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サン・アントニオ2015 レポート-1

レポーター紹介はじめに2015年SABCSは12月4日から8日までの会期で開催された。外は比較的暖かく、過ごしやすい気候であった。基礎的な内容も口演で多く取り上げられ、難しい内容のものも多くあったが、私たちの臨床を変える、あるいは臨床的に意義のある発表も多く、個人的には久しぶりに充実感があった。最初の話題は何と言っても、京都大学の戸井 雅和先生が口演で発表された、日本と韓国共同で行われた第III相試験CREATE-X(JBCRG-04)の結果であろう。HER2陰性乳がんに対して術前化学療法(アントラサイクリン、タキサン、あるいはその組み合わせ)後に手術を行ってnon-pCRであった場合に、術後標準治療を行う群とカペシタビン8サイクル(2,500mg/m2/day、day1~14、repeat every 3 weeks)を上乗せする群に割り付けて、予後をみたものである。適格基準はStageI~IIIBと広く、年齢も20~74歳と幅がある。計910例を各群455例ずつに割り振り5年間経過観察した。ホルモン受容体陽性が約60%で、リンパ節転移が残存していたのは約60%であった。術前化学療法としてはA-Tを逐次投与したものが約80%を占め、5-FUは約60%の症例で使われていた。カペシタビンを8サイクル規定投与量で継続できたのは37.9%、減量し継続できたのは37.1%、中止は25%であった。カペシタビン群の有害事象として、下痢は3.0%と低く、手足症候群は全グレードで72.3%、Grade3は10.9%に認められた。5年無再発生存率はカペシタビン群74.1%、コントロール群67.7%(p=0.00524)、5年全生存率も89.2%対83.9%(p<0.01)と有意にカペシタビン群で良好であった。サブグループ解析では、どのグループでもカペシタビン群で良好な傾向であった。ホルモン受容体の有無によらなかったが、陰性でより効果が高い傾向にはあった。正式に論文化されるのを待ちたいが、術前化学療法後に腫瘍が残存しステージが高く、予後不良な乳がんに対して有効な治療であることは間違いなさそうであり、どのように実臨床に取り込んでいくか議論が必要だろう。また、毒性の程度が日本人と異なる欧米で、どの程度受け入れられるかも注目されるところである。ルミナルA乳がんは一般に予後良好で、早期であれば全身治療は内分泌療法単独で良いと一般的に考えられている。DBCG77B無作為化比較試験から、ハイリスクのルミナルA乳がんを選択し予後を比較した結果が報告された。DBCG77B試験は腫瘍径5cm以上またはリンパ節転移陽性の閉経前乳がんに対し、classic CMF(C:130mg/m2)、oral cyclophosphamide(130mg/m2、2週投与2週休薬、12サイクル)、levamisole、化学療法なしの4群に分けて予後をみたものであるが、前2群はlevamisole群や化学療法なし群と比較して25年全生存率を改善している (Ejlertsen B, et al. Cancer;116:2081-2089.)。classic CMFに関しては、2014年SABCSレポート(NSABP B-36:リンパ節転移陰性乳がんにおいて6サイクルのFECと4サイクルのACを比較する無作為化第III相試験)を参照してほしい。ルミナルAの定義は免疫染色でER陽性、PR 20%以上、Ki67 13%以上、CK5/6陰性、EGFR陰性とした。 今回の研究では、1,146例のうち633例で免疫染色結果が利用でき、165例がルミナルAに分類された。633例の特徴は1,146例全体と比べN+例の比率がやや高く、化学療法施行例がわずかに多かった。浸潤がんの10年無再発生存率は、非ルミナルAでは化学療法の効果が明らかであったのに対し、ルミナルA群ではまったく差がなかった(化学療法あり134例、なし31例)。25年全生存率も同様であった。非ルミナルAのうちHER2タイプでは浸潤がんの10年無再発生存率に全く差がなく、HER2陽性乳がんにおけるCMFの効果の弱さを裏付けるものであった。DBCG77Bはかなり古い試験であり、内分泌療法が行われていないなどいくつかの問題点はある。しかし、ルミナルAはリンパ節転移陽性であっても、化学療法のベネフィットがないということはリーズナブルな結果と考えられる。現在NCCNガイドラインによれば、オンコタイプDxもリンパ節転移陽性(1~3個)に対して適応しうることが記載されており、低リスクに対しては化学療法のベネフィットが得られないだろうと考えられるようになっている。また、乳がんサブタイプとオンコタイプDxの再発リスクの間には強い相関もあり、私自身はこの結果にとくに驚くものではない(Fan C, et al. N Engl J Med. 2006;355:560-569.)。むしろDBCG77B試験をあらためて読み、classic CMFとoral cyclophosphamideの間に差がないことのほうが驚きであった。本邦では、再発乳がんにおいてoral cyclophosphamideと5-FU系薬剤との併用の有効性が検討され、5-FU系薬剤の効果がむしろ強調されてきたが、実はoral cyclophosphamideのほうがより重要なのかもしれない。デジタルマンモグラフィが2Dであるのに対して、トモシンセシスは3Dマンモグラフィである。2D に3Dを加えることにより、2D単独と比較して浸潤がんの発見が40%増加し、疑陽性率が15%低下することが報告されており(Skaane P, et al. Radiology. 2013;267:47-56.)、他の研究も同様の結果となっている(Ciatto S, et al: Lancet Oncol. 2013;14:583-589、Friedewald SM, et al. JAMA.2014;311:2499-2507)。しかし、3Dを加えることで、被曝量の増加(約2倍)、圧迫時間の延長(ただし圧迫圧は減少)、装置のコスト、装置の耐久性、トレーニング、読影時間の延長が問題となる。そこで3Dから擬似的に合成した2D画像(合成2D)により(3Dは選択して読影)、読影時間の問題を解決するか試みた研究が英国から報告された。2,589乳房のうち280乳房のみが3D読影を必要とした。3D読影を行わないことにより、10乳房のM3と1乳房のM4を見逃したのみであり、そのうち乳がんであったのは2乳房のみであった。研究の限界としては、経験豊富な放射線科医1名の読影であり、スクリーニングの場面ではないことがある。しかし、見落としを最小限にしながら読影時間を短縮するのに、合成2Dは有用な方法と考えられる。臨床の現場では、通常のマンモグラフィ検診で要精査とされた中に疑陽性(とくにFAD)が多いことに驚く。患者はそのことにより、夜も眠れず不安を抱えて病院を受診する。超音波検診も含めて、疑陽性を極力減らすための努力が必要である。ビスホスホネート製剤は閉経後乳がんに対する遠隔再発、骨転移を減らし、乳がんによる死亡率を低下させることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)のメタ分析から示されている(参照)。今回は、デノスマブの生存率向上効果がABCSG-18試験(オーストリアとスウェーデン)によって示された。ホルモン受容体陽性閉経後乳がんにおいて術後補助療法として、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬と共に6ヵ月ごとにデノスマブを60mg投与する群とプラセボ群に分け、3,425例が無作為に割り付けられた。デノスマブの投与期間は規定されていない。おそらく5年程度は使用されているのだろう。結果として、無再発生存期間はデノスマブ群でわずかに高かった(p=0.0510)。サブグループ解析では、腫瘍径2cm以上ではより明らかであった(p=0.0419)。これは、より再発率の高いグループで効果が明瞭になるということだろう。顎骨壊死は1例もなかったが、これは特筆すべきである。本試験のプロトコルには、治療開始前や治療中の予防的な口腔ケアについては何ら記載されていない。顎骨壊死がなかった理由として、投与量が少ないためか、6ヵ月ごとの投与ではほとんど問題にならないのか、あるいはオーストリアやスウェーデンでは口腔ケアが当たり前になっているのか不明である。また、治療期間中カルシウムとビタミンDの服用を強く推奨するという記載にとどまっていて規定にはなっていないようだが、重篤な低カルシウム血症も起きていないようである。ただし、このあたりも、臨床で使用する際には一応注意はしておいたほうが良いだろう。閉経後乳がんにおいては、進行度の高いほど骨標的療法の生存率への効果が高いと考えられ、実臨床でも考慮すべき時期になったといえる。

