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チオトロピウムはCOPD増悪や入院のリスクを低下させる

 チオトロピウムはCOPD患者の増悪や入院のリスクを有意に低下させることがテキサス大学健康科学センターのAntonio Anzueto氏らにより報告された。Respiratory Medicine誌オンライン版2013年8月19日号の掲載報告。 増悪はCOPDの転帰を大きく左右する。本研究では、米国の臨床試験に登録されている患者を対象に、COPDの増悪および増悪に関連した入院に対するチオトロピウムの効果を評価した。 データは、COPD患者を対象に行われた6つの無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験(試験期間6~12ヵ月)から集めた。増悪の定義は1)2つ以上の呼吸器症状が増加または発症して3日以上続いた場合、2)全身ステロイドや抗菌薬(またはその両方)による治療が必要となった場合とした。これらの患者における初回の増悪、入院、増悪発現率を6ヵ月、1年時点で検討した。 主な結果は以下とおり。・6ヵ月時点の調査対象は4,355例[チオトロピウム2,268例、プラセボ2,087例、平均年齢:66.5歳、1秒量(FEV1)=1.03L(対標準1秒量:35.5%)]であった。・1年時点の調査対象は2,455例[チオトロピウム1,317例、プラセボ1,138例、平均年齢:65.5歳、1秒量(FEV1):1.03L(対標準1秒量:37.0%)]であった。・チオトロピウムはプラセボと比較して、初回増悪までの期間、および増悪による初回入院までの期間をそれぞれ有意に延長させた。 ●6ヵ月時点(ハザード比 [HRs]:0.80、0.65 それぞれp<0.001) ●1年時点(ハザード比 [HRs]:0.73、0.55 それぞれp<0.001)・チオトロピウムはプラセボと比較して、増悪発現率と入院率をそれぞれ有意に低下させた。 ●6ヵ月時点(ハザード比 [HRs]:0.79、0.64 それぞれp<0.01) ●1年時点(ハザード比 [HRs]:0.78、0.56 それぞれp<0.01)・チオトロピウムはベースラインにおける吸入ステロイドの使用の有無に関係なく、増悪リスクを有意に低下させた。・チオトロピウムと心臓系のイベントリスク増加との関連は認められなかった。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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中等度~重症小児湿疹にナローバンド紫外線療法は有用

 中等度~重症の小児湿疹に対するナローバンド紫外線(NBUVB)療法は、臨床的効果がありQOLを改善することを、英国・Royal Victoria InfirmaryのS. Darne氏らが前向きコホート研究の結果、報告した。効果は治療後6ヵ月時点でも持続していた。これまで小児湿疹に対するNBUVB療法の効果についてのエビデンスは、後ろ向きなものに限られていた。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年8月12日号の掲載報告。 研究グループは、NBUVB治療コホートと未治療コホートにおいて、治療完了時点、3ヵ月後、6ヵ月後に測定した、(1)客観的スコア(SASSAD、病変部のパーセンテージ表面積)と(2)QOLスコアの違いを評価した。 NBUVB治療が必要とされたのは3~16歳の29例で、ベースライン、12週(治療完了時点)、NBUVB治療後3、6ヵ月時点でのSASSAD、病変部のパーセンテージ表面積を用いて前向きに測定を行った。そのスコアを、NBUVB治療が行われなかった(提示したが同治療法を選択しなかった)26例の患児のスコアと比較した。 主な結果は以下のとおり。・NBUVB治療群(29例)のSASSAD平均スコアは61%低下した。一方、未治療群(26例)では6%上昇した。・治療完了時点の治療群vs.未治療群のSASSAD平均スコアは、11.6vs. 24.8であった(平均差:-13.2、95%CI:-18.7~-7.7、p<0.0001)。・また、治療完了時点の治療群vs.未治療群の病変部の平均パーセンテージ表面積は、11%vs. 36%であった(同:-25%、-34~16%、p<0.0001)。・主観的およびQOLスコアは、治療完了時点でコホート間に有意な差が認められた(p<0.05)。・客観的スコアは、治療後3、6ヵ月時点においても治療群は未治療群よりも有意に低いままであった。

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統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査

 統合失調症は、重大な併存疾患と死亡を伴う主要な精神病性障害で、2型糖尿病および糖尿病合併症に罹患しやすいとされる。しかし、併存疾患が統合失調症患者の超過死亡につながるという一貫したエビデンスはほとんどない。そこで、ドイツ・ボン大学のDieter Schoepf氏らは、一般病院の入院患者を対象とし、統合失調症の有無により併存疾患による負担や院内死亡率に差異があるかどうかを調べる12年間の追跡研究を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2013年8月13日号の掲載報告。統合失調症の併存疾患の大半は糖尿病合併症またはその他の環境因子に関与 対象は、2000年1月1日から2012年6月末までにマンチェスターにある3つのNHS一般病院に入院した成人統合失調症患者1,418例であった。1%以上の発現がみられたすべての併存疾患について、年齢、性別を適合させたコントロール1万4,180例と比較検討した。多変量ロジスティック回帰解析により、リスク因子(例:院内死亡の予測因子としての併存疾患など)を特定した。 統合失調症の併存疾患を比較検討した主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者はコントロールに比べ緊急入院の割合が高く(69.8 vs. 43.0%)、平均入院期間が長く(8.1 vs. 3.4日)、入院回数が多く(11.5 vs. 6.3回)、生存期間が短く(1,895 vs. 2,161日)、死亡率は約2倍であった(18.0 vs. 9.7%)。 ・統合失調症患者では、うつ病、2型糖尿病、アルコール依存症、喘息、COPDに罹患していることが多く、併存疾患としては23種類も多かった。また、これらの大半は糖尿病合併症またはその他の環境因子に関与していた。・これに対し、高血圧、白内障、狭心症、脂質異常症は統合失調症患者のほうが少なかった。・統合失調症患者の死亡例において、併存疾患として最も多かったのは2型糖尿病で、入院中の死亡の31.4%を占めていた(試験期間中、2型糖尿病を併発している統合失調症患者の生存率はわずか14.4%であった)。・統合失調症患者においては、アルコール性肝疾患(OR:10.3)、パーキンソン病(OR:5.0)、1型糖尿病 (OR:3.8)、非特異的な腎不全(OR:3.5)、虚血性脳卒中(OR:3.3)、肺炎(OR:3.0)、鉄欠乏性貧血(OR:2.8)、COPD(OR:2.8)、気管支炎(OR:2.6)などが院内死亡の予測因子であることが示された。・コントロールとの比較において、統合失調症患者の高い死亡率に関連していた併存疾患はパーキンソン病のみであった。パーキンソン病以外の併存疾患に関しては、統合失調症の有無による死亡への影響に有意差は認められなかった。・統合失調症患者の死亡例255例におけるパーキンソン病の頻度は5.5%、試験期間中に生存していた1,163例におけるパーキンソン病の頻度は0.8%と、統合失調症患者の死亡例で有意に多かった(OR:5.0)。・また、統合失調症死亡例はコントロール死亡例に比べ、錐体外路症状の頻度が有意に高かった(5.5 vs. 1.5%)。・12年間の追跡調査により、統合失調症患者はコントロールに比べて多大な身体的負担を有しており、このことが不良な予後と関連していることが判明した。・以上のことから、統合失調症において、2型糖尿病および呼吸器感染症を伴うCOPDの最適なモニタリングと管理は、鉄欠乏性貧血、糖尿病細小血管障害、糖尿病大血管障害、アルコール性肝疾患、錐体外路症状の的確な発見ならびに管理と同様に細心の注意を払う必要がある。関連医療ニュース 検証!抗精神病薬使用に関連する急性高血糖症のリスク 抗精神病薬によるプロラクチン濃度上昇と関連する鉄欠乏状態 抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響

