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抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は?

 腸管および血液脳関門に発現する薬物排出系トランスポーター(drug efflux transporters)活性に関する、アリピプラゾールとその活性代謝物デヒドロアリピプラゾールの効果が検討された。MDR1に対しては比較的強い阻害が認められた一方で、MRP4活性に対する阻害効果はほとんどみられなかったなどの知見が得られた。アステラス製薬の長坂氏は、「アリピプラゾールは、薬物トランスポーターについて検討された薬物との同時投与では、血液脳関門で薬物相互作用(DDI)を生じる可能性が低いことが示された」と報告した。Biopharm Drug Dispos誌2012年9月号(オンライン版2012年8月15日号)の報告。 検討された薬物排出系トランスポーターは、ヒト多剤耐性蛋白質1(MDR1/ABCB1;P糖蛋白)、乳がん耐性蛋白(BCRP/ABCG2)、多剤耐性関連蛋白質4(MRP4/ABCC4)であり、アリピプラゾールとデヒドロアリピプラゾールの阻害効力について調べた。主な結果は以下のとおり。・ヒトMDR1(ヒトMDCKII-MDR1細胞における)については、相対的に強い阻害効力が認められた。IC50(50%阻害濃度)は、アリピプラゾール1.2μm、デヒドロアリピプラゾール1.3μmであった。・ヒトMDR1については同様の実験系で、その他の非定型抗精神病薬(リスペリドン、パリペリドン、オランザピン、ジプラシドン)の阻害効力も評価された。IC50は2つを複合した場合の10倍以上であった。・アリピプラゾールとデヒドロアリピプラゾールは、ヒトBCRPについても阻害効力を有していた。IC50はそれぞれ、3.5μmと0.52μmであった。・ヒトMDR1とBCRPに対する、アリピプラゾールとデヒドロアリピプラゾールのIC50についての恒常的非結合型濃度比は0.1未満であった。しかし、アリピプラゾールの腸管系の理論的最大濃度比は、International Transporter Consortium(ITC)およびFDAが提唱するカットオフ値の10よりも大きい。・ヒトMRP4活性に対しては、アリピプラゾールとデヒドロアリピプラゾールの阻害効果はほとんどみられなかった。関連医療ニュース ・難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」 ・日本おける抗精神病薬の用量はまだ多い ・日本人統合失調症患者の認知機能に影響を与える処方パターンとは

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HIV患者の抗レトロウイルス療法、プライマリ・ケア看護師への移行は可能か?

 HIV患者に対する抗レトロウイルス療法(ART)の導入や再処方を医師に代わって看護師が行うアプローチは安全に遂行可能であり、健康アウトカムやケアの質を改善することが、南アフリカ・ケープタウン大学肺臓研究所のLara Fairall氏らが実施したSTRETCH試験で示された。南アフリカにおけるART普及の主な障壁は治療医の不足であり、ART導入の遅れによりART待機患者の死亡率が上昇することが知られている。ARTの医師から他の医療職への職務移行の可能性に期待が寄せられているが、その有効性に関するエビデンスは十分でないという。Lancet誌2012年9月8日号(オンライン版2012年8月15日号)掲載の報告。STRETCHプログラムの効果をクラスター無作為化試験で評価STRETCH(Streamlining Tasks and Roles to Expand Treatment and Care for HIV)試験は、訓練を受けた看護師がARTの導入および再処方を行って治療の分散化を図るアプローチ(STRETCHプログラム)が、HIV患者の死亡、ウイルス抑制などの健康アウトカムに及ぼす効果を評価するクラスター無作為化試験。2008年1月28日~2009年6月30日までに、南アフリカの31のプライマリ・ケア施設を登録し、STRETCHプログラムを行う群(介入群)あるいは標準治療を継続する群(対照群)に無作為に割り付けた。それぞれの施設で治療を受けた患者を2010年6月30日までフォローアップした。2つのコホートが登録された。コホート1は16歳以上のCD4陽性リンパ球細胞数<350個/μLでARTを受けていない患者で、コホート2は試験開始時にすでに6ヵ月以上のARTを受けていた患者であった。主要評価項目は、コホート1が死亡までの期間、コホート2は登録後12ヵ月におけるウイルス量の検出不能率とした。検出不能は、ウイルス量が<400コピー/mLの場合とした。コホート1の死亡率:20% vs 19%、コホート2の検出不能率:71% vs 70%コホート1の5,390例およびコホート2の3,029例が介入群に、コホート1の3,862例およびコホート2の3,202例が対照群に割り付けられた。フォローアップ期間中央値はコホート1が16.3ヵ月、コホート2は18.0ヵ月だった。コホート1では、試験終了時までに介入群の20%(997/4,943例)、対照群の19%(747/3,862例)が死亡し、死亡までの期間は両群間に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.76~1.15)。ベースラインのCD4陽性リンパ球細胞数が201~350/μLの患者に関する事前に計画されたサブグループ解析では、死亡率が対照群に比べ介入群で低い傾向がみられた(HR:0.73、95%CI:0.54~1.00、p=0.052)。一方、<200/μLの患者では両群間で同等だった(HR:0.94、95%CI:0.76~1.15、p=0.577)。コホート2では、登録後12ヵ月の時点におけるウイルス量の検出不能率は介入群が71%(2,156/3,029例)、対照群は70%(2,230/3,202例)であり、両群間で同等であった(リスク差:1.1%、95%CI:−2.4~4.6)。著者は、「ARTの導入および再処方を含むプライマリ・ケア看護師の職務拡大は安全に遂行可能であり、健康アウトカムやケアの質を改善するが、未治療例のART導入に要する時間や死亡率は改善しないことが示された」と結論し、「このアプローチを南アフリカよりも医師へのアクセスに制限がある地域や無医地区に適用可能かという問題については別の試験を行う必要があるが、われわれの看護師訓練法やガイドライン作成法はすでにガンビアやマラウィに導入されている」という。

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光療法は青年期うつ病の単独療法として有効か?

 成人うつ病の有効な治療選択肢のひとつである「光療法」。この光療法が青年期うつ病治療においても有用であり、短期間で効果が期待できることをドイツ Niederhofer氏らがInt J Psychiatry Clin Pract誌オンライン版2012年9月号で報告した。 14歳から17歳の軽度うつ病患者28例を対象とした無作為化クロスオーバー試験。14例は、まずプラセボ治療として50Lux、1時間/日を1週間実施し、その後2,500Luxの光療法を1週間実施した。別の14例はまず2,500Luxの光療法を実施し、その後プラセボ治療を実施した。試験開始1週間前、プラセボ治療1日前、プラセボ治療と光治療の切り替え時、光療法開始1日後、光療法開始1週間後にベック抑うつ評価尺度にて抑うつ症状を評価するとともに、8時と20時に唾液中のメラトニンとコルチゾールのサンプルを採取して概日タイミングの変化を観察した。主な結果は以下のとおり。・ベック抑うつ評価尺度のスコアは有意に改善した。・唾液の分析結果において、光療法とプラセボ治療との間に有意な差が認められた。・有意な副作用は観察されなかった。・青年期うつ病患者に対する光療法の抗うつ効果は、プラセボ治療と比較し統計学的に優れていた。関連医療ニュース ・せん妄対策に「光療法」が有効! ・うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」 ・高齢者うつ病患者への運動療法は有効

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せん妄を有する高齢入院患者の死亡リスクは高い!

