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直腸と膀胱を貫通させた、ある行為【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第187回

直腸と膀胱を貫通させた、ある行為Photo-acより使用おどろき医学論文の連載も200回近くになってきました。ここまで来ると、膀胱や直腸の異物ごときでは驚かなくなります。ただ、その両方の臓器がやられてしまった、となると話は別ッ!Hosni A, et al.A rectal foreign body: An unexpected cause of a rectovesical fistula with hematuriaUrol Case Rep . 2021 Feb 4;36:101596.50歳の男性が、尿閉を訴えて救急外来を受診しました。排尿障害の病歴はなく、とくにこれといった既往歴もなさそうです。とりあえず導尿をしてから、泌尿器科へコンサルトされました。尿閉どころか、肉眼的血尿が出てくるようになり、これはいよいよおかしいぞということで造影剤を用いてCT尿路検査が行われました。おや……おやや!ぞ、造影剤が、膀胱から直腸に流れているぞ……?――こ、これは「膀胱直腸瘻」だっ!患者に直腸出血の可能性はないかと尋ねましたが、答えはNOでした。また、骨盤内手術や結核などの慢性炎症の既往もありませんでした。直腸診でも、これといった異常もありませんでした。いや、なぜ直腸と膀胱に穴が開いているんだ。頼むから、隠していることを言ってくれ。そうお願いしたのでしょうか、再び患者に詳しい問診と検査を開始し始めたとき、こんな回答が返ってきました。「便秘の自己治療のために、長いブラシを肛門に突っ込んで使っていた」おかしな性癖があって異物を入れる症例は、過去何度も紹介してきましたが、便秘治療でブラシを突っ込んで膀胱直腸瘻をつくるって、あーた、どんなに強く入れたの!しかも、普通のブラシではなく、排水管の詰まりを取るような、長いアレです。あれを膀胱が貫通するほど突っ込んでいたということになります。膿瘍化したり重症化したりせずにこの症例は治癒に至りましたが、便秘のときに摘便するがごとくブラシを突っ込んでしまう事態、高齢者では起こる可能性があるため、注意が必要です。

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妊婦のストレス症状、COVID-19パンデミック前後の比較

 コロナウイルス感染症(COVID-19)関連のストレスを受けている妊婦は、そうでない妊婦と比較してストレスレベルが有意に高いことが、オランダ・Amsterdam Reproduction & Development Research InstituteのSanne J. M. Zilver氏らによって明らかにされた。COVID-19ストレスの軽減を目的とする介入は、パンデミック下における妊婦の全体的なストレスレベルを減らす可能性がある。Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology誌オンライン版2021年4月26日号の報告。 COVID-19のパンデミックは、多くの人々のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、ストレス、不安、うつ病の症状を抱える人々が増加している。不安やうつ病は、妊婦に良からぬ影響をもたらし、新生児の転帰を悪化させる可能性がある。 本研究は、妊婦のストレスや不安、うつ病について、COVID-19流行前に妊娠した女性とCOVID-19流行下で妊娠した女性を比較したコホート研究。対象は、2020年5月21日~6月22日にソーシャルメディアプラットフォームを通じて募集された、オランダ語を習得している18歳以上の妊婦。精神症状の評価はHADS※1とPSS-10※2を用いた。記述統計により人口統計学的特徴を評価し、グループ間の人口統計学的変数の潜在的な相違は、Mann-WhitneyのU検定およびカイ二乗検定によって比較した。ロジスティック回帰分析または独立した一元配置共分散分析により、両グループの連続的なHADS合計スコアとサブスコア(HADS-AおよびHADS-D)を解析した。 主な結果は以下のとおり。・質問票の回答が得られたのは、COVID-19流行下の妊婦1,102人、COVID-19流行前の妊婦364人だった。・臨床的に高レベルな不安(HADS-A≧8)とうつ病(HADS-D≧8)について、COVID-19流行下の妊婦(それぞれ19.5%と13.2%)とCOVID-19流行前の妊婦(それぞれ23.1%と19.5%)で差は認められなかった。・COVID-19関連のストレスを受けている妊婦は、COVID-19に関連しないストレスを感じている妊婦と比較して、PSS-10の全体的なストレスレベルが有意に高かった(平均15.62[標準偏差6.44]vs.平均10.28[標準偏差5.48]、p<0.001)。※1:HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale):14の精神症状に関する項目から、身体的疾患を有する患者の抑うつと不安の測定に用いる尺度※2:PSS-10(Perceived Stress Scale-10):10項目の設問から、包括的なストレスレベルを評価する尺度

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2型糖尿病、「座る時間の短縮」も指導して

 身体活動に加えて、座位中心の生活習慣を2型糖尿病のリスク評価に含める必要がある。2型糖尿病のリスク低減には、身体活動の促進と座位中心の生活習慣の回避を併せた指導が重要であると、スペイン・ナバラ大学のMaria Llavero-Valero氏らによって示された。Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Diseases誌2021年2月8日号の報告。 身体活動と座りがちな行動―。ともに独立して2型糖尿病進展との関連性が示されている。しかし、両者の組み合わせによる検証は乏しい。そのため、本研究では身体活動スコアの評価だけでなく、座位中心の生活習慣スコアも併せて評価し、2型糖尿病との関連性を比較検証した。 地中海コホートを用いたSUNプロジェクト開始時点において、2型糖尿病を発症していなかった参加者(1万9,524例)を中央値10.4年間追跡し、2018年に分析を実施した。身体活動と座りがちなパラメーター(テレビ視聴時間と座り時間)は質問票を通じて評価し、各身体活動量はMETs・時/週で表した。その後、8項目のアクティブ+座位中心の生活習慣スコアを算出した。2型糖尿病はADA基準に従って定義した。潜在的交絡因子はCox回帰モデルを用いて調整した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、1万9,524例のうち175例に2型糖尿病の新規発症例が観察された。・多変数解析によって、高レベルの身体活動は2型糖尿病と強く逆相関し、最低カテゴリと最高カテゴリの間において有意な差を示した(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.32~0.79、p for trend<0.001)。・身体活動だけでなく、より包括的なアクティブ+座位中心の生活習慣の合計スコアも考慮すると、最低カテゴリと最高カテゴリの間にさらに強い差が示された(HR:0.40、95%CI:0.20~0.80、p for trend<0.001)。

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RA系阻害薬は、COVID-19入院患者に継続してよい?

 COVID-19入院患者において、レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬の継続有無による転帰の差はないことが、米国・ペンシルベニア大学のJordana B. Cohen氏によって明らかにされた。RA系阻害薬は、COVID-19入院患者でも安全に継続できるという。The Lancet. Respiratory Medicine誌2021年3月号の報告。 RA系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の服用は、COVID-19の重症度に影響を与える可能性が示唆されている。世界7ヵ国20の大規模な委託病院において、前向き無作為化非盲検試験REPLACE COVID試験(ClinicalTrials.gov:NCT04338009)を実施し、RA系阻害薬の継続と中止がCOVID-19入院患者の転帰に影響を与えるかどうか、検証した。 2020年3月31日~8月20日の期間、COVID-19で入院し、入院以前にRA系阻害薬を服用していた18歳以上の152例を登録し、RA系阻害薬による治療の継続群または中止群のいずれかにランダムに割り付けた(継続群75例、中止群77例)。主要評価項目は、4項目(死亡までの期間、人工呼吸器の持続時間、腎代替療法または昇圧剤療法の時間、および入院中の多臓器不全)のランク付けによる総合ランクスコア。intention-to-treat集団にて、1次分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・試験対象は、平均年齢62歳(SD12)、女性45%、平均BMI 33kg/m2(SD8)で、52%は糖尿病患者だった。・RA系阻害薬中止群と比較して、継続群は総合ランクスコアに影響を与えなかった(継続群:ランクスコア中央値73[IQR:40~110]、中止群:81[38~117]、β係数8[95%CI:-13~29])。・中止群の77例中14例(18%)に対して、継続群の75例中16例(21%)が集中治療室での治療または侵襲的人工呼吸を必要とした。・中止群の77例中10例(13%)に対して、継続群の75例中11例(15%)が死亡した。・中止群の28例(36%)と継続群の29例(39%)に、少なくとも1件の有害事象(各治療群間における有害事象のカイ二乗検定 p=0.77)があった。・フォローアップ中、2群間の血圧値、血清カリウム値、血清クレアチニン値に差は認められなかった。

