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前糖尿病スクリーニングは地域住民にとって有益か?(解説:住谷 哲 氏)-639

 DPP(Diabetes Prevention Program)は、2型糖尿病発症の高リスク群に対するライフスタイルへの介入またはメトホルミンの投与が2型糖尿病への移行を抑制することを初めて明らかにした1)。 現在「2型糖尿病発症の高リスク群」はさまざまに定義されているが、その1つに前糖尿病(prediabetes)がある。prediabetesは、ADAの診断基準によれば、(1)空腹時血糖値(FPG)100~125mg/dL、(2)75gOGTT2時間値140~199mg/dL、(3)HbA1c 5.7~6.4%のいずれかを満たした場合と定義されている。一方、WHOの診断基準は(1)FPG 108~125mg/dL、(3)HbA1c 6.0~6.4%であり、一致していない。なるほど「旅行で大西洋を越えるだけで糖尿病になったり治癒したりする」と揶揄されるのも当然である。 本論文は、75gOGTT2時間血糖値140~199mg/dL(IGTに相当する)をprediabetes診断のゴールドスタンダードとした場合の、FPGおよびHbA1cの診断精度(感度または特異度)、prediabetesと診断された患者に対するライフスタイルへの介入による2型糖尿病発症予防効果をメタ解析により検討したものである。その結果、FPGの感度は0.25(95%信頼区間[CI]:0.19~0.32)、特異度は0.94(95%CI:0.92~0.96)、HbA1cの感度は0.49(95%CI:0.40~0.58)、特異度は0.79(95%CI:0.73~0.84)であった。つまり、prediabetesの診断において、HbA1cは感度・特異度ともに不十分であり、FPGは感度が低いことが明らかとなった。2型糖尿病発症予防効果は、6ヵ月~6年間の追跡調査でライフスタイルへの介入により相対リスクが36%(95%CI:28~43%)低下し、追跡調査後には20%(95%CI:8~31%)となった。 ライフスタイルへの介入または薬物投与(メトホルミン、ピオグリタゾン2)、α-GI3)4))により、IGTから2型糖尿病への進展が抑制されることはすでに証明されている。さらに近年、IGT患者への6年間にわたるライフスタイル介入により長期的には心血管死および総死亡が抑制できる可能性がDa Qing研究において明らかにされた5)。しかし、地域住民(population)のスクリーニングにより発見されたprediabetes患者へ介入(ライフスタイルまたは薬物)することで、地域住民の心血管死および総死亡を減少させること(これが真のアウトカムに相当する)ができるかは現時点で不明である。ADDITION-Cambridgeは地域住民スクリーニングにより発見された2型糖尿病患者に対して強力に介入することで、地域住民の心血管死および総死亡を減少させうるかを検討したが、結果は否定的であった6)。 2型糖尿病をはじめとする非感染性疾患(NCDs:non-communicable diseases)の予防には、疾患の高リスク患者を拾い上げて介入するハイリスクアプローチ(本論文ではscreen and treat policiesと呼ばれている)と、リスクの有無によらず地域住民に介入するポピュレーションアプローチの2つの方法がある。本論文で議論されている、prediabetes患者を拾い上げて介入する手法はハイリスクアプローチに相当する。われわれは、なんとなくこの方法が有益であるように考えているが、FPGまたはHbA1cでスクリーニングされたprediabetes患者は、本論文で述べているようにきわめてheterogeneousであり、多くの偽陽性患者が含まれ、逆に多くの偽陰性患者がスクリーニングからもれている。さらに前述したように、スクリーニングで発見されたprediabetes患者へ介入することで、地域住民の心血管死および総死亡を減少させることが出来るか否かは現時点では不明である点を考慮すると、地域住民に対する有益性はあるとしてもきわめて小さいと考えられる。より有益なのは、本論文の著者らも指摘するように、公園などの緑を増やすこと、もっと歩行が快適になるような環境を増やすこと、だれもが出来る安価なレジャーを増やすこと、食品表示をもっとわかりやすくすること、栄養摂取基準の設定に独立性を持たせること、食品広告を規制すること、果物や野菜を手に入りやすくすること、公教育でもっと情報を与えること、のように“upstream”に介入する、政府の介入を前提としたsoft-regulation strategyと呼ばれるポピュレーションアプローチと思われる。この点については減塩政策について論じた別の論文が参考になる7)。参考文献1)Knowler WC, et al. N Engl J Med. 2002;346:393-403.2)DeFronzo RA, et al. N Engl J Med. 2011;364:1104-1115.3)Chiasson JL, et al. Lancet. 2002;359:2072-2077.4)Kawamori R, et al. Lancet. 2009;373:1607-1614.5)Li G, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2014;2:474-480.6)Simmons RK, et al. Lancet. 2012;380:1741-1748.7)Webb M, et al. BMJ. 2017 Jan 10;356:i6699.関連コメントCLEAR!ジャーナル四天王食生活の改善は医薬品開発よりも効率的に健康寿命を延ばせることがわかった(解説:折笠 秀樹 氏)

