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ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNSCLC1次治療、アジア人でも有用(CheckMate9LA)

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法の無作為化第III相CheckMate9LA試験の日本人含むアジア人サブセット解析の結果がInternational Journal of Clinical Oncology誌に発表された。アジア人患者においても全集団と同様に、同レジメンの有用性が示されている。CheckMate9LA試験ではアジア人患者においても全集団と同様に有用性を示した[CheckMate9LA試験]・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 CheckMate9LA試験の主な結果は以下のとおり。・アジア人患者の割り付けは、NIVO+IPI+Chemo群28例、Chemo群30例であった。・追跡期間は12.7ヵ月であった。・OS中央値は、NIVO+IPI+Chemo群では未到達、Chemo群13.3ヵ月であった(HR:0.47、95%CI:0.24〜0.92)。・ORRはニNIVO+IPI+Chemo群では57%、Chemo群では23%であった・Grade3/4の有害事象はNIVO+IPI+Chemo群の57%、Chemo群の50%で発現した。 CheckMate9LA試験でニボルマブ+イピリムマブ+化学療法レジメンはアジア人患者においても全集団と同様に有用性を示した。筆者は、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法レジメンはアジア人サブセットにおいても有効性を改善し、安全性についても管理可能であり、アジア人の進行NSCLC患者の1次治療への使用を支持するものだと述べている。

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ニボルマブの尿路上皮がんアジュバント、CHMPで推奨/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年2月25日、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、根治切除後の再発リスクが高いPD-L11%以上の筋層浸潤性尿路上皮がんの成人患者の術後補助療法として、ニボルマブの承認を推奨したことを発表した。 この肯定的な見解は、全無作為化患者およびPD-L1発現1%以上の患者の両方において、ニボルマブがプラセボと比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無病生存期間(DFS)の延長を示した第III相CheckMate-274試験の結果に基づいたもの。 オプジーボの忍容性は全体的に良好で、安全性プロファイルはこれまでに報告されたオプジーボの固形がん患者における試験のものと一貫していた。

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アルツハイマー病治療薬aducanumabのFDA承認に対する世論調査

 FDAによるアルツハイマー病治療薬aducanumabの承認については、専門家の間でさまざまな意見が出されているが、このことに関する世論については、ほとんど知られていない。米国・ジョンズホプキンス大学School of Public HealthのMichael J. DiStefano氏らは、米国成人を対象に、aducanumabのFDA承認に対する世論調査を実施した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2022年2月7日号の報告。 対象は、35歳以上の米国成人。aducanumabの承認に関する意見、FDAに対する批判因子の特定、政策対応に関する意見(メディケアおよびメディケイドサービスセンターによる全国的な補償範囲決定に関連する対応など)を調査した。調査には、全国世論調査センターAmeriSpeakパネルから得られた確率ベースのサンプルを用いて、オンライン(英語およびスペイン語)で調査した。パネルおよび調査デザインの選択確率は、人口統計による人口分布と期待反応率の違いにより算出した。選択確率と無回答を調整するため、survey weightを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・調査完了者は、1,025人であった。・回答者の約4分の3は、当初aducanumabについてあまりよくわかっていなかったが、薬剤の潜在的な臨床効果および経済的影響に関する情報を提供したところ、薬剤承認に対する支持率は低かった。・回答者の63%は、ベネフィットを受ける可能性の最も高い患者に対するaducanumabへのアクセス制限を支持すると回答した。・aducanumabのさらなる研究を行うために、軽度アルツハイマー病患者の家族を臨床試験の待機リストに登録する(71%)、ランダム化プラセボ対照試験に登録する(60%)との意見が認められた。・回答者の81%は、試験が失敗した場合、aducanumabの承認を取り消すことに同意した。・aducanumabのためにメディケアプログラムのパートB(補足的医療保険)で1~5ドル(中央値)の支払いを許容していた。 著者らは「aducanumabの承認に対する政策への世論が明らかとなった。政策を策定する際には、情報に通じた一般市民の意見を考慮する必要がある」としている。

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5~17歳へのファイザー製ワクチン、オミクロン株への効果と持続期間は?/CDC

 ファイザー製の新型コロナワクチンについて、12〜17歳におけるデルタ株への2回接種の効果は認められているが、オミクロン株に対する効果や効果持続期間、5〜11歳における効果のデータは少ない。今回、米国・Kaiser Permanente Northern California Division of ResearchのNicola P. Klein氏らの調査から、本ワクチン2回接種により小児および青年のCOVID-19関連の救急部および緊急医療機関への受診を抑制することがわかった。しかしながら、オミクロン株優位の期間ではワクチンの効果は低く、接種後は経時的に低下していた。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年3月4日号に掲載。 本研究では、2021年4月9日~2022年1月29日に米国10州において、COVID-19様疾患で救急部や緊急医療機関を受診した5~17歳の3万9,217例および入院した1,699例を調査し、case-control test-negative designを用いてワクチン効果(VE)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19関連の救急部や緊急医療機関への受診に対するVEは、5〜11歳では2回目接種後14〜67日で46%、12〜15歳および16〜17歳では2回目接種後14〜149日でそれぞれ83%および76%、150日以降はそれぞれ38%および46%だった。なお、16〜17歳では、3回目(ブースター)接種後7日以降にVEは86%に上昇した。・オミクロン株優位の期間におけるCOVID-19関連の救急部や緊急医療機関への受診に対するVEは、12~17歳においてデルタ株優位の期間よりも大幅に低く、2回目接種後150日以降は有意な効果はみられなかった。しかしながら、16~17歳で3回目(ブースター)接種後7日以降に81%に上昇した。・COVID-19関連入院に対するVEは、デルタ株以前/デルタ株/オミクロン株が優位な期間を含む調査した全期間で、5~11歳では2日目接種後14~67日で74%(95%信頼区間が広く、0をまたいでいる)、12~15歳および16~17歳では2日目接種後14~149日でそれぞれ92%および94%、150日以降はそれぞれ73%および88%であった。 今回の結果から、著者らは「対象となるすべての小児および青年は、推奨されるワクチン接種のアップデート(12~17歳におけるブースター接種を含む)を継続する必要がある」としている。

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脳梗塞の血管内治療、アスピリン・未分画ヘパリンは益より害?/Lancet

