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双極性障害の簡便な症状把握のために

 双極性障害(BD)患者の安定性と生活リズムのマーカーとして臨床的に検証されたソーシャル・リズム・メトリック(SRM)を、スマートフォンから受動検知したデータを用いて自動評価する仕組みの実現可能性について、米国・コーネル大学のSaeed Abdullah氏らが評価した。Journal of the American Medical Informatics Association誌オンライン版2016年3月14日号の報告。 BD患者7例に、行動および状況パターンを推測する目的で、加速度計、マイク、位置、コミュニケーションといった情報のデータを受動的に収集するスマートフォンを4週間使用させた。参加者は、スマートフォンアプリを用いてSRMエントリーを完了した。 主な結果は以下のとおり。・自動感知は、SRMスコアを推定するために使用可能であった。・ロケーション、移動距離、会話の頻度、非定常の時間を入力項目として用いた、この一般化モデルの二乗誤差(RMSE)は1.40であった。なお、適正パフォーマンスの範囲は、SRMスコア(0-7)である。・個別化モデルは、さらに向上し、ユーザー全体での平均RMSEは0.92であった。・センサーストリームを用いた分類は、高精度に安定状態(SRMスコア3.5以上)、不安定状態(SRMスコア3.5未満)を予測することが可能である(適合率:0.85、再現率:0.86)。 著者らは「自動スマートフォン感知は、リズムを推定するための実行可能なアプローチであり、BD患者のウェルビーイングの重要なマーカーである」とまとめている。関連医療ニュース 双極性障害の症状把握へ、初の質問票が登場 双極性障害の診断、DSM-IV-TRでは不十分 スマホ版うつ病スクリーニングアプリの精度は

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便秘はCVD死亡リスクを高める~日本のコホート研究

 排便回数は、日本人集団でのCVD死亡リスクと関連することが、東北大学の本藏 賢治氏らによる研究で明らかになった。今後、慢性便秘とCVD死亡リスクとの関連の根底にあるメカニズムの解明を目指した研究が、ますます進むことが期待される。Atherosclerosis誌2016年3月号(オンライン版2016年1月13日号)の掲載報告。 便秘は、心血管疾患(CVD)の発症と関連することが示唆されているが、排便頻度とCVDによる死亡リスクとの関連を検討した大規模研究は、これまで報告されていない。そこで著者らは、「大崎国保コホート研究」のデータを用いて、排便頻度と13年間のCVDによる死亡との関連について分析を行った。 大崎コホート研究に参加した4万5,112人(40~79歳)に生活習慣に関するアンケートを実施し、排便頻度に関する質問への回答を検討した。排便頻度によって「1日1回以上群」「2~3日に1回群」「4日に1回以下群」の3群に分け、循環器疾患による死亡、虚血性心疾患による死亡、脳卒中による死亡との関連を検討した。ハザード比は、Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・13.3年のフォローアップ期間中、2,028人がCVDにより死亡した。・「2~3日に1回群」、「4日に1回以下群」の全体的なCVD死亡リスクは、「1日1回以上群」と比較して、有意に高かった[多変量ハザード比はそれぞれ1.21(95%CI:1.08~1.35)、1.39(95%CI:1.06~1.81)]。

8363.

パーキンソン病治療はどう変わっていくか

 パーキンソン病は「予後が悪い」と説明する医師もいる。しかし、パーキンソン病の予後は決して悪くなく、さらに最近の治療法の進歩によってより良い方向へ変化しつつある。 2016年4月6日、アッヴィ合同会社主催のプレスセミナー「パーキンソン病治療の現状と将来への期待」が行われた。講師は順天堂大学脳神経内科 服部 信孝氏と、全国パーキンソン病友の会常務理事の高本 久氏だ。パーキンソン病治療は今どのような課題があり、今後どう変わっていくのか。セミナーの内容から解説していく。パーキンソン病治療の抱える課題 パーキンソン病の主症状は「手足のふるえ」「筋肉のこわばり」「動作の鈍化」「バランスが取りづらさ」といった運動症状である。一方で、パーキンソン病では「便秘」「睡眠障害」「抑うつ」「関節の変性」「嗅覚障害」といった症状もみられ、これらは非運動症状と呼ばれる。非運動症状は、患者にとってパーキンソン病の症状だとわかりにくいことがある。そのため、受診先に内科・精神科・整形外科を選んでしまい、5~6年間も適切な診断・治療を受けられない患者もいるという。このような患者を「正しい受診先へと導く」ことは今後の大きな課題である。 また、治療法についても課題が挙げられる。全国パーキンソン病友の会が行ったアンケートでは、半分以上の患者が現在の治療に満足しておらず、とくに重症例ではその割合が多い(図1)。また、新しい治療法に対する意識についての質問では、90%以上の患者が「新しい治療法を試したい」という意向を示した(図2)。このことから、パーキンソン病の患者、とくに重症例の患者ではより良い治療法へのニーズが高いという現状がうかがえる。  図1画像を拡大する  図2画像を拡大するパーキンソン病治療はどう変わっていくのか では、今後どのような治療法が期待されているか。現在、薬物治療の中心はL-dopa内服療法であり、多くの患者が症状の改善を実感している。しかし、薬剤が過剰であると「ジスキネジア※1」に、薬剤が効かない・不足していると「オフ※2」になってしまうこと、そして「薬が適切に効いている時間(オン※3)」は病状の進行につれて狭まっていくことが問題になっている。そのためジスキネジアやオフ時間が出にくい薬物療法、または薬物療法以外の治療法に期待が集まっている。 ジスキネジアやオフ時間が出にくいと期待される治療法が「持続性ドパミン刺激療法」だ。ドパミン刺激が持続的になされ、ドパミンの血中濃度が安定することでジスキネジア、wearing off※4といった運動合併症を緩和・発現防止すると考えられている。現在、日本ではレボドパ/カルビドパ合剤を、携帯型注入ポンプ・チューブを介して直接的に十二指腸へ投与する「持続的十二指腸内投与」の治療薬の承認申請も進んでいる。また、薬物療法で症状の改善に限界がある場合には、「脳深部刺激療法」が治療選択肢となる。脳深部に電極を、胸部に小型刺激電源を埋め込み、両者をリード線でつないで脳の奥深くに電流を持続的に流し刺激を与える。この治療法によりジスキネジアやwearing-offの改善が期待でき、薬剤増量が困難な患者における有用な一手となりうる。 「持続的十二指腸内投与」、「脳深部刺激療法」は双方ともパーキンソン病患者のより良い症状改善につながる治療法であるが、手術が必要になるなど、患者と医師にとってはややハードルが高いといえる。服部氏は「海外では治療効果が優先されるが、日本では安全性が重要視される。これらの治療法を行う際、患者や医師のフォローをどのように充実させていくかが課題だ」と述べた。  また、その他の新規治療法として「水素水飲用」「COQ10服用」によるUPDRS※5の改善といったトピックスが注目を浴び、研究が進められている。(図3参照)  図3画像を拡大する パーキンソン病は症状が進行すると非常に多くの薬剤を服薬する必要があり、患者に大きな負担がかかる。また高齢化社会に伴い、パーキンソン病患者は増加すると予想されている。患者により良い治療の選択肢を提案していくためにも、新規治療法の研究には関心が高まっていくだろう。※1 ジスキネジア:体や手足がくねくねと勝手に動くなどの症状(不随意運動)※2 オフ:薬の効果が切れている時間※3 オン:薬が適切に効いている時間※4 wearing off:薬剤の薬効時間が短縮して、薬剤服用前に症状が悪化する現象※5 UPDRS:パーキンソン病統一スケール(Unified Parkinoson's Disease Rating Scale)、パーキンソン病の重症度を点数で表す指標

8364.