 高齢者が罹患する一般的な精神疾患には、せん妄、認知症、うつ病があり、これらは死亡率と関係している。Tsai氏らはせん妄、認知症、うつ病を伴う高齢患者の1年間の死亡率を評価した。Psychosomatics誌2012年9月号の報告。 対象は、2002~2006年に精神科のコンサルテーションを受けた65歳以上の一般病院入院高齢患者614名のうち、せん妄患者172名、認知症患者92名、うつ病患者165名。3群間の死亡率はlog-rank検定により比較した。死亡率の関連する可能性のある要因の識別にはロジスティック回帰分析が用いられた。主な結果は以下のとおり。・せん妄患者群における1年間の死亡率はうつ病患者群に比べ有意に高かったが(p=0.048)、せん妄群と認知症群、または認知症群とうつ病群との間には有意差が認められなかった(p=0.206、p=0.676)。・うつ病群において男性患者は女性患者より死亡率が高かった(p=0.003)。せん妄、認知症群では男女間で差がなかった。・すべての患者における1年間の死亡率は、高齢(p

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経口アンドロゲン受容体阻害剤XTANDI 米国で新発売

 アステラス製薬株式会社は14日、米国メディベーション社と共同で開発・商業化を進めているXTANDI(米国製品名、p-INN:エンザルタミド、開発コード:MDV3100)について、米国で発売したことを発表した。なお、XTANDIは専門薬局等を通じて提供されるとのこと。  米国食品医薬品局(FDA)は、2012年8月31日に、ドセタキセルによる化学療法施行歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺がんの効能・効果で、XTANDIを承認した。また、同社とメディベーション社は、処方された薬剤の入手および保険償還に関する患者へのサポートを目的とした、患者アクセス支援プログラム「XTANDI Access Services」を開始している。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/xtanditm.html

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高齢者うつ病患者への運動療法は有効

 高齢者ではうつ病の罹患率が高いが十分な治療が行われていない。そのため、治療戦略として運動を提唱することは、公衆保健上の優先課題である。英国のBridle氏らは高齢者の抑うつ症状に対する運動療法の効果を評価した。Br J Psychiatry誌2012年9月号の報告。 高齢者のうつ病と運動に関する無作為化比較試験のシステマティックレビューとメタ解析を実施した。その際、参加者の適格性を決定するうつ病の抽出条件によって、治療効果が変化するかどうかについても評価した。基準を満たした報告は9報、メタ解析は7報で行った。主な結果は以下のとおり。・運動は、うつ病重症度の低下と有意な関連があった(標準化平均差[SMD]= -0.34、95%Cl: -0.52 ~ -0.17)。これは、参加者の適格性が、臨床診断(SMD= -0.38、95%Cl: -0.67 ~ -0.10)や症状のチェックリスト(SMD= -0.34、95%Cl: -0.62 ~ -0.06)によって判定されたかどうかとは関わりがなかった。・これらの結果は感度分析においても、同様に有意であった。・高齢者うつ病患者のうつ症状の重症度を低下させるために、患者ごとにカスタマイズされた運動療法は有効であると考えられる。関連医療ニュース ・ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か?! ・認知症を予防するには「体を動かすべき」 ・高齢者のQOL低下に深く関わる「うつ」

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高血圧白書2012 CONTENTS

1.調査目的と方法本調査の目的は、高血圧症診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている降圧薬を評価することである。高血圧症患者を1ヵ月に10人以上診察している全国の医師500人を対象に、CareNet.comにて、アンケート調査への協力を依頼し、2012年6月15日~18日に回答を募った。2.結果1)回答医師の背景回答医師500人の主診療科(第一標榜科)は、一般内科が51.4%で最も多く、次いで循環器科で14.6%、消化器科で8.0%である。それら医師の所属施設は、病院(20床以上)が63.3%、診療所(19床以下)が36.7%となっている(表1)。表1画像を拡大する医師の年齢層は40-49歳が最も多く37.2%、次いで50-59歳以下が36.2%、39歳以下が21.9%と続く。40代から50代の医師が全体の7割以上を占めている。また62.6%もの医師が高血圧症患者を月100例以上診ている(表2)。表2画像を拡大する2)薬物治療開始血圧/降圧目標の推移年齢別薬物治療開始血圧/降圧目標の推移薬物治療開始血圧と降圧目標を年齢別でみると、一部例外はあるもののともに年々低下傾向がみられ、収縮期血圧については、65歳未満では薬物治療開始が平均146.9mmHg、降圧目標が130.5mmHg。65-74歳が同149.1mmHg、同133.5mmHg。75歳以上が同152.2mmHg、同136.8mmHgとなっている。2010年6月の調査で一時的に高くなっている理由として、Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes (ACCORD)試験、Valsartan in Elderly Isolated Systolic Hypertension(VALISH)試験において、積極的降圧群の結果が通常降圧群とエンドポイントの発生率で差が認められなかった無作為化比較試験の結果が、調査直前に発表されたことが影響していると考えられる。このように、高血圧症患者の年齢層が高くなるにしたがって、薬物療法開始血圧、降圧目標も高くなる傾向がみられている。(図1)図1画像を拡大する糖尿病有無別治療開始血圧/降圧目標の推移薬物治療開始血圧と降圧目標を糖尿病合併の有無別でもみると、同様に年々低下傾向がみられ、収縮期血圧については、合併症なしの場合は薬物治療開始が平均148.2mmHg、降圧目標が132.9mmHg。糖尿病を合併している場合には同132.9mmHg、同128.6mmHg。このように、糖尿病を合併している患者では降圧目標値をより低く設定し、早い段階から薬物治療を開始する傾向がみられる。(図2)図2画像を拡大する3)降圧薬の選択合併症がない高血圧症への第一選択薬合併症がない高血圧症に対する第一選択薬として最も多いのが「Ca拮抗薬」で47.3%、次いで多いのが「ARB」で43.3%と続く。以前と比べると低下しつつあるものの、今なお第一選択薬はCa拮抗薬が最も多いという結果となった(図3)。図3画像を拡大する糖尿病を合併した高血圧症への第一選択薬糖尿病を合併した高血圧症に対する第一選択薬として最も多いのが「ARB」で60.8%、次いで多いのが「Ca拮抗薬」で28.4%と続く。2009年に改訂された「高血圧治療ガイドライン」において、糖尿病合併例における第一選択薬はACE阻害薬、ARBが推奨されているが、Ca拮抗薬を第一選択薬として処方されている患者さんが3割弱いる。(図4)。図4画像を拡大するCa拮抗薬で降圧不十分な場合の選択肢Ca拮抗薬で降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「ARBの追加投与」で50.1%、次いで多いのが「合剤(ARB+CCB)への切り替え」で16.8%と続く。2010年に発売されたARBとCa拮抗薬配合剤の割合が増加傾向にある(図5)。図5画像を拡大するARBで降圧不十分な場合の選択肢ARBで降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「Ca拮抗薬の追加投与」で43.4%、次いで多いのが「合剤(ARB+CCB)への切り替え」で16.2%と続く。また、2006年12月にARBと利尿薬の配合剤が発売されて以来、配合剤への切り換えも含めたARBに利尿薬を追加する処方が増加し、ARBとCa拮抗薬の配合剤が発売された2010年4月以降、配合剤への切り換えも含めたARBにCa拮抗薬を追加する処方が増加してきているのがわかる(図6)。図6画像を拡大するCa拮抗薬+ARBで降圧不十分な場合の選択肢Ca拮抗薬+ARBで降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「降圧利尿薬の追加投与」で32.6%、「ARBを合剤(ARB+利尿薬)に切り換え」が8.9%であるから、利尿薬成分を追加する処方が41.5%と3剤併用が普及してきている。(図7)。図7画像を拡大する降圧薬選択における重要視項目の推移降圧薬を選択するために重要視している項目を尋ねた(複数選択可)。図8には2005年時点で30%以上の医師より支持されていた項目の推移を示している。2005年に最も多かった「降圧効果に優れる」が7年間でさらに重要視される傾向にあり、90.2%の医師が重要視していた。次いで多いのが「24時間降圧効果が持続する」61.8%、「腎保護作用が期待できる」58.0%と続く。「腎保護作用が期待できる」については慢性腎臓病(CKD)の概念がわが国でも提唱された2007年以降に重要度が増している。一方、「大規模試験で評価できるエビデンスがある」は、2009年をピークに減少傾向にある。これは降圧薬を用いた大規模試験においてポジティブな結果が少なくなっていることと関係していると考えられる。これら8年にわたる重要視項目の変化は、この期間に発表されたエビデンスの多くが、「降圧薬の種類より、治療期間中の降圧度が重要である」ということを反映しているものではないかと推察している。図8画像を拡大するインデックスページへ戻る

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うつ病や拒食症の女性における感情調節困難調査

 境界性人格障害とも関連する感情調節困難は、うつ病や拒食症などのさまざまな精神障害の進展や持続に重要な役割を果たすと考えられてきた。しかし、これまでの研究では、感情調節困難の疾患特異性を詳細に理解できていなかった。Brockmeyer氏らは、女性における感情調整困難に関する調査を行った。Psychiatry Res誌オンライン版2012年8月18日号の報告。 大うつ病患者、拒食症患者、コントロール群(合計140名)を対象に、感情調整困難に関する調査を実施した。主な結果は以下のとおり。・大うつ病患者、拒食症患者は、コントロール群と比較して、感情の希薄化と変調、ならびに分化と経験に関わる重度の感情調節困難が認められた。・大うつ病患者、拒食症患者は、共に感情の経験と分化に関する感情調節困難の変調が同程度、認められた。・大うつ病患者は、拒食症患者と比較して、感情の減衰や調節に関する強い感情調節困難が認められた。・感情調節困難は診断横断的な疾患であり、拒食症よりもうつ病において、より多く重度の感情調節困難を伴うという特徴が明らかになった。関連医療ニュース ・境界性人格障害患者の自殺予防のポイントはリハビリ ・自殺予防に期待!知っておきたいメンタルヘルスプログラム ・うつ病の予測因子は青年期の「腹痛」?

