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日本のPCI患者のDAPT期間。リアルワールドでは6ヵ月?/日本循環器学会

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における適正な抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の適正な期間は明らかになっていない。福岡山王病院 循環器センターの横井宏佳氏が、2018年3月23〜25日に大阪で開催された第82回日本循環器学会学術集会Late Breaking Cohort Studiesにて、リアルワールドデータを解析した日本人患者のDAPT継続期間とアウトカムの疫学研究を発表した。 この研究では、多数のDPC病院から成る、メディカルデータビジョン社のデータベースソースを使用した。2012年4月〜2013年6月までに登録された614万以上のデータのうちCADの診断がついた34万例以上から、登録基準に合致した7,473例が解析対象になった DAPT継続している患者の割合は、6ヵ月で63.4%、12ヵ月で41.9%であった。3ヵ月ランドマーク解析による虚血イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)は、DAPT継続3ヵ月未満17.8%、3ヵ月以上9.7%であった(p=0.001)。6ヵ月ランドマーク解析による虚血イベントは、DAPT継続6ヵ月未満17.8%、6ヵ月以上9.7%であった(p=0.002)。12ヵ月ランドマーク解析による虚血イベントは、DAPT継続12ヵ月未満8.1%、12ヵ月以上5.9%であった(p=0.242)。継続期間6ヵ月まではShort DAPTよりもLong DAPTで有意にイベントが少ないという結果となった。

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抗VEGF薬、全身性有害事象リスクの増加はなし

 フランス・Bretonneau HospitalのMarie Thulliez氏らは、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫または網膜静脈閉塞患者において、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬硝子体内注射と全身性有害事象との関連を評価するため、それらを検討したシステマティックレビューおよびメタ解析について要約を行った。「抗VEGF療法は全身性有害事象のリスクを増加することはない。しかし、出血リスクの高い加齢黄斑変性の高齢患者に、ラニビズマブを投与する際には注意をすることが望ましい」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年3月22日号掲載の報告。 研究グループは、PubMedおよびCochrane Central Register of Controlled Trialsデータベースを用い、システマティックレビューおよびメタ解析を検索し、抗VEGF療法と各システマティックレビューで報告された結果についてまとめた。 システマティックレビューの質は、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)チェックリストおよびAMSTAR(A Measurement Tool to Assess Systematic Reviews)チェックリストver.1を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・2011年1月1日~2016年6月30日に発表された21報のシステマティックレビューについて検討した。・21報中11報が、主要評価項目として全身性有害事象について解析していた。・PRISMA(27項目)およびAMSTARスコア(0~11)の中央値(四分位範囲)は、それぞれ23(15~27)および8(5~11)であったが、5報はPRISMAが20未満、AMSTARスコアが7未満であった。・すべてのレビューは、それらに組み込んでいる研究の方法論的なバイアスリスクを客観的なスケールで評価していた。最もよく用いられていたのは、Cochrane Risk of Bias Toolであった(21報中16報、76%)。・抗VEGF薬は対照と比較し、全身性有害事象のリスクを増加させなかった。また、抗VEGF薬の月1回の計画投与と必要時投与との比較でも同様であった。・最新の網羅的に行われたレビューでは、ベバシズマブはラニビズマブと比較し全身性有害事象のリスク増加と関連していなかったが、ラニビズマブは対照と比較して、加齢黄斑変性患者における非眼性出血リスクの増大と関連している可能性が示された。

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アテゾリズマブ併用療法、進行肺がん1次治療でOS有意差(IMpower150)

 F. ホフマン・ラ・ロシュ社は3月26日、第III相臨床試験IMpower150試験に関し、中間解析において主要評価項目の一つである全生存期間(OS)の延長が示され、進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療におけるアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)とベバシズマブ、カルボプラチン、パクリタキセル(化学療法)の併用により、ベバシズマブ、カルボプラチン、パクリタキセルの併用に比べ、生存期間の延長が示されたことを発表した。OSの延長は、PD-L1発現状況によって層別化されたグループを含む、主要なサブグループに共通して認められた。アテゾリズマブとベバシズマブ、カルボプラチン、パクリタキセルの安全性は、これまで各薬剤で認められている安全性プロファイルと一致しており、本併用療法で新たな安全性のシグナルは確認されなかった。これらの成績は、今後開催されるがん関連学会で発表される予定。 IMpower150試験は、化学療法未施行のStageIV非扁平上皮NSCLC患者を対象に、アテゾリズマブとカルボプラチン、パクリタキセルの併用に、ベバシズマブを追加または追加しない場合の有効性と安全性を、カルボプラチンとパクリタキセル、ベバシズマブとの併用療法と比較検討した、オープンラベル無作為化多施設共同第III相臨床試験。主要評価項目は、ALKまたはEGFRの遺伝子変異患者を除くITT解析集団、ならびにT細胞活性調整因子(Teff)の遺伝子発現により層別化した集団におけるPFSおよびITT解析集団のOS。1,202例の患者を以下のA~C群に1:1:1の割合で無作為化し、各群の投与レジメンに従い3週に1回間隔で薬剤を投与した。A群:アテゾリズマブ(1,200mg)+カルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル(200mg/m2)B群:アテゾリズマブ(1,200mg)+カルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル(200mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)C群:カルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル(200mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg) アテゾリズマブは国内で、本年1月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応症において、承認を取得している。■関連記事atezolizumab併用療法、進行肺がん1次治療の第III相試験でPFSに有意差(IMpower150)/ESMO Immuno Oncology 2017アテゾリズマブ、小細胞肺がんのOS、PFS改善(IMpower133)/NEJM

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前立腺がんの診断にMRI標的生検が有用/NEJM

 臨床的に前立腺がんのリスクを有する生検未施行の男性の診断では、生検の前にMRIでリスク評価を行い、がん病変が陽性の場合に標的を絞って生検を行う方法(MRI標的[狙撃]生検)が、従来の標準的な経直腸的超音波(TRUS)ガイド下生検よりも有益であることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのVeeru Kasivisvanathan氏らが行ったPRECISION試験で示された。研究の成果は、NEJMオンライン版2018年3月19日号に掲載された。標準的な10~12コアのTRUSガイド下生検は、高Grade(臨床的に意義のある)前立腺がんを過少に検出し、低Grade(臨床的に意義のない)がんを過剰に検出する可能性が指摘されている。一方、マルチパラメトリックMRIは、結果が陰性の場合は生検を回避するトリアージ検査として用いられ、陽性の場合は前立腺の異常領域を標的に生検が行える。MRI標的生検は標準的生検に比べ、臨床的に意義のあるがんの検出率が同等またはそれ以上とする報告のほか、臨床的に意義のないがんの検出率は低いとの報告がある。前立腺がん診断におけるMRI標的生検の非劣性を検証 PRECISIONは、前立腺がんが疑われる男性の前立腺がん診断における、MRI標的生検のTRUSガイド下生検に対する非劣性を検証する多施設共同無作為化試験である(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 対象は、前立腺生検を受けたことがなく、PSA上昇または直腸指診の異常所見、あるいはこれら双方により前立腺がんが疑われた男性であった。 被験者は、MRI標的生検または標準的TRUSガイド下生検を受ける群に無作為に割り付けられた。MRI標的生検群は、MRIで前立腺がんが示唆された場合に標的生検を受け、示唆されない場合は生検が提示されなかった。標準的生検群は、10~12コアのTRUSガイド下生検を受けた。 主要アウトカムは、臨床的に意義のあるがんの診断を受けた男性の割合とし、副次アウトカムには、臨床的に意義のないがんの診断を受けた男性の割合などが含まれた。95%信頼区間(CI)の下限値が-5ポイントより大きい場合に非劣性とし、0より大きい場合には優越性ありと判定することとした。 2016年2月~2017年8月の期間に、試験に参加した11ヵ国25施設のうち23施設で500例が登録され、MRI標的生検群に252例、標準的生検群には248例が割り付けられた。前立腺がん診断のための生検を28%で回避、検出率の優越性を確認 ベースラインの平均年齢は、MRI標的生検群が64.4±7.5歳、標準的生検群は64.5±8.0歳であり、PSA中央値はそれぞれ6.75ng/mL(IQR:5.16~9.35)、6.50ng/mL(5.14~8.65)、前立腺がんの家族歴ありは19%、16%、直腸指診異常所見ありは14%、15%だった。MRI標的生検群のうち71例(28%)で前立腺がんが示唆されず、これらの男性は生検を受けなかった。 臨床的に意義のあるがんの検出率は、MRI標的生検群が38%(95/252例)であったのに対し、標準的生検群は26%(64/248例)であった(補正後群間差:12ポイント、95%CI:4~20、p=0.005)。MRI標的生検群は標準的生検群に対し非劣性であり、95%CIはMRI標的生検群の優越性を示すものであった。 臨床的に意義のないがんの検出率は、MRI標的生検群が9%(23例)であり、標準的生検群の22%(55例)に比べて低かった(補正後群間差:-13ポイント、95%CI:-19~-7、p<0.001)。 最大コア腫瘍長(maximum cancer core length)は、MRI標的生検群が7.8±4.1mm、標準的生検群は6.5±4.5mmであった(補正後群間差:1.0mm、95%CI:0.0~2.1、p=0.053)。また、がんが陽性であったコアの割合は、MRI標的生検群が44%(422/967本)、標準的生検群は18%(515/2,788本)だった。 著者は、「医療経済学的な観点からは、MRI標的生検は臨床的に意義のあるがんを早期に検出し、意義のないがんの検出や生検の反復を抑制することで医療費を削減する可能性があり、また長期的に費用対効果が優れることを示唆する研究もある」と指摘している。

