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「症状出現」からの時間 と 「来院」からの時間。 臨床転帰に与える影響は?: CREDO-Kyoto

直接的経皮的冠動脈インターベンション(Primary PCI)は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において中心的な役割を果たし、「症状出現」や「来院」からバルーン拡張までを短時間で行うことが米国や欧州のガイドラインで推奨されている。しかし、これまで、「来院」からの時間の短縮化に関しては、否定的な結果も報告されてきた。今回、わが国の大規模コホート研究CREDO-Kyoto AMI investigatorsから、PCIを施行したST上昇型心筋梗塞(STEMI)例において、「症状出現」から初回バルーン拡張までの短時間化は、3年臨床転帰を良くするが、「来院」から初回バルーン拡張までの短時間化による利益は、「症状出現」からの時間が短い患者に限られることが、報告された。研究グループは、臨床転帰を改善するためには、「症状出現」からバルーン拡張までの短時間化が推奨されると結論した。BMJ誌オンライン版2012年5月23日掲載の報告。対象は、わが国の3次救急病院26施設で治療された症状発現24時間以内にPrimary PCIを施行したSTEMI 3,391例とした。主要エンドポイントは、死亡、慢性心不全の複合エンドポイントに設定された。主な結果は以下のとおり。 ・「症状出現」から初回バルーン拡張までの時間で比較すると、バルーン拡張までの時間が3時間未満の患者は、3時間以上の患者と比較して、死亡とうっ血性心不全の複合エンドポイントが有意に低かった〔相対リスク減少29.7%、13.5%(123/964) vs 19.2%(429/2,427)、P

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サイノシュアー株式会社

1991年の設立以降、多くの新しいテクノロジーを開発してきたサイノシュアー。現在、そのソリューションも増え、幅広いレーザー技術を提供している。 2005年のNASDAQ株式上場後は、業界のリーダーとして、欧米のみならず世界各国に向けた製品の開発・提供を目指してきた。 60ヵ国以上の国々にさまざまなソリューションを提供しており、2004年時に4社だった現地法人は現在11社。質の高いカスタマーサポートの提供を目指して現在も日々成長している。この成長について同社は、「“継続的なイノベーションを起こす”というビジョンのもと、幅広く充実したアプリケーションの開発・提供など、新たな分野を開拓してきたことで実現できた」としている。昨今、多くの企業が研究開発への予算削減を行っている中、同社は未来への投資を継続して行っている。世界に張り巡らされた各拠点の日々のカスタマーサービスを充実させ、そのインプットを増やすことで、今後もさまざまなイノベーションを継続的に生み出し、お客様とともに歩んでいくことを目指すグローバル企業である。History1991年Horace Furumoto博士によりCynosure社誕生1992年パルスダイレーザーを導入1996年アジアに現地法人を開設1996年世界初の脱毛用ロングパルスアレキサンドライトレーザー(LPIR)を開発2000年日本オフィス開設2003年Michael R. Davinが社長兼CEOに任命される2004年カナダに事業拡大2004年世界初のマルチプレックステクノロジーを導入2005年NASDAQに上場2007年革命的なレーザー脂肪融解の導入2008年医療・美容レーザーにおける最大企業となる2009年韓国およびメキシコにオフィス開設2010年MPX製品の拡大(Elite MPX)TriPlex(3波長搭載技術)の開発2011年Eleme Medical買収。ソリューションの拡大2012年SideLazeテクノロジーの開発美容トレンド&テクノロジー誌による受賞一覧Best Customer Service & SupportMost Diverse Hair Removal Laser for All Skin TypesBest Fractionalized Technology (non-ablative)Most Promising New Technology (Laser Lipolysis)Best Body Contouring DeviceBest Laser for Vascular MalformationsBest Hair Removal Laser(ケアネット)

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キャンデラ株式会社

第111回日本皮膚科学会総会では、医療機器についても多数のメーカーによりブースが設けられていた。キャンデラ株式会社も、そのうちの一社である。Science, Results, Trustキャンデラ株式会社は、米国Candela Corporationの日本法人として1989年に設立され、四半世紀にわたりEBMを重視した質の高い医療用レーザー機器を中心に扱ってきた。臨床面からメンテナンスまで信頼のおけるサポートに力を入れている、同社の取り扱い製品を紹介する。製品紹介【GentleLASE】ロングパルスアレキサンドライトレーザー皮膚に存在するメラニン色素に対し選択的に吸収されやすい波長を持つロングパルスアレキサンドライトレーザー装置ジェントルレーズは良性の色素性疾患治療に有効。スポットサイズも従来機種に比べ非常に大きいため、乱反射による光エネルギーのロスが少なくレーザービームはより深部まで到達でき、また大口径のスポットは広範囲のメラニン疾患に対しても大変効率良く治療することが可能である。【GentleYAG】ロングパルスヤグレーザー皮膚組織の凝固を主目的とするロングパルスヤグレーザー装置。皮膚深達性に優れ皮膚中層から深層にまで熱エネルギーを伝達することができる。また、ターゲットに応じてパルス幅を0.25~250ミリ秒まで可変することが可能で、周囲の正常組織への熱損傷を最小限に抑えることに適している。操作性を重視し、大口径の照射スポット、光ファイバーによる導光方式を採用。レーザー照射は最高で毎秒2回の連続照射が可能である。【Vbeam】ロングパルスダイレーザーいわゆる赤アザのレーザー治療は1960年代からすでに始められ、ルビーレーザー、炭酸ガスレーザー、アルゴンレーザーなどさまざまな波長のレーザーによる治療が研究されてきた。ローダミン色素を用いた波長577ナノメートルの色素レーザーによる臨床報告以降、1990年代からはパルス波ダイレーザーによる治療が最も安全かつ有効であると云われている。キャンデラ社は初期の段階からパルス波色素レーザーの医家向けの開発を手がけており、キャンデラ社ダイレーザーを使用した医学会誌での臨床論文の総数も300を超えているという。キャンデラ社製Candela Vbeamは現在、世界で最も親しまれている血管病変治療用のダイレーザーの1つであり、平成24年6月現在、62ヵ国、1800台以上が日々臨床使用されている。Vbeamから発振される波長595ナノメートルのレーザー光は、血液中のヘモグロビンに選択的に吸収されるという特徴を持つ。毛細血管が凝集した病変部では、ヘモグロビンがレーザーの光エネルギーを吸収し、熱変換することで血管内壁が熱破壊され、血管を閉塞させる。また、Vbeamはレーザーのパルス幅(照射時間)を調節できるという新機能を有しており、これにより毛細血管の血管径に応じた照射時間を適宜設定することが可能となった。さらに、内蔵のダイナミッククーリングディバイス(DCD)がレーザーに同期し、レーザー照射直前に寒剤を吹きつけることにより皮膚を保護する。当治療は保険適応の対象となっている。対象疾患: 単純性血管腫、苺状血腫、毛細血管拡張症の治療【AlexLAZR】Qスイッチアレキサンドライトレーザー皮膚良性色素性疾患治療用レーザー装置アレックスレーザーは太田母斑などの「青アザ」の原因となる皮膚に含まれる異常メラニン色素に対し、選択的に吸収されやすい波長を有している。また、Q-スイッチと呼ばれるシステムによりレーザーパルスの照射時間が非常に短く、周辺の正常組織への影響を最小限に抑えた安全な治療が可能である。メラニンだけを選択的に破壊できるメカニズムは1983年にDr. AndersonとDr. Parrishにより提唱されたSelective Photothermolysis理論(選択的光加熱分解)に基づいており、メラニンに吸収されやすい波長を持つレーザーで、メラニンの熱緩和時間(~50ナノ秒)以内にレーザーパルスを照射することにより選択性が生じ、安全な治療が可能になったとのこと。当治療も保険適応の対象となっている。(ケアネット)

