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乳腺術後の遷延痛

慢性痛への早期介入の必要性東京慈恵会医科大学附属病院 麻酔科・ペインクリニック 小島圭子氏乳がんは、日本における女性のがんの1位であり、年間5万人が罹患し、現在も増加傾向にある。10年生存率はステージIで90%、ステージIIで80%程度と高く、治療や観察期間が長引く。さらに、手術の縮小化、入院期間の短縮、術後観察期間の長期化など乳がん治療を取り巻く状況は年々変化しており、それとともに慢性痛に関わる要素は増えている。こうした背景のもと、乳がんにおける術後慢性痛がとくに問題となっている。乳がん術後の慢性痛である乳房切除後疼痛症候群(Postmastectomy Pain Syndrome、以下PMPS)は、長期にわたり残存する。痛みの範囲は創よりも広く、痛みの部位は手術側の胸部皮下上腕、痛みの性質はひりひり、チリチリという訴えが多く、衣服がすれると増悪することが多い。また、痛み以外にも締め付けられる、肩に挟まっているなどの不快感を伴うことが多いのが特徴である。痛みの分類は神経障害性疼痛である。イギリスのMacdonald氏らの報告では、術後7~12年で22.4%、本邦のMatoba氏らの調査では、術後平均8.8年で21% 、Yamanouchi 氏らの調査では 術後3年で65%に発生したと報告されている。 腋下リンパ節郭清後では30~70%と高率に発生するとの報告もある。PMPSのリスクファクターとして、若年、肥満、独身、教育期間が短い、不安・うつ、拡大手術・腋下リンパ節郭清、術後の強い痛み、急性期の不十分な鎮痛・鎮痛薬の過少使用、術後合併症、がん治療などがある。手術については、拡大手術から縮小手術が主流となりリスクは減っているはずであるが、乳房温存術になっても痛みは減っていないという報告もみられる。また、腋下リンパ節郭清については、センチネルリンパ節生検が増加している。センチネルリンパ節生検と腋下リンパ節郭清後の痛みの発生率について前向き調査では、術後1年のPMPS発生率は、それぞれ46.8%、28.7%と、センチネルリンパ節生検の増加により痛みがかなり減っていることがわかる。加えて、手術後の合併症(リンパ浮腫、感染、出血など)を予防することが痛みの遷延防止にもつながっている。また、不安を緩和する心理療法の導入で急性痛が減ったと報告がある。術後の強い痛みは、鎮痛薬の過少使用もリスクファクターであり、術後の十分な鎮痛薬投与が推奨される。これらリスクファクターの改善にあたっては、中枢性感作を予防するためのプレガバリン、リドカイン投与による慢性痛の予防、二次障害予防のための早期リハビリなどを行う。いずれにしても、慢性痛に移行するリスクの高い患者への継続フォローを考えていくことが最も重要だといえる。ところで、前述のMatoba氏らの調査の中で、主治医に慢性痛を相談できないという患者が多くおり、主治医のキーパーソンとしての役割が大きいことが明らかになった。そこで、 日本乳癌学会の協力を得て、PMPSに対する意識と治療の現状調査を行った。対象は、日本乳癌学会専門医で、 647人から回答を得た(回収率34.7%)。その結果、PMPSの認識率は 70.5%と高かった。しかし、患者への対処はどうしていますか、という問いに対しては65%が経過観察と答え、治療を受けている割合が少ないことがわかった。治療薬をみると、PMPSでは効果が認められないと思われるNSAIDsが78.4%を占めた。さらに、現在の治療の効果に関しては約7割が不十分と答えていた。乳がんは増加しており、術後慢性痛はもはや一般的な問題である。慢性痛のリスクファクターが指摘されているが、術前、麻酔、術後急性期鎮痛、慢性期治療のいずれにおいても、 リスクファクターを改善できる余地があると思われる。一方、乳腺専門医に対する現状調査から、本邦においてもPMPSに対して治療が行われている割合が少なく、適切な治療が行われていないこと、治療が奏効していないことが明らかとなった。PMPSを減らすためには、周術期からリスクファクターを改善するためのさまざまなアプローチが必要である。慢性痛への早期介入の一環として、問題点を改善するためのさらなる研究が必要である。

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帯状疱疹後関連痛(ZAP)のアンケート調査の結果から

多角的痛み治療における薬物療法の現状と未来順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座 井関雅子氏ペインクリニックは痛みの総合医療であるが、帯状疱疹後関連痛(Zoster associated pain,以下ZAP)に関しては罹患期間の長短により選択される治療が変化する。また、侵害受容性疼痛から神経障害性疼痛への変化、それらの混在病態など、永年の臨床的疑問がある。そのような中、痛みの専門医が選択している治療法を再確認するため、ZAPについて帯状疱疹の九世紀から神経痛にいたるまで、アンケート調査を実施した。アンケートは、日本ペインクリニック学会専門医に対し、2012年3月から行われた。回答数は536名であった。アンケートでは、ZAPの診療患者数、罹患期間別の全般的な治療法、罹患期間別・VAS別の薬物選択、最後にZAPに対するオピオイド使用について聞いた。ZAPの年間実患者数10~50人未満が半数を占めていた。発症から受診までの経過期間をみると、発症3ヵ月未満の占める割合が40%以上であり、ペインクリニックの専門医が急性期からZAPに関わっているということがわかった。罹患期間別の治療法発症2週間未満および2週間~1ヵ月未満の治療法として最も頻度の高い治療は薬物療法、その次に神経ブロック療法であった。一方、それ以外に光線療法やイオントフォレーシスも一定の割合で選ばれている。発症1ヵ月~3ヵ月未満、発症3ヵ月以上では、薬物治療が最も多く、神経ブロック療法は急性期よりかなり低い状態になっている。さらに、3ヵ月以上では、認知療法が増えていることも特徴的である。罹患期間別・VAS別の薬物療法選択(1)発症2週間未満VAS=30では、第一選択薬にはNSAIDsが選ばれている、しかし、プレガバリンも2番目に出ている。VAS=60も同様の傾向であるが、VAS=90では、それに加え、次の選択薬としてオピオイド、抗うつ薬が出てくる。(2)発症2週間~1ヵ月未満VAS=30では、やはりNSAIDsとプレガバリンが上位であるが、第二選択薬・第三選択薬には抗うつ薬、ノイロトロピンといったような薬剤が入っていきている。VAS=60 およびVAS=90でも同様であるが、抗うつ薬に加え、オピオイドが第二選択薬・第三選択薬に入ってくる。(3)発症1ヵ月~3ヵ月未満VAS=30では、プレガバリンが第一選択薬に、次に抗うつ薬が出ている。(4)発症3ヵ月以上VAS=30では、上記と結果は大きくは変わらず、プレガバリン、抗うつ薬が主体である。VAS=60およびVAS=90でもやはりプレガバリンが、最も多いが、さまざまな剤形のオピオイドや、抗うつ薬、SNRI等も選ぶ傾向がある。NSAIDsの割合は非常に少なくなっているものの一定割合の選択はある。ZAPに対するオピオイド使用使用時期については、発症初期の強い痛みに使用するとの回答が52.8%と約半数を占める。年齢制限をみてみると、高齢者には使わないという回答と、若年者には使わないという回答の2つに分かれる傾向があり、興味深いところである。さらに、弱オピオイドのみ使用とする回答が34.9%、強オピオイドも使用するという回答が34.0%あった。アンケート結果から、ペインクリニシャンは種々の治療法を組み合わせてZAPの治療を行っていることが分かった。また、ZAPの薬物療法については、この調査結果をもとに今後検討をする必要があると思われる。

