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11001.

医師の学ぶ意欲、パフォーマンス向上を刺激するのはどんな評価か?

臨床パフォーマンスの評価は重要だが、難しいテーマとされる。これまでは、評価はいわずもがなで標準化しにくい、徒弟制度モデルのような主観的な判断に基づいていた。しかし近年は、コンピテンスやパフォーマンスを評価する新しいシステムによる卒後教育が構築され、ワーク・プレイス・アセスメントも、その一つとされる。では、日々の臨床パフォーマンスを評価するのに用いられるワーク・プレイス・アセスメントが、卒後教育やパフォーマンスにどれほど影響しているのか。イギリス・ペニンシュラ医科歯科大学/プリマス大学のAlice Miller氏らがエビデンスを得るため、システマティックレビューを行った。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月24日号)掲載より。ワーク・プレイス・アセスメントの効果を検討した研究をシステマティックレビュー主要なデータソースは、雑誌データベース(Ovid、Medline、Embase、CINAHL、PsycINFO、ERIC)を用い行われた。また、エビデンス・レビューは、Bandolier、Cochrane Library、DARE、HTA Database、NHS EEDおよびHealth Information Resourcesのウェブサイトを活用し行われた。関連研究の参照リストとレビュー記事の文献も当たり、ワーク・プレイス・アセスメントの教育的効果、または医師のパフォーマンスに与えた効果の評価を試みた研究のいずれもが対象に含まれた。対象集団が非メディカルまたは医学生よって行われた研究は除外され、論評記事、解説、レターも同様に除外された。最終的に、実際の臨床経験ではなく模擬患者やモデル利用の研究も除外基準に含まれた。結果、16件の研究が選定された。15件は、非比較の記述・観察研究で、残りは無作為化試験だった。研究の質は混合された。マルチソース・フィードバックがパフォーマンス改善に結びつく8件の研究が、マルチソース・フィードバック(多面的評価)を検討しており、大半の医師が、マルチソース・フィードバックは教育的価値はあるが、実践を変えるほどのエビデンスはないと感じていた。ただし一部のジュニアドクターおよび外科医に、マルチソース・フィードバックに応じて変化することを喜んで受け入れる意思を示す者がいた。家庭医は、より変化に意欲的である可能性が示された。パフォーマンスへの変化が起きやすかったのは、フィードバックが正確で信頼できるものだったり、また自分たちの強みあるいは弱点を特定するのに役立つ指導がもたらされるものである時にみられた。4件の研究は、ミニ臨床評価エクササイズを検討したもので、1件の研究は、技術手順を直接観察したものであり、3件の研究は、手順を多面的に評価したものだった。そして4件とも、ワーク・プレイス・アセスメント・ツールの教育的影響をポジティブに報告していたが、これらのツールによりパフォーマンスが改善されたかを観察したものはなかった。Miller氏は、「パフォーマンス評価の手法としてワーク・プレイス・アセスメントの重要性が強調はされていても、医師の教育やパフォーマンスに与える影響を調査している論文はほとんどない」と述べたうえで、「今回のレビューで、マルチソース・フィードバックは、フィードバックの詳細、内容、促進を促す内容が盛り込まれているかで、パフォーマンス改善に重大な効果があることが明らかになった。それ以外のワーク・プレイス・アセスメント・ツール(ミニ臨床評価エクササイズなど)は、教育に与える影響があることを主観的に報告はしていたが、パフォーマンス改善に結びつくエビデンスは認められなかった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

11002.

新規抗がん剤cabazitaxel、進行性前立腺がん患者の全生存率を延長

ドセタキセル(商品名:タキソテール)ベースの治療後も病勢が進行した、転移性ホルモン治療抵抗性前立腺がん患者に対し、cabazitaxel+プレドニゾン併用療法が、ミトキサントロン(商品名:ノバントロン)+プレドニゾン併用療法に比べ、有意に全生存率を改善したことが、オープンラベル無作為化第III相試験「TROPIC」の結果、報告された。イギリス・王立マースデンNHSトラストがん研究所のJohann Sebastian de Bono氏らによる。cabazitaxelは、ドセタキセル治療後も病勢が進行した症例で抗腫瘍活性が認められた、タキサン系の新規開発薬である。Lancet誌2010年10月2日号掲載より。経口プレドニゾン+cabazitaxel群または+ミトキサントロン群に無作為化試験は、ドセタキセル治療後も病勢が進行した転移性ホルモン治療抵抗性前立腺がん患者における、cabazitaxel+プレドニゾン併用療法とミトキサントロン+プレドニゾン併用療法との、有効性および安全性を比較検討することを目的に行われた。26ヵ国146施設から登録された被験者755例は全員、経口プレドニゾン10mg/日を投与されるとともに、無作為に3週ごとに、cabazitaxel 25 mg/m2を静注(1時間かけて)投与される群(378例)かミトキサントロン12mg/m2を静注(15~30分かけて)投与される群(377例)に割り付けられた。無作為割付はコンピュータで行われ、患者と治療者は割り付け治療をマスキングされなかったが、解析を行った試験チームに対してはデータがマスキングされた。主要エンドポイントは全生存率、副次エンドポイントは無増悪生存期間と安全性で、intention-to-treat解析にて検討が行われた。cabazitaxel群の死亡リスク、ミトキサントロン群に比べ30%低下解析データ受付が締め切られた2009年9月25日時点で、生存期間の中央値は、cabazitaxel群が15.1ヵ月(95%信頼区間:14.1~16.3)、ミトキサントロン群が12.7ヵ月(同:11.6~13.7)で、cabazitaxel群の死亡リスクはミトキサントロン群に比べ30%低下した(ハザード比:0.70、95%信頼区間:0.59~0.83、p<0.0001)。無増悪生存期間の中央値は、cabazitaxel群が2.8ヵ月(同:2.4~3.0)、ミトキサントロン群が1.4ヵ月(同:1.4~1.7)だった(ミトキサントロン群のcabazitaxel群に対するハザード比:0.74、0.64~0.86、p<0.0001)。最も一般的にみられたグレード3以上の有意な臨床有害事象は、好中球減少[cabazitaxel群303例(82%)vsミトキサントロン群215例(58%)]、下痢[同:23例(6%)vs1例(1%)]で、発熱性好中球減少はcabazitaxel群では28例(8%)、ミトキサントロン群では5例(1%未満)だった。試験グループは、「cabazitaxel+プレドニゾン併用療法は、ドセタキセル治療後も病勢が進行した転移性ホルモン治療抵抗性前立腺がん患者に対し、臨床的に有力な抗腫瘍活性を有し全生存率を改善した」と結論している。

11003.