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CKD患者では血糖値の日内変動が大きく、食後血糖の急激な上昇が認められた

慶応義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科の細谷幸司氏は、第55回日本腎臓学会の口演にて、持続血糖測定装置(CGMs)を用いて観察した慢性腎臓病(CKD)患者の血糖日内変動について報告した。CKD患者では非糖尿病であっても、血糖日内変動が大きく、とくに食後高血糖が著明であることが明らかになった。飲酒と肝酵素上昇のどちらがCKDに関与しているのかCDK患者における糖代謝異常やインスリン抵抗性の亢進が報告されており、その原因として、腎機能低下に伴う炎症性サイトカインや活性酸素の産生、貧血、脂肪細胞機能不全、尿毒症、栄養不良、副甲状腺ホルモンの亢進、ビタミンD欠乏、代謝性アシドーシスなどが報告されている1)。しかし、CKD患者におけるHbA1cや空腹時血糖の実態は正確に把握されておらず、1日の血糖値の推移についても正確に調べられていなかった。そこで細谷氏らは、近年実用化されているCGMsを用い、CKD患者の血糖日内変動の実態について検討を行った。細谷氏らが用いたCGMsは、メドトロニック社のミニメドCGMS-Goldであり、皮下に留置したセンサを介して組織間質液中のグルコース濃度を24時間連続測定し、携帯型のモニタシステムに記録される。過去において、維持血液透析患者や腹膜透析患者の血糖変動を測定するためにCGMsを用いた検討はあったが、非糖尿病の非透析導入のCKD患者に対して、CGMsを用いて血糖日内変動を調べた研究はまだなかった。CKD患者では食後高血糖によるグルコーススパイクが心血管イベントに影響か細谷氏らは、CKD群として非糖尿病性腎症で透析導入目的にて入院したCKDステージ5の患者16名、またコントロール群として腎生検目的で入院した6名を含む正常者10名について、CGMsを用い36~48時間の血糖連続測定を行った。CGMsで得られた血糖日内変動のパラメータとして、平均血糖値、血糖変動値(SD値の平均)、血糖曲線下面積(AUC)、食後2時間の最大血糖値と最小血糖値の差、食後のAUCを比較した。コントロール群とCKD群との比較には、Mann-WhitneyのU検定を用いた。患者背景は、コントロール群とCKD群において年齢はそれぞれ53.9±19.1歳と57.67±11.4歳、HbA1cは5.0±0.41%と5.39±0.50%、eGFRは68.2±22.3mL/分と5±1.58mL/分(p<0.0001)であった。コントロール群およびCKD群で有意差のあった血液検査値は、尿素窒素(BUN)、クレアチニン値、総コレステロール、アルカリホスファターゼ(ALP)、GOT、尿酸、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット、血小板であった。血糖の日内変動パターンは、コントロール群では24時間を通して血糖値が安定していたのに対し、CKD群では血糖値の日内変動が大きく、とくに食後の血糖上昇が著明であった。コントロール群とCKD群において24時間血糖と夜間血糖を比較したところ、24時間血糖では平均血糖値(p<0.005)、血糖変動値(p<0.05)、AUC(p<0.005)のいずれにおいてもCKD群の方で有意に高かった。一方、夜間血糖ではCKD群の方が高い傾向にあるものの有意差はなかった。また、食後2時間血糖値と空腹時血糖の差は、朝食、昼食、夕食においてCKD群でコントロール群よりも大きく、とくに朝食では有意差(p<0.05)が認められた。全食事での比較においてもCKD群で食後と空腹時血糖の差は有意に大きかった(p<0.05)。食後2時間のAUCの比較では、朝食(p<0.005)、昼食(p<0.05)、夕食(p<0.05)、全食事(p<0.005)のすべてにおいて、CKD群が有意に高いことが示された。これらの結果より、細谷氏は「CKDステージ5の患者では腎機能の正常者と比べて、24時間平均血糖および血糖日内変動が増大し、とくに食後高血糖が著明に認められた」と述べた。持続的な高血糖よりも、グルコーススパイクと呼ばれる食後高血糖のような急峻な血糖変動が動脈硬化進展のリスクファクターである可能性が指摘されている2)。細谷氏は、CKD患者では非糖尿病であっても血糖日内変動が大きく、食後の間欠的な高血糖が認められ、このグルコーススパイクが心血管疾患に影響を与える可能性があると考察した。参考文献1)El-Atat FA et al:J Am Soc Nephrol 2004; 15: 2816-28272)Esposito K et al: Circulation 2004;110:214-219

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高齢者の非小細胞肺がんに化学放射線療法は有益 日本臨床腫瘍研究グループ無作為化第III相試験の結果(JCOG0301)

化学放射線療法が、高齢者の局所進行非小細胞肺がんの全生存期間を改善するかは知られていない。Atagi氏らは、胸部放射線照射+低用量連日カルボプラチン併用療法が、放射線単独療法に比べ、高齢者の非小細胞肺がん患者の生存期間を延長するか評価している。結果の概要は昨年11月開催の第52回日本肺癌学会総会で発表されたが、その詳細がThe Lancet Oncology 2012年5月21日オンライン版に掲載された。試験は、日本臨床腫瘍研究グループ(以下JCOG)が無作為化比較第III相試験として実施したもの(JCOG0301)。対象は2003年9月1日から2010年5月27日に登録された70歳以上の切除不能StageIII非小細胞肺がん患者200例で、化学放射線療法群(60Gy照射+低用量カルボプラチン30mg/m2/日x週5日)と放射線療法単独群(60Gy照射x週5日)に、無作為に100例ずつ割り付けられた。主要エンドポイントは全生存期間。試験の結果、全生存期間の中央値は、化学放射線療法群で22.4ヵ月(95%CI:16.5~33.6)、放射線療法単独群で16.9ヵ月(95%CI:13.4~20.3)であった(HR:0.68、95.4%CI:0.47~0.98、p=0.0179)。有害事象については、Grade3/4の白血球減少・好中球減少・血小板減少を含む血液毒性、Grade3の感染が化学放射線療法群に多くみられた。Grade3/4の肺炎および晩期肺障害の発生は両群とも同等であった。化学放射線療法群の全生存期間が良好であったことから、JCOG効果・安全性評価委員会は、この試験の早期発表を推奨している。切除不能局所進行非小細胞肺がんの高齢患者にとって、化学放射線療法は放射線単独療法より臨床上有意な治療ベネフィットがあり、標準治療として考えられるべきであると述べている。(ケアネット 細田 雅之)

