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経口アリピプラゾール前処置後の統合失調症患者における持効性注射剤の有効性

 実臨床におけるアリピプラゾール月1回投与(アリピプラゾール持効性注射剤:AOM)を使用した統合失調症治療の有効性について、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らが評価を行った。BMC Psychiatry誌2018年11月14日号の報告。 本研究は、多施設プロスペクティブ非介入研究として実施された。対象は、6ヵ月間のAOM治療をモニタリングされた統合失調症患者242例(年齢:43.1±15.1歳、男性の割合:55.0%)。評価項目は、精神病理学的尺度(簡易精神症状評価尺度:BPRS)、疾病重症度尺度(臨床全般印象度-重症度:CGI-S、臨床全般印象度-改善度:CGI-I)とした。また、治療関連有害事象(TRAE)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均BPRS合計スコアは54.1±15.6であった。平均CGI-Sスコアは4.8±0.8であり、「顕著な精神疾患(markedly ill)」が最も高頻度に認められた(41.7%)。・経口アリピプラゾールによる前処置の平均期間は、9.7ヵ月(標準偏差[SD]:22.3)であり、平均5.9ヵ月で87.9%が臨床医より「臨床的に安定している」と判断された。・6ヵ月後の全体的なBPRSスコアの差は、-13.8(SD:16.0、95%信頼区間:-15.9~-11.7、p<0.001)であった。・高CGI-Sスコア患者が有意に減少し(p<0.001)、低CGI-Sスコア患者が有意に増加した(p<0.001)。・35歳以下の若年患者において、BPRSスコアはとくに良好な改善が認められ、CGI-Sスコアは有意な低下が認められた。・TRAEはまれであり、錐体外路症状(2.9%)および体重増加(0.4%)の発生率は低かった。 著者らは「AOM治療は、長期にわたる経口アリピプラゾールにより精神症状が改善し、臨床的に安定していると判断された外来統合失調症患者に対し、さらなる有効性が示唆された。AOMの治療効果は、これまでの無作為化比較試験での結果と同様に、実臨床においても実証される」としている。■関連記事うつ病に対するアリピプラゾール増強療法の実臨床における有効性と安全性ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの体重変化への影響アリピプラゾール維持治療の52週RCT結果

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臨床研究で患者登録増に影響を与える要素とは/BMJ

 英国・オックスフォード大学のJoanna C. Crocker氏らは、臨床試験の登録率や維持率への患者・市民参画(patient and public involvement:PPI)の影響、ならびにその影響が患者・市民参画の状況(対象患者集団、募集要件、臨床試験の介入/治療など)や特性(活性度、参画モデルなど)でどのように変化するかを調査した。システマティックレビューとメタ解析による検討の結果、とくに実際に臨床試験に参加した経験のある人が患者・市民参画に含まれている場合に、臨床試験の患者登録が改善する傾向が認められ、臨床試験における患者・市民参画の影響は大きいことが示された。著者は、「患者・市民参画に関しては、個々の状況でどのタイプが最も機能するか、費用対効果、試験計画の初期段階での影響、および維持に関する影響について評価するさらなる研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2018年11月28日号掲載の報告。患者・市民参画の有無で臨床研究への登録率や維持率をメタ解析 研究グループは、10の電子データベース(Medline、INVOLVE Evidence Library、clinical trial registriesなど)を検索し、臨床試験への登録率や維持率に対する患者・市民参画の影響を、患者・市民参画なしまたは患者・市民参画以外の介入と比較し定量的に評価した実証研究および観察研究を特定した。患者・市民参画には、患者・市民参画と切り離せないそれ以外の要素(他の利害関係者の関与など)が加わったものも含めた。 2人の独立した研究者が、登録率および維持率、ならびに患者・市民参画の状況や特性に関するデータを抽出し、バイアスリスクを評価した。ランダム効果メタ解析により、臨床試験における登録と維持に対する患者・市民参画の平均的な影響を算出。主要解析には無作為化試験のみを組み込み、副次解析として非無作為化試験を組み込んだ解析、いくつかの探索的サブグループ解析および感度解析も行った。患者・市民参画により登録率は1.16倍 26件の研究がレビューに組み込まれた(登録に関するメタ解析19件、維持に関するメタ解析5件)。臨床試験への患者・市民参画には、関与の程度、関与する人の数やタイプ、臨床試験における一連の過程のどの段階で関与するかなど、さまざまな違いが確認された。 登録に関しては、主要解析では、患者・市民参画により被験者登録の可能性が若干ではあるものの有意に増加することが示された(オッズ比[OR]:1.16、95%信頼区間[CI]および予測区間[prediction interval]:1.01~1.34)。なお、この結果には患者・市民参画ではない介入要素が影響を与えた可能性があった。また、探索的サブグループ解析では、臨床試験に実際に参加した経験のある人が関与することが、登録の改善と有意に関連した(OR:3.14 vs.1.07、p=0.02)。 一方、維持に関しては、適格試験が少なく結論は得られなかった(主要解析のOR:1.16、95%信頼区間:0.33~4.14)。

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日本の校長と教頭におけるうつ病と職業性ストレス

 教育は、最もストレスの多い職業の1つである。過去10年間で、年間約5,000人の日本人の公立学校教師が、精神疾患を発症している。学校の校長や教頭も職業上のストレスに直面していると考えられるが、これらの職業性ストレスについては、ほとんど検討されていなかった。大阪市立大学の新田 朋子氏らは、日本の校長および教頭における職業性ストレス、役割の問題、抑うつ症状との関係について検討を行った。Occupational Medicine誌オンライン版2018年11月14日号の報告。 校長262人、教頭268人を対象に、2013年の横断研究のデータを用いて検討を行った。抑うつ症状の評価には、うつ性自己評価尺度(SDS)日本語版を用い、職業性ストレスと社会的支援の評価には、職業性ストレス調査票(GJSQ)を用いた。SDSスコア49点以上をうつ病と定義した。抑うつ症状と認知された職業性ストレスとの関係は、変数増減法多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・校長の36人(14%)、教頭の81人(30%)がうつ病と評価された。・校長において、量的作業負荷(オッズ比[OR]:6.62、95%CI:2.63~16.70)、役割のあいまいさ(OR:4.94、95%CI:1.57~15.53)が抑うつ症状スコアの上昇と関連していた。・教頭において、管理者からの社会的支援(OR:4.14、95%CI:1.97~8.68)、役割のあいまいさ(OR:9.71、95%CI:4.08~23.14)が抑うつ症状スコアの上昇と関連していた。 著者らは「日本の校長や教頭のメンタルヘルスを改善するためには、両者の職務を明確にし、校長の量的作業負荷の軽減、教頭に対する管理者からのサポートの増加が重要である」としている。■関連記事日本人教師における仕事のストレスと危険なアルコール消費の性差に関する横断研究職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのかストレスやうつ病に対する朝食の質の重要性