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ハンチントン病〔HD:Huntington’s disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義舞踏病は中世ヨーロッパにおいて知られ、19世紀前半いくつかの遺伝性の舞踏病についての報告があるが、1872年のGeorge Huntingtonの報告を基に、疾病単位として確立され、ハンチントン舞踏病といわれるようになった。舞踏病は疾患の一面を示しているにすぎないので、現在は「ハンチントン病」という。ハンチンチン遺伝子(HTT)のCAGリピートの異常伸長による常染色体優性遺伝形式を取る、遺伝性の中枢神経変性疾患で、舞踏運動などの運動障害、認知機能障害、精神障害を呈し、進行性である。■ 疫学日本、東アジアでは比較的まれであるが、北ヨーロッパ(広義)やその地域からの移民では頻度が高い。わが国における有病率は人口10万人対0.6人程度、ヨーロッパ、北米およびオーストラリアからの報告のメタ解析では、人口10万人対5.7人と推計されている。■ 遺伝・病因常染色体優性遺伝を呈し、ほとんどの患者は変異アレルと正常アレルとのヘテロ接合体であるが、きわめてまれに変異アレルのホモ接合体(または複合へテロ接合体)例もある。両者は臨床的(表現型)には差はない。孤発例については、家族歴が不明のためか他疾患と考えられ、新生突然変異はほとんどないと考えられていたが、従来考えられていたよりは新生突然変異は少なくない。病因となるハンチンチン遺伝子(HTT)エクソン1のCAGリピートは、不安定で伸長しやすく、患者ではCAGリピートの繰り返し回数は36回以上である。ただし、36回から39回は不完全浸透で、発症するとは限らない。40回以上では、年齢依存的に発症率が異なるが、最終的には80歳代までにはほぼ100%発症する(完全浸透)。CAGリピートに関連して、2つの特徴が挙げられる。第1にCAGリピートの繰り返し回数が多いほど、発症年齢は若く、CAGリピートと発症年齢との間には負の相関が認められる。第2に親から子に遺伝する際に、繰り返し回数は多くなりやすく、とくに男親から遺伝する場合にその傾向は顕著である。小児発症例の男親が、後から発症することがある。すなわち、世代を経るごとに発症年齢が若年化し、重症化する遺伝学的表現促進現象が認められる。■ 病態・病理他のポリグルタミン病と共通する、異常伸長したポリグルタミン鎖を持つハンチンチンタンパク質による獲得毒性による機序と、ハンチンチンタンパク質の生理的な機能・局在などに関連した異常によるのが、大局的な分子病態と考えられる。ハンチンチンの生理的機能は十分には解明されていないが、ノックアウトマウスではホモ個体は致死的である。分子病態の全体像は完全には明らかにはされていないが、これまで、(1) 転写調節の異常、(2) アンチセンスRNAの関与、(3) タンパク質凝集、(4) ユビキチン-プロテアソーム系の異常、(5) オートファジーの異常、(6) アポトーシスの異常、(7) 軸索輸送の異常、(8) 成長因子の異常、(9) 繊毛形成障害、(10) ミトコンドリア機能障害、(11) 酸化ストレス、(12) 興奮性毒性など、さまざまな異常、病態への関与が報告されている。これらですべてかどうかは必ずしも明らかではないが、報告の多くはそれぞれ病態の一面を反映しているものと推察される。病理学的には、神経細胞の変性脱落を生じるが、その変化は線条体に顕著で、中型有棘神経細胞の脱落が特徴的である。進行に伴い、線条体は萎縮する。病理変化は、尾側から吻側へ、背側から腹側へ、内側から外側へ進行する。病理学的変化は、大脳皮質にも及び大脳全体が萎縮する。ポリグルタミン鎖を含む凝集体が核内封入体として認められる。■ 症状発症は小児期~80歳代まで幅広く、平均は40歳代で、30~60歳代に発症することが多い。20歳以下の発症は若年型といわれる。症状としては、運動症状、精神症状、認知症に大別される。運動症状は、舞踏運動が特徴的である。非典型的な不随意運動を認めることもある。また、小児などでは、筋強剛(固縮)などのパーキンソン症状を呈する(Westphal型)。精神症状としては、うつ、自殺企図を認め、また統合失調症との鑑別を要することもある。認知症としては、皮質下認知症を呈する。■ 予後緩徐進行性の経過で、臥床状態となり15~30年で合併症にて死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断のポイント診断に当たっては、家族歴が重要であり、確定診断されている家族歴のある場合には、診断は比較的容易である。ただし、家族歴がないからといって診断は除外できない。臨床症状、一般的検査で、特異的なものはない。■ 画像診断画像診断においては、CTおよびMRIで、尾状核ないし線条体の萎縮、脳室の拡大が疾患の進行に伴って認められ、進行例では、大脳皮質の萎縮も認める。尾状核の萎縮は水平断より冠状断(前額断)画像がみやすい。発症前ないし発症極初期においては、形態画像の異常は捉えにくいが、SPECTやPETによる機能画像検査において、尾状核の機能低下が捉えられる。■ 遺伝子診断遺伝子診断は、ハンチンチン遺伝子(HTT)のCAGリピートの異常伸長の有無による。遺伝子診断にて、確定診断および除外診断が可能である。■ 鑑別診断遺伝性、非遺伝性の舞踏運動などの不随意運動を呈する疾患、精神科疾患などが鑑別疾患として挙げられる。■ 臨床評価スケールUHDRS (Unified Huntington’s Disease Rating Scale)BOSH (The Behavior Observation Scale Huntington)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法発症予防、進行抑制などの根本的治療法は実現していない。症状に対する対症療法が主である。運動症状、舞踏運動に対して、テトラペナジン(商品名: コレアジン)が有効で、保険収載されている。精神症状に対しては、当該症状に対する抗精神病薬(向精神薬)、抗うつ薬などが用いられる。認知症に対する有効な治療薬は知られていない。■ 介護、支援制度など1)指定難病「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」の対象で、医療費助成対象疾病である。2)介護保険「介護保険法」の被保険者の対象は65歳以上で、第2号被保険者に該当する疾患には含まれない。認知症がある場合は、初老期における認知症として40~64歳でも対象となる。3)身体障害「身体障害者福祉法」に基づいて、運動障害の程度に応じて、肢体不自由による身体障害者手帳の交付の対象となる。4)精神障害者精神障害を来している場合には、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」による精神障害保健福祉手帳の交付の対象となりうる。■ 遺伝カウンセリング遺伝性疾患であり、婚姻、妊娠、発症前診断、出生前診断など、さまざまな臨床遺伝医学的課題、血縁者・家族に関連した問題がある。専門的には、臨床遺伝専門医などに紹介することが勧められる。4 今後の展望1993年に、原因遺伝子とその突然変異が報告され、以降、根本的に有効な治療法を目指したさまざまなレベルの研究が欧米を中心に行われている。臨床治験の行われた薬物もあるが、現在までのところ、発症の予防ないし遅延や進行の抑制を可能とする治療法は実現していない。研究の進展によって、これらが現実となることが望まれる。5 主たる診療科主たる診療科:神経内科(および小児神経科)精神症状の顕著な場合:精神科発症前診断や遺伝カウンセリングなど:遺伝診療科や遺伝子診療部門6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター ハンチントン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) Huntington disease (英語)(医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews Huntington chorea/ハンチントン病原文(英語)日本語版 (医療従事者向けのまとまった情報)The Centre for Molecular Medicine and Therapeutics ハンチントン病の有病率(英語)(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)(患者とその家族向けの情報)1)Huntington G. Medical and Surgical Report. 1872;26:317-321.2)The Huntington’s Disease Collaborative Research Group. Cell. 1993;72:971-983.3)William J. Weiner MD, Eduardo Tolosa MD, editor. Handbook of Clinical Neurology Volume 100. Hyperkinetic Movement Disorders.Elsevier(NE);2011.4)Bates G, Tabrizi S, & Jones L, editor. Huntington’s disease.4th ed. Oxford University Press(UK);2014.5)金澤一郎. ハンチントン病を追って 臨床から遺伝子治療まで. 科学技術振興機構;2006.6)後藤 順. 神経症候群(第2版)II.日本臨牀; 2014. p.163-168.7)Pringsheim T, et al. Mov Disord. 2012;27:1083-1091.8)Huntington Study Group. Mov Disord. 1996;11:136-142.9)Timman R, et al. Cogn Behav Neurol. 2005;18:215-222.公開履歴初回2017年02月07日

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双極性障害の過去のエピソードや治療反応を評価する簡便なスケール

 臨床医が、双極性障害患者の疾患経過および治療反応を評価するために、アナログスケールを使用する方法について、米国・カンザス大学のSheldon H Preskorn氏が報告した。Journal of psychiatric practice誌2017年1月号の報告。 主な報告は以下のとおり。・このアナログスケールは、患者が経験した最も悪いうつ病、軽躁/躁病エピソードを患者ごとに調整できるため、YMRS(Young Mania Rating Scale)のような標準化された評価尺度を補完することが可能である。・また、患者が初発後に完全寛解(スコア0)を達成したかどうかを含め、過去の治療に対する個々の患者のエピソードがどのように反応したかを、臨床医が追跡可能となる。・次いで、急性または慢性の活動性エピソードにおける患者が、身体的および/または精神療法のいずれかの新規治療に対しどのように反応したかを評価可能であり、それは過去の治療に対する反応と比較することも可能である。・今後、このスケールは、患者の疾患経過を評価するために使用可能である。たとえば、完全寛解を伴うエピソード、より重度なエピソードや残存症状の増加を伴う慢性期など。・このスケールを使用することにより、エピソードがどのように発現し消失するか、悪化に影響する各因子(たとえば、対人関係、炎症プロセス、薬物使用)、疾患による悪化があるかどうかなど、患者自身が自分の疾患についてより良い理解を促すことができる。・したがって、この簡便なスケールは、病歴の収集、異なる治療介入の有用性のモニタリング、患者教育を含む多くの目的を達成できると考えられる。関連医療ニュース うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 双極性障害、治療反応は予測できるか 双極性障害、再入院リスクの低い治療はどれか

