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獨協医科大学 血液・腫瘍内科【大学医局紹介~がん診療編】

今井 陽一 氏(主任教授)遠矢 嵩 氏(准教授)中村 文美 氏(講師)吉原 さつき 氏(助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴獨協医科大学病院は圧倒的症例数と最新鋭の設備で北関東の医療をリードする特定機能病院です。血液・腫瘍内科は広範囲の医療圏から多くの血液疾患の患者さんにご来院いただき、白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫を中心とした造血器腫瘍から再生不良性貧血などの造血障害まで幅広く血液疾患の診断と治療にあたっています。患者さんお一人おひとりに寄り添いながら、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)などの最先端治療を積極的に導入するなど最適な血液診療の提供を心掛けています。とくに多発性骨髄腫はCAR-T細胞療法、二重特異性抗体療法を取り入れ最先端の治療を推進しています。臨床研究では、16施設の多施設共同前向き臨床研究を主導して、多発性骨髄腫の維持療法における遺伝子変異・免疫状態の変化を世界に先駆けて解明すべく取り組んでいます。基礎研究は、ゲノム・フローサイトメトリー解析、分子生物学、疾患モデルマウスを駆使して造血器腫瘍の病態解明を目指し、新規治療法の開発を目指しています。このように、私たちの教室は目の前の患者さんの癒しを第一に考えることを礎に、さまざまな形で血液診療の推進に貢献できる医療人の育成を目指しています。日光・那須の素晴らしい景観に囲まれた充実した環境で共に切磋琢磨する仲間をお待ちしております。力を入れている治療/研究テーマ当科では、急性白血病などの造血器腫瘍のほか、再生不良性貧血などの特発性造血障害も含めた幅広い血液疾患に対する診療を行っています。通常の化学療法に加えHLA半合致移植(ハプロ移植)を含む造血幹細胞移植も行い、2025年にはCAR-T細胞療法も開始し、豊富かつ多彩な臨床経験を積むことができます。また、近年は血液疾患診療を行うにも遺伝子変異の理解が必要です。当科では次世代シーケンスを用いた遺伝子変異解析も行っており、経験知と理論的理解の双方に基づいた診療を行っています。研究についても、基礎研究から臨床研究まで幅広く行っています。私個人としては造血器腫瘍の遺伝子変異と病態の関連性や、日和見ウイルス感染症にとくに注目して研究を行っています。学会参加に対する補助もあり、学会発表や論文執筆の機会も多いです。医学生/初期研修医へのメッセージ血液内科に多忙、激務といったイメージをお持ちの方もいるかもしれません。当院ではチーム診療を行っており休日は交代制で十分確保できますし、残業も少なく、無理なく持続可能な形で経験や実績を積むことができると思います。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力北関東で高度な血液診療を提供できる施設は限られているため、遠方からも患者さんが来院されています。当院に対する期待と信頼を感じ、患者さんに希望を提供できるように、日々取り組んでいます。当科では症例報告や後方視的研究について学会発表をするだけではなく、多施設共同前向き研究の提案や参加をすることで、新たなエビデンスの確立にも貢献しています。基礎研究では、技術的なサポートが充実しているおかげで、診療と研究の両立が可能になっています。医局の雰囲気、魅力若手、ベテランを問わず、よりよい診療を提供するために、助け合っています。治療方針に悩む場合には、定時のカンファレンスだけでなく、随時、相談することが可能となっており、安心して診療ができます。週末・休日は当番制のため、プライベートとの両立が可能です。また、それぞれのキャリアプランに応じて、医局がサポートしてくれます。医学生/初期研修医へのメッセージ血液内科は新規薬剤や細胞療法の導入で、治療成績の向上を実感できるとてもやりがいのある科です。血液内科に興味のある先生方、一緒に頑張ってみませんか?これまでの経歴獨協医科大学病院で初期研修、国立病院機構栃木医療センターで内科専門医プログラムを修了し、2024年4月に獨協医科大学病院血液・腫瘍内科に入局しました。同医局を選んだ理由患者さんの診断から看取りまで伴走したいと思い、総合内科で学んでいましたが、より専門的な知識や技術があれば、治療や終末期といった患者さんの重要な意思決定により深く関われるのではないかと思いました。血液疾患は症状が多彩で診断の面白さがあり、急性期は集中治療の側面もあることから内科の醍醐味だと思いました。また、当医局では臨床医としてもきめ細やかな先生が研究にも従事しており、多面的に疾患や臨床を捉えている姿を見て、こういう医師になりたいと思いました。当院は県内外から多くの患者さんが集まるため血液疾患も多彩であり、他診療科との連携もしやすく、良い環境と考えました。現在学んでいること悪性リンパ腫や急性白血病の入院患者さんを担当し、化学療法について学んでいます。大学院進学予定であり、今は臨床研究の準備をしています。獨協医科大学 血液・腫瘍内科住所〒321-029 栃木県下都賀郡壬生町北小林880問い合わせ先ketsueki@dokkyomed.ac.jp医局ホームページ獨協医科大学 血液・腫瘍内科専門医取得実績のある学会日本内科学会(認定内科医・総合内科専門医)日本血液学会日本造血・免疫細胞療法学会日本輸血・細胞治療学会日本感染症学会日本臨床腫瘍学会研修プログラムの特徴(1)幅広い症例と専門的な指導急性白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など多様な疾患を経験でき、造血幹細胞移植やCAR-T細胞・二重特異性抗体療法など最先端の治療にも携わることができます。専門医の手厚い指導のもと、診断から治療まで実践的に学べる環境です。 (2)充実した設備と豊富な実践機会無菌室を備えた移植ユニットや最新の検査・治療設備を活用し、骨髄穿刺や腰椎穿刺などの基本手技から移植管理まで幅広く経験できます。学会発表や研究のサポートも整い、学術的な成長も後押しします。 (3)働きやすい環境とキャリア支援都市部の利便性を持ちながら、地方ならではの温かい雰囲気の中で研修でき、研修医一人ひとりに合った指導を受けられます。計画的なローテーションで血液内科の基礎をしっかり固め、専門医取得や大学院進学、海外研修など多様なキャリアを支援します。詳細はこちら

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新たな時代に向けた白血病診療の在り方と展開/日本臨床腫瘍学会

 自己複製能と多分化能を備える造血幹細胞は、複数の過程を経てさまざまな血液細胞に分化し、体内の造血系を恒常的に維持している。一方、この分化過程の各段階で生じるがん化は、白血病やリンパ腫、骨髄腫を引き起こす。 2025年3月6〜8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、教育講演の1つとして「本邦における白血病診療」と題した講演が行われた。演者の藥師神 公和氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科)は、「白血病に特異的な症状はない。多くの場合、血液検査で異常が指摘されると、造血の場である骨髄の検査が実施され、診断に至る」と説明し、白血病が急性または慢性、ならびに骨髄性またはリンパ性の違いで一般的に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および慢性リンパ性白血病(CLL)の4つに分類されることから、「本講演では、日本血液学会より2024年に公開された『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』に沿って、各白血病の総論やアルゴリズム、クリニカルクエスチョン(CQ)の改訂点を紹介するとともに、今後の展望にも触れたい」とした。AMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について 従来のAMLの診断は、骨髄における白血病細胞がFAB分類では30%以上、WHO分類では20%以上とされてきたが、今回のガイドライン改訂版ではEuropean Leukemia Net(ELN)が2022年の改訂で採用した分類を引用している。すなわち、AMLを定義付けるような遺伝子異常(PML::RARA、CBFB::MYH11、RUNX1::RUNX1T1など)があれば、芽球比率が10%以上でAMLと診断することになった。ただし、BCR::ABL1については、CML移行期との混乱を避けるため20%以上とされた。 分類に関するほかの重要な変更点の1つとして、病歴よりも遺伝学的特徴のほうが生物学的AMLの分類に関連していることから、従来のAML-MRC(骨髄異形成関連変化を伴うAML)と治療関連骨髄性腫瘍の病型が削除された。 なお、遺伝子変異と染色体核型に基づく予後因子を組み合わせた予後層別化システムについては、2022年のELN改訂版でFLT3-ITD変異がアレル比やNPM1変異の有無にかかわらず、すべてIntermediate群に分類された点が今回のガイドライン改訂版に記載された(ただし、FLT3阻害薬が初回治療から使用できることが前提)。このほかにも、細かい遺伝子異常が予後層別化に追加された。 急性前骨髄球性白血病(APL)以外の若年者AMLにおける治療アルゴリズムとして、今回のガイドライン改訂版ではFLT3遺伝子変異の情報を診断時に取得することが明記された。また、高齢者AMLにおいてもFLT3遺伝子変異情報の取得が記載され、藥師神氏は「基本的に初発時からFLT3遺伝子変異検査を行うことになる。なお、強力化学療法非適応症例への寛解導入療法は、CQ8『強力化学療法が適応とならない高齢者(65歳以上)AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)を参照すること」と述べた。 これ以外の注目すべきCQとして、同氏はCQ3『若年者(65歳未満)初発AMLに対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ13『治療関連・二次性AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2Aおよび2B)を挙げた。一方、APLにおいては、CQ2『初発APLの寛解導入療法におけるDIC(播種性血管内凝固)対策として何が勧められるか』で、遺伝子組換えトロンボモジュリンによる治療が推奨グレード・カテゴリー3からカテゴリー2Bにアップグレードされた点を挙げた。CMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について CMLの診断時に評価すべき予後スコアは、SokalスコアやELTS(EUTOS long-term survival)スコアを使用し、治療効果はELN 2020の判定規準に従い、血液学的奏効(血液・骨髄検査所見および臨床所見で判定)、細胞遺伝学的奏効(骨髄細胞中のPhiladelphia[Ph]染色体割合で判定)、分子遺伝学的奏効(PCRによる血液細胞中のBCR::ABL1遺伝子発現量で判定)の3つのレベルで判定する。加えて、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療効果のモニタリングと戦略が、同氏より解説された。 また、注目すべきCQとして、CQ1『初発CML-CP(慢性期)に対する治療として何が勧められるか』で、TKI阻害薬が新たに1剤追加されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ3『ELNの効果判定規準によりWarningやFailureとされた症例に対する二次治療、三次治療以降は何が勧められるか』で、三次治療以降にSTAMP(specifically targeting the ABL myristoyl pocket)阻害薬が追記されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ5『同種造血幹細胞移植はCMLの治療中どのようなときに考慮すべきか』で、さまざまな状況に応じた移植の検討が推奨されること(推奨グレード・カテゴリー2A)を挙げた。 さらに、CQ6『DMR(分子遺伝学的に深い奏効)を達成しMRD(微小残存病変)が検出されなければTKI中止は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ7『CMLに対するTKI治療中にTKIの減量は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1、2Aおよび2B)、CQ8『CML患者もしくはそのパートナーの妊娠にはどのような対応が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2B)の改訂点が紹介された。ALLおよびCLLの主なCQの改訂点について ALLの注目すべきCQとして、CQ4『寛解期成人ALLにおけるMRDは、どのような評価方法、評価時期、閾値の判定が勧められるか』で、定量PCRによる白血病特異的融合遺伝子測定および免疫グロブリン重鎖(Ig)/T細胞受容体(TCR)遺伝子再構成測定が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、ならびに1回目のMRD測定は寛解導入療法後が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)が紹介された。同氏は、そのほかにCQ6『第一寛解期ALLの同種造血幹細胞移植には骨髄破壊的前処置と減弱前処置のどちらが勧められるか』で、適切な前処置に関する推奨(推奨グレード・カテゴリー2B)が明記された点や、CQ7『Ph陽性ALLに対する移植後TKIの維持療法は勧められるか』で、MRD陰性の時点で開始する予防的なTKI維持療法は推奨されない(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが記載された点を紹介。CQ9『再発ALLに対する再寛解導入療法の選択肢としてどのような治療が勧められるか、CAR-T細胞療法はどのようなときに考慮すべきか』で、新たな治療選択肢(推奨グレード・カテゴリー1)やCAR-T細胞療法(推奨グレード・カテゴリー2A)が追記された点についても言及した。 CLLの注目すべきCQとして、初回治療としてBTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)阻害薬が推奨され(CQ2『CLL初回治療としてBTK阻害薬療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])、免疫化学療法は初回治療として推奨されない(CQ3『CLL初回治療として免疫化学療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])ことが紹介された。二次治療における治療方針の推奨(CQ4『イブルチニブ初回治療に治療抵抗性もしくは再発CLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』およびCQ5『イブルチニブ初回治療に治療不耐容のCLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』)が、ともにカテゴリー1として明記された点も紹介し、CQ7『自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症を合併したCLLに対してステロイド治療は勧められるか』では、無症候性・非活動性CLLであればステロイド治療が推奨される(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが説明された。これからの白血病診療の展望 造血器腫瘍の診断および治療について、ゲノム情報に基づく診療がWHOなどから提唱される中、つい最近、わが国においても造血器腫瘍を対象とした遺伝子パネル検査が登場した。「本邦での造血器腫瘍におけるがんゲノム医療の導入は喫緊の課題」と語る藥師神氏は、「日本血液学会が発行する『造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2023年度版』で遺伝子パネル検査の基盤となる情報が提供されている。そのため、新規治療薬の導入とともに、白血病診療が今後さらに前進していくことが期待される」と締めくくった。