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抗精神病薬のアジア実態調査:高用量投与は36%

 アジア人の高齢統合失調症患者における抗精神病薬の処方状況が調査された。その結果、50歳以上のアジア人統合失調症患者の3分の1以上が高用量の抗精神病薬を使用しており、低~中用量を処方されている患者に比べ罹病期間が長く、現在陽性症状または陰性症状を呈している割合が多く、処方されている抗精神病薬の種類が多いことなどを香港中文大学のYu-Tao Xiang氏らが報告した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2013年8月13日号の掲載報告。 本研究は、アジア人の高齢統合失調症患者における、抗精神病薬高用量使用(クロルプロマジン換算600 mg/日以上)の実態と、その患者背景ならびに臨床特性との関連を検討することを目的とした。Research on Asian Psychotropic Prescription Patterns studyのデータベースを用い、50歳以上の統合失調症入院患者に関する2001~2009年までの情報を抽出した。中国、香港、日本、韓国、シンガポールおよび台湾を含むアジア6ヵ国・地域の患者2,203例のデータを解析に組み込み、社会人口統計学的および臨床的特徴、抗精神病薬の処方状況を確認した。 主な結果は以下のとおり。・高用量の抗精神病薬が処方されていた割合は、全体で36.0%であった。年代別では、2001年38.4%、2004年33.3%、2009年36.0%であった。・多重ロジスティック回帰解析により、低~中用量の抗精神病薬を処方されていた患者に比べ、高用量を処方されていた患者は、罹病期間が長く(オッズ比[OR]:2.0、95%信頼区間[CI]:1.2~3.3、p=0.008)、50~59歳の年齢層が多く(OR:0.95、95%CI:0.94~0.97、p<0.001)、現在陽性症状(OR:1.5、95%CI:1.2~1.8、p<0.001)または陰性症状(OR:1.3、95%CI:1.03~1.6、p=0.03)を呈している割合が高く、複数の抗精神病薬が処方されていた(OR:5.3、95%CI:4.1~6.7、p<0.001)。・高用量グループで錐体外路症状(p=0.25)および遅発性ジスキネジア(p=0.92)の頻度が高いということはなかった。・以上のように、アジア人統合失調症患者の3分の1以上が高用量の抗精神病薬を使用していた。この理由に関してはさらなる検討が求められる。関連医療ニュース 認知症高齢者5人に1人が抗コリン薬を使用 抗精神病薬の等価換算は正しく行われているのか 統合失調症の急性増悪期、抗精神病薬の使用状況は?:国立精神・神経医療研究センター

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ビタミンDはアトピー性皮膚炎に有用

 ビタミンDの補給は、アトピー性皮膚炎の臨床症状改善に有用である可能性が示された。安全性、忍容性とも良好だという。ポーランド・ワルシャワ医科大学のZbigniew Samochocki氏らによる検討の結果、報告された。Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年8月号(オンライン版2013年5月2日号)の掲載報告。ビタミンD補給後にアトピー性皮膚炎の重症度が優位に低下 ビタミンDには免疫調整作用がある。免疫機構はアトピー性皮膚炎(AD)の病因となっていることから、ビタミンDがADの病態に影響を及ぼす可能性があった。そこで研究グループは、AD患者におけるビタミンD濃度と臨床的・免疫学的・体質的・環境的因子との関連を調べること、またビタミンDの補給がADの臨床症状に影響を及ぼすかどうかについて検討することを目的とした。 具体的には、AD患者と対照被験者について、臨床値および検査値を測定し検討した。ADの重症度は、SCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)indexにて評価した。 ビタミンDがアトピー性皮膚炎の病態に影響を及ぼすかどうかを検討した主な結果は以下のとおり。・検討したのは、AD患者95例、対照被験者58例であった。・AD患者と対照被験者の血中25‐ヒドロキシビタミンD3[25(OH)D3]平均値に、統計的な差はみられなかった。・細菌性皮膚感染症の頻度は、25(OH)D3値が低値のAD患者において高かった。・ビタミンD値とその他の検査および臨床パラメーターとの間に、統計的な関連性はみつからなかった。・ビタミンD補給後、平均objective SCORADおよびSCORAD indexは、有意に低下した(p<0.05)。・本検討は、全被験者が白人であり、ビタミンD投与量が1種類のみであること、および治療期間の評価は1回のみであった点で限界があった。・以上から、本研究において、ビタミンDの補給はアトピー性皮膚炎の臨床症状を改善するのに役立つ可能性があり、安全性・忍容性とも良好である可能性が示唆された。

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CRT-Dの効果はLBBB・QRS≧150msの患者が最大/JAMA