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変形性関節症の関連遺伝子座を同定:arcOGEN試験

 変形性関節症と強い関連を示す5つの遺伝子座の存在が、英国・Wellcome Trust Sanger InstituteのEleftheria Zeggini氏らarcOGEN Consortium and arcOGEN Collaboratorsの検討で明らかとなった。変形性関節症は世界的に最も高頻度にみられる関節炎で、高齢者における痛みや身体障害の主要原因であり、その医療経済的な負担は肥満の増加や加齢に比例して増大する。変形性関節症には強力な遺伝要因がみられるが、以前に行われた遺伝子解析はサンプル数が少なく、表現型の不均一性のためその限界が指摘されていた。Lancet誌2012年9月1日号(オンライン版2012年7月3日号)掲載の報告。関連遺伝子領域を重症患者のゲノムワイド関連研究で探索arcOGEN(Arthritis Research UK Osteoarthritis Genetics)試験は、レトロスペクティブおよびプロスペクティブに選出された非血縁の重症変形性関節症患者7,410人(80%が関節全置換術施行例、非血縁対照1万1,009人)を対象に、英国で実施された大規模な症例対照ゲノムワイド関連研究(GWAS)。arcOGEN試験の結果をdiscovery dataとし、アイスランド(deCODE試験)、エストニア(EGCUT試験)、オランダ(GARP試験、RSI試験、RSII試験)、英国(TwinsUK試験)から収集した最大7,473人の非血縁患者と4万2,938人の対照において、最も関連性が高いと考えられる遺伝子領域の同定を目的に再現性の検討を行った(replication data)。さらに、discovery dataとreplication dataのメタ解析を実施した。すべての患者と対照が欧州の家系だった。治療介入に適したシグナル伝達経路の同定の可能性も変形性関節症との有意な関連を示す5つの遺伝子座[二項検定:p≦5.0×10-8]と、これらよりも閾値がわずかに低い3つの遺伝子座を同定した。変形性関節症と最も強い関連を示したのは第3染色体のrs6976[オッズ比:1.12、95%CI:1.08~1.16、p=7.24×10-11]で、rs11177との完全な連鎖不平衡が確認された。このSNPには、ヌクレオステミンのコード遺伝子であるGNL3(Guanine Nucleotide-binding protein-Like 3)内のミスセンス多型がコードされ、ヌクレオステミンは変形性関節症患者の軟骨細胞で高度に発現していた。そのほか、第9染色体のASTN2近傍、第6染色体のFILIP1とSENP6の間、第12染色体のKLHDC5とPTHLHの近傍、第12染色体CHST11近傍の領域が、変形性関節症と有意な関連を示した。体重は変形性関節症の強力なリスク因子だが、体重調節に関与するFTO遺伝子内にも、変形性関節症と密接な関連を示す領域がみつかった。著者は、「これらの知見は、関節炎の遺伝子研究に本質的な洞察をもたらし、治療介入に適した新たな遺伝子シグナル伝達経路の同定に道を開くものだ」と結論づけている。

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統合失調症患者における持効性注射剤:80文献レビュー

 非定型抗精神病薬の持効性注射剤(LAI)は、統合失調症患者の寛解率や予後に好影響を与えることが期待されている。現在のガイドラインにおいて、抗精神病薬の使用に関する経口およびLAIに対する明確な基準が示唆されている。Rossi氏らはLAIの治療を受けた統合失調症患者における人口統計学的・臨床的特徴の典型的なプロファイルを明らかにするため、非ランダム化研究の分析による系統的レビューを行った。BMC Psychiatry誌オンライン版2012年8月21日号の報告。 英語による非ランダム化研究80文献を抽出し、LAI選択に関連する要因や日々のLAI使用に関する分析を行った。非ランダム化研究にはコクランの系統的レビューを用い、人口動態および臨床的特徴を含む変数を用いて分析を行った。入手可能であった文献は、LAIによる治療を行った統合失調症患者の典型的なプロファイルを識別するにあたり、いずれの統計的分析も考慮せず使用することができた。主な結果は以下のとおり。・LAI使用率は4.8%~66%であった。・一貫した評価が可能であった人口統計学的特徴は、年齢(1970年代:38.5歳、1980年代:35.8歳、1990年代:39.3歳、2000年代39.5歳)、性別(男性>女性)であった。・有効性はさまざまな症状スケールと他の間接的な測定法を用いて評価し、安全性は錐体外路症状と抗コリン薬の使用により評価したが、これらのデータは整合性がなく、プール不可能であった。・別の研究で得られた有効性と安全性の結果によると、LAI使用のメリットとして入院が74%減少したと報告されている。またLAI使用による錐体外路症状発現は6ヵ月(35.4%)、8ヵ月(37.1%)、18ヵ月(36.9%)、24ヵ月(41.3%)で一貫して増加した。 最後にRossi氏らは「統合失調症患者に対するLAI使用は、良好な有効性および安全性が期待できることに加え、アドヒアランスの向上が期待できる」という。しかしそれにも増して重要なこととして「最適な治療を行うためには、医療スタッフ、患者、家族が協力する体制(治療同盟)を作ることが何よりも重要であり、LAIのプロファイルが治療同盟構築に寄与する可能性がある」と述べている。関連医療ニュース ・デポ剤使用で寛解率が向上!? ・統合失調症患者における「禁煙」は治療に影響を与えるか? ・検証「グルタミン酸仮説」統合失調症の病態メカニズム

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(15)〕 軍配はあがった、DES対BMSの大一番、STEMIの土俵で!

急性冠症候群の代表的な病態であるST上昇型心筋梗塞(STEMI)で再開通療法時に使用するステントに関して、ベアメタルステント(BMS)を使用するか薬剤溶出性ステント(DES)を使用するかについては議論が続いている。 今回、この領域に大きなエビデンスが登場した。それが、今回のCOMFORTABLE AMI試験と名付けられた研究である。バイオリムス溶出性ステント(BES)を用いた場合に、BMSを用いた場合と比べて、標的血管に関連する再梗塞などの複合イベント発生率がおよそ半減することが報告されている。 この報告とほぼ時を同じくして、STEMI患者においてエベロリムス溶出性ステント(EES)を用いてBMSに対する優位性を示したEXAMINATION試験の結果もLancet誌2012年9月3日オンライン版に掲載された(Sabate M et al. Lancet. 2012; 380: 1482-1490.)。このように質の高い無作為比較試験の結果が一貫性をもって報告されたことから、今後も国内においても、STEMIにDESを用いる施設が増えるのではないかと思われる。 だが、このCOMFORTABLE AMI試験ですべての疑問が解決したわけではない。本研究の追跡期間は1年間であり、1年以降のvery late stent thrombosis(VLST)については、ほとんど評価できていない。またCOMFORTABLE AMI試験で用いられたBESの特長は、薬剤が血管壁側にのみ溶出すること、ポリマーが生体吸収性でほぼ1年で消失することである。この観察期間では、それらの特長が活かされた結果とは考えにくい。本来の効果を知るには、より長期的な観察結果が待たれる。本邦においても、BESとBMS間で約1,400人のSTEMI患者を対象とする無作為比較試験であるNAUSICA AMI試験が、現在患者登録進行中である。日本人でのエビデンスの確立にも期待される。 COMFORTABLE AMI試験やEXAMINATION試験は、いずれもBMSに対する個々のDES優位性を示したものであり、DES間の明確な比較試験はない。新世代のDESの中での選択基準についてもエビデンスは不足している。

