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高度で違いがある「皮膚の特性」

 皮膚の特性が環境影響によって変化するかどうかを都市単位で比較した研究は多数存在する。しかし、都市間での皮膚特性の比較には、さまざまな環境要因を考慮しなければならない。 本研究では、高度に着目し、同民族、同性(インドネシア人女性)において、異なる高度が皮膚の特徴にどの程度影響を与えるかを検討した。Myeongryeol Lee氏らによる Journal of Cosmetic Dermatology誌オンライン版2016年9月11日号の報告。 本研究では、以前の研究で得られたデータを用い、再分析を行った。データの対象は、20~34歳の健康なインドネシア人(スンダ族)女性で、ジャカルタ(低地)在住者49例、およびバンドン(高地)在住者87例の合計136例。データには公表データである皮膚の水和、皮脂レベル、pH、弾力性、経表皮水分喪失量、また、未発表データである皮膚色L*(明度)、a*(色方向でa*は赤、-a*は緑を示す)、b*(色方向でb*は黄色、-b*は青を示す)が含まれた。 皮膚パラメータの測定には、角質水分測定:コルネオメーター(Courage+Khazaka社)、皮脂分泌量測定:セブメーター(同)、皮膚粘弾性測定:pHメーター、キュートメーター(同)、水分蒸散測定:バポメーター(Delfin社)、分光光度測定:分光光度計(ミノルタ社)がそれぞれ用いられた。 主な結果は以下のとおり。・低地(ジャカルタ)在住女性のほうが、高地(バンドン)在住女性より、額の皮脂量が多く、赤み(a*)が多かった。・対照的に、バンドン在住女性のほうが皮膚のpH値が高く、皮膚色も明るく、額の肌の弾力性も高かった。 皮膚の特性は、高度の違いに影響を受けることが示唆された。これは、高度の違いによって、気温、湿度、紫外線などの環境要因も異なるからである。今後、皮膚の特性に影響を与える要因をさらに調査する必要がある。

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治療効果の男女差、慎重な精査が必要/BMJ

 性別と治療効果との統計学的に有意な相互作用というのは、思っていた予想よりもわずかに多く認められるだけで、また臨床的なエビデンスはほとんどないことを、米国・Meta-Research Innovation Center at Stanford(METRICS)のJoshua D Wallach氏らが、コクランメタ解析のシステマティックレビューを行い報告した。著者は、「執筆者、読者、ならびに学術誌のレビュワーと編集者は、サブグループ解析の信頼性を慎重に精査しなければならない。これまでに報告されている統計学的に有意な治療効果の男女差は、概して生物学的信頼性や臨床的重要性が乏しい」とまとめている。BMJ誌2016年11月24日号掲載の報告。コクランメタ解析41報で示されたサブグループ解析を評価 臨床試験では、サブグループ解析がしばしば実施され、そのサブグループ間での治療効果の違いが主張されることがある。とくに、男性と女性では生理学的、薬物動態学的および薬力学的に差がみられる可能性があるため、治療効果の男女差への関心は高い。しかし、サブグループ解析は、個別化治療を最適化する可能性がある一方で、不適切な方法を提供する可能性もあることが指摘されてもいる。 研究グループは、Cochrane Database of Systematic Reviews(CDSR)とPubMedを用い、無作為化比較試験(RCT)のみを組み込んだメタ解析で、かつフォレストプロットにて少なくとも1つの性別のサブグループ解析を行っているレビュー論文41報を特定し、性別と治療効果に関する統計学的に有意(p<0.05)な相互作用の頻度・妥当性・関連性を評価した。 41報には、計311のRCT(対象が男女両方162試験、男性のみ46試験、女性のみ103試験)が含まれた。性別で治療効果に統計学的に有意差が認められる頻度は少ない 全体で、治療効果のサブグループ解析結果は109件あり、このうち8件(7%)で治療効果に性別で統計学的な有意差が認められていた。個別にみると、男女両方を対象としたRCT162試験のうち、15試験(9%)で統計学的に有意な性別と治療効果の相互作用が示された。また、4件は、最初に発表されたRCTでは統計学的に有意な性別と治療効果の相互作用が示されていたが、他のRCTを含めたメタ解析ではその有意性が認められず、最初に発表されたRCTのデータを除いた時に統計学的有意差を示したメタ解析はなかった。 全体で性別と治療効果との統計学的に有意な相互作用が確認された8件のうち、3件のみが女性と比較し男性において治療の違いの影響について、CDSRのレビュワーによって検討されていた。 これらの結果のうち、最近のガイドラインに反映されているものはなく、1件について “UpToDate”(オンライン臨床意思決定支援システム)で、性別の違いに基づいた管理が提案されていた(狭窄率が50~69%の症候性頸動脈狭窄症患者は、男性に対しては手術を行う)。

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正直驚いたNEJMにおける心房細動合併PCI例の標準治療の設定…(解説:後藤 信哉 氏)-623

 EBMは「平均的症例」の「標準治療」の確立に役立つ。ばらつきが大きく「平均的症例」の幅が広い場合にランダム化比較試験を行っても、その結果の臨床的インパクトは乏しい。抗凝固療法が勧められる症例は「脳卒中リスクを伴う心房細動」であり、抗血小板薬併用療法が勧められるのは「PCI/Stent留置後」の症例である。抗凝固療法による重篤な出血合併症は年率2~3%であり、抗血小板薬併用療法による重篤な出血合併症は年率1%程度である。各々、単独でも100例のうち数例が重篤な副作用を起こす医療介入の決断は苦しい。PCI/Stent後は、1年以上→1年→6ヵ月と推奨期間が短縮しているので、絶対的な出血イベントリスクは減少している。脳卒中リスクは加齢と共に増加するので、一度抗凝固療法を始めてしまうと出血リスクを長期に引きずることになる。PCI/Stent後の抗血小板療法は、併用療法からクロピドグレルないし相同薬(プラスグレル、チカグレロル)単独への流れはあるが、抗血小板薬なしの選択は厳しい。「心房細動と脳卒中リスクを合併した」「PCI/Stent症例」では、一定期間のクロピドグレルないし相同薬を必須として、その後の併用薬を考えることになる。適応症のほかに医師の裁量を考えれば、日本には25 mgのクロピドグレルの錠剤がある。欧米と異なり、個別調整が可能である。プラスグレルの場合には、世界の1/3量が日本の推奨用量でもある。最小限の基盤治療さえ標準化できない状況でのランダム化比較試験の目的の設定は、きわめて困難である。 最近、悪者になりがちなワルファリンはPT-INRに応じた個別最適化が可能である。PT-INR 2~3を標的としたワルファリン治療を仮の標準治療として、各種NOACの開発試験が施行されたが、各種NOAC試験はINR 2~3を標的としたワルファリン治療による重篤な出血合併症が3%程度と、実臨床との解離を示した。実臨床では、PT-INR 2前後を標的とした医師もいれば、INR 1.6程度を標的とした医師もいる。アジア地区のPT-INRのコントロールは、実態として1.5~2程度であることも示されている1)。抗凝固薬のアームは、ワルファリンでも標的PT-INRの設定を標準化できない。抗血小板薬併用療法にて十分に出血イベントが起こることを経験している臨床医は、現実には低い標的PT-INRを設定していると想定されるが、実態のデータもない。過去に「標準治療」が確立されていない段階ではランダム化比較試験を施行しても、その結果を将来の「標準治療の転換」には利用できない。ヤンセン、バイエルが試験の「スポンサー」であるが、将来の「標準治療の転換」、適応拡大につながらない可能性のある試験への投資は難しかったと想定される。 抗血小板薬による出血リスクの増加を当然のこととして、抗凝固薬を減量するのは当然の発想である。しかし、ワルファリンではあえて、「脳卒中リスクを有する心房細動」にて十分に出血したPT-INR 2~3を標的とした。しかし、「スポンサー」が売っているリバーロキサバンは減量した。世界では「脳卒中リスクを有する心房細動」には20mgを使用するが、15mgに減量した。出血を恐れている以外の理由が考えられるだろうか? 出血を恐れるのであれば、なぜワルファリンのPT-INRの標的を下げなかったのであろうか? 日本では適応を取得していないが、欧州では過去のATLAS-TIMI 51試験の結果に基づき、2.5mg×2/日のリバーロキサバンが急性冠症候群に承認されている。急性冠症候群の心血管イベントが減少し、出血イベントは増えることが2.5mg×2/日のリバーロキサバンでも示されているので、この用量にて「脳卒中リスクを有する心房細動」の心原性脳血栓塞栓を予防できれば、そこには新規性がある。 筆者は「標準治療」が確立されていない領域での「仮の標準治療」設定時には、試験の最初から終了まで一貫して当初の仮定が「仮の標準治療」であることを、著者、読者、共に理解しなければならないと思う。本試験にて「仮の標準治療」とされた抗血小板薬併用療法とPT-INR 2~3を標的としたワルファリン治療の組み合わせは、一般的な「脳卒中リスクを有する心房細動」に「PCI/Stent」をするときに、INR 2~3を標的としたワルファリンと抗血小板薬併用療法を併用すると、臨床的に意味のある出血イベントが年率27%も起こるとされた。New Engl J Medのような一流雑誌であっても、「仮の標準治療」とされるべきPT-INR 2~3を標的としたワルファリンと抗血小板薬併用療法の併用を「standard of therapy」と記載している。確立された「標準治療」のない領域にて「仮の標準治療」を設定するのは危険である。本試験の結果を拡大解釈しないように賢く対応することが重要と、筆者は考える。

