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左冠動脈主幹部病変はPCIとCABGのいずれで治療しても予後は同じ(解説:上田恭敬氏)-1145

 左冠動脈主幹部に目視で70%以上の狭窄病変あるいは虚血が示された50~70%の狭窄病変があり、SYNTAX scoreが32以下である、PCIとCABGのいずれによっても血行再建が可能とハートチームにより判断された患者を対象として、XIENCEステントを用いたPCIで治療する群(PCI群:948症例)とCABGで治療する群(CABG群:957症例)のいずれかに割り付けた、多施設無作為化比較試験(EXCEL試験)の5年フォローの結果が報告された。主要エンドポイントは死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合エンドポイントである。 主要エンドポイントは、PCI群で22.0%、CABG群で19.2%と差を認めなかった(p=0.13)。全死亡(13.0% vs.9.9%)はPCI群で多かったものの、心臓死(5.0% vs.4.5%)と心筋梗塞(10.6% vs.9.1%)に差はなかった。脳血管イベント(3.3% vs.5.2%)はPCI群で少なかったが、脳卒中(2.9% vs.3.7%)に差はなかった。再血行再建術施行(16.9% vs.10.0%)はPCI群で多かった。 BMSからDES、さらに第2世代DESとPCI技術の画期的な進歩に伴って、さらには薬物療法の進歩に伴って、PCIの長期的な治療成績が改善してきた。その結果、限定的な症例においてではあるが、PCIによってもCABGと同等の長期治療成績が得られるようになってきた。今回のEXCEL試験の結果では、SYNTAX scoreが32以下の症例に限定されてはいるが、左冠動脈主幹部狭窄に対する治療について、死亡、脳卒中、心筋梗塞からみた5年までの予後がPCIとCABGのいずれで治療しても同等であることが示された。 しかし、この結果を臨床へ応用する際には、考慮すべきことがいくつか考えられる。まず、再血行再建術の施行はPCI群で多かったことはもちろんであるが、主要エンドポイントや心筋梗塞の発生頻度をカプランマイヤー曲線で見ると、PCI群とCABG群の曲線が交差しており、今後さらに長期で評価すればCABGの優位性が示される可能性が考えられる。 術後早期においては、イベント発生頻度はCABG群でより高く、より低侵襲であるPCIが優位である。また、PCI、CABGいずれにおいても、その後のイベント発生は動脈硬化の進行によって生じると考えられる。薬物療法がさらに改善されて動脈硬化の進行をさらに抑制することができれば、いずれの群においてもイベントは減少し、PCIがCABGに対して優位である期間を延ばすことができる可能性がある。さらに、PCIの治療成績は、アンギオガイドよりもIVUSガイドの方が良好であることがULTIMATE試験によって示されており、ほぼ100%IVUSガイドでPCIが施行されている日本においては、EXCEL試験の結果以上にPCIに優位性が存在する可能性があるかもしれない。今後さらにPCIの治療成績を改善させて、CABGよりもより低侵襲なPCIを合理的に選択できるようにするためには、(1)臨床試験においてIVUSガイドのOptimal PCIとCABGを比較すること、(2)第2世代Bioresorbable Vascular Scaffold(BVS)の開発等PCI技術の発展、さらには(3)より積極的なLDL-C低下療法やEPA製剤の使用などエビデンスのある治療法の組み合わせによる十分な薬物療法の普及・徹底が必要と思われる。

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プライマリケアにおけるセルトラリンの臨床的有効性~PANDA研究

 うつ病のケアは、プライマリケアで行われることが多い。しかし、ほとんどの抗うつ薬の試験では、うつ症状の診断と重症度に基づいた適格基準を有する2次医療圏の精神保健サービスの患者を対象としている。抗うつ薬は、これまでの臨床試験の対象患者よりもはるかに幅広い患者に用いられている。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのGemma Lewis氏らは、軽度~重度のうつ症状を伴うプライマリケア患者を対象に、セルトラリンの臨床効果を調査し、治療反応に対する重症度と期間との関連について検討を行った。The Lancet. Psychiatry誌2019年11月号の報告。 本研究(PANDA研究)は、英国4都市(ブリストル、リバプール、ロンドン、ヨーク)のプライマリケア医179人の患者を対象に、実臨床多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化試験として実施された。過去2年間に抗うつ薬のベネフィットについて臨床的不確実性が認められた18~74歳の抑うつ症状患者を対象とし、セルトラリン群(最初の1週間は1日1カプセル[セルトラリン50mg]、その後2カプセルとし最大11週間投与)またはプラセボ群にランダムに割り付け、重症度、期間などで層別化した。主要アウトカムは、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコアにより測定された6週間後の抑うつ症状とした。副次アウトカムは、2、6、12週目の抑うつ症状および寛解(PHQ-9、Beck Depression Inventory-II[BDI-II])、全般性不安症状(Generalised Anxiety Disorder Assessment 7-item version[GAD-7])、心の健康および身体的健康(12-item Short-Form Health Survey[SF-12])、自己報告による改善度とした。すべての分析は、intention-to-treat分析で行った。 主な結果は以下のとおり。・2015年1月~2017年8月までに655例を、セルトラリン群326例、プラセボ群329例に割り付けた。・セルトラリン群の2例は、ベースライン評価が完了しなかったため除外した。・主要アウトカムの分析対象患者数は、550例(セルトラリン群:266例、プラセボ群:284例)であった。85%のフォローアップ率で、両群間に差は認められなかった。・6週間後、セルトラリン群において、臨床的に意味のある抑うつ症状の軽減は認められなかった。・6週間後の平均PHQ-9スコアは、セルトラリン群で7.98±5.63、プラセボ群で8.76±5.86であった(調整比例差:0.95、95%CI:0.85~1.07、p=0.41)。・副次アウトカムでは、セルトラリン群において、不安症状、メンタルヘルス関連QOL(身体的QOLは除く)、メンタルヘルスに関する自己報告の改善が認められた。・12週間後、セルトラリン群において、抑うつ症状の軽減が認められた(弱エビデンス)。・有害事象は、セルトラリン群で4件、プラセボ群で3件が認められたが、両群間に差は認められなかった。・重篤な有害事象は、セルトラリン群で2件(うち1件は薬物療法に関連と分類)、プラセボ群で1件と分類された。 著者らは「セルトラリンは、プライマリケアにおいて、6週間以内に抑うつ症状を改善させる可能性は低いものの、臨床的に重要であると考えられる不安、QOL、メンタルヘルスに関する自己評価の改善が認められた。本調査結果は、うつ病または全般性不安症の診断基準を満たさない軽度~中等度の症状を有する患者を含む、これまで考えられていたよりも幅広い患者に対するSSRI抗うつ薬の使用を裏付けている」としている。

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赤肉摂取減らしても心血管代謝・がん死亡に効果なし?

 赤肉の摂取量を減らした場合、臨床的に重篤なアウトカムに効果があるかどうかを検討した無作為化研究はほとんどない。今回、カナダ・McMaster大学のDena Zeraatkar氏らの無作為化研究の系統的レビューから、エビデンスの確実性は低いが、赤肉を制限した食事が主な心血管代謝アウトカムとがん死亡および発症に対して、ほとんどまたはまったく影響しない可能性が示唆された。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2019年10月1日号に掲載。 EMBASE、CENTRAL、CINAHL、Web of Science、ProQuestを開始から2018年7月まで、MEDLINEを開始から2019年4月まで、言語の制限なしで検索し、赤肉または加工肉の多い食事と少ない食事(6ヵ月以上、週に1サービング以上の差)による無作為化比較研究を特定した。2人のレビューアーが独立してデータを抽出し、バイアスリスクとエビデンスの確実性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした12試験のうち、4万8,835人の女性を登録したWomen's Health Initiative(WHI)Dietary Modification Trialから、赤肉または加工肉が少ない食事が全死亡(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.95〜1.03])、心血管死亡(HR:0.98、95%CI:0.91〜1.06)、心血管疾患発症(HR:0.99、95%CI:0.94〜1.05)について、ほとんどまたはまったく影響しない可能性があるという、最も信頼できるエビデンスが得られた(エビデンスの確実性は「low」)。・さらに上記の研究から、赤肉または加工肉が少ない食事はがん死亡(HR:0.95、95%CI:0.89〜1.01)、大腸がん発症(HR:1.04、95%CI:0.90〜1.20)および乳がん発症(HR:0.97、95%CI: 0.90〜1.04)を含むがん発症にほとんどまたはまったく影響しないというエビデンスも得られた(エビデンスの確実性は「low」から「very low」)

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無症候性の大動脈弁狭窄症、保存的治療 vs.早期手術/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症患者において、追跡期間中の手術死亡または心血管死(複合エンドポイント)の発生率は、早期に弁置換術を施行した患者のほうが保存的治療を行った患者よりも有意に低いことが示された。韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らが、多施設共同試験「RECOVERY試験」の結果を報告した。重症大動脈弁狭窄症患者の3分の1から2分の1は診断時に無症状であるが、こうした患者における手術の時期と適応については依然として議論の余地があった。NEJM誌オンライン版2019年11月16日号掲載の報告。手術死亡と心血管死の複合エンドポイントを比較 RECOVERY試験(Randomized Comparison of Early Surgery versus Conventional Treatment in Very Severe Aortic Stenosis trial)は、2010年7月~2015年4月の期間に、無症候性の超重症大動脈弁狭窄症(大動脈弁口面積≦0.75cm2で、大動脈弁血流速度≧4.5m/秒または平均圧較差≧50mmHgのいずれか)患者145例を、早期手術群(73例)または現行ガイドラインの推奨に基づく保存的治療群(72例)のいずれかに無作為に割り付けて行われた。 主要評価項目は、術中または術後30日以内の死亡(手術死亡)、または追跡期間全体の心血管死の複合エンドポイント、主な副次評価項目は追跡期間中の全死因死亡とした。解析はintention-to-treat集団を対象とし、イベント累積発生率はKaplan-Meier法で推定し、log-rank検定を用いて比較した。また、層別Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。手術死亡の発生なし、早期手術群のイベント発生HRは0.09と有意に低下 早期手術群では、無作為化後2ヵ月以内に73例中69例(95%)で手術が実施され、手術死亡はなかった。 Intention-to-treat解析において、主要評価項目のイベントは早期手術群で1例(1%)、保存的治療群で11例(15%)発生した(HR:0.09、95%CI:0.01~0.67、p=0.003)。全死因死亡は、早期手術群5例(7%)、保存的治療群15例(21%)に発生した(HR:0.33、95%CI:0.12~0.90)。 保存的治療群では、突然死の累積発生率が4年時で4%、8年時で14%であった。 なお著者は、症例数および主要評価項目のイベント発生数が少ないこと、相対的に若い患者が組み込まれたことなどを研究の限界として挙げている。

