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精神疾患患者の死亡率は減少しているのか

 双極性障害や統合失調症は、一般集団と比較して死亡率の増加と関連している。国際的には、この死亡率を減少させることに重点が置かれている。英国・ロンドン大学のJoseph F. Hayes氏らは、双極性障害および統合失調症患者と一般集団の死亡率の差が減少したかを調査した。The British journal of psychiatry誌オンライン版2017年7月6日号の報告。 本研究は、2000~14年のプライマリケア健康医療電子記録を用いて、双極性障害または統合失調症と診断されたすべての患者と一般集団を比較したコホート研究。主要アウトカムは、全死因死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者(調整HR:1.79、95%CI:1.67~1.88)および統合失調症患者(調整HR:2.08、95%CI:1.98~2.19)の死亡率は、上昇していた。・双極性障害患者の調整HRは、2006年から14年にかけて0.14/年(95%CI:0.10~0.19)増加した。・統合失調症患者の調整HRは、2004年から10年にかけて0.11/年(95%CI:0.04~0.17)と徐々に増加し、2010年以降0.34/年(95%CI:0.18~0.49)と急速に増加した。 著者らは「双極性障害および統合失調症患者と一般集団の死亡率の差は、拡大している」としている。■関連記事抗精神病薬使用は長期死亡リスクに悪影響なのか統合失調症患者の突然死、その主な原因はうつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は

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GLP-1製剤、パーキンソン病の運動機能を改善/Lancet

 GLP-1受容体作動薬エキセナチドを中等度のパーキンソン病患者に投与すると、運動機能が改善する可能性があることが判明した。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDilan Athauda氏らが、62例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月3日号で発表した。エキセナチド2mgを48週間投与、60週後の運動機能変化を比較 Athauda氏らは2014年6月18日~2015年3月13日にかけて、25~75歳の中等度パーキンソン病の患者62例を無作為に2群に分け、通常服用している薬に加え、一方にはエキセナチド2mgを(32例)、もう一方にはプラセボを(30例)、それぞれ週1回48週にわたり皮下投与した。その後、試験薬を中止し12週間のウォッシュアウト後(60週時点)に最終評価を行った。 被験者は、Queen Square Brain Bank基準で特発性パーキンソン病の診断を受け、ドーパミン療法によるウェアリング・オフ現象を伴い、治療下の症状はホーン・ヤール重症度分類で2.5以下だった。患者および研究者は、治療割り付けについてマスキングされていた。 主要アウトカムは、実質的に非薬物治療下と定義される時点(60週)で評価したベースライン(0週)からの、国際運動障害学会が作成したパーキンソン病統一スケール「MDS-UPDRS」の運動機能サブスケール・パート3の変化値に関する両群間の補正後差だった。エキセナチド群で運動機能サブスケールは1.0ポイント改善 有効性解析には、無作為化後の追跡評価を完遂したエキセナチド群31例、プラセボ群29例が含まれた。 0~60週時のMDS-UPDRS・パート3スコアの変化値は、エキセナチド群が-1.0点(95%信頼区間[CI]:-2.6~0.7)と改善を示したのに対し、プラセボ群は2.1点(同:-0.6~4.8)と悪化が示された。両群の補正後平均差は-3.5点(同:-6.7~-0.3、p=0.0318)で有意差が認められた。 有害事象は、注射部位反応と消化器症状の発現が両群で最も頻度が高かった。重篤な有害事象は、エキセナチド群で6件、プラセボ群では2件報告されたが、いずれも試験による介入とは関連がないと判断された。 なお結果について著者は、「エキセナチドの陽性効果は、投与期間を過ぎてからも示されたが、エキセナチドがパーキンソン病の病態生理に影響を及ぼすのか、それとも単に持続的な症候性の作用が引き起こされただけなのかは不明である」と述べ、長期の検討を行い、エキセナチドの日常的な症状への効果を調べる必要があるとしている。

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遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-712

 インフルエンザの流行の抑制を期待されているワクチンの1つが、遺伝子組み換えワクチンである。遺伝子組み換え法は、ベクターを用いてウイルスの遺伝子を特殊な細胞に挿入し、ウイルスの抗原性に関わる蛋白を細胞に作らせ精製する方法である。この方法では、卵の蛋白成分、ホルムアルデヒド、抗菌薬、防腐剤を含まないワクチンを製造することができる。また、鶏卵培養法では6ヵ月間かかる製造期間が、6~8週間に短縮できることが大きな利点となる。 本研究は、2014~15シーズンに行われた、遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチン(RIV4)と鶏卵培養4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4)の有効性を比較した第III-IV相のランダム化二重盲検実薬対照試験である。50歳以上の成人を対象とし、急性疾患に罹患している患者や免疫抑制治療中の患者は除外された。その結果、per-protocol解析を行えた8,604例において、RT-PCRで確定診断されたインフルエンザ発症率は、RIV4接種群が2.2%、IIV4接種群が3.2%であり、インフルエンザ様疾患が確認された割合はRIV4接種群がIIV4接種群より30%低かった(95%信頼区間:10~47、p=0.006)。修正intention-to-treat集団で行った有効性の事後解析でも同様の結果であった。 本研究は、遺伝子組み換えワクチンと既存のインフルエンザワクチンである鶏卵培養不活化ワクチンを、head-to-headで臨床効果を比較したものである。鶏卵培養で製造されるワクチンでは、製造過程でインフルエンザの抗原性に関わるヘマグルチニン(HI)をコードする遺伝子の変異が生じることでワクチンの有効性が低下する可能性が指摘されており、遺伝子組み換えワクチンの有効性が勝る一因になっていると推察される。 本研究の対象は50歳以上の成人であり、75歳以上の割合は12%程度であった。インフルエンザワクチンの恩恵を受けやすい高齢者、小児、妊婦、免疫不全者などに対する遺伝子組み換えワクチンの有効性や安全性については本試験では評価できない。 研究が実施された2014~15シーズンは、インフルエンザA/H3N2の流行株とワクチン株の不一致がみられたシーズンであった。このようなシーズンでより有効性を示したことは評価できるが、流行株とワクチン株が一致した場合でも本試験と同様の結果が得られるのかはわからない。B型インフルエンザに対しては有効性に差がなかったという結果も興味深い。遺伝子組み換えワクチンは利点の多いワクチンでもあるため、安全性の評価も含めて、今後さらなる研究が待たれる。