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LDL-C低下によるプラークの退縮はどこまで可能か?(解説:平山 篤志 氏)-624

 今回の米国心臓病学会のLate Braking Clinical Trialの目玉の1つである、GLAGOV試験の結果が発表された。 試験のデザインは、冠動脈疾患患者にスタチンが投与されていてLDL-C値が80mg/dLを超える患者を対象に、スタチン治療のみを継続する群(プラセボ群)と、スタチン治療に抗PCSK9抗体であるエボロクマブを追加投与する群(エボロクマブ群)で、LDL-C値の低下の違いにより血管内超音波で測定したプラーク体積(percent atheroma volume)の変化の差を検討するものであった。 LDL-C値は、プラセボ群で平均93.0mg/dL(ベースラインからの変化率は3.9%)、エボロクマブ群で平均36.6mg/dL(ベースラインからの変化率-59.8%)と有意な低下効果を認めた。1次エンドポイントであるプラーク量の変化率は、プラセボ群で0.05%、エボロクマブ群で-0.95%と両群間に有意な差を認めた(p<0.001)。 LDL-コレステロールによる低下で、プラークの退縮が認められるのは期待された結果であるが、その程度が0.95%で、期待されていたほどの退縮が認められなかったのは、少し残念な結果であった。というのも、スタチンを用いたこのグループのこれまでの試験から、おそらく2%以上の退縮が期待されたていたからである。退縮効果が少なかった理由として、かつての試験の時代より強力なスタチン治療がすでになされている患者が多いという背景の違いがあるかもしれない。ただ、プラークの退縮がこれまでの大規模臨床試験の結果を反映していたことを考えると、エボロクマブにはおそらくイベント低下効果はあるだろうが、大きな効果ではないかもしれないとの危惧を感じさせた。ただ、ベースラインのLDL-C値が70mg/dL未満の患者群で-1.97%のプラーク低下を認めたことは、ある意味では治療されていてもハイリスクの人たちに著明な効果があるのではという期待を抱かせる結果でもあった。 これらの患者群で、なぜ高度な退縮が認められたのか? 結果の解釈にはさらなる解析が必要だが、今後発表される大規模臨床試験がこの結果を反映したものになるのかを待ちたい。

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早期診断が重症化を遅らせるゴーシェ病

 11月29日、サノフィ株式会社は、都内において「ゴーシェ病」に関するメディアセミナーを開催した。セミナーでは、疾患の概要ならびに成人ゴーシェ病患者の症例報告が行われた。ゴーシェ病とは、ライソゾーム病の1つで、先天性脂質代謝に異常を起こすまれな疾患である。小児から成人まで、あらゆる年齢で発症する可能性があり、肝脾腫、貧血、出血傾向、進行性の骨疾患など重篤な全身性の症状を引き起こす。脾腫が触れ、血小板減少がみられたら想起して欲しい はじめに井田 博幸氏(東京慈恵会医科大学 小児科学講座 主任教授)が、「ゴーシェ病の診断と治療」と題し、疾患概要について説明を行った。 ゴーシェ病は、ライソゾーム病の1種であり、疫学的にはユダヤ人で多く報告されている(450~4,000人に1人)。わが国では、50~100万人に1人と非常にまれな疾患であるが、進行性かつ重症化する例が多い疾患であるという。 病型は、慢性非神経型のI型、急性神経型のII型、亜急性神経型のIII型の3型に分類され、とくに乳児に発生するII型は予後不良となる。わが国では、この3形態がほぼ同等数で発症している(他国では90%以上がI型発症)。 主な症状としては、肝脾腫、腹部膨満、貧血、出血傾向などの全身症状、ゴーシェ細胞の骨髄浸潤、骨量減少、骨壊死などの骨症状、精神運動発達遅滞・退行、後弓反張、咽頭痙攣などの神経症状(II型、III型)がある。 そして、診断では、スクリーニング検査として血液検査(血小板減少やヘモグロビン値低下)、画像診断(MRI所見で骨髄のまだら様所見など)、骨髄穿刺(ゴーシェ細胞の確認)が行われ、GBA(グルコセレブロシダーゼ)活性測定検査で活性低下、遺伝子検査で変異が確認されれば確定診断となるが、遺伝子検査は施設数の都合でほとんど行われていない。乳幼児発症例では、重症例が多いために疾患に比較的気付きやすいが、成人発症例では血液検査での血小板減少などで気付く場合が多い。「もし外来で肝脾腫や血小板減少を診断したら、本症も想起して欲しい」と井田氏はいう。 本症の治療としては、酵素補充療法と基質合成抑制療法が主に行われている。酵素補充療法では、イミグルセラーゼ(商品名:セレザイム)とベラグルセラーゼ(同:ビプリブ)の両剤が保険適用となっており、患者は2週間ごとに点滴を受ける。効果としては、肝脾腫の改善、貧血症状の改善、骨痛の改善などが認められる。たとえばイミグルセラーゼの効果をみてみると、肝脾腫では24週くらいから減少が認められ、96週時点で平均減少率は肝臓31%(n=15)、脾臓59%(n=16)となった。また、血液についてヘモグロビン値は、24週で平均値が12.2g/dLまで改善し、以降、400週以上にわたり良好な状態を維持しているほか、血小板数も16週で平均値が正常範囲16.1×104/mm3に達し、同じく400週以上にわたり良好な状態を維持している1)。 基質合成抑制療法は、エリグルスタット(同:サテルガ)が保険適用となっており、こちらは経口薬として同じく肝脾腫の改善、貧血症状などを改善する。その他、中枢神経症状の治療に向けて、シャペロン療法の研究が進められている。 最後に井田氏は、「ゴーシェ病は、多彩な症状を示すために、診断が遅れ、その結果病態が進行することがある。本症には、治療法があるので、早期診断、早期治療の意義をくんでもらいたい」とレクチャーをまとめた。ゴーシェ病の早期診断のために 次に原田 浩史氏(昭和大学藤が丘病院 血液内科 准教授)が、「血液内科が経験した成人ゴーシェ病患者」と題し、症例と血液内科の視点から本症の診断ポイントなどを解説した。 症例は、3歳でゴーシェ病(III型)を発症し、18歳のときに脾腫で受診した女性。このときに脾臓を摘出し、経過観察では骨病変が進行傾向であり、イミグルセラーゼ投与前は肝臓触知、両側難聴、両眼の外転障害、股関節痛の歩行障害、高γグロブリン血症など多彩な症状を呈していた。 その後、イミグルセラーゼ投与後、肝腫大、臨床検査所見の改善がみられたが、脾臓摘出のために大腿骨骨折などの骨病変の進行は続いた。早期に治療介入がなされていれば、虚血性骨壊死のリスクを低下させる2)ことが示唆された。 次に血液内科における、本症診療の現状について説明した。全世界の血液内科医/腫瘍内科医(n=406)に肝脾腫や血小板減少などの一定の症例を示し、どのような疾患を想起するかアンケートをとったところ、本症想起はわずか20%しかなかったという。多くは、白血病、リンパ腫を想起し、血液内科でも見逃し例が多いのではないかと示唆を与えた。実際、脾腫と血小板減少で血液内科を受診した成人男性196例を対象とした本症有病数調査によれば、7例(3.6%)がゴーシェ病と診断されたという3)。 最後に原田氏は、「ゴーシェ病は血液疾患と症状が似ているために、まだ診断されずにいる患者も推測される。患者に脾腫と血小板減少の症状がみられたら本症を考慮し、早期診療につなげてもらいたい。血液内科医の役割は重要である」とレクチャーを終えた。(ケアネット 稲川 進)参考文献1)井田博幸ほか. 小児科診療. 2013;76:1325-1334.2)Mistry PK, et al. Br J Haematol. 2009;147:561-570.3)Motta I, et al. Eur J Haematol. 2016;96:352-359.関連サイトLysoLife (ライソライフ)  参考サイト希少疾病ライブラリ ゴーシェ病