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成人CAR-T療法を最大限生かすために【Oncologyインタビュー】第47回

出演:京都大学医学部付属病院 血液内科 北脇 年雄氏CAR-T療法は今や造血器腫瘍治療に欠かせないものとなった。その一方、複雑な治療工程や有害事象の管理など紹介元施設にとって押さえておくべき情報は多い。成人CAR-T療法の治療準備、有害事象管理、紹介・逆紹介のポイントなどを京都大学附属病院の北脇年雄氏に解説いただいた。参考CAR-T細胞療法のトリセツ(中外医学社)血液内科治療のトリセツ(中外医学社)

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脊髄刺激療法が脊髄性筋萎縮症患者の筋力回復を促す

 脊髄の硬膜外腔に挿入した電極を通して電気刺激を与える脊髄刺激療法が、脊髄性筋萎縮症(SMA)患者の筋肉の機能回復を促し、運動機能の強化や歩行機能の改善につながる可能性のあることが、新たな研究で示された。SMAは徐々に筋力が低下する遺伝性疾患の一つだが、1カ月間の小規模な予備的研究で、3人のSMAの成人にデバイスを植え込んで微弱電流で脊髄を刺激したところ、予想外の改善が認められたという。米ピッツバーグ大学のMarco Capogrosso氏らによるこの研究は、「Nature Medicine」に2月5日掲載された。 SMAは、脊髄から筋肉に信号を送る神経細胞である運動ニューロンに影響を及ぼす。これらのニューロンが衰えると筋肉が弱まり、歩く、立ち上がる、さらには呼吸することさえ困難になる。 脊髄刺激療法で植え込むデバイスは、下部脊髄に電気パルスを送り、時間の経過とともに弱くなった筋肉の活性化を促す。Capogrosso氏らは、3人のSMAの成人を対象に、1日に2時間、4週間にわたって、運動タスクを行っている間に脊髄刺激療法を行い、デバイスの電源がオンのときとオフのときの筋力や疲労度、可動域、歩行能力の変化を測定した。 その結果、この治療は正常な動きを完全に回復させるものではなかったが、顕著な改善が見られた。具体的には、参加者全員が、6分間歩行試験でより遠くまで歩けるようになり、この試験の評価尺度であるストライド速度が13〜114%改善した。また、研究開始時には膝をついた姿勢から立ち上がることができなかったある参加者は、研究終了時には立ち上がれるようになった。別の参加者では歩幅が3倍になった。 参加者の1人である米ニュージャージー州フランクリンパーク在住のDoug McCulloughさん(57歳)は、AP通信の取材に対して、「進行性の疾患というのは、安定しているか悪化しているかのどちらかであり、良くなるということは決してない。それゆえ、何であれ改善するのであれば、それは、これまででは考えられない極めて素晴らしい効果だと言える」と話している。 しかも、このような効果は、デバイスの電源を切った後もすぐには消失しなかった。時間の経過とともに効果は薄れていったが、治療後もしばらくの間、筋力の強化を感じた参加者もいた。AP通信によると、McCulloughさんは、デバイスの電源が入っていないときも自分の足が「まるでエネルギーに満ちあふれている感じがした」と表現したという。 この結果から、脊髄刺激療法がSMAや他の筋消耗性疾患の治療における新たなツールになり得ることが示唆された。ただし、今回の研究は短期研究であったため、対象者からデバイスを摘出しなくてはならなかった。McCulloughさんがこの治療を通して得た効果は、6週間後の検査の時点では残っていたが、6カ月後には消失していたという。 米ルイビル大学で脊髄損傷に対する刺激療法の先駆的研究を主導し、現在は非営利団体のケスラー財団に所属している神経科学者のSusan Harkema氏は、「今回の研究結果は重要なものだ」との見解を示している。同氏は、「人間の脊髄回路は極めて精巧にできており、脳により制御される反射神経の単なる集まりではない。本研究は極めて信頼性が高く、今後の進歩に寄与する重要なものだ」とAP通信に語っている。

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CAR-T細胞療法後、T細胞リンパ腫に対するモニタリング必要/NEJM

 オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSimon J. Harrison氏らは、1~3レジメンの前治療歴のあるレナリドミド抵抗性多発性骨髄腫患者を対象に、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法ciltacabtagene autoleucel(cilta-cel)と標準治療を比較した第III相無作為化試験「CARTITUDE-4試験」において、cilta-cel投与後に末梢性T細胞リンパ腫(CAR導入遺伝子発現と組み込みを伴う悪性単クローン性T細胞リンパ増殖症)を発症した2例について報告した。著者は、この病態を「CAR導入遺伝子T細胞リンパ増殖性腫瘍(CTTLN)」と呼んでいるが、「T細胞リンパ腫の発症に対する挿入突然変異の関与は、直接的な証拠がないため現在のところ不明である」と述べている。NEJM誌2025年2月13日号掲載の報告。2例ともCAR導入遺伝子発現と組み込みを認める 症例1は、細胞遺伝学的高リスク(del[17p]およびgain[1q])の50代男性で、cilta-cel単回投与により完全奏効が得られ微小残存病変(MRD)陰性(閾値10-6)が確認された。本症例では、投与5ヵ月後に急速に増大する紅斑性鼻顔面斑が出現し、皮膚生検で異型T細胞浸潤が認められ、FDG-PETで確認された頸部リンパ節腫脹の組織でも顔面病変と同じT細胞浸潤が認められた。病変組織にはレンチウイルスDNA(0.8コピー/cell)が含まれており、その90~100%がCAR+であることが明らかになった。皮膚およびリンパ節生検組織からはTET-2変異(H1416R)が検出された。 症例2は、IgG-κ型多発性骨髄腫と診断された細胞遺伝学的高リスク(t[4;14]およびgain[1q])の50代の女性で、治療後1年で完全奏効が得られMRD陰性となった。本症例では、投与16ヵ月後に顔面や体幹、乳房などに皮膚腫瘤が出現し、自然退縮したが再発した。FDG-PETで皮膚、リンパ節、乳房、肺、骨に病変が確認され、病変細胞は主にCAR+であることが明らかになった。遺伝子解析で、CARのARID1A遺伝子への組み込みが確認され、TET2変異(Y1902H)も検出された。 両患者とも、治療によりT細胞リンパ腫は完全奏効が得られた。直接的な証拠はなし 両患者の単クローン性T細胞は、検出可能なCAR導入遺伝子発現と組み込みが認められた。これらのCTTLNの臨床遺伝学的特徴から、その発症には既存のTET2変異T細胞への遺伝子組み込みに続き、さらなるがん原性ゲノム変異の獲得など、複数の内在性または外在性の因子が寄与している可能性が示唆された。また、生殖細胞系列のゲノム変異、ウイルス感染、多発性骨髄腫の治療歴などの寄与も考えられた。しかし、T細胞性リンパ腫の発症に挿入突然変異が関与している直接的な証拠は現在のところない。 これらの結果を踏まえて著者は「多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法のベネフィットは依然としてリスクよりまさっているが、T細胞リンパ腫に対する警戒、モニタリングを行う必要がある」とまとめている。

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成人CAR-T療法の実際【Oncologyインタビュー】第46回

出演:京都大学医学部付属病院 血液内科 北脇 年雄氏CAR-T療法は今や造血器腫瘍治療に欠かせないものとなった。その一方、複雑な治療工程や有害事象の管理など照会元施設にとって押さえておくべき情報は多い。成人のCAR-T療法の基本について、京都大学附属病院の北脇年雄氏に解説いただいた。参考CAR-T細胞療法のトリセツ(中外医学社)血液内科治療のトリセツ(中外医学社)

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BCMA標的CAR-TのICAHTに対する幹細胞ブースト療法の有用性/ASH2024

 免疫エフェクター細胞関連造血毒性(ICAHT)は、CAR-Tをはじめとする免疫療法による血球減少を引き起こし、感染症などのリスクとなる。KarMMa-1試験、CARTITUDE試験といった多発性骨髄腫の国際研究では、CAR-T投与早期(30日以内)に90%前後で好中球減少が発現し、それ以降も50%程度の割合で発現が続くと報告されている。 そのような中、CAR-T細胞療法を受けた再発・難治多発性骨髄腫(R/R MM)におけるICAHTの臨床経過と、ICAHTに対する自己幹細胞ブースト療法の効果を確認する後ろ向き試験が行われた。研究結果が米国・ウィスコンシン医科大学のKiritika Yadav氏により、第66回米国血液学会(ASH)で発表された。 対象はBCMA標的CAR-T細胞療法(ide celまたはcita cel)を受けたR/R MM患である。血球減少の定義は好中球≦1,000/mL、血小板≦50x109/L、ヘモグロビン≦9g/dL。ICAHTはCAR-T細胞投与後21日、3ヵ月、6ヵ月の時点で評価された。評価項目は、血球数回復、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)であった。 主な結果は以下のとおり。・全体で159例が登録された。・患者の年齢中央値は65歳、FISHまたはPET高リスクが77%、自家造血幹細胞移植(ASCT)実施が87%、前治療ライン数中央値は5、髄外病変あり28%、サイトカイン放出症候群(CRS)は85%、ICANSは12%に発現していた。・評価症例154例中89例でICAHTが発現した。・ICAHTの発現は21日後の58%(89例/154例)から3ヵ月後28%、6ヵ月後17%と時間とともに減少した。・ICAHTのリスク因子は、ASCT≧2回、前治療歴≧5ライン(対4ライン p=0.002)、ベースライン時の血小板数≦146×109/L(対194×109 p=0.005)、FISHまたはPET高リスク(p=0.012)、ICANS発現(p=0.006)、トシリズマブ使用(p=0.013)であった。・ICAHT発現82例(自家幹細胞保存症例)のうち、重度の血球減少のため自己幹細胞ブースト療法を受けた患者は22例(27%)であった。・自己幹細胞ブースト療法の投与期間中央値はCAR-T投与後52日間であった。・自己幹細胞ブーストを受けた患者の血球数は早期(CAR-T療法21日後)においては低値であったが、3ヵ月および6ヵ月後にはには受けない患者よりも大きく改善した。 Yadav氏は、重症ICAHT発現患者に対する自己幹細胞ブースト療法の恩恵を明らかにするためには、さらなる研究が必要だと述べた。

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第239回 「遺伝子治療」を正しく説明できる?~コロナワクチンを遺伝子組み換えと呼ぶなかれ

