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TN乳がんへのカペシタビンの術後メトロノミック療法(SYSUCC-001)/ASCO2020

 手術や術前または術後の標準的な化学療法を受けたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する、カペシタビンのメンテナンス投与(メトロノミック療法)が、経過観察に比べ無病生存期間(DFS)を改善するという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、中国・Sun Yat-Sen University Cancer CenterのXi Wang氏より発表された。 本試験は、中国国内で実施された多施設共同第III相比較試験である。・対象:Stage Ib〜IIIcのTNBCで、標準的な周術期治療(手術、術前または術後の化学療法、放射線療法)を終了した症例。症例登録期間は、2010年4月から2016年12月。・試験群:カペシタビン650mg/m2×2/日を1年間投与(Cape群)・対照群:経過観察(観察群)・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、無遠隔転移生存期間(DDFS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・Cape群222例、観察群221例の計443例が無作為化割り付けされ、Cape群221例、観察群213例が解析対象とされた。・各群の平均年齢はCape群45.8歳、観察群46.1歳で、閉経前はそれぞれ71.0%、62.4%であった。また腫瘍径2cm以下が35.8%と37.1%、2.1~5cmが55.2%と58.2%であり、リンパ節転移陰性は61.1%と62.4%であった。Ki-67値は、30%以上が80.1%と73.2%であった。・Cape群の91.4%(202例)が1年間のプロトコール治療を完遂し、その相対的治療強度(RDI)の中央値は84.7%であった。・観察期間中央値57ヵ月時点における、主要評価項目である5年DFS率はCape群83% vs.観察群73%で、そのハザード比(HR)は0.63(95%CI:0.42〜0.96)、p=0.027と統計学的な有意差が認められた。・5年DDFS率は、Cape群85% vs.観察群76%で、HR0.63(95%CI:0.37〜0.90)、p=0.016と、こちらも統計学的な有意差が認められた。・5年OS率は、Cape群86%、観察群81%で統計学的な有意差はなかった(HR0.74、95%CI:0.47〜1.18、p=0.203)。・Cape群の主な有害事象は、手足症候群が全Gradeで45.2%、Grade3以上で7.7%であった。その他の主な有害事象はGrade3以上の事象はなく、全Gradeで白血球減少が23.5%、高ビリルビン血症が12.7%、腹痛・下痢が6.8%、ALT/AST上昇が5.0%だった。 演者のWang氏は「この第III相試験の結果から、1年間のカペシタビンのメトロノミック療法は、忍容性も問題なく、TNBC患者の予後改善に有望である」と結んだ。

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80歳以上の高齢の高血圧患者、降圧薬を1剤減らしても非劣性/JAMA

 2種類以上の降圧薬を服用し、収縮期血圧値が150mmHg未満の80歳以上の高齢患者について、医師が判断のうえで降圧薬を1種類減らしても通常どおりの治療を続けた患者と比べて、12週後の血圧コントロールに関して非劣性であることが示された。英国・オックスフォード大学のJames P. Sheppard氏らが、英国69ヵ所のプライマリケア診療所を通じ、569例を対象に行った試験で明らかにした。多剤併用および複数疾患が並存する高齢者に対して、治療継続のベネフィットが有害性に勝らない場合は、降圧薬の処方を見直すことが推奨されている。著者は、「今回の結果は、高血圧の高齢者患者集団において、降圧薬の減薬が血圧コントロールに実質的な影響はもたらさないことを示すものであった。なおさらなる研究を行い、長期的な臨床アウトカムを明らかにする必要はある」とまとめている。JAMA誌2020年5月26日号掲載の報告。高齢患者の12週後の収縮期血圧値150mmHg未満の割合を比較 研究グループは、降圧薬の減薬が、収縮期血圧コントロールや有害イベント発生の有意な変化をもたらす可能性はあるのかないのかを明らかにするため、2017年4月~2018年9月にかけて、英国69ヵ所のプライマリケア診療所を通じ、569例の患者を対象に、無作為化非盲検・非劣性試験「OPTIMISE」(The Optimising Treatment for Mild Systolic Hypertension in the Elderly)を開始し、2019年1月まで追跡した。 被験者は、収縮期血圧値が150mmHg未満で、2種以上の降圧薬を服用しており、プライマリケア医が降圧薬の減薬について適切と判断した80歳以上の高血圧の高齢患者だった。 被験者を無作為に1対1の割合で2群に分け、一方の群については1種類の降圧薬服用を中止とした(減薬群282例)。もう一方の群では、降圧薬の減薬を義務付けずに通常のケアを行った(通常ケア群287例)。 主要アウトカムは、12週時点で収縮期血圧値が150mmHg未満の被験者の割合とした。事前に規定した非劣性マージンは、相対リスク(RR)が0.90。副次アウトカムは、減薬を維持した被験者の割合、血圧値や虚弱の程度、QOL、有害イベント、重篤有害イベントの差などだった。高血圧の高齢患者の減薬群86.4%は通常ケア群87.7%と同等 被験者である569例の高血圧の高齢患者の平均年齢は84.8歳、女性は48.5%(276例)で、ベースラインで処方されていた降圧薬数の中央値は2種だった。試験を完了したのは、534例(93.8%)だった(減薬群265例、通常ケア群269例)。 12週時点で収縮期血圧が150mmHg未満だった被験者の割合は、通常ケア群87.7%(236例)に対して、減薬群は86.4%(229例)だった。補正後RRは0.98(97.5%片側信頼区間[CI]:0.92~∞)で、減薬群の非劣性が確認された。また、副次アウトカムについて、7つのうち5つで有意差は示されなかった。 減薬群において、12週時点で降圧薬の減数が維持されていた被験者は、187例(66.3%)だった。ベースラインから12週までの収縮期血圧値の平均変化値は、減薬群が通常ケア群に比べ3.4mmHg(95%CI:1.1~5.8)上回っていた。 1件以上の重篤有害事象の発生は、減薬群12例(4.3%)、通常ケア群7例(2.4%)で認められた(補正後RR:1.72、95%CI:0.7~4.3)。

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転移性尿路上皮がんに対するアテゾリズマブの1次治療としての有効性:第III相多施設ランダム化比較試験(IMvigor130)(解説:宮嶋哲氏)-1235

 本邦において現在、転移性尿路上皮がんに対する1次治療はゲムシタビンとシスプラチン併用療法(GC療法)であるが、治療中に再発を来すことはまれではない。2次治療として免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)が期待されているが、本邦ではペンブロリズマブが唯一承認されている。アテゾリズマブは、転移性尿路上皮がんに対する2次治療としてICIの中で初めて有用性が示され、2018年にFDAに承認されたICIである。 本研究は、2016年からの2年間に転移性尿路上皮がんを対象に1次治療としてアテゾリズマブの有効性について検討を行った第III相国際多施設ランダム化比較試験(IMvigor130)である。1,213例を対象に、アテゾリズマブ+プラチナ製剤併用、アテゾリズマブ単剤、プラセボ+プラチナ製剤併用の3群にランダム化している。 ITT populationにおけるPFSの中央値は、アテゾリズマブ+プラチナ製剤併用8.2ヵ月、プラセボ+プラチナ製剤併用6.3ヵ月であった(HR:0.82)。OSの中央値は、アテゾリズマブ+プラチナ製剤併用16.0ヵ月、プラセボ+プラチナ製剤併用13.4ヵ月であったが(HR:0.83)、アテゾリズマブ単剤とプラセボ+プラチナ製剤併用の比較では15.7ヵ月vs.13.1ヵ月であった(HR:1.02)。投薬中止となる有害事象は、アテゾリズマブ+プラチナ製剤併用で34%、アテゾリズマブ単剤で6%、プラセボ+プラチナ製剤併用で34%の患者で認められた。転移性尿路上皮がん患者への1次治療で、プラチナ製剤にアテゾリズマブを併用することでPFSの延長が示され、新規治療オプションとしての可能性が示された。サブグループ解析では、がん組織におけるPD-L1の発現レベルによる各群の生存率への影響を検討しているが、PD-L1の発現レベルによってアテゾリズマブ単剤群の描く生存曲線が明らかに異なる点は大変興味深い。

