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炎症性腸疾患がCOPDの死亡リスクを増加させる

 炎症性腸疾患(IBD)は慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息合併COPDを有する患者の死亡リスクを増加させることを、カナダ・マギル大学のMaria Vutcovici氏らが報告した。The European respiratory journal 誌オンライン版2016年2月号の掲載報告。 COPDを有する患者では、IBDを含む他の慢性炎症性疾患の発症率や有病率が高いことが知られている。著者らは、IBDの発症がCOPDまたは喘息合併COPDを有する患者の死亡リスクを増加させるかどうかを検討した。 1990~2007年のケベック州の健康管理データベースより、COPDまたは喘息合併COPD患者の2つの地域ベースのコホートが同定された。死亡記録は死亡診断書で確認した。 新規に発症したIBDの死亡リスクに対する影響をCox比例ハザードモデルにより検討した。 主な結果は以下のとおり。・2つのコホートにおけるCOPD、喘息合併COPD患者は、それぞれ27万3,208例、2万6,575例であり、IBDを併存していた患者はそれぞれ697例、119例であった。・IBDを併存しているCOPD患者における全死亡リスクのハザード比(HR)は1.23(95%CI:1.09~1.4)であった。・IBDを併存している喘息合併COPD患者における全死亡リスクのHRは1.65(95%CI:1.23~2.22)であった。・喘息合併COPD患者では、IBDが呼吸症状による死亡リスクを増加させていた(HR:2.18、95%CI:1.31~3.64)。・COPD患者ではIBDが消化器症状による死亡リスクを増加させていた(HR:4.45、95%CI:2.39~8.30)。

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腹腔鏡下、腸間膜欠損部の閉鎖 vs.非閉鎖/Lancet

 腹腔鏡下胃バイパス手術における腸間膜欠損部について、閉鎖を支持する知見が示された。スウェーデン・オレブロ大学のErik Stenberg氏らが、12施設2,507例の患者を対象に行った多施設共同非盲検無作為化並行群間比較試験の結果、明らかにした。腹腔鏡下胃バイパス術後、頻度が高く重大な合併症として、内ヘルニアによる早期小腸閉塞がある。腸間膜欠損部の閉鎖を行うことで同発生が低下するかどうかは明らかにされていない。Lancet誌オンライン版2016年2月16日号掲載の報告。術後30日時点で重大術後合併症を、3年時点で小腸閉塞手術の発生率を評価 試験は、スウェーデン国内12の肥満外科センターで行われ、腹腔鏡下胃バイパス手術が予定されていた患者を包含対象とした。 施術開始後に割り付けが記された封筒が開かれ、患者は空腸空腸吻合部下腸間膜欠損部およびPetersen's spaceを閉鎖する群もしくは非閉鎖群に無作為に割り付けられた。術後に割り付け手技を知らされた。 主要エンドポイントは、術後3年以内の小腸閉塞への手術(有効性エンドポイント)、および術後30日以内の重大合併症(安全性エンドポイント)であった。副次エンドポイントは、30日以内の全合併症、手術時間、術後入院期間などであった。解析は、intention-to-treat集団に基づいた。再手術の累積発生率は閉鎖群で有意に低下 2010年5月1日~11年11月14日に、2,507例の患者が集められ、腸間膜欠損部閉鎖群(1,259例)または非閉鎖群(1,248例)に無作為に割り付けられた。手術時年齢は両群とも41.7歳、女性の割合が閉鎖群75%、非閉鎖群73%、BMI値は42.3、42.4であった。 このうち、2,503例(99.8%)が、30日時点の重大合併症の評価を受け、また、2,482例(99.0%)が25ヵ月時点で、小腸閉塞による再手術の評価を受けた。 術後3年時点で、小腸閉塞による再手術の累積発生率は、閉鎖群で有意な低下が認められた。累積発生率は閉鎖群0.055 vs.非閉鎖群0.102、ハザード比(HR)0.56(95%信頼区間[CI]:0.41~0.76、p=0.0002)であった。 一方で閉鎖群では、術後重大合併症のリスク増大が認められた(54例[4.3%] vs.35例[2.8%]、オッズ比:1.55、95%CI:1.01~2.39、p=0.044)。増大の主因は、空腸空腸吻合の屈曲であった。 著者は、「結果は、腸間膜欠損部の閉鎖をルーティンに行うことを支持する結果であった。しかしながら、腸間膜欠損部の閉鎖は、空腸空腸吻合の屈曲により引き起こされる早期小腸閉塞のリスク上昇と関連する可能性がある」とまとめている。

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LDL-Cが高い糖尿病患者、骨折リスクが低い?

 糖尿病では骨折リスクが増加するが、骨密度や主なリスク因子による説明は十分なされていない。デンマーク・オーフス大学病院のJakob Starup-Linde氏らは、糖尿病患者の骨折リスクにおける薬物治療および生化学的マーカーの関連について検討した。その結果、調査したほとんどの因子において骨折リスクが高かったが、LDLコレステロール(LDL-C)については値が高いと骨折リスクが低かった。BMJ Open誌2016年2月12日号に掲載。 著者らは、The Danish National Hospital Discharge Registryにおける糖尿病患者において、コホート内ケースコントロール研究を行った(ケース:骨折している糖尿病患者2万4,349例、コントロール:骨折していない糖尿病患者13万2,349例)。糖尿病患者2,627例の患者特性、併存疾患、生化学的パラメータ、薬剤の使用について分析した。 主な結果は以下のとおり。・高年齢(オッズ比[OR]:1.02、95%信頼区間[CI]:1.01~1.04)、長い糖尿病歴(OR:1.06、95%CI:1.02~1.09)、骨折の既往(OR:2.20、95%CI:1.55~3.11)、アルコール関連疾患の診断(OR:2.94、95%CI:1.76~4.91)、総コレステロール(OR:2.50、95%CI:1.20~5.21)、抗てんかん薬使用(OR:2.12、95%CI:1.39~3.59)は、骨折リスクの増加と関連した。・LDL-Cは骨折リスクの減少と関連した(OR:0.34、95%CI:0.16~0.74)。また、LDL-C値を8分位で検討した場合、最高分位である3.04~5.96mmol/L(117~230mg/dL)で骨折リスクが最も低かった。

