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妊娠高血圧腎症の予後予測に有用なモデルを開発

妊娠高血圧腎症(子癇前症)で入院した女性のうち有害なアウトカムのリスクが高い患者の同定に有用な、fullPIERS(Pre-eclampsia Integrated Estimate of RiSk)と呼ばれるモデルが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学産婦人科のPeter von Dadelszen氏らによって開発された。妊娠高血圧腎症は単なる蛋白尿を伴う妊娠高血圧を超える病態とされ、全身性の過剰な炎症状態と考えられており、世界的に妊産婦の死亡および罹病の直接的な主原因となっている。妊娠高血圧腎症関連の疾病負担の低減は、ミレニアム開発目標5の趣旨にも関わる重要な課題だという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2010年12月24日号)掲載の報告。妊娠高血圧腎症の入院患者における重篤なアウトカムの予測モデル研究グループは、入院後48時間以内の妊娠高血圧腎症女性患者における死亡あるいは生命を脅かす合併症のリスクの同定を目的としたfullPIERSモデルを開発、検証するプロスペクティブな多施設共同試験を行った。対象は、妊娠高血圧腎症で三次産科施設に入院した女性あるいは入院後に妊娠高血圧腎症を発症した女性であった。対象としたアウトカムは妊産婦死亡あるいは妊娠高血圧腎症の重篤な合併症であった。これらの有害なアウトカムを予測するために、段階的変数減少重回帰(stepwise backward elimination regression)モデルを用いて、定期的に報告された変数の解析を行った。モデルのパフォーマンスは受信者動作特性(ROC)の曲線下面積(AUC)で評価し、過適合(overfitting)の評価には標準的なブートストラップ法を用いた。直接的な患者ケアの変更が可能に妊娠高血圧腎症患者2,023例のうち261例が、入院後に有害なアウトカムを発現した[入院後48時間以内の発現は106例(5%)]。有害な妊産婦アウトカムの予測因子として、妊娠期間、胸痛/呼吸困難、酸素飽和度、血小板数、クレアチニン、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値が確認された。fullPIERSモデルは、入院後48時間以内の有害な妊産婦アウトカムの予測に有用であった(AUC ROC:0.88、95%信頼区間:0.84~0.92)。過適合は認めず、パフォーマンスは7日目まで良好であった(AUC ROC>0.7)。著者は、「fullPIERSモデルは、有害なアウトカムのリスクが高い妊娠高血圧腎症患者を、合併症発現前の7日間において同定し、その結果として分娩のタイミングやケアの場所を変えるなどの直接的な患者ケアの変更が可能となった」と結論し、「臨床試験のデザインの改善や、妊娠高血圧腎症関連の生物医学的研究に多くの情報もたらすことも可能にした」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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日本精神神経学会など「プライマリ・ケアおよび精神医療の専門性の認識に関する調査:国際比較研究」アンケートを実施

日本精神神経学会アンチスティグマ委員会が世界精神医学会と協力し、「精神科および精神科医に対するスティグマ‐国際比較研究」を実施中。アンケートに協力できるプライマリ・ケア医を募集している。この調査は、精神科医療と精神科医に対してプライマリ・ケア医が、どんな認識、思いを持っているかを調査するもの。精神疾患については、根拠のない情報が多く流れているが、プライマリ・ケア医との協働で精神疾患の診療にあたるため、それら偏見を評価し、正していく目的で実施される。以下、日本精神神経学会アンチスティグマ委員会より ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プライマリ・ケアと精神医療の専門性は、世界的に、十分な認識が得られていないようです。世界家庭医療学会(WONCA)、世界精神医学会などと協力して、日本精神神経学会で、この問題に関するアンケートを行っています。調査のデータに基づいて、プライマリ・ケアと精神医療の専門性への認識を改善することが目的です。回答所要時間は、20分程度です。Webアンケートはこちらから(日本語版が用意されています)http://www.unipark.de/uc/Stigma_Psychiatrists/ご協力よろしくお願い致します。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・※スティグマとは、本来烙印あるいは聖痕という意味であるが、今日では差別によって社会的不利益を被っている人達に課せられた烙印といった意味で用いられることが多いとこのこと。

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ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の現況:34ヵ国106施設の調査から

 ヨーロッパにおけるClostridium difficileの分離株は、北米で多いとされるPCRリボタイプ027よりも014/020、001、078、018、106の頻度が高く、重篤な病態のアウトカムと関連するPCRリボタイプとして018や056が重要なことが、オランダ感染症制御センターのMartijn P Bauer氏らによる調査で明らかとなった。2003年初め、カナダとアメリカでC. Difficile感染の増加と病態の重篤化が報告され、その一因としてPCRリボタイプ027に属するフルオロキノロン系抗菌薬抵抗性株の蔓延が指摘されている。ヨーロッパでは、2005年にイギリスから初めて027の報告がなされ、直後にオランダでも発見されたが、C. Difficileの院内感染の実態はほとんどわかっていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載の報告。C. Difficilee感染の現況を把握し、診断能向上、サーベイランスの確立を目指す研究グループは、ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の現況を把握し、診断能の向上およびサーベイランスの確立を目的とした調査を実施した。ヨーロッパ34ヵ国106検査施設を結ぶネットワークを創設した。2008年11月、人口規模に応じて選定された各国1~6施設において、C. Difficile感染が疑われる患者、あるいは入院後3日以上経過してから下痢を発症した患者の糞便検査を行った。糞便サンプル中にC. Difficileトキシンが検出された場合にC. Difficile感染と診断した。詳細な臨床データや糞便サンプルからの分離株は、各施設の最初の10例から収集し、3ヵ月後に臨床データのフォローアップを行った。死亡例の40%にC. Difficile感染が関与C. Difficile感染の発生率は、1施設10,000人・年当たりの加重平均値が4.1、範囲は0.0~36.3であり、施設間のばらつきがみられた。詳細な情報が得られた509例のうち389例で分離株の微生物学的特性が確認され、65のPCRリボタイプが同定された。そのうち最も多かったのはPCRリボタイプ014/020の61例(16%)で、次いで001が37例(9%)、078が31例(8%)の順であった。高頻度かつ予後不良とされるPCRリボタイプ027は19例(5%)と少なかった。ほとんどが、高齢、併存疾患、直近の抗生物質の使用歴などのリスク・プロファイルが事前に同定されている患者であった。3ヵ月後のフォローアップの時点で、22%(101/455例)が死亡しており、そのうち40%(40例)においてC. Difficile感染が何らかの形で関与していた。交絡因子を補正後に「重篤な病態(complicated disease、C. Difficile感染がICU入院や死亡に寄与あるいは直接の原因である場合、もしくは結腸切除術導入の理由である場合)」のアウトカムと有意な関連を示した因子として、65歳以上(補正オッズ比:3.26、95%信頼区間:1.08~9.78、p=0.026)、PCRリボタイプ018感染(同:6.19、同:1.28~29.81、p=0.023)、同056感染(同:13.01、同:1.14~148.26、p=0.039)が確認された。著者は、「ヨーロッパでは027以外のPCRリボタイプのC. Difficileの院内感染の頻度が高かった。これらのデータは、ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の検出とそのコントロールには、多数の国によるサーベイランスが重要であることを浮き彫りにするものである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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低用量アスピリンの常用、がん死リスクを長期に抑制