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心血管への悪影響の懸念を払拭したインスリン デグルデク(解説:小川 大輔 氏)-713

 持効型インスリンであるグラルギンの登場により、糖尿病の治療は以前よりも安全に、また十分に行えるようになった。そして、より作用時間の長いインスリン デグルデクは、さらに低血糖を回避しながら確実に血糖コントロールを行う手段として期待されていた。 デグルデクは日本では2012年に承認されたが、米国では2013年にFDAが心血管への悪影響の懸念があるとして承認を見送った経緯がある。FDAからの「宿題」に対して行われた試験がこのDEVOTE試験である。 心血管疾患または慢性腎臓病を有する50歳以上、または心血管危険因子を有する60歳以上の2型糖尿病患者7,637例を対象とした、ランダム化二重盲検試験であり、標準治療にデグルデクを追加する群またはグラルギン U100を追加する群に1:1でランダムに割り付け、空腹時血糖値71~126mg/dLを目標に治療を行い、主要評価項目の発生が633例以上に達するまで継続する試験デザインであった。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合心血管イベント(3ポイントMACE)が最初に発現するまでの時間である。また副次評価項目は重大な低血糖の発現件数とされた。 主要評価項目である3ポイントMACEのイベント発生は、デグルデク群とグラルギン群の間で有意差は認められず、グラルギン U100に対するデグルデクの非劣性が示された。副次評価項目に関しては両群間に有意差が認められ、デグルデク群はグラルギン U100群に比べて重大な低血糖の発現件数が有意に低下した。 グラルギン U100は、2012年に発表されたORIGIN試験で心血管への安全性が証明されている1)。今回の試験結果により、心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において、デグルデクはグラルギン U100に比べて心血管イベント発生に関して非劣性が確認され、当初FDAから疑問を呈されていた心血管への悪影響の懸念はようやく払拭されたことになった。ただ、心血管イベントのリスクが低い糖尿病患者での安全性、またより長い期間使用した場合の安全性(DEVOTEの試験期間は約2年)はまだ不明であり、今後の検討に期待したい。■参考1) ORIGIN Trial Investigators, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 319-328.

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早期改善が最も期待できる抗うつ薬は

 抗うつ薬治療の最初の2週間でうつ症状を早期に改善することは、うつ病患者のその後の良好な治療アウトカムを予測するレジリエンスシグナルであるといわれている。しかし、早期改善の予測値は研究間で異なっており、異なる抗うつ薬の使用が影響している可能性がある。ドイツ・ヨハネス・グーテンベルク大学マインツのStefanie Wagner氏らは、うつ病患者における将来の治療反応や寛解に対する早期改善の予測値を評価し、早期改善の可能性が最も高い抗うつ薬を特定するため検討を行った。Journal of psychiatric research誌オンライン版2017年7月4日号の報告。 うつ病患者に対する早期改善効果について、抗うつ薬とプラセボまたは他の抗うつ薬との単独療法を比較したランダム化比較試験17件より、成人うつ病患者1万4,779例を抽出した。治療2週間後に20%/25%超の症状改善を早期改善と定義した。 主な結果は以下のとおり。・早期改善は、抗うつ薬群で62%(範囲:35~85%)、プラセボ群で47%(範囲:21~69%)であった。・早期改善は、高感度(85%、95%CI:84.3~85.7)および低~中等度の特異性(54%、95%CI:53.1~54.9)で、治療5~12週間後の治療反応および寛解を予測した。・早期改善患者は、非改善者と比較し、エンドポイントにおける治療反応率が8.37倍(6.97~10.05)高く、寛解率は6.38倍(5.07~8.02)高かった。・早期改善率が最も高かった薬剤は、ミルタザピンおよび三環系抗うつ薬であった。 著者らは「本知見は、抗うつ薬治療の初期段階における治療決定に重要である。早期治療決定の有効性を検討する試験をさらに行うべきである」としている。■関連記事うつ病の治療抵抗性と寛解を予測する因子とはうつ病の寛解率、職業で差があるかうつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は