リスペリドン誘発性高プロラクチン血症への補助療法

 統合失調症女性におけるリスペリドンまたはパリペリドン誘発性高プロラクチン血症に対する低用量アリピプラゾール補助療法について、上海交通大学医学院のYing Qiao氏らが検討を行った。Psychiatry research誌2016年3月30日号の報告。 リスペリドンまたはパリペリドンによる4週間の治療後、症状が有意に改善し、高プロラクチン血症を経験した漢民族系の統合失調症女性患者66例から60例を抽出した。対象患者は、治療群30例(アリピプラゾール補助療法)または対照群30例(非補助療法)に無作為に割り付けられた。リスペリドンおよびパリペリドンの用量は維持され、アリピプラゾールは5mg/日で8週間の試験期間中維持された。 主な結果は以下のとおり。・8週間後のプロラクチンレベルは、対照群よりも治療群で有意に低かった。・8週間の試験終了後および4週ごとのエストラジオールレベルは、治療群、対照群の両群において血清プロラクチンレベルと負の相関が認められた。・8週間の試験期間中、PANSSスコアは、両群ともに有意に改善した。・治療時の有害事象発現率は、両群ともに同等であった。 結果を踏まえ、著者らは「統合失調症女性患者に対する低用量アリピプラゾール補助療法は、有害事象を増加させることなく、リスペリドン、パリペリドン誘発性高プロラクチン血症の緩和に有効である」とまとめている。関連医療ニュース 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症にアリピプラゾール補助療法 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症、乳がんリスクとの関連は プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか

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deferredステント留置はSTEMIの予後を改善するか/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において、ステント留置を即座には行わないdeferredステント留置と呼ばれるアプローチは、従来の即時的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に比べて、死亡や心不全、再発心筋梗塞、再血行再建術を抑制しないことが、デンマーク・ロスキレ病院のHenning Kelbaek氏らが行ったDANAMI 3-DEFER試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年4月3日号に掲載された。STEMI患者では、ステント留置を用いたPCIによって責任動脈病変の治療に成功しても、遺残血栓に起因する血栓塞栓症で予後が損なわれる可能性がある。これに対し、梗塞関連動脈の血流が安定した後に行われるdeferredまたはdelayedステント留置は、冠動脈の血流を保持し、血栓塞栓症のリスクを低減することで、臨床転帰の改善をもたらす可能性が示唆され、種々の臨床試験が行われている。deferredステント留置の有用性を無作為試験で評価 DANAMI 3-DEFER試験は、デンマークの4つのPCIセンターが参加する3つのDANAMI 3プログラムの1つで、STEMI患者においてdeferredステント留置と標準的PCIの臨床転帰を比較する非盲検無作為化対照比較試験(デンマーク科学技術革新庁などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、胸痛発症から12時間以内で、心電図の2つ以上の隣接する誘導で0.1mV以上のST上昇または新規の左脚ブロックの発現がみられる患者であった。 被験者は、deferredステント留置または即時的に標準的なプライマリPCIを施行する群に無作為に割り付けられた。プライマリPCIは薬剤溶出ステント留置が望ましいとされた。 deferred群では、病院到着時の冠動脈造影で梗塞関連動脈の血流が安定化する可能性がある場合は約48時間(最短でも24時間以上、この間にGP IIb/IIIa受容体拮抗薬などを4時間以上静脈内投与)後に再造影を行い、血流の安定化が確認されればステント留置を行わないこととした。 主要評価項目は、2年以内の全死因死亡、心不全による入院、心筋梗塞の再発、予定外の標的血管の血行再建術の複合エンドポイントとした。 2011年3月1日~14年2月28日までに1,215例が登録され、deferred群に603例、標準的PCI群には612例が割り付けられた。予定外の標的血管血行再建術はdeferred群で高頻度 年齢中央値はdeferred群が61歳、標準的PCI群は62歳、男性がそれぞれ76%、74%であった。糖尿病がそれぞれ9%、9%、高血圧が41%、41%、喫煙者が54%、51%、心筋梗塞の既往歴ありが6%、7%含まれた。多枝病変は41%、39%であった。 発症から施術までの期間中央値は両群とも168分であり、フォローアップ期間中央値は42ヵ月(四分位範囲:33~49)だった。 主要エンドポイントの発生率は、deferred群が17%(105/603例)、標準的PCI群は18%(109/612例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.75~1.29、p=0.92)。 主要エンドポイントの個々の項目のうち、全死因死亡(p=0.37)、心不全による入院(p=0.49)、非致死的心筋梗塞の再発(p=0.49)には差がなかったが、予定外の標的血管の血行再建術はdeferred群のほうが有意に多かった(HR:1.70、95%CI:1.04~2.92、p=0.0342)。 また、心臓死(p=0.58)、PCIによる標的血管の血行再建術(p=0.11)、冠動脈バイパス・グラフト術(CABG)による標的血管の血行再建術(p=0.15)にも差はみられなかった。18ヵ月時の左室駆出率は、deferred群がわずかに良好だった(54.8 vs.53.5%、p=0.0431) 手技関連の心筋梗塞、輸血または手術を要する出血、造影剤誘発性腎症、脳卒中を合わせた発生率は、deferred群が4%(27/603例)、標準的PCI群は5%(28/612例)であり、両群間に差を認めず、個々の項目にも差はなかった。 著者は、「現在、類似の3つの臨床試験(MIMI試験、INNOVATION試験、PRIMACY試験)が進行中であり、これらの試験の結果がSTEMIにおけるdeferredステント留置の概念にさらなる光を投げかける可能性がある」としている。

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中等度リスク大動脈弁狭窄症、TAVR vs.SAVR/NEJM

 中等度リスクの大動脈弁狭窄症患者において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の外科的大動脈弁置換術(SAVR)に対する非劣性が証明された。米国・コロンビア大学メディカルセンターのMartin B. Leon氏らが、第2世代デバイス(SAPIEN XT)の大規模臨床試験PARTNER 2試験の結果、2年時の全死因死亡および障害を伴う脳卒中の頻度はTAVRとSAVRとで同等であることを報告した。これまでの研究では、高リスク大動脈弁狭窄症患者において、TAVRとSAVRで生存率は同等であることが示されていた。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。中等度リスク大動脈弁狭窄症患者約2,000例で、非劣性試験を実施 PARTNER 2試験は、2011年12月~13年11月、アメリカとカナダの57施設において実施された。対象は、多職種ハートチームによる臨床評価で中等度リスク(Society of Thoracic Surgeons[STS]≧4%)と判定された重症大動脈弁狭窄症患者2,032例であった。評価に基づき、経大腿アプローチ群または経心尖/経大動脈アプローチ群に層別後(76.3%および23.7%)、それぞれTAVR群またはSAVR群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は2年時の全死因死亡または障害を伴う脳卒中であった。障害を伴う脳卒中は、脳卒中発症後90日時点の障害重症度が修正Rankinスケール(0[症状なし]~ 6[死亡])で2以上と定義した。主要評価項目の発生率はTAVR19%、SAVR21%で同等 intention-to-treat解析集団において、Kaplan-Meier法で算出した2年時の全死因死亡または障害を伴う脳卒中の発生率は、TAVR群19.3%、SAVR群21.1%であった。(TAVR群のハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.73~1.09、p=0.25)。Kaplan-Meier法イベント発生率およびGreenwood法による標準誤差を用いて算出した、SAVR群に対するTAVR群の主要評価項目のリスク比は0.92(95%CI:0.77~1.09)で、事前に定めた非劣性基準(95%CI上限値が1.20以下)を満たした(p=0.001)。 主要評価項目の発生率は、経大腿アプローチではTAVR群がSAVR群より低かったが(16.8% vs.20.4%、HR:0.79、95%CI:0.62~1.00、p=0.05)、経心尖/経大動脈アプローチでは両群で有意差は認められなかった。 TAVR群では、SAVR群より大動脈弁口面積が大きく、急性腎障害、重篤な出血および新規心房細動の発生率は低かった。一方、SAVR群では重大な血管合併症や大動脈弁周囲逆流が少なかった。 なお、著者は今回の研究の限界として、割り付けた患者で予想外に脱落が多かったこと、すでにSAPIEN3生体弁が主流になっていること、適切なサイジングのための大動脈径評価にマルチスライスCTが使用されていなかったことがある、などを挙げている。