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米国でダパグリフロジンがCKDの適応承認/アストラゼネカ

 SGLT2阻害薬の活躍の場が拡大している。AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ)のSGLT2阻害剤ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が、進行リスクのある成人の慢性腎臓病(CKD)における適応承認を米国で取得した。適応症は、慢性腎臓病におけるeGFRの持続的低下、末期腎不全への進行、心血管死、および心不全入院のリスク低減。 ダパグリフロジンは、経口で1日1回投与の、ファーストインクラスの選択的SGLT2 阻害剤であり、心臓、腎臓、膵臓における基本的な関連性の解明に伴い、心臓・腎臓に及ぼす影響から、予防、そして臓器保護へと研究は進化している。 CKDは、腎機能の低下を伴う重篤な進行性の疾患で、世界で約8.4憶人の患者がいると推定されている。そして、その多くはまだ診断されていない状態である。CKDを発症する最も一般的な原因疾患は、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎で、CKDは高い有病率や、心不全や若年死をもたらす心血管イベントリスクの増加に関与している。最終的に末期腎不全(ESKD)に進行すると血液透析や腎移植を必要とする状態となる。 アメリカ食品医薬品局(FDA)による今回の承認は、DAPA-CKD試験(第III相)の良好な結果に基づいており、また、本年の初めにFDAより付与された優先審査指定に続くもの。 DAPA-CKD試験は、2型糖尿病合併の有無に関わらず、CKDステージの2~4、かつ、アルブミン尿の増加が確認された4,304例を対象に、ダパグリフロジン10mg投与による有効性と安全性をプラセボと比較検討した、国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験。 第III相DAPA-CKD試験においてダパグリフロジンは、CKDステージ2~4、かつ、尿中アルブミン排泄の増加を認める患者を対象に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)による標準治療への併用で、腎機能の悪化、末期腎不全への進行、心血管死または腎不全による死亡のいずれかの発生による複合評価項目を、プラセボと比較し39%低下させた(p

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無症候性新型コロナ感染、ワクチン完了で発生率86%減/JAMA

 イスラエル・テルアビブの3次医療センター(1ヵ所)に勤務する医療従事者について、新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の接種完了者は非接種者と比べて、2回目接種後7日超の症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染の発生率が有意に減少したことを、同国Tel Aviv Sourasky Medical CenterのYoel Angel氏らが報告した。なお、結果は観察デザインに基づく調査のため限定的だとしている。症候性SARS-CoV-2感染へのBNT162b2ワクチンの有効性については、無作為化試験で推定値が示されているが、無症候性SARS-CoV-2感染への効果については不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月6日号掲載の報告。接種完了を、2回目接種後7日超と定義 研究グループは、2020年12月20日~2021年2月25日に、テルアビブの3次医療センターに勤務する医療従事者について行われた鼻咽頭スワブによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の結果から、症候性および無症候性SARS-CoV-2感染者に関するデータを集めて分析した。ロジスティック回帰法にて、ワクチン接種完了群と非接種群の感染を、発生率比(IRR)を求めて比較した。被験者の居住地やPCR検査回数によって補正を行った。 ワクチン接種歴は、職場の健康データベースから入手し、接種完了は2回目接種後7日超が経過していることと定義した。 主要アウトカムは、ワクチン接種完了群vs.非接種群の症候性および無症候性SARS-CoV-2に関する補正後IRRであった。副次評価項目は、ワクチン1回接種群(1回目接種後7~28日)に関するIRR、ワクチン接種完了21日超群に関するIRRなどだった。無症候性SARS-CoV-2、ワクチン接種完了群で86%減 被験者の医療従事者は6,710例で、平均年齢は44.3(SD 12.5)歳、女性は4,465例(66.5%)だった。追跡期間の中央値は63日で、BNT162b2ワクチンの1回以上接種者は5,953例(88.7%)、2回接種者は5,517例(82.2%)、非接種者は757例(11.3%)だった。ワクチン接種者はより高年齢(平均年齢:接種者44.8歳、非接種者40.7歳)で、男性の割合が高かった(それぞれ、31.4%、17.7%)。 症候性SARS-CoV-2感染は、ワクチン接種完了群8例、非接種群38例で発生した。感染の発生率はそれぞれ、4.7件/10万人日、149.8件/10万人日で、補正後IRRは0.03(95%信頼区間[CI]:0.01~0.06)だった。また、無症候性SARS-CoV-2感染は、ワクチン接種完了群19例、非接種群17例で、それぞれ発生率は11.3件/10万人日、67.0件/10万人日、補正後IRRは0.14(95%CI:0.07~0.31)だった。 傾向スコア感度分析を行っても、結果に質的変化はなかった。

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閉経後の卵巣がんスクリーニング、死亡率低下せず/Lancet

 閉経後の女性を対象とした年1回の卵巣・卵管がんスクリーニングの実施は、同疾患での死亡率低下が期待できず推奨できないことが示された。卵巣がんは、発見時には大半が進行がんと診断される、依然として予後不良の疾患である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのUsha Menon氏らは、同国の卵巣がん検診の共同研究(UKCTOCS)を行い、集団スクリーニングが卵巣がん死を低下するかどうかを調べた。結果は、StageIII/IVの発生率は、スクリーニングを実施しない場合に比べ低下したものの、がん死の低下は有意ではなかったという。Lancet誌オンライン版2021年5月12日号掲載の報告。閉経後の卵巣・卵管がんスクリーニングを年1回実施 研究グループは、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの国民保健サービス(NHS)の13施設を通じて、50~74歳の閉経後の女性を対象に無作為化試験を行った。両側卵巣摘出術、卵巣がんの既往、完治していない非卵巣がん、卵巣がん家族性リスク増大のいずれかがある対象者は除外した。 適格被験者を、コンピュータ生成乱数表を用いた32ブロックに割り付け、1対1対2の割合で、血清CA125値と経腟超音波検査群(複数の手段によるスクリーニング、MMS群)、経腟超音波検査のみのスクリーニング群(USS群)、または非スクリーニング群に無作為化した。それぞれ年1回実施し、英国内レジストリを基に追跡した。 主要アウトカムは、2020年6月30日時点の卵巣または卵管がん(WHO 2014基準)による死亡だった。解析は、intention to screenでMMSとUSSをそれぞれ非スクリーニングと比較して多目的検定を用いて行われた。スクリーニングの有無や種類について、試験実施者と被験者は認知していたが、アウトカムのレビュー委員にはマスクされた。閉経後の卵巣・卵管がん死亡率は各群ともに0.6%と同等  2001年4月17日~2005年9月29日に閉経後の女性124万3,282例が参加し、適格被験者20万2,638例が無作為化を受け、20万2,562例について解析を行った。MMS群は5万625例(25.0%)、USS群は5万623例(25.0%)、非スクリーニング群は10万1,314例(50.0%)だった。 追跡期間中央値16.3年(IQR:15.1~17.3)時点で、2,055例の閉経後の女性が卵巣・卵管がんの診断を受け、MMS群522例(1.0%)、USS群517例(1.0%)、非スクリーニング群1,016例(1.0%)だった。 MMS群は非スクリーニング群との比較において、StageIが47.2%(95%信頼区間[CI]:19.7~81.1)増大し、StageIVは24.5%(-41.8~-2.0)減少した。同じくMMS群では非スクリーニング群との比較で、StageIまたはIIの総罹患率は39.2%(16.1~66.9)増大し、StageIIIまたはIVは10.2%(-21.3~2.4)減少した。 一方、閉経後の卵巣・卵管がん死は全体で1,206例だった。各群の閉経後の女性の卵巣・卵管がん死亡率は、いずれも0.6%だった(MMS群296/5万625例、USS群291/5万623例、非スクリーニング群619/10万1,314例)。また、閉経後の卵巣・卵管がん死は、MMS群、USS群ともに非スクリーニング群に比べ有意に減少しなかった(それぞれ、p=0.58、p=0.36)。

