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大腸がん術後の低分子ヘパリン、投与期間延長は有効か?/BMJ

 低分子量ヘパリンtinzaparinによる大腸がん切除術の周術期抗凝固療法は、投与期間を延長しても入院中のみの投与と比較して、静脈血栓塞栓症と術後大出血の発現率は両群で類似していたが、無病生存および全生存を改善しなかった。カナダ・オタワ大学のRebecca C. Auer氏らが、カナダ・ケベック州とオンタリオ州の12病院で実施した無作為化非盲検比較試験「PERIOP-01」の結果を報告した。低分子量ヘパリンは、前臨床モデルにおいてがん転移を抑制することが示されているが、がん患者の全生存期間延長は報告されていない。周術期は、低分子量ヘパリンの転移抑制効果を検証するのに適していると考えられることから、約35%の患者が術後に再発するとされる大腸がん患者を対象に臨床試験が行われた。BMJ誌2022年9月13日号掲載の報告。術前から術後56日間の血栓予防と、術後入院期間中のみの血栓予防を比較 研究グループは、2011年10月25日~2020年12月31日の期間に、病理学的に浸潤性結腸・直腸腺がんと確定診断され、術前検査で転移を認めず外科的切除術が予定されたヘモグロビン値8g/dL以上の成人(18歳以上)614例を、血栓予防を目的としたtinzaparin 4,500 IU/日皮下投与を、手術決定時(無作為化後24時間以内)から術後56日間継続する期間延長群と、術後1日目から入院期間中のみ行う院内予防群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、3年時点の無病生存(局所領域再発、遠隔転移、2次原発がん[同一がん]、2次原発がん[他のがん]、または死亡を伴わない生存と定義)、副次評価項目は静脈血栓塞栓症、術後大出血合併症、5年全生存などとし、intention-to-treat解析を実施した。 なお、本試験は、無益性のため中間解析後に早期募集中止となった。周術期の抗凝固療法、期間延長でも3年時の無病生存は改善せず 主要評価項目のイベント発生は、期間延長群で307例中235例(77%)、院内予防群で307例中243例(79%)であった(ハザード比[HR]:1.1、95%信頼区間[CI]:0.90~1.33、p=0.4)。 術後静脈血栓塞栓症は、期間延長群5例(2%)、院内予防群4例(1%)に認められた(p=0.8)。また、術後1週間の手術関連大出血はそれぞれ1例(<1%)および6例(2%)報告された(p=0.1)。 5年全生存率は、期間延長群89%(272例)、院内予防群91%(280例)で有意差は認められなかった(HR:1.12、95%CI:0.72~1.76、p=0.1)。 著者は今回の研究の限界として、非盲検試験であること、結腸がんと直腸がんの両方を組み込んだこと、また中間解析の結果を踏まえて早期に試験中止に至ったことなどを挙げている。

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第12回 「今年こそインフルエンザ流行」はオオカミ少年?

毎年「インフルエンザと新型コロナの同時流行が…」という懸念が出つつ、流行しないということが続いています。今度こそインフルエンザが流行するかもしれないと報道されていますが、オオカミ少年のようにあまり信用されていないのが現状です。「インフルエンザと新型コロナはウイルス干渉して共存しないため、コロナ禍ではインフルエンザは流行しない」という見解があり、実際に2シーズン連続でそのような動きとなっています。オーストラリアの流行オーストラリアは南半球にあるため、インフルエンザは夏に流行します。そのため、日本のインフルエンザの流行を予測するうえで、オーストラリアの流行状況を参考にすることが多いです。ほかの国のデータも参考になりますが、オーストラリアが圧倒的に開示されている情報が多く、こちらを基に予測されています。残念ながら、2022年に関しては、オーストラリアでインフルエンザと新型コロナの同時流行が起こっており、ウイルス干渉というロジックがあやふやであることが示されました。オーストラリアでは例年よりも2~3ヵ月早くインフルエンザの流行が起こっており(図)1)、日本でもしこのような事態になるとすれば、年末くらいから流行が始まるかもしれません。図. オーストラリアのインフルエンザ流行状況(参考資料1より)ワクチン同時接種は筋注+皮下注?新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が認められました。新型コロナワクチンは筋注で行いますが、インフルエンザワクチンは実はまだ添付文書的には皮下注が基本です。病院職員・看護学生へのインフルエンザワクチン接種を筋肉注射か皮下注射の希望選択としている施設での研究によると、申告を要する副反応は、筋肉注射8.2%、皮下注射11.3%と、筋肉注射のほうが少なかったという結果でした2)。別の研究においても、筋肉注射のほうが皮下注射よりも副反応が少なかったと報告されています3)。インフルエンザワクチンによる抗体価上昇は、皮下注射と筋肉注射で差がないこともわかっています4)。一方が筋注、もう一方が皮下注だと、インシデントのもとになりますので、可能であれば両腕に筋肉注射できるようにすべきと考えます。まぁ、そう簡単に同時接種が実現するとは思っていません。ウチの子供の3回目接種が近づいてきたのですが、新型コロナワクチンは自治体から予約、インフルエンザワクチンはかかりつけの小児科で予約、という状況です。参考文献・参考サイト1)Australian Influenza Surveillance Report No. 12 - 29 August to 11 September 20222)馬嶋健一郎ほか. 発症率・接種時疼痛・副反応の前向きコホート観察研究. 日本環境感染学会誌. 2021;36(1):44-52.3)Ikeno D, et al. Immunogenicity of an inactivated adjuvanted whole-virion influenza A (H5N1, NIBRG-14) vaccine administered by intramuscular or subcutaneous injection. Microbiol Immunol. 2010 Feb;54(2):81-8.4)Sanchez L, et al. Immunogenicity and safety of high-dose quadrivalent influenza vaccine in Japanese adults ≥65 years of age: a randomized controlled clinical trial. Hum Vaccin Immunother. 2020 Apr 2;16(4):858-866.

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ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長(CodeBreaK-200)/ESMO2022