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朝食抜きで全死亡リスク1.3倍以上

 朝食を食べない習慣の人は、食べる習慣の人よりも、男性の循環器疾患による死亡リスクと全死亡リスク、女性の全死亡リスクが有意に上昇することが、鳥取大学の横山 弥枝氏らの研究で明らかになった。Yonago acta medica誌2016年3月号の報告。 朝食を食べる習慣は、食事パターンのマーカーであり、健康的なライフスタイルの有用な予測因子である。朝食を抜くことで不健康な影響があることは、多くの研究で報告されているが、朝食抜きと死亡との関連を検討した研究は少ない。 そのため、本研究では、JACC study(Japan Collaborative Cohort Study)の大規模コホート研究データを用いて、朝食抜きとがん/循環器疾患/すべての原因による死亡との関連を調査した。 対象は、日本人の生活習慣ががんとどのように関連しているのかを明らかにすることを目的に行われた、JACC studyの参加者(男性3万4,128人、女性4万9,282人;40~79歳)。参加者は1988~90年にベースライン調査を完了し、2009年末まで追跡調査が行われた。朝食を食べる習慣の有無で参加者を2群に分け、比較した。COX比例ハザード回帰モデルを用いて、多変量解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・中央値19.4年の追跡期間中に、がんで死亡した人は5,768人、循環器疾患で死亡した人は5,133人、すべての原因により死亡したのは1万7,112人であった。・朝食抜きは、不健康な生活習慣に関連していた。・朝食抜き群は、朝食を食べる群に比べ、男性の循環器疾患による死亡リスク(ハザード比[HR]:1.42)と全死亡リスク(HR:1.43)、女性の全死亡リスク(同:1.34)が有意に上昇した。

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中等度リスク患者、スタチンでベネフィット/NEJM

 心血管疾患既往のない、心血管イベントリスクが中程度の患者に対し、ロスバスタチン治療によりコレステロール値を低下することで、主要心血管イベントリスクは4分の3程度に低減することが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのS. Yusuf氏らが、約1万3,000例を対象に行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験HOPE-3の結果、明らかにした。先行研究で、コレステロール値を低下するスタチン治療は、心血管疾患既往のない人では、心血管イベントリスクを低下することが示されているが、試験に参加したのは脂質値および炎症マーカーが高値の人で、また被験者の大半が白人であった。そのためスタチンがもたらすベネフィットが、中等度リスクで民族的に多様な心血管疾患既往のない集団でも認められるかについては明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。ロスバスタチン10mg/日を投与し、イベント発生率を比較 研究グループは、21ヵ国228ヵ所の医療機関を通じて、55歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患の既往がなく、(1)ウエスト・ヒップ比が高い、(2)低HDLコレステロール値、(3)最近または現在喫煙、(4)糖代謝異常、(5)早期冠動脈疾患の家族歴、(6)軽度腎機能障害のいずれか1つ以上が認められる、1万2,705例を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。 同試験では、2×2要因デザインを用いて、カンデサルタン16mg/日+ヒドロクロロチアジド12.5mg/日と、脂質低下薬ロスバスタチン10mg/日の効果を検証した。本論では、ロスバスタチン投与群(6,361例)と、ロスバスタチン非投与群(プラセボ群、6,344例)について、その効果を比較した。 主要複合アウトカムは2つあり、第1主要複合アウトカムは心血管疾患死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中、第2主要複合アウトカムは、第1主要複合アウトカムに心肺停止からの蘇生、心不全、血行再建術を加えたものだった。スタチン投与で第1主要複合アウトカムのリスクは0.76倍に 追跡期間中央値は、5.6年だった。試験終了時のLDLコレステロール値は、ロスバスタチン群がプラセボ群に比べ、26.5%低かった。 第1主要複合アウトカムの発生率は、プラセボ群4.8%(304例)に対し、ロスバスタチン群は3.7%(235例)と、有意に低率だった(ハザード比:0.76、95%信頼区間:0.64~0.91、p=0.002)。第2主要複合アウトカムの発生率も、プラセボ群5.7%(363例)に対し、ロスバスタチン群は4.4%(277例)と有意に低率だった(同:0.75、0.64~0.88、p<0.001)。 ベースライン時の心血管リスクにより分類したサブグループや、脂質値、CRP値、血圧、人種および民族別でみたサブグループにおいても、ロスバスタチン投与により、同様の心血管イベントリスクの低減効果が認められた。 なお、ロスバスタチン群では、糖尿病やがんの増加はみられなかったものの、白内障手術率がロスバタチン群3.8% vs.プラセボ群3.1%(p=0.02)、筋肉関連症状の発症率は5.8% vs.4.7%と、いずれもロスバタチン群で有意な増加がみられた(p=0.005)。

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抗うつ薬誘発性体重増加のレビュー、その結果は

 うつ病と肥満はどちらも複雑な病因を持ち、公衆衛生に大きな影響を与える不均一な疾患である。疾患管理予防センター(CDC)のデータによると、抗うつ薬の処方は1988年以降、約400%上昇している。同時に、1980年以降の肥満率は、成人で15%から30%に倍増しており、小児では3倍以上増加している。肥満率の上昇は、重大な健康への影響を有し、30以上の重篤な疾患の増加率に影響する。西洋社会において、抗うつ薬の使用と肥満率が同時に上昇しているにもかかわらず、2つの関連付けおよび抗うつ薬誘発性体重増加のメカニズムについてはよくわかっていない。オーストラリア国立大学のS H Lee氏らは、抗うつ薬使用およびうつ病と体重増加との複雑な関係に注目し、レビューを行った。Translational psychiatry誌2016年3月15日号の報告。 主なレビューは以下のとおり。・臨床所見から、肥満がうつ病発症リスクを高め、うつ病が肥満リスクを高める可能性が示唆された。・視床下部-下垂体-副腎中枢(HPA axis)の活性化はストレス状態で誘発される。同時に、HPA axisは肥満やメタボリックシンドロームにより調節不全が生じ、それはうつ病と共通の病態生理学的経路として最もよく理解されている。・多くの研究で、異なるクラスの抗うつ薬が体重に及ぼす影響が示唆されてきた。・前臨床研究では、三環系のアミトリプチリン、ノルトリプチリン、イミプラミン、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬のミルタザピンが体重増加と関連していることが示唆されている。・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用は、急性期治療の体重減少と関連しているにもかかわらず、多くの研究において、SSRIが体重増加の長期的リスクと関連していることが示唆されている。しかしながら、臨床研究の高い変動性や複数の交絡因子のため、SSRI治療の長期的効果やSSRI曝露による体重増加は、依然として不明なままである。・最近開発された動物パラダイムでは、ストレスと抗うつ薬の組み合わせに続く長期的な高脂肪食の結果、長期抗うつ薬治療の中止後に、高脂肪食のみが引き起こす量を上回る著しい体重増加が示唆されている。・既存の疫学、臨床、前臨床データに基づき、抗うつ薬使用の増加により、抗うつ薬曝露が高率となった結果が肥満の蔓延に影響する因子であるとの検証可能な仮説が導き出された。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 オランザピン誘発性体重増加を事前に予測するには:新潟大学

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中等度リスク患者への降圧治療のベネフィットは?/NEJM

