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薬物有害事象による救急受診、原因薬剤は?/JAMA

 米国において2013~14年の薬物有害事象による救急外来受診率は、年間1,000例当たり4件で、原因薬剤として多かったのは抗凝固薬、抗菌薬、糖尿病治療薬、オピオイド鎮痛薬であった。米国疾病予防管理センターのNadine Shehab氏らの分析の結果、明らかになった。米国では、2010年の「患者保護および医療費負担適正化法(Patient Protection and Affordable Care Act :PPACA)」、いわゆるオバマケアの導入により、国家的な患者安全への取り組みとして薬物有害事象への注意喚起が行われている。結果を受けて著者は、「今回の詳細な最新データは今後の取り組みに役立つ」とまとめている。JAMA誌2016年11月22・29日号掲載の報告。薬物有害事象による救急外来受診率は、年間1,000人当たり約4件 研究グループは、全国傷害電子監視システム-医薬品有害事象共同監視(NEISS-CADES)プロジェクトに参加している米国の救急診療部58ヵ所における4万2,585例のデータを解析した。主要評価項目は、薬物有害事象による救急受診ならびにその後の入院に関する加重推定値(以下、数値は推定値)であった。 2013~14年における薬物有害事象による救急外来受診は、年間1,000人当たり4件(95%信頼区間[CI]:3.1~5.0)で、そのうち27.3%が入院に至った。入院率は65歳以上の高齢者が43.6%(95%CI:36.6~50.5%)と最も高かった。65歳以上の高齢者における薬物有害事象による救急外来受診率は、2005~06年の25.6%(95%CI:21.1~30.0%)に対して、2013~14年は34.5%(95%CI:30.3~38.8%)であった。高齢者では抗凝固薬、糖尿病治療薬、オピオイド鎮痛薬、小児では抗菌薬 薬物有害事象による救急外来受診の原因薬剤は、46.9%(95%CI:44.2~49.7%)が抗凝固薬、抗菌薬および糖尿病治療薬であった。薬物有害事象としては、出血(抗凝固薬)、中等度~重度のアレルギー反応(抗菌薬)、中等度~重度の低血糖(糖尿病治療薬)など、臨床的に重大な有害事象も含まれていた。また傾向として2005~06年以降、抗凝固薬および糖尿病治療薬の有害事象による救急外来受診率は増加したが、抗菌薬については減少していた。 5歳以下の小児では、原因薬剤として抗菌薬が最も多かった(56.4%、95%CI:51.8~61.0%)。6~19歳も抗菌薬(31.8%、95%CI:28.7~34.9%)が最も多く、次いで抗精神病薬(4.5%、95%CI:3.3~5.6%)であった。一方、65歳以上の高齢者では、抗凝固薬、糖尿病治療薬、オピオイド鎮痛薬の3種が原因の59.9%(95%CI:56.8~62.9%)を占めた。主な原因薬剤15種のうち、抗凝固薬が4種(ワルファリン、リバーロキサバン、ダビガトラン、エノキサパリン)、糖尿病治療薬が5種(インスリン、経口薬4種)であった。また、原因薬剤に占めるビアーズ基準で「高齢者が常に避けるべき」とされている薬剤の割合は、1.8%(95%CI:1.5~2.1%)であった。 なお、本研究には致死性の薬物有害事象、薬物中毒や自傷行為などは含まれていない。

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ハイドロキノンによる肝斑治療へのトラネキサム酸追加は有効か?

 肝斑は罹患率が高く、患者に心理的な影響を与えることから、有効かつ経済的、安全な治療が求められている。肝斑は従来、ハイドロキノンクリームによる治療が行われてきたが、ここにトラネキサム酸を加えることで、治療効果が高まると示唆されている。 そこで、本研究では肝斑治療における、経口トラネキサム酸とハイドロキノン4%クリーム併用とハイドロキノン4%クリーム単独使用での有効性および安全性を比較検討した。Journal of Cosmetic Dermatology誌10月号掲載の報告。肝斑治療においてトラネキサム酸の追加はハイドロキノンの効果を高める 顔の左右対称に肝斑を有する患者100例を、治療群(トラネキサム酸250mg1日3回の内服に加え、夜間のハイドロキノン4%クリーム使用)と対照群(ハイドロキノン4%クリームのみ)に無作為に割り付けた。 試験期間3ヵ月中のMASI(肝斑の面積と重症度指数)スコアの減少を算出し、主要評価項目とした。試験終了3ヵ月後のフォローアップ時に再発についても評価した。 肝斑治療におけるトラネキサム酸とハイドロキノン併用の有効性を比較検討した主な結果は以下のとおり。・対象者のうち88人が試験を完了した。・6ヵ月経過時(試験期間3ヵ月、試験終了後フォローアップ3ヵ月)のトラネキサム酸とハイドロキノンの併用治療群の平均MASIスコアは、対照群と比較して1.8ポイント低かった(95%信頼区間:0.36~3.24、p=0.015)。・再発率に両群間で有意な差は認められなかった(治療群30% vs.対照群26%)。・副作用発生頻度も両群間で有意な差は認められなかった。・治療満足度は、「おおむね満足~大変満足」と回答した患者がトラネキサム酸とハイドロキノンの併用治療群82.2%、対照群34.95%と、治療群が優位に高かった(p<0.001)。 以上の結果より、肝斑治療において、経口トラネキサム酸の追加はハイドロキノン4%クリームの効果を高めることができるが、再発率が高いことは、治療効果が一時的であり、より多くの調査を必要とすることを示唆している。

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近年の乳がん死亡率低下におけるマンモグラフィ検診の寄与は、これまで考えられてきたよりも限定的であるかもしれない(解説:下井 辰徳 氏)-618