低用量アスピリンの毎日服用により、食道がん、膵がん、肺がん、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんなどの主要ながんによる死亡が有意に抑制されることが、イギリス・オックスフォード大学脳卒中予防研究部門のPeter M Rothwell氏らが実施した血管イベント予防に関する無作為化試験のメタ解析で示された。すでに、アスピリンを5年以上毎日服用すると結腸・直腸がんのリスクが低減することが無作為化試験などで示されている。加えて、アスピリンは他臓器のがん、特に消化管のがんのリスクを抑制する可能性を示唆するエビデンスがあるが、ヒトでは確証されていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年12月7日号)掲載の報告。アスピリン治療が平均4年以上の無作為化試験が対象研究グループは、血管イベントの予防効果に関してアスピリンと対照を比較した無作為化試験の、試験期間中および試験後のがん死について調査を行った。平均治療期間が4年以上にわたるアスピリン常用(毎日服用)例とアスピリン非服用例を比較した無作為化試験の個々の患者データを用い、予定治療期間との関連において消化器がんまたは非消化器がんによる死亡のリスクに及ぼすアスピリンの効果を評価した。イギリスの3つの大規模試験では、死亡診断書およびがんレジストリーから、個々の患者の試験終了後の長期フォローアップ・データが得られ、これを用いて20年がん死リスクの評価を行った。日本のJPAD試験を含む8試験、約2万5,500例の解析で、がん死リスクが21%低下適格基準を満たした8つの試験(BDAT、UK-TIA、ETDRS、SAPAT、TPT、JPAD、POPADAD、AAA試験に参加した2万5,570例、がん死674例)では、アスピリン群でがん死が有意に低下していた[オッズ比:0.79(95%信頼区間:0.68~0.92)、p=0.003]。SAPAT試験を除く7試験(2万3,535例、がん死657例)から得られた個々の患者データの解析では、明確なアスピリンのベネフィットはフォローアップ期間が5年を経過した後に認められた[全がんのハザード比:0.66(95%信頼区間:0.50~0.87)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.46(95%信頼区間:0.27~0.77)、p=0.003]。20年間にがんで死亡するリスク(3試験の1万2,659例、死亡1,634例)はアスピリン群が対照群に比べて有意に低く[全固形がんのハザード比:0.80(95%信頼区間:0.72~0.88)、p<0.0001、消化器がんのハザード比:0.65(同:0.54~0.78)、p<0.0001]、ベネフィットは治療期間が長くなるに従って増大した[治療期間≧7.5年における全固形がんのハザード比:0.69(95%信頼区間:0.54~0.88)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.41(同:0.26~0.66)、p=0.0001]。死亡リスクの抑制効果が現れるまでの治療期間は、食道がん、膵がん、脳腫瘍、肺がんが約5年であったが、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんではさらに長期間を要した。肺がんと食道がんではベネフィットは腺がんに限られ、全体の20年がん死リスクの抑制効果は腺がんで最も大きかった[ハザード比:0.66(95%信頼区間:0.56~0.77)、p<0.0001]。ベネフィットはアスピリンの用量(75mg超)、性別、喫煙状況とは関連しなかったが、無作為割り付け時の年齢が高いほど改善され、20年がん死の絶対リスクの低下率は55歳未満が1.41%、55~64歳が4.53%、65歳以上は7.08%に達しており、全体では3.49%であった。著者は、「低用量アスピリンの毎日服用により、試験期間中および終了後において、いくつかの主要ながんによる死亡が抑制された。ベネフィットは治療期間が長くなるほど増大し、個々の試験を通じて一貫していた」と結論し、「これらの知見は、アスピリンの使用ガイドラインや、発がんおよび薬剤に対するがんの感受性のメカニズムの解明において重要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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小児期てんかん発症者の長期死亡率は一般集団の3倍

小児期にてんかんを発症した人の死亡率は、一般集団死亡率と比べて3倍高く、てんかんに関連した死亡リスクが55%を占めることが明らかになった。フィンランド・トゥルク大学病院小児神経科部門のMatti Sillanpaa氏らによる住民ベースのコホート研究の結果による。これまで、小児期にてんかんを診断された患児の長期死亡率を前向きに追跡した研究はほとんど行われていなかった。NEJM誌2010年12月23日号掲載より。フィンランドの小児245例を40年間追跡Sillanpaa氏らは、小児期にてんかんと診断されたフィンランド居住の患者の長期死亡率を調査した。被験者は、1964年に診断された245例(16歳未満)で、40年間追跡し、発作の転帰と死亡率(原因不明の突然死も含む)を評価した。評価は、集団剖検率が非常に高く、ほぼ全例において特異的診断が可能だった。遠隔症候性てんかん例の死亡率は37%結果、追跡40年間での死亡は60例(24%)で、死亡率は一般集団の予測される年齢・性補正後死亡率の3倍であった。死亡60例のうち、てんかん関連の死亡は33例(55%)を占めた。内訳は、原因不明の突然死が18例(30%)、発作確定例・ほぼ確定例が9例(15%)、不慮の溺死例6例(10%)だった。5年終末期寛解(例:死亡・最終追跡調査時に5年以上発作がなかった)を得られなかった被験者は107例いた。そのうち死亡は51例(48%)だった。また遠隔症候性てんかん例(例:事故などで脳が重大な神経障害・損傷を負い、いったん脳が安定後、自発的におきる発作例)においても、特発性・潜因性てんかん例と比べて死亡リスクの増大が認められた(37%対12%、P<0.001)。なお14歳未満の特発性・潜因性てんかん被験者で、原因不明の突然死例はなかった。(武藤まき:医療ライター)

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患者中心の協同介入がうつ病と慢性疾患のコントロールをともに改善