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心臓移植待ち小児の生存率、新たな補助人工心臓で有意に上昇

 心臓移植待機リスト上位に位置する重度心不全の小児に対し、新たに開発設計された体外式補助人工心臓装置は、これまでの体外式心肺補助(ECMO)と比べて有意に高い生存率を示したことが、米国・テキサス小児病院のCharles D. Fraser, Jr.氏らによる前向き試験の結果、報告された。移植までのブリッジ使用可能な機械的循環補助オプションは小児では限られており、唯一の頼みの綱とされていたのがECMOだった。しかし、その使用は重大合併症が起きるまでの10~20日間に限られ、移植までに結びつくのは40~60%という。NEJM誌2012年8月9日号掲載の報告。心臓移植待機中の16歳未満患児48例について前向き試験検討された新たな補助人工心臓(VAD)は「Excor Pediatric Ventricular Assist Device」(Berlin Heart社)で、ECMOと比較する前向き単群試験が2007年5月~2010年12月に、16歳未満の心臓移植待機中の患児48例を登録して行われた。患児は体表面積に基づき2つのコホート(コホート1:0.7m2未満、コホート2:0.7m2以上1.5m2未満)に24例ずつ分けられ検討された。2つのコホートの生存期間について(心臓移植実施時点または回復により機械から離脱した時点でデータを検閲)、それぞれにECMOを受けた傾向スコア適合ヒストリカル対照群(適合ECMO群1と2、2群とも48例)と比較した。生存期間は有意に改善、ただし重篤な有害事象が多発結果、コホート1(年齢中央値1歳、体重中央値9kg)は、174日時点でも生存期間中央値のデータ検閲に至っていなかったが、適合ECMO群1の生存期間中央値は13日と算出されていた(log-rank検定p

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AD患者におけるパッチ剤切替のメリットは?

 2011年、わが国では新たなアルツハイマー型認知症(AD)治療剤が複数承認された。中でも、唯一の経皮吸収型製剤であるリバスチグミンパッチ(以下、リバスチグミン)はAD治療の新たな選択肢として期待されている。では、経皮吸収型製剤の使用は、どのようなメリットをもたらすのか? Tian氏らは初めてドネペジルを使用する症例がリバスチグミンに切り替えた際の、アドヒアランスへの影響を後向きコホート研究にて検討した。その結果、1年以内にリバスチグミンへ切り替えを行った症例ではアドヒアランスの向上が期待できることを、Alzheimer Dis Assoc Disord誌オンライン版2012年8月12日号で報告した。 2004~2009年のMarketScan CommercialとMedicare data setsを使用した。治療日数カバー比率(PDC)およびドネペジルとリバスチグミンのPDCの差は切り替え時から算出し、1年間のフォローを行った。PDCは治療可能な薬剤日数/フォローアップ期間日数にて算出した。主な結果は以下のとおり。・772例が対象となった(平均年齢:77歳、男女比:42%:58%)。・リバスチグミンへの平均切り替え日数は579日(SD=317.3)であった。・リバスチグミンの平均PDCはドネペジルからの切り替え時と比較し、3ヵ月以内で切り替えた症例(80.4% : 90.7%、p=0.04)、7~9ヵ月以内に切り替えた症例(61.3% : 71.0%、p=0.05)で高かった。・アドヒアランスを年単位で分析したところ、1年以内にリバスチグミンに切り替えた症例ではドネペジルで治療を継続した症例に比べ、有意にアドヒアランスが高かった(PDC:69.3% : 60.6%、p=0.0004)。関連医療ニュース ・中等度~高度ADに対するドネペジル+メマンチンの有効性/安全性の検討 ・ドネペジル「新たな抗血管新生治療」の選択肢となりうるか? ・抗うつ薬切替のベストタイミングは?

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 『あめいろぐピックアップ』(第三回)透析をやめるとき

Medical U of South Carolinaで腎臓内科研修中サウスキャロライナ医科大学腎臓内科三枝 孝充(さいぐさ たかみつ)2012年8月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。紹介:「あめいろぐ http://ameilog.com/ 」は米国で働く日本人医療従事者による情報発信ブログポータルサイトです。米国で活躍する様々な専門科の医師やコメディカルが、現場から生き生きとした情報を日々発信しています。このシリーズでは、その中から選りすぐりの記事を皆さまにお届けします。「透析をやめるとき」余命6ヶ月といわれた癌患者に積極的な治療でなく緩和医療(palliative care)をオファーすることに抵抗は少ないと思いますが、余命が同程度と思われるESRD(末期腎不全)患者に透析を提供しないまたは透析をやめることに抵抗を感じる人は多いと思います。USRDS(米国腎臓データシステム)の統計( http://nihonjinken.kilo.jp/nichibei/figure/palliative_ESRD.pdf )によるとアメリカでは様々な理由から透析を行っている5人に1人の割合で透析から離脱しています。これは驚くことにESRDの死亡原因の3位(カナダでは2位)にあたる高い数字です。この中にはおそらく腎不全以外の理由で延命治療を施さない人も含まれていると思いますが、それでも日本では透析を中止する割合が

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(4)〕 シチコリン、急性虚血性脳卒中に対する有効性示せず:ICTUS試験

シチコリンは神経血管の保護と修復作用を併せ持つ新規薬剤で、動物モデルでは虚血発作から数時間後でも急性の脳損傷の抑制や機能の回復効果を示すことが報告され、統合解析で有効性のエビデンスが示されていた。ICTUS(international citicoline trial on acute stroke)試験は、急性虚血性脳卒中に対するシチコリンの有効性を検証する国際的な多施設共同プラセボ対照無作為化試験として実施され、対象は中等度~重度の急性虚血性脳卒中による入院患者とされた。発症後24時間以内にシチコリンあるいはプラセボを投与する群[1~3日は12時間ごとに1,000mgを静注投与し、その後6週間は12時間ごとに錠剤(500mg)×2錠を経口投与]に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、90日後の3つの指標に基づく総合評価による回復の達成[NIHSSスコア≦1、mRS≦1、Barthel index≧95]とされ、安全性は、rt-PA治療後の症候性脳出血、神経学的増悪、死亡について評価された。 2006年11月26日~2011年10月27日までに2,298例が登録され、シチコリン群に1,148例(平均年齢72.9歳、70歳以上67.4%)が、プラセボ群には1,150例(同:72.8歳、67.6%)が割り付けられた。しかし、3回目の中間解析で、2,078例のデータに基づき両群間に有効性および安全性の差は認めないと判定され、試験は中止された。 本邦におけるシチコリンは、1981年に販売開始となり、多くの症例に投与されてきた。1996年には再評価結果が公表され、現在の適応は、頭部外傷の意識障害、脳手術の意識障害、脳梗塞急性期の意識障害、脳卒中片麻痺の上肢機能回復促進、(急性膵炎、術後の急性膵炎、慢性再発性膵炎の急性増悪期)とされている。これまでエビデンスレベルの高い研究は行われておらず、ICTUS試験の結果が注目されていたが、残念ながら「シチコリンは、中等度~重度の急性虚血性脳卒中の治療においてプラセボを上回る効果は認めなかった。」と結論された。