 心臓再同期治療(CRT)は、左脚ブロック(LBBB)がありQRS時間が長い患者における効果が大きいことが、米国・デンバーヘルスメディカルセンターのPamela N. Peterson氏らによる検討の結果、明らかにされた。CRTは臨床試験において、心不全や左室収縮機能障害の患者の死亡率を改善し再入院を減らすことを示した。しかし適応の広がりに伴い、心不全で同療法を受けた患者の3分の1~半数が改善しなかったことが報告されていた。研究グループは、コストや手術に伴う侵襲性などのリスクから、ベネフィットが得られる患者の特定が重要であるとして本検討を行った。JAMA誌2013年8月14日号掲載の報告より。LBBBの有無、QRS幅で患者を階層化し、CRT-Dの効果を検証 検討は、臨床においてCRT除細動器(CRT-D)植込み手術を受けた患者の、QRS幅とLBBBの有無とアウトカムとの関連を調べることを目的とした。2006~2009年に手術を受けCardiovascular Data Registry's ICD Registryに登録されたメディケア受給者を対象とした、後ろ向きコホート研究であった。被験者は2011年12月まで最長3年間追跡を受けた。 被験者は、CRT-D手術のためあるいはその他の理由で入院したかどうかで階層化され、さらに、LBBBの有無、QRS幅が150ms以上か120~149msかで分類された。 主要評価項目は、全死因死亡、全原因・心血管または心不全による再入院、合併症とした。3年死亡リスク、1年再入院リスクはLBBB・QRS≧150msで最も低い CRT-D手術で入院した患者は2万4,169例であった。そのうち、LBBB・QRS≧150ms群は9,889例、LBBB・QRS 120~149ms群6,259例、非LBBB・QRS≧150ms群3,306例、非LBBB・QRS 120~149ms群4,715例だった。 CRT-D手術入院患者全体の1年死亡率は9.2%、3年死亡率は25.9%だった。全原因再入院率は、30日時点10.2%、1年時点で43.3%だった。 階層分類別での解析の結果、補正前・補正後の3年死亡リスクは、LBBB・QRS≧150ms群が最も低かった(20.9%)。LBBB・QRS 120~149ms群は26.5%(補正後ハザード比[HR]:1.30、99%信頼区間[CI]:1.18~1.42)、非LBBB・QRS≧150ms群は30.7%(同:1.34、1.20~1.49)、非LBBB・QRS 120~149ms群は32.3%(同:1.52、1.38~1.67)であった。 また、1年全原因再入院リスクもLBBB・QRS≧150ms群が最も低かった(38.6%)。LBBB・QRS 120~149ms群は44.8%(補正後HR:1.18、99%CI:1.10~1.26)、非LBBB・QRS≧150ms群は45.7%(同:1.16、1.08~1.26)、非LBBB・QRS 120~149ms群は49.6%(同:1.31、1.23~1.40)であった。 合併症との関連はみられなかった。 以上の結果から著者は、「臨床でCRT-D手術を受けたメディケア受給者において、LBBB・QRS≧150msの患者が、LBBB・QRS<150msやQRS幅を問わない非LBBBの患者と比べて、全死因死亡、全原因・心血管・心不全の再入院のリスクが最も低かった」と結論している。

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造血幹細胞移植後のアウトカムに太り過ぎが影響

 造血幹細胞移植後の転帰における過体重の影響が議論されている。愛知県がんセンター研究所の中尾氏らは、過体重による急性移植片対宿主病(aGVHD)リスクや生存率への影響を評価するため、メタ解析を行った。Bone marrow transplantation誌オンライン版2013年8月19日号に掲載。 著者らは、aGVHDリスク因子または全生存率(OS)の予後因子としてレシピエントの移植前の過体重を評価した研究を、MEDLINEのデータからそれぞれ8報と21報、抽出した。 主な結果は以下のとおり。・同種造血幹細胞移植では、aGVHDリスクおよびOSとレシピエントの過体重との間に、統計的に有意な関連性があることがメタ解析により示された。・aGVHDリスク因子を評価した8報のメタ解析では、非過体重患者に対する過体重患者の相対リスクは1.186(95%CI:1.072~1.312)であった。・OSについては、同種造血幹細胞移植の11報のメタ解析で、非過体重患者に対する過体重患者の相対リスクは1.163(95%CI:1.009~1.340)であった。・これらの結果から、レシピエントの移植前の過体重が、同種造血幹細胞移植後のaGVHD発症率の高さや生存率の低さに関連していることが示された。

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各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学

 臨床使用される抗うつ薬の大半は、シナプス間隙でのモノアミン濃度を急激に上昇させるが、その治療効果のために数週間の投与を必要とする。このように効果が遅発性なのは、セロトニン作動性神経における神経適応変化が緩徐なためと考えられている。京都大学大学院薬学研究科の永安一樹氏らは、抗うつ薬慢性処置のセロトニン遊離への影響について、ラットの縫線核脳切片培養系を用いて調べた。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2013年8月7日号の掲載報告。 著者らは先の研究において、多量のセロトニン作動性神経を含むラット縫線核脳切片培養系に、選択的セロトニン(5-HT)再取り込み阻害薬(シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン)を持続的に曝露すると、セロトニンの開口放出の増大が生じることを報告した。そこで今回、まだ明らかになっていない他の抗うつ薬における同様の作用について、2つの三環系抗うつ薬(イミプラミン、デシプラミン)、1つの四環系抗抑うつ薬(ミアンセリン)、3つのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシン)、1つのノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(ミルタザピン)について検討した。 主な結果は以下のとおり。・9つの抗うつ薬のうち7つについて、0.1~100μmの持続的曝露により、細胞外セロトニン濃度の上昇が認められた。・その作用強度の順位は、ミルナシプラン>デュロキセチン>シタロプラム>ベンラファキシン>イミプラミン>フルオキセチン>デシプラミンであった。・ミルタザピン、ミアンセリンは少しも上昇しなかった。・持続的曝露による作用増強が最も大きかったミルナシプランは、α1-アドレナリン受容体遮断薬(ベノキサチアン)によって部分的に減弱された。一方、デュロキセチン、ベンラファキシン、シタロプラムの伝達増大は影響を受けなかった。・以上の結果から、5-HTトランスポーターの阻害が、セロトニン遊離増強には必要であることが示唆された。また、ミルナシプランによる増強は、α1-アドレナリン受容体の活性化を伴うことが明らかになった。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか? 抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮

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大うつ病患者のGERD有病率は高い

 大うつ病(MDD)患者における胃食道逆流症(GERD)の有病率は、健常人と比較して有意に高いことが台中ベテランズ総合病院のPo-Han Chou氏らの研究により明らかになった。精神科医は大うつ病患者を診る際、日常診療において、胸焼けや嚥下障害など、逆流性食道炎の症状がないか注意を払い、症状を認めた場合は専門医に相談すべきである。Psychosomatics誌オンライン版2013年8月13日号の報告。 GERDは、精神疾患の患者において一般的な疾患である。本研究では、GERD有病率とリスクを調査するために、台湾の国民健康保険の研究データベースを用いて横断的研究を行った。 調査対象は2005年にMDDと診断された4,790人(MDD群)と健常人72万8,749人(対照群)。GERD有病率は、カイ2乗検定を用いて、年齢、性別、所得、居住地域、他疾患の合併(糖尿病、高血圧症、腎疾患、高脂血症、虚血性心疾患などの治療中)ごとに比較した。また、GERDとMDDとの関連は、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・GERDの年間有病率は、MDD群で3.75%、対照群で1.05%であった。・MDD群のGERDの有病率は、すべての年齢、性別、保険金額、居住地域、都市在住サブグループにおいて、対照群よりも有意に高かった(すべてp<0.001)。・GERDの増加率は、対照群のそれと比較し、MDD群で有意に高かった(オッズ比:3.16、95%CI:2.71~3.68、p<0.001)。・以上の結果より、MDD患者のGERD有病率は健常人と比較して有意に高いことが明らかとなった。