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中程度リスクの冠動脈性心疾患リスク予測、冠動脈カルシウムの追加で予測能改善

 中程度リスクの人に対する冠動脈性心疾患などの予測モデルについて、フラミンガム・リスクスコアに冠動脈カルシウム値などを加えることで予測能が改善することが示された。米国・Wake Forest University School of MedicineのJoseph Yeboah氏らが、1,300人超を約8年追跡して明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。これまで、フラミンガム・リスクスコアに冠動脈カルシウムや冠動脈性心疾患の家族歴などを追加した場合の冠動脈性心疾患の予測能改善については、単一コホートで直接比較した研究はなかったという。フラミンガム・スコアに6つのリスクマーカーを加え、予測能を比較研究グループは、試験開始時点で心血管疾患のない6,814人を対象に、心血管疾患の発症率などを調べる前向きコホート試験、「Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)」の被験者で、フラミンガム・リスクスコアでリスクが中程度の1,330人について試験を行った。リスク中程度の同被験者には、糖尿病は認められなかった。冠動脈カルシウム、頸動脈内膜中膜厚(CIMT)、足関節上腕血圧比、上腕血管拡張反応、高感度C反応性蛋白質(CRP)、冠動脈性心疾患(CHD)の家族歴の6つのリスクマーカーを加えることで、心血管リスクの予測能が改善するかどうかを調べた。中央値7.6年間の追跡後、冠動脈性心疾患は94人、心血管イベントは123件発生した。多変量解析の結果、6つのリスクマーカーのうち、冠動脈カルシウム、足関節上腕血圧比、高感度CRP、CHD家族歴は、冠動脈性心疾患の独立リスク因子で、ハザード比はそれぞれ、2.60(95%信頼区間:1.94~3.50)、0.79(同:0.66~0.95)、1.28(同:1.00~1.64)、2.18(同:1.38~3.42)だった。一方、CIMTと上腕血管拡張反応は、冠動脈性心疾患の独立リスク因子ではなかった。CHDの純再分類改善度、冠動脈カルシウムは0.659なかでも、フラミンガム・リスクスコアに冠動脈カルシウムを加えることで、冠動脈性心疾患や心血管疾患発症に関するROC曲線下面積の増加幅は最も大きく、冠動脈性心疾患では、0.623から0.784に増加した。最も増加幅が少なかったのは、上腕血管拡張反応で、0.623から0.639への増加に留まった。冠動脈性心疾患について、純再分類改善度は、冠動脈カルシウムが0.659、上腕血管拡張反応が0.024、足関節上腕血圧比が0.036、CIMTが0.102、CHD家族歴が0.160、高感度CRPが0.079だった。心血管疾患についても、同様な結果が得られた。

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うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」

 近年、うつ病に対するn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)の影響に関するさまざまな報告が行われている。しかし、n-3系脂肪酸の中でもEPA(イコサペント酸エチル)またはDHA(ドコサヘキサエン酸エチル)がどのような影響を及ぼすかは不明なままである。イランのMozaffari-Khosravi氏らは、軽度から中等度のうつ病患者に対する補助薬物療法としてn-3系脂肪酸の投与が有用であるかを検討するため、EPAとDHAの有用性を比較する単施設ランダム化プラセボ対照並行群間比較試験を実施した。Eur Neuropsychopharmacol誌オンライン版2012年8月18日号の報告。 対象は軽度から中等度のうつ病外来患者81例。EPA群(1g/日)、DHA群(1g/日)、プラセボ群(ヤシ油)の3群に無作為に割り付け、12週間継続投与を行った。解析対象は、少なくとも1回以上、ランダム化後の観察が実施された患者とした(解析対象者数:62例、女性比:61.3%、平均年齢:35.1±1.2歳)。主要評価項目はHDRS(17項目のハミルトンうつ病評価尺度)最終スコアとし、intention-to-treat分析を行った。ベースライン時における各群のHDRSスコアに有意な差は認められなかった。主な結果は以下のとおり。・EPA群は、DHD群またはプラセボ群と比較して、HDRS最終スコアの有意な低下が認められた(それぞれp

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t-PA療法後の早期アスピリン静注追加は急性虚血性脳卒中の予後を改善するか?

 アルテプラーゼ(商品名:グルトパ、アクチバシン)静注療法を施行された急性虚血性脳卒中患者に対し、再閉塞予防の目的で早期にアスピリン静注を行うアプローチは有効ではないことが、オランダ・アムステルダム大学のSanne M Zinkstok氏らが行ったARTIS試験で示された。欧米ではt-PAであるアルテプラーゼによる血栓溶解療法は、急性虚血性脳卒中に対する唯一の承認された治療法である。アルテプラーゼによる再疎通の達成後に、患者の14~34%が血小板の活性化によると考えられる再閉塞を来すが、早期に抗血小板療法を行えば再閉塞のリスクが低減し、予後も改善する可能性があるという。Lancet誌2012年8月25日号(オンライン版2012年6月28日号)掲載の報告。早期アスピリン静注追加の再閉塞予防効果を無作為化試験で評価ARTIS(Antiplatelet therapy in combination with Rt-PA Thrombolysis in Ischemic Stroke)試験は、アルテプラーゼ静注療法を受けた急性虚血性脳卒中患者に対する早期アスピリン静注の、再閉塞の予防における有用性を評価する多施設共同非盲検無作為化試験。対象は、症状発症から4.5時間以内に標準的なアルテプラーゼ静注(0.9mg/kg)療法が施行された18歳以上の急性虚血性脳卒中患者とした。これらの患者が、アルテプラーゼ投与開始から90分以内にアスピリン300mgを静脈内投与する群あるいは追加治療は行わない標準治療群に無作為に割り付けられた。国際ガイドラインに従い、全例にアルテプラーゼ投与24時間後から経口薬による抗血小板療法が開始された。担当医と患者には治療割り付け情報が知らされたが、フォローアップを行ったリサーチ看護師にはマスクされた。主要評価項目は3ヵ月後の良好なアウトカム(修正Rankinスケール:0~2点)とした。症候性頭蓋内出血が高発現し、試験は早期中止に2008年7月29日~2011年4月20日までに、オランダの37施設から642例が登録され、アスピリン静注追加群に322例、標準治療群には320例が割り付けられた。当初、800例の登録が目標であったが、症候性頭蓋内出血(SICH)の過度の発現と、アスピリン静注追加群でベネフィットのエビデンスが得られなかったことから試験は早期中止となった。3ヵ月後の良好なアウトカムの達成率は、アスピリン静注追加群が54.0%(174/322例)、標準治療群は57.2%(183/320例)であり、両群間で同等であった(絶対差:-3.2%、95%信頼区間[CI]:-10.8~4.2、粗相対リスク:0.94、95%CI:0.82~1.09、p=0.42)。調整後のオッズ比は0.91(95%CI:0.66~1.26、p=0.58)だった。SICHの頻度は、アスピリン静注追加群が4.3%(14/322例)と、標準治療群の1.6%(5/320例)に比べ有意に高かった(絶対差:2.8%、95%CI:0.2~5.4、p=0.04)。SICHが不良なアウトカムの原因となった患者は、アスピリン静注追加群が11例、標準治療群は1例であり有意差を認めた(p=0.006)。著者は、「アルテプラーゼ静注療法を施行された急性虚血性脳卒中患者に対する早期のアスピリン静注療法は、3ヵ月後のアウトカムを改善せず、SICHのリスクを増大させた」と結論し、「本試験の知見は、現行のガイドライン(アルテプラーゼ療法施行後の抗血小板療法は24時間が経過してから開始すべき)の変更を支持しない」と指摘している。

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難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」

 強迫性障害(OCD)は強迫観念や強迫行為を主訴とする原因不明の精神疾患であり、有病率は約2%といわれている。治療においてはSSRIを用いた薬物療法が有効であるが、治療抵抗性を示す症例も存在する。Sayyah氏らは、このような治療抵抗性OCDに対する治療選択肢としてアリピプラゾールの追加投与が有効であるかを、二重盲検ランダム化臨床試験にて検討した。Depress Anxiety誌オンライン版2012年8月29日号の報告。 対象はDSM-IV-TRでOCDと診断され、治療抵抗性を示した成人外来患者39例。アリピプラゾール群(アリピプラゾール10㎎/日)またはプラセボ群に無作為に割り付け、12週間継続して追加投与を行った。試験終了後、Intention-to-treat解析にて分析した。すべての統計的検定は両側検定であり、p