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日本人統合失調症患者の認知機能に影響を与える処方パターンとは

統合失調症患者に対する抗精神病薬の大量投与や多剤併用は認知機能に影響を与えると考えられる。産業医科大学の堀氏らは、日本人統合失調症患者において抗精神病薬が認知機能に与える影響を検討した。Int J Psychiatry Clin Pract誌2012年6月号掲載。日本人慢性期統合失調症患者136例を対象に、第二世代抗精神病薬(SGA)のみを服用している患者(SGA単剤群)と2種類以上の抗精神病薬を服用している患者(多剤併用群)の認知機能を比較し、検証した。認知機能は統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)を用いて評価した。主な結果は以下のとおり。 ・全症例において、BACS-J総合スコアと抗精神病薬のクロルプロマジン換算量との間に有意な負の相関が認められた(r= -0.43、p

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DPP-4阻害薬か、基礎インスリンか? -メトホルミン難治性2型糖尿病-(Lancet 6月16日発表)

コロンビア ハベリアナ大学のPablo Aschner氏は、16日、メトホルミン血糖コントロール不十分で、インスリン投与経験のない2型糖尿病における追加併用薬は、DPP-4阻害薬(シタグリプチン)より持効型インスリン (インスリングラルギン)が効果の面で優れており、安全面でも大きな問題がないことをLancet誌に発表した。これは17ヵ国、96施設が参加して実施されたEASIE(Evaluation of Insulin Glargine versus Sitagliptin in Insulin-naive Patients)試験の結果。研究費提供元はサノフィ。[国内での主たる販売名] メトホルミン・・・メトグルコ シタグリプチン・・・ジャヌビア、グラクティブ インスリングラルギン・・・ランタスメトホルミンを投与してもコントロール不良(HbA1cが7~11%)の、インスリン未治療の2型糖尿病患者(BMI 25~45、35~70歳)が対象となった。対象患者はメトホルミン+インスリングラルギン併用群250例(以下、基礎インスリン併用群)、メトホルミン+シタグリプチン併用群265例(以下、シタグリプチン併用群)のいずれかに無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治療24週後のHbA1cの変化。主な結果は、下記のとおり。1. 治療24週後のHbA1cの低下は、基礎インスリン併用群で有意に大きかった (基礎インスリン併用群1.72%低下 vs シタグリプチン併用群1.13%低下、  平均差=-0.59%、95%信頼区間=-0.77--0.42、P<0.0001)。2. HbA1c 7.0%未満達成率は、基礎インスリン併用群で有意に多かった  (68% vs 42%、P<0.0001)。3. HbA1c 6.5%未満達成率も、基礎インスリン併用群で有意に多かった  (40% vs 17%、P<0.0001)。4. 低血糖の頻度は基礎インスリン併用群のほうが有意に多かった (4.21回/患者・年 vs 0.50回/患者・年、P<0.0001)。  重篤な低血糖は3例 vs 1例。5. 重篤な有害事象は基礎インスリン併用群で15例(6%)、  シタグリプチン併用群で 8例(3%)。  有害事象による治療中止例は2例 vs 4例。(ケアネット 藤原 健次)

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ベアメタルステント留置後の超遅発性ステント血栓症の原因は? :小倉記念病院

これまでベアメタルステント(BMS)留置後にvery late stent thrombosis(VLST)が発生する病態生理学的なメカニズムは明らかになっていなかった。小倉記念病院の山地氏らは、明らかなステント血栓症を有するBMS留置102例の解析により、留置後3年超のVLSTの原因として、ステント内新アテローム性動脈硬化の破裂が、重要な役割を果たしている可能性があることをCirc Cardiovasc Interv誌2012年2月号にて報告した。対象は、2002年9月~2010年2月の期間で、明確なステント血栓症を有したBMS留置102例であり、組織病理学的評価と血栓吸引を施行したステント血栓症と無関係の急性冠症候群(ACS)42例をコントロールとした。主な結果は以下のとおり。 ・Early ST(EST、30日以内)40例、Late ST(LST、31~365日)20例、およびVLST(1年超)42例であった。・泡沫状マクロファージ、コレステロール結晶、薄い線維性被膜のようなアテローム性動脈硬化プラーク断片は、EST、VLST、LSTのそれぞれにおいて、23%、31%、10%に観察された。・アテローム性動脈硬化の断片は、主に3年超のVLSTまたは7日以内のESTにみられた。・ステント血栓症とACSの患者から採取した吸引血栓は、組織学的に区別できなかった。(ケアネット 鈴木 渉)