 米国では、乳がん死亡率は経年的に減少していることが知られている。ただし、この理由が乳がん検診の普及によるものと、治療の発達のいずれが大きいのかはわかっていない。乳がん検診の利益について検討するため、Welch氏らは、1975年から2012年までのSEERデータベースの乳がん診断数について検討した。期間は、米国におけるマンモグラフィ検診の出現前の期間、検診プログラムが普及していった期間、および普及後の期間が含まれている。 年代別の診断時腫瘍径については、Figure 2Aで1975年には、2cm未満の小さい乳がんが37%、2cm以上は64%程度となっていた。その後、1980年代のマンモグラフィ検診率が50%を超える時期には、とくに2cm未満の小さい乳がんの診断割合が上昇し、2000年代にはプラトーになってきたものの、2010年には2cm未満の小さい乳がんが67%、2cm以上の大きな乳がんは33%程度と、1975年と逆比率なっていた。さらに、Figure 2Bで女性10万人当たりの腫瘍径ごとの年次罹患数をみてみると、2cm未満の小さな乳がんは総じて増加傾向にあるにもかかわらず、2cm以上の大きな乳がんの年次罹患数は横ばいから若干減少ということになる。筆者らは、Table 1で1975~79年と2008~12年の女性10万人当たりの腫瘍径ごとの年次罹患数を比較している。これによると、2cm以上の大きな腫瘍は10万人当たり145例から115例と(30例分)減少しているものの、2cm未満の小さな腫瘍は10万人当たり82例から244例と(162例分)増加していることを示している。 早期乳がんのうちに発見して大きな乳がんになる症例が減る場合には、小さな乳がん診断数の増加と大きな乳がんの診断数低下がミラーイメージのようにならねばならぬが、そうはなっていない。2012年に同じ著者らは、早期乳がんの診断数の増加が著しく、進行乳がんの診断数の低下がほとんどない点から、乳がん罹患率の増加を現実的な範囲と想定しても説明がつかない早期乳がんの増加があるため、過剰診断が含まれているという報告をしている1)。今回は、検診後の乳がん発症割合は一定であるという仮定のもとで、腫瘍径の大きな乳がんの減少数に対して、腫瘍径の小さな乳がんの増加が著しいことから、マンモグラフィ検診には過剰診断が多く含まれているという考えを示している。 Table 2では、2cmを超える大きな腫瘍について、治療とマンモグラフィ検診の死亡率に与える影響を示している。治療の進歩については、治療による死亡数の減少は10万人当たり17例とされている。また、マンモグラフィ検診による死亡数の減少は10万人当たりベースラインでは12例、近年では8例と算出されている。Figure 3では、各腫瘍径の死亡リスクについて、1975~79年と2008~12年で比較している。これによると、相対リスクは大きな腫瘍に比べて小さな腫瘍でのリスク低減がより大きいとしている。 以上より、筆者らは乳がんのマンモグラフィ検診では、小さな乳がんの過剰診断に寄与しており、大きな乳がんの診断や死亡率低減には、治療の進歩の方が大きく影響しているのではないかと結論している。 今回の解析については、私としてはいくつかの問題点が挙げられる。たとえば、2012年の同著者らの論文でも同様であるが、リンパ節転移、遠隔転移については言及がなく、十分な乳がんのリスク評価がなされているとはいえない。また、死亡率の低減についての解析は、2cmを超える乳がんのみでなされており、それ以下の小さな乳がんについてはされていない。さらに、近年のマンモグラフィ精度の上昇や機器の進歩については、過剰診断を増やす可能性と正診率が上がる可能性のいずれもがあるが、評価には加えられていない。腫瘤径による乳がん死亡率の調整については、年齢や乳がんの病理学的予後因子が考慮されていない。 これまで、マンモグラフィ検診導入前後の乳がん死亡率の比較については、数多く報告がなされているが、研究期間中の治療成績の向上については考慮に入れておらず、10万人当たり数100例程度の死亡数減少が見込まれてきた2)3)4)。上記のように、いくつかのlimitationは存在するが、これらを踏まえたうえでも、私としては、大きな意義のある報告と思う。具体的には、治療成績の向上を考慮に入れて、かつ診断された腫瘍径の分類と予後の解析により、過剰診断の可能性と、マンモグラフィ検診の利益が以前考えられていたよりも少ない可能性が示唆された点は重要であると考える。 今後はマンモグラフィ検診の意義の社会的な再検討が進むとともに、検診に伴う過剰診断についても、対応を検討すべきと考えられる。ただし、Elmore氏は本稿のEditorialで、マンモグラフィ検診における過剰診断の原因は多岐にわたるため、過剰診断を減らすためには、多面的なシステムの発展が必要であると述べている5)。具体的には、過剰診断がなくならない理由として、検診のターゲット層、行政、医療従事者、患者それぞれの領域に原因があることを述べている。そのうえで、検診ターゲットについては、乳がん低リスクの全市民に行う現状を是正して高リスクに限ること、行政側は過剰診断や無治療でも予後にかかわらない腫瘤が存在するという真理を認識すること、さらに、医療提供者や患者にかかわる点では、より高い正確性と精度を有する新規の診断ツールの開発が必要であると述べている。 本邦でも、最近、新たな乳がんスクリーニングのガイドラインが報告されている6)。乳がん検診(日本では視触診とマンモグラフィ併用)受診率が、欧米と比較して日本では低い現状がある。とはいえ、視触診については「がん検診のあり方に関する検討会」の報告や上記ガイドラインでも、乳がんの死亡率減少効果としては根拠に乏しいことが述べられている。さらに、40代の若年者においては、本邦のJ-START試験7)の結果から、マンモグラフィ検診に超音波検診を組み合わせることがとくに小さな乳がん発見に役立つとされ、今後は超音波併用も検討されていくと思われる。 私としては、今後はマンモグラフィ検診による不利益だけではなく、日本における乳がん検診として、その利益と不利益の相対バランスを検討する必要があると考える。具体的には、「がん検診のあり方に関する検討会」など科学的解析に基づき、厚生労働省などが主導して検診体制を整備・再検討する必要があると考える。参考文献1)Bleyer A, et al. N Engl J Med. 2012;367:1998-2005.2)Kalager M, et al. N Engl J Med. 2010;363:1203-1210.3)Weedon-Fekjar H, et al. BMJ. 2014;348:g3701.4)Otto SJ, et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2012;21:66-73.5)Elmore JG. N Engl J Med. 2016;375:1483-1486.6)Hamashima C, et al. Jpn J Clin Oncol. 2016;46:482-492.7)Ohuchi N, et al. Lancet. 2016;387:341-348.

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うつ病への薬物療法 vs.精神療法 vs.併用療法

 うつ病治療における機能とQOLのアウトカムの重要性は認識されているが、メタ解析のエビデンスはほとんどない。スペイン・Instituto de Salud Carlos III、Centro de Investigacion Biomedica en RedのK Kamenov氏らは、うつ病患者の機能とQOLに関する精神療法、薬物療法、それらの組み合わせについて、絶対的および相対的な効果を評価するため、無作為化比較試験(RCT)のメタ解析を行った。Psychological medicine誌オンライン版2016年10月26日号の報告。 Pubmed、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trialsのデータベース検索より、試験結果153件、うつ病患者2万9,879例を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・コントロール群と比較し、精神療法および薬物療法は、機能およびQOLへのエフェクトサイズが軽度から中程度であった(g=0.31~0.43)。・直接比較すると、初期分析では、どちらが優れているかのエビデンスは得られなかった。・出版バイアスで調整した後、精神療法はQOLに対し、薬物療法よりも効果的であった(g=0.21)。・精神療法と薬物療法の併用は、機能およびQOLに対し、各治療単独群の軽度なエフェクトサイズと比較し、有意に良好であった(g=0.32~0.39)。・いずれの介入も、機能およびQOLよりも、うつ症状の重症度を改善した。 著者らは「いくつかの分析の比較試験数が少ないにもかかわらず、精神療法、薬物療法単独群においても機能およびQOLの改善に有効であることが示された。本研究では単独療法よりも併用療法が優れることが明らかとなった。全体的に中程度の効果であったことから、今後は、機能およびQOLの問題を抱えるうつ病患者に対し、個人のニーズをより満たすための治療を行うことが求められる」としている。関連医療ニュース 日本人治療抵抗性うつ病患者へのCBT併用試験とは:FLATT Project うつ病の精神療法、遠隔医療でも対面療法と同程度 非薬物療法でもスポンサーバイアスは存在するか

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PCI中のランジオロール早期投与、最適再灌流やアウトカムに好影響

