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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(肝胆膵)

第1回 ウイルス性肝炎第2回 アルコール性肝疾患とNAFLD第3回 自己免疫性肝炎の原発性胆汁性胆管炎第4回 肝硬変第5回 急性胆嚢炎・胆管炎第6回 急性膵炎第7回 慢性膵炎 IPMN 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。消化器の肝胆膵については、東京医科歯科大学の山田徹先生がレクチャー。最新のガイドラインに合わせて、変更された標準治療など要点を押さえます。肝胆膵のいずれ疾患も、アルコール性か否かによって異なる治療法を整理します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 ウイルス性肝炎ウイルス性肝炎では、まず最も多いB型とC型を解説。B型肝炎は各種抗原抗体と一般的な感染パターンを相関図で整理。C型肝炎は、新しい直接型抗ウイルス薬(DAA)の開発が進み、慢性肝炎・代償期肝硬変だけでなく、非代償期肝硬変を含むすべてが治療対象となっています。最新のガイドラインに記載されている重症度別の第1選択薬を押さえます。日常臨床ではあまり見られない、A型・D型・E型肝炎についてもポイントを確認。第2回 アルコール性肝疾患とNAFLDウイルス性や自己免疫性が除外された肝疾患は、アルコール性と非アルコール性に分けられます。非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLDの日本での有病率はおよそ30%で、現在増加傾向。肥満でない人にも多いのがポイント。NAFLD のうち、NASHは肝硬変への進展や肝がんの発生母地になるため、臨床的に重要な疾患概念です。バイオマーカーは未確定で、鑑別には原則肝生検が必要です。肝生検を行う目安を確認します。第3回 自己免疫性肝炎の原発性胆汁性胆管炎自己免疫性肝炎AIHは中年以降の女性に好発する肝疾患で、約30%に慢性甲状腺炎やシェーグレン症候群といった他の自己免疫性疾患を合併。AIHの10~20%に原発性胆汁性胆管炎PBCを合併したオーバーラップ症候群がみられます。PBCも中年以降の女性に好発し、他の自己免疫性疾患と合併する場合があります。ともに無症状から非特異的な症状が多く、診断のポイントとなる血液検査と病理検査が問題を解くカギです。第4回 肝硬変肝硬変の主な原因は、これまではC型肝炎でしたが、直接型抗ウイルス薬(DAA)の進歩により減少が予想されており、対してNASHの割合が増加傾向です。特徴的な身体所見を確認します。診断と予後予測には肝線維化を評価。肝硬変は低栄養や低血糖に陥りやすく、死亡率増加や各種合併症につながります。合併症となる食道静脈瘤、肝性脳症、腹水、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝細胞がんの各治療法も試験で問われるポイント。第5回 急性胆嚢炎・胆管炎急性胆嚢炎と急性胆管炎を比較しながら解説します。まず原因に胆石性の有無を確認することが重要。無石胆嚢炎は、症状は胆石性胆嚢炎と同じですが、外傷、心臓手術後、敗血症など高ストレス下で発症し、重症化しやすく死亡率が高いため、早期発見・早期治療が必須。急性胆嚢炎の画像診断は、腹部エコーが第1選択。診断基準となる数値を押さえます。急性胆嚢炎・胆管炎の治療は、抗菌薬・ドレナージ・手術の使い分けがポイント。第6回 急性膵炎急性膵炎の2大原因はアルコールと胆石。強い腹痛を伴う疾患で、約7割が心窩部痛です。重症度診断のスコアとともに、重症垂炎を除外するためのHAPSというスコアも有用です。発症早期の多量輸液が死亡率を下げるため重要。治療については、抗菌薬や蛋白分解酵素阻害薬の有効性について、最新の見解を整理します。膵周囲の液体貯留の定義である「改訂Atlanta分類」を踏まえて、感染性膵壊死の治療法を押さえます。第7回 慢性膵炎 IPMN慢性膵炎の原因はアルコールが68%を占めています。飲酒と喫煙がリスク因子で、原因が不明瞭な場合は遺伝子検査の対象になります。試験で出題されやすい画像診断では、膵石・石灰化、主膵管不整拡張といった所見が重要。無症状で偶発的に見つかることが多い膵管内乳頭粘液性腫瘍IPMN。画像診断はMRCPが第1選択。浸潤がんや悪性所見を見落とさないように、MCNやSCNとの鑑別ポイントを確認します。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(消化管)

第1回 ピロリ菌感染症関連第2回 消化管悪性腫瘍第3回 消化管出血 腹部緊急疾患第4回 消化管機能性疾患第5回 感染症 炎症性腸疾患第6回 遺伝性疾患 好酸球性胃腸症 内分泌 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。消化器の消化管については、公立豊岡病院の宮垣亜紀先生がレクチャー。消化管は内視鏡画像の診断がポイント。豊富な症例画像を使って、頻出の内視鏡検査問題を徹底的にトレーニングします。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 ピロリ菌感染症関連消化管は、内視鏡画像診断がポイント。非専門医にとっては普段見慣れない内視鏡画像ですが、試験に出題される疾患はある程度絞られているので、それを押さえれば攻略できます。第1回は、胃十二指腸潰瘍や胃がんのリスクとなるヘリコバクター・ピロリ菌。ピロリ菌に起因する疾患は、胃がんや潰瘍だけではありません。ピロリ菌感染関連疾患は、内視鏡で胃炎を証明し、ピロリ菌を証明するための各種検査も覚えておくことが重要です。第2回 消化管悪性腫瘍消化管悪性腫瘍には、胃がん、大腸がん、食道がん、消化管間質腫瘍GISTがありますが、共通して問われやすいのは、リスクファクター、内視鏡所見の診断、疾患に関する知識です。胃がんは内視鏡所見から深達度と組織型を診断し、内視鏡的粘膜下層剥離術の適応を判断。近年のトピックスとして、バレット食道がんの報告が増えています。粘膜下腫瘍の形態をとるGISTは、どの消化管でも起こりえます。超音波内視鏡やCTで診断します。第3回 消化管出血 腹部緊急疾患消化管出血と、試験に出題されやすい腹部緊急疾患について、身体所見、検査、治療を整理します。上部消化管出血の中でも緊急性が高いのは静脈瘤出血。静脈瘤結紮術で治療します。下部消化管出血で最もコモンな疾患は虚血性腸炎と大腸憩室出血。X線・CTで特徴的な画像所見を示すS状結腸軸捻転。腸閉塞とイレウスは概念を混同しないように注意。生の海産物を摂取した後の激烈な腹痛はアニサキス症を疑います。第4回 消化管機能性疾患機能性疾患の中でもよく出題される食道アカラシア。見た目ではっきりわかる腫瘍があるわけではないので、内視鏡検査では見つかりにくく、食道造影やマノメトリーという検査が有用です。新たな治療法として、経口内視鏡的括約筋切開術POEMが注目されています。機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群は器質的疾患の除外が重要。胃食道逆流症にはびらん性と非びらん性があり、同じ薬剤でも効果に差があります。第5回 感染症 炎症性腸疾患多岐にわたる腸管感染症から、感染性腸炎、アメーバ性大腸炎、抗菌薬起因性腸炎について解説します。感染性腸炎は、抗菌薬が必要な状況の見極めがポイント。内視鏡的所見が特徴的なアメーバ性大腸炎。潰瘍の周囲にタコいぼ様びらんが見られます。日常臨床でもよくある潰瘍性大腸炎は、重症度に応じて薬剤か手術を選択。非連続性の全層性の肉芽腫性炎症が起きるクローン病は、狭窄を考慮しながら適した画像検査を選択します。第6回 遺伝性疾患 好酸球性胃腸症 内分泌好酸球性消化管疾患は、原因がまだ明らかになっていないアレルギー疾患です。遺伝性疾患では、大腸にポリープが多発する家族性腺腫性ポリポーシスは、放置するとがん化するため、大腸全摘が必要です。Peutz-Jeghers症候群は過誤腫性ポリープで、こちらはほとんどがん化しません。毛細血管拡張の画像所見が特徴的なオスラー病も覚えておきましょう。消化管内分泌のトピックスとして、神経内分泌腫瘍のガストリノーマについて確認します。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 膠原病

第1回 関節リウマチ 乾癬性関節炎第2回 痛風 成人スチル病 ベーチェット病第3回 全身性エリテマトーデス シェーグレン症候群第4回 全身性強皮症 混合性結合組織疾患 皮膚筋炎・多発性筋炎第5回 大型血管炎第6回 ANCA関連血管炎 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。膠原病については、杏林大学医学部付属病院の岸本暢將先生がレクチャー。多彩な疾患に分類される膠原病。問題文に散りばめられた症状や検査所見などの膨大な情報の中から、診断のポイントを拾い上げるスキルを学びます。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 関節リウマチ 乾癬性関節炎膠原病の問題では、膨大に提示された症状や検査所見の数値から、素早く異常を見つけるスキルが問われます。読み解くポイントについて、疾患別に例題を使って解説します。第1回は、国内に70万人以上の患者がいるとされ、日常診療でもよくみられる関節リウマチ。各治療薬と副作用の組み合わせや、症状別に禁忌の薬剤について確認します。乾癬性関節炎は、付着部炎など関節周囲から炎症が起きる点が関節リウマチと異なります。第2回 痛風 成人スチル病 ベーチェット病赤く腫れる症状が特徴的な自然免疫系の疾患を取り上げます。痛風は、急性期に尿酸降下薬を使用すると急性発作を誘発することがあるので注意。発作を誘発する食品や薬剤を押さえましょう。ピンク色の皮疹が現れる成人スチル病は、悪性腫瘍、感染症、薬剤アレルギーとの除外診断がポイント。白血球増多に注目します。20~30代に多いベーチェット病。症状として、口内炎やざ瘡様皮疹、結節性紅斑、ぶどう膜炎が現れます。第3回 全身性エリテマトーデス シェーグレン症候群リンパ球に関わる獲得免疫系の疾患を取り上げます。全身性エリテマトーデスSLEを発症するのはほとんどが女性で、多彩な症状を呈します。血小板数、白血球数、赤血球数の低下、CH50、C3、C4の低下が非常に特徴的な所見です。疾患と関連する抗核抗体も試験に出やすいポイント。ループス腎炎はSLEに起因する糸球体腎炎です。口腔乾燥やドライアイを呈するシェーグレン症候群。悪性リンパ腫のリスクにもなります。第4回 全身性強皮症 混合性結合組織疾患 皮膚筋炎・多発性筋炎皮膚や内臓が硬化、線維化する全身性強皮症SSc。限局皮膚型とびまん皮膚型に分けられ、手指にレイノー現象がみられます。抗体の種類によって合併する臓器障害が異なる点が試験でもよく問われます。混合性結合組織疾患MCTDの診断のポイントは、抗U1-RNP抗体と肺高血圧症。皮膚筋炎・多発性筋炎PM/DMでは、悪性腫瘍と急速進行性の間質性肺炎に要注意。肘や膝などにみられるゴットロン徴候が特異的な皮疹です。第5回 大型血管炎血管炎のうち大型血管炎に分類される高安動脈炎と巨細胞性動脈炎について解説します。小型血管炎に比べて症状が出にくい大型血管炎。間欠性跛行や大動脈解離など深刻な症状が起きる前に見つけるには、不明熱、倦怠感、体重減少、関節痛などの症状で疑うことが重要です。高安動脈炎の9割が女性、発症年齢は20歳前後がピーク。X線、CT、MRIの画像検査がメインです。巨細胞性動脈炎は高齢者にみられ、側頭動脈の生検がポイント。第6回 ANCA関連血管炎ANCA関連血管炎は、国内では高齢者が多いため顕微鏡的多発血管炎MPAが多く、対して海外では多発血管炎性肉芽腫GPA、好酸球性多発血管炎性肉芽腫EGPAの比率が多くなっています。小血管が破れるか詰まるため、紫斑や爪下出血など目に見える症状が出やすいのが特徴的。薬剤誘発ANCA関連疾患も頻出ポイント。MPA、GPA、EGPAを鑑別できるように、症状の似た他疾患の除外と、各診断基準を押さえます。