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IgA腎症への経口ステロイドで感染症リスク増/JAMA

 IgA腎症で蛋白尿1g/日以上の患者において、経口メチルプレドニゾロンの服用は重篤有害事象のリスクを、とくに感染症のリスクを増大することが、国際多施設共同無作為化試験「TESTING」の結果、示された。筆頭著者の中国・北京大学第一病院のJicheng Lv氏らは、「結果は潜在的な腎ベネフィットと合致しているが、試験が早期終了となったため、治療ベネフィットについて最終的な結論を示すことはできない」としている。ガイドラインでは、IgA腎症および持続性蛋白尿を認める患者に対しコルチコステロイドの使用を推奨しているが、その影響は明らかになっていなかった。JAMA誌2017年8月1日号掲載の報告。有効性、安全性についてプラセボ対照無作為化試験 TESTING(Therapeutic Evaluation of Steroids in IgA Nephropathy Global)試験は、オーストラリア・シドニー大学の研究部門(The George Institute for Global Health)がコーディネートしたマネジメント委員会監督の下で、中国、オーストラリア、インド、カナダ、マレーシアの最高100施設で実行するようデザインされた。研究者主導、二重盲検プラセボ対照で、血圧コントロールやレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬投与など適切な支持療法を受けるIgA患者における、経口メチルプレドニゾロン服用の腎アウトカムへの重大リスクを検討した。 適格患者(蛋白尿1g/日以上、eGFR値20~120mL/分/1.73m2、RAS阻害薬で血圧をコントロール)を、経口メチルプレドニゾロン(0.6~0.8mg/kg/日;最大用量48mg/日)または適合プラセボを受ける群に1対1の割合で無作為に割り付け、2ヵ月間投与。その後4~6ヵ月をかけて漸減し離脱に至った。 主要アウトカムは、末期腎不全、腎不全による死亡、またはeGFR値40%低下の複合とした。また、事前に規定した安全性アウトカムは、重症感染症、糖尿病の新規発症、消化管出血、骨折/骨壊死、心血管イベントの発生であった。ステロイド投与群で重症感染症が過剰に発生、試験は中止に 試験は、必要サンプルサイズ750例、主要アウトカム発生335例、平均追跡期間は5年と推算され開始されたが、262例が無作為化を受け、追跡期間中央値2.1年時点で、重篤有害事象の発生が過剰に認められたため中止となった。 262例(メチルプレドニゾロン群136例、プラセボ群126例)は、平均年齢38.6歳(SD 11.1)、女性96例(37%)、eGFR値59.4mL/分/1.73m2、蛋白尿2.40g/日であった。 報告された重篤有害事象は24例で、メチルプレドニゾロン群で20例(14.7%)が報告された。プラセボ群は4例(3.2%)で(p=0.001、リスク差:11.5%[95%信頼区間[CI]:4.8~18.2])、メチルプレドニゾロン群の有意な増大は、重症感染症の過剰な発生(11例[8.1%、2例は死亡]vs.0例)によるものであった(リスク差:8.1%[95%CI:3.5~13.9]、p<0.001)。 主要複合腎アウトカムの発生は、メチルプレドニゾロン群では8例(5.9%)であったのに対し、プラセボ群では20例(15.9%)報告された(ハザード比:0.37[95%CI:0.17~0.85]、リスク差:10.0%[95%CI:2.5~17.9]、p=0.02)。

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血管拡張性ショックにアンジオテンシンIIは有用か/NEJM

 高用量の従来の昇圧薬に反応しない血管拡張性ショック患者に対し、合成ヒトアンジオテンシンII薬(LJPC-501)が血圧を効果的に上昇したことが、米国・クリーブランドクリニックのAshish Khanna氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATHOS-3」の結果で示された。高用量の昇圧薬に反応しない血管拡張性ショックは、高い死亡率と関連しており、本検討の背景について著者は次のことを挙げている。現在利用可能な昇圧薬はカテコールアミン(交感神経刺激薬)とバソプレシンの2種のみで、いずれも高用量では毒性作用が強く治療領域が限られている。また、アンジオテンシンII薬は、低血圧発症時のホルモンのはたらきをヒントに開発が進められ、カテコールアミンとバソプレシンへの追加投与で有用性を検討したパイロット試験で、カテコールアミンの用量減少が可能なことが示唆されていた。NEJM誌2017年8月3日号(オンライン版2017年5月21日号)掲載の報告。従来の昇圧薬に反応しない患者にアンジオテンシンIIまたはプラセボを投与 試験は2015年5月~2017年1月に、9ヵ国(北米、オーストララシア、欧州)75ヵ所のICUで実施された。ノルエピネフリン0.2μg/kg/分超または他の昇圧薬を同等の用量で投与されている血管拡張性ショック患者を、アンジオテンシンII静注群もしくはプラセボ静注群に無作為に割り付け検討した。なお無作為化では、スクリーニング時の平均動脈圧による層別化(65mmHg未満または65mmHg以上)、APACHE IIスコアによる層別化(30以下、31~40、41以上[スコア範囲:0~70、高スコアほど疾患重症度が高いことを示す])も行われた。 主要エンドポイントは、静注開始後3時間時点の平均動脈圧への効果で、治療中の昇圧薬の増量なしで、ベースラインから10mmHg以上の上昇または75mmHg以上に上昇と定義した。また、副次有効性エンドポイントとして、ベースライン評価から48時間までの心血管関連の臓器機能不全評価(SOFA)スコア(スコア範囲:0~4、高スコアほど重度)の変化を、さらに総SOFAスコア(スコア範囲:0~20、高スコアほど重度)を評価した。安全性については、重篤有害事象、有害事象関連の投薬中断、全有害事象、全死因死亡を、7日および28日時点で評価した。静注開始後3時間時点の昇圧、アンジオテンシンII群で有意に多く達成 合計344例の患者が無作為化を受け、割り付け治療を受けなかった23例を除外した321例(アンジオテンシンII群163例、プラセボ群158例)が解析に包含された。 主要エンドポイントを達成したのは、アンジオテンシンII群114/163例(69.9%)、プラセボ群37/158例(23.4%)で、アンジオテンシンII群の患者が有意に多かった(オッズ比:7.95、95%信頼区間[CI]:4.76~13.3、p<0.001)。 48時間時点のSOFAスコア改善の平均値は、アンジオテンシンII群がプラセボ群よりも有意に大きかった(-1.75 vs.-1.28、p=0.01)。 重篤有害事象は、アンジオテンシンII群で60.7%、プラセボ群で67.1%報告された。28日間の死亡発生は、アンジオテンシンII群75/163例(46%)、プラセボ群85/158例(54%)であった(ハザード比:0.78、95%CI:0.57~1.07、p=0.12)。 なお試験結果は限定的であるとして著者は、割り付け方法に問題があった可能性、サンプルサイズが小さいこと、死亡への影響を評価するには検出力が不足していること、追跡期間が28日と短いことなどを挙げている。結論として、アンジオテンシンIIの静注で血圧を上昇し、高用量の昇圧薬投与を受ける血管拡張性ショック患者において、カテコールアミン投与を減らすことができたと述べている。