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循環器内科 米国臨床留学記 第6回

第6回:米国で使用されている冠動脈疾患に対する新しい薬 ticagrelor、ranolazine前回に引き続き、日本では未承認ですがアメリカでは処方されている薬を紹介したいと思います。ticagrelor(商品名:Brilinta、日本では2016年2月現在、承認申請中)ticagrelorは、比較的新しいP2Y12受容体拮抗薬です。日本ではチカグレロルと呼ばれていると思いますが、アメリカではタイカグレロールと発音します。ご存じのとおり、日本では長らくチクロピジンしか使用できませんでしたが、その後クロピドグレルが登場し、最近ではプラスグレルも使用されていると思います。ticagrelorは、シクロペンチルトリアゾロピリミジン群に分類される新しい薬剤です。プロドラッグであるチエノピリジン系(クロピドグレルやプラスグレル)は肝臓で代謝された後、非可逆的にP2Y12受容体を阻害します。一方、ticagrelorは同じ受容体に直接かつ可逆的に作用します。結果として、作用が発現するまでの時間は短くなります。また、可逆的な結合のため、使用中止後、3日ほどで血小板機能も回復します。プラスグレルやticagrelorは血小板機能の抑制作用がクロピドグレルよりも早いため、急性冠症候群(ACS)の患者においては、より早い効果が期待できます。また、クロピドグレルに抵抗性のある患者は2割程度いますが、プラスグレルやticagrelorはその点でも優れています。ACS患者を対象にしたランダマイズド試験であるPLATO試験において、ticagrelorは、クロピドグレルに比べて死亡や心筋梗塞、脳卒中が少ないことが示されました(大出血イベントは同等、バイパス術に関連しない出血は増加)(図1)。表1 12ヵ月の時点での複合一次エンドポイント(心血管イベントによる死亡、心筋梗塞、脳卒中)の発生(PLATO試験) バイパス手術が必要となる3枝病変が予想されるようなACSの患者においては、P2Y12受容体拮抗薬の選択や投与のタイミングは難しい問題です。米国では、日本と比べて診断から手術までの時間が圧倒的に短いため、バイパス術が冠動脈造影の翌日となることも珍しくありません。初期投与(loading dose)だけなら気にされない心臓外科医もいますが、クロピドグレルやプラスグレルは手術を遅らせる原因となります(クロピドグレルやプラスグレルの使用中止後5~7日待つことが勧められている)。また、プラスグレルは、クロピドグレルに比べて、バイパスに関連した大出血イベントが有意に増加する可能性があります(TRITON-TIMI 38試験)。ticagrelorは可逆的な結合のため、使用中止後、3日ほどで血小板機能が回復します。実際、欧州心臓病学会(ESC)からの勧告でも、バイパス前の中止期間は、クロピドグレルとticagrelorでは最低でも3日となっていますが、プラスグレルは5日となっています。この待機時間は、入院費用が高い米国においては大きな問題です。このような背景から、現状では、費用の問題を除けばticagrelorが最も使いやすいP2Y12受容体拮抗薬と考えられています。同様の薬で静注薬であるcangrelorも2015年に認可されています。ranolazine(商品名:Ranexa、日本では未承認)ranolazineは、2006年に承認された慢性狭心症の薬です。2012年のガイドラインでは、β遮断薬に忍容性がないもしくは有効でない患者に、β遮断薬の代わりとしてもしくはβ遮断薬と組み合わせて用いることが、class IIaとして推奨されています。狭心症患者が多い米国では、経皮的冠動脈血行再建術(PCI)によって改善できない慢性狭心症の患者が非常に多く、治療に難渋することがあります。内向きの遅延ナトリウムチャネルを阻害し、心筋内のカルシウムを減らし、心筋の酸素消費を減らすと考えられていますが、詳しい効果の機序は不明です。TERISA試験は、14ヵ国で行われた、2型糖尿病と慢性狭心症を有する患者に対する前向きのプラセボ対照比較試験です。薬剤投与前の観察期間中の狭心症発作は、ranolazine群6.6回/週とプラセボ群で6.8回/週でしたが、薬剤投与開始後2~8週間後では、それぞれ3.8回/週(95% CI:3.57~4.05)と4.3回/週(95% CI:4.01~4.52)で、プラセボ群と比較してranolazine群で有意に減少したという結果でした(図2)。表2 ranolazine投与前後の狭心症状発生回数(TERISA試験) しかし、解釈には注意が必要です。というのも、有意といっても週0.5回というわずかなものでしたし、プラセボでも発作が減っていたのです。個人的には、プラセボ群でも発作が減る、狭心症状は経過とともに頻度が減っていくという結果のほうが、興味深く感じられました。実際には、ranolazineは最後の切り札といった感じで使用しています。なぜなら、前述のような軽度の改善効果に加えて、高価(1錠6ドル)であることもネックになっているからです。大規模で見ると改善効果があるのかもしれませんが、実際の臨床で効果を感じるのは難しい印象です。次回は、米国の心疾患治療で使用されている新しいデバイスについて書きたいと思います。

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アルツハイマー介護負担、日本と台湾での比較:熊本大学

 台湾におけるアルツハイマー病(AD)の介護負担は、日本と同様に緊急の社会的課題となっている。介護負担の比較は、それぞれの国における介護者の負担感を明確にする可能性がある。熊本大学の松下 正輝氏らは、日本と台湾のADに対する介護負担の比較を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年1月28日号の報告。 試験参加者は外来AD患者343人、日本の介護者230人および台湾の介護者113人。Zarit介護負担尺度(ZBI)の日本語版と中国語版を使用し、介護負担を評価した。初期解析では、各グループのZBIの因子構造を確認するため、探索的因子分析を行った。そして、複数グループ構造方程式モニタリング(MG-SEM)は、ZBIの測定不変性(たとえば構造不変性、計量不変性、スカラー不変性など)を評価するために使用した。最後に、日本と台湾のZBI潜在因子平均値を比較した。 主な結果は以下のとおり。・両グループにおいて、確証的因子分析では、「介護者の生活への影響」「恥ずかしさ/怒り」「依存関係」の3つの要因が抽出された。・MG-SEMでは、許容可能なモデルの適合を示し、部分スカラー不変性を認めた[CFI(comparative fit index):0.901、RMSEA(root mean square error of approximation):0.066]。・潜在因子平均値の比較では、台湾の介護者における「介護者の生活への影響」のスコアは、日本の介護者よりも有意に高かった(p=0.001)。・しかし、台湾の介護者の「依存関係」は、日本の介護者よりも低かった(p<0.001)。 結果を踏まえ、著者らは「部分測定不変性により、両国の潜在的因子平均値を比較することができた。比較の結果、日本と台湾では介護負担の感じ方に違いがある可能性が示唆された」としている。関連医療ニュース 複雑な薬物療法レジメン、認知症介護者の負担増加 認知症と介護、望まれる生活環境は 介護施設での任天堂Wiiを用いたメンタルヘルス

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頸動脈狭窄症、70歳以上では内膜剥離術が明らかに優れる/Lancet