SNS上では相も変わらず新型コロナウイルス感染症のワクチンに関して、まあどこをどう突けばそんな話が出てくるのかと思うような言説が飛び交っている。その中で結構目立つのがmRNAワクチンを“遺伝子組み換えワクチン”と呼ぶことである。遺伝子組み換えとは、厳密に言えば「ある種の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせること」ことを指すため、まったく的外れな呼称である。多くの人がご存じのように、遺伝子組み換え技術はすでに食品などで使用されている。これまで農作物などでは人にとって好ましい新品種を交配で作り出してきたが、遺伝子組み換え技術により、新品種を作り出す期間が短縮されたのである。しかし、今でもこうした食品は危険だと主張する人は一部にいる。そして最近公開されたある調査を見て、どうやら人は「遺伝子」という言葉にやや過敏に反応するのではないかと思いつつある。調査とはファイザー社が2024年9月に国内の20代以上の男女(スクリーニング調査1万人、本調査829人)に行った遺伝子治療に関する一般向け意識調査である。結果を要約すると、▽「遺伝子治療」という言葉を聞いたことのない人は30% (n=10,000)▽ 遺伝子治療への「誤解や理解不足がある人」は98.4% (n=829)▽遺伝子治療に対し、「怖い、危険、不安」というネガティブな印象を持つ人は46%(n=829)、というものだ。ちなみ2番目の「誤解や理解不足がある人」とは、アンケートで用意された遺伝子治療に関する質問6つを1つでも正答できなかった、あるいはわからなかった人を指し、これは一般向けにはなかなか厳しいと感じる。むしろ「怖い、危険、不安」が5割弱という結果がやや驚きだった。釈迦に説法は承知で、ここで遺伝子治療について簡単に整理しておきたい。遺伝子治療とは「治療用遺伝子をベクターに乗せて標的細胞内に導入する治療法」だが、概論的な作用機序は(1)治療遺伝子を病的細胞内で働かせて細胞を改変(2)治療用遺伝子が宿主細胞内に取り込まれタンパク質を発現し、それらが分泌・全身を循環して遺伝子の欠損や異常を補完、に大別される。また、この標的細胞の遺伝子導入法は、標的細胞を体外に取り出してベクターで遺伝子を導入し、品質チェックをしながら培養して患者の体内に戻す体外法(ex vivo法)、治療遺伝子を乗せたベクターを直接体内に投与して遺伝子導入を起こさせる体内法(in vivo法)の2つがある。私自身は遺伝子治療に拒否感はないが、記者2年目の1995年にアデノシンアミナーゼ(ADA)欠損症に対して北海道大学が行った日本初の遺伝子治療以降は、昨今のCAR-T細胞療法(商品名:キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジ)や脊髄性筋萎縮症(SMA)に対するオナセムノゲンアベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ)まで知識も記憶も抜け落ちている。ということで、日本遺伝子細胞治療学会理事の山形 崇倫氏(栃木県立リハビリテーションセンター 理事長/自治医科大学小児科学講座 客員教授)に遺伝子治療の現在地について聞いてみた。医師でも「遺伝子治療が怖い」と思う理由山形氏は前任の自治医科大学小児科教授時代の2015年、小児神経難病の1種である芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症を対象にAADCを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療を国内で初めて行った経験を有する。前述のファイザーによる一般向けアンケートの結果に講評も寄せている山形氏だが、正直結果はやや意外だったようで、「十分に情報が伝わっていない現実は否定しがたいと思う。結局は『知らないから怖い』という心理ですね。実際に遺伝子治療が対象になる可能性がある患者やその家族が遺伝子治療の効果を知ると、『ぜひやってほしい』と積極的な姿勢に変わることが多い」と語る。これを裏付けるかのように、遺伝子治療について「怖い、危険、不安」と回答した人(381人)でも、「もしあなたが遺伝子が原因の疾患に罹患して、治療法の選択肢の1つとして遺伝子治療があった場合、遺伝子治療を受けてみたいと思いますか」との問いに、「ぜひ受けてみたい」「やや受けてみたい/受けてみてもよい」の回答合計は3分の1の33.6%に上る。要は背に腹は代えられぬということなのだろう。もっとも山形氏は、1990年代に遺伝子治療が行われた患者では、後に副作用として白血病の発症に至った例があることなどから、医師の中でもその時代の認識で止まっていることも少なくないと考える。「現時点で最先端の遺伝子治療の対象は小児の難病・希少疾患が多く、これらは医師でも診療経験がある人は少ない。結果的に遺伝子治療に関して教科書的な知識はあるものの、それ以上はあまり知らないことも多い。先日、医師向けに遺伝子治療の講演をしたが、反応の大半は『難しそうだね』と。私が示したAADC欠損症患者の治療後の動画を見せたら『すごいな』とは思ったようですが」と同氏はコメントした。昨今の医学部教育ではカリキュラムに組み込まれるようになっているものの、山形氏は「すべての大学がきちんとした講義を行っているかはわからない。基礎医学や病態生理学の一部で触れられる程度のところもある」との認識を示す。さて国立医薬品食品衛生研究所遺伝子治療部がまとめた日本国内での遺伝子治療薬の開発状況1)を見ると、後期開発品はin vivo法ではほぼ単一遺伝子疾患、ex vivo法では血液がんで占められている。これは標的が絞り込みやすいからだと思われる。もっとも、標的が決定しても遺伝子導入方法が今も大きな課題として残る。同氏が取り組んだAADC欠損症の場合は局所投与という形で行ったが、「ほとんどの遺伝性疾患の場合は、全身的な細胞への遺伝子導入が必要になるのが実際」と語った。現時点で明らかになっているウイルスベクターの安全性ここで問題になるのがベクターの効率性と安全性である。ベクターに関しては、使われるウイルスベクターが初期のガンマレトロウイルスからレンチウイルス、さらに現在ではAAVへと変化してきた。そもそもガンマレトロウイルスの場合、マウスで白血病を起こすウイルスということ自体が問題だったが、AAVはヒトでの病原性はないため、かなり安全性は改善されたと言える。ただ、静注での全身投与が必要な場合は要注意だという。同氏は「静注による大量投与では、細胞に取り込まれずに循環するベクターが肝細胞表面や血管内皮に結合し、そこで起きる免疫反応で肝障害・血管内皮障害などの副作用を起こすことがわかり、絶妙な投与量の調節が求められることがわかった」と指摘する。この問題を解決するため、現在では(1)遺伝子治療薬の投与時に免疫抑制薬の併用、(2)肝細胞に結合親和性の低いベクターを開発、(3)免疫発達途上の乳幼児期に発症する疾患ではできるだけ早期に治療開始、が考えられるという。とりわけ(3)は副作用だけではなく、治療効果の面からも重要なファクターだ。たとえば、前述のSMAでのオナセムノゲンアベパルボベクによる治療は、治療開始時期が早いほど健常者との運動機能発達レベルの差が少ないことがわかっている。そこでカギとなるのが、まず現時点で先天代謝異常20疾患が対象となっている新生児マススクリーニングの徹底とその拡大である。現状では新生児の親が支払う費用負担が地域によって異なることが影響してか、受診率に地域格差が存在する。また、新たに治療法が登場したSMAや造血幹細胞移植により治癒の可能性がある重症複合免疫不全症に関しては、2023年からこども家庭庁の旗振りにより国と都道府県・指定都市の折半による全額無料検査の実証事業が決定した。2024年10月時点で27都府県・10政令指定都市が事業に参加したが、「財政基盤の弱い県などは参加を控えている」(山形氏)と、ここでも地域格差が生まれている。同氏は「いっそ新生児に一律でスクリーニングの遺伝子検査をすればいいという意見もあるが、実はそれのみでは発見しにくい疾患もある。その意味ではマススクリーニングの受診率向上、対象疾患の拡大とともに、学会などの協力の下、乳幼児の健診などを担う一般内科医の知識向上に尽力して総出で臨床的な異常を早期に発見していくというアナログな対応も現状では必要」とも語る。一方で遺伝子治療に関しては、日本では必ずしも研究開発が活発ではないとの指摘もある。実際、「The Journal of Gene Medicine」の調べ2)による2023年3月時点での世界各国の遺伝子治療の臨床試験数で日本は世界第6位の55件。1位であるアメリカの2,054件、2位の中国の651件と比較して大きく水をあけられている。山形氏は自身が遺伝子治療に取り組んだ際、「高い基準を満たしたベクター製造が必要かつその費用が非常に高額で、研究費を得るために厚生労働省に何度も足を運んだ」と振り返る。この経験を踏まえ、日本での遺伝子治療の進展のためには、国が旗振り役となり、資金調達を中核としたエコシステムの構築が必要だと主張する。また、「新型コロナワクチンでは変異株対応でmRNA部分以外はプラットフォームとみなして審査を簡略化する措置が常態化しているが、これと同じように遺伝子治療では、対象疾患や導入遺伝子の違いがあってもベクターが同一の場合は、ベクター部分の審査を簡略化する仕組みは導入できるはず」と提言する。新型コロナの治療薬・ワクチンで世界に遅れをとった日本。岸田前政権の末期には日本発の創薬エコシステム確立を声高に掲げ、どうやら石破政権でもこの方針を引き継ぐと言われている。そこを基軸に遺伝子治療分野で勝ち目を見いだせるのだろうか?参考1)国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部ホームページ:国内企業あるいは日本で臨床開発中の主な遺伝子治療製品(2024年11月20日更新)2)Ginn SL, et al. J Gene Med. 2024;26:e3721.

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九州大学医学部 第一内科(血液・腫瘍・心血管・膠原病・感染症)【大学医局紹介~がん診療編】

加藤 光次 氏(准教授)山内 拓司 氏(助教)大村 洋文 氏(助教)近藤 萌 氏(大学院生)講座の基本情報医局独自の取り組み、医師の育成方針私たちが目指す医療は、目の前の患者さんを助けること、そして将来の患者さんを救うことであり、深い洞察を伴う臨床と研究を通じて、この2つの役割を果たすことができる“Physician Scientist”の育成に、医局として力を入れています。九州大学医学部第一内科は、5つの診療研究グループ(血液・腫瘍・心血管・膠原病・感染症)で構成され、各医師が専門領域に精通しつつ、人・全身を総合的に診る力を重視しています。当科では、全体回診を継続するなど、グループや臓器別診療の垣根を越え、全人的に診療できる総合内科医の臨床力を自ずと身に付けることができる土壌が育まれています。さらに、当科の専門であるがんや免疫の領域では、奇跡的とも言える最近の基礎研究から臨床開発への応用を容易に目の当たりにすることができます。このことは、第一内科ならではの特徴で、基礎研究や臨床開発における成果を、専門性を越えて異なる視点やアプローチから学ぶことが可能です。すぐ近くに、自らの視野を広げてくれる環境が整っています。さまざまなグループの垣根を越えた組織の活力は「自由」から生まれ、第一内科開講以来100年以上もの間、それを大切にしてきました。第一内科に息づく「自分のやりたいことがやれる自由度の高さ、そしてそれを支える歴史と伝統」を引き継ぎ、臨床力・研究力・人間力のバランスが取れた“Physician Scientist”を目指す若い皆さまに是非教室にご参加いただき、それぞれがもつ夢を実現して欲しいと思います。全体回診を行い、グループの垣根を越えて診療力を入れている治療/研究テーマ九州大学病院血液内科では、移植推進拠点病院として年間約50件の造血幹細胞移植を実施しています。また、難治性悪性リンパ腫や多発性骨髄腫に対する新規治療であるCAR-T細胞療法も、いち早く導入され、年間50件以上の実施件数を誇っています。研究面では、白血病や悪性リンパ腫を中心とした基礎研究に加え、臨床現場での疑問点を出発点とした研究や、基礎研究から臨床応用を目指すトランスレーショナルリサーチも推進しています。たとえば、白血病幹細胞に発現するTIM3を世界に先駆けて発見し、これをターゲットとした治療薬の開発を進めています。医学生/初期研修医へのメッセージ当科では、細胞治療に関する豊富な臨床経験を積むことができるほか、臨床と研究の距離感が近い環境が整っています。血液がんは一般的に予後が不良な疾患ですが、その治療法は日進月歩で進展しており、新たな治療法の開発に取り組むことができるのが大きな魅力です。血液がんと診断された患者さんは、多大なショックや不安を抱えていますが、少しでも安心できる未来を目指し、共に治療を進めていきましょう。カンファレンスの様子同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力私たち腫瘍グループは、がん治療の最前線で、多職種や複数の診療科と連携し、患者さん一人ひとりに最適な治療を届けることを目指しています。消化器がん、軟部肉腫、原発不明がんなど、幅広いがん種に対し、最新のエビデンスに基づく薬物療法を実践しています。時には合併症で悩むこともありますが、他のグループの先生方にいつでも気軽に相談できるので、心強いサポートを感じています。このように臓器の枠組みを越えた連携が、「全人的に診る」総合内科としての第一内科の強みであり魅力でもあります。患者さんに寄り添い、時に笑い合い、悩みながらも一緒に歩んでいく―それがやりがいであり、私が第一内科に入局した理由でもあります。さらに、研究設備も非常に充実しており、関連病院の先生方と協力しながら存分に研究を行うことも可能ですし、学位取得のチャンスも広がっています。また日本臨床腫瘍学会の認定研修施設として、「がん薬物療法専門医」の資格取得を目指すための高度な教育環境が整っています。臨床、研究、教育のいずれも充実したこの環境で、私たちと一緒に最先端のがん医療に取り組んでみませんか?これまでの経歴山口大学を卒業後、九州大学第一内科(心血管グループ)に入局し、内科専門医・循環器専門医を取得しました。現在は腫瘍循環器診療を行うとともに、がん治療と心血管疾患に関する基礎・臨床研究に力を入れています。同医局を選んだ理由当科は血液、腫瘍、循環器、膠原病、感染症など多様な診療グループがあり、各診療グループ間の垣根がないため、内科医としての知識を幅広く学べる環境が整っています。指導医の先生方は豊富な知識を持ち、患者さんに真摯に向き合っており、その姿勢に惹かれて入局を決意しました。所属する先生方のキャリアは多様で、各々のニーズに応じた働き方やスキル習得が可能です。私もがんと循環器領域の両方に興味を持ち、入局後にがん診療に従事した後、心血管グループに所属しています。現在学んでいること現在は大学院で、がん治療に関連する心血管障害の基礎研究を進めつつ、造血器腫瘍と心血管有害事象、腫瘍循環器リハビリテーションの臨床研究も行っています。がん治療は日々進歩し続けており、その中で患者さんに少しでも良い診療を提供できるよう研鑽を重ねています。九州大学医学部 第一内科(血液・腫瘍・心血管・膠原病・感染症)住所〒812-858 福岡県福岡市東区馬出3-1-1問い合わせ先ikyoku1intmed1@gmail.com医局ホームページ九州大学医学部 第一内科(血液・腫瘍・心血管・膠原病・感染症)専門医取得実績のある学会日本内科学会、日本血液学会、日本輸血・細胞治療学会、日本移植学会、日本臨床腫瘍学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本不整脈心電学会、日本アレルギー学会、日本リウマチ学会、日本感染症学会、日本臨床検査医学会、日本救急医学会、日本糖尿病学会 など研修プログラムの特徴(1)血液内科・腫瘍内科・心血管内科・膠原病内科・感染症内科と複数のグループが連携して診療にあたっており、充実したサポート体制のもとさまざまな分野の症例が経験できます。(2)治験や臨床試験をはじめ最先端の治療を実施しており、将来の治療開発に繋がる基礎研究にも精力的に取り組んでいます。希望があれば海外留学も支援します。(3)休日当番制を敷いて、ライフワークバランス実現に取り組んでいます。産休・育休から復帰した女性医師のキャリア支援にも力を入れています。詳細はこちら