 ST上昇急性心筋梗塞(STEMI)の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中におけるランジオロールの早期静脈内投与は、非投与群と比較して、最適再灌流の達成率が有意に高く、急性心筋梗塞によりKillip分類のGrade3(重症心不全)や4(心原性ショック)へ進行した患者の割合も有意に低いことが、横浜市立大学の清國 雅義氏らによる研究で明らかになった。International Journal of Cardiology誌2016年10月15日号の報告。 PCI中のβ遮断薬の早期静脈内投与は、根底にあるメカニズムが不明であるものの、STEMIの梗塞サイズを減少させることが示されている1)2)。 そのため、本研究では、STEMIの再灌流状態における短時間作用型β1アドレナリン受容体遮断薬ランジオロールの早期静脈内投与の有効性を調査することを目的として、前向き単一群研究を実施した。 STEMIでPCIを実施した55例(男性43例、女性12例、65±13歳)に対して再灌流の直前にランジオロールの静脈内投与を開始し、再灌流の状態とアウトカムを、過去にランジオロール非投与で治療した60例(男性49例、女性11例、65±13歳)と比較した。再灌流状態は、ST上昇の回復状態(ST-segment resolution:STR)、心筋濃染グレード(myocardial blush grade:MBG)、冠血流量から評価した。STR 70%以上の場合にSTRと定義し、最適再灌流達成とした。 主な結果は以下のとおり。・ランジオロール投与群は、STR(64% vs.42%、p=0.023)およびMBG 2以上(64% vs.45%、p=0.045)の達成率が非投与群と比較して有意に高かったが、冠血流量は同程度であった。・多変量解析の結果、ランジオロール投与は、STRの独立した予測因子であることが示された(オッズ比:2.99、95%CI:1.25~7.16、p=0.014)。・ランジオロール投与群は、急性心筋梗塞によりKillip分類のGrade3またはGrade4へ進行した患者の割合が、非投与群と比較して有意に低かった(0% vs.10%、p=0.028)。1)B.Ibanez, et al. Circulation. 2013;128:1495-1503.2)G.Pizarro, et al. J Am Coll Cardiol. 2014;63:2356-2362.

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冠動脈石灰化、低リスク女性の心血管疾患リスク予測精度を向上/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクが低い女性の約3分の1に冠動脈石灰化(CAC)が認められ、CACはASCVDのリスクを高め、従来のリスク因子に加えると予後予測の精度をわずかに改善することが、オランダ・エラスムス大学医療センターのMaryam Kavousi氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22日(オンライン版2016年11月15日)号に掲載された。米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の予防ガイドラインに基づく、心血管疾患(CVD)の低リスク女性の予防戦略の導出におけるCAC検査の役割は、明らかにされていないという。欧米の5つの大規模コホート研究のメタ解析 研究グループは、ASCVDのリスクが低い女性のCVDリスクの予測および層別化におけるCAC検査の効用性を評価するために、5つの大規模な地域住民ベースのコホート研究のデータを用いてメタ解析を行った。 ダラス心臓研究(DHS、米国)、フラミンガム心臓研究(FHS、米国)、ハインツ・ニクスドルフ・リコール研究(HNR、ドイツ)、アテローム動脈硬化症多民族研究(MESA、米国)、ロッテルダム研究(RS、オランダ)の参加者のうち、ASCVDの10年リスクが7.5%未満の女性を選出した。 これら5つの研究は、一般人口からの多くの低リスク女性のCACデータが、詳細な長期フォローアップデータとともに入手可能と考えられるコホートとして選ばれた。固定効果モデルを用いたメタ解析で、これらの試験の結果を統合した。 主要評価項目はASCVDの発生とし、非致死的心筋梗塞、冠動脈心疾患(CHD)、脳卒中が含まれた。CACとASCVDの関連の評価には、Cox比例ハザードモデルを用いた。CACが、ASCVDリスクの従来のリスク因子よりも優れた予測因子であるかを評価するために、C統計量および連続的純再分類改善度(continuous net reclassification improvement:cNRI)を算出した。CAC発生率は36.1%、CAC>0のASCVDリスクのHRは2.04 ASCVDの低リスク女性6,739例が解析の対象となった。5研究のベースラインの平均年齢の幅は44~63歳であり、糖尿病の有病率は2.3~6.6%、早期CHDの家族歴ありは14.0~42.4%の範囲であった。 5研究のCACあり(CAC>0)の範囲は25.2~66.5%で、全体では36.1%(2,435例)であった。全体として、CACありの群は、より高齢で、心血管リスクのプロファイルがより不良であり、糖尿病有病率や早期CHD家族歴も高かった。フォローアップ期間中央値の幅は7.0~11.6年だった。 165件のASCVDイベントが発生し(非致死的心筋梗塞:64件、CHD死:29件、脳卒中:72件)、5研究のASCVD発生率の幅は1,000人年当たり1.5~6.0件であった。 CACあり(CAC>0)は、CACなし(CAC=0)と比較してASCVDのリスクが有意に高かった(1,000人年当たりの発生率:1.41 vs.4.33件、発生率差:2.92、95%信頼区間[CI]:2.02~3.83、多変量補正ハザード比[HR]:2.04、95%CI:1.44~2.90)。 従来のリスク因子にCACを加えると、C統計量が0.73(95%CI:0.69~0.77)から0.77(95%CI:0.74~0.81)へ改善し、ASCVD予測のcNRIが0.20(95%CI:0.09~0.31)となった。 著者は、「この予測精度の向上の臨床的な効用性と費用対効果を評価するには、さらなる検討を要する」としている。

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脳内脂肪酸と精神症状との関連を検証:富山大

 n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)レベルと精神障害との関連を調べた研究では、死後脳に関して、白質ではなく主に灰白質の分析に焦点が当てられてきた。富山大学の浜崎 景氏らは、統合失調症、双極性障害、うつ病患者の死後の脳組織において、PUFAレベルが白質の最大領域である脳梁に異常を示しているのかを調査した。European psychiatry誌オンライン版2016年11月4日号の報告。 対象患者は、統合失調症15例、双極性障害15例、うつ病15例、そして、コントロール15例とし、比較評価を行った。死後の脳梁におけるリン脂質中の脂肪酸は、薄層クロマトグラフィとガスクロマトグラフィにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・これまでのいくつかの研究とは対照的に、患者とコントロールの脳梁内のPUFAまたは他の脂肪酸レベルとの間に有意な差は認められなかった。・性別によるサブ解析でも、同様の結果が得られた。・精神障害の診断の有無にかかわらず、自殺者と非自殺者の間のPUFAには有意な差は認められなかった。 著者らは「精神疾患患者では、健常コントロールと比較して、死後の脳梁におけるn-3PUFA欠損を示さず、脳梁はPUFA代謝異常に関連しない可能性がある。この分野における研究はまだ初期段階であり、さらなる調査が必要である」としている。関連医療ニュース 双極性障害エピソードと脂肪酸の関連を検証 EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか 統合失調症の再発予防、ω-3脂肪酸+α-LAは有用か

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ルテインとゼアキサンチンのサプリ―美白に効果あり?