CA125濃度上昇を指標とした再発卵巣がんへの早期治療介入にベネフィット認められず

CA125濃度上昇を指標とした再発卵巣がんへの早期治療介入に、生存期間延長の効果は認められなかったことが、イギリス・マウントバーノンがんセンターのGordon J S Rustin氏らMRC OV05/EORTC 55955共同研究グループによる無作為化対照試験の結果、報告された。卵巣がんでは再発症状が認められる数ヵ月前に、CA125濃度の上昇がよくみられることから、研究グループは、これを指標とした早期治療介入が、再発症状の発現を基点に治療を開始することよりも有益であることを立証することを目的に試験を行った。Lancet誌2010年10月2日号掲載より。CA125濃度が標準値2倍超時点で被験者を早期治療群か治療遅延群に無作為化試験には、プラチナ製剤ベースのファーストライン治療後に完全寛解が認められ、CA125濃度が標準値だった女性1,442例が登録された。登録後、3ヵ月ごとに臨床検査とCA125測定が行われ、測定値が被験者および試験研究者にはマスキングされる一方、コーディングセンターでモニタリングされ、CA125濃度が標準値の2倍超となった場合、被験者は早期に化学療法を受ける群か症状発現まで遅延し化学療法を受ける群かに1対1の割合で無作為に割り付けられた。患者と試験協力施設には、早期に化学療法を受ける場合は知らせがあり、CA125濃度2倍超上昇が認められてから28日以内に治療が開始された。なお被験者は全員、標準治療を受けた。主要エンドポイントは全生存率で、intention-to-treat解析にて検討が行われた。治療を遅延した群の方が生存期間長期に無作為化されたのは529例(早期治療群265例、治療遅延群264例)、無作為化後の追跡期間中央値は56.9ヵ月(IQR:37.4~81.8)だった。その間の死亡は370例で、内訳は早期治療群186例、治療遅延群184例で、全生存率について両群間に差異があることは立証されなかった(ハザード比:0.98、95%信頼区間:0.80~1.20、P=0.85)。無作為化後の生存期間の中央値は、早期治療群が25.7ヵ月(95%信頼区間:23.0~27.9)、治療遅延群は27.1ヵ月(同:22.8~30.9)だった。

11004.

ハイリスク神経芽腫、標準療法への免疫療法追加が転帰を有意に改善

15歳未満の小児がん死亡の12%を占める神経芽腫は、標準治療が10年以上前に確立されているが、患児の半数以上を占めるハイリスク神経芽腫は、大量化学療法・集学的治療を行っても、再発から転帰へと至り長期生存に乏しい。そうしたハイリスク神経芽腫患児に対し、新たに開発されたch14.18の免疫療法を追加することで、転帰が有意に改善されたことが、カリフォルニア大学のAlice L.Yu氏らの研究グループにより報告された。NEJM誌2010年9月30日号掲載より。標準治療に免疫療法を追加ch14.18は、腫瘍細胞表面に発現するジシアロガングリオシドGD2を標的とするモノクローナル抗体で、これまでの前臨床・予備的臨床データから、神経芽腫に対する活性があること、特に顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)あるいはインターロイキン(IL)-2との併用で活性が高まることが示されている。Yu氏らは、大量化学療法・集学的治療後のハイリスク神経芽腫患児に対し、標準治療(isotretinoin療法)に加えて、新たに開発されたch14.18とGM-CSF、インターロイキン-2の治療を追加することで、転帰が改善するかどうかを評価する試験を行った。適格患者226例を、標準治療(isotretinoin療法6サイクル)または免疫療法(isotretinoin療法6サイクル+ch14.18に加えてGM-CSFまたはインターロイキン-2の併用を交互に5サイクル)を受ける群に1対1の比率で無作為に割り付け、両群のイベントなし生存率と全生存率をintention-to-treat解析にて比較した。2年後のイベントなし生存率、全生存率とも有意に改善免疫療法群では、グレード3、4、5の疼痛が合計52%の患者に認められ、23%の患者に毛細血管漏出症候群が、25%に過敏反応が認められた。有効性に基づく試験早期中止の基準は、予想されたイベント数の61%が観察された時点で満たされ、追跡期間中央値は、2.1年だった。2年時点での、イベントなし生存率(66±5%対46±5%、P=0.01)、全生存率(86±4%対75±5%、中間解析未補正のP=0.02)とも、免疫療法が標準治療より優れていた。これらの試験結果から研究グループは、ハイリスク神経芽腫患児に対する、ch14.18とGM-CSF、インターロイキン-2を併用した免疫療法は、標準治療と比較してアウトカムの有意な改善と関連していたと結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

11005.

来春の花粉飛散量は今年より5倍の見込み!?

株式会社ウェザーニューズは5日、2011年の花粉シーズンにおける全国および、各12 エリアの“スギ・ヒノキ花粉”傾向を発表した。発表によれば、2011年の花粉飛散量は、全国的に2010年よりも多く、全国平均では2010年の約5倍の飛散量となる見込みだという。過去の2005年にスギ花粉の大量飛散となったが、2011年はその時と同等かそれ以上に飛散する可能性があるとのこと。また、スギ花粉症患者の多くがヒノキ花粉にも反応することが知られていて、ヒノキ花粉の飛散数は、スギ花粉の飛散数と傾向が似ているため、2011年はヒノキ花粉の飛散量も多くなると予想される。2月以降は徐々に花粉飛散数が増えるので、早めに事前対策をしっかりと進めておくと良さそうだとのこと。詳細はプレスリリースへ http://weathernews.com/ja/nc/press/2010/101005.html

11006.

ハイリスク非ST部上昇急性冠症候群患者への未分画ヘパリン低用量投与の安全性:FUTURA/OASIS-8

フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)治療を受け、72時間以内に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けるハイリスク非ST部上昇型急性冠症候群(ACS)患者に対し、未分画ヘパリンを低用量投与しても、標準用量の場合と比べ、出血や穿刺部合併症リスクは減少しないことが、「FUTURA/OASIS-8」試験の結果、報告された。JAMA誌2010年9月22/29日号(オンライン版2010年8月31日号)で発表された。未分画ヘパリン投与、低用量群50U/kg vs 標準用量群85U/kgFUTURA(Fondaparinux Trial With Unfractionated Heprin During Revascularization in Acute Coronary Syndromes)/OASIS-8試験は、2009年2月~2010年3月にかけて、18ヵ国、179の医療機関を通じ、2,026人を対象に行われた。被験者は、フォンダパリヌクス投与を受けた、ハイリスク非ST部上昇型ACS患者で、72時間以内にPCIを受けた。被験者は無作為に二群に分けられ、一方の群には未分画低用量ヘパリン50U/kgを、GP IIb/IIIa受容体阻害薬投与の有無は問わずに投与した。もう一方の群には、未分画標準用量ヘパリン85U/kg(または60U/kgとGP IIb/IIIa受容体阻害薬)を投与し、ACT(活性化凝固時間)により補正を行った。主要アウトカムは、PCI後48時間の重大出血と小出血、血管穿刺部の主な合併症の統合イベントだった。副次アウトカムには、PCI後48時間の重大出血、死亡、心筋梗塞、30日以内の目標血管の血管再生術の統合イベントなどを含んだ。PCI後48時間までの出血や穿刺部合併症発生率に両群で有意差なし結果、主要アウトカムの発生率は低用量群が4.7%、標準用量群が5.8%で、両群に有意差は認められなかった(p=0.27)。出血に関して、重大出血には有意差は認められなかったものの、小出血は、標準用量群1.7%に対し、低用量群0.7%と低率だった(オッズ比:0.40、95%信頼区間:0.16~0.97、p=0.04)。また副次アウトカムの発生は、低用量群5.8%、標準用量群3.9%だった(オッズ比:1.51、同:1.00~2.28、p=0.05)。死亡・心筋梗塞・30日以内の目標血管の血管再生術の統合イベント発生も、低用量群4.5%、標準用量群2.9%であった(p=0.06)。カテーテル性血栓の発生は、両群とも低率だった(低用量群0.5%、標準用量群0.1%、p=0.15)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

11007.