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第17回 内科からのレボフロキサシンの処方(後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1予想される原因菌は?Q2患者さんに確認することは?Q3 疑義照会する?しない・・・8人PRSPを想定? 荒川隆之さん(病院)しません。経口へのスイッチングの場合、わざわざブロードスペクトルであるレボフロキサシンにする必要性は低く、クラブラン酸/アモキシシリンなどでもよい気はするのですが、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)を想定されているのかもしれません。ガイドラインを参考に 奥村雪男さん(薬局)疑義照会しないと思います。JAID/JSC感染症治療ガイド2014でdefinitive therapyとして推奨される治療に、PSSP外来治療の第二選択と、PRSP外来治療の第一選択にレボフロキサシンが記載されています。投与期間については、「症状および検査所見の改善に応じて決定する。5~7日間が目安となる」とあるので、セフトリアキソン4日間+レボフロキサシン5日間で、不自然な日数ではないと思います。する・・・3人ガレノキサシンへの変更提案 清水直明さん(病院)発熱・呼吸器症状・食欲不振があるので、喘息発作ではなく呼吸器感染症と考えます。本来、肺炎球菌と確定しているのならば高用量ペニシリンを推奨すべきところですが、肺炎球菌の検査をしたかどうか、胸部レントゲンも撮ったかどうか不明確ですので、外来静注抗菌薬療法後のスイッチ療法としてはキノロン系抗菌薬もありだと思います。ただし、幾つかの成書から呼吸器感染症に対してはレボフロキサシンよりもガレノキサシンが有効性が高いと思いますし、特に、肺炎球菌に対してはレボフロキサシンとガレノキサシンのMICは結構異なっているので、「レボフロキサシン500mgでも特別問題ないかもしれませんが、より有効性を期待するという意味で、ジェニナック®錠 1回400mg 1日1回をお勧めします」と提案します。アモキシシリン高用量かアジスロマイシン単回投与に JITHURYOUさん(病院)疑義照会します。喘鳴がなく、熱があることを考えると、喘息発作ではなく呼吸器感染症でいいと思います。食欲がない、発熱からも肺炎の可能性があると考えます。その場合、呼吸器学会の鑑別基準でいくと、1~5の項目で3項目が該当するため非定型肺炎の可能性があると思われます。喘息があることや、非定型のカバーを考えるとレボフロキサシン経口内服指示は理解できます。しかし、セフトリアキソン点滴に効果があることから非定型肺炎はカバーしなくてよいと思います。PRSPである場合は、レボフロキサシン投与もうなずけます。しかし、結核のリスクがあること、喘息の管理としてステロイド吸入やマクロライド系抗菌薬を使用していないこと、飲酒習慣などもなく耐性菌リスクが少ないのではないかと考えられるため、今回のレボフロキサシンの処方は一考した方がいいのではないかと考えました。アモキシシリン高用量かアジスロマイシン単回投与(アドヒアランス考慮)を提案すると思います。細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別1.年齢60 歳未満2.基礎疾患がない、あるいは軽微3.頑固な咳嗽がある4.胸部聴診上所見が乏しい5.喀痰がない、あるいは迅速診断で原因菌らしきものがない6.末梢血白血球数が10,000/μL未満である1-6の6項目中4項目以上合致した場合、非定型肺炎の感度77.9%、特異度93.0%。1-5の5項目中3項目以上合致した場合、非定型肺炎の感度83.9%、特異度87.0%日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会.成人市中肺炎診療ガイドライン.東京、日本呼吸器学会、2007.Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?再受診のタイミングや他院受診時の注意 ふな3さん(薬局)必ず指示された日(3日後)から服用を開始すること食欲がなくても、食事が取れなくても、毎日必ず1錠服用すること症状が改善しても5 日分服用を続けること服薬して3日以上(=治療開始から7日以上)経過しても症状が改善しない場合には、すぐに医療機関を再受診すること他院(喘息治療など)に通院の際は、必ずレボフロキサシンを服用中であることを伝えることしっかり飲みきることと副作用について JITHURYOUさん(病院)耐性菌が出現しないよう、しっかり飲み切ること。確率は低いですが、アキレス腱炎や痙攣、光線過敏症などに気を付けること。患者さんへの説明例 清水直明さん(病院)「薬のせいでお腹が緩くなることがあります。我慢できる程度の軽い症状ならば抗菌薬をやめれば戻るので問題ありませんが、ひどい場合には服用を中止してご連絡ください」「牛乳などの乳製品や一部の制酸薬や下剤、貧血の薬(鉄剤)と一緒に服用すると効果が弱くなる可能性があるので、抗菌薬服用の前後2時間はそれらの摂取を避けるようにしてください」併用薬はなしとのことですが、OTCやサプリメントを服用している可能性はあり、その中に相互作用を起こすアルミニウムやマグネシウムなどが入っていることがあるので、一応伝えておきます。結核検査をしていた場合 キャンプ人さん(病院)「4日間点滴後の内服薬なので、飲み始める日にちを間違えないようにしてください」と言います。結核の検査をしていたなら、病院から検査結果の連絡があれば必ず受診するなど、そのままほったらかしにしないよう説明します。車の運転について 柏木紀久さん(薬局)3日後からの服用を理解しているかの確認と、5日間きちんと服用してもらうこと。車や機械などの運転を極力控えること。Q5 その他、気付いたことは?肺炎球菌→レボフロキサシン? 中堅薬剤師さん(薬局)肺炎球菌にすぐレボフロキサシン、はオーバートリートメントかな、と個人的に思います。できれば、アモキシシリン5~7日の投与で十分とコメントしたいです。地域のアンチバイオグラムは? 荒川隆之さん(病院)原因菌も肺炎球菌とされているので、通常ならレボフロキサシンではなく、クラブラン酸/アモキシシリンなどの経口の方が適しているものと考えますが、原因菌がPRSPであった場合は、レボフロキサシンでもよいのかもしれません。PRSPかどうかは尿中抗原などでは診断が付かず、培養の結果を待たなければなりません。喀痰培養などで肺炎球菌は増殖しづらく、処方の時点でPRSPだと断定はできていないものと考えます。地域のアンチバイオグラムにおいてPRSPの頻度が高い地域なのでしょうか。処方タイミング ふな3さん(薬局)4日間の点滴での容体の変化を見て、その後の抗菌薬フォローアップを決めるのが一般的だと思うので、なぜこのタイミングで処方なのかは疑問です。GWや年末年始でクローズする調剤薬局が多いタイミングだったのでしょうか。治療後の残存症状として、喘息症状の遷延や悪化があった場合、喘息治療薬も必要になる可能性があるので、やはり点滴投与後の処方が望ましいと感じます。また、出勤などは控えるように伝えられているのではと思うので、その点も確認したいです。肺炎球菌の耐性度は、ほとんどが中等度まで 奥村雪男さん(薬局)薬剤耐性対策としては可能であれば、レボフロキサシンより高用量のアモキシシリンなどのペニシリンが好ましかったのではと思います。日常診療で遭遇するほとんどの肺炎球菌はせいぜい中等度耐性(MICが1~2μg/mL)であり、高用量のペニシリンで対応可能とされています1)。処方例としては、アモキシシリン500~1,000mgの1日3~4回経口が挙げられています。感受性の結果次第ではペニシリン系を提案 児玉暁人さん(病院)セフトリアキソンで効果があるようであれば、レボフロキサシンでなくてもよいかもしれません。喀痰培養で感受性結果が分かれば、自信を持ってペニシリン系を処方できると思います。判定が早いので迅速キットでの検査だったのかもしれません。検査室がありグラム染色ができれば、その日でも肺炎球菌を想定はできますが。初日に培養を出せば4日目の点滴時には感受性結果が出るはずですので、そこで抗菌薬を決めて処方箋を出すというのでもいいのでは。検査が外注だとそうはいかないのですが。喘息の定期受診と生活指導 JITHURYOUさん(病院)喘息で併用薬なしということですが、本当に定期的な受診をしているのかは不明です。日常生活の支障がないのでしょう。しかし、発作がなくてもステロイド吸入で気道リモデリングの予防と喘息死の予防をすることは欠かせないこと、感染症が発作の引き金になるので合わせて定期受診すべきであることを伝えたいです。男性一人暮らし、ハウスダストアレルギーなので定期的な部屋の掃除なども指導したいですね。また、患者の身長体重から、BMIは17.31となります。やせ型の若い男性で気胸のリスクがあるので、咳が続き胸痛や呼吸困難などの症状があれば受診するように指導します(登山や出張などで飛行機など乗ること、楽器演奏、激しい運動などは治療が終わるまでできれば避けること)。さらに可能であれば、運動を少しずつしていき筋肉や体力をつけていき、呼吸器感染症や喘息、気胸予防をしていくように指導したいです。後日談(担当した薬剤師から)翌週、無事に回復しましたと処方箋を持って来局。咳症状が少し残っていたのでしょう、デキストロメトルファン錠15mgとカルボシステイン錠250mgを1回2 錠 1日3回 毎食後7日分を受け取って帰られました。後日談について 中堅薬剤師さん(薬局)後日談の咳が残るという主訴(おそらく感染後咳嗽)に対して、デキストロメトルファンは微妙かなあと感じました。呼吸器門前で働いてきた経験から、むやみな鎮咳剤投与は無意味ではないか、と考えるようになったからです。本当につらい咳なら、コデイン投与で間欠的にするべきですし、そもそもの治療が奏功していない可能性もあります。そんなにひどくない咳であれば、麦門冬湯でもよいと思います。1)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.[PharmaTribune 2017年7月号掲載]

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PRP療法、顔の若返りに効果なし

 顔の若返りに対する多血小板血漿(PRP)療法の有益性を確認した実験的な証拠はほとんどなく無作為化試験は行われていない。米国・ノースウェスタン大学のMurad Alam氏らは、光によって皮膚障害を受けた顔の皮膚のきめや血色などの外観が、PRP療法によって改善するかどうかを調査した。その結果、盲検下での患者評価ではPRP注入部位は滅菌生理食塩水の注入部位と比較して肌のきめやしわが有意に改善したものの、医師評価によるphotoaging scoresには有意差が認められなかったことが明らかになった。著者は、「参加者も評価者も、PRP療法が優れているというのは名ばかりであることがわかった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年11月7日号掲載の報告。PRP療法群は皮膚科専門医による評価で有意差はなかった 研究グループは、2012年8月21日~2016年2月16日の期間に、シカゴにある大学病院の皮膚科専門外来において被験者と評価者を盲検下でグループ分けし、無作為化試験を実施した。対象者は、Glogauの分類でII以上のしわが両頬にある18~70歳の成人で、片方の頬にPRP、もう一方の頬に対照薬として滅菌生理食塩水を、それぞれ3mLずつ皮内注射した。 主要評価項目は、photoaging scores(サブスコア:小じわ、斑状色素沈着、肌荒れ、皮膚の血色)で、2人の皮膚科医師が盲検下で評価した。副次評価項目は、被験者の自己評価で、5段階評価の改善度(悪化、不変、軽度改善、中等度改善、有意に改善)、4段階評価の満足度(不満、少し満足、やや満足、とても満足)、被験者と評価者によって報告された有害事象であった。 PRP療法の効果を調査した主な結果は以下のとおり。・27例が登録され、解析対象は19例であった(平均年齢[±SD]:46.37±10.88歳、女性17例)。・有害事象として、発赤(18例)、腫脹(16例)、傷痕(14例)、そう痒(1例)、皮膚落屑(1例)、皮膚乾燥(1例)が報告されたが、治療との関連は否定された。12ヵ月時に報告された有害事象はなかった。・2人の皮膚科専門医によって盲検下で評価されたphotoaging scoresは、PRP療法群と対照群で有意差はなかった。また、ベースライン、2週間後、3ヵ月後および6ヵ月後のphotoaging scores(PRP vs.対照、平均[±SD])は以下のとおり。- 小じわ1.00±0.75 vs.1.05±0.78、0.95±0.71 vs.0.95±0.71、0.95±0.71 vs.0.95±0.71、0.95±0.71 vs.0.95±0.71- 斑状色素沈着1.21±0.53 vs.1.21±0.54、1.16±0.60 vs.1.16±0.60、1.00±0.47 vs.1.11±0.46、1.16±0.69 vs.1.16±0.69- 肌荒れ0.47±0.61 vs.0.47±0.61、0.47±0.61 vs.0.47±0.61、0.47±0.61 vs.0.47±0.61、0.37±0.60 vs.0.37±0.68- 皮膚の血色1.11±0.88 vs.1.11±0.88、0.95±0.85 vs.0.95±0.85、0.58±0.61 vs.0.58±0.61、0.37±0.68 vs.0.37±0.68・単回投与後6ヵ月時点では、被験者の自己評価においてPRPで治療した頬は対照と比較し有意に改善した。自己評価スコア(平均[±SD])は、肌のきめが2.00±1.20 vs.1.21±0.54(p=0.02)、しわが1.74±0.99 vs.1.21±0.54(p=0.03)であった。

