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非重症コロナ入院患者の心肺支持療法離脱に有用な治療法は?/JAMA

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の治療において、治療量のヘパリンにP2Y12阻害薬を上乗せしても、ヘパリン単独療法と比較して21日以内の心肺支持療法離脱日数(organ support-free days)は増加しなかった。米国・NYU Grossman School of MedicineのJeffrey S. Berger氏らが、ブラジル、イタリア、スペイン、米国の病院60施設で実施した非盲検並行群間比較ベイズ流適応型無作為化試験「Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines 4 Acute:ACTIV-4a」の結果を報告した。非重症のCOVID-19入院患者に対するヘパリン療法は、マルチプラットフォーム無作為化比較試験で生存日数や心肺支持療法離脱日数を増加することが示されたものの、患者の24%が死亡または集中治療を必要としたことから、この集団における追加治療が検討されていた。JAMA誌2022年1月18日号掲載の報告。ヘパリン+P2Y12阻害薬またはヘパリン単独に無作為化 研究グループは、2021年2月26日~6月19日の期間に、COVID-19で入院後72時間以内の患者で集中治療室(ICU)への入室は不要の非重症患者562例を、治療量のヘパリン+P2Y12阻害薬併用群(P2Y12阻害薬群、293例)、または治療量のヘパリン単独群(標準治療群、269例)に1対1の割合で無作為に割り付け、14日間または退院のいずれか早い日まで投与した。P2Y12阻害薬としてはチカグレロルが推奨されたが、クロピドグレルやプラスグレルの使用も認められた。90日間の最終追跡日は、2021年9月15日であった。 主要評価項目は、21日間における心肺支持療法離脱日数で、院内死亡(-1)と退院まで生存した患者については21日目までに呼吸/心臓系の心肺支持療法を受けなかった日数(範囲:-1~21日、スコアが高いほど心肺支持療法が少なくアウトカム良好を示す)を組み合わせた順序尺度で評価した。安全性の主要評価項目は、国際血栓止血学会により定義された28日までの大出血とした。ヘパリン+P2Y12阻害薬で、心肺支持療法離脱日数は改善せず、大出血リスクは3倍 無作為化された全562例(平均年齢52.7歳[SD 13.5]、女性41.5%)が試験を完遂し、87%が1日目に治療量のヘパリン投与を受けた。P2Y12阻害薬群では、63%がチカグレロル、37%がクロピドグレルを投与された。 心肺支持療法離脱日数の中央値は、P2Y12阻害薬群で21日(IQR:20~21)、標準治療群で21日(IQR:21~21)であった(補正後オッズ比[OR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.55~1.25、無益性の事後確率[オッズ比<1.2と定義]=96%)。死亡または心肺支持療法を必要とした患者の割合は、P2Y12阻害薬群(75例、26%)が標準治療群(58例、22%)より高かった(補正後ハザード比[HR]:1.19、95%CI:0.84~1.68、p=0.34)。 大出血は、P2Y12阻害薬群6例(2.0%)、標準治療群2例(0.7%)に認められた(補正後OR:3.31、95%CI:0.64~17.2、p=0.15)。

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子宮内膜がん、レンバチニブ+ペムブロリズマブでPFS/OSを延長/NEJM

 進行子宮内膜がん患者において、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法は化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および全生存(OS)期間を有意に延長した。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのVicky Makker氏らが、21ヵ国167施設で実施した非盲検第III相試験「Study 309/KEYNOTE-775試験」の結果を報告した。プラチナ製剤による化学療法後の進行性子宮内膜がんに対する治療選択肢は、限られていた。NEJM誌オンライン版2022年1月19日号掲載の報告。レンバチニブ+ペムブロリズマブvs.ドキソルビシンまたはパクリタキセル 研究グループは、少なくとも1レジメンのプラチナ製剤による化学療法の治療歴のある進行子宮内膜がん患者を、レンバチニブ(20mg、1日1回経口投与)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと静脈投与)併用群、または化学療法(治験医師選択によるドキソルビシン60mg/m2の3週ごと静脈投与、またはパクリタキセル80mg/m2の週1回静脈投与3週・1週休薬)群のいずれかに、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央画像判定によるPFS、およびOSで、全体集団およびミスマッチ修復機構を有する(mismatch repair proficient:pMMR)集団を対象としてintention-to-treat解析を行った。安全性についても同様に評価した。 2018年6月11日~2020年2月3日に計827例(pMMR患者697例、ミスマッチ修復機構欠損患者130例)が、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群(411例)および化学療法群(416例)に割り付けられた。データカットオフ日は2020年10月26日。レンバチニブ+ペムブロリズマブでPFSおよびOSが有意に延長 PFS期間中央値は、全体集団(7.2ヵ月vs.3.8ヵ月、ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.47~0.66、p<0.001)、pMMR集団(6.6ヵ月vs.3.8ヵ月、0.60、0.50~0.72、p<0.001)のいずれにおいても、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群が化学療法群より有意に延長した。 OS期間中央値も同様に、全体集団(18.3ヵ月vs.11.4ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.51~0.75、p<0.001)、pMMR集団(17.4ヵ月vs.12.0ヵ月、0.68、0.56~0.84、p<0.001)のいずれにおいても、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群が化学療法群より有意に延長した。 Grade3以上の有害事象の発現率は、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群88.9%、化学療法群72.7%であった。

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日本における統合失調症急性期入院患者に対する抗精神病薬治療の有効性

 順天堂大学の八田 耕太郎氏らは、統合失調症患者に対する長時間作用型持続性注射剤(LAI)と抗精神病薬の多剤併用(クロザピンを含まない)の実臨床における有効性の比較を行った。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年11月6日号の報告。 日本の精神科救急病院12施設において、19ヵ月間のプロスペクティブ研究を実施した。対象は、DSM-Vで定義される統合失調症およびその他の精神病性障害の急性発症または悪化のために、2019年9月~2020年3月に精神科救急病棟に新たに入院した患者。すべての患者を退院後1年間または2021年3月31日までフォローアップを行った。主要アウトカムは、治療失敗リスク(精神科再入院、治療薬使用の中止、死亡、1年間の入院継続)とした。分析は、Cox比例ハザード多変量回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・期間中に登録された患者数は1,011例であった(女性の割合:53.7%、平均年齢:47.5±14.8歳)。・フォローアップ期間中に治療が失敗した患者は588例(58.2%)、それぞれの内訳は以下のとおりであった。 ●再入院:513例 ●治療薬使用の中止:17例 ●死亡:11例 ●1年間の入院継続:47例・LAIへの切り替え(ハザード比[HR]:0.810、95%信頼区間[CI]:0.659~0.996)および抗精神病薬の多剤併用(HR:0.829、95%CI:0.695~0.990)と治療失敗率の低さとの間に有意な関連が認められた。 著者らは「急性期統合失調症の治療では、初期に治療反応が認められない患者に対するLAIへの切り替えや抗精神病薬の多剤併用は、治療失敗リスクの低減に有益である可能性が示唆された。治療失敗リスクは、LAI治療患者では非LAI治療患者と比較し約19%低く、多剤併用患者では単剤患者と比較し約17%低かった」としている。

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痙攣を伴わないてんかん重積―NCSE【知って得する!?医療略語】第4回