講師 斎藤充先生の答え

ビスフォスフォネートの耐性獲得についてこの度は突然の御質問、恐縮です。骨塩定量でYAMの80%ぎりぎりで、現状はまだ椎体骨折の所見もなく、ただ、家族歴で円背のひどい母を持つ、60歳前後の女性に対してのビスフォスフォネート投与の是非についてご教授頂ければと存じます。現在は家族歴をそれ程重視する事無く、YAMと圧迫骨折像が全ての様にされていますが、種々の患者さんを診ていると、やはり背中の曲がった母を持つ女性は徐々に円背が出現するように感じています。その様な患者さんの場合、ビスフォスフォネートを処方して円背の予防に努めるべきか(円背によるADL低下、逆流性食道炎、将来の誤嚥の増加など、円背も頚部骨折と同じ位大事な病態と思っております)、円背が出現してからの治療介入とすべきか、またはカルシウム製剤+Vit.K製剤でお茶を濁すか、悩ましく思っておりました。最近、ビスフォスフォネート製剤の耐性が数年で出る、とのデータもあり、余計に予防的介入は悩ましいところです。とりとめのない御質問で申し訳御座いません、よろしくお願い致します。家族歴は重要です.ビスフォスフォネート剤の耐性が数年で出るというのは,骨密度の上昇は数年で頭打ちになるということかと思いますが,骨折防止効果は,例えBMD上昇が頭打ちとなっても継続されます.投与中止により,時間依存性に骨リモデリングは亢進し,骨折リスクが上昇します.骨吸収マーカーの高値は,将来の骨密度低下,骨折リスク上昇の危険因子ですので,この患者さんの吸収マーカーの高値があれば,BP剤でも良いと思います.しかし,椎体骨折防止効果は,ラロキシフェンにもエビデンスがありますので,椎体骨折の防止をエンドポイントに考えるのであればラロキシフェンでも良いと思います. 透析患者にも当てはまるでしょうか腎性骨異栄養症を有する透析患者にも骨質マーカーの概念は当てはまるでしょうか。 当てはまります.CKD stageが上がるほど,酸化ストレスが上昇し,AGEs(Advanced glycation end products)の産生が亢進します.ホモシステインも上昇します.骨折リスクとリンクします.ストレス骨折と骨質マーカー骨質マーカー、はじめて知りました。素晴しい記事ありがとうございます。骨粗鬆症の治療といえば、ビスフォスフォネート系が有効と思っていたら、最近、逆に骨折がおきることもある(ストレス骨折?)とききました。骨質マーカーから、ビスフォスフォネートを投与したほうがメリット大の場合と、投与しない方がよい場合、といった判断はできるのでしょうか?この点は,十分なエビデンスはありませんが,我々の経験した症例では,治療開始時の骨質マーカーが高値でした.もともと骨質劣化が強い方は,BP剤による代謝抑制により,古いコラーゲンが蓄積が上乗せされて骨が脆弱になる可能性はロジカルにはあり得ると思います.健診で骨密度がひっかかった場合次にスクリーニングする場合、骨吸収マーカー、形成マーカー、ホモシステイン、ペントシジンは必須項目でしょうか?ホモシステイン、ペントシジンの基準値の目安はありますでしょうか?骨質改善で効果のある種々の薬のランク付けはどうなっていますか?よろしくお願いします。骨折リスクとしての値の目安ですが,ホモシステイン>15(高ホモシステイン血症などの病名でしか保険適応ありません).血中ペントシジン>0.05(腎機能低下の病名でしか保険適応がありません)です.骨質劣化(骨コラーゲンのAGEs悪玉架橋ペントシジン増加型)には,抗酸化作用,ホモシステイン低下作用のあるラロキシフェンなどが良い適応です.また,PTH製剤テリパラチドは,骨量,骨質を同時に改善する薬剤です.これらは,2010年のOsteoporosis Internationalに2つの論文で報告してます.慢性腎不全での骨質マーカーについて血液透析患者での骨粗鬆症はよく知られた事実で骨密度については多くの報告があります。しかし、骨質マーカーについて余りなく先生の言われるトータルでの骨評価をしたく考えています。ホモシステインやペントシジンの濃度測定のみで評価できるのでしょうか。また、全く別の話題として副甲状腺ホルモンのない環境下(副甲状腺摘出後)での骨生成に関して(骨生検では明らかにされている)その機序を考える上で何かsuggestionがあればご教授下さい。当てはまります.CKD stageが上がるほど,酸化ストレスが上昇し,AGEs(Advanced glycation end products)の産生が亢進します.ホモシステインも上昇します.骨折リスクとリンクすることは良くご存知かと思います.腎不全症例(2PTH),CKD stage2~4までのヒト骨生検の結果では,腎機能低下の程度に依存して,骨質劣化(酵素依存性の善玉架橋の低下,AGEs架橋の過形成)が生じていました.(論文revise中)PTHの高低に関わらず骨コラーゲン中のAGEs架橋の過形成は共通した所見です.これは,代謝回転に関係なく,生まれたばかりのコラーゲンでも,高酸化ストレス,高カルボニルストレス環境にさらされて,あっという間にAGEs化が起こると考えられます.骨の評価したが、治療で薬が多すぎ骨代謝に興味もっていますが、マーカーや薬が臨床で使えるようになって、逆にこまっています。3つの型に分けるのはいいとしても、骨粗鬆の薬物が多すぎで3-5種類ものませなければいけない場合があり、骨折予防として大量の薬が必要なのか、疑問です。ターゲットをしぼった治療はできないでしょうか。骨折が予知される患者群、効果が確信できる群は明確にわかるのでしょうか。 ビスフォスフォネートであれ,ラロキシフェンであれ,ひとまず1年投与すれば,骨折防止効果は,単剤でも50%発現します.めんどうであれば,これらのみの投与を先ず行って頂ければ良いと思います.その後,患者さん毎に,骨密度が増えても新規骨折をおこすなど,多様な患者集団に対応することを考えていくのが良いと個人的には思っています.英語論文の作成ノウハウについて世界に通じる成果を挙げていらっしゃるのに、海外留学のご経験がないことに驚きました。私も海外留学の経験はなく、英語も苦手です。しかし上を目指す以上は英語論文を書く必要があり困っています。先生も最初はご苦労されたと思いますが、その中で得たノウハウというかTipsのようなものがあれば是非参考にさせて欲しいです。会話の英語と,論文英語は異なります.英語論文を読んでいると同じような言い回しがたくさん出ているのに気が付かれると思います.自分で2-3本英文を書くと,そのパターンが見えてきます.そうなると,しめたもので,相手の質問の内容さえ聞き取れれば,英語論文で出てくるような言い回しで,答えていけます.海外の研究者は例えたどたどしい英語でも,そんなことは気にしません.ヒアリングを鍛えることが大事です.慈恵大での研修について慈恵に在学中の学生です。スポーツ・ウェルネスクリニックに興味があり、そこで整形外科医としてやっていきたいと考えているところです。差し支えなければ、斎藤先生が感じる、慈恵の整形外科の良いところ悪いところ、これから改善していかないといけないと思ってらっしゃることを教えていただけないでしょうか?話すと長くなるので,いつでも,私のラボに訪ねてきて下さい,いつでもお話します.超きさくですので,遠慮無くどうぞ.私なりに考える慈恵整形のあるべき姿を,先生のようなパッションのある若手と造り上げたいと思っていますので,おいで下さい,勧誘ではありません.整形外科に限らず全科に共通して言えることですので,語り合いましょう.学外からの選択実習について記事と関係ない質問で申し訳ないのですが、慈恵さんのホームページに「夏休みなどを利用して、選択実習期間外で数日間の実習や一日だけの見学を行うのも大歓迎」とあります。具体的にどのような実習を行えるのでしょうか?またはこれまでどのような実習を行ってきたのでしょうか?数日という短い期間でどのようなことを経験できのか大変興味があります。宜しくお願いします。外来,病棟,手術の助手など,実地の病院臨床に短期間でも濃密に経験してもらいます.またスポーツ整形外科を希望されるかたは,スポーツウェルネスクリニックを中心に回ることもできます.ご本人の希望を重視して,決めることにしています.超アットホームですので,是非,ホームページにある医局長,鈴木先生,もしくは私に連絡下さい.詳しく説明します.1日の見学の学生さんもいますし,数日の方も多くいらっしゃいます.AGEs蓄積による骨質低下に関してはじめまして。AGEsの生成抑制(抗糖化)に関心がある外科医師です。先生は以前、ためしてガッテンやたけしの家庭の医学で、ペントシジンによるコラーゲンの悪玉架橋をご紹介になられました。ペントシジンの測定は血液を用いて行われていると存じますが、蛍光性を有する物質ですので、皮膚のAGEsを紫外線励起によって測定するAGE Readerという機器で皮膚AGEsを測定した場合にも、その値が高値を呈する場合は「骨質劣化」のリスクが高いと考えてよろしいでしょうか?よろしくご教授下さい。すでに整形外科手術症例,150名から,皮膚,骨,靭帯,血液,尿を手術時に同時に採取し,ペントシジン測定とSkin AGEsリーダーによる測定を行い,生体内の相関性を学会報告し,論文作成しています.詳しいデータはお話できませんが,先生のおっしゃる通りと思います. 総括多くのご質問を頂きありがとうございます.これまで,長い研究生活で質問を無数に受けてきました.質問は私を育ててくれました.「私のプレゼンでは,これも伝えられていなかったのか...」と反省し,次回のプレゼンには改善するようにしています.このため私の講演などは,同じスライドをいつもだらだら話すことはしません.講師 斎藤充先生「骨粗鬆症治療「50%の壁」を打破する「骨質マーカー」」