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検証!「痛み」と「うつ」関係は?:山口大学

 末梢神経障害による気分障害を伴う神経障害性疼痛はQOLに影響を及ぼす重大な問題である。最近の研究では、大脳辺縁系の脳由来神経栄養因子(BDNF)の欠乏がpain-emotion(痛みの感情)を生じさせることが示唆されている。BDNFは4-メチルカテコール(4-MC)により培養神経細胞で誘発されるが、pain-emotionにおけるBDNFの役割は十分にわかっていない。山口大学 福原氏らは、BDNFが末梢神経障害後の慢性疼痛時に脳やうつ病様症状に対しどのように関与しているかを評価し、脳室内の4-MCが慢性疼痛を防ぎ、抗うつ効果を発揮するかどうかを検討した。その結果、BDNFの強化はうつ病を伴う慢性疼痛の新たな治療戦略となる可能性があることをCell Mol Neurobiol誌2012年8月号にて報告した。 PE-10チューブを脳室内に移植されたSDラットに対し、慢性狭窄損傷(CCI)を行った。痛みの指標として、Paw-Withdrawal-Latency(PWL)にてCCI後のマウスが熱刺激によって後肢を動かすまでの時間を計った。また、CCI後14~21日目まで強制水泳試験(FST)を実施しうつ病を伴う神経障害性疼痛モデルラットを作成した。痛みと情動行動の調節はPD0325901(MEK1/2インヒビター)の注射により行われた。CCI後14~21日目までの期間中に3日間連続で脳室内に4-MC(100nM)を投与した。4-MCの鎮痛効果および抗うつ効果を阻害するため、抗BDNF抗体またはK252a(TrkB受容体阻害薬)を4-MCと共に投与した。また、4-MCの鎮痛効果を確認するため、ナロキソンも同時投与した。主な結果は以下のとおり。・CCI後の慢性期において、うつ病様症状に関連したPWL(熱痛覚過敏)の持続的な減少が認められた。・PWL減少とうつ病様症状はPD0325901により有意に減少し、4-MCやERK1/2阻害薬による治療によっても減少した。・脳室内4-MCの効果は抗BDNF抗体、K252aにより逆転し、4-MCの鎮痛効果はナロキソンと拮抗した。・中枢神経系のpain-emotionネットワークにおいて、BDNFの欠如とERK1/2の活性化は慢性疼痛のうつ病様症状に関連している可能性が示唆された。・脳室内4-MCはBDNFを産生し、ERK1/2活性化を正常化することにより、慢性疼痛やうつ病様症状を改善する。関連医療ニュース ・難治性うつ病に対するアプローチは? ・うつ病予防には「脂肪酸」の摂取を ・高齢者のQOL低下に深く関わる「うつ」

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米国在住HIV感染者のうち、米国外出生者は16.2%

 米国在住で2007~2010年にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の診断を受けた約19万人のうち、16.2%が米国外出生者だったことが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のAdria Tassy Prosser氏らが、CDCに報告されたデータを調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月8日号で発表した。国内生まれの感染者と国外生まれの感染者とでは疫学的な特性が異なるという。米国外出生感染者の4割が、メキシコを含む中央アメリカ出生同研究グループは、CDCの「National HIV Surveillance System」を基に、2007~2010年にHIV感染の診断を受けた46州と5自治領の計19万1,697人について、その出生地を調べた。米国外で生まれた人は、米国市民権の有無にかかわらず米国外出生とした。その結果、19万1,697人のうち米国外出生者は3万995人で16.2%(95%信頼区間:16.0~16.3)だった。そのうち、出生地域の特定できた2万5,255人の出生地についてみると、14.5%(3,656人)がアフリカ、41.0%(1万343人)がメキシコを含む中央アメリカ、21.5%(5,418人)がカリブ海地域だった。米国外出生者の割合およびHIV感染者の割合ともに、カリフォルニア、フロリダ、ニューヨーク、テキサスの4州が最も高かった。異性間性交による感染、米国内出生感染者27%に対し米国外出生感染者39%米国外出生HIV感染者のうち、男性は73.5%(2万2,773人)だった。人種別に米国外出生者の割合をみると、白人は3.3%(1,841人/感染者5万5,574人)、黒人は10.0%(8,614人/感染者8万6,547人)、ヒスパニック系は42.2%(1万7,913人/感染者4万2,431人)、アジア系は64.3%(1,987人/感染者3,088人)だった。異性間性交による感染は、米国内出生感染者の27.2%だったのに対し、米国外出生感染者では39.4%に上った。

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世界で初めて家庭血圧計の測定値に基づいた降圧目標値を東北大学が検証 ーHOMED-BP研究の最終結果ー

 東北大学を中心に全国より457名の医師が参加して家庭血圧の適正な降圧目標値を検証した大規模無作為化比較試験HOMD-BP研究の最終結果が浅山 敬 氏によってまとめられ、Hypertension Research誌に発表された。この結果は8月16日に同誌のwebサイトにて「ADVANCE ONLINE PUBLICATION」として出版前に公開された。本研究では家庭血圧に基づき、125-134/80-84mmHgを降圧目標に薬物治療を強化していく通常コントロール群と、125/80mmHg未満を降圧目標とする厳格コントロール群のいずれかに無作為に分けられ、心血管イベントの発生を一次評価項目として実施されたが、厳格コントロール群で降圧目標に達した割合が有意に低く、両群間に一次評価項目で有意な差が認められなかった。 家庭血圧測定はある特定の1日だけでなく、長期間にわたり測定することが比較的簡単に行えるため、正確性、再現性、薬効評価などに期待が持てる。わが国では2005年においても臨床医の90%は患者に家庭血圧測定を勧め、高血圧患者の70%以上は家庭血圧計を所有している。しかし、現在のガイドラインの根拠となっている大規模臨床試験の結果は、すべて診察室血圧に基づいたものであり、家庭血圧の最適な降圧目標値の検証が求められていた。 そこで本研究は世界で初めて、家庭血圧計の測定値に基づき、降圧目標を定め、薬物治療を強化していく方法を採用し、最適な家庭血圧の降圧目標値と最適な初期薬物治療を検証するために、わが国で2001年より開始された。 本研究には457名の医師が参加し、3,518例の高血圧症例(家庭血圧の測定値が135-179/85-119mmHg)がエントリーされた。患者はまず、家庭血圧値125-134/80-84mmHgを降圧目標に薬物治療を強化していく通常コントロール群と、125/80mmHg未満を降圧目標とする厳格コントロール群のいずれか2群に無作為に割り付けられ、その後、初回治療としてACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬のいずれか3群に割り付けられ、2×3のマトリクスデザインによって研究が行われた。 主要評価項目としたエンドポイントは、心血管系疾患死、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの発生とした。主な結果は下記のとおり。(1) フォローアップの中央値は5.3年。(2) 厳格コントロール群は通常コントロール群に比べ、多くの降圧薬を処方していた。   厳格群=1.82剤 vs 通常群=1.74剤(P=0.045)(3) 厳格コントロール群は通常コントロール群に比べ、家庭血圧の降圧度が大きかった。  〔収縮期血圧〕厳格群=22.7mmHg vs 通常群=21.3mmHg(P=0.018)  〔拡張期血圧〕厳格群=13.9mmHg vs 通常群=13.1mmHg(P=0.020)(4) しかし、降圧目標達成率は厳格コントロール群で有意に低かった。   厳格群=37.4% vs 通常群=63.5%(P

