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小児への抗精神病薬使用で推奨される血糖検査、その実施率は

 米国糖尿病協会(ADA)は2004年に、小児および青少年について、第2世代抗精神病薬の治療開始前後に代謝スクリーニングを実施することを推奨する治療ガイドラインを発表した。これに関連し、ブリガム&ウィメンズ病院のJohn G. Connolly氏らは、ガイドライン発表時期とその後8年間のスクリーニング実施率の変化を調べ、ガイドライン発表後はわずかに実施率が上昇したが、その後は低下していたことを明らかにした。先行研究で、ガイドライン公表時期に小児および成人の血糖検査がわずかだが増大していることが報告されていたが、その後についての報告は限定的であった。Psychiatr Services誌オンライン版2015年3月1日号の掲載報告。 研究グループは、全米をカバーする大規模民間保険の支払データベースで、2003年1月1日~2011年12月31日の期間中に5万2,407例の試験患者を特定した。試験集団は、第2世代抗精神病薬を使用する5~18歳の非糖尿病集団であった。アメリカ医師会(AMA)独自の診療コーディングCPT(Current Procedural Terminology)-4により、同薬服用開始前後に血糖値検査およびHbA1c検査完了の有無を特定した。また、処方されていた第2世代抗精神病薬、および精神科の診断ごとの代謝スクリーニング実施率についても調べた。 主な結果は以下のとおり。・第2世代抗精神病薬の治療開始前に血糖値検査を受けていた患者の割合は、2003年17.9%から2004年18.9%に増大していた。同時期に、治療開始後の検査は14.7%から16.6%に増大していた。・これら血糖値検査のわずかな増大は、その後は継続していなかった。2008年に再上昇がみられたが、それまでの期間は低下していた。・血糖スクリーニングの頻度は、アリピプラゾール服用患者で最も高かった。一方、多動障害を診断された患者の検査頻度が、最も低いと思われた。・HbA1c検査の実施頻度は、より低かったが、実施パターンについては類似していた。・以上のように、2004年のADAガイドライン発表後、代謝スクリーニング実施率はわずかに改善していたが、継続していなかったことが明らかになった。・全体として、代謝スクリーニング率は調査対象期間中、最適には及ばない基準で推移していた。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状 抗精神病薬治療中の若者、3割がADHD 本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか

9022.

認知症への抗精神病薬使用は心臓突然死リスクに影響するか

 死亡診断書や処方箋データを用いた研究によると、認知症患者に対するハロペリドールによる治療は、心臓突然死のリスク増大と関連していることが示唆されている。ルーマニア・トランシルバニア大学のPetru Ifteni氏らは、ハロペリドールで治療した認知症患者の突然死例において心臓突然死率が高いかどうかを、剖検所見を用い調査した。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2015年3月19日号の報告。 1989年から2013年までに、精神科病院に入院した行動障害を伴う認知症患者1,219例のうち、65例(5.3%)が突然死していた。突然死後、剖検を完了したのは55例(84.6%)であった。剖検例のうち27例(49.1%)が、経口ハロペリドール単剤(2.2㎎±2.1㎎/日)治療を受けていた。多変量比較および多変量回帰分析を用い、心臓突然死および非心臓突然死であった患者群との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・死亡の主な原因は、心臓突然死(32.7%)、心筋梗塞(25.5%)、肺炎(23.6%)、脳卒中(10.9%)であった。・心臓突然死患者と解剖学的に死亡原因が特定された患者では、ハロペリドールの治療率に差はなかった(p=0.5)。・心臓突然死患者では、アルツハイマー型認知症(p=0.027)、心臓病の既往歴(p=0.0094)の割合が高く、気分安定薬による治療率が低かった(p=0.024)。しかし、これらはいずれも心臓突然死の独立した危険因子ではなかった。・剖検データによる本調査では、精神科入院認知症患者に対する経口ハロペリドールの使用は、心臓突然死リスクと関連しないことが示唆された。関連医療ニュース 日本では認知症への抗精神病薬使用が増加 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

9023.

「エドキサバンは日本の薬なのに…」2~エドキサバン減量と出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-337

 EBM(Evidence Based Medicine)を基本原理とする現在の医療において、臨床データベースの保有には圧倒的な意味がある。エドキサバンは日本企業が開発した薬剤である。日本企業には抗トロンビン薬があるがトロンビンの時代から、選択的凝固因子阻害薬の開発力は外資企業に先行していた。残念ながら、分子としての抗Xa薬を介入したときの個人の反応は予測不可能な程度にしか、現在の医学は成熟していない。結果として、エドキサバン介入時の臨床データベースを持っているものが強い。 第一三共の開発したエドキサバンであるが、非弁膜症性心房細動におけるワルファリンとの比較試験「ENGAGE AF-TIMI 48」は、ハーバード大学のTIMI groupをスポンサーとして施行された。膨大なデータベースからは、多くの科学的事実が公表される。本論文も重要なサブ解析の1つである。日本企業が開発した薬剤を用いた試験の重要なサブ解析であるが、残念ながら日本人は著者として参加していない。 ENGAGE AF-TIMI 48試験のプロトコルは単純ではなかった。ワルファリンと2用量のエドキサバンの有効性、安全性の検証を目指した部分のみでも、十分に複雑であった。さらに、本試験では来院時にクレアチニン・クリアランスが30~50mL/分の人、体重が60kg以下の人、または、P糖タンパク質の相互作用のある併用薬を服用したときには、エドキサバン投与量を半減した。試験の最初のみでなく、中途でも減量する基準を設けることにより、抗Xa効果の標準化を目指した。試験の規模が大きいので、プロトコルに規定された30、60mgの標準投与量から減量した5,356例と、減量しなかった1万5,749例の比較が可能であった。抗Xa活性のトラフ値を6,780例にて把握できたことも、科学的試験として、多くの情報をわれわれに与えることができる試験であったといえる。 ランダム化比較試験では、基本的に1つの臨床的仮説の検証のみが可能である。ENGAGE AF-TIMI 48試験では、二重盲検二重ダミー試験として、実臨床に近い0.5mg刻みのワルファリンのコントロールを行った。PT-INR 2.0~3.0を仮の「標準治療」とすることも徹底していた。TTRもきわめて高い。質の高いワルファリン治療下では、血栓イベントも出血イベントも起こりにくい。仮説検証試験としてはエドキサバンの優越性は示せなかった。 50年使用してきたワルファリンに「PT-INR 2.0~3.0」という枠をはめても、ワルファリンが優れた薬剤であることを示したのがENGAGE AF-TIMI 48試験であった。それでも、臨床的特徴に基づいて減量することにより、エドキサバン群の出血イベントリスクを示すことができたので、減量好きな日本の臨床家にはありがたい研究結果であったといえる。 筆者は本試験のDSMB(Data and Safety Monitoring Board)であったので、筆者には資格がないが、本試験に症例を登録した研究者であれば、ぜひ、本研究のような日本の臨床家に役立つサブ解析を主導したいと思った。主導するのがTIMI groupであることを受け入れるとしても、日本人研究者の1人として共著者になり、論文作成段階から寄与したかった魅力的研究である。