11008.

抗精神病薬は静脈血栓塞栓症リスクを増大

抗精神病薬の中には静脈血栓塞栓症リスクを高めるものがあることが知られているが、新しいタイプの非定型抗精神病薬についてのリスクは明らかになっていない。イギリス・ハックネル医療センターのChris Parker氏らの研究グループが、大規模なプライマリ・ケア集団ベースで、抗精神病薬と静脈血栓塞栓症リスク増加との関連を評価するとともに、抗精神病薬の種類、効力、投与量との関連を調査した結果、リスク関連が認められ、リスク増加は、新規服薬者、非定型抗精神病薬服用者で特徴的だったと報告した。BMJ誌2010年9月25日(オンライン版2010年9月21日号)掲載より。2万5,532例を対象に症例対照研究を実施Parker氏らは、イギリスの「UK QResearch primary care database」を利用し、抗精神病薬と静脈血栓塞栓症との関連について、ネステッド・ケースコントロール研究を行った。対象となったのは、1996年1月1日~2007年7月1日に初発の静脈血栓塞栓症の記録があった患者(症例群)で、年齢、病歴、性、治療内容により1:4でマッチングを図った対照群とで検討した。症例群の適格症例は2万5,532例(深部静脈血栓症15,975例、肺動脈塞栓症9,557例)、対照群はスタディ母集団726万7,673例から8万9,491例が同定された。主要評価項目は、共存症(併用薬に伴う症状)補正後の、抗精神病薬の静脈血栓塞栓症に対するオッズ比とした。3ヵ月以内新規服薬者のリスクは約2倍に試験前24ヵ月以内に抗精神病薬を処方された人は、可能性があるリスク因子補正にもかかわらず、静脈血栓塞栓症のリスクが非服用者より32%高かった(オッズ比:1.32、95%信頼区間:1.23~1.42)。また、試験前3ヵ月に新たに処方された患者は、リスクが約2倍だった(同:1.97、1.66~2.33)。薬剤の種類別にみた結果は、非定型タイプのリスクが、従来タイプよりも、より大きかった。非定型タイプの補正オッズ比は1.73(95%信頼区間:1.37~2.17)、従来タイプは同1.28(1.18~1.38)だった。効力の違いでは、低いタイプの方が、強いタイプのものよりもリスクが大きい傾向が認められた。オッズ比は、低いタイプが1.99(1.52~2.62)、高いタイプが1.28(1.18~1.38)だった。1年以上治療を続けた患者1万例につき静脈血栓塞栓症の余剰症例数は全年齢を通して4例(95%信頼区間:3~5)、65歳以上で10例(7~13)と推定された。これらの結果から研究グループは、「抗精神病薬服用と静脈血栓塞栓症リスクとの関連が大規模なプライマリ・ケア集団で確認できた。また、リスク増加は『新規服薬者』『非定型抗精神病薬を処方された患者』で特徴づけられた」と結論している。

11009.