 KRAS G12C変異陽性の既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、ソトラシブがドセタキセルよりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長することが、米国・Sarah Cannon Research InstituteのMelissa L. Johnson氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 ソトラシブの有効性は単群試験のCodeBreaK100で示されていたが、今回発表されたのは、日本も参加した国際共同無作為化比較第III相試験CodeBreaK 200試験の主解析の結果である。・対象:免疫チェックポイント阻害薬と化学療法薬の治療歴を有するKRAS G12C変異陽性のNSCLC(過去の脳転移治療例は許容)・試験群:ソトラシブ960mgx1/日(Soto群:171例)・対照群:ドセタキセル75mg/m2を3週ごと(DTX群:174例)DTX群からSoto群へのクロスオーバー投与は許容・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会評価によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・試験は2020年6月から開始されたが、2021年2月にプロトコール修正が行われ、登録症例数が650例から330例へと変更になり、DTX群のSoto群へのクロスオーバー投与も認められた。・DTX群からSoto群へのクロスオーバー率は26.4%で、DTX治療の後治療として別のKRAS阻害薬の投与を受けた割合は7.5%であった。・両群の年齢中央値は64.0歳、脳転移の既往有りが約34%、前治療歴は2ライン以上が55%であった。・データカットオフ時(2022年8月)のPFS中央値はSoto群が5.6ヵ月、DTX群が4.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]:0.51~0.86)、p=0.002と有意にSoto群が良好であった。1年PFS率は、Soto群24.8%、DTX群10.1%だった。・ORRはSoto群が28.1%、DTX群が13.2%、p<0.001とSoto群が有意に高かった。腫瘍縮小効果があった割合は、それぞれ80.4%と62.8%であった。・DoR中央値はSoto群8.6ヵ月、DTX群は6.8ヵ月で、奏効までの期間中央値は、それぞれ1.4ヵ月と2.8ヵ月であった。・症例数が大幅に減ったこととクロスオーバー投与が許容されたことで、OSにおける両群間の差は検出されなかった。OS中央値は10.6ヵ月と11.3ヵ月、HRは1.01(95%CI:0.77~1.33)であった。・Grade3以上の有害事象は、Soto群で33.1%、DTX群で40.4%に発現した。重篤な有害事象はそれぞれ10.7%と22.5%であった。・Soto群で多く認められたGrade3以上の有害事象は、下痢、肝機能障害で、DTX群で多く認められたものは、倦怠感、貧血、脱毛、好中球減少(発熱性好中球減少症含む)などであった。・患者報告アウトカムは、Soto群で良好であり、がん関連の身体症状悪化までの期間もSoto群の方がDTX群よりも長かった。

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心不全のうっ血解除、アセタゾラミド追加で改善/NEJM

 体液過剰を伴う急性非代償性心不全患者の治療において、標準化されたループ利尿薬療法に炭酸脱水酵素阻害薬アセタゾラミドを追加すると、3日以内のうっ血解除(decongestion)の成功率が改善され、尿量やナトリウム利尿が増加して利尿効率が高くなり、有害事象の増加は認められないことが、ベルギー・Ziekenhuis Oost-LimburgのWilfried Mullens氏らが実施した「ADVOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月27日号に掲載された。ベルギーの医師主導無作為化プラセボ対照比較試験 ADVOR試験は、ベルギーの27施設が参加した医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年11月~2022年1月の期間に患者のスクリーニングが行われた(Belgian Health Care Knowledge Centerの助成を受けた)。 対象は、急性非代償性心不全で入院した成人で、少なくとも1つの体液過剰の臨床的徴候(浮腫、胸水、腹水)が認められ、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値>1,000pg/mLまたはB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値>250pg/mLの患者とされた。 被験者は、標準化されたループ利尿薬の静脈内投与(経口維持量の2倍に相当)に加え、アセタゾラミドの静脈内投与(500mg、1日1回)を受ける群またはプラセボ投与群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、うっ血解除の成功とされた。その定義は、体液過剰のない状態であり、無作為化から3日以内に達成され、うっ血解除療法の増量の適応がない場合とされた。入院期間も短縮、効果は退院時にも維持 519例(平均[±SD]年齢78.2±8.9歳、男性62.6%、白人99.0%)が登録され、アセタゾラミド群に259例、プラセボ群に260例が割り付けられた。患者はすべて臨床的に重大なうっ血の状態で、NT-proBNP値中央値は6,173pg/mL(IQR:3,068~1万896)、うっ血スコア(0~10点[浮腫:0~4点、胸水:0~3点、腹水:0~3点の合計]、点数が高いほど病態が悪い)中央値は4点(IQR:3~6)だった。 うっ血解除成功率は、アセタゾラミド群が42.2%(108/256例)と、プラセボ群の30.5%(79/259例)に比べ有意に優れた(リスク比:1.46、95%信頼区間[CI]:1.17~1.82、p<0.001)。アセタゾラミド群はプラセボ群に比し、3日間を通じてうっ血スコアの低下の程度がより顕著だった。また、生存退院時のうっ血解除成功率も、アセタゾラミド群で良好だった(78.8% vs.62.5%、リスク比:1.27、95%CI:1.13~1.43)。 副次エンドポイントである3ヵ月以内の全死因死亡または心不全による再入院の複合は、アセタゾラミド群が29.7%(76/256例)、プラセボ群は27.8%(72/259例)で発生し、両群間に差はなかった(HR:1.07、95%CI:0.78~1.48)。一方、初回入院の期間の幾何平均は、アセタゾラミド群が8.8日(95%CI:8.0~9.5)、プラセボ群は9.9日(9.1~10.8)と、アセタゾラミド群で良好だった(群間差:0.89、95%CI:0.81~0.98)。 無作為化から2日目の朝の平均(±SD)累積尿量は、アセタゾラミド群が4.6±1.7L、プラセボ群は4.1±1.8L(群間差:0.5L、95%CI:0.2~0.8)、平均(±SD)ナトリウム利尿はそれぞれ468±234mmolおよび369±231mmol(群間差:98mmol、95%CI:56~140)であり、いずれもアセタゾラミド群で多く、利尿効率が高かった。 投与期間中に、重度の代謝性アシドーシスは両群とも発生しなかった。腎臓の安全性の複合エンドポイント(血清クレアチニン値のベースラインからの倍加、推算糸球体濾過量の持続的な50%以上の減少、初回入院中の腎代替療法)(アセタゾラミド群2.7% vs.プラセボ群0.8%、p=0.10)、低カリウム血症(5.5% vs.3.9%、p=0.39)、低血圧(6.6% vs.3.5%、p=0.11)の発生は両群で同程度であった。また、3ヵ月の追跡期間中の重篤な有害事象(48.0% vs.47.9%、p=1.00)、治療関連有害事象(3.1% vs.1.2%、p=0.14)、心血管系の有害事象(44.1% vs.47.1%、p=0.53)の発生はいずれも、両群で差はなかった。 著者は、「うっ血の残存が有害なアウトカムと関連することを考慮すると、これらのアセタゾラミド治療の有益な効果は重要である。今回の知見は、うっ血を標的とする早期かつ積極的な治療の重要性を強調し、利尿反応の指標としてのナトリウム利尿を支持するものである」としている。