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急性冠症候群、経橈骨動脈アクセスの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する侵襲的処置では、経橈骨動脈アクセスが、経大腿動脈アクセスに比べ臨床的有害事象の抑制効果が優れることが、オランダ・エラスムス医療センターのMarco Valgimigli氏らが行ったMATRIX Access試験で確認された。ACS患者に対する抗血栓療法を併用した早期の侵襲的処置の重要な目標は、出血イベントを抑制しつつ効果を維持することである。侵襲的処置で頻度の高い出血部位は心臓カテーテル検査時の大腿動脈穿刺部であり、経橈骨動脈アクセスは技術的な困難を伴うが止血の予測がしやすいとされる。2つのアクセス法の有害事象を比較した試験では、相反する結果が提示されているという。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告。2つのアクセス法の有害事象を無作為化試験で比較 MATRIX Access試験は、経橈骨動脈的インターベンションにおける穿刺部位の出血や血管合併症の抑制効果を検討する多施設共同無作為化試験(Medicines Company社などの助成による)。対象は、冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応とされるACS患者(ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞)であった。 被験者は、経橈骨動脈または経大腿動脈的にアクセスする群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、30日時の重度の冠動脈有害事象(死亡、心筋梗塞、脳卒中)と、最終的な臨床的有害事象とした。後者の定義は、重度の冠動脈有害事象または冠動脈バイパス移植術(CABG)とは関連のない大出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]の出血性合併症重症度分類の3または5型)とした。 2011年10月11日~2014年11月7日までに8,404例が登録され、経橈骨動脈群に4,197例、経大腿動脈群には4,207例が割り付けられた。平均年齢は経橈骨動脈群が65.6歳、経大腿動脈群は65.9歳で、75歳以上はそれぞれ25.4%、26.2%含まれ、男性が74.5%、72.4%を占めた。メタ解析で大出血、冠動脈有害事象、死亡が改善 30日時の重度の冠動脈有害事象の発現率は、経橈骨動脈群が8.8%、経大腿動脈群は10.3%(率比[RR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.74~0.99、p=0.0307)であり、有意な差は認めなかった[α水準が2.5%(p<0.025)の場合に有意差ありと定義]。 最終的な臨床的有害事象の発現率は、経橈骨動脈群が9.8%、経大腿動脈群は11.7%(RR:0.83、95%CI:0.73~0.96、p=0.0092)と、有意差がみられた。この差には、非CABG関連のBARC 3/5型大出血(1.6 vs. 2.3%、RR:0.67、95%CI:0.49~0.92、p=0.0128)および全死因死亡(1.6 vs. 2.2%、RR:0.72、95%CI:0.53~0.99、p=0.0450)の影響が大きかった。 また、既報の試験(RIVAL試験)に本試験のデータを加えてメタ解析を行ったところ、経橈骨動脈アクセスにより大出血(RR:058、95%CI:0.46~0.72、p<0.0001)、重度の冠動脈有害事象(RR:0.86、95%CI:0.77~0.95、p=0.0051)、全死因死亡(RR:0.72、95%CI:0.60~0.88、p=0.0011)が減少したが、心筋梗塞や脳卒中の発症には影響はなかった。 さらに、本試験に関連してコホート内症例対照研究を行ったところ、BARC 2/3型の出血は出血以外の原因による死亡と強く関連した。 著者は、「経橈骨動脈アクセスは、ACS患者に対する侵襲的処置の標準とすべきことが示唆された」と結論付けている。

9025.

ピメクロリムス、乳幼児アトピーの第1選択に?

 アトピー性皮膚炎(AD)は主に乳幼児に発症する。しばしば局所ステロイド薬が処方されるが、副作用に対する懸念のためコンプライアンス不良となることが多く、非ステロイド薬が必要となる。アイスランド大学のBardur Sigurgeirsson氏らは、5年間の長期大規模非盲検試験を行い、ピメクロリムス1%クリーム(PIM、国内未承認)および局所ステロイド薬はいずれも安全で長期治療による免疫系への影響はなく、局所ステロイド薬の使用量を減少させることを示した。著者らは、「PIMは局所ステロイド薬と同程度に有効で、軽~中等症のAD乳幼児に対する第一選択の治療薬となりうることを支持する結果である」とまとめている。Pediatrics誌オンライン版2015年3月23日号の掲載報告。 軽~中等症のAD乳児2,418例を対象に検討した。PIM+増悪時の局所ステロイド薬短期併用(PIM)群(1,205例)または局所ステロイド薬群(1,213例)に無作為化し、5年間治療した。 主要評価項目は安全性とし、副次的評価項目は長期有効性であった。治療成功は、治験責任医師による皮膚症状の重症度の全般評価(Investigator's Global Assessment:IGA)スコアが0(寛解)または1(ほぼ寛解)と定義した。 主な結果は以下のとおり。・PIM群および局所ステロイド薬(TCS)群は、いずれも速やかに効果が発現し、3週までに治療成功率は50%を超えた。・5年後の治療成功率(IGAで評価)は、全体で85%超(PIM群88.7%、TCS群92.3%)、顔で95%(同:96.6%、97.2%)であった。・PIM群ではTCS群と比較し、局所ステロイド薬の使用日数が非常に少なかった(7 vs. 178日)。・有害事象のプロファイルおよび発現頻度は両群で類似しており、液性あるいは細胞性免疫機能障害の所見は認められなかった。

9026.

統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか

 ホルモンの調節不全は、さまざまな精神障害における自殺の危険因子と関連している。甲状腺ホルモンやプロラクチンは、統合失調症の病態生理に影響を及ぼしている。インド・ジャワハルラール医学教育研究大学院研究所のJancy Jose氏らは、統合失調症患者における甲状腺ホルモンとプロラクチンレベルを分析し、疾患の重症度や自殺リスクとの関連を調査した。Clinica chimica acta; international journal of clinical chemistry誌オンライン版2015年2月10日号の報告。 本研究は、統合失調症群38例とコントロール群38例で実施された。全例で、血清甲状腺ホルモンとプロラクチンを測定した。疾患の重症度はPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)を用い、自殺念慮はC-SSRS(コロンビア自殺評価尺度)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症群では、コントロール群と比較して血清プロラクチン(p=0.004)、遊離T4(p=0.029)が有意に高かった。・血清プロラクチンは、PANSS陰性尺度スコアの高さと有意に関連していた(r=0.418、 p=0.008)。PANSS陽性尺度、総合精神病理尺度のスコアとの関連は認められなかった。・甲状腺ホルモンと疾患重症度との関連は認められなかった。・自殺念慮は、遊離T4の高い統合失調症患者でより多くみられたが、プロラクチンレベルとの関連は認められなかった。関連医療ニュース プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か 日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大

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2型糖尿病発症予防とPrecision Medicine(解説:住谷 哲 氏)-334

 日本ではあまり報道されなかったが、本年1月米国のオバマ大統領は一般教書演説においてPrecision Medicineの推進を宣言した1)。Precision Medicineとは、簡単に言えば、個々の患者の遺伝情報、環境因子などの情報に基づいた最適な医療、鍵と鍵穴とがぴったりと符合するような医療である。それに近いものは、わが国で個別化医療、オーダーメイド医療、テーラーメイド医療などとさまざまに呼称されているものが含まれる。本論文においては「有益性に基づいたテーラーメイド治療(benefit based tailored treatment)」と名付けられているが、その意義は2型糖尿病発症予防とPrecision Medicineの文脈において理解する必要がある。 DPP (Diabetes Prevention Program)は、2型糖尿病の発症が生活習慣介入、またはメトホルミン投与により予防可能であることを明らかにした試験である2)。DPPが介入の対象としたのは2型糖尿病発症リスクの高いprediabetesである。約3年の介入期間中に生活習慣介入またはメトホルミン投与により、対照群に比して2型糖尿病の発症相対リスクがそれぞれ58%、31%減少した。著者らはこのデータを用いて、2型糖尿病発症リスク予測モデルを作成した。2型糖尿病発症リスクに関する17の因子から選択してモデルに組み込んだのは、(1)空腹時血糖、(2)HbA1c、(3)中性脂肪、(4)高血糖の家族歴、(5)ウエスト、(6)身長、(7)ウエストヒップ比の7因子である(これらの7因子を使用したノモグラムも原著論文のSupplementに掲載されているので参照されたい)。 このモデルを用いて計算した、個々の患者の2型糖尿病発症の絶対リスク別に患者を低リスク群から高リスク群の4群に分けて、それぞれの群における生活習慣介入、またはメトホルミン投与による2型糖尿病発症の絶対リスク減少を有益性と定義して評価した。その結果、生活習慣介入はすべての群で有益であったが、メトホルミン投与による有益性のほとんどは最高リスク群に限定されていた。リスク予測モデルを用いて個々の患者の絶対リスクを定量化することで、個々の患者の受ける有益性を最大化することが可能であることを明らかにした点で、臨床的意義が大きい。 生活習慣介入がほとんどの患者に対して不利益をもたらさないことは自明であろう。一方、メトホルミンはきわめて有効かつ安全な薬剤であるが、消化器症状などの不利益は皆無ではない。今回のリスク予測モデルを用いることで、メトホルミン投与による2型糖尿病発症予防の現実化に向けて、われわれは一歩前進したといえる。 EBMはランダム化比較試験などで得られたエビデンスを、個々の患者の価値観、病状や周囲の状況を考慮して適用していくプロセスであるが、その際に常に問題になるのがエビデンスの外的妥当性(applicability)である。エビデンスは本質的に“平均的患者”の受ける有益性を示すだけであり、この平均的な有益性を平均的でない眼前の個々の患者に、いかに上手に当てはめていくかが医者の技量(clinical expertise)である。一方で、この“平均的患者”をより眼前の患者に近付ける方向がPrecision Medicineであるといえる。Precision Medicineは患者の遺伝情報に基づく個別化医療を目指しているが、2型糖尿病のようなpolygenic diseaseに対して、遺伝情報がどこまで有効かは現時点で明らかになっていない。さらにDNA解析技術が飛躍的に進歩したとはいえ、日常臨床で簡単に使用できるものでもない。本論文で開発されたリスク予測モデルは、遺伝情報を含まない因子で構成されており、日常臨床において応用可能である。今後は同様の解析がACCORDなどのほかの臨床試験結果にも応用され、さまざまなBenefit Based Tailored Treatmentが可能になるだろう。