 ルテインとゼアキサンチンは食物に多く含まれる黄斑色素を構成するカロテノイドで、多くの野菜や果物が鮮やかな色彩となっているのはこれらを含有するためである。 これらカロテノイドはパソコンなどから発せられる高エネルギーのブルーライトをカットし、皮膚を保護する作用を有する。また、メラニンの生成を阻止し、サイトカインを減少させ、抗酸化物質を増加させる可能性がある。構造異性体・ルテインとゼアキサンチンを含有するサプリメント投与による肌トーンの改善と美白効果を調査した研究を紹介する。Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology誌9月号の掲載の報告。 被験者として50人の軽度~中程度の乾燥肌を有する健康成人(男女ともに年齢は18~45歳)が集められ、そのうちの46人が試験完了に至った。 被験者には、ルテイン10mgおよびゼアキサンチン2mgを含有する経口サプリメント、もしくはプラセボのいずれかを12週間連日投与した(無作為化二重盲検プラセボ対照試験)。 被験者の皮膚タイプは、フィッツパトリック(Fitzpatrick)スケール(スキンタイプII-IV)に基づき分類した。 最小紅斑量と美白度は、色彩色差計(Chromameter)を用いて計測した。皮膚の色や色素沈着の程度はIndividual Typological Angle(ITA)を用いて算出した。また、被験者による自己評価アンケートも行った。 主な結果は以下のとおり。・全体的な肌トーンは、プラセボ群と比較して、サプリメント投与群において有意に改善し(p<0.0237)、肌の美白も有意な上昇を示した。・平均最小紅斑量は12週後、サプリメント投与群において増加が認められた。・サプリメント投与群ではITAが有意に増加した。 以上の結果から、ルテインとゼアキサンチンを含有するサプリメントの摂取により美白効果が認められ、皮膚状態を改善することが示された。

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進行心不全への新規遠心流ポンプ、軸流ポンプより予後良好/NEJM

 進行心不全患者への完全磁気浮上遠心流ポンプ植込み術は、軸流ポンプに比べポンプの不具合による再手術の割合が低く、良好な転帰をもたらすことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院心血管センターのMandeep R. Mehra氏らが行ったMOMENTUM 3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年11月16日号に掲載された。連続流左心補助人工心臓により、進行心不全患者の生存率が改善しているが、ポンプ血栓症の発現がみられる。血栓症を回避するために、新たな磁気浮上遠心連続流ポンプが開発された。約300例を対象とする非劣性試験 MOMENTUM 3は、進行心不全患者において、新規の遠心流ポンプと軸流ポンプの有効性を比較する非盲検無作為化非劣性試験(St. Jude Medical社の助成による)。 対象は、標準的な薬物療法を施行後に再発した進行心不全で、補助人工心臓植込み術の目的(心臓移植への橋渡し治療、心臓移植の対象外の患者への最終的治療)にかかわらず登録は可能とした。被験者は、新たな遠心連続流ポンプ(HeartMate 3)または市販の軸流ポンプ(HeartMate II)の植込み術を行う群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、植込み術後6ヵ月時の身体機能障害をともなう脳卒中(改訂Rankinスコア>3[0~6、数字が大きいほど機能障害が重度])のない生存と、デバイスの交換または除去のための再手術のない生存の複合エンドポイントであった。本試験は、主要エンドポイントの非劣性検定に要する検出力を有していた(非劣性マージン:-10%)。 2014年9月~2015年10月に、左心補助人工心臓植込み術の経験を持つ外科医が所属する米国の47施設に294例(ITT集団)が登録され、遠心流ポンプ群に152例、軸流ポンプ群には142例が割り付けられた。プロトコルに従って、それぞれ1例、4例には植込み術が施行されず、残りの289例(PP集団、151例、138例)にデバイスの植え込みが行われた。再手術は1例のみ、ポンプ血栓症は認めず ベースラインの年齢中央値は、遠心流ポンプ群が64.0歳(範囲:19~81)、軸流ポンプ群は61.0歳(24~78)で、男性がそれぞれ79.6%、80.3%を占めた。 ITT集団における主要エンドポイントの発生率は、遠心流ポンプ群が86.2%(131例)、軸流ポンプ群は76.8%(109例)であった。絶対差は9.4%、95%信頼下限は-2.1(非劣性検定:p<0.001)で、ハザード比(HR)は0.55(95%信頼区間[CI]:0.32~0.95、優越性の両側検定:p=0.04)であり、非劣性と優越性の双方が達成された。 死亡および身体機能障害をともなう脳卒中の発生率は両群間に有意な差はなかったが、ポンプの不具合による再手術は遠心流ポンプ群が0.7%(1例)と、軸流ポンプ群の7.7%(11例)に比べ有意に少なかった(HR:0.08、95%CI:0.01~0.60、p=0.002)。 NYHA心機能分類および6分間歩行検査による機能評価では、両群とも同様に改善が認められた。3、6ヵ月時のEQ-5D-5L、EQ-5D VAS、KCCQによるQOL評価も、両群ともに改善し、有意差はみられなかった。 ポンプ血栓症(疑い例、確定例)は、遠心流ポンプ群では発現せず、軸流ポンプ群は10.1%(14例、18イベント)に認められた(p<0.001)。 著者は、「患者と担当医は治療の割り付けを知り得るため、QOLなどの患者報告による評価項目に影響を及ぼし、ほとんどの外科医は軸流ポンプの経験は長いが、新規のポンプは米国ではこれまで使用されていないためバイアスの可能性があるなどの限界が存在する。そのため、本試験の知見を、重症度の低い心不全患者に拡大するために外挿すべきではない」と指摘している。