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多発性骨髄腫におけるCAR-T細胞の製造不良の要因/京都大学

 CAR-T細胞療法は、再発難治多発性骨髄腫の管理を大幅に改善した。しかしCAR-T細胞には、製造過程で一部に発生する細胞増殖不良による「製造不良」という問題がある。製造不良は治療の大きな遅れや、その間の病勢進行につながるため、治療計画に重大な影響を与える。製造不良の実態把握とリスク因子の同定が急務とされていた。 そのようななか、骨髄腫患者におけるCAR-T細胞製造不良リスクを特定するため、日本でide-cel(商品名:アベクマ)治療を受けた患者の全国コホート研究が実施された。対象はide-cel投与のための白血球アフェレーシスを受けた患者である。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は154例で、そのうち13例(8.4%)で製造不良が発生した。・製造不良例では成功例に比べ、診断時の17p欠失率が高く(38.5% vs.14.9%)、アフェレーシス前6ヵ月以内のアルキル化剤治療が多く(53.8% vs.23.4%)、またアフェレーシス前の化学療法ライン数が多かった(中央値6 vs.5)。・製造不良例では成功例に比べ、ヘモグロビン値(8.6 vs.10.0g/dL)、血小板数(5.9 vs.13.8x104/μL)、CD4/CD8比(0.169 vs.0.474)が有意に低かった。・アフェレーシス前6ヵ月以内のアルキル化剤使用は、血小板数とCD4/CD8比低下に関連していた。

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次世代のCAR-T細胞療法―治療効果を上げるための新たなアプローチ/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が開催され、13日のJSH-ASH Joint Symposiumでは、『次世代のCAR-T細胞療法』と題して、キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)療法の効果の毒性を最小限にとどめ、治療効果をより高めるための新たな標的の探索や、細胞工学を用いてキメラ抗原受容体(CAR)構造を強化した治療、およびoff the shelf therapyを目標としたiPS細胞由来次世代T細胞療法の試みなど、CAR-T細胞療法に関する国内外の最新の話題が紹介された。CAR-T細胞療法を最適化するための新しい標的の開発 CAR-T細胞療法はB細胞性悪性腫瘍や多発性骨髄腫(MM)などに対する効果が認められているが、毒性については解決すべき課題が残っている。ガイドラインでは主な合併症として、サイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)が取り上げられているが、CAR-T細胞療法による新たな、または、まれな合併症とその管理についての情報は少なく、新たな標的の検討とともに明らかにしていく必要がある。米国血液学会(ASH)のCAR-T細胞療法のワークショップでは、CAR-T細胞の病態生理の理解、まれな毒性についてのデータの蓄積、on-target off-toxicityを回避するための的確な標的となる抗原などが検討されている。 Fabiana Perna氏(Moffitt Cancer Center)らは腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異的抗原(TSA)、さらに腫瘍特異的細胞表面プロテオームの解析を行っている。同氏らはこれまで、急性骨髄性白血病(AML)におけるCAR-T細胞療法の標的を同定するために、プロテオームと遺伝子発現の同時解析を行い、26個の標的を同定した。このうち15個は臨床試験で用いられ、その多くがAMLの正常細胞上に高発現する蛋白であった。 MMに対してはB細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T(BCMA-CAR-T)細胞療法の成績は良好とはいえず、新たな標的抗原が必要である。Perna氏らはMM患者約900例のサンプル約4,700検体を用い細胞表面のプロテオームを解析し、RNAシーケンスを行い、腫瘍組織に高発現するBCAAを含む6個の標的を同定した。そのうちSEMA4Aは再発/難治性MM患者での高発現が認められた。BCMA-CAR-T細胞療法後の再発はBCMAの発現低下に関連し、CARの機能低下を惹起すると考えられ、的確な標的の探索が必要である。Perna氏らはSEMA4AがCAR-T細胞療法の標的となりうると考え、SEMA4A-CAR-T細胞療法を試みている。なお、MM患者の免疫療法に関しては第I相試験が予定されている。 また、Perna氏らはmRNAスプライシングに由来する白血病特異的抗原の解析パイプラインを開発中であり、AML患者サンプルからスプライスバリアントの異常発現を認めたことから、同氏は、疾患特異的スプライスバリアントを標的とした治療法につながることを期待していると述べた。CAR-T細胞療法抵抗性克服と新たな応用の探求 CAR-T細胞療法は、CD19およびBCMA抗原を標的として、B細胞性悪性腫瘍(リンパ腫、白血病)およびMMに対して行われている。BCMA-CAR-T細胞療法は初期治療の奏効率は高いが、長期寛解率は低くとどまっている。CAR-T細胞の機能不全は抗原逃避、T細胞欠損、腫瘍微小環境(TME)などにより惹起される。そこで、酒村 玲央奈氏(メイヨー・クリニック 血液内科)は、CAR-T細胞療法の治療抵抗性克服と新たなストラテジーを探求するうえで、重要な鍵となる免疫抑制細胞について検討した。 がん関連線維芽細胞(CAF)は、CAR-T細胞の機能不全を誘導するが、同時にMM患者の治療効果を高める可能性があると考えられている。これまでの酒村氏の検討でMM患者由来のCAFがTGF-βなど抑制性サイトカイン産生を増加させ、PD-1/PD-L1結合を介してCAR-T細胞を阻害し、FAS/FASリガンド経路を介してCAR-T細胞にアポトーシスを誘導、制御性T細胞(Treg)を動員することが示された。また、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的としたCAR-T細胞はマウスの体重を有意に減少させ、off target効果による重篤な毒性を惹起すると考えられ、CAF表面上に発現するCS1およびBCMAの2つを標的としたCAR-T細胞は腫瘍細胞およびCAFを溶解することが示された。さらに、BCMA-CAR-T細胞療法施行患者由来の骨髄サンプルを用いたシングルセルRNAシーケンスを行い、non-responder由来のCAFが高頻度にデスリガンド(抗腫瘍性リガンド)を発現すること、non-responder由来のT細胞は慢性的に刺激され疲弊したphenotypeであることが明らかとなった。また、non-responder由来の骨髄サンプルではTMEを支配する腫瘍関連マクロファージ(TAM)とCAFの有意なクロストークの存在が示された。 間葉系幹細胞(MSC)は多能性細胞であり、免疫抑制および組織再生治療における効果が研究されている。そこで酒村氏は、MSCの免疫抑制効果を向上させるために、細胞工学技術を用い健康な人から得た脂肪由来のMSCにCARを搭載し、移植片対宿主病(GVHD)に対する治療戦略をマウスモデルで検討した。研究には、とくにGVHDをターゲットとしたE-cadherin(Ecad)特異的なCAR-MSC(EcCAR-MSC)を用いた。EcCAR-MSCの開発では、Ecad特異的な単鎖可変フラグメント(scFV)クローンが生成され、CAR-CD28ζ構造を設計し安定発現させてMSCの免疫抑制機能を強化したことが示された。 GVHDモデルにおいてEcCAR-MSCはマウスの体重減少を軽減し、GVHD症状を緩和し生存率を向上させた。また、Ecad陽性大腸組織へ特異的に移行し、T細胞活性を抑制し免疫調節機能効果を向上させた。また、シングルセルRNAシーケンスにより、抗原特異的刺激を受けたEcCAR-MSCにおいてIL-6、IL-10、NF-κBなどの免疫抑制シグナル経路の活性化が認められた。EcCAR-MSCのCD28ζシグナルドメインを含むCAR構造体はより強い免疫抑制効果を示した。 酒村氏は、CARを用いたMSCの免疫抑制機能を強化する新たな細胞治療とGVHDおよび腫瘍抑制における可能性を提示した。また、MSCの開発は免疫環境の調節を可能とし、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)など自己免疫疾患の治療にも新たなアプローチを提供するものと考えると述べ、CAR-T細胞療法を進展させ、より多くの患者予後の改善を目指したいと結んだ。難治性腫瘍に対するiPS細胞由来次世代T細胞療法の開発 難治性NK細胞リンパ腫に対しては、L-アスパラギナーゼを含む抗がん剤治療や末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)による細胞治療が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。とくに末梢血由来T細胞は細胞治療後に疲弊し、長期的には腫瘍が増大することが知られている。そこで、安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科血液内科学)はNK細胞リンパ腫患者の末梢血よりエプスタイン・バーウイルス(EBV)抗原特異的CTLを使用し、iPS細胞を作製後、再びT細胞に分化誘導し、iPS細胞由来若返りCTL(rejT)を作製し、NK細胞リンパ腫に対する抗腫瘍効果を検討した。その結果、rejTはNK細胞リンパ腫細胞株に対し強力な細胞傷害活性を示した。次いでNK細胞リンパ腫細胞株を腹腔内注射したマウスを用い、rejTおよび末梢血由来T細胞で治療し生体内での抗腫瘍効果を比較検討した結果、両群とも有意な腫瘍増大抑制効果が認められた。さらにrejTは末梢血由来T細胞に比べ有意な生存期間延長効果を示し、マウス体内でメモリーT細胞として長期間生存し、リンパ腫再増殖抑制効果が持続したことが示された。 次いで安藤氏は、末梢血EBV抗原LMP2特異的CTLからiPS細胞を作製し分化誘導後、iPS細胞由来若返りLMP2抗原特異的CTL(LMP2-rejT)がEBV関連リンパ腫に対し強い抗腫瘍効果を発揮することをマウスモデルで証明した。また、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期生存し、難治性リンパ腫の再発抑制を維持することを確認した。 安藤氏はこの手法を応用し、LMP2-rejTにCARを搭載することで、2つの受容体を有し、同時に2つの抗原(CD19、LMP2抗原)を標的にできるiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスを用いた検討ではDRrejTは受容体を1つのみ有する従来のT細胞に比べ、難治性の悪性リンパ腫に対し強力な抗腫瘍効果と、生存期間延長効果を示し、メモリーT細胞として長期生存が示された。 また、安藤氏はiPS細胞に小細胞肺がん(SCLC)に高発現するGD2抗原標的キメラ抗原受容体(GD2-CAR)を遺伝子導入後、分化誘導したiPS細胞由来GD2-CART細胞(GD2-CARrejT)を作製し、SCLCに対する強い抗腫瘍効果を示した。さらに、GD2-CARrejTは末梢血由来のGD2-CART細胞に比べ、疲弊マーカーであるTIGITの発現がきわめて低いことを明らかにした。また、マウスの検討でGD2-CARrejTは末梢血由来LMP2-CTLに比べNK/T細胞リンパ腫を抑制することが示された。 さらに、安藤氏はiPS細胞由来ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原特異的CTL(HPV-rejT)を作製し、HPV-rejTは末梢血由来CTLと比較して子宮頸がんの増殖を強力に抑制することを確認した。子宮頸がん患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化には課題がある。一方、健康な人のCTLから作成した他家iPS細胞を用いた場合、これらの問題は解決するが、患者免疫細胞からの同種免疫反応により抗腫瘍効果が減弱する。そこでCRISPR/Cas9技術を用い、HLAクラスIをゲノム編集した健常人由来他家HPV-CTL(HLA-class I-edited HPV-rejT)を作製した。マウスを用いた検討で、HLA-class I-edited HPV-rejTは患者免疫細胞から拒絶されずに子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。また、末梢血由来HPV-CTLに比べ、細胞傷害活性に関するIFNG遺伝子や、組織レジデントメモリー細胞に関係するITGAE遺伝子などの発現レベルが有意に高く、組織レジデントメモリー細胞を豊富に含むことが示された。これらの機能解析により、HLA-class I-edited HPV-rejTはTGF-βシグナリングによりCD103発現レベルを上昇させ、その結果、抗原特異的細胞傷害活性が増強することが明らかとなった。現在、HLA-class I-edited HPV-rejTを用いた治療の安全性を評価する医師主導第I相試験が進行中である。 安藤氏はiPS細胞由来の抗原特異的、そしてHLA編集細胞が、off the shelfのT細胞療法に、持続可能で有望なアプローチを提供するものと期待されると締めくくった。