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食事パターンは高齢者の認知機能に関連している

 高齢者において、地中海式食事法※1とマインド食※2が記憶と言語機能に、「アルコール飲料」がワーキングメモリに関連していることが、ドイツ・German Center for Neurodegenerative Disorders(DZNE)のL M P Wesselman氏らの研究により明らかとなった。結果を踏まえて著者は、「認知機能低下率に対する栄養の推定的効果、およびアルツハイマー病(AD)リスクが高いグループへの食事介入の可能性について結論を出すには、縦断的データが必要だ」としている。European Journal of Nutrition誌2021年3月号の報告。 これまで、認知機能と食事に関する研究の多くは一般的な人口をベースにして行われ、1次予防の可能性を導き出してきた。しかし、ADリスクが高い個人を用いた研究は、とくに有益だと考えられる。本研究では、臨床サンプルを用いて認知症でない高齢者の食事パターンと認知機能の間の横断的関連性を検証した。 ドイツのDELCODE試験より、389例の参加者データ(女性52%、平均年齢69±6歳、平均ミニメンタルステートスコア29±1)を抽出した。主観的な認知機能低下、軽度認知障害(MCI)、およびAD患者の兄弟を有する参加者を含めることにより、サンプルにはADリスクが高い高齢者が集まった。地中海式食事法およびマインド食は、148の食事摂取頻度調査票、および39の食品グループの主成分分析(PCA)によるデータ駆動型パターンによって導き出した。食事パターンと5つの認知領域スコア(記憶、言語機能、実行機能、ワーキングメモリ、視空間機能)との関連性は、人口統計(モデル1)、それに加えてエネルギー摂取量、BMI、その他のライフスタイル変数およびAPOe4ステータス(モデル2)で補正した線形回帰分析を用いて分析した。PCAによって関連する食事成分を導くため、最終モデル3には他のすべての食事成分が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・高齢者人口をベースにした研究と一致して、地中海式食事法およびマインド食の順守は、より高い記憶力と関連していた。・「アルコール飲料」のPCA構成要素は、より高い記憶力、言語機能、実行機能、ワーキングメモリと正の相関性を示した。・MCI患者(60例)を除くと、地中海式食事法およびマインド食は言語機能にも関連していた。同様に、アルコール飲料の成分と言語機能についても、弱いものの有意な関連が認められた。※1:地中海式食事法:魚・野菜・フルーツをメインにオリーブオイル・ナッツ類・赤ワインを取り入れた食事※2:マインド食:地中海式食事法と高血圧圧を予防するダイエット食「DASH食」を組み合わせたもので、脂肪分やコレステロールの摂取を減らし、ミネラルを多く摂る食事

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低・中リスクのHER2+早期乳がん、術後トラスツズマブは9週投与も検討可か/ESMO BREAST 2021

 低および中リスクのHER2陽性早期乳がん患者において、術後トラスツズマブの投与期間を9週間に短縮した場合の、良好な長期結果が示された。1年間の投与が標準であることには変わりないものの、トラスツズマブへのアクセスが制限される状況やLVEF低下などで投与継続が難しい場合には、より短期間の投与が選択肢となる可能性がある。イタリア・パドヴァ大学のPierfranco Conte氏が、short-HER試験の長期解析結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。 short-HER試験は、HER2 陽性早期乳がん患者をトラスツマブと化学療法による術後補助療法1年投与群と9週間投与群に無作為に割り付けて比較した非劣性試験。非劣性マージンは無病生存期間(DFS)のハザード比(HR)<1.29と設定された。主要解析では、DFSのHRは1.13(90%信頼区間[CI]:0.89~1.42)であったため、非劣性は示されなかった1)。しかし、Grade2以上の心血管有害事象は9週間投与群で有意に少なかった(HR:0.32、95%CI:0.21~0.50、p<0.0001)。 今回、主要評価項目の1つである全生存期間(OS)ならびに、3つのリスクカテゴリーごとのDFSのアップデートデータが発表された。[3つのリスクカテゴリー]低リスク:pT<2cm および pN0中間リスク: pT<2cmおよびpN1-3またはpT>2cmおよびpN0-3高リスク: pN4+ 主な結果は以下のとおり。・1年投与群に627例、9週投与群に626例が割り付けられた。・追跡期間中央値8.7年で、DFSイベントの発生は237件。1年投与群116件 vs. 9週投与群121件であった(HR:1.09、90%CI:0.88~1.35)。・OSイベントの発生は109件。1年投与群51件 vs. 9週投与群58件であった(HR:1.18、90%CI:0.86~1.62)。・リスクカテゴリーごとの5年DFS率は、低リスクカテゴリー(37.5%)で1年投与群91% vs. 9週投与群91%(HR:0.91、90%CI:0.60~1.38)、中間リスクカテゴリー(47.1%)で88% vs. 89%(HR 0.88、90%CI:0.63~1.21)、高リスクカテゴリー(15.4%)で82% vs. 64%(HR 2.06、90%CI:1.36~3.13)であった。・リスクカテゴリーごとの5年OS率は、低リスクカテゴリーで1年投与群97% vs. 9週投与群99%(HR:0.57、90%CI:0.27~1.13)、中間リスクカテゴリーで96% vs.95%(HR: 1.14、90%CI:0.68~1.89)、高リスクカテゴリーで95% vs. 91%(HR:1.09、90%CI:0.75~1.359)であった。

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新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか? (2):ChAdOx1-S(AstraZeneca)の場合(解説:後藤信哉氏)-1391

 筆者はワクチン接種による新型コロナウイルス感染拡大速度低減、医療崩壊予防効果に期待している。人類を集団として見た場合には現在のワクチンには効果を期待できる。ワクチンも含めて、現在の医療の科学は個体差を考慮できる水準まで進歩していない。集団に対してワクチンを接種した結果何がどれだけ起こったかを記述するのみである。未来を予知する能力はない。ワクチン接種の結果を過去形で、しかし、速やかに公表することが大切である。 本論文ではデンマークとノルウェーにてChAdOx1-Sワクチン接種を受けた28万1,264例を対象とした。北欧諸国は医療データベースの確立された国である。2021年2月9日~3月11日に接種を受けた18~65歳の症例の動脈・静脈血栓イベントの発現率を、デンマークの2016~18年、ノルウェーの2018~19年のワクチン接種を受けていない18~65歳と比較した。ワクチン接種後28日以内のイベントに着目した。心筋梗塞などの動脈血栓イベントについてはChAdOx1-S接種後でも増加を認めなかった。静脈血栓イベントはコントロールの人口10万人当たり30人に比較して、ChAdOx1-S接種後は59人と多かった。標準化罹患率比は1.97(95%CI:1.50~2.54)であった。ワクチン接種の全体に比較すれば静脈血栓イベントを発症した絶対数は多くはない。しかし、18~65歳の健常人では少数の副作用でも許せないというヒトもいるだろう。新型コロナウイルス感染の血栓症の特徴を示しているのか、一般にはほとんど発症しない脳静脈洞血栓が7例に発症している。 本研究では血栓イベントのみでなく凝固異常、出血イベントにも注目している。血小板減少が起こる症例は17例とコントロールの6人よりも多い。原因が解明されない場合が多い。気道出血もワクチン後は35例、コントロールは16例とワクチン後に多かった。新型コロナウイルス感染による血栓形成、凝固異常の原因には不明の部分がある。本研究はChAdOx1-Sワクチン接種後、静脈血栓、脳静脈洞血栓が少数ながら北欧の2つの国の歴史的対照群よりは多いことを示唆した。ワクチン接種により地域の感染拡大速度低減、医療崩壊リスクを低減できると期待できる。圧倒的少数例ではあるが、静脈血栓、静脈洞血栓などが増えることを示唆した本論文を読んで、各国の規制当局、個人はどう考えるだろうか? 個人にとっての正解は常に不明である。科学は客観的数値を与えてくれるが、常に限界が伴う。結果を公表し、公表された結果からみんなが考え、今の時点での最適解を個人なり、国なりに考えざるを得ない。 読者の皆さん、この結果を読んで自分はChAdOx1-Sを受けたいと思うかどうか? 自分が厚生労働省の専門官として政府として、このワクチンを日本国にて承認して使用するかどうか? 自分がワクチンを選択できる自治体の長であったら、自らの自治体にて本ワクチンを接種するか否か? 各々どのような論理にて周囲を説得するか? この機会に自分なりの考えをまとめてみるとよい。

