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A群レンサ球菌咽頭炎に最良の抗菌薬は?

 咽頭スワブでのA群β溶血性レンサ球菌(GABHS)陽性者において、咽頭痛に対する抗菌薬のベネフィットは限られ、抗菌薬が適応となる場合にどの薬剤を選択するのが最良なのかは明らかになっていない。今回、オーストラリア・クイーンズランド大学のMieke L van Driel氏らが19件の無作為化二重盲検比較試験を評価し、GABHSによる扁桃咽頭炎の治療におけるセファロスポリンとマクロライドをペニシリンと比較したところ、症状消失には臨床関連の差が認められなかったことが示された。著者らは、「今回の結果から、コストの低さと耐性のなさを考慮すると、成人・小児ともにペニシリンがまだ第1選択とみなすことができる」と記している。The Cochrane database of systematic reviews誌オンライン版2016年9月11日号に掲載。 著者らは、症状(痛み・熱)の緩和、罹病期間の短縮、再発の予防、合併症(化膿性の合併症、急性リウマチ熱、レンサ球菌感染後糸球体腎炎)の予防における各抗菌薬の効果比較のエビデンスと、副作用発現率の比較およびレンサ球菌に対する抗菌薬治療のリスク・ベネフィットに関するエビデンスを評価した。 CENTRAL(2016年第3版)、MEDLINE Ovid(1946年~2016年3月第3週)、EMBASE Elsevier(1974年~2016年3月)、トムソン・ロイターのWeb of Science(2010年~2016年3月)、臨床試験登録を検索し、「臨床的治癒」「臨床的再発」「合併症または有害事象、もしくは両方」のうち1つ以上を報告している無作為化二重盲検比較試験を選択した。 主な結果は以下のとおり。・ペニシリンとセファロスポリン(7試験)、ペニシリンとマクロライド(6試験)、ペニシリンとカルバセフェム(3試験)、ペニシリンとスルホンアミドを比較した1試験、クリンダマイシンとアンピシリンを比較した1試験、アジスロマイシンとアモキシシリンを小児で比較した1試験の合計19試験(無作為化された参加者5,839例)を評価した。・すべての試験で臨床転帰が報告されていたが、無作為化、割り付けの隠蔽化、盲検化に関する報告は十分ではなかった。・GRADEシステムを用いて評価されたエビデンス全体の質は、intention-to-treat (ITT)分析における「症状消失」では低く、評価可能な参加者における「症状消失」と有害事象では非常に低かった。・症状消失には差があり、セファロスポリンがペニシリンより優れていた(評価可能な患者の症状消失なしのOR:0.51、95%CI:0.27~0.97;number needed to treat for benefit[NNTB] 20、N=5、n=1,660;非常に質の低いエビデンス)。しかし、ITT解析では統計学的に有意ではなかった(OR:0.79、95%CI:0.55~1.12;N=5、n=2,018;質の低いエビデンス)。・臨床的再発については、セファロスポリンがペニシリンと比べて少なかった(OR:0.55、95%CI 0.30~0.99;NNTB 50、N=4、n=1,386;質の低いエビデンス)が、これは成人だけで認められ(OR:0.42、95%CI:0.20~0.88;NNTB 33、N=2、n=770)、NNTBが高かった。・どのアウトカムにおいても、マクロライドとペニシリンに差はなかった。・小児における1件の未発表試験において、アモキシシリン10日間投与と比べて、アジスロマイシン単回投与のほうが高い治癒率を認めた(OR:0.29、95%CI:0.11~0.73;NNTB 18、N=1、n=482)が、ITT解析(OR:0.76、95%CI:0.55~1.05; N=1、n=673)や、長期フォローアップ(評価可能な患者の分析でのOR:0.88、95%CI :0.43~1.82、N=1、n=422)では差はなかった。・小児では、アジスロマイシンがアモキシシリンより有害事象が多かった(OR:2.67、95%CI:1.78~3.99;N=1、n=673)。・ペニシリンと比較してカルバセフェムの治療後の症状消失は、成人と小児全体(ITT解析でのOR:0.70、95%CI:0.49~0.99;NNTB 14、N=3、n=795)、および小児のサブグループ解析(OR:0.57、95%CI:0.33~0.99;NNTB 8、N=1、n=233)では優れていたが、成人のサブグループ解析(OR:0.75、95%CI:0.46~1.22、N=2、n=562)ではそうではなかった。・小児では、マクロライドがペニシリンより有害事象が多かった(OR:2.33、95%CI:1.06~5.15;N=1、n=489)。・長期合併症が報告されていなかったため、稀ではあるが重大な合併症を避けるために、どの抗菌薬が優れているのかは不明であった。

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高リスク抜管後患者への高流量酸素療法、NIVに非劣性/JAMA

 高リスクの抜管後患者に対する高流量鼻カニューレ酸素療法は、再挿管および呼吸不全の予防に関して非侵襲的人工呼吸器療法(NIV)に非劣性であることが、スペイン・Hospital Virgen de la SaludのGonzalo Hernandez氏らが行った3施設604例対象の多施設共同無作為化試験の結果、示された。両療法とも再挿管の必要性を減じるが、高流量鼻カニューレ酸素療法のほうが、快適性、利便性、低コスト、付加的な生理学的機構の面で優っていた。今回の結果を踏まえて著者は、「高リスクの抜管後患者には、高流量鼻カニューレ酸素療法のほうが有益のようだ」とまとめている。JAMA誌オンライン版2016年10月5日号掲載の報告。抜管後72時間以内の再挿管および呼吸不全を評価 試験は、スペインの3ヵ所のICUで2012年9月~2014年10月にかけて行われた。クリティカルな疾患を有し、計画的な抜管の準備ができており、以下のうち1つ以上の高リスク因子を有する患者を対象とした。すなわち、65歳以上、抜管日のAPACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)スコアが12超、BMIが30超、分泌物の管理不十分、ウィーニング困難または遷延、1つ以上の併存疾患あり、人工呼吸器装着の主要指標としての心不全、中等症~重症のCOPD、気道開存に問題、長期人口呼吸器(PMV)であった。 患者は抜管後24時間以内に、高流量鼻カニューレ酸素療法またはNIVを受ける群に、無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、抜管後72時間以内の再挿管および呼吸不全の発生で、非劣性マージンは10%と定義された。副次アウトカムは、呼吸器感染症、敗血症、多臓器不全、ICU入室の長期化、死亡、有害事象および再挿管までの時間などであった。高流量酸素のNIVに対する非劣性を確認 604例(平均年齢65±16歳、男性64%)が無作為に、NIV群(314例)、高流量酸素群(209例)に割り付けられた。 結果、再挿管を必要としなかった患者は、高流量酸素群66例(22.8%)、NIV群60例(19.1%)であった(絶対差:-3.7%、95%信頼区間[CI]:-9.1~∞)。また、抜管後呼吸不全を呈した患者は、それぞれ78例(26.9%)、125例(39.8%)であった(リスク差:12.9%、95%CI:6.6~∞)。 再挿管までの時間中央値について、両群間で有意差は認められなかった。高流量酸素群26.5時間(IQR:14~39)、NIV群21.5時間(10~47)であった(絶対差:-5時間、95%CI:-34~24)。 無作為化後のICU入室期間中央値は、3日間(IQR:2~7) vs.4日間(2~9)で、高流量酸素群が短かった(p=0.48)。 割り付け療法の中断を要した有害事象の発生は、高流量酸素群では観察されなかったが、NIVでは42.9%観察された(p<0.001)。

