある最小変化量を超えた臨床的に意味のあるQOL改善が認められたのは、FDA承認適応症では6%、EMA承認適応症では11%であった。・EMAでは経年的に承認時におけるQOLに関するエビデンスの公開が増加したが(オッズ比[OR]:1.13、p=0.03)、FDAでは増加はみられなかった(OR:1.10、p=0.12)。・QOL bonus の増加や臨床的に意味のあるQOL改善について、経年的な増大は認められなかった。

3917.

トシリズマブとサリルマブ、重症COVID-19患者に有効/NEJM

 集中治療室(ICU)で臓器補助(organ support)を受けた重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、インターロイキン6(IL-6)受容体拮抗薬のトシリズマブとサリルマブによる治療は、生存を含むアウトカムを改善することが認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnthony C. Gordon氏らが、現在進行中の国際共同アダプティブプラットフォーム試験である「Randomized, Embedded, Multifactorial Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia:REMAP-CAP試験」の結果を報告した。重症COVID-19に対するIL-6受容体拮抗薬の有効性は、これまで不明であった。NEJM誌オンライン版2021年2月25日号掲載の報告。アダプティブプラットフォーム臨床試験でトシリズマブとサリルマブの有効性を評価 研究グループは、ICUで臓器補助開始後24時間以内のCOVID-19成人患者を、トシリズマブ(8mg/kg体重)群、サリルマブ(400mg)群、または標準治療(対照群)のいずれかに無作為に割り付けた。 主要評価項目は、21日以内の非臓器補助日数(患者が生存し、ICUで呼吸器系または循環器系の臓器補助を要しない日数)で、患者が死亡した場合は-1日とした。 統計にはベイズ統計モデルを用い、優越性、有効性、同等性または無益性の事前基準を設定。オッズ比>1は、生存期間の改善、非臓器補助期間の延長、あるいはその両方を示すものとした。標準治療と比較しトシリズマブ、サリルマブで非補助日数が増加、90日生存も改善 トシリズマブ群およびサリルマブ群のいずれも、事前に定義された有効性の基準を満たした。 解析対象は、トシリズマブ群353例、サリルマブ群48例、対照群402例であった。非臓器補助期間の中央値は、トシリズマブ群10日(四分位範囲:-1~16)、サリルマブ群11日(0~16)、対照群0日(-1~15)であった。対照群に対する補正後累積オッズ比中央値は、トシリズマブ群1.64(95%信頼区間[CI]:1.25~2.14)、サリルマブ群1.76(1.17~2.91)で、対照群に対する優越性の事後確率はそれぞれ99.9%、99.5%であった。 90日生存についても、トシリズマブ群とサリルマブ群のプール解析群で改善が認められ、対照群に対するハザード比は1.61(95%CI:1.25~2.08)、優越性の事後確率は99.9%超であった。 その他のすべての副次評価項目についても、これらIL-6受容体拮抗薬の有効性が支持された。

3918.

アミロイド低減治療、認知機能改善は認められず/BMJ

 アミロイド値の低下と認知機能の変化について報告されている入手可能な試験データをプール解析した結果、薬物治療によりアミロイド値低下は、実質的に認知機能を改善しないことが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSarah F. Ackley氏らが14の無作為化比較試験を対象としたメタ解析の結果、明らかにした。これまで行われたアルツハイマー病におけるアミロイドを標的とした薬物治療の試験の大半で、認知機能についての統計的に優位な有益性は示されていない。一方で、個々の試験では、アミロイド値低下の認知機能低下への潜在的な影響について決定的となるエビデンスも示されておらず、アミロイドを標的とした複数試験のエビデンスは体系的に評価されていなかった。BMJ誌2021年2月25日号掲載の報告。14試験についてメタ解析 研究グループは、アミロイド値の低下が認知機能を改善するかどうかを確認するため、アミロイドを標的とした薬物療法の試験を評価する操作変数メタ解析を行った。 「ClinicalTrials.gov」を基に検索し、アミロイド値のコントロールとアルツハイマー病の予防または治療に関する14の無作為化比較試験を特定し評価した。 被験者の条件は各試験によって異なるが、典型的なものとしては、ベースラインで50歳以上、軽度認知機能障害またはアルツハイマー病の診断を受け、アミロイド陽性だった。 主要アウトカムは、アミロイドPETで測定した脳内アミロイド値の変化と、各治療群について1回以上行われた認知機能テストスコアの変化で、解析は情報が入手できた試験を包含して行われた。アミロイド値の標準取込値率減少とMMSEスコア改善は関連なし 14の無作為化試験のプール解析の結果は、個々の試験の推定値より精度が高かった。 アミロイド値の標準取込値率(SUVR)が0.1標準偏差減少することによるミニメンタルステート検査(MMSE)スコアの改善は、0.03ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.06~0.1)だった。 なお同研究グループは、ウェブ上でアプリケーションを公開し、アミロイド値とアルツハイマー病に関する新たな試験結果が出た際には、その結果を入力し新たな推定値の算定を可能にしている。また、プール解析による推定値によって、アミロイド値低下と認知機能改善の関連を示すために必要となる新たなエビデンスについても解説している。

3919.