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リナグリプチン、高リスク2型DMでのCV・腎アウトカムは/JAMA

 心血管および腎リスクが高い2型糖尿病の成人患者では、通常治療と選択的DPP-4阻害薬リナグリプチンの併用療法は、主要な心血管イベントのリスクがプラセボに対し非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCARMELINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2018年11月9日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクの増加と関連する。これまでに実施された3つのDPP-4阻害薬の臨床試験では、心血管への安全性が示されているが、これらの試験に含まれる高い心血管リスクおよび慢性腎臓病を有する患者の数は限定的だという。心血管・腎アウトカムへの影響を評価するプラセボ対照非劣性試験 研究グループは、心血管および腎イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において、心血管および腎アウトカムに及ぼすリナグリプチンの影響の評価を目的に、プラセボ対照無作為化非劣性試験を行った(Boehringer IngelheimとEli Lillyの助成による)。 対象は、HbA1cが6.5~10.0%で、高い心血管リスク(冠動脈疾患、脳卒中、末梢血管疾患の既往、微量・顕性アルブミン尿[尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)>30mg/g])および腎リスク(推定糸球体濾過量[eGFR]が45~75mL/分/1.73m2かつUACR>200mg/g、またはUACRにかかわらずeGFRが15~45mL/分/1.73m2)を有する2型糖尿病患者であった。末期腎不全(ESRD)患者は除外された。 被験者は、通常治療に加え、リナグリプチン(5mg、1日1回)を投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。臨床的必要性および参加施設のガイドラインに基づき、他の血糖降下薬およびインスリンの使用は可能とされた。 主要心血管アウトカムは、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合の初回発生までの期間とした。非劣性の判定基準は、リナグリプチンのプラセボに対するハザード比(HR)の両側95%信頼区間(CI)の上限値が1.3未満の場合とした。副次腎アウトカムは、腎不全による死亡、ESRD、eGFRのベースラインから40%以上の低下の持続とした。 2013年8月~2016年8月の期間に、27ヵ国605施設に6,991例が登録され、6,979例(リナグリプチン群3,494例、プラセボ群3,485例)が1回以上の試験薬の投与を受けた。このうち98.7%が試験を完遂した。主要心血管アウトカム:12.4% vs.12.1%、副次腎アウトカム:9.4% vs.8.8% ベースラインの全体の平均年齢は65.9歳、eGFRは54.6mL/分/1.73m2、UACR>30mg/gの患者の割合は80.1%であった。57%が心血管疾患を有し、74%が腎臓病(eGFR<60mL/分/1.73m2あるいはUACR>300mg/gCr)であり、33%が心血管疾患と腎臓病の双方に罹患しており、15.2%はeGFR<30mL/分/1.73m2であった。 フォローアップ期間中央値2.2年における主要心血管アウトカムの発生率は、リナグリプチン群が12.4%(434/3,494例)、プラセボ群は12.1%(420/3,485例)で、100人年当たりの絶対発生率差は0.13(95%CI:-0.63~0.90)であり、リナグリプチン群はプラセボ群に対し非劣性であった(HR:1.02、95%CI:0.89~1.17、非劣性のp<0.001)。優越性には、統計学的に有意な差はなかった(p=0.74)。 副次腎アウトカムの発生率は、リナグリプチン群が9.4%(327/3,494例)、プラセボ群は8.8%(306/3,485例)で、100人年当たりの絶対発生率差は0.22(95%CI:-0.52~0.97)であり、優越性に関して統計学的に有意な差は認めなかった(HR:1.04、95%CI:0.89~1.22、p=0.62)。 有害事象の発生率は、リナグリプチン群が77.2%(2,697/3,494例)、プラセボ群は78.1%(2,723/3,485例)であった。低血糖エピソードが1回以上発現した患者の割合は、それぞれ29.7%(1,036例)、29.4%(1,024例)であり、急性膵炎は0.3%(9例)、0.1%(5例)に認められた。 著者は、「本試験全体の高い主要心血管イベントの発生率(5.63/100人年)は、これまでの血糖降下薬の心血管アウトカムに関する検討の中でも最もリスクの高いコホートの1つを登録したこの試験が、2型糖尿病治療薬の心血管安全性の評価に関するFDAの必要条件に従って実施され、腎障害への臨床的影響を明らかにしたことを示すものである」としている。

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とうとうCONSENSUS試験が古典になる日が来るのか?(解説:絹川弘一郎氏)-966

オリジナルニュース急性非代償性心不全例へのARNi、ACE阻害薬よりNT-proBNP濃度が低下:PIONEER-HF/AHA(2018/11/16掲載) 今年のAHAは豊作であった。Late breakingでDECLARE試験の発表があり、そしてsacubitril/バルサルタン(ARNi:アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)の新たなエビデンスがこのPIONEER-HF試験1)で加わった。2014年にARNiがACE阻害薬とのRCT(PARADIGM-HF試験)2)でHFrEFの予後を改善することが示されたのは衝撃であり、1987年CONSENSUS試験3)以来王座を死守してきたACE阻害薬の牙城が崩れたかに思えた。しかし、FDAの認可基準はあくまでもRAS阻害薬を含むGDMTを4週間以上施行してなお心不全症状の残ったHFrEF患者に対するACE阻害薬またはARBからの切り替え、というものであり、de novoの患者に最初から投与することはできなかった。 このPIONEER-HF試験はタイトルを読むといかにも急性心不全に対する効果をみたような印象を受けるが、そうではない。非代償性心不全で入院した患者を対象とはするものの、血行動態を安定化させてから神経体液性因子の阻害薬を導入または増量するフェーズでARNiにするか、ACE阻害薬にするかに割り付けたものである。であるからして、亜急性期と言って良いが、NT-proBNPは入院時に4,000台後半から割り付け時には2,000台後半になっており、かなりよくコントロールされた状態での開始である。もともと8週間しか観察期間を設けておらず、短期間なのでプライマリーエンドポイントはNT-proBNPの変化率である。 今回、NT-proBNPの減少率がARNiで有意に大きかったことから、この試験としては成功であり、そのあとのことはPARADIGM-HF試験での長期予後で外挿すれば足りると考えられる。観察時間が短いことから、大半の臨床的エンドポイントは有意差がつかなかったが、重篤な複合エンドポイント(死亡、心不全再入院、VAD植込み、移植登録)は46%減少した。このようなデータを見るとACE阻害薬はいずれARNiに取って代わられるのは決定的であると感じた。この試験の骨子はサロゲートマーカーがより改善したというだけであり、それだけを見るとなぜNEJM? なぜラストオーサーがBraunwald?と首をひねるところであるが、ACE阻害薬からの切り替えしか認められていないところを大きく変えるデータとしてのインパクトがある。 このPIONEER-HF試験の対象患者の3割はde novo患者であり、半分以上RAS阻害薬が投与されていない。すなわち、血行動態が安定したら速やかにARNiを最初から導入したほうが良いということであり、もはやACE阻害薬の出番は非常に限定的とならざるをえない。ただし、ARNiは降圧作用が強く、これまでの臨床試験では収縮期血圧100mmHg以上をエントリー基準としている。実臨床的にはこれ以下の重症例も存在するので、その場合にはACE阻害薬を少量で開始してということになるかもしれない。わが国における臨床試験はPARALLEL-HF 4)という名前ですでに開始されており、いずれ承認される見込みである。 ただ、わが国において使用する場合、用量設定がやや気にかかる。最小用量の剤型がsacubitril 24mg+バルサルタン26mgを1日2回であり、1日量としてバルサルタンが52mgであるが、配合剤にしたことで力価が変わるようで80mg相当になるそうである。心不全患者で現状バルサルタン80mgを初期量として処方することは少ないと考えられる。もう半分量の剤型があれば使い勝手が良いと思う。また、最大用量の剤型はsacubitril 97mg+バルサルタン103mgを1日2回でバルサルタン320mg相当ということであるが、わが国においてバルサルタン320mgを飲んでいる人は高血圧患者といえども皆無であると思われる。そもそも最大承認用量が160mgである。 PARALLEL-HF試験では最大用量をsacubitril 97mg+バルサルタン103mgを1日2回と海外同様に設定しており、実際どの程度日本人で忍容性があったかも興味深い。いずれにせよ、長年HFrEF治療の金字塔であったCONSENSUS試験が文献的価値のみを有する日がすぐそこまで来ているようだ。