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DPP-4阻害薬で炎症性腸疾患リスク増大/BMJ

 2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬は、炎症性腸疾患(IBD)のリスク増大と関連することが、カナダ・Jewish General HospitalのDevin Abrahami氏らによる住民コホート研究の結果、明らかにされた。著者は「結果について再現性があるのかを確認する必要があるが、医師はこうした関連の可能性があるということを念頭に置くべきであろう」と指摘している。IBDのような自己免疫疾患における、DPP-4酵素が及ぼす影響は解明されていない。しかし、低濃度のDPP-4酵素がIBDの疾患活動度を高めることは知られている。これまで、DPP-4阻害薬とIBD発症との関連を検討した観察研究は行われていなかったという。BMJ誌2018年3月21日号掲載の報告。英国14万1,170例の住民コホート研究 研究グループは、2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬の使用がIBD発症と関連しているかを、住民コホート研究にて評価した。 700ヵ所以上の一般診療所(GP)が関与している英国の医療関連データベース(UK Clinical Practice Research Datalink)を用いて、2007年1月1日~2016年12月31日の間に抗糖尿病薬の服用を開始し、2017年6月30日までフォローアップが行われていた、18歳以上の14万1,170例について検討した。 主要評価項目は、DPP-4阻害薬使用と関連したIBD発症の補正後ハザード比で、使用について全体的な評価と、累積使用期間ごと、および使用開始からの期間別に、時間依存的Cox比例ハザードモデルを使用して推定評価した。DPP-4阻害薬の使用(単独または他の抗糖尿病薬と併用)は時変変数(time varying variable)としてモデル化し、他の抗糖尿病薬の使用と比較、また、6ヵ月の遅延曝露を用いてIBDの潜在性と診断遅延について明確にした。他の抗糖尿病薬と比較して発症リスクは1.75倍、3~4年使用後がピークで2.90倍 追跡期間55万2,413人年に、208例のIBDイベントが発生した(粗発生率:10万人年当たり37.7[95%信頼区間[CI]:32.7~43.1])。 全体として、DPP-4阻害薬の使用とIBDのリスク増大との関連が認められた(10万人年当たりDPP-4阻害薬使用群53.4 vs.他の抗糖尿病薬使用群34.5、HR:1.75[95%CI:1.22~2.49])。HRは、使用期間が長いほど段階的に上昇し、3~4年使用後にピークに達し(HR:2.90、95%CI:1.31~6.41)、4年超になると低下が認められた(1.45、0.44~4.76)。 同様のパターンは、DPP-4阻害薬使用開始からの期間で評価した場合にも観察された。また複数行った感度解析でも、一貫した所見が認められた。

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進行性腎細胞がんの1次治療、ニボルマブとイピリムマブ併用が有効/NEJM

 未治療の中等度~高リスク進行性淡明細胞型腎細胞がん患者の治療では、ニボルマブ+イピリムマブ併用により、従来の標準治療であるスニチニブに比べ全生存期間が延長し、客観的奏効率が改善されることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのRobert J. Motzer氏らが行った「CheckMate 214試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年3月21日号に掲載された。進行性腎細胞がんの約75%が中等度~高リスク病変であり、低リスク病変に比べアウトカムが不良である。本併用レジメンの第I相試験では、未治療および既治療の進行性腎細胞がん患者において、良好な抗腫瘍活性を発揮することが報告されている。中等度~高リスク例で3つの主要エンドポイントを評価 CheckMate 214は、未治療の進行性淡明細胞型腎細胞がん患者におけるニボルマブ+イピリムマブ併用の有用性を、スニチニブと比較する非盲検無作為化第III相試験である(Bristol-Myers Squibb社とOno Pharmaceutical社の助成による)。 年齢18歳以上、カルノフスキーの一般全身状態スコア(0~100点、点数が低いほど機能障害が重度)≧70点の患者が、導入療法としてニボルマブ(3mg/kg)+イピリムマブ(1mg/kg)を3週ごとに4回静脈内投与した後、維持療法としてニボルマブ(3mg/kg)を2週ごとに投与する群、またはスニチニブ(50mg)を1サイクル6週として、1日1回(4週間)経口投与し休薬(2週間)する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは3つで、IMDC分類で中等度~高リスクの患者における全生存期間(α水準:0.04)、客観的奏効率(0.001)、無増悪生存期間(0.009)であった。 2014年10月~2016年2月の期間に、日本を含む28ヵ国175施設で1,096例が無作為化を受けた。併用群550例、スニチニブ群546例であり、そのうち中等度~高リスクの患者はそれぞれ425例、422例であった。死亡リスクが37%減少、9%で完全奏効 ベースラインの年齢中央値は併用群が62歳、スニチニブ群も62歳、中等度~高リスク例はそれぞれ62歳、61歳であり、男性は75%と72%、74%と71%であった。 フォローアップ期間中央値25.2ヵ月時における中等度~高リスク例の18ヵ月全生存率は、併用群が75%(95%信頼区間[CI]:70~78)、スニチニブ群は60%(55~65)で、全生存期間中央値はそれぞれ未到達、26.0ヵ月であり、死亡のハザード比(HR)は0.63と、併用群が有意に良好であった(p<0.001)。 また、中等度~高リスク例の客観的奏効率は併用群が42%と、スニチニブ群の27%に比べ有意に高く(p<0.001)、このうち完全奏効率(探索的解析)は9%、1%(p<0.001)であり、有意差が認められた。 一方、中等度~高リスク例の無増悪生存期間中央値は、併用群が11.6ヵ月、スニチニブ群は8.4ヵ月(HR:0.82、p=0.03)と、事前に規定された有意水準の閾値(0.009)を上回り、有意差を認めなかった。 治療を受けた全患者(1,082例)における治療関連有害事象の発現率は、併用群が93%(509/547例)、スニチニブ群は97%(521/535例)で、そのうちGrade3/4はそれぞれ46%(250例)、63%(335例)であった。治療中止の原因となった治療関連有害事象の発現率は、併用群が22%(118例)、標準治療群は12%(63例)、治療関連死はそれぞれ8例、4例であった。 併用群のうち436例に治療関連の免疫系を介する有害事象(皮膚、内分泌、消化器、肺、肝、腎)が認められ、152例(35%)が高用量グルココルチコイドの投与を受けた。 著者は、「ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、主要エンドポイント3つのうち2つを達成し、死亡リスクを37%減少させ、スニチニブ療法を上回る生存ベネフィットを示した」とまとめている。

