サイト内検索|page:441

検索結果 合計:11816件 表示位置:8801 - 8820

8801.

双極性障害の自殺、どの程度わかっているのか

 双極性障害患者の自殺企図や自殺死には多くの要因が影響を及ぼしている。国際双極性障害学会(ISBD)では、こうした要因の存在やその影響度に関する文献をまとめた自殺に関するタスクフォース報告書を発表した。筆頭著者であるカナダ・トロント大学のAyal Schaffer氏らは、「研究の対象やデザインが不均一性であるため、これら要因の影響度を再検討し確定するさらなる研究が必要である。このことが最終的には、双極性障害患者のリスク層別化の改善につながる」と述べている。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。 ISBDは、「双極性障害」と「自殺企図または自殺」をキーワードに1980年1月1日から2014年5月30日までに発表された論文を対象として、システマティックレビューを行った。双極性障害患者の自殺企図や自殺死に関連すると思われる要因について、すべての報告を調査した。要因を、(1)社会人口統計学的、(2)双極性障害の臨床的特徴、(3)併存疾患、(4)その他の臨床変数、の4つに分類し分析した。 主な結果は以下のとおり。・20の特異的要因が自殺企図や自殺死にどのように影響するかを調査した141件の研究を特定した。・要因については、それぞれのエビデンスのレベルや一致の程度にばらつきがあった。・その中で少なくとも1件の研究で、以下の要因について影響があることが認められた。性別、年齢、人種、婚姻状況、宗教、発症年齢、罹患期間、双極性障害のサブタイプ、初回エピソードの極性、現在/最近のエピソードの極性、優位極性、気分エピソードの特徴、精神病、精神疾患の併存、パーソナリティ特性、性的機能不全、自殺や気分障害の一親等家族歴、自殺企図歴、若年期のトラウマ、心理社会的要因。関連医療ニュース 双極性障害、退院後の自殺リスクが高いタイプは 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか うつ病と双極性障害を見分けるポイントは  担当者へのご意見箱はこちら

8802.

脳梗塞後の心房細動患者でのワルファリンの有用性/BMJ

 虚血性脳卒中を呈した心房細動患者に対するワルファリン投与は、長期臨床的アウトカムや自宅生活の期間を改善することが明らかにされた。米国・デューク臨床研究所のYing Xian氏らが、観察研究の結果、報告した。ワルファリンは、心房細動患者の血栓塞栓症予防のために使用が推奨されている。その根拠は、選択された患者集団での臨床試験に基づくものであり、試験設定以外(リアルワールド)の心房細動については、ワルファリンの投与および臨床的な有益性は確認されておらず、とくに、虚血性脳卒中を呈した高齢者において不明であった。BMJ誌オンライン版2015年7月31日号掲載の報告。虚血性脳卒中で入院したワルファリン未治療心房細動患者1万2,552例を追跡 研究グループは、心房細動患者で虚血性脳卒中後のワルファリン治療と長期アウトカムの関連を、地域医療ベースで評価した。検討は、2009~2011年にGet With The Guidelines (GWTG)-Strokeプログラムに参加した米国内1,487病院の協力を得て、虚血性脳卒中で入院したワルファリン未治療の心房細動患者1万2,552例の参加を得て行われた。 退院時にワルファリンを処方された患者と、あらゆる経口抗凝固薬が未処方であった患者を比較し、メディケア報酬支払記録とリンクして長期的アウトカムを評価した。 アウトカムは患者評価をベースとし、退院後継続的ケアを受けることなく暮らした総日数と定義して、主要有害心イベント(MACE)と自宅で暮らした期間を評価した。 治療群間で観察された特性のあらゆる差について、傾向スコア逆確率加重法を用いて検証した。退院時ワルファリン治療群のほうがMACEリスク低下、自宅生活期間が長期 1万2,552例のうち、退院時ワルファリン治療群は1万1,039例(88%)、経口抗凝固薬未治療患者は1,513例であった。 ワルファリン治療群のほうが、年齢はわずかに若く(平均80.1 vs.83.1歳)、脳卒中(14.8 vs.20.6%)や冠動脈疾患(30.8 vs.37.1%)の既往が少ないように思われたが、National Institutes of Health Stroke Scale評価の脳卒中の重症度は同程度であった(中央値6 vs.5)。 経口抗凝固薬未治療患者と比較して、ワルファリン治療群は、退院後2年間の自宅で暮らしている期間(施設ケアとの対比による)が有意に長期間であった。平均期間は治療群468.3日 vs.未治療群389.0日で、補正後の差は47.6日(99%信頼区間[CI]:26.9~68.2日、p<0.001)であった。 また、ワルファリン治療群は、MACEの発生リスク(補正後ハザード比:0.87、99%CI:0.78~0.98、p=0.003)、全死因死亡(同:0.72、0.63~0.84)、虚血性脳卒中の再発(同:0.63、0.48~0.83)についても有意な低下が認められた。 これらの差は、年齢、性別、脳卒中の重症度、冠動脈疾患と脳卒中の既往歴の別でみた臨床的に意義のあるサブグループでも一貫してみられた。

8803.

唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ

 香辛料入り食品を習慣的に摂取すると、あまり食べない集団に比べ、全死因死亡のほか、がん、虚血性心疾患、呼吸器疾患による死亡が減少することが、China Kadoorie Biobank collaborative groupのJun Lv氏らの調査で示された。香辛料は、世界の食文化に不可欠の要素であり、食品の味や風味付け、彩り、保存食のほか医療用としても長い歴史を持つ。最近は、とくに味付けのための使用が増加しており、中国では全国的に唐辛子の消費量が多いという。一方、カプサイシンなど、香辛料の主要な生理活性成分は、種々の慢性疾患において有益な役割を果たすことが、実験的研究や地域住民研究で報告されている。BMJ誌オンライン版2015年8月4日掲載の報告より。約49万人を約350万人年追跡した前向きコホート研究 研究グループは、香辛料入り食品の習慣的な摂取状況と、全死因および原因別の死亡との関連を評価する地域住民ベースの前向きコホート研究を実施した(National Natural Science Foundation of Chinaの助成による)。 2004~2008年に、中国の地理的に多様な10地域で50万人以上の参加者の登録を行ったChina Kadoorie Biobankのデータを用いた。ベースライン時にがん、心疾患、脳卒中に罹患していた参加者を除く、30~79歳の48万7,375人(男性19万9,293人、女性28万8,082人)が解析の対象となった。 ベースライン時に、参加者は「前月に、香辛料入り食品をどのくらい食べましたか」と質問され、「まったくあるいはほとんど食べない」「数日のみ」「週に1~2日」「週に3~5日」「週に6~7日」の中から1つを選んで回答した。 「週に1~2日」「週に3~5日」「週に6~7日」と答えた者は、さらに「あなたが食べた香辛料入り食品に使用された香辛料の主な原料は何ですか」との質問に対し、「生唐辛子」「乾燥唐辛子」「唐辛子ソース」「唐辛子油」「その他」「不明」の中から回答した(重複回答可)。 香辛料入り食品をほぼ毎日(週6~7日)摂取している集団は、それ以外の集団に比べ、農村地域居住者や喫煙者、アルコール摂取者が多く、赤身肉や野菜、果物の摂取頻度が高かった。また、全体で最も摂取頻度の高い香辛料のタイプは生唐辛子(約8割)であり、次いで乾燥唐辛子(約6割)であった。 フォローアップは2004~2013年に行われ、フォローアップ期間中央値は7.2年(350万4人年)であった。この間に、男性1万1,820人、女性8,404人が死亡した。ほぼ毎日食べると全死因死亡のリスクが14%減少 香辛料入り食品の摂取頻度別の絶対死亡率は、週1日未満の群が1,000人年当たり6.1であり、週1~2日の群が4.4/1,000人年、週3~5日の群が4.3/1,000人年、週6~7日の群は5.8/1,000人年であった。 既知のリスク因子や可能性のあるリスク因子で補正後の全死因死亡率は、男女ともに摂取頻度と強い逆相関の関係を示した。全体では、週1日未満と比較した死亡の補正ハザード比(HR)は、週1~2日が0.90(95%信頼区間[CI]:0.84~0.96)、週3~5日が0.86(95%CI:0.80~0.92)、週6~7日は0.86(95%CI:0.82~0.90)であった。 香辛料入りの食品を週に6~7日食べる集団は、週に1日も食べない集団に比べ、全死因死亡の相対的リスクが14%減少した。 また、全体では、香辛料入り食品を週に6~7日食べる集団は、週1回未満の集団に比べ、がん死、虚血性心疾患死、呼吸器疾患死のリスクが有意に低かったが、脳血管疾患死や糖尿病死、感染症死には差がなかった。感染症死は、女性では週に6~7回食べる集団で有意にリスクが抑制されていた。 週に6~7日食べる集団で、生唐辛子とそれ以外(乾燥唐辛子、唐辛子ソース、唐辛子油、その他の香辛料)に分けてリスクを比較したところ、生唐辛子で有意なリスク抑制効果がみられ、それ以外では有意差のない項目として、がん死、虚血性心疾患死、糖尿病死が挙げられた。全死因死亡と呼吸器疾患死は、生唐辛子とそれ以外の香辛料ともに、リスク抑制効果が有意だった。 摂取頻度と全死因死亡の逆相関の関係は、アルコール摂取者よりも非摂取者で、より強力であった(交互作用検定:p=0.033)。 著者は、「観察研究であるため、因果関係は確定できない。これらの知見の一般化可能性を示すには、別の集団においてさらなる前向き試験を行う必要がある」とし、「エビデンスが蓄積されれば、推奨食品に加えられたり、ハーブ系の補助食品などの機能性食品の開発につながる可能性がある」と指摘している。