 心血管疾患既往のない、心血管イベントリスクが中程度の患者に対し、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドによる降圧治療を行っても、主要心血管イベントリスクは低下しないことが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのEva M. Lonn氏らが、約1万3,000例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験HOPE-3の結果、明らかにした。降圧治療について、高リスクの人および収縮期血圧が160mmHg以上の人では、心血管イベントリスクを低下するが、中等度リスクの人および血圧が低い(160mmHg未満)人における役割については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。 21ヵ国228ヵ所の医療機関で調査 研究グループは、21ヵ国228ヵ所の医療機関を通じて、55歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患の既往がなく、(1)ウエスト・ヒップ比が高い、(2)低HDLコレステロール値、(3)最近または現在喫煙、(4)糖代謝異常、(5)早期冠動脈疾患の家族歴、(6)軽度腎機能障害のいずれか1つ以上が認められる、1万2,705例を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。 同試験では、2×2要因デザインを用いて、カンデサルタン16mg/日+ヒドロクロロチアジド12.5mg/日と、脂質低下薬ロスバスタチン10mg/日の効果を検証。本論文では、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド投与群(6,356例)と、同非投与群(プラセボ群、6,349例)について、その効果を比較した。 主要複合アウトカムは2つあり、第1主要複合アウトカムは心血管疾患死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中、第2主要複合アウトカムは、第1主要複合アウトカムに心肺停止からの蘇生、心不全、血行再建術を加えたものだった。第1および第2主要複合アウトカムともプラセボ群と同等 追跡期間中央値は、5.6年だった。被験者のベースライン平均血圧値は138.1/81.9mmHgだった。 試験期間中、治療群の血圧低下幅はプラセボ群に比べ6.0/3.0mmHg大きかった。 第1主要複合アウトカムの発生率は、治療群が4.1%(260例)に対し、プラセボ群は4.4%(279例)で、同等だった(ハザード比:0.93、95%信頼区間[CI]:0.79~1.10、p=0.40)。 第2主要複合アウトカムの発生率も、治療群4.9%(312人)に対し、プラセボ群5.2%(328例)と、両群で同等だった(同:0.95、0.81~1.11、p=0.51)。 なお、事前に規定した収縮期血圧値が143.5mmHg超のサブグループについて調べたところ、第1・第2主要複合アウトカムとも、治療群でプラセボ群に比べ有意に低率だった(第1主要複合アウトカムについての傾向のp=0.02、第2主要複合アウトカムについての同p=0.009)。

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白内障手術は加齢黄斑変性と関連しているか

 白内障手術が加齢黄斑変性(AMD)の発症や進行と関連するという懸念が高まっているが、これまでの研究結果は一貫しておらず、臨床医を悩ませている。加えて、アジア人集団を対象として、超音波乳化吸引術時代にこの問題に取り組んでいるデータは十分ではないことから、韓国・ソウル大学盆唐病院のSang Jun Park氏らは、韓国国民栄養調査のデータを解析した。その結果、白内障手術とAMDとの関連は現在のところ明確ではないことを示した。左眼についてのみ後期AMDと関連が認められたが、著者は「偶然かもしれない」と述べている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年3月31日号の掲載報告。 研究グループは、韓国人集団において白内障手術とAMDとの関連を検討する目的で、2008~12年の韓国国民栄養調査のデータ(白内障手術状況およびAMDのグレードに関する調査結果を含む)を解析した。 参加者は、40歳以上の2万419例で、2015年2月5日~8月20日に解析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・1万7,987例から、1眼以上の白内障手術状況および眼底写真に関する情報が得られた。・解析対象は、計3万4,863眼(右1万7,616眼[平均年齢:54.87歳、女性:52.1%]、左1万7,247眼[同:54.70歳、52.2%])であった。・右1,264眼(5.5%)および左1,235眼(5.4%)が白内障手術を受けていた。・AMD罹患眼の右1,056眼および左949眼のうち、それぞれ167眼(15.2%)および147眼(13.7%)が白内障手術を受けていた。・左眼を除き、白内障手術とAMDとの間に関連は認められなかった。左眼では、白内障手術が後期(late)AMDと関連していた(オッズ比:2.34、95%信頼区間:1.13~4.85)。