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診療科の垣根を越えNon Cancer Pain治療の啓発

 医師を対象とした慢性疼痛学習プログラムJ-PAT(Japan Pain Assessment and Treatment/企画・運営:ヤンセンファーマ)が、8月25〜26日開催された。このプログラムは医師の慢性疼痛に対する薬物療法の理解を深め、患者さんの治療満足度向上を目的に全国主要7都市で行われており、今回は大阪国際会議場を会場として実施された。 休みにも関わらず、プログラムには約40名の医師が参加した。参加者の内訳は整形外科医が半数以上と最も多く、次に麻酔科医、そして内科、外科系医であった。参加者の傾向も整形外科における疼痛治療の盛り上がりを反映しているようである。J-PATは整形外科、麻酔科、精神科、薬理専門家など多領域の専門医による監修を受けて企画・運営されているが、今回は西宮市立中央病院 麻酔科・ペインクリニック科 前田倫氏、尼崎中央病院 整形外科 三木健司氏、愛媛大学医学部 脊椎センター・整形外科 尾形直則氏、徳島赤十字病院 麻酔科 井関明生氏、ヤンセンファーマ サイエンティフィックアフェアーズ 川井康嗣氏の5人の講師がテーマ毎に講義を行った。講演内容は痛みの概念・定義、痛みの評価法、薬物療法の全般、オピオイドの適正使用、治療法の疾患各論など幅広く、2日目後半は実症例をもとに薬物療法の実際をケーススタディ形式で紹介した。セッション後の質疑応答では、各疾患領域での疼痛治療の実際、オピオイドの使い方、鎮痛補助薬の使い方など参加者から多くの質問が寄せられ、活発な議論が行われた。 日本の慢性疼痛患者は約2,200万人に達すると推計されている。しかし、患者さんの受診科は痛みの専門家であるペインクリニック以上に整形外科や一般内科に多く、専門外の知識が必要とされているのが現状である。 慢性疼痛においては、手術療法、薬物療法、リハビリテーション、心理療法などの多面的なアプローチが必要である。薬物療法が注目される傾向があるが、あくまで治療の一部である。痛みの原因となっている疾患の診断、がんなどリスク因子の鑑別、手術など適切な治療手段選択を検討した上で、初めて薬物療法を考慮することとなる。ここ数年、有効な薬剤が数多く登場し、薬物療法の適応は広がったものの、安易な薬物治療によるトラブルも少なくはないという。上記の原則を守った上で、適切に薬剤を使用する事が重要である。 一方で、日本における慢性疼痛に対する医学教育も十分とは言い難い。疼痛治療薬の選択を例にとっても欧米がNSAIDs、オピオイド、抗けいれん薬、抗うつ薬などの薬剤を疾患により使い分けているのに対し、日本ではどの疾患でもNSAIDsの使用比率が圧倒的に高いという結果もこの現れといえるかも知れない。痛みは、数値化しにくく、また患者さんの主観的な症状であるため、治療は非常に難しい。また、診療科や疾患によって痛みの背景も異なり、医師の捉え方も異なる。十分な知識を持ち合わせた医師を育成し、適正使用を推進する事が急務といえよう。そういう意味で、J-PATのようなセミナーを通じて、慢性疼痛を診る機会が多い麻酔科医、整形外科医、内科医が一堂に会し痛みおよびその治療についての理解を深めていくことは重要であり、画期的だといえる。慢性疼痛に対する薬物療法の理解が深まり、治療満足度の向上されることを期待したい。J-PATに関する問い合わせ先:ヤンセンファーマ株式会社 コミュニケーション・アンド・パブリックリレーションズ部(電話:03-4411-5046)または営業担当者まで

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『ボストン便り』(第41回)「世界の主流としての当事者参画」