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寄稿 線維筋痛症の基本

廿日市記念病院リハビリテーション科戸田克広痛みは原因の観点から神経障害性疼痛(神経障害痛)と侵害受容性疼痛(侵害受容痛)およびその合併に分類され、世界標準の医学では心因性疼痛単独は存在しないという考えが主流である。通常、日本医学ではこれに心因性疼痛が加わる。線維筋痛症(Fibromyalgia、以下FM)およびその不全型は日本医学の心因性疼痛の大部分を占めるが、世界標準の医学では神経障害痛の中の中枢性神経障害痛に含まれる。医学的に説明のつかない症状や痛みを世界の慢性痛やリウマチの業界はFMやその不全型と診断、治療し、精神科の業界は身体表現性障害(身体化障害、疼痛性障害)と診断、治療している。FMの原因は不明であるが、脳の機能障害が原因という説が定説になっている。器質的な異常があるのかもしれないが、現時点の医学レベルでは明確な器質的異常は判明していない。脳の機能障害が原因で生じる中枢性過敏症候群という疾患群があり、うつ病、不安障害、慢性疲労症候群、FM、むずむず脚症候群、緊張型頭痛などがそれに含まれる。先進国においてはFMの有病率は約2%であるが、その不全型を含めると少なくとも20%の有病率になる。FMおよび不全型の診断基準は「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント -」に記載されている1)。医学的に説明のつかない痛みを訴える場合には、FMあるいはその不全型を疑うことが望ましい。FMもその不全型も治療は同一であるため、これらを区別する意義は臨床的にはほとんどない。薬物治療のみならず、禁煙、有酸素運動、患者教育、認知行動療法などが有効である。ただし、認知行動療法は具体的に何をすればよいかわからない部分が多く、それを行うことができる人間が少ないため、実施している施設は少ない。人工甘味料アスパルテームによりFMを発症した症例が報告されたため、その摂取中止が望ましい1)。当初は必ず一つの薬のみを上限量まで漸増し、有効か無効かを判定する必要がある。副作用のために増量不能となった場合や、満足できる鎮痛効果が得られた場合には、上限量を使用する必要はない。つまり、上限量を使用せずして無効と判断することや、不十分な鎮痛効果にもかかわらず上限量を使用しないことは適切ではない(副作用のために増量不能の場合を除く)。一つの薬の最適量が決まれば、患者さんが満足できる鎮痛効果が得られない限り、同様の方法により次の薬を追加する。これは国際疼痛学会が神経障害痛に一般論として推奨している薬物治療の方法である。2、3種類の薬を同時に投与することは望ましくない。どの薬が有効か不明になり、同じ薬を漫然と投与することになりやすいからである。世界標準のFMでは有効性の証拠の強い順に薬物を使用することが推奨されているが、その方法は臨床的にはあまり有用ではない。投薬の優先順位を決定する際には有効性の証拠の強さのみならず、実際に使用した経験も考慮する必要がある。さらに論文上の副作用、実際に経験した副作用、薬価も考慮する必要がある。FMは治癒することが少ない上に、FMにより死亡することも少ないため、30年以上の内服が必要になることがしばしばあるからである。FMの薬物治療においては適用外処方は不可避であるが、保険請求上の病名も考慮する必要がある。さらに、日本独特の風習である添付文書上の自動車運転禁止の問題も考慮する必要がある。抗痙攣薬、抗不安薬、睡眠薬、ほとんどの抗うつ薬を内服中には添付文書上自動車の運転は禁止されているが、それを遵守すると、少なくない患者さんの生活が破綻するばかりではなく、日本経済そのものが破綻する。以上の要因を総合して、薬物治療の優先順位を決めている1)。これにより医師の経験量によらず、ほぼ一定の治療効果を得ることができる。ただし、それには明確なエビデンスはないため、各医師が適宜変更していただきたい。副作用が少ないことを優先する場合や自動車の運転が必須の患者さんの場合には、眠気などの副作用が少ない薬を優先投与する必要がある。すなわち、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン) 、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、デキストロメトルファンを優先使用している。痛みが強い場合には、有効性の証拠が強い薬、すなわちアミトリプチリン、プレガバリン、ミルナシプラン、デュロキセチンを優先使用している。抗不安薬は常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的には使用せず、パニック発作の抑制目的にのみ使用し、かつ3ヵ月以内に中止すべきである。FMにアルプラゾラムが有効と抄録に書かれた論文2)があるが、本文中では有効性に関して偽薬と差がないという記載があるため、注意が必要である。ステロイドはFMには有害無益であり、ステロイドが有効な疾患が合併しない限り使用してはならない。昨年、日本の診療ガイドラインが報告された。筋緊張亢進型、腱付着部炎型、うつ型、およびその合併に分類する方法および各タイプ別に優先使用する薬は世界標準のFMとは異なっており、私が個人的に決めた優先順位と同様に明確なエビデンスに基づいていない。たとえば、腱付着部炎型にサラゾスルファピリジンやプレドニンが有効と記載されているが、それはFMに有効なのではなく、腱付着部炎を引き起こすFMとは異なる疾患に有効なのである。糖尿病型FMにインシュリンが有効という理論と同様である。薬を何種類併用してよいかという問題があるが、誰も正解を知らない。私は睡眠薬を除いて原則的に6種類まで併用している。1年以上投薬すると、中止しても痛みが悪化しないことがある。そのため、1年以上使用している薬は中止して、その効果が持続しているかどうかを確かめることが望ましい。引用文献1) CareNetホームページ カンファレンス Q&A:戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」2)Russell IJ et al: Treatment of primary fibrositis/fibromyalgia syndrome with ibuprofen and alprazolam. A double-blind, placebo-controlled study. Arthritis Rheum. 1991;34:552-560.