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心不全ガイドラインを統合·改訂(前編)~日本循環器学会/日本心不全学会

 3月24日、日本循環器学会/日本心不全学会から新たな心不全診療ガイドラインが公表された。本ガイドラインは、11学会(日本循環器学会、日本心不全学会、日本胸部外科学会、日本高血圧学会、日本心エコー図学会、日本心臓血管外科学会、日本心臓病学会、日本心臓リハビリテーション学会、日本超音波医学会、日本糖尿病学会、日本不整脈心電学会)、班員31名、協力員25名、外部評価員6名という巨大な組織により策定されたものである。 公表を受け、日本循環器学会学術集会(3月23~25日、大阪)では、ガイドライン作成班による報告セッションが組まれ、班長を務めた筒井裕之氏(九州大学)が説明した。講演内容を含め、本ガイドラインの主要な改訂ポイントを2回にわたってお伝えする。心不全の定義を明確化 まず、これまで不明確であった心不全の定義が明確化された。新しい定義は「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」というものである。 加えて、非医療従事者向けの定義も書き込まれた。「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」というものである。心不全という疾患は不可逆性に進行し、命に関わる状態である点が明記されている。進行過程を4つのステージに区分。ステージごとの治療最適化を目指す 心不全が進行性の疾患である点も強調され、発症前から治療抵抗性に至るまでの過程が「A」から「D」の4ステージに分けられた(A:器質的心疾患がなく危険因子のあるステージ、B:器質的心疾患があるステージ、C:心不全症候のある(既往も含む)心不全ステージ、D:治療抵抗性心不全ステージ)。2001年に、米国ガイドラインが導入した捉え方である(Yancy CW, et al. Circulation.2013;128:e240)。また、ステージごとに治療目標が設定された。これにより、ステージごとに適切な治療が提供されることが期待されている。心不全発症前から積極介入。「予防」に注力 前回ガイドラインとの最大の違いは、まだ心不全を発症していないステージ「A」と「B」が治療対象となっている点である。心疾患危険因子のみを有する「ステージA」では、それら危険因子の管理により、心不全発症のリスク因子である器質的心疾患発症の「予防」を図り、虚血性心疾患や左室肥大など器質的病変が生じている「ステージB」では、心不全発症の「予防」が推奨されている。 このように新ガイドラインは、心不全の「発症予防」にも力をいれている。「心不全予防」という章も、「心不全治療の基本方針」の前に新設された。その中には、高血圧、冠動脈疾患、肥満・糖尿病、喫煙、アルコール、身体活動・運動の項が設定され、心血管病既往のある2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン)が推奨クラスI、エビデンスレベルAとして推奨された理由が特筆されている。薬剤治療はEFの高低で3類型に分けて整理 心不全に対する治療の考え方も、大きく変わった。「ステージC」心不全例に対しては、左室収縮能(EF)に応じた治療の選択が推奨されるようになった。EF「40%未満」の「HFrEF」、「40-50」の「HFmrEF」、「50以上」の「HFpEF」ごとに治療方針は異なる(なお心不全の「分類」の項では、この3類型に、HFrEFから治療によりEFが40%以上に回復した「HFpEF improved、HFrecEF」という類型を加えた4類型が示されている)。 もっともHFpEFとHFmrEFに関しては、現時点では予後改善の確たるエビデンスがない。そのため、HFpEFに対しては「心不全症状を軽減させることを目的とした負荷軽減療法、心不全増悪に結びつく併存症に対する治療」が基本とされ、HFmrEFについては「この領域の心不全例でのデータはまだ確実なものがなく、今後の検討を要する」と記載するに留まっている。「緩和ケア」を初めて明記·詳述 心不全発症例に対する「緩和ケア」の推奨も、今回改訂の大きな目玉である。この「緩和ケア」に関し筒井氏は、同日夕方に行われたガイドライン記者会見において、「心不全患者への緩和ケアは終末期医療に限定されない」点を強調した。緩和ケアは「ステージC」の段階から推奨されている。つまり、病状末期の「ステージD」に限定されていない。これは心不全の進展はさまざまな因子に影響を受けるため個人差が大きく、「終末期」がいつ訪れるか予知が困難なためである。この点は、経過の予想が比較的容易ながん治療と大きく異なる。そのため心不全では、発症直後から緩和ケアを行うべきだというのが、新ガイドラインの立場である。

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再発・難治性CLLにvenetoclaxとリツキシマブ併用が有効/NEJM

 再発または難治性(R/R)慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、venetoclax+リツキシマブ併用療法は、ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法より無増悪生存率が有意に高率であることが示された。オーストラリア・メルボルン大学のJohn F. Seymour氏らが、多施設共同無作為化非盲検第III相試験「MURANO試験」の結果を報告した。venetoclaxは、CLLで過剰発現し、CLL細胞の生存に重要な役割を持つ抗アポトーシス蛋白のB細胞リンパ腫-2(BCL-2)を阻害する経口薬で、venetoclax+リツキシマブ併用療法は、忍容性が良好でvenetoclax単独療法よりも有効性が期待できることが示唆されていた。NEJM誌2018年3月22日号掲載の報告。venetoclaxまたはベンダムスチンとリツキシマブとの併用療法を比較 MURANO試験は、2014年3月31日~2015年9月23日の期間で、20ヵ国109施設で実施された。対象は1~3レジメンの治療歴があるR/R CLL患者389例で、venetoclax+リツキシマブ群(venetoclaxを最長2年間、リツキシマブを最初の6ヵ月間投与)と、ベンダムスチン+リツキシマブ群(ベンダムスチンとリツキシマブを6ヵ月間投与)に無作為に割り付けた。ベンダムスチン+リツキシマブ群で病勢進行した場合、venetoclax+リツキシマブ群へのクロスオーバーは行わなかった。 主要評価項目は、治験担当医師の評価による無増悪生存期間(PFS)とし、有効性はintention-to-treat集団で解析した。venetoclax+リツキシマブ群で無増悪生存期間が延長 追跡期間中央値23.8ヵ月において、治験担当医師の評価によるPFS中央値は、venetoclax+リツキシマブ群未到達(進行/死亡は32/194例)、ベンダムスチン+リツキシマブ群17.0ヵ月(同114/195例)と、venetoclax+リツキシマブ群で有意に延長した。2年無増悪生存率は、それぞれ84.9%および36.3%であった(進行/死亡のハザード比[HR]:0.17、95%信頼区間[CI]:0.11~0.25、層別log-rank検定のp<0.001)。 サブグループ解析の結果、染色体17p欠失患者を含むすべての臨床的および生物学的サブグループにおいて、一貫したPFSの改善が認められた。染色体17p欠失患者の2年無増悪生存率は、venetoclax+リツキシマブ群で81.5%、ベンダムスチン+リツキシマブ群で27.8%(HR:0.13、95%CI:0.05~0.29)、非染色体17p欠失患者でそれぞれ85.9% vs.41.0%であった(HR:0.19、95%CI:0.12~0.32)。 venetoclax+リツキシマブのベンダムスチン+リツキシマブに対する有効性は、独立評価委員会の評価によるPFSおよび他の副次有効性評価項目の結果によっても確認された。 Grade3/4の好中球減少症の発現率は、venetoclax+リツキシマブ群がベンダムスチン+リツキシマブ群より高値であったが、Grade3/4の発熱性好中球減少症および感染症/寄生虫感染症の発現率は、venetoclax+リツキシマブ群が低値であった。venetoclax+リツキシマブ群におけるGrade3/4の腫瘍崩壊症候群の発現率は3.1%(6/194例)であった。