 高齢の症候性頸動脈狭窄症患者の手術治療について、これまでに頸動脈内膜剥離術(CEA)が頸動脈ステント留置術(CAS)よりもアウトカムが良好であることが示唆されていたが、詳細な年齢の影響を調べた結果、70~74歳群以降では明らかにCEAのアウトカムが優れることが示された。米国・アラバマ大学公衆衛生大学院のGeorge Howard氏らが、CAS vs.CEAを比較した4つの無作為化試験データをメタ解析。その際60~79歳の患者データについて5歳年齢単位とし、60歳未満、80歳以上を加えた各年齢群の脳卒中または死亡リスクを調べ、年齢とアウトカムとの関連を評価した。結果、高齢者における両手術間のアウトカムの差は、大半がCAS周術期脳卒中リスクの増大によるものであることが判明した。年齢とCEA周術期リスクとの関連はみられず、また両手術とも周術期以降のリスクと年齢の関連はみられなかったという。Lancet誌オンライン版2016年2月12日号掲載の報告。4つのCAS vs.CEA無作為化試験被験者のデータを6年齢群で分類しメタ解析 研究グループは、Carotid Stenosis Trialists’ Collaboration(CSTC)が症候性頸動脈狭窄症の患者を集めて行った4つの無作為化試験の、参加患者の個別データを集めて分析した。分析に組み込んだのは、CAS vs.CEAの無作為化試験の被験者、かつ症候性の狭窄症を呈した患者データのみとした。 主要アウトカムは、周術期(無作為化~120日の間)における脳卒中または死亡リスク、および周術期以降(120日以降)における同側脳卒中の発生リスクで、年齢群(60歳未満、60~64歳、65~69歳、70~74歳、75~79歳、80歳以上)ごとに評価。また、CAS群とCEA群の差についても評価した。分析はすべてintention-to-treatにて行われた。CAS群で周術期リスクに有意な年齢の影響を認める 4試験で、CASまたはCEAに無作為に割り付けられた患者は4,754例であった。追跡期間中央値は2.7年で、イベント433例が発生した。このうち、周術期以降も追跡を受けたのは4,289例で、イベント発生は98例(2.3%)であった。 分析の結果、CAS群において、60歳未満群と比較した65~69歳群の脳卒中/死亡の周術期ハザード比(HR)は2.16(95%信頼区間[CI]:1.13~4.13)であり、70歳以上群のHRはおおよそ4.0で、年齢と周術期HRの関連が認められた(傾向のp<0.0001)。一方CEA群では、年齢群が上昇するにつれて周術期リスクが増大するとのエビデンスは認められなかった(傾向のp=0.34)。これらが影響してCAS vs.CEAの周術期HRは、65~69歳群では1.61(95%CI:0.90~2.88)、70~74歳群では2.09(同:1.32~3.32)であり、年齢との関連がみられた(傾向のp<0.0001)。 周術期以降の脳卒中リスクの評価では、両手術群とも年齢の影響は認められなかった(傾向のp:CAS群≧0.09、CEA群0.83))。CAS vs.CEAの周術期以降のHRにも年齢の影響はみられなかった(傾向のp=0.84)。

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診療録ビッグデータを治療効果の検証には使うべきではない(解説:折笠 秀樹 氏)-486

 病院の診療録というビッグデータを利用して治療効果を見た後で、同じテーマに関して複数のRCT(ランダム化比較試験)が実施された16件の事案を検討した。 複数のRCTはメタ解析により統合された。診療録ビッグデータの解析結果のほうが、RCTのメタ解析結果より1.31倍有効へと傾いていた。つまり、診療録ビッグデータでは有効であったとしても、検証的RCTによって有効性が覆ることを示唆する。診療録ビッグデータなどの観察研究では、Confounding by indicationバイアスが入るため、傾向スコア解析などの特殊な解析を用いてはいるものの、RCTよりも治療効果が過剰に出る傾向がみられた。 これらのことから、やはり治療効果を検証するにはRCTが必須だと思われる。しかしながら、16件のテーマはマイナーなものが多く、後に実施されたRCTは比較的小規模のものが多いように見受けられた。したがって、この研究結果はもう少し慎重に評価したほうがよいかもしれない。 診療録や検診など、医療ビッグデータを有効活用するプロジェクトが全世界的に始まりつつある。これを治療効果の検証に用いることは期待せず、危険因子の探索などに限るなど、方向性を間違わないように気を付けるべきだろう。

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ADHD症状とギャンブル依存との関連

 現時点では、ADHDと問題ギャンブル(problem gambling)との関連についての文献には矛盾がある。カナダ・マニトバ大学のJennifer Theule氏らは、ADHD症状と問題ギャンブルの症状との関連を明確にするためメタ分析を行った。Journal of attention disorders誌オンライン版2016年2月1日号の報告。ADHDとギャンブルとは年齢上昇に伴って強い関連 ADHD症状と問題ギャンブルの症状との関連を明確にするためのメタ分析には、ランダム効果モデルを用いて行った。PsycINFO、PubMed、ProQuest Dissertations & Theses、Google Scholarより、関連する研究を検索した。 ADHD症状と問題ギャンブルの症状との関連を明確にするためメタ分析を行った主な結果は以下のとおり。・ADHD症状とギャンブル重症度との間の加重平均の相関は、r=0.17(95%CI:0.12~0.22、p<0.001)であった。・サンプルの平均年齢は、有意性に近い唯一の調整因子であり、年齢上昇に伴いADHD症状とギャンブル重症度との間に強い関連が認められた。・臨床医は、問題のあるギャンブラーに対応するときはADHD症状リスクが高いことを認識する必要があり、逆の場合もまた同様である。関連医療ニュース 成人ADHDをどう見極める 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係 ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのか

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非高リスク症例における頸動脈ステント留置術 vs.内膜剥離術/NEJM

 頸動脈ステント留置術(CAS)の頸動脈内膜剥離術(CEA)に対する非劣性が、高リスクではない高度無症候性頸動脈狭窄症患者において示された。5年の追跡調査で、非手術関連脳卒中、全脳卒中および全生存率も、両群間で有意差は認められなかった。これまでの臨床試験で、遠位塞栓を予防するデバイス(embolic protection device:EPD)を用いたCASは、手術による合併症の標準または高リスク患者において、CEAの代替として効果的な治療であることが示唆されていたが、米・マサチューセッツ総合病院のKenneth Rosenfield氏らは、高リスクに該当しない患者のみを対象にEPD併用CASとCEAを比較する多施設共同無作為化比較試験「Asymptomatic Carotid Trial(ACT) I」を実施、その結果を報告した。NEJM誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告。1,453例でEPD併用CASとCEAを比較する非劣性試験 研究グループは、無症候性(登録前180日以内の脳卒中・一過性脳虚血発作・一過性黒内障の既往なしなど)の高度(70%以上)内頸動脈狭窄を有する79歳以下の患者で、合併症高リスクに該当しない患者を、EPD併用CAS群とCEA群に3対1の割合で無作為割り付けした。試験は当初1,658例の患者登録を予定していたが、登録が進まず1,453例で中止となった。追跡調査期間は5年間であった。 主要複合エンドポイントは、術後30日以内の死亡・脳卒中・心筋梗塞、または1年以内の同側脳卒中とし、非劣性マージン3%で評価した。CASの非劣性を証明、5年転帰も有意差認められず 解析対象は2005~13年に無作為化された計1,453例(CAS群1,089例、CEA群364例)で、平均年齢は両群とも68歳、ほとんどが65歳以上であった。 主要複合エンドポイントのイベント発生率はCAS群3.8%、CEA群3.4%で、CASのCEAに対する非劣性が認められた(非劣性に関するp=0.01)。30日以内の死亡または脳卒中の発生率は、CAS群2.9%、CEA群1.7%であった(p=0.33)。 副次エンドポイントの合併症複合評価項目(術後30日における脳神経損傷、血管損傷、脳出血以外の出血など)のイベント発生率は、CAS群2.8%、CEA群4.7%であった(p=0.13)。術後30日から5年までの手術に関連しない同側脳卒中の無発生率はCAS群97.8%、CEA群97.3%(p=0.51)、全生存率はそれぞれ87.1%および89.4%(p=0.21)。5年間の累積無脳卒中生存率は93.1%および94.7%であった(p=0.44)。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第27回