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ISCHEMIA試験の解釈は難しい、試験への私見!(解説:中川義久氏)-1236

 ついに待ちに待った論文が発表された。それは、ISCHEMIA試験の結果を記載したもので、NEJM誌2020年3月30日オンライン版に掲載された。ISCHEMIA試験は、2019年AHAのLate-Breaking Clinical Trialで発表されたものの、論文化がなされていなかったのである。この試験は、安定虚血性心疾患に対する侵襲的な血行再建治療戦略(PCIまたはCABG)と至適薬物療法を優先する保存的戦略を比較したもので、侵襲的戦略は保存的戦略に比べ、虚血性冠動脈イベントや全死因死亡のリスクを抑制しないことを示した。 このISCHEMIA試験の結果については、さまざまな切り口から議論が行われているが、今回は血行再建の適応と、今後の循環器内科医の在り方、といった観点から私見を述べたい。 今後は、安定狭心症に対する冠血行再建法としてのPCIの適応はいっそうの厳格化が行われ、施行する場合には理由を明確に説明できることが必要となろう。患者の症状の改善という具体的な目標の達成のために、そのためだけにPCIをするというのは理解を得やすい説明であろう。一方で、ISCHEMIA試験の結果は、PCIやCABGはまったく役に立たないということを意味するものではない。さらに、血行再建群と保存的治療群の差異は非常に小さい(ない)ともいえ、その分だけ患者自身の考えを尊重する必要も高くなる。つまり、「シェアード・ディシジョン・メイキング(shared decision making)」の比重も増してくる。 生命予後改善効果が血行再建群で認められないことにも言及したい。冠血行再建で改善が見込まれる虚血という因子以外のファクター、つまり、年齢・血圧・糖代謝・脂質・腎機能・喫煙・心不全などの要因、さらには結果としての動脈硬化の進行のスピードのほうが生命予後においてはより重要な規定因子なのである。冠動脈という全身からみれば一部の血流を治すくらいで、人は長生きするようにはならないのであろう。心臓という臓器に介入したのだから生命予後が改善するはずだ、というのは医療サイドの思い込みなのかもしれない。 循環器内科医だけでなく医師として、ISCHEMIA試験の登録基準に該当する患者が目の前にいた場合に何をどうすれば良いのか? まず何よりも生活習慣の修正を含めた至適薬物療法をすぐに開始することである。循環器内科医として患者に関与するうえで、「PCIのことしか知りません」は容認されない。心不全、不整脈、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、脂質低下療法、抗血栓療法などについての知識を習得し活用できることは、これまで以上に必須となる。 それにしても、ISCHEMIA試験の解釈は難しい。

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ディズニー映画、がん患者のQOLに寄与

 腫瘍学において、治療効果に加え、有害事象および生活の質(QOL)の評価が重要になってきている。オーストリア・ウィーン医科大学のSophie Pils氏らは、がん化学療法中のディズニー映画観賞は婦人科がん患者の感情的機能、社会的機能、および疲労症状の改善に関連している可能性があることを明らかにした。JAMA Network Open 5月1日号掲載の報告。 研究者らは、2017年12月~2018年12月、がん化学療法中にディズニー映画の鑑賞と、感情的・社会的機能および疲労症状との関連の評価を目的とし、オーストリア・ウィーンのcancer referral centerにて無作為化試験を実施。対象者は2018年7月までに募集した婦人科がん患者で、適格基準は18歳以上、インフォームドコンセントへの同意、カルボプラチン・パクリタキセル療法またはカルボプラチン・ペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)のいずれかを6サイクル実施予定であった。 参加者はディズニー映画観賞群と観賞しない群に割り付けられ、各サイクル実施前後に、欧州癌研究治療機関(EORTC)の調査票に回答した。主要評価項目は、がん化学療法6サイクル中のQOLの変化(EORTC Core-30[version 3]で定義)と、疲労症状(EORTC Quality of Life Questionnaire Fatigueで定義)だった。 主な結果は以下のとおり。・女性56人が研究に参加、50例が調査を完了した。・調査完了者の内訳は、ディズニー映画観賞群:25人(平均年齢±SD:59±12歳)と観賞しない群(対照群):25人(平均年齢±SD:62±8歳)だった。・感情機能に関する質問では、がん化学療法6サイクルの過程で観賞群は対照群よりも緊張感が低く、不安も少なくなった(平均スコア±SD:86.9±14.3 vs.66.3±27.2、maximum test p=0.02)。・社会的機能の質問では、ディズニー映画を観賞することで患者の家庭生活や社会活動への影響が少なくなった(平均スコア±SD:86.1±23.0 vs.63.6±33.6、maximum test p=0.01) 。・この介入により疲労症状が軽減した(平均スコア±SD:85.5±13.6 vs.66.4±22.5、maximum test p=0.01)。・Global health statusについては、ディズニー映画の観賞と関連がなかった(平均スコア±SD:75.9 ±17.6 vs.61.0±25.1、maximum testp=0.16)。

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転移を有する尿路上皮がん1次治療、アテゾリズマブ併用でPFS延長(IMvigor130)/Lancet

 転移を有する尿路上皮がんの1次治療において、抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体製剤アテゾリズマブとプラチナ製剤ベースの化学療法の併用療法は、プラチナ製剤ベースの化学療法単独に比べ無増悪生存(PFS)期間を延長し、安全性プロファイルは化学療法単独とほぼ同様であることが、米国・マウント・シナイ・アイカーン医科大学のMatthew D. Galsky氏らの検討「IMvigor130試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年5月16日号に掲載された。プラチナ製剤ベースの化学療法は免疫調節作用を誘導するため、PD-L1およびPD-1の遮断を増強するなど、PD-L1/PD-1阻害薬との有益な併用効果がいくつか示されている。2018年7月、本試験の独立データ監視委員会(IDMC)による計画外の早期解析の結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)は、転移を有する尿路上皮がん(PD-L1発現腫瘍)の1次治療におけるアテゾリズマブの処方を承認しており、今回は、PFSの最終解析と全生存(OS)の中間解析の結果が報告された。IMvigor130試験には35ヵ国221施設が参加 IMvigor130試験は、日本を含む35ヵ国221施設が参加した無作為化第III相試験であり、2016年7月~2018年7月の期間に患者登録が行われた(F. Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の局所進行・転移を有する尿路上皮がんで、全身状態(ECOG PS)が≦2の患者であった。 IMvigor130試験で被験者は、アテゾリズマブ+プラチナ製剤ベースの化学療法(シスプラチンまたはカルボプラチン+ゲムシタビン)(A群)、アテゾリズマブ単独(B群)、プラセボ+プラチナ製剤ベースの化学療法(C群)を受ける群に無作為に割り付けられた。 治療は、21日を1サイクルとし、担当医評価で増悪となるか、許容できない毒性が発現するまで継続された。アテゾリズマブは、各サイクルの第1日に1,200mgが静脈内投与された。 有効性の主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における担当医評価によるPFS期間とOS期間の2つ(A群とC群の比較)、およびOS期間(B群とC群の比較)とした。IMvigor130試験のPFS期間中央値:A群8.2ヵ月vs.C群6.3ヵ月 IMvigor130試験には1,213例が登録され、A群に451例(37%、年齢中央値69歳[IQR:62~75]、女性25%)、B群に362例(30%、67歳[62~74]、23%)、C群には400例(33%、67歳[61~73]、26%)が割り付けられた。原発巣は、膀胱がそれぞれ69%、73%、73%を占めた。追跡期間中央値は11.8ヵ月(IQR:6.1~17.2)だった。 シスプラチン不適格例(Galsky基準)は、A群が263例(58%)、B群が192例(53%)、C群は222例(56%)であった。担当医の選択で、カルボプラチンの投与を受けたのは、A群が314例(70%)、C群は264例(66%)であった。 PFSの最終解析とOSの中間解析が行われた2019年5月31日の時点で、PFS期間中央値はA群が8.2ヵ月と、C群の6.3ヵ月に比べ有意に延長した(層別化ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.70~0.96、片側検定のp=0.007)。このPFS期間に関する治療効果は、すべてのサブグループで一貫してA群で良好であった。 また、OS期間中央値は、A群が16.0ヵ月、C群は13.4ヵ月であった(層別化HR:0.83、95%CI:0.69~1.00、片側検定のp=0.027)。 B群とC群の比較では、OS期間中央値はB群が15.7ヵ月、C群は13.1ヵ月であった(層別化HR:1.02、95%CI:0.83~1.24)。PD-L1の発現状況別のOS期間のサブグループ解析では、IC2/3(PD-L1発現細胞の割合≧5%)およびIC0(同<1%)/IC1(同≧1~<5%)のいずれにおいても、B群とC群の間に有意な差はなかった。 客観的奏効率は、A群が47%(完全奏効13%、部分奏効35%)、B群が23%(6%、17%)、C群は44%(7%、37%)であった。奏効例の奏効までの期間中央値は、それぞれ8.5ヵ月、評価不能、7.6ヵ月だった。 治療関連のGrade3/4の有害事象は、A群が81%、B群が15%、C群は81%で発現した。治療関連の重篤な有害事象は、それぞれ32%、12%、26%でみられた。Grade3/4のとくに注目すべき有害事象の頻度は、8%、8%、4%であった。 治療中止の原因となった有害事象は、A群が34%、B群が6%、C群は34%で認められた。このうち、アテゾリズマブまたはプラセボの中止をもたらした有害事象の頻度は、それぞれ11%、6%、7%であった。 著者は、「これらの結果は、転移を有する尿路上皮がんの1次治療の潜在的な選択肢として、アテゾリズマブ+化学療法を支持するものである」としている。