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医師の燃え尽き症候群、既存の治療戦略は有効か/Lancet

 医師の燃え尽き症候群(burnout)の治療では、これまでに実施された個々人に焦点を当てた介入や組織的な介入によって、臨床的に意味のあるベネフィットが得られていることが、米国・メイヨークリニックのColin P West氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年9月28日号に掲載された。米国の研修医および開業医の全国的な調査では、医師の燃え尽き症候群は流行の域に達していることが示されている。その帰結として、患者ケア、専門家気質、医師自身のケアや安全性(精神的健康への懸念や交通事故を含む)、保健医療システムの存続性への悪影響が確認されているという。3つのアウトカムをメタ解析で評価 研究グループは、医師の燃え尽き症候群を予防、抑制するアプローチに関する文献の質およびアウトカムをよりよく理解するために、系統的レビューとメタ解析を行った(Arnold P Gold財団研究所の助成による)。 2016年1月15日までに医学データベース(MEDLINE、Embase、PsycINFO、Scopus、Web of Science、Education Resources Information Center)に登録された文献を検索した。 妥当性が検証された指標を用いて、医師の燃え尽き症候群への介入の効果を評価した試験を対象とし、介入の前後を比較した単群試験も含めた。医学生や医師以外の医療従事者に関する試験は除外した。抄録で適格性を判定し、標準化された書式を用いてデータを抽出した。 燃え尽き(overall burnout)、情緒的消耗感(emotional exhaustion)スコア、脱人格化(depersonalisation)スコアの変化をアウトカムとした。ランダム効果モデルを用いて、各アウトカムの変化の推定平均差を算出した。すべてのアウトカムと高値例の割合が改善 15件の無作為化試験に参加した医師716例、および37件のコホート試験に参加した医師2,914例が適格基準を満たした。 介入によって、燃え尽き(14試験)が54%から44%(平均差:10%、95%信頼区間[CI]:5~14、p<0.0001、I2=15%)へ、情緒的消耗感スコア(40試験)が23.82点から21.17点(平均差:2.65点、95%CI:1.67~3.64、p<0·0001、I2=82%)へ、脱人格化スコア(36試験)は9.05点から8.41点(平均差:0.64点、95%CI:0.15~1.14、p=0.01、I2=58%)へと、いずれも有意に改善した。 また、情緒的消耗感スコア高値の割合(21試験)は38%から24%(平均差:14%、95%CI:11~18、p<0.0001、I2=0%)へ、脱人格化スコア高値の割合(16試験)は38%から34%(平均差:4%、95%CI:0~8、p=0.04、I2=0%)へと、双方とも有意に低下した。 有効な個別的介入戦略には、マインドフルネスに基づくアプローチ、ストレス管理訓練、小集団カリキュラムがあり、有効な組織的介入戦略には、労働時間制限や、各施設で工夫された診療業務過程の改良が含まれた。 著者は、「特定の集団ではどの介入法が最も有効か、また個別的介入と組織的介入をどのように組み合わせれば、より高い効果が得られるかを解明するために、さらなる検討を進める必要がある」と指摘している。

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新しいセンサー式血糖測定器、血糖コントロールを悪化させずに低血糖を減少(解説:小川 大輔 氏)-601

 糖尿病合併症の発症、進展の阻止には良好な血糖コントロールの維持と同時に低血糖の回避が重要である。とくに1型糖尿病の場合は、血糖管理のために頻回に指先を穿刺し血糖値を測定することが多いが、新しいセンサー式血糖測定器は1型糖尿病患者の福音となるかもしれない。そのような研究結果が最近Lancet誌に報告された。 この試験は、2014年9月4日から2015年2月12日にかけて欧州23ヵ所の糖尿病治療施設において、血糖コントロール良好(HbA1c値7.5%以下)の成人1型糖尿病患者を対象に実施された。328例の参加者にまず2週間センサーを装着し、50%以上血糖値の読み取りができた241例を、無作為にセンサー式血糖測定器を装着する群(介入群120例)と、通常の穿刺による血糖測定を行う群(対照群121例)の2群に分けて血糖のモニタリングを行った。主要評価項目は試験開始時から6ヵ月後までの、1日の低血糖症(70mg/dL未満)となった時間の変化であった。結果は、1日の低血糖症時間は対照群では試験開始時3.44時間/日から6ヵ月後3.27時間/日へと変化し、補正後の平均変化時間は-0.14時間/日であった。それに対し介入群では試験開始時3.38時間/日から6ヵ月後2.03時間/日へと変化し、補正後の平均変化時間は-1.39時間/日(低血糖症時間は38%減少)であった。そして介入群と対照群の変化時間の差は-1.24時間/日で有意差が認められた(p<0.0001)が、HbA1c値は両群で差がなかった。有害事象については、センサーの装着に伴いアレルギー、かゆみ、発疹などが報告されたが、低血糖症の増加や安全面に関連したイベント発生は報告されなかった。また、重篤な有害事象の報告は9例10件(各群5件ずつ)であったが、機器に関連するものはなかった。 これらの結果により、コントロール良好な1型糖尿病患者において、新規のセンサー式血糖測定モニタリング(flash glucose monitoring)システムは、通常の自己血糖測定と比較し有意に低血糖症時間を短縮することが明らかとなった。このシステム(Freestyle Libre)は、欧州ではすでに自由診療で販売されており、日本では米Abbott Labolatories社が医療機器としての承認を厚生労働省に申請中である(2016年10月現在)。一度装着すると2週間使用できるため、血糖測定のための頻回の穿刺に伴う苦痛が軽減され、さらに低血糖の頻度が減少することがメリットと考えられる。今後、コントロール不良の1型糖尿病患者や若年者、さらに2型糖尿病患者を対象とした試験が必要であろう。

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禁煙にも正しい知識と理解を!