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うつ病に対するケタミン、効果的な投与量は

 低用量ケタミンは、速やかな抗うつ効果を発揮することが最近の研究で示されている。しかし、用量反応性、患者群間の一貫性、自殺傾向への影響、クロスオーバー試験に起因するバイアスの可能性などは明らかになっていない。オーストラリア・シドニー大学のYing Xu氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を行い、低用量ケタミンは超低用量ケタミンより有効であることを示した。ただし、5分の1の患者は1週間で寛解したが、その他の大半の患者では効果が長続きせず、臨床的効果にはかなりばらつきがみられたという。著者らは、「有効性を向上させるため、また安全性についてさらに評価するため、より大規模で長期的な比較試験が必要である」とまとめている。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年11月17日号の掲載報告。 研究グループは、Medline、Embase、PsycINFOのデータベースを用いて、2014年8月時点で関連する無作為化試験を検索した。主要評価項目は、1日目・3日目・7日目時点までのうつ病スコア(HAM-DまたはMADRS)の変化、寛解率、反応率、自殺傾向、安全性および忍容性とした。データ抽出は2人の研究者が独立して行い、可能な限りクロスオーバー比較試験の第1期における治療効果の未発表データを入手した。 主な結果は以下のとおり。・9試験を解析に組み込んだ(計201例、女性52%、平均年齢46歳)。・低用量ケタミン(静脈注射0.5mg/kg)の試験が6件、超低用量ケタミンの試験が3件(経鼻スプレー50mg:1件、静脈注射0.1~0.4mg/kg:1件、静脈注射・筋肉注射・皮下注射0.1~0.5mg/kg:1件)であった。・3日目において、超低用量ケタミンの試験(均質性のp<0.05)および双極性障害患者群で、うつ病スコアの減少が少なかった。・クロスオーバー試験の第2期を除く分析では、7日目においてケタミン群で反応率(相対リスク[RR]:3.4、95%信頼区間[CI]:1.6~7.1、p=0.001)、および寛解率(RR:2.6、95%CI:1.2~5.7、p=0.02)が増加し、寛解率は24%対6%と有意に大きな絶対有益性が示された(p=0.02)。・7試験から自殺傾向に関する未発表データが提供された。自殺傾向は、7日目ではなく1日目および3日目で有意に減少した(どちらも p<0.01)。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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乳がん術後化学療法中のLHRHa、卵巣機能を長期保護/JAMA

 年齢中央値39歳の早期乳がん患者の術後化学療法中に、黄体形成ホルモン放出ホルモンアナログ(LHRHa)製剤のtriptorelin併用は、化学療法単独と比べて妊娠率について統計的に有意な差はなかったが長期的な卵巣機能の回復率が高いことが、イタリア・IRCCS AOU San Martino-ISTのMatteo Lambertini氏らによる無作為化試験の結果、示された。無増悪生存(DFS)については、試験の検出力に限界があったとしたうえで、統計的有意差は認められなかったと報告している。化学療法中のLHRHa併用は卵巣機能保護戦略として信頼性が高いが、長期的な卵巣機能への影響、および妊娠に関するデータは不足していた。また、併用療法に関する安全性への懸念もあり論争の的となっていた。JAMA誌2015年12月22・29日号掲載の報告。StageI~III、年齢中央値39歳281例を対象に化学療法単独群と比較 検討は、並行群間比較無作為化非盲検の第III相優越性試験として、イタリアの16病院で行われた。2003年10月~2008年1月の間に、StageI~III、ホルモン受容体陽性または陰性の乳がんで閉経前の女性患者281例(年齢中央値39歳、範囲:24~45歳)を登録。術後/術前補助化学療法の単独を受ける群(対照群、133例)と化学療法+triptorelinを受ける群(LHRHa群、148例)に無作為に割り付け追跡評価した。 事前に計画された主要エンドポイントは、化学療法による早期閉経の発生率であった。事後エンドポイントとして、長期の卵巣機能(毎年の評価で1サイクル以上の月経があった場合に再開と定義)、妊娠、DFSを評価した。 最終フォローアップは2014年6月3日。追跡期間中央値は7.3年(範囲:6.3~8.2年)であった。月経再開5年累積発生率は併用群が1.28倍、妊娠数も有意差はないが2.56倍 結果、月経再開の5年間の推定累積発生率は、LHRHa群72.6%(95%信頼区間[CI]:65.7~80.3%)、対照群64.0%(同:56.2~72.8%)であった(ハザード比[HR]:1.28、95%CI:0.98~1.68、p=0.07、年齢補正後HR:1.48、95%CI:1.12~1.95、p=0.006)。 妊娠発生は、LHRHa群で8例(推定累積発生率:2.1%、95%CI:0.7~6.3%)、対照群は3例(同:1.6%、95%CI:0.4~6.2%)であった(HR:2.56、95%CI:0.68~9.60、p=0.14、年齢補正後HR:2.40、95%CI:0.62~9.22、p=0.20)。 5年DFSは、LHRHa群80.5%(95%CI:73.1~86.1%)、対照群83.7%(95%CI:76.1~89.1%)であった(LHRHa vs.対照のHR:1.17、95%CI:0.72~1.92、p=0.52)。

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EXAMINATION試験:Drug Eluting StentはST上昇型急性心筋梗塞の再灌流療法のスタンダードに!(解説:平山 篤志 氏)-470