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脳梗塞の再発を予防するために:老刑事のように心房細動を追う(解説:香坂俊氏)

この原稿を読んでいる方の「4人に1人」は今後の人生のどこかで脳梗塞を経験することになる。上記はAmerican Heart Association(AHA)をはじめとする世界の主要学会が脳梗塞予防の啓蒙活動でしばしば用いる文言であるが、確かに「4人に1人」と言われるとずっしりと重みを感じられる方も多いのではないだろうか。が、残念ながら脳梗塞予防のために行動に移せることはそれほど多くはない。血圧やコレステロールを下げ、健全なライフスタイルを実施し、禁煙や減塩食を心掛ける、といったところだろうか。このあたりの危険因子は過去四半世紀の公衆衛生分野の先生方の献身的な努力により危険因子として浮き彫りにされ、すでに医療の現場でもそのコントロールに向けての努力が広く実践されるに至っている。そこにここ10年来、心房細動に対する抗凝固療法が脚光を浴びている。なにしろ60~70%近く脳梗塞イベントをカットできるというのだから(前述の個々の危険因子に対する介入は5~10%といったところで、累積で30~50%程度のイベントカットを目指している)、抗凝固療法を適切に実施できれば脳梗塞「4人に1人」を「10人に1人」くらいの割合に下げることも夢ではない。そこで、現在の問題はどのように心房細動を拾ってくるかというところに焦点が当てられている。心房細動の半分程度は潜在性(あるいは発作性)と考えられており、1回や2回心電図をとったくらいでは見つけられないということが知られている。今回取り上げるSTROKE-AFでは、すでに脳梗塞を起こした患者496例(平均年齢67歳、CHADS VASc 4~6点程度)を対象に、植込み型の心電図記録計(insertable cardiac monitorいわゆるループレコーダー)を用いる(ICM群)か、通常のケアを続行する(コントロール群)か、というところでランダム化を行い、その後1年間の心房細動の検出率を比較した。そしてその後1年間で、ICM群では7倍多く心房細動が検出されたという結果を得ている(12.1% vs.1.8%)。この結果をどう捉えるか? 心房細動は執念深く追い続ける必要がある、ということに尽きる。以前より3秒程度の記録しか残さない通常の心房細動の記録では検査として不十分だということは言われてきており、一部の診療ガイドラインでは心房細動が強く疑われるケース(動悸症状を繰り返したり、原因不明の失神症例)ではこのICMを積極的に用いるように推奨されているが、ここに「原因不明の脳梗塞」という項目も近い将来加わることになるかもしれない。ただ、このSTROKE-AFではまだ心房細動の検出率が比較されたにすぎず、今後本格的な抗凝固療法を使った介入試験が組まれていくものと思われる。その結果を待つ必要があるし、さらに発達著しいデジタルデバイス(スマートウォッチ)が今後ICMに取って代わる可能性もあり、そのあたりも注視していくべきだろう。

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非小細胞肺がん化学放射線療法における最適な化学療法レジメン【肺がんインタビュー】 第66回

第66回 非小細胞肺がん化学放射線療法における最適な化学療法レジメン出演:国立がん研究センター東病院 呼吸器内科 善家 義貴氏StageIII非小細胞肺がん化学放射線療法における最適な化学療法レジメンはなにか?議論が残るこのテーマを検討したWJTOG0105試験の10年追跡結果がJAMA Oncology誌に発表された。筆頭著者である国立がん研究センター東病院 善家義貴氏に研究結果および今後の展開について聞いた。参考Zenke Y,et al. Effect of Second-generation vs Third-generation Chemotherapy Regimens With Thoracic Radiotherapy on Unresectable Stage III Non-Small-Cell Lung Cancer: 10-Year Follow-up of a WJTOG0105 Phase 3 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2021;7:904-909.

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「リクシアナ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第60回

第60回 「リクシアナ」の名称の由来は?販売名リクシアナ®錠15mgリクシアナ®錠30mgリクシアナ®錠60mgリクシアナ®OD錠15mgリクシアナ®OD錠30mgリクシアナ®OD錠60mg一般名(和名[命名法])エドキサバントシル酸塩水和物(JAN)効能又は効果○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制 ○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制 ○下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術用法及び用量画像を拡大する警告内容とその理由1.本剤の投与により出血が発現し、重篤な出血の場合には、死亡に至るおそれがある。本剤の使用にあたっては、出血の危険性を考慮し、本剤投与の適否を慎重に判断すること。本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はないため、本剤投与中は、 血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。2.脊椎・硬膜外麻酔あるいは腰椎穿刺等との併用により、穿刺部位に血腫が生じ、神経の圧迫による麻痺があらわれるおそれがある。併用する場合には神経障害の徴候及び症状について十分注意し、異常が認められた場合には直ちに適切な処置を行うこと。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)〈効能共通〉1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.出血している患者(頭蓋内出血、後腹膜出血又は他の重要器官における出血等)[出血を助長するおそれがある。]3.急性細菌性心内膜炎の患者[血栓剥離に伴う血栓塞栓様症状を呈するおそれがある。] 〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、静脈血栓塞栓症(深部静脈 血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制〉4.腎不全(クレアチニンクリアランス15mL/min未満)のある患者5.凝血異常を伴う肝疾患の患者〈下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制〉6.高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者※本内容は2021年7月14日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年3月改訂(第12版)医薬品インタビューフォーム「リクシアナ®錠15mg/錠30mg/錠60mg、リクシアナ®OD錠15mg/OD錠30mg/OD錠60mg」2)第一三共MedicaL Library:製品一覧

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抗精神病薬の多剤併用と有害事象リスク

 抗精神病薬の多剤併用療法は、精神科入院患者において高頻度に認められており、このことが薬物有害事象のリスク因子であると考えられる。しかし、この関連性は、十分に調査されていない。京都府立医科大学の綾仁 信貴氏らは、日本の精神科入院患者における抗精神病薬の多剤併用と薬物有害事象との関係を明らかにするため、検討を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2021年7・8月号の報告。 薬物有害事象に関する多施設コホート研究Japan Adverse Drug Events study(JADE study)より、精神科入院患者448例(累積入院日数:2万2,733患者日)を対象とし、レトロスペクティブに検討を行った。多剤併用(2剤以上の抗精神病薬の使用)と薬物有害事象との関連を調査した。また、抗精神病薬による薬物有害事象の潜在的なリスク因子との関係を評価した。 主な結果は以下のとおり。・448例のうち、抗精神病薬の多剤併用療法が行われていた患者は106例(24%)であった。・最も使用されていた薬剤はリスペリドン(442例中109例、25%)であり、他の抗精神病薬との併用薬として最も使用されていた薬剤はレボメプロマジン(32例中29例、91%)であった。・多剤併用患者における薬物有害事象の発生数の中央値は、それ以外の患者よりも有意に高かった(p=0.001)。・抗精神病薬の多剤併用は、初回(調整ハザード比:1.54、95%CI:1.15~2.04)および2回目(調整ハザード比:1.99、95%CI:1.40~2.79)の有害事象発生のリスク因子であった。 著者らは「抗精神病薬の多剤併用は、1つまたは複数の有害事象発生のリスク因子であった。抗精神病薬の併用は、控えめかつ最小限にとどめる必要がある」としている。

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1回目AZ、2回目Pfizerワクチン接種で十分な免疫応答/Lancet

 初回にChAdOx1-S(AstraZeneca製)ワクチンを接種した人に、2回目はBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)ワクチンを接種した結果、強固な免疫反応が誘導されたことが確認され、忍容性も良好であった。スペイン・マドリード自治大学のAlberto M. Borobia氏らが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2種類の異なるワクチンを接種した場合の免疫原性および反応原性を評価した第II相多施設共同無作為化非盲検比較試験「CombiVacS試験」の結果を報告した。これまで、ヒトにおける種類の異なるCOVID-19ワクチンを組み合わせた接種スケジュールに関する免疫学的データは報告されていなかった。Lancet誌オンライン版2021年6月25日号掲載の報告。1回目ChAdOx1-S接種者を、2回目BNT162b2接種と非接種(経過観察)に無作為化 研究グループは、スクリーニングの8~12週間前にChAdOx1-Sワクチンによる1回目接種を受け、SARS-CoV-2感染歴のない18~60歳の成人を、BNT162b2ワクチン0.3mL単回筋肉内投与群(介入群)または経過観察群(対照群)に2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、14日目の免疫原性とし、SARS-CoV-2三量体スパイクタンパク質および受容体結合ドメイン(RBD)の免疫測定で評価した。抗体の機能は偽ウイルス中和アッセイを用いて、細胞性免疫反応はインターフェロン-γ免疫アッセイを用いて評価した。安全性の評価項目は7日目の反応原性とし、局所および全身の有害事象を評価した。 主要解析対象集団には、BNT162b2ワクチンの接種を受けベースライン後に少なくとも1回有効性評価を受けたすべての参加者を組み込んだ。安全性解析対象集団は、BNT162b2ワクチン接種を受けたすべての参加者とした。なお、本試験は現在も進行中である。2回目異種ワクチン接種で高い免疫反応を誘導 2021年4月24日~30日に、スペインの5つの大学病院で676例が登録された(介入群450例、対照群226例)。平均(±SD)年齢は44±9歳、女性が382例(57%)、男性が294例(43%)で、663例(98%)が14日間の試験を完遂した(介入群441例、対照群222例)。 介入群では、RBD抗体の幾何平均抗体価は、ベースラインの71.46 BAU/mL(95%信頼区間[CI]:59.84~85.33)から14日時には7,756.68 BAU/mL(7,371.53~8,161.96)に上昇した(p<0.0001)。 同様に、三量体スパイクタンパク質に対するIgGは、98.40 BAU/mL(95%CI:85.69~112.99)から3,684.87 BAU/mL(3,429.87~3,958.83)に増加した。介入群/対照群の比は、RBDで77.69(95%CI:59.57~101.32)、三量体スパイクタンパク質IgGで36.41(29.31~45.23)であった。 介入群で7日間に収集された有害事象1,771件のうち、ほとんどは軽度(1,210件、68%)または中等度(530件、30%)であった。主な有害事象は、局所反応が接種部位の疼痛(395例、88%)、硬結(159例、35%)、全身性の副反応が頭痛(199例、44%)、筋肉痛(194例、43%)、倦怠感(187例、42%)であった。 なお、著者は、臨床試験を計画した時点でスペインではChAdOx1-Sワクチンの使用が中止されていたため、2回目もChAdOx1-Sワクチンを接種する対照群を設定できていないことを研究の限界として挙げている。

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アテゾリズマブのNSCLCアジュバント、適応申請へ/中外