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心血管疾患リスク予測モデル、バイアスの影響が明らか

既存の心血管疾患リスク予測モデルは有用であり、これらモデルの直接比較はベネフィットをもたらすと考えられるが、比較試験の論文はアウトカムの選択バイアスや楽天主義バイアスの影響を受けていることが、ギリシャ・Ioannina大学のGeorge C M Siontis氏らの検討で示された。臨床での使用が推奨されている心血管疾患リスク予測モデルの中には、異なる集団やアウトカムに関して開発され、妥当性の検証が行われているものがある。最も一般的で広く普及しているリスクモデルでも、その識別、キャリブレーション、再分類に関する予測能はほとんど知られていないという。BMJ誌2012年6月2日号(オンライン版2012年5月24日号)掲載の報告。予測モデルを比較した試験を系統的にレビュー研究グループは、確立された心血管リスク予測モデルの比較に関するエビデンスの評価を行い、相対的な予後予測能の比較情報を収集するために、予測モデルの比較試験を系統的にレビューした。2011年7月までにMedlineに登録され、2つ以上のモデルを比較した論文を検索した。適格論文の引用文献や参考文献の調査も行った。試験デザイン、リスクモデル、アウトカムに関する情報を抽出して、モデルの相対的な検出能(識別能、キャリブレーション、リスクの再分類)を評価し、アウトカムの決定や、新規導入モデルおよび著者開発モデルに有利に働く楽天主義バイアス(optimism bias)の検討を行った。8モデルの比較論文を解析、バイアスの影響は明らか8つのモデルの56種の一対比較に関する20の論文が解析の対象となった。8つのモデルは以下のとおり。Framinghamリスクスコアの2つの改訂版、assessing cardiovascular risk to Scottish Intercollegiate Guidelines Network to assign preventative treatment(ASSIGN)スコア、systematic coronary risk evaluation(SCORE)スコア、Prospective Cardiovascular Münster (PROCAM)スコア、QRESEARCH cardiovascular risk(QRISK1、QRISK2)アルゴリズム、Reynoldsリスクスコア。識別能については、56の比較のうち受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)に基づく相対的な誤差が5%を超えたのは10のみであったが、これ以外の識別能の評価指標は一致率が低かった。キャリブレーション能は38の比較について報告されていたが、一貫性はまったくなかった。リスクの分類/再分類の報告は少なく、10の比較のみだった。比較された2つのモデルの双方が、当該アウトカム用に独自に開発され妥当性の検証が行われていたのは13の比較のみで、32の比較では一方のみが独自開発であり、残りの11の比較ではいずれのモデルも独自開発ではなかった。一方のみ独自開発のモデルの比較のうち25の比較(78%)では、アウトカム適合モデルのほうが、比較されるモデルよりもAUCが有意に良好だった(p<0.001)。さらに、独自開発モデルの論文の筆者は、常に自分が開発したモデルのAUCが優れると報告していた(新規導入モデルに関する5論文とその後の評価を行った3論文)。著者は、「これらの心血管疾患リスクの予測モデルは十分に確立されたものである。これらの直接比較はベネフィットをもたらすと考えられるが、論文がアウトカムの選択バイアスや楽天主義バイアスの影響を受けていることも明らかだ」と結論し、「新規モデルと既存の確立されたモデルの比較による改良は、理想的にはいずれのモデルの開発からも独立した研究者によって行われるべきである」としている。

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中等度~高度AD患者にメマンチンは本当に有効か?―メタ解析結果より―

中等度~高度アルツハイマー型認知症(AD)に適応を有するメマンチンが日本でも承認され1年が経過した。Hellweg氏らはメマンチンの臨床効果を評価するため、メタ解析を実施した。Int J Geriatr Psychiatry誌2012年6月号掲載。9報のメマンチンによる臨床試験より抽出した中等度~高度AD患者2,506例における、認知症の進行遅延に対する効果をメタ解析により検討した。認知、日常生活動作(ADL)、臨床全般評価およびこれら3つすべて(トリプルレスポンス)を組み合わせた評価に関してオッズ比と信頼区間を変量効果モデルに基づいて分析した。主な結果は以下のとおり。 ・メマンチン治療群はプラセボ群と比較して有意な認知症の進行遅延を示した。・少数の患者で悪化がみられたが、いずれもメマンチン治療群でプラセボ群より有意に低かった。〔 認知:24.6% vs 36.2%(p

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頸動脈内膜中膜厚の年間増加率、心血管リスクを反映せず

頸動脈内膜中膜厚(cIMT)の年間増加率は一般人口の心血管リスクとは相関せず、臨床試験の代替指標としては使用できないことが、ドイツ・J W Goethe大学病院(フランクフルト)のMatthias W Lorenz氏らが実施したPROG-IMT試験で示された。cIMTは、早期のアテローム性動脈硬化の非侵襲的超音波検査の生物マーカーであり、一般集団において心血管イベントのリスクと正の相関を示す。すでに多くの臨床試験が、一般集団やリスク集団にみられるcIMTの変化は心血管イベントの発生リスクを反映するとの暗黙の前提の下で行われ、通常cIMTの年間増加率を指標に用いるが、これらの関連を検証した報告はほとんどないという。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版4月27日号)掲載の報告。cIMTと心血管イベントリスクの関連をメタ解析で評価PROG-IMT試験では、一般集団を対象に超音波検査で2回以上cIMTを測定し、その後心筋梗塞、脳卒中、死亡についてフォローアップした試験の個々の患者データについてメタ解析が行われた。2012年1月10日までに発表された一般集団を対象とした縦断的観察試験に関する論文を抽出した。心筋梗塞や脳卒中の既往歴のある患者は除外し、cIMTの増加率と心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、血管死、これらの併発)のリスクの関連をCox回帰分析で評価した。ランダム効果モデルを用いたメタ解析にて、cIMTの1SDおよび0.1mm増加ごとの対数ハザード比(HR)を算出した。cIMTとは相関するが、増加率との関連は認めず16試験に登録された3万6,984例が解析の対象となった。平均フォローアップ期間7.0年の間に、心筋梗塞が1,519件、脳卒中が1,339件、複合エンドポイント(心筋梗塞、脳卒中、血管死)は2,028件発生した。2回の超音波検査[1回目と2回目の間隔中央値4年(2~7年)]に基づき、cIMTの年間増加率を算出した。複合エンドポイントの発生に関する総頸動脈のcIMT平均増加率のHRは、年齢、性、総頸動脈の平均cIMTで調整すると0.97[95%信頼区間(CI):0.94~1.00]、血管リスク因子で調整すると0.98(95%CI:0.95~1.01)であり、有意な差はなかった。感度分析ではcIMT増加率とエンドポイントの関連は認めなかったが、2回の超音波検査の平均cIMTは心血管リスクと頑健な正の相関がみられた(年齢、性、総頸動脈のcIMT平均増加率、血管リスク因子で調整後の複合エンドポイントのHR:1.16、95%CI:1.10~1.22)。超音波検査を4回実施した3試験(3,439例)では、cIMT増加率はエンドポイントとはいずれの試験も相関を示さなかった(再現性の相関:それぞれr=-0.02、-0.04、-0.06)。著者は、「2回の超音波検査で評価したcIMTと心血管リスクの関連は一般集団では証明されなかった」と結論し、「臨床試験における心血管リスクの代替指標としてcIMTを使用できるとする結論は導き出せない」としている。(菅野守:医学ライター)

