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第58回 COVID-19後の脳のもやもやをゲームで治療する

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を切り抜けた人のいったいどれほどが認知機能障害を呈するかははっきりしていませんが、思考・集中・記憶が困難になることは確かにあり、そのような耐え難い尾を引く(long-haul)後遺症は悪くすると何ヵ月も続きます1)。退院に向けてリハビリに取り組むCOVID-19入院患者の神経や精神を検査した報告では調べた57人のほとんど46人(81%)に認知機能障害が認められ、計画や取り仕切ることなどに必要な遂行機能や注意の欠陥がとくに多く生じていました2)。認知機能障害は入院患者に限りません。米国のノースウェスタン大学病院にはCOVID-19神経副作用を専門とするNeuro COVID-19 Clinicと呼ばれる診療所があり、去年5月の開設以来400人以上を手当てしています1)。それらの外来データを調べたところ、神経症状が6週間以上続く100人目までの患者で不特定な認知異常“脳のもやもや(brain fog)”の訴えは最も多く81人(81%)に認められました3)。COVID-19に伴う認知機能障害の原因はわかっておらず、脊髄液やその他の検体を使って炎症やその他の異常の手がかりを探る研究が始まっています。原因の研究の一方で治療法の検討も始まっています。たとえば体を動かしたり頭を使うゲームがその一つで、COVID-19を経た患者48人の試験ではパズルのような頭脳ゲームが有望な成績を収めています1)。研究者は無作為化試験を始めるつもりです。ADHD(注意欠如・多動症)小児の治療に医師が処方するビデオゲームEndeavorRxの米国FDA承認4)を得たAkili Interactive社のデジタル治療の取り組みも進んでおり、COVID-19に伴う認知機能障害患者100人が参加する試験で検討されます1)。去年の6月に承認されたAkili 社のADHDゲーム治療は操作棒(マルチスティック)を使って障害物を避けつつ目標(アイテム)を回収することで注意の改善を目指します。その改善はADHD小児300人以上が参加した無作為化試験で裏付けられています5)。また、親や医師の評価も教育用の別のゲームをした対照群より良好でした。ゲームのようないわゆる脳トレは万能ではありませんが、注意や切り盛りする処理能力の構築に役立つことが裏付けられつつあります。注意や処理能力の障害はCOVID-19後遺症のどうやら核をなしており、インターネットやアプリを介したゲーム訓練は長引くCOVID-19症状でどうにもならないと悲観にくれる人の前途を照らすでしょう1)。参考1)COVID-19 ‘brain fog’ inspires search for causes and treatments / Science 2)Jaywant A,et al. Neuropsychopharmacol. 2021 Feb 15:1-6.[Epub ahead of print]3)Graham EL, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2021 Mar 23.[Epub ahead of print]4)FDA Permits Marketing of First Game-Based Digital Therapeutic to Improve Attention Function in Children with ADHD / PRNewswire5)Kollins SH, et al. Lancet Digit Health. 2020 Apr;2:e168-e178.

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貧血と不眠症~メタ解析

 最近、いくつかのゲノムワイド研究において、不眠症と貧血に共通の遺伝的要素が関連している可能性が示唆されている。米国・ペンシルベニア州立大学のSamantha N. Neumann氏らは、貧血を有する成人は、そうでない人と比較し、不眠症の有病率が高いかどうかを調査するため、横断的研究およびメタ解析を実施した。Chinese Medical Journal誌2020年12月21日号の報告。 対象は、進行中のコホート研究であるKailuan研究に参加した中国人成人1万2,614人。貧血の定義は、女性でヘモグロビンレベル12.0g/dL未満、男性で13.0g/dL未満とした。不眠症の評価には、アテネ不眠尺度(AIS)中国語版を用いた。不眠症の定義は、AIS総スコア6以上とした。貧血と不眠症との関連は、年齢、性別、慢性疾患の状態、血漿C反応タンパク質濃度などの潜在的な交絡因子で調整した後、ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。成人集団における貧血と不眠症の関連を評価するため、本横断研究と以前実施した3つの横断研究の結果をプールし、固定効果モデルを用いて、メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・貧血を有する成人は、そうでない人と比較し、不眠症の有病率が高かった(調整オッズ比[OR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.03~1.70)。・C反応性タンパク質レベルが1mg/L以上のような慢性炎症を有する患者を除外した後でも、貧血と不眠症の有意な関連が認められた(調整OR:1.68、95%CI:1.22~2.32)。・参加者2万2,134人を含むメタ解析においても、貧血と不眠症に正の関連が認められた(プールされたOR:1.39、95%CI:1.22~1.57)。 著者らは「横断研究デザインの性質上、結果の解釈には注意が必要である」としながらも「貧血を有する成人は、不眠症である可能性が有意に高いことが示唆された」としている。

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南アフリカ株(B.1.351)の遺伝子変異とワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏)-1381

 前回の論評で考察したように、コロナウイルスは間断なく進化/変異を遂げ、世界に流布するウイルスは武漢原株からD614G株(S蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸[D]からグリシン[G]に置換)へ、さらには、N501Y株(S蛋白501位のアミノ酸がアスパラギン[N]からチロシン[Y]に置換)に変化しつつある。2021年度には、N501Y変異株が世界に流布するウイルスの主流を占めるようになるものと予測される。本論評ではD614G株を“従来株”と定義し論を進める。 N501Y株に分類される変異株の主たるものとして、英国株(B.1.1.7)、南アフリカ株(B.1.351)、ブラジル株(P.1)の3種類が存在するが、これらの変異株の実効再生産数(R)は、英国株、南アフリカ株、ブラジル株の順であり、英国株が最も高い値を示す(WHO 2021年3月21日)。それ故、現時点では、英国株が流布する地域が最も多く、4月13日現在、世界132ヵ国/地域に及ぶ。次いで、南アフリカ株の流布する地域が多く世界82ヵ国、R値が最も小さいブラジル株の播種領域は少なく、世界52ヵ国で検出されている。これら3種類のN501Y変異株は1つの国/地域で1種類の変異株が流布しているわけではなく、3種類の変異株が共存していることが多い。本邦においては、2020年12月末より、検疫での検出を含めN501Y株の国内播種が始まっており、2021年4月13日現在、1,341名(検疫:200名、国内事例:1,141名)のN501Y変異株感染者が同定されている。国内事例のうち、英国株が94%、南アフリカ株が1.3%、ブラジル株が4.4%を占める(厚労省 2021年4月13日)。本邦での南アフリカ株の発生頻度は低いが世界的には英国株に次いで重要であり、本論評では南アフリカ株の特徴、とくに、武漢原株のS蛋白遺伝子配列を基に作成された種々のワクチンの効果について考察する。 南アフリカ株の遺伝子配列上の特徴に関する詳細は他紙(山口. 日本医事新報. 2021;5053:32-38.)に譲るが、S蛋白の構造を規定する遺伝子配列としてD614G変異を除いて9個の非同義変異が確認されている。これらの変異にあって重要なものは、ACE2との親和性を増強しウイルスの生体への侵入を助長、播種性を増加させるS1蛋白の受容体結合ドメイン(RBD)におけるN501Y変異と“免疫回避反応”を惹起するE484K変異(S蛋白484位においてグルタミン酸[E]がリシン[K]に置換)である(Tegally H, et al. medRxiv. December 22, 2020. [Epub ahead of print])。この2つの遺伝子変異はブラジル株でも認められる(Sabino EC, et al. Lancet. 2021;397:452-455.)。英国株ではE484K変異を認めないが、代わりに69~70位と144位におけるアミノ酸欠損が“免疫回避反応”を惹起する。 以上のような遺伝子変異の結果として、従来株感染後の回復期血漿に含まれるS蛋白特異的IgG抗体による液性中和作用は、南アフリカ株に対して11~33倍低下していた(Wang P, et al. bioRxiv. January 26, 2021. [Epub ahead of print])。同時に、南アフリカ株に対する液性中和作用は、Pfizer社のBNT162b2で8.8~14倍(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 8. [Epub ahead of print])、Moderna社のmRNA-1273で6.4倍(Wu K, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 17. [Epub ahead of print])、AstraZeneca社のChAdOx1で8.9倍(Emary KRW, et al. Lancet. 2021;397:1351-1362.)低下していることが報告された。その他、南アフリカ株に対する液性中和作用は、Novavax社のNVX-CoV2373で14.5倍、ロシアのGam-Covid-Vac(Sputnik V)で6.8倍、中国Sinovac社のCoronaVacならびにSinopharm社のBBIBP-CorVで2.4~3.3倍低下していた(WHO 2021年4月13日; Wang GL, et al. N Engl J Med. 2021 Apr 6. [Epub ahead of print])。従来株感染後あるいはワクチン接種後に得られた血漿の南アフリカ株に対する液性中和作用の減弱は主としてE484K変異によってもたらされるが、その他、K417N変異(S蛋白417位でリシン[K]がアスパラギン[N]に置換)、242~244位のアミノ酸欠損も関与するとされている。一方、BNT162b2の英国株、ブラジル株に対する液性中和作用は維持されていた(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 8. [Epub ahead of print])。すなわち、南アフリカ株に対するワクチンの液性中和作用は、mRNAワクチン(BNT162b2、mRNA-1273)、Adenovirus (Ad)-vectoredワクチン(ChAdOx1、Gam-Covid-Vac)、蛋白ワクチン(NVX-CoV2373)、不活化ワクチン(CoronaVac、BBIBP-CorV)とワクチンの種類によらず減弱しているものと考えなければならない。 南アフリカ株感染に対するワクチンの実際の予防効果を検討した報告は多くないが、Madhiらは、AstraZeneca社のAd-vectoredワクチンであるChAdOx1は南アフリカ株感染に対して有効な発症予防効果を示さないことを明らかにした(Madhi SA, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 16. [Epub ahead of print])。彼らの報告によると、南アフリカ株に対するChAdOx1の発症予防効果は、1回の接種後で33.5%(95%信頼限界[CI]:-13.4~+61.7%で非有意)、2回接種後で10.4%(95%CI:-76.8~+54.8%で非有意)でともに有意な予防効果ではなかった。一方、1回接種のAd-vectoredワクチンとして開発されたJohnson & Johnson社のAd26.COV2.Sの発症予防効果は、従来株に対して72%、南アフリカ株に対して57%であった(ENSEMBLE Study, PRNewswire. 2021年1月29日)。興味深い事実として、Ad26.COV2.Sのブラジルを中心とした南米での発症予防効果は66%で、従来株と南アフリカ株に対する予防効果の中間に位置した。Novavax社の蛋白ワクチンNVX-CoV2373の2回接種後の発症予防効果は、英国株(従来株を含む)に対して85.6%、南アフリカ株(対象はHIV陰性者)に対して55%であった(Brown. Evaluate Vantage. 2021年1月29日)。以上の結果を総括すると、武漢原株のS蛋白遺伝子情報を基に作成された種々のワクチンの変異株に対する液性中和作用は著明に減弱しているにもかかわらず、発症予防効果は英国株に対してはほぼ維持、南アフリカ株に対しては低下(しかし、有効)、ブラジル株に対しては両者の中間(有効)に位置するものと考えられる。以上の事実は、ワクチン接種後の液性中和作用の減弱がT細胞由来の細胞性免疫の賦活によって補完されていることを示唆する。 現状のワクチン接種が世界的に推進されていくと、従来株に加え変異株の中心的存在である英国株に対しても、今年中に集団免疫が確立されるものと予測される。その結果、コロナウイルスは集団免疫を回避するため、現状のワクチンに対して英国株より強い免疫回避作用を有する南アフリカ株、ブラジル株を近未来のウイルスとして選択する可能性がある。あるいは、現在の変異株と質的に異なる免疫回避作用を有する強力な新規変異株が形成される可能性も否定できない。ワクチン接種による従来株、英国株に対する集団免疫の確立は人類にとって必要不可欠な事項であるが、それでコロナ感染症が終焉を迎えるわけではなく、その先には、新たな未知の闘いが待っている可能性を念頭に置く必要がある。