 中外製薬は、2021年7月6日、抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(製品名:テセントリク)の非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助療法に対する製造販売承認申請を厚生労働省に行った。 今回の承認申請は、NSCLCの術後補助療法に対する第III相臨床試験IMpower010の成績に基づいている。同試験では、PD-L1発現(TPS)1%以上のII期~IIIA期の手術および化学療法後のNSCLCにおいて、best supportive careと比較して、テセントリク治療が無病生存期間を34%低下させた(ハザード比:0.66、95%信頼区間:0.50~0.88)。テセントリクの安全性は、これまでに認められている安全性プロファイルと同様であり、新たな安全性上の懸念は示されなかった。

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tirzepatide、強力な血糖コントロール改善と減量効果/Lancet

 tirzepatideは、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体のデュアルアゴニストである。米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らは、「SURPASS-1試験」において、本薬はプラセボと比較して低血糖リスクを増加させずに血糖コントロールと体重の顕著な改善効果をもたらし、安全性プロファイルもGLP-1受容体作動薬と類似することを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年6月25日号で報告された。3用量を評価する第III相無作為化プラセボ対照試験 本研究は、4ヵ国(インド、日本、メキシコ、米国)の52施設で行われた第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2019年6月~2020年10月の期間に参加者の登録が行われた(Eli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、食事療法と運動療法だけではコントロール不良な2型糖尿病で、注射薬による治療を受けておらず、スクリーニング時に糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が≧7.0%(53mmol/mol)~≦9.5%(80mmol/mol)で、BMI≧23、過去3ヵ月間の体重が安定している患者であった。 被験者は、tirzepatide 5mg、同10mg、同15mgまたはプラセボを週1回皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与期間は40週だった。 主要エンドポイントは、ベースラインから40週までのHbA1c値の平均変化量とした。 478例(平均年齢54.1歳、女性48%、平均罹患期間4.7年、平均HbA1c値7.9%[63mmol/mol]、平均BMI 31.9)が登録され、tirzepatide 5mg群に121例、同10mg群に121例、同15mg群に121例、プラセボ群には115例が割り付けられた。66例(14%)が試験薬の投与を中止し、50例(10%)は試験を中止した。HbA1c値:1.87~2.07%低下、15%以上の体重減少:13~27% 40週の時点で、tirzepatideのすべての用量群はプラセボ群に比べ、HbA1c値、空腹時血糖値、体重のベースラインからの変化量と、HbA1c目標値<7.0%(<53mmol/mol)およびHbA1c目標値<5.7%(<39mmol/mol)の達成割合が優れた。 平均HbA1c値は、5mg群ではベースラインから1.87%(20mmol/mol)低下し、10mg群で1.89%(21mmol/mol)、15mg群で2.07%(23mmol/mol)低下したのに対し、プラセボ群は0.04%(0.4mmol/mol)増加しており、プラセボ群との治療間の平均差の推定値は、5mg群が-1.91%(-21mmol/mol)、10mg群が-1.93%(-21mmol/mol)、15mg群は-2.11%(-23mmol/mol)であった(いずれもp<0.0001)。 空腹時血糖値は、5mg群ではベースラインから43.6mg/dL低下し、10mg群で45.9mg/dL、15mg群で49.3mg/dL低下したが、プラセボ群は12.9mg/dL上昇しており、プラセボ群との治療間の平均差の推定値は、5mg群が-56.5mg/dL(-3mmol/L)、10mg群が-58.8mg/dL(-3mmol/L)、15mg群は-62.1mg/dL(-3mmol/L)であった(いずれもp<0.0001)。 HbA1c目標値<7.0%(<53mmol/mol)の達成割合は、3用量のtirzepatide群が87~92%、プラセボ群は19%であり(プラセボ群との比較で、すべての用量がp<0.0001)、HbA1c目標値≦6.5%(≦48mmol/mol)の達成割合は、それぞれ81~86%および10%であった(すべての用量でp<0.0001)。また、HbA1c目標値<5.7%(<39mmol/mol)の達成割合は、3用量のtirzepatide群が31~52%、プラセボ群は1%だった(すべての用量でp<0.0001)。 tirzepatide群では、体重がベースラインから用量依存性に7.0~9.5kg減少したのに対し、プラセボ群では0.7kg減少した(すべての用量でp<0.0001)。15%以上の体重減少は、tirzepatide群では13~27%で達成されたが、プラセボ群は0%だった。 tirzepatide群で頻度の高い有害事象として、軽度~中等度の一過性の消化器イベント(悪心[tirzepatide群12~18% vs.プラセボ群6%]、下痢[12~14% vs.8%]、嘔吐[2~6% vs.2%])が認められた。臨床的に重大な低血糖(<54mg/dL[<3mmol/L])および重症低血糖は、tirzepatide群では報告されなかった。プラセボ群で1例が心筋梗塞で死亡した。 著者は、「本薬は、ほぼ正常値範囲に達する強力な血糖降下作用と、これまでに報告がないほど確固とした減量効果を示した」とまとめ、「2型糖尿病の単剤療法の選択肢となる可能性がある」と指摘している。

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【寄稿】新型コロナワクチンの現状と展望/氏家無限

1 国内で使用可能な新型コロナウイルスワクチン現在、日本政府が特例承認している新型コロナワクチンは、(1)ファイザー社およびビオンテック社が開発したmRNAワクチン(コミナティ)(2021年2月14日特例承認)、(2)モデルナ社が開発し、武田薬品工業が国内で製造するmRNAワクチン(2021年5月21日特例承認)、(3)アストラゼネカ社およびオックスフォード大学が開発したウイルスベクターワクチン(バキスゼブリア)(2021年5月21日特例承認)の3種類である。厚生労働省によると、日本政府が各企業と契約を締結し、2021年に使用できる見込みのワクチンの接種回数は、それぞれ(1)1億9,400万回、(2)5,000万回、(3)1億2,000万回分で合計3億6,400万回分(1億8,200万人分)となるが、2021年6月時点では(3)アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンは使用されていないため、実際の流通は2億4400万回分(1億2200万人分)と見込まれている。国内企業における新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発に関しては、塩野義製薬が組換えタンパクワクチンを、第一三共がmRNAワクチンを、アンジェスがDNAワクチンを、KMバイオロジクスが不活化ワクチンを、それぞれ臨床試験を開始しているが、2021年7月時点において、最終臨床試験に進んでいる企業はない。2  新型コロナワクチンの接種体制国内では、予防接種法に基づき臨時接種として、新型コロナワクチンの接種が2021年2月17日から2022年2月28日まで実施されている。臨時接種とは定期接種と異なり新たな流行が生じた際に臨時で実施する予防接種プログラムであり、天然痘の再流行や新型インフルエンザの流行などを想定して規定されてきた。今回の流行に合わせて、2020年秋の国会にて、予防接種法が改正され、定期接種と同様に地域の住民に対して各市区町村が主体となり予防接種を実施し、すべての費用を国が負担すること、定期接種同様の制度を用いて有害事象の報告を収集し、健康被害救済に対応することなどが規定された。接種順位は[1]医療従事者など(約470万人)、[2]高齢者(約3,600万人)、[3]基礎疾患を有するもの(約1,030万人)、[4]高齢者施設などの従事者(約200万人)の順番に接種を行うことが想定されており、医療従事者に対しては5月中旬までに560万人分以上、高齢者などの接種用として7月下旬までに4,900万人分以上のワクチンが分配される見込みとなっている。加えて、2,500万人分のモデルナワクチンを職域接種に1,650万人分、自治体の大規模接種などに850万人分を配分する方針を示し、7月末までにすべての医療従事者および高齢者に2回の接種を終えることを目標としている。政府の公表データによると、7月6日までにのべ5,264万回の接種が実施され、約1,912万人が2回の接種を完了した。3 mRNAワクチン上述のように、2021年7月時点で、わが国で使用されているのは、ファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチンである。これは、ウイルスのスパイク蛋白質を生成する遺伝子情報(RNA)を脂質の膜で覆うことで体内の細胞へ送り込むことが可能とし、細胞内でウイルスの一部であるスパイク蛋白質が生成することで被接種者の免疫を誘導する、世界で初めて実用化された新たな手法のワクチンである。ウイルスの一部であるスパイク蛋白質が生成されるが、ウイルス自体ではないため感染は起こらない。また、遺伝子情報であるmRNAは細胞の核内に入らず自然に分解されるため、人の遺伝子に組み込まれることはない。ファイザーおよびモデルナによる新型コロナワクチンは、同様の有効性が報告されているが、両者ともに従来の新型コロナウイルスに対して、およそ95%の発症予防効果を認め、非常に高い有効性が確認されている1)。加えて、入院予防、重症化予防、死亡抑制、感染予防でも同様に高い効果が確認されている2)。変異体ウイルスに対して、中和抗体価が低下することが知られているが、現時点で2回の接種完了による重症化予防や死亡抑制効果は高い効果が維持されており3)、半年以上に渡って中和活性が持続4)することも確認されている。安全性については5)、一般的なワクチンと比較すると接種部位の痛みなどの局所反応は70~80%、倦怠感や頭痛などの全身反応も50%弱にみられるなど、有害事象の発現率は高く、重篤な症状は少ないものの中等度の症状の割合は高い傾向にある。一般に1回目より2回目の接種後に有害事象を多く認めるが、症状は数日以内に軽快することがほとんどである。ワクチン接種による副反応の多くは接種から1週間以内に生じ、長期間、安全性を評価したデータは限定的であるが、デング熱などで認められる既存の免疫により感染時に病態が悪化する抗体依存性増強も報告されていない。mRNAワクチンの開発段階で、妊婦や授乳婦における臨床試験データはないが、胎児や乳児への直接的な影響はないと考えられており、妊婦での被接種者からの有害事象報告においても妊娠に特異的な有害事象の増加は認めていない6)。一方で、妊婦が新型コロナウイルスに感染した際には重症化のリスクが高くなることが知られており、感染のリスクに応じて予防接種を受けておくことの意義は高い7)。また、自然経過においても妊娠に関連した問題が生じやすいことから、紛れ込みを避けるため、妊娠初期の接種を避けるとの考え方もある。授乳婦では母乳中に新型コロナウイルスに対する抗体が移行することから、母乳を通じて乳児での一定の予防効果が期待されている8)。上述のようにmRNAワクチンは弱毒生ワクチンのように病原体の感染性はないため、免疫不全者でも接種は禁忌とはならない。免疫不全者を含む基礎疾患がある者では、感染時の重症化のリスクが高くなるため、接種を積極的に検討する。免疫抑制薬を使用している場合、病態に応じて用量の調整や接種のタイミングを薬剤投与前に合わせることで、免疫原性を高めるなどの工夫も考えられる。mRNAワクチンの接種を行うことが禁忌となるのは、急性疾患の罹患者、37.5℃以上の明らかな発熱者、ワクチンに含まれる成分に対するアナフィラキシー反応の既往がある者などである。mRNAワクチン接種後のアレルギー反応は比較的多く報告されてきたが、ブライトン分類に基づきアナフィラキシー反応と規定される報告は日本国内においても6月27日までの報告で100万回接種当たり1~7件とまれである。集団接種であることから、事前にアナフィラキシー反応が生じた際の対応を、接種会場の規模や立地などに応じて、事前に取り決めておくことが重要である。また、過去に重篤なアレルギー反応や迷走神経反射の既往がある場合には、接種後の経過観察期間を15分から30分に延長する必要がある。この他、まれではあるがmRNAワクチンで報告されている有害事象として、心筋炎および心膜炎が知られている。米国における2021年6月時点での評価では、30歳未満での報告頻度は100万回接種当たり40.6件とされ、12~39歳と若年者に、女性よりも男性に、1回目よりも2回目の接種後に報告が多い。より長期間の継続的評価が必要であるが、症状のほとんどは軽症で、多くが自然軽快すること、実際に新型コロナウイルスに罹患した際にはさらに多くの心筋炎や心膜炎を認め、より重症化しやすいことなどから、予防接種後の心筋炎および心膜炎のリスク増加などのリスクよりも、ワクチンを接種することによる利益が明らかに高いと評価されている。4  ワクチン接種進展への課題世界保健機関(WHO)は現在4つの影響が懸念される変異株を指定しており、今後も新たな変異株が生じることにより、感染性や重症度が高まったり、ワクチンの有効性が低下したりすることが危惧されている。ワクチンの予防接種で獲得された免疫がどの程度の期間維持され、発症予防効果がいつまで持続するのかについては、まだ不明なことも多い。そのため、変異株に合わせた追加接種ワクチンの開発や異なる種類のワクチンによる接種を組み合わせる方法の有効性などが評価されている。英国のワクチン諮問委員会は、重症化のリスク高い70歳以上の高齢者や免疫不全者などにおいては、すでに2回の新型コロナワクチンを接種済みであっても、インフルエンザワクチンと同様に、9月以降に追加接種を推奨した。一方で、米国での諮問委員会での検討では、世界的供給も考慮し、現時点で追加接種を推奨する根拠に乏しいと評価されている。新型コロナウイルスの新たな変異株の出現や獲得された免疫による有効性の持続期間の評価と併せて、追加接種の必要性が今後も議論されていくと考えられる。また、生後6ヵ月以上の乳幼児を対象とした、小児での新型コロナワクチンの開発が進められている。一般に若年者では高齢者と比較して発症率や重症化リスクが低いことから、接種率が低い傾向がみられるが、小児においてもインフルエンザと比較して、より高い疾病負荷が確認されており、加えて、無症候性病原体保有者でも周囲に感染を拡大するリスクがあることなどから、社会全体として小児や若年者での予防接種を推進し、より強固な集団免疫を形成する必要性について、さらなる議論が必要である。5 おわりに世界的な新型コロンワクチンの進展により、予防接種対策が進んでいる国では高齢者を中心とした発症および重症化予防効果が認められている。一方で、マスク着用義務の撤廃やイベントの再開など、社会的活動の再開や感染対策の緩和感染力の高い変異体デルタ型の拡大に伴い、再び感染者の増加が認められている。世界ではこれまでに1.8億人以上で感染と、約400万人の関連死亡が確認されている。この新型コロナウイルス感染症のパンデミックを抑制し、社会活動を再開していくためには、できるだけ早期の予防接種完了が必要不可欠である。本稿が読者の基本的な理解促進とワクチン接種進展の一助となれば幸いである。引用文献1)Polack F, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.2)Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.3)Julia Stowe J, et al. Effectiveness of COVID-19 vaccines against hospital admission with the Delta (B.1.617.2) variant.PHE.2021.(Preprint)4)Doria-Rose N, et al. N Engl J Med. 2021;384:2259-2261.5)Polack F, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.6)Shimabukuro T, et al. N Engl J Med. 2021;384:2273-2282.7)Riley LE. N Engl J Med. 2021;384:2342-2343.8)Hall S. Nature. 2021;594:492-494.関連サイト厚生労働省 新型コロナウイルス感染症についてCareNet.com COVID-19関連情報まとめ診療よろず相談TV 第62回「知っておくべきCOVID-19ワクチン」