第27回:食事における栄養の「神話」は本当?監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 日々の食事は健康の維持やあらゆる疾患管理に重要な役割を持っています。そして、健康的な食事は罹患率や早期死亡の減少に関係しています。 今回は、微量栄養素(ビタミンやミネラル)、主要栄養素(炭水化物、タンパク質、および脂肪)、非栄養素、食物エネルギーに関しての「神話」とエビデンスの比較をみてみましょう。日常診療における食事指導の参考になれば幸いです。 タイトル:臨床における栄養療法の神話と食事指導についてNutrition Myths and Healthy Dietary Advice in Clinical Practice以下、American family physician 2015年5月1日号1) より◆「骨の健康のために集中的なカルシウム摂取が必要」骨折予防に対するカルシウムサプリメントの効果は限定的で、NNT=1,000(住民女性)、NNT=111(施設入所者)である(推奨レベルA)。また、腎結石のリスクを高め、心血管イベントや大腿骨頸部骨折を高めるかもしれない(推奨レベルB)。乳製品など自然食品は、骨の健康に関する利点は明らかでないものの、サプリメントと同様のリスクはもたらさないと思われる。◆「脂質は肥満につながり、心血管系に有害」高脂質食の摂取は、低脂質食やカロリー制限食の摂取と比較して、同等かそれ以上の体重減少を示す(推奨レベル A)。ultra-processed食品(過剰加工食品:甘味料や乳化剤などをわざわざ添加しすぐに食べられるようにした食品、保存肉など)は飽和脂肪酸が多く含まれており、心血管イベントや全死亡率の増加と関連している。一方、飽和脂肪酸を含む自然食品(乳製品など)は不慮の心血管疾患、2型糖尿病、肥満の減少と関連している(推奨レベルB)。◆「あらゆる食物繊維は有益である」自然の食物繊維を豊富に摂取すると、心血管イベントや糖尿病、便秘、消化器がん、乳がんの発症を抑制しうる。しかし人工的な食物繊維の有用性は示されていない(推奨レベルB)。◆「3,500カロリーは体重1ポンド(0.45kg)に相当する」1週間で3,500カロリー制限しても体重0.45kg減量するわけではない(推奨レベルC)。しかし1日100カロリー制限すれば、ほかに何をしなくても1年後には50%の人が、3年後には95%の人が体重4.5kg減少する(推奨レベルC)。ここに示した「神話」は微量栄養素、主要栄養素、非栄養素、エネルギーとして多くの栄養学、食品成分の評価に基づいているが、患者は食品成分ではなく食品として食べているということに注意が重要である。また、ultra-processed食品の消費量を制限し、できるだけ自然に近い形の加工食品の摂取が勧告されている。家庭医は、患者のために上記の神話を払拭し、実際の食品や広い食事パターンに着目してアドバイスを与えることが望ましい。※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Lesser LI, et al. Am Fam Physician. 2015;91:634-638.

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統合失調症患者の体重増加に関与する遺伝子は

 抗精神病薬治療中の体重増加および食欲変化と複数の候補遺伝子との関連性を調査するために、韓国・三星医療院のS Ryu氏らは検討を行った。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2016年2月4日号の報告。 60の候補遺伝子内の233の一塩基多型(SNP)を決定した。抗精神病薬を処方された統合失調症患者84例における最大8週間のBMI変化を、線形混合モデルを用いて分析した。さらに、薬物関連の摂食行動に関するアンケートを用い、統合失調症患者異なるグループの46例における、抗精神病薬治療中の食欲変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・多重検定による補正後、BMI、食欲の変化との間に、統計的に有意な差が認められるSNPはなかった。・11遺伝子内の19個のSNPと体重増加、5遺伝子内の7個のSNPと食欲変化との間に関連傾向が認められた(p<0.05)。・とくに、GHRL内のrs696217は、体重増加(p=0.001)だけでなく食欲変化(p=0.042)においても関連性が示唆された。・rs696217のGG遺伝子型を有する患者は、GT/TT遺伝子型を有する患者と比較して、BMIと食欲の両方において高い増加が示された。・抗精神病薬治療中の統合失調症患者において、とくに食欲変化が影響する体重増加へのGHRL遺伝子多型の関与が示唆された。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か 抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学

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呼吸音を可視化する電子聴診器を開発 広島大学

 広島大学病院の大下慎一郎講師、貞森拓磨助教、福島県立医科大学の谷川攻一副学長らの研究グループは、パイオニア株式会社と共同で、呼吸音を迅速かつ正確に評価できるコンピューター化電子聴診器を開発した。2016年2月16日発表した。 呼吸音評価は主観的であり、正確な評価をするにはトレーニングを必要とする。そのうえ、国際基準では呼吸音の周波数定義に重複があることも呼吸音評価を困難にしている。 研究グループは音の長さ・周波数・強度からなる予測推定値を用い、ブラインド信号源分離法(観測された混合信号を分離して、混ざり合う前の元の信号を推定する技術)によって呼吸音の解析を行った。また、生体から採取した呼吸音テンプレートとの一致度を照合する手法を用いることにより、解析性能の迅速性・正確性を向上させた。 研究成果はInnovation in Analysis of Respiratory Soundsとして、Annals of Internal Medicine誌2016年2月16日号オンライン版に掲載された。広島大学の記事紹介はこちら。

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研究目的が絞り込まれた明快な研究(解説:野間 重孝 氏)-483