外科治療にも地域格差:WHO調査

世界の手術室の数は地域によって大きな差があり、手術室の約2割に、外科治療の医療資源の指標であるパルス酸素濃度計が装備されていないことが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院のLuke M Funk氏らが行ったWHOの調査で明らかとなった。外科治療を要する疾患は疾病負担の多くを占め、低く見積もっても世界全体の障害調整生存年(disability-adjusted life years)の11%が手術の対象となる疾患に帰せられるという。しかし、外科治療の供給を保証する医療資源は、特に低所得国で不十分なのが現状である。Lancet誌2010年9月25日号(オンライン版2010年7月1日号)掲載の報告。WHO加盟国の手術室数、選択された72ヵ国のパルス酸素濃度計数を推算研究グループは手術室の世界的な分布を推定し、必需の術中モニタリング装置であり手術室の医療資源の指標と考えられるパルス酸素濃度計の供給量を調査した。WHOの「safe surgery saves lives initiative」に参加する92ヵ国769施設のデータに基づき、世界7地域の病院ベッド数に対する手術室数の割合を算出した。世界21地域における10万人当たりの手術室数を、WHO加盟190ヵ国の病院ベッド数から推算した。パルス酸素濃度計の供給状況は、地理的、人口統計学的に多様なサンプルを確保するために72ヵ国を選択し、各国の麻酔医334名に調査票を送付して調べた。データのない国のパルス酸素濃度計の必要量は予測回帰モデルで推算した。格差是正には公衆衛生学的戦略および監視体制の改善が必要10万人当たりの推定手術室数は、アフリカのサハラ砂漠以南の西部地域の1.0(95%信頼区間:0.9~1.2)から東欧の25.1(同:20.9~30.1)まで大きな差がみられた。高所得地域全体の推定手術室数の平均が10万人当たり14以上であったのに対し、低所得地域(人口22億人)では2に満たなかった。54ヵ国172名の麻酔科医から得られたパルス酸素濃度計のデータからは、世界で7万7,700(95%信頼区間:6万3,195~9万5,533)の手術室[19.2%(同:15.2~23.9)]にパルス酸素濃度計が装備されていないと推定された。著者は、「十分な外科治療を受けられない20億人以上の人々が置かれている格差を是正するには、公衆衛生学的戦略および監視体制の改善が必要とされる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)、全死因死亡率が有意に減少

大動脈弁置換術が適応とされない、重度大動脈弁狭窄症および合併症を有する患者に対する、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の、従来標準治療との転帰を比較した多施設共同無作為化比較試験「PARTNER」の結果、TAVI群の方が重大な脳卒中、重大な血管イベントの高率の発生にもかかわらず、全死因死亡率、複合エンドポイント(全死因死亡率・再入院率)が有意に低かったことが、NEJMオンライン版2010年9月22日号で発表された。報告は、米国コロンビア大学メディカルセンターのMartin B. Leon氏らによる。TAVIは、2002年に第1例が行われて以降、ハイリスクの大動脈弁狭窄症患者に対し、低侵襲医療をもたらす治療として注目されている。358例の重度大動脈弁狭窄症患者をTAVI群か標準治療群に無作為化TAVIで用いられるデバイスは、ウシ心嚢膜弁とバルーン拡張可能なステンレスフレームから成るデバイス「Edwards SAPIEN heart-valve system」。PARTNER(Placement of Aortic Transcatheter Valves)試験は、21施設(うち米国17施設)から358例の、手術不適応とみなされた重度大動脈弁狭窄症患者を登録し行われ、TAVI群(179例)もしくは標準治療(バルーン大動脈弁形成術を含む)群(179例)に無作為化し、全死因死亡率を主要エンドポイントに追跡された。1年時点の全死因死亡率のTAVI群ハザード比は0.55結果、1年時点の全死因死亡率(Kaplan-Meier解析による)は、TAVI群が30.7%、標準治療群50.7%で、TAVI群のハザード比は0.55(95%信頼区間:0.40~0.74、P<0.001)だった。複合エンドポイント(全死因死亡率・再入院率)の発生は、TAVI群が42.5%、標準治療群71.6%で、同ハザード比は0.46(同:0.35~0.59、P<0.001)だった。1年時点の生存者で、心症状(NYHA分類IIIまたはIV)を呈した患者の割合は、標準治療群に比べてTAVI群で有意に低かった(25.2%対58.0%、P<0.001)。一方30日時点で、TAVI群の方が標準治療群に比べて、重大脳卒中(5.0%対1.1%、P=0.06)、重大血管イベント(16.2%対1.1%、P<0.001)について高率の発生が認められた。なお1年時点までTAVI群において生体弁機能(心エコーで狭窄症または弁閉鎖不全を評価)悪化は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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外来で心血管イベントハイリスク患者を見抜くには?:REACH試験

外来で様々な初期徴候を示す安定したアテローム血栓症患者のうち、心血管イベント発生リスクは、糖尿病があると約1.4倍、前年に虚血イベントがあった場合には約1.7倍に増大することが明らかにされた。多血管病(polyvascular disease)がある場合には、同リスクは約2倍になるという。米国VA Boston Healthcare SystemのDeepak L. Bhatt氏らが、臨床所見からハイリスク群を特定する簡便な方法について検討するため行った、約4万5,000人を4年間追跡した「Reduction of Atherothrombosis for Continued Health」(REACH)試験の結果、明らかにされたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。心血管イベント発生は5,481人REACHでは、2003~2004年にかけて、29ヵ国、3,647ヵ所の医療機関を通じて、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、アテローム血栓症の複数のリスク因子を持つ患者、合わせて4万5,227人について試験を開始し、2008年(最終データは2009年4月)まで4年にわたる追跡が行われた。主要評価項目は、心血管疾患死、心筋梗塞、脳卒中のいずれかだった。その結果、追跡期間中にいずれかのアウトカムに達した被験者は、5,481人だった。そのうち、心血管疾患死は2,315人、心筋梗塞は1,228人、脳卒中は1,898人で、40人は心筋梗塞と脳卒中を同日に発症した。心血管イベント発生ハザード、多血管病1.99、前年虚血イベント1.71、糖尿病1.44アテローム血栓症が認められた被験者のうち、同アウトカム発生リスクが最も高かったのは、試験開始時点で虚血イベントの既往歴があった人(2万1,890人)で、発生率は18.3%(95%信頼区間:17.4~19.1)だった。安定した冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患の人(1万5,264人)は同発生リスクがより低く、12.2%(同:11.4~12.9)だった。また、アテローム血栓症は認められずリスク因子のみを有する人(8,073人)は同発生リスクが最も低く、9.1%(同:8.3~9.9)だった(それぞれの比較に関するp

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60歳時のPSA値で、前立腺がん死亡・転移の生涯リスクが予測できる

60歳時の前立腺特異抗原(PSA)値から、転移と前立腺がん死の生涯リスクが予測できるとの報告が、米国Sloan-Kettering記念がんセンター(ニューヨーク)のAndrew J Vickers氏らにより発表された。また、その際のPSA値が中央値(≦1 ng/mL)以下の場合、前立腺がんが潜んでいる可能性はあるものの、生命を脅かすようなことはないとも述べ、「それら男性はさらなるスクリーニングは免除されるべきで、それよりもPSA値がより高い群に照準を合わせるべき」と結論づけている。PSAスクリーニングは、前立腺がんの早期発見のため広く行われるようになっているが、過剰診断を招いていることが無作為化試験で示されたり、70歳男性の40%近くが前立腺がんを有していると推定されており、研究グループは「前立腺がんの有無ではなく、症状を引き起こすのか生命を縮めるのかが重要」として、検査値とその後の臨床転帰との関連を調べた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。スクリーニングと化学的予防のリスク層別化が課題研究グループは、60歳時にPSAスクリーニングを受けその後はスクリーニングを受けていない集団で、PSA値とその後の前立腺がん臨床症状との関連を評価すること、スクリーニングと前立腺がんに対する化学的予防療法がリスク層別化をできたのかどうかを評価するため、ケースコントロール研究を行った。本研究は、一般集団をベースに症例1対対照3の割合でマッチングを図ったネステッドケースコントロール研究で、Malmo Preventive Projectに参加するスウェーデン人男性を対象とした。1981年の60歳時に血液サンプルを採取され、National Board of Health and Welfareにがん登録された1,167例で、85歳まで追跡された。主要評価項目は、転移または前立腺がんによる死亡とした。>2ng/mL群が前立腺がん死の90%を占める本研究期間中のスクリーニング実施率は低かった。転移は43例、前立腺がん死は35例だった。60歳時点のPSA濃度は、前立腺がん転移(曲線下面積0.86、95%信頼区間:0.79~0.92、P