第48回 新型コロナと東日本大震災(前編) あの時の経験は今、医療現場でどう役に立っているか?

東日本大震災から10年こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。3月11日で東日本大震災から10年になります。テレビではいろいろな特集を組んでいるようですが、NHKは例年よりドラマが多い印象です。実際の災害に基づくドラマは、「リアリティに欠ける」場合、視聴者が敬遠する恐れがあります。また、被災地以外の人たちが、このコロナ禍の中、どれだけ東日本大震災に関心を寄せるかという問題もあります。3月7日の夜にNHKで放送されたドラマ「星影のワルツ」は、遠藤 憲一の抑えた演技もよく、シンプルで見応えがあるドラマでした。南相馬市の自宅で津波にのまれ、3日間海を屋根に乗って漂流した男性の実話を基につくられたものです。過度に感傷的にも感動的にもならず、かといって説明的でもなく、海の上を漂流し、ただひたすら生き延びようとする様を淡々と描いていたのが印象的でした。それにしても、10年という時間が経過したことで、東日本大震災については、記事を含めた報道も、ドラマや映画も、つくるのが難しい局面になってきているのかもしれません。私自身、10年前は医療媒体の記者として、被災地に何度か足を運び、医療現場の奮闘や復興の足取りなどを報道しました。震災の1ヵ月後にレンタカーを借りて周った時に見た、三陸沿岸の街の惨状は今でも忘れられません。今回はあの時の現場を思い出しながら、東日本大震災における災害保健医療や医療支援が、今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大にどんな形で役立っているか、について考えてみたいと思います。津波による溺死9割、やることがなかったDMAT新型コロナウイルス感染症の感染拡大は「感染災害」だ、という考え方が定着してきています。実際、各都道府県の対策本部の中枢には各地域のDMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)のメンバーたちが充てられ、活動しています。DMATがこのコロナ禍の中、各地で重宝されるのは東日本大震災での経験があったからだ、という見方がもっぱらです。DMATは1995年の阪神・淡路大震災での初期医療体制の遅れの反省を踏まえ、2005年に発足しました。ただ、そのDMAT、東日本大震災では活躍の場が限られました。その理由は、亡くなった方の死因の9割が大津波による溺死だったためです。元々「発災から概ね48時間以内、急性期での活動を想定」し、重症患者の救援が主たる目的だったDMATは、被災地に到着してもやることがほとんどなかった、と言われています。大規模な自然災害においては、超急性期や急性期だけではなく、亜急性期や慢性期の医療や、避難所の衛生環境などを保つための保健活動も重要であること、多種多様な支援チームの調整が必須であることが、東日本大震災によってクローズアップされたのです。こうした教訓から、2012年3月の厚生労働省医政局長通知では「救護班(医療チーム)の派遣調整等を行うために、災害対策本部の下に派遣調整本部を迅速に設置できるよう事前に計画を策定」することが求められました。さらに2016年の熊本地震の教訓を踏まえ、2017年7月には厚労省は各都道府県知事宛に「大規模災害時の保健医療活動に係る体制の整備について」という通知を発出、「各都道府県における大規模災害時の保健医療活動を行う体制に関して、保健医療活動チームの派遣調整、保健医療活動に関する情報の連携、整理及び分析等全体的な調整を行うための保健医療調整本部の整備」を求めるに至っています。こうした調整本部の中核を担うことが期待されたのが「統括DMAT」(厚労省が実施する統括DMAT研修を修了し、登録された者)と呼ばれる災害保健医療の専門家たちです。