 虚血性脳卒中への血管内治療において、周術期のアスピリンまたは未分画ヘパリン投与はいずれも、症候性頭蓋内出血リスクを増大し、機能的アウトカムの有益な効果に関するエビデンスはないことが、オランダ・Erasmus MC University Medical CenterのWouter van der Steen氏らによる無作為化比較試験の結果、示された。アスピリンおよび未分画ヘパリンは、脳卒中の血管内治療において、再灌流とアウトカムを改善するためにしばしば使用される。しかし、その適応に関する効果とリスクは明らかではなかった。Lancet誌オンライン版2022年2月28日号掲載の報告。オランダ15施設で非盲検無作為化試験 虚血性脳卒中患者の血管内治療中に投与を開始した静脈内アスピリンまたは未分画ヘパリンもしくは両薬の安全性と有効性を評価するため、研究グループは2018年1月22日~2021年1月27日にかけて、オランダ15ヵ所の医療センターを通じて、非盲検多施設共同無作為化比較試験を2×3要因デザインにて実施した。登録被験者は、発症から6時間以内で血管内治療が可能だった前方循環系の主幹脳動脈閉塞による虚血性脳卒中の18歳以上患者。適格基準はNIH脳卒中スケール(NIHSS)スコアが2以上で、CTまたはMRIで頭蓋内出血患者は除外した。 Webベースの無作為化法にてブロック化と登録施設の層別化を行い、被験者を無作為に1対1の割合で周術期静脈内アスピリン(300mgボーラス)投与群またはアスピリン非投与群に割り付け、また1対1対1の割合で未分画ヘパリン中等量(5,000 IUボーラス、その後1,250 IU/時を6時間)投与群、同低量(5,000 IUボーラス、その後500 IU/時を6時間)投与群、未分画ヘパリン非投与群に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコアとした。安全性に関する主要アウトカムは、症候性頭蓋内出血。解析はintention to treatベースで行い、治療効果は、ベースライン予後因子で補正後のオッズ比(OR)または共通(common)ORとした。アスピリン群、未分画ヘパリン群ともmRSスコアは悪化傾向 被験者数は663例で、同意を得た人または同意前に死亡した628例(95%)を、修正ITT解析の対象とした。2021年2月4日時点で、データの非盲検化と解析の結果、試験運営委員会は新たな被験者の組み入れを停止し、試験は安全性への懸念から中止となった。 症候性頭蓋内出血のリスクは、非アスピリン群(7%、23/318例)よりもアスピリン投与への割付群(14%、43/310例)で高率だった(補正後OR:1.95、95%信頼区間[CI]:1.13~3.35)。同様に、非未分画ヘパリン群(7%、22/296例)よりも未分画ヘパリン投与への割付群(13%、44/332例)でリスクが高かった(1.98、1.14~3.46)。 有意差は示されなかったが、mRSスコアを悪化させる傾向が、アスピリン群(共通OR:0.91、95%CI:0.69~1.21)と未分画ヘパリン群(0.81、0.61~1.08)のいずれにおいても認められた。

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コロナワクチンのブースター、オミクロン株に最も有効なのは?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「ChAdOx1 nCoV-19」(AstraZeneca製)または「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の2回接種は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株(B.1.1.529)による症候性疾患への防御効果は限定的である。BNT162b2または「mRNA-1273」(Moderna製)ワクチンによるブースター接種によって、ワクチン有効性は大幅に増大するが、時間の経過とともに減弱する。英国健康安全保障庁(UKHSA:U. K. Health Security Agency)のNick Andrews氏らが、オミクロン株感染者約89万人を対象にイングランドで行った診断陰性(test-negative)デザイン法(TND)による症例対照試験の結果を報告した。オミクロン変異株によるCOVID-19症例の急増によって、現行ワクチンの有効性に関する懸念が生じている中で本検討は行われた。NEJM誌オンライン版2022年3月2日号掲載の報告。ワクチン3種のプライマリ接種+3種ブースター接種の有効性を検証 研究グループは、オミクロン変異株とデルタ変異株による症候性疾患へのワクチン有効性を推定するため、イングランドで診断陰性症例対照試験を行った。ワクチン有効性は、BNT162b2、ChAdOx1 nCoV-19、またはmRNA-1273のそれぞれ2回接種後について算出し、また、BNT162b2、ChAdOx1 nCoV-19、mRNA-1273のいずれかのブースター接種後の有効性を検証した。対オミクロン変異株へのワクチン有効性は、対デルタ変異株より低下 2021年11月27日~2022年1月12日に、オミクロン変異株感染者88万6,774例とデルタ変異株感染者20万4,154例、および診断陰性症例対照試験の適格者計157万2,621例を特定した。 検証した全時点および2回のプライマリ接種と1回のブースター接種のワクチンの全組み合わせにおいて、ワクチン有効性は、対デルタ変異株が対オミクロン変異株より高かった。また、ChAdOx1 nCoV-19の2回プライマリ接種後20週では、オミクロン変異株に対するワクチン有効性はまったく認められなかった。BNT162b2を2回接種後2~4週では、同有効性は65.5%(95%信頼区間[CI]:63.9~67.0)だったが、25週以降では8.8%(7.0~10.5)に低下した。mRNA-1273ワクチン2回接種後2~4週でも、同有効性は75.1%(70.8~78.7)だったが、25週以降では14.9%(3.9~24.7)に低下した。 ChAdOx1 nCoV-19の2回プライマリ接種群において、BNT162b2ブースター接種後の2~4週には、ワクチン有効性は62.4%(95%CI:61.8~63.0)に上昇したが、10週以降では39.6%(38.0~41.1)に低下した。同群において、mRNA-1273ブースター接種では、2~4週後のワクチン有効性は70.1%(69.5~70.7)に上昇したが、5~9週以降では60.9%(59.7~62.1)に低下した。 BNT162b2の2回プライマリ接種群では、BNT162b2ブースター接種後の2~4週には、ワクチン有効性は67.2%(95%CI:66.5~67.8)に上昇したが、10週以降では45.7%(44.7~46.7)に低下した。同群において、mRNA-1273ブースター接種では、2~4週後のワクチン有効性は73.9%(73.1~74.6)に上昇したが、5~9週以降では64.4%(62.6~66.1)に低下した。 mRNA-1273の2回プライマリ接種群では、BNT162b2ブースター接種後の2~4週では、ワクチン有効性は64.9%(95%CI:62.3~67.3)、mRNA-1273ブースター接種後の2~4週では同66.3%(63.7~68.8)だった。5週以降については被験者数が不十分で検証結果は得られていない。

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ニボルマブ+化学療法の食道扁平上皮がん1次治療、CHMPで推奨/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年2月25日、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、PD-L1発現1%以上の切除不能な進行、再発または転移のある食道扁平上皮がん(ESCC)成人患者の1次治療薬として、ニボルマブとフルオロピリミジン系およびプラチナ系薬剤を含む化学療法の併用療法の承認を推奨したことを発表した。 今回のCHMPの肯定的な見解は、第III相CheckMate-648試験の中間解析の結果に基づいている。同試験で、ニボルマブと化学療法の併用療法は化学療法と比較して、PD-L1発現1%以上の切除不能な進行、再発または転移のあるESCC患者において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)のベネフィットを示した(OS中央値:15.4ヵ月 vs.9.1ヵ月、ハザード比:0.54、99.5%信頼区間:0.37~0.80、p<0.001)。