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スマートウオッチによる自動心房細動検知の精度は?【Dr.河田pick up】

 心房細動の早期検知は、血栓塞栓症を未然に防ぐという観点からも非常に重要である。残念ながら、脳梗塞を契機に心房細動が発見されるということが多い。HolterやZio patchなどのモニターよりも低コストで簡易な携帯心臓モニターは、患者にとっては便利なものである。今回はApple Watchを用いた心臓モニターに関する論文を紹介したい。 KardiaBandは、アップルのスマートウオッチ(Apple Watch)を用いて心臓リズムを記録することができる新しい技術である。専用バンドとアプリを組み合わせることで、自動で心房細動(AF)を検知することが可能である。米国クリーブランド・クリニックのJoseph M.Bumgarner氏ら研究グループは、医師による12誘導心電図とKardiaBandの記録の解釈と比較し、KardiaBandが洞調律とAFとを正確に判別できるかを検討した。Journal of American College of Cardiology誌2018年3月号に掲載。除細動で受診したAF患者100例で比較 本研究では、AFに対する除細動のために受診した、連続した患者100例が研究に組み込まれた(68歳±11歳)。患者は除細動前に心電図とKardiaBandの記録を受けた。除細動が行われた場合、除細動後の心電図とKardiaBandの記録が取得された。KardiaBandの解釈は、医師の診断による心電図と比較された。KardiaBandの記録は、患者情報を知らない不整脈専門医によって再度診断を受け、心電図の解釈と比較された。感度、特異度とK係数が求められた。169例のKardiaBandの記録のうち57例は解釈不能 100例中8例は除細動を受けなかった。169例について、心電図とKardiaBandの同時記録が得られた。KardiaBandの記録のうち、57例については解釈不能であった。心電図と比較して、KardiaBandが解釈した記録は、感度が93%、特異度が84%、K係数は0.77であった。一方、医師が解釈したKardiaBandの記録は感度99%、特異度は83%、K係数は0.83であった。解釈不能だった57例のKardiaBandの記録について不整脈専門医が診断したところ、感度100%、特異度80%、K係数は0.74であった。KardiaBandと医師ともに診断可能であった113例においては、双方の診断はかなり一致しており、K係数は0.88であった。医師のサポートによりKardiaBandによるAF検知アルゴリズムは有用 医師によって確認されたKardiaBandのAF検知アルゴリズムは、AFと洞調律の正確な区別が可能であった。この技術は、選択的除細動に先立って患者をスクリーニングする際に役立ち、不必要な手技を回避する一助となりうる。

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チック症群に対する抗精神病薬の有効性と安全性比較のメタ解析

 チック症群に対する抗精神病薬の有効性および安全性を評価するため、中国・四川大学のChunsong Yang氏らが、ベイジアンネットワーク・メタ解析を行った。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2018年3月5日号の報告。チック症群の治療に非定型抗精神病薬は有望な治療薬 PubMed、Embase、Cochrane Libraryおよび4つの中国のデータベースより、チック症群に対する抗精神病薬の有効性を評価したランダム化比較試験(RCT)の検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・60件のRCTが抽出された。・プラセボと比較し、ハロペリドール、リスペリドン、アリピプラゾール、クエチアピン、オランザピン、ziprasidoneは、チック症状スコアの有意な改善が認められた(標準化平均差[SMD]範囲:-12.32~-3.20)。・クエチアピンは、ハロペリドール、ピモジド、リスペリドン、チアプリド、アリピプラゾール、penfluridolよりも、チック症状スコアの改善に有用であった(SMD範囲:-28.24~-7.59)。・アリピプラゾールは、チアプリドと比較し、チック症状スコアの有意な改善が認められた(SMD:-4.27)。・penfluridolは、他のすべての薬剤と比較し、有効ではなかった。・一般的に、非定型抗精神病薬は、忍容性が良好であった。 著者らは「チック症群の治療において、リスペリドンやアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬は、最も強力なエビデンスを有する選択肢である。なかでもクエチアピンは、有望な治療薬である。オランザピンやziprasidoneも有効であるが、そのエビデンスは限られていた。今後、異なる薬理学的治療を直接比較する高品質な研究が求められる」としている

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早期胃がん切除後のピロリ除菌は有益か/NEJM

 早期胃がんまたはハイグレード腺腫で内視鏡的切除を受けた患者に対し、抗菌薬によるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の除菌治療はプラセボと比較して、1年以降に評価した異時性胃がんの発生リスクは低く、3年時に評価した胃体小彎の腺萎縮についても改善効果があることが示された。韓国・国立がんセンターのIl Ju Choi氏らが、470例を対象に行った前向き二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果で、NEJM誌2018年3月22日号で発表した。これまで、H. pylori除菌治療による、組織学的改善や異時性胃がんの予防に関する長期的効果は不明だったという。異時性胃がんの発生と胃体部小彎の腺萎縮の程度を比較 研究グループは、早期胃がんまたはハイグレード腺腫で内視鏡的切除を行った470例を、無作為に2群に分け、一方には抗菌薬によるH. pylori除菌治療を行い、もう一方にはプラセボを投与した。 主要評価項目は2つで、(1)追跡1年以降に内視鏡検査で認められた異時性胃がんの発生、(2)追跡3年時点における胃体部小彎の腺萎縮の程度のベースラインからの改善とした。治療群の半数で胃体部小彎腺萎縮が改善 被験者のうち修正intention-to-treat解析の対象者は、治療群が194例、プラセボ群が202例の計396例だった。平均年齢は、治療群59.7歳、プラセボ群59.9歳、男性がそれぞれ72.7%、77.7%を占めた。飲酒者は55.2%、63.4%、喫煙者は41.2%、37.6%。 中央値5.9年の追跡期間中に、異時性胃がんを発生したのは、プラセボ群が13.4%(27例)だったのに対し、治療群は7.2%(14例)だった(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.26~0.94、p=0.03)。 組織学的解析を行ったサブグループ327例において、胃体部小彎における腺萎縮の程度についてベースラインからの改善が認められた患者の割合は、プラセボ群15.0%だったのに対し、治療群は48.4%と大幅に有意に高率だった(p<0.001)。 重篤な有害事象は認められなかったが、軽度の薬剤性有害事象(味覚変化、下痢、めまいなど)については、治療群の頻度が有意に高かった(42.0% vs.10.2%、p<0.001)。

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抗PD-1/PD-L1抗体薬によるirAE発現のメタ解析/BMJ