8804.

心房細動アブレーション、部位特定にアデノシンが効果的/Lancet

 発作性心房細動へのカテーテルアブレーションにおいて、肺静脈隔離術後にアデノシンを投与し休止伝導部位を特定することが、無不整脈生存を改善する安全で非常に効果的な戦略であることが明らかにされた。カナダ・モントリオール大学のLaurent Macle氏らが、国際多施設無作為化優越性試験ADVICEの結果、報告した。著者は、「本アプローチを、臨床でルーチンとすることを検討すべきである」とまとめている。心房細動へのカテーテルアブレーションは増大しているが、不整脈再発の頻度が高い。アデノシンの投与は、休止伝導部位(dormant conduction)を明らかにし、伝導再発(reconnection)リスクのある肺静脈を特定可能である。それにより心房細動アブレーションの追加部位が導かれ、無不整脈生存が改善できるのではないかと見なされていた。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号の掲載報告。心房細動患者をアデノシン誘導追加アブレーション群と非追加アブレーション群に割り付け 試験は、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の18病院で行われた。過去半年に少なくとも3回の症候性心房細動を有し、抗不整脈薬治療が無効であった18歳以上の患者を登録した。 肺静脈隔離術後にアデノシンを静脈内投与。休止伝導部位が認められた患者を、追加の心房細動アブレーションを行う(アデノシン誘導による追加アブレーション)群と行わない(非追加アブレーション)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。休止伝導部位が認められなかった患者は、無作為に選択してレジストリ(非休止伝導部位レジストリ)群に包含した。患者は治療割り付けについて知らされず、アウトカムの評価はマスキングされた判定委員会により行われた。 追跡期間は1年間。主要アウトカムは、単回アブレーション後の症候性の心房頻脈性不整脈発生までの期間で、intention-to-treat解析で評価した。アデノシン誘導追加アブレーション群の心房細動患者の不整脈再発ハザード0.44 2009年10月~2012年8月に、心房細動患者550例が登録され、534例について肺静脈隔離術後のアデノシン投与が行われた。それにより休止伝導部位の出現が認められたのは284例(53%)で、アデノシン誘導追加アブレーション群に147例、非追加アブレーション群に137例が無作為に割り付けられた。 症候性心房頻脈性不整脈が未発生であった心房細動患者は、非追加アブレーション群58例(42.3%)に対して、アデノシン誘導追加アブレーション群は102例(69.4%)であった。アデノシン誘導追加アブレーション群の絶対リスクの減少は27.1%(95%信頼区間[CI]:15.9~38.2、p<0.0001)、ハザード比は0.44(同:0.31~0.64、p<0.0001)であった。 一方、非休止伝導部位レジストリ群には115例が包含され、そのうち症候性心房頻脈性不整脈が未発生であったのは64例(55.7%)であった(非追加アブレーション群との比較のp=0.0191)。 重篤有害事象の発生は、各群で同等であった。死亡は1例(広範囲の血栓症)で、レジストリ群の患者であり心房細動アブレーションと関連していると考えられた。

8805.

脳卒中リスク、日本でも居住地の経済状況が影響

 地区の社会経済状況の水準を指標化したものを、地理的剥奪指標(areal deprivation index)という。これまで欧米の多くの研究で、この地理的剥奪が循環器疾患リスクに影響する因子であることが示されている。しかし、アジアにおける検討はこれまでなかった。今回、国立がん研究センターによる多目的コホート研究(JPHC研究)で、地理的剥奪指標と脳卒中死亡および発症リスクとの関連が前向き研究で検討された。その結果、居住地の剥奪指標が脳卒中の発症に影響することが明らかになった。著者らは「地区の社会経済状況は脳卒中リスクを減少する公衆衛生介入の潜在的なターゲットになりうる」としている。Journal of epidemiology誌オンライン版2015年3月5日号掲載の報告。 対象となったのは、JPHC研究に参加した40~69歳の日本人男女9万843人。地理的剥奪指標に応じて、脳卒中の死亡率(平均追跡期間16.4年)、および発症率(同15.4年)の調整ハザード比を推定した。共用frailtyモデルを用いたCox比例ハザード回帰モデルを適用した。 主な結果は以下のとおり。・個人の社会経済的状況で調整後、脳卒中発症の調整ハザード比(95%CI)は剥奪指標の最低群(最も裕福な地区)を基準として、 低い順に1.16(1.04~1.29)、1.12(1.00~1.26)、1.18(1.02~1.35)、1.19(1.01~1.41)(最高群:最も貧しい地区)であった。・この関連性は、行動および心理社会的な因子(喫煙、飲酒量、身体活動、ストレス、婚姻状況)で減弱したものの、依然、有意であった。さらに、生物学的な心血管リスク因子(過体重、高血圧・糖尿病・高脂血症の既往歴)で調整することにより、この関連性は有意ではなくなった。・居住地の剥奪指標と脳卒中の死亡率には有意な関連性は認められなかった。

8806.