禁煙がうまくいかないときのチェックポイント確認しよう 5つの E③ EDUCATION(教育)正しい教育(Education)を! ちまたに溢れる情報には有害なものもあります。 正しい教育を受けて、正確な知識を身に付けましょう。・青少年が接するメディアの情報を正しく選別するのは大人の役目です。・タバコ産業による喫煙を続けさせるための“教育”には注意を!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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統合失調症の性機能障害改善のための補助療法:名古屋大学

 補助的アリピプラゾール療法は、高プロラクチン血症を改善することは知られているが、性機能障害に対する効果についての十分なエビデンスが得られていない。名古屋大学の藤生氏らは、性機能障害を有する統合失調症患者に対する補助的アリピプラゾール両方の有用性を評価した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2016年9月22日号の報告。 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症、性機能障害を有する日本人統合失調症患者22例を登録し、19例が試験を完遂した。アリピプラゾールは、各医師の判断に応じ、フレキシブルタイトレーションスケジュールにて投与し、24週間追跡を行った。血漿プロラクチン、CGI-S、名古屋式性機能アンケート(NSFQ)を、ベースライン時および4、8、12、24週目で測定した。 主な結果は以下のとおり。・4週目以降のプロラクチン値は、ベースライン時よりも有意に低かった。・ベースライン時と比較すると、8週目以降のNSFQによって測定された総性機能障害の有意な改善が認められた。・男性では、24週目に勃起不全が有意に減少した。・女性では、24週目に月経不順、乳汁分泌が有意に減少した。・CGI-Sの有意な変化は認められなかった。関連医療ニュース 高プロラクチン血症、アリピプラゾール切り替えと追加はどちらが有効か 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症にアリピプラゾール補助療法 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学

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LDL-C低下に関与する遺伝子変異、糖尿病リスクと関連/JAMA

 NPC1L1など低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)の低下に関与する遺伝子変異が、2型糖尿病のリスク増加と関連していることが確認された。英国・ケンブリッジ大学のLuca A. Lotta氏らが、脂質低下薬の標的分子であるNPC1L1などの遺伝子変異と、2型糖尿病や冠動脈疾患との関連性を評価するメタ解析を行い報告した。著者は、「所見は、LDL-C低下療法による有害な影響の可能性について洞察を促すものである」と結論している。エゼチミブおよびスタチンの標的分子であるNPC1L1やHMGCR近傍の対立遺伝子はLDL-C低下と関連しており、これら脂質低下薬の有効性の検討で代理指標として用いられている。一方で、臨床試験においてスタチン治療による糖尿病新規発症の頻度増加が示されており、HMGCR近傍の対立遺伝子は2型糖尿病のリスク増加とも関連していることが知られていた。しかし、NPC1L1近傍の対立遺伝子と2型糖尿病との関連は不明であった。JAMA誌2016年10月4日号掲載の報告。LDL-C低下に関与する5つの遺伝子変異についてメタ解析で検討 研究グループは、1991~2016年に欧州および米国で実施された3つの遺伝子関連研究、European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC-InterAct試験)、UK Biobank試験、DIAbetes Genetics Replication And Meta-analysis(DIAGRAM)からデータを収集し、LDL-C低下に関連する遺伝子変異と、2型糖尿病および冠動脈疾患との関連をメタ解析で調査した。解析には、2型糖尿病患者5万775例とその対照群27万269例、冠動脈疾患患者6万801例とその対照群12万3,504例が組み込まれた。 主要評価項目は、LDL-C低下と関連するNPC1L1、HMGCR、PCSK9、ABCG5/G8、LDLR近傍の対立遺伝子による2型糖尿病および冠動脈疾患に関するオッズ比(OR)であった。NPC1L1遺伝子変異は2型糖尿病と関連あり LDL-C低下に関連するNPC1L1遺伝子変異は、冠動脈疾患と逆相関を示した(遺伝子学的に予測されるLDL-C 1-mmol/L[38.7mg/dL]低下当たりのOR:0.61、95%信頼区間[CI]:0.42~0.88、p=0.008)。一方、2型糖尿病とは正の相関を示した(同OR:2.42、1.70~3.43、p<0.001)。 全体として、LDL-C低下に関連する遺伝子変異は、冠動脈疾患リスクについては、いずれも同程度の減少がみられた(遺伝的関連の異質性I2=0%、p=0.93)。しかしながら、2型糖尿病との関連はばらつきがみられ(I2=77.2%、p=0.002)、LDL-C低下の代謝リスクに関連する特異的な対立遺伝子の存在が示唆された。 PCSK9遺伝子変異の場合、2型糖尿病に関する同ORは1.19であった(95%CI:1.02~1.38、p=0.03)。

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心房細動は心筋症の原因か、結果か?