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うつ病はCOPD増悪・入院の独立した危険因子:久留米大学

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者はうつ病や睡眠障害を合併することが多いと言われている。そして、合併することで健康関連QOL(HRQOL)に悪影響を及ぼす。久留米大学 伊藤氏らはCOPD患者におけるうつ病および睡眠障害の影響を検討した。Respirology誌2012年8月号の報告。 40歳以上のCOPD患者85名とコントロール群46名のうつ病および睡眠障害に関して12ヵ月間調査を行った。COPDの診断にはスパイロメトリー、動脈血ガス分析を実施。HRQOLの評価尺度であるSGRQ(St. George's Respiratory Questionnaire)、うつ病自己評価尺度(CES-D: Center for Epidemiologic Studies Depression)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・COPD患者ではコントロール群と比較し、うつ病および睡眠障害の有病率が有意に高く、相対リスクはうつ病で7.58(95%信頼区間:1.03~55.8)、睡眠障害で1.82(1.03~3.22)であった。・COPD患者ではCES-DとPSQIの間に相関関係があった。・うつ病および睡眠障害の発症率と有意に相関していた項目は、低BMI、重篤な呼吸困難、HRQOLの低さ、動脈血酸素分圧の低さ、動脈血二酸化炭素分圧の高さであった。・うつ病を伴うCOPD患者における症状増悪や入院に至る割合は、睡眠障害合併例やうつ病や睡眠障害を合併していない例と比較し有意に高かった。・うつ病はCOPD患者における症状増悪や入院の独立した危険因子であると考えられる。■関連記事ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か?!気温31℃超で気分症状が再発!入院も増加なぜ、うつ病患者はアルツハイマー病リスクが高いのか?COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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アナストロゾール+フルベストラント併用療法、HR陽性転移性乳がんの生存を改善

 HR陽性転移性乳がんに対する、アロマターゼ阻害薬アナストロゾール(商品名:アリミデックス)とフルベストラント(同:フェソロデックス)の併用療法について行われた第3相無作為化試験の結果、併用療法ではフルベストラントの投与量が標準的とされる用量よりも少なかったにもかかわらず、アナストロゾール単独療法および増悪後はフルベストラントへとクロスオーバーする逐次療法よりも臨床効果が優れることが示された。米国・カリフォルニア大学アーヴィン医療センターのRita S. Mehta氏らが行った検討で、NEJM誌2012年8月2日号で発表された。アナストロゾール単独よりもフルベストラントとの併用療法が優れるか検討 試験は、転移性乳がん治療歴のない閉経後女性を1対1の割合で2群に無作為化して行われた。1群はアナストロゾール1gを毎日経口投与する群で、2群はアナストロゾールとフルベストラントの併用療法群だった。1群は、疾患増悪時にはフルベストラント単独投与へのクロスオーバーが強く推奨された。フルベストラントは1日目500mg、14、28日目に250mgを、以後は月1回250mgを筋注投与した。 患者はタモキシフェン補助療法既往の有無で階層化された。主要エンドポイントは、無増悪生存期間とし、事前規定の副次アウトカムを全生存とした。 2004年6月1日~2009年7月1日に707例が無作為化され、intention-to-treat解析は無作為化後に試験不適格となった被験者を除く694例を対象に行われた。無増悪生存期間の中央値、13.5ヵ月対15.0ヵ月 結果、無増悪生存期間の中央値は、1群13.5ヵ月、2群15.0ヵ月で、併用療法の増悪または死亡のハザード比は0.80(95%信頼区間:0.68~0.94)だった(log-rank検定によるp=0.007)。 併用療法は概してすべてのサブグループにおいて有意な交互作用なく、アナストロゾール単独群よりも効果的だった。 1群患者の41%は進行後にフルベストラントへと完全にクロスオーバーしたが、全生存率も併用療法でより長かった。全生存期間中央値は、1群41.3ヵ月、2群47.7ヵ月で、死亡ハザード比は0.81(95%信頼区間:0.65~1.00)だった(log-rank検定p=0.05)。 2群死亡例のうち3例は治療と関連していた可能性があった。なおグレード3~5の毒性作用の発現率は、2群間で有意差はなかった。

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インスリン療法中の2型糖尿病患者は厳格な大腸がんスクリーニングが必要

 2型糖尿病患者では、内因性高インスリン血症に起因する大腸腺腫および大腸がんのリスクが高い。外因性のインスリン療法はより高い大腸がん発生率と関連している。今回、ペンシルバニア大学のPatricia Wong氏らは、大腸内視鏡検査を実施した50~80歳の2型糖尿病患者における横断研究を行い、2型糖尿病患者における慢性的なインスリン療法が大腸腺腫のリスクを増加させ、また投与期間が長いほどオッズ比が増加したことを報告した。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2012年8月9日号に掲載。 本研究では、内視鏡検査で腺腫を有していた患者をケース、腺腫のない患者をコントロールとし、オッズ比(OR)および関連する信頼区間(CI)は多変量ロジスティック回帰分析により計算された。 主な結果は以下のとおり。・インスリンを12ヵ月以上投与した場合を暴露と定義したとき、ケースの患者(n=196)は、コントロールの患者と比較して、インスリン暴露によるオッズ比の有意な増加は認められなかった。しかし、インスリンを18ヵ月以上(OR 1.6、95%CI:1.1~2.5)、24ヵ月以上(OR 1.7、95%CI:1.1~2.6)、36ヵ月以上(OR 2.0、95%CI:1.2~3.4)投与した場合を暴露と定義したとき、ケースの患者でインスリン曝露によるオッズ比が有意に増加した(トレンド検定p=0.05)。・病期が進行した腺腫を有する2型糖尿病患者の間で、インスリンの暴露における同様の傾向が見られた。・腺腫の位置については、インスリン療法の影響を受けなかった。 これらの結果から、著者らは、インスリン療法を受けている糖尿病患者は、より厳格な大腸がんスクリーニングが必要だろうと述べている。

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食後高血圧:見過ごしがちな動脈硬化のリスクマーカー

 愛媛大学大学院医学研究科加齢制御内科学の上谷英里氏らは、動脈硬化の新たなリスクマーカーとして食後高血圧をAtherosclerosis誌に発表した。この研究成果は7月20日出版に先駆けてインターネットで公開された。 食後高血糖や食後高脂血症が動脈硬化、心血管イベントのリスクファクターであることが従来より知られており、実臨床においてはそれらに特化した治療も行われている。しかし、高血圧に関しては、夜間高血圧や早朝高血圧は目を向けられてきたものの、食後高血圧はこれまで見過ごされていた。上谷氏らは、健康な中高齢者(平均年齢=66±9歳)を対象に、食事前後の血圧と動脈硬化の相関を調査した。血圧は食直前および食後30分の2回を同日に測定し、動脈硬化は上腕-足首脈波伝播速度および頚動脈内膜中肥厚にて評価した。主な結果は下記のとおり。1.〔食直前の平均収縮期血圧〕127±18mmHg 〔食後30分の平均収縮期血圧〕123±18mmHg2. 20mmHg以上の血圧低下が認められた割合は8.4%(n=112)   10mmHg以上の血圧上昇が認められた割合は9.6%(n=129)3. 動脈硬化は食後血圧上昇群、食後血圧低下群のいずれにおいても高率で認められた4. 収縮期血圧の変化度は、食前の収縮期血圧値と強く相関していた(r=0.335,P

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閉経後女性における結腸がんの危険因子~15万912人の追跡データより

 閉経後女性における結腸がんの危険因子について、米国Women's Health Initiativeにおけるプロスペクティブデータから、関連する可能性がある800以上の因子を検討した結果が、Cancer Causes and Control誌オンライン版2012年8月2日版に発表された。Arthur Hartz氏らが報告。 著者らは、150,912人(50〜79歳)の閉経後女性のデータから、Cox比例ハザード回帰分析を用い、追跡期間中央値である8年において結腸がん発症に関連する独立危険因子を検討した。主な結果は以下のとおり。・1,210人の女性が結腸がん、282人の女性が直腸がんを発症した。・11の危険因子が、結腸がんリスク増加との独立した関連性が認められた(p