医療従事者の手指衛生励行キャンペーンの効果/BMJ

 WHOが2005年に始めた医療従事者の手指衛生励行キャンペーン(WHO-5)により、医療従事者の手指衛生コンプライアンスが改善したことが、タイ・マヒドン大学のNantasit Luangasanatip氏らによるシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、報告された。WHO-5は、医療従事者の手指衛生コンプライアンスが平均38.7%(範囲:5~89%)であったことを鑑みプログラムされたキャンペーン。「システムの変更」「訓練と教育」「観察とフィードバック」「院内での喚起」「病院の安全文化」という5つの項目から成る多様な戦略を推進することで手指衛生の改善を図る。検討の結果、さらなる戦略の追加で改善に結び付くことが判明し、著者は「目標設定、インセンティブ、アカウンタビリティ戦略の追加で、さらなる改善をもたらすことが可能なようだ」と述べている。ただし、それら介入に必要なリソースの報告は不十分なままであるとも指摘している。BMJ誌オンライン版2015年7月28日号掲載の報告。WHO-5の効果をシステマティックレビューとネットワークメタ解析で検証 研究グループは、2009年12月~2014年2月のMedline、Embase、CINAHL、NHS Economic Evaluation Database、NHS Centre for Reviews and Dissemination、Cochrane Library、the EPOC registerをデータソースとし、1980~2009年の先行システマティックレビューで同一検索単語により選択された試験を対象とした。 病院医療従事者の手指衛生コンプライアンス改善のための介入を行っており、事前に規定された質の基準を満たしているかのコンプライアンスまたは適切なプロキシを測定していた試験(無作為化対照試験、非無作為化試験、前後比較試験、中断された時系列試験など)を包含した。適切ではない分析法が用いられている試験は、元データを再分析した。 手指衛生コンプライアンスを直接的に観察報告しており、介入および参加者に関する均一性が十分にあるとみなした試験について、ランダム効果およびネットワークメタ解析を行った。目標設定、インセンティブ、アカウンタビリティの介入でさらに改善は可能 3,639試験が抽出され、41試験(無作為化比較試験6件、中断された時系列試験32件、非無作為化試験1件、前後比較試験2件)が包含基準を満たした。 無作為化比較試験2件のメタ解析で、WHO-5への目標設定の追加が、コンプライアンス改善と関連していることが示された(プールオッズ比:1.35、95%信頼区間[CI]:1.04~1.76、I2=81%)。 ペアワイズ比較の中断された時系列試験22件のうち、18件は手指衛生コンプライアンスの増加が段階的であったことを示していた。4件を除くすべてでコンプライアンスの増大傾向は介入後であったことが示されていた。 ネットワークメタ解析の結果、介入の相対的効果はかなり不確定ではあったが、WHO-5が効果的であるというエビデンスが示され、コンプライアンスは、目標設定、インセンティブ、アカウンタビリティなどの介入を加えることで、さらに改善可能であることが示唆された。 19試験では、臨床的な結果が報告されていた。それらのデータは、すべてではないがいくつかの重大な院内感染の減少が、手指衛生改善によりもたらされたことを示すものだった。 介入のコストについては、1,000床日当たり225~4,669ドルにわたると報告されていた。

8807.

抗認知症薬の脳萎縮予防効果を確認:藤田保健衛生大

 これまで抗認知症薬が軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病患者の脳萎縮を予防するという決定的なエビデンスはなかったが、藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らによる無作為化プラセボ対照試験のメタ解析の結果、抗認知症薬はプラセボに比べ優れた脳萎縮予防効果を発揮することが示唆された。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年7月19日号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、Cochrane LibraryおよびPsycINFOを用い、2015年5月16日までに発表されたMCIまたはアルツハイマー病患者を対象とする抗認知症薬の二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験の論文を検索した。主要評価項目はMRI測定による年換算された全脳容積変化率(%TBV/年)、海馬容積変化率(%HV/年)および脳室容積変化率(%VV/年)で、標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出した。 結果は以下のとおり。・メタ解析に組み込まれたのは、MCI を対象とした試験4件(1,327例)、アルツハイマー病3件(381例)の、計7件(1,708例)の無作為化プラセボ対照臨床試験であった。・抗認知症薬の内訳は、ドネペジル3件(MCI 2件、アルツハイマー病1件)、ガランタミン1件(MCI)、メマンチン2件(アルツハイマー病)、リバスチグミン1件(MCI)であった。・統合解析の結果、抗認知症薬はプラセボと比較して、有意に全脳容積の減少が少なく(%TBV/年のSMD=-0.21、95%CI:-0.37~-0.04、p=0.01、4試験、624例)、脳室容積の増加が少なかったが(%VV/年のSMD=-0.79、95%CI:-1.40~-0.19、p=0.01、3試験、851例)、海馬容積の変化(%HV/年)について有意差は認められなかった。・個々の抗認知症薬については、プラセボと比較してドネペジルで有意な脳萎縮予防効果が認められた(全脳容積変化率 %TBV/年のSMD=-0.43、95%CI:-0.74~-0.12、p=0.007、1試験、164例;脳室容積 %VV/年のSMD=-0.51、95%CI:-0.73~-0.29、p<0.00001、2試験、338例)。・リバスチグミンも脳室容積の変化に関してはプラセボより優れていた(%VV/年のSMD=-1.33、95%CI:-1.52~-1.14、p<0.00001)。関連医療ニュース レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学 抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学 統合失調症、脳容積とIQの関連  担当者へのご意見箱はこちら

8808.

ピオグリタゾンとがん(解説:吉岡 成人 氏)-397

日本人における糖尿病とがん 日本における糖尿病患者の死因の第1位は「がん」であり、糖尿病患者の高齢化と相まって、糖尿病患者の2人に1人はがんになり、3人に1人ががんで死亡する時代となっている。日本人の2型糖尿病患者におけるがん罹患のハザード比は1.20前後であり、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが増加することが、疫学調査によって確認されている。糖尿病によってがんの罹患リスクが上昇するメカニズムとしては、インスリン抵抗性、高インスリン血症の影響が大きいと考えられている。インスリンはインスリン受容体のみならず、インスリン様成長因子(IGF-1)の受容体とも結合することで細胞増殖を促し、がんの発生、増殖にも関連する。チアゾリジン薬であるピオグリタゾンとがん ピオグリタゾン(商品名:アクトス)は承認前の動物実験において、雄ラットにおける膀胱腫瘍の増加が確認されていた。そのため、欧米の規制当局により米国の医療保険組織であるKPNC(Kaiser Permanente North California)の医療保険加入者データベースを用いた前向きの観察研究が2004年から行われ、2011年に公表された5年時の中間報告で、ピオグリタゾンを2年間以上使用した患者において、膀胱がんのリスクが1.40倍(95%信頼区間:1.03~2.00)と、有意に上昇することが確認された。さらに、フランスでの保険データベースによる、糖尿病患者約150万例を対象とした後ろ向きコホート研究でも、膀胱がんのリスクが1.22倍(95%信頼区間:1.05~1.43)であることが報告され、フランスとドイツではピオグリタゾンが販売停止となった。また、日本においても、アクトスの添付文書における「重要な基本的注意」に、(1)膀胱がん治療中の患者には投与しないこと、(2)膀胱がんの既往がある患者には薬剤の有効性および危険性を十分に勘案したうえで、投与の可否を慎重に判断すること、(3)患者またはその家族に膀胱がん発症のリスクを十分に説明してから投与すること、(4)投与中は定期的な尿検査等を実施することなどが記載されるようになった。多国間における国際データでの評価 その後、欧州と北米の6つのコホート研究を対象に、100万例以上の糖尿病患者を対象として、割り付けバイアス(allocation bias)を最小化したモデルを用いた検討が2015年3月に報告された。その論文では、年齢、糖尿病の罹患期間、喫煙、ピオグリタゾンの使用歴で調整した後の100日間の累積使用当たりの発症率比は、男性で1.01(95%信頼区間:0.97~1.06)、女性で1.04(95%信頼区間:0.97~1.11)であり、ピオグリタゾンと膀胱がんのリスクは関連が認められないと報告された1)。KPNCの最終報告 今回、JAMA誌に報告されたのが、5年時の中間報告で物議を醸しだしたKPNCの10年時における最終解析である。ピオグリタゾンの使用と膀胱がんのみならず前立腺がん、乳がん、肺がん、子宮内膜がん、大腸がん、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、腎がん、直腸がん、悪性黒色腫の罹患リスクとの関連を、40歳以上の糖尿病患者約20万例のコホート分析およびコホート内症例対照分析で検証したものである。 その結果、ピオグリタゾン使用は、膀胱がんリスクの増加とは関連しなかった(調整後ハザード比1.06:95%信頼区間:0.89~1.26)と結論付けられた。 しかし、解析対象とした10種の悪性疾患中8種の悪性疾患とピオグリタゾンの関連は認められなかったものの、前立腺がんのハザード比は1.13(95%信頼区間:1.02~1.26)、膵がんのハザード比は1.41(95%信頼区間:1.16~1.71、10万例/年当たりの膵臓がんの粗発生率は、使用者で81.8例、非使用者で48.4例)であったことが報告されている。 チアゾリジンの膀胱がんを発症するリスクに対する懸念は払拭されたのか、前立腺がんと膵がんのリスクに関するデータは、偶然なのか、交絡因子の影響なのか、事実なのか……、また1つの問題が提示されたのかもしれない。

8809.

