外科治療にも地域格差:WHO調査

提供元:ケアネット

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公開日:2010/10/07

 



世界の手術室の数は地域によって大きな差があり、手術室の約2割に、外科治療の医療資源の指標であるパルス酸素濃度計が装備されていないことが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院のLuke M Funk氏らが行ったWHOの調査で明らかとなった。外科治療を要する疾患は疾病負担の多くを占め、低く見積もっても世界全体の障害調整生存年(disability-adjusted life years)の11%が手術の対象となる疾患に帰せられるという。しかし、外科治療の供給を保証する医療資源は、特に低所得国で不十分なのが現状である。Lancet誌2010年9月25日号(オンライン版2010年7月1日号)掲載の報告。

WHO加盟国の手術室数、選択された72ヵ国のパルス酸素濃度計数を推算




研究グループは手術室の世界的な分布を推定し、必需の術中モニタリング装置であり手術室の医療資源の指標と考えられるパルス酸素濃度計の供給量を調査した。

WHOの「safe surgery saves lives initiative」に参加する92ヵ国769施設のデータに基づき、世界7地域の病院ベッド数に対する手術室数の割合を算出した。世界21地域における10万人当たりの手術室数を、WHO加盟190ヵ国の病院ベッド数から推算した。

パルス酸素濃度計の供給状況は、地理的、人口統計学的に多様なサンプルを確保するために72ヵ国を選択し、各国の麻酔医334名に調査票を送付して調べた。データのない国のパルス酸素濃度計の必要量は予測回帰モデルで推算した。

格差是正には公衆衛生学的戦略および監視体制の改善が必要




10万人当たりの推定手術室数は、アフリカのサハラ砂漠以南の西部地域の1.0(95%信頼区間:0.9~1.2)から東欧の25.1(同:20.9~30.1)まで大きな差がみられた。高所得地域全体の推定手術室数の平均が10万人当たり14以上であったのに対し、低所得地域(人口22億人)では2に満たなかった。

54ヵ国172名の麻酔科医から得られたパルス酸素濃度計のデータからは、世界で7万7,700(95%信頼区間:6万3,195~9万5,533)の手術室[19.2%(同:15.2~23.9)]にパルス酸素濃度計が装備されていないと推定された。

著者は、「十分な外科治療を受けられない20億人以上の人々が置かれている格差を是正するには、公衆衛生学的戦略および監視体制の改善が必要とされる」と結論している。

(菅野守:医学ライター)