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無症状の原発巣は切除?大腸がんの世界的CQに結論:JCOG1007(iPACS)試験【消化器がんインタビュー】第11回

転移巣切除不能の大腸がん、無症状の原発巣は切除すべきか。この長年にわたる国内外の臨床疑問に初めて結論を出したJCOG1007(iPACS)試験の結果が発表された。研究代表者である国立がん研究センター中央病院 大腸外科 金光 幸秀氏に聞いた。―試験実施の背景について教えていただけますか。画像を拡大する私が外科医になったころ、Stage IVの大腸がんで転移巣切除不能も含め治癒的切除ができない場合は、原発巣切除(primary tumor resection、以下 PTR)を行うのが自明のことでした。その理由は、原発巣を取ることで腸閉塞などのがんの合併症(これは化学療法中にも起こりえますが)を予防できること、そして何よりも抗がん剤の効果が低かったということでした。抗がん剤の効果が低いという先入観は、何十年もの間、医師の中にありました。しかし、2000年代になり、抗がん剤の効果が非常に高くなり、すべての症例で原発巣を切除すべきか、その意義を改めて検証すべきだという機運が外科医の中で大きくなってきました。そのような背景の中、2年ほどの検討期間を経て、2010年に試験実施が承認され、今回その結果が発表されました。―試験対象は、大腸がんの中でも限定された患者さんということですね。はい。誤解される方がおられますが、大腸がん全体というわけではありません。転移巣は切除不能だが原発巣は切除可能かつ原発巣由来の症状がない方です。たとえば、肝転移で数多くの転移があって手術で取りきれないような方で、大腸がんの症状がない患者さんです。大腸がんの中でもかなり限られた集団といえます。1割おられないかもしれません。―試験デザインについて教えていただけますか。この試験は、最初に原発巣切除を行い次に化学療法を行う治療法が、化学療法単独に対して優越性を示すかを検証する第III相の非盲検無作為化試験です。JCOG1007(iPACS)試験概要対象:切除不能のStage IVで原発巣に起因する症状はないが3つ以下の切除不能の転移(肝臓、肺、遠隔リンパ節、腹膜)がある大腸がん患者(適格対象20~74歳)試験治療群:PTR(primary tumor resection)+化学療法群(化学療法は手術後8~56日の間に実施)対照群:化学療法単独化学療法は、mFOLFOX6+ベバシズマブまたはCapeOX+ベバシズマブ(治験担当医が試験登録前に決定)評価項目:[主要評価項目]ITT集団の全生存(OS)、[副次評価項目]PFS、安全性、R0手術実施割合、姑息手術実施割合主な結果2012年6月~2019年9月に、国内38の施設から165例の患者が登録され、化学療法単独群(84例)、PTR+化学療法群(81例)に無作為に割り付けられた。最も頻度の高い切除不能の転移は肝臓(73%)であった。追跡期間中央値22.0ヵ月におけるOS中央値は、PTR+化学療法群25.9ヵ月、化学療法単独群26.7ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.76~1.59、片側p=0.69)。PTR+化学療法群では術後死亡が3例報告された。同試験は、事前に設定した試験中止基準(「PTR+化学療法群が化学療法単独群の生存期間を 下回る[HR>1.0]」など)により、データ安全モニタリング委員会から早期終了を推奨された。―化学療法単剤が対照群なのですね。米国NCCNのガイドラインでも抗がん剤単独が推奨されていますし、日本でも抗がん剤治療を先に行ったほうが良いのではないかという機運が高まったこともあり、抗がん剤を標準治療と考え、化学療法単独群をコントロールとしました。試験群は切除を行ってから化学療法を実施する(PTR+化学療法)群です。―試験結果はどのようなものでしたか?画像を拡大する全生存期間は両群ともほぼ同等(約2年)の結果でした。試験治療群は事前に設定した優越性基準(化学療法単独群24ヵ月に対し、PTR+化学療法群32ヵ月)に至らなかったため、化学療法単独群が標準療法という結果となりました。―治療によって転移巣の手術が可能になる、つまり、コンバージョン手術の確率についてはいかがでしたか。原発巣を切除してから抗がん剤を投与すると、転移巣の縮小や転移数が減りコンバージョン手術の確率が上がる、という仮説がかねてからありました。しかし、今回の試験でコンバージョン手術が可能となった割合は、化学療法単独群で5%、PTR+化学療法群では3%で、両群間に差は認められませんでした。画像を拡大するまた、薬物療法によるコンバージョン手術の確率の増加についても海外での良好な研究報告がありましたが、前向き研究で検証すると、実際はこの程度の数値であるということが明らかになりました。―この結果はどのように臨床に活用できるでしょうか。NCCNのガイドラインなどでも、この患者集団には抗がん剤単独が推奨されていますが、実際には世界的にも7割で原発巣が切除されています。実臨床では、切除するかしないか、迷いながら治療方針が決定されているのが現状です。この試験結果から、「症状がなければ原発巣は取らずに抗がん剤治療で開始していく」ことの優越性が示されました。これは、数十年にわたる臨床疑問に、明確な指針を示した大きな結果だと考えています。また、世界的に議論の残るテーマであったこともあり、海外からもお礼のメッセージをいただくこともあります。―視聴者へのメッセージ臨床試験は結果を出すまでに時間がかかります。試験に関わる研究者や患者さんの労力も大変なものです。しかし、試験で出た1つの結果から新たなスタンダードが生まれます。臨床試験は臨床疑問に解答を出すために、これからも作られ実施されていくでしょう。該当する患者さんがいれば、ご紹介いただければと思います。参考1)Kanemitsu Y, et al. Primary Tumor Resection Plus Chemotherapy Versus Chemotherapy Alone for Colorectal Cancer Patients With Asymptomatic, Synchronous Unresectable Metastases (JCOG1007;iPACS): A Randomized Clinical Trial. J Clin Oncol. 2021;39:1098-1107.2)JCOG1007; iPACS試験(UMIN)3)国立がん研究センター プレスリリース「ステージ4大腸がんの新たな標準治療を検証」