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メトホルミンとDPP-4阻害薬との早期併用療法の有効性は実証されたか?(解説:住谷哲氏)-1144

 2型糖尿病患者には程度の差はあるがインスリン抵抗性とインスリン分泌不全の両者が存在する。したがって病態生理学的にはその両者に早期から介入する薬物療法が、その一方だけに介入する薬物療法よりも血糖管理においてより有効であることは理解しやすい。血糖降下薬の有効性を評価する指標はいくつもあるが、どれだけ長期間にわたってHbA1cを<7.0%に維持可能であるかを示すdurabilityもその1つである。インスリン抵抗性改善薬であるメトホルミンとインスリン分泌不全改善薬のDPP-4阻害薬であるビルダグリプチンを診断直後から併用することが(early combination therapy:早期併用療法)、メトホルミン単剤で治療を開始して血糖コントロールが維持できなければビルダグリプチンを併用する段階的治療(sequential metformin monotherapy:段階的治療)に比較してdurabilityを延長できるか否かを検討したのが本試験である。 本試験は試験デザインが複雑で、かつ治療失敗treatment failureという見慣れないエンドポイントが設定されているので論文を一読するだけでは内容を容易に理解しがたい。試験に組み込まれたのは2型糖尿病診断後2年以内、未治療(メトホルミン使用4週間以内は許容されている)、HbA1c 6.5~7.5%の初回治療患者である。3週間のrun-in期間でメトホルミンを1,500mgまで増量を試みて、メトホルミン1,000mg以上服用できた患者のみ無作為化された。つまり本試験は最初から併用療法で治療を開始するinitial combination therapyではない。2,001例の患者が早期併用療法群(メトホルミン1,000mg+ビルダグリプチン50mg x 2)と段階的治療(メトホルミン1,000mg+プラセボ x 2)の2群に1対1に振り分けられた。すべての患者で無作為化後の4週間にメトホルミンは2,000mgまで増量が試みられた。患者は13週ごとに受診したが、HbA1c 7.0%以上が連続した2回の受診で認められた場合にその時点で治療失敗と定義された。主要評価項目は1回目の治療失敗までの時間(period 1)とした。2回目の治療失敗までの時間(period 2)は副次評価項目とされた。段階的治療は1回目の治療失敗後にメトホルミン+ビルダグリプチンの併用療法に移行した。つまりperiod 2の治療法は両群で同一となっている。試験観察期間が予定より短くなることの多いevent-driven型の心血管アウトカム試験とは異なり、すべての患者は無作為化後5年にわたり観察された。 試験開始5年後の主要評価項目のイベント発生率は段階的治療が62.1%、早期併用療法が43.6%であった。別の表現にすると50%の患者が1回目の治療失敗に至るまでの時間(median observed time to treatment failure)が段階的治療では36.1ヵ月、早期併用療法では61.9ヵ月(これはカプランマイヤー曲線からの推定値である)、つまり早期併用療法において段階的治療に比較してdurabilityが約2年延長したことになる。副次評価項目のイベント発生率は本文に記載がないが、Figure 3Bのグラフから読み取ると多く見積もって段階的治療が45%、早期併用療法が35%であった。 以上の結果をどのように解釈したら良いのだろうか? period 1で検討されたdurabilityは早期併用療法で約2年延長することが証明された。しかし段階的治療のイベント発生率は62.1%であり、約40%の患者はメトホルミン単剤のみで5年間HbA1c<7.0%を維持できたことになる。さらに実臨床でより重要なのは、治療失敗する前から併用する早期併用療法と、メトホルミン単剤で開始して治療失敗した後に併用する段階的治療とを比較した副次評価項目である。その差はわずかに10%であり、単純にいえば90%の患者はどちらの治療法でも結果は同じだったことになる。しかしこの点についても解釈に注意が必要である。実臨床で併用療法に移行する、言い換えればメトホルミンに他の血糖降下薬を追加するのは容易でないのに対して、本試験では1回目の治療失敗患者はすべて併用療法に移行している点である。したがってリアルワールドにおける両群の差が10%以上になる可能性は十分にある。 2型糖尿病治療においてもclinical inertiaの重要性が強調されている。しかしあらゆる治療にはbenefitとharmがある。天秤の皿の一方に載せるのがclinical inertiaとすればもう一方の皿に載せるべきはovertreatmentであろう。もしすべての患者に早期併用療法を実施したとすると、本試験の結果によればその中の約40%の患者は不要な治療、すなわちovertreatmentを受けたことになる。本試験はclinical inertiaとovertreatmentとのバランスの重要性をVERIFYした試験といっても良いだろう。(12月2日 一部記事内容を修正いたしました)

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第31回 ACE阻害薬で誤嚥性肺炎が予防できる場合、できない場合【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の有名な副作用である空咳は5~20%の患者さんで起こるため、問い合わせを受けたことがある薬剤師さんは多いと思います。特徴としては、女性で起こりやすく、治療開始後数時間~1週間以内に発生し、中止すると4~7日程度で治まるものの、再開ないし別のACE阻害薬に切り替えると再発することなどが挙げられます1)。この空咳は副作用である一方、誤嚥性肺炎の予防に有効という報告もあるため、誤嚥性肺炎のリスクの高い高血圧症患者さんではあえて選択されることもあります。このACE阻害薬の肺炎予防の側面は、とくにアジア人において肺炎発症リスクが下がることが東北大学の研究で示唆されています。オーストララシア、欧州およびアジアで行われたランダム化試験で、脳卒中または一過性虚血発作の病歴を有する6,105例の患者を対象に、ペリンドプリルを中心とするACE阻害薬群またはプラセボ群に割り付けて、ACE阻害薬の肺炎予防効果を検討しています。結果として、中央値3.9年の追跡期間で261例が肺炎を発症しています。全体としてはプラセボ群と比較してACE阻害薬群の肺炎リスクは19%低下(95%信頼区間[CI]=-3~37)していたものの、有意差はありませんでしたが、アジア人では47%低下(95%CI=14~67)と有意差があった一方で、非アジア人では5%低下(95%CI=-27~29%)と有意差はありませんでした。ACE I/Dの遺伝子多型が関連するという説もありますが、検出力の限界もあり確定的なことはいえないという結果です2)。別のファクターとして、組織透過性やACE阻害作用の観点から、脂溶性のACE阻害薬のほうが水溶性のACE阻害薬よりも肺炎防止に有用ではないかという説もあり、肺炎で入院した患者787例を対象とした後ろ向きコホート研究で検証されています3)。なお、脂溶性ACE阻害薬にはシラザプリル、エナラプリル、ペリンドプリルなど、水溶性ACE阻害薬にはカプトプリル、リシノプリルなどがあります。この研究では、登録患者の24%(n=186)がACE阻害薬を使用しており、111例が脂溶性、74例が水溶性で、30日時点の全体の死亡率は9.2%でした。脂溶性ACE阻害薬群のオッズ比は0.3(95%CI=0.1~0.8)、水溶性ACE阻害薬群のオッズ比は0.7(95%CI=0.3~1.7)であり、脂溶性ACE阻害薬群で30日死亡率が有意に低下していました。ただし、サンプルサイズが小さいため確信度が高いわけではありません。2012年には、ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の肺炎予防効果を検証した37件の研究を含めたシステマティック・レビューが発表されました4)。主解析項目は肺炎発生率、2次解析項目は肺炎関連の死亡率です。ACE阻害薬群では対照群と比べて肺炎発症のオッズ比が0.66(95%CI=0.55~0.80)、ARB群と比べて直接的・間接的比較を併せた推定オッズ比が0.69(95%CI=0.56~0.85)と有意に低く、2年間のNNTは65(48~112)でした。脳卒中患者においてもACE阻害薬群のオッズ比は0.46(95%CI=0.34~0.62)と有意な低下でした。とくにアジア人ではオッズ比が0.43(0.34~0.54)とリスクの低下が大きく、非アジア人では0.82(95%CI=0.67~1.00)と小さい傾向にありました。ACE阻害薬間での差は測りかねますが、遺伝子多型や既往症によってはメリットを享受できる可能性が示唆されています。ハイリスク患者では肺炎予防の効果はみられない一方で、ネガティブな結果の研究もあります。低用量のACE阻害薬が経管導入されている高齢患者の肺炎を予防できるかを検討したランダム化比較試験です5)。被験者は、脳血管疾患による嚥下障害のために2週間以上経管栄養を受けている高齢患者93例で、26週間にわたりリシノプリル2.5mgまたはプラセボが投与されました。主解析項目として肺炎発症率、2次解析項目として死亡率および嚥下能力をみました。中間解析で71例が試験を完了し、完了した患者の死亡のオッズ比は、介入群で未調整オッズ比が2.94、調整オッズ比が7.79と有意に高かった一方で、群間で肺炎ないし致命的な肺炎の発生率に有意差はありませんでした。12週時点の嚥下機能は介入群でやや良好でした。対象がハイリスク患者さんですので、理論上は介入の効果が検出されやすいはずですが、死亡率が高いことから研究自体が途中で終了しているほど結果は逆でした。低用量かつ患者群がかなり限定されることから一般化はしづらいですが、こうした経管栄養を受けているハイリスク患者さんでは有望な肺炎予防法ではなさそうです。さらに、直近の東京大学による研究では、ACE阻害薬がARBと比較して脳卒中後の誤嚥性肺炎を減少させるかどうかを検討しています。2010年7月~2016年12月までの間に脳卒中で入院し、入院中に誤嚥性肺炎を発症した患者をDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースから分析検討しています6)。DPCデータベースは全国の施設から収集された入院患者データベースで、近年このビッグデータを分析に用いた文献も増加傾向にあります。ここでは、アウトカムとして、脳卒中後誤嚥性肺炎に対する14日、30日、90日時点の再入院率をみています。35,586例の患者が抽出され、うち5,846例(16%)がACE阻害薬を服用していました。傾向スコアマッチングで5,789のペアが作成され、ACE阻害薬群とARB群で比較した結果、14日の再入院は0.8% vs.0.7%、30日の再入院は1.3% vs.1.3%、90日間の再入院は2.6% vs.2.4%といずれも有意差はなく、両群のハザード比も1.21(95%CI=0.98~1.48)と有意差はありませんでした。日本の全国的な後ろ向き研究では、脳卒中後のACE阻害薬が誤嚥性肺炎予防に有効であるとは結論付けられないというところでしょうか。現実的には肺炎予防としては口腔ケアや行動介入などが優先して行われますが、薬剤による予防という観点で話題になることもありますので、参考にしていただければ幸いです。1)Israili ZH, et al. Ann Intern Med. 1992;117:234-242.2)Ohkubo T, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2004;169:1041-1045.3)Mortensen EM, et al. Am J Med Sci. 2008;336:462-466.4) Caldeira D, et al. BMJ. 2012;345:e4260. 5)Lee JS, et al. J Am Med Dir Assoc. 2015;16:702-707.6)Kumazawa R, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2019 Oct 18. [Epub ahead of print]