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グラルギンU100使用中の1型糖尿病患者は低血糖を回避するためにデグルデクにSWITCHすべきか?(解説:住谷 哲 氏)-711

 DCCTおよびその後の延長試験であるEDICにおいて、厳格な血糖管理が1型糖尿病患者の細小血管障害および長期的には動脈硬化性心血管病(ASCVD)さらには総死亡を減少させることが明らかにされた1)。つまり1型糖尿病患者においては可能な限り正常血糖を目指す厳格なコントロールが望ましいといえる。しかし厳格な血糖管理は低血糖とのtrade-offであり、現実には可能な限り低血糖(とくに第三者の介助を必要とする重症低血糖 severe hypoglycemia)を生ずることなく血糖をコントロールすることが目標となる。将来的にclosed-loop insulin delivery systemまたは膵β細胞の再生が現実となればこの問題は解決するであろうが、当面は基礎インスリン(basal insulin)と食事インスリン(bolus insulin)からなるbasal-bolus therapy(BBT)を用いて、インスリン量を患者に応じて調節していくことになる。 本試験はより半減期の長い基礎インスリンであるデグルデクが、最も普及している基礎インスリンであるグラルギンU100に比べて低血糖が少ないかを検証したものである。理論上はグラルギンU100と比較して半減期が長く、より平坦な血糖降下作用を示すデグルデクのほうがより低血糖が少ないと考えられる。試験デザインは二重盲検無作為化クロスオーバー非劣性試験であり、クロスオーバー試験の弱点であるcarryoverの影響を最小にするように工夫された。主要評価項目は重症低血糖とBG<56mg/dLを伴う症候性低血糖の複合評価項目とされた。さらに2次評価項目は夜間低血糖(午前0時から6時までに生じた主要評価項目)である。 その結果、グラルギンU100に対するデグルデクの主要評価項目のrate ratio(RR)は0.89(95%CI:0.85~0.94、優位性検定p<0.001)であり、デグルデク群で有意に少なかった。同様に重症低血糖、夜間低血糖はそれぞれ0.65(0.48~0.89、優位性検定p=0.007)、0.64(0.56~0.73、優位性検定p<0.001)であり、両者ともにデグルデク群で有意に少なかった。 RCTの結果を実臨床に適用するときに常に問題となるのが一般化可能性 generalizabilityの問題である。おそらく本試験も例外ではないと思われる。対象患者は(1)1年以内に重症低血糖の既往がある、(2)腎機能異常がある(eGFR:30~59mL/min/1.73m2)、(3)低血糖無自覚症がある、(4)罹病期間が15年以上、(5)12週間以内に低血糖発作がある、以上のいずれかに該当する、低血糖を生じやすい患者が選ばれている。さらにTreat to targetを用いて、空腹時血糖が71~90mg/dL、毎食前血糖が71~108mg/dLになるようインスリンの増量が必要とされた。この血糖管理目標はきわめて厳格であり、あえて低血糖が容易に生じやすい状況下で試験が行われたともいえる。試験終了時のFPGがデグルデク、グラルギンU100両群ともに>130mg/dLであったことからも、低血糖に阻まれてインスリンが目標血糖値を達成するまで増量できなかった可能性が示唆される。したがって、本試験で得られたのと同じ結果が、上述した(1)~(5)に該当しない患者に対して、より緩やかな目標血糖値に基づいてインスリン投与を実施した場合に、得られるかは明らかではない。しかし本試験は、デグルデクがグラルギンU100に比べて、より少ない低血糖で同様の血糖管理を達成可能であることを明らかにした。グラルギンU100使用中で低血糖の壁に阻まれて目標血糖値を達成できない患者に対しては、グラルギンU100からデグルデクへのSWITCHを考慮するのも選択肢の1つであると思われる。

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乳がん術後リンパ浮腫、弾性スリーブによる発症予防効果が明らかに

 乳がん関連リンパ浮腫(BCRL)は、手術後の大きな長期合併症の1つである。BCRLにおける圧縮治療の有効性については数多く報告があるが、圧縮衣服の術後予防を評価する無作為化比較試験はない。そこで、ポーランドSt. Lazarus Hospice のKatarzyna Ochalekらにより、術後の腫脹および乳がんに関連する腕リンパ浮腫の発生率を低下における軽度弾性スリーブの潜在的役割を評価することを目的とした研究が行われた。 同試験では、45例の女性患者を、術前に、圧縮クラス1(15~21mmHg)の丸編弾性スリーブの連日着用群(CG群) 23例と圧縮なしの対照群(NCG群)22例に、無作為に割り付けた。両群とも標準化された運動プログラムを受け、腕の体積を手術前および1、3、6、9、12ヵ月後に測定された。主な結果は以下のとおり。・手術後1ヵ月に腫脹の減少がみられたのはCG群でのみであった。 ・12ヵ月後、平均浮腫量は、NCG群で114.5mL増加、CG群では67.6mL減少した(p<0.001)。・CG群では、3、6、9、12ヵ月後の浮腫の有意な減少がみられた。・健康関連QOL(EORTC QLQ-C30)については、両群間で有意な差はみられなかった。 著者は、身体活動と15〜21mmHg弾性スリーブの組み合わせは、術後の腕の腫脹およびリンパ浮腫の発生を予防するための安全かつ効率的な選択肢となり得る、と結論付けている。