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第68回 3回目接種に温度差

Pfizer/BioNTechの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2の2回接種が済んで2週間か4週後の人の血清は世界で優勢になりつつあるデルタ変異株(B.1.617.2株)を確かに阻止する1)ものの、最近発表されたイスラエルの状況2)でも示されているように接種が済んでから半年後の感染や発症の予防効果に陰りが認められます。そこで両社はBNT162b2の3回目接種の試験を実施しており、そのさしあたりのデータで非変異SARS-CoV-2やベータ変異株を阻止する抗体反応の上昇が確認されています。3回目接種後の抗体反応は2回接種後を5~10倍上回りました3)。BNT162b2の3回目接種はデルタ変異株への抗体反応も同様に引き上げるとPfizer/BioNTechは予想しており、米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)などに3回目接種が間もなく認可申請されます4)。世界に先駆けてSARS-CoV-2ワクチン接種を始めたイスラエルは3回目接種の導入も早く、総人口930万人の6割超の約570万人が少なくとも1回目接種を済ませている同国はPfizer/BioNTechの申請を待つことなくすでに3回目接種の提供を開始しています5)。ただし、3回目接種の対象は2回目接種済みの全員ではなく免疫系が損なわれている成人に限られます。他の国と同様にデルタ変異株が優勢になりつつあるイスラエルでは一桁台だった1日の新たな感染数がここ1ヵ月で450人ほどに増えており、7月7日時点で46人が重症で入院しています6)。Reutersのニュース5)によるとそれら重症者の約半数はワクチン接種済みであり、ほとんどはリスク因子を有していました。限定的とはいえ3回目接種を早速開始したイスラエルとは対照的に米国は3回目接種をいまのところ不要と考えています。米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAの先週8日の発表7)によると目当ての回数を接種済みの人は重症化や死亡を免れています。デルタやその他の変異株による重症化や死亡も例外ではなく防げており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院や死亡しているのは今やほぼすべてワクチン非接種の人です(第67回参照)。ワクチンがまだの人は自分や周りの人を守るために接種することをCDCやFDAは改めて要請しています。世界保健機関(WHO)も米国と同様に追加接種はいまだ検討中であっていまのところ支持していません8)。予防効果の維持に追加接種が必要かどうかは不明であり、その判断には更なる情報が必要と考えています。米国もWHOと同様に追加接種について引き続き検討し、いざ必要になったときのための準備をしておくとCDCやFDAは言っています。WHOや米国とは裏腹にPfizer/BioNTechの腹は決まっています。発症予防効果が時を経るにつれて落ちていくことや変異株がこれからも新たに発生し続けるであろうことなどを踏まえると 2回目接種が済んでから半年~1年以内に3回目接種をして高水準の予防効果を維持する必要があるだろうとしており3)、Pfizerは追加接種について米国時間の月曜日12日にFDAと話し合う約束を取り付けています9)。Pfizer/BioNTechは3回目接種の先も見据え、デルタ変異株のスパイクタンパク質を標的とするmRNAワクチンの開発も進めています。その臨床試験は来月8月に始まる予定であり、投与用のmRNAはすでに製造済みです3)。参考1)Liu J,et al.Nature. 2021 Jun 10. [Epub ahead of print]2)Decline in Vaccine Effectiveness Against Infection and Symptomatic Illness3)Pfizer and BioNTech Provide Update on Booster Program in Light of the Delta-Variant / Pfizer/BioNTech4)Pfizer, BioNTech to seek authorization for COVID booster shot as Delta variant spreads / Reuters5)Israel offers third shot of Pfizer COVID-19 vaccine to adults at risk / Reuters6)Clarification Regarding the Number of Critical Cases / gov.il7)Joint CDC and FDA Statement on Vaccine Boosters /CDC8)Question open on need for COVID booster shot, data awaited, WHO says / Reuters9)Pfizer, U.S. health officials to discuss COVID boosters on Monday -company / Reuters

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すべては次のステップのため!業務の合間を縫って行う地道過ぎる書類作業【臨床留学通信 from NY】第23回

第23回:すべては次のステップのため!業務の合間を縫って行う地道過ぎる書類作業今回も、フェローシップの応募について、引き続き自身の経験をご紹介します。必要な書類を揃えたら、ERASというウェブサイトに書類をひたすらアップロードしていきます。手続きにおいてやらなければならないことは、レジデンシーのマッチングと同様です。CV(履歴書)は形式が決まっており、各々の項目を地道に埋めていくのですが、ある程度は自分で作ったフォーマットのCVからのコピー&ペーストで作成していくことができます。PS(Personal Statement)は、基本的な骨格となるPSを作成した後、希望する病院ごとに自分でアップロードします。一方、推薦状はなかなか大変で、こちらが見ることができないように推薦状を書いた人がアップロードしなければならず、煩雑な作業なのでどうしても遅れがちになるので、毎週のようにリマインドをしなければいけません。期日までに書類が万全に揃えられるまでは、神経を尖らせる必要があります。また、マッチングの応募には医学部時代の実習内容とその成績などが書かれたMSPE (medical student performance evaluation)を出身大学に依頼し、医学部長のサインが入った書類を取り寄せる必要があり、1ヵ月ほど余裕をみて行う必要があります。ちなみに、レジデントの時は大学側にアップロードをしてもらう必要がありましたが、フェローシップの際は自身でもアップロードできるようです。プログラム側は、そのプログラムに応募した志願者の書類のみ閲覧できる仕組みで、一斉に閲覧できるようになる期日までにすべての書類をERASにアップロードしなければなりません。そのプログラムの数は、cardiologyでは全米で約240あり、このうちJ1 visaを受け付けているのが約190でした。自分のレベルがどの程度か、というのは蓋を開けてみないとわからない(余裕だろうと油断して少なく応募したらまったく呼ばれず、慌てて追加応募しようとしても時すでに遅し、ということもあり得る)のと、私の場合は卒後年数が10年を超えているので、高い確率でスクリーニングで落とされるだろうという危惧があったため、結果的に190すべてに申し込み、その費用として40万円近く掛かりました。Column画像を拡大するこちらの写真はMount Sinai Beth IsraelのInternal medicineの卒業パーティです。苦楽を共にした仲間たちと祝い、労い合いました。振り返ると、最後の1年は予想もしなかったコロナ治療に忙殺されるなどなかなか大変な3年でしたが、その分、実りも多かったです。3年間の集大成として、卒業前に共同筆頭著者/責任著者として執筆した論文がJournal of American College of Cardiology誌に1本の論文がアクセプトされました。Onlineになったらまたご報告します。