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軽症喘息への低用量吸入ステロイドは?/Lancet

 症状発現頻度が週に0~2日の軽症喘息患者に対する低用量吸入コルチコステロイド(ICS)の投与は、症状増悪リスクを減らし、肺機能低下の予防効果もあることが示された。オーストラリア・シドニー大学のHelen K. Reddel氏らが、7,000例超の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験「START」の、事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2016年11月29日号で発表した。ICSは、喘息増悪と死亡率の低下に非常に有効であるが、症状発現頻度の低い喘息患者は、投与の対象に含まれていない。一方で、週に2日超の患者への投与は推奨されているが、そこを基準とするエビデンスは乏しかった。初回重度喘息関連イベント発生までの期間を比較 START(Steroid Treatment As Regular Therapy)試験は、32ヵ国の医療機関を通じて、2年以内に軽症の喘息診断を受け、コルチコステロイドの定期服用歴のない、4~66歳の患者7,138例を対象に行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方には吸入ブデソニド400μg(11歳未満は200μg)/日を、もう一方の群にはプラセボが投与された。被験者は3ヵ月ごとにクリニックを受診、試験は3年間にわたって行われた。 主要評価項目は、初回重度喘息関連イベント(SARE:入院・救急外来診察・死亡)発生までの期間と、気管支拡張薬投与後の肺機能のベースラインからの変化だった。 ベースラインでの症状発現頻度により被験者をグループ化し、同評価項目との関連について分析した。重度増悪リスクもおよそ半減 ベースラインの被験者は、平均年齢24(SD15)歳、症状発現頻度は、週に0~1日が31%、1超~2日が27%、2日超が43%だった。 SARE発生までの期間は、ベースラインの症状発現頻度別の全グループで、ICS群がプラセボ群より長かった。ICS群 vs.プラセボ群のハザード比は、0~1日/週グループが0.54(95%信頼区間[CI]:0.34~0.86)、1超~2日/週グループが0.60(0.39~0.93)、2日超/週グループが0.57(0.41~0.79)だった(相互作用に関するp=0.94)。 ベースラインから3年時点の、気管支拡張剤投与後の肺機能低下もいずれもプラセボ群よりも少なかった(相互作用に関するp=0.32)。 さらに、経口・全身性コルチコステロイド投与を必要とする重度増悪の発生頻度も、すべての頻度グループで減少した(各グループの率比、0.48、0.56、0.66、相互作用に関するp=0.11)。 ICS群はプラセボ群に比べ、ベースラインの症状発現頻度にかかわらず肺機能が高く(相互作用のp=0.43)、無症状日数も有意に多かった(全3グループのp<0.0001、相互作用のp=0.53)。 これらの結果は、被験者をあらゆるガイドラインに則っていわゆる軽症持続型 vs.間欠型で層別化しても、類似していた。 著者は、「結果は、ICS投与について、週に2日超の患者という設定は支持しないものだった。軽症喘息患者に対する治療推奨は、リスク低下と症状の両方を考慮すべきであることを示唆する結果だった」とまとめている。

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視神経乳頭出血と緑内障発症の新たな関連

 視神経乳頭出血は、高眼圧患者における原発開放隅角緑内障(POAG)発症の独立した予測因子である。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のDonald L Budenz氏らが、前向きコホート研究Ocular Hypertension Treatment Study(OHTS)の参加者を対象とした検討において明らかにした。さらに、視神経乳頭出血の予測因子は、高眼圧患者におけるPOAGの予測因子と非常に類似していたことも示された。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2016年11月7日号掲載の報告。 研究グループは、POAGの発症に及ぼす視神経乳頭出血の影響、ならびに視神経乳頭出血の予測因子を検討する目的で、OHTSの参加者1,618例3,236眼を対象に、毎年行われた立体眼底写真を用い、POAG発症前後の視神経乳頭出血の出現を調べた。 多変量比例ハザード回帰モデルを用い、POAG発症前後の視神経乳頭出血発生率、POAGに関する視神経乳頭出血のリスクおよび視神経乳頭出血のリスク因子について解析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値13年後に、169例179眼で1ヵ所以上の視神経乳頭出血が検出された。・視神経乳頭出血の発生率は、POAG発症前の平均13年間で年0.5%、POAG発症後の平均6年間で年1.2%であった。・POAGの累積発症率は、視神経乳頭出血を認めた眼で25.6%に対して、視神経乳頭出血のない眼では12.9%であった。・多変量解析の結果、視神経乳頭出血の発生はPOAGの発症リスクを2.6倍高めることが示された(95%信頼区間:1.7~4.0、p<0.0001)。・視神経乳頭出血のリスク因子としては、観察群への無作為化、高齢、中心角膜厚が薄い、垂直視神経乳頭陥凹径/視神経乳頭径比(VCDR)高値、高眼圧、自己申告の黒色人種が同定された。

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軽度認知障害、5年後の認知症発症率は

 軽度認知障害(MCI)から認知症への進行率を推定し、ドイツのプライマリケア診療における患者の潜在的リスク要因を特定するため、ドイツ・Berufsverband Deutscher NervenarzteのJ Bohlken氏らが検討を行った。Fortschritte der Neurologie-Psychiatrie誌オンライン版2016年11月15日号の報告。 一般医師723人の診療より、2000~14年にMCIと診断された40歳以上の患者4,057例を対象とした。主要アウトカムは、診断から5年間のフォローアップ期間中のすべての認知症診断とした。交絡因子(年齢、性別、健康保険タイプ)により調整した後、MCIから認知症への進行を調査するために、Cox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は、73.9歳であった。・男性は43.9%、民間保険加入者は5.2%であった。・5年間のフォローアップ後、女性の27.4%、男性の25.7%は認知症であった(p=0.192)。・認知症割合は、60歳以下で6.6%、80歳超で39.0%と年齢とともに増加しており、ハザード比は1年ごとに増加していた(HR=1.06)。・MCI診断後5年間で、4人に1人の患者は認知症を発症していた。・性別や健康保険タイプとは別に、年齢が認知症発症ハイリスクと関連していた。関連医療ニュース MRIで軽度認知障害からの進行を予測 MCIから初期アルツハイマー病を予測、その精度は MCIからAD、DLBへの進行を予測するには:順天堂大

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電子処方箋によって処方薬受け取り率が向上?