 孤立性心房細動(AF)は隠れた心筋症を反映しており、洞調律復帰しても残存する心筋症によりAFが再発するのではないか―。この仮説を検証するため、英国・オックスフォード大学の研究グループが、左室に関与する病態を有しない孤立性AF患者において、カテーテルアブレーション後の洞調律復帰が左室の機能およびエナジェティクスに及ぼす影響を調べた。この研究では、アブレーション前後の左房および左室の容量と機能の評価にMRIを用いた。また、心筋症のマーカーとしてエネルギー代謝が有用なことから、エナジェティクスの評価にはPhosphorus-31 MRスペクトロスコピー(31P-MRS)を使用した。Circulation誌オンライン版9月14日号掲載の報告。孤立性AFでアブレーションを受けた53例と健康成人25例を対照評価 研究では、症候性の発作性もしくは持続性AFを有し、かつ弁膜症、コントロール不良の高血圧、冠動脈疾患、甲状腺疾患、全身性の炎症性疾患および糖尿病を有しない孤立性AFで、アブレーション治療を受けた53例を対象とした。対照群として、年齢と性別をマッチさせた洞調律の健康成人25例も組み込まれた。MRIで左室の駆出率(LVEF)、収縮期ピークにおける円周ストレイン(PSCS)、左房の容量と機能を定量的に評価した。エナジェティクスについては、31P-MRSを用いて評価した(phosphocreatineとadenosine triphosphate の比率 [PCr/ATP])。AFの頻度の評価にはアブレーション前後に行われた1週間のHolterを用い、症状を伴わないAFの再発を検知するために心電図イベントモニターが用いられた。アブレーション前の左室機能およびエナジェティクスはAF患者で低下 アブレーション前は、左室の機能とエナジェティクスはコントロール群に比べてAF群で有意に低下していた。(LVEF:AF群 61% [四分位範囲:52~65%] vs.コントロール群 71% [四分位範囲:69~73%]、 p<0.001、PSCS:AF群-15% [四分位範囲:-11~-18%] vs.コントロール群 -18% [四分位範囲:-17~-19%]、p=0.002、PCr/ATP:AF群 1.81±0.35 vs.コントロール群 2.05±0.29、p=0.004)。また、AF群はコントロール群に比べ、左房は拡大し、機能は低下していた。 アブレーション後、早期(1~4日)の段階では、AFから洞調律へ復帰した患者ではLVEF、PSCSともに改善が認められたが(LVEF:+7.0±10%、p=0.005、PSCS:-3.5±4.3%、p=0.001)、アブレーション前後ともに洞調律であった患者ではLVEF、PSCSに変化が認められなかった。 アブレーション後、6~9ヵ月の段階では、AFは有意に減少した(54%から0%、p<0.001)。しかしながら、それ以後の改善はLVEF、PSCSともに認められず、コントロール群に比較しても低いレベルのままでとどまった。同様に、心房の機能もアブレーション前と比べても改善はみられず(p=NS)、コントロール群に比べて低いままであった(p<0.001)。 アブレーション前のPCr/ATPはコントロール群より低く、アブレーション後の洞調律への復帰(p=0.006)やAFの無再発(p=0.002)が有意であったにもかかわらず、PCr/ATPはコントロール群より低い値のままであった(p=0.57)。 孤立性AFは、エナジェティクスが障害されると同時に左室機能も低下しており、それはアブレーション後においても改善しない。これらの知見は、AFが隠れた心筋症の結果(原因ではなく)であり、その心筋症はアブレーションによるAFの頻度の減少にもかかわらず、存在し続けることを示唆している。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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非小細胞肺がん脳転移に対する全脳照射追加の意義

 著者らは、非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の脳転移において、生存率とQOLへ悪影響を及ぼすことなく全脳照射(以下、WBRT)が省略できるかを評価するために、QUARTZ(The Quality of Life after Treatment of Brain Metastases)研究を実施した。Paula Mulvenna氏らによるLancet誌オンライン版9月4日号の掲載の報告。 同試験は非劣性、第III相無作為化比較試験。手術切除または定位放射線照射不適応の脳転移NSCLC患者を無作為にWBRT+デキサメタゾン含む最適サポーティブ・ケア(Optimal Supportive Care、以下OSC)群とOSC単独群に割り付けた。主要評価項目は質調整生存年(QALY:quality adjusted life-years)である。OSC群の非劣性は、WBRT群から7QALY日以内の短縮とした。副次的評価項目は全生存期間(OS)およびQOL。 主な結果は以下のとおり。・538例の患者が登録され、WBRT+OSC群269例、OSC単独群269例に無作為に割り付けられた。・QALYはWBRT+OSC群で平均46.3日、OSC単独群41.7日、差は4.7日であった。・OSはWBRT+OSC群9.2週、OSC単独群8.5週(HR:1.06、95%CI:0.90~1.26、p=0.8084)。・QOLは4、8、12週の評価で両群に有意な差はみられなかった。・眠気、脱毛、嘔気、頭皮の乾燥と掻痒がWBRT+OSC群で報告された。 主要評価項目は事前に設定した非劣性マージン内であり、WBRTの追加による臨床的ベネフィットは証明されなかった。

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LDL-コレステロール低下による心血管イベント抑制はスタチンだけではない!(解説:平山 篤志 氏)-600

 動脈硬化の原因として、LDL-コレステロールの関与は実験的、疫学的にも20世紀初頭から明らかにされ、コレステロール低下によるイベント抑制試験も行われてきた。しかし、1994年に4S試験で全死亡をはじめとした心血管死、心筋梗塞の発症の抑制が示されたことを契機として、数多くのスタチンによる大規模臨床試験が発表されるようになった。 スタチンの時代の到来を予見して、Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboratorsが4S以降あらかじめ発表されたプロトコルを基に前向きに登録した試験を集め解析をするようになった。2005年には、スタチンによるLDL-コレステロール低下の程度がイベント抑制と直線関係にあることが示され、コレステロール低下療法の意義が示された。 ところが、2010年のメタ解析で、より強力なスタチンの使用によりイベントが低下すること、さらにはその効果が治療前のLCL-コレステロール値にかかわらないことが示された。 その結果を受け、2013年にAHA/ACCガイドラインでは、LDL-コレステロールの目標値が設定されず、強力なスタチンの使用を推奨する“Fire and Forget”の考えが記載された。しかし、2015年にIMPROVE-ITが発表され、非スタチン製剤のエゼチミブのLDL-コレステロール低下による心血管イベント抑制効果が示された。さらに、LDL-コレステロール受容体の分解を促進するPCSK9を阻害する薬剤での前向き観察研究によるイベント低下効果も示され、非スタチン製剤によるデータも蓄積されつつある。そこで、本論文ではこれまでの非スタチンによる薬物、非薬物療法を合わせた8つの試験とスタチンによる臨床試験さらにPCSK9阻害薬による心血管イベント効果抑制を加えたメタ解析を行い、LDL-コレステロール低下と心血管イベント抑制効果に直線関係が認められることを示した。 “The Lower, The Better”が示されたことになり、スタチンでなくともLDL-コレステロール低下療法によりイベント低下を証明する論文ではある。ただ、あくまでもPCSK9阻害薬の効果は観察研究であり、今後発表されるRCTの結果を待って判断されるべきである。