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手根管症候群にHLTパッチが有用

 手根管症候群(CTS)は、疼痛、感覚異常、筋力低下などを特徴とする正中神経の圧迫性神経障害である。米国・International Clinical Research Institute社のSrinivas Nalamachu氏らが実施したパイロット試験の結果、発熱成分、リドカイン、テトラカインを組み合わせた局所貼付剤(HLTパッチ)がCTSの疼痛緩和に有用であることを報告した。著者は、「HLTパッチは、CTSによる疼痛をターゲットとした標準的な非外科的治療となる可能性がある」と述べている。Pain Practice誌オンライン版2013年8月1日号の掲載報告。 検討は非盲検試験にて実施された。対象は、電気生理学的検査により軽度から中等度と診断された片側CTSの成人患者20例(平均年齢44±12歳)。 被験者は朝および夜の1日2回(12時間ごと)、手のひら側の前腕と手首の境界付近にHLTパッチ1個を2時間貼付した。 ベースライン時および2週間の試験期間中、疼痛強度ならびに疼痛による日常生活・仕事・睡眠の障害度について、0~10の数値的評価スケールを用い評価した。 主な結果は以下のとおり。・試験を完遂したのは15例で、平均疼痛スコアはベースライン時5.1±1.5から試験終了時2.5±1.6に低下した(per protocol解析、p<0.001)。・患者の3分の2は、臨床的に有意な疼痛改善(平均疼痛スコアがベースラインから30%減少)が得られた。患者の40%は、3日目までにこの閾値に達した。・日常生活・仕事・睡眠の障害度についても、同様の結果であった。・忍容性は良好であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?

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改めて問われる、心血管リスクとしての腎結石の意義(コメンテーター:石上 友章 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(126)より-

 腎結石を有する女性に、冠動脈性心疾患(CHD)のリスクが増大することが報告された。Ferraroらの長期にわたる観察研究は、質・量において、従来のコホートを圧倒している。したがって、事実として彼らの定義する腎結石とCHDとが統計的に有意に関連していることは、疑いようがないだろう。 観察研究は、いかに質・量を確保したとしても、因果関係を説明しうる研究ではない。因果関係のない現象が結びついてしまったり(一種のαエラー)、解釈によっては因果の逆転現象がまかり通る可能性もある。本論文は、あくまで事実として、女性においてのみ、腎結石とCHDとの間に統計的に有意な関係が認められることを報告しているに過ぎない点に、限界がある。 一般的には、関連の密接性、関連の時間性、関連の普遍性、関連の論理性、関連の特異性といった5つの条件を満たしてはじめて因果関係があると結論できるとされている。本論文のように性差がある場合、性差に由来する特異的な因果関係を正当化する明白な論理性がなければ、事実を真実として了解することはできない。しかしながら、仮に腎結石と冠動脈性心疾患との間に共通する病的な基盤、生物学的な基盤があった場合は、因果関係はなくとも、少なからず関連性はあるといえる。果たして、腎結石とCHDとの間にはどのような関係があるのか? 本論文では、腎結石の有無に関して、HPFS cohort、NHS I cohort、NHS II cohortに対して、それぞれ1986年、1992年、1991年より2年毎の調査で判定している。血尿乃至、腹痛を契機に診断された腎結石を自己申告した参加者の97%に対して、2次的に質問紙法で確認している。CHDに関する1次アウトカムは、致死的、非致死的心筋梗塞、致死的冠疾患、冠血行再建術の複合アウトカムを採用している。致死的イベントに関しては、公的死亡統計および参加者の近親者による報告、郵便システムによって判定している。致死的冠疾患については、病院での検査、剖検記録、担当医によるレビューによって判定している。単なる死亡統計による判定だけではなく、病院での記録や、剖検記録にまでさかのぼってアウトカムの判定をおこなっている点は評価できる。 腎結石とCHDとを結びつける生物学的基盤は、栄養の問題や、副甲状腺ホルモン、あるいはオステオポンチンといった内分泌因子が関与している可能性が指摘されているが、本論文のデータからは明らかにされることはなく、推論の域を出ない。何より、症候性の腎結石に限定している解析なので、症候(とくに痛み)をもたらす閾値に個人差がある以上、全例調査であっても、生物学的に十分な判定ではない可能性がある。無症候性の腎結石や、連続性のある表現型の判定が十分ではないために、名ばかり(nominal)の関連(association)にとどまるのではないかという疑問を払拭することはできない。どれだけ観察数を増やしても、観察研究の限界、すなわち仮説提示にとどまるのが実状ではないだろうか。

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プロバイオティクスはアトピー感作や喘息のリスクを低下させるのか?

 出生前や出生後早期に、プロバイオティクスを投与することは、アトピー感作リスクや総IgEを低下させるが、喘息・喘鳴発症のリスクは低下させないことが、米国マイアミ大学小児科学のNancy Elazab氏らにより報告された。Pediatrics誌オンライン版2013年8月19日号の掲載報告。  プロバイオティクスは小児のアトピーや喘息発症のリスクを低下させる可能性があるとされているが、これまでの臨床試験では、矛盾する結果が出ていたり、試験自体が検出力不足だったりしていた。そこで著者らは、プロバイオティクスが小児のアトピーや喘息・喘鳴の発症に対し、予防効果があるのかを調べるため、無作為化プラセボ対照試験のメタアナリシスを行った。累積リスクの計算にはランダム効果モデルを用いた。プロバイオティクスの効果に影響する潜在的な因子を調べるため、メタ回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・プロバイオティクスの投与は総IgEを有意に低下させた(平均低下値:-7.59 U/mL、95%信頼区間[Cl]:-14.96~-0.22、p=0.044)。・メタ回帰分析では、フォローアップ期間が長いほどIgEの低下がより顕著であることが示された。・出生前投与、出生後投与のいずれにおいても、アトピー感作リスクは有意に低下した。[出生前]皮膚プリックテスト陽性と一般的なアレルゲンに対する特異的IgEの上昇(両方またはどちらか)の相対リスク:0.88、95%CI:0.78~0.99、p=0.035。[出生後]皮膚プリックテスト陽性の相対リスク:0.86、95%CI:0.75~0.98、p=0.027。・好酸性乳酸桿菌(ラクトバチルス・アシドフィルス)の投与は、アトピー感作のリスク上昇と関係していた(p=0.002)。・プロバイオティクスの投与による喘息・喘鳴リスクの有意な減少はみられなかった(相対リスク:0.96、 95%CI:0.85~1.07)。 本研究により、プロバイオティクスの効果はフォローアップ期間と菌種により、大きく変わることがわかった。今後、喘息の抑制に関するプロバイオティクスの試験を行う場合は、注意深く菌種を選定し、より長いフォローアップ期間を考慮すべきである。