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全身性アミロイドーシス〔amyloidosis〕

1 疾患概要アミロイドーシスとは、通常は可溶性である蛋白質が、さまざまな要因により不溶性の線維状構造物であるアミロイドヘと変性し、諸臓器に沈着することで種々の機能障害を来す疾患群である1)。全身の諸臓器にアミロイド沈着が起こり臓器障害を引き起こす全身性アミロイドーシス、1つの臓器に限局してアミロイド沈着を起こす限局性アミロイドーシスに分類されるが、これまで42のアミロイド前駆蛋白質が明らかになっている(表)。表 主なアミロイドーシスの分類画像を拡大する(Buxbaum JN, et al. Amyloid. 2022;29:213-219.より引用作成)その中で患者数も多く、治療できる疾患は以下の通りである。ALアミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー([familial amyloid polyneuropathy:FAP]、ATTRv)、老人性全身性アミロイドーシス(ATTRwt)は厚生労働省に難病指定されている。1)ALアミロイドーシス異常形質細胞が単クローン性に増殖し、その産物である免疫グロブリン(M蛋白)の軽鎖(L鎖)がアミロイドを形成する。まれに重鎖(H鎖)が前駆蛋白質となるAHアミロイドーシスもある。2)ATTRvアミロイドーシス遺伝的に変異を起こしたトランスサイレチン(transthyretin:TTR)が前駆蛋白となり末梢神経、自律神経系、心、腎、消化管、眼などの臓器に沈着する常染色体顕性遺伝形式のアミロイドーシスを言う。3)AAアミロイドーシス関節リウマチ(RA)など慢性炎症に続発し、血清アミロイドA蛋白が原因蛋白質となる。4)ATTRwtアミロイドーシスTTRが前駆蛋白となり、70歳代以降に発症しやすく、主に心臓や運動器に疾患を来す。5)透析アミロイドーシス長期の透析に伴いβ2ミクログロブリンが前駆蛋白となり、 手根管や運動器に沈着する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)アミロイド蛋白質の沈着臓器は、心臓、腎臓、消化管、神経、眼、運動器など多臓器にわたり、臨床症状は多彩である。初期にはALアミロイドーシスでは全身倦怠感、体重減少、浮腫、貧血などの非特異的症状があるが他の病型では特徴的な症状がない。経過中にうっ血他心不全、蛋白尿、吸収不良症候群、末梢神経障害、起立性低血圧、手根管症候群、肝腫大、巨舌、皮下出血などを呈する。1)心アミロイドーシス超音波エコーや心電図、MRI、血清NT-proBNPなどでスクリーニングができるが、ピロリン酸心筋シンチを行うと90%以上の感度でATTRvやATTRwt症例では陽性になることが明らかになっている。本症は最も生命予後を左右する。2)末梢神経障害ATTRvやATTRwtアミロイドーシス、ALアミロイドーシスなどで認められるが、皮膚パンチ生検、神経伝導速度、SudoScanなどで小径線維の障害を証明することが重要である。3)腎アミロイドーシスしばしばネフローゼ症候群を呈し、蛋白尿や浮腫、 低アルブミン血症を呈する。胸水や心嚢液貯留をみることもある。4)消化管胃および十二指腸に沈着しやすい。交替性下痢便秘が起こり吸収不良症候群や下痢がみられる。血管周囲へのアミロイドの沈着が起こり 消化管出血が起こることもある。■ 診断全身性アミロイドーシスの診断には、 少なくとも2臓器にわたる病変を認めることが重要であり、限局性アミロイドーシスと鑑別する必要がある。確定診断は病理検査が必要で、アミロイドーシス全般のスクリーニングとしては腹壁脂肪生検が広く行われている。低侵襲性で簡便であるが、ATTRv以外では感度が低いため、複数の臓器(消化管[とくに胃・十二指腸]、口唇、皮膚、唾液腺、歯肉生検など)での生検を行いコンゴレッド染色で陽性を確認する必要がある。その後、前駆蛋白を免疫組織染色で決定し(決定できないときは質量分析装置を使用する)、各種検査により病変臓器の範囲を決定し、治療の方針を決めていく。ALアミロイドーシスではM蛋白の検出には、血清・尿の電気泳動が行われてきたが、遊離軽鎖(free light chain:FLC)が保険適用となり感度が98%と高いことから、広く行われるようになっている。アミロイドーシスでは疾患特異的なマーカーがないので、既存の疾患に該当しない場合、まず本症を疑うことが重要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)ALアミロイドーシスボルテゾミブ、サリドマイドなどの化学療法薬も用いられるが、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+シクロフォスファミド+デキサメタゾン(DCyBorD)療法が保険適用となっている。2)ATTRvアミロイドーシス(1)肝移植アミロイド原因蛋白質である異型TTRの95%以上が肝臓で産生されることから、1990年以来、世界各国で肝移植が試みられてきたが治療薬剤の登場と共に行われなくなった。(2)薬剤療法TTRの四量体を安定化させアミロイド沈着を防ぐdiflunisal(外国購入で使われている)、タファミジス(商品名:ビンダケル)が使用可能になり、ニューロパチー、心機能悪化が抑制されている。また、RNAi治療薬パチシランナトリウムを改良し3ヵ月に1回の皮下注射製剤、ブトリシラン(同:アムヴトラ)が開発され、ニューロパチーには改善効果が認められている(海外ではすでに心アミロイドーシスにも使用されている)。(3)眼科的治療緑内障や硝子体混濁に関しては手術を行う。3)ATTRwtアミロイドーシスタファミジスが心不全の改善効果を示し、死亡率を抑制することが明らかになっている。siRNA TTR製剤もATTRvに伴う心不全に対し改善効果があることが明らかになっている。4)AAアミロイドーシス本症を引き起こす原疾患はRAが大多数であるため、リウマチ治療薬が結果として本症の治療になる。抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(同:アクテムラ)投与によりアミロイド沈着が完全に消失したとする報告もある。5)透析アミロイドーシス透析膜の改良により発症頻度が低下している。透析にアミロイド吸着カラム(リクセル)を用いることがある。6)その他の対症療法心アミロイドーシスは利尿薬による対症療法が中心となる。ジギタリスやカルシウム拮抗薬はアミロイド線維と結合し感受性が高まるため、中毒のリスクや血行動態悪化の危険があるので、注意が必要である。腎アミロイドーシス蛋白尿の減少にACE阻害薬が有効であることもある。末期の腎不全に関しては腹膜透析、血液透析を行う。腎移植は腎以外のアミロイドの沈着がない場合に考慮する。消化管アミロイドーシスでは下痢に注意が必要である。低栄養状態の患者には十分な栄養を経口、経静脈的に補給する。4 今後の展望ALアミロイドーシスでは、ミエローマ細胞に対する治療薬の開発が進んでいる。ATTRvアミロイドーシスではgene silencing治療に加え、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集治療がPhase studyIIに入っている。AAアミロイドーシスは原因疾患としては最も多いRAの生物製剤治療が進み、今後さらに患者数は減っていくものと思われる。透析アミロイドーシスは透析膜の改良によりさらに患者数が減少している。ALアミロイドーシスとATTRvの組織沈着アミロイドをターゲットとした抗体治療の開発が進みPhase studyに入っている。5 主たる診療科ALアミロイドーシスは血液内科、ATTRvアミロイドーシスは神経内科、循環器内科、消化器内科、整形外科、ATTRwtアミロイドーシスは循環器内科、神経内科、整形外科、AAアミロイドーシスはリウマチ科、透析アミロイドーシスは腎臓内科などの診療科が、これまで主に診療にあたってきたが、アミロイドーシス全体の啓発活動が活発化し、横断的な診療が行われるようになった。心アミロイドーシスを来すのはAL 、ATTRv、ATTRwt アミロイドーシスなどで高率にみられる。どの全身性アミロイドーシスも腎にアミロイド沈着がみられるので腎臓内科の関与が必要である。また、ATTRvアミロイドーシスにおいては眼アミロイドーシスを呈するため、眼科の関与が必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報「アミロイドーシス調査研究班」(厚生労働省)ホームページ(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報道しるべの会(FAP患者家族会)(患者とその家族および支援者の会)1)植田光晴 編集、安東由喜雄 監修. 21世紀の疾患:神経関連アミロイドーシス. 2020;医学と看護社.2)Kastritis E, et al. N Engl J Med. 2021;385:46-58.3)Ando Y, et al. Amyloid. 2022;29:143-155.4)Frederick L. et al. J Am Coll Cardiol. 2019;73:2872-2891.5)Buxbaum JN, et al. Amyloid. 2022;29:213-219.公開履歴初回2021年4月28日更新2024年6月21日