阪神・淡路、東日本、そして熊本と大きな地震を経験し、超急性期対応だけでなく、さまざまな局面でのコーディネートの経験積を積んできたDMATが、新たな災害である「感染災害」として今直面しているのが新型コロナ、というわけです。「感染災害」にDMAT出動コロナでのDMATの関与は中国・武漢からの邦人退避チャーター便での活動を政府から要請されたことにはじまり、その流れでクルーズ船ダイヤモンド・ プリンセス号における活動につながったとされています。厚労省の第21回「救急・災害医療提供体制の在り方に関する検討会(検討会)」(2020年8月21日)では、コロナでのDMATの活動が報告されています。それによれば、中国の武漢市からの邦人退避チャーター便について、厚労省からDMATの派遣要請がなされ、邦人の宿泊場所で健康チェックや感染管理に当たっています。この時の活動期間は1月31日~3月3日、全国から医師、看護師ら151人が集まっています。その後、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号にも派遣要請がされ、DMATと他医療チームの調整、熱発外来、患者の搬送トリアージなどを行っています。この時の活動期間は2月8日~3月1日、全国から医師、看護師ら472人が集まりました。ダイヤモンド・プリンセス号という、コロナ医療の最前線において感染管理やクラスター対策を学んだDMATのメンバーたちは、活動終了後にはそれぞれが所属する病院に戻り、今度は地元でコロナと対峙することになりました。患者搬送コーディネーターに統括DMATをダイヤモンド・プリンセス号での活動実績などを評価した厚労省は2020年3月26日、「新型コロナウイルス感染症の患者数が大幅に増えたときに備えた入院医療提供体制等の整備について(改訂)」と題する事務連絡で、コロナ対応におけるDMATの最大限の活用を各都道府県に要請しました。事務連絡は、「都道府県調整本部には、集中治療、呼吸器内科治療、救急医療、感染症医療の専門家、災害医療コーディネーター等に必要に応じて参加を要請するとともに、搬送調整の中心となる『患者搬送コーディネーター』を配置すること。(中略)その際、円滑な搬送調整実施のために、患者搬送コーディネーターのうち少なくとも1人は、自然災害発生時における『統括DMAT』の資格を有する者であることが望ましい」とし、「都道府県調整本部については、統括DMATなどの関係者との協議の上、都道府県の実情を踏まえてDMATメンバーの参画も考えられる」としています。45都道府県でDMAT登録者が調整本部に参画そういった経緯から、ダイヤモンド・プリンセス号以降も、DMATは「厚労省本部地域支援班」として各地のクラスターの現場対応にあたったり、各都道府県の調整本部において現場の指揮や患者搬送のコーディネートにあたったりしています。第22回検討会(2020年12月4日)の資料によれば、45都道府県でDMAT登録者が調整本部に参画し、27都道府県に常駐(最大時)しているとのことです。東日本大震災とその後のさまざまな災害対応で得られた教訓を糧に調整力や対応力を高めてきたDMATが、このコロナ禍の中、全国でその役割を存分に発揮しているわけです。ただ、震災などの自然災害との大きな違いは、コロナは災害が局所的ではなく、全国で起きていることです。あるDMATの医師はこんなことを話していました。「大災害が起こると、各地のDMATの仲間の間で色んな情報が飛び交うのだが、今回はそれがほとんどない。それだけ、それぞれの地域でDMATがいっぱいいっぱいで頑張っているからだろう」。東日本大震災以来の大災害とも言える新型コロナ。この「感染災害」を乗り越えたとき、日本の災害保健医療は、またもう一皮剥けているに違いありません。