第4回 痙攣を伴わないてんかん重積―NCSEてんかん重積状態を表す表現の1つに、「NCSE」があると聞きました。どういう病態ですか、教えて下さい!NCSEは「nonconvulsive status epilepticus」から生まれた略語で「非痙攣性てんかん重積状態」を意味します。てんかん重積というと、全身痙攣が持続するイメージが強いですが、意識障害のみのてんかん重積がNCSEです。原因不明の意識障害では、NCSEの可能性をしっかり鑑別しましょうね。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】NCSE【日本語】非痙攣性てんかん重積状態【英字】nonconvulsive status epilepticus【分野】脳神経【診療科】脳神経外科【関連】痙攣性てんかん重積状態 (CSE:convulsive status epilepticus)、全身痙攣重積状態(GCSE:generalized convulsive status epilepticus)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。意識障害の鑑別にAIUEOTIPSが有名となり、意識障害の鑑別に「E:epilepsy(てんかん)を想定することは浸透していると思います。しかし、あえて、いま一度、NCSEを取り上げるのは、NCSEが高齢者に発症しやすいため、神経内科や救急に携わる医師だけではなく、高齢者診療に関わる医療者の皆さまと、「“意識障害のみ”のてんかん重積発作」が存在することを改めて共有したかったからです。てんかん重積状態と言えば、痙攣発作を伴う意識障害のイメージが先行しがちです。しかし、全身性の痙攣を伴なわず、意識障害しか症状を呈さない非痙攣性てんかん重積状態(NCSE:nonconvulsive epilepticus)が存在します。このため「てんかん=痙攣する」という疾患イメージに縛られてしまうと、NCSEを見落とし、診断と治療が遅れてしまう可能性があります。2008年に吉村 元氏らは94例のてんかん重積患者(15歳以上)の検討を行いました。その報告によれば、てんかん重積の25.5%がNCSEでした。さらに、入院後に痙攣性てんかん重積状態(CSE:convulsive status epileptics)からNCSEに移行した8例を加えると34%がNCSEでした。この知見を踏まえると、痙攣性てんかん重積の治療において留意したいのは「痙攣の停止=てんかん発作の終了」ではないことです。痙攣は止まっても脳の中ではてんかん波が持続し、NCSEに移行している可能性があります。上述の報告によれば、原因不明の意識障害の患者さんには、繰り返し脳波検査を施行しており、積極的かつ繰り返しの脳波検査の必要性がうかがえます。さらに、同報告では予後に関する調査もされており、多変量解析の結果、NCSEが独立した予後不良因子であることも指摘されています。2016年には貴島 晴彦氏らがNCSEの病態と治療について総説をまとめており、その中でNCSEの症状の多彩性と原因疾患の幅広さが述べられています。また、同論文ではNCSE診断におけるビデオ脳波持続モニタリングの有効性に触れています。成人発症てんかん重積は60歳以上に多く、高齢者人口の増加に伴い、その発症頻度の増加が予測されています。高齢者の原因不明の意識障害では、NCSEをしっかり鑑別に想起し、早期診断・治療の観点から、積極的な脳波検査と原因疾患の検索が必要と考えます。1)吉村 元ほか.臨床神経. 2008;48:242-248.2)貴島 晴彦ほか. 脳神経外科ジャーナル. 2016;25:229-235.3)松島 一士ほか. 日本神経救急学会雑誌. 2015;27:53-55.

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軽度アルツハイマー病患者の安全運転に対するメマンチンの影響

 米国・フロリダアトランティック大学のPeter J. Holland氏らは、軽度アルツハイマー病患者の安全運転能力の維持に対するメマンチンの潜在的な有効性を評価するために、プラセボ対照二重盲検比較試験の実現可能性を判断する目的でパイロット研究を実施した。Canadian Geriatrics Journal誌2021年12月1日号の報告。 スクリーニング基準を満たした60歳以上の軽度アルツハイマー病患者43例を対象に、メマンチン群22例と対照群21例にランダム化を行った。運転能力の評価には、標準化された路上運転免許試験を用いた。アウトカムは、6、12ヵ月時点の運転能力と12ヵ月間の路上試験完了率とした。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月間の路上試験完了率は、メマンチン群59%(13例)、対照群52%(11例)であった(p=0.66)。・安全運転能力が維持されていたのは、メマンチン群では13例すべて、対照群では8例(73%)であった(p=0.040、OR=4.45)。 著者らは「本結果は、軽度アルツハイマー病患者の運転能力維持に対するメマンチンの有効性を評価するうえで、厳格なマルチサイト臨床試験を設計するためのフレームワークとなりうる」としている。

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第23回 痛み診療のコツ・治療編(2)リハビリテーション療法(1)【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第23回 痛み診療のコツ・治療編(2)リハビリテーション療法(1)前回は理学療法の中でもとくに高齢患者さんに好まれている光線療法ついてお話しました。今回は、社会復帰に向けた痛みのリハビリテーション療法についてお話ししたいと思います。痛みを訴える患者さんにおいては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は実に多種多様です。そのため、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、インターベンショナル治療、光線療法など、患者さんに沿った有効な治療法を選択する必要があります。それに加えて、痛みのリハビリテーション療法としての理学療法、とりわけ運動療法や物理療法が必要とされています。一般的には急性痛においては急性炎症が強く、痛みの程度が高い時には、患部を休ませることが基本となりますが、慢性痛においては、多少の慢性炎症が存在して痛く感じていても、患部を含めて運動が重要になります。痛みがあるからといって患部を動かさないでいると、拘縮などによりさらに痛みが増すことになります。リハビリテーションの目的は、大別すると以下に挙げたさまざまな療法を用いて、痛みの緩和、運動機能の維持・改善を図ることにあります。その結果、日常生活の動作や生活の質の向上が得られます。(1)理学療法(physical therapy)(ア)運動療法(therapeutic exercise)治療体操(exercise)マッサージ(massage)(イ)物理療法(physical therapy)温熱療法(heat therapy):ホットパック療法、渦流浴療法光線療法(actinotherapy):赤外線療法、スーパーライザー電気刺激療法(electrotherapy):低周波療法、経皮的電気神経刺激療法水治療法(hydrotherapy):コールドパック療法、寒冷療法、アイスマッサージ療法牽引療法(traction treatment):頸椎牽引療法、腰椎牽引法(2)装具療法(orthosis)装具(brace)自助具(self help device)車椅子(wheelchair)(3)作業療法(Occupational therapy)(4)心理療法(Psychothrapy)(5)言語療法(Speech therapy)(6)社会自立支援療法(Support for independence of social life)運動療法は、筋力の増強と保持、関節可動域の拡大、筋作用の協調性改善、持久力の増強を目的としています。物理療法は、局所の血流改善などにより筋過緊張軽減や疼痛緩和効果が期待できます。また、リハビリテーションには、リハビリテーション医、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語療法士(ST)、臨床心理士(CP)、社会福祉士(MSW)など、多くのスタッフが携わっており、患者さんを中心とした各々の連携維持が最も大切です。そうした意味を含め、チーム医療の重要性が認識できるかと思います。リハビリテーションによって、機能障害の改善、復職や社会的任務への復帰、日常生活における健康と健康感の増進などによってQOL、ADLの向上が得られれば、結果的に痛みのとらえ方が良い方向に向かい、痛みの軽減という好循環に入ることが期待されます。次回の「痛みの治療編・総まとめ」をもって、本連載は最終回となります。どうぞ最後までお付き合いください。1)花岡一雄編. 痛みとリハビリテーション 麻酔. 2015 ; 64 : 690‐7512)花岡一雄他監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014 ;143 : S173-S1743)花岡一雄編. 痛みとリハビリテーション ペインクリニック. 2014;35 : S1-S286

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日本人双極性障害外来患者に対する処方パターン~I型とII型の違い

 双極I型障害(BD-I)および双極II型障害(BD-II)患者に対する向精神薬の使用に関して、入手可能なエビデンスは限られている。獨協医科大学の篠崎 將貴氏らは、BD-IおよびBD-IIの外来患者に対する薬物療法、とくに抗うつ薬の使用に関して、その特徴を調査した。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年11月23日号の報告。 2017年に実施された日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査(MUSUBI研究)に参加したBD-IまたはBD-IIの外来患者2,774例を対象に、現在の精神状態、治療薬およびその他の要因に関するデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・気分安定薬、抗精神病薬、抗うつ薬の使用率に関して、有意な差が認められた。・BD-I患者では、気分安定薬(BD-I:86.0%、BD-II:80.8%、p<0.001)と抗精神病薬(BD-I:61.5%、BD-II:47.8%、p<0.001)の使用率が高く、BD-II患者では抗うつ薬(BD-I:32.1%、BD-II:46.4%、p<0.001)の使用率が高かった。・BD-I、BD-II患者ともに最も多く使用されていた抗精神病薬はアリピプラゾール、気分安定薬はリチウムであった。・最も多く使用されていた抗うつ薬は、BD-I患者ではエスシタロプラム、BD-II患者ではデュロキセチンであった。・BD患者に最も使用されていた抗うつ薬のクラスは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であった。・併用療法に関しては、抗うつ薬を含む併用療法がBD-II患者で用いられることが多かった。 著者らは「BD-IとBD-II患者では向精神薬の使用状況に違いが認められた。日本では、BD外来患者に対し気分安定薬や抗精神病薬が使用されており、一般的なガイドラインに準じていた。抗うつ薬の使用効果や躁病エピソードのリスクに関するエビデンスは十分ではなく、さらなるエビデンスの収集が必要とされる」としている。