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“看取り”に関わらないからといって、“緩和ケア”に関わらないわけではない!【非専門医のための緩和ケアTips】第2回

第2回 “看取り”に関わらないからといって、“緩和ケア”に関わらないわけではない!前回からスタートした「非専門医のための、明日から使える緩和ケアTips」です。「緩和ケア」というと、「緩和ケア病棟のような、専門病棟に入院する患者に提供される濃密なケア」というイメージを抱く方が多いようです。ですが、がん患者に限ってみても、緩和ケア病棟で亡くなるのは全体の12%程度です。では、残りの9割近くの方は、どこで人生の最終段階を過ごしているのでしょうか? そう、緩和ケア病棟以外の一般病床や施設、そしてご自宅です。つまり、緩和ケア病棟だけでなく、患者さんが過ごすさまざまな場で「緩和ケア」を提供する必要があるのです。「さまざまな場で緩和ケアを必要とする人に最適なケアを届けるため、緩和ケアを専門とする私や仲間たちが学び、使っているノウハウを共有しよう!」というのが、この連載のテーマです。今日の質問通院が困難となり、訪問診療をしている高齢患者さん。ご家族から、「最後まで自宅で過ごさせたいけれど、可能でしょうか?」と相談を受けました。今後どのような話し合いをするとよいでしょうか?皆さんは診療時に、どのように緩和ケアに取り組んでいますか? こんな風に聞くと、「いやいや、うちは訪問診療をしてはいるけど、看取りは対応していないので」なんて声も聞こえてきそうです。もちろん、看取りを視野に入れたケアは、比較的短期間に集中的な介入やコミュニケーションが要求される、緩和ケアにおけるメジャーな分野です。でも、緩和ケアはそこだけにとどまらず、普段外来に来ている患者さんに対しても意識することで、実践できることはたくさんあります。というか、そういった時期にこそ緊急性がない分、落ち着いた取り組みができるはずです。最近は、人生の最終段階に備えて、意向を共有しておくプロセスの重要性が増しているといわれています。いわゆる「アドバンス・ケア・プランニング(ACP:Advance Care Planning)」というやつですね。ACPのような取り組みも、病状が穏やかで、切迫した意思決定が必要ないときのほうが本質的な話ができます。病状が進行してからの話し合いでは、どうしても急いで決めないといけない重要なことに目が向いてしまいます。そうなると、ACPの重要なコンセプトである「前もって」「意向や価値観の共有」という2点が損なわれ、具体的な医療行為の決定のみに走る傾向になります。ここを何とかできるのが、普段の診療をしている医療者、主に開業医の先生方なのです。ここは急性期病院に勤める私としては、うらやましい限りです。とはいえ、実際に診療で何をするかとなると、「?」となる方がほとんどだと思います。「すべての医療現場に緩和ケアを」というコンセプトには賛同できても、具体的にどのように取り組めばよいかがわからない、というのも当然です。そのあたりをこの連載で順次お話しできればと思いますが、今回はまず、「“看取り”に関わらないからといって、“緩和ケア”に関わらないわけではない」ということを、ご理解いただければと思います。ここで1つ、コツを紹介です。患者さんと病気以外のことを話している瞬間ってありますよね? 私は高齢の方を診ることが多いので、これまで経験した職業や育った地域のことなど、雑談っぽく聞いています。実はこれ、その人の物語的(ナラティブ)なエピソードを理解するという点で、緩和ケア的なアプローチなんです。こういった話をすると、「診療時は時間がないから無理」なんて声も聞こえてきそうです。決して1人で取り組む必要はないですし、看護師さんの力を借りるのも有効かもしれません。こんなふうに「緩和ケア」を広く捉えていただくことが、緩和ケアを皆さんの診療に加えていく最初の一歩になります。次回以降、物語的(ナラティブ)な対話について、具体的にどのように取り組んでいるかを紹介しながら「時間がない」問題について考えていきましょう。今回のTips

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アダリムマブ、バイオシミラーへの切り替えでアウトカムは?

 2021年4月現在、日本では15種のバイオシミラー(バイオ後続品)が承認されており1)、アダリムマブ(先発品:ヒュミラ)もその1つだが、アダリムマブバイオシミラーへの切り替え後のアウトカムについて、デンマークの乾癬患者に関するコホート研究の結果が、同国・コペンハーゲン大学のNikolai Loft氏らにより示された。切り替え群と非切り替え群の計726例を対象とした検討で、両群間の1年治療継続率の有意差はなかったという。アダリムマブバイオシミラーの有効性は、臨床試験で先発品と同等であることが示されているが、リアルワールドにおけるデータは限定的である。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年4月7日号掲載の報告。アダリムマブ先発品からバイオシミラーに切り替えた群とアダリムマブ先発品の治療群を比較 研究グループは、2007年以降のデンマーク国内全乾癬患者が登録されているBiological Treatment in Danish Dermatology(DERMBIO)レジストリを利用して、アダリムマブの先発品からバイオシミラーへの義務的な切り替え後のアウトカムを評価するコホート研究を行った。 2018年11月1日~2019年5月1日にアダリムマブを先発品からバイオシミラーに切り替えた全患者(バイオシミラー群)と、2017年5月1日~11月1日に受診し、アダリムマブ先発品で治療を受けていた全患者(先発品群)を比較した。データの解析は、2020年6月1日~10月10日に行われた。 主要アウトカムは、1年治療継続率で、バイオシミラー群と先発品群の治療継続率を粗率および補正後について算出し、ロバスト分散を用いたCox比例ハザード回帰法で比較した。 アダリムマブを先発品からバイオシミラーに切り替えたアウトカムを評価した主な結果は以下のとおり。・バイオシミラー群に計348例(平均年齢52.2[SD 13.6]歳、男性251例[72.1%])が、先発品群には378例(51.1[14.1]歳、男性272例[72.0%])が包含された。・1年治療継続率は、バイオシミラー群92.0%(95%信頼区間[CI]:89.0~94.9)、先発品群92.1%(89.4~94.8)であった。・両群間に観察されたハザード比(HR)は同等であった。・バイオシミラー群と先発品群を比較した、すべての治療中断に関する粗HRは1.02(95%CI:0.61~1.70、p=0.94)、効果不十分に関する粗HRは0.82(0.39~1.73、p=0.60)、有害事象に関する粗HRは1.41(0.52~3.77、p=0.50)であった。

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英国株(B.1.1.7)の遺伝子変異、疫学、臨床、今後の重要性(解説:山口佳寿博氏)-1380