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第4回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院腫瘍化学療法外科、同大学院未来がん医療プロフェッショナル養成プラン、同大学院臨床腫瘍学分野、同大学院応用腫瘍学講座は、2017年10月1日(日)に、第4回「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、同院が地域がん診療連携拠点病院の活動の一環として、がんに関するさまざまなテーマで開催する公開講座の4回目となる。今回は『正しく知ろう!「化学療法」』をテーマに、化学療法の目的と効果、さまざまなサポートについて広く知ってもらうための内容となっており、各種ブース展示や体験コーナーなど、楽しく学べる企画が多数予定されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2017年10月1日(日)《セミナー》13:00~16:35 《ブース展示》12:00~17:00【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー2F 鈴木章夫記念講堂〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45現地キャンパスマップはこちら【参加費】無料(※参加申し込み不要)【テーマ】正しく知ろう!「化学療法」【予定内容】《セミナー》13:00~16:35 鈴木章夫記念講堂司会:坂下 博之氏(東京医科歯科大学大学院 臨床腫瘍学分野)13:00~13:05 開会挨拶 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長)13:05~13:30 講演1 「化学療法」ってどんなもの? 何のため? 石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科)13:30~14:00 講演2 最近話題の治療について、解説します(免疫療法/プレシジョンメディシン) 池田 貞勝氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター)14:00~14:20 医科歯科大のがん治療 update(1) 「がん疼痛の治療」の進歩と現状 野里 洵子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター)14:20~14:40 医科歯科大のがん治療 update(2) 大事です! 化学療法中の「口腔ケア」 古屋 純一氏(東京医科歯科大学歯学部附属病院 口腔ケア外来)14:40~15:00 休憩15:00~16:00 パネルディスカッション 化学療法をしながらの生活 《パネリスト》  石川 敏昭氏(同院 腫瘍化学療法外科)  橋爪 顕子氏(同院 がん化学療法看護認定看護師)  有本 正子氏(同院 臨床栄養部)  山田 麻記子氏(同院 腫瘍センター 社会福祉士)16:00~16:30 講演3 治療を受ける際の意思決定のサポート 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長)16:30~16:35 閉会挨拶 川﨑 つま子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部長)《ブース展示》 12:00~17:00 講堂前ホワイエ■がんと栄養・食事 (東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部)■お口の楽しみ、支えます (東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科)■ウィッグ・メイクを楽しもう! (アプラン東京義髪整形/マーシュ・フィールド)■在宅治療の味方 皮下埋め込みポートって何? (株式会社メディコン)■がん患者さんの家計・お仕事に関するご相談 (特定非営利活動法人 がんと暮らしを考える会)■がん患者と家族へのピアサポートの紹介 (特定非営利活動法人 がん患者団体支援機構)■看護師よろずミニ相談 (東京医科歯科大学医学部附属病院 専門・認定看護師チーム)■がん相談支援センター活用のすすめ (東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター)■「もっと知ってほしい」シリーズ冊子 (認定NPO法人 キャンサーネットジャパン)【お問い合わせ先】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45TEL:03-5803-4886(平日 9:00~16:30)【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科東京医科歯科大学大学院 臨床腫瘍学分野東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座東京医科歯科大学大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プラン【協力】認定NPO法人キャンサーネットジャパン【後援】東京医科歯科大学医師会東京都医師会/東京都第4回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座 詳細はこちら

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抗精神病薬に関する知識は治療効果に影響するか:慶應義塾大

 統合失調症患者における、処方された抗精神病薬の知識について、データは非常に限られている。また、処方された抗精神病薬に関する患者の知識が、服薬アドヒアランスに及ぼす影響についてはよくわかっていない。慶應義塾大学の長井 信弘氏らは、これらの関連について検討を行った。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2017年7月4日号の報告。 対象は、統合失調症(ICD-10)と診断された日本人外来患者81例。本研究のために開発した複数選択アンケートより、治療効果、種類および関連する神経伝達物質の観点から、患者に処方された主要な抗精神病薬に関する知識を評価した。各カテゴリにおいて、正確に回答した患者とそうでなかった患者の薬剤所有率(Medication Possession Ratios:MPR)を比較した。 主な結果は以下のとおり。・正確に回答した患者の割合は、抗精神病薬の効果30.9%、抗精神病薬の種類30.9%、関連する神経伝達物質7.4%と低かった。・正確に回答した患者とそうでなかった患者のMPRに差は認められなかった。 著者らは「この予備的結果から、抗精神病薬に関する患者の知識不足が示唆された。さらに、統合失調症患者において、処方された抗精神病薬に関する知識は、実際の服薬アドヒアランスに直接的に影響しない可能性を示唆している」としている。■関連記事統合失調症、服薬アドヒアランス研究の課題とは抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのかうつ病の再発を予測する3つの残存症状:慶應義塾大

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PDE5阻害薬で皮膚がんリスク増大か

 ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬とメラノーマとの関連が議論の的となっているが、米国・インディアナ大学のHuilin Tang氏らは、観察研究のメタ解析を行い、PDE5阻害薬の使用がメラノーマおよび基底細胞がんの発症リスク増加とわずかだが有意に関連していることを明らかにした。なお、結果について著者は、「潜在的な交絡因子のコントロールが一貫していない、異質性のある観察研究のみが解析対象となっていることに、研究の限界がある」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、PDE5阻害薬の使用とメラノーマとの関連を定量化する目的で、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of ScienceおよびClinicalTrials.govのデータベースを用い、2016年7月13日までに実施された研究を検索した。PDE5阻害薬と皮膚がんとの関連について、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行い、補正オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・5件の観察研究が組み込まれた。・PDE5阻害薬の使用は、不使用と比較してメラノーマ(OR:1.12、95%CI:1.03~1.21)および基底細胞がん(OR:1.14、95%CI:1.09~1.19)の発症リスク増加とわずかではあるが有意に関連していた。・扁平上皮がんとは関連していなかった。・事前に設定された因子(PDE5阻害薬の用量、研究デザインおよび研究地域)はいずれも、メラノーマのリスクに関する結果に有意な影響を及ぼさなかった(p>0.05)。・感度解析においても同様の結果が確認された。

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進行子宮頸がんのベバシズマブ併用、第III相試験の最終解析/Lancet