アロマターゼ阻害薬術後療法での乳がん死抑制効果~TAMとの比較/Lancet

 閉経後早期乳がんの術後ホルモン療法において、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)はタモキシフェン(TAM)に比べ、再発や乳がん死の抑制効果が高いことが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。閉経後早期乳がんの治療では、アロマターゼ阻害薬の5年投与またはTAM 2~3年投与後のアロマターゼ阻害薬2~3年投与は、TAM 5年投与よりも再発率が低いことが示されているが、乳がん死への影響などはいまだに不明だという。Lancet誌2015年7月23日掲載の報告。アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの5つの組み合わせの比較試験のメタ解析 研究グループは、閉経後のエストロゲン受容体(ER)陽性早期乳がんの治療において、アロマターゼ阻害薬とTAMを比較した無作為化試験(2005年までに開始された試験)の個々の患者データを用いたメタ解析を行った(Cancer Research UKなどの助成による)。 解析の対象は、次の5つの組み合わせを比較した無作為化試験であった。(1)アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 5年投与、(2)アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与、(3)TAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与、(4)アロマターゼ阻害薬5年投与とアロマターゼ阻害薬2年投与後にTAMに切り換えて5年まで投与、(5)アロマターゼ阻害薬2年投与後にTAMに切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与。 主要評価項目は、乳がんの再発(遠位、局所、対側乳房)、乳がん死、無再発死亡、全死因死亡とした。intention-to-treat解析を行い、有効性の評価にはlog-rank検定を用いた。初回イベント発生の率比(RR)およびその95%信頼区間(CI)を算出した。 9試験に参加した閉経後ER陽性早期乳がん患者3万1,920例について解析を行った。アロマターゼ阻害薬 5年投与、非施行に比べ10年乳がん死を約40%抑制 アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 5年投与の比較では、乳がん再発率は治療開始から1年まで(RR:0.64、95%CI:0·52~0.78)および2~4年(同:0.80、0.68~0.93)はアロマターゼ阻害薬が有意に良好であったが、5年以降は有意な差はなくなった。また、10年乳がん死亡率は、アロマターゼ阻害薬がTAMよりも有意に低かった(12.1 vs.14.2%、RR:0.85、95%CI:0.75~0.96、2p=0.009)。 アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与の比較では、乳がん再発率は治療開始から1年まではアロマターゼ阻害薬で有意に良好であった(RR:0.74、95%CI:0.62~0.89)が、2~4年および5年以降は有意な差はなくなった。全体としては、アロマターゼ阻害薬5年投与は、TAMからアロマターゼ阻害薬への切り換えよりも乳がん再発率が低かった(同:0.90、0.81~0.99、2p=0.045)が、乳がん死には有意な差はなかった(同:0.89、0.78~1.03、2p=0.11)。 TAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与の比較では、乳がん再発率は、2~4年はアロマターゼ阻害薬への切り換えが有意に良好であった(同:0.56、0.46~0.67)が、その後この差は消失した。10年乳がん死亡率は、アロマターゼ阻害薬への切り換えがTAM 5年投与よりも低かった(8.7 vs.10.1%、2p=0.015)。 これら3つのタイプの比較を統合すると、乳がん再発率は異なる薬剤による治療期間中はアロマターゼ阻害薬が良好で(RR:0.70、95%CI:0.64~0.77)、その後この差は有意ではなくなった(同:0.93、0.86~1.01、2p=0.08)。 また、乳がん死は、異なる薬剤での治療期間(同:0.79、0.67~0.92)、その後の期間(同:0.89、0.81~0.99)、および全期間を通じて(同:0.86、0.80~0.94、2p=0.0005)、アロマターゼ阻害薬の抑制効果が優れていた。全死因死亡についてもアロマターゼ阻害薬の効果が高かった(同:0.88、0.82~0.94、2p=0.0003)。 年齢、BMI、Stage、Grade、プロゲステロン受容体の状態、HER2の状態で補正しても、これらのRRはほとんど変化しなかった。 著者は、「アロマターゼ阻害薬は、異なる薬剤による治療が行われている期間は、TAMに比べ乳がんの再発を約30%抑制したが、それ以降は有意な差はなかった。アロマターゼ阻害薬5年投与は、10年乳がん死亡率をTAM 5年投与よりも約15%低下させ、ホルモン療法を施行しない場合に比べると約40%抑制した」としている。

8810.

新規経口抗凝固薬の眼内出血リスク、従来薬との比較

 新しい経口抗凝固薬(NOAC)は、ほとんどの血栓形成予防において標準療法に対し非劣性であることが認められているが、安全性プロファイルには差があり、とくに眼内出血のリスクについてはほとんどわかっていない。ポルトガル・分子医学研究所のDaniel Caldeira氏らは、NOACに関連した重大な眼内出血のリスクを評価する無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、NOACと他の抗血栓薬とで重大な眼内出血のリスクに差はないことを報告した。ただしイベント数が少ないため、「NOACの安全性プロファイルをよりよく特徴づけるためには、眼科の日常的な臨床診療下で患者をモニターする大規模なデータベースから追加の研究がなされるべきである」とまとめている。JAMA Ophthalmology 2015年7月号の掲載報告。 研究グループは、MEDLINE、Cochrane Library、SciELO collectionおよびWeb of Science databasesを用いて2014年11月までの論文を検索するとともに、他のシステマティックレビューや規制当局の資料も調べた。 対象は、NOACのすべての第III相無作為化比較試験(RCT)で眼内出血イベントについて報告されているものとし、2人の研究者が独立してデータを抽出した。 メタ解析にはランダム効果モデルを用い、試験の異質性はI2統計量で評価するとともに、重大な眼内出血については統合リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・17件のRCTがメタ解析に組み込まれた。・心房細動患者において、NOACはビタミンK拮抗薬と比較し重大な眼内出血のリスクに差はないことが確認され(RR:0.84、95%CI:0.59~1.19、I2=35%、RCT5件)、アセチルサリチル酸と比較してもリスクの増加は認められなかった(RR=14.96、95%CI:0.85~262.00、RCT1件)。・静脈血栓塞栓症患者において、NOACは低分子ヘパリン+ビタミンK拮抗薬と比較し重大な眼内出血のリスクは増加しないことが確認された(RR=0.67、95%CI:0.37~1.20、I2=0%、RCT5件)。・整形外科手術を受けた患者においても、NOACと低分子ヘパリンとで差はなかった(RR=2.13、95%CI:0.22~20.50、I2=0%、RCT5件)。

8811.