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外来で実施するCAR-T細胞療法も安全で効果的

 急速に進行する大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者に対して、外来ベースでCAR(キメラ抗原受容体)-T細胞療法を実施しても、患者は治療によく反応することが、CAR-T細胞療法の外来環境での使用を検討した研究としては最大規模の前向き研究で明らかになった。CAR-T細胞療法は、患者の血液から採取したT細胞にCARを発現させるための遺伝子を導入し、特定のがん細胞を攻撃できるようにした上で患者の体内に戻す治療法。CAR-T細胞製品のブレヤンジ(一般名リソカブタゲン マラルユーセル)を製造販売するブリストル・マイヤーズ スクイブ社の資金提供を受けて米マイアミがん研究所リンパ腫サービス責任者のYuliya Linhares氏らが実施したこの研究の詳細は、「Blood Advances」に9月30日掲載された。 LBCLは白血球の一種であるBリンパ球が侵されるがんで、急速に進行し、未治療で放置すると致命的になる可能性がある。ほとんどのLBCL患者は標準的な抗がん薬に対して良好な反応を示すが、標準治療でがんが根絶しない難治性LBCL患者や、治療への反応後にがんが再発した患者には、CAR-T細胞療法が効果的な治療選択肢となり得る。 しかし、CAR-T細胞療法は患者と介護者にとって、仕事を休み、自宅から遠く離れた宿泊施設を探さなければならないなど、困難を伴いがちだ。また、CAR-T細胞療法後には、発熱、低血圧、低酸素レベルを特徴とするサイトカイン放出症候群(CRS)や、脳の神経毒性などの独特で潜在的に深刻な副作用が現れることもあるため、綿密な監視が必要であり、治療後の観察入院や、治療後1時間は病院内での待機を勧められることが多い。Linhares氏は、「CAR-T細胞療法に伴う最大のハードルの1つは患者の治療へのアクセスだ。患者が新しい医療システムに移るために必要な、保険の承認取得、予約の手配、ケアの継続性の確保などは、患者や介護者にとって頭痛の種となり得る」と指摘している。 この研究でLinhares氏らは、CAR-T細胞療法へのアクセスを改善するための方法として、外来ベースでのCAR-T細胞療法実施の実現可能性を評価した。対象者は難治性LBCL、あるいは再発LBCL患者82人で、うち70%は外来で(外来治療群)、30%は入院して(入院治療群)、FDAによる承認済みの2種類のCAR-T細胞製品のうちの1つであるブレヤンジによる治療を受けた。 中央値10.6カ月に及ぶ追跡期間中に、外来治療群の25%は一度も入院することがなかったが、32%は治療後72時間以内に入院した(入院までの期間中央値は5.0日)。入院期間中央値は、外来治療群で6.0日、入院治療群で15.0日だった。いずれの群でもグレード3以上のCRSは確認されず、神経毒性イベントの発生も外来治療群で12%、入院治療群で4%と低かった。客観的奏効率は80%(外来治療群82%、入院治療群76%)、完全奏効率は54%(外来治療群58%、入院治療群44%)、奏効期間中央値は14.75カ月だった。 こうした結果を受けて研究グループは、これらの結果は、外来患者のモニタリングを行える地域病院でCAR-T細胞療法を実施しても、リスクが増加しないことを示しているとの見方を示している。またLinhares氏は、Blood Advances誌のニュースリリースの中で、「できるだけ多くの施設がCAR-T細胞療法プログラムの構築に取り組むことを奨励する」と述べ、「合併症にすぐに気付いて対処するためには、明確に定義されたプロトコルと徹底したスタッフのトレーニングが不可欠だ」と付け加えている。 Linhares氏は、「患者が外来治療または入院治療によるCAR-T細胞療法のどちらに適しているのかを判断できるようになるためには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

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CAR-T療法における血球減少の頻度とパターン/日本血液学会

 遷延性血球減少はCAR-T細胞療法の重篤な合併症の1つである。兵庫医科大学の吉原 享子氏は、実臨床における後方視的研究の結果を第86回日本血液学会学術集会で発表した。 CAR-T療法では、リンパ球除去療法の影響でCAR-T細胞投与後に血球減少がみられる。多くの場合改善するが、未回復のまま遷延する症例があり注意を要する。 血球減少にはQuick recoveryタイプ、Intermittent recoveryタイプ(一旦回復したのち再度低下する)、Aplasticタイプ(減少が遷延する)がある。遷延性血球現象の発生機序は、前治療による骨髄予備能の低下、造血幹細胞のCHIPの出現、CAR-TによるCRSやそのほかの免疫学的機序、原疾患の状態などさまざまな機序が関与していると考えられている。そのため疾患およびCAR-T製剤により血球減少の頻度やパターンが異なる可能性がある。 吉原氏らは、ide-celおよび他のCAR-T製剤(tisa-cel、liso-cel)における遷延性血球減少について後方視的に解析した。 主な結果は以下のとおり。・症例は2020年3月~2024年6月に兵庫医科大学でCAR-T療法を受けた116例。投与後5週間以上経過追跡できない例などを除き、解析対象はide-cel22例、それ以外のCAR-T68例(tisa-cel38例、liso-cel30例)となった。・CAR-T投与から血球減少回復までの期間中央値はide-cel群は29.5日、tisa/liso‐cel群は20日と、ide-cel群で長い傾向にあった(p=0.419)。・血球減少タイプについて、ide-cel群はtisa/liso‐cel群に比べ、Intermittent recoveryタイプが多く、6割以上を占めた。・CAR-T投与23日後の好中球数はide-cel群470/μL、tisa/liso‐cel群は1,350/μLと、ide-cel群で有意に少なかった(p=0.0202)。・血球減少の程度を予測するCAR-HEMATOTOXスコアはtisa/liso‐cel群に比べ、ide-cel群でlowリスクが多く、スコアも低い傾向であった。・tisa/liso‐cel群ではCAR-HEMATOTOXスコアとの相関は乏しかった。・ide-cel単独の血球減少はCAR-HEMATOTOXスコアと相関する傾向にあった。好中球回復までの期間は同スコアLowリスク群では28日、Highリスク群では46日であった。また、輸血の必要性はHighリスク群で有意に高かった(赤血球輸血p=0.019、血小板輸血p=0.02)。・ide-cel投与後の好中球回復日数中央値は、フェリチンのピーク中央値(732ng/dL)未満では14日、中央値以上では31日と、高ピーク値で有意に遅延した(p=0.02)。

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CAR-T細胞療法により二次がんリスクは上昇しない

 自家キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法製品の添付文書には、CAR-T細胞療法後に二次性のT細胞性悪性腫瘍が発生するリスクがあるとの警告が記載されている。しかし、新たな研究で、CAR-T細胞療法後のそのような二次がんの発生頻度は、標準治療後の二次がん発生頻度と同程度であることが示された。米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSKC)成人骨髄移植サービス分野のKai Rejeski氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Cancer Research」に9月11日掲載された。 米国がん協会(ACS)の説明によると、CAR-T細胞療法は、患者の血液から採取したT細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を発現させるための遺伝子を導入し、特定のがん細胞を攻撃できるようにした上で患者の体内に戻す治療法である。ACSは、「CAR-T細胞療法は、ある種のがんに対して、たとえ他の治療法が効かなくなった場合でも、非常に有効な可能性がある」と述べている。 しかし、米食品医薬品局(FDA)は2024年1月、FDAの有害事象報告システムのデータに基づき、CAR-T細胞療法製品の添付文書に、治療対象となったB細胞リンパ腫や多発性骨髄腫などとは無関係に新たなT細胞性悪性腫瘍(二次がん)が発生する可能性について警告を表示するよう要求した。これに対し、Rejeski氏らは、FDAのデータでは、二次がん発生に影響を及ぼす可能性のある他の因子、例えば年齢、他に受けた治療、追跡期間などが考慮されていない点を指摘する。同氏は、「患者は、この警告の追加についてのニュースを読んでおり、当然のことながら、医療提供者に安全性について質問している。われわれは、潜在的なリスクを理解するとともに、データを慎重に解釈して患者に説明する必要がある」と話す。 今回の研究でRejeski氏らは、リンパ腫または多発性骨髄腫の患者5,517人を対象とした18件の臨床試験と7件のリアルワールド研究のデータの分析を行った。対象者は、現在承認されている6種類のCAR-T細胞療法のうちのいずれかを受けていた。 中央値21.7カ月に及ぶ追跡期間中に5.8%の患者に326件の二次がんが発生していた。解析の結果、CAR-T細胞療法前に受けた別の治療の回数が3回以上だった患者では、3回以下だった患者に比べて二次がんリスクの高いことが示された。CAR-T細胞療法を受けた患者と標準治療を受けた患者の転帰を比較した4件の研究(対象者の総計1,253人)を対象にした解析では、二次がんが発生した患者の割合は、CAR-T細胞療法を受けた患者で5%、標準治療を受けた患者で4.9%であり、両群間に有意な差は認められなかった。また、二次がんリスクは、治療対象となるがんの種類や受けたCAR-T細胞療法の種類によって変わらないことも明らかになった。さらに、326件の二次がんのサブタイプを調べたところ、T細胞性悪性腫瘍はわずか5件(0.09%)を占めるに過ぎず、T細胞性悪性腫瘍と患者のCAR-T細胞療法で使用されたT細胞との遺伝的関連については、3件のうちの1件でのみ陽性と判定されていた。 こうした結果を受けてRejeski氏は、「これらの結果は、標準治療に比べてCAR-T細胞療法が二次がんリスクを上昇させることを示唆するものではない」と結論付けている。同氏はさらに、「CAR-T細胞療法により患者の生存期間は延びるが、それは同時に新たながんが発生する期間も延びることを意味する」と指摘し、「CAR-T細胞療法は、自身の成功の犠牲になっている可能性がある」と述べている。 Rejeski氏は、「過去20年以上を振り返ると、難治性の大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療法で、標準治療以上に患者の生存率を向上させたのはCAR-T細胞療法だけだ。CAR-T細胞療法での二次がんリスクは極めて低いため、この治療を決して控えるべきではない」とアドバイスしている。

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第227回 Nature誌の予言的中?再生医療の早期承認の現状は…