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若者がADHD治療薬の使用を中止する理由

 注意欠如多動症(ADHD)は、成人期まで継続する可能性のある神経発達障害である。ADHD治療薬は、継続的に使用することが重要であるにもかかわらず、若者の多くは成人期にやめてしまうことが少なくない。そのため、成人期よりADHD治療薬を再開することもあり、中止が時期尚早であった可能性が示唆されている。英国・エクセター大学のDaniel Titheradge氏らは、若者がADHD治療薬を中止してしまう理由について、調査を行った。Child: Care, Health and Development誌オンライン版2022年1月31日号の報告。 CATCh-uS(Children and Adolescents with ADHD in Transition between Children's services and adult Services)プロジェクトの定性データを用いて、ADHD治療薬の使用中止理由を調査した。若者を次の3群に分類した。(1)成人向け治療介入移行前の若者21例(2)成人向け治療介入への移行が成功した若者22例(3)小児向け治療介入離脱後、成人向け治療介入を再度受けた若者21例。対象患者には、半構造化面接を実施し、主題分析およびフレームワーク分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADHD治療薬の使用を中止した理由は、以下のとおりであった。 ●薬物治療のベネフィットと副作用のバランス ●小児期のADHDの認識および教育障害 ●若者の生活環境と治療介入へのアクセスの課題 著者らは「ADHDの若者における長期的な予後やQOL改善のためには、ADHD治療薬の中止に対処するための多元的アプローチ、非薬理学的治療へのアクセスや心理教育の改善などが必要とされる。これら、若者のADHD治療薬の中止理由は、ADHD特有のものではないため、小児でみられる他の慢性疾患においても、服薬アドヒアランスと関連していると考えられる」としている。

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円錐角膜〔keratoconus〕

1 疾患概要■ 定義円錐角膜は、進行性の両眼角膜中央部もしくは下方の菲薄化と突出を来す疾患であり、近視化と不正乱視による視力低下を来す。■ 疫学円錐角膜の発症頻度は、450〜2,000人に1人とされてきた。しかし、診断技術の進歩により、軽症の円錐角膜の検出頻度が上がっている。屈折矯正外来を訪れる患者のうち円錐角膜または円錐角膜疑い患者は5%前後にみられる。また、難波らの調査からは、疑い例も含めると日本人の約100人に1人程度の有病率であるという結果が報告されていることから、軽症例も含めると従来考えられているよりも罹患人口が多い可能性が高い。性差については報告により異なるが、わが国では男性に多いという報告が多数ある。■ 病因明らかな病因はいまだに不明である。数多くの遺伝子変異が報告されているが、実際に遺伝的素因が明らかな例はあまり多くない。ダウン症候群やレーバー先天盲、エーラス・ダンロス症候群、マルファン症候群などでは円錐角膜の発症率が高いことが知られている。その他リスクファクターとしては、アトピーなどのアレルギー眼疾患、頻繁に目をこする、などが挙げられる。■ 症状軽度の症例では自覚症状はほとんどない場合もあるが、中等度以上になると近視性乱視と不正乱視が出現する。そのために眼鏡矯正視力が不良になりハードコンタクトレンズによる矯正が必要になる。ほとんどの場合両眼性に生じるが、程度に左右差があることも多い。■ 分類角膜の突出部位別の分類としては、以下のものがある。Nipple角膜中央の狭い範囲(5ミリ以下)に突出がみられるもの。Oval     突出部位が中央やや下方にみられるもの。最も頻度が高い。Globus突出部位が角膜の4分の3の範囲に及ぶもの。また、重症度分類としては、Amsler分類(表)が古くから用いられているが、測定機器の進歩によって、細隙灯顕微鏡で検出できない初期の変化が捉えられるようになってきたために、見直す必要がある。表 Amsler-Krumeich分類画像を拡大する■ 予後円錐角膜の多くは思春期から青年期にかけて発症し、その後加齢とともに進行するが、中年以降になると進行速度が緩やかになってやがて停止する。しかしながら、進行の有無やスピードには個人差が大きく、近年の報告によれば30歳以降でも進行する症例もみられることが明らかになっている。経過中に、デスメ膜破裂を来す場合がある。局所的な実質の浮腫と、それに伴う急速な視力低下と軽度の眼痛を認める(急性水腫:図1)。浮腫は自然に軽快するが、実質瘢痕を残すと視力が回復せずに角膜移植が必要となることもあるので、急性水腫を来さないような治療方針を建てることが重要となる。図1 急性水腫の前眼部所見急激に発症する角膜中央部の浮腫で、スリットランプでしばしば実質の裂隙とデスメ膜の断裂を認める。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)円錐角膜の診断には、正確な視力検査、自覚的屈折検査と角膜形状解析検査を行う必要がある。細隙顕微鏡での異常所見としては、角膜中央〜Vogt’s striae(角膜実質の線状の皺壁:図2)、Fleisher ring(突出部の周辺に認められるリング状のヘモジデリン沈着)、上皮化の瘢痕などが挙げられ、主として中等症以上で初めて認められる。図2 Vogt’s striae突出部に生じる細かい実質の皺壁。初期の円錐角膜の診断には、角膜トポグラフィー(形状解析検査)が有用であり、角膜中央から下方の前方突出が特徴的である(図3)。図3 典型的な円錐角膜の角膜トポグラフィー像下方角膜曲率の急峻化を認める。近年では、多くの機器で円錐角膜のスクリーニングプログラムが搭載されている。より初期の診断には、角膜前面だけではなく後面も評価でき、角膜厚の分布も検出できる角膜トモグラフィー(断層撮影)の感度が高い。さらに、角膜形状でなく生体力学的特性を調べる検査の有用性も報告されている。鑑別疾患としては、円錐角膜よりも周辺部角膜の菲薄化と突出を来たすペルーシド角膜辺縁変性が挙げられる。円錐角膜よりも発症が遅く進行が停止するまでの期間も長い。その他、レーシックなどの角膜屈折矯正手術後の角膜拡張症(エクタジア)も円錐角膜と同様の所見を呈する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)円錐角膜の治療は、視力矯正と進行予防の2つの目的があり、前者はさらに保存的治療と外科的治療に分かれる。■ 視力矯正1)保存的治療軽度の場合は眼鏡やソフトコンタクトレンズも用いられるが、一般的には酸素透過性ハードコンタクトレンズによる矯正が中心となる。角膜突出の程度が強くなると、多段階のベースカーブを有する円錐角膜用のハードコンタクトレンズが必要となる場合もある。ハードコンタクトレンズに伴う異物感が強い場合は、ソフトコンタクトレンズの上にハードコンタクトレンズを乗せる“piggy-back”とよばれる装用法や、中心部がハードレンズで周辺部がソフトレンズのハイブリッドレンズ、あるいは強膜レンズが用いられることもある。2)外科的治療軽度の非進行例については、有水晶体眼内レンズによる近視・乱視の矯正も試みられている。近年、角膜実質の混濁をともなわない例については、角膜実質にPMMA製のリングを入れる「角膜内リング」も一部で行われるようになった(国内未承認)。これによって角膜形状の改善とハードコンタクトレンズ装用感の向上が得られる場合がある。保存的治療で充分な視力矯正が得られない場合、角膜移植が1つの選択となりうる。かつては角膜全層を移植する「全層角膜移植」が広く行われたが、術後合併症への対策が欠かせないという欠点があり、それを補うために角膜実質をデスメ膜の直上まで切除して移植する「深層層状角膜移植」が行われているが、手術手技が難しいという欠点を持つ。■ 進行抑制約20年前から、「角膜クロスリンキング」という円錐角膜の進行抑制を目的とした治療が、諸外国で広く行われるようになった(国内未承認)。角膜実質内にリボフラビン(ビタミンB12)を浸透させた後に、紫外線を照射することで角膜実質のコラーゲン線維の架橋を促して強度を向上させる。これまでの研究で、円錐角膜の進行抑制が大半の例で得られ、若干の形状改善効果もあることが報告されている。進行抑制が得られれば、角膜移植などの外科的治療を受けずに済む可能性が高く、患者の生活の質の向上に役立つ。4 今後の展望上に挙げた治療法のいくつかは保険未収載であったり、機器の承認が取れていないため、治療は多くの場合が自費診療として行われる。特に角膜クロスリンキングは、疾患の進行抑制を効率で得られるために患者のQOLを長期にわたって改善できることが海外で報告されており、わが国でも早急に実施体制が整うことが求められる。また、多くの円錐角膜患者にとってハードコンタクトレンズは生活に欠かせないが、市町村によってはその購入に対する補助がなされないなど、患者負担が大きいことが問題となっている。5 主たる診療科眼科。しかし多くの例では、眼鏡店やコンタクトレンズ販売店、あるいは屈折矯正手術施行施設を訪れることも多く、これらの施設で適切に円錐角膜の診断をつけることが重要である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報円錐角膜研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Keratoconus Foundation(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Amsler M. Ophtalmologica. 1946;111:96–101.公開履歴初回2023年3月8日