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女性への教育の増加により、子どもの死亡率が改善

過去40年間に女性の教育期間が著しく増加し、多くの国では男性を凌駕しており、子どもの死亡率の低下に大きく寄与している可能性があることが、アメリカ・ワシントン大学(シアトル)のEmmanuela Gakidou氏らが行った系統的な解析で明らかとなった。教育は、経済発展において根本的な役割を担い、健康にも強い影響を及ぼすことが示されており、母親の教育レベルと子どもの死亡率の関連を強く示唆する報告もある。これまでに、一定期間の教育の影響を評価した研究はあるものの、低所得国において性別、年齢別に、経時的に行われた検討はないという。Lancet誌2010年9月18日号掲載の報告。子どもの死亡率の低下と、女性の教育の改善の関連を評価研究グループは、以前に実施した教育の影響に関する系統的な評価について最新データを用いて再検討を行い、過去40年間(1970~2009年)の子どもの死亡率の低下に対し、女性の教育の改善がどの程度貢献したかを推算した。175ヵ国から915の国勢調査および国が実施した調査を収集し、年齢別および性別の平均教育年数を算出した。first-differencesモデルを用いて、子どもの死亡率と女性の教育期間の関連を解析し、一人当たりの所得および血清HIV陽性率で調整した。さらに、1970~2009年における各国の子どもの死亡率の反事実的予測値(counterfactual estimate)を年ごとに算出した。女性への教育が実質的に増加、半数の国でジェンダー・ギャップが逆転1970年から2009年までに、平均教育年数は、男性(25歳以上)が4.7年(95%不確かさ区間:4.4~5.1年)から8.3年(同:8.0~8.6年)に、女性(25歳以上)は3.5年(同:3.2~3.9年)から7.1年(6.7~7.5年)に増大した。開発途上国の出産可能年齢(15~44歳)の女性の学校教育年数は、2.2年(同:2.0~2.4年)から7.2年(同:6.8~7.6年)に増加した。2009年までに、87ヵ国で男性(25~34歳)よりも女性(25~34歳)の方が、教育期間が長くなった。1970年から2009年までに、5歳未満の子どもの死亡数は820万人減少しており、このうち420万人(51.2%)は出産可能年齢女性の教育期間の増加による可能性が示された。著者は、「特に女性における教育の実質的な増加と、教育におけるジェンダー・ギャップの逆転が、健康のみならず女性の社会的地位や役割に対し重要な意義を持つことが示された」と結論し、「最貧国であっても、教育期間の持続的な増加によって『ミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)』の迅速な進展がもたらされる可能性が示唆される」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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重症ARDS患者への筋弛緩薬早期投与、90日生存率を改善

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で人工呼吸器を装着した患者に対する、新しい筋弛緩薬である神経筋遮断薬cisatracurium besylateの早期投与が、臨床転帰を改善したことが、フランスUniversite de la Mediterranee Aix-MarseilleのLaurent Papazian氏ら「ACURASYS」研究グループにより報告された。神経筋遮断薬投与は酸素化を改善し、人工呼吸器によって誘発された肺損傷を改善する可能性の一方、筋力低下を招く可能性が懸念されていたが、Papazian氏らによる多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果、筋力低下を招くことなく90日生存率が改善したことが認められたという。NEJM誌2010年9月16日号より。340例をプラセボ対照で無作為割り付け試験は、2006年3月~2008年3月にフランス国内20施設のICUに、48時間以内に収容された重症ARDS患者340例を、神経筋遮断薬cisatracurium besylate(178例)またはプラセボ(162例)のいずれかを、48時間にわたって投与するよう無作為に割り付けられた。重症ARDSの定義は、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)150未満、呼気終末陽圧5cmH2O以上、1回換気量6~8mL/kg予測体重とされた。主要評価項目は、退院前または試験登録後90日以内に死亡した患者の割合(90日院内死亡率)とした。あらかじめ定義された共変量とベースラインの群間差はCoxモデルを用いて補正された。90日生存率を改善、呼吸器を外す時間も増加プラセボ群との比較によるcisatracurium群の90日死亡のハザード比は、PaO2/FiO2・呼気プラトー圧・重症度スコア(Simplified Acute Physiology II score)をベースラインで補正後、0.68(95%信頼区間:0.48~0.98、P=0.04)だった。90日粗死亡率は、cisatracurium群が31.6%(95%信頼区間:25.2~38.8)、プラセボ群が40.7%(同:33.5~48.4)(P=0.08)。28日死亡率は、cisatracurium群23.7%(同:18.1~30.5)、プラセボ群33.3%(同:26.5~40.9)(P=0.05)だった。ICUでの後天性の不全麻痺の発生率は、2群間で有意差は認められなかった。これらの結果から研究グループは、重症ARDS患者への神経筋遮断薬による早期投与は、筋力低下を招くことなく、補正後90日生存率を改善し、人工呼吸器を外す時間が増したと結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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MCATスコアが低いほど、医師資格試験は初回不合格の確率大

米国で医学部を卒業しながら医師資格試験に初回受験で不合格である確率は、「MCAT(Medical College Admission Test)スコアが低い」「白人に比べ非白人の方が」「学費の借金が5万ドル以上ある」で、増大する傾向があるという。米国ワシントン大学のDorothy A. Andriole氏らが、医学部に入学した10万人弱について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月15日号で発表した。卒業生の88.7%が初回で医師試験に合格、成績理由で退学は入学生の1.2%Andriole氏らは、1994~1999年にかけて米国の医学部に入学した9万7,445人について、2009年3月まで、後ろ向きに追跡調査を行った。その結果、データが得られた8万4,018人(86.2%)のうち、医学部を卒業したのは、96.7%にあたる8万1,237人で、成績が理由で医学部を退学したのは1,049人(1.2%)、成績以外の理由による退学は1,732人(2.1%)だった。卒業生のうち、初回受験で米国医師資格試験(ステップ1・2)に合格したのは7万4,494人(88.7%)で、不合格は6,743人(8.0%)だった。MCATスコアが18~20だと、初回不合格の確率13倍、成績不振で退学の確率11倍米国医科大学入学のための共通テスト「MCAT」のスコアと、初回受験で米国医師資格試験に不合格となる補正後オッズ比についてみたところ、同スコアが18~20(被験者の2.9%)の群では、同スコア29超の群に比べ、補正後オッズ比は13.06(95%信頼区間:11.56~14.76)だった。また、同スコアが21~23(5.6%)の同オッズ比は7.52(同:6.79~8.33)、24~26(13.9%)の同オッズ比は4.27(同:3.92~4.65)だった。MCATスコアと、成績理由による退学との関係は、同スコアが18~20の群では、29超の群に比べ、補正後オッズ比が11.08であり、同スコアが21~23の同オッズ比は5.97、24~26の同オッズ比は3.56だった。人種別では、アジア・環太平洋人の、白人に対する初回受験で米国医師資格試験に不合格となる補正後オッズ比は2.15、成績理由による退学に関する補正後オッズ比は1.69だった。また医学部進学のための借金が5万ドル以上ある場合も、同補正後オッズ比はそれぞれ1.68、2.33と高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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葉物野菜を摂るほど2型糖尿病リスクは有意に低下