3920.

診療に役立つLGBTQsの基礎知識

 LGBTという言葉を聞いたことはありますか? これは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとった言葉で、セクシュアルマイノリティの総称として使われています。多様性を強調するためにQuestioningを加えて、LGBTQsと表現することもあります。 性の多様性に関する知識は診療にも必要不可欠です。当事者が声を上げ始め、各自治体による同性パートナーシップ制度の成立などの社会変化もある今、知らないでは済まされない時代になりつつあります。今回はCareNeTVで配信中の「診療に役立つLGBTQsの基礎知識」講師で、川崎協同病院総合診療科・にじいろドクターズの吉田 絵理子氏に医師が知っておくべきことを聞きました。なぜ性的マイノリティの人々についての理解が必要なのでしょうか? 性的マイノリティの人々は、差別や偏見、いじめといった社会的困難に遭遇しやすいことを背景として、国内外においてさまざまな疾患リスクが高いことが報告されています。例えば、性的マイノリティ全般においてうつ病や自殺企図、物質依存のリスクが高い1)ことが報告されています。また、男性と性交渉する男性のHIV感染リスクが高い2)ことは広く知られていますが、学校での性教育は異性愛を前提としているため、同性間でのセーファーセックスに関する知識を得る機会が限られているといった課題があります。さらに安心して定期的に性感染症のチェックを受けられるような医療機関は非常に限られているのではないでしょうか。日常診療でLGBTQsの方々に出会っているのでしょうか? 電通ダイバーシティ・ラボが2018年に行った調査結果では、回答者の約9%がLGBTQsに相当したと報告しています3)。この数値をそのまま当てはめられるわけではありませんが、外来では1コマあたり1人以上のLGBTQsの患者さんを診ているかもしれないということです。何科の医師であっても、診療している患者さんの中にはLGBTQs当事者の方がいると考えられます。LGBTQsの人を診たことがないのではなく、診ていることに気付いていないのです。すべての人にかかわるSOGIという概念とは? SOGIとは、Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認) の頭文字をとった言葉です。性的指向は性愛・恋愛の対象、性自認は自分の性をどう認識しているか、です。SOGIはLGBTQsの人だけではなく、すべての人にかかわる概念です。あらゆるSOGIの人が受診しやすい環境を整えること大切です。また職員の中にも性的マイノリティの人はいますので、あらゆるSOGIの人が働きやすい環境作りも同様に重要です。問診で必要な情報を聴取するには? 当事者の中には、医療者から差別的対応を受けたことをきっかけに、セクシュアリティに関係する事柄を医師に話さない・話せない・話したくない、と思う方もいらっしゃいます4)。さらに深刻な場合は、受診自体を控えるケースもあります5)。 例えばうつ病で通院していても性的指向・性自認についての悩みを話せていないという声もありますし、同性・異性それぞれのパートナーがいる患者が性感染症を心配して受診した際に、性行為についての正確な情報を医師に開示できないために、適切な診断や予防医療の提供、セーファーセックスの指導が行われていない、といったことも起きています。セクシュアリティにかかわらず使える問いかけは? こういったことを防ぐには、多様なセクシュアリティの人が受診しているということを前提とした問診の基本を知っておく必要があります。 例えば、「結婚していますか」「(女性に対して)彼氏はいますか」という質問は異性愛を前提としていますが、「パートナーの方はいますか」というジェンダーに中立的な聞き方であれば異性・同性どちらも含まれます。セクシュアルヒストリーについて聴取する際にも異性間の性交渉を前提とはせずに、「正確な診断をする上で必要なので皆さんに伺っているのですが、性行為の相手は男性ですか女性ですかそれとも両方ですか」といった問いかけ方をするとよいでしょう。 性的指向、性自認、性行動について決めつけてしまうことが診療の妨げになりうるということもぜひ押さえてほしい事柄です。例えばトランス男性(出生時に割当てられた性別が女性で、性自認が男性)の人が、女性を好きになるとは限りません。トランス男性でゲイという人もいますし、男性との性交渉で妊娠することもありえます。 問診には技術も必要ですが、最も大切なことは、個人的な感情がどうあれ、医師として患者さんのあり方を尊重しサポーティブな態度で接することだと思います。施設単位で受診ハードルを下げる工夫は? 施設単位で行えることもあります。トランスジェンダーの方が受診しやすくなるように、問診票の性別欄を男女の二択ではなく自由記載ができるようにする、呼び入れを番号で行う、または通称名の使用ができることをわかりやすく伝えるといったことができます。トイレや入院着などもジェンダーで分けずに使えるものを準備することも大切です。 ハード面の工夫もさることながら、とくに重要なのは、スタッフの守秘義務の徹底です。セクシュアリティについて、患者の家族であっても本人の同意なく開示しないこと。どこまで自身のセクシュアリティを開示するかはあくまで本人が決めることです。関係するスタッフの間で対応が統一されるよう、とくに注意を要する事柄です。今後の展望をお聞かせください LGBTQsといってもセクシュアリティごとに健康リスクは異なります。あらゆるセクシュアリティの人が、日本全国どこででも、予防も含めた適切な医療サービスを安心して受けられるよう、そうした知識も広げていきたいと思っています。今までLGBTQsに馴染みがなかった先生方が、多様なセクシュアリティに配慮した環境を整備するのはハードルが高いと思われるかもしれません。すべてではなく、できること1つでも取り組むことから始めていただければ、それは多くの方の安心につながっていきます。ぜひ、一緒に取り組んでいきましょう。吉田 絵理子氏(川崎協同病院総合診療科・にじいろドクターズ)2003年京大理学部卒後、阪大医学部に学士編入。07年卒業。川崎協同病院での初期研修、聖隷三方原病院で後期研修ののち、11年より現職。総合診療医を中心とした「にじいろドクターズ」では、主に医療従事者を対象に性の多様性と医療に関する学びの場などを提供している。■関連コンテンツCareNeTV「診療に役立つLGBTQsの基礎知識」■参考文献・参考サイトはこちら1) King.M, et al. BMC Psychiatry. 2008;8:e1-17.  Haas AP, et al. J Homosex. 2011;58:10-51. .2) 厚生労働省エイズ動向委員会.2018年エイズ発生動向年報.2018.3) 株式会社電通コーポレートコミュニケ―ション局広報部. dentsu NEWS RELEASE 2019. 4) 性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会. 性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト(第3版). 2019.5) 浅沼智也ら.GID/トランスジェンダーの医療機関に関するアンケート調査結果. GID学会 第21回研究大会・総会プログラム・抄録集; 43. 2019.

検索結果 合計:10313件 表示位置:3901 - 3920