抗精神病薬の適応外処方、年代別の傾向を調査

 成人、小児および高齢者における抗精神病薬の適応外処方について、フランス・リール第1大学のLouise Carton氏らはシステマティックレビューにて調査を行った。その結果、近年、適応外処方は広く行われており、その処方内容は患者の年齢層により異なること、使用理由としては治療に行き詰まった場合や承認薬がほとんどない特異的疾患におけるケースが多いことを明らかにした。一方で、その他の適応外処方は軽度な症状に対する処方を一時的に反映しているだけで、著者らは「安全性に対する懸念が生じる可能性がある」と指摘している。Current Pharmaceutical Design誌2015年7月号の掲載報告。 レビューは、PubMed、ScienceDirect databasesを介して、「適応外」+(「抗精神病薬」または「神経遮断薬」)をキーワードに論文検索が行われた。検索対象期間は2000年1月~2015年1月とし、英語で書かれた薬剤疫学的な研究のみを適格とした。 主な結果は以下のとおり。・77本の適格論文が特定された。・成人において、適応外処方(OLP)は、すべての抗精神病薬処方の40~75%を占めていた。・OLP処方における主な症状は、気分障害、不安症、不眠症、興奮であった。・クエチアピンは、とくに不安と不眠症に対して最も頻度が高いOLPであった。・小児において、OLPはすべての抗精神病薬処方の36~93.2%にわたっていた。・主に使用されていたのはリスペリドンとアリピプラゾールで、注意欠如・多動症、不安または気分障害に処方されていた。・高齢者において、OLPはすべての抗精神病薬処方の22~86%を占めていた。・抗精神病薬OLPは、とくに興奮に対する頻度が高かった。しかしながら、このOLPは最近、減少していることが確認された。関連医療ニュース 若年者への抗精神病薬使用、93%は適応外処方 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状 アルツハイマー病、46.8%で不適切な薬剤が処方  担当者へのご意見箱はこちら

8812.

スタチンガイドラインで、より多くの患者のリスクを回避できる?(解説:平山 篤志 氏)-396

 疾患やリスク因子とLDL-コレステロール値(LDL-C)からLDL-Cの治療目標値を設定し、治療する指針を示したATP IIIのガイドラインが、2013年に発表されたACC/AHAガイドラインによって大きく変えられた。 新しいガイドラインの内容は、すでに知られているようにAtherosclerotic Cardiovascular Disease(ASCVD)の2次予防、およびASCVDハイリスク患者の1次予防には、LDL-Cの値に関係なくスタチンを投与すべきであり、かつ、目標のLDL-C値は定めないという“Fire and Forget”の考えを示したものであった。心血管イベントの抑制効果が、すべてスタチンのエビデンスに基づくものであることから、スタチンがどの患者に適応するかという”スタチンガイドライン”ともいえる。 このガイドラインに沿ってスタチンを投与される患者数は、米国では4,300万例から5,600万例に増加する。では、本当にベネフィットがあるのか? このClinical Questionに答えを出すには時間がかかるが、現時点でフラミンガム研究に当てはめたとき、治療対象者をATP IIIから変更することで、どのようなベネフィットがあるかを推測した結果が発表された。ATP IIIとACC/AHA ガイドライン2013の治療対象群と非対象群を比較した場合、ACC/AHAガイドライン2013のほうで、より高率でイベントが発生していた。新しいガイドラインを用いることで、これまで治療対象でなかった患者群、とくに中程度から軽度のリスクのある患者で効果的にイベントを減少させることにつながる可能性が示された。 今後、これが臨床的に証明されれば、LDL-C低下効果に加え、Pleiotropic効果を持つスタチンの有用性が、さらに認知されることになるであろう。しかし、米国ほどイベントが多くないわが国で、このガイドラインを適応して効果があるか? わが国のガイドラインは、これまでの疫学データを基に絶対リスクの考えで治療を決定している。2次予防においては、スタチンガイドラインは必須であるが、1次予防にまで拡大するかは今後のわが国におけるエビデンスの集積の結果、判断されるべきである。また、ガイドライン後に“The Lower the better”を示すIMPROVE-ITの結果が発表されたこともあり、しばらくはわが国の動脈硬化治療ガイドラインに沿って、治療を確実に実践することが重要であろう。

8813.

早期乳がんの術後ビスホスホネート、ベネフィットは閉経女性のみ?/Lancet

 早期乳がんに対するビスホスホネート製剤による術後補助療法は、骨再発を抑制し、生存期間の改善をもたらすが、明確なベネフィットは治療開始時に閉経に至っている女性に限られることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で示された。術後ビスホスホネート療法は、早期乳がん女性の無骨転移生存、無病生存、全生存を改善するとの報告がある一方で、全体では有意な効果はないものの、閉経後または高齢女性でベネフィットを認めたとの報告がある。これは、ビスホスホネート製剤は性ホルモンが低下した女性(閉経または卵巣抑制療法)にのみベネフィットをもたらすとの仮説を導く。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号掲載の報告より。リスクとベネフィットをメタ解析で評価 研究グループは、早期乳がんに対する術後ビスホスホネート療法のリスクとベネフィットを評価するためにメタ解析を実施した(Cancer Research UKなどの助成による)。 早期乳がんの治療においてビスホスホネート製剤と対照を比較した無作為化試験のうち交絡因子のないすべての試験から個々の患者のデータを抽出した。 主要評価項目は、再発、遠位再発、乳がん死とした。初回遠位再発の部位(骨、その他)、閉経状況(閉経後[自然閉経、人工閉経]、閉経前)、ビスホスホネート製剤のクラス(アミノビスホスホネート[ゾレドロン酸、イバンドロネート、パミドロネート]、その他[クロドロネート])でサブグループ解析を行った。 intention-to-treat集団において、log-rank法を用いてビスホスホネート製剤と対照の初回イベント発生の率比(RR)を算出した。閉経後女性の骨再発を28%、乳がん死を18%抑制 26試験に参加した1万8,766例のデータを解析した。1万8,206例(97%)が2~5年(中央値3.4年)の治療を受け、フォローアップ期間中央値は5.6年であった。この間に3,453例が初回再発し、2,106例が死亡した。 対照と比較したビスホスホネート製剤の全体的な効果は、再発(RR:0.94、95%信頼区間[CI]:0.87~1.01、2p=0.08)、遠隔再発(0.92、0.85~0.99、2p=0.03)、乳がん死(0.91、0.83~0.99、2p=0.04)のいずれも有意水準の境界近くであったが、骨再発(0.83、0.73~0.94、2p=0.004)の抑制効果は明確であった。 閉経前女性では、どの評価項目にも明らかな効果は認めなかったが、閉経後女性1万1,767例の解析では、再発(RR:0.86、95%CI:0.78~0.94、2p=0.002)、遠位再発(0.82、0.74~0.92、2p=0.0003)、骨再発(0.72、0.60~0.86、2p=0.0002)、乳がん死(0.82、0.73~0.93、2p=0.002)が著明に改善された。 一方、ビスホスホネート製剤の骨再発抑制効果は、高齢女性で高く(2p=0.03)、閉経後女性で大きい傾向がみられたものの(2p=0.06)、年齢と閉経状況は密接に関連するため、どちらがより強く関連するかは決定できない。 薬剤のクラス、投与スケジュール、エストロゲン受容体(ER)の状態、局所リンパ節転移の有無、腫瘍の悪性度、併用化学療法の有無による差は認めなかった。また、乳がん以外の原因による死亡に差はなかったが、骨折はビスホスホネート製剤で有意に少なかった(RR:0.85、95%CI:0.75~0.97、2p=0.02)。 著者は、「ビスホスホネート製剤は、主にアロマターゼ阻害薬による治療を受けている閉経後ER陽性乳がん患者において、骨量減少や骨折リスクの抑制を目的に使用される。今回の解析結果は、これに加え、腫瘍に対する効果も有することを示しており、広範な閉経後女性において術後ビスホスホネート療法を考慮すべきであることが示唆される」と指摘している。

8814.