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第10回 COVID-19へのヒドロキシクロロキン、決着を付ける無作為化試験は計画通り続行

抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者死亡率上昇の関連を示した5月22日のLancet誌掲載の観察試験1)は発表後すぐに疑問視され始め2)、この週末の日曜日5月28日にはとうとう世界の専門家120人以上3)がその方法やデータを懸念する公開書簡の通知に踏み切りました。幸い、英国で進行中の無作為化試験(RECOVERY)はこれまでのデータを検討したところMehra氏等によるLancet報告の結果とは異なっており、安全性懸念による患者組み入れ停止の必要はないとして計画通り続行されています4)。対照的に、世界保健機関(WHO)はRECOVERYと同様の無作為化試験(Solidarity)のヒドロキシクロロキン投与群被験者組み入れをいったん停止しました5)。Mehra氏等によるLancet掲載の試験は臨床研究の絶対的な拠り所である無作為化試験(RCT)ではなく観察試験であるとはいえ、患者数が約9万6,000人と多数であることなどを、WHOは重く見たのです。WHOは検討の後にヒドロキシクロロキン群の今後の扱いを来週頃までに決める予定です。一方、英国のRECOVERY試験運営者の対応は息を呑むほど素早く、22日のLancet報告から24時間と経たない翌日23日に急遽データが検討され、明くる日の24日には患者組み入れ続行が試験担当医師に通知されています6)。RECOVERY試験のヒドロキシクロロキンと死亡率の関連はMehra氏等のLancet報告に似つかず、ヒドロキシクロロキン群の被験者組み入れ停止を要するような安全性懸念はないと判断されました。英国医薬品庁(MHRA)もその判断に同意しています。多数の専門家が声を上げたことが示すようにMehra氏等のLancet報告に対する疑問点は多く、たとえばどういうわけか世界のどこでも肥満率や喫煙率がほぼ同じです7)。また、人工知能(AI)技術・機械学習や統計の標準的な手法を守っておらず、倫理レビューがなされていません。データを提供した国や病院の説明が不足しています。データ提供への謝辞もありません3)。残念ながらそれら数々の疑問を調べる手立てはありません。Natureのニュース7)によると試験の原資料は占有物となっており、データやプログラムが公表されていないため、他の研究者が手に入れて検証することが今のところ不可能です。データを提供した国や病院を開示することを著者は拒否しています。ただし、それらデータを所有している米国ミシガン州のSurgisphere社は29日のニュース8)で情報提供に向けて準備を進めていると言っており、その説明が本当なら喜ばしいことに他の研究者による検証はやがて可能になるでしょう。それにしてもMehra氏の報告はWHOも言及しているように被験者数が多く、一流誌とみなされているLancetに掲載されたことも手伝ってか影響が大きく、低用量ヒドロキシクロロキンによるCOVID-19予防を検討しているオックスフォード大学主催の国際試験COPCOVも被験者組み入れ停止に追い込まれています9)。これまでの観察試験ですでに旗色が軒並み悪いヒドロキシクロロキンが、Mehra氏等のLancet報告でいよいよ無作為化試験停止を強いられるほど窮地に立たされているのです。しかしそのように無作為化試験を停止に追いやっているMehra氏等のLancet報告で、皮肉にも無作為化試験なしでは何も決まらないと結論されているように、ヒドロキシクロロキンや別のマラリア薬クロロキンによるCOVID-19治療の益害の決着を付けるには同氏等のLancet報告のような観察試験ではなく、無作為化試験が必要です。試験続行を早々に決めたRECOVERY試験の運営者もそれはよく分かっています。RECOVERYはヒドロキシクロロキンやその他のCOVID-19薬候補の世界最大の無作為化試験であり、その被験者組み入れを継続することこそ確かな結論を導く最善手だと、同試験を率いるオックスフォード大学教授の2人・Peter Horby氏とMartin Landray氏は言っています4)。参考1)Mehra MR, et al. Lancet. May 22, 2020. [Epub ahead of print]2)Disputed Hydroxychloroquine Study Brings Scrutiny to Surgisphere3)Concerns regarding the statistical analysis and data integrity4)Recruitment to the RECOVERY trial continues as planned5)WHO Halts Hydroxychloroquine Trial Over Safety Concerns6)Recruitment to the RECOVERY trial (including the Hydroxychloroquine arm) REMAINS OPEN7)Safety fears over hyped drug hydroxychloroquine spark global confusion8)Response to Widespread Reaction to Recent Lancet Article on Hydroxychloroquine9)COPCOV study paused

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経皮的電気的迷走神経刺激によるAF抑制効果は?【Dr.河田pick up】

 低レベルの経皮的な迷走神経耳介枝の刺激は、心房細動(AF)を停止させることがわかっているが、その長期的な作用については不明である。この研究は、米国・オクラホマ大学のSunny Po氏らが、シャムコントロール、二重盲検、無作為化比較試験で、発作性AFに対する長期間の耳珠の低レベル電気刺激(LLTS: low level tragus stimulation)の効果を調べたものである。JACC誌2020年3月号に掲載。 低レベル電気刺激を耳珠と耳たぶで6ヵ月実施し、比較 本研究では、患者53例をLLTS(20Hz, 不快なレベルを1mA下回るレベル)が耳珠に取り付けたクリップから与えられた群(治療群、n=26)と、耳たぶに取り付けたクリップから与えられた群(対照群、n=27)に分け、6ヵ月間、1日1時間の刺激が与えられた。非侵襲的な持続性の心電図モニターを用いて、2週間の期間におけるAFの頻度をベースライン、3ヵ月、6ヵ月の時点で評価した。また、心拍変動と炎症性サイトカインを評価するため、5分間の心電図と血清が測定された。AF頻度は対照群に比べて有意に減少 ベースラインの患者の特徴は、両群で同様であった。刺激プロトコル(毎月4セッション)の遵守は、治療群で75%、対照群で83%であった(p>0.05)。6ヵ月の時点で、AFの頻度の中央値は、治療群において対照群より85%低かった(中央値の比[ROM]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.03~0.65、p=0.011)。TNF-alphaの値は、治療群においてコントロール群より23%減少していた (ROM:0.77、95%CI:0.63~0.94、p=0.0093)。心拍数変動に関して、周波数領域の指数は、コントロール群と比べて治療群で有意に変化していた(p<0.01)。治療器具に伴う合併症は認められなった。 長期にわたる間欠的なLLTSは、シャムコントロール群よりもAFの頻度を減少させた。このことは一部の発作性AF患者において、この治療法の有用性を支持するものと考えられる。 興味深い結果ではあるが、ベースラインでの治療群と対照群でAFの頻度が異なっており(4.5%vs.1.0%)、症例数も50例程度と少ない。また、迷走神経刺激に対する反応は患者ごとに異なるうえ、逆にAFを誘発する可能性もあり、今後さらなる研究が必要と考えられる。(Oregon Heart and Vascular Institute  河田 宏)■関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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双極性障害外来患者に対する薬理学的治療~20年の変遷