 がん治療では、PD-1またはそのリガンドであるPD-L1を標的とする薬剤の使用頻度が増加しつつある。適切な臨床管理には免疫関連有害事象(irAE:臓器特異的免疫関連有害事象、免疫活性化関連の全身性有害事象、筋骨格系の問題と一致する有害事象)の理解が求められるが、これらの発症率は不明であり、予想外の有害事象に関して一貫性のない報告が行われている可能性があるという。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShrujal Baxi氏らは、抗PD-1/PD-L1抗体薬によるirAEの発現状況を調査し、BMJ誌2018年3月14日号で報告した。13試験、7,000例以上のメタ解析 研究グループは、抗PD-1抗体薬および抗PD-L1抗体薬のirAEの発現状況を明らかにするために、系統的レビューとメタ解析を行い、標準治療(対照薬)と比較した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 再発または転移性がん患者に関する臨床研究を対象とした。2017年3月16日までに5つの医学関連データベースに登録された論文を検索し、ClinicalTrials.govのデータも参照した。 メタ解析には論文13編(介入群:3,803例、対照群:3,353例)が含まれた。論文はすべて、2014年11月~2017年2月の期間にオンライン版として公表され、出版バイアスのエビデンスは示されなかった。すべて製薬企業の助成による国際的な多施設共同試験だった。 irAEのうち、臓器特異的免疫関連有害事象(organ specific immune-related adverse events)には大腸炎、肝臓炎、肺臓炎、下垂体炎/下垂体機能低下症、甲状腺機能低下症が含まれ、免疫活性化関連の全身性有害事象(general adverse events related to immune activation)には疲労、下痢、皮疹が、筋骨格系の問題と一致する有害事象(adverse events consistent with musculoskeletal problems)には関節炎、関節痛、背部痛、筋骨格痛、筋肉痛が含まれた。筋骨格系の有害事象も一般的に発現する可能性 13編のうち、転移性非小細胞肺がんが7編、悪性黒色腫が3編で、腎細胞がん、膀胱細胞がん、頭頸部扁平上皮がんが1編ずつであった。また、ニボルマブが6編、ペムブロリズマブが5編、アテゾリズマブが2編で、対照薬は化学療法薬が11編、分子標的薬が1編、双方が1編だった。 抗PD-1抗体薬では、重篤な臓器特異的免疫関連有害事象はまれであったが、対照薬と比較して甲状腺機能低下症(オッズ比[OR]:6.92、95%信頼区間[CI]:3.25~14.75、p<0.001)、肺臓炎(5.37、2.73~10.56、p<0.001)、大腸炎(2.88、1.30~6.37、p=0.009)、下垂体炎(3.38、1.03~11.08、p=0.04)の発症率が増加していた。 免疫活性化関連の全身性有害事象は、対照薬に比べ皮疹のみ発症率が高かった(OR:2.34、95%CI:1.40~3.91、p=0.001)。疲労(32%)と下痢(19%)の発症率も高かったが、対照薬とほぼ同じ頻度であった。 筋骨格系の問題と一致する有害事象の報告には一貫性がなく、発症率にばらつきがみられたが、いくつかの試験では関節痛と背部痛が20%を超えていた。 著者は、「抗PD-1抗体薬による臓器特異的免疫関連有害事象の頻度は高くないが、対照薬に比べリスクが高く、免疫活性化関連の全身性有害事象の多くは対照薬とほぼ同頻度であり、筋骨格系の問題と一致する有害事象の報告は一貫性がないものの、一般的に発現する可能性がある」とまとめている。