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双極性障害に併存する不安障害の治療

 不安障害は、双極性障害患者において最もよく認められる併存疾患である。米国・パデュー大学のCarol A. Ott氏は、不安障害の治療に関して、現時点での情報をまとめた。The Mental Health Clinician誌2018年11月1日号の報告。不安障害への対処として気分安定薬による治療が確立されるべき 不安障害の治療に関する主なまとめは以下のとおり。・併存する不安障害の診断は、双極性障害の症状重症度に有意な影響を及ぼし、自殺念慮のリスクを上昇させ、心理社会的機能やQOLを低下させる可能性がある。・CANMAT(Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments)タスクフォースは、2012年に治療法の推奨事項を公表しており、併用治療薬として、特定の抗けいれん気分安定薬と第2世代抗精神病薬を選択肢として挙げている。・セロトニン作動性抗うつ薬は、ほとんどの不安障害の治療に対して第1選択薬とされているが、双極性障害患者では問題となることがある。・双極性障害での抗うつ薬の使用は、躁転リスクや気分の潜在的な不安定化と関連している。・不安障害を併発した双極性障害患者および不安障害患者における不安障害への対処として、他の薬剤を併用する前に、気分安定薬による治療が確立されるべきである。・ベンゾジアゼピンは、CANMATタスクフォースの推奨では、第3選択療法とされているが、不安障害を併発した双極性障害患者、PTSD(心的外傷後ストレス障害)患者、物質使用障害患者では避けるべきである。・現在の臨床研究に基づき、ベンゾジアゼピン使用は、すべての患者において可能な限り避けなければならない。・対人関係療法、認知行動療法、リラクゼーション療法は、不安症状(とくに感情的体験)の治療に対し有効である。■関連記事双極性障害と全般性不安障害は高頻度に合併双極性障害患者の約半数が不安障害を併存双極性障害に対するベンゾジアゼピンの使用開始と長期使用

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HPV陽性中咽頭がんへのセツキシマブ、5年生存率と毒性は/Lancet

 HPV陽性中咽頭がんについて、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは放射線療法+シスプラチンに対し、全生存(OS)および無増悪生存(PFS)ともに劣性であることが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaura L. Gillison氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験「RTOG 1016試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。放射線療法+高用量(100mg/m2)シスプラチンによるHPV陽性中咽頭がん治療の生存率は高いが(3年生存率はHPV陽性82.4%、HPV陰性57.1%)、若年患者における生存率の高さが、治療関連の後発性毒性への懸念を増している。シスプラチンの代わりにセツキシマブを併用したレジメンが、高い生存率を維持し治療関連の毒性を低下するかは不明であった。米国とカナダ182施設で、無作為化非劣性試験 セツキシマブが相当の患者生存率を維持し、急性および遅発性の毒性を低下するかを検討したRTOG 1016試験は、米国およびカナダのヘルスケアセンター182ヵ所で行われた。組織学的に確認されたHPV陽性中咽頭がんで、米国がん合同委員会(AJCC)第7版臨床基準のTNM分類でT1~T2・N2a~N3・M0またはT3~T4・N0~N3・M0、Zubrodパフォーマンスステータス0または1、18歳以上であり、適切な骨髄・肝・腎機能の患者を適格とした。 患者を無作為に1対1の割合で、放射線療法+セツキシマブ(放射線療法前に5~7日間400mg/m2を負荷投与し放射線療法後は週1回250mg/m2を7回投与:合計2,150mg/m2)、または放射線療法+シスプラチン(放射線照射1日目と22日目に100mg/m2を投与:合計200mg/m2)を受けるように割り付けた。放射線療法はいずれも、週に6回(1日に2回、6時間以上間隔で)を6週間、35回で計70Gyを照射した。 無作為化はランダム置換ブロック法を用いて均等に行った。また、T分類(T1~T2 vs.T3~T4)、N分類(N0~N2a vs.N2b~N3)、Zubrodパフォーマンスステータス(0 vs.1)および喫煙歴(10 pack-years以下vs.10 pack-years超)による層別化もした。 主要評価項目は、OS(無作為化からあらゆる死亡までの期間と定義)。非劣性のマージンは1.45とした。主要解析は、適格基準を満たした全患者を包含した修正intention-to-treat(ITT)に基づき行った。セツキシマブのシスプラチンに対する非劣性示されず 2011年6月9日~2014年7月31日に987例が試験に登録され、849例が無作為化を受けた(放射線療法+セツキシマブ群:425例、放射線療法+シスプラチン群:424例)。修正ITT集団には、セツキシマブ群399例、シスプラチン群406例が包含された。 追跡期間中央値4.5年後、セツキシマブ群はシスプラチン群に対しOSに関する非劣性基準を満たさなかった(ハザード比[HR]:1.45、95%片側信頼区間[CI]上限値:1.94、非劣性のp=0.5056、片側log検定のp=0.0163)。 約5年のOS率は、セツキシマブ群77.9%(95%CI:73.4~82.5)、シスプラチン群84.6%(80.6~88.6)であった。同じくPFS率は、セツキシマブ群(67.3%、95%CI:62.4~72.2)がシスプラチン群(78.4%、73.8~83.0)と比較して有意に低かった(HR:1.72、95%CI:1.29~2.29、p=0.0002)。また、5年間についてみた局所再発率は、セツキシマブ群(17.3%、95%CI:13.7~21.4)がシスプラチン群(9.9%、6.9~13.6)と比較して有意に高かった(HR:2.05、95%CI:1.35~3.10)。 急性の中等度~重度毒性の発現率(77.4%[95%CI:73.0~81.5]vs.81.7%[77.5~85.3]、p=0.1586)、遅発性の中等度~重度毒性(16.5%[12.9~20.7]vs.20.4%[16.4~24.8]、p=0.1904)は、セツキシマブ群とシスプラチン群で変わらなかった。 結果を踏まえて著者は、「HPV陽性中咽頭がんの適格患者の標準治療は、放射線療法+シスプラチンである」とまとめている。

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Harmony Outcomes試験はGLP-1受容体作動薬のポジショニングに調和をもたらしたのか?(解説:住谷哲氏)-965

 GLP-1受容体作動薬を用いた心血管アウトカム試験(CVOTs)はこれまでにELIXA(リキシセナチド)、LEADER(リラグルチド)、SUSTAIN-6(セマグルチド)、そしてEXSCEL(weeklyエキセナチド)の4試験が報告されているので本試験が5試験目になる。これまでの試験の結果についてはすでにメタ解析が報告されており1)、おそらく週1回製剤albiglutideによる本試験を加えた5試験のメタ解析の結果が近日中に報告されると思われる。来年には同じく週1回製剤であるデュラグルチドのREWINDの結果が報告される予定であり、すべての試験を合わせると参加患者は合計50,000人以上になり1つのデータベースを形成すると言ってよい。 従来の4試験のメタ解析の結果では、3-point MACEはHR 0.90(0.82~0.99)、心血管死HR 0.87(0.79~0.96)、心筋梗塞(非致死性および致死性)HR 0.94(0.86~1.03)、脳卒中(非致死性および致死性)HR 0.87(0.75~1.00)、総死亡HR 0.88(0.81~0.95)であり、3-point MACE、心血管死および総死亡には有意な減少を認めた。しかし心筋梗塞および脳卒中には有意な減少を認めなかった。一方、本試験では3-point MACE HR 0.78(0.68~0.90)および心筋梗塞(非致死性および致死性)HR 0.75(0.61~0.90)には有意な減少を認めたが、その他のアウトカムには有意な減少を認めなかった。この結果の相違が薬剤の違いによるのか、対象患者の背景の相違によるのか、試験期間の相違によるのか、または単なる偶然によるのかは明らかではない。 本試験の観察期間の中央値はわずかに1.6年である。図2にある3-point MACEのKaplan-Meier曲線を見ると試験開始12ヵ月後にすでに差が開いており、これは主として心筋梗塞の減少に由来していると思われる。本試験も他のCVOTsと同様にevent-drivenであり、試験開始前のpower analysisでは611の3-point MACEが発生した時点で試験は終了予定で、2.2~3.2年が必要と想定されていた。しかし予想以上の速度で3-point MACE(とくに非致死性心筋梗塞)が発生したため、そのままでは1.1年程度で試験が終了することになり十分な安全情報が得られない可能性があることが明らかとなった。そこで途中でプロトコルを変更して最低1.5年はフォローすることになったようである。 本試験も含めたGLP-1受容体作動薬の5試験の中で有意に総死亡を減らしたのはLEADERのリラグルチドのみである。しかしEXSCELにおいては、実は総死亡のHR 0.86(0.77~0.97、p=0.016)であったが、hierarchical statistical testing planに基づいて有意な減少とはされなかった。LEADERの観察期間は5試験の中で最も長く中央値3.8年であり、EXSCELはそれに次いで3.2年であった。ELIXAおよびSUSTAIN-6はともに2.1年である。あくまで推測であるが、GLP-1受容体作動薬による総死亡減少を期待するには少なくとも3年以上の長期間が必要なのかもしれない。 先日ADA/EASDが発表した高血糖管理アルゴリズム2018では、動脈硬化性心血管病(ASCVD)を有する2次予防患者においてはメトホルミンに併用する薬剤としてGLP-1受容体作動薬を推奨している。4試験のメタ解析の結果から考えて、これは妥当な推奨だといえよう。本試験の結果は、少なくともこの推奨に対して不協和音discordを奏でるものではないだろう。