 2019年の末に発生した新型コロナの原型である武漢原株は、2020年2月末ごろからD614G株(S蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)に置換、その他、4個の遺伝子変異を伴う)に置換された。D614G変異は生体へのウイルス侵入量を増加させ武漢原株より高い感染性を示す(山口. 医事新報 No.5026:26-31, 2020)。2020年9月ごろまではD614G変異株が世界の中心的ウイルスであったが、9月以降、英国、南アフリカ、ブラジルを中心にD614G株からさらなる変異を遂げたN501Y株(S蛋白501位のアミノ酸がアスパラギン(N)からチロシン(Y)に置換)が蔓延するようになった。以上のような背景を鑑み、本論評ではD614G株を“従来株”と定義する。英国、南アフリカ、ブラジルで播種しているN501Y変異株は同じウイルスではなく互いに独立したものであるが3種の変異株の共通項がN501Y変異である(山口. 医事新報 No.5053:32-38, 2021)。PANGO lineageに則った名称として、英国株はB.1.1.7、南アフリカ株はB.1.351、ブラジル株はP.1と命名された。別名として、英国株はVOC 202012/01、20I/501Y.V1、南アフリカ株はVOC 202012/02、20H/501Y.V2、ブラジル株はVOC 202101/02、20J/501Y.V3とも呼称される。2021年4月13日現在、世界206ヵ国/地域の中で英国株は132ヵ国/地域(64%)、南アフリカ株は82ヵ国/地域(40%)、ブラジル株は52ヵ国/地域(25%)で検出され、N501Y株がD614G株を凌駕し世界に流布するコロナウイルスの中心的存在になりつつある(WHO 2021年4月13日)。これら代表的なN501Y変異株に加え、フィリピンではN501Y変異を有するが英国株、南アフリカ株、ブラジル株とは異なる変異株が同定されている(B.1.1.28.3/P.3)。以上のN501Y関連変異株以外にN501Y変異を有さない5種類の変異株が米国(B.1.427/B.1.429、B.1.526)、英国(B.1.525)、フランス(B.1.616)、ブラジル(B.1.1.28.2/P.2)、ナイジェリア(B.1.525)において同定されている。以上の変異株にあって英国株の流布範囲が最も広く、アフリカ、中南米の一部を除き多数の感染者が確認されている。アフリカ、中南米の一部で英国株が検出されていないのは、検査不十分である可能性が高く、実際は、これらの地域にも英国株は侵入しているものと考えなければならない。すなわち、今後の世界的ウイルス播種として、この数ヵ月の間に従来株が英国株を中心とするN501Y株に置換されていくものと推察される。 本邦においてもN501Y株の播種は始まっており、2020年12月25日に英国株が英国からの帰国者において、2020年12月28日に南アフリカ株が南アフリカからの帰国者において、2021年1月6日にはブラジルからの渡航者からブラジル株が検出された。2021年4月6日現在、1,038例のN501Y株の感染者(検疫:152例、国内発症:886人)が確認されている(厚生労働省2021年4月6日)。国内事例は、47都道府県の81%に当たる38都道府県で発生しているが、英国株が92%、南アフリカ株が1.7%、ブラジル株が6.3%を占めている。1週後の4月13日には、変異株の検出は42都道府県(89%)まで増加している(厚生労働省2021年4月13日)。N501Y株感染者の多くは、大阪府、兵庫県を中心とする関西圏で検出されており、北海道、関東圏がこれに続く。変異株陽性率(変異株陽性/変異株総検査数)は、3月初旬で6.6%であったものが3月下旬では20.1%に上昇しており、この傾向が持続するならば、この数ヵ月の間に英国株を中心とするN501Y株が従来株を凌駕し本邦で播種するウイルスの主流を占めるようになるものと予測される。英国では、9月末の発症から3ヵ月間でウイルスの75%が英国株に置換(Challen R, et al. BMJ. 2021;372:n579.)、カナダのトロント地域でも12月中旬より3ヵ月の間にウイルスの75%が英国株に置換された(Brown KA, et al. JAMA. 2021 Apr 8. [Epub ahead of print])。 以上のような播種ウイルスの質的変化を考えるならば、今後のコロナ感染症は従来株で明らかにされた内容から英国株を中心に考え直す必要がある。まず遺伝子配列の変化を考えていく。英国株は従来株から発生した変異株でD614G変異を含めウイルス全体で18個の非同義変異(アミノ酸配列の変化あり)と6個の同義変異(アミノ酸配列の変化なし)を発現している(Public Health England)。S蛋白にはD614G変異を除いて8個の非同義変異を有し、N501Y変異はS蛋白とACE2の親和性を高め感染性を増強する。同様に、P681H(S蛋白681位のアミノ酸がプロリン(P)からヒスチジン(H)に置換)は生体のserine proteaseによるS蛋白の切断力を高めN501Y変異と同様に感染性を増強する。69~70位のアミノ酸欠損(Δ69~70、69位、70位におけるヒスチジン(H)とバリン(V)の欠損)とY144変異(144位におけるチロシン(Y)の欠損)はS蛋白に対する抗体(自然感染、ワクチン接種により形成された抗体)の結合を阻害し“免疫回避反応”を惹起する(英国株の免疫回避反応は南アフリカ株に比べ弱い)。興味深い事実として、Δ69~70はS蛋白を標的としたPCR反応を阻害する(SGTF:S-gene test failure)。そこで、nucleocapsid(N)、open reading frame-1ab(ORF1ab)を標的としたPCRが陽性であるにもかかわらずSGTFを示す場合には、遺伝子解析を施行せずとも英国株感染と診断できる(診断精度:99.5%)。 上記の遺伝子変異を背景として英国株の臨床的特徴を従来株と比較しながら考察する:(1)英国株の播種性は従来株より43~90%高く(Davies NG, et al. Science. 2021;372:eabg3055.)、実効再生産数(R)は1.5~2.0倍に達する(Volz E, et al. Nature. 2021 Mar 25. [Epub ahead of print])。(2)本論評で採り上げたChallen氏らの論文(Challen R, et al. BMJ. 2021;372:n579.)では、英国株は従来株に比べ重症度が高く、死亡率を1.64倍上昇させると報告されたが、英国株が重症度、死亡率を変化させないという逆の報告もあり(Frampton D, et al. Lancet Infect Dis. 2021 Apr 12. [Epub ahead of print])、この問題に関してはさらなる検討が必要である。(3)英国株感染者の男女比、年齢分布は従来株とほぼ同様である(Public Health England)。(4)再感染率に関しても従来株と明確な差を認めない(従来株:0.2~0.65%、英国株:0.7%)(Boyton RJ, et al. Lancet. 2021;397:1161-1163.、Graham MS, et al. Lancet Public Health. 2021 Apr 12. [Epub ahead of print])。(5)mRNAワクチン(Pfizer社BNT162b2、Moderna社mRNA-1273)は、英国株に対する液性中和反応を維持した(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 17. [Epub ahead of print]、Wu K, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 17. [Epub ahead of print])。この基礎的結果を支持する知見として、データ集積時に英国株が80%を占めたイスラエルでの解析においてBNT162b2の発症予防効果は94%であり、従来株に対する発症予防効果(95%)と同一であることが示された(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)。(6)一方、AstraZeneca社のadenovirus-vectoredワクチン(ChAdOx1)の英国株に対する液性中和反応は従来株に比べ約9倍低かった。それにもかかわらず、ChAdOx1の英国株感染に対する実際の発症予防効果は70.4%であり、従来株に対する予防効果(81.5%)より低いものの有効な範囲に維持されていた(Emary KRW, et al. Lancet. 2021;397:1351-1362.)。ChAdOx1に関する液性中和反応と臨床的予防効果の解離は、T細胞性免疫の維持によって説明できる。ワクチン接種によって記憶T細胞を介する細胞性免疫が賦活されるが、このT細胞性免疫機能は限局した変異に規定されるものではない(山口. 医事新報 No.5053:32-38, 2021)。それ故、たとえ、遺伝子変異によって液性中和反応が低下したとしてもT細胞性免疫機能の賦活によって英国株に対する発症予防効果が維持されたものと考察される。 本邦においても小数例(n=874、92%までが英国株)であるが英国株を中心とするN501Y変異株感染に関する臨床的特徴が発表された(国立感染症研究所2021年4月5日)。内容は海外で報告されたものとほぼ一致し、実効再生産数は従来株の1.32倍であった。海外の報告と異なった点は、15~29歳の若年層におけるN501Y株感染率が従来株の場合に比べ少し高値であったことである。再感染率、入院率、死亡率などは検討されていない。英国株感染に起因する臨床像には人種差が存在する可能性があり、本邦を含め世界各国においてさらなる解析を期待するものである。

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第57回 運動が良いのはヒスタミンのおかげ/抗老化成分がヒト試験で効果/mRNAワクチンの威力