 処方薬の過小使用は臨床転帰不良と関連しており、米国では過小使用の多くは1次ノンアドヒアランス、すなわち、患者が処方薬を受け取っていないことが原因であるという。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のAdewole S. Adamson氏らは、医療の協調性を高めエラーを減少させると評価されている電子処方箋に着目し、1次ノンアドヒアランスへの影響について、後ろ向き研究で調べた。結果、紙処方箋と比較して電子処方箋では、1次ノンアドヒアランス率が低いことを明らかにした。また要因別の検証において、処方薬数、言語、人種/民族、年齢が、1次ノンアドヒアランスの増大と関連していることを明らかにした。JAMA Dermatology誌オンライン版2016年10月26日掲載の報告。 研究グループは、都市部にあるセーフティネット病院の皮膚科クリニック外来1施設において、2011年1月1日~2013年12月31日に皮膚科薬を処方された新規患者を対象に、診療記録を後ろ向きに解析し、1次ノンアドヒアランス(1年の期間内に処方薬を受け取らなかったことがある)について調査した。 主要評価項目は、全体の1次ノンアドヒアランス率、ならびに電子処方箋 vs.紙処方箋の1次ノンアドヒアランス率の差、副次的評価項目は、1次ノンアドヒアランスと性別、年齢、既婚・未婚、第一言語、人種/民族、処方薬数との関連であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は2,496例(平均年齢[±標準偏差]47.7±13.2歳、男性849例、女性1,647例)、合計処方箋数は4,318枚であった。・全体の1次ノンアドヒアランス率は、31.6%(788/2,496例)であった。・1次ノンアドヒアランス率は、紙処方箋を発行された患者(31.5%)よりも電子処方箋の患者(15.2%)のほうが16%低かった。・年齢別にみた1次ノンアドヒアランス率は、70歳未満では加齢に伴い減少し(30歳未満38.9%、30~49歳35.3%、50~69歳26.3%)、70歳以上の高齢患者では増加した(31.9%)。・処方薬数別にみた1次ノンアドヒアランス率は、1種類、2種類、3種類、4種類および5種類でそれぞれ33.1%、28.8%、26.4%、39.8%および38.1%であった。・第一言語が英語の患者は、スペイン語またはその他の言語の患者と比較して1次ノンアドヒアランス率が最も高かった(それぞれ33.9%、29%、20.4%)。・著者は、「なぜ1次ノンアドヒアランスが起こるのか、どのような患者で起きやすいかを明らかにし、そしてアドヒアランスと医療の質を最大化するよう治療レジメンを単純化する必要がある」とまとめている。

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「仕事が忙しくて、運動する時間がない」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第3回

■外来NGワード「運動する時間をつくりなさい!」「休みの日なら運動できるでしょ!」「運動できないなら、もっと食事に気を付けなさい!」■解説 「仕事が忙しくて、運動する時間がない」という言葉の裏には、「運動したいと思っているが、まとまって運動する時間がとれない」という気持ちがあります。まずは、「若いころはどんなスポーツや運動をやっていたのですか?」と過去の運動歴を確認してみましょう。運動習慣がある人なら、ウォーキングや筋トレなどの運動方法は、熟知しているはずです。次に、「運動は20分以上しないと効果がない」と勘違いしていないかを確認します。もし、「20分以上、運動しないと脂肪は燃えない」と勘違いしているようなら、最新の運動に関するエビデンスを紹介し、1回10分×3回の細切れ運動でも、1回30分の運動と同等の体力や減量に効果があることを説明します。運動は習慣化が重要です。最初は1日に2回の細切れ運動からスタートします。「1日の中で10分の運動ができる時間帯はありますか?」と尋ねてみます。1駅前で降りることで、通勤時の行き帰りに10分×2回の運動ができる人がいます。休み時間に運動の時間をつくる人もいます。これらの患者の心理とエビデンスを知ったうえで、「仕事が忙しくて、運動する時間がない」という患者さんには、次のように話してみてはいかがでしょうか? ■患者さんとの会話でロールプレイ医師運動のほうはいかがですか?患者運動不足なのはよくわかっているんですが、運動する時間がなかなかとれなくて…。医師なるほど。若いころはどんなスポーツや運動をされていましたか?(過去の運動歴の確認)患者学生時代はサッカーをしていました。医師そうでしたか。それなら、走れる体力はありそうですね。患者それが、なかなか走れる時間がとれなくて…。医師なるほど。それなら、いい方法がありますよ。患者それは何ですか?(興味津々)医師「昔は20分以上、運動しないと脂肪は燃えない」と考えられていたんですが、実はそうではないんです。患者私もそう思っていました。医師1回30分の運動でも、1回10分の運動を3回する細切れ運動でも、トータルで30分なら同じような効果が得られるそうですよ(細切れ運動を紹介)。患者そうなんですか!?医師そうなんです。それを週に5回行うことができれば、週に150分の運動となり、減量や血糖改善に効果が上がると思いますよ(週当たりの目標を説明)。患者それなら、スキマ時間に歩くようにしてみます(うれしそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「細切れ運動でも効果がありますよ!」1)Murohy MH, et al. Med Sci Sports Exerc. 1998;30:152-157.2)Schmidt WD, et al. J Am Coll Nutr. 2001;20:494-501.3)Jakicic JM, et al. Int J Obes Relat Metab Disord. 1995;19:893-901.4)Jakicic JM, et al. JAMA. 1999;282:1554-1560.5)Vlachopoulos D, et al. BMC Public Health. 2015;15:361.6)Eguchi M, et al. Ind Health. 2013;51:563-571.7)Samuels TY, et al. Prev Med. 2011;52:120-125.

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ヘパリン起因性血小板減少症〔HIT:heparin-induced thrombocytopenia〕