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COVID-19予防効果のある薬剤は?RCT11件のメタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染およびCOVID-19に対する薬剤の予防効果について、カナダ・マックマスター大学のJessica J Bartoszko氏ら研究グループが、WHOのCOVID-19関連データベースを基に、新たなエビデンスを継続的に組み込むリビングシステマティックレビュー(LSR)とネットワークメタ解析により検討したところ、ヒドロキシクロロキンについては、入院および死亡率にほとんど影響がない上、有害事象のリスクを増大する可能性が示された。イベルメクチン単独およびイベルメクチン・イオタカラギナン併用は、バイアスリスクが大きい上、不正確性も極めて高く、確かな根拠が得られなかった。本研究は、BMJ誌2021年4月26日号に掲載された。 本研究には、2021年3月25日までのWHOのCOVID-19データベースと、2021年2月20日までの中国のデータベース6件が用いられた。このうち解析対象としたのは、9件のランダム化試験。6件がヒドロキシクロロキン(6,059例)、2試験がイベルメクチン単独(540例)、1試験がイベルメクチン・イオタカラギナン併用(234例)を検討したもので、いずれもCOVID-19予防効果について標準治療またはプラセボと比較する試験デザインだった。 主な結果は以下のとおり。・ヒドロキシクロロキンは、COVID-19による入院(リスク差:1,000例当たり-1例、95%信用区間[CI]:-3~4、高度の確実性)や死亡(1,000例当たり-1例、95%CI:-2~3、高度の確実性)にほとんど効果がないか、あってもごくわずかだった。・ヒドロキシクロロキンは、検査で確定したSARS-CoV-2感染リスクの低下に対する効果がなく(1,000例当たり+2例、95%CI:-18~28、中等度の確実性)、有害事象による投与中止が増える可能性があり(1,000例当たり+19例、95%CI:-1~70、中等度の確実性)、SARS-CoV-2感染(疑い、可能性、検査確定)に対しても効果がないか、あってもごくわずかだった(1,000例当たり-15例、95%CI:-64~41、低度の確実性)。・イベルメクチン・イオタカラギナン併用による検査確定COVID-19への影響(1,000例当たり-52例、95%CI:-58~-37)、イベルメクチン単独による検査確定感染(1,000例当たり-50例、95%CI:-59~-16)、疑い、可能性、検査確定(1,000例当たり-159例、95%CI:-165~-144)への影響は、バイアスリスクが大きく不正確性も極めて高いため、根拠の確実性が非常に低かった。

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高齢の早期乳がん患者への化学療法の効果は?

 高リスクの早期乳がんでは化学療法によりアウトカムが改善されるが、高齢者にはほとんど投与されない。今回、英国・The Royal Marsden Hospital NHS Foundation TrustのAlistair Ring氏らは、高齢の高リスク早期乳がん患者の化学療法による効果を検討したところ、転移を有する再発のリスクは化学療法で低下したが、生存期間延長が示されたのはエストロゲン受容体(ER)陰性乳がんのみであった。また、QOLへの影響は大きかったが一時的だった。British Journal of Cancer誌オンライン版2021年5月10日号に掲載。 本研究は、70歳以上の手術可能な原発性浸潤性乳がん(T1-3および一部のT4b、N0-1、M0)患者を対象とした多施設前向き観察研究で、化学療法(±トラスツズマブ)の使用と生存期間・QOLについて調査した。ベースライン時の年齢・健康状態(fit/vulnerable/frail)・病期の相違について傾向スコアマッチングで調整した。 主な結果は以下のとおり。・英国の56センターで2013~18年に3,416例が登録され、手術を受けた2,811例のうち1,520例(54%)が高リスクの早期乳がんで、2,059例(73%)で健康状態がfitだった。・高リスクの早期乳がんでfitだった1,100例中306例(27.8%)が化学療法を受けた。・年齢・病期・健康状態をマッチさせていない高リスク例(1,498例、調整後ハザード比[HR]:0.36、95%CI:0.19~0.68)およびマッチさせた高リスク例(541例、調整後HR:0.43、95%CI:0.20~0.92)において、化学療法により転移を有する再発のリスクが減少した。しかし、どちらも全生存期間(OS)および乳がん特異的生存期間(BCSS)の改善はみられなかった。・ER陰性乳がん患者では、化学療法により生存率が改善した(OSのHR:0.20、95%CI:0.08~0.49、BCSSのHR:0.12、95%CI:0.03~0.44)。・QOLに一時的な負の影響がみられた。

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自閉スペクトラム症に対する小児精神薬理学~システマティックレビュー

 自閉スペクトラム症(ASD)は、一生涯にわたる重度の神経発達障害であり、社会的費用が高く、患者やその家族のQOLに大きな負荷を及ぼす疾患である。ASDの有病率は高く、米国においては小児の54人に1人、成人の45人に1人が罹患しているといわれているが、社会的およびコミュニケーションの欠陥、反復行動、限定的な関心、感覚処理の異常を含むASDの中核症状に対する薬理学的治療は十分ではない。イタリア・メッシーナ大学のAntonio M. Persico氏らは、ASDに対するベストプラクティスの促進、今後の研究のための新たな治療戦略を整理するため、小児および青年期のASDに対し、現在利用可能な最先端の精神薬理学的治療についてレビューを行った。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2021年4月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・多動性、衝動性、興奮、気質性立腹、自己または他者への攻撃性に対する介入では、リスペリドンやアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬が第1選択薬として用いられている。・三環系抗うつ薬は、有効性が不確実であり、重大な有害事象が懸念されるため、使用が減少している。・SSRI、とくにfluoxetineとセルトラリンは、反復行動(不安症状や強迫症状)や過敏性/興奮の治療に有効である可能性があり、ミルタザピンは睡眠に問題を抱える患者に役立つ可能性がある。・低用量のbuspironeと行動介入との併用は、限定的かつ反復的な行動に対し、ある程度の有効性が示唆されている。・精神刺激薬(程度は低いがアトモキセチン)は、ASDとADHDが合併した症例においても多動性、不注意、衝動性の軽減に効果的であるが、特発性ADHDと比較すると、有効性はやや劣り、副作用発現率は増加する。・クロニジンとグアンファシンは、多動性や情動行動に対し、ある程度の有効性が期待できる。・他の薬剤については、症例報告や非盲検試験で有効性が報告されており、ランダム化比較試験は実施されていない。 著者らは「ASDの小児精神薬理学の研究は、依然として少なく、2つの大きなハードルがあると考えられる。1つはASD患者では、臨床反応と副作用の感受性に個人差が大きい点があり、この低レベルの予測には、薬剤選択をサポートするうえで、症状固有の治療アルゴリズムやバイオマーカーが寄与する可能性がある。もう1つは、ASDの中核症状を直接的に改善する向精神薬はなく、併存症状の軽減や間接的な改善がいくつかの薬剤で報告されているにとどまっている点である」としている。

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アントラサイクリン心筋症 見つかる時代から見つける時代へ【見落とさない!がんの心毒性】第2回