うつ病は、糖尿病や冠動脈心疾患患者で多くみられ、セルフケア力を弱めるため、合併症や死亡のリスク因子になっているという。また、これら複数の慢性疾患を有する患者は多くの医療コストも必要とする。そこで米国ワシントン大学精神・行動学部門のWayne J. Katon氏らは、プライマリ・ケアベースで複数疾患の疾病管理を、患者中心で協同介入することが、これら患者の疾病管理を改善するかどうかを検討する単盲検無作為化対照試験を行った。結果、内科的疾患、うつ病ともにコントロールの改善が認められたという。NEJM誌2010年12月30日号掲載より。ともに働く看護師とガイドラインに即し、リスク因子のコントロール達成を目指す試験は、ワシントン州の統合医療システムに参画する14の診療所で行われた。被験者は2007年5月~2009年10月の間に募集された214例で、糖尿病のコントロール不良、冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方を有し、かつうつ病を有しており、通常ケアを受ける群か介入群かに無作為に割り付けられ、追跡された。介入群には、各患者のかかりつけ医とともに働き医学的指導を受けた看護師が、疾病ガイドラインに即して、複数疾患のリスク因子のコントロールを目標に協同的なケアマネジメントを提供した。主要転帰は、12ヵ月時点での患者のリスク因子の目標達成の割合で、糖化ヘモグロビン、LDL-C、収縮期血圧、SCL-20尺度によるうつ病転帰を同時モデル化し、単一全般的な治療効果の評価が行われた。介入群の方が改善度は大きく、患者QOL・満足度も高い結果、通常ケア群との比較で介入群は、12ヵ月時点の全般的改善度が大きかった。糖化ヘモグロビン値の通常ケア群とのコントロールの差は0.58%、LDL-Cは同6.9mg/dL、収縮期血圧は5.1mmHg、SCL-20スコア差は0.40ポイントであった(いずれもP<0.001)。また、介入群の患者は、インスリン(P=0.006)、降圧薬(P<0.001)、抗うつ薬(P<0.001)の調整を1回以上行われることが多く、良好なQOL(P<0.001)、糖尿病と冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方のケアに対する満足度が高く(P<0.001)、うつ病のケアに対する満足度も高かった(P<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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軽症慢性収縮性心不全へのエプレレノン追加投与、死亡・入院リスクを約4割低減

軽症の慢性収縮性心不全患者に対し、エプレレノン(本邦では「セララ錠」として高血圧症のみ適応)を従来の治療に加え投与すると、心血管系疾患死または心不全による入院リスクが4割近く低減することが、無作為化プラセボ対照二重盲検試験「EMPHASIS-HF」試験グループにより示された。これまで、重症の慢性収縮性心不全や心筋梗塞後の心不全患者への追加投与については、同リスクが低減することは明らかになっていた。NEJM誌2011年1月6日号(オンライン版2010年11月14日号)掲載より。NYHA心機能分類II、駆出率35%以下の2,737例を無作為化し追跡EMPHASIS-HF(Eplerenone in Mild Patients Hospitalization and Survival Study in Heart Failure)試験は、NYHA心機能分類クラスIIで、駆出率35%以下の2,737例を対象に行われた。被験者を無作為に二群に分け、従来の推奨治療に加えて、一方にはエプレレノン(1日最大50mg)を、もう一方にはプラセボを投与した。主要転帰は、心血管系疾患死と心不全による入院の複合イベントとした。被験者の平均年齢は、エプレレノンが68.7歳、プラセボ群が68.6歳、女性はそれぞれ22.7%と21.9%、左室駆出率はそれぞれ平均26.2%と26.1%だった。主要転帰はエプレレノン群で0.63倍、死亡は0.76倍本試験は、あらかじめ設定した基準に達したため当初予定よりも早期に終了となり、追跡期間中央値21ヵ月の時点で試験中止となった。同期間中、主要転帰の発生率は、プラセボ群が25.9%に対し、エプレレノン群が18.3%だった(ハザード比:0.63、95%信頼区間:0.54~0.74、p<0.001)。死亡は、プラセボ群の15.5%に対し、エプレレノン群は12.5%だった(ハザード比:0.76、同:0.62~0.93、p=0.008)。また心血管系疾患死も、プラセボ群が13.5%に対し、エプレレノン群が10.8%だった(ハザード比:0.76、同:0.61~0.94、p=0.01)。心不全または原因を問わない入院の割合も、エプレレノン群で有意に低率だった。安全性に関して、血清カリウム値が5.5mmol/Lを超えていたのは、エプレレノン群が11.8%、プラセボ群は7.2%であった(p<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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足でお酒が飲めるというデンマークの都市伝説は……

デンマークには、「ウォッカに足を沈めることで酔っぱらうことができる」という都市伝説があるという。デンマーク・Hillerod病院循環器・内分泌科のChristian Stevns Hansen氏らは、その伝説を検証するオープンラベルの実証試験「Peace On Earth」を行った。結果、伝説は伝説でしかなかったが、あくまでウォッカに沈めた場合に限った話で、もっと強いお酒やジュースとお酒とを飲んだ場合はわからないため、新たな楽しみ(たとえば眼球飲酒)も浮かび上がったと結論している。本論は、BMJ誌年末恒例のクリスマス特集論文の1本で、2010年12月18日号(オンライン版2010年12月14日号)に掲載された。ウォッカ3本に3時間、足を漬けてみたが酩酊状態にはならずPeace On Earth(Percutaneous Ethanol Absorption Could Evoke Ongoing Nationwide Euphoria And Random Tender Hugs)は、平均年齢32歳(範囲:31~35歳)の、慢性皮膚疾患や肝疾患を有しておらず、アルコールや向精神薬に非依存の3人の病院職員を対象に行われた。主要エンドポイントは、血漿エタノール濃度[検出限界:2.2mmol/L(10mg/100mL)]で、700mLのウォッカ3本で満たされた皿洗い容器に、足を3時間浸漬している間、30分ごとに測定をした。副次エンドポイントは、自己評価による酩酊状態(自信過剰になる、衝動的言動がみられる、突発的に抱きつきたくなる)で、0~10スコアで記録された。結果、実験(足を浸漬している)の間に、血漿エタノール値が検出限界を超えることはなかった。試験開始時よりも自信過剰で、衝動的言動がみられたが、それらはset upによるものと思われ、酩酊状態の有意な変化は認められなかった。Hansen氏は、「アルコールの経皮摂取は、足をウォッカに漬けることでは不可能だった」と結論。「しかし依然として、胃腸管壁以外でのアルコール摂取に関する疑問は残ったままで研究結果が待たれる」とまとめている。

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プライマリ・ケアにおけるうつ病、非医療者カウンセラーによる共同介入が有効