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確実な紫外線対策は物的バリアで

 日焼けによる損傷は、悪性黒色腫と関連した最も重要な環境要因だが、スペイン・バルセロナ大学のCristina Carrera氏らは、母斑への紫外線誘発の影響を防御することを目的とした日焼け止め外用の効果について、物的バリアとの比較で検証した。その結果、日焼け止めには物的バリアほど炎症性の紫外線の影響を防御する効果がないことを報告した。JAMA Dermatology誌2013年7月号の掲載報告。 日焼け止め外用と物的バリアを比較した母斑保護についての検討は、病院に通院する患者20人、母斑23例について前向き研究の手法にて行われた。 それぞれの母斑について、半分にSP50の日焼け止めを塗布し、半分は遮断バリアで覆い、紫外線B波(UVB)の単回照射を行った。 主要評価項目は、紫外線照射前と照射7日後の生体検査の結果と、7日時点での組織病理-免疫病理学的検査の結果であった。 主な結果は以下のとおり。・紫外線照射後の臨床的変化が最も大きかったのは、色素沈着、スケーリング、紅斑であった。・ダーモスコピーの所見で変化が最も大きかったのは、小球/斑点、非定型的色素ネットワーク、退縮、点状血管の増加であった。・物的バリアと日焼け止め塗布で保護された部位はいずれも、これらの変化が数度認められた。・母斑のうち、臨床的変化がみられなかったのは30%超(7例)であり、ダーモスコピー所見の変化がみられなかったのは18%(4例)であった。・生体検査で何もみつからなかった場合も、各母斑の日焼け止め塗布部と物的バリア部分の組織病理-免疫病理学的検査の結果は明白に異なっていた。最も顕著であった特徴は、不全角化スケール、表在性メラノーマの数および活性の上昇、ケラチノサイト増殖であった。・両バリア部位の唯一の違いは、日焼け止め塗布部位のほうが色素細胞活性と退縮の特徴がより認められたことであった。・特異的UVB反応の予測について、遺伝的表現型の特徴についてはわからなかった。・以上を踏まえて著者は、「物的バリアと日焼け止め外用はいずれも、部分的だが母斑へのUVB保護効果がある。UVの影響は必ずしも目に見える変化となっては現れず、保護していてもその後に変化が認められる可能性がある。日焼け止めは、UVB炎症への保護効果は、物的バリアと同程度ではなかった」とまとめている。

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僧帽弁逆流、早期手術が長期生存率を有意に増大/JAMA

 僧帽弁尖動揺による僧帽弁逆流を呈する慢性僧帽弁閉鎖不全症の患者に対し、早期に僧帽弁手術を実施する治療戦略は初期薬物療法による経過観察戦略と比較して、長期生存率の増大および心不全リスクの低下に関連していることが示された。米国・メイヨークリニック医科大学のRakesh M. Suri氏らが、1,000例を超える多施設共同レジストリデータの分析の結果、報告した。クラスIトリガー(心不全または左室機能不全)を有さない重症僧帽弁閉鎖不全症患者の至適治療については、現状の治療戦略の長期結果の定義が曖昧なこともあり、なお議論の的となっている。同検討に関する臨床試験データはなく、それだけに今回の検討は重大な意味を持つところとなった。JAMA誌2013年8月14日号掲載の報告より。4ヵ国6施設1,021例を10.3年追跡 Mitral Regurgitation International Database(MIDA)レジストリデータの分析は、僧帽弁尖動揺による僧帽弁閉鎖不全症と診断後の、初期薬物治療(手術を行わず経過観察)と早期僧帽弁手術治療の有効性の比較を確認することを目的とした。MIDAには、1980~2004年に6つの高度医療施設(フランス、イタリア、ベルギー、米国)でルーチンの心臓治療を受けた同連続患者2,097例が登録されていた。平均追跡期間は10.3年で、98%が追跡を完了した。 検討は、1,021例のACCおよびAHAガイドラインのクラスIトリガーを有さない僧帽弁閉鎖不全症患者について行われ、575例が初期薬物治療を、446例が診断後3ヵ月以内に僧帽弁手術を受けていた。 主要評価項目は、治療戦略と生存率、心不全および新規の心房細動発症との関連だった。長期生存率は有意に増大、心不全リスクは有意に低下 診断後3ヵ月時点において、早期手術群と初期薬物治療群の間に、早期死亡(1.1%対0.5%、p=0.28)、新規の心不全発症(0.9%対0.9%、p=0.96)の有意差はみられなかった。 一方で、長期生存率は早期手術群で有意に高かった(10年時点で86%対69%、p<0.001)。同関連は、補正後モデル(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.41~0.72、p<0.001)、32の変数による傾向マッチコホート(同:0.52、0.35~0.79、p=0.002)、逆確率ウエイト(inverse probability-weighted:IPW)解析(同:0.66、0.52~0.83、p<0.001)でも確認され、5年時点の死亡率は52.6%有意に低下した(p<0.001)。同様の結果は、クラスIIトリガーを有したサブセット群の解析でもみられた(5年時点死亡率59.3%低下、p=0.002)。 また、長期の心不全リスクも、早期手術群で低下した(10年時点7%対23%、p<0.001)。リスク補正後モデル(HR:0.29、95%CI:0.19~0.43、p<0.001)、傾向マッチコホート(同:0.44、0.26~0.76、p=0.003)、IPW解析(同:0.51、0.36~0.72、p<0.001)でも確認された。 なお、心房細動の新たな発症の減少は、観察されなかった(HR:0.85、95%CI:0.64~1.13、p=0.26)。

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リセドロン酸、小児骨形成不全への有用性を確認/Lancet