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MCIから初期アルツハイマー病を予測、その精度は

 軽度認知障害(MCI)は、正常な老化からアルツハイマー型認知症(AD)への過渡期である。そのため、安定状態からAD進展高リスクMCI高齢者を抽出するために使用可能な基準を開発することはきわめて重要である。米国・The Nathan S. Kline Institute for Psychiatric ResearchのBabak A Ardekani氏らは、構造的MRIスキャンにより海馬体積インテグリティ(HVI)の新規測定値を計測するための自動アルゴリズムを開発した。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2016年9月20日号の報告。 安定状態と進展状態のMCI患者分類におけるHVIの有用性を決定するため、ランダムフォレスト分類アルゴリズムを用いた。将来のAD進展に基づきMCI患者164例は、2群に分類した(安定状態:78例、進展状態86例)。ベースラインとフォロアップ1年間の構造的MRI、認知テスト、遺伝情報、患者背景情報、バイラテラルHVIを含む16次元特徴空間(feature space)を使用した。 主な結果は以下のとおり。・分類の全体的な精度は、82.3%(感度:86.0%、特異性:78.2%)であった。・女性の精度(89.1%)は、男性(78.9%)と比較し高かった。・女性の予測精度達成は、これまでの機械的学習アプリケーションの報告の中で最も高かった。 著者らは「本論文の方法は、安定したMCI患者から初期段階のAD患者を分離するために使用可能である。女性において、男性と比較し、精度の高い指標であると考えられる」としている。関連医療ニュース MCIからAD、DLBへの進行を予測するには:順天堂大 軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標 アルツハイマー病、進行前の早期発見が可能となるか

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ショック未発症の重症敗血症にヒドロコルチゾンは有用か/JAMA

 ショックを発症していない重症敗血症患者に対し、ヒドロコルチゾンを用いた補助療法を行っても、2週間以内の敗血症性ショック発症リスクは減少しないことが示された。集中治療室(ICU)内および院内死亡リスクや、180日時点の死亡リスクについても減少しなかった。ドイツ・シャリテ大学のDidier Keh氏らが、380例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、「検討の結果は、ショック未発症の重症敗血症患者に対するヒドロコルチゾン補助療法の適用を支持しないものだった」とまとめている。同療法は「Surviving Sepsis Campaign」において、難治性敗血症性ショックに対してのみ推奨されており、ショック未発症の重症敗血症に対する同療法については議論の的となっていた。JAMA誌オンライン版2016年10月3日号掲載の報告。14日以内の敗血症性ショックを比較 研究グループは、2009年1月13日~2013年8月27日にかけて、ドイツ国内34ヵ所の医療機関を通じて、重症敗血症で敗血症性ショック未発症の成人380例について、無作為化二重盲検試験を開始した。追跡期間は180日間で、2014年2月23日まで行った。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(190例)にはヒドロコルチゾン200mgを5日間注入し、11日目までに徐々に減量・中止し、もう一方の群(190例)にはプラセボを投与した。 主要評価項目は、14日以内の敗血症性ショック。副次的評価項目は、同ショック発症までの期間、ICU内または院内の死亡率、180日死亡率、2次感染症発症率、ウィーニング失敗、筋力低下の発生率、高血糖症(血糖値>150mg/dL)発症率などだった。敗血症ショック発症率は、いずれの群も21~23% ITT(intention-to-treat)解析対象者は353例。平均年齢65.0歳、男性が64.9%だった。 敗血症性ショックの発症率は、ヒドロコルチゾン群が21.2%(36/170例)で、プラセボ群が22.9%(39/170例)と、両群で同等だった(群間差:-1.8%、95%信頼区間[CI]:-10.7~7.2、p=0.70)。 敗血症性ショック発症までの期間やICU内・院内死亡率も、有意差はみられなかった。28日死亡率は、ヒドロコルチゾン群8.8%、プラセボ群8.2%(差:0.5%、95%CI:-5.6~6.7、p=0.86)、90日死亡率はそれぞれ19.9%と16.7%(3.2%、-5.1~11.4、p=0.44)、180日死亡率は26.8%と22.2%(4.6%、-4.6~13.7、p=0.32)と、いずれも同等だった。 2次感染の発症率は、ヒドロコルチゾン群21.5% vs.プラセボ群16.9%、ウィーニング失敗は8.6% vs.8.5%、筋力低下30.7% vs.23.8%、高血糖症90.9% vs.81.5%だった。

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心筋梗塞後の平均余命、病院パフォーマンスで格差/NEJM

 急性心筋梗塞の入院30日死亡率が低い(高パフォーマンス)病院に入院した患者は、同死亡率が高い(低パフォーマンス)病院に入院した患者に比べ、平均余命が0.74~1.14年長いことが明らかにされた。米国・ボストン小児病院のEmily M. Bucholz氏らが、患者約12万例を17年間追跡したデータを分析し明らかにしたもので、NEJM誌2016年10月6日号で発表した。病院の質を評価する際に、心筋梗塞入院患者の30日リスク標準化死亡率が用いられるが、今回の検討により、同指標が患者の長期生存率にも関連することが示された。病院を混在患者症例の重症度に応じ5群に分類 検討は、メディケア受給者で1994~96年に急性心筋梗塞の入院歴があり、17年間のフォローアップデータが入手できた「共同心血管プロジェクト(Cooperative Cardiovascular Project)」の参加者データを解析して行われた。 病院を、混在する患者症例の重症度に基づいて5群(1:より健康な患者が多い~5:より重症患者が多い)に分類。各群内で、高パフォーマンス病院に入院していた患者と低パフォーマンス病院に入院していた患者とで余命を比較。病院パフォーマンスは、リスク標準化30日死亡率で定義し、Cox比例ハザードモデルを用いて余命を算出した。生存曲線は30日までに分離、その後は平行線 試験対象となったのは、1,824ヵ所の病院に急性心筋梗塞で入院した患者計11万9,735例だった。 患者の推定平均余命は、病院のパフォーマンスが低くなるほど短かった。患者の生存曲線は、病院のパフォーマンスの高低により入院から30日までに分離がみられ、そのままの平行状態が、その後17年の追跡期間中、維持されていた。平均余命は、5群間の病院リスク標準化死亡率の増大とともに低下がみられた。 平均すると、高パフォーマンス病院で治療を受けた患者の余命は、低パフォーマンス病院で治療を受けた患者に比べ、混在症例でみた場合は0.74~1.14年長かった。なお、入院30日時点で生存していた患者のみについて比較すると、病院のパフォーマンスに応じた患者の余命には、ほとんど有意差はみられなかった。

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重症大動脈狭窄症への生体弁SAVRの予後、93試験のメタ解析/BMJ