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英語で「吐き戻す」は?【1分★医療英語】第18回

第18回 英語で「吐き戻す」は?I am worried about my daughter because she spit up milk a lot yesterday.(娘が昨日何度もミルクを吐き戻したので心配です)Okay, what is her baseline?(なるほど、通常はどの程度[吐き戻すの]ですか?)《例文》医師Helping her burp during and after feeding will prevent from spitting up.(授乳中や授乳後にげっぷをさせてあげると、吐き戻しを防げますよ)患者Oh, that is good to know!(そうなのですね、良いことを伺いました!)《解説》今回は小児医療でよく使われる「吐き戻す」という表現をお伝えします。AAP(米国小児科学会)のサイトでは、“vomiting”は胃の内容物が口から体外に強制的に吐き戻されること、“spitting up”は強制的な筋収縮は関与せず、しばしばげっぷに伴い胃の内容物が口から出てくること、と説明されています。母乳や人工乳を飲んだ赤ちゃんが、食後にミルクを口から吐き出してしまうことがあるのですが、これがまさに“spitting up”(吐き戻す)に当たります。大人が悪心を伴って嘔吐するときのニュアンスとは大きく異なります。“spit”を単体で使う際には、「唾を吐く」もしくは「口に入れたものを飲み込まずに出す」という意味合いとなり、こちらもまた上記とはニュアンスが異なります。小児領域で言えば、子供が食べようとしたものが口に合わず、すぐに「ぺっ」と外に出すような状況です。米国で小児医療に携わっていると、赤ちゃんの“spit up”を心配して救急やクリニックを訪れる家族が非常に多く、たびたび耳にする言葉です。英語圏の方は“spit up”“vomit”“spit”といった表現を自然に使い分けていますので、ニュアンスの違いを理解して、患者の年齢や症状に応じて使い分けてみてください。講師紹介

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第102回 ファイザーCOVID-19ワクチンの5~11歳での感染予防効果、相次ぐ報告

小学生(5~11歳)ごろを含む小児の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの感染予防効果はかなり低いようで、オミクロン株優勢の昨今においては追加接種の出番が必要なようです。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株出現後の米国ニューヨーク州のデータを調べた査読前のmedrxiv掲載報告によると、5~11歳小児へのPfizer/BioNTechワクチンBNT162b2接種の感染(COVID-19)予防効果は接種が済んでから僅か1ヵ月ばかりで激減していました1,2)。先週末4日にMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)に発表された米国疾病管理センター(CDC)主催VISION Network試験の査読済み(reviewed)結果報告3)でもニューヨーク州データほどではないもののその年齢層の小児へのBNT162b2の効果の衰えは比較的早いらしいことが示唆されています。試験では救急や急診(emergency department and urgent care)を要した小児のCOVID-19とワクチン接種歴が検討され、5~11歳小児の2回目接種から2週後(14日後)~およそ2ヵ月後(67日後)のCOVID-19予防効果は46%でした。ニューヨーク州の試験では去年12月13日から今年1月2日までにBNT162b2接種済みの5~11歳小児の検討が含まれ、それら小児のSARS-CoV-2感染予防効果は接種が済んでから2週間(13日間)以内では65%だったのが約1ヵ月(28~34日)後には12%に低下していました(medrxiv報告1)のFigure 2)。より年長の12~17歳小児のBNT162b2接種の同期間の感染予防効果は76%と56%であり、5~11歳小児ほどは低下しませんでした。5~11歳小児への投与量はそれより年長の小児に比べて少ないことが効果の大方の消滅の原因かもしれないと著者は考えています。12~17歳小児への投与量は30μgで、5~11歳小児への投与量はその3分の1の10μgです。5~11歳小児のCOVID-19入院予防効果は感染予防の大方の消失とは対照的に比較的保たれました。オミクロン株検出が感染の19%であった去年12月13~19日の入院予防効果は100%、オミクロン株検出が感染のほぼ100%(99%超)を占めるようになった今年1月24~30日では48%でした。効果はおよそ半減したとはいえワクチンは重病を防いだ(was protective)と著者は判断しており、5~11歳小児への接種普及の取り組みを続けるべきと言っています。報告時点での米国のそれら幼い小児のワクチン接種率は4人に1人に満たない25%未満でした。同様にVISION Network試験でも5~11歳小児のBNT162b2接種の入院予防効果は感染予防効果よりどうやら高いと示唆されています。2回目接種から14~67日間のCOVID-19関連入院予防効果は74%でした。ただし、統計解析にデータは不十分でその95%信頼区間は0をまたぐ-35%~+95%であり、BNT162b2が5~11歳小児のCOVID-19関連入院をどれほど防ぐのかを更にデータを集めて検討する必要があります。加えて、5~11歳小児にワクチンをどう投与するかの検討も必要でしょう。感染予防効果は現状ではどうやら早く低下するようであり、工夫した投与方針を考えてその試験を実施すべきとニューヨーク州試験の著者は言っています1)。Pfizer/BioNTechはすでにその方向で事を進めています。去年12月の両社の発表4)によると、2歳以上5歳未満小児への両社のワクチン2回接種後1ヵ月間の免疫反応はワクチンの確かな効果が判明している青少年(16~25歳)の人のそれに残念ながら及ぶものではありませんでした。この結果を受けて両社は生後6ヵ月から5歳未満の小児を対象にした進行中の試験に3回目投与を含めることを決めています。3回目の用量は1回目と2回目と同量の3μgで、2回目から2ヵ月過ぎてから投与されます。3回目接種の検討が成功したら生後6ヵ月以上5歳未満小児への同ワクチン使用の米国FDAの取り急ぎの認可を今年前半に手にするのに必要なデータが揃うと両社は見込んでいます。その発表の際に両社は5~11歳の小児への3回目接種も検討することを明らかにしています。それら小児への3回目接種の用量もより幼い小児への投与がそうであるように1回目と2回目と同じ10μgです。参考1)Effectiveness of the BNT162b2 vaccine among children 5-11 and 12-17 years in New York after the Emergence of the Omicron Variant. medRxiv. February 28, 20222)Vaccine’s protection for kids dives / Science3)Klein NP, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Mar 4; 71;352-358.4)Pfizer and BioNTech Provide Update on Ongoing Studies of COVID-19 Vaccine / Pfizer