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非喫煙者では飲酒量と肺がんリスクが逆相関

 飲酒量と肺がんリスクとの関連は、喫煙による交絡の可能性があり研究の解釈を複雑にしている。カナダのルーネンフェルト・タネンバウム研究所のGordon Fehringer氏らは、プールされた大規模なサンプルで、生涯非喫煙者のみの解析によって喫煙による潜在的な交絡を最小限に抑え、飲酒量と肺がんリスクとの関連を調査したところ、とくに飲酒量が低~中等度の人では、飲酒量と肺がんに負の相関を認めた。また、この関連はワインと蒸留酒において示され、ビールでは認められなかったという。International journal of cancer誌オンライン版2017年1月24日号に掲載。 著者らは、International Lung Cancer Consortium(ILCCO)とSYNERGY Consortiumにおける、北米・欧州・アジアでの22件の症例対照研究とコホート研究(生涯非喫煙の肺がん患者2,548人と生涯非喫煙者のコントロール9,362人を含む)を調査した。肺がんの組織分類ごとに分析し、またアルコールの種類(ワイン、ビール、蒸留酒)による関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・飲酒量は肺がんリスクと負の相関を示し、軽~中程度の飲酒者では非飲酒者に比べてリスクが低いことが示唆された。  >0~ 4.9g/日:OR=0.80、95%CI:0.70~0.90  5~ 9.9g/日:OR=0.82、95%CI:0.69~0.99  10~19.9g/日:OR=0.79、95%CI:0.65~0.96・ワインと蒸留酒では負の相関がみられたが、ビールではみられなかった。 なお著者らは、この結果に喫煙による交絡の影響はないが、他の因子による交絡は排除できないとしている。

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1型糖尿病のHbA1c改善に持続血糖測定が有用/JAMA

 頻回インスリン注射(MDI)で血糖コントロールが不良な1型糖尿病患者では、持続血糖測定(CGM)を用いた治療は通常治療よりも6ヵ月後のヘモグロビンA1c(HbA1c)の抑制効果が良好であることが、米国・Jaeb Center for Health ResearchのRoy W Beck氏らが実施したDIAMOND試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年1月24・31日号に掲載された。米国の1型糖尿病患者について、米国糖尿病学会(ADA)のHbA1cの目標値(18歳未満:7.5%[58mmol/mol]、18歳以上:7.0%[53mmol/mol])の達成率は約30%にすぎず、糖尿病管理の改善が求められている。CGMは、5分ごとにグルコースを測定し、低血糖および高血糖の警告機能を備え、グルコースの傾向を示す情報を提供するため、1日に数回の血糖値の測定よりも有用な糖尿病管理情報をもたらす可能性があるという。CGMの効果を評価する米国の無作為化試験 DIAMONDは、MDIを受けている1型糖尿病患者におけるCGMの有効性を評価する多施設共同無作為化試験(Dexcom社の助成による)で、2014年10月~2016年5月に行われた。 対象は、年齢25歳以上、MDIによる治療を1年以上受けており、HbA1cが7.5~9.9%、試験開始前の3ヵ月間にパーソナルCGMデバイスの使用歴がない1型糖尿病患者であった。 被験者は、CGM群または対照群に無作為に割り付けられた。CGM群は、CGMシステム(Dexcom G4 Platinum)が提供され、5分ごとに間質液中のグルコース濃度を測定した。対照群は、1日4回以上の血糖値の測定が求められた。 主要評価項目は、ベースラインから24週までのHbA1c(中央判定)の変化の差とした。 2014年10月~2015年12月に、米国の24施設に158例が登録され、CGM群に105例、対照群には53例が割り付けられた。155例(CGM群:102例、対照群:53例)が試験を完遂した。24週時のHbA1cが0.6%抑制 ベースラインの全体の平均年齢は48(SD 13)歳(範囲:26~73歳、60歳以上:22%)、女性が44%で、糖尿病罹病期間中央値は19年(四分位範囲:10~31年)、平均HbA1cは8.6(SD 0.6)%であった。6ヵ月目(21~24週)に、CGM群の完遂例の93%が週に6日以上CGMを使用していた。 ベースラインからの平均HbA1cの低下は、CGM群が12週時1.1%、24週時1.0%であり、対照群はそれぞれ0.5%、0.4%であった(反復測定モデル:p<0.001)。24週時のベースラインからのHbA1cの平均変化の補正群間差は-0.6%(95%信頼区間[CI]:-0.8~-0.3%、p<0.001)であり、CGM群が有意に良好であった。 また、24週時のHbA1c<7.0%の達成率(CGM群:18% vs.対照群:4%、p=0.01)、HbA1c<7.5%の達成率(38% vs.11%、p<0.001)、HbA1cが10%以上低下した患者の割合(57% vs.19%、p<0.001)は、CGM群が良好であった。 これらCGM群のHbA1cに関するベネフィットは、全年齢、ベースラインのHbA1cの範囲(7.5~9.9%)のすべての患者で認められ、学歴による差もなかった。 低血糖(<70mg/dL)の期間中央値は、CGM群が43分/日(四分位範囲:27~69)、対照群は80分/日(四分位範囲:36~111)であり、有意な差が認められた(p=0.002)。重篤な低血糖は両群とも2例ずつに発現した。 著者は、「より長期的な効果とともに、臨床アウトカム、有害事象を評価するには、さらなる研究を要する」としている。

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1型糖尿病の血糖コントロールに持続血糖測定が有効/JAMA

 頻回インスリン注射(MDI)で血糖コントロールが不良な1型糖尿病患者において、持続血糖測定(CGM)を用いた治療は従来の治療に比べ、良好なヘモグロビンA1c(HbA1c)の改善をもたらし、患者の満足度も高いことが、スウェーデン・ウッデバラ病院のMarcus Lind氏らが行ったGOLD試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年1月24・31日号に掲載された。MDIおよび持続皮下インスリン注入療法(CSII)による強化インスリン療法は、1型糖尿病の合併症を予防、抑制することが報告されている。一方、CGMシステムは、皮下に留置したセンサーで測定したデータを送信機で携帯モニタに送り、患者はグルコースの値を連続的に知ることができるため、インスリン用量の最適化に資するという。スウェーデンの無作為化クロスオーバー試験 GOLDは、1型糖尿病の血糖コントロールにおけるCGMを用いた治療と従来治療の効果を比較する非盲検無作為化クロスオーバー試験(NU Hospital Groupの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、MDIによる治療中で、HbA1c≧7.5%(58mmol/mol)、空腹時Cペプチド<0.91ng/mL、罹病期間1年以上の1型糖尿病患者であった。 被験者は、6週間の導入期間の後、CGM(Dexcom G4 PLATINUM)用いた治療を行う群または血糖自己測定による従来治療を行う群に無作為に割り付けられ、26週の治療が行われた(第1治療期)。その後、17週のウオッシュ・アウト期間を経て、治療法をクロスオーバーし26週の治療が行われた(第2治療期)。 主要評価項目は、2つの治療法の26週時と69週時の平均HbA1cの差とした。 2014年2月24日~2016年6月1日に、スウェーデンの15の糖尿病外来クリニックに161例が登録され、142例(最大の解析対象集団[FAS])が2つの治療期を終了した。第1治療期にCGMに割り付けられたのは69例、従来治療に割り付けられたのは73例だった。HbA1c、血糖変動幅、治療満足度が良好、重篤な低血糖は1例 ベースラインのFASの平均年齢は44.6(SD 12.7)歳、男性が56.3%で、平均HbA1cは8.7(SD 0.8)%(72mmol/mol)、平均罹病期間は22.2(SD 11.8)年であった。 治療期間中の平均HbA1cは、CGMが7.92%(63mmol/mol)、従来治療は8.35%(68mmol/mol)であった。平均差は-0.43%(95%信頼区間[CI]:-0.57~-0.29)(-4.7mmol/mol、95%CI:-6.3~-3.1)であり、CGMが有意に良好であった(p<0.001)。 2つの治療期の治療開始時のHbA1cはほぼ同じであったが、治療中は両治療期ともCGMのほうがHbA1cが低い値で経過した。 平均血糖変動幅はCGMが161.93mg/dLと、従来治療の180.96mg/dLに比べて低く(p<0.001)、血糖値のSDもCGMのほうが低値だった(68.49mg/dL vs.77.23mg/dL、p<0.001)。 糖尿病治療満足度質問表(DTSQ、0~36点、点が高いほど良好)はCGMが30.21点、従来治療は26.62点(p<0.001)、DTSQ変化(-18~18点、点が高いほど満足度が良好に変化)はそれぞれ13.20点、5.97点(p<0.001)であった。 WHO-5精神健康状態表(0~100点、点が高いほど良好)はCGMが66.13点、従来治療は62.74点(p=0.02)であった。低血糖恐怖尺度(0~4点、点が高いほど恐怖が大きい)の行動/回避は、それぞれ1.93点、1.91点と差はなかった(p=0.45)。 重篤な低血糖は、CGMは1例(0.04/1,000人年)、従来治療は5例(0.19/1,000人年)にみられ、ウオッシュ・アウト期間には従来治療の患者の7例に認められた(0.41/1,000人年)。 有害事象は、CGMが77例に137件、従来治療は67例に122件発生した。CGMでセンサーに対するアレルギー反応で治療を中止した患者が1例みられた。重篤な有害事象は、CGMが7例に9件、従来治療は3例に9件認められた。 著者は、「臨床アウトカムと長期の有害事象を評価するには、さらなる検討を要する」としている。