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亜鉛追加、乳児の重症細菌感染症に有効

重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児に対し、標準抗菌薬治療の補助療法として亜鉛を追加投与すると、治療不成功リスクが低減する可能性があることが、全インド医科学研究所(AIIMS)のShinjini Bhatnagar氏らの検討で明らかとなった。重症細菌感染症は開発途上国の乳児期早期の主要な死因である。標準的な抗菌薬治療に安価で入手しやすい介入法を追加することで、乳児死亡率の抑制が可能と考えられている。Lancet誌2012年6月2日号(オンライン版2012年3月31日号)掲載の報告。亜鉛追加の有効性をプラセボ対照無作為化試験で評価研究グループは、重症細菌感染症の可能性がある乳児に対する抗菌薬治療の補助療法としての亜鉛の有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2005年7月6日~2008年12月3日まで、インド・ニューデリー市の3つの病院に、重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児が登録された。これらの患児が、登録時の低体重や下痢の有無で層別化した上で、標準抗菌薬治療に加えて亜鉛10mgあるいはプラセボを毎日経口投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は治療不成功率(割り付けから7日以内の抗菌薬の変更を要する病態、21日以内の集中治療[人工呼吸器装着もしくは血管作動薬投与]を要する病態あるいは死亡)とした。治療不成功率:10% vs 17%352例が亜鉛追加群に、348例がプラセボ群に割り付けられ、それぞれ332例、323例が評価可能だった。治療不成功率は、プラセボ群の17%(55/323例)に対し、亜鉛追加群は10%(34/332例)と有意に少なかった[相対リスク低下率:40%、95%信頼区間(CI):10~60%、p=0.0113、絶対リスク低下率:6.8%、95%CI:1.5~12.0、p=0.0111)。治療不成功を1例回避するのに要する治療例数は15例(95%CI:8~67)であった。死亡例は亜鉛追加群が10例で、プラセボ群は17例と、有意な差はなかったものの亜鉛追加群で低下する傾向を認めた(相対リスク:0.57、0.27~1.23、p=0.15)。著者は、「生後60日までの乳児に限ってもベネフィットが確認された。回復、体重増加、完全経口摂食までの期間には影響はなかった。亜鉛は、標準抗菌薬治療の補助療法として、重症細菌感染症が疑われる生後7~120日の乳児の治療不成功リスクを低減する可能性がある」と結論し、「亜鉛はすでに一般的に使用可能で、多くの低~中所得国で急性下痢の治療薬として市販されており、重症細菌感染疑いの乳児への介入に使用しても医療コストの増分はわずかだ」と指摘している。

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医師と「法への不服従」に関する論考

神戸大学感染症内科岩田 健太郎 2012年6月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 平岡諦氏の「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を興味深く読みました。平岡氏は「医の倫理」は「法」よりも上位にあり、日本医師会は「医の倫理」に遵法を要求していることから、法律家(弁護士)が「医の倫理」規定に参画するのは間違っていると主張します。本稿の目的は平岡氏のこの大意「そのもの」への反論ではありません。平岡氏が指摘するような日本医師会の医療倫理への「操作」や歴史的プロセスについて、あるいはそこにおける弁護士の意味や役割についてぼくは十分な情報を持っていませんし、また関心事でもないからです。しかし、部分的には異議を持ちましたので、その点については、あくまでも各論的に指摘したいと思います。アメリカ医師会の倫理綱領を紹介して平岡氏はそこで「『法への非服従』を謳っている」と説明し、「A physician shall respect the law and also recognize a respondsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient」という文章を紹介します。しかし、「法への非服従」には二つの意味があります。一つは現行法を遵守しつつ、その法が「悪法である」と主張して変化を求めること、もう一つは現行法を悪法だと無視して進んで違法行為を行うことです。平岡氏が主張する「法への非服従」は後者にあたります。しかし、アメリカ医師会の文章では「seek changes」と書かれていますから、素直に読めば前者の意味と理解するのが自然です。平岡氏は自身の見解、医師の「法への非服従」にあまりにこだわるあまり、AMAの見解を曲解しています。ナチスドイツが行ったユダヤ人やその他の民族の大虐殺、そして医療の世界における非道な人体実験は我々の倫理・道徳的な観念に大きな揺さぶりをもたらしました。問題は、これらの非道な行為が「悪意に満ちた、悪魔的な集団によって行われた」というより、ハンナ・アーレントらが指摘するように、普通の常識的な人物たちが当時の法と上司の命令に素直に従って行った悪烈な行為であったことが大きな問題であったのです。ですから、それに対する大きな反省を受けて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」(ハンナ・アーレント「イスラエルのアイヒマン」みすず書房 225ページ)という考えがでてきました。これが平岡氏の言う「法への非服従」でしょう。さて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」は普遍的な原則です。ナチスドイツの法と命令に従った全ての人に適応可能な原則なのですから。したがって、「法への非服従」を求められる職業は平岡氏が主張するように医師だけに要求される倫理観ではありません。看護師などの他の医療者や、教師や、あるいはあらゆる社会人にも適用可能な原則です。しかし、ナチスドイツにしても、日本の731部隊にしても、その人体実験は極端なまでに悪らつで、また例外的な悪事でした。医療者は一般的に善良な意志を持っており、また善良なプラクティスを心がけています。それが必ずしも患者にとって最良な医療になる保証はありませんが、少なくともナチスドイツや731部隊的な行為は日常的には行われません。あれは、極めて例外的な事項です。日常的にあんなことが頻発されてはたまったものではありません。例外的なのだから忘却しても構わない、と申し上げたいのではありません。ハンナ・アーレントが指摘するように、そのような例外的な悪らつ非道は「ふつうの人」にも起こりえる陥穽を秘めています。だから、ぼくらはそのような「極端な悪事」にうっかり手を貸してしまうリスクを常に認識しておかねばなりません。繰り返しますが、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」というハンナ・アーレントの格率は、そのような極端な事例において適応が検討されるもので、日常的な格率ではありません。一方、アメリカはかなり強固な契約社会であり、法とか社会のルールを遵守するのが正しいと主張する社会です。アメリカのような契約社会でルールを破っても構わない、という考え方はかなりリスクが大きいのです。医師を含め、医療者も法やルールをきちんと遵守することが日ごろから要求されています。平岡氏のいう「法への非服従」はアメリカ医療の前提にはありません。だからAMAはseek changesとは言っても、act against the lawとは明記しなかったのです。もしアメリカにおいてそれが許容されることがあったとしても、繰り返しますが、極めてレアなケースとなるでしょう。アメリカ以外の社会においても、法への非服従が正当化されるのはナチスドイツ的な極めて例外的な悪事、「明白に犯罪的な命令」に限定されます。しかも、何が犯罪的なのかは自分自身で判断しなければならないのですが、その基準は「あいまい」であってはなりません。ハンナ・アーレントは「原則と原則からの甚だしい乖離を判別する能力」(同ページ)が必要と述べます。「甚だしい」乖離でなければならないのです。臨床試験の医療倫理規定であるヘルシンキ宣言もナチスドイツの人体実験の反省からできたものですが、ホープは極めて例外的なナチスドイツ的行為が、日常的な臨床試験の基準のベースになっていることに倫理的な問題を指摘しています(医療倫理、岩波書店)。あまりにも杓子定規で性悪説的なヘルシンキ宣言のために、患者が医療サービスを十全に受ける権利が阻害されているというのです。形式的で保険の契約書みたいなインフォームドコンセント、過度に官僚的なプロトコルなどがその弊害です。医療倫理を善と悪という二元的でデジタルな切り方をするから、こういう困難が生じるのです。多くの場合、医療の現場は白でも黒でもないグレーゾーンであり、ぼくら現場の専門家に求められるのは、「どのくらいグレーか」の程度問題なのですから。そして、アメリカであれ、日本であれ、他の世界であれ、医師が「法への不服従」を正当化されるのは(正当化されるとすれば、ですが)、極めて黒に近い極端で例外的な事例においてのみ、なのです。また、平岡氏は日本医師会がハンセン病患者の隔離政策に対応してこなかったことを批判します。その批判は正当なものです。しかし、それは「法の改正を求める」という方法と「法そのものをあえて破る」ことが区別されずに批判されています。たとえば、現行の悪法を悪法だと批判し、改正を求めることもひとつの方法なのです。そして、(引用)『医師の職業倫理指針』では「法律の不備についてその改善を求めることは医師の責務であるが、現行法に違反すれば処罰を免れないということもあって、医師は現在の司法の考えを熟知しておくことも必要である」となっています。すなわち、日本医師会は「遵法」のみを医師に要求し、「法への非服従」を医師に求めていないのです。このことは、日本医師会が「悪法問題」を解決していないことを示しています。(引用終わり)と医師会も「法律の不備」を指摘し、改善を求める必要は認めているのですから、少なくともAMAと(WMAはさておき)主張はそう変わりないのだとぼくは思います。また、平岡氏はジュネーブ宣言を引用して「いかなる脅迫があっても」と訳しますが、原文は「even under threat」、、脅迫下においても、、、という言及のみで「いかなる」=under any circumstances、とは書かれていません。この点では平岡氏の牽強付会さ、議論の過度な拡大解釈、が問題になります。平岡氏は日本医師会が「世界標準」から外れており、そこに(WMAに)従わないのが問題だといいます。その是非は、ここでは問いません。しかし、そもそも医の倫理に「世界標準」などというものを作ってしまえば、それは倫理を他者の目、「他者の基準」に合わせてしまうことを意味しています。しかし、たとえWMAがいう「規範」であっても、それが自分の中にある道徳基準を極端に外れている場合は、それに従わないというのが、カントらが説く自律的な倫理観です。AMAがこういっている、WMAがそう訴えている、「だから」それに従うというのは、そもそもその自律的な倫理原則から外れてしまいます。これは本質的なジレンマです。自律と他律のこのジレンマは、ヘーゲルら多くの哲学者もとっくみあった極めて難しい問題ですが、いずれにしても「世界標準だから」医師会にそれに従えと言うのは、自律を原則とする医療倫理における大きなパラドックスではないでしょうか。AMAの倫理規定を読むと、ぼくはいつもため息を禁じえません。http://www.ama-assn.org/resources/doc/ethics/decofprofessional.pdfそこには例えば、Respect human life and the dignity of every individual.とあります。全ての人の生命と尊厳を尊重せよと説きます。しかし、その基盤となるアメリカの国民皆保険に強固に反対してきたのも、またAMAでした(医師の利益が阻害されるからです)。このようなダブルスタンダードが、もっとも非倫理的な偽善ではないかとぼくは考えます。日本医師会がどうあるべきかは、本稿の趣旨を超えるものですが、少なくともAMAやWMAを模倣することに、その回答があるのではないことは、倫理の自律性という原則に照らし合わせれば確かなのです。