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Step1攻略に必要な勉強、プラスαで大事なこと【臨床留学通信 from NY】第4回

第4回:Step1攻略に必要な勉強、プラスαで大事なこと今回も引き続き、Step1対策について書いていきます。前回、まずはオンライン問題集のUSMLE worldを解いてみるのがいいとお伝えしましたが、恐らく大半の方々はその難しさに愕然とすると思います。ただ、敵を知らずにやみくもに教科書を読んでも、試験問題が解けるようにはなりません。とにかく問題を解いていく中で、自身の足りない知識を参考書で補っていく形が理想的です。軸となる教科書はFirst Aidです。教科書といっても重要事項、単語の羅列であり、First Aidの内容が理解できなければ、ほかの教科書を参照するという形で進めていきます。もちろんUSMLE worldも1回では到底頭に入らず、2回3回と繰り返すことが必要で、初めは愕然としつつも、繰り返す中で少しずつ頭に入ってきます。受験日の直前には、NBMEという模試で点数を推測し、足りない分野を補充していきます。Step1は時間との勝負です。見慣れていない基礎医学の英語は、問題文を読むのにもかなり時間がかかるので、模試ではスピードも意識して最終的な調整をしていく必要があります。試験はコンピューターで行い、7時間のテストを休憩1時間を挟みつつ計8時間で解くわけで、相当な集中力を要します。そういった意味でも、模試で時間の感覚や集中力を磨いておくといいでしょう。なお、Step1とStep2 CKは日本での受験が可能です。レジデンシーのポジション争いは、受験の段階から始まっている本連載の第2回でも述べましたが、USMLE受験において最も重要なのは、一発かつ高得点で通過するということです。私は平均的でも受かればいいとしか思っていなかったのですが、これは大きな間違いです。米国のレジデンシーのポジションを狙って世界中から集まっているわけで、その競争は受験の段階からすでに始まっているのです。私の場合、当時の点数としては悪くはなかったと思うのですが(224点[93点])、Step1受験から9年後にマッチングに参加したため、この間に2桁の時代から3桁の時代となり、平均点が変わったことによって不利な状況に追い込まれたのも事実です。内科ですら足切りが230点と言われているのが現状です。低い点数は後々後悔することになりますので、本番前の模試が芳しくない場合は、思い切って受験日をずらすのも一手かと思います。Step1攻略に必要なプラスαとは…精神論になってしまいますが、Step1を勉強し始めて挫折する人もいると思います。あまりに膨大な問題量と知識量が問われるわけで、日常臨床をしながらやるのは相当大変です。私は、慶應義塾大学の香坂 俊先生が約10年の米国留学の後、日本に帰国した際に初めてお会いし、その斬新な考え方に感銘を受けたことがきっかけで試験勉強を始めました。また同時期に試験勉強をしていた小児科の同級生にも相当助けてもらいました。しかしながら、なぜ留学したいのか、という動機を当時そこまで明確に出来ず、ある意味、意地で試験勉強をしていました。当時、私は慶應義塾大学病院で内科ローテーション中で、医師3年目といえども立場上はほぼ研修医であり、雑務が多く、勉強する時間を確保しにくい環境にありました。もちろん臨床医3年目で勉強しなければいけないことはたくさんあります。もしUSMLEの試験勉強をする前に時間的余裕があれば、百聞は一見にしかず、一度米国の病院に見学に行って実際に目で見てくることを本当にお勧めします。それだけStep1は、最初のハードルとしては高く、強い動機付けが必要であったと今更ながら思います。Column画像を拡大するフィラデルフィアで先日行われたAHA 2019で、ポスター発表してきました1)。写真はシカゴで小児心不全のAttendingとして活躍する大学のテニス部の後輩と。作っておいた大きなポスターをうっかり家に忘れてしまい、急遽Fedexで印刷しましたが、思いのほかサイズが小さく……。それでも、発表時間中にはいろいろな人が質問しに来てくれて、珍しく忙しかったです。世界的なAHAに、バスで片道2時間程度、1泊2日の土日のみで行けるのも留学の魅力です。1)https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/circ.140.suppl_1.10619

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全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019、本邦で初めて発刊

 2019年10月、日本初の『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』が発刊された。全身性エリテマトーデス(SLE)はさまざまな全身性疾患を伴うため、治療の標準化が困難であったことからガイドラインの作成着手までに時間を要してきた。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019は専門医を対象とし、SLEの臨床的多様性に対応する総合的なガイドラインとして作成されている。 サノフィ株式会社は2019年10月30日、メディアラウンドテーブル「本邦初の全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン発行~SLE診療の現在 医師と患者の立場から~」を開催。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン統括委員会の委員長を務めた渥美 達也氏(北海道大学大学院医学研究院免疫・代謝内科学教室 教授)が「SLE診療の標準化~全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン~」について講演した。会の後半では患者代表の後藤 眞理子氏(全国膠原病友の会神奈川県支部 支部長)を交えてトークセッションが行われた。臨床的多様性が強い疾患、全身性エリテマトーデスの治療目標 高血圧症は血圧を下げる、糖尿病は血糖値を下げるなど治療目的が非常に明確である。一方、全身性エリテマトーデスは多様な臓器病変を呈する症候群であることから、症状の出方や治療ゴールが個々によって異なり、ガイドラインの作成自体が困難を極めていた。また、これまでの治療では全身性エリテマトーデスの非可逆的な臓器病変やグルココルチコイドの長期大量投与に伴う合併症によって患者の生活の質の低下が問題になっていた。このことから渥美氏はガイドライン作成の前提条件について「“SLEの社会的寛解の維持”を治療目標に設定」とコメント。加えて、「患者さんにとって、生活活動を維持してもらうことが重要。とくに若年女性の労働生産性を落とさず家庭への生活ウェイトも置けるよう、患者の多様性を考慮したモニタリング項目が記載されている」とも説明した。 この“社会的寛解の維持“という定義については、「子供の運動会に参加するなど、自分の生活目標が達成されること。総合指標やそれぞれの臓器についての寛解を評価することが目的」と渥美氏は語った。全身性エリテマトーデス診療ガイドラインの日本と海外の違いは? 米国や欧州では2012年頃から全身性エリテマトーデスの臓器病変からループス腎炎を切り出したガイドラインなどが発刊され、日常臨床に用いられてきた。2018年には英国リウマチ学会がガイドラインを発刊、症状の時期や重症度が表で示されており利便性がある。その反面で「NHS(National Health Service:国営医療サービス)のためのガイドラインであるため、作成目的が医療費の償還である」と、海外ガイドラインの怖い側面について指摘した。 日本の全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019はこれとは異なり、さまざまな医療に対応でき、世界で1つの全身性エリテマトーデス診療アルゴリズムが盛り込まれている点が特徴的である。このアルゴリズムには二次療法の記載がなく、初回療法で寛解に入らない場合は三次治療に進む。これについて同氏は「初回療法はエビデンスがあるのに対し、二次治療としてのエビデンスが少ないため」とコメントした。このほか、推奨の強さは3段階に設定、重症度分類は英国GLに準じ、 軽症・中等症・重症に区分される。さらに、システマティックレビュー(腎炎、神経精神病変、皮膚病変、血液病変)またはナラティブレビューに基づく推奨文とその合意度も参照可能である。 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019の制作は厚生労働省の自己免疫研究班SLE分科会と日本リウマチ学会による共同作業で、日本臨床免疫学会、日本腎臓学会、日本小児リウマチ学会、日本皮膚科学会の協力を得ている。全身性エリテマトーデス診療ガイドラインでは治療ゴールを明確にした 続いて、渥美氏と後藤氏によるトークセッションが行われた。後藤氏は「全身性エリテマトーデスの症状なのか薬の副作用なのか言葉にしがたい症状が生じた時、それらを医師にうまく伝えられないのは辛い。たとえば、倦怠感という概念の受け捉え方は患者も医師も人それぞれ。なので医師に具体的な表現を求める」と、症状の言語化できない問題について訴えた。これに対し、渥美氏は「寛解後の特有症状である倦怠感には医学的改善方法がないため、医師は“そうですか”と受け流すような返答になってしまう。医師は活動性指標の1つとして患者の訴えをきちんと評価すべき」と回答した。また、「薬剤の追加がネックで症状変化を医師に伝えないこともある」との後藤氏のコメントに対して、渥美氏は「どんな治療を行い、どんな治療目標とするのか。これを話せる医師が現時点では少ないため、今回のガイドラインではそのゴールを明確にした」と答えた。 最後に後藤氏は「GLが作成されたことによって全国どこでも標準的な治療が受けられるのは嬉しい。これによって患者会のメンバーの人生が広がればと感じた」と喜びを漏らした。渥美氏は「SLEの病態は例外が多いため、改善しなかった場合の対応策の盛り込み、まれな症状に対するエビデンス構築などが必要」と、今後の課題を語った。

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スマートウォッチの不整脈通知、心房細動の陽性適中率は84%/NEJM