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強直性脊椎炎〔AS: ankylosing spondylitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)は、脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)といわれる疾患群の代表的疾患である。SpAは、(1)血清のリウマトイド因子陰性、(2)仙腸関節炎・脊椎炎および末梢関節炎があり、(3)患者はHLA-B27遺伝子を高率に保有する、という特徴を持つ。ASのほかに、反応性関節炎(reactive arthritis:ReA)、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis: PsA)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)に伴う関節炎、分類不能(診断未確定)脊椎関節炎(undifferentiated SpA:uSpA)などがある(図1)。SpAの関節外症状にはぶどう膜炎など眼症状、膿漏性角化症や乾癬などの皮膚症状、IBDの腸疾患などが認められる。これらの症状はヒトHLA-B27遺伝子を有するラットにも認められ、「関節‐皮膚‐眼‐腸管」に及ぶ全身性疾患であることが理解できる。画像を拡大する最近、国際脊椎関節炎評価学会(Assessment of SpondyloArthritis international Society:ASAS)の分類基準では、本疾患は体軸性脊椎関節炎(axial spondyloarthritis:ax SpA)に分類される。■ 疫学ドイツでは成人の1%に発病し、関節リウマチと同程度の率とされているが、一般的に白人では0.5%、わが国のASの有病率は約0.02~0.03%と推定される。一般人口でみたHLA-B27の保有率は地域・民族によって異なり、北欧14%、欧米8%、中国・韓国5%、日本0.3%である。このため日本人のASの頻度は少ない。男女比は3~4:1で男性に多く、90%以上が40歳以前に発症する。■ 病因仙腸関節や付着部ではTNF-αなどの炎症性サイトカインが産生される。Th17細胞が関与する。自己免疫は明らかでなく、自然免疫の関与が想定されている。HLA-B27を構成する重鎖の構造異常があり、重合して2量体を形成することによって、NK細胞、B細胞、Th17細胞などの活性を引き起し、IL-23の産生が病因として推定されている。■ 症状1)炎症性腰背部痛(inflammatory back pain:IBP)仙腸関節炎・脊椎炎の症状は、「炎症性腰背部痛」として表現される。これは50歳以下に発症し、3ヵ月以上認められる背部痛であり、(1)30分を超える朝のこわばり、(2)背部痛は運動によって改善され、安静では改善されない、(3)睡眠時間の後半(明け方)に背部痛のため起こされる、(4)右や左に移動する殿部痛の4項目の特徴を持ち、2項目が該当すれば、IBPが存在すると分類される(Berlin criteria:感度70.3%、特異度81.2%)。椎間板ヘルニアなどの機械的な背部痛(mechanical back pain)は安静で良くなり、片側性であることが鑑別になる。線維筋痛症の疼痛と比べ、IBPは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有効という特徴がある。2)仙腸関節炎・脊椎炎仙腸関節・脊椎は体軸性関節(axial joint)と呼ばれる。仙腸関節炎・脊椎炎の典型的な臨床症状はIBPである。脊柱を中心とした身体のこわばりがあり、腰殿部痛(仙腸関節痛、坐骨関節痛)、項部痛、胸部痛が主症状である。初期には、腰背部痛の激痛発作~寛解を繰り返すことが多い。病状の進行に伴い、脊柱の可動域制限が生じ、進行例では、脊柱の強直に至る。可動域制限により脊柱は後弯傾向になり、特徴的な前傾・前屈姿勢になる。3)付着部炎(enthesitis)関節周囲の靱帯付着部(足底、大腿骨大転子、脊椎棘突起、腸骨稜、鎖骨、肋骨など)に炎症が起こり、疼痛が生じる。滑膜炎(synovitis)とは鑑別する必要がある。4)末梢関節炎全経過中に末梢関節炎は、80%以上の症例に認められる。股、肩、膝、足の順に、片側性に出現する。初発症状が末梢関節炎であることも30%の症例に認められる。5)ぶどう膜炎前部ぶどう膜炎は、約30%に認められ、再発性で、片側性である。診断時にぶどう膜炎の既往を聞くことが必要である。■ 分類これまではSpAの個々の疾患を並列に分けて論じてきたが、実際には共通した病態や症状(axial spondylitis)に着眼して生物学的製剤の治療が行えるために、ASASによって、疾患が表1のように分類される。画像を拡大する■ 予後最近の文献では、罹病後10年の生存率は100%であった。女性では罹病後38年間以内における死亡症例はない。50年後の生存率は男性61%、女性77%であり、女性のほうが生命予後は良好であった。死因は(1)循環器疾患(40.0%)、(2)悪性新生物(26.8%)、(3)感染症(23.2%)などであった。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)これまでの診断では、改訂ニューヨーク診断基準(表2)が用いられてきた。しかし、単純X線所見で仙腸関節の所見が出現する時期は50%以上の症例が発症後5年以上かかる。このためMRIでの脂肪抑制T2強調像またはSTIR法で早期より診断が可能になり、ASASによる分類基準が提唱された。画像を拡大するASASの分類基準では、体軸性(axial)SpAおよび末梢関節(peripheral)のSpAの分類基準(図2、3)がある。体軸性SpA の分類には、(1)炎症性腰背部痛、(2)HLA-B27の存在、(3)仙腸関節の画像所見が、SpAの分類(診断)に重要であることが理解できる。画像を拡大する画像を拡大するしかし、ASAS基準は分類基準である。個々の症例の診断は、1)医師の経験に基づく判断、2)除外・鑑別診断に基づく判断、3)症例検討会など他の医師との確認、4)経時的な臨床所見からの検証、など多方面の視点からの確認作業を重ねて診断が行われる。診断された症例の中から疾患特異性を求めるために、ASASの分類基準の規定に照らし合わせ、満足した症例が疫学調査や臨床治験に組み込まれる(表3)。このため紙面のチェックリストを用いて、簡単にASAS基準に満足すれば ASであると診断することは誤りである。また、すぐにbiologics治療をはじめることも誤りである。線維筋痛症や機械的腰痛などが分類基準であるASAS基準を使用することによって誤診されることが、国内外から指摘されている。乾癬性関節炎に関するCASPAR分類も同様である。ASAS基準はあくまでも診断の参考として使用する。チェックリストを用いた診断では、除外・鑑別診断ができず、また、他医との臨床検討がおろそかになる。また、リウマチ性疾患は多くの場合、2~3回の診察にて診断名が明らかになるが、数ヵ月間の経時的な評価・確認に基づく診断が必要である。画像を拡大する■ 検査1)臨床検査診断に特異的な臨床検査はないが、赤沈促進、CRP上昇、血清IgA値の中程度の上昇、HLAタイピング(HLA-B27陽性)は重要な根拠である。2)画像診断仙腸関節および脊椎のX線所見とMRI所見が重要である。X線画像では、仙腸関節は初期に変化がみられ、通常両側性で対称性である。骨吸収(blurring)、切手の縁の刻みのような骨侵食像と骨硬化像、進行すると関節裂隙の狭小化、偽拡大や線維化、骨化、強直が認められる。仙腸関節の撮影は正面1枚では偽陽性と判定されやすいので、左右斜位での撮影を必ず行う(図4)。画像を拡大する脊椎の椎体は骨化が進むと前方椎骨間の骨性架橋の癒合(syndesmophytes)がみられ、竹様脊椎(bamboo spine)を呈する。MRI検査は骨髄浮腫や骨炎などの炎症部位が検出可能で鋭敏であり、X線所見が認められない“non-radiographic”の時期から病変を検出できる。ほかにSTIR画像、T1強調画像が用いられる。CTは、主に仙腸関節の不整や硬化など形態変化を検出する。慢性進行例では、MRIにて検出できないためCTの所見が重要である。■ 鑑別が必要な疾患1)強直性脊椎骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH または ankylosing spinal hyperostosis:ASH)50歳以上の高齢者に認められる。血液所見で炎症反応は認めず、仙腸関節に不整は認められるが関節裂隙は保たれ、強直化も認めない。ASの靱帯骨棘(syndesmophyte)は縦方向に流れるように形成されるのに対して、DISHの骨棘(osteophyte)は横方向に伸び、かつ非対称性である。多くの靭帯の骨化が認められる。糖尿病を合併することがある。疼痛や可動域制限はあるがASほどではない。2)硬化性腸骨炎分娩後の女性に多くみられ、疼痛は仙腸関節周囲に限定し、血液所見での炎症反応は認めず、仙腸関節の関節面の変化より、腸骨側に三角形の均等な骨硬化像が認められる。3)膿疱性関節骨炎(掌蹠膿胞症性骨関節炎)掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis)の患者に合併する関節炎で、SAPHO症候群に含まれる仙腸関節炎を10~40%合併する。脊椎の病変が多い。胸肋鎖骨肥厚症が90%出現する。関節炎発現時、皮膚病変がないこともあり、必ず既往歴を聞くことが大切である。4)線維筋痛症多数の疼痛点がASの付着部痛の部位と似ていることから、過剰診断または混同される。女性に多く、多彩でさまざまな症状を強く訴える。ASの症例は、一般的に我慢強い。血液検査や画像診断で異常は認められない。NSAIDsが無効であり、ぶどう膜炎の既往もない。HLA-B27陽性であることは少ない。5)変形性脊椎症、変形性仙腸関節症身体のこわばりや疼痛、可動域の制限などASと共通な臨床症状を呈するが、その程度は軽い。血液検査で炎症所見は認められない。X線所見上、一見AS類似の所見を呈するが、関節面の骨びらん・骨硬化はみられるものの、高齢になっても脊椎関節や仙腸関節の裂隙は保たれ、強直はみられない。脊椎正面像では、横方向に伸びる骨棘が特徴的である。仙腸関節下端にも骨棘が伸びる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ASの治療の基本は、ASAS/EULARのAS治療に関する勧告(表4、図5)になる。主な治療は薬物療法と運動・理学療法である。画像を拡大する1)運動・理学療法定期的な運動・体操により姿勢や背骨の動きを保ち、痛みを和らげて運動機能を促進する。入浴やシャワーの後にストレッチを行うことにより関節の可動域が保たれる。温水プールでの運動や水泳が理想的である。背骨を伸ばす運動や深呼吸をする運動が勧められる。個人に適した強さの体操や運動を、無理せず継続して行うことが重要である。2)薬物療法基本はNSAIDsである。脊椎関節炎に対してはメトトレキサート(MTX)〔保険適用外〕を含む従来のDMARDsが有効であるというエビデンスはない。末梢関節炎に対してはサラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジンEN)〔保険適用外〕が有効である。ステロイドは主に関節局所への注射が使用される。骨粗鬆症予防にビスホスホネート製剤が併用される。NSAIDsの効果が不十分な脊椎の症状に対しては、TNF-α阻害薬の適応がある(表5、6)。画像を拡大する画像を拡大するわが国では、インフリキシマブ(同:レミケード)とアダリムマブ(同:ヒュミラ)が保険適用となっている。TNF-α阻害薬使用時にMTXを併用する必要はなく、かつ、併用効果のエビデンスはない。TNF-α阻害薬による骨形成抑制作用に関しては現時点では明らかにはなっていない。しかし、TNF-α阻害薬が炎症を抑え、疼痛を軽減することは、身体の活動・運動を促し、可動域減少を予防する。また、就学、就労、家事および育児の継続に有効な治療法と考えられる。3)手術進行した股関節の障害に対しては人工関節置換術が行われる。4 今後の展望ASおよびSpAに関する分類の再構築によって、治療の適応が拡大し、早期よりTNF-α阻害薬の使用ができるようになった。TNF-α阻害薬における骨形成阻害作用は確認されていないが、疼痛の緩和やADLの改善や体操によって、可動域制限の進行が抑制される可能性が期待される。アバタセプトやリツキシマブのASに対する治療効果は否定的である。IL-17阻害薬であるセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が2015年11月欧州で、また、2016年1月米国で承認となった。そのほかの治療薬の出現が待たれる。5 主たる診療科リウマチ科、整形外科、膠原病内科、放射線科、消化器内科、皮膚科、眼科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本リウマチ財団 リウマチ情報センター 対象とする病気:強直性脊椎炎(一般利用者向けのまとまった情報)日本脊椎関節炎学会(医療従事者向けのまとまった情報)日本整形外科学会 症状・病気をしらべる:強直性脊椎炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)長引く腰痛、実は…強直性脊椎炎の情報発信サイト(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公的助成情報東京都福祉保健局:難病患者支援(患者、患者家族向けの情報)患者会情報日本AS友の会 Japan Ankylosing Spondylitis Club(JASC)(ASの患者、患者家族向けの情報)1)井上 久ほか. 強直性脊椎炎の診断と治療の実際. 2012; アボットジャパン株式会社、エーザイ株式会社.2)井上 久ほか.我が国の強直性脊椎炎(AS)患者の実態~第3回患者アンケート調査より~.日本脊椎関節炎学会誌;2011;3:29-34.3)Kobayashi S, et al. Mod Rheumatol.2012;22:589-597.公開履歴初回2013年08月29日更新2016年04月12日