1 疾患概要■ 定義ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia: HIT)は、治療のために投与されたヘパリンにより血小板が活性化され、血小板減少とともに新たな血栓・塞栓性疾患を併発する病態である。■ 疫学HITの頻度は報告によりさまざまであるが、欧米では約1~3%とされている。わが国においては多施設共同前向き観察研究の結果、ヘパリン治療を受けた患者の0.1~1%程度の発症率と考えられ1)、海外と比較してやや低い発症率と考えられる。■ 病因HITの発症において、血小板第4因子(platelet factor 4: PF4)とヘパリンの複合体に対する抗体(HIT抗体)が中心的な役割を果たす。PF4は、血小板α顆粒に貯蔵されているケモカインであり、血小板活性化に伴って流血中に放出される。PF4は血管内皮細胞上のヘパラン硫酸などのヘパリン様物質と結合するが、投与されたヘパリンはこの内皮細胞上のPF4と複合体を形成し、その結果PF4に立体構造の変化、新たなエピトープが露出すると推定されている。PF4・ヘパリン複合体に対してHIT抗体が産生され、HIT抗体はそのFab部分でPF4分子を認識する一方、そのFc部分が血小板上のFcγRIIA受容体に結合して、血小板を強く活性化する。また、HIT抗体は血小板のみならず、血管内皮細胞や単球の活性化も引き起こし、最終的にはトロンビンの過剰生成につながる。トロンビンは凝固系の中心的役割を担うだけでなく、血小板も強く活性化し、HITにおける病態の悪循環形成に関与していると考えられる2)。■ 症状典型例ではヘパリン投与の5~10日後にHITの発症を見るが、過去3ヵ月以内にヘパリンを投与された既往のある症例などでは、すでにHIT抗体が存在するためにヘパリン投与後HITが急激に発症することもある。通常血小板数は50%以上、また10万/μL以下に減少する。HIT症例では注射した部位に発赤や壊死などが起きやすい。HIT症例の35~75%に動静脈血栓症が起きるが、血栓症がすぐに起きない症例でもヘパリンを中止し、他の抗凝固療法を行わないと血栓症のリスクが高くなる。静脈血栓症としては深部静脈血栓、肺梗塞、脳静脈洞血栓などが知られるとともに、静脈血栓症より頻度は少ないが、動脈血栓症としては上下肢の急性動脈閉塞、脳梗塞、心筋梗塞などが起きる。■ 分類従来、ヘパリン投与後の血小板減少症は2つの型に分類されてきた。1型はヘパリン投与患者の約10%に認められ、ヘパリンの直接作用による非免疫性の機序で血小板減少が起きる。ヘパリン投与直後より、一過性の軽度から中等度の血小板減少が起きるが、血小板数は10万/μL以下になることは少なく、また、血栓症を起こすこともない。現在では本当の意味のHITではないと考えられ、ヘパリン関連性血小板減少症とも呼ばれる。2型は、免疫学的機序による血小板減少症と動静脈血栓症が起きるもので、現在はHITというと、この2型を意味する。2型には血小板減少が、ヘパリン投与後5~14日で起きる典型例と、直近(約100日以内)のヘパリン投与などにより、HIT抗体が高抗体価である患者にヘパリン投与した場合、数分から1日以内に急激に発症する症例があり、「急速発症型」と名付けられている。■ 予後HITの適切な治療が行われなかった場合、約50%の患者に動脈血栓症、静脈血栓症が起き、死亡率は10%を超える。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断ヘパリン投与後の血小板減少の程度、発症期間、血栓症の合併、注射した部位の発赤や壊死などのHITの臨床的特徴を用いた4T スコアリングシステムが開発され、臨床的に有用とされている3)(表)。低スコア(0~3)の場合は、ほぼHITの存在が否定できる。中間スコア、高スコアとHITの確率は高くなるが、血清学的診断の結果も考慮して、総合的に診断を行うことで、現在散見されるHITの過剰診断を防ぐことができる。画像を拡大する■ 血清学的診断免疫測定法などによるPF4・ヘパリン複合体検出法とHIT抗体が血小板を活性化させることを利用した機能的測定法がある。1)免疫測定法ELISA法、ラテックス凝集法、化学発光免疫測定法などがあり、後2法は保険収載されている。HIT検出の感度は高い(80~100%)が、特異度はやや低いとされており、免疫測定法によるHIT抗体陰性の症例はほぼ(90~99%)HITを否定しても良いとされている。偽陽性率が多い原因は、臨床的に意味がないと考えられているIgMやIgAを、実際にHITを引き起こすIgGとともに測り込んでしまうためと考えられている。強陽性例(とくにIgG抗体)は、弱陽性例よりもHITである可能性が高いと報告されている。2)機能的測定法HIT抗体が実際に血小板を強く活性化させるかどうかを判定する機能的測定法は、とくに特異度に優れており、臨床的にHITが疑われ、機能的測定法が陽性であれば、HITの診断に強く繋がる。患者血漿、ヘパリンを健康な人の血小板に加え、血小板凝集能を測定する方法、セロトニン放出などでHIT抗体の存在を評価する方法が行われている。ただ、機能的測定法は、高いクオリティコントロールと標準化を必要とし、わが国では研究室レベルにとどまる。最近、わが国では、HIT抗体により活性化された血小板より産生される血小板マイクロパーティクルをフローサイトメトリーで測定することにより、機能検査を行っている施設があり、臨床的に有用との評価を得ている4)。3 治療HITが疑われる場合は、ただちにヘパリンを中止し、HITの確定検査を行いながら、代替の抗凝固療法を始める。治療薬として投与されているヘパリンのみならず、ヘパリンロック、ヘパリンコーティングカテーテルなども中止する必要がある。また、HITによる血栓症がすでに起きてしまった場合は、血栓溶解療法、外科的血栓除去術も必要になることがあるが、この適応についてのわが国でのエビデンスは乏しい状態である。ワルファリン単独療法は、protein C、Sなどの低下によりかえって血栓症を増悪し、皮膚壊死などを来すので、禁忌である。ワルファリンは、抗トロンビン剤などの投与により血小板数がある程度回復したときに、投与を始め、臨床症状が安定化してからワルファリン単独投与に切り替える。アスピリンなどの抗血小板剤も、適応のある治療法とは認められていない。■ アルガトロバンとダナパロイドHITの治療法としてわが国で使用可能な薬剤は、アルガトロバン(商品名: ノバスタンHI、スロンノンHI)とダナパロイド(同: オルガラン)である。1)アルガトロバン合成トロンビン阻害剤であり、以前より脳血栓急性期、慢性動脈閉塞症などで認可されているが、最近になり医師主導型治験の結果、HITの治療薬として薬事承認された。アルガトロバンの初期投与量は、アメリカでは2.0μg/kg/分であり、aPTTを使用として投与前値の1.5~3倍になるように投与量を調節することが推奨されているが、日本人でこの量では出血傾向が起きるようであり、わが国での推奨初期投与量は0.7μg/kg/分(肝機能障害者では0.2μg/kg/分)である。2011年にはさらにHIT患者における体外循環時の灌流血液の凝固防止、HIT患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)にも適応が拡大された。2)ダナパロイド低分子量のヘパリノイドであり、ヨーロッパ、北米などでHIT治療薬として使用され、その有効性は確認されている。わが国では播種性血管内凝固症候群(DIC)への適応は承認されているが、HITへの治療量についてはまだ確立していない。ダナパロイドの添付文書では、HIT抗体がこの薬剤と交差反応する場合は、原則禁忌と記載されているが、最近の大規模臨床研究では、ヘパリンとの交差反応(血清反応および血小板減少や新規の血栓症発生などの臨床経過より評価)は3.2%とかなり低い値であった5)。アルガトロバンと異なり胎盤通過性がないなどの利点があり、症例によってはわが国でも選択されるべき薬剤の1つであろう。4 今後の展望HITは、わが国における一般の認識度の増加とともに症例数が増加してきており、簡便で信頼性のある診断方法の開発が望まれる。新規経口抗凝固薬(NOAC)のHIT治療薬としてのエビデンスはまだ少ないが、これから検討が進むことが期待される。5 主たる診療科輸血部、心臓血管外科、循環器内科 など患者を紹介すべき施設国立循環器病研究センター病院 輸血管理室6 参考になるサイト診療・研究情報国立循環器病研究センター病院 輸血管理室(医療従事者向けのまとまった情報)NPO法人 血栓止血研究プロジェクト HITセンター(医療従事者向けのまとまった情報)1)Kawano H, et al. Br J Haematol. 2011;154:378-386.2)Warkentin TE. Curr Opin Crit Care. 2015;21:576-585.3)Greinacher A. N Engl J Med. 2015;373:252-261.4)Maeda T, et al. Thromb Haemost. 2014;112:624-626.5)Magnani HN, et al. Thromb Haemost. 2006;95:967-981.公開履歴初回2016年12月6日

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双極性障害、摂食障害合併はとくに注意が必要

 肥満は精神障害ではないが、DSM-5では、肥満と精神症候群との強い関連性を認めている。双極スペクトラム障害(BSD)やむちゃ食い障害(Binge Eating Disorder:BED)は、肥満患者において頻繁にみられる精神障害である。イタリア・University Magna Graecia of CatanzaroのCristina Segura-Garcia氏らは、肥満患者における、これら併存疾患に伴う精神病理学的相違と特有の接触行動を調査した。Journal of affective disorders誌2017年1月号の報告。 対象は、肥満患者119例(男性40例、女性79例)。心理学的評価および精神医学的インタビューを受け、栄養士が食生活の評価を行った。患者は、併存疾患により4群に分け、比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者の41%はBED+BSD合併(グループ1)、21%はBED(グループ2)、8%はBSD(グループ3)、29%の肥満患者だけが合併症を有していなかった(グループ4)。・女性は、グループ1,2において比率が高かった。・双極性障害II型、他の特定および関連する双極性障害(OSR BD)は、グループ1で多く、双極性障害I型はグループ3で多かった。・摂食行動と精神病理における重症度の減少傾向は、併存症により明確な違いがあった(グループ1=グループ2>グループ3>グループ4)。 著者らは「BEDおよびBSDは、肥満患者の頻繁な併存疾患であった。双極性障害II型およびOSR BDは、BED+BSD合併患者においてより頻繁であった。BEDとBSDの合併は、より重度な摂食障害と精神病理に関連していると考えられる。特徴的な病的食行動は、肥満における精神医学的合併症の対症療法である警告と考えられる」としている。関連医療ニュース 女子学生の摂食障害への有効な対処法 双極性障害I型とII型、その違いを分析 双極性障害と強迫症、併存率が高い患者の特徴