連載の第1回では、循環器医ががん医療に参画し始めた背景について向井先生が解説しました。第2回ではアントラサイクリン心筋症・心不全にも新たなアプローチが求められていることについて、大倉が解説します。重篤な心不全で見つかる時代から、そうなる前に見つける時代になったことを感じていただければ幸いです。アントラサイクリンによる心不全は3回予防できるドキソルビシンが1975年にわが国で使われ始めて、もうすぐ半世紀が経とうとしています。よく効くので、今尚がん医療の現場で広く使われています。心毒性があるため心機能異常またはその既往歴のある患者には禁忌です。とはいえ心臓病でもアントラサイクリンを使わざるを得ない状況は患者の高齢化とともに増加傾向にあります。献身的ながん医療の成果が10年生存率の改善(58.3%)という形で表れています。一方、一部のアントラサイクリン使用患者では、心毒性により化学療法を中断したり、QOL(生活の質)が損なわれたりしています。心不全で亡くなることもあります。循環器医は“アントラサイクリンによる心不全は早期発見で3回予防できる”と考えています。(1)心機能の低下予防 (2)心不全の発症予防 (3)慢性心不全の増悪予防の3回です(図)。実際のところ、がん医療の現場でこの考え方はあまり共有されていません。そのため1回も予防されずに重症化した心不全がん患者を診ることもあります。(図)心不全の進展ステージとアントラサイクリン心筋症の予防機会画像を拡大する2021年3月、“脳卒中と循環器病対策基本法”の行動計画の核心である脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画が公表されました1)。心不全は重要3疾患の1つに掲げられ、悪性腫瘍に合併する心不全の管理も重点項目として指定されました。“心不全は予防と早期発見”という考えが国民に向けて発信されることで、がん医療にも徐々に馴染んでゆくものと思われます。発生率と危険因子アントラサイクリンによる心機能障害は用量依存性に発生します。ドキソルビシン換算で累積投与量が 400 mg/m2で3~5%、550 mg/m2で7~26%、700 mg/m2で18~48%に起こります2)。累積投与量以外にも、65歳以上の高齢者、小児、胸部・縦隔への放射線照射、トラスツズマブなど心毒性を有する他の薬剤の使用、基礎心疾患の既往や合併、心血管リスク(喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満)の合併などで、起こりやすくなるため注意が必要です。この段階で併存心疾患や心血管リスクを治療し心機能低下を予防します3)(図:1回目の予防)。近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)により、拡張型心筋症の原因となる遺伝子変異の一つで、サルコメア蛋白のタイチンをコードする遺伝子の切断型変異(Titin-truncating variants)があると、アントラサイクリンの心毒性に対して脆弱になることが報告されました4)。5ヵ年計画にはファーマコゲノミクス(PGx)の推進が盛り込まれており、抗がん薬の心毒性に関与する遺伝子を5年間に2個同定しようとしています。Onco-cardiologyの分野でもゲノム医療が始まろうとしています1)。心毒性の機序アントラサイクリンは一部の患者に不可逆的な心筋障害を起こします。失われた心筋細胞が復活することはありません。ミトコンドリアの鉄の蓄積と活性酸素の過剰な産生を惹起し、ミトコンドリアや細胞内小器官が障害されます。DNAの修復に欠かせないトポイソメラーゼIIβを阻害し、DNA二重鎖切断とアポトーシスを誘導します。心筋細胞の恒常性に欠かせない周囲の血管内皮細胞も障害され、後々の心筋細胞の適応性や生存性の低下に繋がります。心筋の線維芽細胞や前駆細胞も複雑に関与しています4)5)。経過・治療古典的には心毒性は急性、慢性早期、慢性晩期に分類されていました(表1)。(表1)アントラサイクリンによる心毒性の古典的な臨床分類画像を拡大する現在では、詳細な経過観察により、心筋細胞レベルの障害が最初に起きて、それが潜在進行性の心機能低下を惹起し、代償機転が破綻して心不全に至るという連続性が確認されています。心不全を起こす患者では、アントラサイクリン投与後に、血清トロポニンが一過性に上昇し、左室駆出率(LVEF)が低下します。心保護薬で治療すると、ほとんどの患者でLVEFは不完全ながら回復傾向を示しますが、一部の患者はLVEFが悪化して、心不全を発症します。Cardinaleらによれば、アントラサイクリン投与後に9%の患者に心毒性(LVEF50%未満への低下)が認められました。心毒性の98%は化学療法終了後1年以内(中央値3.5ヵ月)に現れました。エナラプリルとカルベジロールで治療をすると82%に回復傾向を認めました6)。無症候性心機能低下(図:ステージB)のうちに発見し、心保護薬で予防をすることで悪化を食い止め、心不全(図:ステージC)を予防できます(図:2回目の予防)。そのため、ここでの介入が最も効果的と考えられています。しかし、この予防機会を失えば、心不全を発症します。こうなると、非可逆的な心筋障害であるため、治療に難渋し、ステージDへの進行を防げない可能性があります。潜在患者の早期発見に有用な検査定期的に全員に心エコーをすれば早期発見は可能ですが、医療資源は限られているため、ハイリスク群を優先することが欧米の腫瘍学会でコンセンサスを得ています(表2)。(表2)最新ガイドラインに見るアントラサイクリン使用に関連した強い推奨[A、B]画像を拡大するリスクの層別化には、アントラサイクリン治療後のトロポニン測定に期待が寄せられています。上昇しない患者はその後の心不全が起きにくいことが分かっており、心エコーの頻度を減らすことができます7)。一方、上昇し、その後も上昇が持続する患者では、心不全が起きやすいため、心保護薬を開始したり、心エコーの頻度を増やしたりします。わが国の保険制度ではそのようなトロポニンの使われ方は認められておりません。採血のタイミングやカットオフ値の標準化については今なお研究段階です。アントラサイクリン治療を終えて数ヵ月以上経過している患者の心不全の早期発見は、危険因子による層別化や、BNPやNT-proBNPによる補助診断に頼ることになります。フラミンガムの一般住民を対象にした疫学調査によると、BNP はLVEF40%以下の心機能低下に対する感度は良好でしたが、LVEF50%前後に対してはよくありませんでした8)。ステージBの中でもCに近い患者の検出には使えそうです。BNP検査によるアントラサイクリン心筋症の早期発見については、小児やAYA世代のがんサバイバーでの有用性については否定的な報告があります9)。それでも特性を理解すれば、たいへん便利な検査ですので、BNP検査については正書や学会ホームページをご覧ください10)11)。心エコーでは、無症候性心機能低下(ステージB)の中で、更に早い段階の異常を捉えようとしています。スペックルトラッキング法を用いたGlobal longitudinal strain (GLS)は、薬剤性心筋障害をLVEFよりも早期に感度良く検出できるようです。欧米の腫瘍学会ガイドラインでも測定を推奨していますが、人間の感覚を超えた領域なので慣れるのに時間がかかりそうです12)。心機能低下はがん治療終了後1年以内に始まるので、半年後と1年後の心エコーを推奨していますが、異常を見落としたり、その後に異常が明らかになることもあるため、その後のフォローも欠かせないでしょう。フォローの内容や間隔については、危険因子が多いほど綿密にします。なぜ重症化してから見つかるのか?「患者や医師が、息切れ、むくみ、疲れ易さを、がんのせいと勘違いする」「医師や薬剤師が累積使用量の上限を超えなければ心不全は起きないだろうと油断もしくは勘違いする」「がん治療が済んで患者がフォローアップされなくなる」「フォローされてもクリニックの先生方と心不全への懸念が共有されない」などが原因で、発見が遅れ重症化の引き金になると考えられます。慢性晩期のアントラサイクリン心筋症には、認識不足や連携の脆弱さといった医療システムの問題が少なからず関係しています。心不全全般に言えることですが、脳卒中や心筋梗塞や糖尿病と比べ、心不全についての認知度が低いことは、かなり前から指摘されており世界共通の課題でした13)。アントラサイクリンで治療した患者に、心不全のセルフチェックを促すには、心不全についての知識の普及が肝要です。心不全発症に早めに気づいて治療することで重症化が予防できます(図:3回目の予防)。今、試されるチーム力最新のESMOガイドライン2020では“がんサバイバーから目を離すな”とうたっています。アントラサイクリンで治療した乳がん患者で薬剤性心筋障害を起こすのは、3~6%程度ですが、軽んずることなく解決への道を開けば、将来の患者の利益になります。院内ではがん診療科と多職種の連携が解決への糸口となり14)、晩期障害の早期発見にはクリニックの先生方の協力が不可欠です。地域医療への知識の普及には、大学や医師会の役割りが大きいです。システムの問題が心不全に関与しているのならば、システムを修正すれば良いのです。心不全についての知識は一般の方には伝わりにくいことが世界共通の課題ですが、“脳卒中と循環器病対策基本法”の下、行政による後押しで国民への啓蒙が始まろうとしています。高齢化に伴い、がん患者の心臓病が増加しています15)。がんと心不全の古くからの関係は新しい時代を迎えました。1)日本脳卒中学会・日本循環器学会編. 脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画 ストップCVD(脳心血管病)健康長寿を達成するために. 20212)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p10-11.(赤澤 宏 心機能障害/心不全 アントラサイクリン系薬剤)4)Garcia-Pavia P, et al. Circulation. 2019;140:31-41.5)Kadowaki H, et al. Circ J. 2020;84:1446-1453.6)Cardinale D, et al. Circulation. 2015;131:1981-1988.7)Cardinale D, et al. 2004;109:2749-2754.8)Vasan RS, et al. JAMA. 2002; 288:1252-1259.9)Michel L, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:423-433.10)猪又孝元ほか The Manual心不全のセット検査. メジカルビュー社;2019.11)日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について12)日本心エコー図学会編.抗がん剤治療関連心筋障害の診療における心エコー図検査の手引13)Okura Y, et al. J Clin Epidemiol. 2004;57:1096-1103.14)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p.176-178.(大倉 裕二、吉野 真樹 腫瘍循環器診療における連携のコツと工夫 多職種連携)15)Okura Y, et al. Int J Clin Oncol. 2019;24:983-994.講師紹介