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BMS後のDAPT延長、虚血性イベントを抑制せず/JAMA

 米国・クリスト病院心血管センターのDean J. Kereiakes氏らはDAPT無作為化試験(Dual Antiplatelet Therapy Randomized Clinical Trial)の結果、ベアメタルステント(BMS)留置後12ヵ月間のアスピリン+チエノピリジン系薬の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の忍容性を認めた患者について、さらに同療法を18ヵ月間延長しても、ステント塞栓症、主要有害心・脳血管イベント(MACCE)、中等度~重度の出血の発生に関して、プラセボと比較して統計的に有意な差はみられなかったことを報告した。ただし今回の結果について著者は、BMSサブセットの検出力の不足を指摘し、さらなる検討が必要だとまとめている。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。BMS後のDAPT至適期間について、12ヵ月vs. 30ヵ月を検討 薬剤溶出ステント(DES)はBMSと比較して再狭窄を抑制するが、ステント塞栓症や有害心血管イベントの相対的なリスクについては明らかになっていない。また、DES後1年超のDAPTは虚血性イベントを抑制するが、虚血性イベントリスクはBMS後でより低いことが認められている。しかしBMS後のDAPTの至適期間については明らかになっていない。 こうした背景を踏まえて、研究グループは次の2点を比較検討した。(1)BMS留置後アスピリン+チエノピリジン系薬投与の30ヵ月vs. 12ヵ月の、ステント塞栓症およびMACCE(死亡、心筋梗塞または脳卒中の複合)の発生率を比較検討する、(2)事前規定の二次解析としてDESまたはBMS留置治療群に無作為に割り付けられた患者を統合したコホートで、治療期間の影響について比較検討する。 試験は国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照にて、2009年8月に開始された。最終フォローアップは2014年5月。試験は、ステント留置後、出血または虚血性イベントを認めず12ヵ月間のDAPT治療を完了した患者において、30ヵ月時点まで延長してチエノピリジン系薬vs. プラセボの投与を受け比較検討するようデザインされた。 アスピリン治療を受けていた無作為化患者(BMS、DES両留置患者を含む)は1万1,648例であり、そのうち延長期間の12~30ヵ月にチエノピリジン系薬またはプラセボを投与された患者は、BMS群1,687例、DES群9,961例であった。 主要評価項目は、ステント塞栓症、MACCE、中等度~重度の出血だった。延長によるステント塞栓症、MACCE、中等度~重度出血に有意差なし 結果、BMS群1,687例(チエノピリジン系薬延長群842例、プラセボ群845例)において、ステント塞栓症の発生率は、チエノピリジン系薬延長群0.5%(4例)、プラセボ群1.11%(9例)で有意な差はなく(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.15~1.64、p=0.24)、MACCEの発生(4.04%[33例] vs. 4.69%[38例]、HR:0.92、95%CI:0.57~1.47、p=0.72)、また中等度~重度出血の発生(2.03%[16例] vs. 0.90%[7例]、p=0.07)についても有意な差はみられなかった。 無作為化された全患者1万1,648例でみると、ステント塞栓症の発生率は、チエノピリジン系薬延長群0.41%(23例)vs. プラセボ群1.32%(74例)(HR:0.31、95%CI:0.19~0.50、p<0.001)、MACCE発生率は同4.29%(244例)vs. 5.74%(323例)(同:0.73、0.62~0.87、p<0.001)と、いずれもチエノピリジン系薬延長群で有意な抑制がみられた。一方、中等度~重度出血の発生率は2.45%対(135例)vs. 1.47%(80例)(p<0.001)で、チエノピリジン系薬延長群の有意な増大がみられている。

9029.

PCV13、高齢者市中肺炎にも有効/NEJM

 高齢者への13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)接種について、ワクチン型の肺炎球菌性、菌血症性、および非血症性の市中肺炎と、ワクチン型の侵襲性肺炎球菌感染症の予防に有効であることが明らかにされた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのM.J.M. Bonten氏らが、8万4,496例の65歳以上高齢者を対象に行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。PCVワクチンは、新生児において肺炎球菌感染症の予防が認められているが、65歳以上高齢者の肺炎球菌性市中肺炎の有効性は明らかにされていなかった。試験の結果では、あらゆる原因による市中肺炎へのワクチンの有効性は示されなかったが、著者は「ワクチン型の市中肺炎が46%減少しており、高齢者の市中肺炎の減少に寄与すると思われる」とまとめている。NEJM誌2015年3月19日号掲載の報告より。オランダ65歳以上8万4,496例を登録して無作為化二重盲検プラセボ対照試験 試験は2008年9月15日~2010年1月30日にかけて、オランダ国内101地点で65歳以上高齢者を8万4,496例登録して行われた。被験者は1対1の割合で無作為に割り付けられ、4万2,240例がPCV13接種を、4万2,256例がプラセボの接種を受けた。追跡期間は中央値3.97年であった。 PCV13の有効性について、ワクチン型肺炎球菌性市中肺炎、非菌血症性・非侵襲性肺炎球菌性市中肺炎、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の初回エピソードの予防について評価した。市中肺炎とIPDの特定は、標準的なラボ検査と血清型に特異的な尿中抗原検出アッセイにより行った。 追跡期間中に、肺炎またはIPDが疑われ試験協力病院を受診した人は、PCV13群1,552例、プラセボ群1,680例であった。このうち2,842例(88%)は、前年にインフルエンザワクチンの接種を受けていた。ワクチン型株市中肺炎への有効率、per-protocol解析で45.6% ワクチン型株による感染症の初回エピソードのper-protocol解析の結果、市中肺炎発生は、PCV13群49例、プラセボ群90例でワクチンの有効率は45.6%(95.2%信頼区間[CI]:21.8~62.5%)であった。非菌血症性・非侵襲性市中肺炎は、PCV13群33例、プラセボ群60例でワクチン有効率は45.0%(同:14.2~65.3%)、侵襲性肺炎球菌感染症は PCV13群7例、プラセボ群28例でワクチン有効率は75.0%(95%CI:41.4~90.8%)だった。有効性は試験期間中、持続していた。 修正intention-to-treat解析(安全性データを入手できなかった人を除外した8万4,492例)においても、ワクチン型株による感染症の初回エピソードに対するワクチン有効率は同程度であった(それぞれ37.7%、41.1%、75.8%)。 一方、あらゆる原因(非肺炎球菌性と肺炎球菌性を含む)による市中肺炎の初回エピソード発生例は、PCV13群747例、プラセボ群787例で、ワクチン有効率は5.1%(95%CI:-5.1~14.2%)だった。 重篤な有害事象と死亡は、両群で同程度であったが、PCV13群で局所反応が、より多く認められた。

9030.