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12~18歳、ワクチン2回接種でCOVID-19入院をほぼ回避/NEJM

 年齢12~18歳の入院患者のうち、BNT162b2ワクチン(mRNAワクチン、Pfizer-BioNTech製)の2回接種を受けた患者は非接種例と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院の回避に関する有効率が高く、集中治療室(ICU)入室や生命維持介入の回避割合も優れることが、米国疾病予防管理センター(CDC)のSamantha M. Olson氏らが実施したOvercoming COVID-19試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年1月12日号に掲載された。米国31施設のtest-negative designによる症例対照研究 研究グループは、青少年入院患者におけるBNT162b2ワクチンの有効性の評価を目的に、診断陰性デザイン(test-negative design)を用いた症例対照研究を行った(米国CDCの助成による)。 症例群は、年齢12~18歳、2021年7月1日~10月25日の期間に、米国23州の31の病院にCOVID-19で入院した患者であった。症状発現から10日以内または入院後72時間以内に、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法または抗原検査法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性と判定された場合に、COVID-19と診断された。 対照群は、同年齢層で、COVID-19様症状がみられるがSARS-CoV-2陰性の入院患者(陰性群)と、COVID-19様症状のない入院患者(無症状群)であった。 BNT162b2ワクチン接種が1回、または2回目の接種から症状発現までの期間が14日未満の場合は「部分接種」、症状発現の14日以上前に2回の接種を受けた場合は「完全接種」とされた。接種が1回のみで、症状発現までの期間が14日未満の患者は除外された。 主要アウトカムは、COVID-19による入院、ICU入室、生命維持のための介入、死亡とされた。生命維持介入は、非侵襲的または侵襲的な機械換気、昇圧薬投与、体外式膜型人工肺の装着と定義された。COVID-19入院の有効率94%、死亡7例はすべて非接種例 主解析には1,222例が含まれ、症例群が445例(年齢中央値16歳、肥満を含む1つ以上の基礎疾患あり74%、対面授業出席者70%)、対照群は777例(15歳、70%、70%)であった。対照群のうち、SARS-CoV-2陰性例が383例(49%)、無症状例は394例(51%)だった。 症例群のうち、完全接種は17例(4%)、部分接種は1例(<1%)、非接種は427例(96%)であり、対照群はそれぞれ282例(36%)、54例(7%)、441例(57%)であった。 症例群では、180例(40%)がICUに入室し、127例(29%)が入院中に生命維持介入を要するまでに重症化し、このうち13例(3%)が体外式膜型人工肺を装着、7例(2%)が死亡した。ICU入室例のうち完全接種は2例のみで、残りの178例(生命維持介入を受けた127例中126例と、死亡した7例を含む)は非接種例だった。症例群の入院日数中央値は、非接種例が5日(IQR:2~7)、完全接種/部分接種例は4日(1~5)だった。 COVID-19による入院に対するBNT162b2ワクチンの全体の有効率は94%(95%信頼区間[CI]:90~96)で、陰性例では95%(91~97)、無症状例では94%(89~96)であった。また、ICU入室に対する有効率は98%(93~99)、生命維持介入に対する有効率も98%(92~100)と高率だった。 部分接種例の有効率は97%(95%CI:86~100)と高かったが、最終接種からCOVID-19様症状の発現までの期間中央値が、部分接種例は30日であったのに対し、完全接種例では90日(IQR:53~126)と長かった。SARS-CoV-2陽性で、入院の主な原因がCOVID-19ではなかった患者における入院に対する有効率は78%(48~91)だった。 著者は、「デルタ変異株が主流の時期に、重症化のリスク因子を有する患者を含む青少年において、BNT162b2ワクチンはCOVID-19による入院に対し高い有効率を示し、生命を脅かすCOVID-19の多くが回避された」とまとめている。

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コロナワクチン有効性、年齢・併存疾患による低下の差は/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンであるChAdOx1-S(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製)とBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)について、2回接種後20週以上の時点で、COVID-19関連の入院および死亡への有効性の低下は、限定的であることが示された。英国保健安全庁(United Kingdom Health Security Agency)のNick Andrews氏らによる調査の結果で、「高齢者と臨床的にリスクのある成人集団では、有効性の低下が大きかった」とまとめている。英国では、2020年12月からワクチン接種を開始。COVID-19の重症化や死亡への高い効果が実臨床データとして示されているが、2回目接種以降は時間経過とともに効果が低下する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月12日号掲載の報告。ChAdOx1-SとBNT162b2の2回目接種以降の有効性を評価 研究グループは、test-negativeデザイン法を用いた症例対照研究で、イングランドにおける症候性COVID-19および関連する入院と死亡へのワクチンの効果を推定した。 ChAdOx1-SとBNT162b2の2回目接種以降の有効性を、参加者の年齢(16歳以上[全体]、65歳以上[高齢者]、40~64歳、BNT162b2については16~39歳も設定)および併存疾患等で分類し評価し、B.1.1.7(アルファ)変異株とB.1.617.2(デルタ)変異株に分けて有効性の低下を調べた。年齢や併存疾患等で低下に差、入院・死亡に対する有効性は維持 デルタ変異株による症候性COVID-19へのワクチンの有効性は、全体では、2回目接種後の早期の週にピークに達し(ChAdOx1-S群:2~9週目に67.6%、BNT162b2群:1週目92.3%)、その後20週目までにChAdOx1-S群44.3%(95%信頼区間[CI]:43.2~45.4)、BNT162b2群66.3%(65.7~66.9)に低下した。 有効性の低下は、65歳以上が40~64歳よりも大きかった。65歳以上では、ピークはChAdOx1-S群が1週目で62.0%、BNT162b2群は2~9週目で79.6%であったが、20週目までにそれぞれ38.0%、54.9%に低下していた。40~64歳は、ピークはChAdOx1-S群は2~9週目で62.0%、BNT162b2群は1週目87.7%であったが、20週目までにそれぞれ56.7%、69.2%に低下していた。 接種後20週目以降時点で、入院、死亡に対する有効性はいずれもあまり低下していなかった。同評価時点で、入院に対する有効性はChAdOx1-S群80.0%(95%CI:76.8~82.7)、BNT162b2群91.7%(90.2~93.0)であり、死亡に対する有効性はそれぞれ84.8%(76.2~90.3)、91.9%(88.5~94.3)であった。 また、入院に対するワクチンの有効性の低下は、健康な成人と比べて、65歳以上で臨床的にきわめて脆弱な人および40~64歳で基礎疾患を有する人で大きかった。

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耳からハエが何度も出てくる女の子【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第202回

耳からハエが何度も出てくる女の子pixabayより使用ゴキブリが耳に入ったらどうしたらいいのか、という話は耳鼻咽喉科の研修医レクチャーで聞いたことがあるかもしれませんが、耳からハエが出てきたらどうすればいいでしょうか?今日紹介するのは、耳から何度も死んだハエが出てくるという奇妙な現象です。Sethi S, et al.An unusual case of Munchausen syndrome by proxy.Indian J Psychiatry. 2012 Oct;54(4):389-90.ある日、12歳の女の子が耳鼻咽喉科から精神科に紹介されてきました。どうやら死んだハエが耳の中に入っていたとのことですが、親子に何か違和感があり、精神科に入院することとなりました。まぁこの時点で、ある程度確信はあったのかもしれませんが、入院中にハエが出てくればあの疾患の可能性が高くなるということです。やはり、入院後再び耳の中に死んだハエが出現しました。はて、これは一体どういうことでしょう。鼓膜の中からハエが出てきているのでしょうか。念のため頭部CTを撮影しましたが、体の中にハエがいそうな気配はありません。肉眼で観察しても、鼓膜にも異常はありません。主治医は「母親が子どもの耳にハエを入れた」と確信しました。この症例の診断名は、「代理によるミュンヒハウゼン症候群」です。よくよく見れば、論文のタイトルに答えが書いているんですけどね……。ズコー!代理によるミュンヒハウゼン症候群は、児童虐待とは異なり、子どもを傷付けることが目的ではなく、その行為によって周囲の関心を自分に引き寄せることで、精神的満足を得ようとする疾患です。つまり、「死んだハエが出てくる病気なんて、お母さんタイへンね」、「なぜ死んだハエが出てくるのだろう?」という関心を引き付けることに目的があるわけです。決して、子どもを傷付けようとしているわけではありません。その後、病院のサポートによって(主には母親への介入)、女の子の耳には死んだハエは出現しなくなったそうです。この世の中にある“奇病”と呼ばれるものの中には、もしかすると代理によるミュンヒハウゼン症候群が隠れているのもしれませんね。