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エボロクマブ FOURIER試験のエンドポイント達成か

 アムジェン社(THOUSAND OAKS, カリフォルニア)は2017年2月2日、アテローム硬化性心血管疾患(ASCVD)に対するエボロクマブ(商品名:レパーサ)のイベントリスク抑制を評価するFOURIER(Further Cardiovascular OUtcomes Research with PCSK9 Inhibition in Subjects with Elevated Risk)試験において、複合主要評価項目(心血管死、非致死心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症または冠動脈再建術の入院)および副次的評価項目(心血管死、非致死心筋梗塞または非致死的脳卒中)を達成し、新たな安全性の問題も認められなかった、と発表した。 また、FOURIER試験の被験者で行われた認知機能試験EBBINGHAUSにおいても、その主要評価項目を達成し、エボロクマブの認知機能への影響について、プラセボに対する非劣性を証明したことも明らかにした。 この2試験の結果は、2017年3月17日からワシントンD.C.で行われる第66回米国心臓病学会(ACC)学術集会で発表される(FOURIER試験は、3月17日のLate Breaking Clinical Trialセッション、EBBINGHAUS試験は、3月18日の Late Breaking Clinical Trialセッション)。 昨年(2016年)の米国心臓学会議(AHA)で発表されたGLAGOV試験では、最適なスタチン療法でLDLが適正値に保たれた患者における、エボロクマブのアテローム抑制効果を証明した。このFOURIER試験では、心筋梗塞に加え、虚血性脳卒中、症候性末梢動脈疾患といった、より重症な患者が含まれている。この実臨床に近い多様な対象に対してエボロクマブの心血管イベントリスク抑制を示した、同試験の詳細な発表が待たれる。 アムジェン社(米国)のニュースリリースはこちら

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納豆は心血管系疾患の死亡リスクを減少?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第84回

納豆は心血管系疾患の死亡リスクを減少? FREEIMAGESより使用 うちの4歳の子供は納豆が結構好きで、ご飯にかけてモリモリ食べています。私も嫌いではないのですが、ご飯にかけてまで食べたいとは思いません。納豆に含まれる血栓溶解酵素であるナットウキナーゼは、世界で唯一の食品由来の血栓予防剤だ、と主張されている研究者もいますよね。今回紹介するのは、有名な高山スタディからの報告。 Nagata C, et al.Dietary soy and natto intake and cardiovascular disease mortality in Japanese adults: the Takayama study.Am J Clin Nutr. 2016 Dec 7. [Epub ahead of print]この研究は、大豆の摂取が心血管系疾患(CVD)のリスクを低下させるかどうか調べたものです。大豆製品として、日本古来の食材である納豆を選びました。研究の目的は、納豆、大豆タンパク、大豆イソフラボンの摂取が、日本の集団ベースコホート研究でCVDの死亡率減少と関連しているかどうかを調べることです。この高山スタディでは、1万3,355人の男性と1万5,724人の女性が選ばれました(いずれも35歳以上と規定)。1992年に登録した時点で、食物摂取に関するアンケートを実施しました。CVDによる死亡は、16年次を超えて発症がみられました。追跡期間中、1,678人の死亡がみられました。その内訳は、677人が脳卒中、308人が虚血性心疾患でした。最も納豆をたくさん食べた四分位の人は、最も低い四分位と比較して、CVDによる死亡リスクを減少させました(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.88、傾向のp=0.0004)。ただし、大豆タンパクや大豆イソフラボンのみを摂取しても、CVDに対する影響は観察されませんでした。脳卒中に対しては、納豆だけでなく大豆タンパクの摂取でも、有意に死亡リスクが減少しました(納豆のHR:0.68、95%CI:0.52~0.88、傾向のp=0.0004、大豆タンパクのHR:0.75、95%CI:0.57~0.99、傾向のp=0.03)。最も納豆を多く食べる四分位の群では、虚血性脳卒中の死亡リスクが有意に減少しました(HR:0.67、95%CI:0.47~0.95、傾向のp=0.03)。最近はいろいろな直接経口抗凝固薬(DOAC)を内服している患者さんが増えている一方、ワルファリンの内服患者さんが減りましたから、またそのうち納豆ブームでも来るのではないかと思っています。インデックスページへ戻る

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統合失調症に対する短期治療、アリピプラゾール vs.リスペリドン

 統合失調症に対するアリピプラゾールとリスペリドンの短期治療効果および副作用プロファイルについて、インド・カヌール・メディカル大学のP B Sajeev Kumar氏らが、比較検討を行った。Current neuropharmacology誌オンライン版2017年1月12日号の報告。 本研究は、統合失調症に対するアリピプラゾールとリスペリドンによる8~12週間の治療を比較した非無作為化自然主義的盲検化プロスペクティブ研究。対象は、すでにアリピプラゾール(10~30mg/日)またはリスペリドン(3~8mg/日)で治療中の患者。MINI(Mini International Neuropsychiatric Interview:精神疾患簡易構造化面接法)Plus、PANSS、AIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale:異常不随意運動評価尺度)、SAS(Simpson Angus Scale)、UKU(Udvalg for Klinske Undersogelser)スケール、CGI-Sを、試験開始時に収集した。1日目およびフォローアップ時に、身体測定(身長、体重、BMIなど)、血圧、脈拍数を調べた。8~12週間後に、MINI Plusを除く検査を再度実施した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール群およびリスペリドン群の両方で、陽性症状、陰性症状の有意な改善が示された。しかし、両群間に統計学的有意差はなかった。・患者によるCGI改善スケールスコアの平均改善度は、アリピプラゾール群で有意な傾向が示された。・UKUスケールにより評価される一般的な(患者の5%以上で認められる)有害事象は、アリピプラゾール群よりもリスペリドン群で高頻度に認められた。・薬物誘発性錐体外路症状は、リスペリドン群でより多かった。・アリピプラゾール群は、体重増加に対する治療がより少なかった。 著者らは「アリピプラゾールは、統合失調症に対する8週間の短期治療において、リスペリドンと同等の有効性を示し、より良好な忍容性が認められた。また、患者満足度および副作用プロファイルも良好であった」としている。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs.リスペリドン 2つの抗精神病薬持効性注射剤、その違いを分析 アリピプラゾール vs.その他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

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禁煙支援サービス、個別の疾患リスク提示で利用者倍増/Lancet