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中国の若者におけるアトピー性皮膚炎の特徴

 北京大学人民医院のPing Liu氏らは、中国青少年/成人の慢性対称性湿疹/アトピー性皮膚炎(AD)の臨床的特徴を調べ、中国版青少年/成人AD診断基準を作成する検討を行った。小児ADの臨床的特徴については広く研究されているが、青少年/成人ADについては大規模な検討がなかったという。42施設から2,662例のデータが集まり分析を行った結果、患者の77.5%が発症は12歳以降と遅発性で、ADの発現形態は不均一であったことなどを報告した。Chinese Medical Journal誌2016年4月5日号の掲載報告。 検討は、病院ベースで行われ、42の皮膚科センターが参加。慢性対称性湿疹またはADを有する成人および青少年(12歳以上)患者を包含した。2013年9月~14年9月に、記入式調査票を用いて患者および研究者両者に対する調査を行った。 有効回答データを、EpiData 3.1、SPSS 17.0ソフトウェアを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・2,662例の有効回答が得られた(男性1,369例、女性1,293例)。平均年齢40.6±18.9歳(範囲:12.1~93.0歳)で88.0%が18歳以上、84.1%が都市部住民であった。・2,662例のうち、2,062例(77.5%)が12歳以降の発症であった。12歳以前の発症は600例(22.5%)のみで、湿疹/ADが一般に遅発性であることが判明した。・2,139例(80.4%)は、6ヵ月以上の間、症状を有していた。・1,144例(43.0%)は、アトピー性疾患の個人歴または家族歴があった。・1,548例(58.2%)で、総血清IgE値上昇、好酸球増加症、アレルゲン特異的IgE陽性が認められた。・これらの結果をベースに、マスト事項「6ヵ月以上の対称性湿疹(皮膚炎)」+「ADの個人歴または家族歴あり」および/または「総血清IgE値上昇、好酸球増加症、アレルゲン特異的IgE陽性のいずれかあり」とする中国版青少年/成人AD診断基準を作成提案した。・2,662例を対象に調べた同診断基準の感度は、60.3%であった。一方で、同一対象について、Hanifin Rajka基準の感度は48.2%、Williams基準は32.7%であり、日本皮膚科学会基準(JDA)は79.4%であったが、中国版青少年/成人AD診断基準は簡易で良好な診断基準であることが示唆された。

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わかる統計教室 第3回 理解しておきたい検定 セクション7