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循環器内科 米国臨床留学記 第15回

第15回 トランプ次期大統領への反応今回は循環器を少し離れて、注目度が高いトランプ次期大統領の話題を取り上げたいと思います。ご存じのように、ドナルド・トランプ氏が次期大統領に選ばれました。私のいるCaliforniaは移民が多い州ですから、投票前は大方の市民は、トランプ氏が大統領になるはずはないと思っていたようです。開票当日も、仕事をしながら皆、速報をチェックしていましたが、トランプ氏の優勢が決まると落胆している人がほとんどでした。とくにCaliforniaには移民やムスリムが多く、人種や宗教差別的な発言を繰り返すトランプ氏の人柄を疑問視している人が身の回りにも多くいるため、いまだに声に出してトランプ支持を言い出しにくい雰囲気はあると思います(実際は半数近くがトランプ氏に投票しているはずなのですが)。病院関係者はやはり、トランプ氏が掲げている医療政策についてとくに注目しています。トランプ氏は“Healthcare Reform to Make America Great Again”と題する政策プラン1)を発表しました。なかでもよく報道されていたのが、1 番目の項目の「Obama careの廃止」です。“Completely repeal Obamacare. Our elected representatives must eliminate the individual mandate. No person should be required to buy insurance unless he or she wants to.”オバマケアの完全廃止。われわれが選んだ代表は、強制加入を除外しなければならない。何人も自分が望まないかぎり、保険を買うことを義務付けられるべきでない。オバマ大統領が心血を注いで達成したObama careは、保険会社が保険市場を牛耳っている中において、国民皆保険に近づこうとするオバマ大統領の強い意志の下で導入され、無保険者の削減に成功しました。もちろん、オバマケアの保険に入っていても、良質な保険ではないため、病院が限られるなどの問題もありますが、個人的には劇的な変化であり、大きな成果だったと感じています。何よりも、国民皆保険が必要だと主張するオバマ大統領の強い理念を感じました。しかしながら、多くの共和党支持者は自由主義を望んでいます。つまり、強制されることを良く思っていませんし、健康を信じて、もしくは病気になるリスクを取って保険を買わないことは、個人の自由であるという考えです。しかし、実際はどうでしょうか? 無保険者も、病気になれば病院に来ますし、緊急であれば病院も受け入れるでしょう。その結果、患者に支払う能力がなければ、困るのは病院です。この自由主義がどこまでも通用するとは思えません。ただ一方で、トランプ氏の案にも個人的に賛成できるものもあります。一般にVAと呼ばれる退役軍人病院には様々な問題があることは以前にもこの連載で取り上げましたが(第4回:大学病院、退役軍人病院、プライベート病院2))トランプ氏は退役軍人を非常に重んじている様に感じます。国を守るために、命をかけた人たちを手厚く扱わなければならないという意思を感じますし、そのためにトランプ氏はVAの改革3)にも言及しています。その中に、こんな一文があります。“Ensure every veteran has the choice to seek care at the VA or at a private service provider of their own choice. Under a Trump Administration, no veteran will die waiting for service.”全ての軍人がVAか私的な病院かを選ぶ権利を保証する。トランプ政権の下では、軍人が医療サービスを待っている間になくなるという事態は起こさせない。先の連載でも書いたように、退役軍人が医療サービスを受けるまでに不当に待たされ、死亡するという事件が相次ぎました。今でも、退役軍人の患者の多くはVAしか選択肢がないために、他の病院と比較して、同じ外来での予約や治療を受けるために、考えなれないくらいの時間を待たされています。医療費が安いということを考えても、VAはとてもよい質の医療を提供していると個人的には思いません。この点に関しては、私はトランプ氏の意見に賛成ですし、彼らがより良い医療を受けられるように改革が進めばと思います。以上のように、医療だけをとってもみても劇的な変化が見込まれ、そのプラン1つひとつに賛否両論があります。発言に問題があり、前途多難なトランプ氏ですが、大統領に選ばれた以上、4年間は任期があるわけです。少しでも、医療システムの改善に取り組んでくれればと切に願っています。参照先URL1)https://www.donaldjtrump.com/policies/health-care2)https://www.carenet.com/series/airmail/cg001392_004.html3)https://www.donaldjtrump.com/policies/veterans-affairs-reform

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バスオイルは本当に乾燥肌に効く?

 乾燥肌(皮膚乾燥症)は、日常生活や保健・介護に関連する健康問題として認識されつつある。乾燥肌は、バスオイルなどの入浴剤の使用により軽減されることが知られているが、その効果を示す経験的エビデンスは限られている。 そこで本研究では、市販のバスオイルと入浴・シャワー用の非オイル系スキンクレンザーにおいて皮膚バリア機能および乾燥肌の改善効果を比較、調査した。International Journal of Nursing Studies誌オンライン版2016年10月26日号の掲載の報告。<試験デザイン> 単一施設、無作為化、観察者盲検、実用的並行群間試験<方法> 試験対象は軽度~中程度の乾燥肌を有する健康な小児および成人60人(ベルリン市在住)。 対象者をバスオイル使用群、普段使用している非オイル系スキンクレンザーの継続使用群に無作為に割り付けた。どちらも試験期間28日中、1日おきの使用とした。 皮膚バリアパラメーターと乾燥皮膚の重症度は、臨床研究センターの訪問(初回と2回のフォローアップ訪問)によって評価された。主要評価項目は経皮水分蒸散量(TEWL)とした。 主な結果は以下のとおり・60人の参加者全員が試験を完了した。・対象者の年齢の中央値は32.5歳(四分位範囲:8.3~69)であった。・試験終了時のTEWLは、バスオイル群で有意に低かった(非オイル系スキンクレンザー群との平均差-1.9g / m2 /時[95%信頼区間:-3.1~-0.8])。・試験終了時の角質層の水和は、バスオイル群において非オイル系スキンクレンザー群と比較し、有意に高かった。・皮膚表面のpHおよびきめの粗さは、両群で同程度であったが、両群ともに皮膚乾燥症状の改善傾向を示した。 今回の試験から、バスオイルの定期的使用で軽度~中程度の乾燥肌を有する小児および成人の皮膚バリア機能が改善することが示された。また、広範囲に及ぶ乾燥肌の基礎ケアとしても、バスオイルの使用が支持されることも示唆された。

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完全磁気浮上型HeartMate IIIは第4世代のLVADとなるか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-617

コメント対象論文Mehra MR, et al. N Engl J Med. 2016 Nov 16. [Epub ahead of print] 植込み型左室補助人工心臓LVADは、第1世代の拍動流型(Novacor、HeartMate I)、第2世代の軸流ポンプ型(HeartMate II、Jarvik 2000)、第3世代の遠心ポンプ型(EVAHEART、DuraHeart、HVAD)に分類されることが多い。内科治療抵抗性の重症心不全に対して、REMATCH試験という金字塔を打ち立てた第1世代の拍動流型HeartMate Iは、第2世代のHeartMate IIに瞬く間に駆逐されたが、2008年以来世界中で植込まれ、現在でもベストセラーとなっているのは実はそのHeartMate IIのままである。より新しい技術と考えられた第3世代の遠心ポンプ型で、動圧浮上と磁気浮上を組み合わせたHVADは、ADVANCE試験の結果をみると脳血管障害やポンプ血栓症などの重大合併症はHeartMate IIと同等かむしろ多いという結果で、第3世代が第2世代を凌駕するには至っていない。 そこに今回登場したのがHeartMate IIIである。遠心ポンプという点で第3世代に属し、さらに完全磁気浮上を電磁石により達成し、非接触軸受であるばかりかその間隙がHVADよりも20倍程度大きいということで、小型化を実現しながら血液成分に対する機械的影響がきわめて少ないという想定であった。その効果は、このMomentum 3試験で期待を裏切らず遺憾なく発揮されるところとなり、HeartMate IIで植込み後6ヵ月間に約10%の患者で認められたポンプ血栓症はHeartMate IIIではゼロ!であった。HeartMate IIIの1次エンドポイントの優越性を支えているのはポンプ血栓症によるデバイス交換の回避ということに尽きるようで、全死亡やよく知られた重大なその他の合併症(右心不全、不整脈、消化管出血、脳血管障害、ドライブライン感染)に関しては、基本的にHeartMate IIと差がない。植込み型LVADの最大の問題点として上記のさまざまな合併症による再入院率が、植込み後1年で75%にも上ることが指摘されている。 したがって、HeartMate IIIにおいても一定程度の再入院は引き続きケアする必要があるということになるが、ポンプ交換を必要とする医療コスト的にもまた患者の生命リスクにとっても重大イベントであるポンプ血栓症がデバイスの進化によってほとんど駆逐できたということは著しい進歩といえる。また、ポンプ血栓症がほぼ皆無ということになれば、抗凝固療法を一定程度緩和することで少なくとも重大な消化管出血や一部の脳出血の発症を減らすことができると考えられ、この結果を受けたHeartMate III植込み後のさらなる抗凝固プロトコル最適化が期待される。 実は、HeartMate IIIにはもう1つ回転数を周期的変化させるモードにより連続流型LVADの問題点である脈圧の狭小化を回避できる可能性がある。消化管出血の大きな原因となっている消化管の動静脈奇形出現は、少なくとも一部はこの連続流型LVADの脈圧狭小化によって生じるとの意見が強く、今回のMomentum 3試験6ヵ月時点で消化管出血に差は出ていないものの、予定されている長期フォローデータでは異なる結果になる可能性もある。いずれにせよ、NEJM誌に掲載されたことからすでにCEマークは取得しているがFDAの認可も間もなくではないか。 さて、最後にわが国の対応である。日本での植込み型LVADは、2016年12月現在保険償還されている機種はEVAHEART、HeartMate II、Jarvik 2000であり、Duraheartは2017年3月販売終了の予定で、今後の新規植込みはまずないものと思われる。HVADも治験終了し、製造販売承認手続き中である。しかしながら、Momentum 3試験のデータは、HeartMate IIIが今後第4世代のLVADとなりうる可能性を十分予想させるものであり、どのような形でわが国に導入されていくか、黒船襲来ともいうべきインパクトを感じる。