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治療抵抗性うつ病への薬理学的増強戦略~包括レビュー

 治療抵抗性うつ病(TRD)は、治療転帰不良であることは言うまでもないが、最良の薬理学的増強戦略にどの抗うつ薬を用いるべきかに関するエビデンスは十分ではない。イタリア・Azienda Socio Sanitaria Territoriale MonzaのAlice Caldiroli氏らは、TRDに対する抗うつ薬の薬理学的増強療法に関するエビデンスを包括的にレビューした。International Journal of Molecular Sciences誌2021年12月2日号の報告。 TRDに対する抗うつ薬の薬理学的増強療法に関する利用可能なエビデンスを特定するため、主要な精神医学データベース(PubMed、ISI Web of Knowledge、PsychInfo)より検索を行った。TRDに対する薬理学的増強療法を主なトピックスとし、TRDの明確な定義が記載されている英語論文を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・最も研究されていた薬剤は、アリピプラゾールとリチウムであった。・有効性に関して、最も強力なエビデンスが示された薬剤は、アリピプラゾールであった。・オランザピン、クエチアピン、cariprazine、リスペリドン、ziprasidoneは、良好な結果が認められたが、その程度は低かった。・ブレクスピプラゾール、esketamine点鼻薬については、実臨床でのさらなる研究が求められる。・ケタミン静脈内投与は、短期的な抗うつ効果が認められた。・補助的な治療薬(抗てんかん薬、神経刺激薬、プラミペキソール、ロピニロール、アスピリン、メチラポン、レセルピン、テストステロン、T3/T4、naltrexone、SAM-e、亜鉛)の有効性に関するエビデンスは限られており、その有効性を正確に推定することは困難であった。・ラモトリギン、ピンドロールに関するエビデンスは、否定的なものであった。 著者らは「リチウムに関するデータは多少の議論の余地があるものの、TRD患者に対する効果的な増強療法として、アリピプラゾールとリチウムが有効であることが示唆された。他の薬剤については、信頼できる結論を導き出すことができなかった。これらの結果を明らかにするためには、標準化されたデザイン、用量、治療期間を用いて制御された比較研究が必要であろう」としている。

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18歳未満の新型コロナ感染者、糖尿病発症率が増加/CDC

 米国・CDCの研究で、18歳未満のCOVID-19患者において、SARS-CoV-2感染後30日以降における糖尿病発症率が増加することが示唆された。CDCのCOVID-19 Emergency Response TeamのCatherine E. Barrett氏らが、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年1月14日号に報告した。 COVID-19は糖尿病患者において重症となるリスクが高い。また、欧州ではパンデミック中に小児における1型糖尿病診断の増加および糖尿病診断時の糖尿病ケトアシドーシスの頻度増加と重症度悪化が報告されている。さらに成人においては、SARS-CoV-2感染による長期的な影響として糖尿病が発症する可能性が示唆されている。 CDCでは、SARS-CoV-2感染後30日以降に糖尿病(1型、2型、その他)と新規に診断されるリスクを調べるため、2020年3月1日~2021年2月26日のIQVIAのヘルスケアデータを用いて構築した後ろ向きコホートから、18歳未満のCOVID-19患者の糖尿病発症率を推定し、パンデミック中にCOVID-19と診断されなかったかパンデミック前にCOVID-19以外の急性呼吸器感染症と診断された患者で年齢・性別が一致した患者の発症率と比較した。さらに、COVID-19に関連する可能性がある外来診察患者を含むデータソース(HealthVerity、2020年3月1日~2021年6月28日)で分析した。 その結果、糖尿病発症率は、COVID-19患者のほうがCOVID-19患者以外(IQVIAでのハザード比[HR]:2.66、95%信頼区間[CI]:1.98~3.56、HealthVerityでのHR:1.31、95%CI:1.20~1.44)およびパンデミック前にCOVID-19以外の急性呼吸器疾患と診断された患者(IQVIAでのHR:2.16、95%CI:1.64~2.86)より有意に高かった。

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ICU入室COVID-19患者にアトルバスタチンは有効か?/BMJ

 集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者において、アトルバスタチンによる治療はプラセボと比較し、安全性は確認されたが、静脈/動脈血栓症、体外式膜型人工肺(ECMO)使用および全死亡の複合エンドポイントの有意な減少は認められなかった。イラン・Rajaie Cardiovascular Medical and Research CentreのBehnood Bikdeli氏らINSPIRATION-S試験グループが、同国11施設で実施した2×2要因デザインの無作為化比較試験の結果を報告した。BMJ誌2022年1月7日号掲載の報告。アトルバスタチン群290例、プラセボ群297例を比較 INSPIRATION-S(Intermediate vs Standard-Dose Prophylactic Anticoagulation in Critically-ill Patients With COVID-19:An Open Label Randomised Controlled Trial [INSPIRATION] -statin)試験は、ICUに入室した18歳以上のCOVID-19患者をアトルバスタチン(20mg 1日1回経口投与)群とプラセボ群に無作為に割り付け、退院状況にかかわらず無作為化後30日間投与し行われた。 有効性の主要評価項目は、30日以内の静脈/動脈血栓症、ECMO使用および全死亡の複合とした。事前に規定した安全性の評価項目は、肝酵素値の基準値上限3倍以上の患者の割合、臨床的に診断された心筋症などであった。有効性および安全性の評価は、治療の割り付けについて盲検化された臨床イベント委員会が行った。 2020年7月29日~2021年4月4日に、605例が無作為化された(アトルバスタチン群303例、プラセボ群302例)。なお、605例中343例は、先行して行われた、予防的抗凝固療法としてのヘパリン(エノキサパリン)の中等量と標準量を比較するINSPIRATION試験にも無作為化されており、262例はINSPIRATION試験終了後に無作為化された。 INSPIRATION-S試験の主要解析対象集団は605例中、適格基準を満たしていなかった14例と試験薬が投与されなかった4例を除く587例(アトルバスタチン群290例、プラセボ群297例)で、患者背景は年齢中央値57歳(四分位範囲:45~68)、女性256例(44%)であった。静脈/動脈血栓症・ECMO使用・全死亡の複合エンドポイントに両群で有意差なし 主要評価項目のイベントは、アトルバスタチン群で95例(33%)、プラセボ群で108例(36%)に認められた(オッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.58~1.21)。死亡は、アトルバスタチン群90例(31%)、プラセボ群103例(35%)であった(OR:0.84、95%CI:0.58~1.22)。静脈血栓塞栓症の発現率は、アトルバスタチン群2%(6例)、プラセボ群3%(9例)であった(OR:0.71、95%CI:0.24~2.06)。 心筋症は両群とも確認されなかったが、肝酵素値上昇はアトルバスタチン群で5例(2%)とプラセボ群で6例(2%)に認められた(OR:0.85、95%CI:0.25~2.81)。 なお、著者は「全体のイベント発生率が予想より低値であったため、臨床的に重要な治療効果を排除することはできない」とまとめている。