科学誌「Nature誌」の“予言”は正しかったのか? 2015年12月、同誌のエディトリアルに「Stem the tide(流れを止めよ)」というやや過激なタイトルの論評が掲載されたことを覚えている人もいるのではないだろうか?ちなみにこの論評には「Japan has introduced an unproven system to make patients pay for clinical trials(日本は臨床試験費用を患者に支払わせる実績のない制度を導入)」とのサブタイトルが付け加えられていた。Nature誌が批判した日本の制度とは、2014年11月にスタートした再生医療等製品に関する早期承認(条件および期限付承認)制度のことである。同制度はアンメットメディカルニーズで患者数が少なく、二重盲検比較試験実施も困難な再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が認められたものを、条件や期限を設けたうえで早期承認する仕組み。承認後は製造販売後使用成績調査や製造販売後臨床試験を計画・実施し、7年を超えない範囲で有効性・安全性を検証したうえで、期限内に再度承認申請して本承認(正式承認)を取得する。Nature誌の論評の直前、厚生労働省(以下、厚労省)の中央社会保険医療協議会は、同制度での承認第1号となった虚血性心疾患に伴う重症心不全治療のヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」(テルモ)の保険償還価格を決定していた。ハートシートは患者の大腿部から採取した筋肉組織内の骨格筋芽細胞を培養してシート状にし、患者の心臓表面に移植する製品。念のために言うと、Nature誌による批判の本丸は、同制度の承認の仕方そのものというよりは保険償還に関する点である。通常、製薬企業などが新たな治療薬や治療製品を開発する際は、開発費用は当然ながら企業側が全額負担する。しかし、条件付き承認制度では、企業は暫定承認状態で販売が可能になり、最低でも本承認の可否が決定するまでの期間、保険診療を通じた公費負担と患者の一部自己負担が製品の販売収益となる。そしてこの間にも企業側は本承認に向けた臨床試験を実施する。つまるところ、暫定承認期間中に、本来、企業負担で行うべき臨床試験費用の一部を事実上患者が負担し、効果が証明できずに本承認を得られなかったとしても過去の患者負担が返還されるわけでもない。企業が負うべきリスクを患者に付け回している、というのがNature誌の主張だ。そしてNature誌の論評では「条件付きかどうかに関わらず、すでに承認された医薬品を制御するのは容易ではないだろう。評価が甘く、医薬品の効果が明らかにされない、あるいは流通から排除されないなど生ぬるい評価が行われれば、日本は効果のない治療薬であふれてしまう国になる可能性がある」とまで言い切った。2014年から10年、制度利用の状況このハートシート以降、条件付き早期承認制度を利用して承認を取得したのは、脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害の改善を適応としたヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞「ステミラック」(ニプロ)、慢性動脈閉塞症での潰瘍の改善を適応とする「コラテジェン(一般名:ベペルミノゲンペルプラスミド)」(アンジェス)、悪性神経膠腫を適応とする「デリタクト(一般名:テセルパツレブ)」がある。そして今年7月19日に開催された厚労省の薬事審議会の下部会議体である再生医療等製品・生物由来技術部会は、ハートシートについてメーカーが提出した使用成績調査49例とハートシートを移植しない心不全患者による対照群の臨床研究102例の比較検討から、主要評価項目である心臓疾患関連死までの期間、副次評価項目である左室駆出率(LVEF)のいずれでもハートシートの優越性は確認できなかったと評価し、「本承認は適切ではない」との判断を下した。また、これに先立つ6月24日、同じく条件付き早期承認を取得していた前述のコラテジェンでも動きがあった。製造・販売元のアンジェスが「HGF 遺伝子治療用製品『コラテジェン』の開発販売戦略の変更に関するお知らせ」なるプレスリリースを公表。同社はすでに2023年5月に本承認に向けた申請を行っていたが、プレスリリースでは「非盲検下で実施した市販後調査では、二重盲検の国内第III相臨床試験成績を再現できなかったことから上記申請を一旦取り下げ」と述べ、6月27日付で本承認申請を取り下げた。率直に言って、データを提出して本承認への申請を行っていながら、1年後には第III相試験成績を再現できなかったと申請を取り下げるのはかなり意味不明である。厚労省側は前述の7月19日の部会にコラテジェンに対するアンジェスの対応を報告。結果としてハートシートとコラテジェン共に暫定承認が失効した。制度発足から10年で、条件付き早期承認制度を利用して承認を受けた4製品のうち2製品が市場から姿を消したことになる。つまり同制度の暫定“打率”は5割という、医療製品としてはあまり望ましくない数字だ。薬事審議会後の厚労省医薬局の医療機器審査管理課の担当者による記者ブリーフィングでは、審議会委員から「今後こういったことが続かないように制度運用での有効な措置を考えるべきだ」との意見も出たことが明らかにされた。ある意味、当然の反応だろう。もっとも今回、医療機器審査管理課が公表したハートシート、コラテジェンの審議結果では、いずれも「有効性が推定されるとした条件及び期限付承認時の判断は否定されないものの」とのただし書きが付いた。さて、そのハートシートが条件付き期限付き承認を受けた当時の審査報告書に今回改めて目を通してみた。当時の審査報告何とも評価が難しいのは、承認の前提になった国内臨床試験が症例数7例の単群試験である点だ。この7例は▽慢性虚血性心疾患患者▽NYHA心機能分類III~IV度▽ジギタリス、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬、経口強心薬といった最大限の薬物療法を行っているにもかかわらず心不全状態にある▽20歳以上▽標準的な治療法に冠動脈バイパス術(CABG)、僧帽弁形成術、左室形成術、心臓再同期療法(CRT)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施して3ヵ月以上経過しているにもかかわらず心不全の悪化が危慎される▽エントリー時の安静時LVEF(心エコー図検査) が35%以下、を満たす重症心不全患者である。実際の7例の詳細を見ると、年齢は35~71歳、NYHA心機能分類は全員がIII度、LVEFが22~33%。治療では全例がPCIかCABGを施行し、5例はその両方を施行していた。薬物治療では利尿薬、ACE阻害薬、β遮断薬のうちどれか2種類は必ず服用しており、心不全治療目的の治療薬は3~7種類を服用していた状態である。ハートシートによる治療は、開胸手術が必要になるが、この7例の状態はそれを行うだけでもかなりリスクの高い症例であることがわかる。同時にこれらの症例では、意図して対照群を設定して比較試験を行うことは、現実的にも倫理的にもかなり困難だろう。国内臨床試験の主要評価項目はLVEFの変化量である。ハードエンドポイントを意識するならば、心疾患関連死を見るべきかもしれないが、やはりこの試験セッティングでは難しいと言わざるを得ない。こうしたさまざまな制約の中で行われた臨床試験結果はどのようなものだったのか?まず、LVEFだが、ご存じのようにこの数値の算出には、心プールシンチグラフィ、心エコー、心臓CTなどの検査を行う必要があり、この中で最もバイアスが入りにくいのは心プールシンチグラフィである。臨床試験では、心プールシンチグラフィのデータでメインの評価を行っており、事前に設定したLVEFの変化量に基づく改善度の判定基準は、「悪化」が-3%未満、「維持」が-3%以上+5%未満、「改善」が+5%以上。ハートシート移植後26週時点での結果は「悪化」が2例、「維持」が5例、「改善」が0例だった。ちなみの副次評価項目では心エコー、心臓CTによるLVEF変化量も評価されており、前述の改善度判定基準に基づくならば、心エコーでは全例が「改善」、心臓CTでは「維持」が5例、「改善」が1例、残る1例はデータなし。LVEF算出において、心エコーはもっともバイアスが入りやすいと言われているが、さもありなんと思わせる結果でもある。ちなみに試験の有効性評価の設定では、試験対象患者が時問経過とともに悪化が危慎される重症心不全患者であったことから、「維持」以上を有効としたため、心プールシンチグラフィの結果では7例中5例が有効とされた。もっともここに示したデータからもわかるように、評価結果に一貫性があるとは言い難い。この点はメーカー側も十分承知していたようで、心臓外科医1名、循環器内科医2名の計3名からなる第三者委員会を組織し、各症例のデータなどを提供して症例ごとの評価を仰いでいる。審査報告書にあるその評価は「有効」が5例、「判定不能」が2例。とはいえ、有効と評価されていた症例でも、その評価にはある種の留保条件的なものが提示されたものもあった。そして最終的な医薬品医療機器総合機構(PMDA)の評価は「国内治験における本品の有効性の評価は限定的であるものの、個別症例に対する総合的な評価に基づき、標準的な薬物療法が奏効しない重症心不全患者に対して本品は一定の有効性が期待できると考える」とした。申請者、評価者、それぞれの努力がにじむ結果であり、今から振り返ってこの評価が妥当ではなかったとは言い切れないだろう。しかしながら、審査報告書を事細かに読むと、たとえば国内臨床試験の主要評価項目であるLVEF変化量についてPMDAは「申請者が設定した『悪化』、『維持』及び『改善』の各判定基準の臨床的意義は必ずしも明確ではないが」などと表現しており、あえて私見を言うならば、「第1号」ゆえの期待、もっと言えば“ご祝儀“意識も何となく感じてしまうのである。もっともNature誌のような酷評まではさすがに同意はしない。今回、薬事審議会が不承認の判断を下したことで「効果のない治療薬であふれてしまう国」という“最悪“の状況は回避されている。とはいえ、今後の同制度の運用にはかなり課題があることを示したのは確かだろうというのは、ほぼ万人に共通する認識ではないだろうか?

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早老症の寿命延長に寄与する治療薬ロナファルニブ発売/アンジェス

 アンジェスは、小児早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロセシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(PDPL)の治療薬であるロナファルニブ(商品名:ゾキンヴィ)の発売に伴い、都内でプレスセミナーを開催した。 HGPSとPDPLは、致死性の遺伝的早老症の希少疾病であり、若い時点から死亡率が加速度的に上昇する疾患。これらの疾患では、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚症状などを来す。 ロナファルニブは、2023年3月に厚生労働省により希少疾病医薬品に指定され、2024年1月に国内製造販売承認を取得、同年4月に薬価基準に収載され、同年5月27日に発売された。 プレスセミナーでは、これら疾患と治療薬の概要が講演されたほか、ムコ多糖症や脊髄性筋萎縮症などを対象に衛生検査事業を同社が開始することが発表された。全世界で200例程度の患者・患児が存在 はじめに井原 健二氏(大分大学医学部医学科長 小児科学講座 教授)が、「HGPS/PDPL:病態・疫学・歴史と未来」をテーマに、主に疾患の概要について説明を行った。 ヒトは、小児期の発育(成長・発達・成熟)と成人期の老化(衰退・退行・退縮)の各要素により一生を終える。HGPS/PDPLなどの早老症は、老化の3要素が小児期から起こる疾患であり、発症年齢から先天性、乳児型、若年/成人型に分類される。 主な徴候としては、白髪・脱毛、難聴、白内障、強皮症様の皮膚症状、脂肪異栄養症、2型糖尿病、骨粗鬆症、動脈硬化および脳血管疾患などがある。また、100以上の症候群が報告され、乳児で発症すれば乳児早老症(コケイン症候群)、成人で発症すれば成人早老症(ウェルナー症候群)と発症年代の違いにより病名も変わってくる。 中でもHGPSは、出生児400万人に1人の発症とされ、患児は全世界に140例程度と推定されている。発症要因はLMNA遺伝子の病的変異が9割で、生後1年以内に発育不全、生後1~3年で特徴的な顔貌(下顎形成不全など)と早老徴候がみられ、平均余命は14.5歳。HGPSの老化には、Lamin A遺伝子の異常スプライシングによる翻訳時の欠失が知られ、異常ラミンが細胞核の物理的損傷や染色体クロマチン構造の異常を引き起こし、これらが病的変化の原因になることが判明している。また、核ラミナの変異が原因の遺伝性疾患であるラミノパチーはイコールで早老症ではなく、筋ジストロフィーや拡張型心筋症などもあり、これらの1つに早老症があるとされる。その代表疾患がHGPSであり、PDPLであるという。PDPL患者は、全世界で50例程度と推定され、生命予後は少し長く成人期まで生きることができる。 HGPSとPDPLの診断では、診察・問診後に遺伝子検査が必須となり、その結果遺伝子変異などの態様により分類される。 臨床症状としては、HGPSを例にとると「低身長(<3パーセンタイルなど)」、「不均衡な大頭などの顔の特徴」、「乳歯の萌出・脱落遅延などの歯科所見」、「さまざまな色素沈着などの皮膚所見」、「全禿頭や眉毛の喪失などの毛髪所見」、「末節の骨溶解などの骨格筋所見」、「細く甲高い声」などの症状がみられる。これらを大症状、小症状、遺伝学的検査の3つの組み合わせで確定または推定と診断される。医療者でも小児早老症の認知度は75%程度 HGPSとPDPLの疾患啓発については、「GeneReviews日本語版」や「プロジェリアハンドブック(日本語版)」などで医療者へ行っており、今後も医療者向けに2025年の診断基準の改訂情報や検査の高度化(血漿プロジェリン測定)を発信していくという。 また、啓発活動の一環として、「小児遺伝子疾患の診療経験・学習機会について」を医師51人に調査したアンケート結果を報告した。・「医学生時代に小児遺伝子疾患について学んだか」について聞いたところ、「はい」が53%、「いいえ/覚えていない」が47%だった。・「小児遺伝子疾患である早老症を知っているか」について聞いたところ、「はい」が75%、「いいえ」が25%だった。・「早老症のうちHGPS/PDPLなどの疾患群を知っているか」を聞いたところ、「はい」が27%、「いいえ」が73%だった。・「小児遺伝子疾患の診療で困ったこと」(複数回答)では、「治療に困った」が19人、「診断に困った」が18人と回答した医師が多かった。 まだ、医療者の中でも広く知られていないHGPSとPDPLの疾患啓発は、今後も続けられる。寿命の延伸に期待されるロナフェルニブ 「HGPSの治療の実際、および治療薬の登場により何が変わるのか?」をテーマに松尾 宗明氏(佐賀大学医学部小児科学 教授)が、HGPSの治療の概要やロナファルニブ登場の意義などを説明した。 はじめに自験例としてHGPSの患児について、生後3ヵ月で皮膚の硬化を主訴に診療を受けた症例を紹介した。その後、患児はHGPSが疑われ、生後5ヵ月でアメリカでの遺伝子検査により確定診断された。以降は、対症療法が行なわれ、10歳にときに無償提供プログラムでロナファルニブ単剤が投与され、現在も存命という。 ロナファルニブの作用機序は、核膜の構造・機能を損なうファルネシル化された変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害することで死亡率を低下させ、生存期間を延長する。 臨床試験では、HGPSおよびPDPLを対象としたロナファルニブの観察コホート生存試験が行われ、ロナファルニブ投与被験者は未治療対照と比較して、平均生存期間が4.327年延長した(平均9.647年vs.5.320年、名目上のp<0.0001、層別log-rank検定)。また、死亡率はロナファルニブ投与群で38.7%(24/62例)、未治療対照群で59.7%(37/62例)で、ハザード比は0.28(95%信頼区間:0.154~0.521)だった。HGPSおよびPDPLでの死亡原因は、動脈硬化の進行が一番多く、治療薬の効果として血管の硬化を抑えている可能性が示唆された。 用法・用量は、通常、ロナファルニブとして開始用量115mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与し、4ヵ月後に維持用量150mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与する(なお、患者の状態に応じて適宜減量する)。 主な副作用では、嘔気・嘔吐、下痢などの消化器症状が多く、とくに最初の4ヵ月に多いが、次第に慣れていくという。また、肝機能障害も初期に出現しやすく、QT延長もみられる場合もある。そのほか、潜在的なリスクとして、骨髄抑制、腎機能障害、眼障害、電解質異常も散見されるので注意しつつ処方する必要がある。 松尾氏はロナファルニブの登場により、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の発症抑制」、「患者QOLの向上」、「延命効果」、「国内の患者さんへの適切な診断・治療の提供」などが変化すると期待をみせた。その一方で、「外観、体格など骨格系の問題、関節拘縮などに対する効果は乏しいこと」、「心血管系に対する効果もまだ限定的であること」、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の管理」、「延命に伴う新たな問題(老化進行による予期せぬ合併症)」などが今後解決すべき課題と語り、講演を終えた。