中等症~重症のアトピー、トファシチニブで治療可能?

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に対する治療は不適切であることが多い。米国・エール大学のLauren L. Levy氏らは、こうした患者に対して経口ヤヌスキナーゼ阻害薬トファシチニブの投与を試みた。その結果、症例数が非常に少なく対照群が設定されていないなど限界はあるものの、中等症~重症ADの治療にトファシチニブが有用である可能性が示唆されたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2015年7月17日号の掲載報告。 対象は標準治療に抵抗性の中等症~重症AD連続患者6例で、トファシチニブによる治療を行い、効果をSCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)indexにて評価した。 主な結果は以下のとおり。・全例において、皮膚炎のある体表面積の減少、ならびに紅斑・浮腫・苔癬化・擦過傷の軽減が観察された。・8~29週の治療によりSCORADは36.5から12.2へ66.6%減少した(P<0.05)。・有害事象はみられなかった。

8815.

ポンプ本体全内面を生体材料で構成した全置換型人工心臓、初の臨床例を報告/Lancet

 新たに開発された生体弁を用いた全置換型人工心臓CARMAT TAH(C-TAH)の、最初の臨床使用例2例の報告が、フランス・パリ大学のAlain Carpentier氏らにより発表された。2例とも最終的には死亡となったが、うち1例は150日目に退院することができたという。著者は「今回の経験知は、生体材料を用いた全置換型人工心臓の開発に重要な貢献をもたらすことができた」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年7月28日号掲載の報告。2例に行われた初の施行例 本検討の目的は、両室心不全で移植不適者であり死が目前に迫った患者について、C-TAHの安全性と使用の可能性を評価することであった。C-TAHは、植込み型の電気駆動型拍動式両室ポンプの人工心臓装置で、バッテリー以外の部品は1装置に収められ、患者の心室を摘出して置換する。これまで、末期の心疾患患者に対する人工心臓の開発では、血栓塞栓症や出血の合併症が重大な課題となっており、これら合併症の発生は生体弁では低率であることからC-TAHが開発された。 研究グループは、フランスの3つの心臓外科センターから、2例の男性患者を選出し、植込み置換手術を行った。 患者1は76歳で、2013年12月18日にC-TAH移植を施行。患者2は68歳で2014年8月5日に移植が行われた。これまで重大な課題であった血栓問題は克服 両心バイパスに要した時間は、患者1が170分、患者2は157分であった。 両患者とも術後12時間以内に抜管。呼吸機能および循環機能は迅速に回復し、精神状態も良好であった。 患者1は23日目に心タンポナーデを呈し再介入が必要となった。術後出血により抗凝固薬は中断。C-TAHは良好に機能し心拍出量は4.8~5.8L/分であったが、74日目に、装置故障により死亡した。 剖検では、抗凝固薬が約50日間投与されなかったにもかかわらず、生体弁またその他臓器からも血栓は検出されなかった。 患者2は、一過性の腎不全および心嚢液貯留で排液を要したが、それ以外は術後経過に問題はみられず150日目に退院となった。ウェアラブルシステムのみで技術的補助は必要としなかった。 自宅に戻ってから4ヵ月後、低心拍のためC-TAHを交換。しかし多臓器不全で死亡した。

8816.

アストラゼネカ、肺がん免疫併用療法で提携を発表

 アストラゼネカは、8月5日、自社のグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンと、ドライバー遺伝子およびエピジェネティックに特化するオンコロジー専門企業Mirati Therapeutics, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、以下、Mirati社)が臨床試験に関する独占的提携を締結したことを発表した。当該第I/II相試験では、メディミューンの治験薬である抗PD-L1免疫チェックポイント阻害剤durvalumab(MEDI4736)とMirati社の治験薬であるスペクトラム選択性ヒストンデアセチラーゼ(ヒストン脱アセチル化酵素)(HDAC)阻害剤mocetinostatとの併用療法について、安全性および有効性を評価する。 Durvalumab (MEDI4736)はプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)を標的とするヒトモノクローナル抗体。一方、Mocetinostatはクラス1HDAC酵素を選択的に阻害することで、durvalumabのようなチェックポイント阻害剤の免疫系に対する効果を向上させる可能性を持つ。アストラゼネカのプレスリリースはこちら(PDFがダウンロードされます)

8817.

注意が必要な高齢者の昼寝

 睡眠障害は、高齢者で多く見られ、とくに認知症リスクのより高い高齢者に多く認められる。しかし、これまでに、日中の睡眠における臨床的、医療的および神経心理学的な相関は検討されてこなかった。オーストラリア・シドニー大学のNathan Cross氏らは、アクチグラフィーを使用し、高齢者(とくに認知症リスクを有する高齢者)における昼寝の特徴や効果を調査した。Journal of sleep research誌オンライン版2015年6月21日号の報告。 対象は、認知症リスクを有する包括的医療、精神・神経生理学的評価を受けた高齢者133人(平均年齢:65.5歳、SD:8.4歳)。昼寝の睡眠習慣を測定するために、アクチグラフィーと睡眠日誌を使用した。主な結果は以下のとおり。・アクチグラフィーより、昼寝の睡眠習慣は83.5%(111/133人)の高齢者で認められた。しかし、持続時間や時間帯はまちまちであった。・昼寝をする高齢者は、医療負担、BMIが有意に高く、軽度認知障害(MCI)のリスクが有意に高かった。・より長く、より頻繁な昼寝は、認知機能の低さや抑うつ症状レベルの高さと関連していた。また、昼寝の時間帯は、夜間の睡眠の質(入眠後の、睡眠潜時や覚醒)と関連していた。 結果を踏まえ、著者らは「本研究では、認知症リスクを有する高齢者にフォーカスして調査を行ったが、昼寝は、うつや認知機能といった根底にある神経生物学的変化と関連していた。このことから、高齢者の精神・認知機能の転帰との関連を解明するためにも、昼寝の特徴をより定期的に観察する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 長期ベンゾジアゼピンの使用は認知症発症と関係するか 認知症の日中の眠気、レビー小体型でより多い 認知症の不眠にはメラトニンが有用  担当者へのご意見箱はこちら

8818.