新薬の投与量はどのように設定されているのか

 フランス・聖マルグリット病院のN. Simon氏らは、新規薬剤の投与量設定におけるファーマコメトリクス分析の応用について概説した。その主旨は、臨床の場で直面しうる、すべての状況での薬剤反応を把握することが重要であり、その手段としてファーマコメトリクス分析が利用可能ということである。具体的には、過剰曝露を避けつつ最大限の効果を達成する投与量の決定に、薬物動態(PK)モデリング、薬力学(PD)モデリング、そしてPK-PDモデルリングというステップを踏み、最終的にモンテカルロ・シミュレーションを実施して最適な投与量が決定されるという。Encephale誌オンライン版2015年3月9日号の掲載報告。 新規に開発した薬剤の市場への導入許可を求めている(医薬品販売承認申請)製薬会社には、特定の報告を行うためさまざまな研究の実施が求められる。しかしながら、臨床の場で直面しうるすべての状況での薬剤反応を把握するためには、結果をいかに利用するかが重要である。そこで、これらのデータ開発がファーマコメトリクス分析によって現在進行中である。ファーマコメトリクスとは、経時的な薬剤曝露および薬剤反応の数量化を目的としたもので、メソッド("population approach"と呼ばれている)は、非線形混合効果モデルひいては数学的モデルによる同定に基づくものだという。 具体的な手段は以下のとおり。・第1段階では、患者の生理病理学的特性を統合し、経時的濃度における変動をモデル化する。この段階では、ベイズ分析が個人間変動に関する因子の特定・選択に不可欠である。このPKモデリングにより各患者に処方すべき投与量と曝露量を把握できる。・第2段階は、曝露と効果の関係を明確化する、すなわちPDモデリングである。精神医学領域では、経時的な受容体の占有率あるいは臨床スコア(BPRS、PANSSなど)が薬剤反応を反映することになる。・PK-PDモデルでは、目標曝露量、つまり、過剰曝露を避けつつ最大限の効果を達成するために必要な濃度値を決定する。・最終的には、さまざまな投与量に対する期待反応をテストし、投与量に関する合理的数値の選択を促すモンテカルロ・シミュレーションが実施されることになる。・アリピプラゾールのように、当初開発された経口剤から持効性注射剤を開発する過程での評価は、同様のプロトコルに従って実施可能である。実際、アリピプラゾール1日10~30mgの治療域はこのようにして特定された。・本モデルはアリピプラゾールのすべての変動因子(薬物相互作用およびチトクロームP450 2D6の遺伝子多型)を組み込んでおり、持続性注射剤という剤形によって、1ヵ月に1回400mgの投与量で90%の患者が治療域を達成できた。・薬剤阻害または代謝速度(あるいはその両方)が遅い場合には、投与量の調整が必要である。関連医療ニュース 抗精神病薬の用量決定時、精神科医が望むことは SSRIの薬物治療モニタリング、実施率は 認知症への新規抗精神病薬、有害事象のモニタリングが不十分  担当者へのご意見箱はこちら

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自動車同士の事故よりも、電車と衝突した自動車事故のほうが重度【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第40回

自動車同士の事故よりも、電車と衝突した自動車事故のほうが重度 >足成より使用 「そりゃそうだろう」とお思いの方も多いと思います。そりゃ誰がみても当たり前ですが、当たり前のことを医学論文にしている研究ってそうそうないんです。 Kligman MD, et al. Railway train versus motor vehicle collisions: a comparative study of injury severity and patterns. J Trauma. 1999 ; 47: 928-931. この論文は、電車と自動車の衝突事故と、自動車と自動車の衝突事故とを比較した世にも不思議な研究です。1991年1月から1998年5月まで、アメリカのとある外傷センターで症例を集め、74人の電車と衝突した自動車事故、1,931人の自動車同士の衝突事故の連続患者を登録しました。解析の結果、自動車-自動車事故と比較して、電車-自動車事故では男性の受傷者が多くみられました(72% vs. 54%)。また、電車-自動車事故のほうが死亡率は高く(15% vs. 7%)、外傷重症度スコアも高い(中央値 20点 vs. 9点)という結果でした。当然、電車のような重量級の乗り物が衝突するわけですから、自動車を運転している人の重症度や死亡率が高くなるのは当然だと思います。電車-自動車事故の場合、高い確率で頭部・顔面の裂創、頭蓋内出血、血胸、気胸、肋骨・胸骨骨折、上肢骨折、頭蓋骨骨折、肺挫傷、脾臓・腎臓損傷などが多くみられました。外傷重症度スコアの差によって補正した場合、これらのうち電車-自動車事故で有意に多かったのは頭部・顔面の裂創でした。また電車-自動車事故の場合、その重症度を反映して入院期間が長くなりました(7.5日 vs. 4日)。今回紹介した論文では、電車-自動車事故のほうが自動車‐自動車事故よりも重度であるという結果でした。日本の場合、踏切内の停止が最も事故を起こしやすい状況だと思いますので、踏切の警報機がカンカンと鳴り始めたら侵入しないように気を付けなければなりませんね。インデックスページへ戻る