 双極性障害に対する薬理学的治療オプションは、1990年代にいくつかの第2世代抗精神病薬が承認を受けたことにより、この20年間で増加した。米国・コネチカット大学のTaeho Greg Rhee氏らは、双極性障害外来患者のマネジメントにおける薬理学的治療の傾向について報告を行った。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2020年4月21日号の報告。 1997~2016年のNational Ambulatory Medical Care Survey(NAMCS)の全国データを用いて、プライマリ診断でリストアップされた精神科を受診した双極性障害患者における、気分安定薬、第1世代および第2世代抗精神病薬、抗うつ薬の使用傾向について調査を行った。年齢、性別、人種/民族、保険を含む共変量とともにロジスティック回帰モデルを用いて、統計学的に有意な傾向を特定した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害外来患者に対する抗精神病薬の使用は一般的となっており、12.4%(1997~2000年)から51.4%(2013~16年)へ増加していた(調整オッズ比:5.05、95%CI:3.65~7.01)。・気分安定薬の使用は、62.3%(1997~2000年)から26.4%(2013~16年)へ減少していた(調整オッズ比:0.18、95%CI:0.13~0.27)。・抗うつ薬の使用は、47.0%(1997~2000年)から57.5%(2013~16年)の変化であった。・気分安定薬を含まない抗うつ薬の使用は、17.9%(1997~2000年)から40.9%(2013~16年)へ大幅に増加していた(調整オッズ比:2.88、95%CI:2.06~4.03)。 著者らは「この20年間で、双極性障害治療に変化が認められており、従来の気分安定薬に代わり第2世代抗精神病薬の使用が増加していた。抗うつ薬の使用は、双極性障害に対する有効性に関してエビデンスの欠如や躁転リスク増加の懸念があるにもかかわらず持続していた」とし、「新規抗精神病薬の実際の有効性や忍容性について、従来の気分安定薬と比較した研究が必要とされる」としている。

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ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法限定追加レジメン、肺がん1次治療でOS改善(CheckMate9LA)/ASCO2020

 PD-L1とCTLA-4阻害薬は補完的に働く。また、PD-L1阻害薬と化学療法の併用は複数の臨床研究で生存ベネフィットが示されている。非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療において、PD-L1阻害薬ニボルマブとCTLA-4阻害薬イピリムマブに2週間の限定化学療法を追加治療を評価する第III相非盲検無作為化試験CheckMate9LAの中間解析の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)でMartin Reck氏が発表した。・対象:Stage IVまたは再発NSCLC患者、PS0~1・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価のPFS、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、NIVO+IPI+Chemo群(361例)とChemo群(358例)に無作為に割り付けられた。・OS中央値はNIVO+IPI+Chemo群14.1ヵ月、Chemo群10.7ヵ月と、NIVO+IPI+Chemo群で有意に改善した(HR:0.69、96.71%CI:0.55~0.87、p=0.0006)。・最低追跡期間12.7ヵ月のアップデートOSの中央値は、NIVO+IPI+Chemo群15.6ヵ月、Chemo群10.9ヵ月であった(HR:0.66、95%CI:0.55~0.80)。・組織別OS中央値のHR比をみると、非扁平上皮がんでは0.69(95%CI:0.55~0.87)、扁平上皮がんでは0.62(95%CI:0.45~0.86)であった。・PD-L1別OS中央値のHR比をみると、PD-L1<1%では0.62(95%CI:0.45~0.85)、PD-L1≧1%では0.64(0.50~0.82)と、PD-L1の発現を問わずNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。なお、PD-L1 1~49%では0.61(0.44~0.84)、PD-L1≧50%では0.66(0.44~0.99)であった。・BICR評価のPFS中央値は、NIVO+IPI+Chemo群6.7ヵ月、Chemo群5.0ヵ月であった(HR:0.68、95%CI:0.57~0.82)。・ORRはNIVO+IPI+Chemo群で38%、Chemo群では25%であった。・Grade3/4治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、NIVO+IPI+Chemo群47%、Chemo群38%であった。 NIVO+IPI+Chemo群は主要評価項目OSを達成し、より長期の追跡でもOSのさらなる改善がみられた。また、組織型、PD-L1発現を問わず有効性は一貫していた。発表者らは、NIVO+IPI+限定Chemo治療は、進行NSCLCにおける新たな1次治療の選択肢として考慮すべき、との見解を示している。

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ヒドロキシクロロキンで新型コロナ陰性化せず、有害事象は3割/BMJ