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郷に入っても郷に従わず その4 ~食事の心理学

ハーバード大学リサーチフェロー大西 睦子 2012年5月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 前回のコラムで、人工甘味料と肥満や糖尿病の関係は、体の生理的反応と人間の行動的、心理的な要素が関与していることをお伝えしました。そこで今回は、『食べる』という行動が起こるまでの心理的な状況を、さらに深く考えたいと思います。例えば、みなさんが5人のお友達とレストランに行くことを想像してみてください。おそらく、5人とも違うメニューを選ぶことが多いと思います。私は和風パスタとチーズケーキを選んだのに、あなたはサラダにステーキを選んだ理由、それはなぜでしょうか。けっこう深い理由があるのです。1)嗜好最近の科学雑誌に、様々な文化の異なるヨーロッパ諸国において、1600人以上の子供たちを対象に、食事の嗜好と肥満の関係についての報告がありました。結果は、肥満の子供たちは、脂肪や糖分の多い食事を好んだということでした。動物実験で、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが、空腹感を抑えるだけではなく、食べ物の嗜好にも関与していることがわかってきました。例えば、レプチン濃度が低いと、空腹感が増強するだけではなく、食べ物による喜びも増加します。●ということは、人種や文化の違いにかかわらず、肥満の子供は、高脂肪で甘い食べ物を摂取することによる喜びが強いと考えられますね。2)学習私たちは生後まもなく、食に対する行動的、感情的な反応を覚えます。この頃、親は重要な役割を果たします。なぜなら母親の食事は母乳に移行し、後の子供の嗜好に大きく影響するためです。従って、特に母親の食の影響は強いと思われます。離乳後、子供は自分で食べ始めますが、新しい食べ物に拒否反応を示し、少なくとも繰り返し10回以上経験して、ようやく受け入れます。このころの経験も、後の好き嫌いに影響します。さらに、食べることは、罪と報酬の意味もあります。食事の量や食べるスピードも、親の影響が大きいと考えられています。『ぐずぐずしないで、早く残さず食べなさい。』なんて、親に叱られた経験はありませんか?子供は食べ物を残すことに罪を覚え、出されたものは全部食べる習慣がつきます。3)再学習私たちの食事の好みは幼少期の経験に決まると考えられていますが、大人になって、再学習することによって好みを変えられることも報告されています。●これは、いいニュースです。子供の頃の悪い習慣を、大人になって変えるチャンスがあるのですから。4)食欲ドーパミンは、連続した学習による行動の動機付け(associative learning)と関係している神経伝達物質です。食事開始後、ドーパミンの分泌が上昇し、食欲が増強します。重要なのは、連続した学習によって、食べ物を想像するだけで、ドーパミンが分泌されるようになるのです。例えば、食べ物の写真、料理の音やにおいでドーパミンが分泌され、食欲が増加します。ストレスでもドーパミンの分泌が増え、過食になります。コカイン、覚せい剤は、ドーパミン分放出させ快感を起こします。セロトニンはドーパミンをコントロールする神経伝達物質です。食欲を抑えるには、ドーパミン分泌を抑制し、セロトニンを放出することとなります。最近、インスリンやレプチンもドーパミンに影響を与えることも報告されています。●やる気、ご褒美、学習などに関わるドーパミンは、脳の『快楽物質』とも呼ばれています。ドーパミンをたくさん増やしたい!と思いがちですが、やはりバランスが大切と思います。それは、5)の中毒に関係するからです。5)習慣、依存、中毒これは大トピックです。習慣、依存、中毒には、行動(心理的)問題が大きく影響します。2010年に、動物実験により、過食による肥満の脳内の分子経路が、麻薬中毒者のものと同じだとする報告があり、大変な話題になりました。米国フロリダ州のポール・ケネディ准教授の研究チームは、コカイン中毒者の脳内ではドーパミンが大量に放出され、ドーパミン2受容体が過剰に刺激されていることは明らかになっていましたが、同様な変化を「食事中毒」のラットで証明したのです。●食に限らず、人生において、喜び、幸せは大切ですが、実際はそれだけではないと思います。苦しみ、悲しみを克服しつつ得る喜びを経験することが、人間の成長につながるのではないでしょうか。私もそうなりたいと思います。6)感情感情、例えば、喜び、怒り、悲しみ、不安も肥満に影響します。肥満のひとでは、食事摂取による感情の変化に違いがあるとも言われています。肥満の人は、食べることで報酬を得ます。●誰でも美味しい物を食べると嬉しくなりますが、嬉しさの度合いが肥満の人は強いようです。7)決定意思決定は、自動的に即座にされる経路(これはかなり訓練されています)と、ゆっくりですが、コントロールした上で行われる経路と2種類あります。食べる行為に、この決定は重要な役割があると思いますが、残念ながら、動物実験モデルをつくることが難しく、まだまだ不明な点が多い分野です。●例えばみなさんが飲み物を注文するとき、『とりあえず生ビール(メニュー見ずに注文する人もいると思いますが)』という人もいますし、メニューをよく読んで『このカクテル下さい。』という人もいます。自分で決められず『お勧めは何ですか。』と店員に聞く人もいます。どうしてこんなに人は最終的な意志決定が違うのでしょうか?最後に、肥満には、環境の影響も大きな問題になってきます。環境とは、車など、便利な社会になったため、人々が動かなくなった点、スーパーマーケット、コンビニなどで、高カロリーの食品を消費者が買いやすくしている点(そういった商品が増えた、安くなった、目に留まる位置に置いてある)などです。駅のキヨスクで、大根やキュウリが売っているのは見かけたことはありませんが、お菓子はすぐに買って、すぐに食べることができますよね。『不便、面倒』という言葉は、売り文句にはなりにくいですが、思っているほど悪くはないかもしれません。