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日本人再発・進行子宮頸がん患者に対するtisotumab vedotinの効果~innovaTV206試験~/日本臨床腫瘍学会

 子宮頸がんは子宮がんの約7割程度を占めるがんであり、日本国内では、毎年約1万人の女性が罹患し、約3,000人が死亡している。2000年以降、患者数も死亡率も増加しており、新しい治療薬の登場が待たれていた。 tisotumab vedotinは子宮頸がん細胞に発現するタンパク質である組織因子を標的とした、抗体薬物複合体(ADC)である。化学療法による治療中または治療後に病勢進行がみられる再発または転移性子宮頸がんを適応として、2021年に米国食品医薬品局(FDA)から迅速承認を取得している。 今回、日本人再発・進行子宮頸がん患者を対象としたinnovaTV206試験の結果が、国立がん研究センター中央病院の米盛 勧氏より発表された。注目のADC、その効果は?~innovaTV206試験~ innovaTV206試験の概要は以下の通り。・対象:標準治療中、または標準治療後に進行した、もしくは1~2つの前治療を行った日本人再発・進行子宮頸がん患者17例・方法:腫瘍の進行、許容できない毒性、または何らかの理由で患者が離脱するまで、推奨される第II相試験で推奨された用量(tisotumab vedotin 2.0mg/kg)を投与・目的:安全性と忍容性、薬物動態と免疫原性、日本人の再発・進行子宮頸がん患者における抗腫瘍活性の評価 年齢の中央値は47.0歳、1次治療でベバシズマブの治療を受けていた患者は47.1%であった。 結果は以下の通りである。・奏効率(ORR)は29.4%(95%信頼区間:10.3~56.0)、病勢コントロール率(DCR)は70.6%(95%信頼区間:44.0~89.7)、奏効持続期間(DOR)は中央値で7.1ヵ月であった。・安全性については治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)が全例で見られた。Grade3以上のTEAEでtisotumab vedotinが関連している副作用は52.9%であった。多く見られたTEAEは貧血、吐き気、脱毛症などであった。今回の試験から示されたこと 米盛氏はこれらの結果から、tisotumab vedotinの安全性プロファイルは管理可能であり、臨床的に意義のある結果が示された、と述べた。 今回発表されたinnnovaTV206の結果は、欧州・米国で行われたinnnovaTV204試験の結果とも一致しており、現在進行中の第III相試験、innnovaTV301試験の結果が待たれる。

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ニボルマブ+化学療法の非小細胞肺がんネオアジュバント、FDAが承認/BMS

 ブリストルマイヤーズスクイブは、2022年3月4日、切除可能非小細胞肺がん(腫瘍径≧4cmまたはリンパ節転移陽性)成人患者に対する、プラチナダブレット化学療法+ニボルマブ(3週間ごとに3サイクル)のネオアジュバント療法について、米国食品医薬品局(FDA)が承認したと発表した。承認条件にPD-L1の状態は問われていない。 今回の承認は、非小細胞肺がんに対する免疫治療薬ベースのネオアジュバントで初めての肯定的な結果を出した、第III相CheckMate-816試験に基づいたもの。 CheckMate-816試験の主要評価項目は、無イベント生存期間(EFS)と病理学的完全奏効(pCR)などである。中間解析におけるEFS中央値は、ニボルマブ+化学療法群で31.6ヵ月、化学療法群は20.8ヵ月で、ニボルマブ+化学療法群が統計学的に有意な改善を示した(ハザード比[HR] 0.63、95%信頼区間[CI]:0.45〜0.87、p=0.0052) 。また、pCRはニボルマブ+化学療法群の24%に対し、化学療法群は2.2%であった(p<0.0001)。OSのHRは0.57(95%CI:0.38〜0.87)とニボルマブ+化学療法群で良好だが、統計学的有意差は示していない。 同試験のEFSの解析結果は、2022年4月に開催されるAACR2022で発表される。

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新型コロナ抗原定性検査(LFT)、感染見逃しが多い可能性/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)抗原のラテラルフロー検査(LFT)は、SARS-CoV-2感染者の検出において臨床的に重要な見逃しの割合が高く、この割合は検査の環境によってウイルス量の分布が異なるためばらつきが大きく、無症状者でより高い可能性があることが、英国・バーミンガム大学のJonathan J. Deeks氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年2月23日号で報告された。英国の抗原検査による感染見逃しのlinked data解析 本研究は、SARS-CoV-2感染リスクが高い集団におけるLFTの陰性率、およびこれに対する病期や重症度の影響を調査し、2つの有力な数理モデル(英国のEdmundsモデル、米国のMinaモデル)による予測と実証的研究の知見の比較を目的とするlinked data解析である(筆頭著者らは英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 解析データには、Innova LFT(英国で広く普及)の精度、ウイルス培養陽性の割合や第2次症例への伝播(2次感染)、異なる環境下におけるSARS-CoV-2のウイルス量の分布に関する実証的なエビデンスが含まれた。 次の3つの環境でLFT検査が実施された。(1)英国各地の国民保健サービス(NHS)の検査・追跡センターを受診した有症状者、(2)リバプール市の市営集団検査センターを受診した無症状の住民、(3)バーミンガム大学でスクリーニングを受けた無症状の学生。 主要アウトカムは、3つの環境下における、LFTで見逃されたウイルス培養陽性者と、LFTで見逃され2次感染の原因となった者の予測値とされた。これらの結果は、数理モデルによる予測値と比較された。数理モデルはLFTの感度を大幅に過大評価 解析の結果、ウイルス培養陽性者のうちLFTで見逃された者の割合は、NHS検査・追跡センターの有症状者が20%、リバプール市の集団検査センターの無症状者が29%、バーミンガム大学でスクリーニングを受けた無症状者では81%であった。また、LFTで見逃され2次感染の原因となった者の割合は、それぞれ38%、47%、90%だった。 2つの数理モデルはいずれも、見逃された感染者の数を過小に評価していた。すなわち、Edmundsモデルでは、LFTで見逃された者の割合はNHS検査・追跡センターの有症状者が8%、リバプール市の無症状者が10%、バーミンガム大学の無症状者は32%であったのに対し、Minaモデルでは、前提として感染者の見逃しは起こりえないとされていた。 著者は、「Innova LFTで見逃される感染性マーカーを有する者の割合は、検査対象集団のウイルス量の分布に依存し、無症状者の検査では感染者の割合が高いほど見逃される可能性が高いことがわかった。今回の実証的なデータの解析では、ウイルス量と感染性の関連に関する主要な数理モデルによる仮説の精度が低く、結果としてLFTの検査感度が過大に評価されていることが明らかとなった」としている。