 ST上昇型急性心筋梗塞の急性期死亡率は、この20年間で急速に減少し、今や5%程度になった。これは、ひとえにステントにおける確実な再灌流が可能になったことによる。ただ、初期に使用されたベアメタル(BMS)では、急性期に拡張に成功しても慢性期に再狭窄の頻度が高く、再度のインターベンションが必要とされた。 これに代わるステントして、CypherやTAXUSという第1世代の薬剤溶出ステント(Drug Eluting Stent:DES)が開発された。初期の成績は良好であったが、2006年に1年以後に血栓症が発症する(晩期ステント血栓症)が問題となり、再狭窄を予防しても血栓症のリスクの代償をどう考えるかが問題となった。それは、待機的な場合だけでなく、急性心筋梗塞においても1年以内の再狭窄がBMSと比較して低率であり、血栓症も0.2~0.6%であれば低率と考えられたが、やはり血栓症のもたらすリスクは大きく、長期的な使用には安全性の担保が必要であった。 EXAMINATION試験では、第1世代ではなく第2世代といわれるエベロリムスを用いた薬剤溶出ステント(EES)とBMSの比較試験で、すでに2年間のデータでは、主要アウトカムである、全死因死亡・心筋梗塞・血行再建術の複合イベントをEESが有意に減少させることを報告していた。今回の発表では5年間という長期にわたっても、EESの有意性が示された。全死亡がEES群で有意に減少した原因については、今後の詳細な検討が必要である。少なくとも抗血小板使用の頻度もBMSと同等であることを考慮すれば、第3世代のDESが再灌流療法のスタンダードとしての地位を築いているという現状のエビデンスを示したことになる。 これから、現在行われている第2世代と第1世代の比較、あるいはBMSとの比較試験がなされるだろうが、結論が変わることはないであろう。今後開発される生体吸収性スキャフォールドは、ST上昇型急性心筋梗塞に対して本試験における第2世代のDESの成績と同等、あるいはそれ以上のアウトカムの向上が必要とされるであろう。

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第2世代抗精神病薬、小児患者の至適治療域を模索

 イタリア・Scientific Institute IRCCS Eugenio MedeaのMarco Pozzi氏らは、薬物血中濃度モニタリング(TDM)の観察研究にて、小児患者の実生活における第2世代抗精神病薬(SGA)の血中濃度特性を調べた。その結果、リスペリドンは成人よりも低値だが、アリピプラゾールは類似しているなどの特性が明らかになったという。著者らは、「今回のデータをより大規模な患者集団で検証すれば、小児患者におけるリスペリドンやアリピプラゾールの至適治療域を明確化できる可能性がある」と報告している。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2015年11月28日号の掲載報告。 SGAのTDMに関する利用可能なガイドラインは、成人を対象に作成されており、薬物の吸収・分布・代謝・排泄が成人とは異なる小児患者にそのまま当てはめることはできない。また、精神神経疾患を有する小児患者における用量換算ツールは少なく、有効性の減少あるいは毒性リスクの増加につながる可能性が指摘されている。研究グループは、2012~14年にイタリアの3施設で、小児精神神経科の外来患者172例を対象に、SGA[リスペリドン(+9-ヒドロキシリスペリドン)、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン]の血中濃度(血漿トラフ濃度)を測定し(計556検体)、投与量と臨床変数との関連について検討した。 主な結果は以下のとおり。・リスペリドンの血中濃度は、成人よりも低かった(中央値13.6ng/mL)。患者内変動は小さく(34.2%)、患者間変動は大きかった(78.9%)。・重回帰分析の結果、リスペリドンの血中濃度は投与量のみに依存した(p<0.001)。・アリピプラゾールの血中濃度は、成人と類似していた(中央値165.8ng/mL)。患者内変動は非常に小さいが(29.3%)、患者間変動は大きかった(81.1%)。・重回帰分析の結果、アリピプラゾールの血中濃度は1日投与量(p<0.001)および併用薬剤数(p<0.01)に影響を受けることが示された。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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認知症ドライバーの通報規定、どう考えますか

 米国では、各州で医師による認知症ドライバーに関する州政府自動車省(DMV)への通報規定が異なっており、義務となっている州もあれば任意の州もある。また、この問題に関して規定がない州もあり、アーカンソー州もその1つである。一方でアーカンソー州の医師には、意に反して患者をDMVへ通報した場合に法的責任を負わされるリスクがある。そこで、ニューメキシコ州立大学のErika M. Gergerich氏がアーカンソー州の医師が抱える認知症ドライバー問題を明らかにする目的で調査を行ったところ、アーカンソー州議会が任意の通報規定を採択するよう求める結果が示された。著者は、「認知症患者の運転適性評価の訓練と同様、州の通報規定に関する医師への教育も必要である」と述べている。Gerontologist誌オンライン版2015年11月25日号の掲載報告。 研究グループは、アーカンソー州の神経内科医および老年病専門医が認知症ドライバーの問題をどのように捉えているのかを確認するため、3つの課題について調査用紙を配布した。(1)認知症ドライバーのDMVへの通報に関する州政策についてどのような知識を有しているか(2)認知症ドライバーの通報に関するさまざまな政策の選択肢について、どのような意見を持っているか(3)認知症ドライバーに関する通報の実務はどうしているか 主な結果は以下のとおり。・回答から、リスクのある認知症ドライバーの評価や通報のプロセスに関し、かなりの懸念があることが判明した。・通報について、任意を支持する意見が強く、義務化を望む声は少なかった。・運転をやめることについての患者および介護者との対話については、論争中または継続中との回答が目立った。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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中皮腫の初回治療、ベバシズマブ上乗せでOS延長/Lancet

 悪性胸膜中皮腫の初回治療について、標準療法であるシスプラチン+ペメトレキセドの併用療法へのベバシズマブの上乗せは、全生存期間(OS)を有意に改善することが、フランス・カーン大学のGerard Zalcman氏らによる第III相の非盲検無作為化試験の結果、示された。毒性効果として循環器系の有害事象が増えるものの、著者は、「予想の範囲内のものであり、ベバシズマブの上乗せは適切な治療と見なすべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2015年12月21日号掲載の報告。標準初回治療への上乗せ効果を無作為化試験で検討 悪性胸膜中皮腫は進行が早く予後は不良で、職業性のアスベスト曝露との関連が知られている。初回治療は、シスプラチン+ペメトレキセドの併用療法とされているが、その適用はシスプラチン単独との比較でOS中央値12.1(ビタミンB12、B9服用群では13.3) vs.9.3ヵ月、無増悪生存(PFS)中央値5.7 vs.3.9ヵ月のデータに基づく。また、進行性悪性中皮腫へのペメトレキセド+カルボプラチン併用療法の第II相の試験で示された結果は、OS中央値12.7ヵ月、PFS中央値6.5ヵ月であった。 こうした中、先行研究で、中皮腫細胞の病態生理において血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルが重大な役割を果たすことが示唆されたことから、研究グループは、VEGFをターゲットとする抗血管新生治療薬が効果を示すのではないかと本検討を行った。 試験は、フランスの73病院から被験者を集めて行われた。18~75歳、切除不能の悪性胸膜中皮腫で化学療法未治療、全身状態はEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)スコアで0~2、重大な心血管疾患の併存はなく、CTで評価が可能な病変(胸水)または測定可能な病変(胸膜肥厚)が少なくともいずれか1つあり、余命は12週超の患者を対象とした。除外基準は、中枢神経系への転移あり、抗血小板薬(アスピリン325mg/日以上、クロピドグレル、チクロピジン、ジピリダモール)を使用、ビタミンK拮抗薬を有効量使用、低分子量ヘパリンを有効量使用、非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている、であった。 被験者を、ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)の静注投与(PCB)群、またはベバシズマブの代わりにプラセボを投与する(PC)群に1対1の割合で無作為に割り付け、3週間に1回を最大6サイクル、病勢進行または毒性効果が認められるまで行った。なお、無作為化には最小化法を用い、患者を組織学的(上皮型 vs.肉腫型、または混在型)、全身状態(ECOGスコア0~1 vs.2)、試験病院、喫煙状態(非喫煙 vs.喫煙)で層別化した。 主要アウトカムはOS。intention-to-treat解析にて評価した。OSが有意に延長、18.8ヵ月 vs.16.1ヵ月 2008年2月13日~14年1月5日に、計448例の患者を無作為化した(PCB群223例[50%]、PC群225例[50%])。被験者は、男性75%、年齢中央値65.7歳、上皮型81%、ECOGスコア0~1が97%、喫煙者57%などであった。 6サイクルを完遂したのは、PCB群74.9%、PC群76.0%。フォローアップ中央値は39.4ヵ月で両群に差はなかった。 主要アウトカムのOS中央値は、PC群(16.1ヵ月、95%信頼区間[CI]:14.0~17.9)と比べてPCB群(18.8ヵ月、15.9~22.6)で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.62~0.95、p=0.0167)。 なお、PFSもPCB群で有意な改善が認められた(9.2ヵ月 vs.7.3ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.50~0.71、p<0.0001)。 Grade3/4の有害事象の報告は、全体ではPCB群158/222例(71%)、PC群139/224例(62%)であった。PC群と比べてPCB群では、Grade3以上の高血圧症(51/222例[23%] vs.0例)、血栓イベント(13/222例[6%] vs. 2/224例[1%])の頻度が高かった。