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タウ凝集阻害薬の軽度~中等度アルツハイマー病への効果/Lancet

 ロイコメチルチオニニウムビス(LMTM)の第III相臨床試験の結果は否定的なものであり、軽度~中等度アルツハイマー病に対するLMTMのアドオン療法の有益性は示されなかった。カナダ・ダグラス精神保健大学研究所のSerge Gauthier氏らが、LMTMの安全性および有効性を評価する15ヵ月間の無作為化二重盲検比較試験の結果、報告した。先行研究で、塩化メチルチオニニウム(=メチレンブルー:酸化型メチルチオニニウムの塩化物)は、タウ凝集阻害作用を有し、アルツハイマー病に対し単独療法で有効である可能性が示唆されている。LMTMはメチルチオニニウムの安定還元体で、塩化メチルチオニニウムより溶解性や吸収性が良好で、塩化メチルチオニニウムと同様、in vitroおよび遺伝子導入マウスモデルにおいて選択的タウ凝集阻害剤として作用することが確認されていた。なお、軽度のアルツハイマー病患者を対象としたLMTMの18ヵ月間の臨床試験の結果がまもなく報告される予定である。Lancet誌オンライン版2016年11月15日号掲載の報告。LMTM併用による認知機能およびADLの変化を評価 本試験は、16ヵ国(欧州、北米、アジア、ロシア)の大学および民間研究病院115施設において実施された。対象は、90歳未満の軽度~中等度アルツハイマー病患者で、他のアルツハイマー病治療薬を併用している患者も組み込まれた。ただし、メトヘモグロビン血症に関する警告のある薬剤を服用中の患者は除外された。 対象患者は、LMTMを75mg1日2回投与群(75mg群)、同125mg1日2回投与群(125mg群)または対照群(尿または便の変色に関して盲検化を維持するためLMTMを4mg1日2回投与)に、疾患重症度・地域・アルツハイマー病治療薬併用の有無・PET撮影の可否で層別化して3対3対4の割合で無作為割り付けされた。 主要評価項目は、アルツハイマー病評価尺度の認知機能スコア(ADAS-Cog)およびアルツハイマー病共同研究日常生活動作質問票スコア(ADCS-ADL)の、65週時におけるベースラインからの変化であった。修正intention-to-treat集団を対象として解析が行われた。LMTMの有効性は確認されず 2013年1月29日~2014年6月26日に、891例が無作為割り付けされた(75mg群268例、125mg群266例、対照群357例)。 主要評価項目に関して、どの群も治療効果は認められなかった。ADAS-Cogスコアの変化量は、対照群6.32(354例、95%信頼区間[CI]:5.31~7.34)に対し、75mg群-0.02(257例、95%CI:-1.60~1.56、p=0.9834)、125mg群-0.43(250例、95%CI:-2.06~1.20、p=0.9323)であった。ADCS-ADLスコアの変化量は、それぞれ-8.22(95%CI:-9.63~-6.82)、-0.93(95%CI:-3.12~1.26、p=0.8659)、-0.34(95%CI:-2.61~1.93、p=0.9479)であった。 75mg群および125mg群の安全性については、消化器および泌尿器系の有害事象の頻度が高く、投与中止理由としても最も多かった。臨床検査値異常で最も頻度が高かったのは、臨床的に重要ではないヘモグロビン濃度の用量依存的減少であった。アミロイド関連画像異常が確認された患者は1%未満(8/885例)であった。

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冠動脈疾患の遺伝的リスクは生活習慣で抑制できる/NEJM

 3件の前向きコホート研究と1件の横断研究の計5万5,685例全体で、遺伝的要因と生活習慣要因は、それぞれ独立して冠動脈疾患(CAD)の感受性と関連していることが示された。高遺伝子リスク群でも、生活習慣が悪い群よりも良い群でCADの相対リスクが約50%低下した。米国・マサチューセッツ総合病院のAmit V. Khera氏らが、CADの遺伝子リスクを定量化し生活習慣との関連を解析し、報告した。遺伝的要因と生活習慣の要因はどちらも、個人のCADリスクに関与するが、高遺伝子リスクが健康的生活習慣によってどのくらい相殺されるかはこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2016年11月13日号掲載の報告。約5万6,000例の遺伝子リスクを定量化し生活習慣因子との関連を解析 研究グループは、DNA多型の多遺伝子スコアを用い、3件の前向きコホート研究(Atherosclerosis Risk in Communities[ARIC]研究7,814例、Women’s Genome Health Study [WGHS]研究2万1,222例、Malmo Diet and Cancer Study[MDCS]研究2万2,389例)、ならびに遺伝子型と共変量データが利用できる1件の横断研究(BioImage研究4,260例)の計4研究のデータを用いて、CAD遺伝子リスクを定量化する検討を行った。米国心臓協会(AHA)の戦略的目標から、4つの健康的生活習慣因子(現在喫煙なし、肥満なし、定期的な運動、健康的な食生活)で構成される評価法を作成し、健康的生活習慣の遵守を判定した。生活習慣が良い群で、悪い群より冠動脈イベントリスクが低い CADイベント発症の相対リスクは、低遺伝子リスク(多遺伝子スコアの第1五分位)群と比較して、高遺伝子リスク(多遺伝子スコアの第5五分位)群で91%高かった(ハザード比[HR]:1.91、95%信頼区間[CI]:1.75~2.09)。 また、生活習慣が良い(健康的生活習慣因子4つのうち3つ以上遵守)群は、遺伝子リスクに関係なく、悪い(健康的生活習慣因子が1つ以下)群と比較して、実質的にCADイベント発症のリスクが低かった。 高遺伝子リスク群において、生活習慣が悪い群と比較して、良い群はCADイベント発症の相対リスクが46%低かった(HR:0.54、95%CI:0.47~0.63)。10年間のCADイベントの標準化発症率は、ARIC研究では生活習慣が悪い群10.7%に対し、良い群5.1%、WGHS研究ではそれぞれ4.6%および2.0%、MDCS研究では8.2%および5.3%と、良い群で低かった。また、BioImage試験では、いずれの遺伝子リスクにおいても良い生活習慣は、冠動脈石灰化の有意な減少と関連していた。 なお著者は、各研究が無作為化試験ではないため、生活習慣要因とCADイベントリスクの関連性を因果関係として捉えることはできないこと、各コホート研究で生活習慣の評価方法がわずかに異なることなどを研究の限界として挙げている。