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Vol. 3 No. 3 大動脈弁狭窄症患者の特徴

有田 武史 氏九州大学病院ハートセンター内科はじめに大動脈弁狭窄症(AS)患者が増えている。大動脈弁狭窄はリウマチ性のものと加齢変性によるものの2つの原因によるものがほとんどである。リウマチ性弁膜症の新規発症症例は激減しており、大部分は加齢変性によるものである。加えて近年の診断技術の評価、ならびに診断基準の変化(進化)が新規ASの診断数を増やしている。本稿では近年の日本におけるAS患者の特徴につき概説を行う。AS患者の背景ASは加齢とともに増加し、平均年齢は明らかに他の弁膜症よりも高齢である。75歳以上の患者9,723人をメタ解析した報告によれば、75歳以上の3.4%に重症ASが認められた1)。また解析数は少ないが、日本からの報告では、重症ASの平均年齢は78.4歳であり、85 歳以上が10%に認められた2)。大動脈弁閉鎖不全や僧房弁閉鎖不全は弁尖の逸脱や弁尖変性などが原因のほとんどであるのに対して、加齢変性によるASは弁の基部から石灰化を中心とした弁変性が進行し弁全体の硬化につながるのが特徴的である。弁交連部が癒合しあたかも二尖弁のように見えることもあるが、基本的には先天性二尖弁のrapheと異なり交連癒合そのものはそれほど強くない。弁の硬化のメカニズムについては、従来より骨代謝の観点、動脈硬化の観点、炎症の観点などから研究されてきた。確かに大動脈弁の大動脈側は血管内皮に被覆されており、高齢者に多く認められる病態であることから、大動脈弁狭窄は動脈硬化または血行動態的に負荷を受け続けた“なれの果て”のようにいわれることもある。しかしながら近年の報告では、大動脈弁硬化症から狭窄症への進展には石灰化と骨化のメカニズムが深く関与しており、能動的な炎症のプロセスが関与していることがわかってきている3)。骨粗鬆症、大動脈弁狭窄、動脈硬化は、脂肪沈着をはじめ多くの共通のプロセスをもつ(本誌p.9図1を参照)4)。しかしながら、動脈硬化を進展抑制または退行させることが証明されているスタチン製剤やアンギオテンシン阻害薬は、大動脈弁狭窄の進行を抑制することはできなかったことがいくつかの研究より明らかになっている。同様に、骨粗鬆症の薬もASの進行を抑制するまでには至らなかった。近年、骨化のメカニズムに炎症が関与しているとの研究が多くなされ、抗炎症薬(例えば低用量メトトレキサート)のASの進行抑制に対する効果を検証する研究も行われている5)。透析患者においてASは高率に認められる。透析患者においては副甲状腺機能亢進症を続発的に認めることが多く、カルシウムおよびリンの代謝の変調が弁硬化/弁狭窄をもたらすことは容易に理解できる。しかしながら、続発性副甲状腺機能亢進症の治療薬で透析患者におけるASの進展を抑制したというエビデンスはない。このように硬化性ASの病態は炎症・動脈硬化・石灰化・骨化のメカニズムが複合的に関与している。単純に“動脈硬化のなれの果て”ではないことをよく理解し、診療にあたることが肝要である。心エコーによる診断ASの診断は、いまではもっぱらドプラーエコーを用いた連続の式により弁口面積ならびに弁前後の圧較差を求めることで診断する。面積では弁口面積1.0cm2以下または体表面積補正弁口面積0.6cm/m2以下を重症とし、圧較差では平均圧較差で40mmHg以上を重症とする。重症度という意味ではこの二変数のみで評価することは可能であるが、弁の形態・機能、左室の形態・機能という観点からはいくらかの多様性がある。1. 弁硬化のパターン通常、硬化性ASの大動脈弁の病変は交連部ではなく弁尖の基部または底部から始まる。NCCには冠動脈開口部がなく、そのためNCCにはよりずり応力がかかることから石灰化が進みやすいとされる4)。一般的にはリウマチ性ASでは交連部癒着が高度であり、硬化性ASでは交連部は変性がみられるのみで癒合に乏しい(本誌p.10図2を参照)6)。後天性二尖弁と俗に呼ばれる交連部が癒着した三尖大動脈弁狭窄も散見されるが、rapheの高さによって先天性二尖弁とは区別される(先天性は弁尖縁の高さよりもrapheが低い)7)。後天性二尖弁の原因は以前はリウマチ性が多いとされてきたが、硬化性ASにおいても可動性がほとんどないために癒合しているように見えるものもあり注意が必要である。2. 左室の形態・機能大動脈弁位で圧較差があるため、左室にとっての後負荷は甚大なものとなり、通常左室は求心性左室肥大を呈することが多い。しかしながらMRIを用いたDweckらの報告によれば、ASを有する左室では左室肥大を呈さないまま左室内腔の狭小化した、いわゆる求心性リモデリングした左室もしばしば認められる。Dweckらによれば、左室肥大の程度は大動脈弁弁口面積とは関係なく、求心性肥大のほかにも正常形態(12%)、求心性リモデリング(12%)、非代償化(11%)などが認められたという(本誌p.11図3を参照)8)。重症ASでなぜ左室肥大が起こらないのか、機序についてはまだ確立したものはないが、左室重量は大動脈弁狭窄の重症度とは関係がなく、むしろ性別や高血圧の程度、その他の弁機能異常などと関係が強く、また症状との関係が強いことが他の研究でも示唆されている。正常の重症ASに関しては、左室重量が治療法選択の面でも注意が必要である。low gradient ASはASなのか?Doppler法による弁口面積測定が一般的になるにつれ面積としては十分に狭いが圧較差がそれほどでもないという症例をしばしば経験するようになった。近年では重症AS(AVAi<0.6cm2/m2)をflowとpressure gradientの2変数によって4群に分けることで層別化を図ろうとする考えがある。Lance-llottiらは、無症候性重症ASを4群に分けてフォローし、low flow, low gradient ASが最も予後が悪く、次にいずれかのhigh gradient ASがつづき、normal flow, low gradient ASは比較的予後がよいという報告を行った(本誌p.12 図4を参照)9)。Flowはvelocity x areaであり、gradientとvelocityは二乗比例の関係にある。よってflowとgradientが乖離するような症例はareaが小さい、すなわち左室流出路が小さい症例ということになる。おそらくはそのような症例はS字状中隔の症例が多く、体格が小さく、弁輪部の石灰化も高度で測定の誤差もあるのかもしれないが、現象論としてnormal flow, low gradientのASは全例が予後不良ではないかもしれない、という認識をもつことが重要である。超高齢者のASの問題点:Frailtyの評価と老年医学的評価の重要性近年、TAVIを治療法の1つとして日常的に検討するようになり、超高齢者(85歳以上)を診察治療することが多くなってきた。上述のように弁口面積や左室機能形態を評価することはもちろん重要であるが高齢者はさまざまな身体的問題を抱えているのが普通である。認知機能障害、ふらつき、運動機能障害、栄養障害など、それらを総称して老年症候群と呼ぶが、老年症候群の1つとしてfrailty(虚弱、フレイル)が年齢とは独立した予後規定因子として近年広く認識されるようになった。Frailtyの特徴は(1)力が弱くなること、(2)倦怠感や日常動作がおっくうになること、(3)活動性が低下すること、(4)歩くのが遅くなること、(5)体重が減少すること、の5つに集約され、このうち3つ以上該当すればfrailtyありと考える10)。日本の介護保険制度との関連で考えると、frailtyありの状態(“フレイルの状態”)は要介護の前段階であり、この兆候を早期に診断し、介入することは極めて重要であると思われる。残念ながら、多くの病院勤務循環器内科医は専門医に過ぎず、治療適応外と判断された多くの高齢者に対して、人生の終わりまで寄り添うような診療はできていないのが実情であると思われる。または、外科手術の適応と判断したときから心臓外科にすべてを委ねてはいなかったか。今後TAVIが日常的な医療行為になるにつれ、循環器病棟は高齢者で溢れてくることが容易に予想される。平均寿命を優に超えてしまった患者に対して行う医療は、何を目的とすべきだろうか。予後の改善であろうか、QOLの改善であろうか。大動脈弁狭窄を解除することだけが治療の目的でないことは明白である。TAVIを施行するにあたっては、弁の状態、心血管機能の評価、他臓器の評価、老年医学的全身評価の4段階にわたる評価が重要である。そのうえで、TAVIの目的をどこに置くかということに関しては個々の症例により判断が異なるため、多職種から構成されるハートチームでの議論が必要不可欠である。文献1)Osnabrugge RL et al. Aortic stenosis in the elderly: disease prevalence and number of candidates for transcatheter aortic valve replacement: a meta-analysis and modeling study. J Am Coll Cardiol 2013; 62: 1002-1012.2)Ohno M et al. Current state of symptomatic aortic valve stenosis in the Japanese elderly. Circ J 2011; 75: 2474-2481.3)Lindman BR et al. Current management of calcific aortic stenosis. Circ Res 2013; 113: 223-237.4)Dweck MR et al. Calcific aortic stenosis: a disease of the valve and the myocardium. J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1854-1863.5)Everett BM et al. Rationale and design of the Cardiovascular Inflammation Reduction Trial: a test of the inflammatory hypothesis of atherothrombosis. Am Heart J 2013; 166: 199-207 e15.6)Baumgartner H et al. Echocardiographic assessment of valve stenosis: EAE/ASE recommendations for clinical practice. J Am Soc Echocardiogr 2009; 22: 1-23; quiz 101-102.7)Cardella JF et al. Association of the acquired bicuspid aortic valve with rheumatic disease of atrioventricular valves. Am J Cardiol 1989; 63: 876-877.8)Dweck MR et al. Left ventricular remodeling and hypertrophy in patients with aortic stenosis: insights from cardiovascular magnetic resonance. J Cardiovasc Magn Reson 2012; 14: 50.9)Lancellotti P et al. Clinical outcome in asymptomatic severe aortic stenosis: insights from the new proposed aortic stenosis grading classification. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 235-243.10)Fried LP et al. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56: M146-156.