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日本人における便秘と心血管疾患死のリスク

 大阪大学の久保田 康彦氏らは、排便頻度および下剤使用と心血管疾患(CVD)との関連について、日本人の大規模コホート研究であるJACC(Japan Collaborative Cohort)Studyで検討した。その結果、便秘はCVD危険因子への曝露を示すマーカーとなる可能性があり、下剤使用は冠動脈疾患と虚血性脳卒中による死亡の危険因子となりうることが示唆された。Journal of epidemiology誌オンライン版2015年12月26日号に掲載。 本研究では、1988~90年にCVDやがんの既往のない7万2,014人(40~79歳、男性2万9,668人、女性4万2,346人)について、排便頻度(毎日・2~3日に1回・4日以上に1回)と下剤使用(はい・いいえ)に関する情報を含むライフスタイルのアンケートを開始時に実施し、2009年まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。・116万5,569人年のフォローアップの間に死亡した参加者は、冠動脈疾患が977人(男性561人、女性416人)、脳卒中全体が2,024人(男性1,028人、女性996人)、虚血性脳卒中が1,127人(男性606人、女性521人)、出血性脳卒中が828人(男性388人、女性440人)であった。・CVDの危険因子(糖尿病、ストレス、うつ病、運動不足など)の保有率は、下剤使用者と排便頻度の低い人で高かった。・多変量解析による下剤使用者のハザード比(95%CI)は以下のとおり。 冠動脈疾患:1.56(1.21~2.03) 脳卒中全体:1.27(1.08~1.49) 男性における虚血性脳卒中:1.37(1.07~1.76) 女性における虚血性脳卒中:1.45(1.17~1.79)・追跡期間初期の死亡を除外しても同様の結果が認められた。・排便頻度とCVDによる死亡の間に有意な関連は認められなかった。

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必要以上にHbA1cを検査することは糖尿病の過剰治療につながる(解説:吉岡 成人 氏)-468

日本の現状と米国糖尿病学会の推奨 血糖コントロールが安定している2型糖尿病患者において、インスリン製剤を使用していない患者では、どの程度の間隔でHbA1cを測定するのが適切なのであろうか。 私たちの施設では、非薬物療法の場合は3ヵ月から半年に1回、経口糖尿病治療薬を使用している場合は、2~3ヵ月に1回、インスリン治療を行っている患者では、1~2ヵ月に1回の間隔で測定を行っている。糖尿病の専門施設で病診連携を積極的に行っている場合には、2型糖尿病の場合は1年に1~2回程度、しかし、連携先の一般のクリニックでは、おそらく毎月1回程度はHbA1cを測定していると思われる。 米国糖尿病学会(ADA:American diabetes association)ではHbA1cの適正な測定間隔について、・血糖コントロール目標を達成し、安定している場合には少なくとも年に2回以上・治療モードを変更した場合ないしは血糖コントロール目標を達成していない場合には 3ヵ月に1回・HbA1cの簡易測定装置を利用したPOCT(point-of-care testing)によって、より適切に治療モードの変更を行うことができる。と記載している(Standards of Medical Care in Diabetes-2015: Diabetes Care. 2015;38: S34-35.)。 医療費や医療に対するアクセスが日本とは異なる、米国における推奨(Recommendations)をどの程度尊重するかには慎重な姿勢が求められるが、今回、HbA1cの過剰な測定が糖尿病の「過剰治療につながる」という論文がBMJに公表された。安定した2型糖尿病患者でHbA1c測定を3回以上実施するのは過剰治療 インスリン製剤を使用せずに血糖コントロール目標が達成され、維持されている場合は、2型糖尿病では、年に1~2回のHbA1cの測定が「適切」と考えられているため、地域住民を対象とした後ろ向きの調査によって、HbA1cの過剰測定が治療変更へ影響しているかどうかを検討したものである。 全米8,600万人以上の民間保険加入者を対象とした、診療報酬請求データベースであるOptum Labs Data Warehouseおよびメディケア・アドバンテージの2001~14年のデータが解析の対象となっている。 18歳以上で、インスリンを使用せずに血糖コントロールが安定しており(24ヵ月以内の2回の検査でいずれもHbA1c<7.0%)、重症の低血糖や高血糖の既往がない2型糖尿病患者を抽出し解析が行われた。妊娠中の患者は除外されている。HbA1cの測定は2回目の実施を起点としてその後24ヵ月までの実施回数を数え、ガイドラインの推奨回数(6ヵ月ないしはそれ以上の間隔で2回/年まで)、高頻度(3~4回/年)、過剰(5回以上/年)に分類。治療レジメンの変更は、検査の3ヵ月後と3ヵ月前の薬剤の診療報酬請求を比較することで確認している。血糖降下薬の薬剤数の増加、インスリン製剤の追加を「治療の強化」と判定している定義し、脱強化は1つ以上の薬剤を中止した場合とした。 解析の対象となったのは、3万1,545例、平均年齢58±11歳、HbA1cは6.2±0.4%、全体の32.9%は経口糖尿病治療薬を投与されておらず、37.7%は単剤での治療、21.3%は2剤、8.2%が3剤以上の併用であった。 HbA1cの測定頻度が適切でRecommendationに沿っていたのは39.7%であり、過剰が5.8%、高頻度は54.5%であり、およそ60%がRecommendationを超えて実施されていた。 検査回数の多い患者は、年齢が高く、合併症罹患率が高く、糖尿病治療薬の数が多く、HbA1cが高値であり(いずれもp<0.001)、一般医よりも専門医ではHbA1cの測定頻度が高かった。 解析期間中に治療モードの変更がなかった患者は81.6%、血糖コントロールが推奨目標値を満たしたにもかかわらず治療が強化された患者が8.4%認められ、HbA1cの測定が過剰な群で13%、高頻度の測定群で9%、推奨範囲の測定患者では7%と、HbA1cの測定が多いことが過剰治療と関連することが確認された(p<0.001)。HbA1cが過剰に測定された群では、HbA1cの測定が推奨回数にとどまった群に比較して、治療が強化される可能性が有意に高かった(オッズ比:1.35、95%信頼区間:1.22~1.50)。 著者らは、推奨回数以上のHbA1cの測定が過剰な血糖降下薬治療をもたらす可能性があり、過剰な検査が保健医療における無駄を増やし、糖尿病管理における患者の負担を増大させると結論付けている。日本における実情を勘案してみると 医療費が日本と比べ桁違いに高い米国で、保険会社のサポートを受けて実施された後ろ向き観察研究であり、データも保険会社が保有しているものが使用されている。検査回数の適正化が無駄な医療費を減らし、患者の負担を軽減すると結論付けているが、このデータには、治療の中断や未治療の患者は入ってこない。確かに、医療機関を定期的に受診している50代後半のHbA1cが6.2%の患者では、HbA1cの測定は年に数回で構わないのであろうが、診察の機会が少ないことは患者の病識を希薄にし、治療の中断にもつながる。日本においては、未受診や治療を中断している患者が糖尿病患者全体の30%を超えるという現状があることを勘案すると、このデータをそのまま受け止めるのはためらいを感じざるを得ない。