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腎移植後のステロイド早期離脱は可能か/Lancet

 腎移植後のステロイド投与からの早期離脱のための、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(Rabbit-ATG、商品名:サイモグロブリン)またはバシリキシマブ(商品名:シムレクト)による抗体療法の、有効性と安全性に関する検討結果が報告された。免疫学的リスクが低い患者を対象に、移植後1年間の抗体療法後のステロイド早期中断を評価した結果、急性拒絶反応の予防効果はRabbit-ATGとバシリキシマブで同等であり、抗体療法後のステロイド早期中断は免疫抑制効果を低下せず、移植後糖尿病の発症に関する優位性が示された。ドイツ・アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクのOliver Thomusch氏らが、615例を対象に行った非盲検多施設共同無作為化対照試験の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2016年11月18日号掲載の報告。抗体を含む4剤併用療法でステロイド早期中断の有効性と安全性を評価 腎移植後の免疫抑制療法は、抗体+低用量タクロリムス+ミコフェノール酸モフェチル+コルチコステロイドを用いた4剤併用療法が標準とされる。しかしステロイドの長期投与は、心血管リスク因子を顕著に増大しアウトカムにネガティブな影響を与えること、とくに罹患率および死亡率と関連する術後糖尿病の発症の増大が知られている。 研究グループは、免疫学的低リスクプロファイルの患者について、腎移植後1年間の、抗体療法後のステロイド早期中断の、有効性と安全性のパラメータを調べる検討を行った。 試験は腎移植レシピエントを1対1対1の割合で、次の3群に割り付けて行われた。A群はバシリキシマブ+低用量タクロリムス+ミコフェノール酸モフェチル+コルチコステロイドを継続投与、B群はAの併用療法を開始後8日時点でステロイドを早期中断、C群はRabbit-ATGを用いた4剤併用療法を開始後8日時点でステロイドを早期に中断した。 被験者は、免疫学的リスクが低く、片側の腎移植(生体、死体を問わない)が予定されていた18~75歳の患者に限定して行われた。なお、移植が2回目の患者も、初回移植片を移植後1年以内に急性拒絶反応で喪失していない患者は適格とした。また、ABO適合移植のみを適格とした。そのほか、ドナーに特異的に反応するHLA抗体がある移植片は不適格、PRA検査値が30%未満のレシピエントは不適格とした。妊産婦も除外した。 主要エンドポイントは、移植後12ヵ月時点でintention-to-treat解析にて評価した急性拒絶反応(BPAR)の発症率であった。Rabbit-ATG、バシリキシマブのいずれの抗体ともに有効 試験は、ドイツ国内21施設で2008年8月7日~2013年11月30日に行われた。合計615例が、A(継続投与)群206例、B(バシリキシマブ)群189例、C(Rabbit-ATG)群192例に無作為化された。 結果、12ヵ月時点でBPAR発症率は3群間で同程度であった。A群11.2%、B群10.6%、C群9.9%で、A vs.C群(p=0.75)、B vs.C群(p=0.87)であり、Rabbit-ATGのバシリキシマブに対する優越性は示されなかった。 また、副次エンドポイントの移植後糖尿病の発症率について、対照のA群(39%)と比較して、ステロイドを早期に中断したB群(24%)またはC群(23%)ともに有意な減少が認められた(A vs.BおよびC群のp=0.0004)。 12ヵ月時点の生存被験者割合はA群94.7%、B群97.4%、C群96.9%、また移植片の生着率はそれぞれ96.1%、96.8%、95.8%といずれも等しく優れていた。 感染症や移植後悪性腫瘍などの安全性パラメータについて、群間で差はみられなかった。

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多毛症のレーザー脱毛前、毛は「剃る」 or 「カット」?

 多毛症や過剰な体毛は、多くの女性を悩ませる共通の問題であり、全世界の女性のうち約10%がこれに該当するという。 レーザー脱毛の施術に当たり、前処理で体毛を短くする方法として、シェービングまたは、ハサミによるカットがあげられる。 本試験では、脱毛前のシェービングまたはハサミでのカットが、多毛症におけるレーザー脱毛の効果と逆説的多毛(paradoxical hypertrichosis)※の発生に与える影響を比較した。Journal of cosmetic dermatology誌オンライン版2016年9月号掲載の報告。※逆説的多毛:レーザー照射後に生えた硬毛 閉経前の女性多毛症患者129名を、シェービング群(66名)、ハサミでのカット群(63名)に無作為に割り付けた。両群にアレキサンドライトレーザー、月6回照射を6ヵ月間連続して行った。 効果については5×5cm2の範囲内のあごの毛数を計測して判定した。逆説的多毛の発生は、レーザー脱毛期間中4回(試験開始時、3回目の照射前、6回目の照射前、6回目の照射終了6ヵ月後)評価を行った。 主な結果は以下の通り・3回目の照射前の毛数は、シェービング群15.06±5.20本、カット群13.07±4.44本であった(p=0.022)。両群ともに、試験開始時と比較して有意に少なかった(p<0.001)。・6回目の照射前の毛数は、シェービング群2.80±1.16本、カット群2.71±1.12本で(p=0.673)、3回目の照射前よりも有意に少なかった(p<0.001)。・6回目の照射終了6ヵ月後の毛数は、シェービング群11.27±9.30本、カット群8.15±3.12本であった(p=0.012)。逆説的多毛はシェービング群のうち3名にみられたが、カット群では認められなかった。 以上の結果より、アレキサンドライトレーザーによる治療は、多毛症治療に非常に有用であることが示された。 短期試験ではシェービング群とカット群は同様の結果を示した。1年間のフォローアップでは、毛数はカット群でより少なく、逆説的多毛の発生は、シェービング群のみに認められた。

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リスペリドン誘発性高プロラクチン血症、減量で軽減するのか

 統合失調症患者におけるリスペリドン維持療法中のプロラクチン関連症状(PRS)を1年間観察し、PRSの危険因子を特定するため、中国・首都医科大学のQijing Bo氏らが検討を行った。BMC psychiatry誌2016年11月9日号の報告。 多施設ランダム化比較対照縦断研究。臨床的に安定した統合失調症患者374例を、用量変更なし群129例、4週間減量群125例、26週間減量群120例(8週間かけて50%減量し、その後維持)に無作為に割り付けた。PRSは、プロラクチン関連有害事象尺度を用いて、16項目(月経周期、月経期間、月経量、月経不順、無月経、月経困難、分娩後乳汁分泌、女性化乳房、乳房圧痛、性機能障害、性的欲求の減少、勃起不全、射精機能不全、インポテンス、体毛増加、にきび増加)を評価した。PRSの発生は、ベースライン、6ヵ月までは毎月、その後は2ヵ月おきに評価した。混合モデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時のPRSは、4週間減量群18.4%、26週間減量群15.0%、用量変更なし群14.0%であった。・PRS発祥の予測因子は、女性、若年発症、PANSS総スコアであった。・混合モデルでは、PRSは、女性と高用量でより重症であった。・1年後も研究に参加していた237例におけるPRS発生率は、4週間減量群9.6%、26週間減量群11.1%、用量変更なし群7.6%に減少した。 著者らは「本検討により、PRSの重症度は、投与量減少により、1年間の治療期間中に軽減することが示された。とくに高用量、女性、若年発症、重症患者では、長期治療中の高プロラクチン血症の副作用に注意する必要がある」としている。関連医療ニュース リスペリドン使用で乳がんリスクは上昇するか 各種非定型抗精神病薬、プロラクチンへの影響を比較 高プロラクチン血症、アリピプラゾール切り替えと追加はどちらが有効か