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ペルフェナジン、他の抗精神病薬との違いは

 ペルフェナジンはハロペリドール同様、古典的なフェノチアジン系抗精神病薬で、長年にわたり使用されており、北部ヨーロッパおよび日本での使用頻度が高い。ドイツ・デュッセルドルフ大学のBenno Hartung氏らは、統合失調症患者に昔から使用されているペルフェナジンの有効性と安全性を明らかにするため、これまでの研究をレビューした。その結果、検討した試験はすべて非常に質の低いエビデンスであったが、ペルフェナジンが他の抗精神病薬と同様の有効性と安全性を示すことを報告した。そのうえで、安価で使用頻度の高いペルフェナジンの特性を明確にする、さらなる研究の必要性を指摘した。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年3月6日号の掲載報告。 研究グループは、ペルフェナジンの統合失調症患者および統合失調症様障害患者に対する臨床的効果および安全性を検討した。オリジナル検索をCochrane Schizophrenia Group's register(2013年9月)を用いて、参考文献とともにアップデートし、さらなる試験を得るため製薬会社や包含した試験の著者に問い合わせを行った。試験の選択基準は、統合失調症や統合失調症様障害(あるいはその両方)患者に対する治療として、ペルフェナジンを他の治療法と比較検討しているすべての無作為化対照試験とした。ペルフェナジンのデポ剤による治験は除外した。 主な結果は以下のとおり。・31件の研究が選択基準を満たし、対象患者は計4,662例(うち4,522例は研究グループが実施した比較試験に関連する薬剤を使用)であり、少なくとも1つの比較に関する使用可能なデータを提示した。・試験実施機関はヨーロッパ(とくにスカンジナビア)、日本、北アメリカに位置していた。・ペルフェナジンとプラセボとの比較において、主要アウトカムである臨床反応に関して、ペルフェナジン群がより良好の結果を示した。プラセボ群のほうが、全身状態に関して「良好ではない、または増悪した」患者が有意に多かった(RCT 1件、61例、RR:0.32、95%CI:0.13~0.78、エビデンスの質は非常に低い)。・再発はプラセボ群がより多かったが、統計的に有意ではなかった(RCT 1件、48例、RR:0.14、95%CI:0.02~1.07、エビデンスの質は非常に低い)。・ペルフェナジンとプラセボの比較試験において、死亡例の報告はなかった。・ジストニアの発現において、明確な群間差は示されなかった(RCT 1件、48例、RR:1.00、95%CI:0.07~15.08、エビデンスの質は非常に低い)。なお、今回の比較試験では、重篤な有害事象、経済的アウトカム、サービス利用や入院などのアウトカムは報告されていなかった。・ペルフェナジンと他の抗精神病薬との比較において、薬剤間に事実上の有効性の違いは認められなかった。・「良好ではない、または増悪した」と考えられた患者に関して、群間の有意差は認められなかった(RCT 17件、1,879例、RR:1.04、95%CI:0.91~1.17、エビデンスの質は非常に低い)。・精神状態のアウトカムについて、試験薬剤による「効果なし」との判定に関しても群間差は認められなかった(RCT 4件、383例、RR:1.24、95%CI:0.61~2.52、エビデンスの質は非常に低い)。・分析に含んだ試験すべてにおいて、死亡例の報告はなかった。・ペルフェナジンと他の抗精神病薬とにおいて、ジストニア発現率に有意差はなく(RCT 4件、416例、RR:1.36、95%CI:0.23~8.16、非常に質の低いエビデンス)、重篤な有害事象に関しても有意差は認められなかった(RCT 2件、1,760例、RR:0.98、95%CI:0.68~1.41、エビデンスの質は非常に低い)。 レビューの結果を踏まえて著者らは、「50年以上にわたり、ペルフェナジンは無作為化試験の対象薬とされてきたが、試験報告は不十分であり、使用された比較対照薬が多彩で、明確な結論を導けずにいた。今回のレビューにおいて、主要アウトカムに関するデータはすべて非常に質の低いエビデンスであった。したがって言えることは、ペルフェナジンは他の抗精神病薬と同様の有効性と有害事象を示したということだけである。ペルフェナジンは安価で、使用頻度の高い製剤であり、さらなる研究を行い、この古典的な抗精神病薬の特性を明確にする必要がある」とまとめている。関連医療ニュース いま一度、ハロペリドールを評価する スルピリドをいま一度評価する フルフェナジンデポをレビューする  担当者へのご意見箱はこちら

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PMS RegistryにおけるTAVRの1年成績(解説:許 俊鋭 氏)-330

 RCTの結果とreal-worldの結果では、新規デバイス治療において患者対象も治療成績も異なる可能性がある。米国でのTAVRの30日生存と1年生存成績を最新のものに更新する目的で、STS/ACC Transcatheter Valve Therapies RegistryとCMS診療報酬請求データをリンクさせ、2011年9月~2013年6月までの米国299病院、1万2,182症例を1年間経過観察した。 死亡率、脳卒中、再入院を含む治療成績を多変量解析した。平均年齢84歳、女性52%、STS PROM score 7.1%、自宅退院59.8%、30日死亡率7.0%(n=847 deaths)であった。1年間に24.4%(n=2,074)が1回再入院、12.5%(n=1,525)が2回再入院した。1年死亡率23.7%(n=2,450 deaths)、脳卒中率4.1%(n=455 stroke events)であり、1年死亡率に有意に関係した因子は、高齢(95歳以上vs. 75歳未満 hazard ratio [HR]:1.61、85~94歳vs. 75歳未満HR:1.35、75~84歳vs. 75歳未満HR:1.23)、男性(HR:1.21)、末期腎不全(HR:1.66)、COPD(HR:1.39)、心尖部アプローチ(HR:1.37)、STS PROM score 15%超vs. 8%未満(HR:1.82)、周術期Af/AF(HR:1.37)、脳卒中(男性vs. 女性 HR:1.40)であった。 米国の市販後のTAVRの成績における1年時点の死亡と脳卒中の結合発生率は26%であり、こうしたreal-worldのデータをこれからの患者選択の資料とすべきと結論した。 2010年に発表されたPARTNER trial(Smith CR, et al. N Engl J Med. 2011;364:2187-2198.)のコホートAは、TAVRとSAVRのRCTである。PARTNER trialのTAVR群の1年後の治療成績を本報告と比較してみると、検討対象の平均年齢(83.6歳vs. 84歳)はほぼ同等であるが、PARTNERで男性比率(57.8%vs. 48%)が高く、STSスコア(11.8vs. 7.1)は本報告よりPARTNERでかなり高い母集団を対象としていた。PARTNERのTAVR群の結果は、1年死亡率(24.2%vs. 23.7%)、重大な脳卒中発症率(5.1%vs. 4.1%)共に、本報告よりやや高率であったに過ぎず、PARTNER trialのSTSスコアの高さを考慮した場合、この米国の市販後のTAVRの治療成績はPARTNERのTAVR群の治療成績より、同等あるいはやや劣る可能性がある。 ただし、RCTは多くの場合、当該治療領域で卓越した診療技術を持つ施設が選択されることから、市販後の成績がRCTと常に同等になるとは限らない。しかし、Learning curveの時期が過ぎれば手技の習熟度に応じて治療成績が改善されていくであろうし、さらに、デバイスの改良により一般的には治療成績は向上していくものと考えられている。今後のPMS Registry報告に期待したい。

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オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか

 統合失調症患者では、抗精神病薬で誘発される代謝異常の頻度が高い。そして、そのために心血管疾患を生じやすい。このことを念頭に、インド・スリナガル医科大学のRayees Ahmad Wani氏らは、オランザピンでメタボリックシンドロームを発症した安定期統合失調症患者における、アリピプラゾール切り替え後のさまざまな代謝パラメータへの影響を、非盲検試験で調査した。Neuropsychiatric disease and treatment誌オンライン版2015年3月13日号の報告。 対象は、オランザピンで安定しており、NCEP ATP III(National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III)の基準でメタボリックシンドロームを発症した統合失調症患者62例。対象患者は、アリピプラゾール切り替え群とオランザピン継続群に1:1で無作為に割り付けられた。アリピプラゾール切り替え群は、1ヵ月にわたる漸減漸増にて切り替えを行った。代謝パラメータは、ベースラインおよび試験開始8週および24週時点で評価した。有効性は、ベースラインおよび24週目におけるPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)、ベースラインのCGI-S(臨床全般印象・重症度尺度)と24週時点のCGI-I(臨床全般印象・改善度尺度)にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・メタボリックシンドロームのすべてのパラメータ(腹囲、血圧、トリグリセリド値、空腹時血糖値、HDLコレステロール)は、アリピプラゾール切り替え群の継続的な改善と比較して、オランザピン継続群では悪化したままであった。・研究終了時点で、NCEP-ATP-III基準を満たすメタボリックシンドロームを有する患者の割合は、オランザピン継続群100%(26例)、アリピプラゾール切り替え群42.8%(15例)であった。・PANSS総スコアやCGI-Iスコアで示された精神病理学的変化は、両群間で統計学的に有意な差は認められなかった。・本結果から、代謝異常が認められるオランザピン使用中の安定期統合失調症患者では、アリピプラゾールへ漸減漸増で切り替えることにより、有効性を維持したまま、代謝異常を改善できることが示唆された。関連医療ニュース 本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか 抗精神病薬の代謝への影響、男性でとくに注意 オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学