 主に軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)を併用しても、標準治療単独に比べ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の陰性化の割合に差はなく、ウイルス除去効果は改善されないことが、中国・上海交通大学医学院のWei Tang氏らの検討で示された。また、HCQ併用で有害事象の発生率も増加した。研究の成果は、BMJ誌2020年5月14日号に掲載された。HCQは、COVID-19の治療薬としてin vitro研究や臨床試験で有望なデータが得られているが、その効果は十分に明確化されていないにもかかわらず、中国のガイドラインでは適応外使用が推奨されているという。また、HCQは、世界的に注目を集めたこともあり、その負の側面が目立たなくなっているが、マラリアやリウマチ性疾患の治療では、網膜症や消化器・心臓への副作用が報告されている。 本研究は、中国の16ヵ所の指定COVID-19治療センターが参加した非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年2月11日~29日の期間に実施された(中国Emergent Projects of National Science and Technologyなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、上気道または下気道の検体を用いたリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)で確定されたCOVID-19入院患者であった。登録時の胸部CTによる肺炎所見は必須ではなかった。 被験者は、HCQ+標準治療または標準治療単独を受ける群に、無作為に割り付けられた。HCQは、負荷投与量1,200mg/日を3日間投与後、維持投与量800mg/日を連日投与した。治療期間は、軽症~中等症患者は2週間で、重症患者は3週間とされた。 主要アウトカムは、28日以内のSARS-CoV-2の陰性化とし、intention to treat解析を行った。陰性化の定義は、24時間以上間隔を置いた2回の検査でSARS-CoV-2が連続して陰性で、試験終了までに陽性の報告がない場合とした。150例を登録、99%が軽症~中等症 150例が登録され、HCQ併用群に75例、標準治療単独群にも75例が割り付けられた。全体の平均年齢は46.1(SD 14.7)歳で、82例(55%)が男性であった。148例(99%)は軽症~中等症で、重症例が2例含まれた。 症状発現から無作為割り付けまでの平均期間は16.6(SD 10.5、範囲:3~41)日であった。無作為割り付け前に90例(60%)が併用薬物療法を受けており、52例(35%)には抗ウイルス薬が投与され、32例(21%)は抗HIV薬ロピナビル・リトナビルの投与を受けていた。割り付け後の抗ウイルス薬や抗菌薬の投与状況は、両群でほぼ同様であった。 2020年3月14日(データカットオフ日)の時点で、追跡期間中央値は、HCQ併用群が20日(IQR:3~31)、標準治療単独群は21日(2~33)であった。HCQ併用群のうち6例がHCQの投与を受けなかった。HCQ併用群の中等症の1例が、重症COVID-19に進行した。死亡例はなかった。28日陰性化割合:85.4% vs.81.3% 28日以内に、109例(73%、HCQ併用群53例、標準治療単独群56例)でSARS-CoV-2が陰性化した。残りの41例(27%、22例、19例)は、ウイルスの陰性化が達成されなったため打ち切りとした。カットオフ日の時点で、最長SARS-CoV-2陽性期間は23日だった。 28日陰性化割合は、HCQ併用群が85.4%(95%信頼区間[CI]:73.8~93.8)、標準治療単独群は81.3%(71.2~89.6)とほぼ同様であり、群間差は4.1%(95%CI:-10.3~18.5)であった。陰性化までの期間中央値も、HCQ併用群が8日(5~10)、標準治療単独群は7日(5~8)と、ほぼ同様だった(ハザード比[HR]:0.85、95%CI:0.58~1.23、p=0.34[log rank検定])。 4、7、10、14、21日時の陰性化割合にも両群間に差はなかった。また、28日時の症状軽減例の割合(HCQ併用群59.9% vs.標準治療単独群66.6%、群間差:-6.6%、95%CI:-41.3~28.0)および臨床症状軽減までの期間中央値(19日vs.21日、HR:1.01、95%CI:0.59~1.74、p=0.97[log rank検定])も、両群間に差を認めなかった。有害事象は30%、重篤2例、下痢10% 安全性の評価は、HCQ投与群(70例)と非投与群(80例)で行った(HCQ併用群のうちHCQの投与を受けなかった6例を非投与群、標準治療単独群のうちHCQの投与を受けた1例を投与群に含めた)。HCQ投与群のHCQ投与期間中央値は14日(範囲:1~22)だった。 有害事象は、HCQ投与群が21例(30%)、非投与群は7例(9%)で認められた。HCQ投与群は重篤な有害事象が2例(病勢進行、上気道感染症)で発現したが、非投与群では発現しなかった。 非重篤有害事象のうち、HCQ投与群で最も頻度が高かったのは下痢(7例、10%)であり、非投与群では下痢の報告はなかった。HCQ投与群で、霧視のため1例が投与を中止し、口渇を訴えた1例では減量が行われたが、いずれも一過性の有害事象であり、症状は1~2日で消散した。 著者は、「今回の研究は、COVID-19の治療におけるヒドロキシクロロキンのベネフィット・リスク評価に関する初期のエビデンスをもたらし、今後の研究を支援するリソースとして役立つ可能性がある」としている。

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切除可能NSCLC、アテゾリズマブ+化学療法は新たな術前治療の選択肢/Lancet Oncol

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の新たな術前補助化学療法として、PD-L1阻害薬アテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性を評価した第II相試験の結果が示された。米国・コロンビア大学のCatherine A. Shu氏らによる多施設共同単群試験で、高い病理学的奏効率が得られ、忍容性も良好であったという。著者は「切除可能NSCLC患者にとってアテゾリズマブ+化学療法は、新たな術前補助化学療法となりうることが示された」と述べている。NSCLCの約25%は切除可能なStageIB~IIIAであり周術期化学療法が標準治療だが、この治療戦略は生存期間をわずかに改善するのみである。一方で免疫チェックポイント阻害薬が転移NSCLCに有効であることから、著者らは本検討を行った。Lancet Oncology誌オンライン版2020年5月7日号掲載の報告。 研究グループは米国の3施設において、切除可能なStageIB~IIIAのNSCLC患者を対象にアテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル併用による術前化学療法の有効性および安全性を評価する第II相多施設共同単群試験を実施した。 ECOG PSが0~1で喫煙歴を有する18歳以上のStageIB~IIIAのNSCLC患者を登録し、1サイクルを21日間として、アテゾリズマブ1,200mgをDay1に、nab-パクリタキセル(100mg/m2)をDay1、8および15に、カルボプラチン(AUC5)をDay1に投与した。2サイクル後に病勢進行を認めなかった患者に、さらに2サイクル投与し、その後手術を行った。 主要評価項目は、病理学的奏効率(major pathological response)で、手術時の残存腫瘍が10%以下と定義された。 主な結果は以下のとおり。・2016年5月26日~2019年3月1日に、30例が登録された。うち23例(77%)はStageIIIAであった。・30例中29例(97%)に手術が行われ、26例(87%)がR0切除に成功した。・データカットオフ日(2019年8月7日)の追跡期間中央値12.9ヵ月において、30例中17例(57%)で病理学的奏効が得られた。・主なGrade3/4の治療関連有害事象は、好中球減少症50%(15/30)、ALT増加7%(2/30)、AST増加7%(2/30)、および血小板減少症7%(2/30)であった。・重篤な治療関連有害事象は、Grade3の発熱性好中球減少症1例(3%)、Grade4の高血糖1例(3%)、およびGrade2の気管支肺出血1例(3%)であった。治療に関連した死亡は報告されなかった。

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心不全で突然死はどのくらい起こるのか?(解説:香坂俊氏)-1234

天気予報の精度が年々上がってきていることに皆さんはお気付きだろうか? とくにこの数年その進歩は著しく、翌日の天気であればほぼ時間単位での予測が可能になっている。これは実は「アルゴリズムの勝利」とも言うべきものであり、これまで集積されてきた情報をデータ化し、そこにAIを用いた数理モデルを駆使して予測を立てることができるようになってから飛躍的に進歩した分野なのである。そして、心不全の領域においても、そのイベントの発生の予測はだいぶできるようになってきた。これも天気予報と同様に数理モデルを応用して、危険因子をはじき出し、個々の患者さんの状況に当てはめるというやり方が成果を出しつつある(米国のフラミンガムリスクスコアや日本の吹田スコアなどはその好例だ)。現在「心不全領域での予測」ということに関して最後に残されているのが突然死の予測ではないだろうか? 心不全の突然死は実は若年者に多く、しかも従来からの概念からすると「比較的健康」とされる方々に多く観察される(起こる割合は低いのだが、何しろ母集団が大きいので絶対数は非常に多くなる)。今回のEU-CERT-ICD研究の解析では、周期性再分極動態(periodic repolarisation dynamics:PRD)がICD作動の予測に有用であることが示された。PRDは24時間ホルターで計測可能な項目であり、この値が低いと、ICDは生存利益がないか、ほとんどなかったが、高くなるに従ってICDの生存利益は持続的に増加した。上記の研究は、突然死の予測に関して久しぶりに朗報をもたらしたものである。ここ20年ほど、ICDが広く用いられるようになってきたものの、その価値は一部のサブグループに限定される可能性が次々と発表されてきた(※)。また、約4人に1人が10年以内にデバイス感染症や不適切なショック(inappropriate shock)などの深刻な合併症を経験するという。そうした観点から、今後PRDなどの電気生理学的な指標を予測モデルに組み込んでいくことは、患者さん側の負担を下げることにつながるものと期待される。※ICDの適応に関しては、従来、左室収縮能(LVEF)と症状の程度(NYHA分類)の2項目だけで判断されてきた。そこに近年、米国ワシントン大学のDr. Levyらにより、統計的に突然死のリスク予測を行うSeattle Proportional Risk Model(SPRM)が開発された(Shadman R, et al. Heart Rhythm. 2015;12:2069-2077.)。心不全患者の年齢/性別、BMI、LVEF、NYHA分類、血液検査所見などの10項目を入力することで、全死亡の中での突然死の確率が算出され、欧米では高い精度での突然死予測能が得られていた。日本でもこのSPRMの適合度は検証されており(C統計量=0.63)、突然死予測に使用できることが示されている(Fukuoka R, et al. Europace. 2020;22:588-597.)。本稿をまとめるに当たっては、当科所属の福岡良磨先生より貴重な示唆をいただいた。この場を借りて感謝させていただきたい。