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双極性障害患者の精神症状有病率~メタ解析

 幻覚や妄想は、双極性障害(BD)で一般的に認められる精神症状である。ノルウェー・オスロ大学のS. R. Aminoff氏らは、双極I型障害(BDI)および双極II型障害(BDII)における、精神症状の生涯および点有病率を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、BDIにおける精神症状のプールされた有病率は、これまで報告されていた値よりも高い可能性が示唆された。Psychological Medicine誌オンライン版2022年8月26日号の報告。 Medline、PsycINFO、Embase、Cochrane Libraryより、2021年8月5日までに公表された研究をシステマティックに検索した。成人BD患者における精神症状の生涯有病率を評価した研究54件(2万3,461例)および点有病率を評価した研究24件(6,480例)が選択基準を満たした。質および出版バイアスの評価を行い、有病率(95%信頼区間[CI])をランダム効果メタ解析で算出した。 主な結果は以下のとおり。・中程度以上の質を有する研究の評価では、精神症状のプールされた生涯有病率は、BDIで63%(95%CI:57.5~68)、BDIIで22%(95%CI:14~33)であった。・BDI入院患者における精神症状のプールされた生涯有病率は、71%(95%CI:61~79)であった。・外来患者またはBDII入院患者に関する研究はなかった。・BDIにおける精神症状のプールされた点有病病は、54%(95%CI:41~67)であった。・点有病率は、躁病エピソードで57%(95%CI:47~66)、うつ病エピソードで13%(95%CI:7~23.5)であった。・BDII、BDIうつ病、混合エピソード、BDI外来患者に関する十分な研究はなかった。

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中・高リスクの進行腎細胞がんに対するカボザンチニブ+ニボルマブ+イピリムマブの3剤併用が有意にPFSを延長(COSMIC-313)/ESMO2022

 中・高リスクの進行腎細胞がん(RCC)に対する1次治療として、カボザンチニブ+ニボルマブ+イピリムマブの3剤併用療法とニボルマブ+イピリムマブの2剤併用療法の比較結果が、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのToni K. Choueiri氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 これは国際共同の二重盲検第III相のCOSMIC-313試験の第1回目の報告である。・対象:前治療のない淡明細胞型RCCで、IMDCリスク分類の中間リスクまたは高リスクの症例・試験群:カボザンチニブ連日投与にニボルマブ+イピリムマブを3週間隔で4コース併用投与。その後、カボザンチニブ+ニボルマブ(4週間隔)をメンテナンス投与(Cabo群:428例)・対照群:プラセボ連日投与にニボルマブ+イピリムマブを3週間隔で4コース投与。その後プラセボ+ニボルマブ(4週間隔)をメンテナンス投与(Pla群:427例)両群ともニボルマブの投与は最長2年間まで・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)[追加評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・PFS解析対象の症例群(Cabo群276例とPla群274例)の追跡期間中央値は20.2ヵ月で、全症例では、17.7ヵ月であった。・両群の患者背景には偏りはなく、両群共に中間リスクが75%、高リスクが25%で、腎摘除術を受けていた症例は65%であった。主な転移部位は肺、リンパ節、肝臓、骨であった。・PFS中央値は、Cabo群は未到達で、Pla群は11.3ヵ月、ハザード比(HR)は0.73(95%信頼区間[CI]:0.57~0.94)、p=0.013とCabo群で有意な延長を認めた。12ヵ月時のPFS率は57%と49%だった。・ORRはCabo群43%(うちCR:7%)、Pla群36%(CR:3%)であった。・DoR中央値は両群とも未到達であった。腫瘍縮小を認めた症例は、Cabo群で90%、Pla群で75%、30%以上の腫瘍縮小があった症例は55%と45%であった。・中間リスクグループのPFS中央値はCabo群は未到達、Pla群は11.4ヵ月、HRは0.63(95%CI:0.47~0.85)であり、ORRは45%と35%であった。また、高リスクグループでのPFS中央値はCabo群9.5ヵ月、Pla群11.2ヵ月、HRは1.04(95%CI:0.65~1.69)で、ORRはそれぞれ37%と38%であった。・Cabo群の安全性プロファイルに新たな事象はなく、全般的に管理可能であったが、Pla群に比し肝機能障害、下痢、皮膚障害が多く認められた。有害事象治療のために、ステロイド剤の投与を受けた症例はCabo群で58%、Pla群で35%であった。また、有害事象によってすべての治療を中止した症例の割合はCabo群で12%、Pla群で5%であった。

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第130回 がん治療で知られるCAR-Tの応用で全身性エリテマトーデス患者5人が寛解

がん治療で一足先に実用化されたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)の応用で5人の自己免疫疾患・全身性エリテマトーデス(SLE)が寛解に至りました1-3)。5年前にB細胞がんの治療として米国で承認されたCAR-T治療は採取したT細胞を目当ての加工を施したうえで再び患者の体内に戻すという手順を踏みます。SLEは免疫系が自己DNAに誤って反応してしまうことで生じます。その反応とはB細胞が死にゆく細胞から放出されるDNAへの抗体を作ってしまうことです。SLE治療のCAR-Tはそういう病因抗体を作るB細胞の駆除を目指し、B細胞のタンパク質CD19を標的とするキメラ抗原受容体(抗CD19 CAR)を導入したうえで患者5人に投与されました。その投与から3ヵ月以内に5人全員が寛解に至り、免疫抑制剤などのそれまで必要だった薬を止めることができ、薬なしでやっていけるようになりました。5人の観察期間はおよそ8ヵ月(中央値)で、長い人は治療から17ヵ月経ち2)、薬なしでの寛解を観察期間中維持しました。効果がどれほど続くかはまだ不明で今後多くの人に試して調べる必要がありますが、投与したCAR-Tが体内でなくなっても効果は少なくともしばらくは持続するようです。というのも5人に投与したCAR-Tは1ヵ月もするとほとんど検出されなくなったからです。3ヵ月半ほどが過ぎるといったん枯渇したB細胞が骨髄の幹細胞から作られるようになって復活し始めました。しかし幸いにもそれらの新たなB細胞は自己DNAに反応しませんでした。ただし、SLE患者のDNAに反応するように何がB細胞を駆り立てるのかは分かっておらず、何らかのきっかけでその反応が再び頭をもたげ始める恐れがあります。そういう再発の恐れをはじめとする課題を今後の試験で検討する必要がありますが今回の結果をSLE界隈の医師等はまずは歓迎しているようです。僅か5人の結果とはいえCAR-T治療の効果はこれまでにないものであり、胸躍らせるものだとKing‘s College LondonのSLE研究医師Chris Wincup氏は言っています2)。CAR-Tの活躍の場はSLEに限定されるものではなく、免疫が神経を攻撃することで生じる多発性硬化症(MS)などの抗体を要因とする他の自己免疫疾患も相手できるかもしれません。企業による自己免疫疾患治療CAR-Tの開発も進んでおり、たとえば米国カリフォルニア州のバイオテック企業Kyverna Therapeutics社はSLEに伴う腎臓炎症・ループス腎炎を治療するCAR-T・KYV-101の臨床試験を今年中に開始します4)。KYV-101もCD19標的CAR-Tであり、最近Kyverna社はドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学のGeorg Schett氏を科学顧問に迎えています。Schett氏は他でもない今回紹介したCAR-T治療試験のリーダーです。ループス腎炎を合併する重度SLE女性がCD19標的CAR-T治療で寛解に至ったことをSchett氏等は今回の試験報告に先立って昨夏の去年8月にNEJM誌に報告しています5)。参考1)Mackensen A,et al. . Nat Med. 2022 Sep 15. [Epub ahead of print]2)Radical lupus treatment uses CAR T-cell therapy developed for cancer / NewScientist3)Cancer treatment tackles lupus / Science4)Kyverna Therapeutics Names Georg Schett, M.D., and Peter A. Merkel, M.D., MPH, to Scientific Advisory Board / PRNewswire5)Mougiakakos D, et al. N Engl J Med. 2021;385:567-569.