 人口の高齢化に伴い、どこの施設、いずれの科においても、高齢者・超高齢者の治療方針が問題となっているのではないだろうか。本論文のdiscussionの中に大変重要な一節があるので、直接引用する。The elderly population with acute coronary syndrome is a heterogeneous group with variable frailty and differences in physiological ageing, comorbidity, functional status and social aspect. 誠にそのとおりだろう。そして、世界の権威あるガイドラインといえども、実はこのような患者さんたちの治療方針について、しっかりしたエビデンスをもって定められたものではないのである。Thus, they are rarely included in clinical trials, and guidelines are often based on extrapolation of data from a substantially younger population. 重要な指摘だろう。ガイドラインといえども、より若い人たちのデータを外挿することによって作成されているというのである。 では、読者のみなさんの手元にまとまったデータベースがあったとして(これは現在では非現実的な仮定ではないだろう)、皆さんならどのような研究デザインを考えるだろうか。 まず考えつくのは、すべての治療例を集め、その中から合併症、予後のデータを集めて多変量解析を行うという方法があるだろう。年齢は重要な決定因子となるのだろうか? 年齢が上がるにつれて治療成績はどのように変化するのだろうか? 実際、評者自身も以前このような解析を行ったことがあるが、そのような方法には限界があるというのが、冒頭の指摘なのである。多変量解析は既知の因子について、その関与の度合いを検討するためには優れた方法であるが、未知の因子を割り出してはくれないのである。 つまり、こういうことである。前日まで元気で働いていて、ある日の会議中に突然前胸部違和感を覚えて搬送された47歳のサラリーマンがいたとしよう。一方で、老人ホームの廊下を伝い歩きしていたところ、胸部圧迫感のためにしゃがみ込んでしまった85歳の老人がいたとして、この両者を同じ土俵で比較できるのか。 著者らが指摘しているように、この両者の疾病の背景はあまりにも異なっているのである。実際、このサラリーマンが大酒飲みで、血液データだけ見れば老人のデータのほうが良い場合すらあるかもしれない。しかし、老化に伴うどうしようもない相違がそこにはあり、しかも、われわれにはそれら諸因子を列挙することが不可能なのである。 では、どうするのか? このような場合、不確定な諸因子を問題にしないでよい方法は1つしかない。同年代の患者さんたちのみを集め、無作為割り付けをすることによって不確定因子を相殺する。これ以外に方法はない。本研究は、そのような発想からデザインされた一点集中型の研究なのである。 このようなデザインは、高齢者・超高齢者に対してある治療法(この場合は侵襲的治療)を選択することの可否の答えは明確に出してくれるが、細かな因子の重要性の解析には向かない。しかし著者らは、あえてこの一点集中型のデザインを選択したのである。 本研究において、著者らは高齢者に対してでも侵襲的な治療を選択することの妥当性を証明することに成功した。残念ながら、超高齢者の分析をするためには統計パワーが足りなかったとあるが、これは致し方ないだろう。これ以上の無作為データを得ることには限界があるからである。もし、85歳以上を無作為配列したとして、death from any causeの中に多数の老衰が含まれてしまっては研究にならないからである。この研究は、ギリギリの線に迫った貴重な研究と位置付けられるのではないだろうか。

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認知症発症率は過去30年間で低下:フラミンガム心臓研究/NEJM

 フラミンガム心臓研究の参加者では、30年間に認知症の発症率が経時的に低下していることが、米国・ボストン大学医学部のClaudia L Satizabal氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年2月11日号に掲載された。認知症の有病率と関連医療費は、平均寿命の延長に伴い急速に増加すると予測されているが、高所得国では年齢別の認知症発症率(=特定の年齢層における認知症リスク)が減少しているという。時間的傾向(temporal trend)は、典型的な地域のサンプル集団において、新規の症例を一貫性のある診断基準を用いて継続的にモニタリングすることで信頼性が最も高くなるが、この条件を満たす既報のデータは限られている。60歳以上の約5,200例で、4期の5年発症率を評価 研究グループは、フラミンガム心臓研究の参加者のデータを用いて1975年以降の30年間における認知症の発症率の時間的傾向について検討を行った(米国国立保健研究所[NIH]の助成による)。 60歳以上の5,205例を対象に、年齢と性別で補正したCox比例ハザードモデルを用いて、4つの時期(第1期:1977~1983年、第2期:1986~1991年、第3期:1992~1998年、第4期:2004~2008年)における認知症の5年発症率を算出した。 また、各時期と年齢、性別、アポリポ蛋白(APO)Eε4、教育水準の交互作用を検討し、これらの交互作用が時間的傾向に及ぼす影響を解析するとともに、血管リスク因子および心血管疾患の影響の評価を行った。寄与因子は不明、1次、2次予防が重要 ベースラインの各時期の平均年齢は69~72歳(傾向検定:p<0.001)、範囲は60~101歳で、女性が56~59%(同:p<0.01)を占めた。各時期でMMSE(mini-mental state examination)スコアに差はなかった。 371例が認知症を発症した。年齢と性別で補正した認知症の5年累積ハザード比(HR)は、第1期が100人当たり3.6、第2期が同2.8、第3期が同2.2、第4期は同2.0であり、経時的に低下した。相対的な発症率は、第1期に比べ第2期は22%減少し、第3期は38%、第4期は44%低下した。 各時期と年齢、性別、APOEε4の交互作用が、認知症発症率の時間的傾向に影響を及ぼすことを示唆するエビデンスは認めなかった。一方、リスクの低下は高校卒業以上の集団にのみ認め(HR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.67~0.88)、高校を卒業していない集団では有意差はなかった。 肥満と糖尿病を除くほとんどの血管リスク因子の有病率と、脳卒中、心房細動、心不全関連の認知症リスクは、いずれも経時的に減少したが、これらの傾向だけでは認知症の発症率の低下を十分には説明できなかった。 著者は、「認知症の発症率は30年間で経時的に減少したが、これに寄与した因子は同定されなかった」とまとめ、「認知症リスクを有する高齢者数の増加により、今後、認知症の疾病負担が爆発的に増大することが予測され、これを抑制するには1次および2次予防が重要と考えられる。本試験の結果は、認知症の予防あるいは少なくとも遅延の可能性という、わずかな希望をもたらすものだが、時間的傾向の理解の不十分さを強調するものでもあり、寄与因子のさらなる探索が求められる」と指摘している。

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白内障は手術をしたほうがしないより長生き?