運動はおそらく骨格筋順応を介して体調を上向かせ、骨格筋の衰えは老化を招きます。そんな健康維持に不可欠な骨格筋にまつわる2つの研究成果を紹介します。また、mRNAワクチンの威力を示した介護施設での感染解析結果を簡単にお知らせします。運動はヒスタミン受容体を介して体を鍛えるヒスタミンに関わる研究といえば主にアレルギー・炎症・胃酸分泌ですが、運動とのおそらく重要な関わりが随分古くから知られており、今から遡ること100年近く前の1935年には犬の静脈血のヒスタミンが筋肉収縮で増えることが報告されています1)。そのおよそ20年後の1958年には人の血中のヒスタミンが運動で増えることを示した報告2)があり、同時期の報告では人の前腕や手の動脈でヒスタミンが血管拡張作用を担うことが確認されています3)。時代は進んで今世紀初めの2006年の報告では人の運動後の骨格筋の血流増加(postexercise hyperemia)にヒスタミンH1/H2受容体が携わることが示され、幾つかの報告をまとめるとヒスタミンは運動後の回復に与る血管拡張にどうやら寄与すると示唆されました4)。有酸素運動はなんであれ体によく、心疾患などの慢性疾患の治療や予防に大変役立ちます。運動が健康に良いことを支える仕組みはよく分かっていませんでしたが、Science Advances誌に今月中頃に発表された試験報告によるとヒスタミンは運動後の回復に与するのみならず運動の健康増進作用にもなくてはならない働きをどうやら担っているようです5,6)。ベルギーのゲント大学の運動生理学者Wim Derave氏らのチームは健康な男性20人を募り、きつめのインターバル運動を6週間にわたって週3回繰り返してもらいました。男性の半数は運動の1時間前にヒスタミン受容体H1とH2を遮断する薬フェキソフェナジンとラニチジンかファモチジンを服用し、残り半数はプラセボを服用しました。そうして6週間後、ヒスタミン受容体遮断薬を服用した男性はプラセボ服用男性に比べて運動性能指標やミトコンドリアのエネルギー生成の改善が劣りました。また、血中の糖を細胞に移すインスリンの働きはプラセボ群では改善していたのにヒスタミン受容体遮断薬服用群ではそうなっていませんでした。ヒスタミン受容体遮断薬服用群では脚の筋肉の毛細血管形成が少なく、内皮細胞の形成に不可欠な内皮型一酸化窒素合成酵素の上昇が見られませんでした。先達の研究でも示唆されている通りヒスタミンは運動後の筋肉血流の最適化に関わって運動への全身反応を指示するのかもしれないと著者は考察しています。ヒスタミンH1/H2受容体が体調を整える仕組みや慢性疾患がヒスタミン作用にどう影響するかを今後調べることで新たな薬の標的の発見や運動の最適化の道が開けそうです5)。抗老化成分NMNでヒトのインスリンの働きもマウスと同様に改善マウスの老化の弊害を食い止めて代謝を改善することが知られる細胞成分・ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の元となるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を糖尿病になりそうな太った女性に投与した無作為化試験で有望なことにインスリン感受性改善が認められました7)。糖尿病の水準には至っていないものの血糖値が高めで太り過ぎか肥満の女性25人が試験に参加しました。13人はNMN 250 mgを10週間毎日服用し、残り12人にはプラセボが同じように投与されました。その結果、骨格筋に糖を受け取らせるインスリンの働きがNMN投与で改善し、骨格筋の構えや作り変え(remodeling)に関わる遺伝子発現も向上しました。ただし、血糖値や血圧は残念ながら下がりませんでした。それに血液中の脂質や肝臓のインスリン感受性の改善も認められず、肝臓の脂肪も減りませんでした。骨格筋のインスリン感受性が改善すればたいてい他の代謝指標も同様に改善するのですが今回の試験ではそうなりませんでした。とはいえ今回の試験結果は抗老化治療の開発を確かに一歩前進させるものです。インスリンは筋肉の糖の取り込みや貯蔵を促し、その効果が衰えると2型糖尿病を生じ易くなります。その衰えをどうやら食い止めるらしいNMNが骨格筋でどう働くかを今後の研究で詳しく把握する必要があります。また、前糖尿病や糖尿病を予防したり乗り切るのにNMNが役立つかどうかを試験しなければなりません。NMNは雌のマウスにとくに有効なので今回の試験は女性を募りましたが、男性も含めた試験に研究者はすでに着手しています8)。介護施設でmRNA COVID-19ワクチン接種が威力を発揮Pfizer/BioNTechかModernaのmRNAワクチンを去年12月から接種し始めた米国イリノイ州シカゴの75の介護施設で3月末までに居住者7,931人と職員6,834人が2回目接種を済ませ、その期間に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染した627人のうちワクチン2回目接種から14日以降に感染したのはわずか22人(4%;22/627人)のみでした9,10)。感染したとはいえそれら22人の6割以上14人は無症状で、22人から施設の他の人への感染は認められませんでした。また、PCR検査結果によると22人のウイルス量は少なめでした。同国ケンタッキー州の介護施設1つでのCOVID-19感染流行を調べた別の報告でもPfizer/BioNTechのmRNAワクチンの効果を裏付ける結果が得られています。2回目のワクチン接種から2週間が過ぎた居住者や職員の感染率はおよそ87%低かったと推定されました11)。参考1)McCord JL,et al. J Appl Physiol (1985). 2006 Dec;101:1693-701. 2)DUNER H, et al. Scand J Clin Lab Invest. 1958;10. :394-6.3)DUFF F, et al. J Physiol. 1954 Sep 28;125:581-9.4)Luttrell MJ, et al.Exerc Sport Sci Rev. 2017 Jan;45:16-23.5)Van der Stede T, et al. Sci Adv. 2021 Apr 14;7:eabf2856.6)Regular HIIT Exercise Enhances Health via Histamine / TheScientist7)Yoshino M, et al. Science. 2021 Apr 22:eabe9985. [Epub ahead of print]8)Anti-aging compound improves muscle glucose metabolism in people / Eurekalert9)Postvaccination SARS-CoV-2 Infections Among Skilled Nursing Facility Residents and Staff Members - Chicago, Illinois, December 2020-March 2021. MMWR. April 21, 2021.10)US administers 200 million COVID-19 vaccine doses / University of Minnesota11)COVID-19 Outbreak Associated with a SARS-CoV-2 R.1 Lineage Variant in a Skilled Nursing Facility After Vaccination Program - Kentucky, March 2021. COVID-19 Outbreak Associated with a SARS-CoV-2 R.1 Lineage Variant in a Skilled Nursing Facility After Vaccination Program - Kentucky, March 2021. MMWR. April 21, 2021.

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全粒穀物、豆類そして野菜をしっかり食べよう!―低GI食と心血管疾患(解説:住谷哲氏)-1379

 今から20年ほど前に「低インスリンダイエット」なるものが世間で流行した。筆者も糖尿病の食事療法との関係で何冊か本を読んだ記憶がある。「低インスリンダイエット」は米国で流行したダイエット本「Sugar Busters!」(邦訳:「シュガーバスター」1999年、講談社)がわが国でアレンジされたもののようであるが、そこで初めてグリセミック指数(glycemic index:GI)について知った。GIの概念を提唱したのはカナダ・トロント大学のJenkinsであるが、本論文の筆頭著者を見て少々驚いた。JenkinsがGIに関する最初の論文を報告したのが今から40年前の1981年であるから、はじめは別人かと思ったが、David J.A. Jenkins, Torontoとあるので間違いなく本人である。40年以上にわたって1つのテーマに専心して研究を続けられるところが、やはり欧米の学問の層の厚さである。 GIは、簡単に言えば、「炭水化物を含有する食品摂取後の血中グルコース値の上昇のしやすさ」の指標である。基準食品としてはJenkinsの最初の論文では白パン(white bread)50gが用いられたが、最近ではグルコース50gが用いられることが多い。すなわちGI=試験食品50g摂取後2時間における血糖値上昇曲線下面積/グルコース50g摂取後2時間における血糖値上昇曲線下面積×100となる。いろいろな食品のGI値が知りたい場合にはシドニー大学のサイト「Sydney University Glycemic Index Research Service」が有用である。GI値は食品の調理法や同時に摂取する他の食品の影響を受けるので、細かいGI値を覚える必要はない。一般的に食物繊維の多い食品、精製していない食品、たとえば豆類や全粒穀物は低GI食品であり、逆に白米、うどんやパンなどの精製された穀物や砂糖入り飲料水などは高GI食品に分類される。 これまでに、全粒穀物や食物繊維を多く含む低GI食品を摂取することが糖尿病の発症予防および治療に有用であることが報告されている1)。一方で、低GI食品が心血管疾患の予防に有用か否かはコンセンサスが得られていない。さらにGIと疾患との関連を研究した報告はほとんどが先進欧米諸国からの報告であり、開発途上国からはほとんどない。そこで著者らはGIと心血管疾患との関連を、多くの開発途上国を含んだ国際前向きコホート試験「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)」において検討した。 炭水化物食品はGI値により7群に分類され、各群のGI値はそれぞれ豆類(legumes)42、豆類を除いたでんぷん質食品(nonlegume starchy foods)93、非でんぷん野菜(non-starchy vegetables)54、果物(fruits)69、果実飲料(fruit juice)68、乳製品(dairy)38、砂糖入り飲料(sugar-sweetened beverages)87、とした。結果は、高GI値群において複合心血管イベント(HR:1.25、95%CI:1.15~1.37)、心血管死(HR:1.25、95%CI:1.05~1.49)が有意に増加していた。一方で、炭水化物の量を反映するglycemic load GL(炭水化物量g×GI/100)と複合心血管イベント(HR:1.07、95%CI:0.98~1.18)、心血管死(HR:1.16、95%CI:0.95~1.42)との間には有意な関連を認めなかった。 本論文の結果によれば、心血管疾患予防を目的とする場合には低炭水化物食(low-carbohydrate diet)ではなく低GI食を推奨するのが良さそうである。しかし低GI食に含まれる食品の多くは、心血管疾患予防に有効とされる地中海食(Mediterranean diet)と重複するものが多い。低GI食による食後高血糖の抑制が心血管イベント減少につながった、と即断するには注意が必要だろう。全粒穀物、豆類、非でんぷん野菜などの低GI食品を日常の食事に積極的に取り入れたバランスの良い食事が最も健康的である、とのきわめて常識的な結果といえよう。

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内科レジデントを終え次のステップへ、臨床留学医の挑戦はなお続く【臨床留学通信 from NY】第20回