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TILsを有するTN乳がんへの術前ニボルマブ±イピリムマブ、高い免疫活性示す(BELLINI)/ESMO2022

 術前化学療法への免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の追加による、早期トリプルネガティブ(TN)乳がん患者の転帰改善が報告されているが、どのような患者にICIが有効なのか、そしてどのような患者で術前化学療法のde-escalationが可能なのかは分かっていない。また早期TN乳がんでは、抗PD-1抗体への抗CTLA-4抗体の追加は検討されていない。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMarleen Kok氏らは、ニボルマブ±低用量イピリムマブの投与が、TILsを有するTN乳がんにおいて免疫応答を誘発するという仮説の検証を目的として、第II相非無作為化バスケット試験(BELLINI試験)を実施。その最初の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:T1c~T3、TILs≧5%のTN乳がん患者 31例・試験群:ニボルマブ群(NIVO群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル 16例ニボルマブ+イピリムマブ群(NIVO+IPI群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル+イピリムマブ(1mg/kg)×1サイクル 15例※両群ともにTIL5~10%:5例、TIL11~49%:5例、TIL≧50%:5例※両群ともに4週間後患者は術前化学療法あるいは手術を受ける・評価項目:[主要評価項目]4週間後のCD8+T細胞および/またはIFN-γ発現の2倍変化で定義される免疫活性化[副次評価項目]安全性、放射線学的反応(RECIST1.1)、トランスレーショナル解析※Simonの2段階デザインにより、30%の患者で免疫活性が確認された場合、コホートの拡大が可能となる。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点の年齢中央値はNIVO群48歳、NIVO+IPI群50歳。grade3腫瘍が93.8%、73.3%。BRCA1/2変異有が18.8%、20.0%だった。無作為化されていないため、NIVO群ではN0が81.3%と最も多かったのに対し、NIVO+IPI群ではN1が60.0%と最も多かった。・4週間後の放射線学的部分奏効(PR)は7/31例(23%)で認められ、うちNIVO群3例(19%)、NIVO+IPI群4例(27%)であった。また、7例のうち3例はTIL≧50%、4例はTIL11~49%だった。・主要評価項目である4週間後の免疫活性化はNIVO群8例(53.3%)、NIVO+IPI群9例(60.0%)でみられ、コホート拡大基準(30%)を満たした。・PRを示した患者ではベースライン時点のIFN-γ発現量が多かった(p=0.014)。・ベースライン時点のCD8+T細胞レベルは奏効と相関しなかったが、空間解析により、CD8+T細胞が腫瘍細胞により隣接していることが奏効と強く関連していることが明らかになった(p=0.0014)。・ベースライン時点では全体の83%の患者でctDNA陽性が確認されたが、4週間後のctDNAクリアランスは24%の患者で確認された。・安全性については、Grade3以上の有害事象はNIVO群1例(6%、甲状腺機能亢進症)、NIVO+IPI群1例(7%、糖尿病)のみであった。 Kok氏らは、TILsを有するTN乳がん患者の多くが、わずか4週間のICI投与で免疫活性の上昇を示し、臨床効果が得られたことから、TN乳がん患者に対する術前化学療法なしのICI投与の可能性が示唆されたと結論付けている。そのうえで同氏は今後の展望として、NIVO群vs. NIVO+IPI群のシングルセル解析や、TIL>50%・N0の患者群における6週間のニボルマブ+イピリムマブ投与後手術を行った場合のpCR率の評価が必要とした。

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心血管疾患2次予防、ポリピルvs.通常ケア/NEJM

 心筋梗塞後6ヵ月以内の、アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療は通常ケアと比べて、主要有害心血管イベント(MACE)リスクの有意な低下に結び付いたことが、スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares(CNIC)のJose M. Castellano氏らによる第III相無作為化試験「SECURE試験」で示された。転帰を改善する主要な薬剤(アスピリン、ACE阻害薬およびスタチン)を含むポリピルは、心筋梗塞後の2次予防(心血管死や合併症の予防)のための、簡易な手法として提案されている。結果を踏まえて著者は、「ポリピルは、治療を簡素化し入手可能性を改善するもので、治療のアクセシビリティとアドヒアランスを改善するために広く適用可能な戦略であり、結果として心血管疾患の再発および死亡リスクを低下するものである」とまとめている。NEJM誌2022年9月15日号掲載の報告。アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療について検討 SECURE試験は、スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、ポーランド、チェコ、ハンガリーの113施設で行われ、直近6ヵ月以内に心筋梗塞を有した75歳以上(リスク因子を1つ以上有する65歳以上)の患者を、ポリピルベースの治療戦略群または通常ケア群に無作為に割り付け追跡評価した。 ポリピル治療は、アスピリン(100mg)、ramipril(2.5mg、5mgまたは10mg)、アトルバスタチン(20mgまたは40mg)で構成された。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中、血行再建術施行の複合。主な副次エンドポイントは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中の複合であった。追跡期間中央値36ヵ月のMACE発生ハザード比は0.76で有意差 2016年8月~2019年12月に、計4,003例がスクリーニングを受け、適格患者と認められた2,499例が無作為化を受けた。指標となる心筋梗塞から無作為化までの期間中央値は8日(IQR:3~37)であった。ポリピル群21例、通常ケア群12例のフォローアップデータが得られず、intention-to-treat(ITT)集団は2,466例(ポリピル群1,237例、通常ケア群1,229例)で構成された。平均年齢は76.0±6.6歳、女性の割合は31.0%、77.9%が高血圧症を、57.4%が糖尿病を有し、51.3%に喫煙歴があった。平均収縮期血圧は129.1±17.7mmHg、平均LDLコレステロール値は89.2±37.2mg/dLであった。 追跡期間中央値36ヵ月時点で、主要アウトカムのイベント発生は、ポリピル群118/1,237例(9.5%)、通常ケア群156/1,229例(12.7%)が報告された(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.60~0.96、p=0.02)。 主な副次アウトカムの発生は、ポリピル群101例(8.2%)、通常ケア群144例(11.7%)が報告された(HR:0.70、95%CI:0.54~0.90、p=0.005)。 これらの結果は、事前規定のサブグループで一貫していた。 患者の自己報告による服薬アドヒアランスは、通常ケア群よりもポリピル群で高かった。有害事象の発現頻度は両群で同程度であった。