 スマートウォッチ(Apple Watch)とスマートフォン(Apple iPhone)のアプリケーションを活用したモニタリングで不整脈が検出通知されたのは約0.52%と低率であったが、検出者に心電図(ECG)パッチを郵送し遠隔モニタリング診療を行った結果、その後に34%で心房細動がみられた。スマートウォッチの不整脈通知とECGパッチによる心房細動が同時に観察された割合(陽性適中率)は84%だったという。米国・スタンフォード大学のMarco V. Perez氏らが、約42万人を対象に行った大規模試験で明らかにし、NEJM誌2019年11月14日号で発表した。装着可能な光学センサー機器は不整脈の検出を可能とするが、光学センサーを搭載したスマートウォッチとアプリケーションの組み合わせで心房細動を特定できるかは明らかにされていなかった。スマートウォッチの不整脈検出者に心電図パッチを郵送し遠隔モニタリング 研究グループは2017年11月29日~2018年8月1日にかけて、自己申告で心房細動の既往がなく、アップル製のスマートウォッチとスマートフォンを所有している22歳以上の英語が堪能な米国居住者を適格とし試験を行った。試験参加への同意を得た参加者に、App Storeからアプリケーションをダウンロードしてもらい、不整脈のモニタリングを行った。 スマートウォッチベースの不整脈通知に関するアルゴリズムが心房細動の可能性があると識別した場合、遠隔診療が開始となり、対象参加者にECGパッチを郵送して最長7日間装着してもらった。さらにその後、不整脈通知の90日後と試験終了時に調査を行った。 試験の主目的は、スマートウォッチの不整脈通知を受けた参加者のうちECGパッチで心房細動が認められる割合と、脈拍間隔不整の陽性適中率(標的信頼区間0.10)を推算することだった。スマートウォッチの不整脈通知受信は0.52%、そのうち34%で心房細動 試験には41万9,297例が参加した。モニタリング期間中央値は117日で、その間に2,161例(0.52%)がスマートウォッチの不整脈通知を受け取った。ECGパッチは、通知をしてから平均13日後に装着され、解析可能データを含むECGパッチデータをメール返信した450例中、34%(97.5%信頼区間[CI]:29~39)で心房細動が認められた。65歳以上の参加者についてみると、その割合は35%(同:27~43)だった。 スマートウォッチの不整脈通知を受け取った参加者において、その後にスマートウォッチの不整脈通知とECGによる心房細動が同時に観察される陽性適中率は、0.84(95%CI:0.76~0.92)だった。不整タコグラムとECGで心房細動が同時に観察される陽性適中率は、0.71(97.5%CI:0.69~0.74)だった。 スマートウォッチの不整脈通知から90日後の調査で回答(メールで返信)した1,376例のうち、57%が同試験の外部の医療者とコンタクトをとっていた。 重篤なアプリ関連有害事象は報告されなかった。 なお今回の試験について著者は、「今回提示したサイトレス(被験者の受診を必要としない)のプラグマティック試験デザインは、装置使用者の自己評価によるアウトカムやアドヒアランスが大規模プラグマティック試験として確実にできることを示した」と述べている。

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TAVR後、抗凝固療法不適患者へのリバーロキサバンは?/NEJM

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)に成功した経口投与による抗凝固療法の適応のない患者に対し、直接作用型第Xa因子阻害経口抗凝固薬リバーロキサバン(10mg/日)を含む治療戦略は、アスピリンをベースとした抗血小板薬の治療戦略に比べ、死亡または血栓塞栓症の複合リスクが有意に高く、出血リスクも高いことが明らかにされた。米国・マウントサイナイ医科大学のGeorge D. Dangas氏らが、1,644例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号で発表した。リバーロキサバンがTAVR後の血栓塞栓症イベントを予防可能かどうかは明らかにされていなかった。リバーロキサバンとアスピリンをそれぞれ投与 研究グループは、経口投与による抗凝固療法の適応のないTAVRに成功した患者1,644例を無作為に2群に分け、一方にはリバーロキサバン10mg/日(当初3ヵ月はアスピリン75~100mg/日と併用)(リバーロキサバン群)を、もう一方にはアスピリン75~100mg/日(当初3ヵ月はクロピドグレル75mg/日と併用)(抗血小板薬群)を投与した。 有効性の主要アウトカムは、死亡または血栓塞栓症イベントの複合。安全性の主要アウトカムは、多量で活動や動作障害を引き起こす出血または命に関わる出血だった。死亡・血栓塞栓症の発生率、リバーロキサバン群9.8/100人年 中央値17ヵ月後において、死亡または初回血栓塞栓症イベントの発生(intention-to-treat解析)は、リバーロキサバン群105例、抗血小板薬群78例で認められた(発生率はそれぞれ9.8/100人年、7.2/100人年)。リバーロキサバン群の同発生リスクは抗血小板薬群の1.35倍だった(ハザード比[HR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.01~1.81、p=0.04)。 多量で活動や動作障害を引き起こす/命に関わる出血の発生は、リバーロキサバン群46例、抗血小板薬群31例で認められた(発生率はそれぞれ4.3/100人年、2.8/100人年、HR:1.50、95%CI:0.95~2.37、p=0.08)。 なお死亡は、リバーロキサバン群で64例、抗血小板薬群38例だった(発生率はそれぞれ5.8/100人年、3.4/100人年、HR:1.69、95%CI:1.13~2.53)。 今回の試験は、安全性への懸念から予定より早期に中止されている。

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統合失調症の残存症状による再発予測~PROACTIVE研究の再解析

 経口または長時間作用型持効性注射剤(LAI)の抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の再発を予測するうえで、残存症状の影響はこれまであまり注目されていなかった。慶應義塾大学の齋藤 雄太氏らは、PROACTIVE(Preventing Relapse: Oral Antipsychotics Compared To Injectables: Evaluating Efficacy)研究のデータを用いて、統合失調症の残存症状による再発の予測について検討を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2019年10月28日号の報告。 統合失調症外来患者305例を対象に、隔週のリスペリドンLAI(LAI-R)群または毎日の経口第2世代抗精神病薬(SGA)群のいずれかにランダムに割り付け、最大30ヵ月間の評価を行った。その後の再発を予測できるベースライン時の症状を特定するために、Cox比例ハザードモデルを用いた。また、研究中に再発を経験した73例について、線形混合モデルを用いて、再発の2~8週前における隔週評価とベースライン評価との症状の比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の誇大妄想のスコアの高さは、その後の再発と有意な関連が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.24、p=0.006)。・両群をそれぞれ分析したところ、経口SGA群では、ベースライン時の重度の誇大妄想(aHR:1.43、p=0.003)および軽度の幻覚行動(aHR:0.70、p=0.013)が、再発と有意に関連していたが、LAI-R群では認められなかった。・感情的引きこもりは、ベースライン時と比較し、再発の8週前(p=0.032)および2週前(p=0.043)に有意な悪化が認められた。 著者らは「重度の誇大妄想および軽度の幻覚は、経口抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の再発を予測する可能性がある。また、再発前に悪化が認められる感情的引きこもりは、再発を回避するための有用なマーカーとなりうる可能性がある」としている。

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STEMI症例ではXienceよりOrsiroが優れている?(解説:上田恭敬氏)-1143

 PCIを施行するSTEMI患者1,300症例1,623病変を対象として、Orsiro stent(ultrathin strut biodegradable polymer sirolimus-eluting stent)とXience Xpedition/Alpine stent(thin strut durable polymer everolimus-eluting stent)を比較した多施設無作為化比較試験(BIOSTEMI試験)の結果が報告された。主要エンドポイントは1年のTarget lesion failure(TLF)(心臓死、標的血管での心筋梗塞、 標的病変再血行再建術の複合エンドポイント)である。スイスの10病院が参加した医師主導型の臨床試験である。 1年のTLFは、Orsiro群で4%(25/649)、Xience群で6%(36/651)となり、Orsiro群の優位性が示された(difference -1.6 percentage points、rate ratio 0.59、95% Bayesian credibility interval 0.37~0.94、posterior probability of superiority 0.986)。エンドポイントの構成成分を見ると、心臓死と標的血管での心筋梗塞については群間差がなく、標的病変再血行再建術がOrsiro群で少ない傾向がみられた。 STEMI症例に使用すれば、XienceステントよりもOrsiroステントのほうが、若干再狭窄率が低くなることを示した試験といえるだろう。 ただし、基本的にはアンギオガイドのPCIによる結果であり、IVUSなどのイメージングの使用については規定されておらず、使用頻度についての記載もない。ULTIMATE試験の結果によれば、IVUSを適切に使用することで、再狭窄などのイベントが3分の1程度にまで低下する可能性がある。本試験の群間差が、拡張不十分などのIVUSを使用することで改善できる原因によるものであれば、日本で同様の試験を実施すれば、群間差なしという結果になる可能性がある。しかし、十分な拡張を得ても、ストラットの厚みなどステント特性の違いによって群間差が生じているのであれば、日本での同様の試験においても、同様の結果が得られるだろう。また、ストラットの厚みなどステント特性の違いによって再狭窄率に差異が生じているのであれば、STEMIに限らずPCI症例全般において、同様の結果が得られる可能性もあるだろう。いずれにしても、本試験の結果は有意差ではあるものの、エンドポイントの発生頻度は4% vs.6%といずれの群でも小さいため、今後さらに複数の試験によって同様の結果が得られるか検証する必要がある。

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脊髄小脳変性症〔SCD : spinocerebellar degeneration〕