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日本おける抗精神病薬の用量はアジア各国と比較し、まだ多い―REAP調査―

アジア各国の協力のもと、東アジアにおける向精神薬処方調査(REAP)が1999年より実施されている。今回、Xiang氏らはアジア各国における高齢の統合失調症入院患者における抗精神病薬の低用量(クロルプロマジン換算300mg/日以下)処方と人口統計学的および臨床的相関について検討し、報告を行った。Int Psychogeriatr誌2012年6月号(オンライン版2012年2月3日号)掲載。対象は2001~2009年のREAPデータベースより抽出した55歳以上の統合失調症入院患者1,452例。社会人口統計学的および臨床的な特性と抗精神病薬の処方箋を標準化されたプロトコールとデータ収集手法により集積した。本調査は中国、香港、日本、韓国、シンガポール、台湾、インド、マレーシアの8ヵ国の参加により実施した。主な結果は以下のとおり。 ・抗精神病薬が低用量で処方されていた頻度 は40.9%であった 。・抗精神病薬が低用量処方されがちな患者は女性、高齢、罹病期間が短い、陽性症状が少ないことと相関があった (多重ロジステック回帰分析)。・2001~2009年のすべての調査に参加した6ヵ国のうち、日本では抗精神病薬の低用量処方がより少ない傾向があった。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・維持期の統合失調症患者において現在の薬物投与量は最適か? ・抗精神病薬を処方された患者は本当に薬を服用しているのか? ・統合失調症の高感度スクリーニング検査 「眼球運動検査」

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学習障害の有無によるメチルフェニデートの有用性を検証

注意欠陥/多動性障害(AD/HD)児は学習障害(LD)を合併していることが少なくない。Williamson氏らは浸透圧を利用した薬剤放出制御システム(OROS)を用いたメチルフェニデート徐放製剤について、LDの有無からみたAD/HD治療反応性を検証した。J Atten Disord誌オンライン版2012年5月24日掲載の報告。2ヵ所の実験校において、メチルフェニデート徐放製剤による6週間プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験よりLDの有無に関わらず抽出された135例(9~12歳)を対象に認知および行動テストを行った。主な結果は以下のとおり。 ・メチルフェニデート徐放製剤群 ではLDの有無に関わらずAD/HD評価尺度スコアの改善が認められた。・認知スキル、学業、教室での行動においてメチルフェニデート徐放製剤はプラセボより有用であった。・メチルフェニデート徐放製剤はLDの有無に関わらずAD/HD児の行動やパフォーマンスを改善する。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・境界性人格障害患者の自殺予防のポイントはリハビリ ・10代うつ病患者の治療はファンタジーゲームで? ・米国では自閉症は5歳まで診断されないケースが多い

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手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。システマティックレビューで129試験・総患者数1万488例を解析 Ker氏らは、手術患者へのトラネキサム酸投与に関する輸血、血栓塞栓症イベント、死亡に関する効果の評価を目的とした。Cochrane対照設定試験中央レジスター、Medline、Embaseの初刊行~2011年9月の間の発表論文、WHO国際臨床試験登録プラットフォームと関連論文参照リストを検索し、解析論文を特定した。 対象となったのは、手術患者についてトラネキサム酸投与と非投与またはプラセボ投与を比較した無作為化対照試験で、アウトカムとして、輸血を受けた患者数、血栓塞栓症イベント件数(心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、死亡件数を測定していたものとした。論文執筆の言語や刊行の有無などは問わなかった。 結果、1972~2011年の間の129試験・総患者数1万488例のデータが解析に含まれた。血栓塞栓症イベントに対する効果は不明、死亡に対する効果も不確定 トラネキサム酸投与は輸血を受ける確率を3分の1低減することが認められた(リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)。この効果は、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合も維持された(同:0.68、0.62~0.74、P<0.001)。 一方で、心筋梗塞(同;0.68、0.43~1.09、P=0.11)、脳卒中(同:1.14、0.65~2.00、P=0.65)、深部静脈血栓症(同:0.86、0.53~1.39、P=0.54)、肺塞栓症(同:0.61、0.25~1.47、P=0.27)については効果が明らかではなかった。 死亡の発生は少なかった(同:0.61、0.38~0.98、P=0.04)が、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合は、考慮すべき不確定さが認められた(同:0.67、0.33~1.34、P=0.25)。 累積メタ解析の結果、輸血に対するトラネキサム酸の効果のエビデンスは確たるものであること、過去10年にわたってそのエビデンスは確実に入手できることが示された。

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中等度~高度のアルツハイマー型認知症に対するドネペジル+メマンチンの有効性・安全性の検討