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FDA、化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法を肺がん1次治療に承認/BMS

 米国食品医薬品局(FDA)は、5月26日、 PD-L1発現を問わず 、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療薬として、化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法を承認した。 今回の承認は、第III相CheckMate -9LA試験の中間解析に基づいたもの。ニボルマブとイピリムマブの併用療法にプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法2サイクルを追加した併用療法は、同試験において(最短8.1カ月の追跡調査)、PD-L1発現および腫瘍の組織型にかかわらず、化学療法と比較して良好な全生存期間(OS)の延長を示した(HR:0.69、96.71%CI: 0.55~0.87、p=0.0006)。また、12.7カ月の追跡調査の解析において、ハザード比は0.66(95%CI:0.55 - 0.80)に改善し、OS中央値は併用療法群で15.6ヵ月、化学療法群で10.9ヵ月であった。1年生存率は、併用療法群で63%、化学療法群で47%であった。

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COVID-19の入院リスク、RAAS阻害薬 vs.他の降圧薬/Lancet

 スペイン・University Hospital Principe de AsturiasのFrancisco J de Abajo氏らは、マドリード市内の7つの病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の調査「MED-ACE2-COVID19研究」を行い、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬は他の降圧薬に比べ、致死的な患者や集中治療室(ICU)入室を含む入院を要する患者を増加させていないことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月14日号に掲載された。RAAS阻害薬が、COVID-19を重症化する可能性が懸念されているが、疫学的なエビデンスは示されていなかった。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、そのスパイクタンパク質の受容体としてアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を利用して細胞内に侵入し、複製する。RAAS阻害薬はACE2の発現を増加させるとする動物実験の報告があり、COVID-19の重症化を招く可能性が示唆されている。一方で、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)は、アンジオテンシンIIによる肺損傷を抑制する可能性があるため、予防手段または治療薬としての使用を提唱する研究者もいる。また、RAAS阻害薬は、高血圧や心不全、糖尿病の腎合併症などに広く使用されており、中止すると有害な影響をもたらす可能性があるため、学会や医薬品規制当局は、確実なエビデンスが得られるまでは中止しないよう勧告している。他の降圧薬と入院リスクを比較する症例集団研究 研究グループは、COVID-19患者において、RAAS阻害薬と他の降圧薬による入院リスクを比較する目的で、薬剤疫学的な症例集団研究を実施した(スペイン・Instituto de Salud Carlos IIIの助成による)。 2020年3月1日~24日の期間に、マドリード市内の7つの病院から、PCR検査でCOVID-19と確定診断され、入院を要すると判定された18歳以上の患者を連続的に抽出し、症例群とした。対照群として、スペインの医療データベースであるBase de datos para la Investigacion Farmacoepidemiologica en Atencion Primaria(BIFAP)から、症例群と年齢、性別、地域(マドリード市)、インデックス入院の月日をマッチさせて、1例につき10例の患者を無作為に抽出した。 RAAS阻害薬には、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬、レニン阻害薬が含まれた(単剤、他剤との併用)。他の降圧薬は、カルシウム拮抗薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬であった(単剤、RAAS阻害薬以外の他剤との併用)。 症例群と対照群の電子カルテから、インデックス入院日の前月までの併存疾患と処方薬に関する情報を収集した。主要アウトカムは、COVID-19患者の入院とした。重症度にかかわらず、入院リスクに影響はない 症例群1,139例と、マッチさせた対照群1万1,390例のデータを収集した。年齢(両群とも、平均年齢69.1[SD 15.4]歳)と性別(両群とも、女性39.0%)はマッチしていたが、心血管疾患(虚血性心疾患、脳血管障害、心不全、心房細動、血栓塞栓性疾患)の既往(オッズ比[OR]:1.98、95%信頼区間[CI]:1.62~2.41)と、心血管リスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎不全)(1.46、1.23~1.73)を有する患者の割合が、対照群に比べ症例群で有意に高かった。 RAAS阻害薬の使用者では、他の降圧薬の使用者と比較して、入院を要するCOVID-19のリスクに有意な差は認められなかった(補正後OR:0.94、95%CI:0.77~1.15)。また、ACE阻害薬(0.80、0.64~1.00)およびARB(1.10、0.88~1.37)のいずれでも、他の降圧薬に比べ、入院を要するCOVID-19の有意な増加はみられなかった。これらの薬剤は、単剤および他剤との併用でも、入院リスクに有意な影響はなかった。 性別、年齢別(<70歳vs.≧70歳)、高血圧の有無、心血管疾患の既往、心血管リスク因子に関しては、他の降圧薬と比較して、RAAS阻害薬の使用による入院を要するCOVID-19のリスクに有意な交互作用は確認されなかった。一方、RAAS阻害薬を使用している糖尿病患者では、入院を要するCOVID-19患者が少なかった(補正後OR:0.53、95%CI:0.34~0.80、交互作用検定のp=0.004)。 COVID-19の重症度を最重症(死亡、ICU入室)と、低重症(最重症以外のすべての入院患者)に分けた。いずれの重症度でも、RAAS阻害薬、ACE阻害薬、ARBは、他の降圧薬と比較して、入院を要するCOVID-19のリスクに有意な差はなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「RAAS阻害薬は安全であり、COVID-19の重症化を予防する目的で投与を中止すべきではない」と指摘している。

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出生前母体ステロイド治療、子供の精神・行動障害が増加/JAMA

 出産前の母親への副腎皮質ステロイド治療によって、子供の精神障害および行動障害が増加することが、フィンランド・ヘルシンキ大学のKatri Raikkonen氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年5月19日号に掲載された。1週間以内に早産が予測される妊娠期間34週以内の妊婦に対しては、胎児の成熟の促進を目的とする出生前の副腎皮質ステロイド治療が標準治療とされる。近年、妊娠期間34週以降への適応拡大が議論されているが、長期アウトカムのデータは限られ、とくに治療を受けた母親の子供の神経発達に関するデータは少ないという。母体ステロイド治療が子供の精神・行動障害へ及ぼす影響を評価 研究グループは、出生前母体ステロイド治療が、子供の精神および行動の障害に及ぼす影響を評価し、正期産(妊娠期間≧37週0日)と早産(妊娠期間<37週0日)における子供への影響の違いを評価する目的で、人口ベースの後ろ向きコホート研究を行った(フィンランド・アカデミーなどの助成による)。 フィンランドにおいて、単胎で生児出生し、少なくとも1年間生存したすべての子供の全国登録(Medical Birth Register)のデータを用いた。対象は、2006年1月1日~2017年12月31日の期間に生まれた子供であった。母親が出生前母体ステロイド治療を受けた群と受けなかった群を比較した。 主要アウトカムは、公的な専門医療機関で診断された小児期の精神・行動障害とした。母体ステロイド治療曝露群の子供は精神・行動障害のリスクが高い 67万97人の子供が解析に含まれた。母体ステロイド治療曝露小児は1万4,868人(2.22%、女児46.1%)で、このうち正期産6,730人(45.27%)、早産8,138人(54.74%)であった。また、母体ステロイド治療非曝露小児は65万5,229人(97.78%、女児48.9%)であり、正期産63万4,757人(96.88%)、早産2万472人(3.12%)だった。追跡期間中央値は5.8年(IQR:3.1~8.7)。 全体では、母体ステロイド治療曝露群の子供は非曝露群の子供に比べ、精神・行動障害のリスクが高かった(発生率:曝露群12.01% vs.非曝露群6.45%、絶対群間差:5.56%[95%信頼区間[CI]:5.04~6.19]、p<0.001、補正後ハザード比[HR]:1.33[95%CI:1.26~1.41]、p<0.001)。 また、正期産の小児に限定した解析では、曝露群は非曝露群に比べ、精神・行動障害のリスクが高かった(8.89% vs.6.31%、絶対群間差:2.58%[95%CI:1.92~3.29]、p<0.001、HR:1.47[95%CI:1.36~1.69]、p<0.001)。一方、早産の小児では、精神・行動障害の発生率は曝露群で高かったが、HRには有意な差は認められなかった(14.59% vs.10.71%、3.38%[2.95~4.87]、p<0.001、1.00[0.92~1.09]、p=0.97)。 初回診断時の年齢中央値は、曝露群が非曝露群よりも1.4歳若年だった。 過期産(妊娠期間≧42週0日)の小児(3万958人、4.6%)を除外した解析では、全体(11.96% vs.6.41%、絶対群間差:5.55%[95%CI:5.03~6.10]、p<0.001、HR:1.29[95%CI:1.22~1.37]、p<0.001)および正期産(8.72% vs.6.27%、2.46%[1.80~3.17]、p<0.001、1.44[1.33~1.57]、p<0.001)のいずれにおいても、曝露群は非曝露群に比べ、精神・行動障害のリスクが高かった。 著者は、「これらの知見は、出生前母体ステロイド治療に関する意思決定において、情報提供の一助となる可能性がある」としている。■関連サイトDr.水谷の妊娠・授乳中の処方コンサルト