第20回:内科レジデントを終え次のステップへ、臨床留学医の挑戦はなお続く全世界の死者が300万人を超える中、米国ではワクチン接種が進み、4月6日以降は16歳以上の全員が接種できるようになりました。それでもニューヨーク州は、変異株の影響で依然として1日5,000人程度の感染者数が続いています。しかしながらCOVID-19のために入院を要する高齢者の数は劇的に減少し、4月になってからは、ほぼ新規の入院はなくなりました。そんな中、私は7月よりAlbert Einstein Medical College/Montefiore Medical Centerという同じニューヨーク市にある病院でCardiology fellowをすることになり、その書類作業に追われております。日本と違って、入職前に健康診断を済ませる必要がある上、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)の兼ね合いから、数多くのweb based moduleをこなさないと働かせてもらえないのです。さて、今回よりフェローシップのマッチングについて話をしていきたいと思います。レジデント同様、内科のサブスペシャリティのフェローについても、マッチングのアルゴリズムに則って、ウェブ上で出願する必要があります。誰もが希望する診療科に進める日本と異なり、そこは残酷な競争の原理が働いています。例えば、内科系で最も競争の激しい循環器内科は、全米で1,083のスポットしかありません。それは、1,000人強ほどのフェローに対し必要十分な研修が行えるように、国全体でspotの数を定めているからです。それに対し、通年ならば1,400人弱ほどの出願数があるのですが、昨年は新型コロナの影響でより多く循環器科などのフェローシップへの道に流れ、さらにzoomなどによるウェブ面接となったことで、強い候補者が例年ならあまり行かないような遠隔地にある病院の面接を数多く勝ち取った上、通常ならば出るキャンセル待ちもなくなってしまい、弱肉強食の原理が色濃く出る結果となりました。そのため昨年は例年より多い1,567人の出願者数に対し、3人に1人はアンマッチという現実でした。残念ながら私の同僚でほかに4人が循環器科に出願していましたがいずれもアンマッチという状況でした(例年ならば、当院からはアンマッチは循環器科にはありません)。詳しくはこちらのウェブサイトをご覧ください1,2)。このPDFを見ると具体的な数字がありますが、IMG (international medical graduates)は、AMG (American Medical Graduates)に比べてビザ保有という点で圧倒的に不利な中で、DOと呼ばれるMDとは違う医学部の医学教育を得て卒業した米国人や、主にカリブ海地域の医学部を卒業した米国人(US Foreign)と遜色のないマッチ率となっていますが、ここに至るまでには非常に熾烈な競争を余儀なくされます。次回以降、マッチのための準備やプロセス等について述べていきたいと思います。参考1)https://mk0nrmp3oyqui6wqfm.kinstacdn.com/wp-content/uploads/2020/12/MSMP-Match-Results-Report-AY2021.pdf2)https://mk0nrmp3oyqui6wqfm.kinstacdn.com/wp-content/uploads/2019/12/415_MRS.pdfColumn画像を拡大する日本よりも数週間遅れでニューヨークにも春が来て、セントラルパークで花見を楽しむ人の姿がありました。なかなか風情のある景色が都会のオアシスに広がっています。

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中和抗体カクテル療法で症候性COVID-19発症リスクが81%減/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は4月12日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染者との家庭内での濃厚接触者を対象に、中和抗体カクテル療法によるCOVID-19発症リスクおよび負担軽減を評価した第III相臨床試験(REGN-COV 2069試験)において、良好な結果を確認したと発表した。casirivimabとimdevimabの皮下投与により、試験開始時に感染していなかった人の症候性感染の発症リスクが81%減少したことが示されたという。 REGN-COV 2069試験は、SARS-CoV-2感染者との家庭内における濃厚接触者への症候性感染予防を目的に、casirivimabおよびimdevimabの有効性と安全性を評価する複数コホートからなる二重盲検ランダム化プラセボ対照試験で、ロシュ社が米国・国立アレルギー・感染症研究所と共同で実施したもの(日本は不参加)。過去4日以内にSARS-CoV-2陽性と判定された人と同居し、ベースラインでSARS-CoV-2に感染しておらず、casirivimab+imdevimab(1,200mg)またはプラセボを単回皮下投与した1,505例が対象。主要評価項目は、29日間の評価期間におけるSARS-CoV-2の症候性感染が生じた人の割合とした。その結果、casirivimab+imdevimab群において症候性感染の発症リスクがプラセボ群に比べ81%減少(p<0.0001)したことが示された。 本試験ではさらに、新規感染の無症候性患者204例について、casirivimab+imdevimab(1,200mgの単回皮下投与)またはプラセボに無作為に割り付け、抗体カクテル療法を評価した。その結果、casirivimabとimdevimabは、症候性COVID-19に進行するリスクを全体で31%減少させた。 また、casirivimabとimdevimabによる治療を受けたものの症候性COVID-19感染を発症した人では、平均1週間以内に症状が消失したのに対し、プラセボ群では症状が消失するまでに3週間を要した。新たな、あるいは重大な安全性シグナルは認められなかった。 casirivimabとimdevimabによる抗体カクテル療法の国内開発は、中外製薬が実施している。

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中等度~重度うつ病に対するpsilocybin vs.エスシタロプラム/NEJM

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRobin Carhart-Harris氏らは、6週間の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果、中等度~重度大うつ病性障害に対しpsilocybinは選択的セロトニン再取り込み阻害薬のエスシタロプラムと比較して、6週時のQIDS-SR-16うつ症状スコアの変化に基づく抗うつ作用に有意差はないことを明らかにした。psilocybinおよびその代謝物のシロシンは催幻覚物質で、その作用は主に5-HT2A受容体アゴニスト作用による。これまでに、治療抵抗性うつ病患者を対象とした小規模な非盲検試験ではpsilocybinの抗うつ症状改善効果が報告されていた。しかし、確立された既存のうつ病治療薬とpsilocybinの直接比較は行われていなかった。著者は今回の結果に基づき、「psilocybinと既存の抗うつ薬を比較検証する、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2021年4月15日号掲載の報告。psilocybin 25mgの3週間ごと2回投与の有効性をエスシタロプラムと比較 研究グループは、長期間持続する中等度~重度大うつ病性障害患者を、psilocybin群(psilocybin 25mgを3週間隔で2回投与+プラセボを1日1回6週間投与)、およびエスシタロプラム群(psilocybin 1mgを3週間隔で2回投与+エスシタロプラムを1日1回6週間投与)のいずれかに1対1の割合で割り付けた。なお、全例に心理学的サポートを行った。 主要評価項目は、16項目版自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SR-16:スコア範囲0~27、スコアが高いほどうつ症状が重症であることを示す)のベースラインから6週時までの変化であった。副次評価項目は、6週時のQIDS-SR-16による奏効率(>50%のスコア減少)、寛解率(スコアが5点以下)などの16項目とした。6週時のQIDS-SR-16の変化量は両群で有意差なし 59例が登録され、psilocybin群30例、エスシタロプラム群29例に割り付けられた。 ベースラインのQIDS-SR-16平均スコアは、psilocybin群14.5点、エスシタロプラム群16.4点であった。6週時におけるベースラインからの変化量(平均±SE)は、psilocybin群が-8.0±1.0点、エスシタロプラム群が-6.0±1.0点であり、群間差は2点であった(95%信頼区間[CI]:-5.0~0.9、p=0.17)。 QIDS-SR-16による奏効率は、psilocybin群70%、エスシタロプラム群48%、群間差22ポイント(95%CI:-3~48)、寛解率はそれぞれ57%、28%で群間差28ポイント(95%CI:2~54)であった。 その他の副次評価項目は、全般的にエスシタロプラムよりもpsilocybin群のほうが良好であったが、多重比較の補正は行われなかった。有害事象の発現率は、両群で類似していた。

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難治性乳がん・膵がんに有効なsiRNAの開発に成功/東大医科研

 東京大学医科学研究所は、2021年4月20日、記者会見にて同研究グループが、乳がん、膵がんで発現が亢進している転写因子PRDM14遺伝子を標的とするsiRNA核酸抗がん医薬を開発したと発表。 この核酸医薬候補は新規の薬効成分であるPRDM14遺伝子配列に特異性の高いキメラ型 siRNA(一部をDNAに置換)と核酸の病変部位への送達を可能にしたYshaped block co-polymer(YBC)から構成され、非臨床試験において腫瘍径の増大の抑制を認め、遠隔転移 モデルにおいて、転移巣の減少、生存期間の延長が認められた。 PRDM14分子はがん組織にのみ発現し、乳がんの6割、膵がんでは4割に発現し、がん幹細胞性形質(抗がん剤耐性、転移・浸潤、血管新生等)を腫瘍細胞に付与することが見出されていた。 一方、PRDM14 siRNAは、安全性・血中安定性が高く十分なRNA干渉効果が得られる「キメラ型siRNA」とし、off target効果を排除した治療用配列を選定した。さらに、新たに開発された核酸ナノキャリアであるYBCを用いることで、がん組織への高い集積性を示すことに成功した。 難治性トリプルネガティブ乳がん、膵がんのPRDM14陽性動物モデルで、同siRNA核酸医薬候補の治療効果を評価した結果、腫瘍径の増大を抑制。その効果は抗がん剤との併用(乳がんはドセタキセル、膵がんはゲムシタビン)で相乗的な治療効果を呈した 。さらに、遠隔転移モデルでは、転移巣の減少、生存期間の延長が認められた。また、安全性試験 (非臨床試験)において、重篤な有害事象は認められなかった。 この成果を受け、がん研究会有明病院において、治癒的切除不能または遠隔転移を有する再発乳がんに対して、第I相の医師主導治験が現在進行中である。 試験の内容はInternational Journal of Cancer誌2021年4月13日オンライン版に発表された。

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緊急気管挿管後の有害イベント、45.2%で発生/JAMA