 米国・カリフォルニア大学のKrishnansu S. Tewari氏らが、進行子宮頸がん患者を対象に血管新生阻害薬ベバシズマブ併用の有効性と安全性を評価した「米国婦人科腫瘍グループ(GOG)240試験」の、全生存期間(OS)と有害事象に関する最終解析結果を報告した。2012年の第2回中間解析でOSの改善が認められ、その結果に基づき2014年8月14日、米国で進行子宮頸がんに対するベバシズマブの使用が承認されたが、今回の最終解析においても、ベバシズマブ併用の有用性が全生存曲線により示され、追跡期間が延長しても持続していることが確認された。また、ベバシズマブ投与中に増悪しベバシズマブの投与を中止しても、その後の生存期間が化学療法単独療法中止後より短縮するという負のリバウンド作用は認められなかった。Lancet誌オンライン版2017年7月27日号掲載の報告。化学療法へのベバシズマブ追加の有効性を2×2要因デザインで評価 GOG240試験は、米国・カナダ・スペインの81施設にて実施された第III相無作為化非盲検比較試験。対象は、転移あり(Stage IVB)または治療抵抗性または再発の子宮頸がん患者で、シスプラチン(1日目または2日目に50mg/m2)+パクリタキセル(1日目に135mg/m2または175mg/m2)投与群、トポテカン(1~3日目に0.75mg/m2)+パクリタキセル(1日目に175mg/m2)投与群、および各化学療法にベバシズマブ(1日目に15mg/kg)を併用する群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、疾患の増悪や許容できない毒性の発現、患者の同意撤回または完全奏効に達するまで21日を1サイクルとして治療を継続した。なお、割り付けは、GOG PS(0 vs.1)、放射線増感剤としてのプラチナ製剤治療歴(有 vs.無)、病勢(再発/治療抵抗性 vs.転移あり)で層別化した。主要評価項目は、OS(intention-to-treat解析)および有害事象(解析対象は治療を受けた全患者)とした。 2009年4月6日~2012年1月3日に452例が登録され(化学療法単独群225例[50%]、ベバシズマブ併用群227例[50%])、2014年3月7日までに348例が死亡、最終解析のデータカットオフ基準(被験者450例、死亡346例)は満たしていた。最終解析でも化学療法+ベバシズマブ併用群のOS延長が持続 ベバシズマブ併用群では、化学療法単独群と比較しOSの有意な改善が持続していることが認められた(ベバシズマブ併用群16.8ヵ月 vs.化学療法単独群13.3ヵ月、ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.62~0.95、p=0.007)。骨盤内放射線療法歴がない患者の最終OSはそれぞれ24.5ヵ月および16.8ヵ月であった(HR:0.64、95%CI:0.37~1.10、p=0.11)。増悪後のOSは、ベバシズマブ併用群と化学療法単独群で有意差は確認されなかった(8.4ヵ月 vs. 7.1ヵ月、HR:0.83、95%CI:0.66~1.05、p=0.06)。 瘻孔(全Grade)は、ベバシズマブ併用群220例中32例(15%)、化学療法単独群220例中3例(1%)にみられた。全例が放射線療法歴を有する患者であった。Grade 3の瘻孔は13例(6%)vs.1例(<1%)であった。緊急手術、敗血症または死亡に至った瘻孔はなかった。

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急性期脳梗塞の血栓回収療法、吸引型 vs.ステント型/JAMA

 前方循環脳梗塞患者における吸引型デバイスを用いた血栓回収は、ステントリトリーバーを用いた場合に比べて、再開通率の向上をもたらさなかったことが、ASTER試験(The Contact Aspiration vs Stent Retriever for Successful Revascularization study)の結果、明らかとなった。フランス・ベルサイユ大学のBertrand Lapergue氏らが報告した。これまで、急性期脳梗塞患者において、吸引型デバイスによる血栓回収(a direct aspiration first pass technique[ADAPT]またはcontact aspiration)とステントリトリーバーによる血栓回収の有用性を比較した無作為化試験からは、十分なエビデンスを得られていなかった。JAMA誌オンライン版2017年8月1日号掲載の報告。吸引型およびステント型血栓回収デバイスの有効性と安全性を比較 ASTER試験は、2015年10月~2016年10月に、フランスの総合脳卒中センター8施設で実施された無作為化非盲検臨床試験(評価者盲検)である。前方循環系の主幹動脈閉塞を有する発症後6時間以内の急性期脳梗塞患者を対象に、機械的血栓除去術の施行前に第1選択として、吸引型デバイス使用群(192例)とステントリトリーバー使用群(189例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、すべての血管内治療が終了した時点で修正Thrombolysis in Cerebral Infarction(TICI)スコアが2bまたは3の良好な再開通が得られた患者の割合(再開通率)とし、副次評価項目は、90日後の修正Rankin Scale(mRS)スコアの全体的な分布で評価される障害の程度、24時間後のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアの変化、90日後の全死因死亡率、および治療関連の重篤な有害事象などで、intention-to-treat解析が実施された。再開通率、臨床的有効性および有害事象に両群で有意差なし 381例(平均年齢69.9歳、女性174例[45.7%])が割り付けられ、このうち363例(95.3%)が試験を完遂した。発症から動脈穿刺までの時間(中央値)は、227分(四分位範囲:180~280)であった。 主要評価項目である再開通率は、吸引型デバイス群85.4%(164例)に対し、ステントリトリーバー群は83.1%(157例)であった(オッズ比:1.20、95%信頼区間[CI]:0.68~2.10、p=0.53、群間差:2.4%、95%CI:-5.4~9.7)。また、臨床的有効性アウトカム(24時間後のNIHSSスコアの変化、90日後のmRSスコア)や有害事象は、両群間で有意差を認めなかった。〔8月25日 記事の一部を修正いたしました。〕

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BRCA1/2変異保有者における乳がん、卵巣がんおよび対側乳がん発症リスクに関する大規模研究(解説:矢形 寛 氏)-710