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TNF受容体関連周期性症候群〔TRAPS:Tumor necrosis factor receptor-associated periodic syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義TNF受容体関連周期性症候群(Tumor necrosis factor receptor-associated periodic syndrome:TRAPS)は、常染色体優性形式をとる家族性の周期性発熱・炎症疾患である。本疾患は1982年にWilliamsonらが再発性の発熱、皮疹、筋痛、腹痛を呈するアイルランド/スコットランドの1家系を見いだし、“familial Hibernian fever”として報告したことに始まる。1999年にMcDermottらが1型TNF受容体の遺伝子変異が本疾患の原因であることを報告し“TRAPS”と命名した1)。その論文において、自己炎症という新しい疾患概念が提唱された。TRAPSは自己炎症疾患(autoinflammatory disease)の代表的疾患であり、自己抗体や自己反応性T細胞によって生じる自己免疫疾患(autoimmune disease)とは異なり、自然免疫系の異常によって発症すると考えられている。本症は2015年1月1日より医療費助成対象疾患(指定難病、小児慢性特定疾病)となった。■ 疫学欧米人、アジア人、アフリカ系アメリカ人などさまざまな人種において、まれな疾患として報告されている。「TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)の病態の解明と診断基準作成に関する研究」研究班(研究代表者:堀内孝彦[九州大学] 平成22-24年度 厚生労働省)が行った全国調査では、わが国には少なくとも33家系51例の患者がいることが明らかになった2)。■ 病因1型TNF受容体遺伝子(TNFRSF1A)の変異で生じる。1型TNF受容体は455個のアミノ酸より構成され、細胞外ドメインの4つのCRD(cysteine-rich domain)と細胞膜貫通部、細胞内ドメインと細胞内のDD(death domain)という特徴的な構造を持っている。TRAPSで報告されている変異のほとんどはCRD1とCRD2をコードしているエクソン2-4の単一塩基ミスセンス変異である。なかでもタンパクの高次構造に重要な働きをしているジスルフィド(S-S)結合を形成するシステイン残基の変異が多い。これらの変異がTRAPSの病態形成にいかに関与するかは、いくつかの仮説が提唱されてきた。現時点では次のように考えられている。高次構造の異常によるmisfolding(タンパク質の折り畳みの不良)のため、変異1型TNF受容体は細胞表面へ輸送されずに小胞体内に停滞する。小胞体内の変異1型TNF受容体は、ミトコンドリアからのROS産生を介して細胞内のMAPキナーゼ脱リン酸化酵素を阻害することにより、定常状態でのMAPキナーゼを活性化状態にする。これだけでは炎症性サイトカイン産生の誘導は起こらないが、細菌感染などでToll様受容体からのシグナルが加わることにより、IL-1、IL-6、TNFなどの炎症性サイトカイン産生誘導が起こると考えられる。また、マクロファージなどのTNF産生細胞では、片方の対立遺伝子由来の正常なTNF受容体からのシグナルにより、炎症がパラクライン的に増幅されると考えられる3)。■ 症状TRAPSは常染色体優性の遺伝形式をとり、典型的な変異を示すものでは浸透率は85%以上と高い。発症年齢は同一家族内でも一定ではなく、乳児期から成人期に至るまで幅広い。症状の種類については2002年にHullらが提案したTRAPS診断指針を参照いただきたい(表1)4)。発作時には、38℃以上の発熱はほぼ必発であり、それに加えて腹痛、筋痛、皮疹、結膜炎、眼窩周囲浮腫、胸痛、関節痛などの随伴症状をともなう。わが国のTRAPS患者での個々の症状の頻度を表2に示す2)。表1 TRAPS診断指針1. 6ヵ月を超えて反復する炎症症状によるエピソードの存在(いくつかは同時にみられることが一般的)(1)発熱(2)腹痛(3)筋痛(移動性)(4)皮疹(筋痛を伴う紅斑様皮疹)(5)結膜炎・眼窩周囲浮腫(6)胸痛(7)関節痛、あるいは単関節滑膜炎2. エピソードの持続期間が(エピソードごとにさまざまだが)平均して5日を超える3. ステロイドに反応するがコルヒチンには反応しない4. 家族歴あり(いつも認められるとは限らない)5. どの人種、民族でも起こりうる画像を拡大する1)発熱最も特徴的でありTRAPSを疑うきっかけになる。1ヵ月~数ヵ月の間隔で不規則に繰り返す。発熱の期間は通常1~4週間であることが多く、平均21日程度である。2)腹痛日本人の頻度は欧米人に比べて少ない。腹膜炎や腸炎、腹壁の筋膜炎によって生じる。嘔気や便秘を伴うこともある。3)筋痛原因は筋炎というよりも筋膜炎と考えられている。症状は通常1ヵ所に起こり、発作期間中に寛解と増悪を繰り返す。4)皮疹(図1A)遠心性に移動性の紅斑であり筋痛の位置に一致することも多い。熱感と圧痛を有し、自然消退する。5)結膜炎・眼窩周囲浮腫(図1B)片側性または両側性の結膜炎、眼窩周囲浮腫、眼窩周囲痛が発作期間中に出現する。6)胸痛胸膜炎や胸壁の筋膜炎による症状である。7)関節痛非破壊性、非対称性で下肢の大関節に起きることが多い。画像を拡大する■ 予後TRAPSの長期予後については不明な点が多いが、経過とともに症状が増悪していく症例も、軽症化していく症例もみられる。長期的な経過では、ステロイド治療の副作用や、アミロイドーシスの合併が問題となる。欧米ではアミロイドーシスは10%の合併頻度であるが、わが国の全国調査ではアミロイドーシス合併例の報告はない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)2002年、Hullらは症状、家族歴などから構成される「TRAPS診断指針」を発表したが、これは診断基準ではなく、遺伝子検査の適応を判断するための指針であった(表1)。TRAPS診断のgold standardは遺伝子検査である。疾患関連性が明確なTNFRSF1A遺伝子異常は、CDR1、CDR2のシステインの変異、T50M変異などである。これらが認められれば診断は確定する。その一方で、病的意義の明らかではない多型も存在する。その代表は、欧米ではP46LとR92Qである。これらは欧米の健常人の数%に認められるため、病的意義について議論がある。P46LとR92QのTRAPSは浸透率が低く、軽症で予後が良い。わが国ではT61Iが最も多くのTRAPS患者から報告されているが、健常人にも約1%の対立遺伝子頻度で認めるため病的意義については議論がある6)。TNFRSF1A遺伝子異常のリストは、INFEVER websiteで参照できる。「自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立」研究班(研究代表者:平家俊男[京都大学]平成24-26年度 厚生労働省)では、前述の厚生労働省堀内班の研究結果を踏まえてTRAPS診療フローチャートを作成した。この診断フローチャートは、指定難病、小児慢性特定疾病の診断基準として利用されている(図2)。6ヵ月以上の炎症兆候の反復を必須条件とし、家族歴などの補助項目を満たす場合に遺伝子検査を推奨している。最終的な診断は遺伝子検査による。遺伝子検査結果の解釈は専門家への相談が必要である。画像を拡大する2015年、ヨーロッパの小児リウマチ学会(Paediatric Rheumatology International Trials Organisation:PRINTO)は、ヨーロッパを中心とした自己炎症症候群患者のデータベース(Eurofever registry)のデータを元に、家族性地中海熱、メバロン酸キナーゼ欠損症、クリオピリン関連周期熱症候群、TRAPSの予備的臨床的診断基準を作成し発表した(表3)7)。作成にあたり遺伝子検査で診断が確定した患者がgold standardとされた。TRAPSのP46LとR92Qのような浸透率の低い遺伝子異常や疾患関連性が不明な遺伝子異常は除外された。陰性対照群としてPFAPA症候群を加えた5疾患の患者群の臨床所見について多変量解析が行われ、各疾患を区別する項目が抽出され、そして、各項目をスコア化して診断基準が作成された。診断基準の適用については、感染症や他のリウマチ性疾患などを除外していることが重要な前提条件である。この予備的臨床的診断基準は、遺伝子検査の適応の判断や、疾患関連性が不明な遺伝子異常を有する患者の診断において参考にできる。将来的には、検査値や遺伝子検査と組み合わせた診断基準の作成が期待される。画像を拡大する症状は典型的な有熱性エピソードに関連してなければならない(感染症などの併存疾患を除外する)。†:末梢側へ向かって移動する紅斑であり、最も典型的には筋痛の部位を覆い、通常四肢または体幹に生じる。‡:東地中海:トルコ人、アルメニア人、非アシュケナージ系ユダヤ人、アラブ人  北地中海:イタリア人、スペイン人、ギリシャ人略称FMF:家族性地中海熱 MKD:メバロン酸キナーゼ欠損症 CAPS:クリオピリン関連周期熱症候群 TRAPS:TNF受容体関連周期性症候群■ 検査本症に疾患特異的なバイオマーカーはない。発作時に血沈、CRP、フィブリノゲン、フェリチン、血清アミロイドA蛋白などの急性期反応物質の増加が認められる。好中球の増加、慢性炎症に伴う小球性低色素性貧血、血小板の増加なども認められる。これらの検査値は発作間欠期にも正常ではないことがある。筋症状があっても、CK、アルドラーゼの上昇は認められない。最も重篤な合併症であるアミロイドーシスでは腎病変の頻度が高く、蛋白尿が認められるため、早期発見のために定期的な尿検査が推奨される。血清中の可溶型1型TNF受容体濃度の低値が特徴的とされていたが、TRAPSに特異的な所見とはいえず診断的意義は乏しいと考えられる。■ 鑑別診断ほかの周期性発熱を呈する疾患が挙げられる。ただし、筋痛や腹痛などが前景に立ち高熱が認められない症例、炎症性エピソードが周期的(反復性)ではなく慢性的に持続する患者などでもTRAPSの可能性はある。具体的には、家族性地中海熱、メバロン酸キナーゼ欠損症、クリオピリン関連周期熱症候群などの自己炎症疾患や全身型若年性特発性関節炎、成人スティル病、ベーチェット病などが鑑別に挙がる。TRAPS様症状の家族歴は、遺伝子異常の存在を予測する最も重要な因子である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)前述したわが国のTRAPS診断フローチャートに、治療(TRAPS診療の推奨)についての記述がある(表4)。また、2015年にPRINTOからTRAPSを含む自己炎症疾患の診療に関するエビデンスに基づいたレコメンデーションが発表された(表5)。発作時の短期的なNSAIDsもしくはステロイド投与が基本治療である。発作が軽症で頻度も年1、2回などと少ない場合、NSAIDsによる症状緩和のみでも対応可能である。わが国の診断フローチャートにある、経口プレドニゾロン(PSL)1mg/kg/日で開始し7~10日で減量・中止する方法(表4)は、HullらがTRAPS診断指針を発表した論文で推奨した方法である。留意事項に記載されているとおり、必要なステロイドの投与量や期間は、症例毎に、また同一症例でも発作ごとに異なり、状況に応じて判断していく必要がある。ステロイドは、当初効果があった症例でも次第に効果が減弱し、増量や継続投与を強いられる場合がある。重度の発作が頻発する場合、追加治療としてTNF阻害薬のエタネルセプト(商品名:エンブレル)とIL-1阻害薬カナキヌマブ(同:イラリス)が推奨されている。エタネルセプトは受容体製剤であるが、同じTNF阻害薬でも抗体製剤であるインフリキシマブ(同:レミケード)とアダリムマブ(同:ヒュミラ)はTRAPSで著しい増悪を起こした報告があり使用が推奨されない。また、エタネルセプトもステロイドと同様に効果が減弱するとの報告がある。PRINTOのレコメンデーションは、IL-1阻害薬の推奨度をより高く設定し、欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)は、TRAPSに対するIL-1阻害薬のカナキヌマブの使用を認可している。わが国でも2016年12月にカナキヌマブがTRAPSに対して適応が追加された。画像を拡大する表5 TRAPS診療の推奨画像を拡大するL:エビデンスレベル1B(randomised controlled study)、2A(controlled study without randomisation)、2B(quasi-experimental study)、3(descriptive study)、4(expert opinion)S:推奨の強さA(based on level 1 evidence)、B(based on level 2 or extrapolated from level 1)、C(based on level 3 or extrapolated from level 1 or 2)、D(based on level 4 or extrapolated from level 3 or 4 evidence)略称TRAPS:TNF受容体関連周期性症候群 MKD:メバロン酸キナーゼ欠損症 CAPS:クリオピリン関連周期熱症候群4 今後の展望TRAPSは国内の推定患者数が数十例の極めてまれな疾患だが、不明熱の診療などで鑑別疾患に挙がることは少なくない。TRAPS様症状の家族歴があるときには遺伝子検査が診断に最も有用であるが、保険適用はなく施行できる施設も限られており、容易にできる検査とは言い難い。日本免疫不全・自己炎症学会では、TRAPSを含めた関連疾患の遺伝子検査の保険適用を将来的に目指した検討を進めている。5 主たる診療科小児科、膠原病内科、血液内科、感染症内科、総合診療科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療研究情報INFEVER website(医療従事者向けのまとまった情報)一般社団法人日本免疫不全・自己炎症学会(医療従事者向けのまとまった情報)1)McDermott MF, et al. Cell. 1999;97:133-144.2)Ueda N, et al. Arthritis Rheumatol. 2016;68:2760-2771.3)Simon A, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107:9801-9806.4)Hull KM, et al. Medicine (Baltimore). 2002;81:349-368.5)Lachmann HJ, et al. Ann Rheum Dis. 2014;73:2160-2167.6)Horiuchi T. Intern Med. 2015;54:1957-1958.7)Federici S et al. Ann Rheum Dis. 2015;74:799-805.公開履歴初回2018年03月27日