世界の糖尿病有病率は現在、6.4%と推定されており、なかでも新規2型糖尿病患者はこの20年間で激増しているという。糖尿病において食事は、重要かつ潜在的に修正可能なリスク因子とされ、これまで炭水化物や食物繊維の役割に関する研究はされてきたが、果物や野菜の摂取量と2型糖尿病発症率との因果関係は十分には解明されていなかった。そこで、英国レスター大学のPatrice Carter氏らの研究グループは、システマティックレビューとメタ解析を行い両者の因果関係について検討した。BMJ誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月19日号)より。果物、野菜、果物+野菜の摂取量と2型糖尿病の発症率Carter氏らは、Medline、Embase、CINAHL、British Nursing Index(BNI)、コクラン・ライブラリをデータソースとして、「糖尿病」「糖尿病前症(prediabetes)」「果物」「野菜」を用いて論文タイトルおよびキーワード検索を行い、専門家による見解と、関連する論文の参照リストが調べられた。本研究の対象となったのは、「果物」「野菜」「果物と野菜」の摂取量と2型糖尿病の発症率に関して行われた前向きコホート研究が選択された。結果、検索ヒットした3,446研究のうち6つが本研究に適格と判断された。葉物野菜の摂取量増加が2型糖尿病リスクを低下6つの研究のうちの4つは、葉物野菜の摂取に関して個別に結果(キャベツ、レタス、ほうれんそう別になど)を提供するものだった。研究グループは、「果物」「野菜」「果物と野菜」「葉物野菜」のそれぞれの多量摂取群と少量摂取群に着目し分析を行った。結果、「葉物野菜」について、多量群の方が少量群に比べて2型糖尿病リスクが14%低下する関連が示された(ハザード比:0.86、95%信頼区間0.77~0.97、P=0.01)。「果物」「野菜」「果物と野菜」の摂取量と2型糖尿病の発症率低下については、有意な関連は認められず、多量に摂取することの有益性も有意ではなかった。これらの結果から研究グループは、「葉物野菜の1日の摂取量の増加は2型糖尿病のリスクを有意に低下させることができる。さらなる検討が必要だ」と結論している。

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経口ビスホスホネート製剤と食道がんリスクとの関係

 骨粗鬆症の予防や治療に用いられる経口ビスホスホネート製剤を服用する患者には、消化不良、吐き気、腹痛、びらん性食道炎、さらに食道潰瘍といった副作用が一般にみられることは報告されている。さらに最近の症例報告では、食道がんリスクの増加が示唆されている。英国オックスフォード大学のJane Green氏らのグループは、「経口ビスホスホネート製剤服用者において食道がん(胃・大腸ではない)リスクは増加する」との仮説検証を目的に、UK General Practice Research Databaseを用いたコホート内ケース・コントロール解析を行った。BMJ誌2010年9月11日号(オンライン版2010年9月1日号)より。英国40歳以上住民を対象にケース・コントロール解析を実施 解析に用いられたデータベースは、英国のプライマリ・ケア対象住民約600万人を擁する。その中から、ビスホスホネート製剤の処方記録のあった40歳以上男女で、1995~2005年に、食道がん(2,954例)、胃がん(2,018例)、大腸がん(1万641例)と診断された人をケース群とし、ケース群1症例につき、年齢、性、一般医療、観察期間で合致した各5例を対照群とし検証が行われた。 主要評価項目は、喫煙、飲酒、BMIで補正後の、食道・胃・大腸がん発生の相対リスクとした。「10回以上」「5年以上」服用者の食道がん発病率は、非服用者の倍と推計 経口ビスホスホネート製剤を過去に1回以上処方されたケースでは、処方されたことのないケースと比較して食道がんの発病率は高まった(相対リスク:1.30、95%信頼区間:1.02~1.66、P=0.02)。 食道がんリスクは、1~9回処方されたケース(同:0.93、0.66~1.31)と比べて10回以上処方されたケース(同:1.93、1.37~2.70、不均一性P=0.002)で、また3年以上服用していたケースで有意に高かった(平均5年、処方なしのケースに対する相対リスク:2.24、95%信頼区間:1.47~3.43)。 食道がんリスクは、ビスホスホネート製剤のタイプによる有意な違いはなかった。 10回以上処方された場合のリスクは、年齢、性、喫煙、アルコール摂取、BMIによる変動はなかった。また、骨粗鬆症、骨折、上部消化器疾患、さらに制酸薬、NSAIDsやステロイドの処方による変動もなかった。 胃がんと大腸がんは、ビスホスホネート製剤処方との関連は認められなかった。「1回以上処方」対「処方なし」の相対リスクは、0.87(95%信頼区間:0.64~1.19)、0.87(同:0.77~1.00)だった。 研究グループは、「食道がんに関する特異性は試験の方法論的な限界の反証となる」としつつ、「食道がんリスクは、経口ビスホスホネート製剤の10回以上の処方、または5年以上にわたる処方によって増加する」と結論し、「ヨーロッパと北米の60~79歳の食道がん発病率は、非服用者は5年で人口1,000対1だが、服用者では1,000対2に倍増することが見込まれる」と述べている。

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洞結節抑制薬ivabradine、心拍数低下により心不全の予後を改善:SHIFT試験