 本研究は欧米の3つのコンソーシアムに登録されているBRCA1/2変異保有者における前向き観察研究であり、遺伝カウンセリングを行ううえで非常に参考になるものである。今まではメタ分析(Chen S, et al. J Clin Oncol. 2007;25:1329-1333.)あるいは英国の前向き研究(Mavaddat N, et al. J Natl Cancer Inst. 2013;105:812-822.)の結果を用いていたが、今後はより規模が大きく精度の高い本研究の結果を活用したい。 乳がん、卵巣がん、対側乳がんの発症リスクを長期間にわたって前向きに検討しており、リスク低減手術などの影響をできるだけ排除している。また、年齢によるがん発症リスクの違いを示しているが、むしろ年齢によってそれほど異ならないことに驚いた。さらに変異部位ごとのがん発症率の違いだが、あるとはいってもその差は小さい。家族歴の有無によっても、がん発症リスクに違いはあるがやはりわずかであり、家族歴の正確性が低い場合にはまったくあてにならない。したがって家族歴も、方針の決定には大きな影響を及ぼさないのではないか。

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抗うつ薬投与下での運転、その安全性は

 ドイツ・ルートヴィヒマクシミリアン大学のAlexander Brunnauer氏らは、抗うつ薬の自動車運転パフォーマンスへの影響に関する実験的および臨床的研究をレビューした。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2017年7月17日号の報告。 PubMedデータベースより、1980~2016年に発表された研究をシステマティックに検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・本レビューには、28研究が抽出されたが、抗うつ薬投与患者の自動車運転パフォーマンスを調査した研究は5件のみであった。・ミアンセリンを除く大部分の三環系、四環系抗うつ薬は、自動車運転パフォーマンスに重大な悪影響を及ぼし、亜慢性期後の使用で減弱した。・SSRIおよびベンラファキシンやミルナシプランなどのSNRIは、自動車運転パフォーマンスに影響を及ぼさなかった。・トラゾドンは、用量依存的に急性の影響を有すると考えられる。・ミルタザピンの急性期使用は、夜間投与を行った場合に影響が認められたが、低用量または反復投与後の場合、健常被験者においては認められなかった。・アルコールによる付加的効果は、鎮静系の抗うつ薬において最も顕著であった。・多くの患者において、自動車運転技術に対する新規抗うつ薬治療のメリットが認められると考えられる。 著者らは「自動車運転パフォーマンスに関して、どの抗うつ薬治療が患者にとって最も有用かという課題を解明するためには、より多くの患者による研究が必要である」としている。■関連記事自動車事故リスク、うつ病や抗うつ薬ではどうか睡眠薬使用は自動車事故を増加させているのか車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は

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ニボルマブ、MSI-H転移性大腸がんに承認/FDA

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY/本社:米国ニューヨーク/CEO:ジョバンニ・カフォリオ)は2017年8月1日、米国食品医薬品局(FDA)が、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療後に病勢進行した高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の転移性大腸がん(mCRC)の成人および小児(12歳以上)患者の治療薬として、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)を承認したことを発表した。この適応は、奏効率(ORR)および奏効期間に基づき、迅速承認された。この適応の承認の継続条件は、検証試験において臨床的有用性を証明し記載すること。推奨用量は240mgで、病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで、2週間ごとに60分以上かけて静脈内投与する。 CheckMate-142試験では、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療歴を有する患者(74例中53例)において、ニボルマブの投与により28%(95%CI:17~42、53例中15例)の奏効が認められた。完全奏効(CR)は1.9%(53例中1例)、部分奏効(PR)は26%(53例中14例)であった。これらの奏効患者における奏効期間中央値は未達(2.8+~22.1+ヵ月)であった。登録された全患者では、ニボルマブのORRは、32%(95%CI:22~44、74例中24例)であり、CRは2.7%(74例中2例)、PRは30%(74例中22例)であった。■参考ブリストル・マイヤーズ スクイブ(米国)ニュースリリースCheckMate-142試験(Clinical Triakls.gov)■「MSI-H」関連記事 いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか

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ADHD児への併用療法や抗精神病治療の傾向

 ADHDと新規に診断された小児の治療軌跡の特徴を明らかにするため、米国・フロリダ大学のAlmut G. Winterstein氏らが検討を行った。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2017年7月5日号の報告。 1999~2006年の米国28州のメディケイド(公的医療保険制度)プログラムより、3~18歳の請求記録を用いた。向精神薬使用と精神疾患の診断が6ヵ月以上なく、新規にADHD(ICD-9-CM:314.00)と診断された小児が、コホート研究に登録された。向精神薬多剤併用(3種類以上の使用)、抗精神病薬、抗てんかん薬の使用を評価するため、5年間フォローアップを行った。混合効果ロジスティック回帰を用いて、社会人口統計学的要因で調整し、ADHD診断およびフォローアップ時の年齢を関数とし、各薬剤の使用アウトカム率をモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・コホート対象患者1万6,626例中、診断1年後に1回以上各薬剤が投与されていた患者の割合は、神経刺激薬79.2%、抗うつ薬33.2%、αアゴニスト23.1%、向精神薬多剤併用25.3%であった。・1~5年目までに、抗精神病薬は7.1→14.7%、抗てんかん薬は4.0→7.9%、向精神薬多剤併用は8.5→13.4%に増加したが、この増加はADHD診断時の年齢が3~9歳の小児に限られていた。・3歳でADHDと診断された小児は、各アウトカムにおいて最も有意な増加を示した(各々、OR:1.80、[95%CI:1.36~2.38]、1.85[1.38~2.47]、2.14[1.45~3.16])。・また、向精神薬多剤併用療法が行われた9,680人年のうち39.1%は、ADHD以外の精神医学的診断を受けていなかった。 著者らは「向精神薬多剤併用や抗精神病薬、抗てんかん薬の使用は、フォローアップの年ごとに増加していた。これは、ADHD診断時の年齢によって強く影響され、未就学児では大きく増加したが、年齢が上がるとこの対応はみられなかった。それは、付随する精神障害を医師が診断することによって、部分的にのみ説明可能であった」としている。■関連記事自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのか母親の体格がADHD、自閉症リスクと関連か