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高齢者のQOL低下に深く関わる「うつ」

 高齢になればなるほど、生活の質(QOL)が低下することがわかっている。とくに認知症患者では、顕著なQOL低下をきたす。Weiss氏らは各ステージのアルツハイマー型認知症(AD)患者、軽度認知障害(MCI)患者、健常高齢者のQOLを評価し、高齢者におけるQOLの予測因子についてうつ病など気分障害が関与していることを報告した。Neuropsychiatr誌オンライン版2012年7月27日号の報告。 対象は健常高齢者23名、MCIと診断された高齢者24名、軽度AD28名、中等度AD17名からなる高齢者92名。QOLはSF36(包括的QOL尺度)を用い評価した。主な結果は以下のとおり。・健常高齢者または中等度ADでは、MCI、軽度ADと比較し、良好なQOLを示した。SF36の尺度のうち、全体的健康感、活力、日常役割機能、心の健康の認知において有意な差が認められた。・うつ病とSF36のすべての尺度の間に、有意な負の相関が認められた。・気分は、認知機能低下の段階において、高齢者のQOLの強力な予測因子であると考えられる。関連医療ニュース ・なぜ、うつ病患者はアルツハイマー病リスクが高いのか? ・難治性うつ病に対するアプローチ「SSRI+非定型抗精神病薬」 ・「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり

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第5回 損害の評価、素因減額:医師の責任を金銭にすると?