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南アフリカ、オミクロン株流行前にIgG抗体陽性者が7割以上/NEJM

 南アフリカ共和国ハウテン州では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)B.1.1.529(オミクロン株)が優勢の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大前に、潜在的なSARS-CoV-2血清陽性が州全体に広がっていたことが確認され、オミクロン株感染増加とCOVID-19による入院や死亡は関連していないことが示されたという。南アフリカ共和国・ウィットウォーターズランド大学のShabir A. Madhi氏らが、ハウテン州で実施した血清疫学調査の結果を報告した。オミクロン株は、2021年11月25日に世界で初めてハウテン州で確認され、オミクロン株が優勢となったCOVID-19第4波以前のハウテン州におけるSARS-CoV-2 IgGの血清陽性率に関するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2022年2月23日号掲載の報告。オミクロン株流行前の血清疫学調査を実施 研究グループは、2021年10月22日~12月9日の期間に、ハウテン州において血清疫学調査を実施した。対象世帯は、2020年11月~2021年1月に実施した前回の血清疫学調査時と同じ世帯とし、さらに、前回調査以降の転出や死亡等の可能性を考慮して前回と同じクラスターでのサンプリング対象世帯を10%増やした。 参加者から乾燥血液スポットを採取し、SARS-CoV-2スパイクタンパクとヌクレオカプシドタンパクに対するIgGについて検査した。 また、研究グループは、DATCOV(COVID-19による入院に関する積極的サーベイランスシステム)を含む南アフリカ共和国国立感染症研究所のデータベース等を用い、パンデミック開始から2022年1月12日までの患者数、入院、死亡、超過死亡を調査し、ハウテン州におけるCOVID-19の疫学的傾向について評価した。ワクチン非接種者でも68.4%がSARS-CoV-2血清陽性 検体を採取し分析された参加者は7,010例で、このうちCOVID-19のワクチン接種を受けていたのは1,319例(18.8%)であった。 SARS-CoV-2 IgGの血清陽性率は、全体で73.1%(95%信頼区間[CI]:72.0~74.1)であり、12歳未満の56.2%(52.6~59.7)から50歳以上の79.7%(77.6~81.5)の範囲にわたっていた。また、女性のほうが男性より(76.9% vs.67.9%)、ワクチン接種者のほうが非接種者より(93.1% vs.68.4%)、血清陽性率が高かった。 オミクロン株優勢のCOVID-19第4波では、第1~3波と比較して1日の患者数(人口10万人当たり)の増加が急激で、1ヵ月でピークに達した後、急速に減少していた。第4波の患者数(22万6,932例)は、第2波(18万2,564例)より多く、第3波(51万1,638例)より少ないが、第4波におけるCOVID-19による入院、死亡および超過死亡数は第3波以前より一貫して少なく、それぞれのピーク数も低かった。 すべての入院、死亡および超過死亡のうちCOVID-19が占める割合は、デルタ株が優勢の第3波では43.6%、49.3%および52.7%であったが、オミクロン株優勢の第4波ではそれぞれ11.2%、3.9%および3.3%だった。

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ニボルマブ+イピリムマブの食道扁平上皮がん1次治療、CHMPで推奨/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年2月25日、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、PD-L1発現1%以上の切除不能な進行・再発または転移のある食道扁平上皮がん(ESCC)の成人患者の1次治療薬として、ニボルマブとイピリムマブの併用療法の承認を推奨したことを発表した。 この肯定的な見解は、第III相CheckMate-648試験の中間解析に基づくもの。同試験で、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、フルオロピリミジン系およびプラチナ系薬剤を含む化学療法と比較して、PD-L1発現1%以上の切除不能な進行、再発または転移性ESCC患者において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)のベネフィットを示した(OSの中央値:13.7ヵ月 vs .9.1ヵ月、ハザード比:0.64、98.6%信頼区間:0.46~0.90、p=0.001)。 ニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告された試験のものと一貫していた。

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複雑性PTSD診断におけるICD-11導入後の期待

 複雑性PTSDはICD-11で初めて定義された疾患であり、PTSD診断の特徴であるトラウマ的症状に加え、自己組織化の障害(感情調節障害など)が認められる疾患である。デンマーク・オールボー大学のAshild Nestgaard Rod氏らは、複雑性PTSDの診断に対するICD-11の臨床的有用性について、調査を行った。European Journal of Psychotraumatology誌2021年12月9日号の報告。 ICD-11に含まれる国際的なフィールド調査、構成および妥当性の分析をレビューし、診断方法、国際トラウマアンケート(ITQ)、国際トラウマインタビュー(ITI)を調査した。複雑性PTSDと境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療、臨床的関連性の違いを明らかにするため、独立した分析を実施した。複雑性PTSD治療への影響は、既存のガイドラインと臨床ニーズを参照し、検討した。 主な結果は以下のとおり。・ITQおよびITIの検証では、複雑性PTSDのさらなる臨床診療への定着に貢献し、臨床的コミュニケーションと治療促進の双方に対する構成の的確な評価、意図された有益な価値が提供されていた。・経験的研究では、複雑性PTSDは、PTSDおよびBPDと鑑別可能であることが示唆されているが、BPDとPTSDの併存症例は、複雑性PTSDとされる可能性が認められた。・複雑性PTSDの診断治療において、自己組織化の障害を考慮したうえで、PTSDの確立された診断方法を用いる必要がある。 著者らは「複雑性PTSDがICD-11で定義されたことにより、治療介入へのアクセスが改善されるだけでなく、とくにストレス関連障害の研究により注目が集まるであろう。このような追加診断による臨床的有用性の価値は、ICD-11が臨床診断に導入される2022年以降、さらに明らかになると考えられる。今後、複雑性PTSDの症状評価や治療にベネフィットがもたらされることが期待される」としている。