1 疾患概要■ 概念・定義脊髄小脳変性症は、大きく遺伝性のものと非遺伝性のものに分けられる。非遺伝性のものの半分以上は多系統萎縮症であり、多系統萎縮症では小脳症状に加えてパーキンソン症状(体の固さなど)や自律神経症状(立ちくらみ、排尿障害など)を伴う特徴がある。また、脊髄小脳変性症のうち、遺伝性のものは約3分の1を占め、その中のほとんどは常染色体優性(顕性)遺伝性の病気であり、その多くはSCA1、SCA2などのSCA(脊髄小脳失調症)という記号に番号をつけた名前で表される。SCA3型は、別名「Machado-Joseph病(MJD)」と呼ばれ、頻度も高い。常染色体性劣性(潜性)遺伝形式の脊髄小脳変性症は、頻度的には1.8%とまれであるにもかかわらず、数多くの病型がある。近年、それらの原因遺伝子の同定や病態の解明も進んできており、疾患への理解が深まってきている。多系統萎縮症は一般的に重い病状を呈し、進行がはっきりとわかるが、遺伝性の中には進行がきわめてゆっくりのものも多く、ひとまとめに疾患の重症度を論じることは困難である。一方で、脊髄小脳変性症には痙性対麻痺(主に遺伝性のもの)も含まれる。痙性対麻痺は、錐体路がさまざまな原因で変性し、強い下肢の突っ張りにより、下肢の運動障害を呈する疾患の総称で、家族性のものはSPG(spastic paraplegia)と名付けられ、わが国では遺伝性ではSPG4が最も多いことがわかっている。本症も小脳失調症と同様に、最終的には原因別に100種類以上に分けられると推定されている。細かな病型分類はNeuromuscular Disease CenterのWebサイトにて確認ができる。■ 症状小脳失調は、脊髄小脳変性症の基本的な特徴で、最も出やすい症状は歩行失調、バランス障害で、初期には片足立ち、継ぎ足での歩行が困難になる。Wide based gaitとよばれる足を開いて歩行するような歩行もみられやすい。そのほか、眼球運動のスムーズさが損なわれ、注視方向性の眼振、構音障害、上肢の巧緻運動の低下なども見られる。純粋に小脳失調であれば筋力の低下は見られないが、最も多い多系統萎縮症では、筋力低下が認められる。これは、錐体路および錐体外路障害の影響と考えられる。痙性対麻痺は、両側の錐体路障害により下肢に強い痙性を認め、下肢が突っ張った状態となり、足の曲げにくさから足が運びにくくなり、はさみ歩行と呼ばれる足の外側を擦るような歩行を呈する。進行すると筋力低下を伴い、杖での歩行、車いすになる場合もある。脊髄が炎症や腫瘍などにより傷害される疾患では、排尿障害や便秘などの自律神経症状を合併することが多いが、本症では合併が無いことが多い。以下、本稿では次に小脳失調症を中心に記載する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 鑑別診断小脳失調症については、治療可能なものを調べる必要がある。治療可能なものとして、橋本脳症が多く混ざっていることがわかってきており、甲状腺機能が正常かどうかにかかわらず、抗TPO抗体、抗TG抗体陽性例の測定が必要である。陽性時には、診断的治療としてステロイドパルス療法などの免疫療法の反応性を確認する必要がある。ステロイド治療に反応すれば橋本脳症とするのが妥当であろう。その他にもグルテン失調症などの免疫治療に反応する小脳失調症も存在する。また、抗GAD抗体陽性の小脳失調症も知られており、測定する価値はある。悪性腫瘍に伴うものも想定されるが、実際に悪性腫瘍の関連で起こることはまれで、腫瘍が見つからないことが多い。亜急性の経過で重篤なもの、オプソクローヌスやミオクローヌスを伴う場合には、腫瘍関連の自己抗体が関連していると推定され、悪性腫瘍の合併率は格段に上がる。男性では肺がん、精巣腫瘍、悪性リンパ腫、女性では乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの探索が必要である。ミトコンドリア病(脳筋症)の場合も多々あり、小脳失調に加えて筋障害による筋力低下や糖尿病の合併などミトコンドリア病らしさがあれば、血清、髄液の乳酸、ピルビン酸値測定、MRS(MRスペクトロスコピー)、筋生検、遺伝子検査などを行うことで診断が可能である。劣性遺伝性の疾患の中に、ビタミンE単独欠乏性運動失調症(ataxia with vitamin E deficiency : AVED)という病気があり、本症は、わが国でも見られる治療可能な小脳変性症として重要である。本症は、ビタミンE転送蛋白(α-tocopherol transfer protein)という遺伝子の異常で引き起こされ、ビタミンEの補充により改善が見られる。一方、アルコール多飲が見られる場合には、中止により改善が確認できる場合も多い。フェニトインなど薬剤の確認も必要である。おおよそ小脳失調症の3分の1は多系統萎縮症である。まれに家族例が報告されているが孤発例がほとんどである。通常40代以降に、小脳失調で発症することが多く、初発時にもMRIで小脳萎縮や脳血流シンチグラフィー(IMP-SPECT)で小脳の血流低下を認める。進行とともに自律神経症状の合併、頭部MRIで橋、延髄上部にT2強調画像でhot cross bun signと呼ばれる十字の高信号や橋の萎縮像が見られる。SCAの中ではSCA2に類似の所見が見られることがあるが、この所見があれば、通常多系統萎縮症と診断できる。さらに、小脳失調症の3分の1は遺伝性のものであるため、遺伝子診断なしで小脳失調症の鑑別を行うことは難しい。遺伝性小脳失調症の95%以上は常染色体性優性遺伝形式で、その80%以上は遺伝子診断が可能である。疾患遺伝子頻度には地域差が大きいが、わが国で比較的多く見られるものは、SCA1、 SCA2、 SCA3(MJD)、SCA6、 SCA31であり、トリプレットリピートの延長などの検査で、それぞれの疾患の遺伝子診断が可能である。常染色体劣性遺伝性の小脳失調症は、小脳失調だけではなく、他の症状を合併している病型がほとんどである。その中には、末梢神経障害(ニューロパチー)、知的機能障害、てんかん、筋障害、視力障害、網膜異常、眼球運動障害、不随意運動、皮膚異常などさまざまな症候があり、小脳失調以上に身体的影響が大きい症候も存在する。この中でも先天性や乳幼児期の発症の疾患の多くは、知能障害を伴うことが多く、重度の障害を持つことが多い。小脳失調が主体に出て日常生活に支障が出る疾患として、アプラタキシン欠損症(EAOH/AOA1)、 セナタキシン欠損症(SCAR1/AOA2)、ビタミンE単独欠乏性運動失調症(AVED)、シャルルヴォア・サグネ型痙性失調症(ARSACS)、軸索型末梢神経障害を伴う小脳失調症(SCAN1)、 フリードライヒ失調症(FRDA)などがある。このうちEAOH/AOA1、SCAR1/AOA2、 AVED、ARSACSについては、わが国でも見られる。遺伝性も確認できず、原因の確認ができないものは皮質小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy: CCA)と呼ばれる。CCAは、比較的ゆっくり進行する小脳失調症として知られており、小脳失調症の10~30%の頻度を占めるが、その病理所見の詳細は不明で、実際にどのような疾患であるかは不明である。本症はまれな遺伝子異常のSCA、多系統萎縮症の初期、橋本脳症などの免疫疾患、ミトコンドリア病などさまざまな疾患が混ざっていると推定される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)小脳失調症の治療は、正確な原因診断に関わっている。上記の橋本脳症、GAD抗体小脳失調、そのほかグルテン失調症など他の自己抗体の関与が推定される疾患もあり、原因不明であれば、一度はステロイドパルスをすることも検討すべきであろう。ミトコンドリア病では、有効性は確認されていないがCoQ10、L-アルギニンなども治療薬の候補に挙がる。ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、脳卒中様発作症候群(MELAS)においてはタウリンの保険適用も認められ、その治療に準じて、治療することで奏功できる例もあると思われる。小脳失調に対しては、保険診療では、タルチレリン(商品名: セレジスト)の投与により、運動失調の治療を試みる。また、集中的なリハビリテーションの有効性も確認されている。多系統萎縮症の感受性遺伝子の1つにCoQ2の異常が報告され、その機序から推定される治療の臨床試験が進行中である。次に考えられる処方例を示す。■ SCDの薬物療法(保険適用)1) 小脳失調(1) プロチレリン(商品名:ヒルトニン)処方例ヒルトニン®(0.5mg) 1A~4A 筋肉内注射生理食塩水(100mL) 1V 点滴静注2週間連続投与のあと、2週間休薬 または 週3回隔日投与のどちらか。2mg投与群において、14日間連続投与後の評価において、とくに構音障害にて、改善を認める。1年後の累積悪化曲線では、プラセボ群と有意差を認めず。(2) タルチレリン(同:セレジスト)処方例セレジスト®(5mg)2T 分2 朝・夕食後10mg投与群において、全般改善度・運動失調検査概括改善度で改善を認める。28週後までに構音障害、注視眼振、上肢機能などの改善を認める。1年後の累積悪化曲線では、プラセボ群と有意差を認めず。(3) タンドスピロン(同:セディール)処方例セディール®(5~20mg)3T 分3 朝・昼・夕食後タンドスピロンとして、15~60mg/日有効の症例報告もあるが、無効の報告もあり。重篤な副作用がなく、不安神経症の治療としても導入しやすい。2) 自律神経症状起立性低血圧(orthostatic hypotension)※水分・塩分摂取の増加を図ることが第一である。夜間頭部挙上や弾性ストッキングの使用も勧められる。処方例(1) フルドロコルチゾン(同:フロリネフ)〔0.1mg〕 0.2~1T 分1 朝食後(2) ミドドリン(同:メトリジン)〔2mg〕 2~4T 分3 毎食後(二重盲検試験で確認)(3) ドロキシドパ(同:ドプス)〔100mg〕 3~6T 分3 毎食後(4) ピリドスチグミン(同:メスチノン)〔60mg〕 1T/日■ 外科的治療髄腔内バクロフェン投与療法(ITB療法)痙性対麻痺患者の難治性の症例には、検討される。筋力低下の少ない例では、歩行の改善が見られやすい。4 今後の展望多系統萎縮症においてもCoQ2の異常が報告されたことは述べたが、CoQ2に異常がない多系統萎縮症の例のほうが多数であり、そのメカニズムの解析が待たれる。遺伝性小脳失調症については、その原因の80%近くがリピートの延長であるが、それ以外のミスセンス変異などシークエンス配列異常も多数報告されており、正確な診断には次世代シークエンス法を用いたターゲットリシークエンス、または、エクソーム解析により、原因が同定されるであろう。治療については、抗トリプレットリピートまたはポリグルタミンに対する治療研究が積極的に行われ、治療薬スクリーニングが継続して行われる。また、近年のアンチセンスオリゴによる遺伝子治療も治験が行われるなど、遺伝性のものについても治療の期待が膨らんでいる。そのほか、iPS細胞の小脳への移植治療などについてはすぐには困難であるが、先行して行われるパーキンソン病治療の進展を見なければならない。患者iPS細胞を用いた病態解析や治療薬のスクリーニングも大規模に行われるようになるであろう。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 脊髄小脳変性症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Neuromuscular Disease Center(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会(患者、患者家族向けの情報)1)水澤英洋監修. 月刊「難病と在宅ケア」編集部編. 脊髄小脳変性症のすべて. 日本プランニングセンター;2006.2)Multiple-System Atrophy Research Collaboration. N Engl J Med. 2013; 369: 233-244.公開履歴初回2014年07月23日更新2019年11月27日

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brigatinibのALK陽性肺がん1次治療の結果、ESMO Asiaで発表/武田