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永遠の命題か? 無作為化試験 vs .リアルワールドエビデンス【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第24回

第24回 永遠の命題か? 無作為化試験 vs .リアルワールドエビデンス皆様に紹介せずにはいられない興味深い文章がNEJM誌に登場しました。「The Magic of Randomization versus the Myth of Real-World Evidence」というタイトルで、2020年2月13日に掲載されました。直訳すれば「無作為化という魔法 対 リアルワールドエビデンスという神話」となります。このタイトルを見た時には、リアルワールドエビデンスを賞賛し、その将来性を期待する文章と予想しました。なぜなら、リアルワールドデータの活用は存在感を増しているからです。AI(Artificial Intelligence:人工知能)の発達により、従来では考えられないほどの膨大なデータ、つまりビッグデータを用いて解析が可能となりました。ビッグデータとは単に量が多いだけではありません。非構造的な情報も含み、時々刻々と生成される途方もない膨大なデータです。今までは管理しきれず無視されてきたデータ群を、AIが解析することにより、従来では得ることができなかった情報を引き出すようになったのです。バイアスと交絡因子をいかに排除することができるかが臨床研究の鍵です。無作為化の目的はバイアスを避けて、すべての要因を揃えて比較可能な集団を作ることです。測定することができる年齢や性別などの要因だけでなく、未知の因子もグループ間で均一にできるのが無作為化です。これを無作為化の”Magic”、つまり魔法と表現しています。一方で、リアルワールドエビデンスは”Myth”と表現しています。”Myth”を辞書で調べてみると、神話という訳語に続いて「作り話」、「根拠の薄い社会的通念」と記されています。ここでの神話というのは、かなり低評価の表現と解釈すべきです。このNEJM誌の最新論文は、リアルワールドエビデンスは無作為化比較試験に、まだまだ取って代わるものではないと述べているのです。NEJM誌編集部に代表される米国医学界の無作為化比較試験に対する信頼度の高さが伝わってきます。さらに、NEJM誌に採択されるためには、二重盲検無作為化比較試験でなければ難しいとされます。割り付けを観察者(医師)からも患者からも不明にすることで、いっそう客観性を担保する手法が二重盲検です。「パリスの審判」と名付けられた、1976年に開催されたワインの比較試飲会の話をご存じでしょうか。カリフォルニア産とフランス産の超一流の赤白ワインを、審査員がブラインドでテイスティングして、優劣を競ったのです。誰しもがフランスの圧勝を信じていたのですが、なんと赤白の両方でカリフォルニアがフランスに勝ったのです。ニューヨーク・タイムズ紙の報道により、「パリスの審判」の結果は世界中のワイン界を震撼させ、当時のワインの常識をくつがえしたのです。無個性な安ワインというカリフォルニアワインへの偏見を打破し、フランス以外でも美味しいワインは造れるというメッセージを発信したのです。この情報が説得力をもった理由は、審査員がフランスのワイン界を代表する重鎮であったことと、審査が盲検化されていたことです。結果に不満があっても審査過程に不満をぶつけることができなかったのです。この「パリスの審判」があったから、NEJM誌編集部が二重盲検無作為化比較試験を大好きになった訳ではないでしょうが、無縁でもないかもしれないと感じ、紹介させていただきました。自分は、無作為化の魔法はわかりませんが、美味しいワインは大好きです。今晩は、チリ産のカベルネソーヴィニヨン、いわゆる「チリカベ」の魔法に身をゆだねます。おやすみなさい。

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ICI有害事象、正しく理解し・正しく恐れ・正しく対処しよう【そこからですか!?のがん免疫講座】第5回