インデックスページへ戻る第3回 理解しておきたい検定セクション7 信頼区間とは?セクション1 セクション2 セクション3セクション4 セクション5 セクション6セクション6では、帰無仮説と対立仮説、対応のあるデータと対応のないデータについて学習し、対立仮説の重要性、データによる仮説検定の方法の違いを学びました。セクション7では、仮説検定の方法を勉強する前に、まず、信頼区間について理解しておきましょう。■信頼区間とは何かセクション4の「仮説検定の手順(4)比較」で、下記の3つの方法を学びました。方法1信頼区間の下限値と上限値の符号(+/-)を比較。方法2t値と棄却限界値を比較。方法3 p値と有意点を比較(よく用いられる有意点は0.05 )。このセクションでは、方法1をご説明します。それでは、「信頼区間」について、詳しく説明していきましょう。表18に示す低下体温の平均値は、同一患者を調べたデータから求められたものです。表18 対応のあるデータの平均値低下体温の平均値は、新薬Yは2.15℃ですが、別の患者を調べたら異なる値かもしれません。したがって、これから何万人(母集団)もの患者に処方されるであろう、新薬Yの低下体温平均値の取りうる範囲を知っておく必要があります。この低下体温平均値の母集団での取りうる範囲を、統計学では「信頼区間(confidence interval:CI)」と言います。■信頼区間(CI)の求め方CIの下限値(lower limit value)と上限値(upper limit value)は、標準誤差(SE)を用いて求められます。【公式1】下限値=平均値-1.96×SE  上限値=平均値+1.96×SEセクション5で学んだSEがさっそく出てきましたね。さて、ある薬剤について調査した結果が、次の数値だったとしましょう。n=100、低下体温平均値=2℃、標準偏差(SD)=1℃では、SEはいくつになるでしょうか。SEはSD÷√nなので、1÷10=0.1になりますね。そこで、下限値と上限値を計算してみると、下限値=2-1.96×0.1=1.8  上限値=2+1.96×0.1=2.2となります。この結果から、母集団における低下体温平均値は1.8~2.2℃の間にあり、別の調査をしても、低下体温の平均値はこの範囲に収まっていると言えます。でも、このように言い切ってしまっていいのかどうか、外れることはないのかどうか、心配になりますね。実はこの範囲に収まらないこともありますが、仮に100回調査したら95回は収まるという保証の下にCIは求められています。つまり、95%の確からしさで、母集団の低下体温平均値を推測できるということになるのです。この確からしさを「信頼度(statistics confidence)」と言います。■標本誤差(sample error)とは?新薬の効果を調べる場合、その薬を必要としているすべての人に新薬を投与してみれば効果はわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬を投与して、そこで得られたデータが世の中の多くの人たちにも通じるかを検証します。この一部の人に薬を投与して、そこで得られたデータのことを「標本」と言います。標本調査では、調査対象を無作為に抽出して調査をしますので、どの対象が選ばれるかは偶然によって左右されます。このため、標本調査の結果は必ずしも母集団の値、すなわち真の値とは一致せず、何らかの差があります。このように調査対象の一部を選定することによって起こる、真の値と調査結果との差を「標本誤差(sample error)」と言います。標本調査を行うときは、この標本誤差の存在を忘れてはなりません。標本誤差がどのくらいになるかを予測した上で標本の大きさ(サンプルサイズ)などを決定する必要があります。また、標本調査を行う場合だけでなく、調査結果を見る際にも標本誤差の存在を忘れてはなりません。調査結果を見る人に、統計を正しく利用してもらうためにも、標本誤差を測っておく必要があるのです。■標本誤差の求め方患者の薬剤投与前後体温の調査は頻繁にできないので、通常はわずか1回の調査データを分析し、標本誤差を求めることになります。調査から導かれる統計的数値は何があったでしょうか。n数、平均値、中央値、SD、SEですね。標本誤差はこの中の「n」、「SD」を用いて、次の手順で計算します。【公式2】SDを√nで割った値がSEでしたね。このSEに1.96という定数を掛けた値を「標本誤差」と言います。ここで出てくる、「1.96」という数値については、あとで説明します。似た単語がたくさん出現して頭が混乱しそうになりますが、「標準偏差」、「標準誤差」、「標本誤差」の3つだけなので、これらの違いはしっかり理解しておきましょう。■CIの解釈先ほどの事例は、CIが1.8~2.2℃でした。表19の「C」のCIです。では、別の例のSEとCIを示します。次表19のAとBです。表19 SEと信頼区間表20 信頼区間の比較さて、この中で、どの結果が最も好ましいと思いますか。もちろん、幅の狭いCとなります。CIの幅が狭いほど推計の精度が高いと言えるからです。それではどのような場合、幅が狭くなるのでしょうか。それは、標本誤差が小さいほど、幅は狭くなります。では標本誤差が小さくなるのは、どのような場合でしょうか。先ほどの公式2を見て考えてみてください。SDが小さくなるほど標本誤差が小さくなりますね。n数との関係はどうでしょうか。nが分母にあるので、nが大きくなるほど標本誤差が小さくなります。つまり、nが大きく、SDが小さいデータほど標本誤差は小さくなるのです。このことはSEについても言えます。nが大きく、SDが小さいデータほどSEは小さくなります。表21は、nとSDを変えてSEの値がどのように変化するかを見たものです。表21 SEの大小nが最大の900、SDが最小の0.3のとき、SEは0.01で最小となります。nが最小の9、SDが最大の6のとき、SEは2.0で最大になります。表21は、nの3パターン×SDの3パターン、9つの組み合わせで、SEの変化をみたものですが、この9つとも平均値は6だったとしましょう。表22では、このSEを1.96倍した標本誤差を平均値で割って、求められた値を割合(%)で表記しています。表22 相対誤差求められた%が大きいほど、CIの精度が悪いことがおわかりになると思います。この%を「相対誤差(relative error)」といいます。相対誤差は10%以下が理想であり、20%だとその推計は使い物にならないと考えたほうがよいでしょう。この20%という値は、統計学的に決められた基準ではありません。分析者の経験値からばらつきが多くなる判断基準として用いられている数値です。では、相対誤差が大きくなる原因には何があるでしょうか。n数が少ないことや調査データのばらつきが大きいことです。相対誤差が20%以上になったら、再調査をしてn数を増やしたり、低下体温の場合には、条件設定でたとえば体温が36℃以下や40℃以上の薬剤適用外の患者を調査対象から外します。これによりデータのばらつきが小さくなります。■CIの計算手順表23の新薬Yの低下体温のデータについて、CIと相対誤差を求めてみましょう。ここでは、母集団全体の傾向を知りたいので(n-1)を適用してSD(n-1)で計算しています。表23 CIと相対誤差母集団の低下体温平均値のCIは、1.46~2.54℃の間にあるといえます。相対誤差は26.8%です。基準の20%を上回り、このCIは母集団における低下体温平均値の推測に適用できません。その理由はサンプルサイズが小さいからです。■表1 新薬Yの低下体温からSE、標本誤差、CI、相対誤差を求める新薬Yの処方患者300例、従来薬Xの処方患者400例について、薬剤投与前後の体温を調べたデータです。低下体温は投与前体温から投与後体温を引いた値です。表1 薬剤投与前後の体温調査データ(再掲)そして、表24が算出した結果です。表24 新薬Yの低下体温平均値の信頼区間母集団における新薬Yの低下体温平均値のCIは2.08~2.22℃の間にあると言えます。その確からしさを示す信頼度は95%です。このようにして求めたCIを「95%信頼区間(95%CI)」とも言うので、この言葉も覚えておきましょう。■定数1.96とはでは、公式1の定数1.96についてご説明いたします。表25に示すように、実は、定数は1.96でなくn数によって変化するのです。表25 n数と定数との関係表21は9例なので、CIを求めるとき、本当は1.96でなくn=10の定数である2.26より、さらに大きな定数である2.31を使わなければならなかったのです。現在のように統計解析ソフトが簡単に使えなかった時代は、n数が100以上は1.96、99以下の場合は、上記の値を使っていました。また、統計ソフトは、上記表の定数を使って計算することができますが、手計算の場合は、nが100以上の場合に限り1.96で計算して良いとされています。その理由として、どちらで計算してもCIはほぼ同じだからです。表23のCIは1.46~2.54℃とかなり幅が広いですが、定数が1.96より2.31と大きくなったので、CIの幅はさらに広がることになり、さらに精度が悪くなってしまいます。つまり、n数が99以下の調査から母集団について推測するのは、危険だということです。■今回のポイント1)CIの下限値(lower limit value)と上限値(upper limit value)は、標準誤差(SE)を用いて求められる!2)CIの計算で用いた定数1.96、実はn数で変化する!3)「標準偏差(SD)」、「標準誤差(SE)」、「標本誤差」の違いをしっかり把握しよう!インデックスページへ戻る

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統合失調症患者への健康増進介入はやはり難しい

 統合失調症患者における早期死亡の最も一般的な原因は、心血管疾患である。デンマーク・オーフス大学病院のMette Vinther Hansen氏らは、短期試験で有効性が証明されている手法を用いて、非選択的な統合失調症外来患者における心血管リスク因子を減らせるかを検討した。さらに、どのようなベースライン特性が良好なアウトカムと関連しているかも検討した。The International journal of social psychiatry誌オンライン版2016年3月23日号の報告。 2つのデンマークの病院で統合失調症の治療を受けたすべての患者を対象に、1年間の追跡研究を行った。対象患者は、個別およびグループでの健康介入を受けた。体重、腹囲、血糖値、血清脂質、喫煙とアルコールに関する情報を得た。 主な結果は以下のとおり。・平均して、BMI、腹囲のわずかだが有意な増加が観察された一方で、他の心血管リスク因子は有意ではないわずかな改善が認められた。・ベースライン時にBMIの高い患者、2年超の罹病期間を有する患者においては、介入により有意に良好な結果が得られた。 結果を踏まえ、著者らは「ルーチンケアの一部として、統合失調症患者の身体健康状態を改善することは難しいことが示された。患者に対して介入に参加する動機付けがなく、推奨されるメタボリックリスク指標の管理は困難であった。今後の研究は、ルーチンケアに取り入れることのできる健康増進法として、シンプルな戦略に焦点を当てるべきである」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者の運動増進、どうしたら上手くいくか 統合失調症患者にはもっと有酸素運動をさせるべき 日本人統合失調症患者のMets有病率を調査:新潟大学

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日本人アルツハイマー病、BPSDと睡眠障害との関連は

 アルツハイマー病(AD)における睡眠障害はBPSD(認知症の行動と心理症状)に影響を与える可能性がある。大阪大学保健センターの壁下 康信氏らは、ADの異なるステージにおける、睡眠障害とBPSDとの関連を検討した。その結果、非常に初期のAD患者において、睡眠障害とBPSDとの強い関連が認められたことを報告した。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2016年3月21日号の報告。 本調査は、日本における多施設レトロスペクティブ研究(J-BIRD)の一部である。分析対象は、AD患者684例。認知症のグローバル重症度は、臨床的認知症評価尺度(CDR)を用いて推定した。BPSDは、NPI(Neuropsychiatric Inventory)を用いて評価した。CDRのスコアに応じ、ADの異なるステージにおける、睡眠障害とBPSDとの関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・684例中146例(21.3%)は睡眠障害を有していた。・睡眠障害を有する非常に初期のAD患者(CDR:0.5)では、睡眠障害のない患者と比較し、BPSDが有意に多かった。なかでも、不安、多幸感、脱抑制、異常運動行動のNPI4項目の有病率が高かった。・中等度のAD患者(CDR:2)では、過敏性の1項目のみが影響を受けていた。軽度AD(CDR:1)高度AD(CDR:3)では、いずれも影響を受けなかった。・重回帰分析は、さまざまなCDRスコアを有するAD患者で実施した。・非常に初期のAD患者では、睡眠障害の存在は高い総NPIスコアと関連していた(β=0.32、p<0.001)。・しかし、認知機能低下、年齢、性別、教育年数を含む他の要因は、NPIスコアとの有意な関連は認められなかった。・軽度または中等度のAD患者では、BPSDと有意に関連する要因はなかった。関連医療ニュース 日本人高齢者、運動でアルツハイマー病リスク軽減:九州大学 認知症者の向精神薬使用実態と精神症状発現状況 アルツハイマー病へのBZD、使用頻度の追跡調査