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急性ポルフィリン症〔acute porphyria〕

1 疾患概要■ 概念・定義ポルフィリン症とはヘム合成経路に関与する8つの酵素いずれかの先天異常が病因でヘム合成経路(すなわち、律速酵素である第1番目のデルタアミノレブリン酸(ALA)合成酵素(ALAS))が亢進し生じる疾患の総称。ポルフィリン代謝異常に基づく症候を呈し、ポルフィリンやその前駆物質が大量に生産され、体内に蓄積し、尿や糞便に多量に排泄される。ポルフィリン症は、病因論的には本経路の異常が生じる主たる臓器の違いにより肝型と骨髄型の2型に大別される(図1)。臨床的には急性腹症、神経症状、精神症状などの急性発作を起こす急性ポルフィリン症(ALA脱水酵素欠損ポルフィリン症〔ADP〕、急性間欠性ポルフィリン症〔AIP〕、遺伝性コプロポルフィリン症〔HCP〕、多様性ポルフィリン症〔VP〕)および、光線過敏症を呈する皮膚ポルフィリン症(先天性骨髄性ポルフィリン症〔CEP〕、晩発性皮膚ポルフィリン症〔PCT〕、肝性骨髄性ポルフィリン症〔HEP〕、骨髄性プロトポルフィリン症〔EPP〕および、間欠期のHCPとVP)とに分けられる。AIP以外の急性ポルフィリン症は皮膚症状も呈し、皮膚ポルフィリン症でもある。また、EPPの症例で病因遺伝子がフェロキラターゼでは無く、ALAS2遺伝子の機能獲得型変異やALAS2の安定性を制御する蛋白ClpXの遺伝子異常が病因となった症例も近年報告されており、病因遺伝子異常は2種類増えた。図1 ヘム合成経路と異常症画像を拡大する■ 疫学報告は、本症の知見が高まった1966~1985年の間になされたものが大半であり、ここ10年間の報告はむしろ減少している。次第にありふれた疾患として認識されるようになり、報告が減ったと考えられ、実際はこれよりはるかに多い症例があるものと思われる。急性ポルフィリン症の半数以上がAIPで、ついでHCP、VPと続く。ADPはきわめてまれである。1980~1984年の全国調査ではポルフィリン症の有病率は、人口10万人対0.38人とされているが、その10倍との報告もある。厚生労働省遺伝性ポルフィリン症研究班による2009年の調査では、1年間の受療者は35.5人と推定されているが、欧州の発症率(5.2人/100万人)と同等として計算すると648人となることにより、わが国では多くの未診断症例が埋もれている可能性が高いと思われる。■ 病因ヘムは、生体内においては、主に骨髄と肝臓で合成されている。約70~80%のヘムは、骨髄の赤血球系細胞で合成され、グロビンに供給されヘモグロビンを形成する。残りは主に肝臓で合成され、シトクロムP450などのヘム蛋白の配合族として利用されている。ヘム合成経路の律速酵素は、第1番目の酵素であるALASであり、本酵素活性の増減が細胞内ヘム蛋白量を調整している。ALAS酵素活性は、最終産物であるヘムにより、肝臓ではネガティブフィードバックを受けており、ヘムの量は一定に保たれる。ALASの酵素活性は、ヘム合成経路で最も低い(したがって律速酵素たりうる)。ポルフィリン症の病因は、それ以外のヘム合成系酵素の活性が遺伝子異常により低下し、ALAS活性より低くなることで、本経路の異常が生じることである。ウロポルフィリン(UP)、コプロポルフィリン(CP)、プロトポルフィリン(PP)などのポルフィリンの蓄積が光線過敏性皮膚炎の病因であることは確定しているが、後に述べる急性発作(神経系の機能異常が病因)を引き起こす機序は未確定である。上流の基質であるポルフォビリノーゲン(PBG)、およびALAの増加を病因とする神経毒性前駆物質説、ならびに、ヘム蛋白やヘム酵素の機能低下を病因とするヘム欠乏説があり、どちらが主であるかの決定的なデータはいまだみられない。なお、最終産物であるヘムの低下は、ネガティブフィードバック機序を介してALASの酵素活性を増加させ、異常酵素とALASの酵素活性の逆転状況をさらに助長させる。したがって、この酵素活性のバランスに影響を与える何らかの誘因(薬物など)により、異常酵素とALASの酵素活性の逆転状況がわずかに増強されただけで、悪循環の過程を経て、急性に病状の悪化(急性発作)を生じる。誘因としては、外傷、感染症、ストレス、甲状腺ホルモン、妊娠、あるいは飢餓など(狭義の誘因)、バルビタール、サルファ薬などの誘発薬剤、ヘム合成系酵素を直接障害し、ヘム合成能力をヘムの需要量以下に低下させる(発症剤)、セドルミッド、グリセオフルビンなどが挙げられる。薬剤については、下記のウェブサイトに記載されているので参照していただきたい。The American Porphyria Foundation(APF)European Porphyria Network(EPNET)■ 症状1)急性ポルフィリン発作腹部症状、精神症状、神経症状(三徴)。急性腹症を思わせる腹部症状が初期にみられ、後にヒステリーを思わせるような精神症状を呈し、最後には四肢麻痺、球麻痺などの神経症状を呈し、死に至ることもある急性発作がみられる。このときみられる腹部症状に対応する器質的な異常は認められず、機能的異常によるものと考えられている。このように、病状の進行に応じて多彩な症候を呈するので、種々の間違った診断の下に治療されるケースが多い。(1)腹部症状:腹痛、嘔気、嘔吐、便秘、下痢、腹部膨満など(2)精神症状:不眠、不安、ヒステリー、恐怖感、興奮、傾眠、昏睡など(3)神経症状:四肢脱力、知覚異常、言語障害、嚥下(飲み込み)障害、呼吸障害など2)光線過敏性皮膚炎HCPおよびVPでは、光線過敏性皮膚炎がみられることもある。3)非発作時(間欠期)無症状■ 予後いったん発症すれば、死亡率は20%を超え、予後不良と考えられていた。これは、診断がつかないまま、バルビタールなどの使用禁忌薬やほかの誘因が重なって、病状が悪化した症例が多いことも原因であり、診断がつき、適切な治療が行われた場合、大半は完全に回復する。繰り返し発症する症例では、発症に対する不安神経症を呈することもあり、発症早期から適切な治療をすることが望まれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ヘム合成経路の酵素活性の低下は、その酵素による反応部位より上流の基質の増加と最終産物であるヘムの低下を引き起こす。したがって、増加した基質(ALAおよびPBG)や基質の代謝産物であるUPおよびCPなどを測定することにより、酵素異常の部位がわかる。臨床症状、検査値などを含め総合的に診断することが必要だが、検査値で考えると下に示した図2のフローチャートに従って検査を進めることになる。本症では、病因となる遺伝子異常を持っているが、いまだ発症していない人(潜在者)が少なからずみられる。その発症前診断には、上記のような代謝産物の測定および酵素活性の測定では不十分なことがあり、遺伝子診断が必要となることが多い。図2 急性ポルフィリン症診断のフローチャート画像を拡大する■ 検査成績(ポルフィリン関連)血中および尿中のPBG、ALA、ポルフィリンなどの値は、各種ポルフィリン症の病型に応じて異なるが、急性ポルフィリン症に共通する(まれな病型であるADPを除く)所見として尿中PBGの増加がある(定性的に調べる検査であるWatson-Schwartz法で陽性)。また、尿中ポルフィリンも増加し、肉眼的には特有のぶどう酒色(ポルフィリン尿)を呈する(10~30%の症例でみられる)。しかし、ADPやAIPでは、尿中ポルフィリンはあまり増加せず褐色調に留まることが多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性発作の予防誘因を避けるように指導することが大切である。飢餓が誘因となるので、十分な摂食をさせる(ダイエットは禁)。また、医療機関での薬剤投与に注意が必要となる。患者には使用可能薬剤の一覧などの携帯を勧める。月経に伴い急性発作を起こす症例では、LH-RHアナログを用いて、月経を止めることも効果がある。■ 発症時の治療1)グルコースを中心とした補液詳細な機序は不明だが、ALASの酵素活性を抑制し、急性発作を改善させるといわれている。わが国で、最も一般的に行われている治療法。インスリンを併用するとさらに効果が増す。2)ヘム製剤本薬剤はヘム製剤で、細胞内ヘムの上昇を引き起こし、ALASの酵素活性を抑え(ネガティブフィードバックにて)、ヘム合成系の相対的亢進を緩和させる。ポルフィリン症の治療としては、病態に則した治療法であり、欧米では40年来使用されており第一選択療法と位置づけられている。わが国では、2013(平成25)年8月、ヘミン(商品名:ノーモサング)が発売され、使用できるようになった。3)シメチジン作用機序は不明だが、ALAおよびPBGを減少させる効果がある。4)対症療法ポルフィリン症にみられる各種症候に対しては、下記のような対症療法が行われる。ここで大切なことは、使用禁止薬剤(誘因となる薬剤)を絶対に使用しないことである。(1)疼痛、腹痛には、クロルプロマジンおよび麻薬(2)不安、神経症には、クロナゼパム、クロルプロマジン(3)高血圧、頻脈には、ベータ遮断薬(4)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)には、補液による電解質の補充■ 発作が頻回に起こるときの発作予防薬ギボシラン(商品名:ギブラーリ):ALAS1を標的としたsiRNA。ALAs1の発現を抑制し、急性発作の発症を予防することを目的とした薬剤。2019年に米国で承認され、わが国でも2021年に承認された。4 今後の展望ヘム製剤やギボシランが治療に使えることとなり、国際標準に追いついたと言える。また、これら治療薬は高額だが、難病指定もなされ医療費補助もあり、治療は円滑に行える。しかし、確定診断の補助となる遺伝子解析が保険収載されておらず、これが認められると診断の精度が高まるので、現在、保険収載を要望中である。5 主たる診療科内科では代謝内科、消化器内科、神経内科。皮膚症状に対しては皮膚科。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報ポルフィリン症相談(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国ポルフィリン代謝障害友の会「さくら友の会」(患者と患者家族の会)1)大門 真.ポルフィリン症.In:矢崎義雄編.内科学.第11版.朝倉書店;2017. p.1815-1820.2)大門 真. ポルフィリン症の診断と分類. In: 岡庭 豊ほか編. year note 内科・外科等編 2010年版. 第19版. メディックメディア; 2009. p.719-729.3)難病情報センター ポルフィリン症(2022年1月17日アクセス)公開履歴初回2013年09月05日更新2022年01月20日