 重症患者への気管挿管後の主要有害イベント発生率は、45.2%と頻繁にみられることが、29ヵ国、197ヵ所の医療機関、約3,000例を対象に行った観察試験で示された。とくに多くみられたのは心血管系の不安定化で、緊急挿管を受けた患者の42.6%で発生がみられたという。イタリア・ミラノ・ビコッカ大学のVincenzo Russotto氏らによる、International Observational Study to Understand the Impact and Best Practices of Airway Management in Critically Ill Patients(INTUBE)試験の結果で、JAMA誌2021年3月23日号で発表された。重症患者への気管挿管は最も頻繁に行われる行為であると同時にリスクの高い手技でもあるが、これまで挿管時の有害イベントに関する情報は限定的であった。挿管開始30分以内の有害イベントを評価 研究グループは、2018年10月1日~2019年7月31日に、5大陸にわたる世界29ヵ国、197ヵ所の集中治療室(ICU)や救急外来および病棟で、気管挿管を行う重症患者を連続的に被験者として前向きコホート試験を行い、2019年8月28日まで追跡した。 主要アウトカムは、挿管に伴う主要有害イベントで、挿管開始30分以内に発生した心血管不安定化(収縮期血圧65mmHg未満が1回以上、同90mmHg未満が30分超、昇圧薬の投与または増量、または15mL/kg超の輸液ボーラス投与)、重度低酸素血症(末梢酸素飽和度80%未満)、心停止のいずれか1つ以上の発生と定義した。 副次的アウトカムは、ICU死亡率などだった。心血管系の不安定化が約43%、重度低酸素血症は約9%、心停止約3% 3,659例をスクリーニングし、うち2,964例について試験を行った。被験者の年齢中央値は63歳(IQR:49~74)で、男性は62.6%だった。気管挿管実施の主な理由は、呼吸不全(52.3%)、神経障害(30.5%)、心血管系の不安定化(9.4%)だった。 全患者について、主要アウトカムのデータを入手できた。被験者のうち、45.2%で1つ以上の主要有害イベントが発生した。そのうち高頻度で発生したのは、心血管系の不安定化で、緊急挿管を受けた患者の42.6%で観察された。次いで、重度低酸素血症(9.3%)、心停止(3.1%)が観察された。 ICU全死亡率は32.8%だった。

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臨床研究成功の第一歩はウルトラマン発見から【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第35回

第35回 臨床研究成功の第一歩はウルトラマン発見から日々の診療活動の中で多くの患者さんに出会います。患者さんだけでなく、人はそれぞれ少しずつ異なります。身長や体重にも違いはあり、性別や国籍も異なります。しかし、どの医師も、身長40メートルで体重3万5千トンの患者を担当したことはないでしょう。この身長と体重のデータから、これが初代ウルトラマンのスペックであることを見抜いた方は相当のマニアです。さらに続ければ、年齢は2万歳、出身はM78星雲・光の国、必殺技はスペシウム光線です。地球での姿はハヤタシン(早田進)。ウルトラマンは小生にとって永遠のヒーローです。このサイズの患者さんが急性心筋梗塞になったとしたら、心臓カテーテル検査をするにも心カテの検査台も壊れます。何よりも病院に到着することも、ままならないことでしょう。本当にこのサイズの患者はいないでしょうが、研究データの中では実在することがあります。虚血性心疾患の診療実態を調査するための、レジストリ研究の初期データを眺めていた時に、ウルトラマンを凌ぐ強者を発見したことがあります。身長1,628メートルの患者が存在したのです。身長が富士山の半分近くあります。本当の身長は162センチ8ミリなのですが、そのデータ入力の単位がメートルである枠にミリメートルのデータを入力してしまっているのです。この身長の値のままで、コンピュータまかせに多変量解析など行うとトンチンカンな結果が導かれます。臨床研究では、エクセルなどの表計算ソフトの表にデータを入力しデータセットを作成するのが常です。その中に変なデータが含まれてないか十分にチェックする必要があります。データの傾向をグラフ化などで視覚的にとらえ、平均値や最小値・最大値、標準偏差などの数値を大局的に把握することが大切です。その時点で違和感のあるデータにはさまざまなものが考えられます。その代表的なものが「外れ値」です。これは、他のデータに対して著しく大きい(または小さい)データのことです。入力ミスに由来することが多く、解析から除外すべきデータは排除しなければいけません。この作業を、データスクリーニングといいます。具体的な解析にかける前に、この地味で基本的な作業をしっかりすることが重要です。臨床研究で最終結果を報告するためには、その前提としてさまざまな臨床データを取り集める必要があります。研究計画書に定められたデータを記載する用紙を症例報告書(CRF)と呼びます。昔は多くの研究で、紙の調査票の CRFでデータを収集し、それをエクセル等の表計算ソフトに入力してデータベースが作成されてきました。しかし、近年では、Webベースで電子的に収集するEDC(Electronic Data Capture)システムの普及が進んでいます。その場合は、入力可能な範囲(レンジ)として上限値や下限値などを設定しておけば、千メートルを超える身長などのナンセンスな外れ値は事前に排除することが可能となります。この作業をレンジチェックと言いますが、意味のある外れ値を除外しないようにすることも大切です。外れ値が、臨床的に意味のある貴重なデータである場合があるからです。自分の過去の経験で、HDLコレステロール値が0 mg/dLであった例があります。タンジール病でした。コレステロール排出のトランスポーターであるABCA1が遺伝的に欠損した疾患で、HDLが産生できず動脈硬化性疾患が起こる疾患です。HDLコレステロール値がゼロというのは入力ミスではなく、稀な疾患を同定する入り口であったのです。このように臨床研究などで扱うデータには、期待される一定の範囲が存在します。それから大きく外れる値は、入力ミスなどの排除すべきデータである場合も多いのですが、時には貴重な珠玉のデータである場合もあるのです。データスクリーニングは、外れ値を排除するばかりではダメで、その匙加減に臨床研究の妙味があります。そうです。期待に応えるデータも大切ですが、期待通りではないデータにも価値があるのです。これは猫を飼う場合の極意に通じます。猫好きには絶対にわかります。猫は常に期待を裏切り、人間の期待に応えることはありません。しかし、期待に応えないからこそ、愛おしい生き物なのです。どんなに喜んでくれるかと期待して通販で購入した高価なキャットタワーよりも、ボロボロの段ボール箱を隠れ家として愛する猫、すばらしいです。期待を裏切る行動が珠玉の結果に繋がるのです。データスクリーニングの極意を伝授してくれる猫様に、あらためて宣言します。弟子にしてください!

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ファイザー製ワクチン、免疫チェックポイント阻害薬投与がん患者での安全性

 全身薬物療法で治療後もしくは治療中のがん患者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡リスクが高いため、ワクチン接種の優先度が高いグループと見なされる。しかし、がん患者におけるワクチンの安全性および有効性データはない。また、一部の専門家から、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与患者において、ワクチンで免疫関連有害事象を誘発または増強する可能性が指摘されている。今回、イスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのBarliz Waissengrin氏らは、ICIで治療されたがん患者におけるファイザー社製ワクチン(BNT162b2 mRNAワクチン)の安全性について調査した。Lancet Oncology誌オンライン版2021年4月1日号に掲載。 Tel Aviv Sourasky Medical CenterおよびBnei-Zion Medical Centerでは、積極的治療を受けているがん患者すべてに対し、病期、PS、余命に関係なくワクチン接種を推奨した(SARS-CoV-2感染歴のある患者、感染している患者、免疫関連有害事象が制御されていない患者は除外)。本調査では、この2施設において、ICIで治療された患者におけるBNT162b2mRNAワクチンの有害事象を対照群(性別および生まれ年をマッチさせた健康成人)と比較した。2021年1月11日~2月25日に、ICIで治療されていたがん患者170例のうち、副反応を恐れて接種を拒否した33例を除いた137例が初回のワクチン接種を受け、うち134例が2回目のワクチン接種を受けた。ワクチンは1日目と21日目に標準用量で接種し、アンケートは電話で行った。 主な結果は以下のとおり。・初回投与後に3例が死亡し、うちCOVID-19による死亡が1例、がんの進行による死亡が2例だった。初回投与後に最も多かった有害事象は注射部位の痛みで、134例中28例(21%)にみられた。全身性では倦怠感(4%)、頭痛(2%)、筋肉痛(2%)、悪寒(1%)などがみられた。・2回目の投与後の観察期間中に、134例中4例(3%)が入院した(がん関連の合併症3例、発熱1例)が、全例が治療後に退院した。初回より2回目のほうが、全身性および局所性の有害事象が多く観察された。主な有害事象は、局所性では注射部位の痛み(63%)、局所発疹(2%)、局所腫脹(9%)で、全身性では筋肉痛(34%)、倦怠感(34%)、頭痛(16%)、発熱(10%)、悪寒(10%)、消化器合併症(10%)、インフルエンザ様症状(2%)で、入院または特別な介入は必要な例はなかった。・がん治療はICIのみが116例(87%)、ICIと化学療法の併用が18例(13%)だったが、全身性の有害事象はどちらも同程度だった。免疫関連有害事象の新規発現、既存の免疫関連有害事象の悪化はみられなかった。・筋肉痛はがん患者で有意に多かったが、それ以外はがん患者群と対照群で類似していた。両群ともワクチン接種後に免疫関連筋炎はみられなかった。・ワクチン接種前に免疫関連有害事象を報告していた患者(54%)と報告しなかった患者で、2回目接種後に全身性の有害事象を報告した患者数に有意な差はなかった(p=0.94)。過去に免疫関連有害事象を経験した患者でもワクチン関連有害事象は軽度で、入院や治療中止に至らなかった。 著者らは、「これらのデータは、ICIで治療されたがん患者におけるBNT162b2 mRNAワクチンの短期的な安全性を示唆している」としている。

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FDA、ニボルマブ+化学療法による胃がん、胃食道接合部がん、食道腺がんの1次治療を承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年4月16日、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法との併用療法で、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が、PD-L1発現率にかかわらず、進行または転移のある胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの1次治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)に承認されたことを発表した。 この承認は、未治療の進行または転移を有する胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの患者を対象として、ニボルマブとmFOLFOX6またはCapeOXの併用療法を、化学療法(mFOLFOX6またはCapeOX)と比較評価した第III相CheckMate-649試験の結果に基づいたもの。 この試験において、ニボルマブと化学療法の併用療法は、化学療法と比較して、全生存期間(OS)に対して全無作為化患者(HR:0.80、95%CI:0.71~0.90、p=0.0002)およびPD-L1 CPS≧5の患者(HR:0.71、95%CI:0.61~0.83、p<0.0001)の両方において、良好な延長を示した。全患者の探索的解析における1年OS率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で55%、化学療法群で48%であった。また、無増悪生存期間(PFS)も有意に低減した(PD-L1 CPS≧5:PFS HR 0.68、p<0.0001)。