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PROTECT AF試験:経皮的左心耳閉鎖術~心房細動患者が抗凝固療法を中止できる日は本当に来るのか(解説:矢崎 義直 氏)-329

 PROTECT AF試験は、非弁膜症性心房細動に対する経皮的左心耳閉鎖術の有効性および安全性をワルファリン療法と比較した非盲検無作為化試験である。 経皮的左心耳閉鎖術とは、血栓の好発部位である左心耳の入口部に傘状のWATCHMANデバイス(Boston Scientific社製)を挿入し、左心耳を閉塞させ血栓形成を予防する方法である。心房細動患者に対する抗凝固療法の中止が期待できるのは、カテーテルアブレーションでの根治以外に、この左心耳閉鎖術が有力である。本試験の観察期間18ヵ月および2.3年の結果はすでに報告されているが、今回は3.8年と長期成績の報告である。 ワルファリン投与群のTTR(Time in Therapeutic Range)は70%であり、比較的良好な凝固コントロール群との比較である。左心耳閉鎖術は、ワルファリンと比較して、主要エンドポイントである複合イベント(脳卒中、全身性塞栓症、心血管死)について、非劣性であり全死亡を有意に抑制させた。 左心耳閉鎖術は、ワルファリン療法と同等以上の効果と安全性が示されたわけであるが、当然、NOACs(新規経口抗凝固薬)との比較が気になるところである。本試験の対象は707例であり、1万例を超えるNOACsの大規模臨床試験と直接の比較はできないが、それぞれのデータを見比べてみる。 本試験のCHADS2スコアは平均2.2とRELY試験(ダビガトラン)やARISTOTLE試験(アピキサバン)と類似する。複合イベント発生は有意に低下させたが、ワルファリン群と比べて虚血性脳卒中に差がついていない点は、RELY試験におけるダビガトラン300mg投与群を除くすべてのNOACsの試験と同様の傾向である。出血性脳卒中や心血管死、全死亡は低く、これらがエンドポイントに影響している可能性があり、これも他の試験と類似している。それぞれの試験デザイン、解析方法も違うが、効果に関してはNOACsと同等という印象である。 安全性の複合エンドポイント(頭蓋内出血、輸血を要する出血、LAA閉鎖術群では手技に関連する出血)の発生率は、左心耳閉鎖術はワルファリン群と同等となっているが、2つの点で改善の余地がある。まずは、左心耳閉鎖術はある程度のラーニングカーブが必要であり、手技の習得システムの確立と症例の経験により、周術期の出血の合併症を減らす事ができる。 もう1つ複合イベントの多くを占めているのが、術後の大出血である。デバイス挿入後の抗血栓療法は、ワルファリンとアスピリンの併用となる。動物実験の結果を基に、デバイスが内皮化するとされる術後45日頃に、経食道エコーで左心耳からのリークがなければワルファリンを中止する。代わりにクロピドグレルを追加し、半年間は抗血小板薬2剤となる。半年以降はアスピリン単剤となる。もとよりこのデバイスは出血のハイリスク症例が適応となるため、術後半年の抗血栓薬の併用療法が、大出血の要因となりかねない。小規模な試験ではあるが、術後の抗血栓療法なしの安全性も報告されており、今後のエビデンスの構築が望まれる。 また、本試験の対象はCHADS2スコアが比較的低く、発作性心房細動が43%も含まれており、このような症例にはアブレーションによる根治、抗凝固療法の中止が期待できるわけである。今後、より心耳閉鎖術の適応となるであろうROCKET AF試験(リバーロキサバン)のようなCHADS2スコアの高い、根治が困難な永続性心房細動を対象とした比較試験が必要と考える。さらには、本試験の症例は9割が白人であることには留意すべきで、とくに凝固能には人種間の差があるため、日本人独自の臨床試験が必要である。 WATCHMANデバイスによる左心耳閉鎖術が、つい先日(2015年3月13日)FDAにより承認されたので、近い将来この技術が日本にも入ってくる。デバイス挿入のサポートには経食道心エコーの技術が必須であり、当然全身麻酔も必要となる。日本のカテーテル検査室の現状を考えると、このデバイスを導入するにはいくつかのハードルを越えなければいけないが、抗凝固療法を中止できるのは非常に魅力的であり、脳梗塞予防における治療の選択肢の1つとして期待される。

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慢性創傷には遠隔医療による専門家のアドバイスが有用

 慢性創傷の管理はますます大きな問題となってきており、遠隔医療が効果的なアプローチとして広く認められている。これまで創傷管理における遠隔医療の臨床効果に関するエビデンスはなかったが、デンマーク・コペンハーゲン大学のKian Zarchi氏らは、前向き集団無作為化試験を行い、慢性創傷の管理の改善には、訪問看護師を創傷の専門家チームとつなげる遠隔医療の使用が有用であることを報告した。Journal of Investigative Dermatology誌2015年3月号(オンライン版2014年10月7日号)の掲載報告。 選択基準を満たした在宅ケアの慢性創傷患者90例を遠隔医療群50例、従来治療群40例に分け、1年間追跡した。褥瘡、手術創およびがん創傷の患者は除外された。 主な結果は以下のとおり。・1年後において、完全創傷治癒は遠隔医療群で35例(70%)に認められたのに対し、従来治療群は18例(45%)であった。・遠隔医療を介して創傷治癒に関するアドバイスを提供することは、従来治療と比較して治癒の有意な増加と関連した。・遠隔医療 vs 従来治療の調整済みハザード比は2.19(95%信頼区間:1.15~4.17、p=0.017)であった。

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PROMISE試験:冠動脈疾患に対する解剖的評価と機能評価検査の予後比較(解説:近森 大志郎 氏)-328