優れた抗血栓性を目指し、ポンプ本体の内面をすべて生体材料で構成したCARMAT完全植込み完全置換型の開発と世界最初の臨床応用(解説:許 俊鋭 氏)-394

 2008年に、僧帽弁形成手術で世界的に著名な心臓外科医Alain Carpentier氏が、真に心臓移植の代替治療となりうる完全植込み完全置換型(fully implantable artificial heart)の臨床治験を、2011年までに実施する準備ができたと発表した1)。 ポンプ本体の内面はすべて生体材料 (“biomaterials”or a“pseudo-skin”of biosynthetic、microporous materials)で構成され、これまでの人工心臓でまったく未解決の問題であった、ポンプ内血栓形成が生じない人工心臓をつくるという、きわめて野心的なプロジェクトであった。 CARMAT完全植込み完全置換型(C-TAH)は、4つの生体弁を持つ電気駆動型拍動流拍動完全置換型で、現時点では体外のバッテリーと接続し、エネルギーは体外から供給するシステムではあるが、近い将来、経皮的エネルギー伝送により完全植込み型デバイスになることも可能である。ポンプ内面は、表面処理された生物心膜組織(processed bioprosthetic pericardial tissue)および拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から成り、抗凝固療法の軽減が潜在的に可能である2)。12頭の牛(体重102~112kg)を用いた平均3日間の実験で、4頭が4日以上(最長10日)生存した。まったく抗凝固療法なしで術後管理されたが、剖検では2頭に小さな腎梗塞がみられたのみであった。 2015年になって立て続けに3本の論文2)3)4)が発表され、本論文はその1つで2013年から始まった臨床例の最初の報告である。ただし、この臨床試験では当初目指した完全植込みには至らず、デバイスは外径8mmのきわめて屈曲性に富んだドライブラインで、体外のリチウムイオンバッテリーに接続して使用している。 C-TAHは2人の男性の患者に植え付けられた。患者1(76歳)は、2013年12月18日の植込み症例、患者2(68歳)は2014年8月5日の植込み症例で、C-TAH植込み手術の人工心肺時間は、157分、170分であった。2例とも術後12時間以内に抜管され、呼吸および循環機能は急速に回復した。 患者1は、術後23日に心タンポナーデのために再開胸止血手術施行し、以後抗凝固療法を中止した。C-TAHは良好に機能し、4.8~5.8L/分の良好な流量が得られた。術後74日目にデバイス機能不全のため患者は死亡した。抗凝固薬なし期間が50日間あったにもかかわらず、剖検ではポンプ内や末梢臓器に血栓はみられなかった。 患者2は、一時的な腎不全と心嚢液貯留に対してドレナージを必要としたが、それ以外は問題なく、術後150日で携帯電源システムとともに自宅に戻った。在宅4ヵ月後に低心拍出状態になりデバイス交換を試みたが、多臓器不全のために患者は死亡した。 本論文掲載決定時にはすでに3症例目の植込みが成功していて、術後104日目で退院直前の状態にある。 日本では、年間20万例が心不全のため死亡している。人口の高齢化とともに心不全はますます増加傾向にあり、65歳以上の循環器疾患医療費はがんを中心とした新生物医療費の2倍(13.3% vs.27.4%、2011年)を要している。心臓移植の対象となる65歳未満の心不全死亡は2万例弱であり、全心不全死亡数の9.7%にしか過ぎない。しかも、日本における年間心臓移植数は40例弱であり、2万例の65歳未満心不全死亡数はおろか、現在心臓移植登録・待機している400例に対しても極端に少ない。 すなわち、心臓移植治療はその絶対数において末期心不全に対する標準的治療とはなり得ない。そのため、米国で2002年に年齢などにより心臓移植適応除外となった症例に対する、心臓移植代替治療としての植込み型補助人工心臓(LVAD)を用いたDestination Therapy(DT)がFDAにより承認され、保険償還が始まった。DTは当初2年生存を目標にスタートしたが、INTERMACSデータでは現時点で2年生存率60%、3年生存率50%が達成されていて5)、今後、さらに治療成績が向上していくものと考えられる。長期の補助人工心臓の成績向上のために解決しなければならない主な課題として、(1)システムの長期耐久性、(2)抗血栓性の向上、(3)感染防止がある。その中で、今日の第2・第3世代の定常流植込み型LVADにおいて、すでに10年生存症例も報告され「(1)システムの長期耐久性」は達成されているが、「(2)抗血栓性の向上」と「(3)感染防止」はまったく解決できていない課題である。C-TAHは「(2)抗血栓性の向上」を目指した野心的なプロジェクトであり、抗凝固療法なしで50日間管理し、まったく血栓が生じなかったことは大きな成果である。また、C-TAHは近い将来、完全植込みを目標としており「(3)感染防止」にも意欲を示している。 残念なことに、ポンプシステムが第1世代拍動流ポンプであることにより、C-TAHには「(1)システムの長期耐久性」は期待できない。しかし、C-TAHポンプ本体の内面をすべて生体材料で構成するという試みは、今日の長期耐久性に優れた第2・第3世代の定常流植込み型LVAD製造技術と結び付くことにより、植込み型LVADの「(2)抗血栓性の向上」に大きく貢献するものと期待される。 近い将来、経皮的エネルギー伝送システムの導入で有効な「(3)感染防止」技術が確立した暁には、植込み型LVADの心臓移植に匹敵するQOL・長期生存率が達成されるものと期待される。

8819.