 生体弁による外科的大動脈弁置換術(SAVR)を施行された重症大動脈狭窄症患者は、同年代の一般人口に比べ生存期間がわずかに短いが、長期的には脳卒中の発生率が低減し、20年後までに約半数が弁劣化を経験することが、カナダ・マクマスター大学のFarid Foroutan氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年9月28日号に掲載された。重症大動脈狭窄に対する生体弁を用いたSAVRでは、周術期や長期的な死亡率は許容範囲とされることが多いが、統合データに基づく予後は明らかにされていない。SAVR後1年以内の弁劣化はまれだが、それ以降は増加することが知られているという。93件の観察試験のメタ解析 研究グループは、症候性の重症大動脈狭窄症の患者において、生体弁を用いたSAVR施行後の予後を検討するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。 医学データベース(Medline、Embase、PubMed、Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane CENTRAL)を用いて、2002~16年6月までに発表された文献を検索した。 生体弁を用いたSAVR施行後に2年以上のフォローアップを行った観察試験を対象とした。試験の選出やデータの抽出、バイアスの評価は、複数の研究者が別個に行った。効果やエビデンスの質は、GRADEシステムを用いて定量化した。 生存曲線から生存および構造的弁劣化のない期間のデータを入手し、ランダム効果モデルを用いて脳卒中、心房細動、入院期間の評価を行った。 1977~2013年に患者登録が行われた93試験に参加した5万3,884例が解析に含まれた。バイアスのリスクが「低い」と判定された試験は51件、「中等度」が21件、「高い」が21件であった。構造的弁劣化は15年以降に顕著に増加 85試験(4万5,347例、フォローアップ期間中央値4.7年)の解析では、生体弁によるSAVRを施行された患者の2年生存率は89.7%、5年生存率は78.4%、10年生存率は57.0%、15年生存率は39.7%、20年生存率は24.7%であった。 また、年齢層別の5年生存率は、65歳以下が83.7%、65~75歳が81.4%、75~85歳が67.4%、85歳以上は52.2%だった。 年齢層別のSAVR施行後の生存期間中央値は、65歳以下が16年(米国の一般人口の期待余命:22.2年)、65~75歳が12年(同:15.6年)、75~85歳が7年(同:8.7年)、85歳以上は6年(同:3.5年)であった。 SAVR施行後の脳卒中の発生率(8試験、6,702例、フォローアップ期間中央値5.1年)は、100人年当たり0.26(95%信頼区間[CI]:0.06~0.54)であり、心房細動の発生率(2試験、177例、フォローアップ期間中央値4.1年)は100人年当たり2.90(95%CI:1.78~4.79)だった。 構造的弁劣化(12試験、7,703例、フォローアップ期間中央値6.4年)の発生率は、10年時は6.0%と低かったものの、その後は急激に増加して15年時には19.3%となり、20年時には48%にまで増加した。また、平均入院期間は12日(95%CI:9~15)だった。 著者は、「85歳以上の患者の余命が一般人口よりも長いのは、この年代では例外的に健康状態のよい患者にのみSAVRが施行されていることを反映している可能性がある」と指摘している。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決! 一問一答 質問1

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決! 一問一答質問1 p値は小さければ小さいほど差がある(よく効いた)といえるのか?はじめに「p値」について簡単に復習してみましょう。詳しくは『わかる統計教室 第3回 セクション10 p値による仮説検定』をご参照ください。■仮説検定とは薬剤の効果を調べる場合、その薬を必要とするすべての人に薬剤を投与してみれば効果はわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬を投与して、そこで得られたデータが、世の中の多くの人たちにも通じるかどうかを検証するわけです。具体的には、「解熱剤である新薬は母集団において解熱効果がある」という仮説を立て、統計的手法を用いてこの仮説が正しいかどうかを確認します。確認する方法を「仮説検定(hypothesis test)」といいます。仮説検定は、「母集団仮説検定」「統計的検定」ともいわれています。■帰無仮説、対立仮説とは(母平均の差の検定)具体例として、解熱剤である新薬Yの投与前体温平均値と投与後体温平均値についてみてみましょう。帰無仮説(統計学観点から立てる仮説)母集団における、新薬Yの投与前後の体温平均値は等しい。対立仮説(結論とする仮説)母集団における、新薬Yの投与前後の体温平均値は異なる。あるいは母集団における、新薬Yの投与前後の体温平均値は投与後のほうが投与前より低い。■p値、有意水準とは調査データに公式を当てはめ、帰無仮説が成り立つとしたときに出現する確率を求める。具体例では、新薬Y投与前後の体温平均値は同じという帰無仮説の下で、実際に起こる確率はX%である。この確率X%をp値という。仮説検定は統計が定めた値とp値を比較して結論を導く。統計学が定めた値を有意水準という。有意水準は5%、1%が用いられる(通常は5%)。このように仮説検定の公式によって求められた「p値」と統計学が決めた基準の値「有意点」を比較します。有意点は通常は0.05が用いられます。体をそらしてバーをくぐるリンボーダンスを例にすると、体の高さがp値、バーの高さが有意点。バーをくぐればセーフ、くぐれなければアウトです(図1)。検定では、p値が有意点0.05を下回れば、2群の平均値に違いがあると判断します。図1 有意点とp値のイメージ■信頼度とはp値が、有意点5%よりも小さいときは、「母集団における、新薬Yは投与前と投与後の体温平均値が異なる」を採択し、投与前後で体温平均値に違いがあったと判断します。この判断はもしかしたら間違っているかもしれませんが、この判断が間違いである確率は5%以内ということになります。信頼度(statistics confidence)は有意点の逆で、この判断が当たる確率(通常95%)のことです(図2)。図2 信頼度と有意点のイメージ■p値は、小さければ小さいほど差がある(よく効いた)といえるのか?p値が、小さければ小さいほど差があるとはいえません。つまり、p値が小さいことを理由にして、大きな効果があったと結論付けることはできません。p値の比較として、表の解熱効果を比較し、データでみてみましょう。表 各薬剤の解熱効果の比較新薬Yは、既存薬Xや新薬Zと比較し、体温低下の平均値は2.2と最も大きく熱を下げています。そして、新薬Zも既存薬Xに比べて有意に熱を下げています。既存薬Xと新薬Yの検定から得られるp値は0.041、既存薬Xと新薬Zのp値は0.009でした。仮にp値の大きさが小さいからという理由で薬剤を選択したら、新薬Zのほうが効果が大きい(良い結果)ことになってしまいます。つまりp値の大きさによって薬剤を選ぶと、効果の低い薬剤を選んでしまうという間違った判断をしてしまいます。p値は信頼度の強さの指標であって、効果の大きさの指標ではありません。単一のp値もしくは統計的有意性は、その結果である効果や重要性の大きさを測るものではないのです。実際に新薬Yも被験者数をもっと多くの人数で実施していたとしたら、p値は0.041よりも、もっと小さな値になるかもしれません。値が非常に小さければ、それだけで何かが証明されるわけではなく、p値は5%程度でもいいから、きちんと計画された追試がいくつか行われて、一貫して同じ結果が得られるほうが重要だというわけです。p値は目安ですので統計的には,次のようにおおまかな範囲を * 印の数で示すことがあります。*0.01<p≦0.05**0.001<p≦0.01***p≦0.001また、p>0.05 を有意でないという意味で n.s.(not significant)と書くことがあります。■よくある誤った解釈p<0.05であった場合、「有意差がある」といいます(図3)。図3 有意差があるとは?では、p>0.05の場合はどうでしょうか。「有意差がなかった」というのは正しい表現ですが、A群とB群は「有意差がなかったので同じである」とはいえません。「有意差がなかった」というのは、「A群とB群で違いがみられなかった」あるいは、「A群とB群で違いがあるかどうかが、わからなかった」というのが正しい表現です。●Topics2016年3月7日に「p値や有意性にこだわり過ぎるな、p<0.05かどうかがすべてを決める時代はもう終わらせよう」という米国統計学会の声明が発表されています。 ご興味のある方は下記をご参照ください。AMERICAN STATISTICAL ASSOCIATION RELEASES STATEMENT ON STATISTICAL SIGNIFICANCE AND P-VALUESProvides Principles to Improve the Conduct and Interpretation of Quantitative ScienceThe ASA's statement on p-values: context, process, and purpose今回のポイント1)p値は、信頼度の強さの指標であって、効果の大きさの指標ではない。2)単一のp値もしくは統計的有意性は、その結果の効果や重要性の大きさを測るものではない。3)p値が非常に小さいだけで何かが証明されるわけではなく、p値は5%程度でもよいから、きちんと計画された追試がいくつか行われて、一貫して同じ結果が得られるほうが重要である。インデックスページへ戻る