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)レポート

レポーター紹介2021年12月7日から10日まで4日間にわたり、SABCS 2021がハイブリッド形式で開催された。米国では現地サンアントニオに集まって学会が行われ、近い将来、日常が戻ってくる予兆を感じさせるものであった。もう2年リバーウォークを歩いておらず寂しい気持ちでいっぱいであるが、今年も乳がんについて網羅的に勉強する良い機会となった。今年のSABCSは直接日常臨床を変えるものは多くなかったが、近い将来どのように変化していくかを示唆するものが多かった。今回は、それらの中から4演題を紹介する。EMERALD試験近年、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(selective estrogen receptor degrader:SERD)の開発が非常に活発に行われ、製薬企業は各社しのぎを削っている状況である。その中で、初の第III相試験の結果としてSABCSで報告されたのがelacestrantのEMERALD試験である。SERDは理論的にホルモン耐性の中で最も強力なESR1変異に有効な薬剤として知られるが、elacestrantは現在臨床で使えるSERDであるフルベストラントよりさらに効果が高いことが基礎実験で示されている。本試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法の治療歴があるホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がん(metastatic breast cancer:MBC)において、主治医選択治療に対するelacestrantの優越性を検証したランダム化試験である。主治医選択治療としてはフルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンが許容されていた。主要評価項目は全患者における無増悪生存期間(progression free survival:PFS)と、ESR1変異のある患者(mESR1)におけるPFSであった。477例がランダム化され、239例がelacestrant群に、238例が標準治療群に割り付けられた。主要評価項目の全患者におけるPFSにおいて、elacestrant群で2.79ヵ月、標準治療群で1.91ヵ月(ハザード比[HR]:0.697、95%CI:0.552~0.880、p=0.0018)とelacestrant群で有意に良好であった。さらにmESR1では3.78ヵ月 vs.1.87ヵ月(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)であり、mESR1でより効果が高かった。同効薬であるフルベストラントとの比較においても同様の傾向であり、elacestrantが有意に良好であった。全生存期間(overall survival:OS)は統計学的有意差を認めなかったものの、全患者でもmESR1でもelacestrantで良好な傾向を認めた。有害事象はelacestrantで多い傾向を認めたが、Grade3以上の有害事象は7.2%であり、頻度としてはさほど高くないと考えられた。とくに悪心の頻度が高かった。現在、経口SERDは多くの試験が行われており、近い将来、標準治療の1つとなっていくと考えられる。PADA-1試験ホルモン受容体陽性MBCにおいて、1次治療としてアロマターゼ阻害薬(aromatase inhibitor:AI)ベースの治療が有効であるか、SERDベースの治療が推奨されるかは1つの大きな議論となっている。とくにESR1変異によるAI耐性をSERDで回避可能かを検証する試験が実施されてきた。PADA-1試験はそのような試験の1つであり、循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を用いた治療戦略を検証した試験である。PADA-1試験ではAI+パルボシクリブによる治療中にctDNAによるESR1変異が検出され、画像上の病勢進行(progressive disease:PD)が認められない患者を対象として、AI+パルボシクリブ継続とフルベストラント+パルボシクリブへの治療変更をランダム化し、主要評価項目として安全性と主治医判断によるPFSを検証した。1,017例のAI+パルボシクリブ投与中の患者が登録され、279例でctDNAによるESR1変異が検出された。172例でPDが認められずランダム化が実施され、84例がAI継続、88例がフルベストラントへのスイッチに割り付けられた。術後治療としてAI治療歴のある患者が35%前後、ctDNAによるESR1変異が見つかるまでの期間が12ヵ月以上ある患者が60%強であった。ランダム化後のPFSはAI群で5.7ヵ月に対しフルベストラント群で11.9ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007)と、約6ヵ月の差をもってフルベストラント群で有意に良好であった。サブグループ解析では、ほとんどのグループでフルベストラント群が良好であった。骨転移単独ではAI群で良好な傾向が見られたが、症例数が少なく結論は出せない。毒性は両群で大きな差はなく、頻度の高い有害事象は血球減少であり、パルボシクリブによるものと考えられた。AI群でPD後にフルベストラントへクロスオーバーした患者のクロスオーバー後のPFSは3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)であり、AI治療中と合計してもPFSはフルベストラント群で良好であった。現在、日本では繰り返し測定できる承認されたctDNAアッセイはないが、今後ctDNAによるモニタリングを行いながら、画像上のPDの前に治療を変更する戦略が標準治療となってくる可能性がある。TROPION-PanTumor01試験皆さんご存じように、現在は多数の抗体医薬複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)が開発されている。2019年のSABCSで発表されたトラスツズマブ デルクステカン(trastuzumab deruxtecan:T-DXd)の有効性を見た時の驚きは記憶に新しい。また、2020年のESMOで発表され、すでに米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration:FDA)に承認されているsacituzumab govitecan(SG)も、トリプルネガティブ乳がん(Triple-Negative Breast Cancer:TNBC)の治療を大きく変えた。datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、SGと同様にTrophoblast Cell-Surface Antigen 2(TROP-2)を標的分子としたADCで、ペイロードとしてDXdが結合されている。TROPION-PanTumor01試験はDato-DXdの安全性を確認する第I相試験で、非小細胞肺がん、TNBC、HR+/HER2-乳がんなどで拡大パートの開発が実施されている。SABCSでは、そのうちTNBCパートの結果が発表された。44例の患者が登録され、現在13例(30%)が治療継続中である。前治療歴の中央値は3レジメンで、2ライン以上の治療歴のある患者が68%であった。30%にTopo I阻害薬ベースのADC(SG、T-DXdなど)の治療歴があった。奏効率は34%、Topo I阻害薬ベースのADC治療歴がない患者に限ると52%であり、高い有効性を示した。Grade3以上の有害事象は45%で認め、頻度の高い有害事象は悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛、血液毒性などであった。TNBC治療ではすでに免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)やPARP阻害薬が標準治療となっているが、新たなADC製剤への期待も大きく、TNBCの治療戦略は今後大きく変わる可能性が高い。KEYNOTE-522試験転移TNBCではICIが標準治療となった。PD-L1陽性転移TNBCでは、アテゾリズマブとnab-PTXの併用、あるいはペムブロリズマブと化学療法の併用が1次治療の標準治療である。TNBCに対するICIの開発は術前でも活発に行われており、KEYNOTE-522試験はその1つである。本試験では術前化学療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル→アンスラサイクリンにペムブロリズマブ/プラセボを上乗せすることの有効性を、病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)と無イベント生存(event free survival:EFS)を主要評価項目として検証した。術後は、ペムブロリズマブ/プラセボがpCR/non-pCRにかかわらず投与された。pCRの結果は以前に発表され、ペムブロリズマブの上乗せ効果が証明されていたが、EFSについてはESMOならびに今回のSABCSで詳細が発表されている。本試験では1,174例が登録され、784例がペムブロリズマブ群に、390例がプラセボ群に2:1で割り付けられた。3年EFSはペムブロリズマブ群で84.5%、プラセボ群で76.8%(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82、p=0.00031)とペムブロリズマブ群で有意に良好であった。今回の発表では打ち切りの条件をさまざまに変更したsensitivity analysisが実施されたが、いずれも主解析と同様の結果であり、ペムブロリズマブの有効性が再確認された。リンパ節転移の陽陰性、病期(StageII or III)でのサブ解析も実施されたが、ベースラインのリスクにかかわらず上乗せ効果があることが示された。悩ましいのは、(今回の発表には含まれていないが)pCR、non-pCRのいずれにおいてもペムブロリズマブのEFSに対する上乗せ効果があることである。すでに国内から出されたエビデンスによって、TNBCの術前化学療法でnon-pCRの場合にはカペシタビンが術後治療の標準治療である(国内未承認)。また、生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異がある場合はPARP阻害薬であるオラパリブが術後治療の候補となる(国内未承認)。今回の結果をもって、術前化学療法とペムブロリズマブの併用を実施した場合は、術後にペムブロリズマブを使用することが標準治療となる。その場合に、他の治療(カペシタビン、オラパリブ)とどのように使い分けていくのか(あるいは併用のエビデンスを出していくのか)、今後の議論が重要となってくるであろう。