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ダロルタミド、転移前立腺がんのOS延長/NEJM

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)の治療において、標準治療であるアンドロゲン除去療法(ADT)+ドセタキセルに、経口アンドロゲン受容体阻害薬であるダロルタミドを併用すると、プラセボの併用と比較して、全生存期間が有意に延長し、有害事象の発現は増加しないことが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのMatthew R. Smith氏らが実施した「ARASENS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年2月17日号で報告された。23ヵ国286施設のプラセボ対照無作為化第III相試験 研究グループは、mHSPCの治療における、標準治療へのダロルタミド追加の有用性を評価する目的で、国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施し、2016年11月~2018年6月に日本を含む23ヵ国286施設で参加者の登録を行った(BayerとOrion Pharmaの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的に前立腺がんと確定され、画像検査で転移病変が検出され、担当医によってADT+ドセタキセルによる治療が予定されている患者であった。 被験者は、ADT+ドセタキセルに加え、ダロルタミド(600mg[300mg錠剤2錠]、食事と共に1日2回経口投与)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは全生存期間とされた。副次エンドポイントも5項目で改善 1,306例が登録され、このうち1,305例が最大の解析対象集団(FAS)に含まれた(ダロルタミド群651例、プラセボ群654例)。全体の年齢中央値は67歳で、71.1%はECOG PSスコアが0点であり、78.2%はGleasonスコアが8点以上であった。ベースラインで全例が転移病変を有しており、79.5%は骨転移(M1b)、17.5%は臓器転移(M1c)であった。86.1%は初回診断時に転移病変が認められた。血清前立腺特異抗原(PSA)中央値は、ダロルタミド群が30.3ng/mL、プラセボ群は24.2ng/mLであった。 主解析のデータカットオフ日(2021年10月25日)の時点において、ダロルタミド群はプラセボ群より治療期間中央値が長く(41.0ヵ月、16.7ヵ月)、治療継続中の患者の割合が高かった(45.9%、19.1%)。全生存期間のフォローアップ期間中央値は、ダロルタミド群が43.7ヵ月、プラセボ群は42.4ヵ月だった。 全生存期間中央値は、ダロルタミド群が評価不能、プラセボ群は48.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:44.4~評価不能)であり、死亡リスクがダロルタミド群で32.5%低下した(ハザード比[HR]:0.68、95%CI:0.57~0.80、p<0.001)。4年全生存率は、ダロルタミド群が62.7%、プラセボ群は50.4%だった。 副次エンドポイントの階層的検定では、次の主な5項目についてダロルタミド群で有意に良好な結果が得られた。去勢抵抗性前立腺がん発現までの期間(HR:0.36、95%CI:0.30~0.42、p<0.001)、疼痛増悪までの期間(0.79、0.66~0.95、p=0.01)、症候性骨関連事象のない生存期間(0.61、0.52~0.72、p<0.001)、症候性骨関連事象発現までの期間(0.71、0.54~0.94、p=0.02)、他の全身性の薬物療法開始までの期間(0.39、0.33~0.46、p<0.001)。 有害事象の発現は両群で同程度であった。最も頻度の高い有害事象の発生率は、両群ともドセタキセル投与と重なった時期に高かった。Grade3/4の有害事象は、ダロルタミド群66.1%、プラセボ群63.5%で認められ、最も頻度が高かったのは好中球減少症(33.7%、34.2%)であった。重篤な有害事象はそれぞれ44.8%および42.3%で発現し、試験薬の恒久的な投与中止をもたらした有害事象の割合は13.5%および10.6%、有害事象による死亡は4.1%および4.0%であった。 著者は、「ダロルタミドの生存ベネフィットは、プラセボ群で後治療として延命のための全身療法を受けた患者の割合が高かったにもかかわらず観察され、ほとんどのサブグループで一致して認められた」としている。

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第98回 ワクチン接種率35%の国への侵攻、世界のコロナ感染状況も暗転か

年明け以降、緊迫度を高めていたウクライナ情勢だったが、2月24日、ついにロシアはウクライナへの全面的な軍事侵略を開始した。一応、私自身は国際紛争も取材範囲としている。たぶんコロナ禍でなければ、少なくとも隣国ポーランドあたりまでは向かっていたと思う。現在、ロシアはウクライナの東西南北のうち、国境を接していない西部以外の3方向から侵攻している。首都キーウ(ウクライナ語表記。キエフはロシア語読み)に近い真北の国境はロシアではなくベラルーシと接している。しかし、ベラルーシはヨーロッパ最後の独裁者と評され、28年にわたって国家元首に君臨するアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が近年対ロ接近路線を強めている。今回のロシア侵攻直前もベラルーシ・ウクライナ国境周辺でロシアと合同軍事演習を行っており、そのロシア軍がそのまま南下した格好だ。ロシア側が最初に持ち掛け、2月28日にベラルーシのホメリで開催された第1回停戦交渉にウクライナ側が当初応じなかったのも、ロシア寄りのベラルーシ領内での交渉は中立的に行われないと考えたからに他ならない。それでも最終的にウクライナ側が応じたのは「停戦交渉を拒否している」という理屈でロシアが攻撃継続の正当性を主張する可能性を案じたためだろう。そんなウクライナ、ロシアに関して危惧すべきことがある。まさにいま世界中で流行している新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大だ。まず、ウクライナは2月中旬にピークとなる3万8,000人超の感染者が発生。その後はピークアウトしているものの、今回のロシア軍の侵攻直前の2月21日でも1万3,000人超の感染者が報告されていた。ウクライナの総人口は4,370万人超なので、人口換算では日本で1日の新規感染者報告数が約4万人になっているのと同じことになる。現時点の日本の感染状況から見ればマシだが、ウクライナの国力や周辺環境から考えれば、実は深刻な数字だ。まず、現在のウクライナの新型コロナワクチン接種完了率は、Our World in Dataによるとわずか35.02%。全世界平均の55.69%からすれば惨憺たる数字だ。しかも、戦時下で新型コロナワクチンの接種を進めていられる環境ではなくなったと断言してよい。ただ、懸念すべきはそもそもウクライナでは過去に麻疹ワクチン接種者での接種後死亡などが報じられた影響で国民のワクチン不信が根強いと言われていることだ。実際、世界保健機関(WHO)・国連児童基金(UNICEF)の合同報告では2010年代半ばに麻疹をはじめとする各種ワクチンの接種率が50%を下回る事態となっている。そして実際、2018~2019年にかけては麻疹、2019年には風疹の大流行が起きている。しかも、医療インフラは極めてアンバランスな状況だ。やや古い数字になるが、2014年の世界銀行の公表データでは人口1,000人当たりの医師数は2.9人、病床数は7.46床。医師数でみると、日本よりは多いが経済開発協力機構(OECD)の加盟国などでの数字で見ると、どちらかというと数は少ないほうになる。にもかかわらず病床数は多い。ざっくりした見方をすれば、医師がてんてこ舞いで病床を回しているか、事実上の病床の相当数が実際に機能していないかのいずれかになる。国際通貨基金(IMF)が公表している1人当たりの国内総生産で、ウクライナが世界195カ国・地域中第126位の3,424.77ドルでヨーロッパ最貧国という窮状にあることを考えれば、後者の可能性のほうがやや高いと考えられる。そして現在の戦闘によりウクライナの非常事態省は、すでに「4,000人を超える民間人の死者発生」と発表している。戦傷者の実数は不明だが、おそらく相当数発生していると思われる。当然ながら現下の情勢では医療機関へのアクセスそのものが困難な地域も発生していることは想像に難くなく、アクセスが確保されている医療機関でも受け入れは戦傷者が優先されるはず。もはや新型コロナに気を払っている余裕はないだろうし、PCR検査なども十分に実施しているとは言い難いだろう。そして当然、病床も戦傷者から埋まっていくはずであり、地域や医療機関によっては新型コロナで重症化、あるいは重症化しそうな人が入院できない可能性もある。一方、国内では各所で国内避難民が発生し、地下などのシェルターで密になっているほか、安全に退避できる可能性がある南西部のポーランド、ルーマニア、スロバキア、ハンガリー、モルドバには大量の難民が流入している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、3月1日現在、これらの国に87万人超の難民が流入しているという。これに応じて各国は難民に関して新型コロナに関連した検疫措置を免除している。人道的な観点からやむを得ない措置だろう。これら難民が流入している各国の新型コロナの感染者発生状況は、いずれもピークアウトはしているものの、1日当たりの新規感染者報告数を日本の人口に換算すると、ポーランドが約3万人、ルーマニアが約2万7,000人、ハンガリーが約7万人、スロバキアが約19万人、モルドバが約12万人という規模になる。国によりかなりの差はあるが、スロバキア、モルドバは日本から考えれば尋常とは言えない感染状況である。各国ともそれでも覚悟の上で難民を受け入れているのだろう。そしてこれらの国でのワクチン接種完了率はポーランドが58.71%、ルーマニアが27.91%、ハンガリーが64.04%、スロバキアが50.39%、モルドバが13.14%とやはり心もとない。一方、ウクライナに軍事侵略しているロシアは日本より2,000万人ほど人口が多い中で、最新の新規感染者報告数は13万人超、ワクチン接種完了率は49.07%。どちらも褒められる数字ではない。また、報道を見ればわかるが、隣国に入国してきた難民の多くはマスクを着用していない。それどころか報じられているウクライナ国内の病院での戦傷者の治療場面では医療従事者ですらマスクを着用していない。もっともこの点はある種やむを得ないとも言える。紛争が起きる地域の多くはもともとが貧しいことがほとんどで、さらに戦闘の発生で物流も不安定になるため、十分な医療資器材がないなかで治療を行わなければならないことは日常的だ。実際、私は紛争地の医療機関での戦傷者治療場面に取材のため何度か立ち会ったことがあるが、医療従事者は手洗いする時間すらなく創傷対応に当たっていた。やむを得ないこととはいえ、今回のロシアのウクライナ軍事侵略は両国間での死傷者発生とともに、両国とその周辺国での感染拡大という極めて最悪の事態をもたらすかもしれない。近年まれにみる大義ない軍事侵略に対して、日本政府が各国と協調してロシアに強い制裁措置を行うのは、必要かつ当然のことである。また、岸田首相自ら記者会見で周辺各国への人道支援に1億ドルを提供することを明らかにした。その中にこの新型コロナ対策も念頭に置いて欲しいと思うのは欲張りだろうか? 念のために言っておくが、廃棄直前のアベノマスクをこれ幸いに支援物資に加えるようなお恥ずかしい真似はしないでもらいたい。