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ヒトの感知能力を司る遺伝子を特定/NEJM

 ヒトの機械知覚(mechanosensation)を司る遺伝子PIEZO2を特定したことを、米国立補完統合衛生センター(NCCIH)のAlexander T. Chesler氏らが発表した。機械知覚とは、感知能力(触覚と自己受容によって認知範囲が喚起される)のことであり、機械刺激を検出し変換する能力に依存する。ヒトや動物に、周辺環境に関する重大な情報を提供し、社会生活を送るうえで重要かつ必要となる感覚であるが、その基礎をなす分子・神経メカニズムは、十分に解明されていなかった。研究グループは、マウスモデルで機械知覚に必須であることが示されたストレッチ依存性イオンチャネルPIEZO2に着目し、ヒトにおける役割を調べた。NEJM誌2016年10月6日号(オンライン版2016年9月21日号)掲載の報告。特異的症状を有する2人の進行性脊柱側弯症患者を対象に調査 研究グループは、進行性脊柱側弯症などの標準診断分類に適合しない、特異的な神経筋および骨格を有する2人の患者について、全エクソームシーケンス解析を行った。また、in vitroおよびメッセンジャーRNA解析、機能的脳画像検査、心理身体および運動テストを行い、蛋白質機能と身体知覚への変異遺伝子の影響を調べた。変異遺伝子の身体知覚への影響が明らかに その結果、いずれの患者においてもPIEZO2に複合体不活性化変異が認められた。そして、有毛皮膚において触覚認知識別能力の選択的な喪失が認められた一方で、特異的な弱い機械刺激には反応を示した。 患者に目隠しをして視覚機能を奪うと、自己受容が著しく低下し、運動失調とディスメトリア(四肢の運動距離測定障害)が著しく増悪した。一方で、自己受容にかなり依存していると思われるタスク(歩くこと、話すこと、書くこと)の実行能力は維持されていた。

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悪性黒色種、発見者による予後の違いが明らかに

 悪性黒色種(メラノーマ)は早期診断が重要であるが、患者は疾患が進行してから受診することが多い。悪性黒色種を最初に誰が発見するかによって予後にどのような影響があるかは明らかになっていなかったが、スペインのグレゴリオ・マラニョン大学総合病院 Jose Antonio Aviles-Izquierdo氏らの調査によって、皮膚科医が発見したほうが患者自ら発見した場合よりも、予後は良好であることが明らかとなった。ただし皮膚科医の発見は80%が偶発的であったことも判明した。また、本人自ら発見した患者においては、とくに70歳超で男性より女性のほうが予後良好であった。著者は「この集団が、悪性黒色種発見のための教育を行う論理的なターゲットになるだろう」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年9月16日号掲載の報告。 研究グループは、誰が最初に悪性黒色種に気付いたか、患者が受診した理由など悪性黒色種の発見パターンが予後に及ぼす影響を検討する目的で、1996~2012年に診断された皮膚悪性黒色種患者783例を対象に、誰が最初に悪性黒色種に気付いたか(例:本人、親族、医療従事者、皮膚科医)、疫学、臨床症状、組織学および予後について調査し、それらの関連を解析した。 主な結果は以下のとおり。・患者本人が気付いた場合が多かった(53%)。・これらの患者のうち、32%は、出血、そう痒/痛みまたは小結節増大のために受診した。・患者本人による発見は、男性より女性に多く、男性より女性のほうが予後良好であった。・男性は女性より、簡単には見えない部位の悪性黒色種が有意に多かった。・皮膚科医が発見した悪性黒色種は、80%は偶発的な発見であった。・患者本人が発見した悪性黒色種は、より厚く、潰瘍化や転移の頻度が高く、悪性黒色種による死亡と関連していた。

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小児科医はポケモンGOの悪影響を懸念すべき?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第76回

小児科医はポケモンGOの悪影響を懸念すべき? >FREEIMAGESより使用 いわゆる健康アプリは、健康的になりたいという人に向けて開発されたものです。しかし、今はやりのポケモンGOは、健康を目的にしたアプリではありません1)。ただ、かなりの距離を歩くことになるため、健康的な側面がマスメディアにも取り沙汰されています。 そういうこともあり、ポケモンGOの論文がそろそろチラホラ出てくる時期だろうと思いますが、さすがに医学的なアウトカムを設定した研究は、2016年9月時点ではまだ見当たりません。ポケモンGOをプレイすると、減量や身体活動性に良好なアウトカムが出そうですね。 Serino M, et al. Pokémon Go and augmented virtual reality games: a cautionary commentary for parents and pediatricians. Curr Opin Pediatr. 2016;28:673-677. この短報は小児科医に向けて書かれたものです。ポケモンGOの普及によって、それをプレイする小児にどのような影響が出るのか早期に議論を促しています。とはいえ、世界的にも今は大人のプレイヤーがかなり多いように見受けられますが…。レアモンスターが出たという情報で公園に殺到しているのも、ほとんどが大人ですよね。ポケモンGOの利点は、運動の機会が増えること、また社会的活動や野外活動が増えることです。一方、欠点としてケガや事故、誘拐、不法侵入、暴力、過度の課金などが挙げられます。実際に日本でも交通事故がニュースになっています。筆頭著者のSerino医師は、子供を守るために、親や小児科医がポケモンGOのことを知り、過度にゲームにはまらないよう緩衝材となるべきだと警鐘を鳴らしています。その一方で日本では、車や自転車を運転しながらポケモンGOをプレイするマナーの悪い大人もます(マナーの問題どころではありませんが)。良識のある大人が、子供の手本となるべきだと常々思います。ちなみに私は時間がもったいないのでポケモンGOはプレイしていません。参考資料1)McCartney M. BMJ. 2016;354:i4306.インデックスページへ戻る