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緩和ケアの患者・介護者それぞれへの効果は?/JAMA

 末期患者への緩和ケアは、患者QOLや症状負担を改善する可能性があるが、介護者の転帰への効果は明確ではないことが、米国・ピッツバーグ大学のDio Kavalieratos氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22・29日号に掲載された。重篤な病態の患者のQOL改善は国際的な優先事項とされ、緩和ケアの焦点は、QOLの改善と、患者および家族の苦痛の軽減に置かれている。米国では、65%以上の病院が緩和ケアの入院プログラムを持ち、地域および外来ベースの緩和ケア提供モデルも増加しているが、実際の効果はよく知られていないという。23試験のメタ解析で、QOL、症状負担、生存などを評価 研究グループは、末期患者への緩和ケアが、患者およびその介護者のアウトカムに及ぼす影響を評価するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。 2016年7月までに医学データベース(MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Cochrane CENTRAL)に登録された文献を検索した。末期的病態の成人患者への緩和ケアによる介入を評価した無作為化試験を対象とした。 2人のレビュワーが別個にデータを抽出した。すべての試験について記述的統合(narrative synthesis)を行った。ランダム効果モデルによるメタ解析で、QOL、症状負担、生存などを評価した。 QOLは、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-palliative care scale (FACIT-Pal)に換算した。0~184点(点数が高いほどQOLが良好)でスコア化し、臨床的に意義のある最小変化量(minimal clinical important difference:MCID)は9点とした。 症状負担は、エドモントン症状評価システム(ESAS)に換算した。0~90点(点数が高いほど負担が大きい)でスコア化し、MCIDは5.7点であった。 43件(56論文)の無作為化試験に参加した患者1万2,731例(平均年齢67歳)と介護者2,479例が記述的統合の対象となった。メタ解析には23試験(30論文)が含まれた。生存は改善せず、エビデンスの質は低い 35件の試験は対照として通常ケアを設定していた。14試験は外来、18試験は在宅、11試験は入院患者を対象とし、介護者の評価は15試験で行われていた。 30試験にはがん患者が、14試験には心不全患者が含まれた。HIV患者に限定した試験のほか、COPD、間質性肺疾患、運動ニューロン疾患、末期腎不全、脳卒中、認知症の患者を含む試験もあった。 1~3ヵ月の患者QOLは、緩和ケアにより、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善効果が達成された(15試験、標準化平均差[SMD]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.08~0.83、FACIT-Pal平均差:11.36、異質性検定:I2=94.8%)。4~6ヵ月の患者QOLには有意差を認めなかった(12試験、SMD:0.12、95%CI:-0.03~0.28、I2=61.4%)。 1~3ヵ月の症状負担も、緩和ケアにより、有意で臨床的に意義のある改善が得られた(10試験、SMD:-0.66、95%CI:-1.25~-0.07、ESAS平均差:-10.30、I2=96.1%)。4~6ヵ月の症状負担にも有意な改善効果が認められた(6試験、SMD:-0.18、95%CI:-0.31~-0.05、I2=0.0%)。 バイアスのリスクが低い試験に限定した解析では、1~3ヵ月の緩和ケアとQOLの関連は減弱したものの有意差を保持していた(5試験、SMD:0.20、95%CI:0.06~0.34、FACIT-Pal平均差:4.94、I2=0.0%)のに対し、症状負担との関連では有意な差はみられなかった(4試験、SMD:-0.21、95%CI:-0.42~0.00、ESAS平均差:-3.28、I2=42.1%)。 緩和ケアと生存には関連を認めなかった(7試験、ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.69~1.17、I2=75.3%)。また、緩和ケアは、事前ケア計画(advance care planning)や、患者および介護者の満足度を改善し、医療資源の活用を抑制した。一方、介護者のアウトカムは試験間で一貫性がなかった。高い異質性のため、本研究のエビデンスの質は不良であった。 著者は、「改善効果を認めたアウトカムの多くは、バイアスのリスクが低い試験に限定すると有意差が消失した」とし、「最終的には、患者に加え介護者を支援する至適な緩和ケア提供モデルの確立が必要である」と指摘している。

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腹部大動脈瘤、手術の閾値の差が死亡率の差に関連するのか/NEJM

 イングランドでは、未破裂腹部大動脈瘤の手術施行率が米国の約半分で、大動脈瘤径が米国より5mm以上大きくなってから手術が行われ、瘤破裂率は2倍以上、瘤関連死亡率は3倍以上であることが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のAlan Karthikesalingam氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年11月24日号に掲載された。欧州血管外科学会議(ESVS)のガイドラインは、動脈瘤径が男性で55mm、女性では50mmを超えたら介入を考慮すべきとしているが、介入の至適な閾値が不確実であるため、実臨床ではかなりのばらつきがみられ、55mm未満での手術施行率は国によって6.4~29.0%の幅があるという。手術閾値の差が、死亡率の乖離をもたらすかを検証 研究グループは、イングランドと米国で、未破裂腹部動脈瘤への手術の施行状況や手術時の大動脈瘤径を比較し、両国の手術の閾値の差が大動脈瘤関連死亡率の乖離と関連するかを検討した(英国Circulation Foundationなどの助成による)。 イングランドの病院エピソード統計(Hospital Episode Statistics)のデータベースおよび米国の全国入院患者情報(Nationwide Inpatient Sample)から、2005~12年の未破裂腹部大動脈瘤への手術の頻度、手術を受けた患者の院内死亡率、動脈瘤破裂率のデータを抽出した。 また、英国の全国血管登録(National Vascular Registry)(2014年のデータ)および米国の全国外科手術質改善プログラム(National Surgical Quality Improvement Program)(2013年のデータ)から、手術時の動脈瘤径のデータを抽出した。 米国の疾病管理予防センター(CDC)および英国の国家統計局(Office of National Statistics)から得たデータを用いて、2005~12年の動脈瘤関連死亡率を決定した。データは、直接標準化法または条件付きロジスティック回帰を用いて、両国間の年齢および性別の差を補正した。 2005~12年に、イングランドで2万9,300例が、米国では27万8,921例が、未破裂腹部大動脈瘤の手術を受けた。米国の手術閾値を適用すればイングランドのアウトカムが改善する? 10万人当たりの年間動脈瘤手術施行率は、イングランドでは2005年の27.11件から2012年には31.85件に、米国では57.85件から64.17件に増加した。補正後の動脈瘤手術施行率は、イングランドが米国よりも低かった(オッズ比[OR]:0.49、95%信頼区間[CI]0.48~0.49、p<0.001)。 全体のステントグラフト内挿術の施行率は、イングランドのほうが低かった(45.5 vs.67.0%、p<0.001)。イングランドのステントグラフト内挿術の施行率は経時的に上昇したが、2012年時の施行率は米国に比べ低かった(67.2 vs.75.4%、p<0.001)。 手術施行例の全体の補正後院内死亡率は、両国間に差はなかった(OR:1.04、95%CI:0.96~1.12、p=0.40)。動脈瘤関連死亡率は、イングランドが米国よりも高かった(OR:3.60、95%CI:3.55~3.64、p<0.001)。 3年生存率はイングランドが78.5%、米国は79.5%で、このうちステントグラフト内挿術はそれぞれ76.6%、79.8%、外科的人工血管置換術は78.1%、79.1%だった。補正後の3年生存率は、両群間に差はなかった(死亡のハザード比[HR]:0.97、95%CI:0.92~1.02、p=0.17)。 10万人当たりの動脈瘤破裂による入院率は、イングランドでは2005年の21.34件から2012年には16.30件に、米国では10.10件から7.29件に減少した。補正後の動脈瘤破裂による入院率は、イングランドが米国よりも高かった(OR:2.23、95%CI:2.19~2.27、p<0.001)。 年齢と性別で重み付けした手術時の加重平均動脈瘤径は、イングランドのほうが大きかった(63.7 vs.58.3mm、p<0.001)。年齢、性別、手術法(ステントグラフト内挿術、外科的人工血管置換術)で補正しても、この有意な乖離は保持されており、手術時の瘤径はイングランドのほうが5.3±0.3mm大きかった(p<0.001)。 著者は、「手術施行率と動脈瘤関連死亡率は、両国とも別個のデータセットに基づいており、これらの因果関係は示せないが、時期は同じであるためその可能性が示唆され、米国の手術閾値をイングランドに適用すればイングランドのアウトカムが改善するかという疑問が浮上する」としている。