 武田薬品工業は、2019年11月25日、同社グローバルサイトにて、ALK阻害薬による治療歴のない進行ALK陽性の非小細胞肺がんの成人患者に対するbrigatinibとクリゾチニブを評価した臨床第III相ALTA-1L試験の最新情報を発表した。 試験結果では、2年以上の追跡後も、brigatinibが登録時に脳転移を有した未治療の患者に対する治験責任医師評価において、病状進行または死亡リスクを76%低下させることが示された(ハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]: 0.12~0.45)。また、brigatinibは、全患者においても病状進行または死亡リスクを57%低下させることを示した(HR:0.43、95%CI::0.31~0.61)。これらのデータは、シンガポールで11月22~24日に開催された欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia)2019のPresidential Sessionで発表された。 なお、主要評価項目である独立審査委員会(BIRC)による無増悪生存期間の評価では、2回目の中間解析のデータカットオフ時点(2019年6月28日)におけるHRは、0.49(95%CI: 0.35~0.68、log rank p<0.0001)であった。

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第15回 高齢糖尿病患者の高血圧、どこまで厳格に管理する?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第15回 高齢糖尿病患者の高血圧、どこまで厳格に管理する?Q1 やや高め?厳密?高齢糖尿病患者での降圧目標の目安日本高血圧学会は、5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を2019年4月に発表しました1)。その中で後期高齢者(75歳以上)の降圧目標は、従来の150/90mmHg未満から140/90mmHg未満に引き下げられています。また、忍容性があれば個人の症状や検査所見の変化に注意しながら、最終的には130/80mmHg未満を目標に治療することを求めています。さまざまな介入試験のメタ解析の評価・検討が行われた結果、高齢者においても高血圧治療によって心血管イベントや脳卒中イベントリスクが有意に低くなり、予後の改善が見込めると示唆されたためです。一方、糖尿病合併患者や蛋白尿陽性の慢性腎臓病(CKD)患者の降圧目標は、従来の130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)に据え置かれました。血圧が140/90mmHg以上を示した場合には、ただちに降圧薬を開始するとなっています(図)。欧米のガイドラインでは、糖尿病を合併した患者の場合、降圧目標は「140/80mmHg未満」や「140/85mmHg未満」と、比較的緩やかに設定されています2,3)。しかし日本では厳格な管理目標を維持することになりました。その理由の1つは、ACCORD-BP試験において厳格降圧群(目標収縮期血圧120mmHg未満)では通常降圧群(140mmHg未満)に比べて脳卒中が41%有意に減少したと報告されたためです4)。日本では欧米と比較して脳卒中の発症率が高いことから、脳卒中の発症予防に重きを置いた降圧目標を設定すべきと考えられ、「130/80mmHg未満」とされたのです。なお、JSH2019で設定された降圧目標は年齢と合併症に基づいて決められているため、降圧目標の設定基準を複数持つ状態が生じます。たとえば、75歳以上の高齢糖尿病患者の場合、糖尿病患者としてみると130/80mmHg未満ですが、後期高齢者としてみると140/90mmHg未満となり、2つの降圧目標が出来てしまいます。このように年齢と合併症の存在によって降圧目標が異なる場合、忍容性があれば130/80mmHg未満を目指すとされました。ただし高齢者では極端な降圧により臓器への血流障害を来す可能性も危惧されます。そのため、まずは140/90mmHgを目指し、達成できればその後緩徐に130/80mmHg未満を目指していけば良いと思われます。Q2 目標値にいかないことが多い・・・強化のタイミングや注意点は?糖尿病に合併した高血圧の降圧療法での第一選択は、微量アルブミン尿またはタンパク尿がある場合にはARBやACE阻害薬を考慮し、それ以外ではARB、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、少量のサイアザイド系利尿薬が推奨されています5)。高齢糖尿病患者さんでは腎機能障害を呈していることが多く、ARBやACE阻害薬のみでは十分な降圧効果が得られないこともあります。Ca拮抗薬や利尿薬等を併用したり用量を増加したりして血圧をコントロールします。この場合、多剤併用に至り、服薬管理が困難になることもありますので、薬物療法の単純化を行う必要があります。薬物療法の単純化には、1)1日1回の薬剤に変更して服薬回数を減らす2)薬剤を一包化して服薬を単純化する3)服薬管理の比較的簡単な合剤を使用して調整するなどの対策も有効です。高血圧症の多くは自覚症状がないため、治療に積極的になれないことが服薬管理困難の一因と思われます。ただし、高血圧を有する糖尿病患者では動脈硬化が進行しやすくなります。UKPDSの結果では、糖尿病患者において通常の血圧コントロール(154/87mmHg以下を目標)を行った群と、厳格な血圧コントロール(144/82mmHg以下を目標)を行った群で比較すると、厳格な血圧コントロールを行った群の方が糖尿病合併症発症リスクの有意な減少を認めました6)。患者さんは「透析はしたくない」等、腎障害に対して危機感を抱く方が多いため、腎機能を保持するには血圧コントロールが重要であることを説明すると、服薬に理解を示される場合が多いです。高齢糖尿病患者さんでは、神経障害の進行に伴い起立性低血圧を来すことも珍しくありません。そのため、家庭での収縮期血圧は少なくとも100mmHg以上を維持している方が安全でしょう。さらに、めまいやふらつきの訴えが増える場合には、降圧薬の減量や中止にて対応した方がADLやQOLを維持できると考えられます。起立性低血圧について、患者さんや家族、介護スタッフには、「悪性の病態ではないこと」「注意によって予防可能であること」「転倒打撲のリスクの方が問題であること」を説明し、急激な体位変換や頭位変換を避けるよう指導します。排便後は深呼吸後に立ち上がること、めまいが強い場合には一度仰臥位に戻り、状態が安定してから緩徐に起き上がることなどを実行すると、起立性低血圧に伴う転倒予防に役立ちます。また、状態の改善には血糖コントロールが重要であることも理解していただくと良いでしょう。病態の原因について説明を行い、具体的な対策を指導することで、恐怖感が軽減され、適切に対応できるようになります。高血圧を合併する高齢糖尿病患者さんに食事療法を行う際は、厳格な塩分制限による食欲低下や低栄養に注意が必要です。そのため、まずは「現在の摂取量の8割程度の摂取にとどめる」といった実行可能な塩分制限から開始することが重要です。Q3 80代や90代の超高齢者でも同じように管理しますか?SPRINTのサブ解析では、75歳以上の高齢者において、収縮期血圧の目標を120mmHg未満とした方が、心血管疾患の発症率が低いことが示されました。また、フレイルの程度に関わらず積極的降圧治療が予後を改善させるとも報告しています7)。この研究では非糖尿病患者を対象としていますが、80代や90代の超高齢糖尿病患者においても、降圧が予後改善につながる可能性があります。ただし、寝たきりなど身体能力の極めて低下した高血圧患者に対しては、降圧療法による予後改善効果は示されておらず、逆に予後が悪化することも懸念されています。高度の認知症や身体機能低下を来している場合には、従来通り個別判断での対応が望ましいと考えられます。とくに新規に降圧薬を開始する場合には、通常の半量程度から開始し、数ヵ月かけて徐々に降圧を図るなど、柔軟性のある対応で臨むことが良いと思われます。高齢糖尿病患者では、降圧薬増量による他臓器への影響や経済的負担増も考慮する必要があります。家族や介護スタッフの協力が得られればより良い調整が期待できますが、難しい場合には服薬アドヒアランスを考慮し、一包化や合剤の使用も検討が必要です。認知症が強い場合には、薬剤師と連携を取り、服薬カレンダーの設置や服薬支援のロボットを導入することなども効果的です。しかし、90歳以上の超高齢糖尿病患者さんでもADLが自立しており、元気な方も増えています。加齢と共に個人差は大きくなるため、あまり年齢にこだわる必要はないと考えられます。JSH 2019でも、提示した降圧目標はすべての患者における降圧目標ということではないと強調されていました。ガイドラインや最近の大規模試験の結果などを参考にしながら、個別に降圧目標を設定し対応することが重要です。1)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版;2019.2)American Diabetes Association. Standards of medical care in diabetes—2013. Diabetes Care. 2013;36: S11-66.3)Mancia G, et al.The Task Force for the management of arterial hypertension of the European Society of Hypertension(ESH) and of the European. 2013 ESH/ESC Guidelines for the management of arterial hypertension Society of Cardiology (ESC). J Hypertens. 2013;31:1281-1357.4)Cushman WC, et al. N Eng J Med. 2010;362:1575-1585.5)日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂,245-260, 2019.6)Tight blood pressure control and risk of macrovascular and microvascular complications in type 2 diabetes: UKPDS 38. UK prospective diabetes study group.BMJ.1998;317: 703-713.7)Williamson JD, et al. JAMA.315: 2673-2682, 2016.

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C型肝炎ウイルスの薬剤耐性変異、世界規模で検証

 直接作用型抗ウイルス治療薬(DAA)の登場により、C型肝炎の治療は大幅に改善された。しかしその治療奏効率は、C型肝炎ウイルス(HCV)の薬剤耐性変異により低下する可能性がある。現在、DAAにはNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、NS5A阻害薬、NS5Bポリメラーゼ阻害薬があり、それぞれグレカプレビル、ピブレンタスビル、ソホスブビルなどが臨床で使用されている。今回、それらに対する耐性変異について、世界的状況を中国・復旦大学のZhenqiu Liu氏らがメタ解析により検討した。その結果、114個の耐性変異を同定し、頻度や種類は日本、米国、ドイツ、タイ、英国で多いことを示した。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2019年11月1日号掲載の報告。 DAAの耐性変異に関連した文献を検索し、32ヵ国の計50件を選択した。最終的に49,744例のHCV感染患者をメタ解析に組み込み、変異部位と頻度を検討した。変異の世界的な分布は、Los Alamos HCV 配列データベースに登録された12,612例のサンプルより検討した。薬剤の50%効果濃度(EC50)が野生型の2倍以上となる変異を、耐性変異と定義した。DAA投与後に出現した変異は解析から除外した。 メタ解析より、56個のアミノ酸変異と114個の点変異を同定した。HCVの遺伝子型別に見ると、変異の頻度はジェノタイプ6型で最も高かった。変異の種類別に見ると、とくにジェノタイプ1a型のQ80KやY93Tで頻度が高かった。ジェノタイプ1a型のQ80K多型は、DAA治療によるウイルス学的著効(SVR)率を大幅に低下させたことが報告されている。 次に地域ごとの耐性変異の頻度は、NS3/4Aではブラジル(25.0%、95%CI:11.2~36.3%)、ベトナム、ロシアで高かった。NS5Aではポルトガル(33.3%、95%CI:16.9~55.3%)、ロシア(25.0%、95%CI:6.3~62.2%)で高かった。NS5Bでは台湾(34.3%、95%CI:14.9~60.9%)、オーストラリア(28.2%、95%CI:17.3~42.6%)で高かった。また耐性変異ウイルスの種類は日本で最も多く、タイ、米国、ドイツ、英国と続いた。 研究グループは、とくに耐性変異の頻度が高い地域のHCV感染患者では、DAA治療を開始する前に変異の検査を実施するべきだと述べている。