 小児骨形成不全症に対する経口リセドロン酸の安全性と有効性を検討した結果、骨密度の増大、骨折の初発・再発リスクの減少が認められ、忍容性も良好であったことが、英国・シェフィールド小児病院のNick Bishop氏らによる多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告された。小児骨形成不全症に対しては、しばしばビスホスホネート製剤の静注投与が行われているが、定期的な入院治療を要するなど利便性、コスト面、また患児に与える精神的ストレスなどが大きい。経口治療はQOLの大きな改善につながるとして期待されているが、従来のビスホスホネート製剤を用いた試験では骨折リスクの改善が示されなかった。Lancet誌オンライン版2013年8月5日号掲載の報告より。13ヵ国20施設でプラセボ対照無作為化試験 Bishop氏らは、第三世代のビスホスホネート製剤であるリセドロン酸の、小児の疾患における安全性および有効性を評価することを検討目的とした。試験は、骨形成不全症を有する骨折リスクの高い4~15歳の小児(13ヵ国20施設で登録)を、リセドロン酸1日1回投与(2.5または5mg)群とプラセボ群に無作為に割り付け1年間投与を行い評価した。 試験の割り付けについては患児、研究者、試験参加施設スタッフともに知らされなかった。また全患児はその後2年間、非盲検でリセドロン酸投与を受けた。 主要有効性エンドポイントは、腰椎二次元骨密度(BMD)の1年の変化(%)であった。主要有効性エンドポイントの解析はANCOVA(analysis of covariance:共分散分析)にて行われた(治療、年齢群、施設、ベースライン共変量を考慮)。解析はintention-to-treat(ITT)法に基づき、無作為化され割り付けられた治療を1回以上受けたすべての被験者を組み込んだ。治療の選択肢とみなすべき 無作為化を受けたのは147例で、97例がリセドロン酸群に、50例がプラセボ群に割り付けられた。このうち治療を受けなかった患児を除く各群94例と49例についてITT解析を行った。 ベースライン時の両群の人口統計学的特性や腰椎二次元BMDは類似していた。ただし平均ボディBMD Zスコアは、リセドロン酸群-1.42、プラセボ群-1.82だった。治療コンプライアンスは、プラセボ対照試験期間およびその後の非盲検試験期間とも同様だった。 結果、1年時点の腰椎二次元BMDは、平均値でリセドロン酸群が16.3%増加したのに対し、プラセボ群は7.6%だった(格差:8.7%、95%信頼区間[CI]:5.7~11.7、p<0.0001)。臨床的骨折の発生は、リセドロン酸群は29/94例(31%)であったのに対し、プラセボ群は24/49例(49%)だった(p=0.0446)。 2年、3年時の非盲検試験期間の臨床骨折発生は、本試験スタート時からリセドロン酸投与を受けていた群では46/87例(53%)が報告された。一方、プラセボを受け続けていた群では32/49例(65%)の報告だった。 一方、有害事象の発生は、上部消化管や筋骨格系の有害事象の頻度を含め両群で同程度であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「骨形成不全症の小児に対する経口リセドロン酸の投与は、BMDを増大し、初発・再発の骨折リスクを減少した。また、概して忍容性は良好であった。リセドロン酸は、小児骨形成不全症の治療の選択肢とみなすべきであろう」と結論している。

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帝王切開の決定時期が遅れて胎児仮死・低酸素脳症となったケース