 米国メディケア受給者を対象とした後ろ向きコホート研究において、白内障患者のうち手術をした人はしなかった人と比較して全死因死亡率が低いことが示された。研究を行った米国・カリフォルニア大学のVictoria L. Tseng氏らは、「白内障の手術と死亡リスク低下との関連の機序を調べるためにさらなる研究が必要」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2016年2月4日号の掲載報告。 研究グループは、白内障手術と全死因死亡との関連を調べることを目的に、2002~12年のDenominator and Physician/Supplier Part B ファイルからメディケア受益者の5%を無作為抽出し、白内障患者の手術の有無とその後の転帰を調査した。 主要評価項目は全死因死亡で、Cox比例ハザード回帰モデルを用い白内障手術と死亡率との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・メディケアの5%無作為標本には、白内障患者150万1,420例が含まれ、そのうち手術を受けていた患者は54万4,984例(36.3%)であった。・追跡期間は、白内障の手術を受けた患者は平均11.4四半期間、受けていない患者は平均12.9四半期間であった。・白内障患者において、全死因死亡率は白内障手術ありで2.78/100人年、白内障手術なしで2.98/100人年であった(p<0.0001)。・白内障手術ありの患者は手術なしの患者と比較して死亡リスクが低下した(補正後ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.72~0.74)。・サブグループ解析で強い関連が認められたのは次の患者群であった:傾向スコアが十分位の上位群(HR:0.52、95%CI:0.50~0.54)、80~84歳の高齢患者(HR:0.63、95%CI:0.62~0.65)、女性(HR:0.69、95%CI:0.68~0.70)、米国西部の患者(HR:0.52、95%CI:0.32~0.86)、中等度の全身性疾患を有する患者(HR:0.71、95%CI:0.69~0.72)、重度の白内障患者(HR:0.68、95%CI:0.66~0.70)。

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家族性大腸腺腫症〔FAP : familial adenomatous polyposis〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性大腸腺腫症(FAP)は、APC遺伝子の生殖細胞系列変異を原因として、大腸の多発性腺腫を主徴とする常染色体性優性遺伝性の一種のがん症候群である。■ 疫学FAPの発生頻度は、欧米では出生10,000~20,000人に1人と推定されている。日本においては17,400人に1人と推測されており、世界的にあまり差がない。■ 病因APC遺伝子の生殖細胞系列の変異が原因ではあるが、腺腫はAPC遺伝子の機能喪失、すなわちもう一方のAPC遺伝子の体細胞変異(結果的に両方の遺伝子の異常:細胞単位では劣性発現といえる)によって引き起こされる。APC遺伝子は、その機能としてはいわゆる腫瘍抑制遺伝子ともいえる。APC遺伝子の実際の機能あるいは大腸がんに至る遺伝子変異の詳細は不明である。■ 症状下痢、下血(排便時出血)、腹痛、貧血が主な症状である。このような症状が若年に起こるために、胃腸虚弱ないし痔核からの出血だろうと考えられて、大腸がんの危険性が見過ごされやすい。FAPあるいは大腸がんの家族歴があればより注意が必要である。■ 分類大腸腺腫数で分類するのが一般的である(表1)。大腸腺腫数の計測は困難であるが、おおよその数で分類されている。腺腫数はAPC遺伝子変異部位と関連するといわれる。傾向として腺腫数が多いほど発症年齢が若く、また大腸がんが発生しやすい。画像を拡大する100個未満の多発性ポリープを「oligo-polyposis」ということがある。また、大腸ポリポーシスにデスモイドあるいは外骨腫を合併する症例を「ガードナー症候群」ということがあるが、FAPの一部と考えられている。■ 予後大腸がんをはじめ、ほかの消化管がん、デスモイド腫瘍、そのほかのがんを早期に制御、治療できれば予後は良好である。主として大腸がんおよびほかの消化管がんのコントロールが重要である。ただしそれを生涯にわたって行わなければならない点で、患者の負担が大きく、その難しさがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)最も有力な検査は、病理組織学的検査を伴う大腸内視鏡検査(図1)である。注腸造影検査によって大腸内のポリープの分布の様子が観察される。大腸にびまん性のポリポーシスを認め、それが腺腫である場合はFAPである可能性が強い。画像を拡大する2)上部消化管検査は必須である。(1)胃内視鏡検査:胃底腺ポリポーシス、腺腫およびがんの鑑別をして対応する。(2)十二指腸内視鏡検査:スピゲルマンによるおおよその病期分類を行い対応する(表2)。画像を拡大する(3)小腸検査:大腸手術後状態で、(大腸がんより小腸がんが先に出ることは少ない)腹痛などがあれば小腸検査が望ましい。バリウム造影、カプセル内視鏡がスクリーニングとして行われる。3)随伴病変(その他のがんを含む)の検査(1)先天性網膜色素上皮肥大(図2):視力には影響ない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(2)潜在骨腫または外骨腫(図3):共に治療の必要はない。補助診断として用いられる。画像を拡大する(3)デスモイド腫瘍(図4):過去にデスモイド既往がある場合、または家系内にデスモイド患者が出た場合は、よりデスモイド腫瘍が発生しやすいといわれている。画像を拡大する(4)甲状腺がん:若年女性に多い。乳頭がんであるが、そのなかに特徴的な組織像を示すことがある。治療成績は通常の乳頭がんと同様で良好である。触診ないしエコー検査を行う。(5)卵巣がん、子宮がん: 35歳以上では定期検査を勧めるべきである。■ 鑑別診断1)ポリープ数が少ない状態のFAP(attenuated FAP:AFAP)APC遺伝子変異はあるが、ポリープ数が100個に満たない(oligo-polyposisの状態)。2)MUTYH関連ポリポーシス(MAP)DNA酸化障害の修復に関わるMUTYH遺伝子変異の異常によって発生する大腸腺腫症。ポリープ数は少ない場合が多いが、まれに1,000個近くのこともある。常染色体劣性遺伝性である。3)ポリメラーゼ校正遺伝子関連ポリポーシス(PPAP)ポリープ数は多くて数個~数十個。形質発現はAFAP、MAPないしリンチ候群に類似すると思われるが、さらに症例の集積と検討が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPにおいては予後の項で述べたように、がん発生について生涯にわたり注意が必要である。各臓器の良性腫瘍の病期は発がんの危険性と相関するため、病期を維持ないし低減できればがん発生を抑えられる可能性がある。筆者はこれを「病期低減戦略(stage reduction strategy)」ないし「病期低減治療(stage reduction treatment)」と位置づけている。これはFAPのすべてに通ずる。■ 原則1)早期診断これにより病期を低いところでみつけることができる。2)病期低減治療大腸腺腫、十二指腸(乳頭部)腺腫、デスモイド腫瘍に当てはまるそれぞれ異なった病期に対して、それを維持ないし低減する方法が取られることになる。それは利益と損失を考慮して判断される。■ 大腸1)内視鏡治療今後の発展によって病期低減治療法の中心になる可能性がある。ポリープ数が比較的少ない状況で適応になる。また、5mm以下の小さいポリープは、早期にがん化するとは考えられず、必ずしも切除する必要はない。2)化学・薬物治療現在実用的ではない。3)手術治療次の3つの方法が一般的である。(1)大腸全摘・回腸瘻造設術:大腸に関しては最も根治的。生活の質も悪くはない。(2)結腸全摘・回腸直腸吻合術:病期低減治療である。直腸ポリープが少ない必要がある。直腸は最もがんが発生する危険性が高い。(3)大腸全摘・J型回腸嚢肛門管吻合術:上記2つの利点を取ったものである。ただし手術が複雑。良好な排便機能が得られるかどうか、不安定である。直腸がんの危険はかなり低減するが、肛門に近い直腸粘膜が残るため、理論上ゼロとはならない。時間と共にJ嚢内に腺腫が高率に発生することもわかっており、術後の内視鏡検査は引き続き必要である。■ 十二指腸、乳頭部腺腫経過観察、および病期が上がった場合に、それに応じて病期を下げる手段としては、(1)内視鏡的切除、(2)十二指腸切開局所切除、(3)膵温存十二指腸切除、(4)膵頭十二指腸切除などが選択される。■ デスモイド腫瘍悪性ではないが、浸潤性に発達しやすい線維腫症といえる状態で治療にやや難渋する。デスモイドの出やすい状況(診断の項を参照)であれば、内視鏡治療を優先して手術をなるべく遅くする。大腸切除術後の約8%に発生する。発生部位は腹腔内(後腹膜、腸間膜)および腹壁手術瘢痕部に発生する。死亡率は10%以下と考えられる。病期分類および治療の指針としてChurchによる分類がある(表3)。画像を拡大する4 今後の展望1)病期低減治療法として、内視鏡的ポリープ切除の効果について多施設研究が始まっている。まだ標準的治療法ではない。2)大腸癌研究会家族性大腸癌委員会において、いくつかの研究プロジェクトが計画施行されつつある。3)十二指腸腺腫:膵温存十二指腸切除術など、病期に応じた治療法が検討されつつある。5 主たる診療科消化器内科および消化器外科が主たる診療科となり、病態に応じて、婦人科、内分泌外科などに相談する。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国際消化管遺伝性腫瘍学会InSiGHT(医療従事者向けの英文サイト:ここからの情報は世界標準となる)大腸癌研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:日本の活動の現況がわかる)患者会情報ハーモニー・ライフ:関東の患者会(患者、患者家族向けの情報:ニュースレターほか、種々の情報が得られる)ハーモニー・ライン:関西の患者会(患者、患者家族向けの情報:疾患に関する冊子などが得られる)デスモイド基金(アメリカの患者支援組織、英文サイト)1)大腸癌研究会編. 遺伝性大腸癌診療ガイドライン2012年版.金原出版;2012.2)大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版.大腸癌研究会;2014.3)岩間毅夫.日内会誌.2007;96:207-212.4)岩間毅夫.日本大腸肛門病会誌.2004;57:859-863.公開履歴初回2013年10月24日更新2016年02月23日