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レノックス・ガストー症候群〔LGS : Lennox-Gastaut syndrome〕

1 疾患概要■ 定義・疫学Lennox-Gastaut syndrome(LGS)は、小児期発症のてんかん症候群のうち、1~10%を占める。典型例は、(1)脳波異常:遅棘徐波(<3 Hz)、(2)精神遅滞・認知障害、(3)多彩な難治性てんかん発作を呈する。1~8歳の小児期(多くは3~5歳)に発症し、やや男児に多い。■ 病因60%は症候性であり、原因として周産期障害、局所性皮質形成異常、結節性硬化症、ダウン症候群、頭部外傷などが挙げられる。残りの40%は潜因性である。30~65%は症候群から移行する。近年、全エクソン解析によって遺伝学的背景が明らかとなってきており、CHD2、HNRNPU、DNM1、GABRB3、SCN1Aなど複数の原因遺伝子が報告されている。■ 症状LGSの75%以上は、2種類以上の発作型を有する。1)強直発作最も多い発作型であり診断には必須とされる。レム睡眠期に頻度が高く、数秒間の短い発作であり、軸性(頭部・頸部)、体軸-肢体性(上肢)、全身性に分類される。頻脈、顔面紅潮、瞳孔散大、失禁などの自律神経症状を伴う。2)非定型欠神発作強直発作と同程度の頻度で認められる。小児の定型欠神発作と比較すると、発作の起始と終了は不明瞭であり、持続時間が長いことが特徴である。眼瞼や口部のミオクローヌス、四肢屈曲、頸部強直などの運動発作や自動症を伴うこともある。3)脱力発作頻度は10~56%とされ、強直発作より少ない。程度はさまざまで、頭部前屈のみの発作から転倒を伴うものまでみられる。発作に先行してミオクローヌスを認めることもある。4)その他全身強直間代性けいれん、ミオクロニー発作や複雑部分発作もみられる。5)非けいれん性てんかん重積LGSでは、50~75%と比較的高頻度にみられる。活動性低下や意識混濁が長く続き、運動要素を伴う発作頻度が増加する。強直発作が、覚醒・睡眠中にほぼ持続的に出現する強直発作重積もみられることがある。■ 脳波所見遅棘徐波(1.5~2.5 Hz)を認め、覚醒から入眠期にかけて増加し、最大振幅は前頭葉であることが多い(図)。ノンレム睡眠時には広汎性多棘徐波複合となり、覚醒時と比較して周波数は遅くなる。深睡眠では、特徴的な10~15Hzのrapid rhythmを認める。背景活動の周波数は、年齢に比して遅い。脱力発作では、頭部や顔面の外傷を予防するため、ヘルメットなどで保護する必要がある。■ 予後てんかんは小児期に始まり、成人期まで難治性のまま経過する。認知発達は障害され、LGS発症5年後で75~90%に精神遅滞を認める。行動異常や自閉性も伴い、大部分は教育において特別支援を要する。早期発症やWest症候群から移行した例、重積発作を反復する例では、より予後不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)Severe myoclonic epilepsy of infancy(SMEI または Dravet症候群)乳児期に発熱と関連する、全身性けいれんで発症する。その後、1~4歳頃に無熱性の間代性けいれん、ミオクロニー発作、非定型欠神発作を認める。LGSとは異なり、熱性けいれんやてんかんの家族歴を高率に認め、SCN1A遺伝子変異を認めることが多い。2)ミオクロニー失立てんかん(MAE または Doose症候群)発症年齢や発作型がLGSと類似しており、鑑別困難な疾患の1つであるが、LGSと比較して、MAEは発症時に正常発達であることが多く、経過に伴って発作の主体がLGSは強直性けいれん、MAEではミオクロニー失立発作となる特徴がある。また、発症から数年後にけいれん発作が軽快する予後良好な症例群がみられることも、LGSと異なる。覚醒時脳波では、開眼によっても消失しない4~7Hz頭頂後頭部θ波が特徴的である。3)非定型良性小児部分てんかん/偽性LGS睡眠時の部分発作や非定型欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を認める。脳波では、深睡眠での頻回もしくは持続性の棘徐波が特徴である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 抗てんかん薬2013年3月にルフィナミド(商品名:イノベロン)が、LGSに対する他のてんかん薬との併用療法として承認された。有効率は32.7%で、特に強直発作と脱力発作に対する効果が示唆されている。バルプロ酸(同:デパケンほか)とラモトリギン(同: ラミクタール)はすべての発作型にある程度効果を認めるが、脱力発作により有効である。フェニトイン(同:アルビアチンほか)は強直発作、エトスクシミド(同:エピレオプチマルほか)は脱力発作への効果が報告されている。クロバザム(同:マイスタン)高容量(1.0mg/kg/day)で脱力発作が40%以上減少したと報告があるが、鎮静や分泌増加の副作用に注意する必要がある。その他、トピラマート(同:トピナ)とfelbamate(わが国では未承認)は脱力発作をそれぞれ34%、 14.8%減少させる有効性が報告されている。■ その他外傷を伴う転倒発作に対して、脳梁離断術が行われるが、効果は一定しない。迷走神経刺激療法は、種々の発作、とくに脱力発作への有効性が示唆されている。4 今後の展望原因遺伝子が複数同定されてきており、今後分子病態を基にした新規抗てんかん薬の開発が期待される。5 主たる診療科小児神経科(日本小児神経学会ウェブサイトより)てんかん科(日本てんかん学会ウェブサイトより)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)小児慢性特定疾患(日本小児神経学会)(一般利用者向けと会員医療従事者向けのまとまった情報)てんかん診療ネットワーク(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Living with LGS(一般利用者向けの英文サイト)1)Crumrine PK. Paediatr Drugs.2011;13:107-118.2)VanStraten AF, et al. Pediatr Neurol.2012;47:153-161.3)久保田雅也.小児てんかんの最新医療.In:五十嵐隆、岡明 編.小児科臨床ピクシス3.中山書店;2008.p.146-149.4)Beaumanoir Aほか. Lennox-Gastaut症候群.In: J Rogerほか編.てんかん症候群 乳幼児・小児・青年期のてんかん学.中山書店;2007.p.123-145.5)Epi4K Consortium & Epilepsy Phenome/Genome Project, et al. Nature.2013;501:217-221.6)Montouris GD, et al. Epilepsia.2014;55:10-20.公開履歴初回2013年07月11日更新2016年01月12日