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第56回 COVID-19の自宅ステロイド治療が有望/血栓症はワクチン後よりCOVID-19後の方が多い

COVID-19のステロイド治療で回復が早まり、悪化を減らしうる非入院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が入院せずに済むようにしうる治療幾つかをまとめて調べている英国の無作為化試験PRINCIPLE1)でステロイド・ブデソニド(商品名:パルミコート)吸入の効果が判明しました。65歳以上か持病がある50歳以上のCOVID-19患者の回復までの日数は通常療法に加えてブデソニドを14日間1日2回吸入する群751人の方が通常療法のみの群1,028人に比べて約3日間(3.011日間)短かったのです2,3)。入院率はブデソニド吸入群では8.5%、通常療法のみの群では10.3%でした。その差のベイズ95%確信区間(-0.7%~+4.8%)上限は0を超えており、今回の途中解析では残念ながらブデソニドが入院を減らす効果は示せませんでした。しかしPRINCIPLE試験の担当医一覧にも名を連ねるMona Bafadhel氏等が率いた別の無作為化試験STOICでは有望なことにブデソニド治療で救急科(ED)受診や入院を含む急な医療動員を減らすことができました。Lancet Respiratory Medicine誌4)に最近掲載されたSTOIC試験はPRINCIPLE試験よりも小規模で被験者数は146人です。PRINCIPLE試験では重症化の恐れが大きい高齢者への効果が調べられたのとは違ってSTOIC試験の被験者はより若く、18歳以上の患者を対象としました。軽度のCOVID-19発症から7日以内のそれら被験者の住まいに看護師が出向いて同意を得、通常療法かブデソニド吸入群に無作為に振り分け、吸入器を渡し、PCR検査用の鼻喉の拭い液を回収しました。患者には研究チームが毎日電話して酸素飽和度や体温が確認され、有害事象が把握されました。患者とそのようにやり取りして28日間追跡した結果、咳には蜂蜜(honey)、発熱症状にはアセトアミノフェンやアスピリン等の解熱剤使用が指示された通常療法群73人では15%(11/73人)がED受診や入院を含むCOVID-19関連の急な医療の出番を要しました。一方、残り半分73人のブデソニド吸入群でのその割合は僅か3%(2/73人)で済みました。ブデソニド吸入はCOVID-19感染初期に有効な治療として世界で広く利用しうると著者は言っています。今後の課題の一つとしてSTOIC試験で示されたCOVID-19悪化予防効果がブデソニドに限るのかそれともどの吸入コルチコステロイドにもあまねく備わっているのかを調べる必要があります5)。稀な血栓症・脳静脈血栓症はCOVID-19後の方がワクチン後より生じ易いAstraZenecaやJohnson & Johnson(J&J)のワクチンの稀な血栓症・脳静脈血栓症が心配されていますが、ではそれらワクチンで防ぎうるCOVID-19後はどうなのか?米国の8,100万人を網羅する医療情報集TriNetX Analyticsを使った解析によると脳静脈洞血栓症(CVST)とも呼ばれる脳静脈血栓症はどうやらワクチン後に比べてCOVID-19の後の方がずっと生じ易いようです6)。TriNetX Analyticsに記録されたCOVID-19患者51万3,284人のうち20人がその診断から2週間以内に脳静脈血栓症を発現しました。Pfizer/BioNTechやModerna のmRNAワクチンを接種した48万9,871人での発現数は2人のみでした。100万人当たりに換算するとCOVID-19後2週間の脳静脈血栓症発現数は39例、かたやmRNAワクチン接種後2週間は僅か4例であり、COVID-19後はmRNAワクチン接種後より10倍ほど生じ易いことが示されました。著者が言及している最近の欧州医薬品庁(EMA)推定によるとAstraZenecaのCOVID-19ワクチン接種後の脳静脈血栓症の発生率は100万人あたり5人です。AstraZeneca と同じくアデノウイルスを下地とするJ&Jワクチンがどうかは今回の解析では言及されていません。Pfizerは今回の結果に納得しておらず、同社のmRNAワクチンと血栓塞栓症は無縁との見解を科学ニュースThe Scientistに送っています7)。米国の疾病管理センター(CDC)や英国の医薬品医療製品規制庁(MHRA)の最近の検討でもPfizerワクチンと血栓症の関連はないと判断されていると同社は言っています。参考1)PRINCIPLE Trial2)Asthma drug budesonide shortens recovery time in non-hospitalised patients with COVID-19 / PRINCIPLE Trial3)Inhaled budesonide for COVID-19 in people at higher risk of adverse outcomes in the community: interim analyses from the PRINCIPLE trial. medRxiv. April 12, 20214)Ramakrishnan S, et al. Lancet Respir Med. 2021 Apr 9:S2213-2600.00160-0. 5)Agusti A, et al. Lancet Respir Med. 2021 Apr 9:S2213-2600.00171-5.6)Cerebral venous thrombosis: a retrospective cohort study of 513,284 confirmed COVID-19 cases and a comparison with 489,871 people receiving a COVID-19 mRNA vaccine. Center for Open Science. 2021-Apr-157)Blood Clot Risk from COVID-19 Higher than After Vaccines: Study / TheScientist

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急性期精神科病棟における音楽療法と鎮静薬使用との関係

 音楽療法は、患者の興奮状態を落ち着かせる手助けとなるだけでなく、全体的な頓服薬の投与を減少させる可能性がある。米国・SUNY Upstate Medical UniversityのTrevor Scudamore氏らは、精神科病棟での興奮のマネジメントにおいて薬理学的な介入の補助または代替として音楽療法が有効であるか、その実現可能性について、検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年3月6日号の報告。 対象は172例。試験期間は、音楽なしの3ヵ月間と音楽のde-escalation(段階的縮小)オプションのある3ヵ月間で構成された6ヵ月間。音楽療法期間中、患者は好みのジャンルを選択し、最大30分間ワイヤレスヘッドホンの提供が行われた。興奮および不安症状に対して投与された頓服薬(経口、舌下、筋注)の数は、薬局の記録より収集した。患者および看護師より、音楽介入に関する自己報告調査を収集した。 主な結果は以下のとおり。・音楽療法実施期間中の頓服薬の週間平均投与量は、音楽なしの期間と比較し、ハロペリドールおよびオランザピンのいずれにおいても有意な減少が認められた。 ●ハロペリドール:8.46±1.79(p<0.05)→5.00±1.44(p<0.05) ●オランザピン:9.69±2.32(p<0.05)→4.62±1.51(p<0.05)・一方、ロラゼパムの投与量は、有意ではないものの増加傾向が認められた。 ●ロラゼパム:3.23±1.09(p<0.05)→6.38±2.46(p<0.05)・音楽療法に対する患者の回答は、96%が鎮静効果に同意するまたは強く同意するであった。・看護師の回答では、音楽療法の簡便性に同意が得られ、56%が患者を落ち着かせるうえで役立つことに同意するであった。・その他の探索的な結果として、平均入院期間の減少、隔離回数の減少が観察された。 著者らは「音楽療法は、急性期精神科病棟における鎮静薬の頓服使用を減少させるうえで、重要な役割を果たす可能性がある。音楽療法が、その他の治療結果に及ぼす影響を調査するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー アレルギー

第1回 食物アレルギー アナフィラキシー第2回 喘息 抗体医薬第3回 アレルギー性鼻炎 重症薬疹・薬剤アレルギー 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。アレルギーについては、聖路加国際病院リウマチ膠原病センターの岡田正人先生がレクチャーします。バイオテクノロジーの進歩によって次々と開発される抗体医薬や、より精度が上がったアレルゲン検査など、アレルギー治療の最新トレンドを解説します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 食物アレルギー アナフィラキシー アレルギーの第1回では、I型アレルギーの1つである食物アレルギーについて、例題を提示しながら、症状からアレルゲンを特定する際のポイントを解説します。近年実用化が進んでいるアレルゲンコンポーネント検査によって、感度・特異度ともに精度の高い診断が可能となりました。主な食品に対応するアレルゲンコンポーネントを確認しましょう。アナフィラキシーを起こした際は、第2層反応にも注意して適切な治療を行います。第2回 喘息 抗体医薬アレルギーの第2回は、喘息の治療法について解説します。この10年ほどで、重症喘息に対して使用できる生物学的製剤が相次いで登場しました。喘息のタイプによって、各抗体医薬を使い分ける必要があります。また、喘息の抗体医薬品が、ほかのアレルギー性疾患にも効果があることが明らかになりました。アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹への、各薬剤の適応を確認します。 第3回 アレルギー性鼻炎 重症薬疹・薬剤アレルギーアレルギーの第3回は、アレルギー性鼻炎と、重症薬疹を中心に薬剤アレルギーを取り上げます。アレルギー性鼻炎で最もよく使われる抗ヒスタミン薬。作用の仕組みと、添付文書でとくに注意する点を解説します。近年、スギ花粉症とダニアレルギーに対して、質の高い舌下免疫療法の薬が登場し、治療を希望する患者さんも増えています。薬剤アレルギーについては、SJS/TENやDIHSといった重症薬疹の、原因となる薬剤を確認します。

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