はじめに今までは、主に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果に焦点を当てて解説してきましたが、今回は少し趣を変えて有害事象、とくにICI特有の免疫関連有害事象に焦点を当て、それがどのようなメカニズムで起きるのかを話題にしたいと思います。抗がん剤の有害事象のいろいろ抗がん剤の有害事象といえば、やはり悪心・嘔吐、脱毛、血球減少などをイメージするかと思います。これらはいずれも、細胞傷害性抗がん剤といって、シスプラチンなどの従来の抗がん剤でよく出現した有害事象です。がん細胞だけでなく、さまざまな正常細胞を傷害してしまい、傷害を受けやすい細胞がダメージを受けて有害事象につながります。とくに血球減少はそれに伴う感染症で命にも関わるので、皆さん非常に気を使っているかと思います。その後、ゲフィチニブなどの分子標的薬が登場して、標的に応じた特有の有害事象が出現するようになりました。たとえば、ゲフィチニブは上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害しますので、上皮が傷害される結果起きる有害事象の報告が多くなります。皮膚であれば皮疹、腸管上皮であれば下痢、といったような感じです。血管新生阻害薬であれば血管内皮細胞増殖因子(VEGF)という分子を阻害するため、特有の高血圧など血管に関わる有害事象が起きやすくなります。では、あらためてICIについて考えてみましょう。ICIは免疫、とくにT細胞を活性化させる薬剤ですので当然といえば当然ですが、免疫に関連した特有の有害事象を起こします。前回までに免疫が自己を攻撃すると「自己免疫性疾患」になる、という話をしましたが、まさに「自己免疫性疾患」のような有害事象が出現し、それらをまとめて免疫関連有害事象と呼んでいます。ICIにより活性化したT細胞はさまざまな臓器を攻撃し、臓器によって非常に多彩な有害事象が報告されています1)。たとえば、甲状腺を攻撃すれば甲状腺機能異常、肺を攻撃すれば肺臓炎、消化管を攻撃すれば腸炎、膵臓のインスリン産生細胞を攻撃すれば糖尿病、といった具合です1)。従来の抗がん剤治療ではあまり見ない有害事象が多く、まれながら命に関わるものも報告されています。適切に対処するためには、まれでも「起きうる」と認識することが重要です。有害事象が発生するメカニズム「ICIが免疫を活性化するから有害事象が発生する」だけでは、本稿は終了になってしまいますので、もう少し詳しく説明したいと思います。自己抗原に反応して攻撃するT細胞は発生の過程で選択を受けるので、われわれの身体の中にはあまり残っていないはずです。しかし、一部は除去されずに残っているものがあるとされ、そういったT細胞が自己を攻撃すると「自己免疫性疾患」になってしまいます。こうしたT細胞が自己を攻撃しないようにするシステムがわれわれの身体には元々備わっており、そのシステムが正常に働いていれば問題は起きません。そして、そのシステムの1つが、免疫チェックポイント分子なのです。PD-1やCTLA-4も決してがん細胞を攻撃するT細胞“だけ”を抑制している分子ではなく、むしろ、本来こうした「自己を攻撃しないために備わっている分子」なのです。したがって、ICIの使用によってがん細胞を攻撃するT細胞だけでなく、自己を攻撃するT細胞も活性化されることで、自己免疫性疾患のような有害事象が出てしまうのです(図1)。画像を拡大する免疫関連有害事象を「正しく」恐れる前回、「抗原には階層性がある」という話をしました。「強い免疫応答を起こせる抗原はがんのネオ抗原で、自己抗原は強い免疫応答を起こさない」はずでしたね(図2)。画像を拡大する実は、弱い抗原によって活性化されたT細胞であれば、ステロイドなどのT細胞を抑制する薬剤によって比較的抑えられやすく、逆に強い抗原によって活性化されたT細胞は、ステロイドでは抑えにくい、という実験結果があります(図3)2)。画像を拡大する実はこのことはICIにとって非常に都合がよいことです。「(強い免疫応答を起こさない抗原である)自己抗原を認識するT細胞の活性化はステロイドによって抑制されやすい」、すなわち、「(自己を攻撃するT細胞の活性化によって起きる)免疫関連有害事象はステロイドなどの適切な治療によって抑えることができる」からです(図3)。逆に、「(強い免疫応答を起こす)ネオ抗原を認識するT細胞の活性化にステロイドはあまり影響を与えない」、つまりは「ステロイドは効果にあまり影響しない」といえます(図3)。大規模な臨床で証明された確定的なものではなく、あくまで可能性での話になりますが、以上のことから、ステロイドはICIの効果にあまり影響を与えることなく、免疫関連有害事象を抑えられるかもしれません(図3)2)。実際、有害事象にはステロイド使用などの適切な対処で対応できる場合が多く、有害事象でステロイドを使用したうえでICI投与を中止しても、薬剤の効果が続いたケースも報告されています。効果と関係があるってホント?個々の患者でICIによる免疫の活性化度合いは異なります。ここでまた抗原の階層性の話になりますが、強い免疫応答を起こすネオ抗原を認識するT細胞だけを運よくICIが活性化できれば、効果だけが出て、免疫関連有害事象は起きません(図4:A)。一方、弱い免疫応答を起こす自己抗原を認識するT細胞まで活性化させる反応がICIで起きた場合を想定してください。もちろん、自己を攻撃する免疫関連有害事象は起きますが、それほど強い免疫の活性化であれば、強い反応を起こすネオ抗原を認識するT細胞も活性化しているはずなので、効果も出るはずです(図4:B)。こういった患者さんが一定割合で存在するため、効果と有害事象はある程度の相関性があるはずです3)。画像を拡大するもちろん、ICIで免疫応答がまったく起きない人には有害事象も効果も出ません(図4:C)。では、有害事象だけが出て効果がない人では何が起きているのか?と疑問も湧くかと思いますが、1つの理由を抗原の観点で論じるならば、どんなに免疫を活性化させても、元のがん細胞にネオ抗原のような標的になるがん抗原が少ない場合にはやはり無効なのだろう、と思われます(図4:D)。それだけがん抗原は重要な要素なのです。免疫関連有害事象を正しく理解し・正しく恐れ・正しく対処すれば、ICIは効果がある患者さんにとっては大きなメリットのある薬剤です。当初の連載予定回数をオーバーしてしまいましたが、次回は追加で細胞療法の話をしたいと思います。1)Michot JM, et al. Eur J Cancer. 2016;54:139-148.2)Tokunaga A, et al. J Exp Med. 2019;216:2701-2713.3)Haratani K, et al. JAMA Oncol. 2018;4:374-378.

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日本におけるインターネット依存症の有病率

 インターネット依存症は、深刻な問題であり、近年その発生率は有意な上昇をみせている。愛媛大学の河邉 憲太郎氏らは、青年期のインターネット依存症について4年間にわたる2つの横断研究により調査し、その結果生じる生活の変化についての評価を行った。Pediatrics International誌オンライン版2020年4月16日号の報告。 12~15歳の中学生を対象に、2014年(第1次調査)および2018年(第2次調査)に調査を行った。対象者には、インターネット依存度テスト(Young's Internet Addiction Test:IAT)、GHQ精神健康調査票(General Health Questionnaire:GHQ)日本語版、睡眠習慣と電気機器使用に関するアンケートを実施した。 主な結果は以下のとおり。・第1次および第2次調査より、1,382人について調査を行った。・平均IATスコアは、第2次調査(36.0±15.2)において、第1次調査(32.4±13.6)よりも有意に高かった。・IAT合計スコアの増加は、2014年よりも2018年のほうが、インターネット依存症の割合が有意に多かったことを示唆している。・GHQの各サブスケールでは、社会機能障害スコアが、第1次調査よりも第2次調査において有意に低かった(p=0.022)。・第2次調査における週末の平均総睡眠時間は504.8±110.1分、起床時間は8:02であり、第1次調査と比較し、総睡眠時間は有意に長く、起床時間は有意に遅かった。・スマートフォンの使用率は、第1次調査よりも第2次調査のほうが有意に高かった(p<0.001)。 著者らは「インターネット依存症に関する調査結果では、2014年と2018年の4年間で、変化が認められた」としている。

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TN乳がん1次治療へのipatasertib+PTXのOS結果(LOTUS)/ESMO BC2020

 手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibをパクリタキセル(PTX)に併用することにより、全生存期間(OS)が延長する可能性が、二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であるLOTUS試験の最終解析で示された。シンガポール・National Cancer Centre SingaporeのRebecca Dent氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)で報告した。なお、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)については、すでに有意に延長することが報告されている。・対象:測定可能病変のある、治癒切除が不可能な局所進行または転移を有する未治療のTNBCで、6ヵ月以上化学療法を受けておらず、ECOG PSが0または1の患者・試験群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+ipatasertib 400mg(Day1~21)を1サイクル28日で進行(PD)または許容できない毒性発現まで投与(ipatasertib群)62例・対照群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+プラセボ(Day1~21)(プラセボ群)62例・評価項目:[主要評価項目]ITT集団およびPTEN-low患者におけるPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)(ITT集団、PTEN-low患者、PI3K/AKT経路活性化患者)、PI3K/AKT経路活性化患者におけるPFS、安全性 主な結果は以下のとおり。・最終データカットオフは2019年9月3日で、それまでに全患者が主にPDで治療中止となった。・ITT集団におけるOS中央値は、ipatasertib群25.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:18.6~28.6)、プラセボ群16.9ヵ月(95%CI:14.6~24.6)で、層別ハザード比(HR)が0.80(95%CI:0.50~1.28)とipatasertib群で良好であった。1年OSはipatasertib群83%、プラセボ群68%であった。・PTEN-low患者(48例)におけるOS中央値は、ipatasertib群23.1ヵ月(95%CI:18.3~28.6)、プラセボ群15.8ヵ月(95%CI:9.0~29.1)で、非層別HRが0.83(95%CI:0.42~1.64)であった。1年OSはipatasertib群79%、プラセボ群64%であった。・PIK3CA/AKT1/PTEN変異患者(42例)におけるOS中央値は、ipatasertib群25.8ヵ月(95%CI:18.6~35.2)、プラセボ群22.1ヵ月(95%CI:8.7~NE)で、非層別HRが1.13(95%CI:0.52~2.47)であった。1年OSはipatasertib群88%、プラセボ群63%であった。・サブグループ解析では、50歳未満のOS中央値がipatasertib群35.2ヵ月、プラセボ群15.1ヵ月で、HRが0.41(95%CI:0.20~0.85)と有意にipatasertib群が延長していた。・Grade 3以上の有害事象(AE)の発現率は、ipatasertib群56%、プラセボ群45%であった。また、ipatasertib群においてAE関連の中止は4例(7%)、中断は22例(36%)、減量は13例(21%)であった。 現在、無作為化第III相試験であるIPATunity130試験が日本も参加して行われている。

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