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ドパミンD2/3受容体拮抗薬、統合失調症患者の脳白質を改善

 精神病症状は、統合失調症の中核症状だが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のBjorn H. Ebdrup氏らは、陽性症状は前頭皮質に投影している白質路の不規則性に起因するという最近の仮説を検証する目的で、拡散テンソル画像を用いた解析を行った。その結果、未治療の統合失調症患者では、白質の微細な障害が認められることを明らかにした。とくに陽性症状は前頭の神経線維束の整合性と関連しており、選択的ドパミンD2/3受容体拮抗薬が白質を修復する可能性が示唆されたという。結果を踏まえて、著者らは「ドパミンD2/3受容体拮抗薬の再ミエリン化作用をさらに検討する必要がある」とまとめている。Journal of Psychiatry Neuroscience誌オンライン版2015年11月24日号の掲載報告。 検討は2008年12月~11年7月に、未治療の初回エピソード統合失調症患者(患者群)38例と、年齢、性別などをマッチさせた健常者(対照群)38例を対象に行われた。被験者はベースラインで、3-T MRI拡散テンソル画像(DTI)の撮像と臨床評価を受けた。研究グループは、全脳的DTIデータを単位画素(ボクセル)ごとに解析するTBSS(tract-based spatial statistics)法と、解剖的関心領域について解析するROI(region of interest)法を用いて、異方性比率(fractional anisotropy:FA)値の群間差を評価した。その後、患者群はアミスルピドによる抗精神病薬単独療法を行い、投与6週後に再度検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・試験を完了し解析対象となったのは、各群28例であった。・ベースラインでのTBSS解析において、患者群では右前視床放線、右帯状束、右下縦束および右皮質脊髄路(CT)のFA値が低下しており、右前視床放線のFA値が陽性症状と相関していた(z=2.64、p=0.008)。・ROI解析では、前頭の神経線維束、とくに右弓状束(z=2.83、p=0.005)および右上縦束(z=-3.31、p=0.001)のFA値と陽性症状の有意な関連が認められた。・投与6週間後において、陽性症状と前頭の神経線維束とのすべての相関は消失しており、前視床放線のFA値は対照群と比較して患者群で増加した(z=-4.92、p<0.001)。・アミスルピリドの投与量が、右皮質脊髄路におけるFA値の変化と正の相関を示した(t=2.52、p=0.019)。・なお、喫煙および物質乱用の既往歴は潜在的な交絡因子であった。また、白質に対するアミスルピリドの長期的な作用は評価されなかった。

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糖尿病による認知症リスクに男女差あり~230万人の解析

 2型糖尿病により上乗せされる心血管疾患リスクは、男性より女性で大きい。糖尿病は認知症の危険因子でもあるが、その関連性に男女差がないかどうかは不明である。オーストラリアAlfred HealthのSaion Chatterjee氏らは、男女の糖尿病患者と認知症発症における性特異的な関連を検討するために、未発表データを用いてメタ解析を行った。その結果、2型糖尿病患者は非糖尿病者に比べて認知症の発症リスクが約60%高いこと、また、血管性認知症の上乗せリスクは女性のほうが大きいことが示唆された。Diabetes Care誌オンライン版2015年12月17日号に掲載。 著者らは、2014年11月以前に発表された研究で、糖尿病と認知症とのプロスペクティブな関連についての報告を体系的に検索した。各研究の著者から、糖尿病と認知症(全体およびサブタイプ)の関連における未発表の性特異的相対リスク(RR)および95%CIを入手した。ランダム効果メタアナリシスを用いて、性特異的RRおよびRRの女性対男性比(RRR)をプールした。 主な結果は以下のとおり。・14研究、合計231万330人、認知症10万2,174例のデータを解析した。・複数の交絡因子による調整後の解析では、男女共に、糖尿病により何らかの認知症のリスクが約60%増加した(女性:プールされたRR 1.62 [95%CI:1.45~1.80]、男性:同 1.58 [同:1.38~1.81])。・血管性認知症における糖尿病関連RRは、女性で2.34(95%CI:1.86~2.94)、男性で1.73(同:1.61~1.85)であった。また、非血管性認知症におけるRRは、女性で1.53(同:1.35~1.73)、男性で1.49(同:1.31~1.69)であった。・糖尿病の女性の血管性認知症の発症リスクは、男性よりも19%高かった(複数因子で調整されたRRR 1.19 [95%CI:1.08~1.30]、p<0.001)。

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うつ病のプラセボ効果、そのメカニズムとは

 米国・ミシガン大学のMarta Pecina氏らは、大うつ病性障害(MDD)患者におけるプラセボ効果のメカニズムを明らかにするため、プラセボを用いた導入期、主に選択的セロトニン再取り込み阻害薬を用いたオープンラベル期の2期で構成した臨床試験を実施した。その結果、プラセボによりμ-オピオイドシステムの活性化がもたらされ、これがプラセボによる抗うつ効果に関連し、さらに抗うつ薬の効果にも関連している可能性を報告した。JAMA Psychiatry誌2015年11月号の掲載報告。 MDD患者におけるプラセボ効果の背景にある神経化学的機序を検討するため、2種類のプラセボ導入期、続いて抗うつ薬を投与するオープン期で構成される検討を行った。2種類の同一の経口プラセボ(速効性抗うつ薬様効果を有する活性プラセボあるいは効果を有さない不活性プラセボ)を用い、2週間の単盲検クロスオーバーランダム化臨床試験を実施した。続いて、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、あるいはケースによっては臨床的に指示された他の薬剤を用い、10週間のオープンラベル試験を行った。 ボランティア(大学の医療システムで薬物治療を受けていないMDD患者35例)に対し、1週間の不活性経口プラセボおよび活性経口プラセボをそれぞれ投与した後、PET検査およびμ-オピオイド受容体選択的放射性トレーサーである[11C]カルフェンタニルを用いた検査を行った。さらに、化合物が気分向上に関わる脳システムの活性化に関連する可能性があるという指摘に基づき、活性プラセボを投与した後のみ、4分ごと20分以上かけたPETスキャン中、ボランティア患者の目前で1mLの等張生理食塩水を静脈内投与した。このチャレンジ刺激テストは、抗うつ薬の影響によると思われる、個人の内因性オピオイド神経伝達の急性活性化能力を検査するために行われた。主要アウトカムは、活性プラセボおよび抗うつ薬の効果としてうつ症状の変化、ベースライン時および活性化時のμ-オピオイド受容体結合状況とした。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインでの側坐核領域でのμ-オピオイド受容体の高い結合は、抗うつ薬治療の良好な反応と関連していた(r=0.48、p=0.02)。・活性プラセボによる治療1週間後の不活性プラセボと比較したうつ症状の軽減は、感情、ストレス制御、MDDの病態生理に関わる領域(前帯状皮質膝下野、側坐核、視床正中部、扁桃体)のネットワークにおけるプラセボ誘発μ-オピオイド神経伝達の増大と関連していた(側坐核:r=0.6、p<0.001)。・これらの領域に認められるプラセボ誘発内因性オピオイド放出は、抗うつ薬治療の良好な反応と関連し、抗うつ薬を用いた試験期間終了時の症状改善で43%の差が予測された。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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ASTRAL-2,-3試験:遺伝子型2型3型のHCVに対するソホスブビル・velpatasvir併用療法(解説:中村 郁夫 氏)-466