 英国国民保健サービス(NHS)の禁煙支援サービス(Stop Smoking Services:SSS)において、入門セッションへの案内状と一緒に個別のリスク情報(個人が喫煙を継続した場合に起こりうる重篤な疾患の危険度)を提供することによって、標準の一般的な案内状と比較してSSSへの参加率が2倍以上になったという。ロンドン大学のHazel Gilbert氏らが、SSSの利用に関して2つの要素から成る個別化介入の有効性を評価したStart2quit試験の結果、報告した。SSSは禁煙を希望する喫煙者を支援するものだが、利用率は低く、最近はさらに低下傾向にあった。今回の結果を踏まえて著者は、「地域のサービスを体験する機会と組み合わせ、より積極的にアプローチすることで、サービスを受けることに対する患者の障壁を減らすことができ、利用者が増加する可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2017年1月24日号掲載の報告。標準的な案内状と、個別のリスク情報+体験会の案内状の効果を比較 研究グループは、英国でSSSを提供している18地域内の一般診療所99施設において、現在も喫煙している16歳以上の喫煙者で、禁煙を希望し、過去12ヵ月以内にSSSを利用したことがない人を対象に、無作為化比較試験を実施した。 参加者は、個々に応じたリスクが示された書類と地域のSSSが行っている任意の入門セッション(体験会)の案内状を受け取る介入群と、地域のSSSを知らせる標準的な通知を受け取る対照群に、ブロックランダム化法を用い性別で層別化し、3対2の割合で無作為に割り付けられた。介入群の参加者は盲検化できなかったが、個々の書類を作成したアシスタント以外の研究者は、割り付けに関して盲検化された。また、一般診療所の医師、スタッフおよびSSSのアドバイザーも、参加者の割り付けを知らされなかった。 主要評価項目は、無作為化から6ヵ月以内のSSSコース(6週間)の初回セッションへの参加とし、intention to treat解析を実施した。介入群では初回セッションへの参加が対照群の約2倍に 2011年1月31日~2014年7月12日に、4,384例が無作為に割り付けられ(介入群2,636例、対照群1,748例)、4,383例が解析対象となった。 SSS初回セッションへの参加者は、対照群と比較して介入群で有意に増加した(158例[9.0%] vs.458例[17.4%]、非補正オッズ比:2.12、95%信頼区間[CI]:1.75~2.57、p<0.0001)。 なお、参加したSSSは151のうち18ヵ所のみで、基準を満たす喫煙者の募集率は4.1%と低く、SSSへの参加と禁煙に対する今回の介入の相対寄与は推定できていない。

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血管止血デバイスの安全性評価に有用な監視システム/NEJM

 DELTA(Data Extraction and Longitudinal Trend Analysis)と呼ばれる前向き臨床登録データサーベイランスシステムを用いた検証により、血管止血デバイスの1つであるMynxデバイスが、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の有害事象増加と関連しており、最初の1年以内で他の血管止血デバイスと有意差がみられることが明らかとなった。米国・Lahey Hospital and Medical CenterのFrederic S. Resnic氏らが、PCI後の有害事象増加が懸念されているデバイスの安全性モニタリングについて、DELTAシステムを用いた戦略が実現可能かを評価したCathPCI DELTA試験の結果、報告した。これまで、医療機器の市販後の安全性を保証する過程は、有害事象の自主報告に依存しており、安全性の評価と確認が不完全であった。NEJM誌オンライン版2017年1月25日号掲載の報告。Mynxデバイスの安全性に関する傾向スコア解析を実施 DELTAは、オープンソースのデータベース管理および統計解析ツールを結合する統合ソフトウェア・コンポーネントで、臨床登録と他の詳細な臨床データから安全性シグナルを前向きにモニターするサーベイランスシステムである。 研究グループは、DELTAシステムを使用し、CathPCI Registryに登録された患者を対象に、Mynxデバイスの安全性を他の承認済み血管止血デバイスと比較する傾向スコア解析を実施した(Mynxは、シースを抜く際に大腿動脈の穿刺部を、生体に吸収されるポリエチレングリコールで止血するデバイス)。 主要評価項目は、全血管合併症(穿刺部出血、穿刺部血腫、後腹膜出血、その他の処置を要する血管合併症)、副次評価項目は治療を要する穿刺部出血および施術後輸血であった。他の血管止血デバイスと比較し、Mynxデバイスで血管合併症リスクが有意に増加 2011年1月1日~2013年9月30日の間に、大腿部アプローチによるPCI後にMynxデバイスを使用した患者7万3,124例のデータが解析された。 Mynxデバイスは、他の血管止血デバイスと比較して、全血管合併症のリスクが有意に増加した(絶対リスク1.2% vs.0.8%、相対リスク:1.59、95%信頼区間[CI]:1.42~1.78、p<0.001)。同様に、穿刺部出血(同:0.4% vs.0.3%、1.34、1.10~1.62、p=0.001)、および輸血(1.8% vs.1.5%、1.23、1.13~1.34、p<0.001)も有意なリスク増加が確認された。 Mynxデバイスによる血管合併症に関する警告(増加が有意であることが最初に認められたこと)は、モニタリング開始後12ヵ月以内に発生した。相対リスクは、事前に定義した3つのサブグループ(糖尿病、70歳以上、女性)でより高かった。 FDAの指示により追加された2014年4月1日~2015年9月30日の間の別の4万8,992例を対象とした解析でも、すべての評価項目に関して最初の12ヵ月以内に警告が確認された。

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アルツハイマー病、他のコリンエステラーゼ阻害薬への切り替え効果はどの程度:岡山大

 アルツハイマー病に対し、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)から他のChEIへの切り替えによる治療効果はあるのかを、岡山大学の太田 康之氏らが評価した。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版2017年1月6日号の報告。 ChEIの切り替えを行ったアルツハイマー病患者171例をレトロスペクティブに登録した。認知症の主要な3要素(認知、感情、ADL活動)について、切り替え6ヵ月前、切り替え時(ベースライン)、切り替え3、6ヵ月後に評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・切り替え6ヵ月後の3種のChEIの用量は、切り替え前と比較し、有意に低かった。・ドネペジルからガランタミンへ切り替えた場合、3ヵ月後に感情鈍麻の改善が認められたが、リバスチグミンでは認められなかった。また、切り替え後はADLに悪影響を及ぼした。・ガランタミンからリバスチグミンへ切り替えた場合、3ヵ月後に認知スコアの改善が認められたが、ドネペジルでは認められなかった。・これらの切り替えは、ADLを除く阿部式BPSDスコア(Abe's Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia scores)を改善した。・リバスチグミンからドネペジルへ切り替えた場合、6ヵ月後の阿部式BPSDスコアは悪化したが、認知機能およびADLは維持された。 著者らは「切り替え後のChEIは、用量が比較的少ないにもかかわらず、ドネペジルまたはリバスチグミンからの切り替えで6ヵ月以上、認知機能が維持された。ガランタミンからリバスチグミンへ切り替えた場合には、3ヵ月後のミニメンタルステート検査、阿部式BPSDスコアは改善したが、ADLスコアは改善しなかった」としている。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 コリンエステラーゼ阻害薬の副作用、全世界の報告を分析 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か?