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ASCO2021 レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のASCOは、昨年に引き続き完全Webでの開催であり、肺がん領域については周術期での重要な発表がいくつかあったものの、進行期については真新しい話題は乏しい印象であった。本稿では、その中からIMpower010試験、IMPACT(WJOG6410L)試験、CheckMate9LA試験、amivantamab+lazertinib併用療法Phase I試験、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)Phase I試験、JCOG1210/TORG1528試験について解説したい。IMpower010試験完全切除後の非小細胞肺がんを対象として、標準治療としてシスプラチン+ペメトレキセド/ゲムシタビン/ドセタキセル/ビノレルビンを最大4サイクル実施した後に、経過観察群と、アテゾリズマブ1,200mg/body 16サイクルを比較する第III相試験の結果が、Heather A. Wakelee先生から報告された。本試験では、完全切除後の非小細胞肺がん、病理病期StageIB~IIIA、1,280例が1:1にランダム化され、無病生存期間を主要評価項目として実施された。本試験はヒエラルキカルに3つの主要評価項目、順にPD-L1 TC≧1%のII~IIIA期における無病生存期間、II~IIIA期全体での無病生存期間、IB~IIIA期、最後に全生存期間の解析が実施されるプロトコールとなっている。今回報告されたのは、無病生存期間の第1回中間解析の結果である。最初の解析対象となるPD-L1 TC≧1%のII~IIIA期においては、ハザード比が0.66、95%信頼区間0.50~0.88、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群で未到達、経過観察群で35.3ヵ月という結果であり、統計学的にも有意に優越性が示されている。次の対象となるII~IIIA期全体での無病生存期間においても、ハザード比が0.79、95%信頼区間0.64~0.96、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群42.3ヵ月、経過観察群35.3ヵ月という結果であり、統計学的にも有意に優越性が示された。一方、IB~IIIA期においては、ハザード比が0.81、95%信頼区間0.67~0.99、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群未到達、経過観察群37.2ヵ月という結果であり、今回の中間解析では統計学的な優越性は示されなかった。この結果に基づき、全生存期間の解析は現時点では公式なものではないが、両群で明らかな差はないという結果が報告されている。有害事象に関しては、アテゾリズマブで従来報告されていた内容と大きな違いは認められなかった。周術期治療においては、免疫チェックポイント阻害剤を用いた術前、術後、さらには術前+術後の臨床試験が実施されている。その中でも、今回のIMpower010試験が、術後療法についてはいち早く報告された。PD-L1 TC≧1%のII~IIIA期の集団において、無病生存期間で明確な利益が示されているだけでなく、今後観察期間が延長された段階での無病生存期間の中間解析、さらには、全生存期間の結果を期待したい。IMPACT(WJOG6410L)試験WJOGで実施された、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんを対象として、標準治療としてのシスプラチン+ビノレルビン療法と試験治療としてのゲフィチニブを比較する第III相試験の結果を多田先生が報告された。本試験では、完全切除後に病理病期でII期もしくはIII期と診断されたEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん、230例が1:1にランダム化され、無病生存期間を主要評価項目として実施された。完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおける、EGFR-TKIを用いたPhase III試験としては、アストラゼネカ社が主導したADAURA試験、中国で実施されたADJUVANT(CTONG1104)試験がすでに報告されている。ADAURA試験では第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブが、ADJUVANT試験ではIMPACT試験同様にゲフィチニブが、EGFR-TKIとして用いられている。とくにADAURA試験では、無病生存期間においてオシメルチニブの明らかな優越性が示されたものの、進行肺がんでのEGFR-TKIの治療成績を踏まえて、全生存期間ではその差が解消されてしまうのではないか等の見解が示され議論を呼んでいる。一方、ゲフィチニブを用いたAJUVANT試験においては、ゲフィチニブのシスプラチン+ビノレルビンに対する、無病生存期間での優越性がハザード比0.60、95%信頼区間0.42~0.87で示されている。中国で行われたADJUVANT試験に比べても、いち早く立案されたIMPACT試験の結果は、日本国内だけでなく、世界的にも注目を集めていた。今回、残念ながら主要評価項目である無病生存期間、今後追跡される予定である副次評価項目の全生存期間いずれにおいても、試験治療であるゲフィチニブの優越性は示されないという結果であり、驚きをもって迎えられている。無病生存期間については、ハザード比0.92(p値0.63)、期間中央値はゲフィチニブで35.9ヵ月、シスプラチン+ビノレルビン療法で25.0ヵ月であり、全生存期間については、ハザード比1.03(p値0.89)、期間中央値は両群とも未到達という結果であった。同様のデザインで実施されたADJUVANT試験では、4年時点で両群ともに無病生存がほぼゼロとなっていたのに比べ、IMPACT試験の無病生存曲線は、5年目以降、約30%のところで平坦になり3人に1人で根治が得られていることが示唆されている。さらに、ADJUVANT試験においては、標準治療群のシスプラチン+ビノレルビンの無病生存期間中央値が18.0ヵ月、ゲフィチニブ群で28.7ヵ月であったのに対し、IMPACT試験では標準治療群でも25.0ヵ月、試験治療群では35.9ヵ月と明らかに異なる結果であった。ADAURA試験においては、プラチナ併用療法による術後療法を実施していない患者も含む解析での標準治療群の無病生存期間中央値は20.4ヵ月(II~IIIA期)であり、プラチナ併用療法による術後療法を実施された患者集団での無病生存期間中央値は22.1ヵ月(ただしこちらはIB期含む)という結果であった。これらの試験結果より、IMPACT試験において、標準治療群のシスプラチン+ビノレルビンによる無病生存期間が最も良好であることが、主要評価項目を達成できなかった1つの要因となっていると考えられる。さらに、試験治療群についても、ゲフィチニブに比べオシメルチニブの有効性が高いことが示唆される。IMPACT試験は、残念ながら主要評価項目を達成できなかったものの、今後もフォローアップの結果が得られ、また、実臨床にも応用される可能性のあるEGFR-TKIによる術後療法について、考察を深めるために必須の情報をもたらした重要な試験と評価でき、追加解析の結果含め期待したい。CheckMate9LA試験CheckMate9LA試験は、未治療進行非小細胞肺がん患者を対象として、標準治療としてのプラチナ併用療法(腺がんプラチナ+ペメトレキセド、扁平上皮がんカルボプラチン+パクリタキセル、いずれも3週おき4サイクル、ペメトレキセドは維持療法あり)、試験治療としてのプラチナ併用療法(3週おき2サイクル)にニボルマブ(Nivo、360mg/body、3週おき)、イピリムマブ(Ipi、1mg/kg、6週おき)を追加し、Nivo+Ipiについては増悪もしくは2年までの維持療法実施を比較する第III相試験であり、Martin Reck先生が報告された。本試験では、EGFR陰性、ALK陰性、PS 0~1のIV期もしくは再発の非小細胞肺がん、719例が1:1にランダム化され、全生存期間を主要評価項目として実施された。2020年のASCOでの初回報告から、追跡期間を延長し最短でも2年の追跡がされたデータセットでのアップデート報告である。進行非小細胞肺がんにおいては、プラチナ併用療法に対するNivo+Ipiの優越性を示したCheckMate227試験の結果も併せて、日本においてもNivo+Ipi、Nivo+Ipi+プラチナ併用療法が承認され、実臨床で実施可能な状態となっている。今回、CheckMate227試験は、4年のフォローアップ結果がポスター発表されており、PD-L1 TPS≧1%、<1%のそれぞれの群における4年の全生存割合が29%、24%であり、長期生存につながることが示されている。CheckMate9LA試験の2年フォローアップ結果では、全生存期間については、ハザード比0.72、95%信頼区間が0.61~0.86、全生存期間中央値はNivo+Ipi+プラチナ併用療法群で15.8ヵ月、プラチナ併用療法群で11.0ヵ月であり、無増悪生存期間については、ハザード比0.67、95%信頼区間が0.56~0.79、無増悪生存期間中央値は試験治療群で6.7ヵ月、標準治療群で5.3ヵ月であった。2年の全生存割合については、全体集団、PD-L1 TPS≧1%、≦1%においてそれぞれ、38%、41%、37%、2年の無増悪生存割合についても同様の順番で、20%、20%、20%であった。この結果は、PD-L1の発現状況によらず維持されており、従来指摘されているPD-1とCTLA-4の双方を阻害する併用療法の特徴が再現されている。有害事象に関しては、すべてのGrade3/4について試験治療群48%、標準治療群で38%、いずれかの治療の中止に関連したすべての有害事象が試験治療群で22%、標準治療群で8%、治療関連死が両群ともそれぞれ2例であった。昨年の報告時と比べ、有害事象の頻度はほとんど変動しておらず、Nivo+Ipi併用療法に懸念されている有害事象も、多くは1年以内に発生していることが示唆された。フォローアップ期間が延長されるたびに、いわゆるTail plateauと呼ばれる生存曲線後半がフラットになっているかが注目され、今回のCheckMate9LA試験では従来に比べ曲線がフラットになっていない印象があることが話題になっている。ただ、生存曲線の後半の部分は、打ち切り症例の影響を受けやすく、最も信頼できない部分でもあり、他の免疫チェックポイント阻害剤の試験と同様に、5年などの長期の結果を待たなければならない。CheckMate9LAについては、プラチナ併用療法が含まれていないものの、同様の併用療法であるCheckMate227試験の4年のデータが、ある程度長期の成績を占うものとして参考になると考えられる。amivantamab+lazertinib近年、オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異陽性肺がん患者を対象とした、次世代の治療について期待の持てる結果が報告されている。オシメルチニブ耐性後の患者に対して、amivantamabとlazertinibの併用療法を検討するCHRYSALIS Phase I試験について有効性に関するアップデートと、バイオマーカー解析の結果が報告された。amivantamabはEGFRとMETを標的としたBispecific抗体であり、EGFRやMETそのものに対する効果だけでなく、免疫細胞を介在した効果(immune cell-directing activity)も期待されている薬剤である。lazertinibはオシメルチニブ同様第3世代EGFR-TKIに位置付けられる薬剤である。今回の報告では、EGFR経路の耐性機序、METに関連する耐性機序を有することがバイオマーカー解析の結果判明した集団と、それらの耐性機序が明らかではない集団での有効性が示された。EGFRやMETに何らかのオシメルチニブ耐性機序が出現していた集団での奏効割合は47%、他の耐性機序が報告されている患者集団での奏効割合が29%であった。全体集団での奏効割合は36%、無増悪生存期間中央値が4.9ヵ月であった。今回有害事象に関する追加データは乏しかったものの、amivantamabには従来EGFR抗体として特徴的な皮疹等の有害事象に加え、比較的高い割合の患者で注入に伴う反応が報告されており、適切な支持療法の併用が求められる。今回の結果から、従来示されているように多様な耐性機序が混在するオシメルチニブ治療後の患者集団においても一定の効果が期待されるものの、可能な限り耐性機序を明らかにすることにより、より高い有効性を追求することができることも明らかになった。patritumab deruxtecan(HER3-DXd)オシメルチニブを中心としたEGFR-TKI耐性化後の治療薬として注目されているもうひとつのカテゴリーが、抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)である。複数のADCが開発中であるが、その中でも注目を集めている薬剤がpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)である。HER3に対する完全ヒト化モノクローナル抗体であるpatritumabに、トラスツズマブ デルクステカンでも用いられているトポイソメラーゼ阻害剤をペイロードとして付加したADCである。今回は、Phase I試験のうち、用量漸増パートと、拡大コホートの結果が報告された。オシメルチニブだけでなくさまざまなEGFR-TKI耐性化後の患者が登録され、有効性については前治療によらず39%の奏効割合が報告され、無増悪生存期間中央値も8.2ヵ月と、オシメルチニブ後の治療薬として期待される結果であった。耐性機序別にみても、オシメルチニブ等EGFR-TKIに対する多様な耐性に対応できることが示されている。また、今回は、脳転移を有する患者に関するサブグループ解析も報告されたが、脳転移を有する集団においても同様の有効性が示されていた。HER3を標的としたADCであることから、HER3の発現状況によって有効性に違いがあるのではと従来指摘されていたが、今回の報告では、H-scoreで評価したHER3の発現の強度によらず効果が示されていることが示された。Grade3以上の有害事象としては、血小板減少、好中球減少、倦怠感、貧血等が報告されており、有害事象による治療中止は10%前後であった。トラスツズマブ デルクステカンで注目されている肺障害についても、今回、全体集団で出現割合が5%とされており、注意は要するものの大きな懸念は示されなかった。今後単剤での開発だけでなく、オシメルチニブとの併用療法等の開発も検討されており、期待したい。JCOG1210/TORG1528試験JCOG肺がん内科グループ、TORGのインターグループ試験として実施された、71歳以上の高齢、進展型小細胞肺がん患者を対象として、標準治療としてのカルボプラチン+エトポシド(CE療法、カルボプラチンAUC5、エトポシド80mg/m2)、試験治療としてのカルボプラチン+イリノテカン(CI療法、カルボプラチンAUC4、イリノテカン50mg/m2)を比較する第II/III相試験の結果を、研究事務局の下川先生が報告された。本試験では、71歳以上の進展型小細胞肺がん、258例が1:1にランダム化され、全生存期間を主要評価項目として実施された。高齢者進展型小細胞肺がんにおいては、JCOG9702試験の結果に基づき、日常診療で幅広くCE療法が実施されている。本試験は、JCOG9511試験において、シスプラチンの併用療法薬としてエトポシドに対する優越性を示したイリノテカンを、高齢者においても検討することを目的に実施されている。残念ながら主要評価項目である全生存期間、副次評価項目である無増悪生存期間いずれにおいても、試験治療であるCI療法の優越性は示されず、CE療法が変わらず標準治療とされるという結論であった。全生存期間については、ハザード比0.848、95%信頼区間が0.650~1.105、全生存期間中央値はCE療法で12.0ヵ月、CI療法で13.2ヵ月であり、無増悪生存期間については、ハザード比0.851、95%信頼区間が0.664~1.090、無増悪生存期間中央値はCE療法で4.4ヵ月、CI療法で4.9ヵ月であった。有害事象(Grade3以上)に関しては、CE療法、CI療法それぞれについて、白血球減少59.2%、16.1%、好中球減少87.2%、46.0%、貧血28.0%、12.9%、血小板減少27.2%、12.9%、発熱性好中球減少症11.2%、9.7%であった。残念ながら高齢者進展型小細胞肺がんにおいて、新たなプラチナ併用療法の有効性が示されることはなかったものの、アテゾリズマブ、デュルバルマブ等免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の登場で使用頻度の増えたCE療法について、高齢者も含め国内多施設臨床試験での有効性、安全性のデータが得られ、今後の追加解析の結果が待たれる。さいごに昨年に続くVirtual meetingであり、発表者、司会者、聴講者ともに、Webでの学会運営への習熟が明らかなASCOであった。おそらく今後も、Webでのライブ配信は継続されるのではないかと思われるが、来年こそはシカゴで開催したいという参加者の熱意が感じられた。昨今の状況が一刻も早く解決され、会場に集えない方がVirtualで、また、会場に集える場合は現地で、同じように最新のエビデンスを体感できる時代が来ることを祈念している。