Vol. 3 No. 4 高尿酸血症のコントロールと治療薬

土橋 卓也 氏製鉄記念八幡病院はじめに高尿酸血症は、痛風関節炎や痛風腎など尿酸塩沈着症としての病態とは別に高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム(MetS)、慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣病と密接に関連することが明らかとなってきた。さらに最近の知見より、高尿酸血症が高血圧や糖尿病発症のリスクとなること、尿酸低下療法によって心血管イベントが抑制されることが報告されるようになった。本稿では、心血管疾患リスクとしての尿酸管理の意義と尿酸降下薬を用いた治療方針について概説する。1. 生活習慣病としての高尿酸血症の実態日本人における高尿酸血症の頻度に関して、尿酸値>7mg/dLで定義される高尿酸血症の頻度は、成人男性で21.5%、女性では50歳未満で1.3%、50歳以降で3.7%と報告されている1)。また、高尿酸血症は高血圧者に高頻度に合併することが知られている。われわれが調査した降圧薬服用者667名(平均年齢66.4歳)における高尿酸血症(尿酸値>7mg/dLまたは尿酸低下薬服用者)の頻度は男性で40.6%、女性で8.6%と男性で高頻度に認められ、特に使用降圧薬が3剤以上の者では37.3%と高頻度であった2)。この要因として、3剤以上の降圧薬を必要とする者は肥満やMetS、CKDなど高尿酸血症を合併する病態が多いこと、尿酸値を上昇させる利尿薬の使用頻度が高いことが挙げられる。すなわち、高尿酸血症は他の危険因子とともに心血管疾患リスクが重積した病態を形成することが多いことから、心血管疾患予防のためのtotal risk managementの一環として管理すべき疾患といえる。2. 高尿酸血症の治療(1) 治療方針日本痛風・核酸代謝学会による高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインが提唱する高尿酸血症の治療方針では、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合、肥満の是正、飲酒制限、プリン体制限などの食事療法、運動など生活習慣修正を指導することが記載されている。痛風関節炎や痛風結節を認めず、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、MetS、CKDなどを合併する例においては、尿酸値が8mg/dL以上に上昇した場合、尿酸低下療法を考慮する。(2) 病型分類に基づく薬剤選択高尿酸血症は、その機序から産生過剰型と排泄低下型に病型分類される(本誌p.36図を参照)に示すように、病型分類を行うためには、尿酸産生量(尿中尿酸排泄量)と尿酸クリアランスを評価する必要がある3)。われわれが、高尿酸血症合併高血圧患者を対象として、24時間家庭蓄尿を用いて病型分類を行ったところ、MetS合併例を含め、約9割が排泄低下型であった4)。日常診療において24時間蓄尿や外来60分法による評価を行うのは困難である。われわれは、日常診療で使用可能な病型分類の指標として随時尿中尿酸/クレアチニン比(UA/Cr)を用いており、随時尿中UA/Crが0.5未満を示す場合、排泄低下型と判断してよいと考えている5)。(3) 尿酸降下薬の選択尿酸生成抑制薬のアロプリノールは尿酸産生過剰型に適した薬剤であり、尿路結石の既往など尿酸排泄促進薬が使用できない症例においても使用される。ただ、腎機能の低下に応じて使用量を減じる必要があり、クレアチニンクリアランス(Ccr)50mL/分以下では100mg/日、30mL/分以下では50mg/日とすべきである。最近発売されたフェブキソスタットやトピロキソスタットは、腎機能低下例においても用量調節が必要なく、使用しやすい薬剤といえる。前述のように高血圧合併高尿酸血症患者の病型はほとんど排泄低下型であることから、ベンズブロマロンなどURAT1阻害薬がより有用であることが多い。実際、アロプリノールを投与中の高血圧患者で随時尿中UA/Crが0.5未満を示し、排泄低下が疑われた15症例において薬剤を排泄促進薬のベンズブロマロンに切り替えたわれわれの検討では、随時尿中UA/Crは0.31から0.51へと有意に上昇し、血清尿酸値も7.3mg/dLから4.7mg/dLへと有意に低下した6)。ベンズブロマロン服用者(平均用量39mg/日)はアロプリノール服用者(平均用量106mg/日)に比し、血清尿酸値が低く(5.6±1.1 vs. 6.6±0.8mg/dL、p<0.01)ガイドラインが提唱する管理目標値≦6mg/dLの達成頻度も61.7%とアロプリノール服用者(18.2%)より高かった2)(本誌p.38図を参照)。これらの結果は、高血圧合併高尿酸血症の治療において尿酸排泄促進薬であるベンズブロマロンがより有用であることを示唆している。ただベンズブロマロンは尿酸排泄量が増加し、尿路結石のリスクが高くなるため、尿のアルカリ化が必要であること、腎機能低下例では作用が減弱するため、アロプリノールを使用するか、両者の少量併用を検討する必要があることに留意する。(4) 尿酸コントロールの目標高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、尿酸降下薬による治療の目標値として血清尿酸値6.0mg/dL以下に維持することが望ましいとしている(本誌p.35図を参照)。確かに痛風患者の再発予防の観点からは6.0mg/dL以下にすることの根拠が示されているが7)、心血管疾患リスクとしての管理目標は明確でない。本態性高血圧患者を対象とした治療介入試験であるLIFE試験において、血清尿酸値は全体の平均5.6±1.3mg/dLからアテノロール群で0.8±1.2mg/dL、ロサルタン群で0.3±1.2mg/dL上昇しているが、6.0mg/dL前後であっても血清尿酸値上昇により心血管病発症リスクが増加することが示されており8)、高血圧患者における積極的な尿酸管理の重要性が示唆される。心臓手術を受けた高尿酸血症患者(血清尿酸値≧8mg/dL)141例を対象として、フェブキソスタット群とアロプリノール群に無作為に割り付け、血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標として治療を行ったNU-FLASH試験における投与6か月後の血清尿酸値6.0mg/dL以下達成率は、フェブキソスタット群で95.8%と、アロプリノール群の69.6%に比し有意に高率であった9)。さらに、フェブキソスタット群では、投与1か月後からeGFRの有意な増加を認めている。このことは、血清尿酸値6.0mg/dL以下を目指した治療が腎機能保持の観点からも有用であることを示唆している。一方、尿酸は強力な抗酸化作用を有していることから、低値であることも心血管疾患リスクとなる報告が散見されており10)、“the lower, the better”とはいえない可能性がある。現時点では血清尿酸値4~6mg/dLが最もリスクの低い値と推測される。女性は血清尿酸値が男性に比し低値であるが、心血管疾患リスクとしての関与は男性より強いことが報告されていることから11, 12)、女性においてはより厳格なコントロールが望ましい可能性がある。おわりに高尿酸血症の心血管疾患リスクとしての意義を認識し、他のリスク因子とともに管理することが重要である。今後、心血管疾患リスクとしての高尿酸血症の治療開始基準および管理目標について検討する臨床試験が望まれる。文献1)冨田眞佐子ほか. 高尿酸血症は増加しているか?性差を中心に. 痛風と核酸代謝 2006; 30: 1-5.2)榊美奈子ほか. 降圧薬服用者における尿酸管理の現状. Gout and Nucleic Acid Metabolism 2013; 37:103-109.3)日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版, メディカルレビュー社,東京, 2010.4)宮田恵里ほか. 高血圧患者における高尿酸血症の実態と尿酸動態についての検討. 血圧 2008; 15: 890-891.5)大田祐子ほか. 高尿酸血症合併高血圧患者における高尿酸血症の慣習的病型分類の有用性について. 痛風と核酸代謝 2012; 36: 9-13.6)大田祐子ほか. 高尿酸血症合併高血圧患者におけるアロプリノールからベンズブロマロンへの変更の有用性. 血圧2008; 15: 910-912.7)Shoji A et al. A retrospective study of the relationship between serum urate level and recurrent attacks of gouty arthritis; Evidence for reduction of recurrent gouty arthritis with antihyperuricemic therapy. Arthritis Rheum 2004;51: 321-325.8)Hoieggen A et al. LIFE Study Group: The impact of serum uric acid on cardiovascular outcomes in the LIFE study. Kidney Int 2004; 65: 1041-1049.9)Sezai A et al. Comparison of febuxostat and allopurinol for hyperuricemia in cardiac surgery patients (NU-FLASH Trial). Circ J 2013; 77: 2043-2049.10)Verdecchia P et al. Relation between serum uric acid and risk of cardiovascular disease in essential hypertension ; PIUMA study. Hypertension 2000; 36: 1072-1078.11)Iseki K et al. Significance of hyperuricemia as a risk factor for developing ESRD in a screened cohort. Am J Kidney Dis 2004; 44: 642-650.12)Holme I et al. Uric acid and risk of myocardial infarction, stroke and congestive heart failure in 417,734 men and women in the Apolipoprotein MOrtality RISk study (AMORIS). J Intern Med 2009; 266: 558-570.

8820.

運動する女性はスポーツブラをつけるべき?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第48回

運動する女性はスポーツブラをつけるべき? 足成より使用 あまり詳しくありませんが、小学生のころ、女の子はスポーツブラというものをつけるのだと聞いたことがあります。え?違う?まぁ正否はどちらでもよくてですね、今回はスポーツブラに関する話題を取り上げたいワケです。ちなみに私はブラジャーに詳しくありません! Wikipediaによれば、「通常のブラジャーは、乳房の形を美しく整えるためにつくられている。しかし、スポーツ・体育授業など運動時に肩ひもやアンダーバスト部がずれやすく、また、布地の重なりによる熱さで、着用者が不快に感じることがある。さらに、乳房が激しく揺れると、クーパー靭帯を痛め乳房の下垂の原因となることがある。そこで乳房のサポート効果が高いスポーツブラが使用される」と記載されています。ブラジャーにも乳房にもまったく無縁の私にとっては何のこっちゃよくわかりません。 Bowles KA, et al. Do current sports brassiere designs impede respiratory function? Med Sci Sports Exerc. 2005;37:1633-1640. さて、22人の女性がブラジャーを装着せずに呼吸機能検査を受けました。その後、ブラジャーを装着した状態と装着していない状態でエルゴメーターを、またスポーツブラ、ファッションブラを装着した状態と装着していない状態でトレッドミルや呼吸機能検査を受けてもらいました。そして、ブラジャーの圧力やその圧迫感を調べました。その結果、胸の小さな女性の場合、スポーツブラはファッションブラと比較してより圧力が大きいという結果でした(0.861±0.247N/cm2 vs.0.672±0.254N/cm2)。つまり、締め付けが大きいということですね。しかしながらこのブラジャーの圧力の増加は、呼吸機能や不快感への影響はなかったそうです。ふむふむ。というワケで、運動するときにジャマとされているブラジャーですが、ほとんど問題ないという結論になりました。乳首の痛みを予防するためにニプレスをつけて運動する人もいるかと思いますが、スポーツブラでもその乳首の痛みを軽減できることが知られています(Hadi MS. Breast J. 2000;6:407-409.)。男性のプロスポーツ選手はさすがにスポーツブラをつけるワケにはいきませんので、ニプレスを使っている人が多いようですね。インデックスページへ戻る

検索結果 合計:11816件 表示位置:8801 - 8820