■今回のテーマのポイント1.身体損害の金銭への評価は、〔1〕治療費等積極的損害 +〔2〕逸失利益(消極的損害) + 〔3〕慰謝料で求められる2.不法行為の被害者が疾患を有する場合の損害額の減額方法として、逸失利益の減額(損害額の算定)と素因減額の方法がある3.良性疾患等回復可能な疾患においては、素因減額の方法をとる必要がある事件の概要患者(X)(48歳男性)は、平成12年5月23日、勤務中に右膝を負傷し、A病院にて局所麻酔下で異物(右膝の皮下組織と筋膜間に針金と砂様の異物、脛骨粗面付近の皮下組織内に鉛筆の芯用の異物)を除去しました。創部の痛みが強かったため、2日後の同月25日にXは、A病院に入院することとなりました。右膝の経過は順調であったものの、同月30日頃より、胸部不快感が生じるようになり、6月1日午前5時半頃、トイレから帰室する際に意識消失。すぐに意識を取り戻したものの、胸部不快感及び呼吸苦を訴えたことから、酸素投与及びニトロ舌下を行ったところ、胸部不快感及び呼吸苦は改善しましたが、心電図上、「II,III,aVF,V1,2 negative T,V3,4,5軽度ST上昇」を認めたため、Y1医師は、急性冠不全症又は急性心筋梗塞疑いと診断して精査加療のため、B病院に転院を指示しました。B病院転院後、医師Y2は、午前11時20分頃に冠動脈造影検査を施行したところ、器質的狭窄は認めなかったものの、エルゴノビン負荷テストにおいて、左前下行枝に90%狭窄を認め、同日朝の胸部不快感と同様の症状を認めたこと、ニトロール注入にて症状及び狭窄が改善したことから、冠攣縮性狭心症と診断しました。しかし、Xは、同日夜10時頃と翌午前3時頃に胸部不快感を訴え、翌朝午前6時50分頃、再び意識消失しました。同時点での血圧は80台、心拍数が48回/分、心電図上、右脚ブロック及びV2~4でST上昇を認めました。Y2医師は、心エコーを施行したところ、著明な右室の拡張及び心室中隔の奇異性運動を認めたことから、肺塞栓症を疑い、肺動脈造影検査を施行しようとXをベッド移動したところ、Xは、呼吸停止、高度除脈となりました。Y2医師は、心肺蘇生を行うと同時に、肺動脈造影を行ったところ、肺動脈内に血栓を認めたことから、肺塞栓症と診断し、血栓溶解剤の投与を行いましたが、6月4日午前6時24分に死亡確認となりました。原審(熊本地裁)では、Y1医師、Y2医師が肺塞栓症を疑わなかったことに過失は認められないとして、Xの遺族の請求を棄却しました。これに対し、福岡高裁は、Y1医師、Y2医師の過失を認め、下記の通り判示しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者(X)(48歳男性)は、平成12年5月23日、勤務中に右膝を負傷したため、同日勤務終了後、近医を受診しました。レントゲン写真上、右膝に異物が認められたことから、異物の摘出を試みるも、うまくいかなかったため、A病院に紹介しました。同日夕方、A病院にて局所麻酔下で異物(右膝の皮下組織と筋膜間に針金と砂様の異物、脛骨粗面付近の皮下組織内に鉛筆の芯用の異物)を除去し、ペンローズドレーンを留置し、外来フォローアップとしました。しかし、創部の痛みが強く、2日後の同月25日に患者X希望にてA病院に入院することとなりました。右膝の経過は順調であったものの、同月30日頃より、胸部不快感が生じるようになり、6月1日午前5時半頃、トイレから帰室する際に意識消失。すぐに意識を取り戻したものの、胸部不快感及び呼吸苦を訴えたことから、心電図を施行し、酸素投与及びニトロ舌下を行ったところ、胸部不快感及び呼吸苦は改善しました。同日午前9時頃に内科(医師Y1)紹介受診したところ、先に施行した心電図上、「II,III,aVF,V1,2 negative T,V3,4,5軽度ST上昇」を認めたことから、急性冠不全症又は急性心筋梗塞疑いにて精査加療のため、B病院に転院することとなりました。同日午前10時頃にB病院に到着。医師Y2は、午前11時20分頃に冠動脈造影検査を施行したところ、器質的狭窄は認めなかったものの、エルゴノビン負荷テストにおいて、左前下行枝に90%狭窄を認め、同日朝の胸部不快感と同様の症状を認めたこと、ニトロール注入にて症状及び狭窄が改善したことから、冠攣縮性狭心症と診断しました。しかし、Xは、同日夜10時頃と翌午前3時頃に胸部不快感を訴え、翌朝午前6時50分頃、再び意識消失しました。同時点での血圧は80台、心拍数が48回/分、心電図上、右脚ブロック及びV2~4でST上昇を認めました。Y2医師は、心エコーを施行したところ、著明な右室の拡張及び心室中隔の奇異性運動を認めたことから、肺塞栓症を疑い、肺動脈造影検査を施行しようとXをベッド移動したところ、Xは、呼吸停止、高度除脈となりました。Y2医師は、心肺蘇生を行うと同時に、肺動脈造影を行ったところ、肺動脈内に血栓を認めたことから、肺塞栓症と診断し、血栓溶解剤の投与を行いましたが、6月4日午前6時24分に死亡確認となりました。事件の判決判決では、遅くとも6月1日午前5時半頃の意識消失時(前医であるA病院入院時)には、Xが肺塞栓症を発症していたと認定し、「Y1医師が、Xの6月1日の意識消失等を虚血性心疾患によるものであると診断したのは、客観的には誤りであったものといわなければならない」とした上で、「もっとも、症状や心電図のみでは、肺塞栓症とその他の疾患、特に心疾患と鑑別診断することは極めて困難であるというのであるから、Y1医師が、6月1日午前9時ころまでにXにかかる上記のような所見を得ていたからといっても、Xが肺塞栓症に罹患していると診断することまで期待するのは無理である。とはいえ、急性肺血栓塞栓症においては、診断がつかず適切な治療が行われない場合には死亡の確率が高いこと、他方で、適切な治療がなされれば死亡率が顕著に低下することが知られていたのであるから、Y1医師としては、上記時点で、少なくとも肺塞栓症に罹患しているのではないかとの疑いを持つことが必要であり、それは十分可能であったといわなければならない」として、Y1が肺塞栓症を疑わず、その結果B病院転院時の診療情報提供書に肺塞栓症疑いと記載しなかったことを過失としました。Y2についても、「6月1日午後10時ころに至り、再び胸痛を訴えるに及び、また、その際行われた心電図検査の結果は、搬送された際に実施したものと同様に、肺塞栓症と考えても矛盾しないものであったということからすれば、遅くともこの時点では肺塞栓症を疑うべきであったといわなければならない」「しかるに、Y2医師は、上記Y1医師の診断結果を認識した後、もっぱらその疑いを念頭に置いて冠動脈造影検査、エルゴノビン負荷テストを施行したものであり、また、胸痛が持続する場合にはニトロペンを舌下投与すべき旨を指示しただけで、肺塞栓症を鑑別対象に入れることは6月2日朝に至るまでなかったというのであるから、この点につき、Y2医師には上記注意義務に違反した過失があるというべきである」として過失を認めました。その上で、「このような事情を考慮するならば、上記のとおり、Y1医師及びY2医師がともに過失責任を免れないとしても、直ちに全責任を負わしめるのはいかにも酷というべきである。そうであれば、結果に寄与したXの素因ないしは被害者(患者)側の事情として上記の諸事情を考慮し、上記不法行為と相当因果関係を有する損害額を一定の割合で減額するのが相当である」と判示し、過失相殺の法理を類推適用し、損害額の4割を控除し、約4,080万円の損害賠償責任を認めました。(福岡高裁平成18年7月13日判タ1227号303頁)ポイント解説不法行為責任が成立した場合、加害者は、当該過失によって生じた損害を金銭に評価した額を賠償する責任を負います。(1) 過失(2) 損害(3) (1)と(2)の間の因果関係↓不法行為責任成立↓生じた損害を金銭に評価↓当該評価額を賠償する責任を負う医療過誤訴訟においては、通常、「患者の死傷」が損害となります。この「人の死傷」という損害の金銭的評価は難しく、各国によって異なっているのですが、わが国においては、〔1〕積極的損害:入院・治療費、看護費用、交通費、葬祭費、弁護士費用等〔2〕消極的損害:逸失利益(被害者が生存していれば得たであろう利益(収入))〔3〕精神的損害:慰謝料の3つが認められることとなっています。この中で、最も高額となりがちなのが〔2〕の逸失利益であり、産科医療訴訟の賠償額が高額化する原因はここにあります(被害者の就労可能期間が最も長いため)。しかし、病院に治療に来る患者は、何らかの疾患を抱えています。したがって、たとえ医療過誤が発生し、患者が死亡した場合であっても、当該疾患により、就労不能であった場合には、逸失利益は“0”になります(損害額の算定の問題)。また、交通事故と被害者の疾患が競合して死亡という結果が生じた事案において、裁判所は、「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定※1を類推適用して、被害者の当該疾患を斟酌することができるものと解するのが相当である。けだし、このような場合においてもなお、被害者に生じた損害の全部を加害者に賠償させるのは、損害の公平な分担を図る損害賠償法の理念に反するものといわなければならないからである」(最判平成4年6月25日民集46巻4号400頁)と判示しています。これは、「素因減額」と言われている考え方です。被害者が疾患を有していた場合の損害額の減額方法はこれら2つの方法がありますが、医療過誤訴訟においては、多くの場合、損害額の算定の方法で処理されています。たとえば、がん患者が医療過誤によって死亡した場合には、損害額の算定による方法では、「医療過誤がなかったとしても余命は○年であり、その間、就労することは不可能であるので逸失利益は認められない」となり、素因減額の方法では、「医療過誤とがんがともに原因となって死亡という損害を発生させており、加害者に損害の全部(健康な同年代と同額の逸失利益等損害)を賠償させることは公平を失するので、過失相殺の規定を類推適用して、損害額を減額する」となり、どちらの方法をとっても、結果として、同程度の損害額の減額が認められることとなります。しかし、進行がんなどの治療困難な疾患については、どちらの方法でも同程度の結果となりますが、本件のように、うまく治療がなされれば根治可能な良性疾患等に関しては結果が異なってきます。すなわち、「医療過誤がない」=「肺塞栓症と早期に診断」ができていれば、健康な状態で長期就労可能となりますので、損害額の算定の方法では、減額ができないからです。本判決では、Y1、Y2に過失があるといえるかはともかく、このような場合には、素因減額の方法をとり、損害額を減額することができるということを示した判決です。世界中で、民事医療訴訟を原因とした医療崩壊が生じており、その対応のため、無過失補償制度を各国が導入してきています。無過失補償制度を導入するにあたり、最大の鍵となるのが、補償額の多寡であり、訴訟を行った場合に得られる金額に近い額の補償額を給付しなければ、結局、訴訟が選択されてしまいます。逆相続※2を認めるわが国においては、損害賠償額が高額となるため、無過失補償制度の運営が困難といわれています。また、そもそも、医療提供体制においては、低額の皆保険制度をとっているにもかかわらず、紛争が生じると、他の一般民事事件と同様に高額な損害賠償額となるのは公平を失するといえます。今後、医療過誤訴訟は増加の一途をたどることが予想されます。訴訟による医療崩壊が生ずる前に速やかに無過失補償制度を作る必要があり、その前提として、素因減額の適用拡大が必要となるものと思われます。 ※1民法第722条2項:被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。※2子供が不法行為により死亡した場合に、子供の逸失利益を親に相続させること。子供が生存していた場合、親が子の財産を相続することは通常ないこと等から、EU諸国では認められていない。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)福岡高裁平成18年7月13日判タ1227号303頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。最判平成4年6月25日民集46巻4号400頁

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太り過ぎの乳がん患者の二次原発がんリスクは有意に高い!肥満による大腸がん発症の相対リスクは1.89