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血清尿酸値上昇は高LDL-C/高TG血症リスク~日本人コホート研究

 高い血清尿酸(SUA)値は脂質異常症と関連するが、高尿酸血症がLDLコレステロールを増加させるかどうかは不明である。今回、コロラド大学の桑原 政成氏らが行った日本人のコホート研究により、SUA値の上昇が高LDLコレステロールおよび高トリグリセライド血症の発症リスクを増加させたことが初めて報告された。著者らは「この結果は心血管疾患におけるSUAの役割を解明するかもしれない」としている。International Journal of Cardiology誌オンライン版2018年3月13日号に掲載。 本研究は、2004年に聖路加国際病院(東京)で健康診断を受診し、2009年に再評価された健康な日本人成人6,476人(年齢:45.7±10.1歳、男性:2.243人)の後ろ向き5年コホート研究である。被験者には、ベースラインの検査で高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病ではなかった人、高尿酸血症/痛風の治療薬を投与されていた人が含まれた。年齢、BMI、喫煙・飲酒習慣、ベースラインの推定糸球体濾過率(eGFR)、ベースラインのSUA、5年間のSUAの変化について調整し分析した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインの高SUAは、男性(OR:1mg/dL増加当たり1.159、95%CI:1.009~1.331)、女性(OR:同1.215、95%CI:1.061~1.390)とも、高LDLコレステロール発症の独立したリスクであった。・その他の危険因子として、ベースラインの高LDLコレステロール、高BMI、ベースラインの高eGFRが認められた(女性では後者の2因子)。・5年間のSUAの増加は、高LDLコレステロールおよび高トリグリセライド血症発症の独立したリスクであったが、低HDLコレステロールについてはそうではなかった。■関連記事LDL-Cが高い人ほど心筋梗塞の予後良好!?

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統合失調症に対する抗精神病薬と抗うつ薬増強の有効性と安全性

 抗精神病薬で維持治療を行っている統合失調症患者に対する、抗うつ薬増強療法の有効性と安全性について、ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のB. Galling氏らが評価を行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌2018年3月号の報告。 PubMed、MEDLINE、PsycINFO、Cochrane Libraryより、データベースの初めから2017年10月10日までの、統合失調症に対する抗うつ薬増強療法の有効性に焦点を当てたプラセボ対照ランダム化二重盲検比較試験を、システマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・42件(1,934例、期間:10.1±8.1週)のランダム効果メタ解析では、抗うつ薬増強療法はプラセボと比較し、全体の症状に関して軽減が認められた(SMD:-0.37、95%CI:-0.57~-0.17、p<0.001)。これは陰性症状の改善(SMD:-0.25、95%CI:-0.44~-0.06、p=0.010)によるものであり、陽性症状(p=0.190)および全般症状(p=0.089)では改善が認められなかった。・第1世代抗精神病薬への抗うつ薬増強療法の研究において、陰性症状の優越性が認められたが(SMD:-0.42、95%CI:-0.77~-0.07、p=0.019)、第2世代抗精神病薬では認められなかった(p=0.144)。・NaSSAにおいてのみ、全体の症状軽減(SMD:-0.71、95%CI:-1.21~-0.20、p=0.006)の優越性は陰性症状(p=0.438)によるものではなく、陽性症状の改善(SMD:-0.43、95%CI:-0.77~-0.09、p=0.012)によりもたらされた。・抗うつ薬では、プラセボより優れたうつ症状の改善は認められなかった(p=0.185)。・抗うつ薬増強療法では、口渇(RR:1.57、95%CI:1.04~2.36、p=0.03)を除き、有害事象および全原因/特定の原因による試験中止との関連は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬で維持治療を行っている統合失調症患者に対して、抗うつ薬の追加は、全体の症状(とくに陰性症状)の軽減に有用である。しかし、その効果は軽度~中程度であり、抗うつ薬によっても異なり、また陰性症状の改善は第1世代抗精神病薬への増強療法に限られるようである」としている。■関連記事統合失調症への抗うつ薬追加は有益なのか統合失調症患者への抗うつ薬併用、効果はどの程度か統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか

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重症心不全への遠心流ポンプ、2年時も有用性持続/NEJM

 重症心不全患者への埋め込み型補助人工心臓による治療では、完全磁気浮上型遠心連続流ポンプ(HeartMate 3)が機械軸受軸流ポンプ(HeartMate II)に比べ、2年時の臨床アウトカムが良好であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが進めるMOMENTUM 3試験の2年間のフォローアップで示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年3月11日号に掲載された。遠心流ポンプは、デバイス内血栓症の防止を目的にデザインされた。本試験の早期解析では、6ヵ月時の臨床アウトカムは、遠心流ポンプが軸流ポンプに比べ改善したと報告されている。2年時の遠心流ポンプの非劣性と優越性を評価 MOMENTUM 3は、重症心不全患者における遠心流ポンプの軸流ポンプに対する非劣性と優越性を評価する非盲検無作為化試験である(Abbott社の助成による)。 対象は、ガイドラインで規定された医学的管理を行っても再発を認めた重症心不全患者であり、心臓移植への橋渡しか、恒久治療かは問わなかった。 主要エンドポイントは、2年時の後遺障害を伴う脳卒中(修正Rankinスコア[0~6点、点数が高いほど重症]>3点)の発現のない生存と、デバイス交換のための再手術またはデバイス不具合による除去が発生しない生存の複合であった。リスク差の非劣性マージンは、−10ポイントとした。 2014年9月~2015年11月の期間に、米国の69施設に366例が登録され、遠心流ポンプ群に190例、軸流ポンプ群には176例が割り付けられた。無イベント生存、ポンプ血栓症、脳卒中発症も改善 ベースラインの年齢中央値は、遠心流ポンプ群が65歳(範囲:19~81)、軸流ポンプ群は61歳(24~84)、男性がそれぞれ78.9%、81.2%を占めた。遠心流ポンプ群の1例、軸流ポンプ群の4例は植え込み術を受けなかった。 intention-to-treat(ITT)集団における2年時の主要エンドポイントの発生率は、遠心流ポンプ群が79.5%(151例)と、軸流ポンプ群の60.2%(106例)に対し非劣性(絶対差:19.2ポイント、95%信頼区間[CI]の下限値:9.8%、非劣性のp<0.001)であり、優越性(ハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.31~0.69、優越性のp<0.001)も示された。 ポンプ不具合による再手術の発生率は、遠心流ポンプ群が1.6%(3例)であり、軸流ポンプ群の17.0%(30例)に比べ有意に低かった(HR:0.08、95%CI:0.03~0.27、p<0.001)。また、死亡および後遺障害を伴う脳卒中の発生率は同等であったが、全脳卒中は遠心流ポンプ群が10.1%と、軸流ポンプ群の19.2%に比し有意に低かった(HR:0.47、95%CI:0.27~0.84、p=0.02)。 ITT集団におけるKaplan-Meier推定法による2年時の無イベント生存率(主要エンドポイント)は、遠心流ポンプ群が77.9%と、軸流ポンプ群の56.4%に比べ有意に優れた(HR:0.46、95%CI:0.31~0.69、log-rank検定のp<0.001)。 ポンプ血栓症(疑い)は、遠心流ポンプ群の1.1%(2例)にみられ、軸流ポンプ群の15.7%(27例、33件)に比べ有意に少なかった(HR:0.06、95%CI:0.01~0.26、p<0.001)。 脳卒中は、遠心流ポンプ群の10.1%(19例、22件)に発生し、軸流ポンプ群の19.2%(33例、43件)に比し有意に低率であり(HR:0.47、95%CI:0.27~0.84、p=0.02)、per-protocol集団における2年時の無脳卒中率はそれぞれ89.1%、76.3%(0.47、0.27~0.84、log-rank検定のp=0.008)と、遠心流ポンプ群が有意に良好であった。 出血は遠心流ポンプ群で少ない傾向を認めたが、有意な差はなかった(42.9 vs.52.3%、p=0.07)。死亡は、遠心流ポンプ群が30例、軸流ポンプ群は36例で、最も多い死因は両群とも右心不全、脳卒中、感染症であった。 著者は、「遠心流ポンプ群でポンプ血栓症の疑い例が2例みられたが、いずれもポンプ外での血栓形成に起因する可能性がある」と指摘している。