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抗精神病薬で治療された統合失調症患者における非アルコール性脂肪性肝疾患リスク

 統合失調症患者のメタボリックシンドローム有病率は、一般集団よりも高いことはよく知られているが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率については、あまり知られていない。下総精神医療センターの是木 明宏氏らは、抗精神病薬で治療された統合失調症患者におけるNAFLDリスクについて、調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2021年6月4日号の報告。 腹部エコー検査を実施した統合失調症および統合失調感情障害患者253例の医療記録を分析した。 主な結果は以下のとおり。・腹部エコー検査でNAFLDが認められた患者は、108例(42.7%)であった。・これらの患者のうち、NAFLDの線維化の徴候が認められた患者は、13例(12.0%)であった。・年齢分布に関しては、NAFLDは若年患者(とくに女性患者)において多かった。・統合失調症患者のNAFLDと有意な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●BMI(p<0.001) ●メタボリックシンドロームリスクを伴う抗精神病薬の総投与量(p=0.049) ●高プロラクチン血症リスクを伴う抗精神病薬の総投与量(p=0.041)・探索的解析では、NAFLDの線維化の徴候は、女性患者においてより関連性が高いことが示唆された(p=0.023)。・この若年女性患者でみられるリスクは、一般集団と比較し、統合失調症患者に特有である可能性が示唆された。

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ASCO2021 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介これまでは高齢がん患者を対象とした臨床試験が乏しいといわれてきたが、徐々に高齢者を対象とした第III相試験のデータが発表されつつある。ASCO2021では、高齢者進展型小細胞肺がんに対するカルボプラチン+エトポシド併用療法(CE療法)とカルボプラチン+イリノテカン併用療法(CI療法)のランダム化比較第II/III相試験(JCOG1201/TORG1528:#8571)、高齢者化学療法未施行IIIB/IV期扁平上皮肺がんに対するnab-パクリタキセル・カルボプラチン併用療法とドセタキセル単剤療法のランダム化第III相試験(#9031)、76歳以上の切除不能膵がんに対する非手術療法の前向き観察研究(#4123)など、高齢者を対象とした臨床研究の結果が複数、発表されている。これら治療開発に関する第III相試験の情報はさまざまな場所で得られると思われるため詳述はせず、ここでは老年腫瘍学に特徴的な研究を紹介する。高齢者の多様性を示すかのように、今回の発表内容も多様であった。高齢がん患者に対する高齢者総合的機能評価および介入に関するランダム化比較試験(THE 5C STUDY)高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)は、患者が有する身体的・精神的・社会的な機能を多角的に評価し、脆弱な点が見つかれば、それに対するサポートを行う診療手法である。NCCNガイドライン1)をはじめ、高齢がん患者に対してCGAを実施することが推奨されている。これまで、がん領域では高齢者の機能の「評価」だけが注目されることが多かったが、最近では、「脆弱性に対するサポート」まで含めた診療の有用性を評価すべきという風潮になっている。昨年のASCOでは、「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が4つ発表され、その有用性が検証されつつある。今回、世界的にも注目されていた第5のランダム化比較試験、THE 5C STUDY2)がシンポジウムで発表された。画像を拡大する主な適格規準は、70歳以上、がん薬物治療が予定されている患者(術前補助化学療法、術後補助化学療法は問わず、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も対象)、PS:0~2など。標準診療群は「通常の診療」、試験診療群は「高齢者総合的機能評価および介入(CGAに加え、通常の腫瘍治療に加えて老年医学の訓練を受けたチームによるフォローアップ)を行う診療」である。primary endpointはEORTC QLQ-C30のGlobal health status(項目29および30)で評価した健康関連の生活の質(HR-QOL)であり、key secondary endpointは手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living:IADL)。primary endpointについてはパターン混合モデルを使用した(0、3、6ヵ月目)。カナダの8つの病院から351例の参加者が登録され、治療開始翌日以降に介入が行われた(患者の要望に合わせた研究であるため)。HR-QOLスコアの変化は両群で差がなく(p=0.90)、またIADLも両群間で差はなかった(p=0.54)。筆者はlimitationとして、CGAを実施したタイミングが悪かったことを挙げている。本研究では、患者の利便性を考えて、「治療開始時」または「治療開始後」にCGAを実施していたが、一般的には、治療方針を決定する前にCGAを実施すれば、患者の脆弱性を考慮して適切な治療を選択できると考えられている。しかし、今回は治療開始時または治療開始後にCGAを実施された患者が多かったため、CGAの意義が乏しかった可能性があるという理屈である。その他、COVID-19により、十分な介入ができなかったこと、またHR-QOLが影響を受けた可能性があること、そもそも「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するためのアウトカムとしてEORTC QLQ-C30のGlobal health statusが適切でなかった可能性などをlimitationに挙げている。昨年のASCOで発表された研究では「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性が示されたが、残念ながら、本試験ではその有用性は検証できなかった。しかし、研究デザインに問題があること、またひと言で「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」といっても、その内容はさまざまであることなどから、本試験がnegative studyであるからといって、その有用性が否定されたわけではないだろう。個人的には、筆者がlimitationで挙げているとおり、治療開始「前」にCGAを実施できていれば、より適切な治療が選択され、その結果、介入もより効果的になって、本試験の結果も変わっていたのではないかと想像してしまう。高齢者総合的機能評価と局所進行頭頸部扁平上皮がんの治療方針単施設の後ろ向き研究ではあるが、THE 5C STUDYのlimitationと関係するため、ここで紹介する。要は、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することで、適切な治療を選択できる可能性があるという発表である3)。局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-HNSCC)を伴う高齢者を対象として、2016~18年の間に通常の診療を受けた集団(通常診療コホート)と、2018~20年の間にCGAを実施された集団(CGAコホート)を比較し、実際に受けた治療(標準治療、毒性を弱めた治療、緩和目的の治療、ベストサポーティブケア)、治療完遂割合、奏効割合などを評価した。通常診療コホート96例、CGAコホート81例の計197例の患者が対象となった。CGAコホートでは、通常診療コホートと比較して、標準治療を受ける患者が多かったが(36% vs.21%、p=0.048)、治療完遂割合(84% vs.86%、p=0.805)や奏効割合(73.9% vs.66.7%、p=0.082)に有意な差は認めなかった。これまでは、CGAを実施することで過剰な治療を防ぐことができるという、いわば脆弱な患者を守る方向で議論されることが多いと感じていた。しかし、本研究では、CGAを実施することで標準的な治療を受けることができた患者が増え、またベストサポーティブケアを受ける患者が少なくなるということが示されたことで、CGAにより、過小な治療を受けていた患者が適切な治療を受けられることが示唆されたといえる。つまり、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することは大事という話。Choosing Unwisely(賢くない選択):高齢者における骨髄異形成症候群の確定診断Choosing Wiselyとは科学的な裏付けのない診療を受けないように賢い選択をしましょうという国際的なキャンペーンだが、本研究ではChoosing Unwiselyとして、高齢者に対して骨髄異形成症候群(MDS)の正確な診断をすること、を挙げている4)。MDSに正確な診断(Complete Diagnostic Evaluation:CDE)をするためには、骨髄生検、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション、染色体分析が必要だが、この意義があるか否かを2011~14年のメディケアデータベースを用いて検討した。対象は、2011~14年の間に66歳以上でメディケアを受けている患者のうち、MDSの診断を受けており、1種類以上の骨髄細胞減少を有し、MDS診断前後16週間に輸血を受けていない集団(1万6,779例)。CDEが臨床的に正当化されない患者の要因の組み合わせを特定するために、機械学習の手法であるCART(Classification and Regression Tree)分析を行い、CDEの有無による生存率の比較を行うためにCox比例ハザード回帰分析を行った。結果、1種類の血球減少(例:貧血のみ)を有する集団のうち、66~79歳の57.7%(1,156例)、80歳以上の46.0%(860例)がCDEを受けていた。また、血球減少がない患者3,890例のうち、866例がCDEを受けていた。背景因子を調整後の解析では、CDEを受けたことによる生存率の向上は認められなかった(p=0.24)。筆者は、高齢者のMDSに対して不要なCDEを減らすことを提案している。COVID-19患者の全米データベースの「がんコホート」高齢者に限定した研究ではないが、知っておくべきデータだと思うので簡単に紹介する。米国国立衛生研究所(NIH)が運営している全米COVIDコホート共同研究(National COVID Cohort Collaborative:N3C)のデータベースのうち、がん患者のみのコホートが公表された5,6)。N3Cコホートから合計37万2,883例の成人がん患者が同定され、5万4,642例(14.7%)がCOVID-19陽性。入院中のCOVID-19陽性患者の平均在院日数は6日(SD 23.1日)で、COVID-19の初回入院中に死亡した患者は7.0%、侵襲的人工呼吸が必要な患者は4.5%、体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な患者は0.1%であった。生存割合は、10日目で86.4%、30日目で63.6%であった。65歳以上の高齢者(HR:6.1、95%CI:4.3~8.7)、併存症スコア2以上(HR:1.15、95%CI:1.1~1.2)などが全死因死亡のリスク増加と関連していた。18~29歳を基準とした場合、30~49歳のHRは1.09(0.67~1.76)、50~64歳では1.13(0.72~1.77)に対して、65歳以上ではHR:6.1と異常に高いことから、これまで以上に、高齢がん患者ではCOVID-19に注意を払う必要があると感じた。もちろん、併存症スコアが上昇するにつれ死亡割合が上昇していることから、暦年齢は併存症スコアに関連している可能性があり、暦年齢だけの問題ではない可能性はある。参考1)NCCN GUIDELINES FOR SPECIFIC POPULATIONS: Older Adult Oncology2)Comprehensive geriatric assessment and management for Canadian elders with Cancer: The 5C study.3)Impact of comprehensive geriatric assesment (CGA) in the treatment decision and outcome of older patients with locally advanced head and neck squamous cell carcinoma (LA-HNSCC).4)Choosing unwisely: Low-value care in older adults with a diagnosis of myelodysplastic syndrome.5)Outcomes of COVID-19 in cancer patients: Report from the National COVID Cohort Collaborative (N3C).6)Sharafeldin N, et al. J Clin Oncol. 2021:Jun 4. [Epub ahead of print]