Doody氏らは中等度~高度のアルツハイマー型認知症(AD)に対しドネペジル23㎎/日または10㎎/日を実施した大規模多施設試験に参加した患者に対し、メマンチンを併用した際の有効性および安全性を検討した。Dement Geriatr Cogn Disord 誌オンライン版2012年5月10日掲載の報告。24週の無作為化二重盲検比較試験のデータを事前に分析し、ドネペジルの用量をランダム化したうえでメマンチン投与の有無にて層別化した。有効性および安全性はドネペジルの用量ごとにメマンチンの併用の有無により評価した。主な結果は以下のとおり。 ・高度AD患者ではメマンチンの併用の有無にかかわらず、ドネペジル23㎎/日群で有意な認知機能への影響を示した(p

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耳鳴り順応療法、耳鳴りに悩む人のQOLを改善

 耳鳴り症状に対し、通常ケアと比較して認知行動療法が、健康関連QOLや耳鳴り重症度を改善することが、オランダ・マーストリヒト大学のRilana F F Cima氏らによる無作為化試験の結果、報告された。耳鳴り症状を呈する成人は最高で21%にも達し、最も苦痛で消耗が激しい聴覚医学的問題の1つとされている。しかし臨床的治癒を導く標準療法がないため、コスト高で長期にわたる治療となりやすい。そこでCima氏らは、認知行動療法による段階的ケアアプローチの効果について通常ケアと比較する評価を行った。Lancet誌2012年5月26日号より。耳鳴りの音に脳を順応させる認知行動療法と通常ケアを比較 試験は、オランダ・HoensbroekにあるAdelante Department of Audiology and Communicationで被験者を募り行われた。耳鳴りを主訴とするが、試験参加を妨げるような健康問題を有していない、18歳以上の未治療のオランダ語を話せる人を登録した。 独立した研究アシスタントがコンピュータを使って、被験者を耳鳴り重症度と聴力で4つのグループに層別化し、認知行動療法として耳鳴りの音に脳が順応するよう訓練する耳鳴り順応療法(tinnitus retraining therapy:TRT)を受ける群(専門治療群)と、通常ケアを受ける群に患者を1対1となるよう無作為に割り付けた。患者と評価者に治療割付情報は知らされなかった。 主要評価項目は、健康関連QOL(健康ユーティリティ・インデックス・スコアで評価)、耳鳴り重症度(耳鳴りアンケート・スコア)、耳鳴り機能障害(耳鳴りハンディキャップ項目スコア)とした。評価は治療前と、無作為化後3ヵ月、8ヵ月、12ヵ月時点で行われ、マルチレベル混合回帰分析法を用いてintention-to-treatでのアウトカム評価が行われた。健康関連QOL、耳鳴り重症度および機能障害が改善 2007年9月~2011年1月の間に741例がスクリーニングを受け、492例(66%)が登録され治療を受けた。 結果、専門治療群(245例)は、通常ケア群(247例)と比較して、12ヵ月で健康関連QOLの改善が認められ(群間差:0.059、95%信頼区間:0.025~0.094、コーエン効果サイズについてのd=0.24、p=0.0009)、耳鳴り重症度指数が低下し(同:-8.062、-10.829~-5.295、d=0.43、p<0.0001)、耳鳴り機能障害指数が低下した(-7.506、-10.661~-4.352、d=0.45、p<0.0001)。 耳鳴り順応療法は、初期の耳鳴り重症度にかかわりなく効果的であり、有害事象もみられなかった。研究グループは、「認知行動療法に基づく耳鳴り専門治療は、重症度の異なる患者に広く実施可能と言える」と結論している。

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世界各国受刑者における過体重・肥満の有病率と身体活動度

英国・オックスフォード大学のKatharine Herbert氏らは、これまで行われていなかった刑務所に収監されている受刑者について、栄養的に貧しい食事や不十分な運動がもたらす過体重や肥満の有病率についてシステマティックレビューで評価を行った。Herbert氏らは本研究の目的について「肥満などの非感染性疾患(NCD)は、低・中所得国や受刑者といった社会的不利な条件にある階層に偏って負荷がかかっている。受刑者についての評価は行われたことがなく、現在のエビデンスを総合し、今後の研究活動・領域を明らかにするため」としている。Lancet誌2012年5月26日号掲載報告より。システマティックレビューで15ヵ国6万人以上の受刑者について評価Herbert氏らは、PubMed、EMBASEなどオンライン・データベース上にある1948年から2011年5月までに発表された研究についてシステマティックに検索し、2人の著者が事前に決めた形式に則り独立的にデータを抽出するスクリーニングにより適格試験を選定した。バイアスリスクについては各々の研究について領域ベースで評価した。29の出版物から31の研究報告が選定され、15ヵ国884施設の受刑者6万人以上が解析に含まれた。試験は、オーストラリア、バングラディッシュ、カメルーン、東アフリカ、ドイツ、コートジボアール、日本、ナイジェリア、パキスタン、ルーマニア、ロシア、台湾、英国、米国、西アフリカで行われたものだった。結果、過体重・肥満の有病率の解析の結果(13試験・4万6,711例)、男性受刑者は一般男性集団と比べて過体重という傾向は認められなかった。評価をした10試験の有病率比は、1試験で1.02(95%信頼区間:0.92~1.07)を示したものがあったが、それを除くと0.33~0.87の範囲であった。一方、女性受刑者については、米国(解析対象は1試験、有病率比:1.18、95%信頼区間:1.08~1.30)とオーストラリア(同3試験、有病率比は1.15~1.20にわたった)で、非収監女性と比べて過体重の傾向が認められた。女性受刑者の平均エネルギー摂取量は過度オーストラリアの受刑者は英国の受刑者と比べると、一般集団との比較で活動レベルが有意に十分なレベルに達している傾向が認められた。両国の結果を男女別試験実施年別にみると、女性については2009年にそれぞれの国で行われた試験の結果(有病率比)は英国0.32(95%信頼区間:0.21~0.47)に対して、オーストラリアは1.19(同:1.04~1.37)だった。男性については試験年が一致しなかったが、英国(1994年実施)の0.71(同:0.34~0.78)に対して、オーストラリア(1997、2001、2009年実施の3試験の結果)は1.37~1.59の範囲を示した。女性の平均エネルギー摂取量は推奨レベルを上回っており、特にナトリウム摂取量は全受刑者の推奨摂取量の約2~3倍だった。Herbert氏は、「この脆弱集団の健康を促進するには刑事司法制度と接触することである。これらの重要な公衆衛生問題に言及しないことによる個人および社会にかかるコストは相当なものとなるだろう」と述べ、「適切なターゲッティングによる公衆衛生介入を知らしめるモニタリングの改善とさらなる研究が必須だ」と結論。またその際に、オーストラリアと日本の研究が描出する刑事司法制度はNCDリスク改善につながるものかもしれないことについて言及している。

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