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観察研究は無作為化試験より過大評価になる?/BMJ

 診療記録や患者登録など、規定どおりに収集された医療データ(routinely collected health data:RCD)を用いた観察研究は、同じclinical question(CQ)に関してその後に行われた無作為化試験とは異なる答えをもたらし、実質的に治療効果を過大に評価している可能性があることが、米国・スタンフォード大学のLars G Hemkens氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年2月8日号に掲載された。無作為化試験が行われていない場合、診療の意思決定の支援にRCDによる観察研究が活用される機会が増えているという。一方、観察研究は、交絡による固有のバイアスのリスクがあり、RCDには正確性や信頼性の面でも問題があるとされる。2種の試験で、死亡の抑制効果を比較 研究グループは、RCDを用いた観察研究と、その後に同じCQについて行われた無作為化対照比較試験のエビデンスの間に、死亡の抑制効果に関してどの程度の差があるかを検討した。 RCD試験は、2010年までに公表され、傾向スコアを用いて交絡バイアスを調整し、死亡への相対的な介入効果の記載があるものとした。解析には、同一のトピックに関する既報の臨床試験に先立って行われたRCD試験のみを含めた。 RCD試験と無作為化対照比較試験で、治療効果、信頼区間(CI)、効果量(effect size、オッズ比[OR])を比較した。ランダム効果モデルで複数の試験をメタ解析的に統合してサマリーオッズ比(OR)を算出し、相対OR(無作為化試験のサマリーORをRCD試験の推定ORで除したもの)およびサマリー相対ORを得た。 サマリー相対OR>1の場合に、RCD試験のほうがその後の臨床試験よりも死亡率の結果がより良好であると判定した。無作為化試験よりも治療効果が31%も高い 16件のRCD試験(12件が循環器関連)と、同一のCQを検討した36件の無作為化対照比較試験(1万7,275例、死亡例835例)が解析の対象となった。RCD試験終了から無作為化試験の報告までの期間中央値は3年だった。 16のCQのうち8つのRCD試験で有意な差が認められた。5つ(31%)のCQでは、無作為化試験の死亡への治療効果が、RCD試験とは逆であった。これら5つのCQの無作為化試験はいずれも有意な差はなかったが、RCD試験は1つの試験で有意差がみられた。 9つ(56%)のRCD試験では、そのCI内に無作為化試験の死亡への効果の推定ORが含まれなかった。また、全体では、RCD試験の死亡抑制効果の推定ORは無作為化試験よりも31%有意に優れていた(サマリー相対OR:1.31、95%CI:1.03~1.65、I2=0%)。 著者は、「RCDを用いた観察研究は、最良の治療法に関して必ずしも最も信頼性の高い答えをもたらさないことが示唆されるため、臨床的な意思決定が間違った方向に導かれないよう注意を払う必要がある」と結論し、「無作為化試験がない場合、治療効果はRCD試験の知見よりも不確定で、より小さい可能性を考慮すべきであり、無作為化試験のエビデンスが確立されるまでは、高価な介入は差し控えるのがよいかもしれない」と指摘している。

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パーキンソン病の男女比、加齢でどう変わる?

 男性は女性に比べ、高齢になるほどパーキンソン病を発症しやすいことが明らかとなった。パーキンソン病は女性よりも男性で1.5倍発症しやすいが、男女における発症率の差が年齢によって変化するかどうかはわかっていなかった。そこでフランス・健康監視研究所のMoisan F氏は国民健康保険データからの調査と、22件のコホート研究のメタ解析によって、パーキンソン病の有病率と発症率における男女比率を調査した。その結果、80歳を超える場合では女性よりも男性で発症率が1.6倍以上高まり、年齢に伴い男性の発症率がより高くなることを明らかにした。J Neurol Neurosurg Psychiatry誌オンライン版12月23日号の掲載報告。 研究グループはフランスの国民健康保険のデータを用い、14万9,672のパーキンソン病有症例(女性率50%)と2万5,438の発症例(女性率49%)を抽出した。抽出した症例に対してポアソン回帰分析を用い、有病率と発症率における男女比を全体/年齢別で算出した。 また、22のパーキンソン病に関するコホート研究(1万4,126例、女性率46%)をメタ解析し、年齢と有病率・発症率における男女比の関係を調べた。 主な結果は以下のとおり。・国民健康保険データから識別した症例において、年齢調整有病率・発症率は、女性よりも男性で高かった(男性:有病率=2.865、発症率=0.490、女性:有病率=1.934、発症率=0.328[単位:1000人年])・全体として、男性は女性と比較して有病率が1.48倍(95%CI:1.45~1.51, p<0.001)、発症率が1.49倍(95%CI:1.41~1.57、p<0.001)であった。・男女比はそれぞれ10歳ごとに、有病率で0.05、発症率で0.14増加した。・50歳未満の男女では発症率は大きく変わらず(男女比 <1.2、p>0.20)、80歳を超える場合では女性よりも男性で発症率が1.6倍以上高かった(p trend <0.001)。・コホート研究のメタ解析では、年齢に伴い女性よりも男性で発症率が高くなることが示された(10年ごとに0.26 倍、p trend=0.005)。 研究グループは「男女比が年齢の上昇とともに高まることは、年齢に伴ってパーキンソン病の病因が変化することを示唆している。この結果は、パーキンソン病の病因研究に新たな知見を与え得るだろう」と結論付けている。