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再発・難治性多発性骨髄腫、BCMA標的CAR-T細胞療法の奏効率97%/Lancet

 多くの前治療歴のある再発・難治性の多発性骨髄腫に対し、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法ciltacabtagene autoleucel(cilta-cel)の単回投与は、速やかに深くそして持続的な奏効をもたらすことが示された。全奏効率は97%、12ヵ月無増悪生存は77%だった。米国・Sarah Cannon Research InstituteのJesus G. Berdeja氏らが、97例の患者を対象に行った第Ib/II相の単群非盲検試験「CARTITUDE-1試験」の結果で、著者は「cilta-celは、再発・難治性の多発性骨髄腫の実行可能な治療選択肢となりうるだろう」と述べるとともに、今回の試験データは基礎資料の1つとして規制当局へ提出したことを明らかにしている。Lancet誌オンライン版2021年6月24日号掲載の報告。リンパ球除去療法の5~7日後に、cilta-celを単回投与 CARTITUDE-1試験はcilta-celの安全性と臨床的活性を評価することを目的に、2018年7月16日~2019年10月7日に、米国16ヵ所の医療センターで患者を登録して行われた。適格被験者は、多発性骨髄腫でECOG(米国東海岸がん臨床試験グループ)PSが0/1で、3レジメン以上の前治療歴またはプロテアソーム阻害薬と免疫調節薬の両方に抵抗性を示し、プロテアソーム阻害薬と免疫調節薬、抗CD38抗体の服用歴のある18歳以上とした。 被験者は、リンパ球除去療法の5~7日後に、cilta-cel(標的用量:CAR-T細胞0.75×106個/kg)を単回投与した。 主要評価項目は、安全性および第II相試験での推奨用量の確認(第Ib相試験)、全奏効率(第II相試験)だった。副次評価項目は、奏効期間および無増悪生存だった。CAR-T細胞神経毒性は21%で発生、Grade3/4は9% 被験者113例が登録され、97例(第Ib相で29例、第II相で68例)が第II相推奨用量を投与された。 2020年9月1日(臨床的カットオフ日)時点における追跡期間中央値は12.4ヵ月(IQR:10.6~15.2)、97例の前治療歴レジメン数中央値は6だった。 全奏効率は97%(95%信頼区間[CI]:91.2~99.4、94/97例)で、厳格な完全奏効を達成したのは65例(67%)だった。最初の奏効までの期間中央値は1ヵ月(IQR:0.9~1.0)で、奏効は時間の経過とともに深まった。 12ヵ月無増悪生存は77%(95%CI:66.0~84.3)、全生存率は89%(80.2~93.5)だった。 血液学的有害事象の発現頻度は高く、Grade3/4の同イベントとして好中球減少症(95%)、貧血(68%)、白血球減少症(61%)、血小板減少症(60%)、リンパ球減少症(50%)が報告された。 サイトカイン放出症候群の発生率は95%(うちGrade3/4は4%)、発症までの期間中央値は7.0日(IQR:5~8)、発症期間中央値は4.0日(3~6)だった。同発症者のうち1例はGrade5で血球貪食性リンパ組織球症を発症したが、それ以外は全員軽快した。CAR-T細胞神経毒性の発生は21%だった(うちGrade3/4は9%)。本試験における死亡は14例で、うち6例が治療関連有害事象によるもの、5例が病勢進行によるもの、3例が治療とは関連しない有害事象によるものだった。

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PTSDの悪夢やフラッシュバックに対するトリヘキシフェニジル治療の有効性

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、悪夢やフラッシュバックを特徴とする、外傷性イベント後に発症する可能性のある不安障害である。この悪夢やフラッシュバックの根底にあるPTSDのメカニズムは解明されておらず、抗うつ薬や抗精神病薬を含むいくつかの薬剤が治療に用いられている。そごうPTSD研究所の十河 勝正氏らは、抗コリン薬ブチルスコポラミン臭化物によるケーススタディに続いて、PTSD関連の悪夢やフラッシュバックに対する中枢性抗コリン薬の効果について、検討を行った。Brain and Behavior誌2021年6月号の報告。PTSDの悪夢やフラッシュバックの治療、中枢性抗コリン薬の有効性を証明 過去(約2~15年)の精神医学的治療に奏効しなかった難治性のPTSD関連の悪夢やフラッシュバックを有する患者34例を対象に、トリヘキシフェニジルによる治療を行った(オープンラベル試験:22例、単盲検試験:12例)。トリヘキシフェニジルの効果を測定するため、PTSD臨床診断面接尺度(Clinician-Administered PTSD Scale:CAPS)および出来事インパクト尺度改訂版(Impact of Event Scale-Revised:IES-R)を用いた。 PTSD関連の悪夢やフラッシュバックに対する中枢性抗コリン薬の効果について検討した主な結果は以下のとおり。・治療開始2週間以内に、悪夢やフラッシュバックに対する顕著な改善が確認された。・オープンラベル(各々:p<0.001)および単盲検試験(各々:p=0.001)のいずれにおいても、悪夢やフラッシュバックの有意な改善効果が認められた。 ●悪夢の頻度:治療前3.24(週に数回~ほぼ毎日)→治療後0.45(なし~月に1、2回) ●悪夢の重症度:治療前3.45(重度以上)→治療後0.56(なしまたは軽度) ●フラッシュバックの頻度:治療前3.36(週に数回~ほぼ毎日)→治療後0.48(まったくないまたは月に1、2回) ●フラッシュバックの重症度:治療前3.32(重度以上)→治療後0.61(なしまたは軽度)・全体として、CAPSサブスコアの悪夢やフラッシュバックについて、「なし」または「軽度(月に1、2回)」への改善が認められた。 ●悪夢の改善率:88%(34例中30例) ●フラッシュバックの改善率:79%(34例中27例) 著者らは「本研究は、難治性のPTSD関連の悪夢やフラッシュバックの治療におけるトリヘキシフェニジルの潜在的な有効性を証明した最初の研究である。PTSDに対するトリヘキシフェニジルの臨床的ベネフィットをさらに調査するためにも、二重盲検ランダム化比較試験の実施が望まれる」としている。