 選択的洞結節抑制薬ivabradineの心拍数低下効果により、心不全の臨床予後が有意に改善されることが、スウェーデン・Gothenburg大学のKarl Swedberg氏らが実施した無作為化試験(SHIFT試験)で明らかとなった。この20年で、既存の心不全治療法の効果は確立されているが、依然として予後は極めて不良なことから、新たな治療法の開発が最重要課題とされている。SHIFT試験では安静時心拍数の上昇は心不全における不良な予後のリスク因子であることが示されており、ivabradineは洞結節のIf電流を特異的に阻害することで心拍数を低下させ、β遮断薬とは異なり収縮能が低下した患者でも心筋収縮や心臓内伝導に影響を与えないという。Lancet誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。左室駆出率≦35%の症候性心不全患者の心拍数低下の効果を評価 SHIFT試験の研究グループは、選択的洞結節抑制薬ivabradineの心拍数低下作用が心不全のアウトカムに及ぼす効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。 心不全の症状がみられる左室駆出率≦35%の患者で、心拍数≧70/分の洞調律を保持し、過去1年以内に心不全による入院歴があり、忍容可能な場合はβ遮断薬などによる治療で病態が安定している者を対象とした。これらの患者が、ivabradine(最大で7.5mg×2回/日まで漸増)を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、心血管死および心不全の増悪による入院の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を行った。心不全の病態生理における心拍数の重要性を確認 6,558例(ivabradine群:3,268例、プラセボ群:3,290例)が対象となり、そのうち6,505例(3,241例、3,264例)が解析可能であった。フォローアップ期間中央値は22.9ヵ月(四分位範囲:18~28ヵ月)であった。複合エンドポイントのイベント発生率は、ivabradine群が24%(793/3,241例)と、プラセボ群の29%(937/3,264例)に比べ有意に低かった(ハザード比:0.82、95%信頼区間:0.75~0.90、p<0.0001)。 イベントの多くが、心不全の増悪による入院[ivabradine群:16%(514/3,241例)、プラセボ群:21%(672/3,264例)、ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.66~0.83、p<0.0001]および心不全による死亡[3%(113/3,241例)、5%(151/3,264例)、0.74、0.58~0.94、p=0.014]であった。 重篤な有害事象は、ivabradine群が3,388件と、プラセボ群の3,847件よりも有意に少なかった(p=0.025)。症候性徐脈はivabradine群の5%(150/3,241例)にみられ、プラセボ群の1%(32/3,264例)に比べ有意に高頻度であった(p<0.0001)。視覚異常(眼内閃光)はivabradine群の3%(89/3,241例)に認め、プラセボ群の1%(17/3,264例)よりも有意に多かった(p<0.0001)。 著者は、「これらの知見は、ivabradineによる心拍数の低下効果が心不全の臨床的予後の改善に寄与することを示唆しており、心不全の病態生理における心拍数の重要性が確認された」と結論している。

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心拍数は慢性心不全の治療ターゲットか?:SHIFT試験

 心拍数高値は心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善することが、ドイツUniversitatsklinikum des SaarlandesのMichael Bohm氏らによる無作為化試験(SHIFT試験)で判明した。心拍数の上昇は心血管リスクの強力なマーカーとされる。SHIFT試験では、すでにivabradine投与による心拍数の低下が、症候性心不全患者における不良な臨床予後を低減することが示されており、これは心拍数がリスクのマーカーのみならずリスク因子でもあることを示唆するという。Lancet誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。ベースラインと治療28日の心拍数でそれぞれ5群に分けて解析 SHIFT試験は慢性心不全に対する選択的洞結節抑制薬ivabradineの効果を検討するプラセボ対照無作為化試験。研究グループは、今回、心拍数上昇は心不全における心血管イベントのリスク因子であるとの仮説を立て、その検証を行った。 慢性心不全の症状がみられ左室駆出率≦35%、心拍数≧70bpmの洞調律が保持された患者6,505例(ivabradine群:3,241例、プラセボ群:3,264例)が登録された。ベースラインの心拍数で70~71bpm(987例)、72~74bpm(1,364例)、75~79bpm(1,545例)、80~86bpm(1,287例)、≧87bpm(1,318例)の5群に分けた。 主要評価項目は、心血管死および心不全の増悪による入院の複合エンドポイントとした。ivabradine群では、治療28日の心拍数と予後の関連について解析した。ivabradineの直接的なリスク低下の作用機序としての心拍数について検討するために、心拍数の変化に基づく補正解析を行った。1bpmの上昇でリスクが3%増大、治療後の最低心拍数群でリスクが最低 プラセボ群の複合エンドポイントのイベント発生数は、最も心拍数が高い群(≧87bpm、682例)が286件と、最も低い群(70~71bpm、461例)の92件の2倍以上に達した(ハザード比:2.34、95%信頼区間:1.84~2.98、p<0.0001)。 プラセボ群では、ベースラインの心拍数が1bpm上昇するごとに複合エンドポイントのリスクが3%ずつ増大し、5bpmの上昇ごとに16%増大した。 ivabradine群では、治療28日の心拍数と心臓アウトカムの間に直接的な関連が認められた。すなわち、治療28日の心拍数が<60bpmに低下した患者(1,192例)の複合エンドポイントのイベント発生率は17.4%(95%信頼区間:15.3~19.6%)であり、60~64bpmの23.8%、65~69bpmの23.0%、70~74bpmの26.5%、≧75bpmの32.4%に比べ低かった(p<0.0001)。 治療28日までの心拍数の変化で補正を行ったところ治療効果が中和されたことから(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.85~1.06、p=0.352)、ivabradineの効果は心拍数の低下で説明できることが示された。 著者は、「心拍数が高いことは心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善する」と結論し、「心拍数は心不全の重要な治療ターゲットである」と指摘する。

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結核菌とリファンピシン耐性菌が短時間で検出可能に?

スイス・ジュネーブにあるInnovative New Diagnostics基金のCatharina C. Boehme氏らは、ヒト型結核菌(MTB)感染とリファンピシン(RIF)耐性の有無を同時に検出する自動分子検査機器「Xpert MTB/RIF」の性能について検証した結果、「未処理の喀痰からでも、最短で2時間以内に感度の高い検出結果が得られる」ことを報告した。NEJM誌2010年9月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載より。世界的な結核の制圧は、特に薬剤耐性菌株の出現と、HIV感染患者において喀痰塗抹検査では時間がかかる上、診断精度も低いことによって進んでいない。結核による死亡率を低下させ、伝播を防ぐには一刻も早い検出が必須だが、感度の高い検出法は複雑でインフラ整備も必要なため、普及と効果の享受には限界があるとされている。1,730例の患者でMTB/RIF法と他の検査法を比較「Xpert MTB/RIF」は、喀痰を採取し専用カートリッジに入れ機器にセットする以外は、完全に自動化された検体処理システムである。研究グループは、「Xpert MTB/RIF」の性能を検討するため、薬剤感受性の菌株か多剤耐性菌株が疑われる1,730例の患者を被験者に評価を行った。適格患者はペルー、アゼルバイジャン、南アフリカとインドで集められ、被験者は各々三つの喀痰検体を提供した。二つの検体は検査前にN-アセチル-L-システインと水酸化ナトリウムで処理された上で、顕微鏡検査と固体・液体培養法、MTB/RIF法検査に用いられ、残りの一つの検体は未処理のまま顕微鏡検査とMTB/RIF法検査に使われた。未処理検体でも2時間以内に検査可能培養検査陽性患者において、1回の直接MTB/RIF検査で結核陽性と同定されたのは561例中551例(98.2%)で、陰性と同定されたのは171例中124例(72.5%)だった。結核ではないと同定したのは609例中604例で、検査の特異度は99.2%だった。喀痰塗抹陰性、培養検査陽性患者において、追加MTB/RIF検査2回目で感度が12.6ポイント、3回目で5.1ポイント、トータルで90.2%まで高まった。表現型薬物感受性検査と比較して、MTB/RIF検査は、リファンピシン耐性菌を有する患者205例のうち200例(97.6%)を正確に同定し、リファンピシン感受性菌を有する患者は514例中504例(98.1%)を正確に同定した。塩基配列決定は二つの症例を除いてMTB/RIF分析を支持した。(朝田哲明:医療ライター)

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