うつ、不安障害などの「よくみられる精神障害(common mental disorders:CMD)」の症状を呈する患者をプライマリ・ケアで治療する場合、訓練を受けた非医療者カウンセラーとの共同ケアによって病状の回復率が改善することが、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のVikram Patel氏らがインドで実施した「MANAS」試験で示された。CMDは世界的な神経精神医学的疾病負担の主原因であり、自殺の増加や医療コストの増大を招き、経済的な生産性を低下させているという。プライマリ・ケアにおけるCMDに対する共同介入の系統的レビューでは、1)スクリーニングのルーチンな実施、2)スタッフの専門的な技量、3)精神科専門医による監督によりアウトカムが改善する可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月18/25日号(オンライン版2010年12月14日号)掲載の報告。共同介入と強化通常ケアを比較するクラスター無作為化試験MANAS試験の研究グループは、プライマリ・ケアにおけるCMDに対する非医療者カウンセラーによる介入のアウトカム改善効果を評価する、クラスター無作為化対照比較試験を実施した。インド、ゴア市のプライマリ・ケア施設を受診し、CMDの判定基準を満たした患者が、訓練を受けた非医療者カウンセラーによる共同的な段階的ケアを受ける群、あるいは強化通常ケアを受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。共同的な段階的ケアによる介入は、訓練を受けた非医療者であるカウンセラーが患者マネジメントおよび心理社会的な介入を行うもので、プライマリ・ケア医が抗うつ薬を処方し、全体の監督は精神科専門医が行った。主要評価項目は、治療6ヵ月の時点におけるWHOの『疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版(ICD-10)』の定義によるCMDの回復とした。共同介入により回復率が約12%改善、開業医では差を認めず公的プライマリ・ケア施設と開業医の割合が同じ24のクラスターが、非医療者カウンセラー共同介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。アウトカムの評価が可能であったのは、介入群が85%(1,160/1,360例)、対照群は88%(1,269/1,436例)であった。治療6ヵ月におけるCMDの回復率は、介入群が65.0%(620例)と、対照群の52.9%(553例)に比べ良好であった[リスク比:1.22(95%信頼区間:1.00~1.47)、リスク差:12.1%(95%信頼区間:1.6~22.5%)]。介入による効果は公的プライマリ・ケア施設で大きく[65.9%(369例) vs. 42.5%(267例)、リスク比:1.55(95%信頼区間:1.02~2.35)]、開業医受診者では対照群との間に差を認めなかった[64.1%(251例) vs. 65.9%(286例)、リスク比:0.95(95%信頼区間:0.74~1.22)]。介入群で3例が死亡、4例が自殺を企図し、対照群ではそれぞれ6例ずつであった。自殺死は認めなかった。著者は、「訓練を受けた非医療者カウンセラーとの共同による段階的な介入は、公的なプライマリ・ケア施設を受診するCMD患者の回復率を改善する」と結論し、「このエビデンスは、メンタル・ヘルスケアの専門家の体制が十分でない環境において、CMDに対するサービスの改善に活用できる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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急性腎障害の予後に、蛋白尿、eGFRは影響するか?

急性腎障害(acute kidney injury)による入院のリスクは、蛋白尿が重篤なほど、また推定糸球体濾過量(eGFR)が低下するほど上昇することが、カナダ・カルガリー大学のMatthew T James氏らが行ったコホート試験で明らかとなった。eGFRの低値は急性腎障害を示唆し、蛋白尿は腎疾患のマーカーであるが、急性腎障害のリスクの予測におけるeGFRと蛋白尿双方の意義は明確ではなく、急性腎障害や有害な臨床アウトカムには先行する腎疾患は影響しないとの見解もある。さらに、急性腎障害のリスクやアウトカムの評価には蛋白尿やeGFRは寄与しないとする最近の報告もあるという。Lancet誌2010年12月18/25日号(オンライン版2010年11月22日号)掲載の報告。eGFR低下と蛋白尿の連携的な影響を評価研究グループは、eGFRと蛋白尿が急性腎障害やその後の有害な臨床アウトカムに連携的に及ぼす影響を評価するコホート試験を実施した。対象は、2002~2007年にカナダ・アルバータ州に居住した92万985人であり、ベースライン時に透析を受けておらず、血清クレアチニン値または蛋白尿(試験紙あるいはアルブミン-クレアチニン比で判定)のいずれかを外来で1回以上測定された者とした。主要評価項目は、急性腎障害による入院率とし、全死亡、腎臓関連の複合アウトカム(末期腎疾患、血清クレアチニン値倍加)の評価も行った。急性腎障害は、より長期的な予後情報をもたらす追跡期間中央値35ヵ月(範囲:0~59ヵ月)の時点で、6,520例(0.7%)が急性腎障害で入院した。eGFR≧60mL/分/1.73m2の場合の急性腎障害による入院のリスクは、試験紙検査で高度と判定された蛋白尿の4倍以上に達した(蛋白尿がみられない場合とのリスク比:4.4、95%信頼区間:3.7~5.2)。試験紙検査で高度蛋白尿の場合、eGFR値にかかわらず、急性腎障害および透析を要する腎障害による入院のリスクが上昇した。急性腎障害で入院した患者では、死亡および腎関連の複合アウトカムのリスクも高かったが、ベースライン時にeGFR低値および高度蛋白尿がみられた場合はこのリスクの上昇が抑制されていた。著者は、「急性腎障害による入院のリスクは蛋白尿の重篤化やeGFRの低下に伴って上昇した。eGFR低下や蛋白尿がみられる場合は、その程度にかかわらず、長期的な死亡率は急性腎障害発症後に上昇した。臨床的に問題となる腎機能の低下は急性腎障害によって増加するが、ベースラインのeGFRが最低値の場合や蛋白尿が最高度な例では影響はなかった」とまとめ、「これらの知見は、急性腎障害のリスクが確認された場合にはeGFRおよび蛋白尿を考慮すべきであり、急性腎障害の存在はeGFRや蛋白尿に加え、さらに長期にわたる予後情報をもたらすことを示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ICD+CRTは死亡・心不全入院率を低下するが有害イベント増加も

植込み型除細動器(ICD)に心臓再同期療法(CRT)を追加した治療を行うと、心不全による死亡および入院の割合が減少したことが示された。ただしこの改善には有害イベントの増加も伴っていた。報告は、カナダ・コロンビア大学のAnthony S.L. Tang氏ら「RAFT」試験グループが、軽症~中等症(NYHA心機能分類IIまたはIII)の心不全でQRS幅が広く(内因性120msec以上またはペーシング200msec以上)左室収縮機能不全を呈する患者1,798例を、平均40ヵ月間追跡した結果によるもので、NEJM誌2010年12月16日号(オンライン版2010年11月14日号)で発表された。CRTは、QRS幅が広く左室収縮機能不全を呈する患者にベネフィットがあることが明らかになっている。そしてそれら患者の大半がICD適応の患者であることから、ICD+CRTと至適薬物療法により死亡・罹患率が低下するかが検討された。ICD-CRT群の主要転帰発生が有意に延長多施設共同二重盲検無作為化試験のRAFT(Resynchronization–Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial)は、カナダ24施設、ヨーロッパとトルコ8施設、オーストラリア2施設から被験者を募り行われた。対象は、NYHA心機能分類IIまたはIIIの心不全を有し、左室駆出率30%以下、内因性QRS幅120msec以下もしくはペーシングQRS幅200msec以上の患者で、ICD単独療法かICD+CRT療法(ICD-CRT)のいずれかに無作為に割り付けられた。主要転帰は、全死因死亡または心不全による入院とした。被験者は、ICD単独群904例、ICD-CRT群894例の計1,798例で、平均40ヵ月間追跡された。結果、主要転帰は、ICD-CRT群では33.2%(297/894例)であった一方、ICD単独群は40.3%(364/904例)で、ICD-CRT群の主要転帰発生が有意に延長した(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.64~0.87、P<0.001)。術後30日時点の有害事象、ICD単独群58例、ICD-CRT群124例死亡は、ICD-CRT群では186例、ICD単独群では236例発生し、ICD-CRT群の方が死亡までの有意な期間延長(相対リスク25%低下)が認められた(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62~0.91、P=0.003)。入院についても、ICD-CRT群174例、ICD単独群236例で、ICD-CRT群の発生割合がより低下した(ハザード比:0.68、95%信頼区間:0.56~0.83、P<0.001)。しかし一方で、ICD施術後30日時点の有害事象発生が、ICD単独群58例に対してICD-CRT群は124例で認められた(P<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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妊娠初期の抗てんかん薬カルバマゼピン、二分脊椎症と関連