星槎大学共生科学部教授ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー細田 満和子(ほそだ みわこ)2012年8月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。紹介:ボストンはアメリカ東北部マサチューセッツ州の州都で、建国の地としての伝統を感じさせるとともに、革新的でラディカルな側面を持ち合わせている独特な街です。また、近郊も含めると単科・総合大学が100校くらいあり、世界中から研究者が集まってきています。そんなボストンから、保健医療や生活に関する話題をお届けします。(ブログはこちら→http://blog.goo.ne.jp/miwakohosoda/)*「ボストン便り」が本になりました。タイトルは『パブリックヘルス 市民が変える医療社会―アメリカ医療改革の現場から』(明石書店)。再構成し、大幅に加筆修正しましたので、ぜひお読み頂ければと思います。●マサチューセッツ慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎と繊維筋痛症(CFIDS/ME and FM)の会「この夏、ME/CFSの研究は大きく前進するための舵を切った」と、半年ぶりに再会したナンシーは、いつものように低いトーンの落ち着いた声で静かに言いました。彼女は、「マサチューセッツ CFIDS/ME and FMの会」の理事の一人です。この病気に30年以上も罹っていて、病気についての専門知識は深く、医学研究の進捗状況や医師たちの動向、さらにアメリカ内外の他の患者団体の動きにも精通しています。ナンシーは患者のための地域活動もしていて、地区患者会の例会の場所をとったり、会員に連絡したりしています。例会当日の会場設営もしていて、会員に和やかな楽しい時間を過ごしてもらおうと、スーツケース2つにお茶やお菓子を準備し、季節にちなんだ飾りつけもします。私が同行させて頂いた2月のバレンタインの月の例会は、ピンクと赤がテーマで、テーブルクロスは赤、紙皿や紙コップやナプキンはハートの模様で、ハート形の置物も用意されていました。ナンシーから手渡された、最近のアメリカ政府のME/CFS対策についての書類には、次のようなことが書かれていました。2012年6月13日と14日に、HHS(The Health and Human Services)は、慢性疲労症候群諮問委員会(The Chronic Fatigue Syndrome Advisory Committee: CFSAC)を開催しました。委員には10人のメンバーが選ばれましたが、臨床の専門家、FDA(食品医薬品局)代表を含む7人の元HHSメンバーのほかに、患者アドボケイトもメンバーとして入りました。そして、3時間にわたる公聴会が行われました。その他にも7つの患者団体の代表が報告をする機会が設けられました。さらに、このCFSACとは別に、HHSは所属を越えて協働できるために慢性疲労症候群の特別作業班(Ad Hoc Working Group on CFS)も結成しました。そこには、CDC(疾病予防管理センター)、NIH(国立健康研究所)、FDA(食品医薬品局)など各部局の代表も含まれています。こうした委員会や作業班が作られた背景には、オバマ大統領の意向があるといいます。インディアナ・ガジェットというオンライン新聞によると、ネバダ州のリノに住むME/CFS患者の妻は、2011年5月にオバマ大統領に、ME/CFS患者の救済、特にこの病因も分からず治療法もない病気の解明の為に、研究予算を付けて助けて欲しいという手紙を出しました。これに対してオバマ氏は、NIHを中心に研究を進めるための努力をすると回答しました。また、オバマ氏は、偏見を呼ぶCFSという病名にも配慮を示し、MEと併記したとのことでした。新聞記事は「これでオバマは新しい友人を何人か作った」と結ばれています。全米で約100万人いると推計されているこの病気の患者が味方になるなら、目前に大統領選を控えたオバマ氏にとって政治的に大きな力になることでしょう。●スウェーデンにおける自閉症とアスペルガーの会スウェーデンのストックホルム県に住むブルシッタとシュレジンは、ふたりとも「自閉症とアスペルガーの会」の有給職員です。ブルシッタには33歳になる自閉症の息子さんがいて、シュレジンには20歳になる自閉症と発達障害の息子さんがいます。8月に発達障害児・者への施策や医療を視察するためにスウェーデンを訪れたのですが、その際にこの二人にお会いしました。「自閉症とアスペルガーの会」は、患者も患者家族も、医療提供者も社会サービス提供者も学校関係者も、関心がある人がすべて入れる会です。親が中心になって1975年に設立され、ストックホルム県内では会員が3,000人います。全国組織もあって、こちらは会員が12,000人います。活動としては、メンバーのサポートをしたり、子どもたちの合宿を企画したりしています。ホームページがあり、機関誌も出しています。ブルシッタによれば現在の会の中心的な活動は、政治的な動きだといいます。確かに会の活動が様々な施策を実現してきたことは、色々なところで実感しました。今回、ストックホルム県内の、様々な制度を見聞したり施設(発達障害センター)を訪れたりしました。その際に、こうした制度や施設をコミューン(地方自治体)に作らせるように働きかけてきたのは、「自閉症とアスペルガーの会」のような親たちや専門職が加入している自閉症や発達障害の患者会だったということを、何人もの施設の長の方々から聞きました。さらには、自閉症に対する大学の研究にも、こうした患者会は大きな役割を果たしています。カロリンスカ研究所に付属する子ども病院における自閉症研究グループであるKIND(発達障害能力センター)は、企業やEU科学評議会などからの資金援助を受けていますが、その時大きな後押しになったのが、「自閉症とアスペルガーの会」だったといいます。KINDのディレクターのスティーブン・ボルト氏は、会からの大きな支えを強調していました。スウェーデンでは1980年代にハビリテーションのシステムが作られ、生きてゆくうえで支援が必要な人々に対する支援が整えられてきましたが、十分とは言えないままでした。それが1994年に施行されたLLS(特別援護法)によって、支援の制度は大きく前進しました。この法律の制定にも、患者団体などの利益団体の働き掛けが大きな後押しになったそうです。2004年にスタートした自閉症のハビリテーションセンターや、2007年にスタートしたADHD(注意欠陥・多動性障害)センターでも、責任者の方は口々に、患者会が政治家に働きかけることでセンターが誕生したと言っていました。そして、このような支援を受けることは、ニーズのある人々の権利なのだと繰り返していました。●各国での患者会の現状スウェーデンに先立って訪れたアルゼンチンで開かれた国際社会学会でも、各国で患者会が医療政策決定において重要な役割を担っていることが報告されました。私が発表した医療社会学のセッションでは、イギリスからは「当事者会・患者会とイングランドのNHS(National Health Service:筆者挿入)の変化」、イタリアからは「トスカーナ地方における健康保健サービスの向上と社会運動の役割」と題される研究成果が紹介されました。それぞれ、地域におけるヘルスケア改革に、当事者団体や患者団体のアドボカシー活動が大きな役割を果たしたことに関する実証研究でした。最後に私の発表の番となり、「日米における患者と市民の参加」と題した、日本とアメリカの合わせて7つの患者会に対する、アンケート調査とインタビュー調査の結果を報告しました。この調査は、2010年から2011年にかけて行われたもので、患者会の意味と役割について、メンバーに意識を尋ねたものです。アンケートに対しては、日本では132票、アメリカでは109票の有効回答が寄せられ、インタビューの方では23人の方が対象者になってくださいました。患者会は、脳障害、脳卒中、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、ポストポリオ症候群、卵巣がんなどでした。当初は、アメリカの患者会の方が日本よりも、政治的問題に発言してゆくアドボカシー活動への関心が高く、実際に活動も行っているという仮説を立てましたが、どちらの国も同程度に関心が高く、活動をしているという結果が認められました。ただし日米とも、患者会がアドボカシー活動を積極的に行うようになってきたのは、ここ10年から20年のことだといいます。それまでは、患者や親たちは問題を個人で抱え込むしかなかったといいます。患者や親たちは、病気による身体的あるいは生活上の苦しさを理解されず、ましてや支援など受けることもできませんでした。そして逆に、病気のことをよく知らない一般の人や医療者から、非難するような言葉や態度を浴びせられてきたといいます。30年以上も筋痛性脳脊髄炎の患者であったナンシーの言葉を借りれば、「社会からは理解されず、医療者から虐待されてきた」というのです。それは発達障害を持つ子や親も同様でした。スウェーデンでも80年代くらいまでは、ADHDや自閉症を持つこども達は、さまざまな失敗をしては親や教師から叱られ、親の方も育て方が悪いと周囲から非難されてきたといいます。●日本の患者会昨年9月に、東京で開催されたランセットの医療構造改革に関するシンポジウムでは、タイからの登壇者に「日本では患者会との協働はどのようになっているのですか」と聞かれ、「患者会は、自分たちの半径5メートルしか見ていない」ので意見を聞いても仕方ないというようなことを権威ある立場の日本人医師が答え、椅子から転げ落ちるほどびっくりしました。ランセットの会議に招待されるような方が、そのようなことを国際社会の場で発言するとは、日本の医師をはじめとする医療界の認識の浅さや遅れではないか忸怩たる思いがしたものです。このことは、以前にMRICにも書きましたが、この状況は今後変わってゆくでしょうか。日本でも、いくつかの患者会はアドボカシー活動をしています。例えばNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会(通称、ME/CFSの会)は、偏見に満ちた病名を変更させるために患者会の名前を変えました。そして、この病気の研究を推進してもらいように、厚労副大臣や元厚労大臣を始め、何人もの国会議員や厚労省職員に面会し、研究の重要性と必要性を訴えかけました。さらに、ME/CFS患者が適切な社会サービスを受けられるようにするため、いくつもの地方自治体の長や議会に要望書を提出し、複数において採択されてきています。さらにME/CFSの会は、この病気の世界的権威ハーバード大学医学校教授のアンソニー・コマロフ氏に、会が11月4日に開催するシンポジウムに向けてのメッセージも頂きました。ME/CFSは、未だに日本では医療者からも家族からも想像上の病気や精神的なものと誤解され、患者が苦しんでいることをご存知のコマロフ氏は、この病気が器質的なものであることを繰り返し、日本でも研究が進められるように呼びかけました。実際に研究が進んだり、社会サービスが受けられるようになったりといった具体的な成果はなかなか上がって来ていませんが、この様に患者会は、様々な活動を行い、続けていればいつか実現すると信じて続けられています。●当事者参画の可能性アルゼンチンの国際社会学会で同じセッションに参加していらしたシドニー大学教授のステファニー・ショート氏は、「私たち社会学者は、特に私の世代は、マルクス主義の影響が大きかったから、体制批判とか、社会運動とか、っていう視点で見ちゃうのよね。でも、今は時代が変わったわね」、とおっしゃっていました。彼女はまた、私の行った日米調査の調査票を使って、今度はオーストラリアでやろうという共同研究の話を持ちかけてくれました。もちろんぜひ調査を実施してみたいと思っています。次の国際社会学会の大会は横浜で開催されます。ちょうど私の所属する星槎大学も横浜に事務局がありますので、医療社会学の面々のパーティ係を任命されました。会場探しもしますが、その時までに、日本の行政や医療専門職が患者会の役割を重視し、患者のための医療体制ができてきたという報告をこの学会で発表できるようになればいいと思いました。謝辞:スウェーデンの患者会は、セイコーメディカルブレーンの主催する研修で知り合いました。研修を企画して下さった同社会長の平田二郎氏、研修参加を推奨し財政的支援をして下さった星槎グループ会長の宮澤保夫氏に感謝いたします。また、日米患者会調査の実施に当たって、資金の一部を助成して下さった安倍フェローシップ(Social Science Research Councilと日本文化交流基金)に感謝の意を表します。<参考資料>インディアナ・ガジェット オバマ、CFSについて応えるhttp://www.indianagazette.com/b_opinions/article_75b181eb-bd88-5fe4-bc90-f7b09f869ffd.html略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)星槎大学教授。ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程の後、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。コロンビア大学公衆衛生校アソシエイトを経て、ハーバード公衆衛生大学院フェローとなり、2012年10月より星槎大学客員研究員となり現職。主著に『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会)、『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)、『パブリックヘルス市民が変える医療社会』(明石書店)。現在の関心は医療ガバナンス、日米の患者会のアドボカシー活動。

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STEMIへのPCI、バイオリムス溶出性ステントで主要有害心血管イベントリスクが半減