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「ハドソン川の奇跡」を観た!【Dr. 中島の 新・徒然草】(139)

百三十九の段 「ハドソン川の奇跡」を観た!2009年1月15日、ニューヨークのラガーディア空港を出発したUSエアウェイズ1549便は離陸直後のバードストライクによって両方のエンジンが故障してしまった。グライダー状態になった機体を850メートルの上空からラガーディア空港に戻すか、近くのテターボロ空港に向けるか、決断を迫られたサレンバーガー機長はいずれも不可能と判断してハドソン川への着水を決行する。奇跡的に155人の乗客乗員の生還を果たすことができたにもかかわらず、機長とスカイルズ副操縦士は国家運輸安全委員会(National Transportation Safety Board, NTSB)の事故調査で厳しい取り調べを受ける。NTSBの調査ではコンピューターシミュレーションとフライトシミュレーターのいずれにおいても「両空港への着陸が可能であった。ハドソン川への着水は無謀であり、むしろ乗客乗員を危険にさらしただけだった」という結果が出て、2人は窮地に陥る。以上のようなあらすじです。実際のハドソン川への奇跡の着水は、ニュースでも何度も報道されたので私自身もよく覚えているのですが、その後の事故調査でこのようなドラマがあったとは知りませんでした。映画自体は非常に面白く、スリルと人間ドラマに富むものでした。ぜひ読者の皆様にも観ていただきたいと思います。しかしこれ、他人事ではありません。あの時こうすれば良かった本当はこちらのほうが正しかったなどということを、何週間もかけた調査の後に言われても困りますよね。サレンバーガー機長がバードストライク後にハドソン川着水を決断し「brace for impact(衝撃に備えよ)」と宣言するまで僅かに208秒だったのですから、何をか言わんやとはまさにこのこと。バードストライクから着水までの数分間は、まさに映画ならではの緊迫感でした。どんどん高度が下がっていくコクピットの中で、サレンバーガー機長とスカイルズ副操縦士は、次々に緊急時の手順に従ってエンジン再始動を試みたり補助動力装置を起動したりします。その一方で、地上の管制官とも連絡を取りました。連絡を受けた管制官も即座に決断し、ラガーディア空港では全機上空待機、続いてテターボロ空港でも全機上空待機の処置を取り、1549便のために両空港の滑走路を確保します。しかし、そうこうしているうちに1549便のレーダーからの消失という最悪の結果を迎えてしまいました。ところが1549便は、ジョージワシントンブリッジをギリギリのところでかすめ、ハドソン川への着水を果たしたのです。着水と同時に機内に侵入してくる水をかき分けて、停電した暗い通路を乗客達が非常口に向かいます。運悪く後方の非常口は使えず、前方と翼の上に脱出するしかありませんでした。サレンバーガー機長とスカイルズ副操縦士、そして3名の客室乗務員はただちに機体後方に向かい、乗客たちを的確に誘導しました。傾きつつある機体の中で乗客が残っていないことを見届けた上で、最後に機長が脱出します。着水現場にかけつけたフェリーや水上タクシー、沿岸警備隊などが、機体水没までのわずか1時間の間に乗客乗員全員を救助することができたのは、まさにハドソン川の奇跡でした。サレンバーガー機長によるハドソン川着水の決断も大したものでしたが、われわれ医師も緊急の判断を求められることがあります。心拍停止から瞳孔が散大するまで僅か40秒、脳が不可逆的ダメージを受けるまで4分間しかありません。そう考えると、何事も日頃から即断即決する癖をつけておいたほうがよさそうですね。読者の皆様にはぜひ、この映画を劇場で観ていただきたいと思います。公聴会の最後で発言を求められたスカイルズ副操縦士の一言がなかなか面白かったです。1987年のアメリカ映画「アンタッチャブル」のエリオット・ネスの名台詞を思い出しました。脚本を書いた人も意識していたのかもしれません。ということで最後に1句事故あれば 即座に決断 実行だ

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最も近い眼科まで車で何分?

 米国・ワシントン大学のCecilia S. Lee氏らは、人口調査をベースとしたアプローチを用いて、走行ルートと走行時間を計算して、“近場の眼科”を定量化する検討を行った。結果、地域によって差はあるが、概して、米国のメディケア受給者集団の90%以上が、眼科医まで車で30分、検眼士まで15分以内のところに住んでいることが明らかになったという。Ophthalmology誌オンライン版2016年9月12日号掲載の報告。 研究グループは、2010年米国人口調査における65歳以上の回答者を対象に断面調査を行った。評価項目は、最も近い検眼士および眼科医までの走行時間と走行距離であった。 検討方法は、2012年Medicare Provider Utilization and Payment Dataおよびメディケア・メディケイドセンター(CMS)の支払いデータから、開業しているすべての眼科医と検眼士の住所を得るとともに、2010年の米国人口調査データを用いて区画ごとでの住民の地理位置情報および各位置における65歳以上の高齢者数を算出。また、米国におけるあらゆる道路の形状と走行制限速度を、OpenStreetMapプロジェクトから入手し、最も近い検眼士および眼科医までの正確な走行時間および走行距離を算出した。 主な結果は以下のとおり。・CMSに名前が登録されている検眼士2万5,508人および眼科医1万7,071人に関して、3.79×107人の走行時間が計3.88×107の道路を用いて計算された。・全国的に最も近い検眼士および眼科医までの走行時間中央値は、それぞれ2.91分および4.52分であった。・最も近い検眼士および眼科医まで、90%の住民がそれぞれ13.66分および25.21分の距離に住んでいた。

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