妊娠第一トリメスターにおける抗てんかん薬カルバマゼピン(商品名:テグレトールなど)服用と先天異常との関連について、バルプロ酸(商品名:デパケンなど)よりも低リスクではあったが、二分脊椎症が特異であると認められることが、システマティックレビュー、ケースコントール試験の結果、示された。オランダ・フローニンゲン大学薬学部門のJanneke Jentink氏らによる。カルバマゼピンは、妊娠可能な欧州女性において最も一般的に服用されている。これまでその先天異常との関連を示唆する試験は複数あるが、個々の試験は小規模でリスク検出力が統計的に不十分なものであった。BMJ誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月2日号)掲載より。文献レビューと380万分娩登録ベースのEUROCATデータを用いて解析試験は、妊娠第一トリメスターにおけるカルバマゼピン曝露と特異的な主要先天異常との関連を同定することを目的とし、Jentink氏らは、これまで公表されたすべてのコホート試験で試験目的のキーとなるインディケーターを同定し、住民ベースのケースコントロール試験で、そのインディケーターを検証した。レビューは、PubMed、Web of Science、Embaseを使って文献検索を行うとともに、1995~2005年に欧州19の先天異常レジストリから登録されたデータを含むEUROCAT Antiepileptic Study Databaseのデータも解析に含んだ。被験者は、文献レビューからは8試験のカルバマゼピン単独療法曝露2,680例、EUROCATからは先天異常が報告登録された9万8,075例(分娩全体数は380万例)であった。主要評価項目は、妊娠第一トリメスターでのカルバマゼピン曝露後の主要先天異常の全出現率、文献レビューで規定した5つの先天異常のタイプの症例群とコントロール群の2群(非染色体症候群と染色体症候群)との比較によるオッズ比であった。バルプロ酸よりもリスクは低い結果、文献レビューでの全出現率は3.3%(95%信頼区間:2.7~4.2)であった。先天異常登録例では131例の胎児がカルバマゼピンに曝露していた。先天異常のうち二分脊椎症だけが、カルバマゼピン単独療法群との有意な関連が認められた(非抗てんかん薬群との比較によるオッズ比:2.6、95%信頼区間:1.2~5.3)。しかし、そのリスクはバルプロ酸と比べると低かった(オッズ比:0.2、95%信頼区間:0.1~0.6)。その他の先天異常についてはエビデンスが得られなかった。総肺静脈還流異常症はカルバマゼピン単独療法群では0例であり、唇裂(口唇裂有無含む)オッズ比は0.2(95%信頼区間:0.0~1.3)、横隔膜ヘルニアは同0.9(同:0.1~6.6)、尿道下裂は同0.7(同:0.3~1.6)であった(オッズ比はすべて非てんかん薬群との比較)。さらに探索的解析の結果では、単心室欠損症と房室中隔欠損症のリスクが高いことは示された。Jentink氏は、「バルプロ酸よりもリスクは低いが、カルバマゼピンの催奇形性として相対的に二分脊椎症が特異である」と結論。また、データセットは大規模であったが、複数の主要な先天異常のリスク検出力は不十分であったとも述べている。

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ゾレドロン酸のbenefits beyond bone healthを確認、多発性骨髄腫で全生存、無増悪生存改善

第三世代ビスホスホネート製剤であるゾレドロン酸(商品名:ゾメタ)は、多発性骨髄腫患者において骨関連イベントの予防効果とは別個に全生存の改善をもたらし、骨の健常性の保持にとどまらない抗腫瘍効果を有する可能性があることが、イギリスInstitute of Cancer Research、Royal Marsden NHS Foundation TrustのGareth J Morgan氏らNational Cancer Research Institute Haematological Oncology Clinical Study Groupの検討で示された。ビスホスホネート製剤は、悪性骨病変を有する患者の骨関連イベントのリスクを低減することが確認されており、加えてゾレドロン酸は前臨床試験および臨床試験において、抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月4日号)掲載の報告。第一世代ビスホスホネート製剤のclodronic酸と比較する無作為化試験研究グループは、多発性骨髄腫に対する一次治療において、ビスホスホネート製剤が臨床アウトカムに及ぼす効果を評価する無作為化対照比較試験を実施した。イギリスの120施設から登録された18歳以上の新たに診断された多発性骨髄腫患者が、ゾレドロン酸4mgを3~4週ごとに静注投与する群あるいはclodronic酸1,600mg/日を経口投与する群に無作為に割り付けられた。これらの患者は、さらに強化寛解導入療法あるいは非強化寛解導入療法を施行する群に割り付けられた。担当医、医療スタッフ、患者には治療割り付け情報は知らされず、ビスホスホネート製剤および維持療法は病勢進行となるまで継続された。主要評価項目は全生存、無増悪生存、全奏効率とした。全生存と無増悪生存の解析にはCox比例ハザードモデルを用い、全奏効率はロジスティック回帰モデルで解析した。抗腫瘍効果の観点からも、ゾレドロン酸による迅速な治療を2003年5月~2007年11月までに登録された1,970例のうち1,960例がintention-to-treat解析の適格基準を満たした。ゾレドロン酸群は981例(強化療法群555例、非強化療法群426例)、clodronic酸群は979例(それぞれ556例、423例)であった。治療カットオフの2009年10月5日の時点で、病勢進行となるまでのビスホスホネート製剤の投与期間中央値は350日[四分位範囲(IQR):137~632日]で、フォローアップ期間中央値は3.7年(IQR:2.9~4.7年)であった。ゾレドロン酸群は、clodronic酸群に比べ死亡率が16%[95%信頼区間(CI):4~26%]低下し(ハザード比:0.84、95%CI:0.74~0.96、p=0.0118)、全生存中央値は5.5ヵ月延長した[50.0ヵ月(IQR:21.0ヵ月~未到達) vs. 44.5ヵ月(IQR:16.5ヵ月~未到達)、p=0.04]。ゾレドロン酸群は、clodronic酸群に比べ無増悪生存が有意に12%(95%CI:2~20%)改善し(ハザード比:0.88、95%CI:0.80~0.98、p=0.0179)、無増悪生存中央値は2.0ヵ月延長した[19.5ヵ月(IQR:9.0~38.0ヵ月) vs. 17.5ヵ月(IQR:8.5~34.0ヵ月)、p=0.07]。完全奏効(CR)、最良部分奏効(very good PR)、部分奏効(PR)を合わせた全奏効率は、強化療法施行例[432例(78%) vs. 422例(76%)、p=0.43]および非強化療法施行例[215例(50%) vs. 195例(46%)、p=0.18]ともに、ゾレドロン酸群とclodronic酸群で有意な差は認めなかった。二つのビスホスホネート製剤はいずれも全般的に良好な忍容性を示し、急性腎不全や治療によって発現した重篤な有害事象の発生率は同等であった。しかし、顎骨壊死の発生率はゾレドロン酸群が4%(35例)と、clodronic酸群の<1%(3例)に比べ多かった。結果を受け著者は、「新規診断の多発性骨髄腫患者に対しては、骨関連イベントの予防のみならず抗腫瘍効果の観点からも、ゾレドロン酸による迅速な治療が支持される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高齢急性骨髄性白血病に対する強化寛解導入化学療法の予後を予測するスコア法