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乳がん関連リンパ浮腫リスクに影響する因子

 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)は、乳がん治療中の女性にとって重大な合併症である。米国・メイヨークリニックのToan T. Nguyen氏らが大規模集団コホート研究でBCRL発症とリスク因子を調べたところ、化学療法、放射線療法、腋窩リンパ節郭清(ALND)、進行したStage、高いBMIの因子を持つ患者でBCRL発症率がより高いことがわかった。BCRLは多様な治療による後遺症であり、リスク因子も多様であることが示唆された。Annals of surgical oncology誌オンライン版2017年8月1日号に掲載。 本研究では、1990~2010年のOlmsted County Rochester Epidemiology Project Breast Cancer Cohortを利用し、BCRLとリスク因子を調べた。BCRL発症率の推定には累積発症率推定を使用し、多変量解析のために競合リスク回帰を使用した。 主な結果は以下のとおり。・Stage0~III乳がん1,794例をフォローアップした(フォローアップ期間中央値10年)。・5年以内のBCRL診断の累積発症率は9.1%であった(95%CI:7.8~10.5%)。・腋窩手術を受けていない患者では、BCRLは発生しなかった。・腋窩手術を受けた患者(n=1,512)において、BCRLの5年発症率は、センチネルリンパ節生検(SLN)実施患者で5.3%、ALND実施患者で15.9%であった(p<0.001)。・手術のみで治療された患者では、ALNDとSLNとでBCRL発症率に差がなかった(5年で3.5%および4.1%、p=0.36)。・ALND実施患者において、乳房もしくは胸壁への放射線照射の追加によりBCRL発症率が倍増した(5年で3.5 vs.9.5%、p=0.01)。・リスクが最も高い群(>5年で25%)はすべて、リンパ節領域放射線照射および/またはアントラサイクリン/サイトキサン+タキサン化学療法を伴うALNDを実施していた。・何らかの腋窩手術を受けた患者の多変量解析によると、ALND、化学療法、放射線療法、肥満がBCRLと有意に関連していた。

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メタ解析の陰と陽(解説:香坂 俊 氏)-709

今回の【Yu氏らによるメタ解析】そのものは、直近に公表されたSAVES試験(2016年)の結果とかぶるものであり、睡眠時無呼吸に対して陽圧換気が(予後改善に)効果がなかったという内容だ。簡単にその流れをまとめると●睡眠時無呼吸は(おそらくは頻回の交感神経系の賦活化を通じ)高血圧や耐糖能異常 を惹起し、動脈硬化疾患の発症とも関連していることがわかっている●それならば陽圧換気で治療を行えば、こうした患者さんたちの予後を改善できるので はないか、と考えることは自然なことのように思われた●しかし、実際にRCTをやってみると陽圧換気は症状(日中の眠気や頭痛等)は改善し たものの、その後の心血管イベントは抑制しなかったということになる。驚くべき結果ではあるが、SAVESですでにわかっていることをなぜ今さらという気がしなくもない(実際、今回の論文の著者のうち数名はSAVESのinvestigatorでもある)。そして、今回のメタ解析の40%弱はSAVESに由来するものであることを考えると「同じような研究グループが、ある程度かぶったデータを使って、結局同じことを言いたいだけではないのか?」と勘繰りたくもなる。(1)このメタ解析のPositiveな側面上記のような勘繰りはよそに、まず「このメタ解析を読んでよかった」というところを最初に書いておこうと思う。・全体でみると陽圧換気のメリットはなかったが、メリットのありそうな患者群を提示することができた(論文中の図4)・具体的には、(1)追跡期間が長ければ長いほど、(2)陽圧換気のコンプライアンスが良いほど、さらに(3)重症であればあるほど(無呼吸低呼吸指数[AHI]が高いほど)陽圧換気の効果が高いことが示されている・すなわち、これまで行われたRCTは(1)期間が短すぎ、(2)コンプライアンスにばらつきがありすぎ、さらに(3)軽症例を対象としすぎていた可能性がある実際、この論文に付随するEditorialのタイトルには「(陽圧換気に関する結論を出すには)It Is Far Too Soon to Say」と書かれている。(2)このメタ解析のNegativeな側面このメタ解析を掲載したJAMA誌は多大な恩恵を受ける。SAVESは1年弱ですでに130回引用されている(2017年8月6日時点)。しかし、おそらく今後同じ分野の研究者はこちらのメタ解析の結果を、彼/彼女らの論文に引用するだろう。すると、同誌のインパクトファクター[IF]の上昇に貢献できる。IFは単純な指標ではあるが、現在雑誌のreputation(名声度?)に非常に大きな影響を持つようになっている。自分はかねて、なぜ主要雑誌はこうした学術的にあまり新規性のないメタ解析の出版を続けるのか疑問に思っていたが、こうした雑誌の政治的、あるいは戦略的な側面からの考え方というものもあるのではないかと推測している(これは本論文が、SAVESが掲載されてから8ヵ月でアクセプトされるというスピードの速さにも表れている)。(3)自分なりのメタ解析の読み方メタ解析という手法は長い歴史をもち、古典的なEBMの世界では、各種推奨の根拠の頂点に位置するものとされてきた。ただ、ここ数年でずいぶんそのあり方も変わってきたように思える。今回は、陽圧換気に関するYu氏らの論文を基にして最近のメタ解析の【良い点】と【学術誌に利用されやすい点】を取り上げてみたわけだが、今後メタ解析の手法はさらに高度化・複雑化していくことが予想される。臨床の現場の人間としては、メタ解析だからといって画一的に過大評価せず、そのリサーチクエスチョンに応じて弾力的に解釈していく必要があるだろう。

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