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サルコペニア嚥下障害は誤嚥性肺炎などの入院が引き金に

 元気だったはずの高齢者が、入院後に低栄養で寝たきりになるのはなぜか。2018年11月10、11日の2日間、第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会が開催された。2日目に行われた「栄養の視点からみたサルコペニア・フレイル対策」のシンポジウムでは、若林 秀隆氏(横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科)が「栄養の視点からみたサルコペニアの摂食嚥下障害対策」について講演した。誤嚥性肺炎で救急搬送されサルコペニアの嚥下障害になる “嚥下障害があり、食べられないから低栄養になる”という流れはごく普通である。若林氏は、「低栄養があると嚥下障害を来すことがあり、これはリハビリテーションだけでは改善することができない。つまり、栄養改善が要」と、本来とは逆ともとれる低栄養のメカニズムについて解説した。 若林氏によると、一見、元気な老人でも実はサルコペニアを発症している可能性があるという。たとえば、喉のフレイル(嚥下障害ではないが正常より衰えている状態)が原因となり、誤嚥性肺炎を発症。その後、救急搬送され寝たきりや嚥下障害になる場合がある。この原因について同氏は、「急性期病院で誤嚥性肺炎を発症すると“根拠のない安静”や“禁食”がオーダされやすい」と、嚥下、腸管や心臓機能などの適切な評価がなされていない点を指摘。さらに、「病院内での不適切な安静臥床と栄養管理や肺炎の急性炎症による筋肉の分解でサルコペニアを生じる結果、これまで外出や食事が可能であった方でも寝たきりや嚥下障害となる」と、入院後の管理体制を問題視した。サルコペニアによる嚥下障害の定義とは 同氏らを含む4学会(日本サルコペニア・フレイル学会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本嚥下医学会)は、サルコペニアによる嚥下障害を立証し、メカニズム、診断、治療、今後の展望に関する統一的見解を提言するために、ポジションペーパーを作成している1)。 この合同学会において、サルコペニアによる嚥下障害を以下のように定義している。1)全身の筋肉と嚥下関連筋の両者にサルコペニアを認める2)脳卒中など明らかな摂食嚥下障害の原因疾患が存在し、その疾患による摂食嚥下障害と考えられる場合は除外する3)神経筋疾患による筋肉量減少や筋力低下、そして摂食嚥下障害はサルコペニアの摂食嚥下障害には含めない ポジションペーパーに採用された研究の一部には、今年発表された基礎研究も含まれる。これによると、誤嚥性肺炎では舌や横隔膜で筋分解が亢進し、筋萎縮が生じることが示された2)。これについて同氏は、「人間でも同様のメカニズムにおいて呼吸筋、全身の骨格筋、嚥下筋の筋萎縮が引き起こされ、最終的に寝たきりに至るのでは」と、研究結果を踏まえた人体への影響を説明。さらに、同氏が行った嚥下関連筋のレジスタンストレーニングに関するRCT3)を示し、摂食嚥下障害の原因がサルコペニアの場合、栄養改善を行いながらレジスタンストレーニングを行うと改善しやすい傾向であることを解説した。急性期病院患者のサルコペニア嚥下障害の有病割合は32% 急性期病院の実態として、嚥下リハ患者のサルコペニア有病割合は49%を占め、患者の2人に1人がサルコペニアであることが判明している4)。さらに、患者全体ではサルコペニア嚥下障害の有病割合は32%と、3人に1人はサルコペニアの嚥下障害を有し、急性期病院で起こりがちな、“とりあえず安静”、“とりあえず禁食”、“とりあえず水電解質輸液のみ”によって引き起こされている。これを『医原性サルコペニア』と呼び、同氏は「サルコペニアによる嚥下障害の患者は、他の嚥下障害よりも予後が悪いため予防が重要」と予防の大切さを訴えた5)。サルコペニアによる摂食嚥下障害の予防・治療へ攻めの栄養管理 今後の展望として、サルコペニアによる摂食嚥下障害の予防、治療への介入研究、管理栄養士の積極的な介入を必要が必要であると述べ、それに有用な“攻めの栄養管理“を以下のように提唱した。・(痩せている)実体重の場合:エネルギー必要量=エネルギー消費量±蓄積量(200~750kcal/day)・理想体重の場合:35kcal/kg/day 最後に同氏は、「サルコペニアは地域での予防、軽微な状態で発見し介入することが重要」と述べ、リハ栄養診断やゴール設定など、リハ栄養における5つのステップ5)の活用を求めた。■参考1)Fujishima I, et al. Sarcopenia and dysphagia: Position paper by four professional organizations. Geriatr Gerontol Int, in press2)Komatsu R, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2018;9:643-653.3)Wakabayashi H, et al. Nutrition. 2018;48:111-116.4)Wakabayashi H, et al. J Nutr Health Aging. 2018 Oct 16.5) Nagano A, et al. Rehabilitation nutrition for iatrogenic sarcopenia and sarcopenic dysphagia. J Nutr Health Aging, in press■関連記事初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊高齢者のフレイル予防には口腔ケアと食環境整備を「食べる」ことは高齢者には大問題

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不健康な生活様式が重なると女性の糖尿病リスク5倍以上に/BMJ

 交替制の夜勤労働と不健康な生活様式はいずれも2型糖尿病のリスクと関連し、これらが併存すると、個々の要因を単独に有する場合に比べリスクが相加的に高くなることが、米国の女性看護師を対象とする調査の解析で示された。中国・華中科技大学のZhilei Shan氏らが、BMJ誌2018年11月21日号で報告した。交替制の夜勤労働者は不健康な生活様式の頻度が高いとする報告は多い。また、交替制夜勤労働と不健康な生活様式は、いずれも2型糖尿病のリスクを増大させることが知られている。NHSとNHS IIのデータを用いた前向きコホート研究 研究グループは、交替制夜勤労働の期間および生活様式の因子と、2型糖尿病リスクの複合的な関連を評価し、夜勤労働単独、生活様式単独、およびこれらの交互作用を定量的に検討する前向きコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 米国の「看護師健康調査(Nurses' Health Study[NHS]:1988~2012年)」および「看護師健康調査II(NHS II:1991~2013年)」に参加した女性看護師のうち、ベースライン時に2型糖尿病、心血管疾患、がんに罹患していない14万3,410例を対象とした。 交替制夜勤労働は、日勤および準夜勤に加えて、当該月に3回以上の夜勤に就いた場合と定義した。不健康な生活様式の因子は、現喫煙、中~高強度の身体活動が1日に30分未満、代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index[AHEI]:0~10点、10点は1日の推奨サービング数の順守を示す)のスコアが低値(下位の5分の3まで)の食事、BMI≧25であった。 主要アウトカムは2型糖尿病の発症とした。2型糖尿病は、参加者の自己報告により同定し、補足的な質問票で確定した。夜勤期間は1~5年、5~9年、10年以上、なしに分け、不健康な生活様式は0~1項目、2項目、3項目以上に分けて解析を行った。リスクの約7割が不健康な生活様式に起因 夜勤の経験のない女性と比較して、夜勤の年数が増えるに従って、現喫煙が多くなり、BMIが増加した。また、夜勤期間が長くなるに伴い、NHSの参加者は年齢が高くなり、NHS IIの参加者は非婚者および単身者が多くなった。22~24年のフォローアップ期間に、1万915人が2型糖尿病を発症した。 夜勤経験のない女性に比べ、夜勤期間が長期になるに従って、2型糖尿病の多変量補正ハザード比(HR)は上昇することが認められた(傾向のp<0.001)。また、不健康な生活様式が0~1項目の場合に比し、3項目以上の参加者は、2型糖尿病のリスクが5倍以上であった(補正後HR:5.39、3.65~7.95)。さらに、夜勤経験がなく、かつ不健康な生活様式が0~1の群に比べ、夜勤が10年以上かつ不健康な生活様式が3項目以上の群における2型糖尿病の多変量補正後HRは7.04(5.29~9.37)だった。 夜勤期間が5年長くなるごとの2型糖尿病の多変量補正後HRは1.31(95%CI:1.19~1.44)、不健康な生活様式の因子が1つ増えるごとの補正後HRは2.30(1.88~2.83)であった。これら2つの複合作用による2型糖尿病の補正後HRは2.83(2.15~3.73)であり、相加的な交互作用が認められ(交互作用のp<0.001)、交互作用に起因する過剰なリスクは0.20(0.09~0.48)であった。 2型糖尿病の発症に影響を及ぼす複合的関連のリスクの割合は、夜勤単独が17.1%(14.0~20.8%)、不健康な生活様式単独は71.2%(66.9~75.8%)であり、これらの相加的な交互作用に起因するリスクの割合は11.3%(7.3~17.3%)だった。 著者は、「2型糖尿病の多くは、健康的な生活様式を順守することで予防可能であり、交替制夜勤労働者では、より大きな便益が得られる可能性が示唆される」としている。

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HPV陽性中咽頭がん、セツキシマブvs.標準レジメン/Lancet