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monarchE試験で報告されたアベマシクリブの3つの重要なAE、その特徴と転帰/ESMO BREAST 2021

 monarchE試験において、ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の高リスク早期乳がんに対する術後内分泌療法(ET)とアベマシクリブの併用は、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の有意な改善を示した。同試験では、ET単独群と比較してアベマシクリブ併用群で静脈血栓塞栓症(VTE)、アミノトランスフェラーゼ上昇(EAT)、間質性肺疾患(ILD)が頻繁に報告されており、その特徴と転帰についての詳細解析結果を、京都大学の戸井 雅和氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。monarchE試験のアベマシクリブによるAEの詳細 安全性解析の対象は、少なくとも1回の投薬を受けた5,591例(アベマシクリブ併用群2,791例、ET単独2,800例)で、VTEの病歴のある患者は除外された。アベマシクリブによる治療期間中央値は19.1ヵ月(データカットオフは2020年7月8日)。試験プロトコルにはあらかじめ有害事象(AE)の管理ガイダンスが含まれていた。 monarchE試験でアベマシクリブによるAEの特徴と転帰について解析した主な結果は以下のとおり。[VTE]・ET群16例(0.6%)に対しアベマシクリブ群67例(2.4%)でVTE が報告され、37例(1.3%)がGrade3以上、主に肺塞栓症(0.9%)であった。・肺塞栓症発症者の約1/3が重篤ではなく、入院の必要はなかった。死亡例も報告されていない。・VTEイベントはほとんどが単回の発生であった(88.1%)。・多くの患者でVTE発生後もアベマシクリブ投与が継続され、57%が用量変更なしだったが、19.4%で主にGrade3以上であったことを理由に投与が中止された。・94%の患者に抗凝固薬が投与され、管理は良好であった。・最初のETでタモキシフェンが投与された患者では、アロマターゼ阻害薬が投与された患者と比較してVTE発症が多かった(4.1% vs.1.7%)。・Grade3以上のVTEは、BMI≧25の患者でBMI<25の患者と比較して多く発生する傾向がみられた(1.8% vs.0.6%)。・最初のVTEイベント発生までの期間中央値は両群とも6ヵ月以内であった。[EAT]・ET群181例(6.5%)に対しアベマシクリブ群356例(12.8%)でEATが報告され、87例(3.1%)がGrade3以上、85%が単回の発生であった。・多くの患者でEAT発生後も投与が継続され、Grade3以上の患者の71%が用量変更なし/減量で継続、16%で投与が中止された。・Grade3以上の患者は全員、用量変更あるいは投与中止により回復し、薬物性肝障害を起こした患者はいなかった。・Grade3以上のEAT発生までの期間中央値はアベマシクリブ群3ヵ月以内、ET群4ヵ月以内であった。・アベマシクリブ群でのGrade3以上のALT/AST上昇は、安全性解析集団全体と比較してアジア人集団で多い傾向がみられた(2.4%/1.8% vs. 4.2%/3.1%)。[ILD]・ET群34例(1.2%)に対しアベマシクリブ群82例(2.9%)でILDが報告されたが、多くが無症候性で軽度であった。重篤なILDイベントはアベマシクリブ群で14例(0.5%)発生し、1例が死亡した。・両群でほとんどのILDが単回の発生であった(>97%)。・多くの患者でILD発生後もアベマシクリブ投与が継続されたが、23%で主にGrade2以上であったことを理由に投与が中止された。・アベマシクリブ群のILD発症者の52%でステロイド/抗生物質が投与された。・アベマシクリブ群で、Grade2以上のILDは47%が最初の180日間に発現していた。・アベマシクリブ群でのILDは、安全性解析集団全体と比較してアジア人集団で多い傾向がみられたが、無症候性が多く、Grade2以上やSAE、治療中断の発生率は全体と同程度であった。 VTE、EAT、ILDの多くは最初の6ヵ月間に発生しており、アベマシクリブによる長期的な治療の累積影響やリスク増加は認められず、用量調整と標準的な薬物治療により管理可能と結論づけられている。

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統合失調症維持療法における経口剤とLAIとの比較~メタ解析

 統合失調症に対する抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)と経口剤を比較したエビデンスでは、研究デザインが一貫していない。慶應義塾大学の岸本 泰士郎氏らは、臨床的意思決定における情報を整理するため、抗精神病薬LAIと経口剤のベネフィットを比較した3つの研究デザインのエビデンスを評価した。The Lancet. Psychiatry誌2021年5月号の報告。 統合失調症に対する抗精神病薬のLAIと経口剤を比較したランダム化比較試験(RCT)、コホート研究、事後分析研究について、包括的なシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。MEDLINE、PubMed、Cochrane Library、Scopus、Embaseより、2020年3月13日までに公表された研究を、言語制限なしで検索した。未公表の研究およびClinicalTrials.govについても検索した。統合失調症および関連障害を有する成人を対象として、6ヵ月以上継続した研究を選択した(参加者の80%以上)。penfluridol(LAIまたは毎日の経口投与でないため)を用いた研究、症例報告、患者数が20例未満の症例シリーズは対象研究より除外した。独立した2人の研究者がデータを抽出し、3人目の研究者が不一致性を改善した。必要に応じて、研究著者に連絡し、追加情報を入手した。主要アウトカムは、抗精神病薬のLAIと経口剤による入院または再発のリスク比(RR)とし、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った(再発よりも入院を優先して使用)。2次分析により、入院と再発の優先順位を入れ替えて、入院リスクおよび再発リスクを個別に評価した。副次的アウトカムは、メタ解析可能なすべてのデータとし、有効性、安全性、QOL、認知機能、その他のアウトカムにより分類し、研究デザインごとに分析を行った。2値アウトカム(dichotomous outcome)はプールされたRR、連続アウトカム(continuous outcome)は標準平均差(SMD)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・1万4,687件のうち、選択基準を満たした137件(39万7,319例)の研究を分析した。・分析対象研究の内訳は、RCT 32件(23.4%、8,577例)、コホート研究65件(47.4%、37万7,447例)、事後分析研究40件(29.2%、1万1,295例)であった。・バイアスリスクに関する研究の質については、研究デザイン間および各研究デザイン内で低~高の範囲でさまざまであった。・3つの研究デザインそれぞれにおいて、抗精神病薬のLAIは、経口剤と比較し、入院または再発リスクが低かった。 ●RCT:29研究、7,833例、RR=0.88、95%CI:0.79~0.99、p=0.033 ●コホート研究:44研究、10万6,136例、RR=0.92、95%CI:0.88~0.98、p=0.0044 ●事後分析研究:28研究、1万7,876例、RR=0.44、95%CI:0.39~0.51、p<0.0001・この関連性は、入院と再発の優先順位を入れ替えて評価した場合および入院リスクを個別に分析した場合でも、同様であった。再発リスクに関しては、事後分析研究のみで同様であった。・有効性、安全性、QOL、認知機能、その他のアウトカムに関連するすべてのアウトカムにおいて、研究デザイン間で分析した場合、LAIが経口剤よりも有益であった研究は328件中60件(18.3%)、LAIと経口剤で同様であった研究は252件(76.8%)、LAIが経口剤よりも有益でなかった研究は16件(4.9%)であった。・3つの研究デザインのすべてにおいて、有意な不均一性が認められた。・コホート研究と事後分析研究では、明らかな出版バイアスが認められ、エフェクトサイズは、trim-and-fill分析後も同様であった。 著者らは「研究デザインには、観察研究の質の低さなどの長所と短所があるものの、統合失調症の再発および入院に対し、一貫したLAIの有意なベネフィットが認められた。このことは、LAIの臨床使用の増加に伴い、統合失調症の治療転帰を改善する可能性があることを示唆している」としている。