高齢の急性骨髄性白血病(AML)患者に対する強化寛解導入療法による完全寛解(CR)の可能性および早期死亡(ED)のリスクの予測に有用なスコア法が、ドイツ・ミュンスター大学血液腫瘍科のUtz Krug氏らGerman Acute Myeloid Leukaemia Cooperative Group and the Study Alliance Leukemia Investigatorsによって開発された。60歳以上のAMLのうちAML以外は健康な状態(すなわち強化寛解導入療法が施行可能な病態)の患者の約半数は強化化学療法によってCRが達成されるが、若年の患者に比べEDのリスクが高いという。Lancet誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月4日号)掲載の報告。AMLCG1999およびAML1996のデータを別個に解析研究グループは、60歳以上のAML患者において標準的な臨床因子および検査値とCR、EDの関連を検証し、強化化学療法のリスクを評価するウェブベースのアプリケーションを開発するための検討を行った。German Acute Myeloid Leukaemia Cooperative Group 1999 study(AMLCG1999)に登録された60歳以上の、AML以外は健常な患者1,406例について、細胞遺伝学的および分子的リスクプロフィール情報の有無別のリスクスコア法を開発するために、多変量回帰分析を用いた解析を行った。これらの患者は、以下の二つのレジメンのいずれかによる強化寛解導入療法を2コース施行された。(1)tioguanine+標準用量シタラビン(商品名:キロサイド)+ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)併用療法→高用量シタラビン+ミトキサントロン(商品名:ノバントロン)併用療法、(2)高用量シタラビン+ミトキサントロン併用療法。AMLCG1999に基づくリスク予測の妥当性は、Acute Myeloid Leukaemia 1996 study(AML1996)で、シタラビン+ダウノルビシン併用療法を2コース施行された60歳以上のAML患者801例において別個に検証された。治療法の決定が困難な場合の医師支援に有用CRあるいはEDと有意な相関を示す因子として、体温、年齢、骨髄異形成症候群(MDS)を経ずに発症した白血病(de-novo leukaemia)か抗がん剤治療あるいは先行する血液疾患に起因する二次性の白血病か、ヘモグロビン、血小板数、フィブリノーゲン、血清乳酸脱水素酵素濃度が確認された。CRの確率は、細胞遺伝学的および分子的リスクがある場合(スコア1)は12~91%、ない場合(スコア2)は21~80%であった。EDリスクの予測値はスコア1の場合は6~69%、スコア2の場合は7~63%であった。リスクスコアの予測能は個々の患者コホートにおいて確定された(CRスコア1:10~91%、CRスコア2:16~80%、EDスコア1:6~69%、EDスコア2:7~61%)。著者は、「AMLスコアは、AML以外は健常な高齢患者に対して強化寛解導入療法を施行した場合のCRおよびEDの確率の予測に使用可能である」と結論し、「これらの情報は、治療法の決定が困難な場合の医師の支援に有用と考えられる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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心不全患者へのテレモニタリング、大規模試験では転帰の改善が認められず

大規模試験の結果、テレモニタリングは心不全患者の転帰を改善しないことが明らかにされた。米国エール大学のSarwat I. Chaudhry氏ら研究グループによる。米国では治療の進歩に比して改善がみられない、心不全患者の再入院を減らすための治療戦略開発が国家的優先事項として検討されているという。テレモニタリングは有望な管理戦略とみなされ、その有効性について小規模研究では示されていた。NEJM誌2010年12月9日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載より。1,653例をテレモニタリング群と通常ケア群に無作為に割り付け追跡研究グループは、全米33の循環器クリニックで登録された心不全患者のうち、直近30日以内に入院経験のある1,653例を、テレモニタリング群(826例)または通常ケア群(827例)に無作為に割り付け追跡した。試験で用いられたテレモニタリングは、市販の「Tel-Assurance」という電話の双方向音声応答システムで、患者の症状や体重、うつなどに関するデータを毎日集め主治医がチェックするというもの。具体的には、患者がフリーダイヤルで電話をかけると自動音声の質問が流れ、患者が電話のキーパッドで回答したデータがシステムのサイトに集約され、平日毎日、サイトコーディネーターによってチェックされた。質問にはあらかじめ主治医が注意すべきとしたバリアンスが組み込まれており、バリアンスが発生した場合は患者に連絡がされ、文書も提供された。患者からシステムに2日以上アクセスがないとシステムから呼び出し注意がされ、それでも応答がない場合はシステムスタッフから連絡がされた。アドヒアランスを最大とするため患者には主治医が毎日チェックしていると伝えられ、また緊急事態のリスクを最小化するため、患者には急を要するあらゆる不安を感じた場合はダイレクトに主治医に連絡するよう伝えられていた。主要エンドポイントは、登録後180日以内の全原因による再入院または全死因死亡とした。副次エンドポイントには心不全による入院、入院日数、入院回数などが含まれた。患者の年齢中央値は61歳で、42.0%が女性、39.0%が黒人だった。再入院率、180日死亡率などいずれも有意差は認められず主要エンドポイントは、テレモニタリング群52.3%、通常ケア群51.5%で、両群の差は0.8ポイント(95%信頼区間:-4.0~5.6、χ二乗検定によるP=0.75)であり、有意差は認められなかった。全原因による再入院は、テレモニタリング群49.3%、通常ケア群47.4%(両群差:1.9ポイント、95%信頼区間:-3.0~6.7、χ二乗検定によるP=0.45)、死亡については、テレモニタリング群11.1%、通常ケア群11.4%(同:-0.2ポイント、-3.3~2.8、P=0.88)であり、副次エンドポイント、主要エンドポイントやその各項目の発生までの期間について両群間に有意差は認められなかった。有害事象は報告されなかった。Chaudhry氏は「退院間もない心不全患者へのテレモニタリングが、転帰改善に結びつくことはなかった」と結論したうえで、「この結果は、疾病管理戦略の採用に際しては、あらかじめ徹底かつ独立した評価を行うことが重要であることを示すものでもある」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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スタチンの肝機能異常の改善効果が明らかに:GREACE試験事後解析