 低リスクHPV陽性中咽頭がんに対して、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンと比較して毒性低下のベネフィットは示されず、腫瘍コントロールに関しては重大な損失をもたらすことが示された。英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らによる第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「De-ESCALaTE HPV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。HPV陽性中咽頭がんの発生は急速に増大しており、とくに若年成人を急襲している。セツキシマブは、標準治療のシスプラチンの毒性を低下しde-escalationな放射線併用療法を可能にするものとして提案されたが、この戦略の有効性に関して無作為化試験に基づくエビデンスはなかった。3ヵ国32治療センターで被験者を集めて無作為化試験 De-ESCALaTE HPV試験は、アイルランド、オランダ、英国の頭頸部治療センター32ヵ所で行われた。対象者は、18歳以上で低リスクHPV陽性中咽頭がん(非喫煙者もしくは生涯喫煙が10 pack-year未満)の患者。 適格患者は臨床担当医によって集められ、放射線療法(35回照射で計70Gy)に加えて、シスプラチン静脈内投与(100mg/m2を放射線照射日1、22、43日に投与)、またはセツキシマブ静脈内投与(初回400mg/m2投与後、7週ごとに250mg/m2投与)を受けるよう1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、治療終了後24ヵ月時点で評価したすべて(急性および遅発性)の重篤(Grade3~5)毒性イベントで、intention-to-treat集団およびper-protocol集団で解析・評価した。標準レジメンを用いるべき 2012年11月12日~2016年10月1日に、334例の患者が集められた(シスプラチン群166例、セツキシマブ群168例)。 主要評価項目の発生について、群間で有意な差はなかった。患者当たりの平均イベント件数は、シスプラチン群4.8件(95%信頼区間[CI]:4.2~5.4)、セツキシマブ群4.8件(4.2~5.4)であった(p=0.98)。24ヵ月時点で、全グレードの毒性イベントについても群間で有意な差はなかった。患者当たりの平均イベント件数は、シスプラチン群29.2件(27.3~31.0)、セツキシマブ群30.1件(28.3~31.9)であった(p=0.49)。 一方で、2年時点の全生存率(OS)については有意差が認められ、シスプラチン群97.5 vs.セツキシマブ群89.4%であった(ハザード比[HR]:5.0[95%CI:1.7~14.7]、p=0.001)。また、2年再発率にも有意な差があった(6.0 vs.16.1%、HR:3.4[1.6~7.2]、p=0.0007)。 結果を踏まえて著者は、「シスプラチンに忍容性がある低リスクHPV陽性中咽頭がん患者に対しては、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンを用いるべきである」とまとめている。

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免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとnab-PTXの併用は未治療の進行/転移性乳がんの予後を改善する(解説:矢形寛氏)-962

 乳がん領域での免疫チェックポイント阻害薬の有効性に関する初のP3 RCTの報告である。化学療法は腫瘍抗原の放出と免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を高めるようであり、とくにタキサンはToll様受容体の活性化と樹状細胞の活動性を促進するため、併用効果が期待されてきた。 本試験ではnab-PTXとヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブの併用効果が検証され、追跡期間約1年でPFSの有意性が示された。また、PD-L1が免疫染色にて腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上発現がみられるものは、より有効性があるようであった。Grade3以上のアテゾリズマブに関連する有害事象はとくにないようであった。OSはmarginalであったが、症例数の設定とTNBCという一般的に予後が短い特殊な集団であることを考えると、OSへの寄与も十分見込めるのではないかと考えられる。 コストの問題は常につきまとうが、乳がん領域への重要な知見である。PD-L1の免疫染色の臨床的有用性だけでなく、マイクロサテライト不安定性や遺伝子変異数(Tumor Mutation Burden:TMB)との関連も検証してほしい。■「nab-PTX(ナブパクリタキセル)」関連記事進行膵がんのnab-PTX+GEM療法、新たな標準治療のエビデンス/NEJMnab-パクリタキセル+アテゾリズマブ、トリプルネガティブ乳がんでPFS延長(IMpassion130)/ESMO 2018

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EPAとアスピリン、単独/併用の大腸腺腫予防効果は?/Lancet

 オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)もアスピリンも、大腸腺腫を有する患者割合の低下と関連していなかった。英国・リーズ大学のMark A. Hull氏らが、EPAとアスピリンの単独または併用投与の大腸腺腫予防効果を検証した、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「seAFOod Polyp Prevention trial」の結果を報告した。EPAとアスピリンはともに、大腸がんの化学的予防に関するproof of concept試験で、有効性と優れた安全性プロファイルが示されていた。Lancet誌オンライン版2018年11月19日号掲載の報告。EPAとアスピリン、単独/併用投与による有効性を腺腫検出率で評価 研究グループは、英国の大腸がんスクリーニングプログラム(Bowel Cancer Screening Programme:BCSP)を実施している内視鏡部門53施設において、大腸内視鏡検査で高リスク(BCSP:腺腫が3つ以上で少なくとも1つは直径10mm以上、あるいはいずれも直径10mm未満だが腺腫が5つ以上)と特定された55~73歳の患者を対象に試験を行った。 被験者を、1)EPA-遊離脂肪酸2g/日投与(EPA)群、2)アスピリン300mg/日投与(アスピリン)群、3)EPA+アスピリン併用投与群または4)プラセボ群に、施設を層化因子とし置換ブロック法を用いて1対1対1対1の割合で無作為に割り付け(二重盲検)、それぞれ12ヵ月間投与した。 主要評価項目は、1年時点の大腸内視鏡検査における腺腫検出率(ADR:腺腫を有する患者の割合)で、観察可能な追跡調査データのあるすべての患者を対象とし、いわゆるat-the-margins法を用い施設とベースライン時の内視鏡再施行で補正して解析した。 安全性解析集団は、1回以上の治験薬投与を受けたすべての患者とした。EPAとアスピリンの単独/併用投与、いずれもADRは低下せず 2011年11月11日~2016年6月10日に、計709例が無作為化された(プラセボ群176例、EPA群179例、アスピリン群177例、EPA+アスピリン併用群177例)。 主要評価項目の解析対象は、プラセボ群163例(93%)、EPA群153例(85%)、アスピリン群163例(92%)、併用群161例(91%)で、ADRはそれぞれ61%(100/163例)、63%(97/153例)、61%(100/163例)、61%(98/161例)であった。 EPA群のリスク比(95%信頼区間[CI])は0.98(0.87~1.12)、リスク差(95%CI)は-0.9%(-8.8~6.9)(p=0.81)、アスピリン群ではそれぞれ0.99(0.87~1.12)、-0.6%(-8.5~7.2)(p=0.88)であり、どちらも有効性は認められなかった。 有害事象発現率は、プラセボ群44%(78/176例)、EPA群46%(82/177例)、アスピリン群39%(68/174例)、併用群45%(76/170)で、EPAおよびアスピリンの忍容性は良好であった。ただし、消化器系有害事象の発現件数はEPA群で増加した(EPA群146件、プラセボ群85件、アスピリン群86件、併用群68件)。また、上部消化管出血イベントは6例(EPA群2例、アスピリン群3例、プラセボ群1例)報告された。 一方で、両薬を受けた参加者1人当たりの平均腺腫数は少なく、大腸腺腫負荷に関する化学的予防効果は認められた。また、EPAとアスピリンの、腺腫サブタイプや発生部位に依存的な特異性は、従前の観察と一致しており、著者は、「今後、腺腫の種類や発生部位別の腺腫数に関する効果の検討が必要である」と述べている。さらに、アスピリンは大腸腺腫の再発を減らし大腸がんリスクを軽減するとの既存データを踏まえて、「EPAとアスピリンの最適使用は、大腸腺腫再発への的確な医学的アプローチにおいて必要なものかもしれない」と述べ、両薬に関する報告は、長期的大腸がんリスクにおける臨床的に意義のある減少に変わっていく可能性を示唆した。[12月3日 記事の一部を修正いたしました]

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ピーナッツアレルギーに有効な新経口免疫療法薬/NEJM

 開発中のピーナッツ由来の生物学的経口免疫療法薬AR101は、高度ピーナッツアレルギーの小児・若年者において、プラセボと比較し試験終了時の食物負荷試験で用量制限を要する症状を伴わず高用量のピーナッツ蛋白の摂取が可能となり、ピーナッツ曝露中に発現する症状の重症度が低下することが認められた。米国・エモリー大学医学校のBrian P. Vickery氏らが、AR101の有効性と安全性を検証した第III相試験「Peanut Allergy Oral Immunotherapy Study of AR101 for Desensitization:PALISADE」の結果を報告した。ピーナッツアレルギーは、生命を脅かすこともある、予測不能なアレルギー反応のリスクがあるが、現状では承認された治療選択肢はない。NEJM誌2018年11月18日号掲載の報告。主要有効性解析対象は4~17歳のピーナッツアレルギー保有者 PALISADE試験の対象は、4~55歳のピーナッツアレルギー保有者で、登録時に二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を行い、ピーナッツ蛋白100mg(ピーナッツの実の約3分の1)以下の負荷量で用量制限を要するアレルギー症状の有無をスクリーニングし、症状を認めた場合を適格者として、AR101群またはプラセボ群に3対1の割合で無作為に割り付けた。 用量漸増期(0.5~6mg)の後、増量期(2週間ごとに3~300mgまで増量)を経て、維持期として300mg/日を24週間投与する約1年のプログラムを行い、完遂した被験者を対象に試験終了時に再び食物負荷試験を行った。 主要評価項目は、用量制限を要する症状を伴わず600mg以上の負荷量を摂取することができた4~17歳被験者の割合であった。統計解析にはFarrington-Manning検定を使用した。AR101の1年間投与により約7割がピーナッツ蛋白600mg以上を摂取可能に 842例がスクリーニングを受け、551例がAR101群またはプラセボ群に割り付けられた。このうち、主要評価項目の解析対象である4~17歳は496例であった(AR101群372例、プラセボ群124例)。 4~17歳集団で終了時食物負荷試験において用量制限を要する症状を伴わずピーナッツ蛋白600mg以上を摂取することができたのは、AR101群250例(67.2%)、プラセボ群5例(4.0%)であった(群間差:63.2ポイント、95%信頼区間[CI]:53.0~73.3、p<0.001)。 終了時食物負荷試験中に認められた症状の重症度は、最も多かったのが中等度でAR101群25%、プラセボ群59%であり、重度はそれぞれ5%、11%であった。 4~17歳集団における有害事象は、全投与期間においてAR101群で98.7%、プラセボ群で95.2%に認められ、軽度がそれぞれ34.7%、50.0%、中等度が59.7%、44.4%、重度が4.3%および0.8%であった。 なお、18~55歳の被験者における有効性は副次評価項目であったが、用量制限を要する症状を伴わず600mg以上の負荷量を摂取することができた被験者の割合について、AR101群とプラセボ群で有意差は認められなかった。