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C.difficile感染症、bezlotoxumabで再発リスク低下/NEJM

 クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)に初感染または再発し経口抗菌薬を投与された成人患者に対し、bezlotoxumabを投与することで、12週以内の再発リスクが10%以上有意に低下したことが示された。英国・Leeds General InfirmaryのMark H. Wilcox氏らが、2,655例を対象に行った第III相臨床試験の結果で、NEJM誌2017年1月26日号で発表した。安全性プロファイルはプラセボと類似していたこと、bezlotoxumabにアクトクスマブを併用投与しても、その低減効果は変わらなかったことも報告されている。30ヵ国、322ヵ所で無作為化試験 研究グループは2011~15年、30ヵ国(322ヵ所)で、C. difficileの初感染また再発に対し標準治療として経口抗菌薬を投与された成人患者2,655例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験「MODIFY I・II」を行った。 被験者は、bezlotoxumab(10mg/kg)、アクトクスマブ+bezlotoxumab(各10mg/kg)、プラセボを、それぞれ点滴静注された。なお、MODIFY I試験ではアクトクスマブ(10mg/kg)単剤投与も行ったものの、予定されていた中間解析後に中止した。 主要評価項目は、投与後12週間以内の再発した感染(最初の臨床的治癒後の初回発生)で、修正intention-to-treat集団により評価した。再発率、プラセボ群26~28%に対しbezlotoxumab単剤・併用群15~17% その結果、両試験において、C. difficile再発率はbezlotoxumab単剤群でプラセボ群より低率だった(MODIFY I:bezlotoxumab単剤群が17%、プラセボ群が28%、補正後群間差:-10.1%、p<0.001、MODIFY II:bezlotoxumab単剤群16%、プラセボ群26%、同:-9.9%、p<0.001)。また、アクトクスマブ+bezlotoxumab群もプラセボ群に比べ低率だった(MODIFY I:アクトクスマブ+bezlotoxumab群が16%、補正後群間格差:-11.6%、p<0.001、MODIFY II:同15%、同:-10.7%、p<0.001)。 事前に設定したサブグループ解析では、再発リスクや有害アウトカムのリスクが高いサブグループの再発率は、bezlotoxumabを投与した2群でプラセボ群に比べ有意に低率だった。 初回臨床的治癒率は、bezlotoxumab単剤群が80%、アクトクスマブ+bezlotoxumab群が73%、プラセボ群が80%で、初回臨床的治癒12週間以内に再発が認められない持続的治癒率は、それぞれ64%、58%、54%だった。 有害事象の発現率は3群で同程度だった。頻度が高かったのは下痢と悪心だった。

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パニック障害 + うつ病、副作用と治療経過の関係は

 抗うつ薬の副作用は治療の有効性に影響を及ぼす。しかし、副作用が発現する患者や患者の副作用を予測することは困難である。米国・イリノイ大学シカゴ校のStewart A Shankman氏らは、パニック障害合併の有無による、うつ病患者の副作用発現状況を調査した。また、副作用により治療経過を予測可能かも検討した。これらの影響の特異性を調査するため、分析では不安障害、社交不安障害、全般性不安障害(GAD)を調査した。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2017年1月3日号の報告。 大規模な慢性期うつ病患者のサンプルを対象に、2002~06年に12週間、事前に計画されたアルゴリズムに従って抗うつ薬を投与した。うつ症状(ハミルトンうつ病評価尺度)と副作用を2週間ごとに評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時のパニック障害の生涯診断は、胃腸(OR:1.6、95%CI:1.0~2.6)、心臓(OR:1.8、95%CI:1.1~3.1)、神経系(OR:2.6、95%CI:1.6~4.2)、尿生殖器の副作用(OR:3.0、95%CI:1.7~5.3)への治療と関連している可能性が高かった。・副作用の頻度、強さ、罹病期間の増加は、パニック障害を合併した患者において、抑うつ症状の増加とより強い関連が認められた。・社交不安障害、GADは、これらの影響と関連が認められなかった。関連医療ニュース パニック症に対し第2世代抗精神病薬は有用か 双極性障害と全般性不安障害は高頻度に合併 パニック障害 + 境界性パーソナリティ障害、自殺への影響は?

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治験責任医師と企業の金銭的関係が試験結果に関連/BMJ

 治験責任医師と試験薬製造会社の経済的な関係は、臨床試験のpositiveな結果と独立の関連があることが、米国・オレゴン健康科学大学のRosa Ahn氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月17日号に掲載された。無作為化臨床試験の治験責任医師は、一般的に企業と経済的な関連がある。研究の資金源と試験結果の関連を検証する研究は多数行われているが、企業助成の影響を考慮したうえで、治験責任医師の経済的関係と研究結果の関連を検証した研究は少ないという。2013年の195試験を横断的に解析 研究グループは、研究資金源を明らかにしたうえで、治験責任医師の試験薬製造会社との個人的な経済的関係と、試験結果の関連を検証するために、無作為化対照比較試験を対象とした横断的研究を行った(本研究は、直接的な助成は受けていない)。 Medlineを検索し、2013年1月1日~12月31日に主要な臨床専門誌に掲載された、主に薬剤の効果を検討した無作為化臨床試験の論文を同定した。 positiveの定義は、試験薬の効果が、優越性試験では対照薬よりも統計学的に有意に優れる場合、非劣性試験では対照薬よりも有意に劣らない場合、多剤の優越性試験では1つ以上の有効性の主要評価項目が有意に優れる場合、多剤の非劣性試験では1つ以上の有効性の主要評価項目に有意な差がない場合とした。 薬剤の有効性を主要評価項目とし、経済的関係が調査可能で、仮説が明確に記述され、研究助成の情報が含まれた190編(195試験)の論文が解析の対象となった。 第III相試験が52%、企業助成試験が69%を占め、筆頭著者は米国人が38%(74/195試験)で最も多かった。専門分野は、循環器が16%、腫瘍が11%、感染症が11%、泌尿器が7%、消化器が6%の順であった。また、優越性試験が89%、二重盲検試験が75%、プラセボ対照試験は75%だった。企業と経済的関係を持つ試験の76%がpositive 治験責任医師と製薬企業との経済的関係は、132件の研究(67.7%)で認められた。治験責任医師397人のうち、231人(58%)が経済的関係を持ち、166人(42%)は持たなかった。 156人(39%)の治験責任医師が、顧問料/コンサルタント料の受領を報告しており、81人(20%)が講演料の受領、81人(20%)が不特定の経済的関係、52人(13%)が謝礼金の受領、52人(13%)が被雇用関係、52人(13%)が旅行費用の受領、41人(10%)が株式の所有、20人(5%)が試験薬関連の特許の所有を報告していた。 試験結果がpositiveであった136試験のうち103試験(76%)で、治験責任医師と試験薬の製造企業に経済的関係が認められ、negativeであった59試験で経済的関係がみられたのは29試験(49%)であった。 米国の著者は、他国の著者に比べ経済的関係を有する試験が多かった(70% vs.49%、p<0.001)。経済的関係と専門分野には関連はなかったが、登録試験は非登録試験よりも(70% vs.25%、p=0.001)、製薬企業の助成による試験は製薬企業以外の助成の試験よりも(84% vs.31%、p<0.001)、経済的関係がある場合が多かった。一方、優越性試験は非劣性試験よりも、経済的関係がある場合が少なかった(64% vs.95%、p=0.004)。実薬対照試験とプラセボ対照試験、臨床エンドポイントを用いた試験と代替エンドポイントの試験には、経済的関係に有意な差はなかった。 治験責任医師の経済的関係とpositiveな結果の非補正オッズ比(OR)は3.23(95%信頼区間[CI]:1.7~6.1)、資金源で補正したORは3.57(95%CI:1.7~7.7、p=0.001)であり、有意な関連が認められた。 無作為化臨床試験の特性[第III相 vs.その他、症例数(4分位)、筆頭著者の出生国(米国 vs.その他)、専門分野(循環器 vs.腫瘍 vs.その他)、試験登録の有無、試験デザイン(実薬対照 vs.プラセボ対照/対照なし)、優越性試験 vs.非劣性試験、臨床エンドポイント vs.代替エンドポイント]を含めた解析を行ったところ、これらの要素は経済的関係とpositiveな結果に明確な影響を及ぼさなかった(OR:3.37:1.4~7.9、p=0.006)。 著者は、「これらの知見は、エビデンスの基盤へのバイアスの混入の可能性を示唆する」とし、「新たな治療の開発の進展における企業と学界の協働の重要性を考慮すると、エビデンスの基盤の信頼性の確保における研究者、施策立案者、専門誌編集者の役割について、さらに考察する必要がある」と指摘している。