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AZ製ワクチン、血栓症の絶対リスクは?/BMJ

 Oxford-AstraZeneca製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「ChAdOx1-S」の接種を受けた人では、脳静脈血栓症を含む静脈血栓塞栓症の発生がわずかに増加することが確認された。他の安全性については、血小板減少症/凝固異常と出血イベントの発生がわずかに高かったが、ワクチン接種を受けた人のサーベイランスが強化された影響のためか、大部分は安心してよい結果であったという。デンマーク・南デンマーク大学のAnton Pottegard氏らが、同国とノルウェーで実施したコホート研究の結果を報告した。自発的な有害事象の報告や臨床のケースシリーズにおいて、ChAdOx1-S接種後数日から数週間以内に血小板減少症、出血、動脈/静脈血栓症が発生したことが確認されているが、これらの発生について一般集団での自然発生に基づく予想より過剰かどうかは不明であった。BMJ誌2021年5月5日号掲載の報告。デンマークとノルウェーで初回ワクチン接種者約28万人について、一般集団と比較 研究グループは、2021年2月9日~3月11日にChAdOx1-Sの初回接種を受けた18~65歳の全員(ワクチン接種コホート)と、デンマーク(2016~18年)およびノルウェー(2018~19年)の一般集団を比較コホートとして検討した。 デンマークおよびノルウェーにおける全国患者登録(すべての病院をカバー)からデータを抽出。主要評価項目は、ワクチン接種後28日までに観察された動脈イベント、静脈血栓塞栓症、血小板減少症/凝固異常および出血イベントの発生で、両国の一般集団における年齢別および性別特異的自然発生率に基づく期待数と比較した。 ワクチン接種コホートには、デンマークからの14万8,792例(年齢中央値:45歳、女性80%)と、ノルウェーからの13万2,472例(44歳、78%)の計28万1,264例が含まれた。静脈血栓塞栓症の過剰発生は、ワクチン接種10万人当たり11人 ワクチン接種コホート28万1,264例において、動脈イベントの標準化罹患率比は0.97(95%信頼区間[CI]:0.77~1.20)であった。 静脈血栓塞栓症は、ワクチン接種コホートで59件観察されたのに対し、一般集団の発生率に基づく期待数は30件であり、標準化罹患率比は1.97(95%CI:1.50~2.54)、ワクチン接種10万回当たりの過剰イベント数は11件(95%CI:5.6~17.0)であった。 脳静脈血栓症の発生も期待数より高く、標準化罹患率比は20.25(95%CI:8.14~41.73)で、ワクチン接種10万回当たりの過剰イベント数は2.5件であった。血小板減少症/凝固異常の標準化罹患率比は1.52(0.97~2.25)、出血イベントは1.23(0.97~1.55)であった。死亡は、ワクチン接種コホートで15例確認されたが、予測数は44例であった。 結果を踏まえて著者は、「ChAdOx1-S初回接種後28日間において、静脈血栓塞栓症発生増大のエビデンスは示されたが、絶対リスクは小さかった。示された絶対リスクについては、ワクチンの有効性が実証されていることや、特定の国の一般化には限定的な研究結果であることを考慮して解釈すべきであろう」とまとめている。

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高リスク早期乳がん術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加、アジア人での解析(monarchE)/ESMO BREAST 2021

 高リスクのホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)早期乳がんの術後補助療法において、CDK4/6阻害薬アベマシクリブと内分泌療法(ET)併用は、アジア人集団においても無浸潤疾患生存期間(iDFS)と遠隔無転移生存期間(DRFS)を有意に改善することが認められた。monarchE試験におけるアジア人での解析結果を、シンガポール国立がんセンターのYoon-Sim Yap氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で発表した。 monarchE試験は、再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん患者を対象に、術後補助療法としてアベマシクリブ+ET群とET単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相試験で、主要評価項目はiDFS、副次評価項目はDRFS、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカム、薬物動態。すでにITT集団で、アベマシクリブ+ET群におけるiDFS(HR:0.713、95%CI:0.583~0.871、p=0.0009)およびDRFS(HR:0.687、95%CI:0.551~0.858、p=0.0009)の有意な改善が報告されている。今回、ITT集団5,637例のうちアジア(中国、香港、日本、韓国、シンガポール、台湾)の患者1,155例(アベマシクリブ+ET群:573例、ET単独群:582例)について有効性と安全性を解析、アジア以外の患者4,482例(アベマシクリブ+ET群:2,235例、ET単独群:2,247例)でのデータと共に発表した。 主な結果は以下のとおり。・iDFSはアベマシクリブ+ET群で有意に改善し(HR:0.777、95%CI:0.493~1.227)、2年iDFS率はアベマシクリブ+ET群93.2%、ET単独群90.1%で、非アジア人と同等だった。・DRFSも有意な改善が認められ(HR:0.758、95%CI:0.455~1.264)、2年DRFS率はアベマシクリブ+ET群94.4%、ET単独群91.7%で、非アジア人と同等だった。・アベマシクリブ+ET群において最も多かった有害事象は下痢(89.5%)で、ほとんどがGrade1(55.8%)もしくはGrade2(28.7%)だった。下痢のために用量調節した患者の割合はアジア人のほうが非アジア人より低かった。・アベマシクリブ+ET群におけるGrade3以上の有害事象および重篤な有害事象の発現率は、53.5%および12.1%だった(ET単独群:10.5%および6.3%)。アジア人は非アジア人と比べて、Geade3以上の好中球減少症(31.5% vs.15.5%)および白血球減少症(21.2% vs.8.3%)の発現率が高く、用量調節した患者の割合が高かった。・アベマシクリブ+ET群における間質性肺疾患の発現率は、全Gradeではアジア人(6.6%)が非アジア人(2.0%)より高かったが、Grade3以上ではアジア人(0.3%)と非アジア人(0.4%)でほぼ同等だった。・アベマシクリブ+ET群の14.5%の患者が、有害事象のためにアベマシクリブまたはすべての治療を中止した。・ITT集団と同様、用量調節したほとんどの患者が治療継続可能だった。 本試験はOSの最終評価まで継続されており、アジア人でのさらなるフォローアップが求められる。

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片頭痛に対する抗CGRPモノクローナル抗体の有効性と安全性~メタ解析

 片頭痛に対して、いくつかの抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体が承認されているが、どの抗CGRPモノクローナル抗体が最適なのかについては、よくわかっていない。中国・四川大学のXing Wang氏らは、片頭痛成人患者に対するCGRPまたはCGRP受容体に作用する各モノクローナル抗体の有効性および安全性を比較するため、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Pharmacology誌2021年3月25日号の報告。 MEDILNE、Embase、ClinicalTrials.gov、Cochrane Libraryより、2020年10月30日までに公表された文献をシステマティックに検索した。片頭痛成人患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体を評価するため臨床的アウトカムを報告したランダム化比較試験をメタ解析に含めた。主要アウトカムは、毎月の片頭痛日数(MMD)の変化および治療に起因する有害事象(TEAE)の発生とした。 主な結果は以下のとおり。・2,070件の文献より、最終的に18件(8,926例)のランダム化比較試験を抽出した。・有効性に関しては、以下のとおりであり、プラセボと比較しMMDの有意な減少が認められた。●fremanezumab(MD:-2.19、95%CrI:-3.15~-1.25)●ガルカネズマブ(MD:-2.10、95%CrI:-2.76~-1.45)●erenumab(MD:-1.61、95%CrI:-2.40~-0.84)●eptinezumab(MD:-1.43、95%CrI:-2.59~-0.36)・安全性に関しては、ガルカネズマブのみが、プラセボと比較し、TEAE(RR:1.11、95%CrI:1.01~1.22)および重篤な有害事象(RR:2.95、95%CrI:1.41~6.87)の発生率が高かった。 著者らは「片頭痛に対する抗CGRPモノクローナル抗体は、プラセボと比較し、優れていることが示唆された。今後、さまざまなタイプのCGRPモノクローナル抗体の直接的な研究を通じて、検証されることが望まれる」としている。

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