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第33回 「異常Q波」アップデート~最近の考え方~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第33回:「異常Q波」アップデート~最近の考え方~ここ何回かのレクチャーで扱った「異常Q波」。これまでの右前胸部誘導(V1~V3)は「存在」確認で診断できましたが、そのほかの誘導ではどうでしょうか? ちまたの教科書などではさまざまな「定義」が述べられ、やや混沌としている印象です。「心筋梗塞」の反映という観点から、波形の特徴はもちろん、誘導同士の組み合わせや個数まで、Dr.ヒロが最新の考え方を解説します。さぁ、知識をアップデートしましょう!【問題】陳旧性心筋梗塞を反映する「異常Q波」に関する診断条件のうち正しいものを2つ選べ。1)深さ:2mm以上2)深さ:同一誘導のR波高の1/3以上3)隣接する誘導グループのうち、3つ以上で認める4)QS型5)幅:0.03秒以上解答はこちら4)、5)解説はこちら心筋梗塞の診断に役立つ「異常Q波」の定義に関する問題です。今回は症例問題がありませんが、次回に扱おうと思います。選択肢として挙げたものは、いずれも教科書などで取り上げられるものを題材としています。2000年代に入ってから、「Q波」を用いた心筋梗塞の診断法はいくつか改良がなされました。少し前までの“当たり前”が、今は“そうじゃない”ってこともあるんです。今後も微修正される可能性はありますが、目下、最新の診断基準を共有したいと思います。“「異常Q波」な人ってどれくらいいる?”労働衛生協会のデータによると、2017年に健康診断で心電図検査を受けた13万6,000人のうち、「有所見」(要経過観察・受診・精査)とされたのは8.5%、そのうち「異常Q波」は5.4%(男性6.3%、女性3.5%)に認められました。つまり、「心電図異常」を理由に二次健康診断として医療機関を紹介された人は、20人に1人の確率で「異常Q波」の所見が認められるわけです。残念ながら、受診しない方もいますから、受け手側のわれわれが抱くイメージと若干ズレている可能性はありますが、「異常Q波」は割とコモンな所見だってことです。健康診断でこんな状況なのですから、心血管疾患の患者さんが集まる病院では「異常Q波」の出現頻度がもっと高いでしょう。“時代とともに変わる異常Q波の定義”ところで、「異常Q波」を指摘する意味は何だったでしょうか? それは死んで機能しなくなった心筋の反映で、その“代表選手”は「心筋梗塞」です。冠動脈閉塞により心筋梗塞が起こり「異常Q波」が記録された様子のイメージを、図1からつかんでみましょう。(図1)異常Q波と心筋梗塞の関係画像を拡大するところで、心筋梗塞のすべての患者さんが「強い胸痛」を発症し、カテーテル治療を受けて、自身の病名をその後も忘れずに完全に把握しているとしたら…心電図でQ波を探すよりもご本人に問診すれば済むはずです。しかし、患者さんの多くはメディカル・プロフェッショナルではありませんし、記憶があいまいなケースも多々あります(第32回)。それよりもっと重要なのは、自分の知らないうちに心筋梗塞を起こしている人がいるということです。まったく症状がなかったり、心筋梗塞だと思わずにガマンしてしまったり…後者は別にして、「無症候性」(silent)心筋梗塞が全体の1/3を占めるなんていうショッキングな論文1)、2)もあります。こうした “いつの間にか心筋梗塞”を見抜く術として心電図検査があり、とくに「異常Q波」がその役割を果たすと言えます。このへんで少し昔話。心電図が苦手でキライだった “ダメ医学生”の時代(第24回、第25回)、当時のボクが習った「異常Q波」の定義は、A) R波高≦1mm(0.1mV)なら「Q波」とみなして良い、B) 幅≧0.04秒(40ミリ秒[ms])、C) 深さ≧同一誘導でのR波高の25%(1/4)、でした。A)は「1mmなかったら、陽性波が“ない”のと同じ」ってこと。ごくごく小さいR波がわずかにあり「Q波」かな?と悩む場合には、今でも時おり参考にしています。B)は心電図波形の方眼紙では、横1mmが「0.04秒(40ミリ秒[ms])」に相当するので、これも“1mmつながり”です。最後のC)については、問題の選択肢2)のように「1/3」と記載している本もありました。『1/3とか1/4って言うけど、いちいちR波が何ミリ、Q波が何ミリとかって測るのが面倒だなぁ…』と思った記憶があります。一つずつR波高と比べるのも確かに大変ですし、早期にPCIがなされてR波の減高が軽度にとどまる場合、相当な深さのQ波でないと“異常”とはならず、現実をうまく説明できません。そんな“現場の声”が届いたのか、2000年に心筋梗塞の定義が見直されました。その後、約20年間に何度か改訂がなされ、現在の異常Q波の定義は次のものです。一昔前の定義がまったくダメというわけではありませんが、目下“最新版”というものをお示しします。■過去の心筋梗塞を示唆する心電図所見3)(左室肥大、左脚ブロックを除く)■V2~V3誘導:幅>0.02秒のQ波あるいはQS型それ以外:幅≧0.03秒 かつ 深さ≧1mmのQ波あるいはQS型(I、II、aVL、aVF、V4~V6誘導*1)が隣接する誘導グループ*2のうち2つ以上で認められる。V1~V2誘導:R波幅>0.04秒 かつ そろってR/S>1で陽性T波*1:V2、V3は別に定義されており、その心は「III、aVR、V1を除く」ということ(正常でも「異常Q波」様の波形が出る代表的なIII誘導)。*2:(1)I、aVL、(2)V1~V6、(3)II、III、aVFの3つ。“「V1~V3」と「それ以外」で考えよ”一見して気づくのは「V2、V3」と「それ以外」で分けている点でしょう。前回までは「V1~V3」で扱ったのに? 個人的には、この定義のようにV1誘導だけを“のけ者”にするような定義は好みません。現在の定義でV1誘導が除かれているのは、V1誘導では健常者でも「Q波」が出ることがあるためで、単独ではもちろん、人によっては「V1、V2にQ波あり」でも、心エコーなどでは左室「前壁」含めて何にも異常がない方もいます。ただ、同じパターンでホンモノの心筋梗塞の既往がある人もいます。なので、たとえV1誘導単独でもQRS波が陰性波から始まっていたら「Q波」と指摘して欲しいですし、その「異常」基準はV2、V3誘導と同じで結構です。“例外・特殊”、“~だけ”という言葉は、漏れのない判読を推奨するDr.ヒロ流の教えに反します。ちなみに「0.02秒」の条件はあまり気にしないでOKですよ。横幅で言ったら0.5mmですし、それ以下なら正常と言えるわけでもなく(「q波」としての指摘はすべき)、ひとまず「V1」も含めて“あるだけで異常“のスタンスは崩さないほうが良いでしょう。ですから、本質的な理解としては「V1~V3」と「それ以外」で良いと思います。そして、定義ではQS型が「あるいは」で並列しています。これは陽性(r/R)波がまったくないため、「Q波」とも「S波」とも決めがたいという意味で、実質的には「(異常な)Q波」と同義として扱って良いのでした(第17回)。次に、深さの「1/4(ないし1/3)以上」が「1mm」になったのはいいとして、幅はどうでしょう? 「0.03秒(30ms)」って、横1mmが0.04秒(40ms)なのに…って思いませんか? 個人的には、人の目を引くくらい“幅広”なら、ほぼ1mmでアウト、厳密に1mm以上じゃなくていいよっていう解釈です。このように「V1~V3“以外”」では深さも幅も「1mm」がキーワードですから、これをDr.ヒロは“1mm基準”ないし“1ミリの法則”と呼んでいます。ほかにも冒頭で紹介した一昔前の基準も含めて、「異常Q波」の世界では「1mm」が頻発するのです。では、もう一つの「隣接する」(contiguous)ってどういうことでしょう? 一見“n”と“g”を打ち間違えたように見えますが、“g”でOKです。意味的には“continuous”と似ていますがね。この「contiguous」という単語って、あまり英語が得意でないボクにはここ以外ではあまり使われない気がしますが、皆さんはどうでしょうか?胸部誘導の場合、電極を貼る位置が“隣同士”あるいは“お隣さん”、たとえば「V2、V3、V4」とか「V5、V6」とか。いずれにせよ2つ以上が大事。Dr.ヒロ流では“お隣ルール”という名称で解説しています。胸部誘導は、電極位置がそのまま左室壁の「どこ」に対応していましたし(第17回)、心筋梗塞は同じ血管で灌流される一定のゾーンがやられるわけで、「単独」とか「飛び飛び」のような誘導にはならないんです。これはわかりやすいですね。“肢誘導での「隣」に注意すべし”一方の肢誘導では、“お隣ルール”の理解に注意が必要です。標準様式の心電図では、用紙の左半分の上からI、II、III、aVR、aVL、aVFと並んでいますが、見た目通りの“IはIIの隣”や“aVRとaVLは隣同士”というのは間違いです。ややこしいことに、肢誘導では波形の並び順ではなく、「空間的・位置的」に、お隣なんです。『へ…?この人、何言ってんの?どういうこと?』と、思われる方がいるかもしれませんが、大丈夫。全然難しいことではないんです。ボクはすでに何度もレクチャーで扱っています。肢誘導の空間的な位置を示すものと言えば…そう、「肢誘導界」の円座標の世界です(第5回)。ここでは、「IとaVL」、そして「II・aVF・III」の組み合わせが“隣接誘導”*3になります。*3:Dr.ヒロ流では“仲良し誘導”という言い方をすることもある。■“お隣ルール”での隣接誘導群の考え方■胸部誘導は電極の貼り位置そのまま肢誘導は“円座標”の世界での話であることに注意!そして最後。気をつけていないと見過ごしてしまいそうですが、「異常Q波」の定義のはずが、3つ目にV1、V2誘導の「R波」が述べられています。なぜ「R波」が心筋梗塞なのか、聞いたことがあるでしょうか? こちらは“裏”ないし“鏡”の世界と言える、左室「後壁」という「前壁」の真反対の話です。「Q波」の話題から少しズレるので、今回は扱うのをやめておきます(軽く目をやる程度で済ませてください)。以上が最近の「異常Q波」の考え方のトレンドですので、しっかり理解しておきましょう。次回は、具体的な症例でこれらの知識を用いてみようと思いますので、ご期待あれ!Take-home Message異常Q波の診断基準をアップデートしよう。V1~V3誘導では「存在」ないし「QS型」、それ以外の誘導では“1mm”がキーワード(幅・深さ)単独ではなく、“お隣ルール”で「2つ以上」が本当の「異常Q波」杉山裕章. 心電図のみかた・考え方(応用編). 中外医学社;2014.p.80-124.1)Kannel WB, et al. N Engl J Med. 1984;311:1144–1147.2)De Torbal A, et al. Eur Heart J. 2006;27:729–736.3)Thygesen K, et al. Circulation. 2018;138:618-651.【古都のこと~鈴虫寺(華厳寺)】人生の岐路に立ったり悩んだりしたとき、われわれは神や仏に願うでしょう。“鈴虫寺*1”として有名な西京区の華厳寺(山号:妙徳山)*2は、京都でも有名な“ご祈願スポット”で、嵐山エリアで松尾大社や西芳寺(苔寺)のすぐ近くです。長めの石段を上ると、山門の左手に“幸福のお地蔵さま”*3に並ぶ行列が…。受付で志納料を払い、大書院に通されると周囲に鈴虫が飼育された木枠のガラスケース*4が! そして部屋中に響く鈴虫の音! 録音かと疑ってしまうくらいの見事な“大合唱”でした。当寺オリジナルスイーツ茶菓“寿々むし”とおいしいお茶をいただきながら*5、僧侶の“鈴虫説法”に耳を傾けます。自らの来し方を振り返り、行く末を思案するー妙に説得感があり、随所にシャレを効かせた“プレゼン”の上手さに脱帽しました。鈴虫の音はオスの求愛行動によるもので、メスが一緒にいることで初めて鳴くそうです。鈴虫の寿命は約100日。成虫となり最後の1ヵ月に精一杯鳴き、産卵後ほどなくオス・メスとも亡くなっていく話は“無常”ともリンクしたなぁ。受験合格、婚活、出世、起業…利己的な願いを胸に寺を訪れたとしても涙がちょっと出てきましょう。30分ほど話を伺い、鈴虫ケースをもう一周眺め、本尊である大日如来に手を合わせました。そして、最後にちゃっかりお地蔵さまにもお願いをして帰るDr.ヒロなのでした(笑)*1:鈴虫の英語表記は「bell(-ringing) cricket」で、欧米ではコオロギの一種と扱われている。石碑には「鈴蟲の寺 華厳禅寺」と書かれている。*2:鳳潭上人が華厳宗の復興のため享保8年(1723年)に開山。その後、臨済宗に改宗(明治元年[1868年])され、現在に至る。*3:「幸福地蔵大菩薩」。わらじスタイルは日本で唯一。たった一つだけ願い事を聞いてくれる(一願成就)。黄色の幸福御守を両手に挟み、心の中でお願い事を言うのがお約束。住所、氏名を先に言うのを忘れずに(お地蔵さまが家まで歩いて来てくれる)。*4:当日は約4,000匹とのことだったが、多い時はケース数が2倍(7,000~8,000匹)になることも。*5:禅宗の教えの一つに「茶礼」がある。