 本論文は、HCV(遺伝子型2型および3型)に対するソホスブビル(sofosbuvir:核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬)・velpatasvir(NS5A阻害薬)併用療法(SOF・VEL)の治療効果に関する治験の報告である。遺伝子型3型は、欧米では本邦と比べて頻度が高い。遺伝子型3型のHCV患者は、線維化の進行が早く、発がん率が高いことから、欧米では治療法の開発が急務である。2015年11月にサンフランシスコで行われた米国肝臓学会年会においても、3型のHCV患者に対する治療法に関して、多数の発表がなされた。 本論文における、遺伝子型2型に関する治験(ASTRAL-2)では、SOF・VEL群 134例とソホスブビル・リバビリン併用療法群 132例に関する解析が行われた。その治療効果に関して、治療終了後12週の時点でのHCV RNA 陰性化率(SVR12)は、SOF・VEL群99%、ソホスブビル・リバビリン療法群94%と報告された。 また、遺伝子型3型に関する治験(ASTRAL-3)では、SOF・VEL群 277例とソホスブビル・リバビリン併用療法群 275例に関する解析が行われた。その治療効果に関して、SVR12は、SOF・VEL群95%、ソホスブビル・リバビリン療法群80%であった。 以上の結果から、HCV(遺伝子型2型および3型)に対するSOF・VEL療法は、従来の標準治療であったソホスブビル・リバビリン併用療法と比較して、治療効果が高いことが示された。

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閉塞性肺疾患に気管支鏡下治療を用いる時代は到来するか?(解説:倉原 優 氏)-467

 気管支にバルブを詰める気管支鏡下肺容量減少療法が、重症肺気腫患者の治療法として期待されている。要は、まともな換気ができていない気腫肺には空気を送らない、という治療根幹である。その他の領域の肺換気を効率化する手法だ。 肺容量減少療法は、古典的には外科手術によって行われるのが主流である。ただ、そのコストは内科療法と比較して割に合わないほど高く、外科手術後にエアリークが遷延する例も少なくないことに懸念を示す呼吸器外科医も多いようだ1)。メタアナリシスでは手術を積極的に推奨しているわけではないが、症例を選べば有効であると書かれている2)3)。 気管支鏡下肺容量減少療法がCOPDに対して有効とされた研究が、Sciurba氏らによって2010年に報告されている4)。気管支鏡下肺容量減少療法と標準的内科治療を比較して、安全性と有効性を検証したものである。この試験では、6ヵ月時の1秒量は気管支鏡下肺容量減少療法群で4.3%上昇したのに対して、標準内科治療群では2.5%低下した。気管支バルブを使うことで、呼吸機能の改善が見込めるということだ。 さて、葉間側副換気がある患者より、ない患者のほうが有益性が高いという仮説がある。バルブを詰めたけれど、側副換気があるせいで気腫肺の容量減少効果がなければ、治療の甲斐もないだろう。この研究は、側副換気がない重症COPD患者に対して、その仮説が正しいかどうか調べるために実施された。過去の研究と同じように、この研究も気管支鏡下肺容量減少療法と標準的内科治療を比較して、安全性と有効性を検証した。主要評価項目は、1秒量、努力性肺活量、6分間歩行距離である。 登録された68例を解析した結果、intention-to-treat解析では、気管支鏡下肺容量減少療法群のほうが有意に主要評価項目の改善が大きいという結果だった(p<0.01)。喀血が多いと噂されるこの治療法だが、この研究では気胸が多かった。気管支鏡下肺容量減少療法群の34例中2例は胸腔ドレナージを要した。インターベンションを行うと、やはり何かしらの合併症が多くなるのはやむを得ないことかもしれない。現時点では、合併症の懸念から積極的にこの治療が推奨されるものではない。しかるべき患者に対して、諸刃の剣であることを説明して実施すべきだろう。 近い将来、代表的な閉塞性肺疾患であるCOPDと気管支喘息に、気管支鏡によるインターベンションが普及してくる時代が来るかもしれない。

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ヘビ使いがヘビに殺された話【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第58回

ヘビ使いがヘビに殺された話 FREEIMAGESより使用 「ミイラ取りがミイラになる」ということわざがあります。これは、人を連れ戻しに行った者が逆に先方に留まってしまうこと、また、説得に赴いた者がかえって相手と同じ意見になってしまうことを意味します。自分は大丈夫だろうと油断していると、相手に取り込まれてしまうので注意しましょうということです。 さて、ヘビ使いがヘビに殺されたという驚くべき医学論文があります。 Hossain MZ, et al. A fatal cobra-bite in a snake expert. Mymensingh Med J. 2010;19:303-307. バングラデシュ、タクルガウンに住む35歳のヘビ使いが病院に搬送されてきたのは2007年11月のことでした。コブラに咬まれたというのです。彼は地元では有名なヘビ使いで、それを観光客に見せることを生業としていました。彼はヘビを100種類以上飼育しており、彼の珍しいヘビコレクションを見るために遠方からやってくる人もいたくらいです。ある日、テレビ番組の収録中に彼はお腹を空かせたコブラに咬まれてしまいました。彼は病院に搬送されましたが、神経毒による症状がかなり強かったそうです。抗血清を投与され集中管理が行われましたが、2日後に亡くなったそうです。インターネットで調べてみると、「世界最強の毒蛇ランキング トップ50」によれば毒性の強さ50傑の中で、45種までがコブラ科のヘビで占められており、トップ10にいたっては全種がコブラ科とのこと。インデックスページへ戻る

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第13回

第13回:米国オンコロジストのweb活用勉強法ビデオレター中で紹介しているwebサイトMedscape Oncology:www.medscape.com/oncologyClinical Care Options Oncology:www.clinicaloptions.com/Oncology.aspxResearch to Practice:www.researchtopractice.comGrace(Global Resourch for Advancing Cancer Education):cancergrace.orgASCO University:university.asco.orgTargeted Oncology:targetedonc.com