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EUCLID試験:クロピドグレルの先進性は驚異的(解説:後藤 信哉 氏)-615

 チクロピジン、クロピドグレルは、フランスの政財官が協調して作り上げた優れた抗血小板薬であった。作用標的は未知であったが、当時の標準治療であったアスピリンに対するランダム化比較試験を、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患を対象として行い勝利した。 米国にて、1997年に広い適応を取得した時点でも薬効標的は未知であったものの、これらの疾患におけるアスピリンに対するわずかな優位性に加えて、冠動脈ステント術後のステント血栓の予防には臨床家が実感できる効果があった。薬剤としての化学構造は、複雑、体内の代謝も未知、薬効標的分子も単離されないまま臨床家には広く使用された。世界のあまたの企業は、クロピドグレルの先進性にまったく追いつくことができなかった。 2001年に、7回膜貫通型受容体蛋白P2Y12が薬効標的として単離された。P2Y12はADPの受容体である。クロピドグレルはADPと相同性のないプロドラッグであったが、アストラゼネカ社はADP/ATP類似化合物として、P2Y12 ADP受容体阻害薬チカグレロル、カングレロルを開発した。最近の抗X薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬が各社ほぼ同時に開発する「me too!」ドラッグであることと比較すると、クロピドグレルの先進性、革新性は群を抜いていた。 カングレロルは、急性冠症候群を対象とする直接的な経静脈的P2Y12 ADP受容体阻害薬である。本邦の急性冠症候群は年間10万人なので、1回投与の価格を1万円としても、企業の収益は年間1万円×10万人=10億円にすぎない。1週間継続投与としても70億円なのでは、1,000億円クラスのブロックバスターを次々開発する大企業には、微々たる利益で開発の対象にならない。 チカグレロルは経口薬なので、1年服薬を継続すると考えれば、急性冠症候群で1日1万円の薬価とすると1万円×10万人×365日=3,650億円と商売になる。1万円の薬価は“べらぼう”なので1,000円にしても365億円、クロピドグレル並の200円にして70億程度と考える。クロピドグレルは特許を喪失して値崩れするだろうから、価格の競合を考えると市場をすべてとっても数億程度で大企業には魅力がない。 企業は、患者のための存在というよりも株主のための存在でもある。株主に大きな利益の期待を語れなければ良い経営者ではない。 チカグレロルでは、急性冠症候群のほかに脳血管疾患、末梢血管疾患、過去に血管病の既往のある糖尿病など、potentialな巨大市場を狙った「パルテノン計画」を発表した。 世界で年間数千億を売り上げた先進的、革新的なクロピドグレルが一社独占から開放されて価格競争の時代になっても、クロピドグレルに優る有効性、安全性を示すことができれば広い適応の取得が可能と考えた。 急性冠症候群を対象としたPLATO試験、心筋梗塞後1年以降の症例を対象としたPEGASUS試験は成功した。日本でも年間10万例の急性冠症候群を、発症後2~3年までチカグレロルで引っぱる科学的根拠を提示した(もっとも、日本で施行したPHILLO試験では急性期の有効性、安全性は示せなかったが…)。しかし、クロピドグレルの水準に達するためには脳血管疾患、末梢血管疾患における過去の標準治療と比較した有効性、安全性を示す必要がある。残念ながら、急性期脳卒中とTIAではアスピリンとの比較におけるSOCRATES試験にてチカグレロルの優越性を示すことができなかった。日本、アジア諸国では脳血管疾患の有病率が高く、世界人口におけるアジア人の比率も増加しているので、SOCRATES試験の失敗は開発企業には打撃であった。 症候性の末梢血管疾患は、近未来の血管イベント発生率が高い。メタ解析にてアスピリンによる心血管イベント予防効果が示されているが、標準治療が確立された領域ではない。急性冠症候群では90mg×2/日の用量にて、75mg/日のクロピドグレルに優る有効性を示した。 血栓イベントの発生に血小板が重要な役割を演じること、血小板による血栓形成にP2Y12 ADP受容体が重要な役割を演じていること、の2つの仮説が正しければ、急性冠症候群により強いP2Y12 ADP受容体阻害効果を示したチカグレロルは、クロピドグレルに優るはずであった。開発企業にとっても「チカグレロルが勝って当然」の試験であったと想像される。 しかし、結果はクロピドグレルとチカグレロルは同等であった。あらためて、クロピドグレルこそが革新的新薬であったことが確認された。 PLATO試験では、チカグレロル群の死亡率はクロピドグレル群より低く、死亡率の差は時間経過とともに拡大する傾向を認めた。死亡率低減効果は、チカグレロルの普及に大きく寄与した。しかし、今回のEUCLID試験では死亡率、心筋梗塞ともにクロピドグレル群において低い傾向であった。ランダム化のキーオープンの夜は、開発責任者は眠れなかったと想像される。 EBMの世界ではやり直しはできない。1万4千例近い大規模の末梢血管疾患における、抗血小板薬の有効性を検証する試験は過去に類をみない。私が開発責任者であれば、脳血管疾患、心血管疾患合併例を増やしたかもしれない。試験の登録基準を心筋梗塞後、脳梗塞後の末梢血管疾患とすれば、症例数を減らした試験はできたかもしれない。 しかし、あらためて、先行していたクロピドグレルは優れた薬であった。特許が切れて、広く社会に還元されたクロピドグレルの使用推奨により、医療コスト削減にも役立つ本試験のインパクトは甚だしい。

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治療抵抗性強迫症に対する増強療法、抗精神病薬の評価は

 小児、青年における治療抵抗性強迫症(OCD)に対するSSRIとアリピプラゾール増強療法について、トルコ・Denizli State HospitalのUlku Akyol Ardic氏らが評価を行った。Child psychiatry and human development誌オンライン版2016年11月3日号の報告。 2種類以上のSSRIおよび認知行動療法(CBT)による治療に反応しなかった小児治療抵抗性OCD患者48例(女児14例、男児34例)を対象に、12週間のアリピプラゾール増強療法を行った。治療アウトカムの評価には、小児OCD評価尺度(CY-BOCS)、CGI-S、CGI-Iを用いた。 主な結果は以下のとおり。・CY-BOCS総スコアは33.3±7.5から11.7±9.3に減少(p<0.001)、CGI-Sスコアは6.3±0.9から2.7±1.6に減少(p<0.001)、CGI-Iスコアは4.3±0.6から2.2±1.1に改善した(p<0.001)。・SSRI漸増を伴わない29例におけるアリピプラゾール増強療法の感度分析は、改善効果が依然として有意であることが明らかとなった。CY-BOCSスコアは、34.2±7.9から13±10.3に改善(p<0.001)、CGI-Sは6.4±1.0から3.0±1.7に改善(p<0.001)、CGI-Iは4.4±1.0から2.3±1.1に改善した(p<0.001)。・分析では、アリピプラゾール増強療法は、有意な臨床的改善を示すことが明らかとなった。 著者らは「SSRIとアリピプラゾール増強療法は、小児および青年の治療抵抗性OCDに対する有望な治療戦略である」としている。関連医療ニュース 治療抵抗性強迫症に抗精神病薬の増強療法は有効か 難治性強迫性障害に有用な抗精神病薬は何か SSRIで著効しない強迫性障害、次の一手は