スタチン治療は、軽度~中等度の肝機能異常患者に対して安全に施行可能で、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させることが、ギリシャのテッサロニキ・アリストテレス大学Hippokration病院のVasilios G Athyros氏らによるGREACE試験の事後解析で明らかとなった。非アルコール性脂肪肝によると考えられる肝機能異常は、欧米人や日本人の約33%にみられると推定され、スタチンはこのような患者の肝機能や心血管イベントの改善に有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月24日号)掲載の報告。スタチン治療例と非治療例で初回再発リスクの低下効果を評価研究グループは、肝機能検査異常患者に対するスタチン治療の安全性と有効性の評価を目的に、Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease Evaluation(GREACE)試験の事後解析を行った。GREACE試験は、75歳未満、LDLコレステロール>2.6mmol/L、トリグリセリド<4.5mmol/Lの冠動脈心疾患患者1,600例を対象に、テッサロニキ・アリストテレス大学ヒポクラテス病院で実施されたスタチン治療と通常治療(スタチンを含む場合あり)を比較するプロスペクティブな無作為化試験であった。今回の事後解析の主要評価項目は、肝機能異常患者のうちスタチン治療を受けなかった症例に対する、中等度の肝機能異常(血清ALT値、AST値が正常上限値の3倍未満までと定義)を有し、スタチン治療を受けた患者の初回再発心血管イベントのリスク低下効果とした。このリスク低下は、スタチン治療例と非治療例における肝機能正常例の割合で評価した。スタチン治療により心血管イベントの相対リスクが68%低下ベースラインにおいて非アルコール性脂肪肝によると考えられる中等度の肝機能異常を呈した患者437例のうち、スタチン治療(主にアトルバスタチン〈商品名:リピトール〉24mg/日)を受けた群(227例)は検査値が改善した(p<0.0001)のに対し、スタチン治療を受けなかった群(210例)はALT値/AST値がさらに上昇した。心血管イベントは、スタチン治療群の10%(22/227例)で発生(3.2イベント/100人・年)したのに対し、非スタチン治療群では30%(63/210例)に認められ(10.0イベント/100人・年)、スタチン治療による相対リスク低下率は68%であった(p<0.0001)。この肝機能異常患者における心血管疾患に関するベネフィットは、肝機能が正常な患者に比べて大きかった(p=0.0074)。肝機能正常者の心血管イベント発生率は、スタチン治療群14%(90/653例、4.6イベント/100人・年)に対し、非スタチン治療群23%(117/510例、7.6イベント/100人・年)、相対リスク低下率は39%であった(p<0.0001)。スタチン治療群(880例)のうち、肝臓関連の有害事象で治療を中止したのは7例(<1%)であった。著者は、「非アルコール性脂肪肝によると考えられる軽度~中等度の肝機能異常患者に対するスタチン治療は安全に施行可能であり、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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文化の異なる国家間にみる飲酒パターンと虚血性心疾患リスクの違い

生活習慣が対照的な北アイルランドとフランス2ヵ国の50代男性の、飲酒パターンが虚血性心疾患に及ぼす影響を調査した結果、毎日決まって中等量(平均アルコール消費量32.8g、参考値:ビール中瓶20g http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html)の飲酒を習慣とするフランス男性の虚血性心疾患リスクは低く、一方、1日の平均アルコール消費量、飲酒者割合ともフランスより低かったものの不節制飲酒(毎週1日以上50g以上消費)が多くみられた北アイルランド・ベルファストに住む男性の同リスクは高いことが明らかにされた。フランス・トゥールーズ医科大学校疫学部門/INSERM U558のJean-Bernard Ruidavets氏らの報告による。BMJ誌2010年11月27日号(オンライン版2010年11月23日号)掲載より。生活習慣、虚血性心疾患発病率が対照的と知られるフランスと北アイルランドで評価飲酒パターンと虚血性心疾患との関連については、相関、逆相関ともに報告があり、またワイン、ビール、蒸留酒といった酒類別に言及したものもあるが、生活習慣や酒癖が対照的と知られる国と国との比較を検討したものはほとんどないという。そこでRuidavets氏らは、虚血性心疾患の発病率が対照的である両国(フランスは低く、北アイルランドは高い)における関連について、「PRIME(Prospective Epidemiological Study of Myocardial Infarction)」試験のコホートデータを解析し評価した。評価は、週のアルコール消費、不節制飲酒(週1日以上50g以上アルコール消費)の発生率、定期飲酒(毎週1日以上、1回のアルコール消費は50g未満)の発生率、アルコール摂取量、飲酒頻度、酒の種類について包括的に行われた。コホートは10年追跡され、その間に起きたすべての冠動脈イベントが前向きに記録され、Cox比例ハザード回帰分析法により、基線における被験者の特徴と、心筋梗塞または冠動脈死(hard冠動脈イベントと規定)との関連、および狭心症イベントとの関連が評価された。hard冠動脈イベント発生、1,000人年あたり北アイルランド5.63、フランス2.78解析されたコホートは、1991~1994年に、北アイルランド(ベルファスト)の1施設から2,405例、フランス(リール、ストラスブール、トゥールーズ)の3施設から7,373例、いずれも50~59歳の虚血性心疾患を有していない被験者、計9,778例だった。1週間に1日以上飲酒をする人は、ベルファストでは1,456例(60.5%)、フランスは6,679例(90.6%)だった。 そのうち、毎日飲むと回答した人は、ベルファストでは12%(173/1,456例)だったが、フランスでは75%(5,008/6,679例)だった。平均アルコール消費量は、ベルファストは22.1g/日、フランスは32.8g/日だった。不節制飲酒者の割合は、ベルファスト9.4%(227/2,405例)に対して、フランス0.5%(33/7,373例)だった。追跡期間10年の間に、虚血性心疾患イベントはコホート全体(9,778例)で683例(7.0%)が記録された。内訳は、hard冠動脈イベント322例(3.3%)、狭心症イベント361例(3.7%)だった。hard冠動脈イベントの年間発生率は、1,000人年あたり、ベルファストでは5.63(95%信頼区間:4.69~6.69)、フランスでは2.78(同:2.41~3.20)だった。多変量(代表的な心血管リスク因子、登録施設)調整後の、定期飲酒者との比較によるhard冠動脈イベントのハザード比は、不節制飲酒者1.97(95%信頼区間:1.21~3.22)、非飲酒者2.03(同:1.41~2.94)、元飲酒者1.57(同:1.11~2.21)だった。ベルファストとフランスとの比較によるhard冠動脈イベントのハザード比は、補正前は1.76(同:1.37~2.67)、飲酒パターンとワイン飲酒で補正後は1.09(同:0.79~1.50)だった。なおワイン飲酒者だけの解析では両国とも、hard冠動脈イベントリスクは低かった。(朝田哲明:医療ライター)

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減量達成後は、タンパク質多め、GI指数低めの食事が体重減少を維持