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自閉スペクトラム症から総合失調症への進展

 これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の小児は、その後の人生において統合失調症の発症リスクが高いことが示唆されている。台湾・高雄栄民総医院のTien-Wei Hsu氏らは、ASDにおける診断の安定性および統合失調症への進展に対する潜在的な予測因子について調査を行った。その結果、統合失調症と診断されたASD患者の3分の2以上が、ASD診断から最初の3年間で進展しており、人口統計学的特徴、身体的および精神的な併存疾患、精神疾患の家族歴が、進展の重要な予測因子であることが示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年9月3日号の報告。 対象は、2001~10年にASDと診断された青年(10~19歳)および若年成人(20~29歳)の患者1万1,170例。統合失調症の新規診断患者を特定するため、2011年末までフォローアップ調査を実施した。統合失調症への進展およびその予測因子を推定するため、時間のスケールとして年齢を用いたカプランマイヤー法およびCox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・10年間のフォローアップ調査におけるASDから統合失調症への進展率は10.26%であった。・統合失調症と診断された860例中580例(67.44%)は、ASDと診断されてから3年以内に統合失調症と診断されていた。・特定された予測因子は以下のとおりであった。 ●年齢(ハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.11~1.15) ●抑うつ症状(HR:1.36、95%CI:1.09~1.69) ●アルコール使用障害(HR:3.05、95%CI:2.14~4.35) ●物質使用障害(HR:1.91、95%CI:1.18~3.09) ●パーソナリティ障害クラスターA群(HR:2.95、95%CI:1.79~4.84) ●パーソナリティ障害クラスターB群(HR:1.86、95%CI:1.05~3.28) ●統合失調症の家族歴(HR:2.12、95%CI:1.65~2.74)

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オミクロン流行も学術集会の現地参加は問題ない?

 国内の学術集会が軒並みオンライン中心で実施されるなか、海外ではマスクなしで大勢の参加者が現地に赴いているというが、大丈夫なのだろうか。米国・Surgical Outcomes and Quality Improvement CenterのCasey M Silver氏らが、新型コロナウイルスのオミクロン株が急増中に開催された大規模な学会において、現地出席者とオンライン出席者の新型コロナウイルス感染症の陽性率を比較した。それによると、ほとんどの登録者は会議に直接出席するも、陽性率は低く、現地出席者とオンライン出席者の間で陽性率が同等であったことが示唆された。JAMA Network Open 2022年9月1日号掲載の報告。 本横断的調査研究には、米国最大の外科学会の1つであるAcademic Surgical Congress (ASC) の参加者が含まれた。ASCは2022年2月1~3日にフロリダ州オーランドで開催(現地またはオンライン参加)。その際の新型コロナ感染予防対策として、自己検査の奨励、ワクチン接種とマスク着用の義務化、屋外での飲食物の提供などが行われた。学会後7日間の新型コロナ検査と症状を評価する調査のために登録者を募集した。また、現地出席者とオンライン出席者の陽性率の違いはχ2検定を使用して評価された。 主な結果は以下のとおり。・1,617人の学会参加者のうち、681人(42.1%)が調査に回答した。内訳は187人が学生(27.4%)、234人が研修医(34.3%)、226人が医師(33.2%)だった。・回答者のうち、135人(19.8%) がオンライン、546人(80.2%) が現地参加だった。会議前の検査で陽性だった6人(4.4%)はオンライン参加となった。・すべての現地参加者はワクチン完全接種を受けており、500人(91.6%)がブースター接種も済ませていた。・会議から7日以内に10人の現地参加者(1.8%)と 2人のオンライン参加者(1.5%) から陽性と報告を受けたが、陽性率の差は統計学的に有意ではなかった(p=0.83)。・彼らに共通した検査理由は、「新型コロナに感染していないことを確認したかった」(86人[69.3%])だった。4人が症状について報告したが検査は行われなかった。・陽性者全員がブースター接種を済ませており、10人中7人は欠勤(平均日数±SD:4.8±2.7日)するも、入院した者はいなかった。 研究者らは「対面を再開している学術集会もあるが、新たな亜種が出現するたびに、コロナ曝露のリスクを評価し続けることが重要。ASCは、オミクロン株の急増がピークに達した直後に開催したが会議の主催者がリスクを考慮して安全対策を迅速に適応させた。本結果は、職業上、曝露リスクが高くワクチン接種率も高い医師に対し、コロナ対策が効果的だった」とするも、「新型コロナ陽性の出席者は旅行中にウイルス感染した可能性があるが、感染は依然として現地出席に関連していたことに注意することが重要」と記している。 なお、日本人医師が希望する学術集会の開催形式の在り方について、今年2月にケアネット会員医師(n=1,031)へ行ったアンケート調査によると、現地・オンラインのハイブリッド希望者は60%、オンラインは27%、現地は13%だった。

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ROSCした患者の血圧管理目標値はどのくらいがよいか?(解説:江口和男氏)

 本研究は、院外心停止で蘇生され生存した昏睡状態の患者さんについて、平均血圧目標を63mmHgで保つ群と、77mmHgで保つ群にランダム化し予後を比較するという研究であった。主要アウトカムはあらゆる原因による死亡または神経学的予後不良状態での90日以内の退院の複合、2次アウトカムは血清神経特異エノラーゼ(NSE)レベル(高いと予後不良)、あらゆる原因による死亡、Montreal Cognitive Assessmentの点数(0~30の範囲で高いと認知機能良好)、そして、3ヵ月におけるmodified Rankin scaleおよびCerebral Performance Category(CPC)であった。 本研究の対象者の平均年齢は62~3歳であるが、18歳から90歳と広い年齢層にわたっている。対象者の8割が男性、約9割にバイスタンダーCPRが施行され、心停止の原因はほとんどが心原性で、約85%が電気ショックで蘇生可能な不整脈(VfやPulseless VT)であった。本研究のクリニカルクエスチョンは、脳保護を行うのに平均血圧を高め(77mmHg)に保つのがよいか、低め(63mmHg)がよいかというものであった。ちなみに、これらの平均血圧目標値を収縮期、拡張期血圧に直してみると、たとえば、平均血圧77mmHg→110/60mmHg、平均血圧63mmHg→84/52mmHg程度となる。 ガイドライン(Soar J, et al. Resuscitation. 2020;156:A80-A119.)では、ショック患者の血圧目標値として平均血圧65mmHg以上に保つと記載されており、2021年版ではAvoid hypotension (< 65 mmHg). Target mean arterial pressure (MAP) to achieve adequate urine output and normal or decreasing lactate(Nolan JP, et al. Intensive Care Med. 2021;47:369-421.)と記載されている。これまでは、観察研究や小規模のRCTしかなく、高血圧や動脈硬化の進んだ患者では高めにキープすべきという報告や、高めに保つために増量したカテコラミンにより催不整脈作用があった等、実際にどのくらいのレベルに血圧を保つのがよいかcontroversialであった。 本研究は各群400例弱と十分な症例数があり、この議論に決着をつけるのに十分なエビデンスが得られたと言えよう。結果として、急性冠症候群など心原性の心肺停止患者において、高血圧既往者においても高い血圧目標値のほうがよいという結果は得られなかった。一方で高い目標値の群ではカテコラミンの使用量は多かったものの不整脈などの有害事象の頻度を増やすこともなかった。この結果はseptic shock、vasodilatory shockを対象としたメタ解析の結果(Lamontagne F, et al. Intensive Care Med. 2018;44:12-21. )と同様であった。 したがって、ショックで心肺蘇生した昏睡状態の患者においては、ガイドラインどおりの平均血圧<65mmHgさえ避ければ、65mmHgぎりぎりでも77mmHgと高めの血圧値でも生命予後や神経学的予後に差がないということが明らかになった。ICUやCCUに入室中の患者であっても、血圧は刻々と変動するものであり、上記の2つの平均血圧目標に厳密に管理できるものでもなく、ある程度の血圧変動の幅は許容範囲ということになる。高血圧患者のように高くなりすぎて臓器障害が進行するというセッティングでもない。尿量が保てて、乳酸値が低下していく程度の臓器潅流を維持できる程度の血圧が重要であるという2021年版ガイドラインの結果を支持するものであった。もちろん、蘇生後とはいえ個別の治療が重要であるが、蘇生後の血行動態モニタリングと管理目標において、ガイドラインに加えられるであろう重要なエビデンスである。