 乳がん患者における二次原発がん発生率とBMI(Body Mass Index)との関連が、いくつかの観察研究で検討されている。この関連の強さを評価するために、フランスのDruesne-Pecollo N氏らがエビデンスの系統的レビューとメタ解析を行った。解析の結果、肥満により二次原発がんのリスクは有意に増加することが認められ、太り過ぎや肥満の患者を減少させるための予防対策が重要であることが示唆された。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2012年8月5日号における報告。 著者らは、PubMedとEMBASEで2012年5月まで検索を行い、解析に含まれている研究の参考文献リストを調査した(前向き研究13報、コホート研究5報、ケースコントロール研究8報)。 BMIのメタ解析の結果、肥満は、対側乳房(相対リスク(RR):1.37、95%信頼区間(CI):1.20~1.57)、乳房(RR:1.40、95%CI:1.24~1.58)、子宮内膜(RR:1.96、95%CI:1.43~2.70)、大腸(RR:1.89、95%CI:1.28~2.79)における二次原発がんの有意なリスクの増加に関連していた。 また、用量反応メタ解析によると、BMIが5kg/m2増加することにより、対側二次原発乳がんのRRが1.12(95%CI:1.06~1.20)、二次原発乳がんのRRが1.14(95%CI:1.07~1.21)と、それぞれ有意に二次原発がんのリスクが増加した。子宮内膜の二次原発がんでは、5kg/m2増加による要約RRは、1.46(95%CI:1.17~1.83)であった。 今後、体重過多の乳がん患者において、正常体重への減量による二次原発がん発生率への効果を評価するための臨床試験が必要である、と著者らは述べている。

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ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か?!

 ここ10年の間にオンラインゲームは急速に広まり、それに伴うさまざまな問題に注目が集まっている。しかしながら、過度なオンラインゲームの利用が精神症状に与える影響に関する報告は多くない。Wei氏らはインターネット調査によりオンラインゲーマーの特性を明らかにし、オンラインゲーム利用時間と社会不安障害、うつ病との関係を検証した。BMC Psychiatry誌オンライン版2012年7月28日号の報告。 オンラインアンケートを作成し、人気のあるオンラインゲームのウェヴサイトに掲載した上で、調査に協力してくれるオンラインゲーマーを募った。アンケートでは、人口統計学的データ、インターネットとオンラインゲームの利用状況、うつ病・身体症状尺度(DSSS)、社会不安障害尺度(SPIN)、Chenインターネット依存スケール(CIAS)を調査した。主な結果は以下のとおり。・1ヵ月の調査でオンラインゲーマー722名(平均年齢:21.8±4.9歳)の調査が完了した。・調査協力者の内訳は、男性601名(83.2%)、女性121名(16.8%)であった。・オンラインゲーム利用時間の平均値は28.2±19.7時間/週であり、オンラインゲーム歴(r=0.245、p

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患者指導、診療チーム力向上のカギはコーチングで鍛える「対話力」!

医療におけるコーチングの展望 日米の視点から日本コーチ協会主催の第14回年次大会が、2012年6月23日、日本橋三井ホールにおいて開催された。同大会は、各分野でのコーチング活用の発表の場として、また最新のコーチング情報を提供する目的で毎年開催されているものである。はじめに、日本コーチ協会理事長の桜井一紀氏より「コーチングは社会のさまざまな場面で取り入れられている。とくにリーダーが部下との関係性向上や、組織全体の活性化のためにコーチングを取り入れる例が多くみられている。具体例として、キリンビールや東北大学でコーチングが採用され、効果を上げている。医療現場では、名古屋第二赤十字病院などで導入され、病院スタッフの“対話力”が向上していると聞く。今日は、国内外のいろいろな事例を聞いて、参考にしてもらいたい」と開会の挨拶を行った。行動変容の基本原理 ~コーチング手法の活用~基調講演としてElizabeth Pegg Frates 氏(ハーバード大学 准教授)が「行動変容の基本原理 ~コーチング手法の活用~」と題して、基調講演を行った。はじめに米国の生活習慣病に関する概要を示した後、自身が経験した患者ヘの生活習慣指導のコーチングを例にわかりやすく解説した。氏がレジデントの頃、「患者に一方的に上から指導・アドバイスを行うことが患者のためになる」と思っていたが、それでは患者は従わず、医療者にも患者にもフラストレーションが溜まる結果となった。しかし、コーチングの手法を学んだことで、まず患者の声を傾聴し、表情や声色から患者の思いを読み取ることで、患者の行動変容を促していけるようになり、指導の実を挙げていると報告した。一例として肥満患者へのコーチングをあげ、ライフスタイルコーチングをすることでまず食習慣が改善され(肉食から野菜・魚食へ)、次に運動習慣も身についたと紹介した。「患者が最高のQOLで過ごせるようになること」がコーチングの成果であり、生活習慣指導の分野では非常に効果があるという。次に、コーチングに関する医学論文を紹介し、コーチングが多様な分野で活用されているとレポートした。疾患領域では、「ぜんそく、がん、うつ、脊髄小脳変性症、糖尿病、循環器系疾患、疼痛」などの分野で効果が報告されており、一例として循環器疾患領域でコレステロールの大幅な改善があったと紹介した。最後にこれからの展望として、コーチングによってどのような影響があったのか長期フォローアップと大規模化・集中化が求められる研究が必要だと述べ、講演を終えた。チーム医療にコーチングを活かす 患者中心の医療に向けてセッション1として、出江紳一氏(東北大学大学院医工学研究科 リハビリテーション医工学 教授)が、「チーム医療にコーチングを活かす 患者中心の医療に向けて」と題して自身の研究室で行ったコーチングをテーマに講演を行った。出江氏は、「コミュニケーションはキャチボール」というコーチングの概念を紹介し、日常診療で診断、予後、治療を扱う医療面接において「将来への希望となる質問や布石を行っている」と自身の貴重な臨床での経験を披露した。出江氏によると、コーチングの特徴は、「双方向のコミュニケーション」、「相手に合ったコミュニケーション」、「継続的なコミュニケーション」の3つを柱として行うもの。診療におけるコミュニケーションだけでなく、研究室の研修医・大学院生への教育にも活用している。講演では、医学部教員研修にコーチングスキルの修得を導入した経験と、脊髄小脳変性症患者へのコーチング介入のランダム化比較試験を紹介。前者では継続的なフォローによりコーチング指導の意義・継続を浸透させることができ、コミュニケーションに変化が生じたこと、後者では、患者の自己効力感が増大したことなどが報告された。また、チーム医療向上へのコーチング導入の例を紹介。「コーチング理論に基づく医療コミュニケーション教育法の確立」の研究成果をレポートした。従来の研修医教育システムにコーチングの手法を導入し、研修医のコミュニケーションを看護師が評価し、その結果をテーマとして指導医が研修医をコーチしたものである。指導医にはやや負担が増えるものの、手法の中で行われる研修医との面談でコミュニケーションの緊密化が図られた。その結果、研修医は他者からの評価が把握でき、指導医は臨床以外の場面でコミュニケーションができるため、院内コミュニケーションに関してお互いによい影響がでていると報告した。個人にコーチングを行うことで、組織内のコミュニケーションに変化が生じ、組織のパフォーマンスによい変化が生まれる。とりわけ医療の現場では、「コミュニケーション力の増大は、安全管理の向上とも相関する可能性があることから、今後も実践と研究の両面で行っていく」と講演を終えた。遅発型食物アレルギー陽性者に対するコーチングセッション2では、澤登雅一氏(三番町ごきげんクリニック 院長)が、「遅発型食物アレルギー陽性者に対するコーチング」として“対患者コーチング”をメインに講演を行った。

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