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抗CD20抗体ocrelizumab、多発性硬化症の進行抑制/NEJM

 ヒト化抗CD20モノクローナル抗体ocrelizumabは、一次性進行型多発性硬化症の臨床的および画像上の疾患進行を抑制することが、スペイン・バルデブロン大学病院のXavier Montalban氏らが実施したORATORIO試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年1月19日号(オンライン版2016年12月21日号)に掲載された。多発性硬化症の組織傷害のメカニズムは不明であるが、B細胞が抗原の発現や自己抗体の産生、サイトカインの分泌を介する機序に関与しており、B細胞の除去が治療に有効である可能性が示唆されている。ocrelizumabは、CD20陽性B細胞を選択的に除去するが、B細胞の再構築能および既存の液性免疫は保持されるという。治療効果をプラセボ対照比較試験で評価 ORATORIOは、一次性進行型多発性硬化症の治療におけるocrelizumabの有効性と安全性を評価する、二重盲検無作為化プラセボ対照並行群間比較第III相試験(F. Hoffmann-La Roche社の助成による)。 対象は、年齢18~55歳、McDonald診断基準(2005年改訂版)で一次性進行型多発性硬化症と診断され、総合障害度評価尺度(EDSS)スコアが3.0~6.5(0~10、点数が高いほど機能障害が重度)、機能別障害度評価尺度の錐体路機能スコアが2(0~6、点数が高いほど機能障害が重度)以上の患者であった。 被験者は、ocrelizumab(600mg)またはプラセボを24週ごとに静脈内投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。治療期間は120週以上とし、事前に規定された件数の機能障害の進行イベントが発生するまで継続することとした。 主要評価項目は、time-to-event分析で12週時の機能障害進行が確定された患者の割合であった。障害進行は、ベースラインのEDSSスコアが5.5以下の患者は、ベースラインから1.0以上の上昇、5.5以上の患者は0.5以上の上昇と定義した。 2011年3月3日~2012年12月27日に732例(ITT集団)が登録され、ocrelizumab群に488例、プラセボ群には244例が割り付けられた。120週の治療に到達したのは、ocrelizumab群が402例(82%)、プラセボ群は174例(71%)であった。試験期間中央値は、それぞれ2.9年、2.8年だった。12週時進行割合:32.9% vs.39.3%、MRI脳病変総体積:-3.4% vs.7.4% ベースラインの平均年齢は、ocrelizumab群が44.7±7.9歳、プラセボ群は44.4±8.3歳、女性がそれぞれ48.6%、50.8%含まれた。症状発現からの平均経過期間は6.7±4.0年、6.1±3.6年、診断からの平均経過期間は2.9±3.2年、2.8±3.3年、平均EDSSスコアは4.7±1.2、4.7±1.2だった。 12週時に機能障害進行が確定された患者の割合は、ocrelizumab群が32.9%と、プラセボ群の39.3%に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.59~0.98、p=0.03)。 24週時に機能障害進行が確定された患者の割合は、ocrelizumab群が29.6%であり、プラセボ群の35.7%と比較して有意に優れた(HR:0.75、95%CI:0.58~0.98、p=0.04)。 ベースラインから120週時までの、25フィート時間制限性歩行試験(T25FW)の悪化の割合は、ocrelizumab群が38.9%と、プラセボ群の55.1%よりも有意に低かった(p=0.04)。 T2強調MRI上の脳病変の総体積は、ocrelizumab群が3.4%減少したのに対し、プラセボ群は7.4%増加した(p<0.001)。また、脳体積は、ocrelizumab群が0.90%減少したのに対し,プラセボ群の減少は1.09%であった(p=0.02)。 SF-36の身体機能サマリースコアの変化には、有意な差はみられなかった(補正平均変化量=ocrelizumab群:-0.7 vs.-1.1、p=0.60)。 ocrelizumab群は、注射部位反応(39.9% vs.25.5%)、上気道感染症(10.9% vs.5.9%)、口腔ヘルペス感染症(2.3% vs.0.4%)の頻度が、プラセボ群に比べ高かった。腫瘍は、ocrelizumab群の2.3%、プラセボ群の0.8%に認められた。また、重篤な有害事象(20.4% vs.22.2%)および重篤な感染症(6.2% vs.5.9%)の発生率は、両群間に臨床的に有意な差はみられなかった。 著者は、「長期の安全性と有効性を明らかにするには、拡大試験による観察を要する」としている。

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救急での死亡予測に有用な敗血症の新規国際基準/JAMA

 感染症が疑われる救急部門受診患者に対して、迅速連続臓器不全評価(qSOFA)スコアの使用は、全身性炎症反応症候群(SIRS)基準や重症敗血症基準と比較して、院内死亡の予測能に優れることが、フランス・パリ第6大学のYonathan Freund氏らによる国際前向きコホート試験の結果、示された。著者は、「所見は、最近新たに定義された敗血症と敗血症性ショックの国際基準Sepsis-3の、救急部門での使用を支持するものであった」とまとめている。Sepsis-3では、高死亡リスクの患者を識別するためSIRS基準に代わってqSOFAスコアを使用することが推奨されている。しかし、この新基準については前向きな確認が行われていない臨床設定があり、救急部門で付加価値をもたらすのかは不明であった。JAMA誌2017年1月17日号掲載の報告。院内死亡を、qSOFA、SOFA、SIRSを用いて評価 qSOFAの死亡予測を前向きに確認し、敗血症の新たな基準と既存の基準の有用性を比較する試験は、2016年5~6月に、フランス、スペイン、ベルギー、スイスの計30の救急部門で被験者を登録して行われた。4週の期間中に感染症が疑われ救急部門を受診した連続患者について、敗血症の既存および新定義の検体をすべて集め、退院または死亡まで追跡した。 主要評価項目は院内死亡で、qSOFA、SOFA、SIRSを用いて評価した。qSOFAの予測能、SIRS基準と重症敗血症基準より優れる 1,088例がスクリーニングを受け、879例が解析に包含された。年齢中央値は67歳(四分位範囲:47~81歳)、女性が47%、また379例(43%)が呼吸器感染症であった。 結果、院内全死亡率は8%であった。qSOFAスコア2点未満の院内死亡率は3%に対し、同2点以上は24%で、両スコアによる院内死亡率の絶対差は21%(95%信頼区間[CI]:15~26%)であった。 qSOFAスコアの院内死亡率の予測能は、SIRS基準および重症敗血症基準よりも優れていた。受信者動作特性曲線下面積(AUROC)は、qSOFAスコア0.80(95%CI:0.74~0.85)に対し、SIRS基準および重症敗血症基準はいずれも0.65(95%CI:0.59~0.70)で、有意差が認められた(p<0.001、増分AUROC:0.15[95%CI:0.09~0.22])。 qSOFAスコア2点以上の院内死亡との関連ハザード比は6.2(95%CI:3.8~10.3)であった。これに対して重症敗血症基準は3.5(95%CI:2.2~5.5)であった。