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閉経後ホルモン補充療法の血管への影響、開始時期で異なる?/NEJM

 閉経後早期(6年以内)に開始した経口エストラジオール療法は、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)で評価される無症候性アテローム性動脈硬化の進行抑制と関連していることが明らかにされた。ただし、閉経後早期あるいは閉経後10年以上経過して開始した場合のいずれにおいても、心臓CTで評価されるアテローム性動脈硬化に有意な影響は認められなかった。米国・南カリフォルニア大学のHoward N. Hodis氏らが、健康な閉経後女性を対象としたELITE(Early versus Late Intervention Trial with Estradiol)試験の結果、報告した。これまで多くの研究で、閉経後まもなく開始したエストロゲンを含むホルモン療法の心血管疾患に対するベネフィットが示唆されている。しかし、閉経後ホルモン療法の心血管系への影響は治療開始時期で異なるという仮説(タイミング仮説)について、これまで検証されていなかった。NEJM誌オンライン版2016年3月31日号掲載の報告。閉経後6年未満か10年以上に分け、CIMTの増加を評価 ELITE試験は、単独施設で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験である。対象は健康な閉経後女性643例で、閉経後6年未満(閉経後早期)と閉経後10年以上(閉経後後期)に層別し、エストラジオール群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 エストラジオール群では、17β-エストラジオール1mg/日を経口投与するとともに、子宮を有する女性にはプロゲステロン45mg膣ゲルを、1サイクル30日として10日間1日1回連日投与した。プラセボ群では、プラセボ経口投与ならびに、子宮を有する女性にはプラセボ膣ゲル投与を行った。 主要評価項目は、6ヵ月ごとに測定したCIMTの変化率で、副次評価項目は、治療終了時の冠動脈造影CTによる冠動脈アテローム性硬化の評価などであった。早期開始のエストラジオール群、同プラセボ群に比しCIMTの増加が有意に少ない 中央値5年後において、CIMT増加に対するエストラジオールの効果は、プロゲステロンの有無にかかわらず、閉経後早期開始群と閉経後後期開始群で異なった(交互作用のp=0.007)。 閉経後早期開始群のCIMT増加は、平均値でプラセボ群0.0078mm/年に対し、エストラジオール群は0.0044mm/年であった(p=0.008)。一方、閉経後後期開始群の増加は、両群間で有意差はみられなかった(それぞれ0.0088mm/年、0.0100mm/年、p=0.29)。 なお、冠動脈造影CTで評価した冠動脈石灰化、狭窄およびプラークは、閉経後早期開始群より閉経後後期開始群でスコアが有意に高かったが、エストラジオール群とプラセボ群とで有意差は認められなかった。 著者は研究の限界として、症例数や追跡調査期間が冠動脈評価項目の治療群間差を検出するのに不十分であったこと、ベースライン時の冠動脈画像を利用できず新たな冠動脈病変へのホルモン療法の影響は評価できなかったことなどを挙げている。

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ピオグリタゾンと膀胱がんリスク~約15万人のコホート研究/BMJ

 ピオグリタゾンの使用は膀胱がんのリスクを高め、使用期間や累積用量の増加に伴いリスクが増大することが、カナダ・ジューイッシュ総合病院のMarco Tuccori氏らの、約15万人を対象とした大規模コホート研究の結果、明らかにされた。また、同じチアゾリジン系(TZD)薬のロシグリタゾンでは関連が認められず、膀胱がんのリスク増大はピオグリタゾンに特有で、クラス効果ではないことが示唆されると結論している。ピオグリタゾンと膀胱がんとの関連については、多くの研究で矛盾する結果が報告されており、より長期間追跡する観察研究が求められていた。BMJ誌オンライン版2016年3月30日号掲載の報告。ピオグリタゾンと膀胱がん発症リスクとの関連を14万5,806例で追跡 研究グループは、英国プライマリケアの1,300万例以上の医療記録が含まれるデータベースClinical Practice Research Datalinkを用い、2000年1月1日~13年7月31日に非インスリン糖尿病治療薬による治療を新たに開始した2型糖尿病患者14万5,806例のデータを解析した(追跡調査期間は2014年7月31日まで)。 解析では、治療開始時にすでにがんが発症していた可能性、ピオグリタゾンによるがん発症までの時間を考慮し、初回処方1年後時点からを使用開始とみなし使用期間を算出。Cox比例ハザードモデルを用い、ピオグリタゾン使用の有無ならびに累積使用期間と累積使用量別に、膀胱がん発症の補正ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算した(年齢、登録年、性別、アルコール関連障害、喫煙状況、BMI、HbA1c、がんの既往歴、膀胱炎や膀胱結石の有無、チャールソン併存疾患指数:CCI、糖尿病治療期間、蛋白尿の有無で補正)。 また、先行研究で膀胱がんのリスク増大とは関連がないとされるTZD薬であるロシグリタゾンでも、同様の解析を実施した。ピオグリタゾンの使用期間が長いほど膀胱がんリスクが増大 追跡調査期間平均4.7(SD 3.4)年、計68万9,616人年において、622例が新たに膀胱がんと診断された(粗発症率[/10万人年]90.2)。 他の糖尿病治療薬と比較し、ピオグリタゾンは膀胱がんのリスク増大と関連していた(粗発症率88.9 vs 121.0、補正後HR:1.63、95%CI:1.22~2.19)。一方、ロシグリタゾンでは膀胱がんのリスク増大との関連は認められなかった(粗発症率88.9 vs 86.2、補正HR:1.10、95%CI:0.83~1.47)。使用期間反応関係および用量反応関係は、ロシグリタゾンでは認められなかったが、ピオグリタゾンでは観察された(補正後HR:>2年:1.78、>2万8,000mg:1.70)。

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日本のTAVRのアウトカムは良好か?リアルワールドの結果示される

 2016年3月、日本循環器学会学術集会にて、慶應義塾大学循環器内科 林田健太郎氏が日本のTAVRの多施設レジストリ、OCEAN-TAVIの結果を発表した。 TAVRは2002年から臨床応用が始まり、現在では世界で20万人が治療を受けている。本邦では2013年に承認され、施行数も増加している。しかしながら、日本におけるリアルワールドの大規模なデータはない。そこで、本邦のTAVR症例の4割程度を占めるハイボリュームセンター8施設の前向き多施設レジストリデータを形成し、日本でのアウトカムを検討した。 対象患者は2013年10月~2015年7月までに8施設に登録された749名。使用デバイスはSapien XT。評価項目は手技成功率、30日死亡率、VARC2定義による合併症、30日死亡予測因子であった。 患者の平均年齢は84.3歳、70%が女性であった。平均BSA 1.4m2、Logistic Euroスコア17.0%、STSスコア8.1%であった。CKDが67.2%おり、CABGが7.9%に、PADが15.9%に施行されていた。施術はTFアプローチが8割、TAアプローチが2割であった。 結果、手技成功率は96.9%(TF97.4%、TA95.0%)。30日死亡率は2.0%(TF1.7%、TA3.5%)と、海外の成績に比べ良好であった。 虚血性脳卒中発現率は2.1%であった。また、PPM(prosthesis-patient mismatch)発生率は中等度と重度を合わせて6.8%であった。 30日死亡の予測因子は、男性、腎機能、STSスコア。 死亡率を年齢層別に解析すると、80歳未満4.3%、80歳以上90歳未満1.7%、90歳以上0.9%であった。死亡率が、年齢と共に下がっていること、90代の死亡率も極めて低いことが特徴的であった。

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