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NNKよりPPK、理解不能の方はGGRKSでEOM【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第44回

第44回 NNKよりPPK、理解不能の方はGGRKSでEOM「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり」歴史ドラマなどで、織田信長が能を舞いながら謡う有名な一節を耳にしたことがあると思います。人の寿命は延び続け、50歳でも若造呼ばわりされる可能性があるのが日本です。今では人生100年に手が届こうとしています。一方で、健康寿命が平均寿命より男性は約9年、女性は約12年も短いことが分かっています。健康寿命は、日常生活に制限なく自立して過ごせる期間です。寿命が延びても、寝たきりではつまらない、元気で長生きしたいと望むことは当然です。診察室で出会う多くの高齢の方々は、亡くなる直前まで元気で過ごし、コロッと逝きたいと話します。これが「ピンピンコロリ:PPK」です。現実には、残念ながら寝たきりとなり終焉を迎える方もいます。これが「ネンネンコロリ:NNK」です。100歳近くの年齢で、ピンピンして健康な長寿の人はそんなに多くはありません。介護が必要となる主な原因としては、認知症・脳血管障害・高齢による衰弱・骨折・転倒などが挙げられます。その背景にあるのが、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病です。平素からの生活習慣の改善や、必要な治療をしっかり受けることは大切です。どんなに気を付けても加齢現象を回避できないことは事実です。PPKを具現化できることは非常に稀であり、宝くじに当選するようなことなのです。自分は、高齢者が自ら支援を忌避せざるを得ない雰囲気を日本の社会が醸成していることに問題があると考えます。認知症や障害を持っても、安心して生き、そして旅立つことができる社会の確立が必要なのでしょう。閑話休題お年寄りの聖地、おばあちゃんの原宿と呼ばれる巣鴨の地蔵通り商店街を歩く方々の、全員がPPKやNNKの意味を知っていると思います。それだけ人口に膾炙する略語です。略語は、長い語を簡潔に呼ぶためにつくるもので、「高等学校」を「高校」、「ストライキ」を「スト」などとする場合や、また、ローマ字の頭文字だけを並べたものもあります。「日本放送協会」を「NHK」などです。仲間内だけのことばとして、隠語として用いることもあります。医学・医療の世界で生きていく場面でも、略語はもはや必須です。とくにチャットやメールでは、長いスペルを短縮すべく、英語でも略語が盛んに利用されます。略語はカジュアルな場面だけでなく、英語のビジネスメールや、論文投稿や学会参加の文書にも頻繁に登場します。紹介してみましょう。TBA=to be announced=後日発表TBD=to be determined=未定TBS=to be scheduled=調整中FYI=for your information=参考までASAP=as soon as possible=できるだけ早くこれらは頻用される有名なものです。EOMはend of messageの略で、「メッセージの終わり」を意味します。メールの件名の最後に付けると、メールの本文はないことが伝わります。メールの件名に「本日の会議16時30分大会議室、EOM」とすれば件名だけで本文は空っぽで大丈夫です。自分は、少しヒョウキンな笑いを誘う略語を使ってしまいます。オヤジギャグ好きの悪い癖です。TGIFは、Thank God, It's Friday! の意味で、金曜日の夕方のメールの最後に相応しいです。花の金曜日を楽しみましょう! を意味します。土曜日にも仕事がある方には使用しないようにしましょう。GGRKSは、「ググれカス」の略で、少し調べればわかることを質問する人に対して、「それぐらいグーグルで検索しろ(ググれ)、カス」という意味で使われる下品な略語です。GGRKSは、数年前に「現代用語の基礎知識」に収録もされ流行しましたが、今では目にする機会は激減しています。では最後にクイズです。GN8, TNTわかりますか? GN8=good n eight=good night=おやすみなさい。TNT=till next time=また会いましょう。

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抗原検査による偽陽性、どのくらい検出される?/JAMA

 抗原検査が一般市民でも手軽にできるようになった今、懸念されるのは偽陽性の発生割合ではないだろうかー。今回、カナダ・トロント大学のJoshua S Gans氏らが調査した結果、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対しカナダ国内で使用されているすべての迅速抗原検査では、全体的に“偽陽性”の割合が非常に低く、その結果はほかの研究結果とも一致していたと示唆された。ただし、抗原検査のタイミング(感染段階で早すぎる/遅すぎる)や抗原検査キットの品質問題が原因で正しくない結果が報告される可能性もあることから、1つの集団から偽陽性がクラスターとして発生するには、実装ではなく製造上の問題もあるのではとも言及している。JAMA誌2022年1月7日号オンライン版のリサーチレターでの報告。偽陽性はすべて特定の抗原検査キットによるものだった 本研究では、カナダ全土における無症候性の労働者を対象に、新型コロナの連続的スクリーニングに使用される迅速抗原検査の大規模サンプルから偽陽性結果の発生率を調査した。迅速抗原検査は、Creative Destruction Lab(CDL) Rapid Screening Consortiumにより職場での感染制御の一環として実施された。 2021年1月11日~10月13日の期間、無症候性の従業員は週2回にわたり抗原検査を実施。その際の出社は任意で、一部の従業員は自宅やオンライン上で抗原検査を行った。なお、カナダはこの期間のうち、3~6月と8~10月に2つのデルタ変異株の感染拡大に見舞われていた。 抗原検査結果には、匿名化されたレコード識別子、雇用場所、検査、および(オプションで)ロット番号が記録された。抗原検査結果が陽性の場合、患者は24時間以内にPCR検査を完了させる必要があったためにすぐさま医療機関を紹介された。 抗原検査の大規模サンプルから偽陽性結果の発生率を調査した主な結果は以下のとおり。・537施設の職場で90万3,408件の迅速抗原検査が実施され、陽性は1,322件(0.15%)だった。そのうち1,103件はPCR検査の情報を有していた。また、約3分の2の症例はロット番号で追跡可能だった。・偽陽性の抗原検査結果数は462件だった(抗原検査のうちの0.05%、PCR検査を含む陽性結果の42%)。そのうちの278件(60%)は、2021年9月25日~10月8日に特定の企業(675km離れた2つの職場のみ)の従業員で報告された。・これら2つの職場の偽陽性の結果は、すべて特定の抗原検査キットによるものだった。 なお、研究者らは「研究の限界として、職場の便宜的サンプルが含まれ、PCR確認結果の報告とロット番号の特定は必須ではなかった。さらに、これらの結果はカナダの疫学を反映しているため、新型コロナの発生率において異なる経験をしている他国には一般化できない可能性がある」としている。

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アトピー性皮膚炎患者、デュピルマブ治療の自己評価は?