産科・婦人科最終判決判例時報 1772号108-120頁概要妊娠経過中に異常はみられなかった24歳初産婦。破水から6時間後にいったん分娩停止となったため、陣痛促進剤を開始するとともに、仙骨硬膜外麻酔も追加した。分娩室に移動した直後から胎児心拍細変動の低下・消失、徐脈などが出現し、まずは吸引分娩を試みたが不成功。鉗子分娩は児頭が高位になったことから断念し、緊急帝王切開を行った。ところが胎児仮死の状態で出生し、重度の脳障害が残存した。詳細な経過患者情報24歳初産婦、分娩予定日1993年3月31日、身長154cm、体重55kg(非妊時46kg)、ノンストレステスト異常なし、子宮底32cm、推定胎児体重3,598g、骨盤X線計測では通過可能経過4月1日21:00陣痛が10分間隔となり分娩開始。4月2日02:00市立病院産婦人科に入院。子宮口2~3cm開大、展退80%、児の下降度stationマイナス1.5、陣痛間隔は間歇5分規則的、発作30~40秒。02:37外側式分娩監視装置を装着。07:45早期破水。08:00子宮口4cm開大、展退80~90%、児の下降度stationマイナス1.5。09:13内側式分娩監視装置を装着。10:30子宮口8cm開大、児心音130-140、児の下降度stationマイナス1。13:30子宮口8cm開大、児心音140、児の下降度stationマイナス0.5。子宮口の開大進まず、分娩遷延ないし停止状態。第2回旋が横定位の状態に戻る。15:45裁判所の認定:胎児心拍細変動の低下・減少(15分間持続しその後回復。あとからみるとごく軽度の遅発一過性徐脈ともとれるのでこの時点で酸素投与を開始するのが望ましかった)。16:00陣痛促進剤(プロスタグランデインF2α)開始。16:40裁判所の認定:胎児心拍細変動の低下・減少ともとれる所見が46分間継続(このような変化は正常な経過をとる分娩にはみられないので胎児仮死を想定すべきであった)。17:50内診にて横定位回旋異常が変化しないため、仙骨硬膜外麻酔施行。18:20~18:40(担当医師はトイレのため陣痛室を離れる)18:20裁判所の認定:胎児心拍細変動の低下・減少は著明で、遅発一過性徐脈を疑う所見がある。さらにこの時に子宮口は全開大していた可能性が高い(?)ので内疹をして確認するべきであった。18:30分娩室に移動。18:35裁判所の認定:胎児心拍数が110前後の徐脈。分娩室に移動して一時中断していた記録を再開したこの時点で急速遂娩を決定するべきであった。18:37胎児心拍数が80前後の高度徐脈。18:45胎児心拍数はいったん120を越えたため、徐脈は軽度であって経過観察をすることにした。予防的に酸素投与。18:502分間ほどの頻脈、基線の細変動は保たれていたので低酸素状態ではないと判断。18:54高度徐脈が1分間持続、臍帯の圧迫などによる低酸素と考え急速遂娩が必要と判断。18:58子宮口全開大。19:05児の下降度stationプラス1を確認したうえで、クリステル圧出法による吸引分娩を試みるが娩出せず。19:20ほかの医師に交代し鉗子分娩を試みるが、児頭が高位になったことから断念し帝王切開を決定。19:46重症仮死状態で出生。直後のアプガースコアは1点、5分後も4点であり、低酸素脳症による重度脳障害が発生し、日常生活全介護となった。裁判所からの依頼鑑定胎児が何らかの因子で分娩の初期から胎児心拍細変動の一時的な消失を示しており、また、分娩の後半における一連の変化は、たとえ遅発性一過性徐脈を伴う典型的なパターンではなくても、胎児仮死を疑い、より厳重な監視と迅速な対応が必要であった。当事者の主張患者側(原告)の主張担当医師は遅くとも18:35の時点で急速遂娩の決断をするべきであった。仮に急速遂娩を決断するべき時期が高度持続性徐脈のみられた18:54だとしても、その方法は吸引分娩ではなく帝王切開にするべきであった。このような判断の遅れから、胎児仮死による脳性麻痺に至った。患者側提出産婦人科専門医作成意見書心拍数曲線は記録の乱れのために判定は難しいが、18:37~18:42頃までのあいだに遅発性一過性徐脈を疑わせる所見がある。一般に胎児仮死の徴候は分娩経過とともに発現することが多いため、18:54まではまったく異常がなく、この時点で突然持続性徐脈で示される胎児仮死が現れる可能性は低い。したがって、18:54に持続性徐脈がみられた時点で、ただちに吸引遂娩術を試み、それが不成功であれば速やかに帝王切開術を実施していれば、胎児仮死を避けられた可能性が高い病院側(被告)の主張18:36突然の徐脈が出現するまでは胎児の状態は良好であり、突然の悪化は予見できない。裁判所からの依頼鑑定では、正常な状態で出現するレム・ノンレムおよび覚醒のサイクル(スリープウエイクサイクル)を無視している。18:54に急速遂娩を決定した時の判断として、吸引分娩が成功すれば帝王切開よりもはるかに短い時間ですむので、吸引分娩の判断は誤りではない。そして、帝王切開を決定してから児の娩出まで26分でありけっして遅滞とはいえない。アメリカ産婦人科学会の基準では、脳性麻痺の原因が胎児仮死にあると推定できる要件として4つ挙げているが、本件では2要件しか満たさないので、脳性麻痺の原因は胎児仮死ではない。病院側提出意見書(1)(産婦人科M教授)18:35までの胎児心拍数モニター上では、基準心拍数、胎児心拍数基線細変動、子宮収縮による心拍数の変化、一過性頻脈の存在、レム・ノンレムサイクルの存在からみても、胎児仮死を示唆する所見はない。分娩室移動後も、18:58までは正常範囲内である。本件における胎児心拍細変動の低下・消失は、健康な胎児がレム・ノンレムおよび覚醒のサイクルをくり返している典型的な胎児の生理的状態である病院側提出意見書(2)(産婦人科T教授)18:36から基準心拍数の低下と一過性徐脈があるようにもみえるが、この程度の変化では胎児仮死徴候の発現とみることはできない。18:50までの胎児心拍の不安定な推移はのちに起こる胎児仮死の予兆もしくは警戒信号といえなくもないが、あくまでも結果論であり、現場においてはその推移を注意深く見守るくらいで十分な状態であったといえる裁判所の判断分娩経過中には分娩監視装置を適切に使用するなどして、できる限り胎児仮死の早期診断、早期治療に努めるべきであるのに、担当医師は胎児心拍細変動の低下・消失、徐脈に気付いて急速遂娩を実施する義務を怠り、児を少なくとも1時間早く娩出できた可能性を見過ごし、胎児仮死の状態に至らせた過失がある。原告側合計1億5,200万円の請求に対し、1億812万円の判決考察今回のケースで裁判所は、分娩管理の「明らかな過失」という判断を下しましたが、はたして本当に医療過誤といえるほどの過失が存在したのか、かなり疑問に思うケースです。分娩経過を通じて担当医師は患者のそばにほとんど立ち会っていますし、その都度必要に応じた処置を施して何とか無事に分娩を終了しようとしましたが、(裁判官が指摘した時刻にはトイレにいっていたなど)さまざまな要因が重なって不幸な結果につながりました。そこには担当医師の明らかな怠慢、不注意などはあまり感じられず、結果責任だけを問われているような気がします。あとからCTG(Cardio-toco-graphy)を詳細に検討すると、確かに胎児心拍細変動の消失や低下が一過性にみられたり、遅発一過性徐脈を疑う所見もあります。そして、裁判所選出の鑑定医のコメントは、「典型的な遅発一過性徐脈が出ているとはいっていない。詳細にみるとごく軽度の遅発一過性徐脈ともとれる所見の存在も否定し得ない」となっているのに、裁判官の方ではそれを拡大解釈して、「遅発一過性徐脈を少しでも疑うのならば、即、急速遂娩しないのは明らかな過失」と断じているようなものではないかと思います。その背景として、出産は病気ではなく五体満足で産まれるのが普通なのに、脳性麻痺になったのは絶対に病院が悪い、という考え方があるのではないでしょうか。おそらく一般臨床家の立場では、病院側の意見書を作成したT教授のように、「胎児心拍の不安定な推移はのちに起こる胎児仮死の予兆もしくは警戒信号といえなくもないが、あくまでも結果論であり、現場においてはその推移を注意深く見守るくらいで十分な状態であったといえる」という考え方に賛同するのではないかと思います。今回のような産科領域、とくにCTGに関連した医事紛争はかなり増えてきています。CTGの重大な所見を過小評価して対応が遅れたり、あるいは分娩監視装置を途中で外してしまい再度装着した時にはひどい徐脈であったりなどといった事例が散見されます。やはり患者側は「お産は病気じゃない」という意識が非常に強いため、ひとたび障害児が生まれるとトラブルに巻き込まれる可能性がきわめて高くなります。そのため、普段からCTGの判読に精通しておかなければならないことはいうまでもありませんが、産科スタッフにも異常の早期発見を徹底するよう注意を喚起する必要があると思います。産科・婦人科

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遠隔虚血プレコンディショニング、CABGの予後を改善/Lancet