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新たな免疫CP阻害薬《私を食べて》-さまざまながん腫に対する有用性を示唆(解説:大田雅嗣 氏)-961

 NEJM誌11月1日号に「CD47 Blockade by Hu5F9-G4 and Rituximab in Non-Hodgkin’s Lymphoma.」のタイトルで論文が掲載された1)。スタンフォード大学のWeissmanらのグループの長年にわたる基礎研究が実を結び治療薬として脚光を浴びることとなった。 CD47(インテグリン関連蛋白)はマクロファージ、樹状細胞などが介するphagocytosisの調節機能を担う蛋白で種々の細胞表面に発現している。CD47は免疫担当細胞の細胞表面膜の受容体の1つであるSIRPα(signal regulating protein α)のリガンドでもあり、双方の結合によりphagocytosisを抑制する“do not eat me”シグナルを伝達することが判明しており2)、腫瘍細胞は免疫担当細胞による捕食から身を守るシステムを有している。 この“do not eat me”シグナルをCD47に対する抗体で抑制することによりマクロファージを活性化し腫瘍細胞のphagocytosisを促進し、またT細胞を介した抗腫瘍効果が期待された。これまでリンパ腫を含む種々のがん細胞でCD47の高発現が観察されており、予後不良因子とされた。in vivoでCD47に対する抗体が急性骨髄性白血病(AML)細胞のphagocytosisを促進させることが判明 3)。さらに、AML、非ホジキンリンパ腫(NHL)や種々の固形がんの担がん免疫不全マウスモデルで、CD47抗体ががん細胞に対して殺細胞的に働くことが示された4)。また急性リンパ芽球性白血病細胞担がんマウスモデル5)、固形腫瘍担がんマウスモデル6)でも同様の抗腫瘍効果が示された。 今回の論文で用いられたヒト化抗CD47単クローン抗体はHu5F9-G4 (IgG4 isotype)と命名され、抗CD20抗体であるリツキシマブと相乗的に、リンパ腫担がんマウスモデルでリンパ腫細胞に対して殺細胞的に作用し、リンパ腫の治癒を可能にすることが示された7)。 本論文では再発または難治性B細胞性非ホジキンリンパ腫22症例を対象にHu5F9-G4とリツキシマブを投与し、全奏効率50%(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で40%、濾胞性リンパ腫で71%)、奏効例での91%が解析時点でも奏効を保ったという優れた成績が示された。有害事象としては、頭痛、疲労感、貧血、下痢、infusion reactionが多かった。とくに貧血はGrade3が半分を占めたが、これはCD47を発現している赤血球がマクロファージによって捕食されたことによる当然のon-target effectと考えられる8)。 現在NIH主導で米国内では、本論文に掲載されている再発・難治性B細胞非ホジキンリンパ腫に対するHu5F9-G4と抗CD20抗体リツキシマブとの併用療法、固形がん、進行大腸がんに対する抗EGFR抗体セツキシマブとの併用療法、再発・難治性AML、高リスクMDS(骨髄異形成症候群)に対するアザシチジンとの併用療法のトライアルが進行中である。日本では再発・難治性乳がんに対する抗HER2抗体トラスツズマブとの併用療法が臨床研究中である。 マクロファージを活性化する新たな免疫チェックポイント阻害薬の登場で、がん免疫療法はまた新たな段階を迎えることになる。今後の臨床試験の成果に注目していきたい。■参考文献1)Advani R, et al. N Engl J Med. 2018;379:1711-1721.2)Jaiswal S, et al. Cell. 2009;138:271-285.3)Majeti R, et al. Cell. 2009;138:286-299.4)Liu J, et al. PLoS One. 2015;10:e0137345.5)Chao MP, et al. Cancer Res. 2011;71:1374-1384.6)Willingham SB, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012;109;6662-66677)Chao MP, et al. Cell. 2010;142:699-713.8)Oldenborg PA, et al. Science. 2000;288:2051-2054.

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日本における非定型抗精神病薬による悪性症候群~医薬品副作用データベース

 慶應義塾大学の安齋 達彦氏らは、日本における非定型抗精神病薬使用に関連する有害事象の悪性症候群に関する報告を評価した。日本の医薬品副作用データベースを用いて、実臨床における非定型抗精神病薬の単剤療法および併用療法での悪性症候群発生について調査を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2018年10月29日号の報告。 1つ以上の非定型抗精神病薬またはハロペリドールの使用に関連する有害な薬物反応報告を分析した。定型抗精神病薬を使用しない非定型抗精神病薬の単剤療法および併用療法、ハロペリドール単剤療法後の悪性症候群発生率のオッズ比を、多重ロジスティック回帰を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・定型抗精神病薬の使用がない非定型抗精神病薬1つ以上の使用に関連した悪性症候群は、1万1,071例において721件報告された。・ほとんどの非定型抗精神病薬の単剤療法および併用療法後の悪性症候群発生率は、ハロペリドール使用後と比較して低かった。・しかし、ブロナンセリン単剤療法、クエチアピンとゾテピンの併用療法、リスペリドンとゾテピンの併用療法は、オッズ比が1超と推定され、悪性症候群の報告を増加させていた。 著者らは「本結果は、精神疾患治療に臨床的に使用される非定型抗精神病薬などの医薬品に関する有用な情報を提供できる可能性があるが、さらなる研究が必要である」としている。■関連記事抗精神病薬の併用療法、有害事象を解析どの向精神病薬で有害事象報告が多いのか統合失調症治療に用いられる抗精神病薬12種における代謝系副作用の分析

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減量後の低炭水化物食、代謝量を増大/BMJ

 低炭水化物ダイエットは、体重減少維持中のエネルギー消費量を増大することが明らかにされた。米国・ボストン小児病院のCara B. Ebbeling氏らが行った無作為化試験の結果で、BMJ誌2018年11月14日号で報告された。エネルギー消費量は、体重の減少とともに低下し、体重再増加を促す要因となるが、この代謝反応に、長期間にわたる食品構成がどのような影響を与えるのかは明らかになっていなかった。今回の検討で示された関連性は、炭水化物-インスリンモデルで一貫性を持ってみられ、著者は「示された代謝効果は、肥満治療の成功を改善する可能性があり、とくにインスリン分泌能が高い人で効果があると思われる」と述べている。体重減少後の、高・中・低量炭水化物ダイエットのエネルギー消費を評価 さまざまな炭水化物/脂質比ダイエットの総エネルギー消費量への影響を検討する試験は、米国2施設で2014年8月~2017年5月に行われた。被験者は、18~65歳でBMI値25以上の164例。 被験者はrun-inダイエット期間(9~10週間)に体重を12%(2%の範囲内で)減少した後、炭水化物含有量が違う3つの試験ダイエット(60%の高量群、40%の中量群、20%の低量群)のうち1つを、いずれも20週間受けるよう無作為に割り付けられた。試験ダイエットはプロテインでコントロールし、2kg以内の範囲で体重減を維持するためにエネルギーを調整した。 炭水化物-インスリンモデルで予測された効果の修正について検証するため、サンプルは体重減前のインスリン分泌能(経口ブドウ糖摂取30分後のインスリン濃度)で3つに分類した。 主要評価項目は、DLW法で測定した総エネルギー消費量(intention-to-treat解析)。per protocol解析では、潜在的により正確な推定効果を提示し、目標体重減を維持した対象を含んだ評価も行った。副次評価項目は、身体活動度で評価した安静時エネルギー消費量、代謝ホルモンのレプチン値とグレリン値であった。体重減前のインスリン分泌能が高いほど低量ダイエットの効果が大きい 被験者164例は、高量ダイエット群に54例、中量ダイエット群に53例、低量ダイエット群に57例それぞれ割り付けられた。 intention-to-treat解析(162例)において、総エネルギー消費量はダイエットによって異なり(p=0.002)、炭水化物含有量10%減少につき、総エネルギー消費量は52kcal/日(95%信頼区間[CI]:23~82)増大する線形の傾向が認められた(1kcal=4.18、kJ=0.00418MJ)。 総エネルギー消費量の変化は、高量ダイエット群との比較において、中量ダイエット群で91kcal/日(95%CI:-29~210)大きく、低量ダイエット群で209kcal/日(91~326)大きかった。per protocol解析(120例)では、それぞれの差は、131kcal/日(-6~267)、278kcal/日(144~411)であった(p<0.001)。 体重減前のインスリン分泌能が最も高かった被験者において、低量ダイエット群と高量ダイエット群の差は、308kcal/日(intention-to-treat解析)、478kcal/日(per protocol解析)であった(p<0.004)。 グレリン値は、低量ダイエット群が高量ダイエット群よりも有意に低値であった(intention-to-treat解析、per protocol解析において)。レプチン値も、低量ダイエット群が高量ダイエット群よりも有意に低値であった(per protocol解析において)。〔12月6日 記事タイトルを修正いたしました〕