 安定した胸部症状を主訴とする患者に対する診断アプローチとして、まず非侵襲的検査によって冠動脈疾患を鑑別することが重要である。従来は運動負荷心電図が日常診療で用いられてきたが、その後、負荷心筋シンチグラフィ(SPECT)検査、負荷心エコー図検査が臨床に応用され、近年では冠動脈CT(CTCA)も広く実施されるようになっている。しかしながら、これらの検査の中でいずれを用いればよいか、という検査アプローチを実証する大規模臨床試験は実施されてはいなかった。 今回、San Diegoで開催された米国心臓病学会(ACC.15)のLate-Breaking Clinical Trialsの先頭を切って、上記に関するPROMISE試験が報告され、同時にNew England Journal of Medicine誌の電子版に掲載された。なお、ACCで発表される大規模臨床試験の質の高さには定評があり、NEJM誌に掲載される比率では同じ循環器分野のAHA、ESCを凌いでいる。 Duke大学のPamela Douglas氏らは、従来の生理機能を評価する運動負荷心電図・負荷心筋SPECT・負荷心エコー図に対して、冠動脈の解剖学的評価法であるCTCAの有効性を比較するために、有症状で冠動脈疾患が疑われる10,003例を無作為に2群(CTCA群対機能評価群)に割り付けた。試験のエンドポイントは従来のほとんどの研究で用いられた冠動脈疾患の診断精度ではなく、全死亡・心筋梗塞・不安定狭心症による入院・検査による重大合併症からなる、複合エンドポイントとしての心血管事故が設定されている。対象症例の平均年齢は61歳で、女性が52~53%と多く、高血圧65%、糖尿病21%、脂質異常症67%という冠危険因子の頻度であった。なお、症状として胸痛を訴えてはいるが、狭心症としては非典型的胸痛が78%と高率であることは銘記すべきであろう。 実際に機能評価群で実施された非侵襲的検査については、負荷心筋SPECT検査67.5%、負荷心エコー図22.4%、運動負荷心電図10.2%、と核医学検査の比率が高かった。また、負荷心電図以外での負荷方法については、薬剤負荷が29.4%と低率であった。そして、これらの検査法に基づいて冠動脈疾患が陽性と診断されたのは、CTCA群で10.7%、生理機能評価群では11.7%であった。3ヵ月以内に侵襲的心臓カテーテル検査が実施されたのはCTCA群で12.2%、生理機能検査群では8.1%であった。この中で、有意狭窄病変を認めなかったのはCTCA群で27.9%、生理機能検査群で52.5%であったため、全体からの比率では3.4%対4.3%となりCTCA群で偽陽性率が低いといえる(p=0.02)。なお、3ヵ月以内に冠血行再建術が実施されたのはCTCA群で6.2%と、生理機能検査群の3.2%よりも有意に高率であった(p<0.001)。 1次エンドポイントである予後に影響する内科的治療ついては、β遮断薬が25%の症例で使用されており、RAS系阻害薬・スタチン・アスピリンについても各々約45%の症例で投与されていた。そして、中央値25ヵ月の経過観察中の心血管事故発生率についてはCTCA群で3.3%、生理機能評価群では3.0%と有意差を認めなかった。 本研究は循環器疾患の治療法ではなく、冠動脈疾患に対する検査アプローチが予後に及ぼす影響から検査法の妥当性を評価するという、従来の臨床試験ではあまり用いられていない斬新な研究デザインを用いている。そして、1万例に及ぶ大規模な臨床試験データを収集することによって、日常臨床に直結する重要な結果を示したという意味で特筆に値する。 しかしながら、基本的にはnegative dataである研究結果の受け止め方については、同じDuke大学の研究チームでも異なっていた。ACCの発表に際してDouglas氏は、PROMISE試験の結果に基づき、狭心症が疑われる患者に対して、CTCAはクラスIの適応となるようにガイドラインが修正されるエビデンスであることを主張していた。これに対して、PROMISE試験の経済的評価を発表したDaniel Mark氏は、イギリスの伝説である「アーサー王物語」を引き合いに出して、CTCAは長年探し求めていたHoly Grail(聖杯)ではなかった、と落胆を隠さなかった。 循環器の臨床において、対象とする患者の冠動脈病変の情報があれば、最適な医療が実施できるという考え方は根強い。しかし、PROMISE試験が準備された時期には、狭心症の生理機能として重要な心筋虚血が、予後改善の指標として重要であることを実証したFAME試験が報告されている。その後、FAME 2試験においても同様の結果が報告されている。さらに、重症心筋虚血患者に対する介入治療の有無により予後の改善が実証されるか否かについて、ISCHEMIA試験という大規模試験が進行中である。今後はこれらの大規模試験の結果を評価することによって、冠動脈疾患の治療目標は「解剖か、虚血か」という議論に決着がつくかもしれない。それまでは、日常臨床において狭心症が疑われる患者に対しては、まず本試験の対象群の特徴を十分に把握したうえで、CTCAあるいは生理機能検査を実施する必要があると思われる。

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統合失調症へのECT、アジア諸国での実態調査

 2001~2009年のアジア人統合失調症患者に対する電気痙攣療法(ECT)の使用について、中国・澳門大学のYu-Tao Xiang氏らは調査を行った。その結果、過去10年間で中国において使用が増大していた一方、その他アジアの国および地域では低調に推移していた実態を報告した。結果について著者は、「アジアにおけるこの使用のばらつきの原因について、さらなる調査を行う必要がある」とまとめている。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2015年2月23日号の掲載報告。 アジア人統合失調症入院患者に対するECTの使用については、ほとんど明らかになっていない。研究グループは、2001~2009年間における使用の傾向と、人口統計学的および臨床的な相関があるか調べた。調査はアジアの9つの国と地域から、1ヵ月間のインタビューもしくはカルテレビューによって6,761例の統合失調症入院患者のデータを集めて行われた。患者の社会-人口統計学的および臨床的特性、処方されていた向精神薬、ECT使用について、標準化プロトコルおよびデータ収集法により記録して分析した。 主な結果は以下のとおり。・ECT使用率は、全サンプル中3.3%であった。・2001年は1.8%、2004年は3.3%、2009年は4.9%と有意に増大していた(p<0.0001)。・しかし、そうした増大傾向は、もっぱら中国におけるECT使用頻度の有意な増大(p<0.0001)と2009年時にサーベイに含まれたインドの使用頻度データの影響によるものであった。・国家間のばらつきが大きく、たとえば2001年は香港0%から中国5.9%、2004年はシンガポール0%から中国11.1%、2009年は香港0%に対し、インド13.8%、中国15.2%であった。・全サンプルの多変量ロジスティックス回帰分析の結果、ECTを受けた患者は非ECT患者と比べて、35~64歳群では少ないこと、直近の入院期間が短く陰性症状が少ないこと、第2世代抗精神病薬治療を受けている人が多い傾向が判明した(R2=0.264、p<0.001)。関連医療ニュース ECTが適応となる統合失調症患者は? 電気けいれん療法での麻酔薬使用、残された課題は? うつ病治療に対する、電気けいれん療法 vs 磁気けいれん療法  担当者へのご意見箱はこちら

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ざ瘡へのスピロノラクトン 高カリウム血症は心配なし?

 ホルモン作用に起因するざ瘡に対して、スピロノラクトンを健康な若年女性に投与したところ、高カリウム血症は増加しなかったことが、米国ハーバード大学ブリガム&ウィメンズ病院のMolly Plovanich氏らにより報告された。JAMA Dermatology誌2015年3月22日号の掲載報告。 スピロノラクトンは、ホルモン作用に起因するざ瘡の治療オプションとして用いられている(本邦適応外)。本剤投与による高カリウム血症の可能性が示唆されているが、これまで健康な若年女性において、ざ瘡治療を目的としたスピロノラクトンによる高カリウム血症の有病率は不明であった。そこでPlovanich氏らは、ざ瘡またはざ瘡を伴う内分泌異常を有する健康な若年女性において、スピロノラクトン服用による高カリウム血症の有病率を明らかにするため、調査を行った。 本試験は、2000年12月1日~2014年3月31日の臨床データリポジトリをレトロスペクティブに解析した。外来患者のデータは2ヵ所の3次医療機関より収集された。ざ瘡のためスピロノラクトンを服用している健康な若年女性974例を分析した。さらに、1,165例のスピロノラクトンを服用・未服用の健康な若年女性の集団データから、ベースライン時の高カリウム血症の有病率を求めた。除外基準は、心血管疾患、腎不全、RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)に影響を与える薬剤の服用であった。 主要評価項目は、ざ瘡でスピロノラクトンを服用している健康な若年女性における高カリウム血症の有病率であった。副次的評価項目には、スピロノラクトンの患者プロファイルとカリウムモニタリングを含んだ。 主な結果は以下のとおり。・スピロノラクトンを服用している女性1,802例中13例で血清カリウム値の異常が認められ、高カリウム血症の有病率は0.72%であった。・これは、集団ベースにおけるベースライン時の高カリウム血症有病率0.76%と同等であった。・再検査の結果、13例中6例が正常値を示した。残りの7例の患者では特段の対応は取られなかった。 ざ瘡でスピロノラクトンを服用している健康な若年女性における高カリウム血症の有病率は、集団ベースの有病率と同等であった。著者らは以上の結果から、これらの患者に対して、日常的なカリウムモニタリングは必要ないと結論付けた。

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