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ウェーバー・クリスチャン病〔WCD:Weber-Christian disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義WeberおよびChristianにより、再発性、非化膿性、有熱性の急性脂肪織炎として、今から90年ほど前に提唱されたまれな疾患で、女性に多い。他にも、“relapsing febrile nonsuppurative nodular panniculitis”という同義語がある。しかし、その後検査法が進歩し、以前ウェーバー・クリスチャン病として診断された中には悪性リンパ腫や深在性エリテマトーデス、α1-アンチトリプシン欠損症による脂肪織炎などを数多く含んでいたことが徐々に明らかになってくるにつれ、次第にこの病名は使われなくなってきている。1988年、Whiteらは、ウェーバー・クリスチャン病として報告された過去の報告30例を詳細に検討し、12例は結節性紅斑、6例は血栓性静脈炎で、他には外傷性脂肪織炎、細胞貪食組織球性脂肪織炎、皮下脂肪織炎様リンパ腫、白血病の皮下浸潤であったとしている1)。また、別の総説でも、かつてウェーバー・クリスチャン病として報告された疾患の多くは、バザン硬結性紅斑や膵疾患に伴う脂肪織炎であったとしている2)。いまだにこの病名での報告が散見されるが、その理由の1つに、安易にこの病名を使ってしまうことが挙げられる。さまざまな原因で起こる症候群と理解されるので、現在では「いわゆるウェーバー・クリスチャン病」とし、本症を独立疾患とみなさない立場の方が多い。■ 疫学上記の理由から明確な患者数などは統計的にとられておらず不明である。■ 病因現在も不明である。■ 症状元々の概念によると、全身症状を伴い、四肢、体幹に皮下結節や板状の硬結を多発性に呈し、皮膚表面の発赤、熱感、圧痛を伴うこともあり、時に潰瘍化する。再発を繰り返した結果、色素沈着や萎縮性の陥凹を残して瘢痕治癒する。■ 予後原因となる疾患により予後はわかれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査・診断末梢血中の炎症反応の上昇がみられるが、特異的なものはない。病理組織像は、非特異的な脂肪織炎、とくに急性期は脂肪小葉性脂肪織炎(lobular panniculitis)で、時間の経過とともに組織球、泡沫細胞が出現し、脂肪肉芽腫の像を呈し、その後線維化もみられる。血管炎を伴わない。■ 鑑別診断1)皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫下肢に好発し、結節性紅斑に似た臨床像(表面は発赤を伴う皮下硬結)を呈する。組織像は皮下脂肪織にCD8陽性T細胞が脂肪細胞を取り囲むように浸潤し(rimming)、核破砕物を貪食したマクロファージ(bean-bag cell)を認める。また、出血傾向や汎血球減少、肝脾腫などを伴う致死的なウェーバー・クリスチャン病は、“cytophagic histiocytic panniculitis”として報告されたが3)、その大部分は現在、皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫であると考えられている。2)深在性エリテマトーデス皮下脂肪織を炎症の主座とし、脂肪融解により臨床的に陥凹を来す。組織は、皮下脂肪織にリンパ球、組織球の浸潤、細小血管の閉塞、間質へのムチン沈着、晩期には石灰化もみられる。3)結節性紅斑下肢に好発する皮下硬結で、生検の時期によって組織像が異なる。晩期は脂肪肉芽腫もみられる。他にも、スウィート病、ベーチェット病、膵疾患、薬剤性のものなどを除外する必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)抗生剤内服は無効で、副腎皮質ステロイドの内服を主体に、反応が乏しい場合はステロイドパルスや免疫抑制剤なども考慮する。悪性リンパ腫に対しては化学療法を施行する。4 今後の展望ウェーバー・クリスチャン病という病名を使う際には上述のことを良く理解し、他疾患を確実に除外することを忘れてはならない。「いわゆるウェーバー・クリスチャン病」という診断名に満足せず、その原因をさらに特異的に探究していく姿勢を怠ってはならない。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患克服事業「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班」(医療従事者向けのまとまった情報)1)White JW, et al. J Am Acad Dermatol. 1998;39:56-62.2)Requena L, et al. J Am Acad Dermatol. 2001;45:325-361.3)Winkelmann RK, et al. Arch Intern Med. 1980;140:1460-1463.公開履歴初回2022年3月4日

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