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ASCO2021レポート 乳がん

レポーター紹介2021年6月4日から8日まで5日間にわたり、2021 ASCO Annual Meetingが昨年と同じく完全バーチャルで実施された。昨年はプレナリーセッションのQAのみがライブ配信され、他の演題は口演を含め開会と同時にオンデマンドで見ることができたが、今年は口演の録画+リアルタイムQAが実施された。参加された方は実感されていると思うが、米国の日中はほぼ日本の深夜〜明け方である。日本からリアルタイムで参加するのに骨が折れるのは言うまでもない。2021年のテーマは“Equity: Every Patient. Every Day. Everywhere.”であった。COVID-19は世界中の日常を変えてしまったが、図らずも人種や地域によって受けられる治療に差があることを明らかにしてしまった。がん領域においても公平な治療は非常に重要な概念である(公平でないからこそテーマとなっている、ともいえる)。さて、乳がん領域ではプレナリーで日常臨床を変える結果が発表され、Local/Regional/Adjuvantで重要な演題が多く発表された。その一方で、Metastaticでは目玉となる発表は少なかったように思う。乳がんの演題について、プレナリーセッションの1題、Local/Adjuvantから3演題、Metastaticから1演題を紹介する。生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異陽性のHER2陰性再発高リスク早期乳がんに対する周術期化学療法後の術後オラパリブ療法の二重盲検化比較第III相試験(OlympiA試験, LBA1)生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異陽性(gBRCAmt)のHER2陰性転移乳がんに対しては、OlympiAD試験でオラパリブの主治医選択治療(化学療法)に対する無増悪生存期間(PFS)における優越性が示され、現在実臨床でも使用されている(Robson M, et al. N Engl J Med. 2017;377:523-533.)。オラパリブはPARP阻害薬であり、gBRCAmtの乳がん患者では合成致死と呼ばれる機序でがん細胞の細胞死を誘導する。OlympiA試験ではgBRCAmtを持つHER2陰性再発高リスク乳がん(術前化学療法を受けた患者では、トリプルネガティブ乳がん[TNBC]でnon-pCR、HR+でnon-pCRかつCPS-EG≧3、術後化学療法を受けた患者では、TNBCでpT2以上またはpN1以上、HR+でN≧4個)を、オラパリブ300mg 2回/日 内服1年間とプラセボに割り付けた。1,836例が登録され、オラパリブ921例、プラセボ915例に割り付けられた。遺伝子変異はBRCA1が70%強であり、ホルモン受容体は陽性が20%弱であった。主要評価項目の無浸潤疾患生存(iDFS)において、3年で85.9% vs.77.1%(ハザード比[HR]:0.58、95%CI:0.41~0.82、p<0.0001)と10%近い差をつけてオラパリブ群で良好であった。副次評価項目の遠隔無病生存(DDFS)においても、3年で87.5% vs.80.4%(HR:0.57、95%CI:0.39~0.83、p<0.0001)であり、iDFSと同様の傾向であった(DDFSとOSの評価ではαが再利用されている)。3年全生存(OS)では92.0% vs.88.3%(HR:0.68、95%CI:0.44~1.05、p=0.024)(有意水準はp<0.01)と統計学的有意差こそ示されなかったものの、オラパリブ群で良好な傾向であった。患者がリスク低減手術を受けたかどうかにもよるが、オラパリブがHBOC関連の他がんの発症を抑えていることが、OSで良好な傾向を認めた理由かもしれない。毒性については悪心、倦怠感、貧血が主なものであり、Grade3の貧血には注意が必要なものの、これまでに示されている有害事象と同様で、いずれも管理可能なものである。PARP阻害薬を早期がんに使用する際の懸念点としてMDS/AMLならびに2次がんの発症があるが、発表時点ではオラパリブでそれぞれ0.2%、2.2%、プラセボで0.3%、3.5%であり、とくにオラパリブ群での増加は認めなかった。ただし、こちらについてはより長期のフォローを経たデータを見て再度検討が必要であろう。またEORTC QLQ-C30を用いたQOL評価が実施されており、オラパリブ群とプラセボ群でQOLのスコアの差は認められなかった。本試験は今年のASCOの発表の中で間違いなく日常臨床を変える結果の1つであった。承認されるとBRCA1/2の遺伝学的検査の頻度が今以上に増えることが予想される。患者本人に対するリスク低減手術はもちろん、治療適応の判断を目的とした検査の結果として、未発症保因者が増えてくると考えられる。未発症保因者に対するサーベイランスや化学予防、リスク低減手術の体制や保険の整備がより重要となってくるであろう。gBRCAmt HER2陰性乳がんを対象としたtalazoparib術前薬物療法のphase II試験(NEOTALA試験)HBOC関連の話題をもうひとつ取り上げる。talazoparibはgBRCAmt転移乳がんに対して有効性の示されているもうひとつのPARP阻害薬である(本邦未承認)。NEOTALA試験はgBRCAmt HER2陰性早期乳がんを対象として、talazoparib 1mg/日を24週間術前薬物として内服する単アームのphase II試験である。病理学的完全奏効(pCR)率を主要評価項目とし、pCRは浸潤がんの遺残がないものと定義された。当初112例を予定症例数としていたが、進捗が悪かったため60例に修正された。最終的に61例が解析対象となり、78.7%がBRCA1を、21.3%がBRCA2を有していた。talazoparibを80%以上内服し、手術を受けてpCRの評価が可能であった症例がevaluable populationとされ、48例(78.7%)が該当した。evaluable populationにおけるpCR率は45.8%であり、通常の術前化学療法に匹敵するpCRが得られた。90%以上が20週以上talazoparibを内服できていた。有害事象は倦怠感、悪心、脱毛、貧血、頭痛が主なものであるが、Grade3の貧血を39.3%で認めており注意が必要である。あくまでphase IIの結果が得られた段階であるが、今後はgBRCAmtにおいてはPARP阻害薬による術前薬物療法の開発が期待される。70遺伝子シグネチャで超ローリスクであった症例の予後(MINDACT試験)早期乳がんでは術後薬物療法の適応が問題となる。とくにホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんではホルモン療法感受性の高い集団と化学療法感受性の高い集団が存在し、化学療法の適応を検討する試験が多数行われている。早期乳がんにおいてmRNAを測定し遺伝子シグネチャによる予後予測ならびに治療効果予測が研究されている。MINDACT試験もその1つであり、臨床的なリスク層別と腫瘍の70遺伝子によるgenomic riskによる層別化を実施し、臨床的あるいはgenomicのどちらかでハイリスクとなった症例を術後化学療法あり・なしにランダム化し、化学療法の上乗せを検証する臨床試験である。この発表では70遺伝子シグネチャでハイリスク、ローリスク、超ローリスクと分類された症例の予後を比較した。8.7年の観察期間中央値で、8年生存率はハイリスクで89.2%、ローリスクで94.5%、超ローリスクで97.0%であった。超ローリスクとローリスクの比較ではHR 0.65(95%CI:0.45~0.94)と、ローリスクと比較しても超ローリスクは非常に良い予後を有していた。8年乳がん特異的生存は超ローリスクで99.6%(ローリスクでは98.2%)であり、きわめて良好であった。超ローリスクであった症例の特徴として、50歳以上、リンパ節転移陰性、腫瘍径2cm以下、グレード1 or 2、ホルモン受容体陽性HER2陰性のサブタイプなどが挙げられた。16%は一切の術後治療を受けていなかった。遺伝子シグネチャで超ローリスクであった場合に臨床的リスクがどのように影響するかについても検討され、遠隔転移については2.6%程度、乳がん特異的生存には差を認めなかった。超ローリスクで術後無治療の場合の8年無遠隔転移生存は97.8%、ホルモン療法のみでも97.4%であった。文字通り、超ローリスクは非常に良好な予後を持っており、再発のリスクはきわめて低いといえる。超ローリスクでは術後ホルモン療法すら不要である可能性があり、less toxicな治療開発(というよりも治療省略)が進む領域といえよう。術前化学療法でpCRが得られなかったトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術後プラチナ製剤とカペシタビンの比較第III相試験(EA1101試験)近年、術前化学療法の治療効果(pCRかnon-pCRか)によって術後治療を変更するレスポンスガイド治療が広く実施されるようになっている。HER2陰性乳がんではCREATE-X試験で、non-pCRの場合にカペシタビン1,250mg/m2 2週投与1週休薬6~8コースが、無治療と比較してDFS、OSを改善し、とくにTNBCにおいて良好な傾向であったことが示されており(Masuda N, et al. N Engl J Med. 2017;376:2147-2159.)、HER2陽性においてもnon-pCRの場合に術後治療をT-DM1に変更することが、DFS、OSを改善することが示されている(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)。本試験はTNBCで有望とされているプラチナ製剤のnon-pCRにおける有効性を検証した試験である。PAM50を用いたTNBCのサブタイピング(basalとnon-basal)も実施されている。プラチナ製剤(CBDCA AUC 6またはCDDP 75mg/m2)4サイクルと、カペシタビン1,000mg/m2 2週投与1週休薬(米国で通常使用されている用量)6サイクルに1:1に割り付けられた。当初は無治療群が設定されていたが、CREATE-Xの結果を受けて2群比較とされた。主要評価項目はiDFSで、プラチナ製剤のカペシタビンに対する非劣性が証明された場合に優越性を検証するハイブリッドデザインが(なぜか)採用された。5回目の中間解析でプラチナ製剤とカペシタビンのHRは1.09であり、非劣性が示されないと判断され、効果安全性委員会に中止が勧告され試験中止となった。中止時点で308例が登録され、78%がbasalタイプであった。主要評価項目の3年iDFSにおいて、プラチナ群の42%に対しカペシタビン群は49%(HR:1.06、95%CI:0.62~1.81)であり、プラチナ群のカペシタビン群に対する非劣性は示されなかった。basalとnon-basalの比較では3年iDFSは45.8% vs.55.5%(HR:1.71、95%CI:1.10~.67)であり、non-basal群で有意に良好であった。また、non-basal群では、よりカペシタビンで良好な傾向を認めた。無再発生存やOSは両群間での差を認めなかった。有害事象はプラチナ群で貧血や白血球減少が多く、カペシタビンで下痢や手足症候群が多かったが、Grade3以上の有害事象の頻度は低かった。プラチナ製剤はTNBCにおいてpCR率を改善するなど、有効性が期待される薬剤であっただけに、本試験の結果は残念であった。今後もnon-pCRのTNBCに対してはカペシタビンの術後薬物療法が標準である。一方この領域では術前化学療法に免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示されるなど、さまざまな薬剤の開発が活発に進んでいる。non-pCRの術後薬物療法についてもアンメットニーズが増加している。ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するパルボシクリブ+フルベストラント療法のOSアップデート(PALOMA-3)ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんでは、ホルモン療法とCDK4/6阻害薬の併用が標準治療となっている。PALOMA-3試験は術後内分泌療法、あるいは転移乳がんに対する内分泌療法中に増悪を認めた症例を対象に、パルボシクリブ+フルベストラントの優越性を検証した二重盲検化比較第III相試験である。主要評価項目のPFSで優越性を示し、すでに本邦でも承認され日常臨床で使用されている。また、OSにおいては統計学的有意差を示せなかったものの、パルボシクリブ群で良好な傾向であった(Turner NC, et al. N Engl J Med. 2018;379:1926-1936.)。今回の発表はそのOSデータのアップデートである。44.8ヵ月の観察期間中央値で、全生存期間中央値(MST)は34.9ヵ月vs.28.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.64~1.03、p=0.0429)であり有意差を認めなかったが、観察期間中央値73.3ヵ月では34.8ヵ月vs.28.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.65~0.99、p=0.0221)であった。5年生存率はパルボシクリブ群で23.3%に対し、プラセボ群では16.8%であった。サブグループ解析では、前治療のホルモン療法に感受性がある、化学療法を受けたことがない、内臓転移がない、閉経後、無病期間24ヵ月以上などが挙げられた。これを基に、進行乳がんに対する化学療法のあり・なしでの追加解析が実施され、化学療法歴のない症例ではパルボシクリブ群でMST 39.3ヵ月に対しプラセボ群で29.7ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.55~0.92、p=0.008)とパルボシクリブ群で良好であったが、化学療法歴がある場合は24.6ヵ月vs. 24.3ヵ月と両群間の差を認めなかった。また、この発表ではctDNAを用いたESR1、PIK3CA、TP53の変異の有無による探索的な解析が実施された。ESR1、PIK3CA、TP53変異はそれ自体が予後因子であるが、パルボシクリブはこれらの遺伝子変異の有無にかかわらずOSを改善させる傾向を認めた。今回の結果はこれまでの報告と同様であり、パルボシクリブ+フルベストラント療法は、変わらずホルモン療法2次治療の標準治療の1つであり続けるであろう。

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第67回 がん患者にmRNAワクチン有効/米国のCOVID-19死亡例の接種状況/ワクチン開発に役立つ発見

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの効果を裏付ける2つの報告と次世代のCOVID-19ワクチン開発で参考になりそうな研究成果を紹介します。がん患者の94%がCOVID-19のmRNAワクチンに応答Pfizer/BioNTech社やModerna社のmRNAワクチン・BNT162b2やmRNA-1273が投与されたがん患者のほとんどが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体を幸いにも発現しました1)。2回目の接種を済ませたがん患者123人中116人(94%)にSARS-CoV-2への抗体が認められました。ただし、先立つ6ヵ月間に抗CD20抗体リツキシマブ治療経験がある4人にはSARS-CoV-2への抗体が認められませんでした。また、骨髄腫やホジキンリンパ腫などの血液がん患者の抗体発現率は77%であり、固形がん患者の98%に比べて低めでした。血液がん患者は抗体活性も低めでした。今後の課題として、そのような不安要素がある患者へのがん治療後の3回目の接種の検討などが必要です2)。米国では今やワクチン接種済みのCOVID-19死亡例は1%に満たないAP通信社が米国疾病予防管理センター(CDC)の5月のデータを独自に調べた結果によると同国のCOVID-19死亡のほぼすべてはワクチン接種が済んでいない人でした3)。5月のおよそ11万のCOVID-19入院患者にワクチン接種が済んだ人はほとんどおらず僅か約1.1%の1,200人足らずでした。また、5月にCOVID-19で死亡した1万8,000人超にもワクチン接種が済んでいる人はほとんどおらず1%にも満たない(およそ0.8%)約150人のみでした。好中球の投網でCOVID-19を一網打尽?Pfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種でも発現4)しうることが知られるIgA抗体は粘膜表面に豊富でウイルス病原体の防御で重要な役割を担います。IgA抗体はウイルスに直接取り付いて細胞感染を阻止することに加え、免疫細胞表面にあるFc受容体と協力して抗菌活性を促しうることが知られています。Fc受容体を介したIgA抗体のウイルス感染への作用はこれまでよく分かっていませんでしたが、PNAS誌に掲載された新たな研究の結果5)、IgA抗体-ウイルス複合体は好中球のFc受容体に結びついてクモの巣状の仕掛け・NET(好中球細胞外トラップ)を投網の如く好中球に分泌させると分かりました。好中球が破裂(NETosis)して放たれるNETはウイルスを捉えて不活性化することも確認され、その抗ウイルス機能が裏付けられました。他の免疫活性がそうであるようにNETは有益である一方で行き過ぎると害をもたらします。IgA抗体が感染前に豊富に備わっていればNETは感染防御を担うでしょう。しかし感染でIgA抗体がたくさん作られてしまうとNETは炎症を引き起こしてむしろ病状を悪化させてしまう恐れがあります6)。SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスなどに対抗するIgA抗体をあらかじめ備えておくための次世代のワクチン開発に今回の成果は参考になるでしょう。参考1)Addeo A, et al.Cancer Cell. 2021 Jun 18:S1535-6108,00330-5.2)94% of patients with cancer respond well to COVID-19 vaccines / Eurekalert3)Nearly all COVID deaths in US are now among unvaccinated / AP4)Turner JS, et al.Nature. 2021 Jun 28. [Epub ahead of print]5)Stacey HD, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Jul 6;118.6)Researchers discover unique 'spider web' mechanism that traps, kills viruses / Eurekalert

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