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再発・難治性DLBCL、複数の分子標的薬を含む5剤併用療法が有効/NEJM

 再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療において、ベネトクラクス+イブルチニブ+prednisone+オビヌツズマブ+レナリドミド(ViPOR)の5剤併用療法は、特定の分子サブタイプのDLBCLに持続的な寛解をもたらし、有害事象の多くは可逆性であることが、米国・国立衛生研究所(NIH)のChristopher Melani氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年6月20日号に掲載された。米国の単一施設第Ib/II相試験 研究グループは、DLBCLの複数の発がん性遺伝子変異を標的とするレジメンであるViPOR療法の安全性と有効性の評価を目的に、単一施設において第Ib/II相試験を行った(米国国立がん研究所などの助成を受けた)。 2018年2月~2021年6月に、年齢18歳以上でECOG PSスコアが0~2点の再発または難治性B細胞リンパ腫患者60例を登録した。このうち20例(DLBCL 10例を含む)を第Ib相試験、40例(すべてDLBCL)を第II相試験の対象とした。 第Ib相試験では、第II相試験におけるベネトクラクスの推奨用量を確定するために4つの用量を評価し、他の4剤は固定用量とした。第II相試験の拡大コホートには、胚中心B細胞型(GCB)DLBCLと非GCB-DLBCLの患者を含めた。ViPOR療法は6サイクル(1サイクル21日)行った。患者の3分の2以上で血液毒性 DLBCL患者50例の年齢中央値は61歳(範囲:29~77)、92%が病期IIIまたはIV期、86%が乳酸脱水素酵素(LDH)高値、56%が2つ以上の節外病変を有し、68%が国際予後指標(IPI)3点以上で、17例(34%)は形質転換リンパ腫だった。全身療法による前治療数中央値は3(範囲:1~9)で、20例(40%)はCAR-T細胞療法による治療歴があった。 第Ib相試験では、用量制限毒性であるGrade3の頭蓋内出血が1件発生し、第II相試験でのベネトクラクスの推奨用量は800mgに決定した。 第II相試験(60例)では、患者の3分の2以上に何らかの血液毒性を認め、52%でGrade3または4の好中球減少(全サイクルの24%)、45%でGrade3または4の血小板減少(同23%)、25%でGrade3(Grade4は認めず)の貧血(同7%)が発現した。Grade3の発熱性好中球減少が発生した患者は3例(5%)のみで、Grade4はみられなかった。 Grade3以上の非血液毒性は、29%で低カリウム血症、8%で下痢、4%でALT値上昇、3%で倦怠感、2%で嘔吐が発現した。毒性により減量を要した患者の割合は17%、投与延期は25%であった。2年無増悪生存率34%、2年全生存率36% 評価が可能であったDLBCL患者48例における奏効の割合は54%(26例)で、38%(18例)が完全奏効であった。完全奏効を達成したのは、非GCB-DLBCL患者、およびMYC遺伝子の再構成を有するか、BCL2とBCL6遺伝子のいずれか、あるいは両方の再構成を有する高悪性度B細胞リンパ腫の患者のみであった。 奏効までの期間中央値は0.66ヵ月(範囲:0.59~4.34)で、完全奏効例の78%が地固め療法を受けずに完全奏効を持続していた。 ViPOR療法の終了時に、患者の33%で循環血中の腫瘍DNAが検出されなかった。また、追跡期間中央値40ヵ月の時点で、2年無増悪生存率は34%(95%信頼区間[CI]:21~47)、2年全生存率は36%(95%CI:23~49)であった。 著者は、「特定の分子サブタイプにおけるViPOR療法の有効性は、治癒可能な疾患を有するDLBCL患者のサブグループに限定されるが、これは今回の結果の一般化可能性にある程度の確証をもたらすものである。非GCB-DLBCLと、MYCおよびBCL2遺伝子の再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL-DH-BCL2)におけるViPOR療法の抗腫瘍活性については、今後の研究課題である」としている。

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CAR-T療法、2次がん・T細胞リンパ腫のリスクは?/NEJM

 キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法では、2次がん、とくにウイルスベクターの組み込みに関連するT細胞腫瘍のリスクが新たな懸念事項となっているが、米国・スタンフォード大学のMark P. Hamilton氏らは、同大学医療センターで2016年以降にCAR-T細胞療法を行った症例について解析し、2次がんはまれであることを明らかにした。「クローンの関連を明確にし、ウイルスベクターのモニタリングに関する枠組みが必要と考えられる」とまとめている。NEJM誌2024年6月13日号掲載の報告。791件中25件に2次がんが発生、血液がんの3年累積発生率は6.5% 研究グループは、2016年2月4日~2024年1月15日に、スタンフォード大学医療センターでCAR-T細胞療法を実施した724例(791件)について、2次がんの発生率を調査した。 追跡期間中央値15ヵ月において、解析した724例、計791件の細胞注入後に、非黒色腫皮膚がんを除く25件の2次がんが特定された。内訳は、血液がん14件(骨髄異形成症候群または急性骨髄性白血病に関連したがん13件、T細胞リンパ腫1件)、固形腫瘍11件(黒色腫4件、前立腺がん2件、乳管がん2件、子宮内膜腺がん1件、肺腺がん1件、転移を有する中皮腫1件)であった。 2次血液がんの累積発生率は3年時で6.5%であり、これは既報と同様、CAR-T細胞療法後の2次がん発生がまれであることを示唆するものであった。CAR-T細胞療法後のT細胞リンパ腫は、ベクターと関連なし CAR-T細胞療法後にT細胞リンパ腫を発症した1例について詳細に検討した。本症例は、原疾患がStageIVのエプスタイン・バーウイルス陽性(EBV+)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で、アキシカブタゲン シロルユーセルによるCD19標的CAR-T細胞療法を行った後、54日目にEBV+T細胞リンパ腫が確認され、62日目に病死した。EBV+DLBCL発症の3年前に乾癬および好酸球性筋膜炎の既往があった。 患者より採取した血液検体ならびに腫瘍細胞を用い、CAPP-seqアッセイ、全エクソームシーケンス、定量的PCR、シングルセルRNAシーケンス解析、シングルセルDNAシーケンス解析、フローサイトメトリー解析、ClonoSEQアッセイを行った結果、各リンパ腫は、分子的に免疫表現型およびゲノムプロファイルが異なっていたが、いずれもEBV陽性で、DNMT3A変異およびTET2変異クローン性造血と関連しており、CAR-T細胞の作製に用いられたレトロウイルスベクターがT細胞リンパ腫に直接関与しているエビデンスは認められなかった。

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第216回 異例の承認「外傷性脳損傷による運動麻痺」の改善薬