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、バイオリムス溶出性ステントを用いた場合、べアメタルステントを用いた場合と比べて、標的血管に関連する再梗塞などの有害心血管イベント発生率がおよそ半減することが明らかにされた。スイス・ベルン大学病院のLorenz Raber氏らが、約1,200例の患者について行った前向き無作為化比較試験「COMFORTABLE AMI(Comparison of Biolimus Eluted From an Erodible Stent Coating With Bare Metal Stents in Acute ST-Elevation Myocardial Infarction)」の結果、報告したもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。1年後の心臓死、標的血管に関連する再梗塞などの複合イベントを比較STEMI患者へのPCIにおける薬剤溶出性ステントとベアメタルステントとの有効性および安全性についてはなお議論が続いている。バイオリムス溶出性ステントは、新規世代の生分解性ポリマー製の薬剤溶出性ステントで、重大有害臨床イベントに関して大規模試験で同じ薬剤溶出性ステントで前世代のシロリムス溶出性ステントと比べ非劣性か良好である可能性が示され、STEMI患者では明確なベネフィットが示唆された。Raber氏らは、バイオリムス溶出性ステントとベアメタルステントとを比較検討するため前向きコホート試験を行った。2009年9月19日~2011年1月25日の間、ヨーロッパとイスラエルの11ヵ所でSTEMIでPCIを行った患者1,157例を対象とした。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の575例にはバイオリムス溶出性ステントを用いたPCIを、もう一方の582例にはベアメタルステントによるPCIを行った。主要アウトカムは、1年後の心臓死、標的血管に関連する再梗塞、虚血による標的部位再建術の複合イベント発生率だった。標的血管に関連する再梗塞リスク、バイオリムス群がベアメタル群の0.2倍結果、主要アウトカムの有害心血管イベント発生率は、ベアメタル群が8.7%(49例)に対し、バイオリムス群は4.3%(24例)と、リスクはおよそ半減した(ハザード比:0.49、95%信頼区間:0.30~0.80、p=0.004)。なかでも、標的血管に関連する再梗塞発生率は、ベアメタル群が2.7%(15例)に対しバイオリムス群は0.5%(3例)と、ハザード比は0.20(同:0.06~0.69、p=0.01)だった。虚血による標的部位再建術の発生率もまた、ベアメタル群が5.7%(32例)に対し、バイオリムス群は1.6%(9例)と、ハザード比は0.28(同:0.13~0.59、p<0.001)だった。一方で、心臓死発生率は、ベアメタル群が3.5%(20例)に対しバイオリムス群が2.9%(16例)と、両群で有意差はなかった(p=0.53)。ステント血栓症発生率は、バイオリムス群が0.9%(5例)に対しベアメタル群は2.1%(12例)と、有意差は認められなかったがバイオリムス群で低率の傾向がみられた(p=0.10)。

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年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大

 認知症は転倒原因のひとつである。しかし、認知症高齢者における転倒リスクの研究はまだ十分になされていない。浜松医科大学 鈴木氏らは介護老人保健施設に入所している認知症高齢者における転倒の発現率、リスクファクターの検証を試みた。Am J Alzheimers Dis Other Demen誌9月号(オンライン版8月7日号)の報告。 対象は、認知症高齢者135例。調査期間は、2008年4月から2009年5月までの1年間。調査開始前に、認知機能検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)、日常生活動作能力(PSMS:Physical Self-Maintenance Scale)、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)、その他因子に関して調査した。統計解析は、転倒の有無による比較を行うため、検定、ロジスティック回帰分析を用いた。主な結果は以下のとおり。・調査期間中、50例(37.04%)が転倒を経験した。・多重ロジスティック回帰分析の結果、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)の総スコアは転倒との有意な関連性が示された。・11項目の転倒に関連する行動評価は、認知症高齢者の転倒リスクを予測する有効な指標であると考えられる。関連医療ニュース ・アルツハイマー病患者におけるパッチ剤切替のメリットは? ・「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり ・アルツハイマーの予防にスタチン!?

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10年後に10万人の“ジェネラリスト”創出を目指す!!