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循環器内科 米国臨床留学記 第17回

第17回 内科系フェローシップ選考の実際(後編)今回は、前回に引き続き米国の内科系フェローシップ選考について、自身の経験を踏まえて具体的に書いてみます。広いアメリカ、かさむ面接費用多くのプログラムは、自分の大学や病院の内科のレジデンシーにポジションの3分の1程度を確保しています。たとえば私のいるプログラムでは、5つのポジションのうち、2つは同じ大学のレジデントに与えられます。これはプログラム、候補者双方にメリットがあります。同じ病院で数年間働き、人間性や勤勉さを知っているレジデントを取るほうが、1回のインタビューで判断したレジデントを採用するよりも安全です。一方、候補者にとっても自分のプログラムから3人応募者がいて、同じ大学・病院の循環器プログラムが自前のレジデントに3つのポジションを確保していれば、ほぼ確実に循環器フェローになれますし、ほかの病院に面接などに行かなくても済みます。こういった事情で、約800ある循環器フェローのうち、およそ250程度は内部からのレジデントに確保されているので、外部候補者にはさらに狭き門となります。私のレジデンシーは、Ohio州のFMG(外国医学部卒業者)ばかりのプログラムでした。プログラムディレクターは教育的で、素晴らしいプログラムでした。しかしながら、FMGが多いということは一般的には評価の高いプログラムではありません。同期のパキスタンやペルー出身の4人が循環器に応募しましたが、マッチングできたのは私1人でした。私が獲得した5つのインタビューも、ほとんどがコネクションに頼ったもので、コネクションがなければ、アンマッチに終わっていた可能性が高いと思います。ただし、同じFMGでもMayoなど有名なレジデンシープログラム出身だと、よりたくさんのインタビューに呼ばれますので、マッチングに有利になります。インタビューはお金がかかります。広いアメリカですから、東海岸から西海岸のプログラムの面接にたった1回行くだけで、400~500ドルはかかります。また、面接に行く間、誰かが仕事をカバーしなければならないので、20件以上呼ばれても、あらかじめ10件程度に絞るのが一般的です。循環器や消化器などの競争率が高いフェローシップでは、統計的に5つ以上の面接に呼ばれればマッチする可能性が高いと言われます。私の場合は、現在のプログラムやテレビドラマERのモデルともいわれている、シカゴのCook County病院などを含めて、呼ばれた5件のインタビューすべてに行きましたが、旅費だけで2,000ドル近くかかりました。面接当日の様子面接の実際の様子について書きたいと思います。面接の日に、行われる講義や昼食にわれわれフェローが参加することがあります。フェローとしては、礼儀をわきまえないなど問題がある候補者が自分のプログラムに来ると困りますので、そういった候補者をプログラムディレクターに報告し、マッチングのリストから外すように求めます。面接では、なぜ循環器や消化器などに進みたいのか、これまでにどのような研究をしてきたのか、将来はアカデミック(大学に残って研究や教育に従事)に進みたいのか、プライベートな病院に進みたいのか、などを聞かれます。面接に来る多くのレジデントは、行儀よく振る舞い、当たり障りのない返答をする(研究に興味がなくても、興味があると答えるなど)ので、面接だけで判断するのは難しいことが多いです。プログラムも、さまざまな手を使って候補者を判断します。候補者が在籍するレジデントプログラムに知り合いがいれば、連絡を取り、その候補者がどのような人柄なのかを調べます。LOR(Letter of Recommendation)と呼ばれる推薦状も重要です。この手紙は、基本的に、候補者には読めないように推薦者からプログラムに直接送られます。実際に、候補者のことをあまりよく書いていない推薦状も存在しますから、候補者はどの指導医に推薦状を書いてもらうかを慎重に選ばなければなりません。循環器フェローシップの面接に来るような米国人は、アイビーリーグやStanford、UCLAなどの有名大学出身でエリートが多いですから、自信に満ち溢れていますし、話も上手です。そんな候補者と比べて、英語が母国語でない私は、話がうまく弾むかすら不安でした。ですから、面接の際は、プログラムにいる指導医をあらかじめ調べ、その先生の論文などに目を通し、話が弾むように準備しました。12月に発表されるマッチング提出された書類や面接を基に、プログラムが候補者をランキングします。マッチングに際しては、プログラムが直接、候補者にランクを伝えることは禁止されているはずですが、実際には、プログラム側が来てほしい候補者に「あなたを高く評価している」というメールを送ることがほとんどです。最終的に、12月にマッチングが発表になります。マッチしなかった場合、hospitalistやchief residentなどになり、翌年再チャレンジする人もいます。ただ、われわれのようなFMGおよびvisa保有者にとって、希望のフェローシップに進むのは容易ではありませんし、visaで米国に滞在している場合、アンマッチは帰国を意味します。アンマッチ後、どうしても米国に残りたい場合、chief residentやその他のサブスペシャルティーに進むこともできますが、必ずしもうまくいくとは限りません。

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摂食障害の重症度把握と診断ツールを検証

 夜間摂食症候群(night eating syndrome:NES)は、一般的に重症度尺度である夜間摂食アンケート(Night Eating Questionnaire:NEQ)を用いて評価するが、これはすべての診断基準を評価するものではない。また、夜間栄養診断アンケート(Night Eating Diagnostic Questionnaire:NEDQ)は、すべての診断基準を評価することができるが、完全に検証されたわけではない。米国・ワグナー大学のLaurence J Nolan氏らは、NEQおよびNEDQの妥当性を検証した。Appetite誌オンライン版2016年12月23日号の報告。 対象は、学生254人、一般集団468人。NEQ、NEDQ、ピッツバーグ睡眠質問票、ツァンうつ病自己評価尺度(Zung Self-report Depression Scale:SDS)、Yale Food Addiction Scale(YFAS)を用いて評価を行った。またNESの他の研究と同様に、NEDQスコアの上昇は、うつ病の増加、睡眠の質の低下、食品依存(food addiction)、BMIと関連するかも検討した。 主な結果は以下のとおり。・NEQおよびNEDQのスコアは有意に正の相関を示し、有効性が実証された。・NESの診断においてNEQとNEDQの結果は一致していた。NEDQによって診断された患者の56%がNEQの閾値スコアを満たしていた。・ NEQの閾値スコアを満たした33例中5例だけがNEDQ診断基準を満たしていなかった。・高NEDQは、高SDS、YFASスコア、睡眠の質の低下と関連していた。・NEDQによるFull-syndrome NESは、一般集団ではBMIが高かったが、学生では認められなかった。・他のすべてのアンケートのスコアは、一般集団のほうが高かった。・NEQとNEDQの診断の相違は、アンケートの構成の違いによるものであり、診断のために設計されたNEDQに起因する可能性がある。 著者らは「NEQは、NESの重症度を診断するため便利であるのに対し、NEDQは臨床的に有用な診断ツールである」としている。関連医療ニュース 女子学生の摂食障害への有効な対処法 神経性過食症と境界性パーソナリティ障害との関連 拒食に抗精神病薬、その是非は

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LG入りヨーグルトがアスピリン誘発小腸傷害を軽減

 アスピリン誘発小腸傷害に対するプロバイオティクスの効果はまだ十分に検討されていない。今回、東海大学の鈴木孝良氏らが実施したプラセボ対照二重盲検比較試験で、ラクトバチルスガセリOLL2716(LG)が、アスピリン誘発小腸傷害の軽減および消化管症状の緩和に有用であることが示された。Digestion誌2017年1月号に掲載。 本試験では、アスピリンを1ヵ月以上投与された64例の患者が登録され、LG入りヨーグルト(112mL)またはプラセボを1日2回6週間摂取した。小腸傷害はヨーグルト摂取の前後のカプセル内視鏡検査によって評価した。また、患者の症状への効果についても、摂取前後にFSSG(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)とGSRS(Gastrointestinal Symptom Rating Scale)の質問票を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の患者特性および小腸粘膜傷害の数について、2群間に有意な差はなかった。・LG群ではプラセボ群に比べ、6週間後の小腸粘膜傷害や発赤が有意に少なかった(p<0.01)。・FSSGおよびGSRSのスコアもLG群では有意に改善し、プラセボ群では改善しなかった。

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