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第7回 意識障害 その6 薬物中毒の具体的な対応は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)ABCの安定が最優先! 気管挿管の適応を正しく理解しよう!2)治療の選択は適切に! 胃洗浄、血液浄化の適応は限られる。3)検査の解釈は適切に! 病歴、バイタルサイン、身体所見を重視せよ!【症例】42歳女性の意識障害:これまたよく遭遇する症例42歳女性。自室のベッド上で倒れているところを、同居している母親が発見し、救急要請。ベッド脇には空のPTP(press through pack[薬のシート])が散在していた。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:200/JCS血圧:102/58mmHg 脈拍:118回/分(整) 呼吸:18回/分 SpO2:97%(RA)体温:36.9℃ 瞳孔:3/3mm +/+この症例、誰もが急性薬物中毒を考えると思います。患者の周りには薬のシートも落ちているし、おそらくは過量に内服したのだろうと考えたくなります。急性薬物中毒の多くは、経過観察で改善しますが、ピットフォールを理解し対応しなければ、痛い目に遭いかねません。「どうせoverdose(薬物過量内服)でしょ」と軽視せず、いちいち根拠をもって鑑別を進めていきましょう。重度の意識障害で意識することは?(表1)このコーナーの10's Ruleの「1)ABCの安定が最優先!」を覚えているでしょうか。重度の意識障害、ショックでは気管挿管を考慮する必要がありました。意識の程度が3桁(100~300/JCS)と重度の場合には、たとえ酸素化の低下や換気不良を認めない場合にも、確実な気道確保目的に気管挿管を考慮する必要があることを忘れてはいけません。薬物中毒に伴う重度の意識障害、出血性ショック(消化管出血、腹腔内出血など)症例が典型的です。考えずに管理をしていると、目を離した際に舌根沈下、誤嚥などを来し、状態の悪化を招いてしまうことが少なくありません。来院時の酸素化や換気が問題なくても、バイタルサインの推移は常に確認し、気管挿管の可能性を意識しておきましょう。●Rule1 ABCの安定が最優先!●Rule8 電解質異常、アルコール、肝性脳症、薬物、精神疾患による意識障害は除外診断!画像を拡大する薬物中毒のバイタルサイン内服した薬剤や飲酒の併用の有無によってバイタルサインは大きく異なります。覚醒剤やコカインなど興奮系の薬剤では、血圧や脈拍、体温は上昇します。それに対して、頻度の高いベンゾジアゼピン系薬に代表される鎮静薬ではすべて逆になります。飲酒もしている場合には、さらにその変化が顕著となります。瞳孔も重要です。興奮系では一般的に散瞳し、オピオイドでは縮瞳します。救急外来では明らかな縮瞳を認める場合には、脳幹病変以外にオピオイド、有機リン中毒を考えます。「目は口ほどにものを言う」ことがあります。自身で必ず瞳孔所見をとることを意識しましょう。薬物中毒の基本的な対応は?急性薬物中毒の場合には、意識障害が遷延することが少なくないため、内服内容、内服時間をきちんと確認しましょう。内服してすぐに来院した場合と、3時間経過してから来院した場合とでは対応が大きく異なります。薬物過量内服においても初療における基本的対応は常に一緒です。“Airway、Breathing、Circulation”のABCを徹底的に管理します。原因薬剤が判明している場合には、拮抗薬の有無、除染・排泄促進の適応を判断します。拮抗薬など特徴的な治療のある中毒は表2のとおりです。最低限これだけは覚えておきましょう。除染や排泄促進は、内服内容が不明なときにはルーチンに行うものではありません。ここでは胃洗浄の禁忌、血液透析の適応を押さえておきましょう。画像を拡大する胃洗浄の禁忌意識障害患者において、確実な気道確保を行うことなしに胃洗浄を行ってはいけません。誤嚥のリスクが非常に高いことは容易に想像がつくでしょう。また、酸やアルカリを内服した場合も腐食作用が強く、穿孔のリスクがあるため禁忌です。胃洗浄を行い、予後を悪くしてはいけません。意識状態が保たれ、内服内容が判明している場合に限って行うようにしましょう。もちろん薬物が吸収されてしまってからでは意味がないため、原則内服から1時間を経過している場合には適応はないと考えておいてよいでしょう。CTを撮影し薬塊などが胃内に貯留している場合には、胃洗浄が有効という報告もありますが、薬物中毒患者全例に胸腹部CTを撮影することは現実的ではありません1)。エコー検査で明らかに胃内に貯留物がある場合には、考慮してもよいかもしれません。活性炭の投与もルーチンに行う必要はありません。胃洗浄の適応症例には、洗浄後投与すると覚えておけばよいでしょう。血液透析の適応となる中毒体内に吸収されたものを、体外に除去する手段として血液透析が挙げられますが、これもまたルーチンに行うべきではありません。多くの薬物は血液透析では除去できません。判断する基準として、分布容積と蛋白結合率を意識しましょう。分布容積が小さく、蛋白結合率が低ければ透析で除去しえますが、そういったものは表3のような中毒に限られます。診療頻度の高いベンゾジアゼピン系薬や非ベンゾジアゼピン系薬(Z薬)、三環系抗うつ薬は適応になりません。ベンゾジアゼピン系薬、Z薬の過量内服は遭遇頻度が高いですが、それらのみの内服であれば過量に内服しても、きちんと気道を確保し管理すれば、一般的に予後は良好であり透析は不要なのです。画像を拡大する薬物中毒の検査は?1)心電図心電図は忘れずに行いましょう。QT延長症候群など、薬剤の影響による変化を確認することは重要です。内服時間や意識状態を加味し、経時的に心電図をフォローすることも忘れてはいけません。以前の心電図の記録が存在する場合には、必ず比較し新規の変化か否かを評価しましょう。2)血液ガス酸素化や換気の評価、電解質や血糖値の評価、そして中毒に伴う代謝性アシドーシスを認めるか否かを評価しましょう。3)尿中薬物検査キットトライエージDOAなどの尿中薬物検査キットが存在し、診療に役立ちますが、結果の解釈には注意しなければなりません。陽性だから中毒、陰性だから中毒ではないとはいえないことを覚えておきましょう。偽陽性、偽陰性が少なくないため、病歴と合わせ、根拠の1つとして施行し、結果の解釈を誤らないようにしましょう。薬物中毒疑い患者の実際の対応“10's Rule”にのっとり対応することに変わりはありません。Ruleの1~4)では、重度の意識障害であるため、気管挿管を意識しつつ、患者背景を意識した対応を取ります。薬物過量内服患者の多くは女性、とくに20~50代です。また、薬物過量内服は繰り返すことが多く、身体所見では利き手とは逆の手にリストカット痕を認めることがあります。意識しておくとよいでしょう。バイタルサインがおおむね安定していれば、低血糖を否定し、頭部CTを撮影します。この場合には、脳卒中の否定以上に外傷検索を行います。薬物中毒の患者は、アルコールとともに薬を内服していることもあり、転倒などに伴う外傷を併発する場合があるので注意しましょう。また、採血では圧挫に伴う横紋筋融解症*を認めることもあります。適切な輸液管理が必要となるため、CK値や電解質、腎機能は必ず確認しましょう。アルコールの関与を疑う場合には、浸透圧ギャップからアルコールの推定血中濃度を計算すると、診断の助けとなります。詳細は、次回以降に解説します。*急性中毒の3合併症:誤嚥性肺炎、異常体温、非外傷性圧挫症候群急性薬物中毒の多くは、特異的な治療をせずとも時間経過とともに改善します。また、繰り返すことが多く、再来した場合には軽視しがちです。そのため、確立したアプローチを持たなければ痛い目をみることが少なくないのです。外傷や痙攣、誤嚥性肺炎の合併を見逃す、アルコールとともに内服しており、症状が遷延するなどはよくあることです。根拠をもって確定、除外する意識を常に持ちながら対応しましょう。症例の経過本症例では空のPTPの存在や40代の女性という背景から、第一に薬物過量内服を疑いながら、Ruleにのっとり対応しました。母親から病歴を聴取すると、来院3時間前までは普段どおりであり、その後患者の携帯電話の記録を確認すると、付き合っている彼氏とのメールのやり取りから、来院2時間ほど前に衝動的に薬を飲んだことが判明しました。内服内容もベンゾジアゼピン系の薬を中心としたもので致死量には至らず、採血や頭部CTでも異常がないことが確認できたため、モニタリングをしながら、家族付き添いの下、入院管理としました。時間経過とともに症状は改善し、翌日には意識清明、独歩可能となり、かかりつけの精神科と連携を取り、退院となりました。本症例は典型的な薬物中毒症例であり、基本的なことを徹底すれば恐れることはありません。きちんと病歴や身体所見をとること、バイタルサインは興奮系か抑制系かを意識しながら解釈し、瞳孔径を忘れずに確認すればよいのです。次回は、アルコールによる意識障害のピットフォールを、典型的なケースから学びましょう。1)Benson BE, et al. ClinToxicol(Phila). 2013;51:140-146.

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