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シーリングファン頭部外傷の臨床的検討【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第218回

シーリングファン頭部外傷の臨床的検討pixabayより使用シーリングファンってご存じでしょうか。シャレオツな店などにある、天井に取り付ける扇風機のことです。空気を撹拌することで室内の温度を一定にすることができ、吹き抜けの天井が高い部屋で有効とされています。ゆっくり回っているところが多いと思いますが、海外だと結構ビュンビュン回っていることもあり、これが頭部外傷のリスクになる懸念があります。Alias A, et al.Head injury from fan blades among children.Asian J Surg . 2005 Jul;28(3):168-70.2000年1月~2002年12月に、マレーシアでファンブレードによる頭部外傷を負った小児14例を後ろ向きに登録したものです。平均年齢は7.9歳でした。ブレードによる頭部外傷の原因は、表1のようになります。表1.14例の外傷の原因(文献より引用)二段ベッド絡みの外傷が多いようです。確かに、マレーシアの裕福な邸宅には天井にファンが取り付けられており、二段ベッドと距離が近いと頭をけがしてしまう可能性がありますね。子供を持ち上げたらそこにシーリングファンがあった、というのは親としては避けたいところですね。ブレードが鋭いと、とんでもない外傷になる可能性があります。外傷の程度は表2のような結果となりました。結構骨折が多いですね。表2.14例の外傷の内訳(文献より引用)このうち、頭蓋内出血を合併した1例が死亡に至っています。最近も、マレーシアで重症の穿通性頭部外傷を起こした症例が報告されています1)。オーストラリアではシーリングファンの使用に関して指針があり、二段ベッドや家具はシーリングファンから2m以上離す必要があるとされています2)。マレーシアではこれが徹底されていないという批判もあります。日本でも、シーリングファンをつけている富裕層のお宅ではご注意を!1)Ong Y, et al. A Case of a Penetrating Traumatic Head Injury Due to a Ceiling Fan. Cureus. 2022 Jun 26;14(6):e26350.2)Australian Competition and Consumer Commission: ceiling fan injury hazard

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HER2低発現のHR+転移乳がんに対するSGの有効性(TROPiCS-02)/ESMO2022

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対する抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)の有用性を評価する第III相TROPiCS-02試験で、SGが医師選択治療(TPC)より無増悪生存期間(PFS)を改善したことがASCO2022で報告されている。今回、本試験の事後解析として、HER2低発現(IHC1+、またはIHC2+かつISH陰性)患者とHER2 IHC0患者に分けて評価した結果について、ドイツ・Heidelberg UniversityのFrederik Marme氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]全生存期間、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間、クリニカルベネフィット率、患者報告アウトカム、安全性 今回の解析において、ITT集団(543例)におけるHER2発現状況をIHCおよびISHで後ろ向きに評価したところ、HER2 IHC0患者が217例(SG群101例、TPC群116例)とHER2低発現患者が283例(SG群149例、TPC群134例)であった。なお、HER2陽性と判明した患者(SG群22例、TPC群21例)は本解析から除外した。 主な結果は以下のとおり。・HER2 IHC0患者とHER2低発現患者におけるベースライン特性はITT集団と類似していた。・PFS中央値は、HER2低発現患者ではSG群6.4ヵ月、TPS群4.2ヵ月(HR:0.58、95%CI:0.42~0.79、p<0.001)、HER2 IHC0患者ではSG群5.0ヵ月、TPC群3.4ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.51~1.00、p=0.05)だった。・ORRは、HER2低発現患者ではSG群26%、TPS群12%(オッズ比:2.52、95%CI:1.33~4.78)、HER2 IHC0患者ではSG群16%、TPC群15%(オッズ比:1.10、95%CI:0.52~2.30)だった。・HER2低発現患者、HER2 IHC0患者におけるSGの安全性プロファイルは、試験全体や他の試験と同様で、管理可能だった。 Marme氏は、「ITT集団と同様、HER2低発現およびHER2 IHC0のHR+/HER2-転移乳がんにおいて、SGはTPCに比べてアウトカムを改善した。IHCスコアにかかわらず、SGはHR+/HER2-転移乳がんに対する有効な治療選択肢と考えるべき」と結論した。

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院外心停止蘇生昏睡患者の目標血圧値は?/NEJM

 院外心停止から蘇生した昏睡患者において、平均動脈圧目標値77mmHg(高値)群vs.63mmHg(低値)群で、全死因死亡、重篤な障害、または昏睡の割合に関して有意差は確認されなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学のJesper Kjaergaard氏らが、2×2要因デザインの無作為化二重盲検比較試験「Blood Pressure and Oxygenation Targets in Post Resuscitation Care trial:BOX試験」の結果を報告した。集中治療を受けている院外心停止昏睡生存者において、血圧目標値の選択に関するエビデンスは限定的だった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。平均動脈圧目標値63mmHgと77mmHgを比較 研究グループは、心原性と推定される院外心停止後に蘇生した昏睡状態の成人患者を、血圧については平均動脈圧目標値63mmHg群(低値群)または77mmHg群(高値群)に(二重盲検介入)、酸素については制限投与群と非制限投与群に(非盲検介入)、無作為に割り付けた。本論は、二重盲検介入の結果についての報告である。 主要評価項目は、90日以内の全死因死亡または退院時の脳機能カテゴリー(CPC、範囲0~5、カテゴリーが高いほど障害が重度)が3または4(重度障害または昏睡)の複合。副次評価項目は、48時間後の神経特異的エノラーゼ(NSE)値、全死因死亡、3ヵ月後のモントリオール認知評価(MoCA、範囲0~30、スコアが高いほど認知機能良好)と修正Rankin尺度(mRS、範囲0~6、スコアが高いほど障害が重度)、3ヵ月後のCPCなどとした。 2017年3月~2021年12月の期間に802例が登録され、同意撤回等を除く789例が解析対象集団となった(高値群393例、低値群396例)。高値群と低値群で、死亡、重度障害または昏睡の割合に有意差なし 主要評価項目のイベントは、高値群で133例(34%)、低値群で127例(32%)に発現した(ハザード比[HR]:1.08、95%信頼区間[CI]:0.84~1.37、p=0.56)。 90日以内の全死因死亡は、高値群122例(31%)、低値群114例(29%)であった(HR:1.13、95%CI:0.88~1.46)。CPC中央値は、高値群および低値群ともに1(四分位範囲:1~5)、mRS中央値は両群ともに1(0~6)、MoCA中央値は高値群27(24~29)、低値群26(24~29)であった。48時間後のNSE中央値も両群で類似していた。 有害事象の発現率は、両群で有意差はなかった。