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乳がん家族歴による検診開始年齢を検討/JAMA Oncol

 乳がん検診ガイドラインでは、リスクの高い女性は早期検診が必要としているが、乳がんの家族歴のある女性に対する指針は限られている。今回、ドイツ・German Cancer Research Center(DKFZ)のTrasias Mukama氏らが、500万人以上の女性が含まれるスウェーデンの全国的コホート研究で、家族歴ごとのリスクに相当する乳がん検診の開始年齢を検討した。JAMA Oncology誌オンライン版2019年11月14日号に掲載。 本研究はSwedish family-cancer data setを用いて、少なくとも1人の第1度近親者がいる、1932年以降に生まれたすべての女性(509万9,172人)を対象とした。1958年1月1日~2015年12月31日のデータを収集し、2017年10月1日~2019年3月31日に分析した。第1度および第2度近親者における乳がんの家族歴、浸潤性乳がん罹患について調査し、全対象における40歳・45歳・50歳での10年累積罹患率に達する年齢を家族歴ごとに評価した。 主な結果は以下のとおり。・本研究に参加した509万9,172人の女性のうち、11万8,953人(2.3%)が浸潤性乳がんと診断された。10万2,751人(86.4%、診断時の平均[SD]年齢:55.9 [11.1]歳)は、乳がん診断時に第1度および第2度近親者に家族歴がなかった。・リスクに基づき特定された乳がん検診の推奨開始年齢は、乳がんと診断された第1度および第2度近親者の人数と第1度近親者の診断年齢によって変化した。たとえば、一般集団の推奨開始年齢が50歳のとき、全対象における50歳での10年累積罹患率(2.2%)に達する年齢をみると、乳がんの第1度近親者が2人以上でいずれかが50歳前に診断されている場合は27歳であり、いずれも50歳以降に診断されている場合は36歳であった。 著者は、「本研究は、集団ベースの登録に基づく乳がん検診において、リスクに基づいた推奨開始年齢を特定している。これらの結果は、乳がん患者の近親者に対する現在の検診ガイドラインを補完する質の高いエビデンスとして役立つかもしれない」と述べている。

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うつ病患者の睡眠障害と自殺との関係~メタ解析

 これまで、睡眠障害と自殺との潜在的な関連は、いくつかのレビューにより検証されてきた。中国・中南大学のXiaofen Wang氏らは、うつ病患者における睡眠障害と自殺との全体的な関連性を推定し、より具体的な関連因子を特定するため、メタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2019年10月17日号の報告。 PubMed、EMBASE、Cochrane Libraryより、2019年1月1日までに公表された、うつ病患者の睡眠障害と自殺との関連を報告した研究をシステマティックに検索した。オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を用いて、アウトカムを測定した。異質性は、コクランのQ検定、I2を用いて評価した。各研究の方法論的品質の評価には、Newcastle-Ottawa Scale(NOS)を、エビデンスの品質評価には、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)を用いた。睡眠障害と自殺との全体的な関連性を評価し、不眠症、悪夢、過眠症、自殺念慮、自殺企図、自殺完遂など、より具体的なカテゴリーを推定した。 主な結果は以下のとおり。・18研究が抽出された。・全体として、睡眠障害は、うつ病患者の自殺と密接な関連が認められた(OR:2.45、95%CI:1.33~4.52)。・自殺念慮、自殺企図、自殺完遂に対する睡眠障害の増加リスクは、1.24(95%CI:1.00~1.53)~2.41(95%CI:1.45~4.02)の範囲であった。・自殺との高い相関が認められた因子は、悪夢(OR:4.47、95%CI:2.00~9.97)および不眠症の持続(OR:2.29、95%CI:1.69~3.10)であった。・エビデンスの質は、全体的なアウトカムおよびうつ病サブグループで非常に低く、うつ病サブグループで低いと評価された。 著者らは「抽出された研究が観察研究であったことを考慮するとエビデンスの質は低いものの、睡眠障害、とくに悪夢や不眠症は、うつ病患者の自殺リスクを高める可能性があることが示唆された。このメカニズムを明らかにするためには、より適切に設計された研究が必要である」としている。

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州による敗血症治療のプロトコール導入は、成人敗血症の院内死亡の減少に寄与したか(解説:吉田敦氏)-1141

 12歳の男児が敗血症で死亡したことを受け、ニューヨーク州は2013年に「Rory’s Regulations」を定めた。この規則はすべての急性期病院に対し、敗血症の早期診断と治療開始に関するプロトコールを導入し(たとえば抗菌薬ならば3時間以内に開始)、診療にあたること、ならびにその順守に関して職員の教育を行うとともに、順守割合と臨床的転帰について報告を求めたものである。 本研究はプロトコール導入が実際に成人の院内死亡の減少に寄与したかを、本規則が定められていない対照4州と比較して明らかにしようとした。プライマリーアウトカムは30日院内死亡率で、ニューヨーク州では規則導入の前後で26.3%から22.0%であったのに対し、対照4州では該当期間の変化は22.0%が19.1%となっており、ニューヨーク州では患者・病院特性と規則導入前からの傾向を調整しても、対照州に比べその減少幅は有意に大きかった。ただしセカンダリーアウトカムでは対照州に比較し、ICU入室率の減少幅は差がなく、入院期間の短縮幅とC. difficile発症率の減少幅はやや大きく、CVカテーテル使用率の減少幅は少なかった。 本研究は509ヵ所の病院を含む、合計101万の敗血症入院を解析した非常に大規模な試験である。ニューヨーク州の敗血症死亡率はもともと対照州より高かったが、対照州と比較して、病院の特徴が異なり(100床以下の医療機関や、規模の小さなICUが多い一方、教育病院の割合が高いなど)、ICU入室率やCVカテーテル使用率も低かった。つまり対照州のほうが、もともと規模の大きな病院でICUに入室させやすく、CVカテーテル使用率も高かったといえるであろう。また本研究では患者・病院特性の調整が行われたとはいえ、ニューヨーク州ではほかに患者背景、重症度、合併症、受診までの時間や経緯、医療保険などに、複雑かつ多様な要因があることも否めない。したがってニューヨーク州独自の事情が強く影響している下での、敗血症死亡率の低下、ICU滞在期間短縮を目指した努力が行われた結果をみていると考えたほうがよいと思われる。 複雑かつ多様な要因が影響している中、規則による介入が現場の診療の向上に寄与したかどうか、本論文のようにポジティブに関連付けることには、議論があるかもしれない。ニューヨーク州でのプロトコールの順守状況については情報がなく、さらにアウトカム指標としては5個のみで介入の効果をみているに過ぎない。現場での向上のプロセスの詳細は含まれていないが、介入によって実際のプロセスが具体的にどう変わり、どのように定着したか、読み手としてはそこが知りたいところではないだろうか。現在プロトコール導入を行う州が増えているとのことであるが、各州で行われているプロセス改善を目的とした現場での状況について、詳細な報告がまとめられることに期待したい。

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