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アトピー性皮膚炎の自己免疫疾患リスク、喫煙と関連か

 成人アトピー性皮膚炎患者は自己免疫疾患に罹患しやすく、とくに喫煙者で認められることが、デンマーク・コペンハーゲン大学のYuki M F Andersen氏らによる全国健康登録データの検証の結果、示された。これまでに、アトピー性皮膚炎と自己免疫疾患の関連性について指摘はされているが、データはほとんどなく、一貫性が認められなかった。著者は、「今回のデータで因果関係について結論することはできないが、アトピー性皮膚炎患者において自己免疫疾患が増大しているとの認識を正当化できるものと思われる」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年10月11日号掲載の報告。喫煙歴のあるアトピー性皮膚炎患者は自己免疫疾患発症率が顕著に高かった 研究グループは、アトピー性皮膚炎を有する成人患者において、選択した自己免疫疾患について、罹患の共通性が認められるかを調べた。全国健康登録データを用い、1997~2012年に、国内の病院でアトピー性皮膚炎と診断された成人(症例群)と、その適合成人(対照群)を選び、両群で自己免疫疾患の発症について比較した。 ロジスティック回帰法を用いて、オッズ比を算出し評価した。 アトピー性皮膚炎と自己免疫疾患の関連性を評価した主な結果は以下のとおり。・ケース群は8,112例、対照群は4万560例であった。・22の自己免疫疾患について調べた結果、11についてアトピー性皮膚炎との有意な関連が認められた。・さらに、アトピー性皮膚炎は多発性の自己免疫疾患と関連することも示された。・喫煙歴のあるアトピー性皮膚炎患者は、非喫煙患者と比較して、自己免疫疾患発症率が顕著に高かった。・今回の試験はアトピー性皮膚炎成人患者に限定したものであり、またアトピー性皮膚炎の重症度や喫煙量に関する情報は入手できていない。また、病院での診断歴のある患者を対象とした検討の結果で、一般化できないといった点で限定的なものである。

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世界の血圧値の動向、40年間でどう変わったか/Lancet

 1975~2015年の世界200ヵ国における血圧値の動向を調べたところ、血圧高値の傾向は高所得国から低所得国へ移行したことが認められた。しかし、南アジア、サハラ以南アフリカ諸国の最貧集団では血圧高値の増加傾向はみられず、また中央・東欧諸国では血圧高値が継続していることが示された。世界200ヵ国の非感染性疾患(NCD)について調査を行っている科学者ネットワーク「NCD Risk Factor Collaboration」(NCD-RisC)が、1,479試験を基に分析し明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2016年11月15日号で発表した。被験者総数1,910万例を階層ベイズモデルで分析 研究グループは、18歳以上について血圧を測定した1,479試験、被験者総数1,910万例のデータについて、階層ベイズモデルを用い、1975~2015年の世界の平均収縮期・拡張期血圧値と、200ヵ国における高血圧症の有病率を推定した。 高血圧症の定義としては、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上とした。2015年の世界の高血圧症有病率、男性24%、女性20% その結果、2015年の年齢調整平均収縮期血圧は、男性が127.0mmHg(95%信頼区間[CI]:125.7~128.3)で、女性は122.3mmHg(同:121.0~123.6)、年齢調整平均拡張期血圧は、男性が78.7mmHg(同:77.9~79.5)、女性が76.7mmHg(同:75.9~77.6)だった。 2015年の世界の年齢調整高血圧症有病率は、男性が24.1%(同:21.4~27.1)、女性が20.1%(同:17.8~22.5)だった。 1975~2015年に、西欧・環太平洋の高所得国では平均収縮期・拡張期血圧値が大幅に低下していた。これらの国のいくつかは、1975年には血圧値が最も高かったが、2015年には最も低くなっていた。なお、収縮期血圧値の低下が最も大きかったのは、環太平洋の高所得国で、女性3.2mmHg(95%CI:2.4~3.9)、男性は2.4mmHg(同:1.6~3.1)低下が認められた。拡張期血圧については西欧の高所得地域で最も大きかった。 女性の平均血圧値については、中央・東欧、ラテンアメリカ、カリブ海諸国でも低下し、より最近になって、中央アジア、中東、北アフリカ諸国でも同じく低下が認められたが、これら地域の傾向は高所得国における低下傾向のように確定性は高くなかった。対照的に、東・東南アジア、南アジア、オセアニア、サハラ以南のアフリカ諸国では平均血圧値の上昇が認められた。 2015年に最も血圧値が高かったのは、中央・東欧、サハラ以南アフリカ、南アジアの諸国だった。 高血圧症の有病率は、高所得国と一部の中所得国で低下傾向が見られたものの、その他の国では変化はみられなかった。 1975~2015年の間に、高血圧症の人の数は5億9,400万人から11億3,000万人に増え、低・中所得国で大きな増加が認められた。世界の高血圧症の増加は、人口増加と高齢化による増加と、年齢別罹患率の低下による減少を総合した結果と考えられた。

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末梢動脈疾患へのチカグレロル、クロピドグレルと同等/NEJM

 症候性末梢動脈性疾患の患者に対し、抗血小板薬チカグレロル(商品名:ブリリンタ)の有効性はクロピドグレルと同等で、優越性は示されなかった。また、急性肢虚血や重大な出血といった有害事象の発生率も同等だった。米国・コロラド大学のWilliam R. Hiatt氏らが、約1万4,000例の患者を対象に行った、無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2016年11月13日号で発表した。先行試験において、クロピドグレル単独療法群はアスピリン群と比べて心血管イベントリスクを有意に抑制することは示されていた。心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の発生率を比較 研究グループは、症候性末梢動脈性疾患の患者1万3,885例を無作為に2群に分け、チカグレロル(90mg、1日2回)とクロピドグレル(75mg、1日1回)を、それぞれ投与した。 被験者は、足関節上腕血圧比(ABI)が0.80以下、または下肢血行再建術の病歴があった。また、年齢中央値は66歳、72%が男性で、ABI基準で被検者となったのは43%、下肢血行再建術の病歴があったのは57%だった。 有効性に関する主要エンドポイントは、判定心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合エンドポイントだった。安全性に関する主要エンドポイントは、重大な出血だった。急性肢虚血、重大な出血発生率も同等 追跡期間中央値は、30ヵ月だった。ベースラインのABI平均値は0.71、76.6%に跛行が、4.6%に重症肢虚血がそれぞれ認められた。 有効性に関するエンドポイント発生は、チカグレロル群は6,930例中751例(10.8%)、クロピドグレル群は6,955例中740例(10.6%)で、両群間の有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.92~1.13、p=0.65)。 急性肢虚血による入院率は、両群ともに1.7%(HR:1.03、95%CI:0.79~1.33、p=0.85)、重大な出血発生率も両群ともに1.6%(1.10、0.84~1.43、p=0.49)と同等だった。

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