減量達成後の体重減少維持には、タンパク質が多め、グリセミック指数(GI)は低めの食事が、長続きする食事療法であり体重減少維持に結びつくことが、ヨーロッパ8ヵ国で行われた無作為化試験「Diogenes(Diet, Obesity, and Genes)」の結果、明らかになった。スクリーニングを受けた平均年齢41歳、平均BMI値34の1,209例のうち、938例に対しまず8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入が行われ、基線体重より8%以上の体重減少に達した773例を、5つの食事療法群に無作為化し26週間にわたり比較検討した結果による。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。5つの食事療法群に無作為化し、いずれが長続きし体重減少を維持するかを検討本試験は、体重減少後のリバウンドおよび肥満関連リスクを抑制するために有効な食事療法を、タンパク質量およびGI値に着目して評価することを目的とした。評価された5つの食事療法群は、(1)低タンパク(総エネルギーの13%)・低GI食群、(2)低タンパク・高GI食群、(3)高タンパク(総エネルギーの25%)・低GI食群、(4)高タンパク・高GI食群、(5)対照群(各国食事療法ガイドラインに準じ中タンパクで、GI値は不問)であった。群間の摂取タンパク質量の高低差は12%を、GI値の高低差は15単位を目標とされた。食欲と体重管理能力を調べるため、総エネルギー量に制限は設けられなかったが、5群とも脂肪摂取は中等度(総エネルギーの25~30%)となるよう調整された。目標摂取量が達成できるよう、家族に対するレシピ提供、調理法や行動のアドバイスが行われ、参加国のうち2ヵ国では栄養量が調整済みの食品が無料で配布された。被験者は、体重減少維持試験当初6週間は隔週で、その後は1ヵ月に1回、食事カウンセリングを受けた。また維持試験介入前3日間、4週後、26週後に食事量を量り記録することが求められた。低タンパク・高GI食群のみリバウンドが有意に維持試験を完了したのは548例(71%)だった。試験脱落者が少なかったのは、高タンパク食群26.4%、低GI食群25.6%だった(低タンパク・高GI食群37.4%との比較で、それぞれP=0.02、P=0.01)。最初に行われた8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入時の体重減少は、平均11.0kgだった。その後の維持試験完了者548例について解析した結果、低タンパク・高GI食群のみ有意なリバウンドが認められた(1.67kg、95%信頼区間:0.48~2.87)。維持試験被験者(773例)のintention-to-treat解析の結果、体重再増加は、高タンパク食群の方が低タンパク食群よりも0.93kg(95%信頼区間:0.31~1.55)少なく、また、低GI食群の方が高GI食群よりも0.95kg(同:0.33~1.57)少なかった(いずれもP=0.003)。試験完了者の解析結果も同様だった。食事療法に関する有害事象は群間に有意な違いは認められなかった。なお栄養摂取量について、高タンパク食群の方が低タンパク食群と比べて、タンパク質量が5.4%多く、炭水化物量は7.1%低かった(両群間比較のP

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妊娠第1期のPPI投与、先天異常のリスク増大と有意な関連認められず

妊娠第1期の妊婦にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与しても、産児の主要な先天異常リスクの増大とは有意な関連が認められなかったことが、大規模コホート試験の結果、明らかにされた。デンマークStatens Serum Institut疫学部門のBjorn Pasternak氏らがデンマークで1996~2008年に生まれた新生児約84万児を対象とした調査の結果による。妊娠中の胃食道逆流症状はよくみられるが、妊娠初期におけるPPI曝露と先天異常リスクに関するデータは限定的なものしかなかった。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。デンマークの新生児、約84万児のPPI使用と先天異常リスクとの関連を調査調査は、妊娠中のPPI曝露と先天異常リスクとの関連を評価するため、1996年1月~2008年9月にデンマークで生まれた全新生児84万968児を対象に行われた。PPI曝露、先天異常、潜在的交絡因子に関するデータは、各種の国内登録データベースから収集。主要な先天異常とは、出生後1年以内に診断されたものとし、EUROCAT(European surveillance of congenital anomalies)に即して分類された。本調査における主要解析は、受胎前4週~妊娠12週と、妊娠0~12週(妊娠第1期)における、PPI使用について評価が行われた。妊娠第1期、PPI曝露群と非曝露群の先天異常有病率のオッズ比は1.10調査対象期間中に生まれた84万968児のうち、主要な先天異常が認められたのは2万1,985例(2.6%)だった。受胎前4週~妊娠第1期にPPIに曝露されていたのは5,082児だった。そのうち主要な先天異常が認められたのは174例(3.4%)だった。一方、同期間中に母親がPPIに曝露されていなかった83万5,886児のうち、主要な先天異常が認められたのは2万1,811児(2.6%)であり、有病率の補正後オッズ比は1.23(95%信頼区間:1.05~1.44)だった。また、妊娠第1期に限ってみてみると、PPIに曝露されていたのは3,651児で、そのうち主要な先天異常が認められたのは118例(3.2%)であり、有病率の補正後オッズ比は1.10(95%信頼区間:0.91~1.34)だった。先天異常リスクは、妊娠第1期間中の服用期間別といった副次解析や、PPIの処方を受けていて服用の機会があったという母親に限定した副次解析でも、有意な増大は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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低用量のEPA-DHA摂取、心筋梗塞患者のイベント抑制に効果は認められず

心筋梗塞後で最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている患者に、海産物由来のn-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、また植物由来のα-リノレン酸(ALA)の低用量摂取を行っても、主要心血管イベント発生率が有意には低下しなかったことが報告された。オランダWageningen大学栄養学部門のDaan Kromhout氏らAlpha Omega試験グループが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照臨床試験による。これまで行われた前向きコホート試験や無作為化対照試験により、n-3系脂肪酸には心血管疾患に対して保護作用があるとのエビデンスが得られていた。NEJM誌2010年11月18日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載より。60~80歳の心筋梗塞後患者4,837例に40ヵ月間摂取してもらい追跡Alpha Omega試験は、オランダ国内32病院で、心筋梗塞後に最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている60~80歳の4,837例(男性78%)を対象に行われた。被験者は40ヵ月間、次の4つの試験用マーガリンのうちの一つを摂取するよう無作為化された。(1)EPA-DHA配合添加マーガリン(EPA-DHAを1日400mg付加摂取が目標)、(2)ALA添加マーガリン(ALAを1日2g付加摂取が目標)、(3)EPA-DHAとALAが添加されたマーガリン、(4)プラセボマーガリン。主要エンドポイントは、致死性・非致死性心血管イベントおよび心臓介入から成る主要心血管イベントの発生率であった。データはCox比例ハザードモデルを用いintention-to-treat解析され検討された。EPA-DHAまたALA摂取でも主要心血管イベント発生は低下せず被験者が摂取した1日のマーガリン量は平均18.8gだった。(1)~(3)のマーガリンを摂取した群においては、EPAは226mg、DHAは150mg、ALAは1.9gの摂取増加がみられた。追跡期間中、主要心血管イベントは671例(13.9%)で発生した。EPA-DHA摂取、またALA摂取のいずれによっても、同イベント発生率は低下しなかった。EPA-DHA摂取群のハザード比は1.01(95%信頼区間:0.87~1.17、P=0.93)、ALA摂取群は同0.91(0.78~1.05、P=0.20)であった。ただ、女性のみを対象としたサブグループ解析の結果では、ALA摂取群で主要心血管イベント発生率の低下が、プラセボまたはEPA-DHA摂取群と比べて、有意に近い関連で認められた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.51~1.03、P=0.07)。有害事象については、4群間で有意差は認められていない。(武藤まき:医療ライター)

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