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HR+/HER2+進行乳がんへのアベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラント、OS最終結果(monarcHER)/ESMO2022

 ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陽性(HR+/HER2+)の進行乳がんに対する、アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラントの3剤併用療法が、トラスツズマブ+化学療法と比較して数値的に全生存期間(OS)を改善した。フランス・Gustave RoussyのFabrice Andre氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で第II相monarcHER試験の最終解析結果を発表した。 同試験については、すでに主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を3剤併用群で有意に改善したことが報告されている1)。・対象:HR+/HER2+進行乳がんで、抗HER2療法を2ライン以上受けており(T-DM1とタキサン系抗がん剤の治療歴は必須)、さらにCDK4/6阻害薬とフルベストラントは未投与である患者237例・試験群:アベマシクリブ+トラスツズマブ+フルベストラント(ATF群)またはアベマシクリブ+トラスツズマブ(AT群)・対照群:トラスツズマブ+主治医選択の化学療法(TC群)・評価項目:[主要評価項目]ATF群とTC群における主治医評価による無増悪生存期間(PFS)の比較(ATF群とTC群の比較で有意差が認められた場合、次にAT群とTC群の比較をする段階的な設定)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性、患者報告アウトカム、体内薬物動態  主な結果は以下のとおり。・2016年5月~2018年2月に14ヵ国、75施設から患者が登録された。・追跡期間中央値は52.9ヵ月であった(データカットオフ2022年3月31日)。・OS中央値はATF群31.1ヵ月、AT群29.2ヵ月、TC群20.7ヵ月だった。ATF群vs.TC群のハザード比(HR):0.71(95%信頼区間[CI]:0.48~1.05、両側p=0.086)、AT群vs.TC群のHR:0.84(95%CI:0.57~1.23、両側p=0.365)。・事前設定されたすべてのサブグループにおいて、アベマシクリブ投与によるOSベネフィットが観察された。・乳がんの内因性サブタイプが予後に与える影響を評価するため探索的RNAシーケンス解析が行われ、luminalタイプはnon-luminalタイプと比較して、より長い PFS(8.6ヵ月vs. 5.4ヵ月、HR:0.54、95%CI:0.38~0.79)、およびOS(31.7ヵ月vs.19.7ヵ月、HR :0.68、95%CI :0.46~1.00)と関連していた。・更新された PFS および安全性は、1次解析結果と一致していた(データカットオフ2019年4月8日)。 ディスカッサントを務めた韓国・Asan Medical CenterのSung-Bae Kim氏は、この化学療法を行わない3剤併用療法が複数治療歴のあるHR+/HER2+進行乳がんの治療オプションの1つになることが示唆されたとコメントした。

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院外心停止昏睡への酸素補給療法、制限的vs.非制限的/NEJM

 院外心停止蘇生後昏睡の成人生存者に対する酸素補給療法について、動脈血酸素分圧(Pao2)の目標値を制限した場合と制限しない場合の死亡や重度障害、昏睡の発生率は、同等であることが示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のHenrik Schmidt氏らが、789例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、院外心停止昏睡の生存者における人工呼吸器の適切な酸素目標値は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。90日時点の全死因死亡・重度障害を有する退院・昏睡の複合アウトカムを比較 試験は院外心停止昏睡の成人生存者を対象に、2×2要因デザイン法を用いて行われた。 研究グループは被験者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方は、Pao2目標値を9~10kPa(68~75mmHg)に設定(制限的酸素値目標群)、もう一方は13~14kPa(98~105mmHg)に設定した(非制限的酸素値目標群)。また、血圧についても2種の目標値のいずれかに割り付けられ、その結果については別に報告した。無作為化は、入院後可能な限りすみやかに、通常はICUで行われた。酸素介入は無作為化後ただちに開始され、抜管まで続けられた。 主要アウトカムは、無作為化後90日以内の全死因死亡、重度障害を伴う退院、昏睡(脳機能カテゴリー[CPC]:3~4、カテゴリー範囲は1~5で高値ほど障害が重度であることを示す)の複合だった。 副次アウトカムは、48時間時点のニューロン特異的エノラーゼ値、90日時点の全死因死亡、モントリオール認知機能検査(Montreal Cognitive Assessment[MoCA])スコア(スコア範囲は0~30で高スコアほど認知機能は良好なことを示す)、修正Rankinスケールスコア(スコア範囲は0~6で高スコアほど障害が重度であることを示す)およびCPCだった。主要アウトカム発生は両群ともに32~34% 2017年3月~2021年12月に、デンマークの2つの3次心停止センターで無作為化を受け解析に包含された被験者は789例だった。 主要アウトカムの発生は、制限的酸素値目標群394例中126例(32.0%)、非制限的酸素値目標群395例中134例(33.9%)だった(補正後ハザード比[aHR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.75~1.21、p=0.69)。 90日時点で、死亡は制限的酸素値目標群113例(28.7%)、非制限的酸素値目標群123例(31.1%)だった。CPC値中央値は両群ともに1、修正Rankinスケールスコア中央値はそれぞれ2と1、MoCAスコア中央値は両群ともに27だった。48時間時点のニューロン特異的エノラーゼ値中央値は、それぞれ17μg/Lと18μg/Lだった。有害事象の発生率も、両群で同等だった。

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臨床留学の最大の魅力…それはバケーション!【臨床留学通信 from NY】第37回