 米国・イェール大学のBruce Strober氏らは、臨床試験に参加しデュピルマブ治療を受けたアトピー性皮膚炎(AD)患者の、自己申告に基づく疾患コントロールおよびQOLをオンラインサーベイにて評価した。結果は臨床試験での患者報告アウトカムと一致しており、治療満足度を含むすべての患者報告アウトカムについてベースラインと比較して統計学的に有意な改善が示され、デュピルマブ治療は最長12ヵ月にわたる迅速かつ持続的な疾患コントロールと関連していることが見いだされた。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年12月15日号掲載の報告。 研究グループは、米国の患者サポートプログラムを通じて、デュピルマブ治療を開始した成人の中等症~重症ADで試験参加に同意した患者を対象に、治療開始前(ベースライン)と開始後1、2、3、6、9、12ヵ月時点でのオンラインサーベイを行うコホート試験を実施した。 データは、2018年1月~2020年1月に収集され、2020年5月に解析が行われた。主要評価項目は、Atopic Dermatitis Control Tool(ADCT)で測定した疾患コントロール、併用AD療法、治療満足度、Numerical Rating Scale(NRS)を用いた皮膚症状(皮膚の痛み、火傷/熱感、敏感肌)の評価、再燃、Dermatology Life Quality Indexで評価した健康関連QOL、ADCTの項目と質問票で評価した睡眠障害、ADに特異的な労働生産性および活動障害に関する質問票(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire:WPAI)への回答であった。 主な結果は以下のとおり。・デュピルマブ治療を開始した699例(女性61.7%、白人73.7%)のうち、632例が1ヵ月時点のサーベイを、また483例が12ヵ月時点のサーベイを完遂した。・ベースラインと比べて、1ヵ月時点で多くの患者が十分な疾患コンロトールを得ており(60.9%、対ベースライン[5.3%]のp<0.001)、さらに12ヵ月時点で改善が進んでいた(77.4%、同p<0.001)。・他のAD治療の併用は、評価を重ねるたびに使用が減少していた。たとえば局所コルチコステロイドの併用は、ベースライン68.1%から12ヵ月時点40.4%に、全身性コルチコステロイドの併用は同34.9%から6.2%に減少していた(ともに対ベースラインのp<0.001)。・AD治療への満足度は、評価を重ねるたびにベースライン(17.7%)より高まり、12ヵ月時点では85.1%であった(対ベースラインのp<0.001)。・患者は各評価時にベースラインと比較して、再燃、かゆみ、皮膚症状が軽減したこと、また、睡眠、健康関連QOL、日常活動が改善したことを報告した。・結果は、観察データと、欠測データについてパターン混合モデルを用いて処理した代入データで一貫していた。

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咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例【Dr.山中の攻める!問診3step】第10回

第10回 咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例―Key Point―咳は重大な疾患の一つの症状であることがある詳細な問診、咳の持続時間、胸部レントゲン所見から原因疾患を絞り込むことができる慢性咳に対するアプローチを習得しておくと、患者満足度があがる症例:45歳 男性主訴)発熱、咳、発疹現病歴)3週間前、タイのバンコクに出張した。2週間前から発熱あり。10日前に帰国した。1週間前から姿勢を変えると咳がでる。38℃以上の発熱が続くため紹介受診となった。既往歴)とくになし薬剤歴)なし身体所見)体温:38.9℃ 血圧:132/75mmHg 脈拍:88回/分 呼吸回数:18回/分 SpO2:94%(室内気)上背部/上胸部/顔面/頭部/手に皮疹あり(Gottron徴候、機械工の手、ショールサインあり)検査所見)CK:924 IU/L(基準値62~287)経過)胸部CT検査で両側の間質性肺炎ありCK上昇、筋電図所見、皮膚生検、Gottron徴候、機械工の手、ショールサインから皮膚筋炎1)と診断された筋力低下がほとんど見られなかったので、amyopathic dermatomyositis(筋無症候性皮膚筋炎)と考えられるこのタイプには、急性発症し間質性肺炎が急速に進行し予後が悪いことがある2)本症例ではステロイドと免疫抑制剤による治療を行ったが、呼吸症状が急速に悪化し救命することができなかった◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!急性の咳(<3週間)では致死的疾患を除外することが重要である亜急性期(3~8週間)の咳は気道感染後の気道過敏または後鼻漏が原因であることが多い慢性咳(>8週間)で最も頻度が高い原因は咳喘息である【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】緊急性のある疾患かどうか考えよう咳を伴う緊急性のある疾患心筋梗塞、肺塞栓、肺炎後の心不全悪化重症感染症(重症肺炎、敗血症)気管支喘息の重積肺塞栓症COPD (慢性閉塞性肺疾患)の増悪間質性肺炎咳が急性発症ならば、心血管系のイベントが起こったかをまず考える心筋梗塞や肺塞栓症、肺炎は心不全を悪化させる心筋梗塞や狭心症の既往、糖尿病、高血圧、喫煙、脂質異常症、男性、年齢が虚血性心疾患のリスクとなる3つのグループ(高齢、糖尿病、女性)に属する患者の心筋梗塞は非典型的な症状(息切れ、倦怠感、食欲低下、嘔気/嘔吐、不眠、顎痛)で来院する肺塞栓症のリスクは整形外科や外科手術後、ピル内服、長時間の座位である呼吸器疾患(気管支喘息、COPD、間質性肺炎、結核)の既往に注意するACE阻害薬は20%の患者で内服1~2週間後に咳を起こす【STEP3-1】鑑別診断:胸部レントゲン所見と咳の期間で行う胸部レントゲン写真で肺がん、結核、間質性肺炎を確認する亜急性咳嗽(3~8週間)の原因の多くはウイルスやマイコプラズマによる気道感染である細菌性副鼻腔炎では良くなった症状が再び悪化する(二峰性の経過)。顔面痛、後鼻漏、前かがみでの頭痛増悪を確認する百日咳:咳により誘発される嘔吐とスタッカートレプリーゼが特徴的である2)【STEP3-2】鑑別診断3):慢性咳か否か8週間以上続く慢性咳の原因は咳喘息、上気道咳症候群(後鼻漏症候群)、逆流性食道炎、ACE阻害薬、喫煙が多い上記のいくつかの疾患が合併していることもある咳喘息が慢性咳の原因として最も多い。冷気の吸入、運動、長時間の会話で咳が誘発される。ほかのアレルギー疾患、今までも風邪をひくと咳が長引くことがなかったかどうかを確認する非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB:non-asthmatic eosinophilic bronchitis)が慢性咳の原因として注目されている3)上気道咳症候群では鼻汁が刺激になって咳が起こる。鼻咽頭粘膜の敷石状所見や後鼻漏に注意する夜間に増悪する咳なら、上気道咳症候群、逆流性食道炎、心不全を考える【治療】咳に有効な薬は少ないハチミツが有効とのエビデンスがある4)咳喘息:吸入ステロイド+気管支拡張薬上気道咳症候群:アレルギー性鼻炎が原因なら点鼻ステロイド、アレルギー以外の原因なら第一世代抗ヒスタミン薬3)逆流性食道炎:プロトンポンプ阻害薬<参考文献・資料>1)Mukae H, et al. Chest. 2009;136:1341-1347.2)Rutledge RK, et al. N Engl J Med. 2012;366:e39.3)ACP. MKSAP19. General Internal Medicine. 2021. p19-21.4)Abuelgasim H, et al. BMJ Evid Based Med. 2021;26:57-64.

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