6月21日夜、私が接したのは異例中の異例の結論だった。国内バイオベンチャー・サンバイオが中等度から重度の外傷性脳損傷後の運動機能障害の改善を適応として申請中の再生医療等製品「アクーゴ脳内移植用注」(一般名:バンデフィテムセル、開発番号:SB623、以下は開発番号で表記)について、厚生労働省(以下、厚労省)の薬事審議会の再生医療等製品・生物由来技術部会*(以下、部会)は、再生医療等製品特有の条件および期限付承認を了承したが、端的に言うと「承認するが、当面出荷は認めず」という“玉虫色”の結論を出したのである。*旧薬事・食品衛生審議会、本年4月より改称SB623とは外傷性脳損傷は、交通事故、労働災害や高齢者のふらつきなどによる転落・転倒、スポーツ外傷などによって起こり、脳の神経細胞の損傷が著しい1割程度の中等~重度の患者では慢性的な記憶障害や運動機能障害などに至ってしまう。運動機能障害の症状は手足の動きの鈍化、嚥下機能の低下、円滑な発話が困難などで日常生活におけるQOLは大幅に低下する。外傷性脳損傷による慢性的な運動機能障害は、現状ではリハビリテーション以外にほぼ治療手段はない。そうした中で2001年に米国・カリフォルニア州で設立されたサンバイオ(2014年、日本に本社移転)が創業以来、開発に注力してきたのがその治療薬SB623である。SB623は健康成人骨髄液由来の間葉系間質細胞を加工・培養して作製されたヒト(同種)骨髄由来加工間葉系幹細胞。これを定位脳手術で脳内の損傷した神経組織へ直接移植手術を行うことで、脳神経再生能力を促し、喪失した運動機能を回復させる効果が見込まれている。損傷した脳の神経細胞の復元がきわめて難しいことは一定の医学知識があれば容易に想像がつくが、そこに挑んだのがSB623である。サンバイオが日本に拠点を移動した2014年11月には国内再生医療等製品に関する早期承認(条件および期限付承認)制度がスタート。同制度は、アンメットメディカルニーズゆえに被験者数の確保が難しく、二重盲検比較試験実施も困難な再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が認められた再生医療等製品を、条件や期限を設けたうえで早期承認する仕組み。承認後は製造販売後使用成績調査や製造販売後臨床試験を計画・実施し、7年を超えない範囲で有効性、安全性を検証したうえで、期限内に再度承認申請して本承認(正式承認)を取得する。株価に期待や不安が織り交ざる先進国内で最も再生医療等製品の上市ハードルを低くしたともいえる同制度は、サンバイオのSB623開発にとって追い風だったことは想像に難くない。同社は2015年に東京証券取引所マザーズ市場(現・グロース市場)に上場を果たし、2018年11月には外傷性脳損傷を対象にしたSB623の日米共同第II相「STEMTRA試験」で主要評価項目の達成を発表。2019年1月に同社株価は1万2,730円と上場以来の最高値を記録した。ただ、当時の株価急上昇は外傷性脳損傷でのポジティブな試験結果とは別の要因も働いていたと考えられる。というのも同社創業直後から、SB623は外傷性脳損傷よりはるかに市場規模が大きい慢性期脳梗塞での運動機能障害を適応とする臨床試験が先行していたからだ。つまり2018年11月の速報結果発表以降の株価の急上昇は、脳梗塞での試験成功への期待値も織り込んでいたというのが、関係者の間では共通認識だった。しかし、上場後の株価最高値を記録した2019年1月末、同社は業績予想の下方修正と脳梗塞で進んでいた第II相試験の主要評価項目未達を相次いで発表。翌2月に株価は反転急落し、同月最安値は2,401円にまで落ち込んだ。ところがこの3ヵ月後の2019年4月、外傷性脳損傷後の運動機能障害の改善の適応に関してSB623が厚生労働省の先駆け審査品目に指定を受け、再び期待が高まることになった。「先駆け審査指定制度」の法制化3年後に申請先駆け審査指定制度は、2014年6月に閣議決定された産業競争力の強化を通じ日本の成長戦略「日本再興戦略改訂2014」で謳われた「世界に先駆けた革新的医薬品・医療機器等の実用化の推進(先駆けパッケージ戦略)」を受け、2015年度から厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)が試行的に開始。2019年の薬機法改正で法制化された。同制度は(1)治療薬の画期性(2)対象疾患の重篤性(3)対象疾患に係る極めて高い有効性(4)世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思・体制、の4条件を満たす開発中の医薬品を、企業の申請に基づき薬事審議会での意見聴取などを考慮して指定する。指定を受けた医薬品は、申請前に事前にPMDAによる優先相談や事前評価を受けられ、申請から原則6ヵ月以内に承認可否が下されるなどの“特典”がある。そしてついに同社は2022年3月、「外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善」の適応で承認を申請。同制度の原則に基づけば2022年9月には承認可否が決定しているはずだったが、同年8月までに開催された2回の部会の議題には上らず、7月22日付で同社は9月までに先駆け審査制度に基づく承認の見込みはないとのプレスリリースを公表し、10月には「今期中の承認取得はないものと判断しています」とのプレスリリースも発表した。この中身が明らかになったのは2023年3月に行われた同社決算会見。同社が「細胞の製造の際に申請時点と比較して収量が減少する課題が発生した」と公表し、以後、同社のプレスリリースではこの点に関する情報発信が以下のように変化していった。「現時点ではまだ、申請時点と同等の収量に戻り切っていませんが、直近の製造を通して得られた追加データに基づく原因分析の結果、課題解決に直結すると考えられる施策を策定することができました。現在、この施策を講じた上で製造を行っており、8月にこの製造の収量結果をもって課題解決の判断ができる見込みです」(2023年6月)「収量に関する課題について、施策を講じた直近の製造において、収量の改善を確認することができました。今後、追加製造と並行して、生産関連の審査に適時適切に対応していくことで、引き続き、今期中の承認取得を目指します」(2023年8月)「収量に関する課題については解決し、審査は進捗しております。但し、審査の状況から承認取得にはもう少し時間を要するため、承認取得目標時期は2024年3月に修正いたします」(2023年12月)承認審議、そこから明らかになった課題そして今年3月18日、厚労省が3月25日の部会開催を発表し、その議題には「非公開案件 議題2 再生医療等製品『アクーゴ脳内移植用注』について」と記載されていた。「うわっ!承認審議か」と私も含め多くの記者が色めき立ったが、翌日の一部専門紙で「承認可否は審議せず、“今後の方向性”を審議する」と報じられた。そもそも部会審議の議題にあがりながら、承認可否を審議しないこと自体異例である。この時に厚労省が発表した資料によると、「治験製品と本品との同等性/同質性が確認される前提ではあるものの、一定の有効性は期待でき、ベネフィットを踏まえると安全性は許容可能。本品の有効性および安全性に関する情報は現時点で限定的であるものの、本品を臨床現場に提供する意義はあるものと評価」との見解を示しながらも、「現時点で得られたデータでは、治験製品と本品との同等性/同質性は判断できない」と記述されていた。要は製品としての品質が担保されていないということだ。この品質問題の詳細について厚労省側は企業秘密に該当するとして公表していない。サンバイオ側にも確認したところ、「お答えできない」との回答だった。ただ、この件に関する同社のプレスリリースでは品質に関する追加データを提出していく意向を示しており、「(提出するデータは)今後当局との協議の中で明確化して対応していく予定です。当局との協議次第となります」(同社広報)との回答だった。承認へ、本品が唯一の治療方法になる可能性そして再び6月12日に厚労省は6月18日の部会開催を発表。議題の1つが「再生医療等製品『アクーゴ脳内移植用注』の製造販売承認の可否、条件及び期限の要否並びに再審査期間の指定の要否について」。3月の開催案内に比べ、議題表記がかなり具体的であるため、私や周囲の何人かの記者は承認の見通しだろうと予想した。そして6月18日、夜9時からオンラインで開催された部会後の記者レク*。事前に厚労省からメールで届いた資料を読んでいて、「ああやっぱり承認か」と思いながらPDFをスクロールしていると、2ページ目の備考欄で目が留まった。そこには以下のような記載があった。*記者レクチャーの略。記者団などを相手に発表を行うと共に発表者から説明が行われる場「本品の製造実績が限られていることを踏まえ、あらかじめ定めた計画に基づき、本品の品質に関する情報を速やかに収集するとともに、治験製品と本品との品質の同等性/同質性を評価し、結果を報告すること。また、当該結果を踏まえ、必要な承認事項一部変更承認申請を行うとともに、当該申請が承認されるまでの間、本品の出荷を行わないこと。」(下線は筆者追加)実はこの時、記者レク参加予定の記者、AさんとBさんと同時並行でLINEのやり取りをしていた。すぐに2人からメッセージが着信した。Aさん「いや、承認条件の一番下、これなんですか?」Bさん「これってすぐには販売開始できないんですかね?」そして夜9時に厚労省医薬局医療機器審査管理課による記者レクが始まった。まず冒頭、担当者から以下のような説明があった。「(3月25日の部会では)今回の承認条件に関係する同等性/同質性の確認が困難だった。それを経てサンバイオ社から追加データが提出され、その内容をPMDAが評価した結果を踏まえて承認の可否を諮り、承認して差し支えないことになったが、3月に論点になっていた同等性/同質性については、追加データでもなお確認できないという結論。しかしながら、それでもなお承認して差し支えないと判断をしたのは、適用対象疾患に対しては、現時点では代替の治療方法がない、リハビリテーションをするしかないため、本品が唯一の治療方法になる可能性があるというところを鑑みて、条件を付したうえでデータの再提出後に改めて部会で議論することを織り込み済みであれば、承認して差し支えないだろうとの判断をいただいた」以下は医療機器審査管理課の担当者と記者との主なやり取りだ。―前回の部会以降追加で求めたデータはどのようなもので何がネックになっていたのか、可能な範囲で教えてください。担当者今後また審査に付される部分が含まれる内容になりますので、回答はなかなか難しい。先ほど申し上げたとおり、前回の部会以降に追加されたデータでは、同等性/同質性としては確認できなかったので、それを補完するために承認を一度与えたうえで承認後にデータを取り直すことを承認条件としました。―「必要な承認事項一部変更承認申請(通称・一変)を行うとともに」との記述があるが、審議の結果では今後一変の必要性が高いと見込まれたのでしょうか?(筆者)担当者現時点ではデータが不足している事実があり、それを充足したうえで内容を審査するプロセスを経るので、既存の承認事項の中で変更が必要な部分は審査内で明らかになってくる。ただ、少なくとも本品は製造実績が限られ、使用期限の設定ができていません。この点は改めて製造実績を積んで、使用期限設定の根拠となるデータを提出のうえで変更申請をしなければならないので、少なくとも1ヵ所は一変が必要でしょう。―そもそも承認条件付き期限付き承認は迅速に患者に治療薬を提供すること、既に非常に時間かかってます。制度のメリットが生かされていないという指摘もあります。担当者申請から承認に至るまで約2年かかっている点は、迅速なアクセスに至っていないという批判があること、承認されたらすぐアクセスできるものでもないことはご指摘の通りです。しかし、品質をないがしろにしてよいかは別問題で、本品はその点はまだ改善しなければならない点があり、すぐに出荷は認められない背景事情があります。―3月の審議時点とデータ的には変化はないが、厚労省とPMDAの考え方が変わったということですか?担当者追加のデータはあり、それを評価したうえで今回ご審議いただいたので、3月時点から今回の審議品目のデータには差はあります。―3月の審議時点と具体的に何が変わって条件付き承認を認めたのでしょうか?担当者繰り返し申し上げたとおり、3月時点ではなかったデータが今回追加で提出されておりますので、それを含めて評価をした結果、条件付き承認かつさらにこちらが求めたデータの提出とそれに伴う一変申請による承認までは出荷してはならないという条件付き承認を与える対応が妥当、という判断をさせていただきました。―承認しないのと、今回のように一旦は承認して承認条件をつけて実際に出荷できないのは、どのような違いがあるのでしょうか?担当者いずれの場合でもデータ収集のタスクが課せられることは変わりありません。本品の場合、患者のもとに迅速に届ける目的を達成するためにどのような方策が取れるかについて、厚労省とPMDAともさまざまな方策を考えました。その結果、承認前に収集することと承認後に収集することを比べた際、承認後のほうがサンバイオ社の実行可能性が高いと判断し、今回の措置を取りました。―追加データで同等性/同質性を確認できないものの、3月時点よりは科学的に同等性/同質性の確認により近づいたという判断だったのでしょうか?(筆者)担当者結論だけを見れば、同等性/同質性の確認ができない点は変わりませんが、追加データを評価した結果、一定の評価をできるという点が違いとしてあり、同等性の確認のレベルにより近づいたかと言えば微妙ながら近づいた、とご理解をいただければと思います。―承認後にデータ提出を求めたほうがよいという判断根拠はなんでしょうか?(筆者)担当者先ほどから繰り返し申し上げているとおりなんですが、この件はサンバイオ社が主語となりますので、具体的な内容については主体のサンバイオ社にご確認をお願いします。―承認後のほうがデータ収集しやすいというのはサンバイオ社が申し出たのでしょうか?(筆者)担当者さまざまなオプションを検討する中で、承認後のほうがデータを集めやすいということを議論の中で行政側とも合意をしました。記者レクの中で担当者も「異例」の言葉を使っていたが、今まで何か特殊な条件で承認された薬としたら、私の中で浮かぶのは本連載でも取り上げた抗インフルエンザ薬のファビピラビル(商品名:アビガン)くらいだ。とはいえ、アビガンのケースは催奇形性を警戒して通常出荷としなかっただけで、今回のように「承認されたけど、今の時点ではいかなる手段でも使えない」状況とは違う。この記事出稿後、同社はプレスリリースで、今後2回程度の市販品製造を行い、同等性/同質性を確認すること、出荷可能時期は2026年1月期第1四半期を想定している旨を公表した。今後、SB623ことアクーゴはどうなるのだろうか?

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CAR-T細胞療法、CD7陽性造血器腫瘍のハプロ一致HSCTの橋渡しに有望/NEJM

 再発・難治性の造血器腫瘍患者の治療において、ハプロタイプ一致の同種造血幹細胞移植(HSCT)への橋渡しとしてのキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は、安全かつ有効で寛解を達成し、有害事象は重篤だが可逆的であり、従来の同種HSCTが適応とならないCD7陽性腫瘍の患者に対して実行可能な治療法となる可能性があることが、中国・浙江大学医学院のYongxian Hu氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年4月25日号に掲載された。中国の新たな一体型治療戦略を評価する症例集積研究 本研究は、再発・難治性のCD7陽性白血病またはリンパ腫の患者を対象に、CD7 CAR-T細胞療法とハプロタイプが一致したHSCTを逐次的に施行する、新たな一体型(all-in-one)の治療戦略の評価を目的とする症例集積研究である(中国国家自然科学基金委員会[NSFC]などの助成を受けた)。 CAR-T細胞療法により、血液学的回復が不完全な完全寛解となった患者に対し、薬剤による骨髄破壊や移植片対宿主病(GVHD)の予防薬を投与せずに、ハプロタイプ一致HSCTを実施した。CAR-T細胞療法後全例で汎血球減少、HSCT後3例でGVHD 10例(急性骨髄性白血病7例、T細胞性急性リンパ芽球性白血病2例、T細胞性リンパ芽球性リンパ腫[IV A期]1例)を登録した。登録時の年齢中央値は56.5歳(範囲:13.7~72.5)、女性が6例(60%)で、前治療コース数中央値は9.5(範囲:4~15)であった。 CAR-T細胞療法後に10例すべてが、血液学的回復が不完全な完全寛解となった。サイトカイン放出症候群が9例(Grade1:5例、Grade2:4例)で発生したが、いずれも抑制に成功した。全例にGrade4の汎血球減少を認めた。 ハプロタイプ一致HSCT後13日目に、1例がStaphylococcus haemolyticus感染による敗血症性ショックと、ヒトヘルペスウイルス6感染による脳炎により死亡した。8例で完全ドナーキメリズムがみられ、1例で自己造血回復が得られた。また、3例でGrade2のHSCT関連急性GVHDが発生した。60%が微小残存病変陰性の完全寛解を維持 CAR-T細胞療法後の追跡期間中央値は15.1ヵ月(範囲:3.1~24.0)であった。データカットオフ日の時点で6例(60%)が微小残存病変陰性の完全寛解を維持し、2例はCD7陰性白血病を再発した。 1年全生存率の推定値は68%(95%信頼区間[CI]:43~100)であり、1年無病生存率の推定値は54%(29~100)だった。 著者は、「この統合的な治療戦略は、CAR-T細胞と移植片対白血病の可能性の両面から抗白血病効果を最大化し、従来の同種HSCTが不適応の再発・難治性CD7陽性腫瘍の患者に対して実行可能な治療法を提供するものである」としている。現在、より大規模なコホートにおいて、CD7 CAR-T細胞療法とハプロタイプ一致HSCTを逐次的に施行する第I相試験が進行中だという。

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