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血栓除去術の鎮静管理は、全麻に比べ早期の神経学的改善をもたらさない(解説:中川原 譲二 氏)-620

 Heidelberg大学病院神経科のSchonenberger氏らは、血栓除去術が行われた前方循環の急性虚血性脳卒中患者において、鎮静管理群と全身麻酔管理群を無作為に比較したところ、鎮静管理は24時間後の神経学的改善をもたらさなかったことを示した。この研究結果から、鎮静管理の利点を支持しないと結論した(JAMA誌オンライン版2016年10月26日号掲載の報告)。【研究背景】 急性虚血性脳卒中患者に対する血栓除去術中の鎮静または全麻による至適な患者管理については、無作為化比較試験に基づく証拠が欠如しているため、その優劣に関する結論が出ていない。【研究目的】 血栓除去術が行われた患者の早期の神経学的改善に関して、鎮静が全麻よりも優れているかどうかを検証すること。【研究デザイン】 2014年4月~2016年2月にわたり、転帰の盲検評価を用いた単一施設、無作為化、2群設定、オープンラベル治療からなるSIESTA(Sedation vs.Intubation for Endovascular Stroke Treatment)研究が、Heidelberg大学病院で行われた。前方循環の急性虚血性脳卒中患者150例、NIHSSスコア>10、内頸動脈および中大脳動脈のすべてのレベルの閉塞を対象とした。【介入割付】 患者は、挿管下全麻群(73例)と非挿管鎮静群(77例)に無作為に割り付けられた。【主要転帰】 主要転帰は、24時間後のNIHSSに基づく早期の神経学的改善(0~42、4ポイント≦を改善)であった。副次転帰は、3ヵ月後のmRSによる機能的転帰(0~6)、死亡率、安全性に関する周術指標などであった。全麻群では、3ヵ月後、より多くの患者が機能的に自立【研究結果】 150例(女性60例、平均年齢71.5歳、NIHSSスコアの中央値17)の中で、主要転帰は、全麻群(NIHSSスコアの低下-3.2ポイント[95%CI:-5.6~-0.8])と鎮静群(同-3.6ポイント[95%CI:-5.5~-1.7 ])で両群間に有意差なし(p=0.82)。あらかじめ設定した副次転帰47項目のうち、41項目で有意差なし。全麻群では、患者の動きがない(0% vs.9.1%、p=0.008)が、低体温(32.9% vs.9.1%、p<0.001)、抜管の遅れ(49.3% vs.6.5%、p<0.001)、肺炎(13.7% vs.3.9%、p=0.03)などの合併症が多かった。全麻群では、3ヵ月後、より多くの患者が機能的に自立していた(mRS 0~2:全麻群37.0% vs.鎮静群18.2%、p=0.01)。3ヵ月後の死亡は、両群で差はなかった。 本SIESTA研究は、単一施設で行われたRCTであるが、血栓除去術における鎮静管理と全麻管理の転帰を初めて検証した無作為化比較試験である。鎮静管理では早期の神経学的改善が得られず、全麻管理では3ヵ月後により多くの患者で機能的自立が得られたことは注目に値する。血栓除去術の治療成績は、発症から再開通までの時間が短いほど良好であることから、全麻管理を選択する場合でも、その手技に時間を要することがないように注意が必要となる。

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クリスマスイルミネーションの飾り付けにはご注意を【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第80回

クリスマスイルミネーションの飾り付けにはご注意を FREEIMAGESより使用 この論文は、クリスマスイルミネーションの飾り付けの際、転落・転倒事故で搬送された患者さんを解析したカナダの報告です。論文のタイトルも、クリスマスソング「Let it snow」の歌詞を引用していますね。 Driedger MR, et al."Oh the weather outside is frightful": Severe injury secondary to falls while installing residential Christmas lights.Injury. 2016;47:277-279.2002~12年の間に、クリスマスイルミネーションの飾り付けに起因する、重度の外傷で搬送された40人を後ろ向きに検討しました。飾り付けをするのはやはりパパ。全体の95%が男性で、平均年齢は55歳。家の屋根に上ってイルミネーションを付けるには、ちょっと不安な年齢ですね。外傷の内訳は、神経学的(68%)、胸郭(68%)、脊髄(43%)、四肢(40%)が多く、はしごからの落下が65%と半数以上を占めました。また、屋根からの落下も30%いたそうです。挿管され、集中治療室に搬送されたのは全体の20%、手術を受けたのは30%でした。入院日数の中央値は15.6日(範囲:2~165日)でした。そして、死亡したのは全体の5%という結果でした。この検討はカルガリーの外傷センターで実施されたもので、北アイルランドでも同様に、落下による外傷が多かったという報告があります1)。違う時期やもう少し暖かい国ならば違った結果になるかもしれません。たとえば、オーストラリアではクリスマスの時期にはマリンスポーツ関連の外傷が増えるとされています2)。凍ったはしごは滑りやすいので、皆さんも家にイルミネーションの飾り付けをする際は注意してください。1)Gordon R, et al. lster Med J. 2013;82:192.2)Garg H, et al. Med J Aust. 2011;195:704-705.インデックスページへ戻る

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キウイ栽培地ではキウイアレルギーは多いのか

 キウイは食物アレルギーの一因としてよく知られているが、このアレルギーに関する有病率の研究はあまり報告されていない。 そこで、本研究ではキウイが多く栽培されている地域(トルコ黒海地方、リゼ県)の児童(6~18歳)におけるIgE依存性キウイアレルギーの有病率と臨床的特徴を調査した。 Pediatric Allergy and Immunology誌オンライン版2016年10月12日号の掲載の報告。 試験対象は無作為に抽出した6~18歳の児童2万800人(トルコ、リゼ県在住)。試験期間は2013年の1年間とした。自己記入質問票に児童自身と両親が記入し、キウイアレルギーの疑いがあり、同意を得られた児童には皮膚プリックテスト(SPT)および経口負荷試験(OFC)を行った。 キウイアレルギー疑いの児童には、キウイ(市販アレルゲンエキス、生のキウイを使用したプリック-プリックテスト)と事前に指定されていた関連アレルゲンのパネル(バナナ、アボカド、ラテックス、ゴマ、シラカバ、チモシー(牧草)、ハシバミ、ネコ、ヤケヒョウヒダニおよびコナヒョウヒダニ)のSPTを行った。SPTでキウイに陽性を示したすべての児童にOFCを行い、キウイアレルギーの有病率を決定した。 主な結果は以下のとおり。・アンケートの回答率は75.9%(1万5,783/2万800人)であった。・親が推定した児童のキウイアレルギー有病率は0.5%(72/1万5,783人)(95%信頼区間[CI]:0.39~0.61%)であった。・72人の児童のうち、52人(72.2%)がSPTを受けた。そのうちの17人(32.7%)が市販のキウイアレルゲンエキスと生のキウイ、両方に陽性を示した。・キウイにSPT陽性を示した児童において多く報告されたのは、皮膚症状(n=10、58.8%)で、胃腸症状(n=6、35.3%)と気管支症状(n=4、23.5%)がそれに続いた。・口腔症状は6人(35.3%)の児童に認められた。・キウイにSPT陽性を示した児童全員がOFCでも陽性であった。・リゼ県在住の児童におけるキウイアレルギーの有病率は、OFCの結果から0.10%(17/1万5,783)(95%CI:0.06~0.16)と確定した。 以上の結果から、確認されたキウイアレルギーの有病率(0.10%)は親の認識(0.5%)とは一致しなかった。予想に反して、キウイ栽培が盛んで消費量も多い地域にもかかわらず、キウイアレルギー有病率は、低い値を示した。

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