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脳卒中後の課題指向型リハ、優越性示されず/JAMA

 脳卒中後、中等度の上肢後遺症が認められた患者のリハビリテーションについて、課題指向型リハビリテーションプログラム(Accelerated Skill Acquisition Program:ASAP)がもたらす機能回復は、従来型作業療法(usual and customary care:UCC)と比べて同等もしくは低いことが、米国・南カリフォルニア大学のCarolee J. Winstein氏らが361例を対象に行った無作為化試験ICAREの結果、明らかにされた。これまで早期リハビリ完了後の期間を対象に行われた2件の大規模臨床試験において、強度・回数を増した課題指向型リハビリを行うことで通常ケアと比べて機能回復が良好であることが示されていた。今回、研究グループは外来患者を対象に試験を行ったが、結果を踏まえて著者は、「課題指向型リハビリの優越性を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2016年2月9日号掲載の報告。用量の異なる従来型作業療法とで比較 試験は単盲検にて、脳卒中後、運動機能に中等度の後遺症が認められた外来患者361例を対象に行われた。被験者は2009年6月~14年3月に7施設で1万1,051例についてスクリーニングを行って集められ、試験期間は44ヵ月間であった。 ASAPは基本原則に基づくプログラムで、機能障害にフォーカス、特異的課題、強度、必要度、自発性、患者中心などに留意し、1時間の介入を週3回10週間にわたって計30セッション行うというもの。 研究グループは被験者を、ASAPを行う群(119例)、ASAPと同量(30セッション)のUCCを行う群(DEUCC、120例)、UCCのモニタリングのみを行う群(UCC、122例)の3群に無作為に割り付け有効性を比較した。 主要アウトカムは、Wolf Motor Function Test(WMFT、平均15の上腕運動と手作業からなる)の時間スコアの12ヵ月間の変化(対数で評価)であった。副次アウトカムは、WMFT時間スコアの変化(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]は19秒)、Stroke Impact Scale(SIS)上肢機能スコア(MCIDは17.8ポイント)が25ポイント以上改善した患者の割合などだった。12ヵ月間のWMFT時間スコアの変化に有意差なし 無作為化を受けた被験者361例(平均年齢60.7歳、男性56%、アフリカ系米国人42%、脳卒中発症後平均46日)のうち、12ヵ月間の主要アウトカム評価を完了したのは304例(84%)であった(ASAP群106例、DEUCC群109例、UCC群100例)。 主要アウトカムのintention-to-treat解析(361例対象)の結果、各群の平均スコアの変化は、ASAP群が2.2から1.4への変化(差:0.82)、DEUCC群は2.0から1.2(差:0.84)、UCC群は2.1から1.4(差:0.75)で、有意な群間差はみられなかった(ASAP vs.DEUCCは0.14、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.33、p=0.16/ASAP vs.UCC:-0.01、-0.22~0.21、p=0.94/DEUCC vs.UCC:-0.14、-0.32~0.05、p=0.15)。 副次アウトカムについても、ASAP群のWMFT時間スコアの変化が-8.8秒、SIS改善患者割合73%、DEUCC群はそれぞれ-8.1秒、72%、UCC群は-7.2秒、69%だった。ASAP vs.DEUCCのWMFT時間スコア差は1.8秒(95%CI:-0.8~4.5秒、p=0.18)、SIS改善患者割合の差は1%(-12~13、p=0.54)、ASAP vs.UCCのWMFT時間スコア差は-0.6秒(-3.8~2.6秒、p=0.72)、SIS改善患者割合の差は4%(-9~16、p=0.48)、DEUCC vs.UCCのWMFT時間スコア差は-2.1秒(-4.5~0.3秒、p=0.08)、SIS改善患者割合の差は3%(-9~15、p=0.22)であった。 重篤有害事象(入院、脳卒中再発など)は患者109例で168件報告された。8例の患者は試験中止となっている。介入に関連した有害事象は2例で、高血圧、手首の骨折であった。

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コカ・コーラは胃石治療の第1選択でよい【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第61回

コカ・コーラは胃石治療の第1選択でよい FREEIMAGESより使用 コーラはその昔、コーラの実から抽出した苦味のあるコーラ・エキスを用いていたことが由来とされていますが、現在ではコーラの実は含まれていないそうです。 コカ・コーラは、ザ コカ・コーラ カンパニーが製造販売するコーラの名称です。そんなコカ・コーラが胃石に対して有効であることを記したシステマティックレビューを紹介しましょう。 Ladas SD, et al. Systematic review: Coca-Cola can effectively dissolve gastric phytobezoars as a first-line treatment. Aliment Pharmacol Ther. 2013;37:169-173. 胃石とは、多種類の食材や雑多なものが消化管の中で集まり、石のように固まったものを指します。柿の摂取によって胃石が形成されることがあるのは有名ですよね。これは、タンニンであるシブオールという物質が胃内で重合するためです。胃石の治療として、内視鏡的に摘出したり手術を余儀なくされたりするケースもあるそうですが、ここ10年くらい炭酸飲料の有効性を記した報告が相次いでいます。このシステマティックレビューは、コカ・コーラが胃石の溶解に有効かどうか記したものです。過去のコカ・コーラの有効性を記した文献を抽出しました。2002~2012年の10年間で、46人の患者について記した24の論文が見つかりました。これらのうちほとんどで、コカ・コーラによる溶解が成功したとのことです。成功しなかった残りの患者さんは、内視鏡的治療や外科的治療を要したそうです。柿胃石に対するコカ・コーラの有効率は低かったそうですが、それ以外の胃石ではコカ・コーラの溶解を第1選択にしてもよいのではないかと考えられました。胃石の種類にもよるかと思いますが、よほど炭酸飲料が苦手でなければ、まずはコカ・コーラを試してみるのがよさそうですね。カンタンに治療できますし、誰でも侵襲的な処置はイヤでしょうから…。インデックスページへ戻る

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