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授乳中の抗てんかん薬使用に関する母親への情報提供

 さまざまな抗てんかん薬の母乳中への移行、それによる乳児に対する影響についての情報は限られている。これらの問題が明らかとなっていないため、抗てんかん薬服用中の患者には母乳による育児を推奨することができない。スイス・ローザンヌ大学のM. Crettenand氏らは、授乳中の抗てんかん薬に関する利用可能なデータを包括的にレビューし、これらの情報を添付文書(SmPC)に記載されている内容と比較し、母乳育児中の女性にこれらの薬剤を使用するための推奨を提供するため、検討を行った。Der Nervenarzt誌オンライン版2018年2月27日号の報告。 23種類の抗てんかん薬の母乳育児データに関するシステマティックレビューを行った。授乳適合性スコアを作成し、検証を行った。システマティックレビューに基づく推定スコアは、添付文書に記載された推奨に基づく推定スコアとの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・授乳中における15種類の抗てんかん薬の投与および安全性に関するデータを含む75報を特定した。・レビューおよび添付文書に基づくスコア値の比較では、一致率が非常に低かった(重み付けκ係数:0.08)。・授乳中の抗てんかん薬として、適していると考えられる薬剤は以下5種類。 フェノバルビタール、プリミドン、カルバマゼピン、バルプロ酸、レベチラセタム・母乳育児中に、乳児の副作用を慎重に観察することができれば、推奨可能である薬剤は以下10種類。 フェニトイン、エトスクシミド、クロナゼパム、オクスカルバゼピン、ビガバトリン、トピラマート、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリギン、ゾニサミド・母乳育児によるリスクを適切に評価するためのデータが不十分なため、原則として推奨されないが、ケースバイケースで注意深く評価する必要がある薬剤は以下8種類。 mesuximide、クロバザム、ルフィナミド、felbamate、ラコサミド、スルチアム、ペランパネル、retigabine 著者らは「実際には、母乳育児を希望する抗てんかん薬治療を受けている母親ごとにリスクとベネフィットを分析し、患者と話し合う際には、個別のリスク要因を適切に考慮する必要がある」としている。■関連記事授乳中の気分安定薬は中止すべきか「妊娠、抗てんかん薬」検索結果は患者に役立つか?授乳中の抗精神病薬使用、適切な安全性評価が必要

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PCI予定のACSにスタチンのローディング投与は有益か/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による侵襲的管理(確定診断や冠動脈再建術の系統的評価を目的とした冠動脈造影)が予定されている急性冠症候群(ACS)患者に、アトルバスタチンの周術期ローディング投与を行っても、30日主要心血管イベント(MACE)発生率は低下せず、こうした患者へのアトルバスタチンのローディング投与を日常的に使用することは支持されないことが明らかとなった。ブラジル・Research Institute-Heart HospitalのOtavio Berwanger氏らが、同国53施設で実施した多施設無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「SECURE-PCI試験」の結果を報告した。これまで、大規模無作為化臨床試験において、心血管疾患の1次および2次予防としてのスタチンの有効性および安全性は確立されていたが、ACSで侵襲的管理が予定されている患者において、スタチンのローディング投与の臨床転帰への影響は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2018年3月11日号掲載の報告。30日MACE発生率をアトルバスタチンとプラセボで比較 研究グループは、2012年4月18日~2017年10月6日に、冠動脈造影に引き続き解剖学的に可能な場合はPCIを施行する予定のACS患者4,191例を、アトルバスタチン群(2,087例)とプラセボ群(2,104例)に無作為に割り付けた。アトルバスタチン群では、PCI施行前と施行24時間後にアトルバスタチン80mgを、プラセボ群では同様にプラセボを投与し、両群ともその後はアトルバスタチン40mg/日を30日間投与した。 主要評価項目は、30日MACE(全死因死亡・急性心筋梗塞・脳卒中・予定外の緊急再血行再建術の複合)発生率。30日アウトカムの最終フォローアップは2017年11月6日であった。ローディング投与の有効性は、無作為化された全例(intention-to-treat集団)を対象に、Cox回帰分析を用いハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で評価した。30日MACE発生率はローディング投与6.2%、プラセボ7.1%で有意差なし 無作為化を受けた4,191例(平均年齢61.8[SD 11.5]歳、女性1,085例[25.9%])のうち、4,163例(99.3%)が30日間のフォローアップを完遂した。また、2,710例(64.7%)がPCI、333例(8%)が冠動脈バイパス術、1,144例(27.3%)が内科的管理のみを受けた。 30日MACE発生率は、アトルバスタチン群6.2%(130例)、プラセボ群7.1%(149例)で、絶対差0.85%(95%CI:-0.70~2.41%)、HRは0.88(95%CI:0.69~1.11、p=0.27)であった。肝不全の症例は報告されなかったが、横紋筋融解症がプラセボ群でのみ3例(0.1%)報告された。 著者は研究の限界として、PCIが施行されなかったACS患者を組み込んでいること、最終的にACSの確定診断がつかなかった患者が約3%含まれていたことなどを挙げている。

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irAEと免疫チェックポイント阻害薬の効果:日本人患者のランドマーク解析 第14回【肺がんインタビュー】

肺がんinvestigatorインタビュー出演:近畿大学医学部 内科学教室 腫瘍内科部門 原谷 浩司氏Haratani K, et al. Association of Immune-Related Adverse Events With Nivolumab Efficacy in Non–Small-Cell Lung Cancer.JAMA Oncol. 2017 Sep 21.[Epub ahead of print]

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日本人アルツハイマー病に対するメマンチンのメタ解析

 第一三共株式会社のKaoru Okuizumi氏らは、アルツハイマー病(AD)患者に対する臨床的に有用な薬物治療を明らかにするため、臨床的悪化を評価するレスポンダー解析を用いて評価を行った。Expert opinion on pharmacotherapy誌オンライン版2018年3月6日号の報告。 本研究は、2つの24週間多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照研究のメタ解析として実施した。対象は、中等度~重度の日本人AD患者633例(メマンチン[20mg/日]群318例、プラセボ群315例)。 主な結果は以下のとおり。・メマンチン群とプラセボ群を比較した臨床的悪化の減少に対する全体的なオッズ比(OR)は、それぞれの総合評価尺度において統計学的に有意であった。 ◆重度認知症患者向けの認知機能評価尺度日本語版(Severe Impairment Battery:SIB-J)OR:0.52、95%CI:0.37~0.73、p=0.0001 ◆アルツハイマー病行動病理学尺度(Behavioral Pathology in AD Rating Scale: BEHAVE-AD)  OR:0.53、95%CI:0.37~0.75、p=0.0003 ◆SIB-Jと臨床面接による認知症変化印象尺度日本語版(Clinician's Interview-Based Impression of Change:CIBIC-plus-J)  OR:0.53、95%CI:0.37~0.77、p=0.0009・メマンチン群は、プラセボ群と比較し、SIB-J、BEHAVE-AD、CIBIC-plus-Jを組み合わせた評価尺度において、3重の悪化リスクの有意な減少が認められた(OR:0.38、95%CI:0.22~0.65、p=0.0003)。 著者らは「メマンチンは、AD患者の認知障害だけでなく、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を含むより広範な症状に対する治療選択肢でもある」としている。■関連記事中等度~高度AD患者にメマンチンは本当に有効か?―メタ解析結果より―ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度認知症患者の興奮症状に対するメマンチンの効果を検討

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