7月16日、東京大学伊藤国際学術研究センター(東京・文京区)において「Generalist Japan 2012」が、一般社団法人 Medical Studio(代表:野崎 英夫 氏)の主催、日本プライマリ・ケア連合学会、日本病院総合診療医学会の後援により開催された。当日は、祝日にも関わらず、全国より総合診療科の医師、研修医、医学生など300名以上が参集した。オープニング・リマーク:医療崩壊を救う“ジェネラリスト”特別に制作・編集された動画「Generalist Japan 2012 Opening Movie」で幕を開け、川島 篤志 氏(市立福知山市民病院 総合内科)の総合司会のもと開会を宣言、「今回の場は、ジェネラリスト(総合診療医)の将来を考え、実践する、その一歩として考え催されるものである。議論への積極的な参加をお願いしたい」と述べ、開始された。はじめに主催者代表として野崎 英夫 氏が「オープニング・リマーク」として自身が医師になった動機を語るともに、喫緊の問題を提起し、「医師不足により救急体制が崩壊しつつある、在宅医療でも現場の医師が不足している状況で、医師が早くこの事態に気づくことが重要。これからの病院はスペシャリスト(専門医)が集うところであり、医師はもっと院外へ出て、地域で共同体を作っていくことが大切だ。そして、未来の医療について大きく絵を描き、問題に気づき、解決するために行動を起こすことが求められている」と今回の開催の趣旨を述べた。オープニング・パネル:ジェネラリストは日本の医療を救うのか「オープニング・パネル」として「ジェネラリストは日本の医療を救うのか」をテーマに有識者4名のパネリストが会場を巻き込み、熱い議論を行った。問題提起として各パネリストから次のような発言がなされた。「現在は医療の知識の格差が顕著である。これからは命の延命の程度(社会、家庭、行政の関係で)が課題となる」や「ジェネラリストが今後の医療を変える突破口となると思う。今後は実態の把握、目指す目標、達成の手段など具体的にアクションを起こすことが大事」との指摘のほか、「沖縄は離島が多いため、自然とジェネラリストになることが求められる。そのノウハウを活かすために東京に来たが、地域医療について東京は遅れている。今後10年で10万人のジェネラリストを育成し、わが国の医療の格差(経済と知識の両方)を何とか解決しなくてはいけない」という目標設定や「日本とヨーロッパでは、医療者の定義が異なる。ヨーロッパでは、医師が医療・福祉・共同体作りを行っていて身近な存在だが、日本ではまだ遠い存在だと感じている。身近な存在には家庭医であるジェネラリストがなるべきだと考える」などのコメントが述べられた。続いてディスカッションとなり、「医療に関して情報公開が不完全であり、透明さがない。患者側も医療への理解力を上げていかないといけない」という意見や「地域での医師分布、専門領域での医師分布、昼夜間での医師分布の異常が起っている。医師全員が守備範囲を広げなくてはいけない。具体例として当院では、病院見学の際は見学者全員が院内PHSをもち医療活動を行う、参加型医療を実践させている。もちろん患者にも協力してもらい、医師の教育をポジティブに見てもらう、医師の育成の現場に参加させる試みを行っている」という事例紹介や「イギリスのGP(家庭医)のように『価値の実現共有』が必要。たとえば100個の医療変革アクションプランの発表が必要ではないか」という提案が行われた。会場からは、「ジェネラリストが活躍する時代だと実感している。これからは具体的な目標(増員人数や増員の方法、啓発方法など)を定め行動することが大事。若手医師には『総合医』という確固としたキャリアパスを示すことが大切」という提案や「専門医とジェネラリストが手を携えて診療にあたり、診療の見落としを無くすことが重要で張り合うものではない」という意見や「今までジェネラリストは、一般社会に存在を広めてこなかったことが反省点。現在の医療は、昔のように単純に診療をして、治療をしておしまいではなく、患者と寄り添い、患者の代弁人(アドボカシー)として関わることも重要な使命と考えている。このことを一般社会に広く周知する必要がある」などの提案がなされた。最後にパネリストが一言ずつコメントを寄せ、「今後の実行への期待」や「これから医療を変えるスタートとしたい」など抱負を述べた。午後からは会場を2ヵ所に分け、10名の識者から成る円卓会議「ジェネラリスト・ラウンドテーブル」と若手医師から構成される「エンパワーメント・セッション」が開催された。ジェネラリスト・ラウンドテーブル:ジェネラリスト大国ニッポンになるためにはジェネラリスト・ラウンドテーブルでは、「ジェネラリスト大国ニッポンになるためには」をテーマに3時間にわたるディスカッションが行われた。ディスカッションでは、次のような内容の問題提起や意見が出され、話し合いが行われた。――ジェネラリストの定義、教育、役割とは?活躍の場で名称は変わり、境界は曖昧である。ER、集中治療室、病院総合医、病院以外であれば家庭医と呼ばれる育てるには後期臨床研修後のキャリアパスが大事。ジェネラリストになるためのトレーニングはある程度必要(例:1次救急の患者を診療できるレベル)。そのため、へき地臨床研修と大病院での研修をバランスよく実施する必要がある専門医で補いきれない部分を補完するのはジェネラリストの役目――ジェネラリストをいかに広げていくか?ジェネラリストがこれから、行政、自治体とどうつながっていくのか、プロモートできる人(ジェネラリストの伝道師)を育てる総合診療部門は収益を生む部門であることを、より強調することと社会へのPRが大事ジェネラリストの横の連携が弱い。横の連携を強化し、診療ノウハウの交換やジェネラリストが語る場、居場所となる場(例:医師会)を作ることが必要――高齢者とジェネラリスト高齢者は疾患の数が多く、身体の恒常性も破たんしている場合もあり、治療して治すことは難しい。そこで、高齢者の患者に寄り添う医師としてジェネラリストが活躍するアメリカのように患者のQOLを重視し、患者とゆるい距離間で家族も巻き込み寄り添う、顧問的な役割にジェネラリストがぴったり合う。その際、もっとチーム力をもって看護師やセラピストを入れることも大切高齢者特有の終末期医療は、在宅医療で多くの経験を積む必要がある。研究がメインの大病院では学ぶことが難しい――ジェネラリストは医療の質を上げるか?わが国では、ジェネラリストになると生活環境が改善される。それを見越してジェネラリストが増えれば、過分な診療から解放された専門医の生活も改善され、医療の質全体が上がる今後、ジェネラリストが増えれば医療費が削減されるかどうかの検証は必要――ジェネラリストとしての研究への取り組みジェネラリストは個別化しているので医局のしがらみなく、コラボレーションをして研究、発表をしたらいい研究費用がなくてもジェネラリストでしかできないフィールド研究もある。今大事なのは、よく行われているリサーチ・クエスチョンではなく、ジェネラリストの素朴な疑問を整理し、研究・発表すること。ジェネラリスト全員の疑問を収集して、流すシステムが必要であり、それを指揮できる旗振り役も必要●自由討論――なぜジェネラリストはメジャーにならなかったのか?従来は精神論が多すぎた。ジェネラリスト自体の考えがバラけていて、一本化されていなかったのが問題。今後はジェネラリストが、医療の担い手として専門医に便利な存在であること、その効果を宣伝することが大事であり、社会に向かってわかりやすいものを作る必要がある一般への啓発は、マスコミを利用しないとうまくいかないジェネラリストとは、医療全体を見ることができる医師であると思う「ジェネラリストは収益が良い」という魅力あるモデルを示すことができれば、後に続く医師がでるエンパワーメント・セッション1:ジェネラリストの魅力を伝える医学教育孫 大輔 氏(東京大学 医学教育国際協力研究センター)の司会のもと、5名のパネリストから自己紹介とともにテーマに関するコメントが寄せられた。「研修医への教育内容の範囲(どこまで教えるか、任せるか)」、「1日の中での教育時間(指導の負担が大きすぎる)」、「医学教育の本質的な内容(医学教育が軽く見られている)」、「大学でのジェネラリストの低い地位について」などをもとに会場の参加者とディスカッションを行った。ディスカッションでは、若手医師をジェネラリストに導くために「大学等で居場所を作り、発表の場を作ることが必要」や「長い医学教育の中で臨床でしか教わらないヒドゥン(隠れた)カリキュラムがジェネラリストには大事。これをうまく活用すれば育成の時間節約になる」、「ジェネラリストを育てるためには臨床の現場を見せて、ベッドサイドで突き放して教えることで伸びる」、「指導医が研修医の診断能力を診断する。この時間を指導医が楽しめるかが教育のカギとなる」などの意見が寄せられた。最後に孫氏が、まとめとして次のポイントを示した。教育者自身が医学教育をとにかく楽しむヒドゥン(隠れた)カリキュラムの活用(背中で楽しさを見せる)大学での水先案内人を増やす(学内でジェネラリストの占めるポストを増やす)ジェネラリストだけでなく専門医とよい連携をする大学だけでなく地域とつながった医学教育が必要国民や市民参加型の医学教育を志向するエンパワーメント・セッション2:越境者たれ!コミュニティを変えるジェネラリストとはセッション2では、草場 鉄周 氏(北海道家庭医療学センター)の司会のもと、「地域とジェネラリストの関係について」ディスカッションが行われた。4名のパネリストが自己紹介とともに、テーマについて次のようにコメントを寄せた。「日本の医療はジェネラリスト待望の方向へ向かっている。地域で診療の格差が顕在化した今、その隙間を埋めることができるのがジェネラリストだと考える」という役割論や「地域医療の視点からジェネラリストは地域をつなげる大事な役目を担っていると思う」という地域との連携や「これから日本の医療で果たすジェネラリストの役割を考えていきたい。原発被災地で働いているが、将来の日本の姿が被災地にあるように思う。いかにチームの中心としてジェネラリストが活躍しなくてはいけないかをディスカッションしたい」という要望、そして「地方でも共同体がまとまっている地域とそうでない地域がある。その差が医療の受益の格差を生む一因ともなっている。どうすれば若手の医師が、ジェネラリストとして地域に残る、または入っていくのかその方法を考えたい」という問題提起が述べられた。以上のコメントに対し、会場からは「普段から地域の住民と医師とのコミュニケーションは大切である。何かのきっかけで急に行おうとしてもうまくいかないことがある」や「患者は医師の前ではかなり萎縮している。この見えない距離を縮めないと医師は、コミュニティのリーダーにはなれない」、「看護師などの他種職種と在宅医療のカンファレンスを行っている。医師はファシリテートをする役目だと思う」、「コミュニケーションの量が、活動の活発化に比例する。これからのコミュニティは、一方的な命令ではなく、対話をして納得してからではないと動いていかない」という意見などがあった。まとめとして草場氏から「ジェネラリストを育てるには、コミュニティを視野に入れた活動が必要。たとえば、地域医師会は限られた予算の中で医療をどうするか真剣に考えている。そうした地域の先輩の中に入り、活動を広げていくことが大切」と感想を述べ、セッションを終了した。ラップ・アップ・セッション:ジェネラリスト宣言「ラップ・アップ・セッション」として、1日の総括が行われた。セッションでは、司会の孫 大輔 氏が、「市民参加型の医療へ向け今日から新しいことが始まる予感がする。今後はジェネラリストの定義と質の保証が必要となるし、General Mindも養成する必要がある」と述べ、もう一人の司会者の坂本 文武 氏は「今回のように集い、考えることが大事。仕組みを変えていく努力が必要で、ディスカッションを通じて解決策を見つける。今後は医師だけでなく、別の立場の人の視点も大切」とコメントを寄せた。続いて当日の参加者全員に配布されたアブストラクト集の「私のジェネラリスト宣言」について説明が行われ、その場で参加者に「今からの気持ちの表明」として、個人の目標を記入してもらい、今後の取り組みへの奮起を促した。次に、事前に投票を行っていた「ジェネラリストが増えた社会のありかた」についての投票結果を発表。第1位には「ジェネラリストが協調・連携することで、スペシャリストの真価が効率的に発揮され、互いに尊厳をもって意見交換・連携できる社会」が選ばれた。最後にジェネラリスト宣言が発表され、次の一文が述べられ、はじめての「Generalist Japan 2012」は終了した。ジェネラリスト宣言「医療者が有機的に連携し、社会とのつながりを再構築することで、生老病死が生活の一部になっている社会」ジェネラリスト Japan 2012 Opening Movie http://www.youtube.com/watch?v=bE75pE66Y2gMedical Studio USTREAM(当日の動画が視聴できます)http://www.ustream.tv/channel/medical-studio-ustream#eventsMedical Studio のFacebookページ http://www.facebook.com/medicalstudio.jp

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