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閉経後の女性統合失調症、陰性症状改善にSERM併用が有用

 閉経後の統合失調症女性に対し、通常療法にラロキシフェンを併用することで、陰性症状や総合精神病理、会話能力の低下などの改善が認めたことが示された。スペイン・カタロニア女性メンタルヘルス研究グループのJudith Usall氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。統合失調症において、エストロゲンの治療的有用性に関する認識が高まっている。選択的エストロゲン受容体モジュレーターであるラロキシフェンは、ドパミン・セロトニン脳システムに対しエストロゲン様作用を示すと考えられ、著者らは先行研究において、ラロキシフェンがエストロゲンに起因する有害事象を示すことなく、陰性症状、陽性症状、総合精神病理の改善に有用であることを明らかにしていた。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2015年11月20日号の掲載報告。 本検討では、陰性症状が優勢な閉経後の統合失調症女性患者を対象に、陰性症状およびその他の症状に対するラロキシフェンの有用性を評価することを目的に、24週間のランダム化並行群間二重盲検プラセボ対照試験を実施した。被験者は、Parc Sanitari Sant Joan de Deu、Hospital Universitari Institut Pere Mata、Corporacio Sanitaria Parc Tauliの入院患者および外来患者症例から登録。閉経後の統合失調症(DSM-IV)女性を、通常の抗精神病薬治療にラロキシフェン(60mg/日)を併用する群(38例)、またはプラセボ群(32例)に無作為に割り付けた。ベースライン、4、12、24週時に陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および陰性症状評価尺度(SANS)を用いて精神病理を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ラロキシフェン併用群は試験期間の24週間にわたり、PANSSによる陰性スコア(p=0.027)、全般スコア(p=0.003)、総スコア(p=0.005)が、プラセボ群に比べ有意に低下した。・ラロキシフェン併用群は、SANSS下位尺度である会話能力の低下に関してもプラセボ群に比べて改善を認めた(p=0.048)。・本試験で示されたデータは、先行試験で報告した結果を、より大規模サンプルと長期フォローアップで再現したものであった。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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大腿骨頚部骨折による入院日数と死亡リスクの関係/BMJ

 50歳以上の大腿骨頚部骨折で入院した患者のうち、入院期間が11~14日の患者は1~5日の患者に比べ、退院30日死亡リスクが約1.3倍増大することが、また14日超では約2倍強増大することが示された。米国・ロチェスター大学のLucas E. Nikkel氏らが、米国ニューヨーク州で大腿骨頚部骨折により入院した患者約18万例を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果、報告した。これまでにスウェーデンの試験で、大腿骨頚部骨折による入院日数が短いほど死亡リスクが増大するという結果が発表されている。今回、それとは逆の結果が示されたが、著者は、その背景には医療システムの違いがあるのではないかと考察している。BMJ誌オンライン版2015年12月10日号掲載の報告。18万8,208例を対象に後ろ向きコホート試験 試験は、ニューヨーク州入院患者のデータベースである「New York Statewide Planning and Research Cooperative System」(SPARCS)を基に、2000~11年にかけて大腿骨頚部骨折で入院した50歳以上の患者18万8,208例を対象に行われた。入院中の手術治療の有無は問わなかった(被験者のうち手術を受けた患者は16万9,258例)。 主要評価項目は、退院後30日以内の死亡率で、主要解析では、入院期間(1~5日、6~10日、11~14日、14日以上)と退院後30日死亡率が関連しているかを評価した。入院日数11~14日の退院後30日死亡のオッズ比は1.32、14日超は2.03 試験対象全集団の平均在院日数は8.1日、入院中の死亡は7,364例(3.9%)で、退院後の分析には18万844例が含まれた。 入院期間別にみた退院後30日死亡率は、1~5日の患者との比較で、11~14日の患者は32%増(オッズ比:1.32、95%信頼区間:1.19~1.47)、14日超の患者は103%増(同:2.03、1.84~2.24)で(いずれもp<0.001)、ニューヨーク州では10日超の入院が死亡リスク増大と関連していた。 そのほか退院後早期死亡率を増大した因子は、退院後ホスピスへの入所、高齢、転移性疾患、非手術治療だった。たとえば退院後30日死亡率は、全体では5.1%だったが、手術群では4.5%に対し、非手術群では10.7%だった。 なお同データベースは、米国で医療サービスへのアクセスに影響を与える患者の社会経済的地位に関するデータは含まれていない。診断や併存疾患のコーディングデータも不完全または不正確のものも含んでおり、著者は、「今回の所見を、全米あるいはその他の国に即当てはめることはできない」と指摘している。

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ビタミンDによるうつ症状軽減の可能性は

 大うつ病性障害(MDD)患者に対する8週間のビタミンD投与は、プラセボと比較してうつ症状を改善し、インスリン抵抗性や酸化ストレスに対しても好影響を及ぼすことが、イラン・カシュハン医科大学のZahra Sepehrmanesh氏らによる無作為化二重盲検試験の結果、報告された。ビタミンDについては、神経伝達物質、代謝プロファイル、炎症性バイオマーカーおよび酸化ストレスに有益な影響を及ぼし、うつ症状を軽減させる可能性が示唆されていた。The Journal of nutrition誌オンライン版2015年11月25日号掲載の報告。 研究グループは、MDD患者へのビタミンD投与が、うつ症状、代謝プロファイル、血清中高感度C反応性蛋白(hs-CRP)、酸化ストレスのバイオマーカーを減少させうるか否かを評価する、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を実施した。被験者は、DSM診断基準でMDDと診断された18~65歳の患者40例。ビタミンD 1カプセル(50kIU)/週群(20例)またはプラセボ群(20例)に無作為に割り付け、8週間投与した。 ベースラインと介入後に、空腹時血液サンプルを採取し、関連項目を測定した。主要アウトカムは、ベックうつ病評価尺度(BDI)で評価したうつ症状とした。副次的アウトカムは、グルコースホメオスタシス変数、脂質プロファイル、hs-CRP、酸化ストレスのバイオマーカーなどであった。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおいて、2群間の平均血清25-ヒドロキシビタミンD濃度は、有意な差が認められた(それぞれ9.2±6.0、13.6±7.9μg/L、p=0.02)。・介入8週後における血清25-ヒドロキシビタミンD濃度の変化は、ビタミンD群(+20.4μg/L)のほうが、プラセボ群(-0.9μg/L)と比べて有意に大きかった(p<0.001)。・ビタミンD群はプラセボ群に比べ、BDIのより大幅な減少傾向が認められた(それぞれ-8.0、-3.3、p=0.06)。・ビタミンD群とプラセボ群の間で、血清インスリン変化(-3.6 vs.+2.9μIU/mL、p=0.02)、ホメオスタシスモデルで推定したインスリン抵抗性(-1.0 vs.+0.6、p=0.01)、同推定のβ細胞機能(-13.9 vs.+10.3、p=0.03)、血漿中総抗酸化能(+63.1 vs.-23.4mmol/L、p=0.04)、グルタチオン(+170 vs.-213μmol/L、p=0.04)について有意差が認められた。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news

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