 遠隔虚血プレコンディショニング(RIPC)は、待機的冠動脈バイパス術(CABG)施行後の心筋傷害を抑制し、全死因死亡を改善する可能性があることが、ドイツ・エッセン大学病院のMatthias Thielmann氏らの検討で示された。RIPCは、遠隔臓器や血管領域の虚血と再灌流を短時間で繰り返す手技で、CABG施行後の心筋傷害のリスクを低減することが示唆されているが、心筋バイオマーカーの改善が臨床転帰の改善に結びつくかは明らかにされていないという。Lancet誌2013年8月17日号掲載の報告。on-pump CABG例での有用性を単施設の無作為化試験で評価 研究グループは、RIPCの安全性および有効性を評価する二重盲検無作為化対照比較試験を実施した。対象は、West-German Heart Centre(エッセン市)で人工心肺装置使用下に単独初回待機的CABGが予定されている成人3枝病変患者であった。 被験者は、RIPCを施行する群またはこれを施行しない対照群(非RIPC群)に無作為に割り付けられた。RIPCは、麻酔導入後、皮膚切開前に左上腕の虚血(血圧測定用カフで圧迫:200mmHg、5分間)と再灌流(カフによる圧迫を開放、5分間)を3回繰り返すことで行った。 主要評価項目は心筋傷害とし、CABG施行後72時間における血清心筋トロポニンI(cTnI)濃度曲線下面積(AUC)の幾何平均値と定義した。心筋傷害を17.3%抑制、有害事象も少ない 2008年4月~2012年10月までに329例が登録され、RIPC群に162例(平均68.2歳、男性83%)、対照群には167例(69.1歳、80%)が割り付けられた。 72時間のcTnI AUC幾何平均値は、RIPC群が266ng/mL(95%信頼区間[CI]:237~298)と、非RIPC群の321ng/mL(95%CI:287~360)に比べ17.3%低く、intention-to-treat集団(p=0.022)およびper-protocol集団(p=0.001)の双方において有意差が認められた。 平均フォローアップ期間1.54年における全死因死亡率は、RIPC群が1.9%、非RIPC群は6.9%と有意な差がみられた(ハザード比[HR]:0.27、95%CI:0.08~0.98、p=0.046)。心臓死の発生率はそれぞれ0.6%、4.5%で、有意差はなかった(HR:0.14、95%CI:0.02~1.16、p=0.069)。 心臓および脳血管の主な有害事象の発生率は、RIPC群が13.9%、非RIPC群は18.9%であり、有意差を認めた(HR:0.32、95%CI:0.14~0.71、p=0.005)。冠動脈血行再建術はそれぞれ4.3%、17.1%で行われたが、両群間に差はなかった(HR:0.70、95%CI:0.26~1.88、p=0.477)。 著者は、「RIPCは待機的CABG施行例の周術期の心筋保護に有効であり、予後の改善をもたらした」と結論し、「これまでに実施された同様の試験では梗塞サイズが平均19%縮小したが、臨床転帰の改善は得られていない。今回の結果をふまえ、臨床転帰の改善効果を検証するために、多施設による大規模な前向き無作為化試験(ERICCA試験)が進行中である」としている。

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雇用不安は冠動脈疾患発症のリスク因子/BMJ

 雇用への不安の自覚と冠動脈疾患(CHD)の発症には緩やかであるが関連があることが、フィンランド・労働衛生研究所のMarianna Virtanen氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかにされた。同関連の一部は社会経済的状況が低いことに起因しており、著者は、「雇用不安を持つ人においては、好ましくないリスク因子である」と報告している。BMJ誌2013年オンライン版2013年8月8日号掲載の報告より。雇用不安レベルとCHD発症リスクの関係をメタ解析 雇用不安とCHD発症の関連を明らかにするため、共同コンソーシアムから得た個人データとシステマティックレビューで同定した公表済みの研究を合わせてメタ解析を行った。具体的には、Individual-Participant-Data Meta-analysis in Working Populations Consortiumに参加する13のコホート研究から個人データを入手し、Medline(2012年8月まで)とEmbaseデータベース(2012年10月まで)の検索および手動検索にて同定した4つの前向きコホート研究を組み込んだ。 レビューは、2人の独立したレビュアーがデータを抽出して行われ、雇用不安の自己申告レベルによるCHD発症(臨床的に確認)リスクの推定値を解析した。関連推定値はランダムエフェクトモデルを用いて入手した。雇用不安が高い人のCHDリスクは低い人の1.32倍 解析に組み込んだ13のコホート研究および4つの前向きコホート研究の参加者は合計17万4,438人であった。平均追跡期間は9.7年、その間に発症したCHDは1,892例だった。 解析の結果、高い雇用不安の人の年齢補正後リスクは、同低い人との比較で1.32(95%信頼区間1.09~1.59)だった。 なお、社会人口統計学的因子およびリスク因子で補正後、雇用不安の相対リスクは1.19(同1.00~1.42)だった。 上記の関連における有意差のエビデンスは、性別、年齢(50歳未満対50歳以上)、国の失業率、福祉制度、雇用不安基準では認められなかった。

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前立腺がん治療薬で初 カソデックスOD錠が承認取得

 アストラゼネカは20日、前立腺がん治療薬「カソデックス(一般名:ビカルタミド)錠80mg」の新たな剤形として口腔内崩壊錠(以下、OD錠:Orally Disintegrating Tablet)を採用した「カソデックスOD錠80mg」の承認を8月15日に取得したと発表した。 カソデックス錠80mgは1日1回1錠投与の非ステロイド性抗アンドロゲン剤。前立腺がんの治療における内分泌療法の中心的な薬剤として10年を超える臨床実績を有している。今回、新たな剤形として承認を取得したカソデックスOD錠80mgは、前立腺がんの治療薬では初めてのOD錠となる。  カソデックスOD錠80mgは、唾液または水で飲み込んで服用する。口の中で溶けるため通常の錠剤よりも服用しやすいのが特徴となっている。高齢の患者の場合はとくに薬剤を飲み込むことが難しくなるほか、複数の薬剤を服用する機会も増えるため、そのような患者のコンプライアンスの向上を期待できるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.astrazeneca.co.jp/media/pressrelease/Article/20130820

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コクサッキーウイルスと天疱瘡は関連しているのか

 天疱瘡は自己免疫性水疱症であり、原因とされるウイルスは複数あるとされている。トルコ・パムッカレ大学のNida Kacar氏らは、コクサッキーウイルス(CV)が天疱瘡患者において認められるかを調べた。CVは、手足口病の原因ウイルスの一つであり、自己免疫疾患と強い関連がある。著者らは、CV感染とセファロスポリンによる治療後に天疱瘡の発症が報告されたことを受けて本検討を行った。International Journal of Dermatology誌オンライン版2013年7月24日号の掲載報告。 研究グループは、患者の皮膚検体を用いて、CV RNAシーケンスについてリアルタイムPCR(RT-PCR)法にて解析を行い、また、CVとアデノウイルス受容体発現について免疫組織化学染色を行った。また、CVの抗体IgMとIgGの血清レベルについて分析した。 主な結果は以下のとおり。・患者32例と対照40例について調べた。・CVとアデノウイルス受容体発現、CV RNAシーケンスのいずれも、患者の皮膚検体について確認されなかった。・CV-IgG陽性率は、対照よりも患者において高率であった(5%対12.5%、p>0.05)。・今回の予備的な検討においては、CVのウイルス遺伝子は、皮膚において持続的に認められないことが示された。・さらなる大規模症例における検討にて、天疱瘡の原因となるCVの存在場所を明らかにする必要がある。

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