第37回:臨床留学の最大の魅力…それはバケーション!臨床留学の最大の魅力…それはバケーションです。日本の病院だとどうも忙しいですし、有給があってもなかなか取りづらい。2週間も休むことはまずありませんでした。祝日は日本のほうが多いですが、ゴールデンウィークなどの連休は、循環器科は病院にいなければならない当直業務が多く、結局当該科が半分ずつ分担しながら休む程度で、長い休みを取ることはありませんでした。しかしながら、米国において臨床医はおおむね年4週間の休暇が取れます。ほとんどは2週間ずつ取る形でした。渡米後5年目になりますが、留学当初は日本に帰ることはありましたが、コロナの関係で帰りづらくなり、また、だんだんと帰りたい欲もなくなってきました。丸々2週間出掛けることは外食続きになってしまいなかなか難しく(もちろん金銭的にもですが)、旅行は4~5泊程度にしています。コロナのピーク時はまったくどこにも出掛けないこともありましたが、それでも2週間は仕事から(すなわち英語から)離れてリフレッシュできるというのは、日本ではなかなかできないと言えるでしょう。これまでの家族旅行としては、渡米当初に奮発したディズニー・クルーズで、フロリダからカリブ海の島々へ行ったり、最近ではカリブ海に浮かぶアメリカ領のプエルトリコに行ったりしました。日本の時より収入が格段に減っていて、かつ生活費が2~3倍以上にまで膨れ上がってる現状において、贅沢旅行は難しいですが、それでも家族と過ごす貴重な時間です。この夏の休暇に家族で訪れたプエルトリコ(FUJIFILM X-T4で撮影)米国心臓協会(AHA)/米国心臓病学会(ACC)などの学会にかこつけて、ラスベガス、ロサンゼルス、サンディエゴ、ニューオリンズ、フィラデルフィア、フロリダなども家族で旅行することもできましたし、世界三大瀑布の1つであるナイアガラの滝までロードトリップで7~8時間ドライブしたのもいい思い出です。ボストン、ワシントンD.C.といった東海岸の主要都市も非常に近く、車で3~4時間の距離です。日本からよりも比較的近いヨーロッパなどは行きたいところですが、ビザの関係で行きづらくなっています。それでも当面は、アメリカ国内旅行で十分かと思っております。Column当方グループから出した抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)に関する論文を、Circulation誌の姉妹誌であるCirculation: Cardiovascular Intervention誌の8月号に掲載することができました。循環器関連誌四天王のJACC、Circulation、JAMA Cardiology、European Heart Journalにすべてリジェクトされましたが、なんとかCirculation 姉妹誌で落ち着かせることができました。Kuno T, et al. Comparison of Unguided De-Escalation Versus Guided Selection of Dual Antiplatelet Therapy After Acute Coronary Syndrome: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. Circ Cardiovasc Interv. 2022;15:e011990.

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アトピー性皮膚炎、JAK阻害薬はVTE発生と関連するか?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者、とくにJAK阻害薬による治療を受ける患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高くなるなのか。これまで明らかになっていなかったこの懸念について、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らがシステマティック・レビューとメタ解析を行い、現状で入手可能なエビデンスで、ADあるいはJAK阻害薬とVTEリスク増大の関連を示すものはないことを明らかにした。著者は、「今回の解析結果は、臨床医がAD患者にJAK阻害薬を処方する際の参考となるだろう」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。 研究グループは、ADとVTE発生の関連を調べ、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発生リスクを評価した。 MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceのデータベースを、それぞれ創刊から2022年2月5日まで、言語や地理的制限を設けずに検索。ADとVTEの関連を調べたコホート試験、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTEイベントを報告していた無作為化比較試験(RCT)を適格とした。最初に検索した論文の約0.7%が適格基準を満たした。 データは、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)ガイドラインに準拠して抽出・包含し、包含したコホート試験とRCTのバイアスリスクは、Newcastle-Ottawa ScaleおよびCochrane Risk of Bias Tool 2で評価。ランダム効果モデル解析で、VTE発生の統合ハザード比(HR)およびリスク差を算出し、評価した。 主要評価項目は、VTE発生とADのHR、およびJAK阻害薬治療を受けるAD患者とプラセボまたはデュピルマブ治療を受けるAD患者のVTE発生のリスク差であった。 主な結果は以下のとおり。・コホート試験2件とRCT 15件の被験者46万6,993例が包含された。・メタ解析では、ADとVTE発生の有意な関連は認められなかった(HR:0.95、95%信頼区間[CI]:0.62~1.45、VTE発生率:0.23イベント/100患者年)。・全体では、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発症者は0.05%(5,722例中3例)であったのに対して、プラセボまたはデュピルマブ治療を受けるAD患者のVTE発症者は0.03%(3,065例中1例)であった(Mantel-Haenszel検定によるリスク差:0[95%CI:0~0])。・VTE発生率は、JAK阻害薬を受けるAD患者で0.15イベント/100患者年、プラセボを受けるAD患者では0.12イベント/100患者年であった。・これらの解析所見は、4種のJAK阻害薬(アブロシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、SHR0302)においても同様だった。

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NSTE-ACS患者の死亡リスク評価、GRACE 2.0には限界が/Lancet

 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の患者における、Global Registry of Acute Coronary Events(GRACE)2.0スコアによる死亡リスクの評価では、女性患者の院内死亡を過小評価するという限界があるが、新たに開発されたGRACE 3.0スコアの性能は性別を問わず良好で、リスク層別化における男女間の差を削減することが、スイス・チューリヒ大学のFlorian A. Wenzl氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年9月3日号で報告された。英国とスイスの外的妥当性の検証を含む研究 研究グループは、NSTE-ACS患者におけるGRACE 2.0スコアの性特異的な性能を評価し、疾患特性における性別を考慮した新たなスコア(GRACE 3.0と呼ぶ)の開発を目的に検討を行った(スイス国立科学財団などの助成を受けた)。 2005年1月~2020年8月の英国とスイスの全国的なコホートにおいて、NSTE-ACS患者42万781例(英国40万54例、スイス2万727例)を対象にGRACE 2.0スコアの評価が実施された。 イングランド、ウェールズ、北アイルランドの38万6,591例(訓練コホート30万9,083例[80.0%]、検証コホート7万7,508例[20.0%])の性別データを用いて、GRACEの変数から院内死亡を予測する機械学習モデルが作成された。 GRACE 3.0の外的妥当性の検証には、スイスの2万727例のデータが使用された。GRACE 3.0により、男女ともAUCが向上 GRACE 2.0スコアによる院内死亡の判別は、男性患者では良好であった(受信者動作特性曲線[AUC]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.86~0.86)のに対し、女性患者では著しく低かった(AUC:0.82、95%CI:0.81~0.82)(p<0.0001)。 GRACE 2.0スコアは女性患者の院内死亡を過小評価しており、その結果として、早期の侵襲的治療を示唆しない低~中リスク群へと、正しくない層別化を助長していた。 これに対し、性差を考慮したGRACE 3.0スコアは、外的妥当性の検証コホートにおいて優れた判別(discrimination)と良好な較正(calibration)を示し、AUCは男性患者が0.91(95%CI:0.89~0.92)、女性患者は0.87(0.84~0.89)と、いずれも改善された。また、GRACE 3.0は、女性患者を高リスク群に適切に再分類するという、臨床的に意義のある結果をもたらした。 著者は、「新たに開発された機械学習に基づくGRACE 3.0スコアにより、男女ともに予測性能が向上し、リスク層別化において性差を考慮することで、NSTE-ACS患者の個別化治療の最適化と、管理における構造的不公平の克服を実現できることが示された。この研究結果は、NSTE-ACS患者を対象とした将来の試験のデザインに役立つと考えられる」としている。

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